東工大学生ボランティアグループ(以下、東工大VG)は東日本大震災をきっかけに発足した学生団体であり、復興支援・防災・地域連携活動の3本柱で活動を展開しています。活動の一環として、1月19日に東日本大震災により甚大な被害を受けた被災地の現状を視察するスタディツアーを企画・実施しました。ツアーには本学の学生・教職員26名が参加し、津波の被害にあった地域の現状視察や震災語り部講話の聴講、原発事故廃炉作業の現状視察等を行いました。
東工大VGは、1.東日本大震災から8年目を迎え、東日本大震災に関する報道を目にする機会が日に日に少なくなっていること、2.物理的に距離のある東京では被災地の現状に関する情報が得にくくなり、震災の記憶が風化しつつあること、3.震災直後に高まりを見せていた人々の防災意識も、記憶の風化と共に低下しつつあると感じていることから、
- 東日本大震災被災地の現状を自分の目で確認する機会の提供
- 東工大生だからこそ可能な復興支援を考えるきっかけ作り
を目的としたスタディツアーを企画しました。
本スタディツアーの企画および行程作成にあたっては福島県いわき復興支援・観光案内所の協力を得、またツアー当日のガイドは福島県いわき市観光協会に依頼しました。
参加者は早朝に渋谷駅(東京都)近辺に集合し、貸切バスで福島県へ向けて出発しました。いわき市到着までのバス車内では、東工大VGが作成した事前学習資料やいわき復興支援・観光案内所所有の映像資料を元にした事前学習を行いました。福島県到着後はいわき市でガイドおよび震災語り部さんと合流し、被災地を巡りました。最初に、地震・津波・火災・原発事故による全地区住民避難を経験した久之浜地区を巡り、「いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館」にて、被災状況や原発事故の影響による風評被害等の実際と現在の状況について学びました。震災語り部講話は、語り部さんから震災当日とその前後の生々しい様子を直接お聞きすることで、震災に対する認識を深め、いのちの大切さを実感し、今後起こりうる災害にいかに備えるかを考える貴重な時間となりました。
その後、東京電力福島原発事故の対応拠点となり4月に営業を全面再開した「ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジ」の施設を見学し、施設内のレストランで昼食をとりました。昼食後は、「特定廃棄物埋め立て情報館リプルンふくしま」(2018年8月24日オープン)にて放射性物質に汚染されたごみの埋め立て処分について、「東京電力廃炉資料館」(2018年11月30日オープン)では福島原発事故の事実と廃炉事業の現状等、反省・教訓について学びました。
さらに、福島第一原子力発電所から南西7 kmに位置し、現在も帰還困難区域に指定され立ち入り禁止になっている夜ノ森地区付近をバス内から見学し、地区内で避難指示が解除された一部の区域ではバスから降り、見事な桜並木として有名であった場所や現在は誰も住んでいない住宅地の様子、設置されている放射線量モニタリングポスト等を確認しました。
その後、ガイドと震災語り部さんの下車後、帰路につき、渋谷駅近辺にて解散しました。
参加した学生からは以下の感想が得られ、震災復興に対して東工大生として貢献できることを考えるきっかけを提供しました。
「東京にいては知り得ない震災復興の状況を学べた」
「語り部さんのお話を聞きながら、復興過程の情景を眺めていたら涙が浮かんだ」
「自分の専門を活かせることはないかと考える契機となった」
東工大学生ボランティアグループ(東工大VG)とは
東工大VGは、学生支援センター自律支援部門の支援を受け、学内外でのボランティア活動の企画・運営を行っています。2011年3月11日の東日本大震災の復興支援のために被災地に赴いて活動していた学生有志を中心に、同じ志を持つ者同士が声を掛け合い、東工大VGの種が芽生えました。その後、同年9月から始まった「東京工業大学写真洗浄プロジェクト」への参加を通じてキャンパス内におけるボランティアの機運が高まり、様々な活動を企画・実施する今日の姿へと結実しました。現在は、2018年8月より新たに始めた「こども食堂」の活動に力を入れています。「誰かのために、社会のために東工大生としてできることはないか?」、「新しいことに挑戦したい」などの思いを抱く学生が活動しています。