6月10日から6月14日にかけて、第2回インペリアル・カレッジ・ロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム(Imperial-Tokyo Tech Global Fellows Programme 2019) を実施しました。
本プログラムは、東工大と英国インペリアル・カレッジ・ロンドン(以下、インペリアル)が共同で2018年に立ち上げた合宿トレーニング型国際交流プログラムであり、専門分野や国籍の垣根を超えたコミュニケーション力の醸成やリーダシップの育成、若手研究者のネットワーク構築等を目的としています。第2回となる今回は、国際連合が提言する「持続可能な開発目標SDGs」の一つである「Climate Action(気候変動に具体的な対策を)」をテーマに、2012年ロンドンオリンピックで自転車競技の会場となったLee Valley Velopark(リー・バレー・ヴェロパーク)で行われ、本学とインペリアルから20名ずつ、計40名の選抜された博士後期課程学生が集いました。この5日間のプログラムで、参加者はテーマに関する講義聴講や専門家との意見交換、関連施設見学等を通じて気候変動に関する理解を深めました。最終日には気候変動に立ち向かう研究プロジェクトを各チームが一つずつ提案し、異なるバックグラウンドを持つ者同士がチームとして協働することの楽しさや難しさを見出した充実した5日間となりました。
なお、本学においては、教育・国際連携本部 教育推進部門に設置されたワーキンググループから主査の井村順一副学長(教育運営担当)の他に、猪原健弘教授、金子宏直准教授、小泉勇人准教授(いずれもリベラルアーツ研究教育院)、北島江里子事務職員(留学生交流課)が参画し、博士文系教養科目「グローバルキャンプ」としてプログラムを実施しました。
1日目:気候変動を学ぶ
インペリアルと東工大からの参加学生40名と担当教職員がロンドンのLee Valley Velopark(リー・バレー・ヴェロパーク)に一同に会し、いよいよプログラムが始まりました。初対面の緊張感が漂うのも束の間、アイスブレーキングが行われ、すぐに会場の空気が温まりました。その後、参加者は専門分野や国籍などの多様性を考慮して編成された8名×5チームに分けられました。このメンバーが5日間を共に過ごし、気候変動の問題解決につなげる議論を進めていく仲間ということになります。
午後から早速、今回のテーマである気候変動について学びました。イギリス気象庁(Met Office)の對馬洋子博士やインペリアルの教員など、その分野の第一線で研究を行う専門家5名からレクチャーを受けました。温室効果ガス、水循環、太陽光等再生可能エネルギー、気候変動と感染症、エネルギーシステムなど異なる分野の研究者の話を聞き、気候変動の現状や取り組まれている研究、それらの課題等について多方面の知識を吸収する貴重な機会となりました。
また、金子准教授考案のカードゲームを全員でプレイしました。学生達は気候変動についてのファクトを調べ、それを基に質問と回答の2種類のカードを作り、神経衰弱の要領でゲームを楽しみました。
2日目:チーム力強化
午前中は5つの課題をチームでクリアしていくゲーム型のアクティビティーが行われました。いずれもコミュニケーション力やチーム内で協力しあえる雰囲気ができているかがカギとなります。猪原教授考案の研究倫理について正しく理解するアクティビティーもその中の一つでした。参加者達は頭を悩ませながらも互いに声を掛け合って課題に取り組み、終了後にはチームとしての一体感が飛躍的に高まったようでした。昼食後はロンドンの郊外にあるThe Crystal(ザ・クリスタル)というSiemens(シーメンス)の展示施設を見学しました。ここでは、環境にやさしい持続可能な未来型社会の実現に向けて、水や電気、エネルギー、住宅、交通インフラ等について各国の都市の状況やその比較、シミュレーション等を交えて学びました。
3日目:分野横断的なイノベーション
インペリアルで最も新しいキャンパスであるWhite City(ホワイト・シティ)を訪問しました。本キャンパスは、世界規模の最先端研究を行い、その成果をビジネス化して社会に還元していくことをミッションに掲げています。この日のスピーカーの一人は、寄生虫に着目して途上国の人々の健康を守る「Capta(キャプタ)」というスタートアップ企業の創業者でした。彼は2018年度に東京で実施された第1回プログラムに参加した学生であり、当時のプログラムテーマであった「貧困撲滅」のチームプロジェクトにアイデアの着想を得て、同じく参加していた別の学生と共同で研究を進め、起業に至ったそうです。そのような好事例を参考にしつつ、各チームは気候変動の問題に取り組むにはどのようなアプローチが有効であるかアイデアを出し合いました。
4日目:プロジェクトの集中検討
いよいよグループプロジェクトに本格的に取り掛かります。前日に引き続きグループでブレインストーミングを行い、ディスカッションを重ねて、チームで一つのプロジェクトを組み立てます。多様性豊かなチームメンバーからは様々な意見が飛び交い、時には議論が白熱して一つのプロジェクトに絞り込むのに苦労している様子も見られましたが、皆が根気強くメンバーの意見に耳を傾け、各々がチームに貢献しようとする姿勢を見せていました。夕方には各チームが考えたプロジェクトについて概要を発表するエレベーターピッチが行われました。それに対して、「どのように地域の人々を巻き込むのか」、「想定されるコストはどの程度か」等、他のチームから次々に質問やコメントを投げかけられ、それをヒントにプロジェクトを更に練って発展させていきました。
5日目: プロジェクト発表
プログラムの集大成となるプロジェクト発表が行われました。チーム内で作業分担しながらカラーペンと紙だけで発表用ポスターにまとめ上げ、発表に臨みます。井村副学長とインペリアルの教員2名が審査員を務めました。各チームのオリジナリティー溢れるプロジェクト内容から、参加学生達が真剣に気候変動の問題解決に向け議論した痕跡が見えるようでした。全チームの発表が終わると、審査員から特に素晴らしかったチームが1位から3位まで発表され、インペリアルのSue Gibson(スー・ギブソン)大学院長より参加者に修了証書が授与されました。
なお、最終日のこの日は、在英国日本国大使館一等書記官の小川浩司氏(科学技術担当)及び佐野壽則氏(教育スポーツ担当)、日本学術振興会ロンドン研究連絡センター職員を招待し、プログラムを観覧いただきました。
各日のフリータイムには、両大学の学生が連れ立って食事に行くなど、プログラム外でも交流は続きました。ここで築かれた学生たちのネットワークが未来の更なる研究交流を生むことを願ってプログラムは幕を閉じました。
なお、東工大生6名はプログラム終了後引き続き3~4週間インペリアルの研究室に滞在し、受入教員の指導のもと実地調査や研究を行いました。
- 第1回インペリアル・カレッジ・ロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム (Imperial-Tokyo Tech Global Fellows Programme 2018)を実施|東工大ニュース
- Imperial-Tokyo Tech Global Fellows Programme | Study | Imperial College London
- 持続可能な開発目標 | 国連開発計画(UNDP)
- 文系教養科目|教育|リベラルアーツ研究教育院(ILA)