東京工業大学 理学院 化学系の腰原伸也教授が2019年度の第39回島津賞を受賞したと12月10日、島津科学技術振興財団が発表しました。同財団によると、島津賞は「科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究および応用・実用化研究において、著しい成果をあげた功労者」を表彰する賞です。株式会社島津製作所が拠出した基金により設立された公益財団法人・島津科学技術振興財団が1981年度から毎年、表彰しています。受賞者は、推薦を依頼した学会から推薦のあった候補者を財団が設置する選考委員会が選考し、財団理事会が決定します。授賞式は、2020年2月19日(水)に行われます。
受賞テーマ
超短パルスレーザー光と放射光を用いた動的構造解析法の開拓と光誘起相転移の研究
受賞理由
放射光とフェムト秒パルスレーザーを組み合わせた専用測定装置を、動作原理を含めその初期段階から開発・活用し、光で物質の性質を超高速かつ劇的に変化させる「光誘起相転移現象」という従来の概念を突破する研究分野を世界に先駆けて開拓した。これにより超高速での情報処理や、高効率なエネルギー利用、さらには情報処理の(量子)過程制御が可能な材料開発への新しい道を切り拓いたことを高く評価した。
今回の受賞について腰原伸也教授は次のようにコメントしています。
測定科学、物質科学の両面で評価を頂く形で、大変重要な賞をいただき、光栄に感じると同時に、いままでの研究を支えていただいた多くの関係者、特に本学の学生さんたちも含む若手の皆さんに心からお礼を申し上げたいと思います。今日まで、周囲の方々ともっぱら基礎研究にまい進しておりましたので、このような高い評価をいただいたことに驚き、また今後の研究展開への責任も感じております。動的構造解析の手法も、放射光に加えて自由電子レーザー、超短パルス電子線も加わり大きな変貌を遂げつつあります。さらにレーザーもテラヘルツ領域までの高強度光の登場など新たな段階を迎えております。今回の受賞を、物質科学と測定科学の新たな出会いのきっかけとするべく、今後も「新しい世界の海図なき航海」に励んでゆきたいと思います。
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