東京工業大学 物質・情報卓越教育院(TAC-MI)は、12月2日~6日まで「ヒルトン小田原リゾート&スパ」(神奈川県小田原市)で、ビジネスモデル討論合宿・国際フォーラム(TAC-MI 1st International Forum)を開催しました。
この討論合宿・国際フォーラムは、海外から参加した学生とグループ活動を行い、自分自身の知識・経験から気づいた課題について、未来社会での解決策を考えることで、俯瞰力・リーダーシップ力を鍛えるものです。また、海外アドバイザー教員や企業関係者、本学プログラム担当教員を前に英語での研究発表を行うことで、国際コミュニケーション力の向上を図ることを目的として、毎年1回開催するイベントです。
今年度は、本教育院の博士後期課程の学生は全員参加、修士課程の学生は任意の参加として、合計26名の学生が参加しました。また、物質・情報卓越教育院の海外プログラム担当者(海外アドバイザー教員)が指導する博士課程学生8名が海外から参加しました。12月4日からは本プログラムの連携企業関係者や本学プログラム担当教員、海外アドバイザー教員など約60名がグループワークの最終発表会及び国際フォーラムに参加しました。
1日目午前 出発式
1日目の12月2日、東京工業大学大岡山キャンパス西9号館で、出発式を行いました。前半は、山口猛央教育院長からの開会の挨拶に続き、本教育院のプログラム担当教員である環境・社会理工学院の西條美紀教授よりグループワークのガイダンスがありました。また、グループワークのメンバー発表があり、これから5日間を共に過ごすグループの仲間たちと自己紹介を行いました。出発式後半には、環境・社会理工学院の室町泰徳准教授が、グループワークのテーマに関連する話題として「未来のモビリティサービス」(Mobility Service in the Future)について講演しました。
1日目午後 サイトビジット
1日目の午後は、株式会社東芝の研究開発センター(神奈川県川崎市)及び日産自動車株式会社の先進技術開発センター(神奈川県厚木市)を訪問しました。東芝ではCO2削減、太陽電池を含むエネルギー及び社会インフラへの幅広い取り組み、自律型産業用ロボット開発の説明を受けました。日産自動車では、将来モビリティと車両電動化への総合研究所の取り組みについて俯瞰的な視野から説明がありました。学生たちにとっては、普段の研究から離れ、翌日からのビジネスモデル討論へのマインドセットになりました。
2日目・3日目 ビジネスモデル討論
2日目の12月3日と3日目の4日はビジネスモデル討論のグループワークを行いました。このグループワークは、これまでの研究経験を生かしつつ、リーダーシップを発揮して、社会課題の解決につながるビジネスを生み出すために、複合的で俯瞰力のある視野を持った人材を育成することを目的に実施されました。2日間のグループワークでは「未来のシェアリングエコノミーと物質・情報科学」 “Future sharing economy & materials and information science”をテーマに設定しました。6グループに分かれ、各グループは実在する社会課題に対し、理解を深め、異分野、異文化の知識を組み合わせ、持続可能な解決策を練り、成果を発表しました。
12月3日は、まず、社会課題のブレインストーミングから、身近にいる課題を持った人について考え、課題をグループ内で共有しました。そして、課題を持つ人の真の痛みを取り除くにはどのような未来が理想的なのかを考え、ポスターを制作し、解決策を提案しました。
12月4日は、西條教授及びファシリテーターとグループごとに面談を行い、最終プレゼンテーションに向けて、アドバイスを受けました。
最後に、本プログラムの連携企業関係者や本学プログラム担当者、海外アドバイザー教員など約60名の前で最終発表を行いました。
審査員による審査の結果、全6グループのプレゼンテーションの中で、最も素晴らしい提案を行ったグループにはベストソリューション賞(大賞)(Best Solution Award(Grand Winner))が、また最もチームワークを発揮したプレゼンテーションを行ったグループにはベストチームワーク賞(Best Teamwork Award)が、そして最もプレゼンテーション力があるプレゼンターにはベストプレゼンター賞(Best Presenter Award」が贈られました
4日目午前 国際フォーラム~海外アドバイザー教員による講演~
4日目の12月5日午前は、海外アドバイザー教員を招き講演会を開催し、先生方が率いるチームの研究成果を紹介しました。
本教育院では、海外アドバイザー教員との面談により自身の強み弱みを把握することを目的とした海外メンター制度があります。今回の国際フォーラムでは、5名の海外アドバイザー教員が参加し、12月4日及び6日の昼食の時間を利用し、物質・情報卓越教育院学生と海外アドバイザー教員との面談を行いました。面談の中で、研究発表を行った博士後期課程の学生に対して、海外アドバイザー教員からアドバイスと励ましの言葉がありました。
講演者 |
講演テーマ |
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J. M. ファン・ルイテンベーグ教授 ライデン大学(オランダ) |
単一分子電子輸送の進歩と挑戦 Advances and challenges in single-molecule electron transport(スカイプ講演) |
ハンツーユーゲン・ブット教授 マックス・プランク研究所(ドイツ) |
接触角ヒステリシスの低い材料をめざして Materials for low contact angle hysteresis |
ピーター・グルッター教授 マギル大学(カナダ) |
原子間力顕微鏡によって得られるエネルギー持続可能性のための材料の超高速時間分解能およびナノメートル空間分解能 Ultrafast time and nm spatial resolution of materials for energy sustainability by atomic force microscopy |
セルゲイ・カザリアン教授 インペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス) |
ポリマー、生体材料、動的システムへの分光イメージングの新たな応用 Emerging applications of spectroscopic imaging to polymers, biomaterials and dynamic systems |
クリストファー・ケンパー・オーバー教授 コーネル大学(アメリカ) |
液晶材料中のイオン電子伝導性の計算・実験に基づく研究 Ionic-electronic conductivity in liquid crystalline materials– A computational /experimental study |
謝続明教授 清華大学(中国) |
マルチボンドネットワーク(MBN)手法によって作成された超強靭なハイドロゲル Super tough hydrogels created by Multi-bond Network (MBN) strategy |
クリステル・ラベルティー・ロバート教授 ソルボンヌ大学(フランス) |
バッテリーとその展望 Battery and perspective(スカイプ講演) |
4日目午後・5日目午前 国際フォーラム ~学生による研究発表~
12月5日午後と、最終日の12月6日午前は、博士後期課程1年の物質・情報卓越教育院学生10名及び海外より参加した博士学生8名が、英語による研究発表を行いました。
発表及び質疑応答の内容は、本学及び企業のプログラム担当者が、1.専門・基礎知識、2.リーダーシップ力(プレゼンテーション力、コミュニケーション力)、3.課題解決力、4.知のプロフェッショナルとしての資質、の4つの観点より評価し、ポイントが高い学生に表彰を行います。また、この研究発表は本教育課程の関門の一つである「博士論文研究基礎力審査(Qualifying Examination)」の一部も兼ねているため、学生は緊張の面持ちの中、自身のこれまでの研究の意義と成果についてのプレゼンテーションを熱心に行い、発表後には活発な質疑応答が行われました。
12月6日15時より行われた閉会式では、学生発表の評価で最もポイントの高かった物質・情報卓越教育院学生及び海外学生、各1名にベストプレゼンテーション賞(Best Presentation Award)が贈られました。
企業メンターとの面談
国際フォーラム期間中、物質・情報卓越教育院学生と企業メンターとの面談も行われました。本教育院では1人の学生に対して、1人の企業メンターがつき、教育院登録当初から修了まで継続的に見守っていきます。学生は面談を通して、自身の強み弱みを把握するだけでなく、研究や発表、キャリアパスなど様々なアドバイスを受けました。
5日間を振り返って
5日間の合宿・国際フォーラムで、物質・情報卓越教育院の学生はグループワークをはじめ、食事の時間やフリータイムの時間を使い、海外学生との交流を深めました。また、学生だけでなく、参加した本学教員や海外アドバイザー教員、企業関係者など参加者全員が交流を深める良い機会となりました。新たな産学協創教育を進めていく上で、貴重な経験となりました。
物質・情報卓越教育院
物質・情報卓越教育院(TAC-MI)は、本学から申請した2018年度卓越大学院プログラム『「物質×情報=複素人材」育成を通じた持続可能社会の創造』が文部科学省に採択されたことにより、2019年1月に設立されました。
複眼的・俯瞰的視点から発想し、新社会サービスを見据え、情報科学を駆使して独創的な物質・情報研究を進める「複素人材」を産業界とともに育成します。