東京工業大学 物質・情報卓越教育院(TAC-MI)は、12月8日と9日の2日間、2020年度の未来社会サービス創出ワークショップをオンラインで開催しました。
未来社会サービス創出ワークショップは、俯瞰力・リーダーシップ力を涵養することを目的として、毎年1回開催しています。物質・情報卓越教育院の大学院生が海外の学生あるいは企業の若手社員とともにグループを編成し、それぞれの研究、業務における知識・経験等を生かしながら、未来社会における課題を設定し、その解決策を討論・提案します。
社会の「分断」を助長しない未来社会
今年度の未来社会サービス創出ワークショップには、本教育院の博士後期課程1年の学生19名と企業の若手研究者6名、合計25名が参加しました。
今回のワークショップでは「物質・情報を活用した新しい価値の創造により、社会の『分断』を助長しない10年後の未来社会を構想しよう!」をテーマに設定しました。「分断」とは、医療や教育の機会における格差、価値観や文化、人種の隔たり、高齢者や障害者の疎外、ジェンダーに起因する不均等や疎外などの社会的課題を意味します。
グラフィックレコーダーがイラストで議論のまとめ
参加者は6グループに分かれ、自らの研究分野を活かして、実現したい10年後の未来社会を構想し、成果を発表しました。各グループに1名のグラフィックレコーダーが付き、話し合いの内容やアイディア構想をその場で分かりやすくイラストにまとめ、可視化しました。
1日目(12月8日)はまず、2日間のワークショップについての趣旨説明の後、チーム内で自己紹介を行いました。続いて、特別講演として、研究開発型ベンチャー企業でもあるRed Dot Drone PTE.LTD. (レッド・ドット・ドローン)代表の平川彰氏が、ドローンの遠隔操作技術開発により創成したビジネス事例を紹介しました。
その後、各グループがブレイクアウトルームに分かれてグループワークを行いました。分断についての検討を始めるにあたり、まず、東工大の未来社会DESIGN機構が開発した「未来シナリオカード」を参考に実現したい世界を想像し、その実現のために解消すべき「分断」について考えました。そして、各自の意見を出し合い、グループで解決に取り組む「分断」とは何かを選びました。課題を解決するため、グループメンバーの研究や専門性なども活かした方法が提案されました。1日目の最後には、グループごとに10年後までのロードマップとビジョンを発表し、教員やファシリテーターから意見を聞きました。
新規性賞、課題設定賞、社会的インパクト賞
2日目(12月9日)は、前日発表した10年後のビジョンについてさらに検討を重ね、最終プレゼンテーションに向けて準備を重ねました。
最後に、水本哲弥理事・副学長(教育担当)、本学教職員のほか、本プログラムの連携企業関係者、TAC-MIの博士後期課程2年や修士課程の学生など約100名が参加し、最終発表会を行いました。審査員による審査の結果、6グループそれぞれの実現したい未来や課題設定の中から、新規性賞、課題設定賞、社会的インパクト賞が贈られました。
受賞チーム
賞 |
グループ |
10年後のビジョン |
---|---|---|
新規性賞 |
グループ3 |
ダイレクトにイメージを脳から脳へ伝える 全ての人々の意思疎通が滞りなく行える |
課題設定賞 |
グループ6 |
資源循環を活性化するものづくり |
社会的インパクト賞 |
グループ4 |
人間の創造性を拡張させ楽しみ合う未来 |
実現したい10年後の未来社会
企業研究者と考えた未来
昨年度は「ビジネスモデル討論合宿」の名称で海外学生と一緒に行ったグループワークでしたが、今年度は企業で活躍する若手研究者と共に未来の社会サービスについて考えました。社会人が入ることで、企業目線での意見もアイディアに取り入れることができました。また、今回は各グループにグラフィックレコーダーが入りました。アイディア構想をすぐにイラストにまとめることで、イメージがさらに具体化し、アイディアがより膨らみました。オンライン開催という不便な状況でしたが、新しい要素を取り入れることで充実したグループワークとなりました。
「物質×情報=複素人材」を育成する卓越した博士教育
物質・情報卓越教育院(TAC-MI)は、本学から申請した2018年度卓越大学院プログラム「『物質×情報=複素人材』育成を通じた持続可能社会の創造」が文部科学省に採択されたことにより、2019年1月に設立されました。
本教育院では、複眼的・俯瞰的視点から発想し、新社会サービスを見据え、情報科学を駆使して独創的な物質・情報研究を進める「複素人材」を産業界とともに育成します。
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