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経団連と連携した大学院集中講義 7年目は富士通の協力で実施

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博士後期課程を対象 例のない取り組み

東京工業大学で大学院生のキャリア教育を担当するイノベーション人材養成機構(IIDP)は、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)との連携プログラムとして博士後期課程の学生を対象に集中講義「プロダクティブリーダー教育院(PLP)発展研修」を開講しています。

この講義は2014年度に始まり、毎年、経団連の会員企業が講義に協力しています。卒業後に企業での活躍を目指す博士後期課程学生がグループを作り、様々な課題を自ら設定します。そして、企業関係者のサポートを受けながら討議を重ね、具体的な発表を行うことが目標です。博士号を取得した人材が産業界で活躍することが求められている中で、経団連と大学とが緊密に協力して博士後期課程学生を対象とした講義を長期間継続しているのは、日本では他に例がなく、先駆的な取り組みとなっています。

7年目となる2020年度は、富士通株式会社の協力で「企業をめぐる環境変化に対応した新たなビジネス提案」を目的として実施しました。計3日間の講義を紹介します。

グループに分かれて討議する学生

グループに分かれて討議する学生

2020年度の講義 学生23名が5グループで提案

2020年度の「PLP発展研修」は、博士後期課程の学生23名(うち社会人学生12名)が参加し、12月9日、18日、1月9日の全3回で開講しました。12月9日と1月9日はオンラインで行い、12月18日は株式会社富士通研究所(神奈川県川崎市)を訪問し、若手の企業研究者と対面で話し合う機会もありました。講義のメインテーマは「製造業がサービス業への自己変革を求められる時代の既存大企業と研究所の在り方」です。学生は5つのグループに分かれて、富士通関係者の講義や議論を踏まえた、新鮮で具体的なビジネス提案をすべく取り組みました。

1日目(12月9日)

富士通の宮田一雄シニアフェローから、製造業を取り巻く環境変化に対応した自己変革の在り方や同社における新たな取り組みについて講義を受けました。学生は5グループに分かれ、グループごとに研究課題を設定しました。今回のグループワークでは、富士通研究所が開発した、仲間と知り合うためのアプリ「Buddyup!」(バディアップ)を全面的に活用し、メンバー設定やメンバー間での共同作業の円滑化、活発化を行いました。

2日目(12月18日)

学生は富士通研究所を訪問し、博士号を持つ富士通研究所の若手研究者と企業における研究開発について意見交換を行いました。さらに技術展示の視察と、2回目のグループワークを行い、設定した課題について検討を深めました。

富士通研究所展示室の見学

富士通研究所展示室の見学

グループワークの経過発表

グループワークの経過発表

3日目(1月9日)

最終日は、水本哲弥理事・副学長(教育担当)も出席し、3回目のグループワークを行い、結果の発表と質疑応答を行いました。各グループはそれぞれ、「Buddyup!アプリの機能向上とマネタイズ」「技術者のフリーランス化促進サービス」「既存のデバイスを活用した自動的な健康サービスプラットフォーム」「企業と研究者のマッチングサイト」「富士通の個人データシステムのビジネスとしての発展方策」をテーマとしてビジネス提案を行いました。

例えば、「既存のデバイスを活用した自動的な健康サービスプラットフォーム」では、テレワークでパソコンを用いて長時間仕事をする人を対象に、パソコンのカメラなどを活用して表情、まばたき、顔色、目線、声調などを計測し、データベースを元にメンタル状態を推定します。その上で、適切な休息、軽い運動、エクスサイズなどのメンタルコンディション向上に有効な解決策を提案するという、新型コロナウイルス感染拡大状況下でタイムリーなアイデアとなっていました。さらに、技術的な内容のみならず、類似ビジネスの分析をした上で、テレワークを行う企業へのシステム導入や、スポーツジムや宅配食事サービスといったソリューションサービス企業との連携を含めたビジネスモデルを提案しました。将来的に子供の学習状況管理への発展にも言及した包括的なビジネス提案がまとまりました。

それぞれの提案に対して、講師だけでなく富士通の関係者や、他グループの学生からも活発な質問・コメントが出されました。学生にとっては、さまざまなコメントに接し、多様な見方にふれることで視野を広げるだけでなく、企業の取り組み方や価値観などを学ぶ機会にもなりました。

グループ発表へのコメント

グループ発表に対する講評として、宮田フェローは「企業と大学との連携がいかに重要であるかを、今回の講義を通して改めて実感した。学生の皆さんは専門知識を生かして、より有効な産学連携を目指すきっかけとなる"つながり"を大切に育んでほしい」と述べました。また、出席した経団連SDGs本部の駒井永子副本部長は「異分野の領域へも踏み込めるディスカッションが可能となる機会を持てたことが大変良かった。さまざまな社会の危機感を実感していただくことで、今後のビジネス・研究の社会課題解決を念頭に実践に生かしてほしい」と話しました。水本理事・副学長は「様々なバックグラウンドを持つ博士学生が、真剣に課題に取り組んでいた。リアルになりつつある"社会課題"に目を向け、自らの研究がどのようなソリューションに発展できるのかを探り当てることに向き合った体験は、今後のビジネス社会に目を向ける大きなきっかけとなったのではないか」と評価しました。

学生の感想

受講した学生からも、「異分野のメンバーと議論を行うという、普段の研究活動では得られない貴重な経験ができて良かった」「研究者としてのキャリアパスを考えることに繋がり、非常に有意義だった」「多様なグループメンバーと本当に良い出会いのきっかけになった」といった感想が寄せられています。

研究所を訪問し、対面講義も実施

新型コロナウイルス感染拡大のため東工大はオンライン講義が主流となっていますが、今回は富士通および経団連の協力を得て、万全の感染対策をとった上で富士通研究所訪問と対面講義も実施しました。実際に顔を合わせたグループワークも行うことができ、学生たちは生き生きと意見を交わしました。

経団連との連携の成果

この経団連との連携による講義は、大学院教育への協力を通じて産業界が求める人材を育成したいという経団連の考えと、実践力を有する高度専門人材の育成に協力してほしいという大学の考えが一致したことから始まりました。回数を重ね内容を工夫していくなかで、今年度は企業の若手研究者と直接交流の機会を持ち、学生が企業を取り巻く環境変化に対応した具体的なビジネス提案を企業関係者に向けて行うことができました。大学だけでなく、企業側にとってもメリットのある取り組みとなる可能性が明らかになりました。そうした意味で、この講義は産業界と大学の双方にとってメリットのある、新たな産学連携モデルを教育面で実現する取り組みとして今後さらに発展していくことが期待されます。

東工大の博士後期課程学生向けキャリア教育

東工大のキャリア科目には、博士後期課程学生のキャリアプランに応じた能力を養成するものが多く用意されています。

大学や研究機関への就職を目指す学生はアカデミックリーダー教育院(ALP)を選択します。ALPは英語論文執筆・プレゼンや日本学術振興会特別研究員の申請書作成を行う実習科目、学術の位置づけやティーチングスキルを学ぶ実践科目、国内外の大学や研究機関で研修を行う科目等を提供しています。

また、企業での活躍を目指す学生はプロダクティブリーダー教育院(PLP)を選びます。PLPは企業で研究インターンシップを行い、研究開発活動を実体験する科目、グローバルに事業を展開する企業やベンチャー企業の方々から産業界の実態や研究開発の最先端を学ぶ科目等を提供しています。経団連との連携プログラムもPLPによる講義の一つです。

お問い合わせ先

イノベーション人材養成機構(IIDP)

E-mail : iidpinfo@jim.titech.ac.jp


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