東京工業大学大学院博士後期課程で研究しているインドネシアからの留学生3人のチームが、マイクロソフト社の世界的な学生IT開発競技大会「イマジン・カップ2021」に参加し、3月25日、オンラインで行われた世界ファイナル大会で日本の大学から唯一、世界ファイナリストに選ばれました。選ばれたのはアジ・レシンドラさん(Aji Resindra 工学院 システム制御系 博士後期課程3年)、ムハッマド・アル・アティキさん(Muhammad Al Atiqi 情報理工学院 情報工学系 博士後期課程3年)、ムハッマド・リドワン・アプリアンシャさん(Muhammad Ridwan Apriansyah 情報理工学院 情報工学系 博士後期課程1年)の3人です。(学年は開催時)
イマジン・カップ 世界200万人の学生が参加
イマジン・カップは、マイクロソフト社が2003年から毎年開催している、世界の学生がコンピュータ・プログラムやソフトウェアの開発を競う大会です。イマジン・カップのウェブサイトによると、2021年は100以上の国・地域から200万人以上の学生が参加し、地球、教育、保健、ライフスタイルの4部門に分かれて審査されました。
3人は「エージェント・オブ・チェンジ」というチームを結成し、学生がオンラインで学校のテストを受けるために使うプラットフォーム・アグノスティック(特定のプラットフォームに依存しない)型のチャットボット「Ujiyan(ウジヤン)」を開発しました。チームは教育部門で世界ファイナリスト8チーム(7か国)の一つに選ばれました。4部門あわせて世界ファイナリストに残ったのは計39チーム(17か国)です。
チームは開発を進めるあいだ、過去のイマジン・カップで優れた成績を収めた日本のチームやマイクロソフト・ジャパンなどイマジン・カップ・ジャパンの関係者から助言を受けました。また、この大会でMicrosoft Azure credit(マイクロソフト・アジュール・クレジット)を獲得できたので(※)、開発をさらに進めることができます。
- ※
- マイクロソフトのクラウドプラットフォームであるアジュールのサーバーやデータセンターのサービスを無償で一定の範囲で利用できる
Ujiyan(ウジヤン) 休校中でも学生がテストを受けられるチャットボットを開発
ウジヤンは、特定のプラットフォームに依存しない軽量のチャットボット(人工知能を用いた自動会話プログラム)で、インドネシア語で「テスト」の意味です。先生はウェブ・アプリを使ってオンラインで試験問題を出し、学生はメッセンジャー・アプリを通してテストを受けることができます。チーム「エージェント・オブ・チェンジ」の3人はインドネシアからの留学生です。新型コロナウイルス感染拡大により、母国の学校で休校が長引いたことから、ウジヤンの開発を考えました。インドネシアの多くの学生は、パソコンやインターネットへのアクセスが限られており、リモート学習に取り組むには、ワッツアップ(WhatsApp)のような簡単なテクノロジーしか使えません。休校中に、ウェブ環境が不利な学生でも問題なくテストを受けることができるように、ウジヤンは開発されました。ウジヤンのアプリはマイクロソフトのクラウドプラットフォームAzure(アジュール)やさまざまなメッセンジャー・アプリの機能がサポートします。学生が特定のメッセンジャー・アプリをインストールする必要はなく使いやすく設計されています。
「エージェント・オブ・チェンジ」メンバーの担当とコメント
- ムハッマド・アル・アティキさん ― 製品全体の設計
- ムハッマド・リドワン・アプリアンシャさん ― ウェブ・アプリの開発
- アジ・レシンドラさん ― メッセンジャー・アプリのチャットボット開発
私たちは、東工大のインドネシア人留学生団体の活動を通して知り合いました。このイマジン・カップに参加したのは、仲間の女子学生が学士課程在学中に地域コンテストで優勝したことに刺激を受けたためでした。協力してイノベーションを生み出すよう、東工大が後押しする学生団体の活動がなければ、このような機会はなかったでしょう。難関のコンテストでファイナリストに選ばれ、日本のイマジン・カップ関係者とのネットワークを作れたことに感謝します。コンテストは終わりましたが、私たちの活動は終わりません。さらにわくわくする作品にご期待ください。