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高大連携サマーチャレンジ2014 開催報告

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11年目の夏が来た

東京工業大学では、附属科学技術高校と連携し、大学レベルの講義を生徒に体験してもらって「未知の分野への挑戦から何かをつかみとる」というユニークな合宿「高大連携サマーチャレンジ」を、2004年度以来1年も欠かさずに継続しています。基礎学力はもちろんのこと、発想力・独創性・グループワーク力こそが、未来の科学技術をになう人材に必要と考え、高校生のうちからそうした力を涵養したいと意図してのことです。
11年目の今回は初めての試みとして、一般参加校の枠を設け、従来の連携先である東工大附属とお茶の水女子大学附属高校以外の高校に呼びかけ、5校から9名の生徒が参加しました。多様なバックグラウンドの生徒たちが集うことで現場はカオス化し、シナジー効果も発生し、サマーチャレンジ全体が大きくレベルアップしました。
生徒たちの期待に応えるべく、選りすぐりの講師陣も一世一代のコンテンツをぶつけて挑みます。そんな熱い3日間をレポートします。

実施記録

  • 日時
    2014年8月6日~8日
  • 場所
    神奈川県三浦郡葉山町 湘南国際村
    IPC生産性国際交流センター
  • 参加人数
    • 生徒
      55名
      (東工大附属 40名 お茶大附属 6名 一般参加校5 校 9名)
    • 教員
      42名
      (東工大教員 22名 引率高校教員 6校 12名 見学高校教員 7校 8名)
      事務職員 8名
    • 合計
      105名

チャレンジ1

コラムランド

大学院社会理工学研究科 社会工学専攻 山室 恭子 教授

事前に各自が執筆してきた短い文章を、匿名の状態でディスカッションして評価しあうという、東工大の名物講義をそのまま持ち込んで、初対面のメンバー同士のアイスブレイクとしました。
お題は「氷」。地球温暖化からかき氷の思い出まで、多様な作品を自由に議論することで、なだらかなテイク・オフをどの班も達成できたようです。

チャレンジ2

あ・い・う・え・おはよう !――コンピュータは人の声をどう聞いているのか ?

大学院情報理工学研究科 計算工学専攻 篠田 浩一 教授

二次元上のあいうえお

二次元上のあいうえお

各テーブルにマイクとパソコンを設置し、「そのマイクからコンピュータに話しかけてごらん。画面はどんなふうに反応するかな?」と指示を出すと、全10班が一斉に「あ・い・う・え・お」の大合唱。大きな声でも小さい囁きでも、渋い低音も女の子のソプラノも、似た模様を描くようです。音ごとの違いを「スペクトル」という概念で可視化すると、このように二次元空間に表現できるのです。実験から理論へ。段階を踏んで記号列と距離の概念を説明し、高校生達に計算してもらいました。この未知の記号列は、既知の「はい」と「いいえ」の記号列のどちらと距離が近いのでしょう。
「似ている」をどう数値化するかの方法論を知って、スマートフォンを見る目が変わりそうな音声認識チャレンジでした。

チャレンジ3, 4

珈琲メーカーに塩胡椒ミル ――キッチングッズを大解剖

大学院理工学研究科 材料工学専攻 篠崎 和夫 教授 、上田 光敏 准教授

分解対象のグッズ

分解対象のグッズ

初日の夜は毎年恒例の「身近なグッズを分解してみよう」というテーマのコンテンツです。白い覆いをはずすと、珈琲メーカー、塩胡椒ミル、そしてホッチキスが出現しました。キッチングッズ中心のセレクトです。珈琲メーカーは、カプセルをセットし、スイッチをオンにすれば、おいしい珈琲ができあがります。こんな小さなカプセルが、どうやったら本格珈琲に変身するのでしょう。レギュラーと抹茶ラテでカプセルの底の穴の形状が違っているのは、なぜでしょう。塩胡椒ミルは、右にひねると胡椒が、左にひねるとお塩がパラパラ出てきます。どのような構造になっているのでしょうか。
大騒ぎの夜も更けて、翌日は班単位での発表です。「そこ、見落としじゃないの ?」など、同じグッズを分解しているだけに、他班から厳しい質問の矢が浴びせられます。丁々発止の真剣勝負を終えて、達成感もひとしおでした。

チャレンジ5

グルメなヒドラくん ――3種のエサを食べさせてみよう

バイオ研究基盤支援総合センター 立花 和則 准教授

モニターでヒドラの様子を観察

モニターでヒドラの様子を観察

各テーブルにデジタル顕微鏡とモニター。シャーレに鎮座した主役はヒドラです。オレンジの胴体から触手がうねうね伸びています。限界まで絶食させてあるこのヒドラに、大好きなエビを食べさせてみましょう。エビは生タイプと抽出タイプと冷凍タイプ。ピペットで恐る恐るエビをあげると、顕微鏡の視野がカオスになります。ヒドラがエビを食べているのか、エビがヒドラを食べているのか、分かりません。
波立ちがおさまって観察してみると、ヒドラが太ったように見えます。生き物が生き物を食べる。その瞬間を真剣に見つめて「食べる」ことの意味を考えたヒドラ・チャレンジでした。

チャレンジ6

正20面体ができました ――生体材料で医学に貢献

大学院理工学研究科 材料工学専攻 生駒 俊之 准教授

カラフルなパーツ

カラフルなパーツ

次はパズルです。三角・四角・五角に六角、4種類の形のカラフルなパーツが各テーブルに配置されました。パチンパチンと組み合わせて正12面体か正20面体を作ってみましょう。できあがったら、回転軸が何本あるか数えてみます。三次元の認識に頭を慣らした後で結晶の話に、さらにそこからラングミュアの等温式へ進みます。ラングミュアの等温式とは、生体反応を解明して制御するための、大切な式です。では、このバラバラの実験データを式にどう整合させるか、式を変換してグラフを描いてみましょう。
手と頭の両方を動かしつつ、どんな材料を生成すれば人の体のなかで効果を発揮するのか、最先端の医療を体感させてくれるチャレンジでした。

チャレンジ7

アインシュタイン・マジック ――目で見る相対性理論

大学院理工学研究科 物性物理学専攻 田中 秀数 教授

手づくり装置で実演

手づくり装置で実演

ここに2本の平行導線があります。電流を同じ方向に流すと近づきます。逆向きに流すと反発します。何が起こっているのでしょう。光の速度は一定というアインシュタインの発見から、運動する物体の長さは短くなるというローレンツ収縮が導かれます。この考えに基づいて、導線1の動いている電子から導線2の止まっている陽イオンを見ると間隔が縮むので、正に帯電しているように見えるのです。
導線の動きが相対性理論で鮮やかに解明されてゆきます。憧れのスーパースターが身近な現象に舞い降りた瞬間です。夢がふくらむラスト・チャレンジでした。

高校教員の眼

一般参加校の引率の先生のほかに、新たに7校の高校教員に見学にお越しいただき、ミーティングや評価シートを通して、たくさんの有益な御意見をいただくことができました。

  • このようなアイスブレイクを初めて見ました。面白かったです。自分の文章を他人に議論されるという緊張感や恥ずかしさを乗り越えて、それぞれが自己開示できるのがよい。(コラムランド)
  • スタッフの先生方もわくわくされていたのが印象的。モノづくりの教育の場として、大人のこのような姿を生徒が見られるのはとても良い。(キッチングッズ大解剖)
  • 生徒が提出した用紙に、先生が一人ひとりコメントを書いてくださったことに、頭が下がりました。(グルメなヒドラくん)
  • 高校の物理が大学でどのようなものになるのか、その道筋が垣間見える講義で、生徒のモチベーションも上がった。(アインシュタイン・マジック)
  • すべてが素晴らしいほどシステムとして確立していて感心致しました。
会場風景

会場風景

全員で修了式

全員で修了式


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