東京工業大学が加盟しているASPIREリーグの年次総会である「ASPIREフォーラム2021」が、6月24日から30日まで土日を除く5日間の日程でオンラインで開かれ、東工大が議長校として主催しました。ASPIREリーグ※1は、アジア地域の理工系トップ5大学のコンソーシアムで、アジアにおけるイノベーションハブを形成することを目的に、2009年に東工大が主導し設立されました。フォーラムはASPIREリーグの定例会として、議長校が主催し、毎年開かれます。2019年、2020年に引き続き、2021年も本学がホストとして開催しました。
2019年までは主催大学に集まり、「学生ワークショップ」「シンポジウム」「副学長・シニアスタッフ会議」の3つのプログラムを行っていました。2020年は新型コロナウイルス感染症が拡大したため、オンラインで副学長・シニアスタッフ会議のみ開催しました。2021年は、引き続き海外渡航が難しいため、3つすべてのプログラムをオンラインで開催しました。フォーラムを通してのテーマは、コロナ禍を受けて「ニューノーマル時代におけるすべての人々のより良い暮らし(Better living for All in a New Normal)」としました。
「学生ワークショップ」にはASPIREリーグ加盟5大学および協力関係にある欧州のIDEAリーグ※2(5大学)のうち2大学の計7大学22名の学生が参加しました。シンポジウムはオンライン開催で参加者を拡大し、各加盟大学の学生教職員含め73名が聴衆として参加しました。副学長・シニアスタッフ会議には加盟5大学から21名の参加がありました。本学からは、学生ワークショップに参加した5名の学生を含め、57名が参加しました。
学生ワークショップ
学生ワークショップでは、テーマに関連した講義のあと、オンラインでのグループワークを行いました。ASPIREリーグの活動としては初のオンラインでのワークショップとなり、環境・社会理工学院 融合理工学系の因幡和晃准教授が昨年度のコロナ禍での授業の経験を生かし、オリエンテーションや途中で挟まれたフィードバックミーティング等で、学生たちが効果的なプレゼンテーションを作り上げるまで先導しました。
本学からは、以下の5名の学生が参加しました。
- イン・ツオ(Yin Tuo)さん(工学院 情報通信系 修士課程2年)
- ピニトジサムット・パット(Pinitjitsamut Pat)さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 修士課程1年)
- ジャン・ボウ(Zhang Bo)さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 修士課程2年)
- ミン・シエンウェイ(Ming Xianwen)さん(工学院 システム制御系 修士課程1年)
- ポン・シーチョン(Peng Shicheng)さん(物質理工学院 材料系 修士課程1年)
学生は所属大学を超えた混成の4つのグループに分かれ、事前に提示された以下の3つの命題から1つを選び、最終日の発表に向けて、活動に取り組みました。
命題A
5G以降のセルラネットワークが実現する超スマートなサービスや製品(例:スマートモビリティ、スマート農業など)を提案せよ
Propose super smart services and products (e.g. smart mobility, smart agriculture, etc.) realized by 5G and beyond.
命題B
子どもや高齢者の心身機能の変化に伴う事故を予防するサービスや装置を提案せよ
Propose services and devices to prevent accidents caused by changes in mental and physical functions of children or the elderly.
命題C
100人が月面上で1年間生活するために有効なバイオテクノロジーを基盤とするサービスや装置を提案せよ
Propose any biotechnology-based services and devices that you think we have to invent and develop in order for 100 people to live on the moon for a year.
ワークショップの最初に、工学院 電気電子系の阪口啓教授、工学院 機械系の西田佳史教授、生命理工学院 生命理工学系の相澤康則准教授によって、上記3つの命題に関連するレクチャーが行われました。講義の後は、オンラインのホワイトボードツール(Miro)とSlack、およびZoomミーティングを使ってグループごとに3日間議論を重ねました。本学の大学院生5名がティーチングアシスタントとして各グループに入り、議論の深化に一役買いました。
最終日には、命題に基づいた新しいサービス・製品の提案という形で、グループワークの成果をリーグ加盟大学の副学長、シニアスタッフに対し発表しました。そして5大学副学長の評価により、優秀グループ発表賞(Best Group Presentation Award)は命題Cで「月面での水の再利用システム」を提案したチーム「スーパー・サイファイ・ムーンウォーカーズ(Super Sci-fi Moonwalkers)」が受賞しました。
個人に贈られる優秀発表者賞(Best Presentation Award)は、清華大学のリー・イーコン(Li Yicong)さんとミラノ工科大学のリカルド・オルランド・ミエーレ(Riccardo Orlando Miele)さんの2名が受賞しました。
一度も互いに会ったことのない学生同士のオンラインワークショップで、しかもIDEAリーグ所属のヨーロッパからの参加者は時差を超えての参加でしたが、各グループとも力作のプレゼンテーションとなりました。
シンポジウム
6月28日には、各加盟大学の研究者がフォーラムのテーマに関連した技術や研究成果に関する講演を行いました。同シンポジウムは、例年はフォーラム参加者のみが参加していましたが、今回はフォーラム参加者に限らずリーグ加盟校に在籍する学生・教職員に公開しました。高田潤一副学長(国際連携担当)の司会で活発な質疑応答が行われました。
本学からは、環境・社会理工学院 融合理工学系の齋藤滋規教授が、「デザイン思考に基づくエンジニアリングデザイン教育(Engineering Design Education based on Design Thinking Approach)」というテーマで講演を行いました。ワークショップに取り組む学生たちに考え方の重要なカギを提供する講演となりました。
副学長・シニアスタッフ会議
6月29日午後には、各大学の副学長およびシニアスタッフが出席する「副学長・シニアスタッフ会議」が行われました。議長校である本学の水本哲弥理事・副学長(教育担当)の歓迎の挨拶に始まり、各加盟大学の副学長からニューノーマルの時代におけるそれぞれの大学の国際協力活動に関する情報共有、今後のリーグ活動についてのディスカッションが行われました。また、ASPIRE League Partnership Seed Fund(ASPIREリーグ加盟大学間共同研究のスタートアップ支援)の2021年開始分に応募のあった提案書の審査が行われました。
2022-2023年は韓国科学技術院(KAIST)が議長校となることが承認され、3年間にわたった本学の議長校としての役割が本年で一区切りとなりました。
コロナ禍においても、ASPIRE フォーラムの全ての活動をオンラインで実施することができ、新しい国際連携の形を見つけることができました。同時に、対面でしか味わうことのできない交流の必要性も再確認することとなりました。
今後も、学生向けの教育プログラム提供、加盟大学間の共同研究の支援や、互いの大学が取り組む課題についての情報交換の場の充実などのASPIREリーグの活動に本学は積極的に関わっていきます。
本学が発案し、2009年に設立された科学技術の発展と人材の開発を通してアジアにおけるイノベーションのハブを形成することを目的とした、アジア地域における理工系トップ大学のコンソーシアムです。加盟大学は、清華大学(中国)、香港科技大学(中国)、南洋理工大学(シンガポール)、韓国科学技術院(韓国)と東京工業大学の5大学。東工大は、設立当初より事務局を務めています。
デルフト工科大学(オランダ)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、アーヘン工科大学(ドイツ)、シャルマーズ工科大学(スウェーデン)、ミラノ工科大学(イタリア)のヨーロッパ理工系大学5大学で構成されたコンソーシアム。両リーグでは、2011年より各サマープログラムに学生の相互派遣を行っています。
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