東工大は、東急電鉄株式会社(以下、東急電鉄)ならびに阪急電鉄株式会社(以下、阪急電鉄)と協働し、列車内の混雑状況の可視化に関する実証実験を1月より実施します。
本実証実験は、東京工業大学環境・社会理工学院の辻本研究室が開発した「列車内の混雑度解析技術」(特許出願中)の精度を検証するもので、列車内の混雑情報を可視化してリアルタイムで提供することにより、混雑度が低い車両への乗車を促し、できるだけ混雑を避けたいという乗客のニーズに応えることを目指しています。
本実証実験の概要については以下の通りです。
本実証実験の概要
- 列車の乗客が持つスマートフォンのブルートゥース信号(※1)を、駅に設置した「混雑解析装置」で取得し、クラウド上のAIにて混雑状況を解析します。
- AIの解析精度を高めるため、駅のホーム上から「高速度カメラ(※2)」で撮影・測定した混雑状況なども組み合わせて、AIのチューニングを行います。
- ※1
-
・ブルートゥース信号は電波信号強度(RSSI)のみを測定・記録し、端末の特定につながる情報は含まれません。
・ブルートゥース信号を使って解析するため、気象条件に大きく影響されることがなく、安定的かつ精度が高い混雑状況の取得が可能となります。(ブルートゥースは、Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です) - ※2
- 高速度カメラは顔識別機能を有しておらず、解析後のデータには乗客個人の特定につながる情報は含まれません。さらに画像データは、東急電鉄と東工大間、阪急電鉄と東工大間でのみおのおの取り扱い、第三者がアクセスできない環境の下で、列車内の乗車人数の解析にのみ使用し、解析が完了した時点で速やかに削除します。
本実証実験は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が実施する支援事業、「SCORE」大学推進型(拠点都市環境整備型)に採択された、東工大を主幹とするイノベーションデザイン・プラットフォーム(IdP)内のGAPファンドの支援により実施されており、支援終了後は東工大発のベンチャーによる事業化を目指しています。
本実証実験の詳細
東急電鉄
(1)実施期間
2022年1月17日(月)~2022年2月28日(月)
(2)設置駅
田園都市線駒沢大学駅(東京都世田谷区) 上り(渋谷方面)ホーム
(3)設置台数
「混雑解析装置」「高速度カメラ」各1台
(4)活用検討
現在の状況
スマートフォン向けアプリ「東急線アプリ」の「列車走行位置」画面において、リアルタイム情報として混雑状況が配信されていますが、応荷重データがリアルタイムで取得可能な一部路線の東急電鉄所属の一部車両のみ(※)となっており、その他の画面、およびホームページにおいては過去データを分析したものが傾向値として配信されています。
- ※
- 現在は、「田園都市線」で応荷重データをリアルタイムで取得可能な一部車両のみ「リアルタイム混雑状況」が配信されています。
本実証実験による技術が確立した場合
- これまで対応できていなかった路線や相互直通運転を実施している他社所属車両の混雑状況もリアルタイム情報として配信できることになり、またこのデータを蓄積することで傾向値を定期的に更新することも可能になります。
- リアルタイム情報は、混雑した車両を避けたいというニーズ、また傾向値は、列車が混雑する時間帯や車両を事前に把握したいというニーズの双方にメリットがあり、より充実したサービスが提供できます。
(参考)現在の配信例と今後期待できること
リアルタイム情報
【現在の配信例】
【現在の配信例】
【技術が確立した場合】
- 東急線全線に拡大可能
- 相互直通先の他社を含む全車両に対応
傾向値
【現在の配信例】
【技術が確立した場合】
- リアルタイム情報が蓄積可能
- 状況に応じた定期的な更新が可能
阪急電鉄
(1)実施期間
2022年1月12日(水)~2022年3月31日(木)
(2)機器設置駅
- 神戸本線・中津駅(大阪市北区) 下り(神戸三宮方面行き)ホーム
- 神戸本線・十三駅(大阪市淀川区) 下り(神戸三宮方面行き)ホーム
(3)設置機器と台数
- 「混雑解析装置」…中津駅と十三駅に各1台
- 「高速度カメラ」…中津駅に1台
- 「混雑度表示サイネージ」…十三駅に2台
(4)実証実験の内容について
- 1.
- 中津駅に設置した「混雑解析装置」で、同駅を出発(または通過)する列車の混雑度を取得します。
- 2.
- 十三駅に設置した「混雑解析装置」で、同駅を出発する列車の混雑度を取得します。
- 3.
- 2月末~3月初旬頃、十三駅(神戸三宮方面行きホーム)に、「混雑度表示サイネージ」を設置し、中津駅を出発(または通過)し、十三駅に到着する列車の各車両別の混雑状況を案内します。
- 4.
- 十三駅に設置した「混雑解析装置」で得られる混雑度を「混雑度表示サイネージ」の設置前後で比較することにより、混雑情報が乗客の行動変容にどの程度結びついたかを分析するとともに、本実証実験を通じて当該技術の評価を行うこととします。
実証実験のイメージ
十三駅の混雑度表示サイネージの画面(イメージ)
- プレスリリース 東急電鉄ならびに阪急電鉄は、東京工業大学と協働して「列車内の混雑状況の可視化」に関する実証実験を実施します
- イノベーションデザイン・プラットフォーム(IdP)
- 東工大主幹の提案がJSTのSCORE大学推進型(拠点都市環境整備型)に採択|東工大ニュース
- 辻本将晴 Masaharu Tsujimoto|研究者検索システム 東京工業大学STARサーチ
- 辻本研究室
- 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 / イノベーション科学系
- 東急電鉄株式会社
- 阪急電鉄株式会社