東京工業大学工学院は、若手研究者や学生がエンジニアリング(E:Engineering)を活かした持続可能社会(S:Sustainable Society)の実現を目指す事業構想を競う第1回E×S Challenge(イー・バイ・エス・チャレンジ)の最終審査会のLAUNCH(ローンチ)コンテストを、12月11日に開催しました。
本チャレンジには、3分間の英語プレゼンテーションで競うPITCH(ピッチ)コンテスト(9月開催)、強制的グループ再編の上でアイデアと実現性の飛躍的進化を目指すSTORM(ストーム)を経て、最後に残った4グループが最終審査会LAUNCHに挑みました。コロナ禍でもオンラインルールを駆使して幅広く繋がり、持続可能社会の構築を目指そうという意欲のある若手エンジニアが、工学院内にとどまらず、他学院や他大学からも幅広く参加しました。特にSTORM期間は、株式会社野村総合研究所コンサルティング事業本部の若手中堅の戦略コンサルタントと共に事業構想を練り、潜在的な競合企業やクライアントと想定される実務家へのアイデアの壁打ちを繰り返し、実現可能で社会課題を解決する事業プランを目指しました。
LAUNCHコンテスト当日は、学内外から参加した100名近い視聴者を前に、各グループによる技術に裏付けられた力作ぞろいの事業構想プレゼンテーションが繰り広げられました。これに対し、実際に持続可能ビジネスで成功しているインド人起業家なども参加した国際的な審査委員会が審査を行いました。
その結果、工学院 電気電子系のキョウ・サンサン(Qing Shanshan)さん(修士課程2年)をリーダーとするKumoabi × Plasmaグループが優勝し、第1回工学院E×S Challenge Awardと開発資金として工学院教育基金より100万円が授与されました。Kumoabi × Plasmaのプランは、超音波とプラズマの2つの技術の組み合わせで日常生活のシャワー時の水量を劇的に削減する全く新しいシステムの製品化を構想するものです。
また、Micron財団からリケジョリーダーの最優秀グループに贈られるMicron LAUNCH Awardは、工学院 経営工学系の林可欣(リン・カシン)さん(修士課程1年)をリーダーとするSTEM AS ONEグループに贈呈され、開発資金30万円が授与されました。STEM AS ONEのプランは、全ての女子小中高生に理系女性のロールモデルを身近に感じてもらうオンライン空間の提案です。
これら受賞グループ以外も、海洋プラスチックごみを自動的に収集するロボットビジネスの提案、宇宙ゴミを収集し、エネルギー変換させる人工衛星ビジネスの提案など、東工大らしい新事業提案が発表され、審査委員は大変難しい判断を迫られました。
各グループはそれぞれのアイデアをこの審査会で終わらせることなく、今後は学内資源に加えて企業や投資家の支援も受けながら、実現に向けた進化を目指していきます。2022年の第2回工学院E×S Challengeは、さらに進化し工夫を凝らし、門戸を全学および海外にも広げて実施をするよう計画中です。実行委員会では、より多くの現役学生、またはこれから東工大の学部や大学院に入学する学生が、工学院E×S Challengeで自分のアイデアの持つ可能性にチャレンジをすることを期待しています。
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- 工学院E×S Challengeは工学院への寄付金(東京工業大学基金 工学院教育基金)による運営事業です。
優勝 工学院E×S Challenge Award受賞:Kumoabi × Plasmaグループ
リーダー:キョウ・サンサンさんのコメント
E×S Challengeに挑戦する機会に恵まれたことは、私たちにとって良い思い出になったと思います。自分たちの事業構想を考え、改善する過程で、メンターを始め実務家の方々から多くのことを学びました。ビジネスという視点で物事を考えるのは初めてでした。STORMを経て、自分たちのやりたいことの方向性が定まりました。メンターと討論や審査員からの指摘を受けながら、製品だけでなく、製品が起こす変化の全体にまで視野を広げて計画を練り上げました。「どうすればお客さまに受け入れてもらえるか」ではなく、「どうすれば現象を起こせるか」を考えるようになったのです。全員が一歩一歩自分の役割を果たし、それが結実して優勝を勝ち取れたと考えています。
Micron LAUNCH Award受賞:STEM AS ONEグループ
リーダー:林可欣さんのコメント
今回Micron Awardを頂き、大変嬉しく思います。
私たちはSTEM分野への女性参画を促進するために、ビジネスの面から何かできないか考えてまいりました。「社会にとって良い」というサステナビリティ的側面と、「収益を確保する」というビジネス的側面を両立させることに特に苦戦しましたが、野村総研のメンター皆様とのディスカッションや、審査員の方々からのご助言のおかげで、最後まで考え抜くことができました。LAUNCHまでの道のりは決して簡単ではありませんでした。しかし同年代の仲間とSDGsについて熱く議論し、その内容についてビジネスの専門家の方々も一緒になって考えてくださる。そのような経験は普段の大学生活では得難いものであり、大変刺激的な5ヵ月となりました。