東京工業大学学生支援センター未来人材育成部門は、未来人材応援プロジェクト「みらい創造チャレンジ」最終報告会を、5月25日、Taki Plaza(Hisao & Hiroko Taki Plaza:ヒサオ・アンド・ヒロコ・タキ・プラザ)地下2階のワークショップスペースにて開催しました。
このプロジェクトは、2021年4月に完成したTaki Plazaを拠点に、新たな活動に取り組む東工大生を応援するプロジェクトとして、学生支援センター未来人材育成部門と学務部学生支援課が、本学の同窓会組織である一般社団法人蔵前工業会と共催して立ち上げたものです。「想い・アイデア」を実現したい学生の「創造チャレンジ」「最初の小さな第一歩」を応援するために企画されました。
2021年8月に「みらい創造チャレンジ」の募集を開始し、9月に書類審査とプレゼン審査を行いました。38件の応募があり、最終的に5つのプロジェクトを採択し、支援金総額150万円を分配しました。
10月から活動を開始した採択プロジェクトは、基本的には学生自らが進め、関係教員が定期的にフォローアップを兼ねて報告相談会を行いました。
プロジェクトの成果を発表する最終報告会には、Taki Plaza建設と本プロジェクトの支援者であり、本学の卒業生である株式会社ぐるなび取締役会長の滝久雄氏をはじめ、株式会社ぐるなび、株式会社NKB、株式会社みらい創造機構、蔵前工業会、本学の研究・産学連携本部 知的財産部門からも出席者があり、各プロジェクトに対してコメントやアドバイスが寄せられ、全体での積極的な意見交換が行われました。
5つのプロジェクトの概要と学生コメント
「Tokyo Tech 人間スタンプラリー」
プロジェクト概要
このプロジェクトでは、クラスメートに話しかける「きっかけ」をもたらすwebアプリを作成しました。すべての参加者(対象は学士課程新1年生)が出身県など、それぞれ聞いてほしい質問を作成し、学校で同級生を見かけた時に話しかけ、質問をしあうというものです。質問に正解するとポイントを獲得しポイント数に応じて景品が獲得できます。
代表学生:鈴木泰雅さん(理学院 物理学系 学士課程2年)のコメント
最初は本当にこのようなアプリを作ることができるのか、と不安でしたが、教員の方々、そして協力をしてくれた仲間たちのおかげでwebアプリを完成させることができ、実際に学士課程新1年生に使ってもらうことができました。まだまだ改善が必要な点はありますが、今後、試行錯誤を繰り返しより使いやすく使っていて楽しい仕組みを構築していきたいです。
「カプセル家具」
プロジェクト概要
合成紙を動物型に折り作成した間接照明です。頭部にスマートスピーカーを装着できるので、鬱々とした気持ちや孤独感があれば紛らわせることができるインターフェースにもなります。家に誰かがいる、またはペットロボットがいるような物理的感覚を得るので、心理的に毎日の生活のストレスを解消する方法となります。
ヴォロディーミル・デレズニチェンコ(Volodymyr Dereznichenko)さん(環境・社会理工学院 建築学系 博士後期課程3年)のコメント
「みらい創造チャレンジ」のおかげで、自分のアイデアを具現化できる力と自信を得ることができ、採用されたことがとても嬉しいです。これからも取り組みを起業化することを目指し、自分なりに他の人の暮らしを快適にすることに貢献できるように努力していきたいと思います。
「ちょこっと彫刻〜あなたのそばにも切削を」
プロジェクト概要
工業と芸術の融合を目標に、工学的な面白さを持ったものに芸術の要素を取り入れることで、一般に受け入れられやすいモノづくりに取り組みました。具体的には、東工大の技術的貢献で日本のお家芸となった自動切削機械に着目し、それをいかに魅せるかを試行錯誤しました。完成した作品は自分たちの専門分野である機械工学という一側面からだけでなく、芸術的な観点からも評価を受けたいと考えており、日展などへの応募にもチャレンジする予定です。
代表学生:斎藤天丸さん(工学院 機械系 修士課程2年)のコメント
当初から広い視野で開発を進めたいと考えており、機械専攻の中でも数学が好きな尾﨑亮介(工学院 機械系 修士課程2年)、デザインが得意な木口皓介(工学院 機械系 修士課程2年)とともに、プロジェクトを進めてきました。経験上、専門性が高くなるほど広い視野を持つのは難しく、同じ感性を持ったメンバーだけではもっと独善的な作品になっていたかもしれません。今回のコンテストでは、多くの異分野の方と議論ができ、プロジェクトの新規性を活かしたロボコンの開催など面白いアイデアを頂き、視野を広げることができました。
「外国人学生と日本人学生が交流するためのアプリケーションの実装及び運用体制の構築」
プロジェクト概要
本プロジェクトでは、留学生と日本人学生が交流するための新たなツールとして、スマートフォン向けの1on1交流アプリTaki Connect(タキ・コネクト)の開発をしています。リアルタイムでTaki Plaza内に訪問している学生に限定することで、安心かつ気軽なコミュニケーション手段を提供することを目指しています。
関根史人さん(工学院 経営工学系 学士課程4年)のコメント
「みらい創造チャレンジ」では、金銭面におけるサポートだけでなく定期的なミーティングでの進捗報告会があり、その中でプロジェクトの方向性や進め方について綿密なサポートを受けることができました。本プロジェクトを通して得られた知見や経験を今後に活かしていきたいと考えております。
「東工大生が大岡山のまちをもっと知って、まちと大学を繋げる取材発信の取組み」
プロジェクト概要
このプロジェクトでは、大岡山について様々なテーマで取材発信を行いnoteで公開をしています。これまでのテーマは富士山の見え方、キャンパスの隠れスポット紹介、住民へのインタビューなどです。「おおお知るまちプロジェクト」では学生や住民に大岡山のまちを深く知ることで、生活が楽しくなることを目指しています。ぜひ一度ご覧ください。
おおお知るまちプロジェクト ― 大岡山・千束地区まちづくり協議会|note
代表学生:土屋泰樹さん(環境・社会理工学院 建築学系 博士後期課程3年)のコメント
私自身、学生としても住民としてもただ過ごしているだけではわからなかった大岡山のことに詳しくなることができました。また、住民へのインタビューや大岡山の歴史を調べる中で、私の専門の都市計画やまちづくりについても貴重な経験を積ませていただきました。支援していただき、ありがとうございました。
最終報告会参加者の声
- 一般向けのアイデアコンテストでは、社会課題の特定とその課題解決の手段の妥当性が評価される傾向にありますが、そのような基準に縛られずにこれまでになかったもの、使い道はこれから自由に考えることができるアイデアが多かったと思います。
- 分野を超えた発想を応援できる数少ない機会だと思います。今後とも自発的な活動や発明の応援を続けていただきたいです。
- アントレプレナーシップに通じる活動で、本学が今後強化しないといけないプロジェクトであると思いました。
- 東工大は起業する人が少ない。他の大学と比べても自分でも何か始めようとする人材が少ないので、自走のきっかけを与えてくれるこの支援・企画はこれからも規模を大きくして実施して欲しい。