6月26日、東京工業大学ライティングセンターは、センター所属の学生を主体として、「東工大生と医科歯科大生のための文章作成ワークショップ」をHisao & Hiroko Taki Plaza(ヒサオ・アンド・ヒロコ・タキ・プラザ)で開催しました。
2回目となる本ワークショップは、東京医科歯科大学からの参加も得てオンラインと対面のハイブリッドで開催され、所属を問わず多くの人が参加し、模擬セッションや実際の文章相談を通じて自身のライティングに関する悩みと向き合いました。
東工大ライティングセンターは、「自立した書き手を育てる」という理念のもとに設立され、文章作成にさまざまな悩みを抱える書き手と日々対話を重ねています。相談を受ける文章は授業課題から留学志望書、投稿論文など分野はさまざまですが、文章が目的としているものは自分の考えを伝えることであり、違いは一切ありません。本センターでは、アカデミック・ライティングの訓練を受けた学生相談員(チューター)が、書き手の思考プロセスに寄り添い、書き手自身が伝えたいことを文章化できるよう、適切な助言をしながら執筆支援を行っています。
今回の文章作成ワークショップは2部構成で行いました。第1部ではライティングセンターの概要説明のほか、学生チューターが書き手役とチューター役に分かれ、ロールプレイング形式で文章チュータリングがどのように行われるのかを実演しました。第2部では、参加者全員が即興で短い文章を作成し、その文章をチューターと共に改善していく行程を体験しました。
チューターとの個別セッションを受けている参加者が、膝を打って晴れやかな表情に変わる瞬間がありました。意識して人に伝わる文章を書くことがいかに難しいか、そして第三者、つまりチューターと対話しながら文章を練り上げていくことが、どれだけ困難の解消につながるのかを、セッションを受けた参加者は実感していました。
ライティングセンターでは、アカデミック・ライティングの技術が全ての人に対して開かれることを目指していて、今回のワークショップはそのための重要な一歩となりました。また文章作成に悩みを抱える人に、わずかながらでも解決方法を示唆することができたと思います。今後も同様のイベントを開催し、より多くの人が自身の考えを思うままに表現できるよう、活動を続けます。
ワークショップ運営者のコメント
小埜功貴さん(環境・社会理工学院 社会・人間科学系 博士後期課程3年)
「文章を書く」ことは、実は非常にハイレベルな作業です。伝達したい内容を盛り込んで文章を書くことを考えたときに、私たちは、規則(文法)などの非常に制約された条件のもとで意味や内容を表現していることがわかります。ただでさえ文章を書くのは大変なのに、文と文、段落と段落の間の意味が離れていた場合には「飛躍している」などとみなされ、そこに詰め込んだ意味は自分のなかで凍結してしまいます。自分が考えていることを文章にして表現する際にひとりよがりになってしまうと、相手に的確に伝えることを阻んでしまいます。このような、文章を書く上でついてまわる問題を解決するのがライティングセンターの役割です。
個別セッションでは、まだ文字になっていない自分の思いや考えなども含めてチューターと話すことで、一緒に言葉を探したり、文章と文章の間を埋める作業を行います。今回のイベントでは、ライティングセンターが提供する価値を参加者の方々に体験して頂けたのではないかと思っています。
ライティングセンターでは、文章作成のいかなる段階でも対応します。努力して書いた文章をきれいに磨きあげたい、そもそも文章が全然書けないなど、文章に関する相談や困りごとがある方は、ぜひライティングセンターを頼ってください。
小澤茉莉さん(環境・社会理工学院 社会・人間科学系 博士後期課程1年)
ライティングは、どの研究分野に進んだとしても避けては通れない、習得すべきスキルの1つです。そう聞くと身構えてしまうこともあるかもしれませんが、日々のライティングの積み重ねによって、わかりやすく、かつ自分らしい書き方を徐々に体得できると、私自身は感じています。
ライティングセンターでは、セッションを通して書き手の皆さんが自分の力で文章をブラッシュアップできるような機会を作っています。今回のイベントでは、実際にチューターによるデモンストレーションやミニセッションを行いましたが、真剣に取り組む受講生の方々の姿を見て、チューターの私自身も、今後もっと利用者の方にとって充実したセッションを行っていきたいという気持ちを強くしました。同時に、私自身ももっとライティングの経験を重ね、深遠なライティングの世界を探究していきたいと思います。
ライティングセンターでは、研究に関する文章から就職活動に至るまで、どんな文章でも受け付けています。多くの方々に当センターをご利用いただけたら幸いです。
森英寿さん(理学院 地球惑星科学系 修士課程2年)
ライティングと聞いて皆さんはどういったものを思い浮かべるでしょうか。もちろん精緻に組み立てられたロジックや、叙述的で美しい表現もライティングの1要素であることは間違いありません。しかし、これら全てに先立つのが、“自分の伝えたいことを他人に伝える”という目的の部分です。ですから書き手の「これを伝えたい」という主体性は何にもまして尊いものだと私たちは考えています。
私たちライティングセンターの仕事とは、書き手が何を伝えたいのかを見極め、それらを芯として文章を成形することにほかなりません。しかし、「自分が何を書きたいのか、実際のところよくわかっていない」「むしろ書けば書くほどわからなくなってくる」といったことが往々にしてあるのも事実です。私たちが「文章相談」と呼んでいるものは、誤解を恐れずに言うのなら、書き手の話を聞き、チューターがわからないところを質問していくだけの時間に過ぎません。本当に書きたいものは、「ああでもない、こうでもない」と手探りしていけば、いつの間にか明確な輪郭を伴って現れてきてくれます。
今回のイベントは、先に挙げたようなライティングセンターの思想を多くの方に知っていただき、わずかでもライティングセンター利用のハードルを下げることができたと考えています。
大学統合によって、私たちが置かれる状況は移り変わっていきますが、そういった中で私たちの活動が、ライティングという汎用的な技術の習得の一助に、そしてその価値について再考するきっかけになっていれば、このうえない幸せです。
内藤みのりさん(環境・社会理工学院 社会・人間科学系 修士課程2年)
ライティングセンターはポスターなどで宣伝を行っていますが、その活動についてイメージを持ちにくい方もいらっしゃるかと思います。そうした方々に向けて、ライティングセンターをより深く知っていただくためのイベントを無事に開催でき、大変うれしく思います。
ライティングセンターは単なる文章添削施設ではなく、対話を通じて書き手に気づきを促し、書き手が成長することを目指しています。普段の学生生活では文章そのものについて深く考える機会は少なく、また誰かと文章をより良くするために話し合う機会も限られています。
チューターとして、学生の皆さんが普段どのようなことを考え、文章にどのような悩みを抱えているのかを共有し、一緒にわかりやすい文章を考えることは、自分自身の学びにもつながり、非常に貴重な機会だと日々実感しています。
より良いセッションを提供できるよう、今後も努力を続けていきますので、ぜひお気軽にライティングセンターをご利用いただければと思います。最後に、今回のイベントに関わってくださったすべての方々に心からお礼申し上げます。
高橋亮太さん(環境・社会理工学院 社会・人間科学系 修士課程1年)
「アイデアが散漫になって困っている」、「文章の構成について今一度確認したい」、「相手に伝えたいことが的確に伝わるか不安」など、文章を書く上でさまざまな心配が脳裏をよぎることがありませんか。確かにわかりやすい文章を書くのは、時に難しい場合があります。ライティングセンターでは日々の活動だけでなく、イベントを行うことで、皆さんの文章を作成する能力向上のアシストに努めています。本イベントでは、皆さんの文章作成に関するモヤモヤや、釈然としない部分などをマンツーマンのセッションで明らかにし、さらに一歩進めて、わかりやすい文章作成につながるきっかけを作るための対話を行えたと思います。
今後もイベントなどを開催してライティングセンターの活動の透明化を進め、より多くの方に認知していただけるようにしていきます。そして、文章を書く皆さんが、ライティングセンターを必要としないほど、文章に胸を張っていただけるようになれば幸いです。
チョン・ホンファット(CHONG HONG FATT)さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 博士後期課程3年)
今回イベントは初参加ですが、来場者の皆さまがライティングセンターに興味を示してくださり本当にうれしい限りです。ぜひこれからもライティングセンターをご利用ください。多種多様な文章を読めることを楽しみにしています。
3年ほどチューターを務めさせていただきましたが、最近、利用者の立場で文章作成について相談する機会があり、改めてこの仕事の意義を認識できました。どんな分野でも文章作成において悩み苦しむときがありますが、チューターとしてその気持ちに共感し、セッションの終わりに書き手と作品とのわだかまりを解消することに、この仕事のやりがいを感じています。今後、より満足度の高いチュータリングを提供できるよう自分の文章力とコミュニケーション能力を高めたいと思います。
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