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文章指導の方法と実践―書く楽しさを伝える―

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リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会 第7回 開催報告

「東工大発、世界を見据えたリベラルアーツとはなにか。」多彩なゲストを迎え、さまざまな視点から考えていく全7回の講演会シリーズです。東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。この講演会シリーズは同研究教育院の発足に向け、準備を進めている同研究教育院ワーキンググループが、スーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しています。

このシリーズ講演会は主に東工大の大学院生、教職員を対象としていますが、今回の講演会は一般にも公開されました。

第7回
日時
3月17日(火)14:00~17:00
場所
西9号館コラボレーションルーム
タイトル
文章指導の方法と実践―書く楽しさを伝える―
講師
樋口裕一(多摩大学教授)
樋口裕一教授

樋口裕一教授

『頭がいい人、悪い人の話し方』、『ホンモノの文章力』、『やさしい文章術』、『文章力の鍛え方』などの多くの著書を執筆し、樋口式小論文メソッドを活用した文章作成の指導に多く実績があり、“小論文の神様”とも称される樋口裕一教授を講師に迎え、外国語研究教育センター長の山崎太郎教授の司会のもと、講演と小論文添削の実践および人に物事を頼むときの説得力のある文章の作成の実践が行われました。

講演では、文章力をつけることの大切さ、樋口式四部構成の型を用いた文章の書き方、文章の添削の仕方についての話題が提供されました。

「文章力の大切さ」では次の3点が強調されました。

  • 大学生および社会人は情報を受信しているだけではなく情報を発信し自分自身をアピールすることが重要であり、ヒトの心を動かしたり、事実をリアルに伝えたりするためには文章力がなければならないこと。
  • 文章を書くことは論理的な思考のパターンを練習することになり、社会的な視野を持つ必要があるため、情報の受信力も高めることができること。
  • 文章は自分が書きたいと思わなければ書けないため、自分の考えや意見を持つことができること。

「文章の書き方」では、作文と小論文の違い、樋口式四部構成の型について解説されました。体験や感想を書くことが作文であり、小論文では物事の是非、すなわちイエス・ノーの立場を示し、自分の意見や提案を示すことが大切であること。そのために、型を重視した文章の書き方が重要であること。例えば、フランス人の説得の方法は「理由は三つある」と必ず付けることや、ドラえもんの漫画、水戸黄門のドラマ、ミステリー小説は型があるので、何作も続きができることを説明しました。

それを踏まえ樋口式四部構成の型を用いた小論文の書き方が紹介されました。第1部(問題提起)はこれから述べようとする内容に主題を導く部分で、イエス・ノーの形にすること、第2部(意見提示)はイエス・ノーのどちらの立場を取るのかの方向を定め、問題となっている事柄の状況を正しく把握し、「確かに・・・。しかし・・・」というパターンを使って、反対意見を考慮した上で自分の意見を示すこと、第3部(展開)は第2部で示した自分の意見の根拠を示す部分であり、問題となっている事柄の背景、原因、歴史的経過、背後にある思想など深い部分まで掘り下げると説得力が増すこと。第4部(結論)はもう一度全体を整理し、イエスかノーかをはっきり述べる部分であることが示され、模範例を示しながら解説されました。

「添削の仕方」では、添削は書き直すための資料なので、悪いところは悪いとはっきり言い、どう書き直すべきなのかを示すことが大切であること。そのために、まず型を点検すること、事実誤認を点検すること、文体はいじらずに論理的な矛盾があるかないかを点検すること、主義や主張に対して議論はせずに、価値観は全て認めながら、読み手に対して説得できる根拠が示されているかを点検することの手続きが解説されました。

講演会の様子
講演会の様子

講演後には、小論文の悪い例が4編提供され、どこがよくないのかを指摘する添削を実践しました。問題提起ができているか、自分の意見を述べているか、社会的な視野が書けているか、問題提起と結論のつじつまが合っているかなどを点検することが強調されました。

最後に樋口先生が多摩大学で実践している文章力を高める講義の実例が紹介されました。そこでは、論理的な展開ができるようになること、志望理由書やエントリーシートなどで自分をアピールする文章が書けるようになること、事実をリアルに伝えられるようになること、ヒトに物事を依頼するときに必要な文章術(正論で攻める、おだてる、得することを示す、お涙頂戴、損することを示す、脅し、言質をとる)を活用した文書を作成させコミュニケーション力、交渉力、人間力を育てることなどが紹介されました。その実例の一端を体験するべく、友人に借金をお願いする文章を交渉が成立することを目指して書く実践も行われました。

講演会の締めくくりとして、司会の山崎教授が、樋口教授の著書『ホンモノの文章力』のあとがきに書かれている「文書の奥は深い。私は一冊を通じて、文章の書き方の基本を説明した。私に説明できるのは、ここまでだ。本書は、実は、文章という大山脈への道のほんの入口を書いたものにすぎない。果てには、『源氏物語』、『カラマーゾフの兄弟』、『失われたときを求めて』など巨大な尾根が待ち受けている。」を引用し、「だからこそ、文書を書くことの大切さがある」ことを強調して閉会となりました。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

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