2015年3月、東工大を拠点に活動をしている「東京工業大学 国際交流学生会SAGE」が、「第6回アジア理工系学生連携促進プログラム 6th ASCENT」を開催し、東京工業大学を含む4か国19人のアジア圏の学生が参加しました。
ASCENTの概要
アジア理工系学生連携促進プログラムASCENTは、Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technologyの略であり、東京工業大学 国際交流学生会SAGEに所属する学生が主体となって企画・運営される短期国際交流プログラムです。これまで毎年3月に東京で開催されており、東工大生の国際交流の促進、アジア圏の理工系学生間の持続的ネットワークの構築を目的としています。
毎年異なるテーマを元に、参加者はそれに関連した研究やビジネスを行っている企業、研究所、学内研究室の見学や基調講演を通して、近年東南アジア各国が抱える問題や、現地で適用されうる日本の技術を学び、グループディスカッション・最終報告会での成果報告を行います。各グループでは熱心に議論が行われ、一つの結論を共に創りあげる経験を通して、強固な学生間ネットワークが生まれます。また、学術的な活動を軸に据えながらも、文化交流会・日本文化研修などを通して異文化交流や学生間の交流を促進し、学習だけではない総合的な体験の場となることを目指しています。
6th ASCENTの開催
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今回の6th ASCENTは2015年3月13日~23日に行われ、「エネルギーの未来像 The Future Image of Energy」というテーマに沿って、日本や東南アジアの抱えるエネルギー問題に様々な視点からアプローチをしました。合計19人の参加者は、参加国の日本、インドネシア、フィリピン、タイを含めたアジア圏のエネルギー事情や抱える課題の分析から始まり、見学や講義を通して学んだことを課題の解決にどう適用できるか、グループディスカッション、発表を通して「アジアにおけるエネルギーの未来像」について提案を行いました。
スケジュール
- 3月13日到着日、歓迎会
- 3月14日開会式、事前学習報告会
- 3月15日基調講演(NEDO)、文化交流会
- 3月16日企業見学(ネオモルガン研究所)
- 3月17日企業見学(東芝 京浜事業所、東京ガス 横浜研究所)
- 3月18日特別講義
- 3月19日研究室見学(大岡山キャンパス、すずかけ台キャンパス)
- 3月20日中間発表会、ディスカッション
- 3月21日最終報告会
- 3月22日日本文化研修、送別会
- 3月23日出国日
参加大学
- 日本 東京工業大学
- インドネシア バンドン工科大学、インドネシア大学、ディポネゴロ大学
- フィリピン デラサール大学
- タイ チュラロンコーン大学
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研究室見学
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TSUBAME見学
基調講演・企業見学
今回のASCENTでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による基調講演、ネオモルガン研究所、東芝 京浜事務所、東京ガス 横浜研究所の企業見学が実施されました。日本の大企業や研究所による現在進行中のプロジェクトや展望に触れるだけでなく、各分野のエネルギー事情に精通している研究者・技術者との質疑応答、実際に研究で使われる機器や設備の見学をすることで、参加者が将来のエネルギーについて考える良い機会となったようです。
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基調講演・NEDO
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企業見学・東京ガス
特別講義
東工大のホープ トーマス エドウィン准教授による、魅力的で伝わりやすいプレゼンテーション技法の特別講義を行いました。参加者はプレゼンテーションの伝わりやすい構成や気を付けるべきこと、細かなテクニックなどに関する講義を受け、その技法を用いたプレゼンテーションの練習として「基調講演・企業見学で得たもの」というテーマの下、数グループに分かれて発表を行いました。座学では身につけられない体験型の学びの経験は、その後の中間発表会、最終報告会で活かされたようです。
プレゼンテーション特別講義
ディスカッション・中間発表会・最終報告会
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ディスカッションの様子
ASCENTでは、グループごとで行われるディスカッションの時間が設けられています。講演や見学を通して知識を得るだけでなく、参加者同士で議論を行うことで、体験を反芻して理解を深めることが狙いです。また、「アジアにおけるエネルギーの未来像」をテーマとした最終発表に向け、最終報告会の前日に中間発表会を行うことで、他のグループやSAGEメンバー、さらには教員から、建設的なフィードバックを得る貴重な機会になりました。これらの準備を行い迎えた最終報告会では、各グループに色のある魅力的な発表となりました。
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中間発表会
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最終報告会
最終報告会の後に開かれた懇親会では、ASCENT参加者に加え発表を見学に来た東工大生や、お世話になった企業の担当者と共に、最終発表での内容、日本との文化の違い、さらには各国のエネルギー問題に関する企業や政府の取り組みなど、自由に語らいながら、会食を楽しむ様子がうかがえました。
文化交流会・日本文化研修
文化交流会では、日本、インドネシア、フィリピン、タイの学生がそれぞれ用意した自国文化の発表を行いました。東工大生による「茶道」の体験会の企画や、海外学生による自国でよく知られている踊り、伝統的な文化の紹介など、互いに今まで体験することのなかった文化に触れました。最終報告会後には、参加者間の友好をさらに深めるために、日本文化研修として高尾山のハイキングが行われました。
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文化交流会
日本文化研修・高尾山
プログラム統括からの声
SAGE 石丸智貴(東京工業大学 修士課程2年)
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参加者との写真
ASCENTは、東工大の学生が東南アジアにて学習を行う短期海外派遣プログラムTokyo Tech-AYSEAS(当時JAYSES)に参加した学生が「日本で勉強できる同じようなプログラムがあればいいな」という現地の学生の声を聞き、SAGEを設立、プログラムの企画を行ったという経緯を持ちます。私自身もJAYSESに2012年度に参加させていただき、ぜひ日本で同じような機会をつくりたいという気持ちが強く、統括を務めさせていただきました。
今回は新たにフィリピンから学生が加わり、合計4カ国、6大学の学生により構成される参加者がAYSEAS同様に楽しく、かつ真剣にプログラムに取り組むことができたと感じています。プログラムが終了した現在でも、SNSなどを通じて参加学生、そして私たちSAGEの学生は交流を続けています。今後も、そして将来私たちが社会に出てからも、今回できた国際ネットワークが続くことを願っています。
7th ASCENTについて
次回ASCENTについて、ASEAN諸国のセメスター制度の変更に伴い、これまでの3月開催から夏開催に変更し、2016年夏の開催を計画しています。時事に基づいた次回のテーマや見学先企業などが今後決定されていきます。
また、ASCENTはアジア内の大学に属する学士・修士・博士課程の学生であれば、応募することが出来ます。プログラム詳細や応募方法などはSAGEのウェブサイトや各種SNS、メールマガジンを通して発信される予定です。ASCENTでの貴重な経験が、理工系学生間のネットワークを構築するだけでなく、今後の国際的な活動への最初の一歩となることを期待しています。