10月26日、大岡山キャンパス西5号館W531講義室レクチャーシアターで、講演会「地域内経済循環からひらく地域の未来~グローバル社会における地方創生戦略~」が開催されました。本学グローバルリーダー教育院※1の講義「人間力基礎第二」が、環境省第III期「環境経済の政策研究」※2の助成プロジェクト「低炭素・循環・自然共生の環境施策の実施による地域の経済・社会への効果の評価について」※3と共催しました。
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- グローバルリーダー教育院(AGL)は、国際的リーダー人材を養成する学位プログラムを実施する教育組織。本学全研究科と連携先である一橋大学より学生を募り、個々の専攻分野における深い専門知識をベースに、日本や世界における文化の理解と国際性、技術経営に関する知識、コミュニケーション能力、俯瞰力や行動力を備えた人材の育成を目的とする。
- ※2
- 環境省による事業。持続可能な社会の形成の基礎となる「環境と経済の調和」を目指した、経済と調和した環境政策の企画・立案に資する研究や、環境政策がもたらす経済・社会への影響・効果や両者の関係等に関する研究を実施。
- ※3
- 島根県中山間地域研究センター 藤山浩 研究統括監(島根県立大学連携大学院 教授)が代表研究者を務めている。
社会がますますグローバル化する一方で、地方創生の動きが全国各地で進むなか、多くの地域が直面しているのは、どのように定住人口と所得の増加を実現するかという課題です。そのためには、これまでの地域から大都市圏へのヒト・モノ・カネの一方的な流出を食い止め、地域内に持続性のある良い循環を生み出すこと、またその地域経済への効果を、地域の現場でも簡単に評価することのできる、ツールづくりが急務です。
本講演会では、こういったツールである地域内乗数3(LM3)※4の開発と地域の現場での普及にも携わってこられた、英国の独立系シンクタンク、ニュー・エコノミック・ファンデーション(NEF)のエリザベス・コックス氏をお招きしました。地方創生戦略としての地域内経済循環の活性化をテーマにした講演に、中央省庁、自治体、研究所、大学などから多数の参加者がありました。
- ※4
- 資金循環の最初の3回を対象として、政府支出・投資や地域事業主体の当初売り上げの地域内循環効果を測定する方法。
まず主催者挨拶として、島根県中山間地域研究センターの藤山氏より、今回の講演会の趣旨説明がありました。続いて、AGL佐藤院長より、理工系が占める東工大の学生にも、将来のグローバルリーダーとして、ぜひ大きな社会の問題に関心を持ち、課題解決に取り組んでもらいたい、という期待が述べられました。
NEFのエリザベス・コックス氏の講演では、気候変動や格差拡大など、様々な社会的福祉の低下を招いている現在の経済に代わる経済を構築しようとしている、NEFのミッションや取り組みについての紹介がありました。また、よりよい地域社会の構築へと導くために、お金を地域でより有効活用するための指標であるLM3の開発と、地域での活用事例についての紹介がありました。
続いて、島根県中山間地域研究センターの藤山浩氏も講演しました。環境政策を地域の経済・社会問題につなげていくことの重要性、またそのための戦略として、所得や人口を1%取り戻す可能性を踏まえ、LM3を日本でも適用していく今後の環境省プロジェクト研究の展望が述べられました。
パネルディスカッションでは、徳島県海陽町、福井県池田町の自治体職員も登壇し、地域のお金が地域内で循環していない現状の共有を行いました。地域内経済循環を進めていくことは、行き過ぎたグローバル化、均質化した社会に対し、資源の制約を踏まえ、バランスと多様性を取り戻すことであり、決してグローバル化や国際化に相反する概念ではないことが議論されました。講演内容をふまえ、日本でLM3のようなツールを適用する際の課題や、グローバル化を続ける社会において地域内経済循環を進めることの意義等についても議論が深められました。
本学学生からも本質を突いた鋭い意見や質問が出され、多様なバックグラウンドを持つ参加者が、社会の課題解決に向けて議論する重要性を認識する、良い機会になりました。
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