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サイクリング部サイクルサッカー班が全日本新人戦で優勝、全日本学生リーグでは第2位に

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東京工業大学サイクリング部 サイクルサッカー班が、日本室内自転車競技連盟が主催する2018年度全日本新人戦で優勝、翌日に行われた2018年度全日本学生リーグでは2位を獲得しました。

サイクルサッカーの2018年度全日本新人戦が10月20日、また2018年度全日本学生リーグが翌21日に、それぞれ立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、東工大サイクリング部 サイクルサッカー班が出場しました。

全日本新人戦後の集合写真

全日本新人戦後の集合写真

全日本新人戦

全日本新人戦は、競技歴2年目以内の選手のみが出場できる大会で2人1組でペアを組んで臨みます。優勝チームは、翌日に開催される全日本学生リーグ(大学対抗)への出場枠が大学単位で一つ与えられます。今回は会場校である立命館大学や大阪大学などから12チームが出場し、サイクルサッカー班の尼﨑大暉さん(環境・社会理工学院 建築学系 学士課程2年)と市橋啓太さん(環境・社会理工学院 建築学系 学士課程2年)のチームが優勝しました。

市橋さんのコメント

新人戦はいつも組んでいるペアで出場できなかったので、違う動きをすることが多く、大変なところもありましたが、楽しく練習し、そして優勝することができてとても嬉しいです。建築学系に所属し、課題に取り組みながら空いている時間を見つけ、自主練習をしてレベルアップに努めています。次は11月に行われる全日本学生選手権大会に向けて練習していきたいと思います。

全日本学生リーグ

サイクルサッカーは2人対2人で行うスポーツで個人競技色の強いものですが、本大会は大学対抗であり、大学ごとに登録された4人の選手たちが、対戦相手や自身の体力面を考えながら、出場する選手2人を決定します。各試合の戦略のみならず、全5試合の結果が最も良くなるようにこなしていく戦略が、全日本学生リーグの醍醐味です。

今回は6チームが参加する中、東工大は増田翔さん(工学院 システム制御系 学士課程3年)と池田賢さん(環境・社会理工学院 建築学系 学士課程3年)のチームで初戦に快勝し、勢いに乗りました。試合毎にチーム編成を変更し3連勝し、最終戦に勝てば優勝できるところまで進みました。しかし、池田さんと番場崇さん(環境・社会理工学院 建築学系 学士課程3年)がチームを組んで臨んだ最終戦の大阪経済大学戦は1対6と惨敗しました。自身のパワー、スピード、自転車を乗りこなす技術力の不足を感じ、日々の練習の質を上げていかなければと痛感しています。戦績は4勝1敗で2位となり、昨年の3位を上回る結果となりました。

池田さんのコメント

研究室や卒業論文で忙しくなる4年生になると、部活に行く時間が取れなくなるかもしれないのですが、学業の合間を縫って、自主練習などをするつもりです。次の大会は11月24日、25日に東工大大岡山キャンパスの体育館で、全日本学生選手権大会があります。良い成績を残せるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。興味のある方は体育館まで足を運んでいただき、サイクルサッカーというスポーツをご覧ください。

サイクルサッカーとは

サイクルサッカーは、2人1チームとなって自転車に乗って行うサッカーのようなスポーツで、体育館などで行われる室内自転車競技の一種です。競技には専用の自転車を使い、主に前輪を使ってドリブルやパス、シュートをします。ほとんど立ちこぎでプレーするため、自転車はハンドルが上を向き、ギアは固定ギアになっています。

使用するボールは表面が布製で直径は17~18 cm、重さは500~600 g。コートの広さは11m×14mで、試合は2人対2人で行います。試合時間は前半7分、後半7分の合計14分。試合中、選手は地面に足を着けてはいけません。サイクルサッカーは自転車を巧みに操りながら、ゴールを狙うスポーツです。日本ではほとんどの選手が大学から始めます。

東工大サイクリング部とは

東工大の公認サークルとして、東京工業大学、お茶の水女子大学、東京外国語大学の学生を中心に活動しています。主にツーリング班、サイクルサッカー班、レーサー班の3班に分かれて100名ほどが活動しています。今回メンバーが優勝したサイクルサッカー班には東工大生22名と東工大卒業生、他大生が所属し、東工大大岡山キャンパスの体育館で週2回練習しています。

全日本学生リーグ第3試合 東工大(赤と黄色のユニフォーム)が昨年度優勝校の大阪大学に勝利

全日本学生リーグ第3試合 東工大(赤と黄色のユニフォーム)が昨年度優勝校の大阪大学に勝利

全日本学生リーグの最終戦 大阪経済大学に健闘するも熱戦の末、敗退

全日本学生リーグの最終戦 大阪経済大学に健闘するも熱戦の末、敗退


伊賀健一元学長、パルバース名誉教授が2018年秋の叙勲で受賞

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2018年秋の叙勲において、伊賀健一名誉教授・元学長が教育研究の功労に対して瑞宝重光章を、ロジャー・パルバース名誉教授が日本における外国語教育の発展及び理系学生に対する科学技術の理解の促進に寄与したとして旭日中綬章を受章しました。

伊賀健一名誉教授・元学長

経歴

伊賀健一名誉教授・元学長

1963年本学理工学部電気工学課程卒業、1968年同大大学院博士課程修了(工学博士)。1968年本学精密工学研究所助手、1973年同助教授、1984年同教授。1979年~1980年米国ベル研究所客員研究員。面発光レーザーを中心とする光通信用デバイス、微小光学の研究に従事。2001年定年退職、名誉教授に。2001年~2007年日本学術振興会理事、2007年~2012年本学第26代学長を務める。2014年~2016年一橋大学監事。

2001年紫綬褒章。電子情報通信学会2003年度会長、功績賞、業績賞など。応用物理学会・微小光学研究会代表。東レ科学技術賞、朝日賞、藤原賞、市村学術賞・功績賞、C&C賞、NHK放送文化賞、小舘香椎子賞、IEEEウィリアム・ストライファー科学業績賞、同ダニエル・E・ノーブル賞、ランク賞など受賞多数。2013年フランクリン賞・バウワー賞(科学部門)。

コメント

この度、秋の叙勲で瑞宝重光章をいただきました。この上ない栄誉と、ご推薦いただきました東京工業大学の学長はじめ皆様に深くお礼申し上げます。瑞宝章は、社会・公共のための功労が認められた者に与えられる勲章とのことです。東工大という公共の場で研究・教育を行ったこと、その学長ならびに日本学術振興会の理事として社会のために尽くしたことに対する労が認められたのでしょう。個人への勲章というより、大学における同僚のみなさんとの研究・教育、学長としては一緒に大学や社会のために働いた教職員の皆さんとの労へのご褒美と心得ます。

さて本年秋の叙勲では、重光章は瑞宝章のうち最上位の勲位でした。重い光というのは物理的には考えにくいので、英訳を内閣府のホームページで調べると、「The Order of the Sacred Treasure, Gold and Silver Star」というのだそうで、なるほどと合点がいきました。

11月6日に皇居にて行われた伝達式では、安倍晋三内閣総理大臣から1人ずつ勲記と勲章が授与されました。続く拝謁式では、受章者代表が御礼を言上し、陛下から御祝いのお言葉があった後、受章者の前を謁見され、厳かな式典を終えました。

平成天皇に拝謁できるのも、これが最後の機会となりそうです。日本学術振興会の理事として初めての国際生物学賞授賞式の時にご挨拶を申し上げて以来、何度かお目にかかる機会がありました。特に学長の時には、シーラカンスの解剖をご視察のためすずかけ台キャンパスまでご来校を仰ぎ、ご案内と生物学者との座談にも同席させていただきました。

受章式から数日が経って多くの方々から祝意を頂戴すると、この受章が身に余る栄誉であり、まことに有り難く感じております。

ロジャー・パルバース名誉教授

経歴

ロジャー・パルバース名誉教授

ニューヨーク市でユダヤ人の家庭に生まれる。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)を卒業後、ハーバード大学大学院に入学し1965年に同大修士課程を修了。豊富なソ連旅行の経験を活かし、ロシア地域研究所で修士号を取得した。ベトナム戦争への反撥から米国を離れ、ワルシャワ大学とパリ大学に留学後、1967年に初来日。京都に居を定め、京都産業大学でロシア語やポーランド語の講師を務めた。1972年にキャンベラのオーストラリア国立大学に赴任し、日本語や日本文学を講義。1976年、オーストラリア国籍を取得。井上ひさし氏の作品に惚れ込んで、彼をオーストラリア国立大学の客員教授として招致するよう運動。 井上氏の作品の英訳も行う。1983年製作の映画『戦場のメリークリスマス』で大島渚監督のもとで助監督を務めた後、再び来日し、演劇活動を行う。1999年に東京工業大学教授、2006年から本学世界文明センター長。2007年製作の映画『明日への遺言』において、監督の小泉堯史氏と共同で脚本を執筆。

2008年、第18回宮沢賢治賞を受賞。2010年に本学定年退職後、名誉教授に。2012年まで東京工業大学特命教授、世界文明センター長。2013年、『雨ニモマケズ』の翻訳で第19回野間文芸翻訳賞受賞。 2015年、第9回井上靖賞を受賞。2017年製作の映画『STAR SAND ─星砂物語─』で初監督を務める。原作は自身の執筆による小説『星砂物語』。主な著書:『もし、日本という国がなかったら』『驚くべき日本語』『ハーフ』『こんにちは、ユダヤ人です』『英語で読む啄木: 自己の幻想』

コメント

全く怪我の功名です。愛してやまない日本文化のために全身全霊を傾け、こんなにすごい勲章とは縁がないものとばかり思っておりました。一言で言うと、感無量です。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

NASAからメアリー・ボイテック氏が学長特別補佐、地球生命研究所エグゼクティブディレクターに就任 国際教育研究拠点形成を目指したシステム改革の推進

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東京工業大学は、アメリカ航空宇宙局(以下、NASA)アストロバイオロジー、惑星科学部門のシニアサイエンティストのメアリー・ボイテック博士を、学長特別補佐および地球生命研究所(以下、ELSI)のエグゼクティブディレクターに任命しました。

本学初となる外国人研究者の学長特別補佐であり、ELSIエグゼクティブディレクターとなるボイテック氏の就任は、指定国立大学法人の指定を受けた本学が国際水準のガバナンス体制を実施し、国際連携を推進している一端を示すものです。

メアリー・ボイテック博士
メアリー・ボイテック博士

ボイテック氏は、アストロバイオロジーおよび関連分野の世界的な担い手であり、米国の研究事情に精通し、幅広い海外機関や研究者とのネットワークを持っています。また、米国科学行政への寄与も大きく、長きにわたり重要なNASAプログラムを運営してきた多くの経験と実績を有しています。

同氏は就任にあたり、「真に学際的な研究を行っている活気にあふれた研究コミュニティで働く機会を得たことは、大変光栄であり、日本政府の支持により実現された文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)を実施しているELSI及び東京工業大学に関われることは、とても幸運だと感じている」とコメントしています。

学長特別補佐として、本学の長期目標である「世界最高の理工系総合大学の実現」に向けて、ELSIでの経験を基に、世界最高水準の教育研究環境を整備し、世界各国の優秀な研究者からなる共同研究ネットワークを構築すると共に、海外機関との教育研究連携や資金獲得等に係る戦略を実行していくための役割を担い、的確なアドバイス、情報提供、コーディネートに手腕を発揮します。

また、同氏がエグゼクティブディレクターに就任したELSIは、地球惑星科学及び生命科学分野の世界一線級の研究者を結集し、学際的な統合アプローチによって「地球と生命の起源」を探る極めてユニークな研究機関で、世界最高レベルの研究水準・融合領域の創出・国際的な研究環境の実現・研究組織の改革をミッションに、学内で先行してシステム改革を実施しています。研究所内の公用語は英語とし、また日本の標準的な研究体制である講座制ではなく、一人一人の研究者が独立して研究を実施しており、分野ごとのゆるやかなユニットを形成し、融合研究が推進しやすい取り組みや研究者が研究に専念できる環境づくりを行っています。

メンター・メンティー制度の導入による研究評価、外国人生活支援サポート、URAによる研究費獲得支援など、これまでにないシステムを導入し、また海外機関・研究者とのネットワークを築いてきました。これらのシステム改革による国際的な研究環境により、ELSIに在籍する研究者の半分以上が外国人です。

ボイテック氏には、ELSIエグゼクティブディレクターとして、システム改革をさらに推し進め、世界各国からの優秀な研究者、外部研究資金の獲得などにより、 ELSIが世界に開かれたトップレベルの研究拠点を実現するために貢献します。11月1日には、ボイテック氏がリクルートした、4つの欧州機関でサイエンスコミュニケーションマネジメントを行っていたシィリーナ・ヒーナッティガラ氏が、ELSIの広報ディレクターとして就任するなど、国際広報の強化に着手しています。また新たな試みとして、ELSIに在籍している主任研究者の研究評価を、海外の有識者・専門分野で著名な方々に評価してもらう試みも開始しました。

創立150周年を迎えようとする2030年に世界トップクラスのリサーチユニバーシティを目指している本学にとって、同氏が本学の一員に加わることは、他に先んじて積極的にガバナンス改革に取り組んできた本学がその実現に向けてより一層改革を推し進めるための重要な第一歩となります。 本学の今後の取り組みにご期待ください。

<$mt:Include module="#G-28_TokyoTech2030モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

東京工業大学 地球生命研究所 広報室

E-mail : pr@elsi.jp
Tel : :03-5734-3163

東京工業大学広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

文系?リベラルアーツ?東工大流 文系教養教育で育む大きなこころざし

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文系?リベラルアーツ?東工大流 文系教養教育で育む大きなこころざし

東工大は、本学学生が強みを持つ理工系の専門知識を社会につなぐための知性と人間性を養うべく、リベラルアーツ教育を重視しています。2016年の教育改革によって設立されたリベラルアーツ研究教育院では、年齢や専門分野の異なる学生たちに議論の場を与え、それぞれの気付きを共有し、思考の質を高める授業が数多く生まれました。そうした授業を受けた学生たちが学内各所で生き生きと議論する姿を見かけるようになりました。

「理系なのに文系を学ぶ」から「理系だから文系を学ぶ」へ。東工大ならではの画期的な大学教育が育っています。

今回はそんな魅力的な文系教養科目の授業を、受験生向け広報誌『Tech Tech-テクテク-』の学生企画メンバーが、東工大を目指す後輩たちのために取材しました。

学生企画メンバーから見たそれぞれの授業の様子や、担当の教員にインタビューし、授業の狙いや進め方の工夫、さらに「理想の授業は何か」を聞きました。

教養特論:現代社会論

池上特命教授に質問する受講学生
池上特命教授に質問する受講学生

この講義では、現代に生きる学生たちに、憲法や安保、日米関係、アジアや中東の国際関係、宗教の歴史や慣習など社会に出てから必要とされる現代社会の認識力を身につけることを目標としています。新聞、雑誌、テレビ、ネットで流れる様々なニュースを理解し、基本的な知識を習得してから、その意味や背景を独自に判断・評価して学生自身の見解を発表するという講義の流れになっています。

教養特論outer

池上彰特命教授インタビュー

教えるとき気を付けていることはありますか?

歴史などの社会科目を苦手にする学生が多く、それは社会科目を暗記と思い込んでいることが原因だと思うので、裏話を話しつつ因果関係を教えて興味を持ってもらうよう気を付けています。

池上先生の考える理想の授業とは?

一方的に教えるのではなく、授業をきっかけに1つ1つを自分の問題としてとらえ、自分で考えるようになってほしいです。

先生から見た東工大生とは?

ザ・理系といった感じで視野が狭かったり服装がダサかったりするイメージもありますが、頭の回転は速く真面目だと感じます。

未来の東工大生へ

東工大に入ることが現時点の目標だと思いますが、大学に入ってから何を学ぶか・どうやって生きていくかを学んでほしいです。また、世界に目を向け、将来は世界で活躍してほしいです!

東工大立志プロジェクト

議論を見守るファシリテーター
議論を見守るファシリテーター

この授業は様々な分野の第一線で活躍するゲスト講師による大人数講義と、少人数クラスで行うグループワークの2つのパートに分かれています。グループワークでは講義の内容について学生が自由に話し合いますが、その雰囲気は和気あいあいとしていて個性的な意見がたくさん出ます。

東工大立志プロジェクトouter

三ツ堀広一郎准教授

三ツ堀広一郎准教授からのメッセージ

東工大立志プロジェクトはリベラルアーツ研究教育院の教員が総力を挙げて取り組んでいる授業です。目的の一つに「学生同士のコミュニケーションの促進」があり、このような対話形式の授業を必修にしている大学は日本では少ないと思います。そしてもう一つ、最大の目的は、与えられた問いに対して効率よく適切な解を出すという「受験マインド」をリセットすることです。大学においては「問いを立てる」ことが非常に重要であり、それこそが勉強の目的です。入学直後に受講するこの授業を通してそのことを少しでも知ってもらいたいです。

リーダーシップ道場

4名で議論
4名で議論

大学院生向けの授業であるリーダーシップ道場では、支援型リーダーシップについて学生同士がディスカッションしながら学んでいます。高校までの授業とは大きく違い、この授業では先生が学生に一方的に教えることはほとんどありません。学生は積極的に意見を出し合ってリーダーシップについての考えを深めています。

リーダーシップ道場outer

林直亨教授

林直亨教授からのメッセージ

この授業では、いかにわかりやすく教えるかというよりも、いかに学生が答えのない問いに対して考えて話し合えるよう促せるかに注力しています。「これが最善のリーダーシップだ」という解はありません。このような答えのない問題を考えてもらいたいと思っています。

意思決定論B

講義中の猪原教授
講義中の猪原教授

この授業では、ゲーム理論の基礎と、そこから派生した意思決定に関わる様々な数理的理論を扱います。複数の意思決定者による競争の中で、意思決定者が自分にとってより良い結果を達成しようとする「個人の合理性」と、社会全体にとって望ましい「社会の効率性」を両立させるためのアイデアを学ぶことができます。

意思決定論Bouter

猪原健弘教授

猪原健弘教授からのメッセージ

競争の状況を数理的に表現し、分析していくことを楽しんでもらいたいと思います。自分の利益を追求したはずなのに、社会全体で見ると実は無駄が多い結果になっていた、ということは、実生活でも実社会でもよく起こります。この授業で学んだことを生かして、本当の意味で賢く意思決定しましょう。

人文学系ゼミ(現代宗教/スピリチュアリティ論)

グループで議論する様子
グループで議論する様子

現代宗教に関する様々なテーマに基づいて議論をしていく授業です。毎週、学士課程から大学院まで様々な学年・専門分野の学生が集まって、少人数で議論やグループワークをしながら授業を行います。時には、他大学の学生や、神職の方を招いてディスカッションを行ったり、フィールドワークを行うこともあります。今年度の始めには、映画『永遠の0』を鑑賞し、特攻は自爆テロなのか?などについて議論を進めていきました。通常の文系授業とは異なり、ゼミでは各々が自分の意見を発言していくので、自分の意見を他人に伝える力も身につきます。

人文学系ゼミ(現代宗教/スピリチュアリティ論)outer

弓山達也教授

弓山達也教授からのメッセージ

通常の講義とは違い、ゼミではその時の学生のニーズにあったテーマを提供していて、これまでテーマが被ったことはありません。東工大生はコミュニケーションが苦手だと言われがちですが、顔を上げて授業を受けていて、皆明るいと思います。笑いがあり最後にホロリとさせる授業が理想の授業だと思います。

コミュニケーション論A

習ったスキルを議論で実践
習ったスキルを議論で実践

コミュニケーション論は、東工大立志プロジェクトの少人数グループワークの精神を受け継いで、生身のコミュニーケーション能力の向上を目指した授業です。初対面の人と話すコツや、アイディアを引き出す方法、聞き方のスキルなどの紹介を挟みつつ、4人の少人数グループで対話をするのがメインになっています。お昼後すぐの授業でも眠そうな学生は一人もいなく、皆生き生きとこの授業で初めて知り合った学生同士が話しているのが印象的でした。

コミュニケーション論Aouter

中野民夫教授

中野民夫教授からのメッセージ

教師が頑張って教えるより、学生同士が自発的に学びあって成長しあえる授業が理想だと思います。この授業は参加型の授業で、学生が能動的に学習できるように心がけています。将来は皆さんに、話しやすい場を気軽に作って協働共創を促すリーダーシップを発揮し、活躍して欲しいと思っています。

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Tech Tech ~テクテク~

本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 34号(2018年9月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。

超伝導体を利用した新たな環境発電機能を実証

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要点

  • 第二種超伝導体[用語1]の性質を利用した環境発電機能を実証した。
  • 試料の温度を一定に保ち、特定の磁場を印加するだけで、環境の“揺らぎ”から直流電圧が発生する。
  • 微弱な環境揺らぎからの発電や、微弱信号を検出する素子に応用できる可能性がある。

概要

東北大学 金属材料研究所のヤナ・ルスティコバ氏(大学院博士課程・日本学術振興会特別研究員)、塩見雄毅助教(現 東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系准教授)と横井直人研究員、東京工業大学 理学院 物理学系の大熊哲教授、東北大学 金属材料研究所・材料科学高等研究所の齊藤英治教授(現 東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻教授兼任)らは、第二種超伝導体の渦糸液体状態[用語2]を利用した新たな環境発電機能を実証しました。本成果は2018年11月22日(英国時間)「Nature Communications」オンライン版で公開されました。

研究の背景

環境発電とは、身の回りにある様々な“揺らぎ”から、使える電力を取り出す技術です。例えば、熱エネルギーという揺らぎを電力に変換する熱電変換素子、マイクロ波を電流へと変換するレクテナなどがあります。このような揺らぐエネルギーから電力を得るためには、一般に整流効果[用語3]が必要になります。

整流効果を持つ代表的な素子は電子回路などに使われるダイオードです。ダイオードはn型半導体とp型半導体を結合させて作ります。n型半導体とp型半導体の界面では、原子スケールの長さで電気的な性質が大きく変わるため、非常に大きな電気的なバリアが形成されます。このため一方向にのみ電流が流れ、整流効果を発現することになります。

このような整流効果を生み出す仕組みは、環境発電をはじめとして現代の電子機器の核となる要素技術です。ダイオードのような人工的な構造物や、対称性を下げた材料を利用して、新たな整流素子を生み出そうとする研究が活発に行われています。本研究では第二種超伝導体に特有な“渦糸”の液体状態を利用して、全く新しい整流素子を実証しました。

研究の内容・成果

本研究では、モリブデンゲルマニウム(MoGe)という第二種超伝導体を、磁性絶縁体イットリウム鉄ガーネット(Y3Fe5O12)基板に成膜した試料を用意しました(図1)。驚くべきことに、試料の温度を一定に保ちながらこの薄膜試料の面内方向に磁場を印加すると、ある特定の磁場値において、外部からの入力が全くないにも関わらず、MoGeの面内方向に直流電圧が発生することが明らかとなりました(図2)。この直流電圧は、電磁ノイズのある測定環境では一日中安定して観測され続けました。

実験に使用した試料と測定セットアップの模式図。ガドリニウムガリウムガーネット(GGG)基板上にYIG単結晶を成長させた試料に、MoGeをスパッタリング成膜している。MoGe膜上に、電気測定(電流(I)、電圧(V))の電極を作製した。磁場(B)はMoGe膜の面内方向に印加している。
図1.
実験に使用した試料と測定セットアップの模式図。ガドリニウムガリウムガーネット(GGG)基板上にYIG単結晶を成長させた試料に、MoGeをスパッタリング成膜している。MoGe膜上に、電気測定(電流(I)、電圧(V))の電極を作製した。磁場(B)はMoGe膜の面内方向に印加している。
MoGe超伝導薄膜に生じる電圧 (Vdc) の磁場依存性。温度(T)を一定にした状態で、MoGeの面内方向に印加した磁場 (B)を変化させると、ある磁場値において非常に鋭い電圧ピークが観測された。転移温度 (Tc)を超えると観測されなくなったことから、この電圧は、MoGeの超伝導性による電圧と考えられる。
図2.
MoGe超伝導薄膜に生じる電圧 (Vdc) の磁場依存性。温度(T)を一定にした状態で、MoGeの面内方向に印加した磁場 (B)を変化させると、ある磁場値において非常に鋭い電圧ピークが観測された。転移温度 (Tc)を超えると観測されなくなったことから、この電圧は、MoGeの超伝導性による電圧と考えられる。

直流電圧が生じる温度と磁場の条件を詳細に調べると、MoGeがいわゆる渦糸液体相にあるときに電圧が生じていることがわかりました(図3)。渦糸とは第二種超伝導体特有の“欠陥”であり、超伝導体の内部に侵入する磁束線のことを指します。渦糸液体相とは、この渦糸が超伝導体内部で自由に運動できる状態になっている相です。渦糸の特徴は、試料の表面でのみ超伝導体内部へ入ったり出たりすることができ、一度試料内部に導入されると非常に安定に存在します。超伝導体が単独で熱平衡状態にあるときは、この表面から外部へ出たり入ったりする渦糸は、試料の全ての表面で一様であり、渦糸の運動に特別な向きは生じません。

MoGeに電圧が生じた温度(T)と磁場(B)の組み合わせを、MoGeの超伝導相の相図と照らし合わせた結果。電圧が生じた条件は赤い正方形で示されており、全て黄色い帯の領域内で生じていることがわかる。この黄色い帯の部分は、渦糸液体相に対応する。
図3.
MoGeに電圧が生じた温度(T)と磁場(B)の組み合わせを、MoGeの超伝導相の相図と照らし合わせた結果。電圧が生じた条件は赤い正方形で示されており、全て黄色い帯の領域内で生じていることがわかる。この黄色い帯の部分は、渦糸液体相に対応する。

本研究で示された直流電圧は、磁性絶縁体であるY3Fe5O12がMoGeの片側に取り付けられていることによって生じていると解釈できます。Y3Fe5O12が付いている表面と付いていない表面とでは渦糸が超伝導体内部へ入り込むために必要になるエネルギーが異なり、それぞれの表面近くでの渦糸の量にアンバランスが生じます。MoGe薄膜の面内方向に電流を流したとき、薄膜の面直方向に駆動される渦糸の数が電流の正と負で異なります。この渦糸の流れによって、面内方向に電圧が生じ、超伝導の電気抵抗として観測されます。従って、ダイオードと同じように、電流の向きによって電気抵抗が異なり、すなわち整流効果を発揮させると考えられます。測定された直流電圧は、測定器内部にある電磁ノイズが、渦糸の量のアンバランスによって整流された結果であると解釈できます。

今後の展望

本研究は超伝導体渦糸を利用した新たな整流機能を実証しました。低温動作ながらも非常に感度の高い整流素子であり、ノイズ評価や微弱信号の検出に利用できる可能性があります。また、同様の整流機能が、渦糸の他の様々なトポロジカルな欠陥にも期待され、新たな物質機能開拓の端緒となると期待されます。

付記事項

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)齊藤スピン量子整流プロジェクトの一環で行われました。

用語説明

[用語1] 第二種超伝導体 : 超伝導体にはある一定の磁場(臨界磁場)を超えた場合、常伝導状態に移行する第一種超伝導体と、超伝導状態を保ったまま一定の磁束線が侵入する渦糸状態を経て、常伝導状態へ移行する第二種超伝導体とがある。

[用語2] 渦糸液体状態 : 渦糸とは第二種超伝導体特有の“欠陥”であり、超伝導体の内部に侵入する磁束線のことで、この渦糸が超伝導体内部で自由に運動できる状態のことを指す。

[用語3] 整流効果 : 電流の向きによって、その流れやすさが変わる現象のこと。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
“Vortex rectenna powered by environmental fluctuations”
著者 :
J. Lustikova, Y. Shiomi, N. Yokoi, N. Kabeya, N. Kimura, K. Ienaga, S. Kaneko, S. Okuma, S. Takahashi and Eiji Saitoh
DOI :
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お問い合わせ先

研究に関すること

ERATO 齊藤スピン量子整流プロジェクト 研究総括

東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻 教授

東北大学 材料科学高等研究所(AIMR)/金属材料研究所

齊藤 英治(サイトウ エイジ)

E-mail : eizi@ap.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 022-217-6238 / Fax : 022-217-6395

JSTの事業に関すること

科学技術振興機構(JST) 研究プロジェクト推進部

古川 雅士(フルカワ マサシ)

E-mail : eratowww@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3528 / Fax : 03-3222-2068

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

2018年度東京工業大学防災訓練(大岡山地区)を実施

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11月14日に大岡山キャンパスとすずかけ台キャンパスにて震度6弱の地震を想定した防災訓練を実施しました。

大岡山キャンパスの総合訓練では各建物・地区に自衛防災地区隊を編成し、安否確認を行うとともに、益一哉学長を本部長とする非常災害対策本部を設置しました。その後、各班に分かれて施設の安全点検、特殊ガス等の漏洩確認、避難人数の把握、非常食の炊き出し等の訓練を行いました。

また、西9号館等で火災が発生した想定で消火訓練を行い、田園調布消防署等による梯子車を使用した救助訓練やレスキュー部隊による降下訓練の後、益学長の放水開始の指揮のもと、放水演習が行われました。

個別訓練においては、煙体験ハウスなど例年のプログラムに加え、田園調布警察署の協力により警視庁特殊救助隊の直接指導による災害救助訓練を行ったほか、東京消防庁のVR防災体験車においてバーチャルリアリティー映像を利用した災害の疑似体験を実施するなど、貴重な体験をすることができました。更に新しい試みとして、東工大ボランティアグループとマイスター(Meister)の2サークルの協力により、待機中の各避難地区へ向けて、非常災害対策本部に届く避難状況報告等の実況中継や個別訓練の案内等をユーチューブのライブ配信(YouTube Live)を用いて実施しました。

学生・教員・職員等多数の参加があり、様々な訓練を通して改めて防災への意識を高める機会となりました。

放水開始の指揮をとる益学長
放水開始の指揮をとる益学長

放水演習の様子
放水演習の様子

東工大VG・Meister
東工大VG・Meister

VR防災体験車
VR防災体験車

お問い合わせ先

安全企画室安全管理グループ

E-mail : sog.anz.kan@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3408

第6回廃棄物の有効利用に関するワークショップ 開催報告

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9月13日、フィリピンのデラサール大学において、第6回廃棄物の有効利用に関するワークショップ(WOW2018)が開催されました。ワークショップのテーマは、「廃棄物利用技術と持続可能な環境にむけた実践に関する多分野アプローチ」で、廃棄物の有効利用に関する議論を促進し、ソリューションを開発することを狙いとしています。

WOW2018の参加者

WOW2018の参加者

本イベントは、環境・社会理工学院、国際開発工学同窓会(IDEAL)、フィリピンオフィス、フィリピン同窓会(ATTARS)およびデラサール大学の共催により実施されました。参加者は学生を含めて約150名で、本学からは、環境・社会理工学院 土木・環境工学系の竹村次朗准教授、同学院 融合理工学系のウィナルト・クルニアワン助教とマリキット・イーデン・ガン特任講師、教育・国際連携本部の大即信明特任教授が参加しました。

ワークショップは、大即特任教授の基調講演「電気化学的補修・再使用方法の概要」と、竹村准教授の基調講演「持続可能な廃棄物マネジメント ―日本と東南アジアのケーススタディー」を含む6名の基調講演の後、12名の教員の講演や8名の学生のプレゼンテーションからなる同時セッションが行われました。参加者は、多くの東工大同窓生らと共に廃棄物処理に関する日本とフィリピン両国の研究技術交流を行うことができました。また、同時セッションの中では、竹村准教授による東工大への留学説明会も実施されました。最後は、フィリピン同窓会のジェイソン・マキシミノ・シー・オンペン会長と本学同窓会組織である蔵前工業会の小倉康嗣理事による閉会の辞をもって、大盛況のうちに終了しました。続く懇談会では、参加者たちが交流を深めました。

蔵前工業会の小倉理事による閉会の辞

蔵前工業会の小倉理事による閉会の辞

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お問い合わせ先

国際部国際事業課 国際事業グループ

E-mail : kokuji.jig@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7607

2018年度東京オリエンテーリング(第16回、第17回)開催報告

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東京工業大学 国際交流学生会SAGE(以下、SAGE)は、10月20日に第17回東京オリエンテーリングを開催し、今年度の東京オリエンテーリングを終了しました。今年度は4月27日の第16回と合わせて計2回開催しました。

東京オリエンテーリングとは

本イベントは、新入留学生に東京の生活や交通に慣れてもらうこと、日本人学生に国際交流の機会を持ってもらうことを目的として、毎年2回開催しています。参加者は1日フリーパスを使い、東京を観光しながら各駅に設置してあるミッションを解いて、グループで得点を競います。各グループに日本人と留学生がいて、1日中英語でイベントを行います。新入生の参加者が多いこのイベントは、国際交流だけでなく、日本人同士や留学生同士にとって、友人を増やす機会になっています。

秋ミッション

秋ミッション

当日東工大に集合した参加者は、ルール説明を受け、国籍を混合したグループに分かれて1日の移動行程を話し合った後に出発します。1日のオリエンテーリングが終了した後は東工大に戻り、交流会を行います。最後に優勝したチームの表彰を行いました。ここではグループの枠を超えて広く交流してもらうために、名刺交換などのレクリエーションを取り入れています。

第16回東京オリエンテーリング(4月)

第16回は、交換留学の学生も含めて総勢約100名の参加があり、過去最高の参加者数になりました。第14回から第16回までは、山手線のフリーパスを使い、渋谷などの主要な駅から日暮里などの穴場観光スポットまでを広く回るオリエンテーリングでした。第16回では、お土産ミッションや昼食ミッションを導入し、日本の食文化に触れてもらう機会を積極的に作りました。「日本らしいもの」という基準を設け東京土産を買ってきてもらい、バリエーションに富んだ和菓子を交流会では楽しむことができました。

春集合写真

春集合写真

春イベント開始直前
春イベント開始直前

春交流会
春交流会

第16回責任者 大貫絵莉子さんのコメント(環境・社会理工学院 建築系 学士課程3年)

汎用性の高い大岡山北3号館(環境エネルギーイノベーション棟、EEI)の多目的ホール、素晴らしいスタッフ、そして何より多くの参加者に参加していただいたことでこのイベントを開催することが出来ました。参加者多数だったため段取りなどが大変でしたが、このイベントをこれだけ拡大することができて良かったです。建築学を専攻し、普段は製図の授業を中心に人間の行動を考えながら建物のデザインをしています。

第17回東京オリエンテーリング(10月)

秋ポスター

秋ポスター

第17回では路線を東急トライアングルエリア(大井町線、田園都市線、東横線)に変更し、東工大から気軽に行けるスポットを紹介するオリエンテーリングになりました。定期的に路線を変更することで、再度オリエンテーリングに参加しても、楽しんでもらえるようなイベントにしています。今回のオリエンテーリングは秋入学の大学院生を中心に約30名の参加者がありました。第17回では、イベント中に新しくフォトコンテストを開催し、「インスタ映えするもの」「面白いもの」といったテーマに沿って写真を撮ってもらい投票しました。イベントのミッションをクリアするだけでなく、グループ内での交流を深める機会を作っています。

秋フォトコンテスト

秋フォトコンテスト

秋集合写真

秋集合写真

第17回責任者 リュウ・ヨウシンさんのコメント(物質理工学院 材料系 学士課程3年)

新しい体験をするために、遠くに旅行することを考えていませんか。意外と身近なところでも海外を感じられるような楽しさはあります。学業では材料工学、主には無機材料について満遍なく勉強しています。

次回は2019年4月ごろに開催する予定です。

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お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流学生会(SAGE)

E-mail : sage.tokyo.tech@gmail.com


第14回東工大バイオコン2018 開催報告

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11月10日(土)に「第14回東工大バイオコン2018」がすずかけ台キャンパスのすずかけホールで開催されました。

授業:バイオものつくり1・2

授業「バイオものつくり1,2」ではバイオに関連した社会に役立つ幅広いものつくりを通して、バイオに関する基礎力を身につけることを目的に学生のバイオに関連した創造性の育成を行なっています。

「バイオの理解を深めるためのものつくり」をテーマとして、142名の学生が20チームに分かれてオリジナルな「ものつくり」に取り組みました。

お互いをよく知らない学生同士がチームを組み、限られた予算内でテーマに合ったものつくりを考え、実践する。当日のコンテストに向けて約半年間、各チームが自ら考え、実験や制作など進めていきました。

バイオコン:プレゼンテーション

「東工大バイオコン」は上記授業での成果を発表し競うコンテストです。各チームは11分の持ち時間が与えられます。その中で今まで行なってきたものつくりの目的や実験の手法、集まったデータの結果などの発表を行います。各チーム、趣向を凝らした発表となりました。

様々な分野からお越しいただいた審査員の方々からの質問やアドバイスもいただき、自チームだけでなく他チームの発表からも学びの多い時間となりました。

発表風景

発表風景

発表風景

発表風景

発表風景

バイオコン:発表テーマ

以下が今年度の発表テーマです。

テーマ
テーマ
A
血液凝固のしくみ
K
コックロー死
~黒いあいつをぶっ飛ばせ~
B
よくわかる!身近なバイオミメティクス
L
感覚受容器と神経伝達
~「見る」「聞く」の仕組みに親しみを~
C
紫キャベツクレヨン
M
染めちゃうよ??
D
とびだせ!DNA
N
楽しい楽しい食虫生活
E
Inside Out
~あなたの中で起きていること~
O
十人十感
~嗅覚はみな同じ?~
F
寄生生物で遊ぼう
P
ボードゲーム「Antibody war」で免疫を学ぼう
G
天然素材の化粧水を作ろう!
Q
身体の中のパックマン
H
ウミホタル発光の神秘
~ピカピカガッチリハメ太郎~
R
美声物
~音で感じる微生物~
I
細胞の膜は何でできているのか
~模型での再現に挑戦~
S
のうやくを使わずに植物を守ろう!
J
居眠り防止装置
T
なぜ曲がる?オジギソウの謎

バイオコン:おためしタイム

各チームの発表後に、小中学生や近隣の方を招いて全チームの「ものつくり」を体験していただく「おためしタイム」を行いました。

チームごとに展示ブースを設け、作品の説明や発表では伝えきれなかった事を話したり、実演などを行いました。

お試しタイム

お試しタイム

お試しタイム

お試しタイム

お試しタイム

バイオコン:審査と結果

おためしタイム終了後、審査員の方々による審査が行われました。審査結果は、審査員の評価に合わせて、コンテストに参加している学生自身、そして「おためしタイム」にお越しいただいた一般のご来場者の方々の投票で決まります。学内・学外から選ばれた 8人の審査員にはそれぞれ10票、学生には各1票(自チーム以外に投票)、一般のご来場者の方には各2票の投票権が与えられました。発表とおためしタイムを含めた総合評価で結果が決まります。

結果発表

結果発表

今年度の審査結果は以下の通りです。

優勝
R班 「美声物 ~音で感じる微生物~」
準優勝
J班 「居眠り防止装置」
3位
F班 「寄生生物で遊ぼう」
産学連携賞
J班 「居眠り防止装置」
審査員奨励賞
E班 「Inside Out ~あなたの中で起きていること~」
S班 「のうやくを使わずに植物を守ろう!」
ものつくりセンター賞
C班 「紫キャベツクレヨン」
横浜市教育委員会賞
P班 「ボードゲーム「Antibody war」で免疫を学ぼう」

半年間という短い間とはいえ、「研究」の第一歩を踏み出した学生たち。すべてのプログラムを終えたあとは皆晴れやかな顔で、学生同士や先生方、ティーチング・アシスタント(TA)の先輩、そして審査員の皆様方と談笑する姿が見られました。今回の経験による多くの学びが、今後の学生たちの輝かしい研究生活に強く結びつくことと思います。

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お問い合わせ先

生命理工学院 バイオ創造設計室

E-mail : biocreat@bio.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2487

第11回高校生バイオコン2018 開催報告

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10月20日、東京工業大学すずかけ台キャンパスすずかけホールで「第11回高校生バイオコン2018」が開催されました。高校生チームが独自のアイデアで小中学生向けバイオ系教材を開発し、その出来栄えを競い合うコンテストです。10校14チームが参加し、約5か月をかけて開発した教材について発表しました。

ポスター
ポスター

準備中
準備中

プレゼンテーション

今年度参加したチームは次の通りです。

学校名
チーム名
テーマ
麻布大学付属高等学校
植物図鑑
ミクロの世界
神奈川県立厚木高等学校
セレンディピティー 2
酵素の活性を目で見る方法-生姜焼きをおいしく食べる-
神奈川県立相模原中等教育学校
バイオレディー
君のからだの中にいるスーパーHERO、酵素!
神奈川県立相模原中等教育学校
バイオロジェイケイ
植物たちの生き残り作戦!―種を遠くにとばす工夫とは
札幌日本大学高等学校
ハッピーコンブライフ
コンブの秘密に触れてみよう
清真学園高等学校
チームアエデス
消化酵素ってなあに
清真学園高等学校
チームコルディス
心臓はどうやって動くの?
洗足学園高等学校
まりも
足のフシギ
桐蔭学園高等学校
エコシステム
食物連鎖(生態系)の理解
桐蔭学園高等学校
トウインブラウニークラブ
普段見えない筋肉の仕組み
東京都立新宿高等学校
それいけ!デンタル新宿
レッツ歯磨き
~みんなの歯をまもるため~
東京都立新宿高等学校
メロメロフェロモン
フェロモンのふしぎ
栃木県立大田原女子高等学校
さらさら
ヘアアレンジの秘密
横浜市立サイエンスフロンティア高等学校
理調研
どうぶつ?しょくぶつ?ミドリムシ!?

各チームは、作成した教材の工夫点や重要性などをわかりやすく伝えてくれました。寸劇を取り入れたユーモアあふれる発表もあり、観ている側も楽しく学ぶことができました。質疑応答では高校生からの質問も多数挙がり、審査員からのアドバイスも受けながら、熱気に溢れた時間となりました。

発表プレゼン

発表プレゼン

発表プレゼン

教材お試しタイム

14時半からスタートした「お試しタイム」では、高校生が作った教材を、小中学生をはじめ来場者に実際に体験してもらいました。手の込んだ絵本で髪のパーマの仕組みを学んだり、アリの気持ちになって匂いを探索してみたり、生態系ゲームで真剣に勝負してみたり。子供も大人も夢中になって「遊び・学べる」教材ばかりでした。参加した高校生同士もお互いの作品を体験し合い、新たな刺激を受ける場ともなりました。

お試しタイム

お試しタイム

お試しタイム

お試しタイム

お試しタイム

審査・表彰

審査員の評価と、お試しタイムの来場者の投票で、各賞を決定しました。

賞等
高校名
チーム名
優勝
栃木県立大田原女子高等学校
さらさら
準優勝
桐蔭学園高等学校
トウインブラウニークラブ
準優勝
東京都立新宿高等学校
それいけ!デンタル新宿
第3位
神奈川県立相模原中等教育学校
バイオロジェイケイ
横浜市教育委員会賞
栃木県立大田原女子高等学校
さらさら
審査員特別賞
洗足学園高等学校
まりも
審査員特別賞
札幌日本大学高等学校
ハッピーコンブライフ

受賞を惜しくも逃したチームも甲乙付けがたい素晴らしい作品と発表でした。

最後に審査員からお言葉をいただき、第11回高校生バイオコン2018は幕を閉じました。

来年もまた高校生たちのフレッシュなアイデアに出会えることを楽しみにしています。

最後に

本コンテストは本学生命理工学院のバイオサークル「バイオ・クリエイティブ・スタッフ(BCS)」の学生が主体となり、運営を行いました。BCSのメンバーは、各チームのティーチング・アシスタントとしても各高校に出向きアドバイスなどをしながら、高校生との交流を深めました。高校生にとってだけでなく、本学の学生にとっても素晴らしい経験となりました。

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お問い合わせ先

生命理工学院 バイオ創造設計室

E-mail : biocreat@bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2487

希薄な二酸化炭素を捕捉して資源化できる新触媒の発見 低濃度二酸化炭素の直接利用に道

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要点

  • レニウム(Re)の錯体を用いた低濃度二酸化炭素(CO2)の還元反応系を開発
  • Re錯体が捕集したCO2を、電気エネルギーで一酸化炭素(CO)へと変換
  • 工場等からの排ガスに含まれる程度の低濃度CO2を高効率に還元可能

概要

東京工業大学 理学院 化学系の熊谷啓特任助教、西川哲矢大学院生(当時)、石谷治教授らは、二酸化炭素(CO2)を捕集する機能を持つレニウム(Re)の錯体が、低濃度のCO2を還元することができる電気化学触媒[用語1]として機能することを発見した。

石谷教授らの研究チームは、ある種のレニウム錯体が、高いCO2捕集機能と、CO2を電気化学的に還元する触媒機能を合わせ持っていることを見出した。今回、このレニウム錯体を触媒として用い、低濃度CO2をそのまま還元できる電気化学的システムの開発を目指した。その結果、1%しかCO2を含まないガスでもCO2を効率よく還元でき、一酸化炭素(CO)を高い効率と選択性で生成することができた。COは化学原料として有用で、水素と反応させることで人造石油を合成することができる。今回の発見により、火力発電所や製鉄所から排出される低濃度のCO2を含んだ排ガスを、効率的に直接資源化できる可能性が出てきた。

研究成果は2018年11月12日(英国時間)、英国王立化学会誌「Chemical Science」オンライン版に掲載された。

研究成果

石谷教授らの研究チームは、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST「新機能創出を目指した分子技術の構築」)の支援を得て、CO2を捕集する性質を持つレニウム錯体が、低濃度のCO2を還元する電気化学触媒として機能することを見出した。この錯体は、CO2を低濃度しか含んでいないガスから高い効率でCO2だけを捕集する機能を持っていた。捕集されたCO2は、炭酸エステル[用語2]として錯体に固定化される(図1)。このCO2を捕集したレニウム錯体を電気化学触媒とすることで、低濃度CO2でもそのまま還元できることがわかった。例えば、1%のCO2を含んだガスでも効率よく還元でき、24時間の反応でCOを選択率[用語3]94%、ファラデー効率[用語4]85%という高い効率で生成できた(図2)。

図1. レニウム錯体によるCO2の捕集反応

図1. レニウム錯体によるCO2の捕集反応

図2. 低濃度のCO2しか含まないガスからレニウム錯体がCO2を捕集し、高効率な電気化学反応でCOへと還元する

図2. 低濃度のCO2しか含まないガスからレニウム錯体がCO2を捕集し、高効率な電気化学反応でCOへと還元する

背景

化石資源を燃焼させる際に排出されるCO2を、電気エネルギーで還元する反応は、排出CO2削減と資源の創出の両観点から国内外で精力的に研究されている。しかし、従来の研究のほとんどは、純粋なCO2を用いて開発が行われている。しかし、火力発電所や製鉄所、セメント製造工場などから出る排ガスにはCO2が数%から十数%しか含まれていない。そのため、従来技術では大量のエネルギーが必要なCO2の濃縮過程が必要だった。そこで、実際に排出される希薄な濃度のCO2を含んだガスをそのまま利用して効率よくCO2だけを還元できる方法が求められていた。

研究の経緯

石谷教授らの研究チームは、CO2の資源化を企図した金属錯体触媒や光触媒の研究を行っている。その過程で、CO2を効率よく捕集するレニウム錯体を見出し[参考文献1]、この物質を触媒として利用してCO2の資源化反応について検討してきた。

今後の展開

COは化学原料として有用で、水素と反応させることで人造石油を合成することができる。今回の発見により、火力発電所や製鉄所の排ガスに含まれる低濃度のCO2を、大量のエネルギーを必要とする濃縮過程を経ずに、太陽光など再生可能エネルギーから変換した電気エネルギーで直接資源化できる可能性がでてきた。このような製造工程での省エネ化は、地球温暖化抑制にも貢献する技術だ。今後は、この新触媒のCO2捕集能のさらなる向上やありふれた金属である卑金属錯体の利用も視野に入れて、実用的な技術へと展開させていきたい。

用語説明

[用語1] 電気化学触媒 : 電極から電子の授受を行うことで反応を駆動する触媒のこと。

[用語2] 炭酸エステル : -OC(O)ORの構造を有する化合物で、OC(O)の部分がCO2由来。(図1を参照:右側の錯体に結合している赤色と青色で示した化合物。)

[用語3] 選択率 : 全生成物のうち、目的の生成物の割合。

[用語4] ファラデー効率 : 電極から流れた電子(電流)のうち、目的の反応に使われた割合。

参考文献

[参考文献1] Tatsuki Morimoto, Takuya Nakajima, Shuhei Sawa, Ryoichi Nakanishi, Daisuke Imori, Osamu Ishitani, Journal of American Chemical Society, 2013, 135, 16825−16828

論文情報

掲載誌 :
Chemical Science
論文タイトル :
Electrocatalytic reduction of low concentration CO2
著者 :
Hiromu Kumagai, Tetsuya Nishikawa, Hiroki Koizumi, Taiki Yatsu, Go Sahara, Yasuomi Yamazaki, Yusuke Tamaki, Osamu Ishitani
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系 教授

石谷治

E-mail : ishitani@chem.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2240 / Fax : 03-5734-2284

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

銅マンガン錯体光触媒で二酸化炭素を高効率に還元 安価な金属だけで人工光合成実現、地球温暖化対策へ期待

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要点

  • 稀少金属や貴金属を用いなくても、太陽光を駆動力として高効率にCO2を資源化できる触媒が求められていた
  • 地球上に豊富に存在する金属(銅、マンガン)の錯体だけを用いて、最も高効率で高耐久性を有するCO2還元光触媒の開発に成功
  • 地球温暖化対策として人工光合成の大規模な適用に期待

概要

東京工業大学 理学院 化学系の竹田浩之特任助教、加美山紘子大学院生(当時)、関根あき子助教、石谷治教授らは、産業技術総合研究所の小池和英主任研究員らと共同で、銅錯体とマンガン錯体から成る光触媒[用語1]に可視光を照射すると二酸化炭素(CO2)が、一酸化炭素(CO)[用語2]ギ酸(HCOOH)[用語3]に効率良く還元されることを発見した。この効率と耐久性(量子収率 [用語4]57%、ターンオーバー数[用語5]1,300回以上)は、これまで知られていた、ありふれた金属すなわち卑金属[用語6]を用いた光触媒の性能を大きく凌ぎ、ルテニウムやレニウムといった貴金属[用語7]や稀少金属を用いた高効率金属錯体[用語8]と同等もしくはそれ以上であった。

現在、地球温暖化対策として、温室効果ガスであるCO2を還元資源化する技術が求められている。これまで高効率CO2還元光触媒には、貴金属や稀少金属が用いられていたため、光触媒を使ったCO2の大規模な還元による資源化の足かせとなっていた。今回、従来の高効率光触媒と比較して勝るとも劣らない特性を持った新たな光触媒系を銅とマンガンの錯体だけで作製することに成功した。地球温暖化対策としての人工光合成システムの大規模化への道を拓くことができた。

研究成果は2018年11月27日(現地時間) 、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

なお本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)における研究課題「太陽光の化学エネルギーへの変換を可能にする分子技術の確立」(課題番号:JPMJCR13L1、研究代表者:石谷治)の一環として行われた。

研究成果

研究グループは、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援のもと、銅錯体とマンガン錯体から成る光触媒を作製し、可視光を照射することで二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)やギ酸(HCOOH)へ高効率に還元できることを見出した。この効率や耐久性(量子収率57%、ターンオーバー数1,300回以上)は、これまで知られていた卑金属を用いた他の光触媒を大きく凌ぎ、ルテニウム(Ru)やレニウム(Re)といった貴金属や稀少金属による高効率金属錯体と同等もしくはそれ以上であった。

銅は電線や十円玉の原料として、マンガンは乾電池の正極として用いられており、身近な金属だ。これらは鉱山において多量に採掘される比較的安価な金属元素である。今回の研究成果により、安価で多量に使える卑金属しか含まない光触媒でも、高効率なCO2還元光触媒反応を進行させることが可能であることを見出した。

銅(Cu)錯体とマンガン(Mn)錯体を組み合わせたCO2還元光触媒反応

図1. 銅(Cu)錯体とマンガン(Mn)錯体を組み合わせたCO2還元光触媒反応

背景

近年、地球温暖化の主な要因となっているCO2を資源化するための光触媒開発が世界中で活発化してきた。この人工光合成と呼ばれる技術が実用化できれば、大気中CO2濃度の上昇抑制に資するだけではなく、将来的に枯渇が心配されている化石資源の代替として有用な炭素資源をCO2を原料にして、太陽光だけをエネルギー源として合成できるようになる。

これまで開発されてきた高効率なCO2還元光触媒反応は、レニウムのような地球上にわずかしか存在しない希少な金属、ルテニウムのように高価な貴金属を光触媒として用いなければ駆動しなかった。

世界で排出されているCO2は、年間約330億トンに及ぶ(2018年版EDMC/エネルギー・経済統計要覧)。CO2は温室効果ガスとして大幅に削減しなければならないが、既存の高性能光触媒では素材コストの問題などから、あまり利用できなかった。元素戦略的な見地から光触媒の開発研究が盛んに行われているが、これまで報告されている卑金属を用いたCO2還元光触媒の耐久性は低く、その効率も満足のいくものではなかった。

研究の経緯

石谷教授らは、これまでも卑金属を用いたCO2還元光触媒の開発を行ってきた。今回、発光性の銅錯体とマンガン錯体とを組み合わせた光触媒システムを開発し、可視光を照射して常温常圧でCO2を高効率に資源化することに成功した。この光触媒システムは、既存の貴金属を用いた高効率光触媒と比較しても勝るとも劣らない特性を有する。

卑金属だけを用いた光触媒でも、太陽光を有効に活用することで地球温暖化の主因であるCO2を有用な炭素資源へと高効率に変換できることが明らかになった。大規模に人工光合成を実現するための第一歩と言える。

今後の展開

今回の研究成果は、銅・マンガンのような地球上に多量に存在する材料群を用いて、太陽光をエネルギー源とした高効率CO2還元を世界で初めて実証した。今後は、この新たな光触媒の機能を向上させると共に、地球上に多量に存在する安価な水を還元剤として用いる半導体光触媒との融合を目指す。

光触媒反応において、生成物であるCOの泡が観測される

用語説明

[用語1] 光触媒 : 光を吸収することで、反応を触媒的に進行させる分子もしくは物質のこと。

[用語2] 一酸化炭素(CO) : フィッシャー・トロプシュ反応などにより炭化水素を合成できるため、工業的に有用な炭素資源として注目を集める。

[用語3] ギ酸(HCOOH) : 繊維加工や皮革加工、化学工業原料として用いられる。ギ酸は液体で、分解することで水素が定量に得られるため、運搬が容易な水素前駆体としても注目されている。

[用語4] 量子収率 : 照射した光の量(光子数)に対する反応生成物の分子数の割合。例えば、100個の光子を照射することで、生成物分子が50個生成した場合、量子収率は50%となる。

[用語5] ターンオーバー数 : 当該反応において、触媒が何回機能したかを表す指標。触媒100個を用い、生成物が10,000個得られた場合、ターンオーバー数は100となる。

[用語6] 卑金属 : 地球に多量に存在する金属。

[用語7] 貴金属 : 8種の高価な金属、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)。地球上での存在量が少ない。

[用語8] 金属錯体 : 金属イオンと配位子からなる分子もしくはイオン化合物。

論文情報

掲載誌 :
Journal of the American Chemical Society
論文タイトル :
Highly Efficient and Robust Photocatalytic Systems for CO2 Reduction Consisting of a Cu(I) Photosensitizer and Mn(I) Catalysts
著者 :
Hiroyuki Takeda, Hiroko Kamiyama, Kouhei Okamoto, Mina Irimajiri, Toshihide Mizutani, Kazuhide Koike, Akiko Sekine, Osamu Ishitani
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系 教授

石谷治

E-mail : ishitani@chem.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2240 / Fax : 03-5734-2284

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部
グリーンイノベーショングループ

中村幹

E-mail : crest@jst.go.jp
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地球温暖化とエネルギー問題の解決に糸口「新触媒でCO2を資源化」記者説明会を開催

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本学理学院 化学系の石谷 治教授による二酸化炭素を資源化するための新触媒に関する記者向け説明会を、11月27日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館にて開催しました。

人間の産業活動では、炭素資源を産業に利用することで多量のCO2を排出していますが、植物の光合成のように、CO2を還元固定化する実用的な技術を我々は持っていません。このことが、エネルギー問題、炭素資源枯渇化、地球温暖化の3つの問題を引き起こす根本的原因です。排出したCO2を再び資源として利用する技術(人工光合成)が実用化できれば、この3つの問題が一挙に解決すると期待できます。

石谷教授は、今回、この問題に対して2つのブレークスルーを論文発表し、その内容に関してメディア向けの説明会を行いました。

記者説明会の様子

記者説明会の様子

希薄なCO2を捕捉して資源化する新触媒の発見

新触媒について解説する石谷教授
新触媒について解説する石谷教授

従来のCO2資源化の研究は、純粋なCO2を用いて行われてきました。濃度が低くなると、CO2の還元がうまく進まないためです。ところが、火力発電所などの産業の現場から排出されるCO2は10%程度の低い濃度です。したがって、一旦CO2を濃縮するという、エネルギーを多量に消費するプロセスを経てから資源化を行う必要がありました。

石谷教授らが発見したレニウム錯体触媒は、1%という低濃度のCO2でも効率よく捕集し還元することができます。この技術を応用すれば、濃縮することなく直接CO2を資源化することが期待できます。

ありふれた金属を使った光触媒で高効率にCO2を資源化

研究開発された触媒
研究開発された触媒

石谷教授らは、CO2の光還元の研究を積極的に続け、世界で最も高効率な光触媒の開発にも成功しています。しかし、これまでは、希少な金属や高価な貴金属を用いる必要がありました。世界で排出されるCO2は年間330億トンにもおよび、希少金属では太刀打ちできません。安価で多量に入手できる金属を用いた光触媒の開発が求められています。

今回、石谷教授らは、銅錯体とマンガン錯体からなる光触媒が、希少金属を用いた光触媒に勝るとも劣らない効率でCO2を資源化できることを見出しました。

これら2つの研究成果は、エネルギー問題、炭素資源枯渇化、地球温暖化の3つの問題解決の糸口になることから、説明の後も、記者の皆さんと石谷先生との熱いディスカッションが続きました。

石谷教授のコメント

光合成は、太陽光をエネルギーとしてCO2を有用な有機資源に変換し、その一部は長年かかって地下に蓄積されることで化石資源となりました。我々人類は、これを掘り起こし、エネルギー源および化学原料として大量消費し、最終的に燃焼させることで大量のCO2を発生させています。これが、地球温暖化、エネルギー源および炭素資源の枯渇の問題を引き起こしています。私たちが、太陽光を利用して、大量のCO2を再資源化できるようになれば、これらの課題は一挙に解決できます。人工光合成に関する研究は、社会的にも科学的にも意義があると強く信じていますので、今後もその実現に向けて微力ながら、学生とスタッフの皆さんと力を合わせ研究に注力していきたいと思っています。

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12月6日15:00 関連リンクを追加しました。

NHK Eテレ「100分de名著」にリベラルアーツ研究教育院の國分功一郎教授が出演

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リベラルアーツ研究教育院の國分功一郎教授が、NHK Eテレ「100分de名著」に出演します。

「100分de名著」は、誰もが一度は読みたいと思いながらも、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を、25分×4回の計100分で読み解く番組です。

今回は、哲学史上屈指の難解さをもつという哲学書、スピノザの『エチカ』を読み解きます。

國分功一郎教授
國分功一郎教授

國分功一郎教授のコメント

スピノザの『エチカ』は、しばしば難解と言われます。その難解さの理由は、思考のOS(オペレーティングシステム)の違いとして説明することができるでしょう。

考えでなく考え方そのものが、どこか私たちと違っているのです。しかしその違いさえ理解すれば、この17世紀の哲学者の思想は驚くほどすんなりと私たちの頭の中に入ってきて、私たちの生き方と考え方を大きく変えてくれます。一緒にスピノザの世界を見ていきましょう。

番組情報

  • 番組名
    NHK Eテレ「100分de名著」
  • タイトル
    スピノザ『エチカ』
    第1回 善悪、第2回 本質、第3回 自由、第4回 心理
  • 放送予定日
    2018年12月3日、10日、17日、24日(月)/22:25 - 22:50
  • (再放送)
    2018年12月5日、12日、19日、16日(水)/5:30 - 5:55、12:00 - 12:25
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お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院 文系教養事務

Email : ilasym@ila.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7689

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東工大生チームが第26回衛星設計コンテストで奨励賞を受賞

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東工大生のチームが設計した装置「RAKU(ラク)」が、10月27日に福岡県久留米市において行われた第26回衛星設計コンテスト最終審査会において、奨励賞を受賞しました。

集合写真

集合写真

RAKUと東工大生チームの紹介

宇宙シャワー装置「RAKU」
宇宙シャワー装置「RAKU」

RAKUは、工学院 機械系の田村匠さん(修士課程1年)を代表とする東工大生9名が、授業「宇宙システムデザイン」で学修したことをベースに設計・制作しました。RAKUは人工衛星ではなく、国際宇宙ステーション(以下ISS)内での利用を想定した宇宙シャワー装置です。過去に存在した宇宙シャワーは、利用後数時間に及ぶシャワールーム内の水滴除去が必要であり手間が大きかったため、現在ISSには宇宙シャワーが存在しません。そこで、ISSでの生活をより楽(=RAKU)しくすることを目的に、水滴除去の手間がない宇宙シャワーであるRAKUを提案し、最終審査会では奨励賞を受賞することができました。

田村さんのコメント

奨励賞の受賞は非常に驚きでした。アイデアのユニークさを評価していただけたのだと思っております。コンテストへの参加は、自分の研究ではないこともあり、どんなアイデアでも責任がないものと割り切りました。通常であれば馬鹿らしくて考えないようなアイデアをあえて狙い、人工衛星とは関係のない宇宙シャワーというユニークさで勝負しました。一番苦労したことは手間のかからない水滴除去の方法でした。最終案の使い捨てを思いついたのは、授業とは関係がないことからでした。たまたま自分の研究生活において利用した防塵服が、格安の使い捨て式だったのです。言葉としてはよく聞く「アイデアはいつどこから湧いてくるかわからない」ということが実感できる授業でした。

チームメンバー

  • 田村匠(工学院 機械系 修士課程1年)
  • 麻生海(工学院 機械系 修士課程2年)
  • 加藤史浩(工学院 機械系 修士課程1年)
  • 佐藤亮(工学院 機械系 修士課程1年)
  • 高橋信行(工学院 機械系 修士課程1年)
  • 塚本悠一朗(工学院 機械系 修士課程1年)
  • 中島豪志(工学部 機械宇宙学科 学士課程4年)
  • 中塚祐貴(工学部 機械宇宙学科 学士課程4年)
  • 林輝明(工学部 機械宇宙学科 学士課程4年)

衛星設計コンテストとは

高校生から大学院生までの学生を対象とするコンテスト形式の教育プログラムで、日本機械学会、日本航空宇宙学会、電子情報通信学会、日本宇宙フォーラム等の8学会・機関が共催しています。

設計の部、アイデアの部、ジュニアの部と3部門あり、着想点、創意工夫等の観点から第一次審査(書類審査)を通過したチームが、10月の最終審査会(発表形式審査)で模型を使用した壇上プレゼンテーションを行い、審査されます。

今回のアイデアの部は28チームの応募があり、最終審査会には東工大を含む4チームが進みました。

最終審査会でプレゼンテーション中の(左から)加藤さん、高橋さん、田村さん
最終審査会でプレゼンテーション中の
(左から)加藤さん、高橋さん、田村さん

最終審査会で賞状を受け取る田村さん
最終審査会で賞状を受け取る田村さん

授業「宇宙システムデザイン」の概要

初回授業のアイデア出しで黒板に書き出したアイデア53個
初回授業のアイデア出しで黒板に書き出したアイデア53個

衛星システムとロケットシステムの2大分野をテーマとする修士課程学生向けの授業(担当教員:工学院 機械系の松永三郎教授、他)です。

衛星システムでは、「小型衛星システムとミッションアイデア」または「宇宙機のダイナミクスおよび制御」について、学生自らの発表や提案、検討を軸に、必要な知識や参考資料を随時提供しながら講義を進めています。衛星設計コンテスト等に実際に参加して作品を製作、提出することを1つの目標としています。

ロケットシステムでは、巨大システム設計の象徴であるロケットの設計、開発および打上げ運用の概要と、エンジン開発燃焼試験、ロケット打上げ作業を、映像等を交えながら紹介します。システム設計手法、ロケットサイジング基礎、誘導制御/構造/電気/推進等の各系統について、一連のロケット設計の概念と基礎を習得することを目的としています。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2976


東工大附属科学技術高校の生徒が東工大フィリピンオフィスを訪問

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東京工業大学 附属科学技術高校は、文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発事業の一環として、毎年8月に国際交流協定を結んでいるデラサール大学附属高校(フィリピン共和国)への短期交換留学を行っています。また、毎年10月にデラサール大学附属高校の生徒を受け入れています。

東工大フィリピンオフィスの前で

東工大フィリピンオフィスの前で

7年目となる今回は、7月29日から8月3日にかけて、附属高校の生徒がフィリピンを訪れ、7月31日にデラサール大学内の東工大フィリピンオフィスを訪問しました。附属高校のメンバーは、教諭2名と生徒6名で、デラサール大学附属高校の教員や生徒6名も同行しました。生徒は東工大フィリピンオフィスのロナルド・エス・ガラルドマネージャーマネージャーとスタッフのイオウラニ・エヌ・エスゲラ氏から、交換留学のこれまでの歴史や、東工大フィリピンオフィスについて話を聞きました。続いて、デラサール大学のエンジニアリング・持続的発展研究センター(CESDR)を見学し、その後イントラムロスなどを訪問しました。附属高校の生徒からは、「キャンパス内が賑やかな雰囲気で歴史も感じられ、学生も活気づいていた」「マニラ唯一の電車がキャンパスの近くを通り、便利だ」等の感想が聞かれました。

お問い合わせ先

国際事業課 国際事業グループ

E-mail : kokuji.jig@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7607

世界初、単一細胞での遺伝子発現制御解析に成功 幹細胞、がんの成立機序解明に期待

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九州大学 生体防御医学研究所(大川恭行教授、原田哲仁助教、前原一満助教ら)、東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター(木村宏教授、半田哲也特任助教ら)、東京大学 定量生命科学研究所(胡桃坂仁志教授、有村泰宏特任助教(当時)、白髭克彦教授)の研究グループは、極めて少数の細胞を用いてエピゲノム情報[用語1]を取得できる「クロマチン挿入標識(Chromatin Integration Labeling: ChIL)」法を開発しました。本手法は、細胞を破壊することなしに、任意の転写因子やヒストン修飾[用語2]などが存在する領域の塩基配列を増幅することができるため、高感度での解析ができます。そのため、遺伝子の発現を制御する転写因子の結合位置やヒストン修飾を単一の細胞で測定することが世界で初めて可能になりました。

人体に存在する細胞は全て同一の遺伝情報を持ちますが、異なる組織を構成する細胞はそれぞれ特定の遺伝子を選択的に発現することで固有の性質を持つようになります。近年の技術革新により、単一の細胞での遺伝子発現(個々の遺伝子のRNAの存在量)を解析することが可能になっています。しかしながら、遺伝子の発現制御のメカニズムを理解するために不可欠なエピゲノム解析は、従来の手法では少なくとも数千個の細胞を必要としたため、幹細胞[用語3]など生体内にわずかしか存在しない細胞への適用は極めて困難でした。本研究により開発された手法は、胚発生や細胞分化の制御機構など生命現象を制御する分子機構の解明に極めて有用であるとともに、がん研究・再生医療などへの応用が広く期待されます。

本研究の成果は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)研究領域「統合1細胞解析のための革新的技術基盤(研究総括:菅野純夫 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 非常勤講師)」における研究課題「細胞ポテンシャル測定システムの開発(研究代表者:大川恭行)」、文部科学省 科学研究費新学術領域研究「クロマチン潜在能(領域代表者:木村宏)」、日本学術振興会 科学研究費、九州大学 生体防御医学研究所共同利用・共同研究などの支援により得られたものです。

本研究成果は、2018年12月10日(月)午後4時(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Cell Biology」で公開されました。

クロマチン挿入標識技術:ゲノムDNA上の転写因子やヒストン修飾を、抗体を基に作製したプローブで標識することで可視化し(右図)、標識周辺のDNA配列を増幅させた後に大規模塩基配列決定することで、位置情報を獲得する技術です。

クロマチン挿入標識技術:ゲノムDNA上の転写因子やヒストン修飾を、抗体を基に作製したプローブで標識することで可視化し(右図)、標識周辺のDNA配列を増幅させた後に大規模塩基配列決定することで、位置情報を獲得する技術です。

研究者からひとこと

九州大学 大川恭行教授(左)並びに東京工業大学 木村宏教授(右)
九州大学 大川恭行教授(左)並びに東京工業大学 木村宏教授(右)

本技術は、私たちエピゲノム研究者として最も必要としている技術でもありました。アイデアの完成は早かったのですが、結局実用的な技術になるまで5年以上の歳月を経ることになりました。是非、この技術を世界中で活用してもらって、これまで困難であった幹細胞による再生医療の実現、がん等の機序解明や生命科学の大きな飛躍の一助になって欲しいです。

研究成果のポイント

  • 細胞染色を基盤とした遺伝子発現制御情報(エピゲノム情報)解析技術を開発した。
  • 単一細胞でのエピゲノム情報取得を可能にした。
  • 開発した方法は、発生・分化・幹細胞の研究やがん研究・老化研究・再生医療への応用が広く期待される。

用語説明

[用語1] エピゲノム情報 : 後天的なゲノム制御情報。DNAの塩基配列に加えて、DNAそのものやDNAに強く結合するヒストンの修飾などにより、遺伝子の発現が制御される。

[用語2] ヒストン修飾 : DNAに強く結合するヒストンタンパク質の翻訳後修飾。メチル化やアセチル化など多様な修飾により遺伝子発現の抑制や活性化などが制御される。

[用語3] 幹細胞 : 組織や器官を構成する分化した細胞の元となる細胞。多能性を持つ胚性幹細胞やiPS細胞などがよく知られているが、特定の細胞にのみ分化するような成体幹細胞も存在する。これらの幹細胞は存在量が少なく、その解析が難しい。

論文情報

掲載誌 :
Nature Cell Biology, 2018
論文タイトル :
A chromatin integration labelling method enables epigenomic profiling with lower input
著者 :
+Harada A, +Maehara K, +Handa T, Arimura Y, Nogami J, Hayashi-Takanaka Y, Shirahige K, Kurumizaka H, *Kimura H, *Ohkawa Y(+共筆頭著者、*共責任著者)
DOI :

お問い合わせ先

研究に関すること

九州大学 生体防御医学研究所
附属トランスオミクス医学研究センター
教授 大川恭行

E-mail : yohkawa@bioreg.kyushu-u.ac.jp
Tel : 092-642-4534 / Fax : 092-642-4526

東京工業大学 科学技術創成研究院
細胞制御工学研究センター
教授 木村宏

E-mail : hkimura@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5742

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部
川口哲

E-mail : crest@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3524 / Fax : 03-3222-2064

取材申し込み先

九州大学 広報室

Email : koho@jimu.kyushu-u.ac.jp
Tel : 092-802-2130 / Fax : 092-802-2139

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京大学 定量生命科学研究所 総務チーム

Email : soumu@iam.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-7813 / Fax : 03-5841-8465

科学技術振興機構(JST) 広報課

Email : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

免疫細胞活性化に重要な中心体移動の謎解明 中心体の移動が握る免疫制御

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要点

  • 免疫T細胞の活性化に必須の中心体[用語1]の移動機構を明らかにした
  • 様々な生命現象に関わるモーター分子を制御する仕組みに新たな知見
  • 免疫細胞の活性制御に関わる基礎的な仕組みの解明につながる

概要

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系のリム・ウェイ・ミン大学院生(当時)、伊藤由馬助教、十川久美子准教授(当時)、徳永万喜洋教授の研究チームは、免疫T細胞の活性化に必須な、中心体が細胞表面近くに引き寄せられる仕組みを明らかにした。

免疫システムの司令塔として働くリンパ球T細胞が、抗原を認識して活性化する際には、微小管[用語2]の集まる中心体が細胞表面側に移動することが知られていた。これにより、免疫を司る種々のサイトカインと呼ばれるタンパク質を細胞外に分泌したり、感染細胞やガン細胞を殺したり、T細胞の活性化自体を制御するという免疫応答がもたらされる。しかしながら中心体移動の機構は、よくわかっていなかった。

今回、複数種類のタンパク質分子を生きた細胞で同時に観察できる光学顕微鏡を使って、多種類の分子の働き方を明らかにした。微小管は、中心体を起点として細胞膜近くまで伸びているが、その上で働くタンパク質分子・CLIP-170[用語3]により、 モーター分子を中心体方向と細胞膜方向の両方向に移動させる新たな機構を発見した。これは、これまで一方向だけに動くとされていたモーター分子では新たな発見で、基盤的な働きをする分子モーターの関わる多くの生命機能の解明に、新たな展開をもたらすと期待される。

今年のノーベル生理学・医学賞で注目を集めるガン免疫療法の対象として受賞対象となった分子の一つは、この中心体移動により細胞表面に配置されることが知られており、免疫療法の進歩など将来的な応用に繋がることが期待される。

本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』にて、2018年11月28日に掲載された。

研究の背景と経緯

免疫細胞は、体を外敵から防御する免疫系として中心的な役割を担っている。病原菌・ウィルスや花粉などの異物が体内に侵入したことを察知すると、樹状細胞などの抗原提示細胞がそれらを取込み、抗原として細胞表面に提示する。リンパ球の1種であるT細胞は、提示された抗原を認識すると活性化し、免疫系の細胞間シグナル分子であるサイトカインを分泌したり、感染細胞やガン細胞を殺したり、抗体産生を促すなど免疫系を活性化する司令塔として働く。

抗原提示を受けたT細胞表面では、T細胞受容体が数十~数百分子集合した「マイクロクラスター[用語4]」と呼ばれる集合体が形成される。これは、抗原提示細胞との細胞接着面の中央領域に集まり「免疫シナプス[用語5]」と呼ばれる特徴的な構造を形成し、免疫応答の場として機能する。

細胞内部の核近くには、中心体(微小管形成中心)と呼ばれる小器官があり、細胞骨格である微小管が集まっている。微小管は中心体を起点として放射状に細胞周辺まで伸びる(図1)。T細胞が活性化されると、この中心体が免疫シナプスの中心近傍に移動する。

この中心体の移動は、T細胞が活性化されて種々の免疫応答を営むようになるために必要な現象だ。今年のノーベル生理学・医学賞は、免疫を制御するタンパク質の発見と、それを対象とした抗体医薬によるガンの免疫療法の開発に対して授与された。抗体医薬の対象タンパク質で受賞対象となった分子の1つにCTLA-4があるが、CTLA-4を細胞表面へ配置するには中心体移動が必要である。

中心体移動の仕組みは、これまで謎として残されていた。それは中心体移動には多くの種類の生体分子が関わり、それぞれ分子の動き・細胞内配置・分子間相互作用が時間的・空間的にダイナミックに変化していて、解明が容易ではなかったからだ。

研究の内容と成果

研究チームではこれまで、蛍光[用語6]を使って分子1個1個を光学顕微鏡で直接観察できる1分子イメージング顕微鏡を用いて、対物レンズ型全反射照明(TIRF)法[用語7]薄層斜光照明(HILO照明)法[用語8]を開発してきた。

今回、複数種類のタンパク質分子を同時に生きた細胞で観察できる多色蛍光顕微鏡を使って、多種類の分子が織りなす中心体移動の仕組み解明を目指した。

まず、微小管に結合する分子に注目した。微小管は中心体を起点として細胞周辺へと伸長する。伸長先端であるプラス端に結合するタンパク質・CLIP-170はリン酸化[用語9]されることで、微小管の伸長を促進するタンパク質だ。CLIP-170のリン酸化を阻害したT細胞を刺激したところ、中心体は細胞膜の近くに来たが、免疫シナプスが形成される細胞接着面の中心近傍には移動しなかった(図2)。しかも、T細胞からはサイトカインIL2の放出はなかった。このことから、リン酸化されたCLIP-170は、中心体の免疫シナプス近傍への移動に必要不可欠であるとともに、T細胞の活性化に必須であることがわかった。

CLIP-170と他のタンパク質および中心体移動との関係を、多色蛍光顕微鏡を用いて調べた。CLIP-170と他のタンパク質とをそれぞれ蛍光で標識し同時観察し、2色の蛍光動画像を重ね合わせる(図2)。同様の場所に局在している割合や動く速さと向きについて、T細胞の刺激の有無による変化や中心体の移動とともに定量した。

その結果、中心体が細胞接着面の中心近傍に移動するには、T細胞への刺激と、CLIP-170のリン酸化との両方が必要であることがわかった。T細胞を刺激することでダイニン[用語10]は活性化され、微小管上を単独でマイナス端方向へ運動する。さらにCLIP-170がリン酸化されていると、ダイニンの一部がCLIP-170/ダイナクチン[用語11]複合体と結合し、微小管プラス端領域に結合し、プラス端方向へ移動する。マイナス端方向とプラス端方向の両方向への移動が共存することにより、ダイニンが細胞接着面の中央領域に集まり、その結果、中心体が中心近傍に移動し、T細胞が活性化されることを見い出した(図2)。

活性化したダイニンの速さは以前に報告されている中心体の移動速度と良く一致していたことから、細胞膜に固定されている活性化ダイニンが微小管を引き寄せ中心体を移動させていることが明らかとなった。

今後の展開

今回の成果は、生きた細胞で多種分子を同時に顕微鏡観察し、分子動態と相互作用を定量解析することが、従来解けなかった問題を解決する強力な手法であることを示している。

多様な働きをするダイニンは、最近解かれた構造と、多種分子との相互作用、多様な動態、機能との関係が解明されつつある。今回の新たな知見は、分子モーターが関わる多くの生命機能の解明につながると期待される。

今回明らかになった免疫活性化の仕組みは、ガン免疫療法における抗体医薬の対象タンパク質・CTLA-4の細胞表面への配置を制御するものだ。抗CTLA-4抗体は、既に承認されて治療が始まっている。従来の化学療法に比べて副作用は少ないとされているが、安全性への十分な配慮が必要となる。本成果は、より安全な治療法への進歩や、免疫制御の新しい操作方法への発展など、将来的な応用が期待される。

抗原刺激されたT細胞において中心体が細胞接着面の中心近傍に移動する仕組み

図1. 抗原刺激されたT細胞において中心体が細胞接着面の中心近傍に移動する仕組み

(左)抗原刺激を受けていない休止状態のT細胞では、中心体は細胞核の近傍にあり、微小管が放射状に細胞周辺へと伸長している。モーター分子・ダイニンのほとんどは細胞膜に結合して動かない状態にある。微小管プラス端集積因子であるCLIP-170は、休止状態のT細胞でもリン酸化されていて、プラス端領域に結合して微小管の伸長を追跡しプラス端方向へ動いている。CLIP-170とダイニンとはほとんど結合していない。

(右)抗原刺激を受けたT細胞では、ダイニンの一部が“活性化”され、ダイニン単独で微小管上をマイナス端方向に遅く動く「弱い前進性状態」[補足1]になる。前進運動の持続性は低く、1~2 μm(マイクロメートル)未満のマイナス端方向へ運動した後、アンカータンパク質(NDE1と推測される)との結合で“膜結合”して止まる。

これと並行して、ダイニンの少数の一部がCLIP-170/ダイナクチン複合体に“捕捉”され、微小管プラス端領域に結合しプラス端方向へ移動する [補足2]、[補足3]。この移動状態も安定ではなく、1~2 μmの追跡後、ダイニンは複合体から“解離”し、アンカータンパク質により膜結合して止まる。

マイナス端方向とプラス端方向の両方向への移動が共存することが重要で、ダイニンが細胞接着面の中央領域すなわち免疫シナプスに集まり、中心体が細胞接着面の中心近傍に移動し、T細胞が活性化される。

また、活性化された「弱い前進性状態」のダイニンの速さは以前に報告されている中心体の移動速度と良く一致した。このことと、微小管とダイニンの配置状態とは、細胞膜に固定されている活性化ダイニンが微小管を引き寄せ、その結果、中心体を移動させているという分子機構を示している。

2色同時蛍光分子イメージングにより、中心体移動にはT細胞刺激とCLIP-170リン酸化の両方が必須であることが示された

図2. 2色同時蛍光分子イメージングにより、中心体移動にはT細胞刺激とCLIP-170リン酸化の両方が必須であることが示された

緑色蛍光タンパク質GFPで標識したダイニン(左端)と、赤色蛍光タンパク質RFPで標識したCLIP-170(左から2番目)とを、Jurkat T細胞(ヒト白血病T細胞由来の細胞株)に発現させ、2色同時蛍光顕微鏡で、細胞接着面を観察した。白黒画像を蛍光色で着色したうえで重ね合せ(右から2番目)、正方形で示した領域を拡大表示した(右端)。輝点は分子が集合したクラスター。重ね合せで黄色に見える部分は、ダイニンとCLIP-170が共局在していることを示している。WTはwild typeの略で、変異体でない本来のままの分子のこと。S312Aは、リン酸化される312番目のセリンをアラニンに置換した変異体で、リン酸化されていない状態にある。図中のスケールバーは、重ね合せ画像が5 μm(右から2番目)、拡大図が2 μm(右端)。

一連の研究から次のことが分かった。

1.
中心体が細胞接着面中心近傍に移動するには、T細胞への刺激とCLIP-170のリン酸化との両方が必要である。
2.
両条件が揃うと、ダイニンは免疫シナプス領域である細胞接着面中央領域に集まる。
3.
T細胞刺激のみで、ダイニンは活性化される。活性化ダイニンは、ダイニン単独で微小管上をマイナス端方向に動く「弱い前進性状態」にある。
4.
T細胞刺激と共にCLIP-170がリン酸化されていると、ダイニンの一部がCLIP-170/ダイナクチン複合体と結合し、微小管上をプラス端方向へと伸長追跡により移動する。
5.
その結果、ダイニンには、マイナス端方向へ移動と、プラス端方向へ移動との両方の動態が共存する。どちらかの移動を欠いても、ダイニンは細胞接着面中央領域に集まらず、中心体も中心近傍に移動しない。またサイトカインが産生されずT細胞が活性化されない。

関連動画

用語説明

[用語1] 中心体(centrosome) : 微小管の形成中心として働く細胞内小器官。微小管形成中心(microtubule-organizing centre)とも呼ばれる。通常、細胞1個に1個だけあり、核の近くに存在する。細胞分裂時に複製され、紡錘体の中心として働く。

[用語2] 微小管(microtubule) : 主要な細胞骨格の1つ。チューブリンと呼ばれるタンパク質が重合して形成される外径約25 nm(ナノメートル)の管状の構造。形態形成、細胞分裂、細胞内物質輸送、細胞運動など多様な役割を担っている。微小管は静的構造ではなく、伸長と短縮を繰り返しており、細胞内では中心体を起点として細胞周辺へと伸長してゆく。

[用語3] CLIP-170(cytoplasmic linker protein 170) : 微小管プラス端集積因子の1つであるタンパク質。リン酸化されていないCLIP-170は、プラス端領域に比較的安定に結合し、微小管の伸長速度を抑えるが、リン酸化CLIP-170はプラス端領域で速く結合解離し微小管の伸長を促進する。他の微小管プラス端集積因子のタンパク質であるEB1(end-binding protein 1)を介して微小管と結合。細長い形をしており、一方の端でEB1と結合し、他端でダイナクチンと結合する。

[用語4] マイクロクラスター : T細胞が活性化する際に、T細胞膜に形成されるT細胞受容体複合体(TCR/CD3)の数十~数百分子の集合体。シグナル伝達分子も結合する。T細胞受容体分子複合体が、抗原提示細胞により提示された抗原と結合すると、マイクロクラスターが形成される。これが起点となり、T細胞受容体シグナルが伝達され、T細胞が活性化される。マイクロクラスターは中心領域へ集積し、免疫シナプスを形成する。

[用語5] 免疫シナプス : 抗原提示細胞がT細胞を活性化する際には、両細胞は強固に接着し、接着面の間にリング状の構造が形成されるが、この構造を免疫シナプスと呼ぶ。各種受容体や情報伝達分子および関連分子が集積し、情報伝達や免疫応答の場として機能する。

[用語6] 蛍光 : 照明した光とは色(波長)の異なる光を出す現象のこと、もしくは出された光。蛍光を発する色素(蛍光色素)を用いて、観察対象を標識して見る蛍光顕微鏡法は、色の違いを利用して、標識した観察対象から出た蛍光のみを選び観察することができるので、背景光をカットして微弱にし、見たいもののみを鮮明に見ることができる。※名前が誤解をしばしば招くが、生物の蛍が光るのは生物発光によるもので蛍光現象とは異なる。

[用語7] 全反射照明(TIRF)法 : 試料と基板ガラスの境界面で、照明光を境界面に平行に近い角度で入射すると、全反射が起こる。全反射の際には、試料側にごく薄く表面から深さ50~200 nm程度の近傍のみに光(エバネッセント光)が沁み出る。このエバネッセント光を蛍光の照明として用いる手法。

[用語8] 薄層斜光照明(HILO照明)法 : 対物レンズに照明光を入射するのに、全反射照明よりも少しだけ対物レンズ中心軸寄りにレーザー光を入射すると、試料の内部を薄く照明することができる手法。細胞内を鮮明に分子イメージングすることができる。

[用語9] リン酸化 : リン酸基を付加する反応。タンパク質では通常、セリン、トレオニン、チロシンのOH基がリン酸化される。酵素や受容体では、リン酸化は活性化制御に用いられており、シグナル伝達においては、リン酸化はシグナルとして用いられている。

[用語10] ダイニン(dynein) : 分子モーターの一種で、微小管上をマイナス端(中心体)方向にATPの加水分解エネルギーを使って運動する。細胞運動・細胞内物質輸送・染色体分配などを行う細胞質ダイニンが今回の研究対象。最近、原子レベルの構造が解かれ、多様な動態・多種の他分子との相互作用・多様な機能と、構造との関係が解き明かされつつある。

[用語11] ダイナクチン(dynactin) : 細胞質ダイニンと結合するタンパク質。計23個のサブユニットで構成され、フィラメント部分と、ショルダー(shoulder)部分とからなる。ショルダー部分は、フィラメントから出た“肩”と“腕”のような構造をしており、その先端にCLIP-170結合部位がある。

補足説明

[補足1] ダイニンの状態 : 活性化される前のダイニンは「auto-inhibited(自己抑制)状態」にあって動かず、活性化されたダイニン単独では「weakly precessive(弱い前進性)状態」になって秒速0.05~0.08 μmの遅い速度でマイナス端方向に運動し、ダイニン・ダイナクチン・カーゴ(荷物)アダプター複合体を形成すると「highly precessive(高い前進性)状態」になって最高で秒速0. 51 ± 0.06 μmという荷物で遅くなる速度と、最高で4.3 ± 0.2 pN(ピコニュートン)という速度等で変化する力を出すことが報告されている。本研究成果では、活性化されたダイニンは他の分子と結合せず、ダイニン単独でマイナス端方向に秒速0.05 ± 0.03 μmの速さで動いており、「弱い前進性状態」にあることを示している。

[補足2] ダイニンとダイナクチンおよびNDE1との排他的結合 : ダイニンのダイナクチンとの結合は、膜結合タンパク質NDE1との結合と排他的に競合することが知られている。このことは、今回の研究結果において、CLIP-170/ダイナクチン複合体がダイニンをプラス端方向へ移動させるのに、膜からダイニンを“捕捉”し、“解離”してダイニンが膜結合すると考えられることを、ダイナクチンとNDE1との競合的結合によると理解すればよく説明できる。

[補足3] 抑制性ダイナクチン : ダイナクチンは、ダイニンを活性化させる(dynein activation)タンパク質として見つかり、その名の由来となっている。ところが最近、ダイナクチンのショルダー部分にある最大サブユニットDCTN1(p150Gluedとも呼ばれる)には2つのisoform (機能は同じだが構造が一部異なるタンパク質)であるDCTN1AとDCTN1Bとがあり、DCTN1Aを含むダイナクチンはダイニンと結合してhighly precessive(高い前進性)運動を示すが、DCTN1Bを含むダイナクチンはダイニンと結合してダイニンの運動性を抑制することが見出されている(Kobayashi T, et al., PLOS ONE, 12:e0183672, 2017)。今回の研究では、CLIP-170/ダイナクチン複合体に結合したダイニンは、CLIP-170によるプラス端追跡によってプラス端方向へ輸送された。このことは、T細胞活性化においては、抑制性isoformのダイナクチンが働いていることを示している。本研究成果は、抑制性ダイナクチンが重要な生命機能を担っていることについて、最初の発見と考えられる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
CLIP-170 is essential for MTOC repositioning during T cell activation by regulating dynein localisation on the cell surface
著者 :
Wei Ming Lim, Yuma Ito, Kumiko Sakata-Sogawa, Makio Tokunaga
DOI :
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食塩の過剰摂取によって高血圧が発症する脳の仕組みを解明 新たな治療薬の開発に期待

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高血圧は、日本の成人のうち約4,300万人が罹患していると試算される重大な国民病です。食塩の過剰摂取が高血圧の原因となることは良く知られており、その仕組みとして、体液中のNa+濃度が上昇することによって交感神経系が活性化し、その結果として血圧が上がる、という説が有力となっています。しかし、脳がどのようにしてNa+濃度を感知し、その情報をどのような仕組みで交感神経まで伝えられているのかは不明でした。

今回、自然科学研究機構 基礎生物学研究所の野田昌晴教授(総合研究大学院大学 教授、東京工業大学 科学技術創成研究院 特定教授(11月1日より))の研究グループは、食塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取により体液中のナトリウム(Na+)濃度が上昇すると、脳内のNa+濃度センサーであるNax[用語1]がこれを感知して活性化する、その結果、交感神経[用語2]の活性化を介して血圧上昇が起こることを初めて示しました。

本研究グループでは、これまでに細胞外液のNa+濃度上昇に応じて開口するNaチャンネルであるNaxを見いだし、その機能や生理的役割を明らかにしてきました[参考文献1-3]。今回、Nax遺伝子を欠損したマウスが、野生型マウスと異なり、体液のNa+濃度が上昇しても交感神経の活性化による血圧の上昇を起こさないことを発見しました。さらに、神経活動の活性化や抑制を光によってコントロールする技術などを用いて、Naxが感知したNa+濃度上昇のシグナルが交感神経の活性化につながる仕組みを分子のレベル、および神経回路ネットワークのレベルで解明しました。

本成果は、Na+濃度と血圧上昇をつなぐ脳内機構を詳細に明らかにしたものであり、高血圧に対する新しい治療戦略の創出に役立つものと期待されます。

本研究成果は、2018年11月29日午前11時(米国東部時間)に米国科学雑誌「Neuron」オンライン版で公開されました。

体液のNa+度上昇に応答した血圧上昇を担う脳内メカニズム

図. 体液のNa+度上昇に応答した血圧上昇を担う脳内メカニズム

1.
体液のNa+濃度の上昇を、Naxチャンネルが感知し、Naxを発現するグリア細胞(アストロサイトと上衣細胞)内にNa+の流入が起こる。
2.
Nax発現グリア細胞において、エネルギー産生のため嫌気的解糖系が亢進し、その結果、乳酸が産生される
3.
MCT(乳酸/H+共輸送体)を介して乳酸とH+がグリア細胞から放出される。
4.
細胞外の酸性化により、OVLT(→PVN)ニューロンに発現するASIC1aが活性化する。
5.
OVLT(→PVN)ニューロンが活性化し、シグナルがPVNへと伝達される。
6.
PVNからRVLMを経由して(あるいは直接)、脊髄にシグナルが伝達される。
7.
交感神経の活動が亢進する。
8.
血管が収縮し、血圧が上昇する。

研究の背景

高血圧は、日本の成人のうち約4,300万人が罹患していると試算される重大な国民病であり、高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人に上ると推定されています。高血圧は、心血管病(心疾患および脳卒中)の最大の危険因子であり、脳卒中罹患の50%以上、心血管病死亡の約50%が高血圧によるものと推定されています。

高血圧の主要な原因として食塩の過剰摂取があることは良く知られています。食塩の過剰摂取による血圧上昇の程度には個人差がありますが、日本人は血圧上昇が起こりやすいと言われています。その第一の原因は腎臓による尿中へのNa+の排泄が追い付かず体内で貯留し、体液中のNa+濃度が上昇することにあります。これまでNa+による血圧上昇の仕組みは、血液浸透圧の上昇によって血管中に水分が流入することで、血液量が増大するためとされてきました。これに対し10年余り前から、体内の血管に張り付いた交感神経の活性化により、血管が収縮することで高血圧を発症しているという説が有力になってきました。ところが、体液中のNa+濃度の上昇がどこでどのように検知されているのか、そして、そのシグナルを脳内の交感神経制御中枢に伝えその活性化を引き起こしている分子機構や神経回路については未解明のままでした。

研究の内容

本研究グループでは、これまでに細胞外液のNa+濃度上昇に応じて開口するNaチャンネルであるNaxを見いだし、その機能や生理的役割を明らかにする研究を行ってきておりました[参考文献1-3]。今回の研究では、Naxが血圧の制御に関与するNa+濃度センサーとして働いているのではないかという点について検討しました。まず、野生型マウスに大量の食塩を与える実験を行い、体液中のNa+濃度が上昇(~10 mM)すること、そして、それに伴って血圧が上昇することを確認しました。一方、Nax遺伝子欠損マウスでは体液のNa+濃度が同程度上昇しているにも関わらず、血圧の上昇は全く起こりませんでした(図1)。次に、高濃度のNa+を含む水溶液(高張Na+溶液)をマウスの脳室内に注入し、脳脊髄液[用語3]のNa+濃度を上昇させる実験を行いました(図2)。野生型マウスでは、交感神経の活性化と血圧上昇が起こったのに対し、Nax遺伝子欠損マウスでは交感神経の活性化や血圧上昇は起こりませんでした。

Nax遺伝子欠損マウスは食塩を大量に摂取しても血圧が上昇しない

図1. Nax遺伝子欠損マウスは食塩を大量に摂取しても血圧が上昇しない

A:
食塩を大量に摂取させる実験の概要図。飲み水を2%食塩水に交換して7日間飼育する。
B:
血液中(左)と脳脊髄液中(右)のNa+濃度。通常、動物の体液中のNa+濃度は通常約145 mMに保持されている。食塩の大量摂取により、野生型マウスとNax欠損マウスの体液中Na+濃度は同程度(約10 mM)の上昇を示した。
C:
血圧測定の概要図。テレメトリーシステムにより、マウスが自由に行動できる状態で連続的に血圧の測定ができる。
D:
通常の状態(左)と食塩の過剰摂取状態(右)のマウスにおける、1日(24時間)の血圧の推移。食塩を過剰摂取した野生型マウスは、1日を通じて同条件のNax欠損マウスよりも高い血圧を示す。
E:
24時間の平均血圧。食塩の大量摂取により、野生型マウスでは平均血圧が約8 mmHg上昇したが、Nax欠損マウスでは血圧上昇が起こらなかった。

Nax遺伝子欠損マウスは脳脊髄液のNa+度が上昇しても、交感神経活動の亢進や血圧上昇が起こらない

Nax遺伝子欠損マウスは脳脊髄液のNa+度が上昇しても、交感神経活動の亢進や血圧上昇が起こらない

図2. Nax遺伝子欠損マウスは脳脊髄液のNa+度が上昇しても、交感神経活動の亢進や血圧上昇が起こらない

A:
高張Na+溶液を脳室内に注入する実験の概要図。交感神経の活動レベルは腰部にある交感神経線維の束に電極を接触させて測定した。
B:
高張Na+溶液を脳室内に注入したときの交感神経活動の代表的データ(左)と変化の時間推移(右)。
野生型マウスでは交感神経活動が約15%亢進したが、Nax欠損マウスでは変化しなかった。
C:
高張Na+溶液を脳室内に注入したときの血圧の変化。野生型マウスでは血圧が約8 mmHg上昇したが、Nax欠損マウスでは血圧上昇が起こらなかった。

このことから、Naxが体液中のNa+濃度の上昇を感知し、交感神経の活性化を通じて血圧を上昇させている脳内センサーであることが強く示唆されました。また、Naxが発現している脳内器官のうち終板脈管器官(OVLT)[用語4]を損傷させたマウスでは、高張Na+溶液の脳室内への注入による交感神経性の血圧上昇が起こらなかったため、血圧制御のためにNa+濃度を感知する領域はOVLTであると考えられました。

脳は脊髄を介して交感神経にシグナルを伝達しているため、OVLTからのシグナルを脊髄へと仲介している脳領域があると考えられます。本研究グループが、視床下部室傍核(PVN)[用語5]に注目し、PVNにシグナルを伝えるOVLTニューロン[以下、OVLT(→PVN)ニューロンと呼ぶ]を逆行性に標識して観察すると、このニューロンはOVLTの中でNaxを発現するグリア細胞[用語6]に囲まれた状態で存在していることが分かりました(図3A、B)。

そこで、OVLT(→PVN)ニューロンが活性化すると血圧が上昇するのか、光遺伝学[用語7]の手法を用いて調べました。まず、光感受性陽イオンチャンネルChR2を用いてOVLT(→PVN)ニューロンを選択的に活性化させると、血圧が上昇することが確認できました(図3C)。この血圧上昇は交感神経活動の阻害剤により消失したため、交感神経を介して起こっていることが分かりました。反対に、光感受性クロライド(Cl-)ポンプeNpHRを用いたOVLT(→PVN)ニューロンの抑制実験も行いました(図3D)。光照射によりOVLT(→PVN)ニューロンの活動を抑制すると、高張Na+溶液の脳室注入による交感神経性の血圧上昇が抑制されました(図3D)。これらの実験から、OVLT(→PVN)ニューロンが体液のNa+濃度上昇に応答した交感神経性の血圧上昇を担うニューロンであることが明らかとなりました。

Naxは、OVLT(→PVN)ニューロンそのものではなくグリア細胞に発現しているため、グリア細胞からニューロンへの情報伝達の仕組みが必要です。OVLT(→PVN)ニューロンは細胞外のNa+濃度を上昇させた時だけでなく(図4A)、細胞外を酸性状態にすることでも活性化したため(図4B)、この仕組みに酸(H+)が関わっている可能性が考えられました。調べてみると、細胞外Na+濃度が上昇したとき、OVLTでは細胞外に酸(H+)が放出されていることが分かりました(図4C)。このH+放出は、Nax発現グリア細胞における糖の取り込み、並びに嫌気的解糖(酸素を使わないグルコース代謝)の亢進によるものでした。嫌気的解糖系の産物である乳酸は、乳酸/H+共輸送体を介して細胞外に放出されるため、H+が同時に細胞外に放出されます。

さらに、細胞外の酸性化に応答して活性化する酸感受性イオンチャンネルASIC1[用語8]がOVLT(→PVN)ニューロンに発現していることを見いだしました(図4D)。阻害剤を用いて調べたところ、ASIC1a(ASIC1の中でも酸に感受性の高いタイプ)を阻害するとNa+濃度の上昇に応答したOVLT(→PVN)ニューロンの活性化や交感神経性の血圧上昇が消失しました(図4E)。反対に、ASIC1の活性化剤をOVLTに注入すると、血圧を上昇させることができました。この血圧上昇は、交感神経活動の阻害剤をあらかじめ投与しておいたマウスでは起こらなかったので、交感神経を介したものであることが分かりました。

Naxによる血圧上昇は、OVLT(→PVN)ニューロンの活性化を介して起こっている

図3. Naxによる血圧上昇は、OVLT(→PVN)ニューロンの活性化を介して起こっている

A:
OVLT(→PVN)ニューロンを標識する方法の概要図。特殊な色素(逆行性色素)をPVNに注入すると、色素がニューロンに取り込まれ、溯ってOVLT(→PVN)ニューロンが標識される。
B:
OVLTを蛍光顕微鏡で撮影した写真。Naxを赤、OVLT(→PVN)ニューロンを緑に染色している。OVLT(→PVN)ニューロンはNaxを発現する細胞に取り囲まれて存在している(矢頭)。
C:
光刺激(青色)によりOVLT(→PVN)ニューロンを選択的に活性化させたときの血圧の変化。OVLTへの光照射により血圧上昇が起こった。
D:
高張Na+溶液を脳室内に注入したときの血圧の変化。光刺激(黄色)によりOVLT(→PVN)ニューロンの活動を選択的に抑制しておくと、Na+濃度上昇に応答した血圧上昇は抑制された。

Naxの活性化は、酸の放出とそれにともなうASIC1aの活性化を誘導し、OVLT(→PVN)ニューロンの活動を亢進させることで血圧を上昇させる

Naxの活性化は、酸の放出とそれにともなうASIC1aの活性化を誘導し、OVLT(→PVN)ニューロンの活動を亢進させることで血圧を上昇させる

図4.
Naxの活性化は、酸の放出とそれにともなうASIC1aの活性化を誘導し、OVLT(→PVN)ニューロンの活動を亢進させることで血圧を上昇させる
A:
OVLT(→PVN)ニューロンの電気活動。細胞外のNa+濃度を160 mMへ上昇させると、野生型マウスのニューロンの電気活動は亢進したが、Nax欠損マウスのニューロンの活動は変わらなかった。
B:
細胞外を酸性化すると(pH7.4→pH6.8)、OVLT(→PVN)ニューロンの電気活動が亢進した。
C:
OVLTを蛍光顕微鏡で撮影した写真。細胞外pHの変化に反応する色素の存在下で撮影した。細胞外のNa+濃度を160 mMに上昇させると、野生型マウスのOVLTでは細胞外領域の酸性化が起こったが、Nax欠損マウスのOVLTでは起こらなかった。
D:
OVLTを蛍光顕微鏡で撮影した写真。ASIC1を赤、OVLT(→PVN)ニューロンを緑に染色している。OVLT(→PVN)ニューロンはASIC1を発現している(矢頭)。
E:
高張Na+溶液を脳室内に注入したときの血圧の変化。OVLTにASIC1aの特異的阻害剤を注入しておくと、Na+濃度上昇に応答した血圧上昇は起こらなくなった。

これらの結果から、OVLTのグリア細胞に発現するNaxが活性化すると、H+の放出が促進され、放出されたH+がASIC1aを介してOVLT(→PVN)ニューロンを活性化することによって、交感神経性の血圧上昇が誘導されていることが明らかとなりました。加えて、OVLT(→PVN)ニューロンの活性化は、PVNを経て、さらに下流の交感神経中枢であるRVLMへとシグナルを伝えていることも分かりました。

今後の展開

脳内機構を解明した今回の研究は、高血圧症の新たな治療法の創出に役立つと期待されます。また今回の研究成果は、原因不明の本態性高血圧[用語9] の発症機構を理解するための重要な一歩ともいえます。

付記

本研究は、以下の支援を受けて実施しました。
  • 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「光の特性を活用した生命機能の時空間制御技術の開発と応用」研究領域(影山龍一郎 研究総括)における研究課題「オプトバイオロジーの開発による体液恒常性と血圧調節を司る脳内機構の解明」(研究代表者:野田昌晴)
  • 科学研究費助成事業 基盤研究(S)「体液恒常性を司る脳内機構の研究」(研究代表者:野田昌晴)
  • 公益財団法人 金原一郎記念医学医療振興財団 基礎医学医療研究助成金 生体の科学賞(野田昌晴)
  • 科学研究費助成事業 若手研究(B)「脳内ナトリウムセンサーを介した血圧調節機構の解明」(研究代表者:野村憲吾)
  • 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援「血圧を規定する脳内ナトリウムセンサーの分子実体解明」(研究代表者:野村憲吾)
  • 公益財団法人 日本科学協会 笹川科学研究助成(野村憲吾)
  • 日本医療開発機構 革新的先端研究開発支援事業 個人型研究(AMED-PRIME)の研究領域「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」(曽我部 正博 研究開発総括)における研究課題「脳内浸透圧/Na+レベルセンサーの動作機序と生理機能の解明」(研究代表者:檜山武史)
  • 公益財団法人 武田科学振興財団(檜山武史)
  • 公益財団法人 ソルト・サイエンス研究財団(檜山武史)

用語説明

[用語1] Nax : ナトリウムイオンチャンネルの1つ。生理的な細胞外ナトリウム濃度付近のナトリウム濃度の上昇に応答して開口し、細胞内にナトリウムを流入させる機能を持つ。

[用語2] 交感神経 : 中枢神経(脳・脊髄)ではなく、末梢組織に張り巡らされている末梢神経系の1つ。脊髄を経由して脳からの信号を受け取っている。交感神経が活性化すると、血管の収縮が起こることで血圧が上昇する。

[用語3] 脳脊髄液 : 脳内や脊髄にある腔(脳室など)の中を満たす体液。

[用語4] 終板脈管器官(OVLT) : 脳交感神経や血圧の制御に関与する脳内器官の1つ。脳内で例外的に血液-脳関門(血液中の成分が脳内へ非特異的に侵入するのを防ぐためのバリア構造)を持たず、また、脳室に面した位置にあるため、血液と脳脊髄液の成分を感知するのに適した構造を持つ。

[用語5] 視床下部室傍核(PVN) : 交感神経や血圧の制御に関与する脳内器官の1つ。吻側延髄腹外側野(RVLM)を経由して、あるいは直接、脊髄にシグナルを伝えている。

[用語6] グリア細胞 : 神経系を構成する細胞のうち、神経細胞ではない細胞の総称。長い間、神経細胞の補助的細胞であると思われてきたが、情報伝達においても重要な役割を持つことが分かってきている。

[用語7] 光遺伝学 : 光によって活性化する特殊なたんぱく質を作る遺伝子を細胞に発現させることで、その細胞機能を光によって操作できるようにする技術。神経細胞を活性化させる実験では、青色光によって活性化する陽イオンチャンネルであるチャネルロドプシン(ChR2)などが使用される。神経細胞の活動を抑制する実験では、黄色光によって活性化するクロライド(Cl-)ポンプであるハロロドプシン(eNpHR)などが使用される。

[用語8] 酸感受性イオンチャンネルASIC1 : 細胞外の酸性化(pHの低下)に応答して開口する性質を持つ陽イオンチャンネルであるASICファミリーに属するチャンネルの一種。ASIC1aはASICファミリーの中でも特に酸に対して高い感受性を持つ。

[用語9] 本態性高血圧 : 高血圧のうち、明らかな原因(腎臓や副腎の疾患、薬剤など)があって発症している高血圧(二次性高血圧)以外のものを指す。高血圧全体の約90%を占めるとされている。明らかな原因が特定できず、遺伝的因子と環境因子(食習慣や飲酒、喫煙、ストレスなど)により複合的に発症していると考えられている。

参考文献

[1] Hiyama, T.Y., Watanabe, E., Ono, K., Inenaga, K., Tamkun, M.M., Yoshida, S., and Noda, M. (2002). Nax channel involved in CNS sodium-level sensing. Nat Neurosci. 5, 511-512.

[2] Hiyama, T.Y., Watanabe, E., Okado, H., and Noda, M. (2004). The subfornical organ is the primary locus of sodium-level sensing by Nax sodium channels for the control of salt-intake behavior. J Neurosci. 24, 9276-9281.

[3] Matsuda, T., Hiyama, T.Y., Niimura, F., Matsusaka, T., Fukamizu, A., Kobayashi, K., Kobayashi, K., and Noda, M. (2017). Distinct neural mechanisms for the control of thirst and salt appetite in the subfornical organ. Nat Neurosci. 20, 230-241.

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
[Na+] Increases in Body Fluids Sensed by Central Nax Induce Sympathetically Mediated Blood Pressure Elevations via H+-Dependent Activation of ASIC1a
著者 :
Kengo Nomura, Takeshi Y. Hiyama, Hiraki Sakuta, Takashi Matsuda, Chia-Hao Lin, Kenta Kobayashi, Kazuto Kobayashi, Tomoyuki Kuwaki, Kunihiko Takahashi, Shigeyuki Matsui, and Masaharu Noda
DOI :

お問い合わせ先

研究に関すること

自然科学研究機構 基礎生物学研究所

教授 野田昌晴

E-mail : madon@nibb.ac.jp
Tel : 0564-59-5846

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

平成30年度「東工大特別賞」を授与

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11月22日に東工大特別賞の授与が行われました。この表彰は、多年にわたって研究教育の円滑な推進に寄与し、かつ、勤務成績が優秀と認められる大学職員に対し行われているものです。今年度は2名が表彰を受けました。

表彰式では、益一哉学長より表彰状の授与と報奨金目録の贈呈が行われました。

今回受賞した職員は次のとおりです。

平成30年度「東工大特別賞」受賞者

  • 研究推進部 情報基盤課 情報企画グループ 主任 森谷寛

    受賞理由「全学の情報セキュリティ体制を支える広範かつ顕著な貢献」

  • 技術部 教育支援部門 技術職員(技術専門員) 村﨑千佳子

    受賞理由「理工系教養科目化学実験の安全で円滑な実施に対する多大な貢献」

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