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クライオ蛍光顕微鏡で分子イメージングに成功 鍵はナノレベルのピント合わせにあり

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要点

  • ナノメートル正確度のクライオ蛍光顕微鏡が完成
  • 通常の蛍光顕微鏡に比べて2桁高い正確度
  • 長さ10ナノメートルの二本鎖DNAの両末端を1分子ごとに可視化

概要

東京工業大学 理学院 物理学系の古林琢大学院生、石田啓太大学院生、松下道雄准教授、藤芳暁助教と名古屋大学の樫田啓准教授、京都大学の中田栄司准教授、森井孝教授との共同研究グループは、クライオ蛍光顕微鏡[用語1]によって二本鎖DNA[用語2]分子イメージング[用語3]に成功した。

同研究グループは2007年に1 nm(ナノメートル、100万分の1 cm)の位置精度[用語4]を持つクライオ蛍光顕微鏡を開発、この顕微鏡を用いて、5'末端と3'末端[用語5]にそれぞれ違う色の蛍光体を結合させた二本鎖DNAを1分子観察した。二本鎖DNAの長さは10 nmであり、1 nmの空間精度があれば画像化できると考えていた。しかし、実際に観測された色素間の距離は0~50 nmに分布しており、大きな系統誤差[用語6]が発生していることが分かった。系統誤差の原因がピントボケであることを突き止め、個々の画像のピントもナノレベルで調整した。その結果、正確度[用語7]がナノレベルに向上し、長さ10 nmの二本鎖DNAを1分子ごとに画像化することに成功した。10 nmは生体分子間の距離に相当し、本研究は生命現象の光イメージングに向けた大きな一歩である。この研究成果は2019年9月17日(米国時間)に米国化学会誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」のオンライン速報版で公開された。

研究の背景と成果

これまで分子生物学では、主に1個ないし少数の生体分子の立体構造を観察することで、生命の理解を深めてきた。この研究をさらに進めるためには、細胞内部の系全体を俯瞰することが大切である。なぜならば、生体機能は複数の分子が関与する多段階の現象がある方向性を持って進むことで発現しているからである。しかし、現在の技術では細胞内部を分子レベルで観察することは不可能であり、もちろん、このような複数の分子のマクロな集合状態を可視化することはできなかった。そこで同研究グループは、このようなイメージングを実現するため、極低温に冷却した試料の蛍光顕微鏡(クライオ蛍光顕微鏡)を独自に開発した。その結果、2017年に色素1分子の三次元位置を1 nmの空間精度で決定することに成功した。

本研究ではクライオ蛍光顕微鏡を多数の分子間イメージングに利用するために、二本鎖DNAをテスト分子として評価をおこなった。図1Aに用いた二本鎖DNAの模式図を示す。二本鎖DNAの長さは10.2 nmであり、その5'および3'末端に、それぞれ、近赤外と赤色の蛍光を発する色素を結合させた。DNAの塩基数は30であり、剛直な棒状になっていると考えられる。図1Bは温度−271 ℃で観察した色素修飾DNAの1分子イメージの結果である。1個のDNAに分子に対して4回測定したので、各色素の測定点が4個ずつある。それぞれの図を見ると分かるように、5'と3'末端がはっきりと観測されており、DNAの向きや長さが分かる。通常の蛍光顕微鏡の正確度は蛍光波長(数百nm)程度であり、開発したクライオ蛍光顕微鏡では2桁高い、5 nmに達している。

クライオ蛍光顕微鏡による二本鎖DNAの1分子イメージング(観察温度:−271 ℃)3つの図はそれぞれ異なる3つのDNA分子の結果である。各DNA分子を4回ずつ測定しており、それぞれの4個の測定点がある。5'末端の位置を三角(△)、3'末端の位置を丸(○)で表している。図から分かるように、一つ一つの二本鎖DNA分子の長さや向きが可視化されている。
図1.
クライオ蛍光顕微鏡による二本鎖DNAの1分子イメージング(観察温度:−271 ℃)3つの図はそれぞれ異なる3つのDNA分子の結果である。各DNA分子を4回ずつ測定しており、それぞれの4個の測定点がある。5'末端の位置を三角(△)、3'末端の位置を丸(○)で表している。図から分かるように、一つ一つの二本鎖DNA分子の長さや向きが可視化されている。

系統誤差について

ここで、色素1分子の位置決定における系統誤差を実験的に示す。図2は、対物レンズを基準として色素の奥行き方向の位置(z)を±300 nmに変えて、2つの色素間距離を観察した結果である。図から分かるように、zの位置に応じて色素の位置が50 nm以上変化している。光学顕微鏡のピントは、光学の原理上、±300 nm程度ずれている。このため、光学顕微鏡では、ピントのボケに応じた色素の位置のシフトが生じていることが分かった。そこで、本研究グループは、個々のDNAに対して、ナノレベルのピント合わせ(10 nmの位置精度)を行い、系統誤差を補正することで、図1のような分子イメージングを実現した。

このピントに依存したシフトは、色素の配向に由来していると考えている。クライオ条件では、色素分子の回転が完全に凍結している。このため、色素1分子からの蛍光光は空間的に非対称な双極子輻射として取り扱わなければいけない。この空間的に非対称な輻射がシフトを引き起こしていると考えている。

ナノレベルの色素間距離の1分子イメージングに現れる系統誤差(観察温度: −271 ℃)対物レンズを基準として色素の奥行き方向の位置(z)を±300 nm変えた時に、観測された各色素の位置。図1Aと同じく10 nmの長さのDNAの両端に赤色と近赤外蛍光性の色素を結合させている。3つの画像は一つのDNA分子を測定したものである。また、図1に比べて縦横の軸が5倍であり、約±50 nmのシフトであることに注意してほしい。
図2.
ナノレベルの色素間距離の1分子イメージングに現れる系統誤差(観察温度: −271 ℃)対物レンズを基準として色素の奥行き方向の位置(z)を±300 nm変えた時に、観測された各色素の位置。図1Aと同じく10 nmの長さのDNAの両端に赤色と近赤外蛍光性の色素を結合させている。3つの画像は一つのDNA分子を測定したものである。また、図1に比べて縦横の軸が5倍であり、約±50 nmのシフトであることに注意してほしい。

図3は、二本鎖DNAの両端に結合した2つの色素間距離の分布である。図3左は96個のDNA分子、右は20個について測定した結果である。左はピントに依存した系統誤差を補正しない場合、右は補正した場合である。二本鎖DNAの長さは10.2 nmである。補正しない場合には、色素間距離が0から50 nmに分布した。一方、系統誤差を補正すると、DNAの長さを中心とした分布となった。正確度に換算すると5 nmであり、分子レベルに到達している。

色素間距離の1分子測定の結果(観察温度: −271 ℃)。(左)補正無し、(右)補正有り。DNA分子は図1Aと同じ。

図3. 色素間距離の1分子測定の結果(観察温度: −271 ℃)。(左)補正無し、(右)補正有り。DNA分子は図1Aと同じ。

クライオ蛍光顕微鏡(通算19台目)を前に。第一著者の古林琢(左)と第二著者の石田啓太(右)

図4. クライオ蛍光顕微鏡(通算19台目)を前に。第一著者の古林琢(左)と第二著者の石田啓太(右)

今後の展開

近い将来、ナノメートル正確度のクライオ蛍光顕微鏡によって、前人未踏の生命現象の分子レベルの可視化が実現すると考えている。ここから得られるナノレベル空間情報は、これまで人類が蓄積してきた膨大な生命に関する情報をつなげ、多くの生命の謎が解けてくるはずである。

用語説明

[用語1] クライオ蛍光顕微鏡 : 極低温に冷やした試料からの蛍光を観察する顕微鏡。極低温下では分子の動きが完全に止めることができるため、高解像度な観察が可能になる。また、蛍光顕微鏡は1分子観察や厚みのある試料の観察が出来るので、生体試料への相性がとても良い。

[用語2] DNA : デオキシリボ核酸のこと。

[用語3] 分子イメージング : この記事では、分子サイズと同等以上の正確度で、1分子の空間配置を画像化することを指している。

[用語4] 精度(precision) : 繰り返し測定をした時、平均値からのバラツキの程度。精度が高いとは、偶然誤差が小さいことを言う。

[用語5] 5'(prime)末端と3'(prime)末端 : DNAの両方の末端をそれぞれ5'末端と3'末端と呼ぶ。

[用語6] 系統誤差(systematic error) : 測定値が真の値から偏ることによる誤差。

[用語7] 正確度(accuracy) : 真の値からのバラツキの程度。正確度が高いとは、偶然誤差と系統誤差が小さいことを言う。

論文情報

掲載誌 :
The Journal of Physical Chemistry Letters
論文タイトル :
Nanometer accuracy in cryogenic far-field localization microscopy of individual molecules
著者 :
古林琢、石田啓太、樫田啓、中田栄司、森井孝、松下道雄、藤芳暁
DOI :

謝辞

JST/CREST統合1細胞解析のための革新的技術基盤、研究総括:菅野 純夫」(研究課題名「超解像3次元ライブイメージングによるゲノムDNAの構造、エピゲノム状態、転写因子動態の経時的計測と操作」、研究代表者:岡田 康志)および「JST/さきがけ 統合1細胞解析のための革新的技術基盤、研究総括 浜地 格)」(研究課題名「細胞内部を観る分子解像度の三次元蛍光顕微鏡」、研究代表者:藤芳 暁)の支援を受けて実施した。

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お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 物理学系

助教 藤芳暁

E-mail : fujiyoshi@phys.titech.ac.jp

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


起業家支援に関する相互協力の覚書をビヨンド・ネクスト・ベンチャーズと締結 東工大発ベンチャーの創出、ベンチャー支援人材の育成などで連携

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東京工業大学とBeyond Next Ventures(ビヨンド・ネクスト・ベンチャーズ)株式会社(以下、BNV)は、10月10日、「東工大発ベンチャー※1」の創出に向けた支援やベンチャー支援人材の育成などで、相互協力することに合意し、起業家支援に係る相互協力の覚書を締結しました。

本覚書を通じて、本学とBNVは、ビジネスプランコンテストなどを通じた大学発ベンチャーの創出に関する取り組みのほか、ベンチャー支援人材やオープンイノベーション推進人材の育成などを実施していく予定です。

概要/背景

国内の産業技術のイノベーションにおいて、シーズとなる技術を有する大学の存在がさらに注目される中、その知的財産や研究開発成果の社会実装の手段として、大学発ベンチャーの創出・育成が重要視されています。

こうした背景から、起業家人材の育成、大学発の新技術・シーズの社会実装の推進・強化がますます必要とされています。そこで、150億円弱のベンチャーキャピタルファンドと約1800名の技術系スタートアップに特化した経営者候補の人材プールを有し、研究開発型ベンチャーの育成において国内トップクラスであるBNVと相互協力の覚書を結ぶことで、研究開発型ベンチャーが次々と誕生し成功事例を積み重ねていくベンチャーエコシステムのさらなる裾野拡大や、イノベーション創出環境の整備に貢献していきます。

(左から)BNVの伊藤毅代表取締役社長と本学の益一哉学長

(左から)BNVの伊藤毅代表取締役社長と本学の益一哉学長

覚書の内容

1.

大学発ベンチャー創出に向けた活動の活性化

東京工業大学が実施する大学発ベンチャー創出に向けたビジネスプランコンテストなどについて、BNVが実施する「BNV主催のアクセラレーションプログラム BRAVE(ブレイブ)※2」と連携して、「東工大発ベンチャー」の創出に向けた推進を行います。

2.

研究開発型ベンチャーの現場支援人材やオープンイノベーション推進人材の育成

BNVが実施する、アクセラレーションプログラム「BRAVE」・「Blockbuster TOKYO(ブロックバスター トーキョー)※3」や起業家教育、運営する「Beyond BioLAB TOKYO(ビヨンド バイオラボ トーキョー)※4」の利用など、本学のベンチャー創出現場から人材を受け入れ、研究開発型ベンチャーの現場支援人材やオープンイノベーション推進人材の育成強化を図ります。

3.

起業プロセスに必要な知見や人材の派遣

東工大発ベンチャーや企業化を目指す相談案件に対し、BNVが提供するCo-founders(コ・ファウンダーズ)※5を活用した経営者・社長候補のマッチング・探索協力や、創業前の研究者や個別プロジェクトに対し、BNVによる創業および資金調達に関する助言やBNVによるベンチャーキャピタル視点での学内シーズ選定の協力を得ます。

Beyond Next Ventures株式会社について

BNVは、技術系スタートアップへのインキュベーション投資に特化した独立系アクセラレーターです。大学シーズの事業化支援から、投資、成長支援までに渡る豊富な投資経験と優れた運用実績を有し、アクセラレーターとしては国内最大のファンドを運用しています。

  • 本社 :
    東京都中央区日本橋本町1-4-3 日本橋ムロホンビル1
  • 代表者 :
    代表取締役社長 伊藤毅
  • 設立日 :
    2014年8月

注釈

※1 東工大発ベンチャー : 東京工業大学の研究成果又は人的資源を活用して起業されたベンチャー企業に授与する称号。新たな技術又はビジネス手法を基に起業した法人のうち、申請資格に該当する場合に申請が可能。学内審査を経て称号授与が決定される。

※2 BNV主催のアクセラレーションプログラム(BRAVE) : 起業前の大学発技術シーズに特化したものでは、国内最大規模のシードアクセラレーションプログラム。

※3 Blockbuster TOKYO : BNVが東京都からの委託を受けて実施している創薬系スタートアップに特化したアクセラレーションプログラム。

※4 Beyond BioLAB TOKYO : ライフサイエンス領域のスタートアップ企業向けに、ライフサイエンス領域の大企業やスタートアップ、アカデミアや公的機関等が集積する日本橋に開設したシェア・オープンラボ/事業化のコミュニティ。

※5 Co-founders : BNVが提供する、革新的な研究チームと経営者人材候補・ビジネスパーソンとの人材マッチングサービス。

お問い合わせ先

東京工業大学 研究・産学連携本部

ベンチャー育成・地域連携部門

E-mail : venture@sangaku.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2479

Beyond Next Ventures株式会社

E-mail : delorean@beyondnextventures.com

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

硬式庭球部住谷格生さんが関東理工科大学硬式庭球連盟令和元年個人戦男子シングルスで優勝

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東工大硬式庭球部の住谷格生さん(理学院 物理学系 学士課程2年)が、8月17日から9月6日に行われた関東理工科大学硬式庭球連盟個人戦の男子シングルスで優勝しました。また、男子ダブルスで小島広規さん(工学院 情報通信系 学士課程4年)と住谷さんのペアが準優勝しました。

試合中の住谷さん

試合中の住谷さん

関東理工科大学硬式庭球連盟に所属する各大学の部員が参加する個人戦は毎年、8~9月に行われます。今年の男子参加人数は約1,000人、女子は約300人でした。東工大硬式庭球部からは男子18人、女子8人が出場しました。

男子シングルス本戦には予選を勝ち抜いた11大学の32人が出場しました。住谷さんは第2シードとして挑み、すべてストレート勝ちで優勝を果たしました。

男子ダブルス本戦には予選を勝ち抜いた8大学の16ペアが出場し、第6シードの小島・住谷ペアは上位シードのペアを倒しながら準優勝を飾りました。

シングルス優勝とダブルス準優勝の住谷格生さんのコメント

関東理工科大学硬式庭球連盟個人戦においてシングルス優勝とダブルス準優勝という結果を残すことができ、大変嬉しく思っています。昨年度はシングルス3位、ダブルスはベスト8で終わってしまったので、今回の大会で1年間の成長を感じることができました。

この結果は、日々練習を共にする部員やその活動を支えてくださるOB、OGの方々、コーチや家族などのおかげです。ありがとうございました。

私は物理学系に所属していて、毎日のように難しい講義やレポートに取り組んでいます。これからさらに大変な毎日を過ごすことになると思いますが、諦めずに大学生活をしっかり乗り切りたいです。テニスでは来年こそシングルスとダブルス共に優勝できるように日々練習に励みたいと思います。

硬式庭球部について

東工大硬式庭球部は100年の歴史と伝統を持つ体育系公認サークルです。

関東学生テニス連盟と関東理工科大学硬式庭球連盟に所属しており、現在男子は関東大学テニスリーグ全7部中6部、理工系リーグ全13部中3部に、女子は関東大学テニスリーグ全5部中5部、理工系リーグ全11部中4部にそれぞれ所属しています。男子は関東大学テニスリーグ昇格、女子は理工系リーグ昇格を目標に日々、心身の鍛錬に励んでいます。

高校生の体験練習も行っています。

東工大基金

硬式庭球部の活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

本学学生3チーム ICPC国際大学対抗プログラミングコンテスト2019 アジア地区横浜大会に出場

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5万人以上の学生が参加する世界最大規模のプログラミングコンテストである国際大学対抗プログラミングコンテスト2019(ICPC2019)の国内予選が7月12日、全国の各大学で開催されました。東京工業大学の学生は3人一組で22チームが本学が会場となった国内予選に参加し、全国の成績上位(46位まで)に入った5チームが表彰されました。そのうち3チームが11月16日から18日、横浜市で開かれるアジア地区予選横浜大会に出場することが決まりました。アジア地区の成績上位チームが世界大会に選抜されます。

チームで協力し問題に取り組む参加者達

チームで協力し問題に取り組む参加者達

ICPCとは

ICPC (International Collegiate Programming Contest、国際大学対抗プログラミングコンテスト)は、ICPC Foundation(ICPC財団)が主催し、大学対抗で行われる世界規模のプログラミングコンテストです。同じ大学の3人の学生がチームを結成し、チームでプログラミングと問題解決の能力を競う大会です。各大学から複数のチームが国内予選に出場し、その成績により選抜されたチームが地区予選(日本の場合はアジア地区予選)に出場、各地区から選抜された最優秀チームが世界大会に出場する仕組みとなっています。世界大会は1つの大学から1つのチームしか参加できないことから、大学対抗プログラミングコンテストと位置づけられています。ICPCのサイトによると、2018年の地区大会は653会場で行われ、世界110か国の3,233大学から52,709人が参加しました。

問題の難易度は様々で、単純な計算問題から、複数のアルゴリズムを組み合わせて解く問題まで多岐にわたります。また、ICPCの特徴として、チーム戦であることが挙げられます。チームには1台のコンピュータしか与えられないため、個人のプログラミング能力だけではなく、1台のコンピュータをいかに効率よく活用するかというチームワークの良さも重要なポイントです。

国内予選は午後4時30分から3時間行われ、国内の101大学(短大・高専4年次以降を含む)から495チームが参加しました。インターネットで出題される問題を3時間の競技時間で、どれだけ多く、早く、正確に解けるかを3人一組のチームで競いました。

東工大では、大岡山キャンパス学術国際情報センター第一実習室・第二実習室を会場とし、学術国際情報センターの西崎真也教授を監督とし、情報理工学院情報工学系の櫻井義隆さんと久保田陸人さん(ともに修士課程2年)の協力のもと実施されました。また、国内予選に先立ち、模擬国内予選が情報工学系計算機室で開催されました。

国内予選の結果を受け、成績上位46位(1問以上解いたチーム458チームの約10%以内に入る成績)までのチームのメンバーとコーチが表彰され、本学からは5チームがその対象となりました。ICPCは大学対抗のプログラミングコンテストであり、国内予選チーム上位から選抜されるわけではなく、ICPC本部が定める選抜ルールに従って地区大会に選抜されます。本学からは5チームのうちの上位3チームがアジア地区予選横浜大会に出場することになりました。出場するのはチームeiyatonari(エイヤトナリ)、チームmickytheta(ミッキーシータ)、チームunlimited greedy(アンリミテッド・グリーディ)です。

国内予選には企業賞も用意されています。チームeiyatonariは「今年こそ予選を通過してほしいで賞(株式会社いい生活提供)」「レトリバ賞(株式会社レトリバ提供)」、チームPoyashi(ポヤシ)は「アマツバメ(10286)賞(freee株式会社提供)」を受賞しました。

アジア地区予選はシンガポール、ジャカルタ、バンコク、クアラルンプール、ソウル、台北、ダナン(ベトナム)、マニラ、ヤンゴン(ミャンマー)、横浜等で開催されます。日本の国内予選で選抜された50チームが横浜大会に出場します。各アジア地区大会の成績上位チームが世界大会に出場することになります。

表彰対象チームとメンバー

チームeiyatonari(エイヤトナリ、全国11位)

福成理紀さん(工学院 情報通信系 修士課程1年)

吉田拓人さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程3年)

永田怜慈さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)

チームeiyatonari左から永田さん、吉田さん、福成さん

チームeiyatonari左から永田さん、吉田さん、福成さん

チームmickytheta(ミッキーシータ、全国17位)

太田幹人さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程4年)

春日涼太郎さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程4年)

松浦幹人さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)

チームmickytheta左から松浦さん、太田さん、春日さん

チームmickytheta左から松浦さん、太田さん、春日さん

チームunlimited greedy(アンリミテッド・グリーディ、全国18位)

吉野慎司さん(情報理工学院 数理・計算科学系 修士課程1年)

郭林昇さん(情報理工学院 情報工学系 修士課程1年)

遠藤康矢さん(情報理工学院 数理・計算科学系 学士課程3年)

チームunlimited greedy左から遠藤さん、郭林さん、吉野さん

チームunlimited greedy左から遠藤さん、郭林さん、吉野さん

チームPoyashi(ポヤシ、全国28位)

木ノ下恭範さん(情報理工学院 学士課程1年)

大森章裕さん(情報理工学院 学士課程1年)

岸田陸玖さん(情報理工学院 学士課程1年)

チームMIYAJIMA PONYAKO(ミヤジマ・ポニャコ、全国38位)

白井瑞貴さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)

柴駿太さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程3年)

寺内優さん(工学院 情報通信系 学士課程4年)

お問い合わせ先

学術国際情報センター 西崎真也

E-mail : nisizaki@cs.titech.ac.jp

ペロブスカイトナノ粒子LEDはなぜ低効率か ブリンキングによる消光時間の増加が原因と究明

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要点

  • 超解像顕微鏡により発光ダイオード中のペロブスカイト粒子の発光を解析
  • ナノ凝集体中の一部のナノ粒子のみで電界発光が生じていることを確認
  • 上記一部のナノ粒子の電界発光の点滅度合いの増加が低い電光変換の原因

概要

東京工業大学 物質理工学院 材料系のマーティン・バッハ教授らの研究グループは、単一粒子分光計測[用語1]を用いて、ペロブスカイト[用語2]ナノ粒子[用語3]を発光材料として用いた発光ダイオード(LED)[用語4]における低い電光変換効率[用語5]の原因を解明した。

同研究グループは単一粒子分光計測の手法を用い、LED駆動時にはナノ凝集体中の一部のナノ粒子に向けて電荷やエネルギーが移動し、その一部の特定のナノ粒子からのみ発光が生じていることを明らかにした。さらに発光を示す一部のナノ粒子ではブリンキング[用語6]が生じやすく、ブリンキングによる消光時間の増加が原因で、電気エネルギーが光に変換されにくくなっていることを確認した。

ペロブスカイト系ナノ粒子の一部は鮮やか、かつ高効率な発光を示すため、薄膜ディスプレイやレーザー用の発光材料として期待されている。だが、高効率で発光する粒子のナノ凝集体を薄膜LEDの発光層として用いると、しばしばLED駆動時に発光効率が著しく低下することが知られていた。しかし、その根本的な原因はわかっていなかった。

研究成果は10月3日発行の国際学術雑誌「ネイチャーコミュニュケーション(Nature Communications)」のオンライン版に掲載された。

研究成果

バッハ教授の研究グループは単一粒子分光の手法を用いてペロブスカイト粒子のナノ凝集体を発光層に有するLEDの発光挙動の解析を進めた。LED駆動時には、ナノ凝集体中では一部のナノ粒子のみでブリンキングを伴う発光が生じており、そのブリンキングによる非発光時間の増加がペロブスカイトLEDの低い電光変換効率の原因となっていることを発見した。

この成果は、ペロブスカイトナノ粒子の表面状態の制御が、電光変換効率の高いペロブスカイトLEDを実現するために重要であるという知見を与えるものである。

研究の背景

ペロブスカイトナノ粒子の一部は、電荷輸送能に優れるだけでなく大きな光吸収能力、高効率発光、さらに発光色が鮮やかであるなどの優れた光物性を持ち合わせている。さらに、そのナノ粒子は安価に作製できるだけでなく、ナノ粒子の薄膜を印刷法で成膜することができるため、より低コストでデバイスの作製が可能である。

そのため、薄膜ディスプレイ、照明、そしてレーザーなどに用いられている発光体の代替材料として期待されている。しかし、ペロブスカイトナノ粒子をLED中の発光層の材料として用いると、紫外線照射時に観測される大きな発光収率に反して、しばしば電光変換効率が低くなるという問題があった。

研究の経緯

バッハ教授らはオレイン酸(植物油に多く含まれている不飽和脂肪酸)で表面修飾されたCsPbBr3(セシウム鉛臭化物)のペロブスカイトナノ粒子を発光層に有する薄膜LEDを作製し、単一粒子分光の計測技術を用いてその発光層中のCsPbBr3粒子のナノ凝集体(図1a)の光励起時の発光(PL)[用語7]および電界発光(EL)[用語8]を比較した。

研究グループは、PLにおいてはナノ凝集体中のナノ粒子の100%近くが発光に関与しているのに対し(図1b)、ELでは全体の3個から7個のナノ粒子しか発光に関与していないことを確認した(図1c)。さらにナノ凝集体中ではナノ粒子のサイズにわずかな分布があり、EL駆動時にはナノ凝集体表面の粒子にホールや電子が注入された後、ホールや電子がより大きなナノ粒子に向けて拡散してトラップされ、一部のナノ粒子からしか発光が生じていないことを確認した。

PLでは各ナノ粒子が発光しており個々のナノ凝集体のブリンキングも生じにくい一方で、ELを放射しているナノ粒子ではブリンキングがより顕著に生じることを見出した。そのELでの激しいブリンキングのため、発光しない時間が長くなっており、これが要因でLED駆動下での電光変換効率が理想状態の1/3程度にまで低下していることを突き止めた。

単一粒子分光計測によるCsPbBr3粒子のナノ凝集体の発光特性 (a)各々のナノ凝集体の発光イメージ(b)PL時のナノ凝集体の発光の時間変化とナノ凝集体内の発光スキーム (c)EL時のナノ凝集体の発光の時間変化とナノ凝集体内の発光スキーム
図1.
単一粒子分光計測によるCsPbBr3粒子のナノ凝集体の発光特性 (a)各々のナノ凝集体の発光イメージ(b)PL時のナノ凝集体の発光の時間変化とナノ凝集体内の発光スキーム(c)EL時のナノ凝集体の発光の時間変化とナノ凝集体内の発光スキーム

今後の展開

この成果は、高効率LEDに向けたペロブスカイト材料の改良に必要となる重要なポイントを単一粒子分光の手法を用いて明らかにしたものである。今後より電光変換効率の高いペロブスカイトLEDを実現するための方策の一つとして、ペロブスカイトナノ粒子の表面状態の制御によるブリンキングの抑制が重要になると考えられる。

用語説明

[用語1] 単一粒子分光計測 : 光の回折限界もしくはそれを超える空間分解能を有する顕微鏡を用いて、光の回折限界以下の大きさを有する粒子や分子の発光特性を計測する手法。従来の多数の粒子を対象とした発光測定とは異なり、集団平均の中に隠されていた個々の粒子の特性や科学現象を解明することが可能となっている。

[用語2] ペロブスカイト : 灰チタン石と同じ立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に分子カチオンもしくは金属カチオン(A)が、体心に金属カチオン(B)が、そしてBを中心として、ハロゲンを中心とするアニオン(X)が立方晶の各面心に配置された結晶構造を持つ材料の名称である。ハライドペロブスカイト(ABX3)[ここで A=Cs+、CH3NH3+または CH2(NH2)2+、B=Pb 等、そしてX=Br、Cl、またはI]のナノ粒子の中には高い発光量子収率を示すものが存在する。

[用語3] ナノ粒子 : 通常数ナノメートルから百ナノメートル以下の径を有する粒子のことを指す。

[用語4] 発光ダイオード(LED) : 2つ電極の間にホール輸送機能、電子輸送機能、そして発光機能を有する薄膜が形成された発光デバイス。しきい値電圧以上でホールや電子が電極から注入され、発光体で再結合させることで発光体に励起状態を形成し、光としてエネルギーを取り出す。

[用語5] 電光変換効率 : LEDにおいて1つのホールと1つの電子が発光体で出会った際に何%の光が発光体から放出されるのかの確率の事を示す。

[用語6] ブリンキング : ナノサイズの発光体からの発光を観察していると褪色によって突然発光を失うまで一定の強度の光を発光し続ける。しかし、褪色以外にミリ秒から秒の時間間隔で明滅を繰り返す現象が存在しブリンキングと呼ばれている。

[用語7] 光励起時の発光(PL) : 外部からの光を発光体もしくは発光体近傍の材料に吸収させて、発光体に電子励起状態が形成されることにより、発光体から光が放出される現象のことを指す。

[用語8] 電界発光(EL) : 電圧印加をトリガーとして発光体に電子励起状態が形成されることにより、発光体から光が放出される現象。LEDとは異なり、電圧を印加しに電子のみを直接発光体に衝突させて電子励起状態を発光体内に形成させて発光させるのも電界発光である。この他にも電気化学的に電気励起状態を形成させて発光させる現象も電界発光に含まれる。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Single-particle electroluminescence of CsPbBr3 perovskite nanocrystals reveals particle-selective recombination and blinking as key efficiency factors
著者 :
Dharmendar Kumar Sharma, Shuzo Hirata, Martin Vacha
DOI :
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太陽光で働く新しい水分解光電極を開発 電気エネルギーなしで安定に駆動する光電極の実現に期待

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要点

  • 太陽光照射下、酸フッ化物を光電極とした水の分解に成功。
  • 長時間の光照射に対しても安定に駆動。
  • 太陽光をエネルギー源に水から水素を製造、二酸化炭素還元への応用も。

概要

東京工業大学 理学院 化学系の前田和彦准教授、平山直樹大学院生らは、鉛とチタンからなる酸フッ化物[用語1]が太陽光照射下で水を分解する光電極[用語2]として機能することを発見した。

n型半導体[用語3]である酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2(鉛・チタン・酸素・フッ素)が小さなバンドギャップ[用語4]と水分解に有利な価電子帯/伝導帯構造を有していることから、光駆動型の水電解の可能性を検討して実現した。太陽光に含まれる可視光成分を吸収して、自身の分解などを伴うことなく安定に水を酸化して酸素を発生できるため、水分解水素製造だけでなく、二酸化炭素還元への応用も期待される。

これまで、可視光で水を安定的に酸化でき、かつ電気エネルギーの印加なしで駆動することができる光電極材料はほとんど知られていなかった。今回の前田准教授らの発見により、酸フッ化物群が電気エネルギーなしで安定に駆動する革新的光電極となる可能性が見えてきた。

研究成果は2019年10月5日、アメリカ化学会誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載された。

研究の背景

太陽光に多く含まれる可視光を利用して、水を水素と酸素に分解する光電極は、半世紀以上も前から国内外で精力的に研究されている(図1)。光電極に用いられるn型半導体には、1.可視光を吸収できる小さなバンドギャップ、2.水分解に際して追加で必要となる電気エネルギーを最小にする高い伝導帯ポテンシャル、3.水の酸化に対して安定な価電子帯構造―が求められるが、これらすべてを満たすn型半導体材料はほとんど知られていなかった。

前田准教授らはこれまでに、酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2が可視光応答可能な狭いバンドギャップと高い伝導帯ポテンシャルを有するn型半導体であり、安定な可視光応答型光触媒となることを見出していた[参考文献1] 。だが、Pb2Ti2O5.4F1.2の水中での反応活性の向上が課題となっていた。特に、この材料の高効率化には、光吸収によって生じた電子と正孔を効率良く水へと受け渡せる反応場の構築が必要となっていた。

可視光応答型光電極による水分解

図1. 可視光応答型光電極による水分解

研究成果

前田准教授らは透明導電性ガラス上に積層したPb2Ti2O5.4F1.2微粒子電極が、太陽光照射下で水を分解する安定な光電極となることを見出した(図2)。長時間の光照射に対しても光電極性能は低下することなく水から酸素を生成し続け、安定な価電子帯構造を有するn型半導体の有効性が明らかとなった。これは、酸フッ化物を光電極として用いて水を分解した世界初の例でもある。

またレーザー分光測定により、Pb2Ti2O5.4F1.2に生じた電子と正孔が長寿命を有していることもわかり、光エネルギー変換材料として本質的に優れていることも明らかとなった。

酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2を用いた太陽光照射下での光電気化学的水分解

図2. 酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2を用いた太陽光照射下での光電気化学的水分解

今後の展開

これまで、可視光で水を安定的に酸化でき、かつ電気エネルギーの印加なしで駆動しうるn型半導体光電極材料はほとんど知られていなかった。今回の前田准教授らの発見により、酸フッ化物群が電気エネルギーなしで安定に駆動する革新的光電極材料となる可能性が見えてきた。

今後、光電極構造や電解条件の最適化を行うことで、さらなる性能向上が見込まれる。またPb2Ti2O5.4F1.2は水分解水素製造だけでなく、二酸化炭素還元のための光電極部材としての応用も期待される。

付記

本研究は近畿大学の岡研吾講師、豊田工業大学の山方啓准教授のグループとの共同で行った。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金 新学術領域計画研究「複合アニオン化合物の新規化学物理機能の創出」(代表:前田和彦東京工業大学准教授)、新学術領域公募研究「Pb,Biを含む酸フッ化物における特異的な物性の開拓と起源の解明」(代表:岡研吾近畿大学講師)、「複合アニオン化合物の光励起ダイナミクス」(代表:山方啓豊田工業大学准教授)等の助成を受けて行った。

Pb2Ti2O5.4F1.2電極上での光水分解のデザインイラスト。掲載誌のグラフィカルアブストラクトに使用されている。

図3. Pb2Ti2O5.4F1.2電極上での光水分解のデザインイラスト。掲載誌のグラフィカルアブストラクトに使用されている。

用語説明

[用語1] 酸フッ化物 : 同一化合物内にアニオン種として酸素とフッ素を含む無機化合物。

[用語2] 光電極 : 半導体からなり、光エネルギーを吸収してキャリア(電子と正孔)を生み出すことのできる電極。同じ粒子上で酸化と還元が起こる光触媒に対して、光電極では酸化と還元の反応場を物理的に分離構築できるため、高効率な太陽光エネルギー変換に有利とされる。

[用語3] n型半導体 : 電荷を運ぶキャリアが電子である半導体。

[用語4] バンドギャップ : 半導体において電子で占有されたバンドを価電子帯、空のバンドを伝導帯といい、価電子帯と伝導帯の幅の大きさをバンドギャップという。電子は伝導帯の下端を、正孔は価電子帯の上端を動く。

参考文献

[1] Ryo Kuriki, Tom Ichibha, Kenta Hongo, Daling Lu, Ryo Maezono, Hiroshi Kageyama, Osamu Ishitani, Kengo Oka, Kazuhiko Maeda, J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 6648–6655.

論文情報

掲載誌 :
Journal of the American Chemical Society
論文タイトル :
Solar-Driven Photoelectrochemical Water Oxidation over an n-Type Lead-Titanium Oxyfluoride Anode
著者 :
Naoki Hirayama, Hiroko Nakata, Haruki Wakayama, Shunta Nishioka, Tomoki Kanazawa, Ryutaro Kamata, Yosuke Ebato, Kosaku Kato, Hiromu Kumagai, Akira Yamakata, Kengo Oka, Kazuhiko Maeda
DOI :
<$mt:Include module="#G-03_理学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系

准教授 前田和彦

E-mail : maedak@chem.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2239 / Fax : 03-5734-2284

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台風19号で被災された皆様へ

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このたびの台風19号により被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

皆様の安全と一日も早い復興を祈念いたします。

本学では被災した学生とそのご家族への支援に努めて参ります。

国立大学法人 東京工業大学

学長 益 一哉

被災した学生およびご家族の皆様へ

本学では、このたびの台風19号により被災した学生とそのご家族に向けた支援を行っております。

詳細は以下のお知らせをご覧ください。

ペロブスカイト太陽電池特性の再現性、安定性を向上 官能基の存在と強固な接合界面の形成に成功

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要点

  • 酸素官能基を修飾したカーボンナノチューブ紙状電極(BP)を採用
  • 初期の太陽電池特性にばらつきがあっても放置するだけで発電効率が向上
  • BP電極との接合界面がペロブスカイト層の再構成で強固になり特性が安定化

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の脇慶子准教授らはペロブスカイト太陽電池[用語1]の開発で、初期特性が安定しなくても常温常圧で放置するだけで電圧-電流特性が徐々に向上し、その構造が本来持つ最大効率に収束することを世界で初めて見出した。酸処理で-COOH、-OHなどの官能基[用語2]を修飾した多層カーボンナノチューブを紙状電極(BP)[用語3]として作製し、ホール輸送層(HTM)[用語4]/Au電極の代わりに用いて実現した。

発電効率の初期値3%のペロブスカイト太陽電池を常温常圧で77日間放置すると発電効率が11%に向上。同じ手法で作製しても再現性が得にくいのがペロブスカイト太陽電池の実用上の難点だが、その原因は不明だった。脇准教授らはBPへの官能基導入が再現性、安定性、発電特性向上の鍵であることを発見、簡便な手法で電池特性を大幅に向上した。

交流インピーダンス測定[用語5]や走査型電子顕微鏡による評価からヨウ化鉛(PbI2)あるいはペロブスカイト(MAPbI3)層と強い相互作用をする酸素官能基を多層カーボンナノチューブに導入すると、ペロブスカイト層への水分侵入が抑制され、ペロブスカイト層は常温でイオン拡散速度が大きいため、再構成して電極界面が強固になり、電荷移動抵抗が下がって光起電力、光電流[用語6]が共に増大、特性が向上したと結論づけた。

ペロブスカイト太陽電池の高効率・高耐久・低コスト化は電極との強固な接合界面形成が鍵で炭素材料がその役目を果たすことを示した。ペロブスカイト層の組成、膜厚の最適化で、これまでの発電効率を塗り替える可能性もある。

研究成果は9月24日発行のドイツWILEY(ワイリー)社の科学誌「Solar RRL」オンライン版に掲載された。

研究成果の概要

図. 研究成果の概要

研究成果

再現性が得られにくいが、簡便な作製プロセスである二段階湿式法を用い、HTMフリーペロブスカイト太陽電池を作製した(図1)。ぺロブスカイト材料はシンプルな組成を有するCH3NH3PbI3(ハロゲン化鉛ペロブスカイト)とし、電子はTiO2電極、ホールはHTM/Au電極の代わりにカーボンナノチューブ(CNT)紙状電極(buckypaper = BP)で集電した。

二段階湿式法によるペロブスカイト太陽電池の作製プロセス

図1. 二段階湿式法によるペロブスカイト太陽電池の作製プロセス

ペロブスカイト太陽電池は次世代の太陽電池として期待が高まる一方で、作り方が同じであっても初期の発電特性が一定せず、安定性も低いことが難点として知られている。脇准教授らは、CNTに導入した-COOH、-OHなどの酸素官能基が時間の経過とともにPbI2膜やMAPbI3膜と強い相互作用を有することを見出し、乾燥剤入りの試料ケースに保管して常温常圧で一定時間放置するだけで、その構造が本来持つ電流−電圧特性にまで次第に向上し収束することを発見した(図2)。

測定から、電池を暗所に放置するとMAPbI3/CNT界面抵抗のみならず、MAPbI3/TiO2界面の電子移動抵抗も大きく下がることがわかった。これらの結果は作製プロセスの精度が多少悪くても、酸素官能基が存在することで、ペロブスカイト結晶の再構成が常温常圧で起り、接合界面を強固に安定化することを示している。

官能基を導入したBP電極を用いたペロブスカイト太陽電池の発電効率(a)と電流-電圧特性の経時変化(b)
図2.
官能基を導入したBP電極を用いたペロブスカイト太陽電池の発電効率(a)と電流-電圧特性の経時変化(b)

これは酸素官能基がBP電極とペロブスカイト層との強い相互作用をもたらして界面の劣化を抑え、非常に大きいイオン拡散速度[用語7]を持つペロブスカイト結晶が常温で自己再構成して、さらに強い接合界面が形成すると結論づけた。放置後の試料を観察すると、ペロブスカイト結晶粒径が大きくなるだけではなく、セルから炭素電極の剥離が困難であった。

剥離後のペロブスカイト層/BP電極界面を観察したところ、通常の界面にはない強い接合が確認できた(図3)。官能基なしではペロブスカイト結晶粒径が大きくなるものの、界面は強固にならずに放置するほど劣化が進み、電池自体が黄色に変色する現象も確認された。このように強固な接合界面を多く作ることができれば、発電特性が向上し、劣化耐性と安定性が高い太陽電池を作製することが可能になる。

常温常圧で88日間保管後にBPをピンセットで削って剥離させた時の接合界面SEM像

図3. 常温常圧で88日間保管後にBPをピンセットで削って剥離させた時の接合界面SEM像

研究の背景

ペロブスカイト太陽電池は簡便な低温プロセスにより作製できる高効率の次世代太陽電池として期待されている。典型的な構造はCH3NH3PbI3:MAPbI3[用語8]の両側を、励起された電子を収集する電子伝導層 TiO2と透明電極のFTO、ホールを収集するホール伝導層(HTM)と金電極ではさむ構成になっている。実用化のためには、高効率化、大面積化、高耐久性化などの課題をクリアしなければならない。

一般に、光吸収層であるペロブスカイト材料だけではなく、ホールを収集するためのHTM/Au電極[用語9]も高湿度の環境下で劣化し、電池の安定性を下げることが知られている。現在、水分を排除する環境下で作製・封止されたセルにおいて、発電効率20%以上が複数の研究機関から報告されているが、再現性や安定性に課題があり実用に資する数値とは言い難い。

従来のHTM/Au電極に代わり、安定性向上とコスト低減への期待から、炭素材料を使用するHTMフリーのペロブスカイト太陽電池が近年注目されている。しかしながら、報告されている発電効率はHTM/Au電極を使用した場合よりも低く、ペロブスカイト層で光励起されたホールを速やかに引き出し、界面での電荷移動抵抗を下げることが課題となっている。同時に劣化の原因となる水分のペロブスカイト層への侵入を防ぐことが重要で、電極/ペロブスカイト層の界面をできる限り強固にすることが双方の向上につながると考えられる。

研究の経緯

東工大の脇研究室では、長年多層カーボンナノチューブ(BP)の欠陥制御の研究を行ってきた。ペロブスカイト太陽電池において、接合界面でのホール収集率を高めるためには、カルボキシル基(-COOH)やフェノール基(-OH)などの酸素官能基を導入した高い仕事関数を持つ電極の使用が有効であり、これらの官能基を導入したBPを電極に用いて太陽電池構造を作製すると、ペロブスカイト層を形成するための前駆体であるPbI2膜に容易に貼りつけることが可能であり、MAIに浸しても剥離せずにペロブスカイト層が形成されるのに対して、BPに官能基を導入しないと溶液中で電極が剥がれることがわかった。

これは-COOH、-OHなどの酸素官能基がPbI2膜やMAPbI3膜と強い相互作用をすることを示しており、H-I間の水素結合形成のためと推測される。一方で、MAPbI3はイオン拡散速度が極めて大きいため、安定性を低下させることも知られている。もし、強い相互作用を持つ界面の形成が可能な電極を用い、水分による劣化を抑えられるのであれば、高いイオン拡散速度を逆に利用して、電極との強固な接合界面形成や、水分をブロックした状態でMAPbI3膜の結晶性をより安定な構造に再構成することが可能と考えた。

本研究では、非常に簡便な二段階溶液法(図1)を用い、多数の初期特性がばらばらで不安定な電池を作製した。これらを乾燥剤入りの試料ケースに入れて常温常圧で長期間保管して、発電特性の経時変化を比較した。測定はRH(相対湿度)が20-50%、常温、大気下で行なった。

今後の展開

ペロブスカイト太陽電池の自己再構成メカニズムを利用して、今後は光吸収層であるペロブスカイト層の組成や厚さ、電極界面などを最適化することにより、実用化に資する高効率かつ高安定性の太陽電池を早期に作製する。

謝辞

本研究は国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター(LCS)の支援・協力を受けて行なわれた。

用語説明

[用語1] ペロブスカイト太陽電池 : ペロブスカイトと呼ばれる結晶材料を光吸収に用いた新しいタイプの太陽電池であり、塗布技術などの湿式法で容易に作製できるため、既存の太陽電池よりも低価格になると考えられている。

[用語2] -COOH、-OHなどの官能基 : 有機化合物を特性づける原子団を官能基といい、炭素は硝酸や硫酸などの酸化剤によって酸化処理された場合に炭素のエッジに酸素を含む官能基(-COOH、-OHなど)が形成される。

[用語3] 多層カーボンナノチューブの紙状電極(bukypaper:BP) : カーボンナノチューブの結合体による薄膜状の物質の総称。水などの溶液に分散したカーボンナノチューブをろ過して作製する。

[用語4] ホール輸送層(HTM) : hole transporting materialの略称。正孔を受け取る(電子を出す)仕事関数の大きい材料が必要で、高分子材料である「PEDOT:PSS」やspiro-OMeTADが高性能で広く使われている。しかし吸湿性があるため電池の劣化を引き起こす。

[用語5] 交流インピーダンス測定 : 直流電流では測定できない複数の界面抵抗を、周波数を変化させた交流電流によりそれらを分離して測定することができる。

[用語6] 光起電力・光電流 : 太陽電池に光を照射すると光吸収層に電子/正孔が生成し、正負の電荷が分離して電池の両端に収集されることによって、起電力が生じる。また、電気回路がつながれば光電流が流れる。

[用語7] イオン拡散速度 : ペロブスカイト太陽電池の代表的な材料であるMAPbI3は空孔を介してI-イオンのみならず、MA+イオンも容易に拡散できることが知られている。イオンがエネルギー障壁を超えることで隣の空孔に移動できるため、エネルギー障壁が低く、空孔欠陥が多いとイオンの拡散速度が大きい。

[用語8] CH3NH3PbI3:MAPbI3 : ペロブスカイト太陽電池において代表的なペロブスカイト材料であるメチルアンモニウムヨウ化鉛(CH3NH3PbI3)は通常MAPbI3と略される。

[用語9] HTM/Au電極 : ペロブスカイト太陽電池の典型的な構造はペロブスカイト材料の両側を、励起された電子を収集する電子伝導層 TiO2と透明電極のFTO、ホールを収集するホール伝導層(HTM)と金電極ではさむ構成になっており、通常HTM/Au電極と略される。

論文情報

掲載誌 :
Solar RRL
論文タイトル :
MAPbI3 Self‐Recrystallization Induced Performance Improvement for Oxygen‐Containing Functional Groups Decorated Carbon Nanotube‐Based Perovskite Solar Cells
著者 :
Jie Chen, Ti Chen, Tangliang Xu, Jia-Yaw Chang, and Keiko Waki*
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
准教授 脇慶子

E-mail : waki.k.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5614 / Fax : 045-924-5217

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


「イノベーション・ジャパン2019」大学組織展示 出展報告

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東京工業大学は、8月29日、30日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「イノベーション・ジャパン2019~大学見本市&ビジネスマッチング~」の「大学組織展示」に出展しました。

「大学組織展示」は、大学と産業界との間での新たなパートナーシップの創造を目的に、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)が主催した「イノベーション・ジャパン ―大学見本市―」のエリア内に開催されたものです。

自動走行ロボット実演(5G)
自動走行ロボット実演(5G)

今年度、本学ブースでは、「超スマート社会に貢献する5G・Robot・CPHS」をテーマに、工学院 電気電子系の阪口啓教授による「自動運転(5G)」、工学院 機械系の鈴森康一教授による「ヒトxロボx AI(Robot)」、工学院 システム制御系の藤田政之教授による「自律CPS(CPHS)」の3つの研究内容を紹介しました。

5G(第5世代移動通信システム)では自動走行ロボットによる実演、Robot(ロボット)では人工筋肉繊維による体験及び展示、CPHS(Cyber-Physical & Human Systemsの略)ではロボット群の運動の動画と、それぞれ違った方法で来場者に対し「超スマート社会」を提案しました。

サイバーフィジカルシステムにさらに人間(あるいは社会)を組み込み、その全体をシステムとして捉えたもの

人工筋肉繊維展示「がいこつくん」(Robot)
人工筋肉繊維展示「がいこつくん」(Robot)

自律CPS動画(CPHS)
自律CPS動画(CPHS)

超スマート社会実現に向けた研究力の例

超スマート社会実現に向けた研究力の例

当日は2日間で多くの来場者が本学ブースに参加し、本学の構想の意義を理解していただくことができました。

今後もモビリティ、生産分野、生活など、5Gの先を見据えた新しい産業・社会の実現に向けて邁進していきます。

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研究・産学連携本部 産学連携部門

E-mail : sangaku@sangaku.titech.ac.jp

東京消防庁から東工大に救急業務の感謝状

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9月24日、東京消防庁から東京工業大学に対し、救急業務に貢献したことへの感謝状が贈られました。この感謝状は、東京工業大学が「救急行政の推進に積極的に協力し、救急業務の充実発展に多大の貢献があった」として、9月9日の「救急の日」にあたり、東京消防庁救急部長から贈られたものです。田園調布消防署の宮川克広署長が東工大を訪れ、講義の一環で救命講習を担当している理学院 化学系の工藤史貴准教授が受け取りました。

左から岡田哲男副学長兼総合安全管理部門長、宮川田園調布消防署長、工藤准教授、水本哲弥理事・副学長(教育担当)

左から岡田哲男副学長兼総合安全管理部門長、宮川田園調布消防署長、工藤准教授、水本哲弥理事・副学長(教育担当)

救命講習を学ぶ学生
救命講習を学ぶ学生

本学では、理学院化学系と物質理工学院材料系および応用化学系専攻に所属している修士課程の学生(2019年度の受講者は大岡山キャンパス210名、すずかけ台キャンパス154名、計364名)を対象に「化学環境安全教育」を開講し、安全に関する基本的な内容、薬品の管理方法、救急救命実習、危機管理について講義を行っています。この講義の中で、田園調布消防署協力のもと、田園調布災害時支援ボランティアにご協力いただき、AED(自動体外式除細動器)の使用方法や心肺蘇生法を学ぶ「普通救命講習」を大岡山キャンパスで実施しています。

工藤准教授(化学環境安全教育授業担当)のコメント

感謝状を受け取る工藤准教授
感謝状を受け取る工藤准教授

救命講習は、東京防災救急協会応急手当教育指導員の指導のもと、多くの田園調布災害時支援ボランティアの皆様にご協力をいただき、行っています。この場を借りて感謝申し上げます。講義の一環ではありますが、地域の防災力を高めることにもつながると認識しました。今後も継続的に行うことで、いざという時に応急手当てができる人材を多く輩出していきたいと思います。

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施設運営部 施設総合企画課 安全企画室

E-mail : sog.anz.kik@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3440

フラストレート量子磁性体におけるハイブリッド励起を発見 譲り合う励起状態たち

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発表のポイント

  • 量子無秩序状態から非共線磁気秩序状態への量子相転移を示すフラストレート量子磁性体の励起スペクトルを圧力下中性子非弾性散乱により観測した。
  • 量子臨界点近傍において、位相揺らぎと振幅揺らぎのハイブリッド励起の検証に初めて成功し、そのミクロな起源を明らかにした。
  • フラストレート量子磁性体において、圧力による熱流やスピン流の制御の可能性が示唆された。

発表概要

東京大学物性研究所の益田隆嗣准教授らのグループは、静岡大学、東京工業大学 理学院 物理学系の栗田伸之助教、田中秀数教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、Oak Ridge National Laboratory (ORNL)と共同で、フラストレート量子磁性体[用語1]CsFeCl3量子臨界点[用語2]近傍で、位相揺らぎと振幅揺らぎの混成によるハイブリッド励起を観測し、その起源を解明しました。

物質の運動状態の研究は、電気抵抗、熱伝導、スピン流などデバイスの性能を左右する物性の基礎的理解に不可欠です。従来、運動状態については、位相揺らぎと振幅揺らぎがそれぞれ独立に研究されてきました。これらが混成した状態(ハイブリッド励起)は、熱電材料に関する現象報告のみで、磁性体や超伝導体などの系では、実験的検証はなされておらず、研究が遅れていました。位相揺らぎのみをもつ励起状態と振幅揺らぎのみをもつ励起状態が存在するとき、それらは中性子スペクトル[用語3]において観測されますが、その励起状態たちは交差します。しかし、両方を含む二つの励起状態がある場合、見知らぬものと仲間との両方が含まれていることを察知した励起状態たちは互いに譲りあって、よけ合うようになります。本研究では、圧力下での中性子散乱実験[用語4]により、互いがよけ合うような中性子スペクトル、すなわちハイブリッド励起を観測しました。さらに、フラストレート量子磁性体に特有な非共線磁気秩序[用語5]が位相と振幅を強くハイブリッドさせることで、一つの励起に二つの揺らぎが内包していることを理論的に示しました。これにより、圧力により運動状態がどのように変化するかを正確に説明することができました。

量子臨界点近傍におけるハイブリッド励起は磁性体のみならず、電荷密度波系、スピン密度波系、冷却原子系など自発的対称性が破れた系[用語6]一般に存在しうるものであり、今後さまざまな系での検証が期待されます。また、運動状態の圧力変化から、量子臨界点をまたぐことでスピン熱伝導が大きくなることやスピン波の速さが大きくなることが予想されました。このことは、圧力による熱流やスピン流の制御の可能性を示唆します。

発表内容

1. 研究の背景

私たちの生活を豊かにするエレクトロニクスデバイスでは、電気抵抗、熱伝導、スピン流などさまざまな物性が利用されていますが、それらの理解には物質の運動状態を明らかにすることが重要です。自然界はエネルギーの低い状態を好む傾向がありますので、その最安定状態からの揺らぎを考えることが物質の運動状態を考えることの基本となります。そして、物質のエネルギーを状態がもつ秩序を表すマクロな変数(秩序変数と呼ばれる)の関数として表すことにより、物質の運動や状態変化を考えることができます。強磁性状態、超伝導状態、強誘電状態など、何らかの秩序が存在する系は、一般に自発的対称性が破れています。秩序変数が複素数で表される場合には、秩序状態でのエネルギーは図1のようなワインボトルの底のような形をしています。ここで動径方向は秩序変数の振幅(大きさ)を、円周方向は位相を表しています。位相揺らぎによる運動状態は、自発的対称性が破れた系では必ず存在することが知られています。振幅揺らぎの方は、2012年に素粒子物理学分野でヒッグス粒子が発見されて以降、物質中のヒッグス粒子的運動状態として注目を浴び、超伝導体、磁性体などにおいてヒッグスモード(振幅モード)の実験的な検証が精力的になされてきました。このように位相揺らぎと振幅揺らぎは独立に考えることが普通に行われてきましたが、これらが混成した状態は、熱電材料における光学・音響フォノンの混成に関する現象論的報告のみで、磁性体、超伝導体をはじめとする数々の系における研究は遅れていました。

自発的対称性の破れた系のエネルギー

図1. 自発的対称性の破れた系のエネルギー

磁性体においては、明瞭な振幅モード出現の条件として、(i)3次元的な系であること、が必要とされており、振幅モードと位相モードの混成の条件として、(ii)非共線磁気秩序を有すること、が必要とされます。さらに、その混成の効果が顕著となり検証可能となる条件として、(iii)系が量子臨界点近傍にあること、が必要となります。三角格子をもつフラストレート量子磁性体CsFeCl3は条件(i)を満たすことが古くより知られていました。さらに最近の研究から、図2に示されるように圧力印加により量子無秩序状態から非共線磁気秩序状態への量子相転移が存在することが報告され、条件(ii)、(iii)も満たすことが分かりました。このことから、CsFeCl3は位相揺らぎと振幅揺らぎの混成したハイブリッド励起モードの実験的検証の最適なモデル物質と考えられます。

CsFeCl3の状態の圧力依存性

図2. CsFeCl3の状態の圧力依存性


量子無秩序状態から非共線磁気秩序状態へ、0.9ギガパスカル付近で相転移する(量子臨界点)。この近傍で位相モードと振幅モードは強く混成すると予測、検証を行った。

2. 研究内容

物質の磁気は磁性原子のもつ電子のスピン[用語7]が担っています。このスピンの運動状態は、中性子散乱実験により調べることができます。そこで本研究グループは、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)に設置された高分解能チョッパー分光器HRC(図3A-Cカラープロット)とオークリッジ国立研究所の研究用原子炉に設置された三軸分光器CTAX(図3A-C黄色/赤色シンボル)を併用して、CsFeCl3の中性子スペクトルをさまざまな圧力下で測定しました。臨界圧力以下の量子無秩序状態においては、波数が1/3や2/3において極小となるようなエネルギーギャップを有するスペクトルが観測されました(図3A、B)。これらの波数ではスペクトルの傾きが0となっており、このことは、スピン熱伝導やスピン波速度が強く抑制されていることを示唆します。一方臨界圧力以上の非共線秩序状態においては、波数1/3や2/3においてエネルギーギャップが消失するようなスペクトルが観測されました(図3C)。スペクトルの傾きが有限となっており、このことは、スピン熱伝導やスピン流が大きくなっていることを示唆します。さらに、0.5 – 0.8 meVと0.8 – 1.3 meVの領域に特徴的なスペクトルが観測されました。これらのスペクトルを検証するため、拡張スピン波理論とよばれる手法を用いて再現を試みました。非共線秩序の特徴を正しく考慮した場合は、位相モードと振幅モードが混成し、その効果は低エネルギーにある2つのスペクトル曲線と高エネルギー側にある2つのスペクトル曲線の反発として観測されました(図3D)。これは、仲間と見知らぬものが共存する励起状態は互いに譲り合いよけ合ったためです。意図的に混成効果を無視した場合は、2つのモードは譲り合うことなく交わり、実験結果を再現しませんでした(図3E)。

(A)-(C) さまざまな圧力下で測定されたCsFeCl3の中性子スペクトル。大気圧下(A)と0.3ギガパスカル(B)では1本のスペクトルが観測されたが、量子臨界点近傍の1.4ギガパスカル(C)では複数の特徴的なスペクトルが観測された。(D)、(E) 中性子スペクトルの計算結果。位相モードと振幅モードの混成を考慮した計算(D)は実験(C)を再現するが、考慮しない計算(E)は実験(C)を再現しない。
図3.
(A)-(C) さまざまな圧力下で測定されたCsFeCl3の中性子スペクトル。大気圧下(A)と0.3ギガパスカル(B)では1本のスペクトルが観測されたが、量子臨界点近傍の1.4ギガパスカル(C)では複数の特徴的なスペクトルが観測された。(D)、(E) 中性子スペクトルの計算結果。位相モードと振幅モードの混成を考慮した計算(D)は実験(C)を再現するが、考慮しない計算(E)は実験(C)を再現しない。

非共線秩序においてはモード混成、すなわち励起状態の譲り合いは自然に生じます。臨界点近傍でモードは強く混成し、臨界圧力を通じて磁気励起が連続的に変化することを保証しています。このように、中性子散乱実験と理論計算を組み合わせることにより、スペクトル形状の圧力変化を正確に説明することができ、磁性体における位相モードと振幅モードの混成したハイブリッド励起モードが実証されました。また、臨界圧力以下で抑制されていたスピン熱伝導やスピン波速度が、臨界圧力以上で大きくなることが期待されます。

3. 社会的意義・今後の予定

ハイブリッド励起は磁性体のみならず、電荷密度波系、スピン密度波系、冷却原子系など自発的対称性が破れた系一般に存在しうるものであり、今後さまざまな系での検証が期待されます。また、混成現象は量子臨界点近傍で顕著となることが予想されていますが、これは広範囲な圧力実験を行うことにより検証可能です。スペクトル形状の圧力変化から、圧力による熱流やスピン流の制御の可能性が示されました。このことは、熱流やスピン流のスイッチデバイスとなることを示唆します。さらにスペクトルの詳細形状を解析することにより、混成効果が励起の寿命に与える影響についても検証可能です。本研究により物質の運動状態の研究に関する指針が提示されました。

本研究成果は、物性研究所とKEKがJ-PARCで運営する最新型チョッパー分光器と、物性研究所が日米協力事業によりORNLと共同運営する研究用原子炉の従来型三軸分光器の相補利用により創出されました。2021年2月に日本の研究用原子炉JRR-3が再稼働予定となっていますが、本研究のようなこれらの相補的利用が中性子散乱実験で非常に効果的であることも示されました。

用語説明

[用語1] フラストレート量子磁性体 : 幾何学的配置や逆の効果をもつ相互作用の競合によって、スピン間に働く全ての相互作用エネルギーを最低にすることができない状況にある磁性体をフラストレート磁性体という。たとえば図4のように、三角形の頂点上に反平行にスピンを並べようとすると、全てのスピンが互いに反平行になる配置はない。自然界はエネルギー最低の状態を好むが、それが阻害されるため自然はフラストレーションを感じることになる。一般に、フラストレート磁性体では最安定な状態が複数存在するが、最低温では一つの状態が選ばれる。このとき思いもよらぬ状態が選ばれることがあり、これは、フラストレーションをため込んだ人間が思いもよらぬ行動をとることと似ている。人間界ではそれはしばしば不幸な事件となるが、自然界では新しい現象の発見につながる場合がある。フラストレート磁性体の中で量子性(状態の揺らぎやすさ)の強いものがフラストレート量子磁性体と呼ばれている。

三角形の頂点状にスピンを反平行に並べようとした図。頂点1と2のスピンを反平行に並べた。頂点3のスピンをどのように並べても、1、2、3すべてのスピンを反平行に並べることはできない。
図4.
三角形の頂点状にスピンを反平行に並べようとした図。頂点1と2のスピンを反平行に並べた。頂点3のスピンをどのように並べても、1、2、3すべてのスピンを反平行に並べることはできない。

[用語2] 量子臨界点 : 絶対零度における最安定状態は、圧力や磁場などを加えることにより劇的に変化する場合があり、これは量子相転移とよばれている。秩序変数の変化が連続的である場合、状態変化が起こる圧力や磁場は量子臨界点とよばれている。量子臨界点近傍では大きな量子揺らぎによって新奇な量子現象が出現することが多く、多くの関心を集めている。

[用語3] 中性子スペクトル : 中性子散乱実験により得られた4次元空間(エネルギー+3次元波数空間)上のデータのこと。生データは時間+3次元波数空間となっているが、スペクトル表示する際には時間をエネルギーに変換している。中性子スペクトルを解析することにより、物質中のスピンのミクロな運動を調べることができる。

[用語4] 中性子散乱実験 : 中性子の持つスピンを利用して、物質の磁気状態を探査する実験方法のこと。物性研究所附属中性子科学研究施設では、(1)J-PARC MLFにおける高エネルギーチョッパー分光器、(2)米国Oak Ridge国立研(ORNL)の研究用原子炉HFIRにおける冷中性子三軸分光器CTAX、(3)日本原子力研究開発機構の研究用原子炉JRR-3における数多くの中性子分光器群を所有し、全国共同利用に提供している。東日本大震災以降JRR-3は停止しているが、2021年2月に再稼働が予定されており、物性研究への中性子利用の再開が期待されている。

[用語5] 非共線磁気秩序 : 単純な構造の磁性体では、スピンが平行や反平行に並んだ“共線磁気秩序”が出現するが(図5A参照)、フラストレート磁性体では隣接するスピンのなす角度が平行からずれた“非共線磁気秩序”が出現する場合がある(図5B参照)。ハイブリッド励起の起源となるほか、マルチフェロイクスの起源となることも知られており興味が持たれている。

(A)共線磁気秩序の例 (B)非共線磁気秩序の例

図5. (A)共線磁気秩序の例 (B)非共線磁気秩序の例

[用語6] 自発的対称性の破れた系 : 気体状態の分子は熱運動により複雑な動きをしているが、時間平均をとると空間のどの場所にも均一に存在していることになる。これは、いわば対称性の良い状態といえる。温度を下げて固体となると分子は規則的にならび秩序的な状態となるが、空間的に分子のある場所とない場所が存在することになる。これは対称性の低い状態といえる。一般に自然界では温度を下げると自発的に対称性が破れて秩序状態が出現することが知られている。結晶、磁石、超伝導体、誘電体などは自発的対称性の破れた系である。

[用語7] スピン : 物質の磁性の起源となる物理量のことであり、直観的にはミクロな磁石と考えてよい。模式的には矢印で書き表される。回転運動と密接な関連があるためスピンという用語が用いられている。電子や陽子、中性子などの素粒子はいずれもスピンを有している。物質中の電子が有するスピンが物質の磁性を支配している。

論文情報

掲載誌 :
Science Advances
論文タイトル :
Novel Excitations near Quantum Criticality in Geometrically Frustrated Antiferromagnet CsFeCl3
著者 :
Shohei Hayashida、 Masashige Matsumoto、 Masato Hagihala、 Nobuyuki Kurita、 HidekazuTanaka、 Shinichi Itoh、 Tao Hong、 Minoru Soda、 Yoshiya Uwatoko、 and Takatsugu Masuda*
DOI :

発表者

  • 林田翔平 (研究当時:東京大学物性研究所 附属中性子科学研究施設 博士課程3年、現所属:スイス連邦工科大学 チューリッヒ校研究員)
  • 松本正茂 (静岡大学 理学領域 教授)
  • 萩原雅人 (研究当時:東京大学物性研究所 附属中性子科学研究施設 博士研究員、現所属:高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 特別助教、J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン 中性子利用セクション)
  • 栗田伸之 (東京工業大学 理学院 物理学系 助教)
  • 田中秀数 (東京工業大学 理学院 物理学系 教授)
  • 伊藤晋一 (高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 教授、J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン 中性子利用セクション)
  • Tao Hong (米国オークリッジ国立研究所 研究員)
  • 左右田稔 (研究当時:東京大学物性研究所 附属中性子科学研究施設 助教、現所属:理化学研究所 研究員)
  • 上床美也 (東京大学物性研究所 附属物質設計評価施設 教授)
  • 益田隆嗣 (東京大学物性研究所 附属中性子科学研究施設 准教授)
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お問い合わせ先

東京大学物性研究所 附属中性子科学研究施設

准教授 益田隆嗣

E-mail : masuda@issp.u-tokyo.ac.jp
Tel : 04-7136-3415

静岡大学 理学領域

教授 松本正茂

E-mail : matsumoto.masashige@shizuoka.ac.jp
Tel : 054-238-6352

東京工業大学 理学院 物理学系

助教 栗田伸之

E-mail : kurita.n.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2367

東京工業大学 理学院 物理学系

教授 田中秀数

E-mail : tanaka@lee.phys.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3541

取材申し込み先

東京大学物性研究所 広報室

E-mail : press@issp.u-tokyo.ac.jp
Tel : 04-7136-3207

静岡大学 広報室

E-mail : koho_all@adb.shizuoka.ac.jp
Tel : 054-238-5179

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

高エネルギー加速器研究機構 広報室

E-mail : press@kek.jp
Tel : 029-879-6047

J-PARCセンター 広報セクション

E-mail : web-staff@j-parc.jp
Tel : 029-284-4578

文部科学省 令和元年度卓越大学院プログラムに採択

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東工大が中心となり申請したプログラム「最先端量子科学に基づく超スマート社会エンジニアリング教育プログラム 」が8月9日、文部科学省の令和元年度卓越大学院プログラムに採択されました。

卓越大学院プログラムとは

博士課程を設置する日本の国公私立大学を対象として平成30年度から始まった事業です。

新たな知の創造と活用を主導し、次代をけん引する価値を創造するとともに、社会的課題の解決に挑戦して、社会にイノベーションをもたらすことができる博士人材(高度な「知のプロフェッショナル」)を育成することを目的とする事業です。今年度は29大学44件の申請があり、うち9大学11件が採択され、本学からは申請した1件が採択されました。

平成30年度は38大学54件の申請があり、うち13大学15件が採択され、本学からは「『物質×情報=複素人材』育成を通じた持続可能社会の創造」の1件が採択されています。

プログラム概要

  • 名称

    最先端量子科学に基づく超スマート社会エンジニアリング教育プログラム

  • プログラム責任者

    岩附信行教授(工学院長)

  • プログラムコーディネーター

    阪口啓教授(工学院 電気電子系)

  • 内容

    来たる超スマート社会(SSS:Super Smart Society)を牽引する人材には、サイバー空間とフィジカル空間の技術に加えて、最先端の量子科学を融合する能力が必須となります。

    このような社会的背景に基づき、本プログラムでは、修士課程から博士後期課程までの4年間の一貫教育プログラムとして全学横断型の学位プログラムを新設予定としており、

    1.
    量子科学と人工知能の基幹的学力を有し、
    2.
    サイバー空間・フィジカル空間にまたがる専門分野で独創的な科学技術を創出でき、
    3.
    量子科学から超スマート社会までの道筋を俯瞰でき、
    4.
    異分野が融合した社会課題の解決能力を有し、
    5.
    産官学の各セクターを牽引できるリーダーシップ力のある

    知のプロフェッショナル「スーパードクター」を養成します。

    超スマート社会推進コンソーシアムを介して企業・自治体・国研・海外機関と連携し、オープンエデュケーション(社会連携教育)とオープンイノベーション (異分野融合研究)の融合教育を実施します。

  • 連携先機関

    国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)、国立研究開発法人 理化学研究所(RIKEN) 革新知能統合研究センター、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT) ワイヤレスネットワーク総合研究センター、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST) 情報・人間工学領域、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、華為技術日本株式会社、株式会社光電製作所、日本電気株式会社、アズビル株式会社、横河電機株式会社、株式会社ジェイテクト、株式会社デンソー、株式会社日立産機システム、ショーボンド建設株式会社、株式会社安川電機、日本精工株式会社、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、川崎市、大田区、グーグル、インテル、フランス原子力庁 電子情報技術研究所(フランス)、ジョージア工科大学、国立台湾科技大学、トウェンテ大学(オランダ)、ローマ・トール・ヴェルガータ大学(イタリア)、オハイオ州立大学(アメリカ)、タマサート大学(タイ)、グラスゴー大学(イギリス)、ミュンヘン工科大学(ドイツ)、フラウンホーファー・ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所(ドイツ)、シドニー大学(オーストラリア)、インフォコム研究所(シンガポール)、コーネル大学(アメリカ)

本プログラムで養成する人材像

本プログラムで養成する人材像

お問い合わせ先

学務部 教務課 教育プログラム推進室 超スマート社会卓越教育院推進グループ

E-mail : tak.kik@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2069

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東工大ヨット部が東京地区国公立大学体育大会で総合優勝

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第67回東京地区国公立大学体育大会ヨットの部(以下、国公立大会)が9月22日、葉山町(神奈川県三浦郡)で開催され、東京工業大学ヨット部が総合優勝を果たしました。

国公立大会に出場した部員の代表者、後列中央は主将の堀江嶺太郎さん(工学院 機械系 学士課程4年)

国公立大会に出場した部員の代表者、後列中央は主将の堀江嶺太郎さん(工学院 機械系 学士課程4年)

国公立大会は東京都の国公立大学ヨット部が一堂に会して行われる年に一度の大会で、470級とスナイプ級の2種目で総合成績を競い合います。今年はオープン参加を含め、470級で17大学、スナイプ級で13大学が参加し各5レースを戦い、国公立大会としては数年ぶりに規模が大きな大会となりました。東工大は主管校を担当しました。種目別では470級に4艇が出場し優勝、スナイプ級は3艇が出場し準優勝と優秀な成績を収めました。

国公立大会は、関東水域の国公私立大学が参加する関東学生ヨット選手権大会(以下、秋インカレ)のプレ大会としても位置付けられており、本番の秋インカレに向けて取り組んできた夏合宿の成果を存分に発揮することができました。

ヨット部主将 堀江さんのコメント

470級の優勝、スナイプ級の準優勝によって総合優勝を手にできたことは、チームの総合力が上がってきた証です。国公立大会は勝ち抜くことが決して楽ではない大会ですが、春から培ってきたチーム力が実を結んだ結果だと思います。秋インカレへの出場がこの後すぐなので、今回の結果だけに満足せず、より高いレベルを目指して今後も練習に打ち込みます。また、講義や研究に取り組む時間が限られる私たちに対しても公平に接してくれる先生方に感謝したいと思います。日頃より私たちヨット部の活動にご理解いただいているおかげで、人間的にもたくましく成長できていると自負しています。その成長の証を研究でも見せられるように一生懸命、学修に打ち込みたいと思います。

東工大ヨット部とは

部活動としても歴史が古く、一般社団法人くらまえ潮会という会員数400名を誇るヨット部OB/OG会が、「一人前のセーラーを育てることは、すなわち一人前の社会人を育てること」をモットーに、現役部員の活動を全面的に支援しています。今回の大会への出場も、OB/OG会の支援を受けています。

東工大基金

ヨット部の活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

問い合わせ先

東京工業大学体育会ヨット部

E-mail : titech.sailingteam@gmail.com

東工大ヨット部の岡田暎さんと堀江嶺太郎さんが関東学生ヨット選手権大会予選で1位

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9月28、29日に神奈川県三浦郡葉山町森戸海岸沖で開催された第86回関東学生ヨット選手権大会(以下、秋インカレ)予選に東工大ヨット部が出場し、全15大学45艇で競われたスナイプ級で、岡田暎さん(工学院 機械系 学士課程3年)とヨット部主将の堀江嶺太郎さん(工学院 機械系 学士課程4年)のペアが個別得点で1位を獲得しました。

秋インカレは、スナイプ級と470級の2種目で総合成績を競い合う団体戦です。東工大ヨット部は各種目に3艇ずつ出場しました。2種目ともに予選を通過し、10月4日~6日の決勝へと駒を進めました。

岡田(後)・堀江(前)ペア

岡田(後)・堀江(前)ペア

岡田さんのコメント

昨年の秋インカレでは、私がチームの足を引っぱってしまい、決勝へ進めませんでした。その悔しさをバネに練習に取り組んできました。今回リベンジを果たせて良かったです。来年はチームがもっと上を目指せるように頑張ります。エネルギー分野の研究室への所属を希望しており、練習のない日はレポートや講義に一生懸命取り組んでいます。今後も学修と部活動を両立していけるように努めます。

堀江さんのコメント

個人成績で1位という結果は素直に嬉しいです。ひたすら速さを追求してきた甲斐がありました。岡田とペアを組んでから1年が経ちますが、一緒に乗ってくれたことに感謝したいです。ご指導いただいている教授に部活動に対するご理解をいただいているおかげで、この半年間充実した大学生活を送ることができたと思います。一方で今月まで主将としてヨット部をリードしてきたため、学士特定課題研究に全力を尽くすことができていませんでした。これからはしっかり課題に取組み、研究でも成果をあげたいです。

東工大ヨット部とは

部活動としても歴史が古く、一般社団法人くらまえ潮会という会員数400名を誇るヨット部OB/OG会が、「一人前のセーラーを育てることは、すなわち一人前の社会人を育てること」をモットーに、現役部員の活動を全面的に支援しています。今回の大会への出場も、OB/OG会の支援を受けています。

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E-mail : titech.sailingteam@gmail.com


益一哉学長が、デ・ラ・サール大学と本学フィリピンオフィスを訪問

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スプリード学長に本学の研究活動について説明する益学長

スプリード学長に本学の研究活動について説明する益学長

益学長とスプリード学長
益学長とスプリード学長

9月13日、益一哉学長は、フィリピンのデ・ラ・サール大学レイムンド・スプリード学長を表敬訪問し、両大学の現状についての説明や意見交換を行いました。

訪問には、西崎真也フィリピンオフィス長(情報理工学院情報工学系)、日野出洋文教授(環境・社会理工学院融合理工学系)、大即信明特任教授(教育・国際連携本部)、イーデン・マリキット特任講師(環境・社会理工学院融合理工学系)、鈴木規子国際部長等が同席しました。

両校の学生交流・研究交流は、附属高校間の交流も含めて活発に行われており、特にデ・ラ・サール大学の役職に就いている本学の卒業生も多いことが話題となりました。懇談の最後に、両学長は、今後もさらに協力を継続していくことを確認しました。

益学長にフィリピンオフィスの活動について説明するガラルド フィリピンオフィスアドバイザー
益学長にフィリピンオフィスの活動について説明する
ガラルド フィリピンオフィスアドバイザー

開会の辞を述べる益学長
開会の辞を述べる益学長

ジェイソン・オンペンATTARS会長と益学長
ジェイソン・オンペンATTARS会長と益学長

その後、デ・ラ・サール大学に設置されている本学フィリピンオフィスを視察し、ロナルド・ガラルド フィリピンオフィスアドバイザーからフィリピンにおける大学教育の状況及びフィリピンオフィスの活動等について報告を受けました。また、本学の卒業生でもある、デ・ラ・サール大学教育学部レイモン・シソン学部長とも懇談を行いました。

翌14日にはデ・ラ・サール大学で開催された廃棄物の有効利用に関するワークショップ(WOW2019)に参加しました。このワークショップは、「持続可能な廃棄物の利用と管理における先端技術」をテーマとして、東工大、デ・ラ・サール大学、フィリピン大学等が共同で開催しています。

益学長が開会の辞を述べ、本学からは、中崎清彦教授(環境・社会理工学院融合理工学系)、高橋史武准教授(環境・社会理工学院融合理工学系)が基調講演を行いました。

同日夕刻には、本学同窓会であるフィリピン蔵前会(ATTARS)主催の夕食会が開催され、益学長は、フィリピンにおける本学卒業生との交流を深めました。

ATTARS参加者で記念写真

ATTARS参加者で記念写真

お問い合わせ先

国際部国際事業課 国際事業グループ

E-mail : kokuji.jig@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3827

若手研究者による未来のシナリオ作り「未来社会と自身の研究との繋がりを考えるワークショップ」を開催

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東工大未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、2018年9月に発足した新しい組織です。大学が設置した組織としては珍しく社会への貢献を第1の目的として掲げ、「豊かな未来社会像を学内外の多様な人材と共にデザインし、描いた未来へ至る道筋を提示、共有することで、広く社会に貢献すること」を活動目標としています。

まだ誰も見たことのない未来を、その実現に向けた道筋を示しつつわかりやすく提示するという課題は、予想よりはるかに困難なものでしたが、2018年度の活動により、東工大ならではの「東工大未来年表(仮称)」を作成し、そこから未来社会像を創出するという計画を立て、2019年度の取組を開始しました。

DLab最新動向

DLabは7月18日、東工大大岡山キャンパス百年記念館において科学技術創成研究院基礎研究機構の広域基礎研究塾と共催で「未来社会と自身の研究との繋がりを考えるワークショップ」を開催しました。

今回のワークショップでは、広域基礎研究塾の塾生15人がDLabと同様の方法を用い、「未来要素」から「未来のシナリオ」を作成することで、自身の研究内容と未来社会との繋がりについて新たな気づきを得るとともに、チーム毎に分かれて共同作業を行うことで、俯瞰力、想像力、他者と協働する力を強めるのが狙いです。

ワークショップの詳細については、以下の記事をご覧ください。

DLab構成員に聞く「DLabってどんなところ?」

人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかインタビューしました。構成員の紹介とともに、それぞれが思い描くDLabの姿をご紹介します。(肩書はインタビュー当時のもの)

東工大千手観音で幸せな未来を

DLab Team Imagine(チーム イマジン)所属 上田紀行
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院長

1982年東京大学 教養学部 文化人類学科卒業、1989年東京大学 総合文化研究科 博士課程単位取得退学、2008年岡山大学 医歯薬総合研究科 博士課程修了、1993年愛媛大学 助教授、1996年東京工業大学 大学院社会理工学研究科 価値システム専攻 助教授、2007年同 准教授、2012年東京工業大学 リベラルアーツセンター 教授、2016年より現職

上田リベラルアーツ研究教育院長の専門分野は文化人類学です。2016年に設置されたリベラルアーツ研究教育院の初代院長を務め、東工大のリベラルアーツ教育を推進しています。東工大では学士課程から博士後期課程まで全ての課程でリベラルアーツ教育を行っています。少人数でのディスカッションやプロジェクトでの刺激的な交流の中で、世界を知り、自分自身の可能性を探求しながら、自ら問いを発し、感じ、考え、発言し、行動する力をダイナミックに養っていきます。これからの社会を牽引する真のリーダー育成を目指して、東工大のリベラルアーツ教育のチャレンジが続きます。このリベラルアーツ教育とDLabの活動には深いつながりがあると語る上田研究教育院長に、お話をうかがいました。

DLab Team Imagine所属 上田紀行さん
DLab Team Imagine所属 上田紀行さん

DLabでは、ワークショップなどで少人数でのグループワークを行い、人々が望む未来社会は何かを話し合い、「未来のシナリオ」を作成しました。2016年に始めた「東工大立志プロジェクト」は、学士課程入学直後から全学生が履修する必修科目で、大人数での講義とDLab同様の少人数でのグループワークを交互に行っています。そこでは自分が学ぶ技術や研究で「世界の貧困問題にチャレンジしたい」や「人々を救う医薬を創薬したい」など、大きな志を語る学生が増えてきました。これまでは、世の中のためになりたいと語ると、「変わっているね」と言われたり、「何を熱くなっているの」と冷笑されたりといった雰囲気がありました。しかし、講義やグループワークを通して本音を語り合うことで、自分の中にある志や将来の夢を自由に発言できる空気になりました。学生が、「こんなことを言っても良い大学なのか」と思えることが重要なのです。それが未来の社会をDESIGNすることにもつながると思います。

学士課程3年になると、これまでの教養教育で何を学んだか、それが今後どのように活きてくるかをレポートにまとめた「教養卒論」に取り組みますが、多くの学生が未来の社会について書いています。日頃から、「あなたがこれから学ぶ専門分野は社会にどのようなインパクトを与えるか」、「どのように社会に貢献できるのか」と問うているので、当然、未来社会のことを考えざるを得ないわけです。こういった学生達が進級をし、それぞれの専門とする研究室に入り、教養教育で学んだことを周囲に広げ、大学全体を巻き込んで欲しいと思います。

DLabの活動には学内の構成員だけでなく学外の方も参加しており、大学の中とは違った考えや感性をもたらしています。大学と社会が協働をし、刺激しあってお互いに変化し、自己発見を繰り返しながら潜在的な可能性を広げられればと思っています。

科学技術というものは千手観音だと思います。全ての衆生の苦しみを何としても救いたいという観音様の発願を、千手観音は千の手で救おうとする。千の技術が観音様の心を持って使われれば、人々のありたい未来が実現すると思います。DLabの活動がそのように発展していくことを期待しています。

社会との対話で未来を創っていく

DLab Buzz Session(バズ セッション)所属 中野民夫
東京工業大学 リーダーシップ教育院、リベラルアーツ研究教育院 教授

1982年東京大学 文学部 宗教学科卒業、株式会社博報堂勤務を経て、2012年同志社大学 大学院総合政策科学研究科 教授、2015年より現職

中野教授の専門分野はワークショップやファシリテーションです。2017年に発表した「東工大ステートメント(Tokyo Tech 2030)」(以下、東工大ステートメント)の策定にあたっては、大学執行部や中堅・若手の教職員を中心に数回のワークショップを開き、対話を繰り返しました。このワークショップは非常に好評でしたが、参加者を限っていたこともあり、教職員や学生がもっと幅広く一緒になって東工大の未来を考えようということで、総勢207人が一堂に会した大規模なワークショップを開催しました。それを更に発展したものとして、DLabのキックオフイベントでワークショップを行い、中野教授がメンバーに名を連ねることになりました。発足から約1年が経ち、DLabの今をどう思うか、そしてこれからのDLabの展望について、お話をうかがいました。

DLab Buzz Session所属 中野民夫さん
DLab Buzz Session所属 中野民夫さん

DLabの活動の柱の一つとして、社会との関わりがあります。これまで「東工大の未来を語り合う大ワークショップ」などで行ってきたことは、教員、職員、学生の壁を超えて一丸となって東工大の未来を語ろうということでした。年齢や職種などに違いはあっても、同じ東工大の一員として大学の未来を考えよう、というスタンスです。これに対してDLabでは、社会と対話をしながら未来を洞察し、それを実現する科学技術を考えるというスタンスであることが大事なのだと思います。大学の役割には、教育・研究のほかに、社会貢献や社会連携があります。私がかつて教授を務めていた大学では、地元の商店会と学生が一緒に七夕祭りを盛り上げたり、祇園祭のごみゼロ運動に取り組んだりと、地域社会の問題に学生が積極的に関わっていました。こういった地域社会と連携した活動は、日本全国の大学で取り組まれていると思います。ところが東工大では、地域社会への関わりが薄いと感じます。理工系の大学であり、多くの学生が修士や博士に進学する専門性の高い大学であることが、地域社会の身近な問題に結びつきづらいのかもしれません。しかし、これからの社会がどうなるか、どうしたいかを考えるためには、学生が社会性や人間性をもっと幅広く身につけた上で、社会と一緒に未来の科学技術を考えないといけません。SDGs(持続可能な開発目標)など、世界の今後を見据えてより視野を広げていくことが重要かと思います。

現時点のDLabは、創造的な活動には不可欠な「混沌」の時期に入っていると思います。何か大きなものを生み出す前には生みの苦しみの時代があって、新しいことをやろうとしても思い通りにはいかない。今後、ワークショップなどで社会との対話を繰り返し、クリエイティブカオス(創造的混沌)を経て少しずつ前に進んで行くのを楽しみにしています。

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お問い合わせ先

総務部企画・評価課総合企画グループ

E-mail : kik.sog@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2011

軽量で安全な水素キャリア材料を開発 室温・大気圧において光照射のみで水素を放出

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要点

  • ホウ化水素シートが常温・常圧条件で光照射のみで水素を放出
  • 水素放出のメカニズムを計算科学による電子構造から解明
  • 安全・軽量なポータブル水素キャリアとしての応用に期待

概要

東京工業大学 物質理工学院 材料系の河村玲哉修士課程2年、宮内雅浩教授、筑波大学の近藤剛弘准教授、Nguyen Thanh Cuong(ニュエン タン クオン)研究員、岡田晋教授、高知工科大学の藤田武志教授、東京大学物性研究所の松田巌准教授らの共同研究グループは、ホウ素と水素の組成比が1:1のホウ化水素シートが室温・大気圧下において光照射のみで水素を放出できることを見出した。

ホウ化水素シートはもともとボロファン[用語1]という通称名で理論的に存在が予測されていた二次元物質で、2017年9月に本研究グループが初めて合成に成功した。ホウ化水素シートは軽元素のホウ素と水素からなり、その質量水素密度は8%以上と極めて高く、爆発のリスクある水素ガスボンベに代わる軽量で安全な水素キャリア[用語2]としての応用が期待されていた。

今回、見出した現象はホウ化水素シートに紫外光を照射する単純な操作で、室温・大気圧という穏やかな条件で水素を取り出すことができる。これを応用することで爆発性のある水素の運搬を、高温や高圧を要する従来手法よりもはるかに安全に達成することが期待できる。さらに本研究では、計算科学によって電子構造の観点から、光照射による水素放出のメカニズムを解明することに成功した。

研究成果は10月25日「Nature Communications」に掲載された。

光照射によってホウ化水素シートから水素が放出される様子を示す模式図

図1. 光照射によってホウ化水素シートから水素が放出される様子を示す模式図

研究の背景

原子一層や数層分の厚さからなる物質は二次元物質と呼ばれており、グラフェン[用語3]を始めとする多くの二次元材料で、通常の物質とは異なる性質に着目したさまざまな基礎的・応用的研究がなされている。こうした状況で、ホウ素のみで構成される二次元物質であるボロフェンと呼ばれる物質が、理論的な研究によってグラフェンの性能を凌駕することを示唆する報告がなされてきた。だが、合成に成功した条件はいずれも高温・超高真空下など特殊な条件が必要だった。

そのような中で、本研究グループは二次元的な骨格をもつホウ素に水素が結合した二次元物質であるホウ化水素シートの合成に、室温・大気圧下という非常に穏やかな条件で成功した(東工大プレスリリース 2017年9月26日)。ホウ化水素シートは軽元素のホウ素と水素からなるために、その質量水素密度は8.5%と高く、爆発のリスクある高圧水素ガスボンベに代わる軽量で安全な水素キャリア材料としての応用が期待されていた。

研究成果

本研究グループの第一原理計算[用語4]によると、ホウ化水素シートではホウ素の結合性軌道[用語5]から反結合性軌道[用語5]への遷移(α→β)、ならびに水素の反結合性軌道への遷移(α→γ)が起こることが示唆された(図2)。特に水素の反結合性軌道への遷移は紫外線のエネルギーに相当する。すなわち、光エネルギーでγ軌道に電子を遷移できれば水素の結合を弱められ、常温・常圧で紫外線の照射のみで水素が放出されるのではないかとの仮説を立てた。

ホウ化水素シートの透過型電子顕微鏡写真(a)、結晶構造(b)、電子構造(c)

図2. ホウ化水素シートの透過型電子顕微鏡写真(a)、結晶構造(b)、電子構造(c)

これを検証するため、2種類の光源を用いてホウ化水素シートから放出されるガスの分析をおこなった。可視光の照射はホウ素の結合性軌道から反結合性軌道への遷移(α→β)を起こすことができる一方、紫外線照射は水素の反結合性軌道への遷移(α→γ)を起こすことができる。この結果、第一原理計算の予想通り、紫外線の照射で水素が生成することが確認できた(図3(a))。また、紫外線を照射したときの水素生成量を定量したところ、ホウ化水素シートの質量の8%にあたる水素を放出できることがわかった(図3(b))。

従来の水素吸蔵合金における質量水素密度は、高いものでも2%程度だった。また、シクロメチルヘキサンのような有機ハイドライドも有望な水素キャリアとして知られているが、その質量水素密度は6.2%で、水素放出には300 ℃以上の加熱が必要だった。今回、宮内教授らが報告するホウ化水素シートは、既往の水素キャリアと比べて極めて大量の水素を、光照射という極めて簡便な操作で放出できることがわかった。

(a)ホウ化水素シートからの水素放出特性(照射光の波長依存性。filterと記載されている領域は波長490 nm以下の光をカットするフィルターを挿入)(b)紫外線照射時の水素生成能力
図3.
(a)ホウ化水素シートからの水素放出特性(照射光の波長依存性。filterと記載されている領域は波長490 nm以下の光をカットするフィルターを挿入)(b)紫外線照射時の水素生成能力

今後の展開

現行の車載用燃料電池には高圧水素タンクが搭載されているが、本研究成果により、安全・軽量・簡便なポータブル水素キャリアとしての応用が期待できる。

用語説明

[用語1] ボロファン : ホウ化水素シート。ホウ素と水素の組成比が1:1のナノシート状物質。

[用語2] 水素キャリア : 水素を貯蔵・輸送するための担体。高圧水素ガスボンベ、液化水素、アンモニア、有機ハイドライド、水素吸蔵合金などが知られる。

[用語3] グラフェン : 炭素原子一層あるいは数層分の厚さからなるシート状物質。

[用語4] 第一原理計算 : 実験データや経験パラメーターを使わない基本的な原理に基づく計算。

[用語5] 結合性軌道および反結合性軌道 : 分子同士を結合させるために働く軌道、および、分子同士の結合を開裂させるように働く軌道。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Photoinduced hydrogen release from hydrogen boride sheets
著者 :
Reiya Kawamura, Nguyen Thanh Cuong, Takeshi Fujita, Ryota Ishibiki, Toru Hirabayashi, Akira Yamaguchi, Iwao Matsuda, Susumu Okada, Takahiro Kondo, Masahiro Miyauchi
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 物質理工学院 材料系

教授 宮内雅浩

E-mail : mmiyauchi@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2527 / Fax : 03-5734-3368

筑波大学 数理物質系

准教授 近藤剛弘

E-mail : takahiro@ims.tsukuba.ac.jp
Tel : 029-853-5934

高知工科大学 環境理工学群

教授 藤田武志

E-mail : fujita.takeshi@kochi-tech.ac.jp
Tel : 0887-53-1050 / Fax : 0887-57-2520

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

筑波大学 広報室

E-mail : kohositu@un.tsukuba.ac.jp
Tel : 029-853-2040 / Fax : 029-853-2014

高知工科大学 広報課

E-mail : kouhou@ml.kochi-tech.ac.jp
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東京大学物性研究所 広報室

E-mail : press@issp.u-tokyo.ac.jp
Tel : 04-7136-3207

火星の水はミネラル豊富な塩味だった 太古の火星が生命生存に適した星だったことを 水の水質復元から立証!

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金沢大学環日本海域環境研究センターの福士圭介准教授、大学院自然科学研究科 博士前期課程1年の森田康暉さん、東京工業大学 地球生命研究所の関根康人教授(金沢大学環日本海域環境研究センター客員教授)、米国・ハーバード大学のRobin Wordsworth(ロビン・ワーズワース)准教授、物質・材料研究機構の佐久間博主幹研究員らの共同研究グループは、太古の火星に存在した水の水質復元に世界で初めて成功し、塩分やpHといった火星の水質が生命の誕生と生存に適したものであることを明らかにしました。

これまでの欧米による周回衛星や探査車の調査から、火星表面には河川跡などの流水地形や、水の作用で生成する鉱物が存在することが確認されており、約40~35億年前の太古の火星には液体の水があったことが確実視されています。しかし、生命の存否にとって重要となる、当時の水の塩分やpHなどの水質は分かっていませんでした。

本研究では、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車キュリオシティ[用語1]が探査を行っているゲール・クレータ内部に存在した巨大湖に着目し、その湖底にたまった堆積物の探査データを、地球の放射性廃棄物処理分野で開発された手法で独自に解析しました。その結果、かつて火星に存在した水の水質が、地球海水の1/3程度の塩分で、pHは中性であり、ミネラルやエネルギーも豊富に含むことが分かり、生命の生存に適したものであることを明らかにしました。また、そのような塩分を達成するためには、100万年程度の期間、塩分やミネラルが河川を通じて湖に運ばれ、濃縮されることが必要であるということも分かりました。このような溶存物質の濃縮が起きる場は、生命の誕生にとっても必須と考えられています。

これらの知見は、“かつて水が存在した惑星”という火星の従来の描像を“生命の誕生と生存に適した惑星”へと塗り替える進展であり、その水質復元法は、近い将来、わが国の小惑星探査機「はやぶさ2」の帰還試料の分析にも応用されるものです。

本研究成果は、2019年10月25日10時(英国時間)に英国科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

研究の背景

周回衛星や探査車による火星探査から、約40~35億年前の太古の火星には広範囲にわたり液体の水が存在した証拠が見つかり、過去の火星における生命存在の可能性が現実味を帯びて議論されるようになってきました。しかし、生命の存在可能性を検証するには、単なる水の存否だけでなく、水の水質(pH、塩分、溶存種濃度)や周囲の環境を明らかにする必要があります。現在、約35億年前に巨大湖が内部に存在していたゲール・クレータに、NASAの火星探査車キュリオシティが降り立ち、当時湖底に堆積した泥の堆積物に対して探査を行っています(図1)。キュリオシティは、堆積物中に水の作用で生成した鉱物や有機物などを見つけていますが、すでに失われた水の水質を復元することはできていませんでした。

図1。火星探査車キュリオシティ ゲール・クレータにかつて存在した水環境を調査している(画像提供 NASA)

図1. 火星探査車キュリオシティ
ゲール・クレータにかつて存在した水環境を調査している(画像提供 NASA)。

研究成果の概要

本研究では、放射性廃棄物の地層処分研究分野で開発された水質復元手法(図2)を応用し、キュリオシティが得たゲール・クレータの堆積物データから、太古の火星に存在した失われた水の水質を独自に復元することに世界で初めて成功しました(表1)。

放射性廃棄物の地層処分分野で開発されたスメクタイトの層間組成を利用した水質復元法

図2. 放射性廃棄物の地層処分分野で開発されたスメクタイトの層間組成を利用した水質復元法


層状構造を有する粘土鉱物スメクタイトは層間に陽イオン(Na+、K+、Mg2+、Ca2+)を保持する性質を持つ。層間に保持される陽イオン組成は接触する水に含まれる陽イオン組成に応じて決定される(イオン交換平衡)。接触する水が消失した後でもスメクタイト層間には陽イオンが保持されるため、残された層間の陽イオン組成から、かつてスメクタイトが接触していた水の陽イオン組成に関する情報を得ることができる。さらに水の作用で生成した鉱物(塩など)がスメクタイトと共存している場合、それら塩と水との間の化学反応(溶解・沈殿反応)を考慮することで、陰イオン(Cl-、SO42-、HCO3-)組成やpHを復元することができる。

表1. 本研究により復元されたゲール・クレータ湖沼堆積物間隙水の水質の結果


地球上の淡水湖(琵琶湖)や海水と同様にpHは生命にとって好適な条件である中性を示し、ミネラルを豊富に含む。

項目
単位
琵琶湖
海水
ゲール
pH
ピーエイチ
(-)
7.0±0.2
8.1±0.4
6.9 - 7.3
Na+
ナトリウム
(mmol/kg)
0.32
490
94 - 120
K+
カリウム
(mmol/kg)
0.04
11
1.4 - 4.4
Mg2+
マグネシウム
(mmol/kg)
0.09
55
35 - 60
Ca2+
カルシウム
(mmol/kg)
0.30
11
24 - 45
Cl-
塩化物イオン
(mmol/kg)
0.25
570
110 - 250
SO42-
硫酸イオン
(mmol/kg)
0.080
29
44 - 72
HCO3-
重炭酸イオン
(mmol/kg)
0.71
2.4
2.3 - 16

復元された水質は、pHが中性で、主な溶存成分は地球の海と同じナトリウムと塩素であり、これ以外にもマグネシウムやカルシウムなどのミネラルも多く含みます。また、塩分は地球海水の1/3程度であり、生命が利用できるエネルギー(酸化還元非平衡[用語2])も存在していたことが明らかになりました。復元された水質は、強酸や強アルカリ、高塩分といった生命を害するものではなく、生命の生存に極めて好適なものといえます。

このような湖の水質は、どうやって実現したのでしょうか。表面に残された地形から、ゲール・クレータ湖には、水が流入する河川はあるものの、流出する河川が無い湖だったことが分かっています。湖には、流入する河川などに溶けたわずかな塩分やミネラルが、水と共に供給されます。一方、流出河川の無いゲール・クレータ湖では、湖面から水が蒸発することによって、水の収支バランスが取れています。しかし、蒸発は水のみを失わせるため、供給された塩分やミネラルは湖に残され、長い期間をかけて濃縮されることになります。本研究では、地球の河川に含まれる典型的な塩分と気候モデルから導かれるゲール・クレータ湖からの蒸発率を使い、ゲール・クレータ湖の塩分が実現するために必要な塩分の濃縮期間を求めました。その結果、復元された塩分になるためには、初期火星に100万年程度の温暖期が生じ、その期間にわたって湖に塩分が運ばれ、濃縮される必要があることが分かりました。このような溶存物質が比較的長期にわたって濃縮される場は、有機物の重合・高分子化にも有利なため、地球生命誕生の場の候補とも考えられています。このように、本研究グループはゲール・クレータ巨大湖が、生命の生存のみならず、その誕生にとっても適した場であることを示しました。

今後の展開

40年にわたる探査の結果、人類は火星に対して“かつて水が存在した惑星”という描像を持つに至りました。しかし、水の水質や環境が不明なため、火星における生命に関する議論はどうしても推測の範疇を出ませんでした。本研究は、かつての火星の水質や環境を初めて定量的に明らかにしたものであり、人類が火星に対して抱く描像を“生命の誕生や生存に適した惑星”に塗り替えうる進展といえます。今後はキュリオシティのみならず、マーズ2020[用語3]エクソマーズ[用語4]といった火星探査計画でも、本研究に基づく水質や環境の復元が可能となります。これにより、火星では生命に適した環境が広範囲に広がっていたのか、その環境はいつどのようにして終わったのかに迫ることができます。さらには、火星サンプルリターン計画[用語5]において、生命の痕跡が最も期待される試料を地球に持ち帰ることにもつながります。

本研究では、わが国の研究者が独自の視点で放射性廃棄物処理分野の手法を応用し、NASA探査チームでも成し得なかった水質の復元を行えた点は特筆すべきです。本研究で用いた水質復元法をわが国の小惑星探査「はやぶさ2」が採取に成功した、小惑星リュウグウの帰還試料に適用することで、太陽系初期に存在した微惑星[用語6]における水質や環境の推定も可能になります。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型)「水惑星学の創成」(領域代表者:関根康人)、金沢大学環日本海域環境研究センター共同研究の支援を受けて実施されました。

用語説明

[用語1] 火星探査車キュリオシティ : NASAによる火星探査ミッションであるマーズ・サイエンス・ラボラトリにおける探査車。キュリオシティはその探査車の愛称である。2012年から現在も、火星ゲール・クレータ内の湖底堆積物の探査を行っている。高性能カメラや温度・湿度・速度計などの環境計測装置に加え、火星の土壌や堆積物の化学組成や鉱物組成、有機物を分析するための装置を搭載している。

[用語2] 酸化還元非平衡 : 酸化的な環境と還元的な環境が混じり合っている状態。ゲール・クレータ内の堆積物には高い酸化条件のみで生成する物質であるアカガネアイトと還元的条件のみで生成する鉄サポナイトが混じり合って存在している。

[用語3] マーズ2020 : NASAによるマーズ・サイエンス・ラボラトリの後継探査ミッション。2020年7月に打ち上げ予定であり、かつて水が流れた痕跡のある火星上のジェゼロ・クレータに2021年2月に着陸予定。火星の堆積物の化学組成を分析する観測機器などを搭載するほか、火星サンプルリターン計画におけるサンプル捕集も行う。

[用語4] エクソマーズ : 欧州宇宙機構(ESA)による火星探査計画。第1段は2016年に打ち上げられた周回機(トレース・ガス・オービタ)であり、第2段が2020年に打ち上げされ、2021年に着陸予定の探査車。探査車には、火星の堆積物中の鉱物や有機物を分析する装置を搭載する。

[用語5] 火星サンプルリターン計画 : NASAとESAが共同で行う火星表層サンプルを地球に持ち帰る計画。マーズ2020がサンプル捕集を行い、2026年以降に打ち上げ予定の着陸機などによってサンプルを火星軌道に打ち上げて回収する。2030年代初頭の地球へのサンプルリターンを目指している。

[用語6] 微惑星 : 太陽系初期に存在していたと考えられる惑星の材料物質となった微小天体。リュウグウをはじめとする現在太陽系に存在する小惑星の多くは、微惑星が高速で衝突・破壊した結果、形成したと考えられる。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Semiarid climate and hyposaline lake on early Mars inferred from reconstructed water chemistry at Gale(火星ゲール・クレータ湖沼堆積物間隙水の水質復元:初期火星は半乾燥気候であり低塩分の塩湖が存在していた)
著者 :
Keisuke Fukushi, Yasuhito Sekine, Hiroshi Sakuma, Koki Morida, Robin Wordsworth(福士圭介、関根康人、佐久間博、森田康暉、ロビン・ワーズワース)
DOI :

お問い合わせ先

金沢大学環日本海域環境研究センター

准教授 福士圭介

E-mail : fukushi@staff.kanazawa-u.ac.jp
Tel : 076-264-6520

東京工業大学 地球生命研究所

教授 関根康人

E-mail : sekine@elsi.jp
Tel : 080-6708-0437

取材申し込み先

金沢大学 総務部 広報室 広報係

嘉信由紀

E-mail : koho@adm.kanazawa-u.ac.jp
Tel : 076-264-5024

金沢大学 理工系事務部 総務課 総務係

永森理一郎

E-mail : s-somu@adm.kanazawa-u.ac.jp
Tel : 076-234-6821

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術創成研究院 研究院公開2019開催報告

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2016年から恒例となった科学技術創成研究院の研究院公開を、10月11日にすずかけ台キャンパスで開催しました。

各研究所セミナーの様子
各研究所セミナーの様子

科学技術創成研究院は、4つの研究所、3つの研究センター、11の研究ユニットから構成され、これらを有機的に連携させて新たな知の創造による社会貢献を目指しています。研究院公開2019では研究成果をわかりやすく紹介するため、研究所主催のセミナー、講演会、ポスターによる研究内容展示、及び研究室公開を開催しました。

午前中に開催したセミナーでは、未来産業技術研究所・フロンティア材料研究所・化学生命科学研究所よりそれぞれの研究所ならではのテーマ紹介があり、12人の研究者より機械・光通信・マイクロデバイス・半導体材料・負熱膨張材料・触媒・光合成・ナノ医薬品・共同研究拠点などのテーマについて、研究動向が紹介されました。

各研究所セミナーの様子

各研究所セミナーの様子

各研究所セミナーの様子

また午後には、最近特に注目されている下記の2つのテーマについて講演会を開催しました。テーマへの来場者の関心は高く、会場となったすずかけ台大学会館の多目的ホールはほぼ満席状態となりました。

  • AIチップ:世界の研究動向と東工大の研究戦略
    本村真人教授(AIコンピューティング研究ユニット)
  • 先進計算科学とマテリアルズインフォマティクスがもたらす無機材料研究の新展開
    大場史康教授(フロンティア材料研究所)

講演する本村教授
講演する本村教授

講演する大場教授
講演する大場教授

ポスター展示の様子
ポスター展示の様子

研究室のポスター展示は、R2棟オープンコミュニケーションスペースにて先導原子力研究所を含め、105の研究室、3つの共同研究拠点と3つの共同研究講座、1つの協働研究拠点の研究内容を終日紹介しました。展示会場ではメモをとる方やホームページに掲載されているポスターを確認する方が多く見られ、科学技術創成研究院の幅広い研究を知っていただく良い機会となりました。

研究室公開は来場いただいた方への特別なイベントで、56の研究室と12の研究センター・研究ユニットで開催しました。普段は立ち入ることのできない研究室を訪問し、研究者から直接研究内容や研究施設の説明を受けることにより、最前線の研究に触れていただきました。

研究室見学の様子

研究室見学の様子

研究室見学の様子

台風19号が関東に近づき、午後からはあいにくの悪天候となりましたが、企業関係者を中心に昨年と同程度の約270名の来場者数があり、科学技術創成研究院の研究に対する関心の高さがわかるイベントとなりました。

お問い合わせ先

科学技術創成研究院 研究院公開担当

E-mail : openlab@iir.titech.ac.jp

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