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大都市でのドローン飛行で都市気象情報の有効性を検証 新宿でのドローン飛行実証実験に超高解像度「都市乱流予測」を提供

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東京工業大学 環境・社会理工学院 融合理工学系の神田学教授と、一般財団法人 日本気象協会(以下「日本気象協会」)、国立研究開発法人 防災科学技術研究所(以下「防災科研」)は、「都市気象情報プラットフォームの研究開発※1」で試作した超高解像度「都市乱流予測」を新宿でのドローン飛行実証実験に提供し、その有効性を検証しました。

超高層ビル街区を含む大都市でのドローンの安全飛行を目的とした、超高解像度「都市乱流予測」の活用は、国内で初めての取り組みです。(日本気象協会調べ)

実証実験の写真風景
実証実験の写真風景

超高解像度「都市乱流予測」の画面
超高解像度「都市乱流予測」の画面

(2019年11月25日予備実証実験にて撮影)

日本気象協会、防災科研、東京工業大学の三者はJST未来社会創造事業での研究開発として、「都市気象情報プラットフォームの研究開発」を共同で実施しています。

この研究開発では、超高層ビル街区の気象予測の実現と有効利用を目指しており、都市気象情報のひとつとして超高解像度「都市乱流予測」の開発を進めています。

このたび、本研究開発の一環として、「チーム・新宿※2」による「新宿区災害対策本部訓練との連携によるドローンを活用した超高層ビル街複数拠点での災害対応実証実験※3」にて、試作中の超高解像度「都市乱流予測」の試験提供を実施しました。

今回提供した超高解像度「都市乱流予測」は、新宿西口エリアを対象とした2mメッシュ、5分間隔の情報で、超高層ビル街区を含む大都市特有のビル風や強風、ビルによる乱流などを予測します。

チーム・新宿による実証実験では、これらの予測情報を、ドローン飛行の実施判断や安全監視に活用いただきました。これにより、都市気象情報は大都市でのドローンの安全飛行に十分に活用できること、また、情報の有効性を確認・検証することができました。

これらの情報は試作段階であり、予測の精度向上などのさまざまな課題を解決していく必要があります。今後、これらの課題解決に向けて、日本気象協会、防災科研、東京工業大学は、「都市気象情報プラットフォームの研究開発」を進めていきます。

研究開発の背景と概要

Society5.0※4で提唱された未来社会では、ドローンに代表されるロボットの利用や自動走行技術の活躍が期待されており、特に人やモノが集中する都市部で実現されれば、経済的、社会的に大きな効果が見込まれます。

一方で、これらの新しいロボットや技術は、強風によるドローンの墜落、熱や雨によるセンサーの性能低下など、気象の影響を受けることが知られています。こうしたロボットや技術が大都市でも最大限に活躍するためには、超高層ビル街区による複雑な気流、都市部の暑熱環境や局地的な大雨などを的確に捉えることが重要です。

そこで、本研究開発では、大都市特有の気象現象を観測、解析、予測する技術を開発し、これらの都市気象情報を一元的に提供可能な「都市気象情報プラットフォーム」の実現を目指しています。

さらに、「都市気象情報プラットフォーム」はドローン分野での活用に限らず、日射量や風速に依存する太陽光発電や風力発電などのエネルギー分野や、大雨や強風に影響される都市の物流や防災分野での活用も見込まれます。日本気象協会、防災科研、東京工業大学は、さまざまな社会システムとの連携を実現する「都市気象情報プラットフォームの研究開発」を通して、超スマート未来社会の創造に貢献します。

研究開発の体制

機関名
担当する研究開発項目
(研究開発代表者グループ)日本気象協会
都市気象情報プラットフォームの全体検討
(共同研究グループ)防災科研
都市気象観測及び客観解析の研究
(共同研究グループ)東京工業大学
都市気象予測技術の研究

※1 「都市気象情報プラットフォームの研究開発」は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業「超スマート社会の実現」領域にて実施している研究開発課題です。

※2 チーム・新宿。実証実験主体である「チーム・新宿」は、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、SOMPO リスクマネジメント株式会社、工学院大学、株式会社理経、新宿区危機管理担当部をメンバーとする、新宿駅周辺地域の有志のメンバーです。

※3 【12/13 実施】新宿区災害対策本部訓練との連携によるドローンを活用した超高層ビル街複数拠点での災害対応実証実験を実施しました。

※4 Society5.0は、情報社会(Society4.0)に続く未来社会の姿として、政府の第5期科学技術基本計画で提唱された未来社会の姿のことです。

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お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975


AESセンター第12回シンポジウム開催報告-地域創成を加速する脱炭素化イノベーション

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東京工業大学 科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)は、11月7日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館で「地域創成を加速する脱炭素化イノベーション」と題した第12回シンポジウムを開催しました。AESセンター設立10周年を記念して、この間に得られた成果を振り返りつつ、2050年に向けた脱炭素化の実現方策について官・公・産のリーダー達による講演や議論が行われました。シンポジウムには自治体のほか企業、大学、一般の参加者を含む約250名の参加者が集まりました。

シンポジウムの様子

冒頭に、益一哉学長が「目指すべき大学の姿はTechnology Oriented(技術志向)でなく、社会、産業界と協業し、社会科学的観点を前面に出してエネルギー問題に立ち向かうことである」と基調講演しました。

つぎに、招待講演として、経済産業省 産業技術環境局の渡邊昇治審議官がエネルギー環境政策の動向のほか、産官学のエネルギー共同研究拠点を計画していることを話しました。さらに、産官学の「学」の立場による講演として、AESセンターの浅野浩志特任教授が再生可能エネルギーの出力変動に対応した調整力や予測手法の研究動向を紹介し、同センターの小山堅特任教授が国際エネルギー情勢では経済・環境・安全保障のエネルギートリレンマが世界共通の課題であると話しました。

益学長
益学長

渡邊審議官
渡邊審議官

浅野特任教授
浅野特任教授

小山特任教授
小山特任教授

後半のパネルディスカッションでは、東京ガス株式会社の穴水孝代表取締役副社長執行役員、株式会社東芝の斉藤史郎執行役専務、株式会社NTTファシリティーズの正代尊久スマートエネルギー部長、JXTGエネルギー株式会社の藤山優一郎執行役員、三菱商事株式会社の真壁恒裕環境事業本部長、株式会社日立製作所戦略事業本部の山田竜也本部長がパネリストとして登壇しました。各社が取り組む脱炭素化に向けた事業紹介の後、水素社会への課題や、脱炭素化に向けて加速すべき産学官連携のあり方について、さまざまな議論が行われました。

最後にAESセンター長の柏木孝夫特命教授が、登壇者や参加者への謝辞と本日のシンポジウムを総括し、閉会しました。

パネルディスカッション
パネルディスカッション

柏木特命教授(AESセンター長)
柏木特命教授(AESセンター長)

脱炭素化

地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの排出量ゼロを目指すこと。近年では再生可能エネルギーの活用を進めることで、将来的に化石燃料に頼らない社会を実現しようという考え方が世界各国で広がっている。

お問い合わせ先

科学技術創成研究院
先進エネルギー国際研究(AES)センター

E-mail : aescenter@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3429

新たな強誘電性を微細な酸窒化物単結晶を用いて実証 新規強誘電体材料の開発に期待

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要点

  • 酸窒化物の高品質な単結晶の合成に成功
  • 新たな機構による強誘電性を酸窒化物単結晶で初めて実証
  • 新規酸窒化物誘電体の開発に期待

概要

北海道大学 大学院工学研究院の鱒渕友治准教授、樋口幹雄准教授、吉川信一名誉教授、同総合化学院 博士後期課程の細野新氏(日本学術振興会特別研究員)、同理学研究院の武貞正樹准教授、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の安井伸太郎助教、伊藤満教授らの研究グループは、酸窒化物[用語1]ペロブスカイトBaTaO2Nの微小な単結晶を用いて、当該物質群におけるPolar Nano Regions(PNRs)[用語2]による強誘電性が発現することを世界で初めて実証しました。

本研究では、細野氏らが発見したBaCN2を結晶成長のフラックス[用語3]として用いることで、最大数µm(マイクロメートル)サイズの高品質なBaTaO2N単結晶を合成しました。研究グループは、微小部の電気物性を評価できる圧電応答顕微鏡[用語4]を用いて、BaTaO2N単結晶の自発分極の方向が電場の印加によって反転することを確認し、強誘電体であることを実証しました。また、本研究の微細な単結晶は耐電圧が非常に高く、物性データの信頼性が高いことも特徴です。本成果は、複数の陰イオンの共存によって無機物にPNRsによる強誘電性を導入できることを示しており、新たな強誘電体材料の開発指針の確立につながると期待されます。

なお、本研究成果は、2019年11月27日(水)公開のInorganic Chemistry誌に掲載されました。

また、本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究A(#24245039)、新学術領域研究「複合アニオン」(JP16H06439)、特別研究員奨励費(19J10301)の補助を受けて行われました。

(左)BaTaO2N単結晶の光学顕微鏡像(中)強誘電性の圧電応答信号シグナル(右)強誘電性の変位位相シグナル

(左)BaTaO2N単結晶の光学顕微鏡像
(中)強誘電性の圧電応答信号シグナル
(右)強誘電性の変位位相シグナル

背景

高度情報通信社会の実現に向けたインフラの整備や、電気自動車をはじめとする次世代交通手段への実装などを目指し、より高周波数帯及び高温環境で動作する強誘電体材料の開発が急務とされています。こういった情勢下において、新たな強誘電体材料の候補として酸窒化物ペロブスカイトが注目され始めています。過去に、酸窒化物ペロブスカイトの緻密な焼結体における強誘電性を報告しましたが、物性測定時に数Vの電圧印加で電流がリークするという課題点がありました。

このような電流のリークには焼結体中の粒界や、焼結時に生じた半導体成分の寄与が疑われており、より高絶縁性で高品質な酸窒化物試料を用いた信頼性の高い電気物性データの取得が望まれていました。

研究手法

酸窒化物ペロブスカイトは融点よりも低い約1,000 ℃で分解するため、その融液からの結晶成長は不可能です。北海道大学の細野氏らは、酸窒化物ペロブスカイトのフラックスとなる低融点な物質を探索したところ、BaCN2が900 ℃付近に融点をもち、目的材料の反応性フラックスとして機能することを発見しました[引用文献1]。これをBaTaO2Nと混合して加熱・徐冷することで、最大3.1 µm角の立方体形状のBaTaO2N単結晶を得ました(図1左)。この微細な単結晶粒子の上下面に電極を つけ、圧電応答顕微鏡を用いて印加電場による自発分極の反転を確認しました。

研究成果

BaCN2フラックス中で得られたBaTaO2N粒子は、光学顕微鏡で色や形状を確認できるほどの大きさを有しており、透過型電子顕微鏡を用いて粒子内部までペロブスカイト型構造の単結晶であることを確認しました(図1右)。これはBaCN2にBaTaO2Nが溶解し、冷却過程で再結晶したためです。

この単結晶粒子に圧電応答顕微鏡で電圧を印加したところ、先行研究における焼結体を大幅に上回る100 Vまで電圧を印加しても電流はリークせず、BaTaO2Nが非常に高い電気抵抗を有することが判明しました。さらに電圧を変化させると分極反転を伴う圧電応答が確認され、PNRsに由来する強誘電体である明確な根拠が得られました。

(左)立方体状のBaTaO2N結晶の走査型電子顕微鏡像。(右)粒子内部の透過型電子顕微鏡像。各原子が秩序よく結晶構造模型(緑:Ba、黄:Ta、赤: 酸素及び窒素)と同様の配列をしていることから、本研究で得たBaTaO2N粒子は単結晶。
図1.
(左)立方体状のBaTaO2N結晶の走査型電子顕微鏡像。
(右)粒子内部の透過型電子顕微鏡像。各原子が秩序よく結晶構造模型(緑:Ba、黄:Ta、赤: 酸素及び窒素)と同様の配列をしていることから、本研究で得たBaTaO2N粒子は単結晶。

今後への期待

酸窒化物ペロブスカイトBaTaO2NのPNRsに由来する強誘電性は、結晶構造に含まれる酸化物イオンと窒化物イオンが規則的に配列した領域が部分的に存在することが起源とされています。従来の酸化物誘電体材料における(変異型)強誘電性とは異なり、窒化物イオンなどの異種の陰イオンを共存させることによるPNRsに起源をもつ新たな強誘電性の発現を実証したことで、新たな電子材料開発と情報及びエネルギーシステムへの飛躍的な応用が期待されます。

用語説明

[用語1] 酸窒化物 : 陰イオンに酸化物イオンと窒化物イオンの両方を含む金属化合物のこと。光触媒や 白色LED用の蛍光体などの粉体としての用途が広く研究されている。

[用語2] Polar Nano Regions(PNRs) : 常誘電領域内部に生じるnmスケールの分極領域のこと。PNRsに起源をもつ強誘電体は誘電率の温度変化が小さい特徴がある。この性質をもつ酸窒化物ペロブス カイトにおいては、酸化物イオンと窒化物イオンの局所的な規則配列がその分極構造をつくると考えられている。

[用語3] フラックス : 融剤のこと。その融液に目的化合物が溶解し、再析出する過程で単結晶が得られる。

[用語4] 圧電応答顕微鏡 : 走査型プローブ顕微鏡の一種。微細な試料表面の凹凸や強誘電体の変位量などを測定できる。

引用文献

[1] Akira Hosono, Yuji Masubuchi, Takashi Endo and Shinichi Kikkawa, Dalton Transactions, 46 (2017) 16837-16844.

論文情報

掲載誌 :
Inorganic Chemistry(アメリカ化学会が発行する無機化学の専門誌)
論文タイトル :
Ferroelectric BaTaO2N Crystals Grown in a BaCN2 Flux(BaCN2フラックス中で合成した 強誘電BaTaO2N単結晶)
著者 :
細野新1、鱒渕友治2、安井伸太郎3、武貞正樹4、遠堂敬史5、樋口幹雄2、伊藤満3、吉川信一2
所属 :
1北海道大学 大学院総合化学院
2北海道大学 大学院工学研究院
3東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所
4北海道大学 大学院理学研究院
5北海道大学 大学院工学研究院 工学系技術センター技術部
DOI :

お問い合わせ先

北海道大学 大学院工学研究院

准教授 鱒渕友治

E-mail : yuji-mas@eng.hokudai.ac.jp
Tel : 011-706-6742 / Fax : 011-706-6740

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所

教授 伊藤満

E-mail : itoh.m.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5354 / Fax : 045-924-5354

取材申し込み先

北海道大学 総務企画部 広報課

E-mail : kouhou@jimu.hokudai.ac.jp
Tel : 011-706-2610 / Fax : 011-706-2092

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

人工シャペロンにより脂質二重膜の2次元/3次元構造の高効率で可逆的な変換に初めて成功

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要点

  • くし型共重合体・ペプチド複合体による、脂質二重膜の2次元ナノシート/3次元小胞の高効率で可逆的な変換に成功
  • 外部刺激による形態の操作や、形態変換に伴う小胞内への物質封入を実現
  • ドラッグデリバリーシステムやリキッドバイオプシーへの応用を期待

概要

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の嶋田直彦助教、丸山厚教授らの研究グループは、同 櫻井実教授および東京大学 大学院理学系研究科の樋口秀男教授のグループと共同で、分子シャペロン[用語1]機能を有するイオン性くし型共重合体[用語2]により、脂質二重膜[用語3]の2次元ナノシートと3次元小胞間の高効率で可逆的な変換操作に成功しました。

ペプチド機能を活性化する分子シャペロンとして働くイオン性くし型共重合体と、生体膜活性化ペプチド[用語4]を組み合わせることで、脂質2次元シート外縁の水・油界面を安定化し、2次元/3次元形態変換や、小胞内への目的物質の封入を可能にすることが明らかになりました。将来的には、バイオテクノロジー分野において、ドラッグデリバリーシステム[用語5]リキッドバイオプシー[用語6]などの新たな基盤になると期待されています。研究成果は、ドイツ科学誌「アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)」に2019年11月1日付 (現地時間)に掲載されました。

人工シャペロンにより脂質二重膜の2次元/3次元構造の高効率で可逆的な変換に初めて成功

背景

ナノシートは、ナノメートル(1 mmの100万分の1)スケールの厚さに対して、1,000倍程度の横方向の大きさを持つ2次元的な形状の材料です。グラフェンに代表されるように、力学的、電気的、光学的に特異な性質を有することから、大きな注目を集めてきました。近年では無機材料だけでなく、高分子のような有機系の柔軟な素材からなるナノシートも報告されており、バイオテクノロジーへの応用も期待されています。物質がこうした2次元的なナノシート形状と3次元的な構造の両方の形態を取りうる場合、pH変化のような外部刺激によってその形態を操作することができれば、新しいナノデバイス創製につながると考えられます。

本研究では、脂質二重膜の3次元構造である脂質小胞に対して、生体膜活性化ペプチドとイオン性くし型共重合体を添加したところ、シャペロン効果により、2次元形状を持つ脂質ナノシートが高効率に生成することを発見しました。さらに、pHや酵素といった外部刺激によって脂質二重膜の2次元ナノシート/3次元小胞構造の変換を操作できることを実証しました。

研究成果

研究グループは、これまでに正電荷をもつイオン性くし型共重合体が、負電荷を持つ生体分子である核酸やペプチドと複合体を形成し、活性な高次構造を安定化するシャペロン効果を持つことを明らかにしてきました。E5ペプチドは、ヘマグルチニン(インフルエンザウイルスの感染に関わる膜融合タンパク質)のN末端を模倣した負電荷をもつ生体膜活性化ペプチドで、20個のアミノ酸残基から構成されています。生理的なpHにおいて、E5単体ではランダムコイル構造(不定形構造)をとり、活性がありませんが、イオン性くし型共重合体poly(allylamine)-graft-dextran (PAA-g-Dex)(図1)を加えることで、両親媒性のヘリックス構造(らせん構造)へと転移し、脂質二重膜を不安定化するようになります。

PAA-g-Dexの構造式

図1. PAA-g-Dexの構造式

今回、細胞程度の大きさを持つ3次元的な脂質小胞(図2)に対し、E5とPAA-g-Dexを添加して顕微鏡で観察したところ、90%以上の小胞が2次元的なシート状へ展開することを発見しました。さらに、E5を蛍光ラベル化したところ、E5が脂質シートの周縁部に局在する様子が観察されました。このことから、今回の2次元的なシート形成は、豊富な親水性側鎖を持つ高分子(PAA-g-Dex)・ペプチド(E5)の複合体が、脂質シート周縁の水・油界面をエネルギー的に安定化した結果と考えられます(図3)。

脂質小胞の模式図と共焦点顕微鏡による観察像(スケールバー : 10 μm)

図2. 脂質小胞の模式図と共焦点顕微鏡による観察像(スケールバー : 10 μm)

E5ペプチド(赤色)/PAA-g-Dex(黄色、緑色)複合体の自己集合による脂質シート形成(スケールバー : 10 μm)

図3. E5ペプチド(赤色)/PAA-g-Dex(黄色、緑色)複合体の自己集合による脂質シート形成(スケールバー : 10 μm)

脂質シートが高分子・ペプチド複合体により安定化されているとすると、複合体を解離させることで、脂質シートが再び3次元小胞に復帰すると予想されます。実際に、負電荷をもつポリビニル硫酸(PVS)を過剰量添加し複合体を解離させたところ、全てのシートが小胞へ復帰する様子を確認しました。さらに、マイクロ流体デバイスにおいて固定化した脂質小胞に対して、E5を修飾し、そこへPAA-g-DexとPVSを交互に加えることで、シート・小胞の形態間で繰り返し変換することができました。また、シートから小胞への形態変換に伴い、小胞内への物質の封入が可能であることも示されました。

さらに、pHによる形態制御を目指して、イオン性の異なるくし型共重合体を設計し、E5とともに脂質小胞に添加しました。その結果、くし型共重合体が十分に正電荷にイオン化されて、E5と静電的に相互作用するpH領域のみで、脂質シートが形成されました。また、特定の酵素の活性に応答し構造変換させることも可能になりました。このように、高分子の設計によって、脂質二重膜の2次元シート/3次元小胞構造の変換を特定のトリガーで制御できました。

今後の展開

本研究により、イオン性くし型共重合体・ペプチド複合体を用いた、脂質二重膜の2次元シート/3次元小胞構造の高効率な可逆的変換操作が可能になりました。疾病状態を自律的に判断することで、小胞を脂質シートへと構造転移させて、内包した薬物を放出するなど、くし型共重合体の分子設計を工夫することで、さらに高度な制御がプログラム可能となると考えられます。このような脂質膜の2次元/3次元変換は、ドラッグデリバリーシステムやリキッドバイオプシーなど、バイオテクノロジー分野における技術の新たな基盤となると期待されます。

付記

本研究成果は、増田造博士研究員(現 東京大学 大学院工学系研究科 助教)及び本研究室所属大学院生の協力のもと行われました。また、文部科学省新学術領域研究「分子ロボティクス」、「ナノメディシン分子科学」、「物質・デバイス領域共同研究拠点」における「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」および文部科学省科学研究費助成事業、日本学術振興会特別研究員奨励費、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の助成金のもとで得られたものです。

用語説明

[用語1] 分子シャペロン : 生体内において、タンパク質や核酸など生体高分子は、特定の構造への折りたたみ(フォールディング)や多分子組織化(アッセンブリング)することで、固有の機能を持つことができます。このフォールディングやアッセンブリングを助けるタンパク質を分子シャペロンとよびます。本研究グループは、合成高分子がシャペロン機能を持つこと、すなわち人工シャペロンとしてはたらくことを明らかにしてきました。

[用語2] イオン性くし型共重合体 : 髪をすくくしのように、幹となる高分子鎖から複数の枝分かれ構造をもつ高分子をくし型共重合体とよびます。本研究では、主鎖の正電荷をもつイオン性高分子から親水性の高分子鎖が多数伸びた構造を持つ分子を設計しました。

[用語3] 脂質・脂質二重膜 : 生命を構成している細胞は細胞膜によって区切られています。細胞膜の主成分であるリン脂質分子は、ひとつの分子の中に水に馴染みやすい親水部と馴染みにくい疎水部を持つ両親媒性の構造です。そのため、水中において自発的に疎水部を内側へ向け自己集合し脂質二重膜構造となり、さらに脂質小胞(リポソーム)を形成します。二重膜の厚さは数ナノメートルです(1ナノメートルは1 mmの100万分の1で、地球を1メートルとしたときに1円玉の直径に相当)。脂質小胞は、直径が数10ナノメートルからマイクロメートル(1 mmの1,000分の1)までのものを人工的につくることができ、脂質組成の制御や、糖鎖や高分子、抗体による表面修飾も可能です。これまで、物理化学的なモデルやドラッグデリバリーシステムのキャリア、遺伝子ベクターとして研究されてきました。

[用語4] 生体膜活性化ペプチド : エンベロープウイルスが遺伝情報を宿主細胞に送る際に膜融合や膜破壊に関わるタンパク質を模倣して設計されたペプチド。

[用語5] ドラッグデリバリーシステム : 脂質小胞や高分子ミセルなど微小なカプセルに薬物を内包し、患部まで送達する機構。薬物の薬効を高め、副作用を抑える効果が期待されます。

[用語6] リキッドバイオプシー : 主にがん診断のため、患者の血液から腫瘍のゲノム情報収集する技術。腫瘍組織を採取する従来のバイオプシーに比べ低侵襲であり、遺伝子レベルでの診断が可能となるため、より高度な治療が可能です。

論文情報

掲載誌 :
Advanced Materials
論文タイトル :
Cationic Copolymer-Chaperoned 2D–3D Reversible Conversion of Lipid Membranes
著者 :
Naohiko Shimada, Hirotaka Kinoshita, Takuma Umegae, Satomi Azumai, Nozomi Kume, Takuro Ochiai, Tomoka Takenaka, Wakako Sakamoto, Takayoshi Yamada, Tadaomi Furuta, Tsukuru Masuda, Minoru Sakurai, Hideo Higuchi, Atsushi Maruyama
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系

助教 嶋田直彦

E-mail : nshimada@bio.titech.ac.jp

教授 丸山厚

E-mail : amaruyama@bio.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5762、045-924-5840

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

全大学院生を対象にデータサイエンス・AI教育を実施 Yahoo! JAPAN等と協力し、社会的課題を解決できる高度な専門人材を育成

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東京工業大学は2020年度より、全ての大学院生を対象にデータサイエンス(DS)と人工知能(AI)の教育を開始します。教育実施にあたってはYahoo! JAPANや国内外のグローバル企業と協力し、大学院生が持つ高度な専門知識とDS・AIを組み合わせて、社会的課題解決や新産業創出に貢献できる人材育成を図ります。

AI人材の不足が叫ばれる現在、各大学においては文系を含めた学部生に対してAIリテラシー教育の導入が進みつつあります。本学は理工系総合大学として、かねてより学士課程1年次の学生への情報基礎教育を実施してきた歴史があり、このような背景の中で、このたび、物質理工学、環境・社会理工学、生命理工学、機械工学、電気電子工学、制御工学、経営工学など、全ての大学院レベルの高度な専門分野を学ぶ学生に対して、DS・AIの核となる素養を身に付けさせる高度情報教育を日本で初めて開始します。DS・AIを単にツールとして使うだけではなく、それらを相互に共有することで専門分野の境界を越えた連携や共創を可能にし、最先端の研究開発や社会実装を推進できる高度な人材育成を目的としています。

具体的には「データサイエンス・AI特別専門学修プログラム」と名付けた専門のコースを開設し、DS・AIの基盤系科目と応用系科目の教育を行います。授業と演習を対で行い、要件を満たす単位を取得した学生には、修了時に学長名の修了証書が授与されます。

基盤系科目は本学の情報理工学院が中心となり、全学院の教員も参画して、ビッグデータ処理、AIプログラミング、深層学習などを教育します。応用系科目では、実社会での課題をテーマに、Yahoo! JAPANや国内外のグローバル企業からの講師による実践的な授業と演習を実施します。

本プログラムは2019年度第4クォーター(2019年12月)からトライアル授業を開始し、2020年度第1クォーター(2020年4月)から本授業を開始する予定です。

データサイエンス・AI特別専門学修プログラム

データサイエンス・AI特別専門学修プログラム

また、本プログラムは、一橋大学やお茶の水女子大等との連携を行い、各大学でのDS・AI教育にも協力していきます。さらに、企業内研修や社会人向けにリカレント(生涯)教育へも展開していく予定です。

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取材申し込み先

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

触媒駆動型の生体内エチレンセンサー 植物や果物の特定部位で産生されるエチレンの可視化に成功

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東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の田中克典教授(理化学研究所(理研)開拓研究本部 田中生体機能合成化学研究室 主任研究員)、理研 同研究室のケンワード・ヴォン基礎科学特別研究員らの共同研究グループは、植物や果物の中で遷移金属触媒反応[補足1]を用いることで、外部ストレスへの応答や生体防御のため、あるいは熟成過程で産生される「エチレン」を現地(産生部位)で可視化することに成功しました。

本研究成果は、植物や果物の特定部位でエチレンが産生される理由やエチレンがつかさどる生体機能を解明する技術として利用されることが期待できます。

これまでに、田中教授らは、アルブミン[補足2]の疎水性ポケットに遷移金属触媒を導入することで、金属触媒が水に可溶化するとともにさまざまな生体分子から保護され、生体内で効率的に触媒反応が進むことを見いだしました。

今回、共同研究グループは、植物や果物の中で産生されるエチレンに対して、メタセシス反応[補足3]を起こすことのできる「アルブミン・ルテニウム人工金属触媒(エチレンセンサー)」を開発しました。

エチレンセンサーは、エチレンと反応すると蛍光性分子に変換されるため、植物や果物の特定部位で産生されるエチレンを蛍光イメージングで可視化・検出できます。このエチレンセンサーを用いて、成熟したキウイでは果皮部位でエチレン産生量が増大すること、病原菌に感染したシロイヌナズナの葉で生体防御のシグナル分子としてエチレンが産生されることを確認しました。

本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(12月17日付)に掲載されました。

植物や果物で産生されるエチレンをアルブミン・ルテニウム人工金属触媒により検出!

図. 植物や果物で産生されるエチレンをアルブミン・ルテニウム人工金属触媒により検出!

共同研究グループ

理化学研究所 開拓研究本部 田中生体機能合成化学研究室

主任研究員 田中克典(東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授)

基礎科学特別研究員 ケンワード・ヴォン

特別研究員(研究当時) 江田昌平

特別研究員 イゴール・ナシブリン

理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ

専任研究員 門田康弘

特別研究員 若竹崇雅

グループディレクター 白須賢

名古屋大学 大学院創薬科学研究科

教授 横島聡

背景

二重結合を持つ「エチレン(分子構造CH2=CH2)」は、水素(H2)、メタン(CH4)に次いでサイズの小さい有機化合物であり、常温常圧の条件下では気体として存在します。このエチレンは、重合反応によりさまざまなポリマーを工業生産するための安価な基本原料として使用されています。

哺乳動物は体内でエチレンを産生しませんが、植物や果物は傷つけられるなどの外部ストレスへの応答や病原菌に対する生体防御のために、重要な機能性分子としてエチレンを産生します。

さらに、植物や果物の熟成過程において、エチレンは植物ホルモンとして果実を成熟させる働きをします(クリマクテリック型果実[補足4])。そのため、出荷を待つ果物が保管された倉庫内では、果物から放出される気体状のエチレンにより過剰に熟成が進まないようにする必要があります。このようなことから、倉庫内のエチレン濃度を一定に保つために、さまざまな検出法が開発されています。精密なガスクロマトグラフィー[補足5]機器分析技術を用いたり、最近では植物のエチレン受容体を疑似化し、エチレンと金属との配位を効果的に利用した機能性材料まで開発されており、エチレンを高感度で検出できるようになってきました。しかし、これら既存の方法は、植物や果物から大気中に気体として放出されたエチレンを検出する方法であり、エチレンが植物や果物のどの部位で、どのタイミングで発生しているかを調べることは困難でした。

これまでに田中教授らは、アルブミンの疎水性ポケットに対して、その疎水性リガンドを介して金やルテニウムなどの遷移金属触媒を導入すると、これら触媒は生体内媒体である水に可溶化されること、触媒を失活させるグルタチオン[補足6]から保護されて触媒活性が維持されることを見いだしました[注1]。さらに、アルブミン・遷移金属触媒に臓器やがん選択的な糖鎖を導入することによって、マウス内の標的臓器や細胞で望む金属触媒反応を実現し、がんを治療することに成功しています[注2] [注3]

今回、共同研究グループは、植物や果物で産生されるエチレンに対して、ルテニウム触媒を用いたメタセシス反応を起こして蛍光性分子へと変換することで、特定位置で産生するエチレンを蛍光イメージングで可視化できるのではないかと考えました(図1)。

アルブミン人工金属触媒によるエチレンの検出

図1. アルブミン人工金属触媒によるエチレンの検出

アルブミン人工金属触媒を植物や果物で機能させ、特定の部位で発生するエチレンを蛍光物質に合成変換することでエチレンを検出する。

研究手法と成果

まず、アルブミン・ルテニウム人工金属触媒を利用して、エチレンのメタセシス反応の結果、蛍光が生じるセンサーシステムを設計・開発しました(図2A)。アルブミンの疎水性ポケットに対して、蛍光基の7-ジエチルアミノクマリン(疎水性リガンド)を介してHoveyda-Grubbsルテニウム触媒を導入した後、ルテニウム金属上に消光基のDABCYL基を配位させました。この状態では、疎水性ポケットの中で蛍光基の7-ジエチルアミノクマリンが消光基のDABCYL基と相互作用しているために、蛍光は観測されません。

共同研究グループは、この触媒の仕組みを「エチレンセンサー」と呼ぶことにしました。このエチレンセンサーが植物や果物で産生されるエチレンと出合うと、ルテニウム金属上でメタセシス反応が進行して、消光基のDABCYL基がアルブミンの疎水性ポケットから排出されます。すると、消光基が蛍光基から離れるため、蛍光が効率的に回復します。この蛍光強度を測定することで、エチレンの存在の有無や濃度を解析することが可能になりました。

この解析手法を利用したエチレンセンサーにエチレンを作用させたところ、時間が経つとともに蛍光が回復していることが判明しました(図2B)。また、一部の植物や果物で産生される二重結合を持つ他の生体内分子(リモネンやミルセンなど)とも作用させたところ、最もサイズが小さく反応性の高いエチレンが優先的に反応したことから、エチレンを選択的に検出できることが分かりました(図2C)。

図2. アルブミン・ルテニウム人工金属触媒を用いたエチレンセンサーのデザイン

図2. アルブミン・ルテニウム人工金属触媒を用いたエチレンセンサーのデザイン

A)アルブミンの疎水性ポケットに対して、疎水性リガンドである蛍光基の7-ジエチルアミノクマリンを介してHoveyda-Grubbsルテニウムを導入した後、ルテニウム金属上に二重結合を持つDABCYL消光基を配位させる。この状態では7-ジエチルアミノクマリンの蛍光は観測されないが、エチレンとのメタセシス反応が進行すると、DABCYL消光基が疎水性ポケットから排出され、蛍光が観察されるようになる。

B)エチレンセンサーにエチレンを作用させると、時間が経つとともに蛍光が回復した。

C)エチレンセンサーは二重結合を持つ他の生体内分子が共存していても、エチレンを選択的に検出することができる。

次に、開発したエチレンセンサーを用いて、果物で産生されるエチレンを検出してみました。3種類のリンゴ(ゴールデンデリシャス、ジャズ、フジ)を薄切りにして、直ちにエチレンセンサーの溶液を含んだウェル上に設置して、そのまま蛍光顕微鏡で観察しました(図3)。この際、植物や果物でのエチレン産生の原料となる1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)、またはエチレン産生を阻害するピラジナミド(PZA)を同時に作用させることによって、エチレンの産生がどう変化するかも併せて検証しました。

蛍光顕微鏡で観察を始めてから20時間後まで連続して観察したところ、3種類のリンゴの中では、ゴールデンデリシャスの切片では蛍光強度が最も増大したのに対して、フジの切片ではほとんど蛍光が認められませんでした(図3A、 B)。果物から大気中に放出されるエチレンを検出する従来の方法によって、フジではほとんどエチレンは産生されないことが分かっています。さらに、ゴールデンデリシャスにACCを共存させると、エチレンの産生が増えるのに対して、PZAの共存下ではエチレンの産生は抑制されました(図3C)。以上の結果から、開発したエチレンセンサーにより、リンゴから産生されるエチレンを高感度に検出できることが判明しました。

図3. リンゴで産生されるエチレンの検出

図3. リンゴで産生されるエチレンの検出

A)開発したエチレンセンサーを用いることにより、ゴールデンデリシャスリンゴ、ジャズリンゴ、およびフジリンゴの中で、ゴールデンデリシャスリンゴが最も蛍光強度が増大(エチレンが産生)していることが分かる。

B)ゴールデンデリシャスリンゴの切片にエチレンセンサーを作用し、蛍光顕微鏡で観察した様子。時間の経過に伴って蛍光強度が増し、エチレンが産生されていることが分かる。

C)ゴールデンデリシャスリンゴの2切片に対して、エチレン産生の原料となる1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)を共存させたところ、どちらもエチレンの産生量が増した。一方、別の2切片に対してエチレン生成を阻害するピラジナミド(PZA)を共存させたところ、どちらもエチレンの産生が減少した。

さらに、キウイ、ヤマナシ、マスカット、ニンジン、ピーマンの切片を用いて時間経過によるエチレンの産生を観察したところ、キウイ、ヤマナシ、マスカットではエチレンが産生されるのに対して、野菜に分類されるニンジンやピーマンでは全く産生されないことが分かりました。エチレンの放出によって成熟を進めるクリマクテリック型果実ではないマスカットでのエチレン産生は初めての知見であり、エチレンが未知の機能を持つ可能性が示されました。

今回開発したエチレンセンサーは、植物や果物でエチレンが産生されている「現地」でエチレンを検出できる点が従来法と異なる大きな特長です。これまでの植物のエチレン合成に関わる遺伝子やタンパク質の解析により、キウイでは、果皮、子房室、軸柱のうち成熟に伴って果皮からエチレンが産生されることが示唆されています。そこで、キウイの切片をエチレンセンサーで検証したところ、未熟のサンプルと比較して、成熟したキウイでは果皮部位でエチレン産生量が増大することが蛍光イメージングの可視化により分かりました(図4)。

図4. キウイでのエチレン産生の蛍光イメージング

図4. キウイでのエチレン産生の蛍光イメージング

A)キウイの切片にエチレンセンサーを作用させることで、果皮、子房室、軸柱におけるエチレンの産生を緑色蛍光で可視化できた。

B)未熟成および熟成したキウイの果皮、子房室、軸柱の蛍光強度を比較した図。成熟の過程で、果皮で最もエチレンが産生されることが分かった。

植物では病原菌の感染に対して、生体防御の重要なシグナル分子としてエチレンが産生されることが知られています(図5A)。そこで、病原菌感染により植物中に放出されるエフェクタータンパク質[補足7](AvrRpm1およびAvrRpm2)をシロイヌナズナの葉に作用させ、エチレンがどれだけ産生されるかエチレンセンサーを用いて調べました。その結果、野生型のシロイヌナズナの葉では蛍光が観察され、エチレンが産生されていることが分かりました(図5B、E)。一方で、これらのエフェクタータンパク質を認識する受容体、ならびにエチレンの生合成に携わる酵素(ACS)をノックアウトしたシロイヌナズナ変異体の葉では、蛍光はほとんど見られず、エチレンの産生が抑制されることが分かりました(図5C、D、E)。

図5. 病原菌の感染過程で植物から産生されるエチレンの検出

図5. 病原菌の感染過程で植物から産生されるエチレンの検出

A)植物が病原菌に感染したときに起こる生体防御応答のメカニズム。植物は病原菌から放出されるエフェクタータンパク質(AvrRpm1、AvrRpm2)を認識して、MAPKキナーゼ経路が活性化され免疫応答が起こる。この一連の流れの過程で、エチレンが産生される。

B)野生型のシロイヌナズナ(Col-0)に対して、エチレンセンサーの共存下でエフェクタータンパク質を作用させると、蛍光が増大し、エチレンが産生されていることが分かった。

C)エフェクタータンパク質の受容体をノックアウトしたシロイヌナズナ変異体(rpm1rpm2)にエフェクタータンパク質を作用させても蛍光は観察されず、エチレンは産生されなかった。

D)エチレンの生合成に携わる酵素をノックアウトしたシロイヌナズナ(acs1/2/6/4/5/9/7/11)にエフェクタータンパク質を作用させてもエチレンは産生されなかった。

E)B)-D)の実験で得られた蛍光強度を定量化したグラフ。

今後の期待

今回、開発したエチレンセンサーにより、植物や果物のどの部位でエチレンが発生しているかを蛍光イメージングにより可視化できるようになりました。この技術は今後、特定の部位でエチレンが発生する理由や、エチレンがつかさどる未知の生体機能の解明に活用されることが期待できます。

左からケンワード・ヴォン基礎科学特別研究員、田中克典教授、イゴール・ナシブリン特別研究員

左からケンワード・ヴォン基礎科学特別研究員、田中克典教授、イゴール・ナシブリン特別研究員

補足説明

[補足1] 遷移金属触媒反応 : 周期表で第3族から第11族までに属する遷移金属元素は、さまざまな分子が金属に配位することができるため多様な反応性を示す。このユニークな性質を利用して、効率的な有機合成反応が実現されている。

[補足2] アルブミン : 血清中の大部分を占め、分子量が6万程度の極めて安定な可溶性タンパク質。さまざまな薬物と配位する疎水性ポケットが存在し、血中内でこれらの薬物を運搬する。

[補足3] メタセシス反応 : 種類の二重結合や三重結合の間で結合の組み換えが起こり、新しい多重結合が生成する反応。

メタセシス反応

[補足4] クリマクテリック型果実 : 成熟する際に呼吸量が著しく増大し、植物ホルモンであるエチレンが大量に産生される果実。

[補足5] ガスクロマトグラフィー : 気化しやすい物質を気体の移動層によって分離し、同定・定量を行う機器分析法。

[補足6] グルタチオン : グルタミン酸、システイン、グリシンからなるトリペプチドで、細胞内に高濃度で存在する。活性酸素種や生体分子と反応することで細胞を守るなど、生命維持に重要な役割を果たしている。

[補足7] エフェクタータンパク質 : 受容体に結合することにより、その生理活性を制御するタンパク質。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
An artificial metalloenzyme biosensor can detect ethylene gas in fruits and Arabidopsis leaves
著者 :
Kenward Vong, Shohei Eda, Yasuhiro Kadota, Igor Nasibullin, Takanori Wakatake, Satoshi Yokoshima, Ken Shirasu, and Katsunori Tanaka
DOI :
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発表者(研究内容についてのお問い合わせ先)

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授

田中克典

(理化学研究所 開拓研究本部 田中生体機能合成化学研究室 主任研究員)

E-mail : kotzenori@riken.jp
Tel : 048-467-9405 / Fax : 048-467-9379

機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

巨大な一方向性スピンホール磁気抵抗効果を実証 従来の3桁高い1.1%の巨大な抵抗変化を達成

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要点

  • トポロジカル絶縁体と強磁性半導体の接合により実現
  • 強磁性半導体中のマグノン励起・吸収とスピン無秩序散乱を利用
  • スピン軌道トルク磁気抵抗メモリーの新しい読み出し原理に期待

概要

東京工業大学 工学院 電気電子系のファム・ナム・ハイ准教授とNguyen Huynh Duy Khang(グエン・フン・ユイ・カン)博士研究員の研究チームは、トポロジカル絶縁体[用語1]強磁性半導体[用語2]接合を用いて、巨大な一方向性スピンホール磁気抵抗効果[用語3]を実証した。

スピンホール効果[用語4]が強いトポロジカル絶縁体と強磁性半導体を組み合わせたことで、従来の3桁高い1.1%の巨大な抵抗変化を達成した。さらに巨大な一方向性磁気抵抗効果の起源が強磁性半導体中のマグノン[用語5]励起・吸収とスピン無秩序散乱[用語6]によって生じることを明らかにした。

一方向性スピンホール磁気抵抗効果は非磁性体・磁性体の接合において、非磁性体のスピンホール効果によって、接合抵抗が磁性体の180°磁化反転に応じて変化する現象である。この現象を利用すれば、2層だけの極めて簡易な構造の面内型スピン軌道トルク磁気抵抗メモリーの実現が期待できる。しかし、従来研究されてきた重金属・磁性金属の接合においては接合の抵抗変化が0.001%台と極めて微小であるため、デバイス応用に必要な1%以上の抵抗変化の実現が難しいと考えられてきた。

研究成果は米国物理学協会の学術誌Journal of Applied Physics(ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス)の注目論文として12月17日(現地時間)に掲載された。

背景

近年、電子回路の低消費電力化の観点から超高速、超高密度、高耐久性の不揮発性メモリーが求められている。MRAMはランダムアクセスメモリーの一種で、不揮発性に加え、高速動作、極めて高い耐久性など、大変優れた特性を持つ。そのため、MRAMは不揮発性メモリーと集積回路の融合に適し、車載用や人工知能集積回路などに応用が広がりつつある。

MRAMの中にも、スピンホール効果による純スピン流を磁性層に注入し、スピン軌道トルク(Spin orbit torque:SOT)によって磁化反転(データ書き込み)を行うSOT-MRAMが注目されている。SOT-MRAMでは、スピンホール効果が強い材料を用いれば、書き込みに必要な電流を1桁、エネルギーを2桁以上も下げることができる。ファム准教授らはSOT-MRAMの高性能な純スピン注入源として、巨大なスピンホール効果を示すBiSb(アンチモン化ビスマス)トポロジカル絶縁体を発見し、SOT-MRAMの超低電流書き込み技術を開発してきた。(トポロジカル絶縁体で世界最高性能の純スピン注入源を開発|東工大ニュース

しかし、SOT-MRAMのデータ読み出しには従来に用いられてきたトンネル磁気抵抗効果(TMR)が使われている。このTMR効果を利用する垂直型SOT-MRAM素子では、データを記録する磁性自由層に加えて、トンネル障壁および参照用の固定磁性多層構造が必要である。

そのため、MRAM素子は数オングストロームの極めて薄い層を30層ぐらい積層する必要があり、製造の難度が高い。また、データ書き込みと読み出しの経路が異なるため、3つの端子と2つのトランジスタが必要がという欠点がある。さらに、微細化すると、素子抵抗が面積に逆比例して急激に大きくなるため、読み出しノイズが増える問題がある。

研究の経緯

ファム准教授らはSOT-MRAMの読み出しで、一方向性スピンホール磁気抵抗効果(USMR)に着目した。この効果を用いれば、2層だけの極めて簡易な構造の面内型スピン軌道トルク磁気抵抗メモリーの実現が期待できる。図1に従来のTMR効果を用いる垂直型SOT-MRAM素子とUSMR効果を用いる面内型SOT-MRAM素子の違いを示す。

垂直型SOT-MRAM素子は(1)約30層と極めて複雑な構造、(2)データ書き込みと読み出しの経路が異なるため3つの端子と2つのトランジスタが必要、(3)微細化すると抵抗が急激に増えて、ノイズが増えるという欠点がある。それに対して、面内型SOT-MRAM素子は(1)2層だけの極めて簡単な構造、(2)データ書き込みと読み出しの経路が同じであるため2つの端子と1つのトランジスタだけが必要、(3)微細化しても、素子抵抗が変わらないため、ノイズが増えないという利点がある。

しかし、これまでに研究されてきた重金属・磁性金属の接合では、USMR効果による接合の抵抗変化が0.001%台と極めて微小であり、面内型SOT-MRAMの実現に必要な1%以上の抵抗変化の実現が難しいと考えられてきた。

従来の垂直型SOT-MRAMの構造(左)と本研究の面内型SOT-MRAMの構造

図1. 従来の垂直型SOT-MRAMの構造(左)と本研究の面内型SOT-MRAMの構造

研究成果

研究チームはUSMR効果の増大を目指して、トポロジカル絶縁体BiSb(アンチモン化ビスマス)と強磁性半導体GaMnAs(砒化ガリウム・マンガン)の接合を作製した。この接合において、電流と温度が増加すると、抵抗変化が急激に増え、最大で1.1%という巨大なUSMR効果が発現した(図2)。この値は従来に研究されてきた重金属・金属磁性体の接合よりも3桁も高く、応用に必要な1%以上の抵抗変化を初めて達成した。

BiSbトポロジカル絶縁体・GaMnAs強磁性半導体接合におけるUSMR効果

図2. BiSbトポロジカル絶縁体・GaMnAs強磁性半導体接合におけるUSMR効果

さらに、この巨大な一方向性磁気抵抗効果の起源は従来に研究されてきた重金属・金属磁性体の接合と異なるメカニズムで生じることも分かった。具体的には、BiSbトポロジカル絶縁体から注入された純スピン流によって、強磁性半導体GaMnAs中のマグノンが励起・吸収が生じて、自由正孔のスピン無秩序散乱によって抵抗変化が生じることを明らかにした(図3)。

巨大なUSMR効果のメカニズム。(a)BiSbトポロジカル絶縁体のスピンホール効果による純スピン流が注入される。(b)GaMnAs強磁性半導体中にマグノンが励起・吸収され、さらに自由正孔によるスピン無秩序散乱が生じる。
図3.
巨大なUSMR効果のメカニズム。(a)BiSbトポロジカル絶縁体のスピンホール効果による純スピン流が注入される。(b)GaMnAs強磁性半導体中にマグノンが励起・吸収され、さらに自由正孔によるスピン無秩序散乱が生じる。

今後の展開

今回の成果は、スピンホール効果が強いトポロジカル絶縁体とスピン無秩序散乱の大きい材料を用いた場合、巨大なUSMR効果を実現できることが分かったことである。今後は、さらなる材料の探査を行うことによって、室温でより大きな抵抗変化を実現し、面内型SOT-MRAM素子の実用化を目指す。

用語説明

[用語1] トポロジカル絶縁体 : 内部には絶縁体(正確には半導体)のようにバンドギャップが存在するが、その表面においてヘリカルにスピン偏極電流が存在しうるディラック型金属伝導状態を有する物質群である。表面状態のスピンの向きは波数ベクトルkに直交しており、スピン・運動量ロッキングが生じている。一方、スピンホール効果によって発生するスピン流がs×kの方向に流れるため、トポロジカル絶縁体は表面に垂直な方向には極めて高い効率でスピン流を発生する。

[用語2] 強磁性半導体 : 半導体に遷移金属の磁性元素を添加し、半導体と磁性体の特徴を両方持ち合わせる半導体。

[用語3] 一方向性スピンホール磁気抵抗効果 : 非磁性体・磁性体の接合において、非磁性体のスピンホール効果によって、接合抵抗が磁性体の180°磁化反転に応じて変化する現象。

[用語4] スピンホール効果 : スピン軌道相互作用が大きな材料に流れる電流と垂直な方向に、アップスピンとダウンスピンが逆向きに流れ、純スピン流が発生する現象。この純スピン流を磁化自由層に注入することによって、磁化に働くトルクが発生し、磁化自由層に磁化反転を起こすことができる。ここで生じた純スピン流は、垂直(膜厚)方向には正味の電荷移動の代わりに、スピン角運動量を運ぶことができる。

[用語5] マグノン : 磁性材料中の局在スピン揺らぎを表現する量子力学的な粒子。

[用語6] スピン無秩序散乱 : 自由キャリア(電子・正孔)が伝導する際に、自分のスピンが局在スピンの揺らぎによって散乱される現象。この散乱によって、電気抵抗が生じる。

論文情報

掲載誌 :
Journal of Applied Physics
論文タイトル :
Giant unidirectional spin Hall magnetoresistance in topological insulator - ferromagnetic semiconductor heterostructures
著者 :
Nguyen Huynh Duy Khang, Pham Nam Hai
DOI :

研究支援

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られた。

科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域:
「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」
(研究総括:上田正仁(東京大学 大学院 理学系研究科 教授))
研究課題名:
「トポロジカル表面状態を用いるスピン軌道トルク磁気メモリの創製」
研究代表者:
ファム・ナム・ハイ(東京工業大学 工学院 電気電子系 准教授)
研究開発期間:
平成30年10月~令和6年3月
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お問い合わせ先

東京工業大学 工学院 電気電子系

准教授 ファム・ナム・ハイ

E-mail : pham.n.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3934 / Fax : 03-5734-3870

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

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東京工業大学は、修士課程修了までに全学生が留学などの国際経験を積むことを推奨しています。国際的な活動を行う際に不可欠なのが語学力です。

海外短期語学学習(TASTE Tokyo Tech Abroad Short-Term Education) は語学力を上げたい学生を支援するプログラムです。対象となる海外の大学が実施するプログラムに個人で申し込む東工大生に対し、東工大が単位の付与と奨学金の支給をし、申請などの手続きをサポートします。2019年度の夏期プログラムは6月から12月まで7か国・地域の12大学、春期プログラムは2、3月に4か国・地域の5大学を対象としています。

このプログラムに参加した学生はその後に長期留学に挑戦することも多く、将来の海外赴任など国際的キャリアを視野に入れるきっかけにもなっています。対象コースは英語のみならず、第二外国語(ドイツ語、フランス語、中国語)もあり、修了した学生には語学選択科目の単位が付与されます。

留学体験

TASTEの2019年夏期プログラムには20名の学生が参加しました。そのうち3名の留学体験を紹介します。

クィーンズランド大学(オーストラリア)

中筋勇人さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年)

自分で行動しなければ始まらない

「英語力を向上させたい」、「夏休みを充実させたい」という2つの思いから、The University of Queensland (UQ)で1ヶ月間の英語のプログラムに参加しました。

発展的な英語力を身に付けることができましたが、それだけでなく「積極的に行動することの大切さ」も学ぶことができました。私はオーストラリアに来たのだから何もしないのはもったいないと思い、週末や平日の授業後にケアンズ、シドニーなど様々な所に行ったり、UQのクラブ活動に参加したり、専門の講義を調べて出席したりしました。

日本では大学に行って(どんなに主体的に授業に参加しても)座っているだけで時間が過ぎていくような生活をしていたのに対し、オーストラリアでは全て自分で考えて行動しなければ何も始まらない生活でした。そして、「なるほど、『生きる』ってこういうことだな。」と、毎日新しい経験をして何かを学ぶ充実した生活を過ごすことが大切だと気付くことができました。日本に帰ってからも、ワークショップやセミナーに参加したり、新たな活動を始めたりと、単調な生活に満足せず積極的に一歩踏み出すことを心がけています。

オーストラリアで1ヶ月過ごすにはお金もかかるし、失敗したり恥をかいたりもするし、たくさんの小さなトラブルが起きたりもします。それでも上で述べたような大切なことを学ぶことができたし、二度とできない経験をすることができました。もし留学などにチャレンジしようか迷っているなら、「やらない」と選択をするのは簡単だと思いますが、あえて一歩踏み出してみることが大切だと思います。

クラスメートと(後列右から2人目が中筋さん)

クラスメートと(後列右から2人目が中筋さん)

カリフォルニア大学デービス校(アメリカ)

小林莉華さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程3年)

母国語でない言語で臨機応変に話す

私は元々、海外で一定期間生活をすることに不安や抵抗がありました。しかし、大学生活を送る中で英語の必要性を実感し、留学を決意しました。

参加したプログラムは理工系大学生向けのもので、1日に50分×4コマの授業を月曜日から金曜日まで、4週間受けていました。中にはニュース記事を読み、その内容に関してディスカッションする授業や、アメリカ人にインタビューを行う課題などもあり、自分の意見を英語で表現し、相手が話すことに臨機応変に対応する必要がありました。そのため、母国語でない言語を用いてコミュニケーションをする難しさを強く実感しました。しかし、どの先生も親切で熱心に教えてくれたため、楽しく学ぶことができました。また、不自由ながらも積極的に発言するクラスメートに刺激を受け、成長することができました。

1ヶ月間アメリカで過ごし、ホームステイでアメリカ人の家庭で生活をしたことで、文化や国民性、食生活、気候などにおける日本との違いを体感することができ、価値観が広がりました。不安だった海外での生活も、アメリカ人のおおらかな性格や、乾燥していて暑くても過ごしやすい気候など、日本と比べて好きだと思える点がたくさんあり、苦労なく馴染むことができました。

また、この留学がきっかけで、より長期間の留学にも興味を持つようになりました。海外に行かなければできないような多くの経験を得ることができて、とても充実した1ヶ月間でした。

クラスメートと(前列左から2人目が小林さん)

クラスメートと(前列左から2人目が小林さん)

ハノーバー大学(ドイツ)

玉置千智さん(工学院 機械系 学士課程3年)

世界が広がった第二外国語の勉強

ハノーバー大学で1ヶ月間の夏のドイツ語コース(Sommerakademie am Fachsprachzentrum der Leibniz Universität in Hannover) を受けてきました。

このコースは、ハノーバー大学が実施している外国人向けのドイツ語講座で、生徒のレベルに合わせたいくつかのクラスがあります。私はドイツ語の資格であるTestDaFとDSHの対策コースに参加しました。問題の解法のレクチャーの後、多くの練習問題を解き、丁寧な解説を受けました。TestDaF等は記述式のテストのために、絶対的な解が存在しません。そのため、解説の時間では、自分を含め皆で積極的に議論しました。また、このコースの大きな特徴は、多くの任意参加の課外活動が、授業後や土日に企画されていることです。無料で他の街への遠足やスポーツに参加でき、他の国の学生と交流することができました。

ここまでは一般的な留学の説明ですが、第二外国語を本気で勉強する意味について述べたいと思います。

言語とは、学校の教科ではなく、会話のためのツールです。そして、人の思考の基盤であり、考え方そのものです。英語を勉強した際に、「日本語の〇〇は英語でなんと言うんだろう?」と疑問を持ったことがあると思います。そして、その全てに一対一の訳はありません。別の言い方をしたり、そもそも、その概念が無かったりします。もちろん、日本語にはない概念が外国語にはあります。

第二外国語を勉強することは、世界を広めるだけでなく、新たな物事の考え方を得ることができます。これは思考の多様化を導き、新たな視点を得ることに繋がります。

東京工業大学という、理工系に特化した大学ですが、第二外国語をやる意味は十分にあると思います。新たにドイツ語を始めたい人、今のドイツ語力を上げたい人に、このコースをお勧めしたいと思います。

様々な国から集まった参加者(前列左が玉置さん)

様々な国から集まった参加者(前列左が玉置さん)

自力で留学手配する経験がその後の自信に

TASTEは、大学がすべてお膳立てしたプログラムに参加するのではなく、留学に関わる手配の大半を学生自身で行うことを特徴としています。協定校等のウェブサイトを読み進め、希望するコースを選択・参加申込を行い、航空券、宿舎、ビザの手配も自分で行います。ほとんどの学生にとって海外に一人で行くのは初めての経験であり、これらの手続きは一見ハードルが高く思えますが、渡航前にこれをやり遂げることで結果的に自信がつきます。また、英語のウェブサイトでの申請につまづいてしまった時は、留学情報館スタッフが一緒に画面を見ながら手伝います。

帰国後は、報告書のほか、語学試験を受けてスコアを提出し、留学の効果を確認しています。

海外で暮らすからこそ気づくことがある

参加学生の多くは、派遣先大学の部活に参加したり、ホストファミリーと交流を深めたりと活動的に過ごしてきました。参加のきっかけは、派遣交換留学前の語学力向上から、とにかく海外で暮らしたいというものまでさまざまですが、知らない街で大学寮やホストファミリー宅に滞在し、現地の人として暮らす経験は、ほかに代えがたいものとなっています。

東工大留学情報館では、今後も新たな一歩を踏み出す東工大生を支援していきます。

TASTE対象コース(2019年度実績)

カリフォルニア大学バークレー校(米国): Summer English Language Studies

カリフォルニア大学デービス校(米国): English for Science and Technology

ワシントン大学(米国): Short Term English Programs

ウォータールー大学(カナダ): English for Success

ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ): English for the Global Citizen

クィーンズランド大学(オーストラリア): English language courses

デラサール大学(フィリピン): English for Speakers of Other Languages (ESOL) Courses

ベルリン工科大学(ドイツ): TU Berlin Summer School

ハノーバー大学(ドイツ): Summer Academy – German Language Classes in Summer

シュツッツガルト大学(ドイツ): Summer University

ストラスブール大学(フランス): Cours Internationaux d’Ete Pour Etudiants, au Mois d'Aout

国立台湾大学(台湾): +Chinese Language & Culture Program

上海交通大学(中国): 中日青年エリートプログラム

お問い合わせ先

留学情報館

E-mail : ghrd.sien@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3520

未来社会DESIGN機構のメンバーと企業代表者による「ありたい未来社会像」を考えるワークショップを開催

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東京工業大学未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、2018年9月に発足した新しい組織です。大学が設置した組織としては珍しく社会への貢献を第1の目的として掲げ、「豊かな未来社会像を学内外の多様な人材と共にデザインし、描いた未来へ至る道筋を提示、共有することで、広く社会に貢献すること」を活動目標としています。

まだ誰も見たことのない未来を、その実現に向けた道筋を示しつつわかりやすく提示するという課題は、予想よりはるかに困難なものでしたが、2018年度の活動により、東工大ならではの「東工大未来年表(仮称)」を作成し、そこから未来社会像を創出するという計画を立て、2019年度の取組を開始しました

DLab最新動向

DLabは9月26日、東工大大岡山キャンパス西9号館において「未来のシナリオ」が実現したときの社会について考えるワークショップを開催しました。

今回のワークショップは、学内外の有識者で構成されるDLabの「Team Imagine」(チーム・イマジン)のメンバーと、DLabの活動に賛同する企業の方々を中心に行われました。

「未来の社会において、ある技術が実現した際にどのような商品やサービスが提供できるか?」をテーマとしたグループワークでは、日ごろから商品・サービスを企画している方々ならではのユニークな提案がありました。

ワークショップの詳細については、以下の記事をご覧ください。

DLabイベント情報

2020年1月20日(月)17:00から渋谷スクランブルスクエア15階 渋谷キューズにて、DLabとして最初の「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」を発表します。
DLabメンバーによるトークセッションと、参加者のみなさんと未来を考えるワークショップも行いますので、ぜひご体験ください。

2020年3月7日(土)に共創ワークショップを開催します。詳細は後日、TwitterouterFacebookouterなどでお知らせします。

メディア専門家3氏に聞く「DLabってどう見える?」

人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。これまで、構成員へのインタビューを通して、なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかなど、構成員自身の考え方や構成員から見たDLab像をご紹介してきました。今回は趣向を変えて、メディアで活躍している3氏に「DLabってどう見える?」を伺いました。3氏は昨年10月のキックオフイベントへの参加以来、DLabの活動に注目しているとのことです。メディア専門家の目にDLabの活動はどのように映っているのか、語っていただきました。

東工大生にはリアルな未来に向き合う覚悟がある

モバイルクルーズ代表取締役/De-Tales Ltd. ディレクター ビジネスプランナー 安西洋之氏

モバイルクルーズ代表取締役/De-Tales Ltd. ディレクター ビジネスプランナー 安西洋之氏
モバイルクルーズ代表取締役/
De-Tales Ltd. ディレクター ビジネスプランナー 安西洋之氏

東京工業大学で開催されたDLabキックオフのイベントに参加した際、それまでにぼくが抱いていた理系の学生のイメージが心地よく崩された。学生たちが次のように発言していたのだ。

「この科学技術が世の中に出ることが、本当に良いことなのか?」「社会で問題になった科学技術をひくにひけないからと進めてしまうのではなく、ひきやすくする(やめることができる)システムを考えるのが必要では?」

イベントには大学生・教職員・高校生・一般社会人など100人以上が集まり、「ボーダーを、超えよう」をテーマに話し合った。学生たちから「浮ついた」アイデアばかり出ると思っていたぼくには、意外な展開だった。

この日の全体のプログラムは、ある技術的課題をベースにして未来社会像を「ボーダーなく」考え、討議するよう設計されていたように見えたが、実は学生はそういった思惑とは別の方向を眺めていたのだ。

倫理や意味の問いかけに視線が注がれている。そして目の前にある問題解決のための科学技術の適用といった、マイナスをゼロにするタイプの取り組みもさることながら、ゼロからプラスを生むことに関心が強い、とぼくの目には映った。

文系の学生は社会とのかかわりに敏感であり、理系の学生は「オタク」的でやや社会との距離をもつタイプが多い。ぼくのこれまでの人との付き合いから、そう思い描いていた。しかしながら、少なくとも東工大の学生については、思い違いであった。前述のセリフに見るように、リアルな社会に向き合う覚悟がある。

そして科学技術のネタありきでビジョンを描くのではない。できるだけゼロのところからビジョンを描き科学技術を「のせる」姿勢が垣間見られた。

最後にテーマについて触れると、「ボーダー自体を積極的に消し去る」という言葉は称賛をもって迎えられやすい。偏見や先入観からの脱却である。しかし「ボーダーとはネガティブな存在である」と一方的に思い込むのも、ボーダーの穴に嵌りこんだ証である。

若い世代に「ボーダーを自由に使いこなす人」が増えることを期待したい。

ボーダーを超え、多様性を実現するプロジェクトに期待

東洋経済記者 長瀧菜摘氏

東洋経済記者 長瀧菜摘氏
東洋経済 記者 長瀧菜摘氏

世代や専門の違うメンバーでさまざまなテーマについて議論するのは非常に刺激的でした。

丸くカットされた段ボール「えんたくん」を使って、文字通りひざを突き合わせて話をすると、心の距離も近づき、「こんなことを言ったら変かしら?」といつもなら躊躇してしまうようなことや、自分の頭の中で整理し切れていないことも、とりあえず発してみようと思えるのが不思議です。そして何より、直接がしがし書き込めるのが楽しい!

大きなテーマとして掲げられた「ボーダーを、超えよう」は、普段の執筆活動の中でも常に考えさせられるものです。技術的には超えられるボーダーでも、政治的、倫理的、社内論理的(!)に超えられないなんてことはよくあり、もどかしい思いを抱える人々は多くいます。

今回のイベントの中では「通信」「環境」「医療(創薬)」の“ボ-ダー超え”をテクノロジーの見地からご解説いただき、個々の理想の世界を話し合いましたが、それぞれのテーマ設定・意見・反応の中にも、当たり前に「差」や潜在的「べき論」が存在することを感じ、多様性にわくわくすると同時に、ボーダーを超えることの難しさも突きつけられたように感じました。

とはいえ、東工大生の皆さんの、各テーマに真摯に向き合い、懸命に伝えよう・聞こうとする姿にはとても感銘を受けました。

「理系学生はコミュ力低い変人」みたいなイメージを拡散するテレビ番組などもありますが(私も少なからずそんなイメージを持ってしまっていました、恥ずかしい)、それはまったく違う。少なくともあの場で交流した皆さんについてはそう痛感しました。こういった外部を巻き込んだ取り組みも通じて、偏見というボーダーも軽々超えていってほしいと思います。

東工大生よ、殻を破ってベンチャーを目指そう

スマートニュースメディア研究所 所長 瀬尾傑氏

スマートニュースメディア研究所 所長 瀬尾傑氏
スマートニュースメディア研究所 所長 瀬尾傑氏

「ボーダーを、超えよう」というテーマに惹かれて、参加しました。

メディアの世界で30年仕事をしてきた私自身にとっても「ボーダーを超える」ことは大きなテーマであり、このイベントに参加した意義はとても大きなものでした。私は、出版社での雑誌記者、ウェブメディアの立ち上げ、メディアのビジネスモデル構築といった仕事を経て、テックベンチャーで新しいメディアと社会のあり方について考えていますが、インターネットにより、メディアビジネスの環境は激変しました。

消費者や社会のニーズに応えるため、マスメディアにはこれまでの枠組みを超えた挑戦が求められています。かつて、雑誌と新聞とテレビとラジオは別々のプラットフォームに載ったメディアでしたが、今やほとんどのコンテンツがデジタルで流通できます。誰もがスマホであらゆるメディアコンテンツを消費しています。ボーダーを超えるどころか、ボーダーがなくなっています。紙とデジタル、リアルとバーチャルは混在しているのが当たり前になりました。

この大変革の先にある未来に、若者はどう向き合っているのかを知りたい。そう思って、東工大生や先生方、高校生たちに混じって、未来社会を考えるグループワークに加わりました。

「えんたくん」を使ったグループワークは実に楽しく、実りのあるものでした。興味深かったのは、同じチームに、社会人、大学生、高校生がいると、一番具体的なイメージで未来を語ろうとするのは、もっとも若い高校生なんですね。良い意味で、色がついていないから、自分の意見や理想を臆せず思い切って口にすることができる。大学生になるとちょっと照れが出ちゃうのか、ストレートな意見が出にくくなる。あの殻は、ぜひ破ってほしいなあ、と思いましたね。

最後に、それぞれが自分の作りたい未来社会を「絵」にする作業に取り組んだのも、有意義でした。未来がどうなるか、という受け身の姿勢ではなく、未来をどう創るか、という当事者性を、高校生も大学生も先生も社会人もみんなが持って挑戦していく。これこそが、ボーダーを超えて、より良い社会を実現する第一歩だと感じました。

スマートニュースの共同創業者は東工大出身のエンジニアです。東工大は理工系のトップであるだけではなく、ベンチャーをつくる人たちが生まれる大学になりつつある。今回のイベントで、東工大の学生たちの優秀さの一端に直に触れることができました。だからこそ、もっともっと冒険してほしい。次にイベントがあるときは、そんな話を学生たちともしてみたいですね。

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お問い合わせ先

未来社会DESIGN機構事務局

Tel : 03-5734-3619

E-mail : lab4design@jim.titech.ac.jp

TBSテレビ「未来の起源」に宮内研究室の学生が出演

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物質理工学院 材料系 宮内雅浩研究室の河村玲哉さん(物質理工学院 材料系 修士課程2年)が、TBS「未来の起源」に出演します。

「水素をためて光で放出する、軽量で安全な材料」の研究が紹介されます。

「未来の起源」は、最先端科学分野の研究に携わる若者たちの活躍ぶりや、研究テーマへの情熱を描く番組です。

TBSテレビ「未来の起源」に宮内研究室の学生が出演

TBSテレビ「未来の起源」に宮内研究室の学生が出演

河村玲哉さんのコメント

物質理工学院 材料系 河村玲哉さん
物質理工学院 材料系 河村玲哉さん

この度は、新規二次元材料であるホウ化水素シートが、光照射のみで水素を放出することを見出した成果について取材していただきました。

現在、石油の代替燃料として水素を用いようと世の中が動き始めており、爆発性のある水素を安全に運搬するために多くの検討がなされています。そして既存技術のほとんどは、水素の運搬や放出において高圧や高温が必要となります。

本成果は、常温大気圧下という穏やかな条件でホウ化水素シートに紫外光を照射すると水素が放出される現象を見出し、そのメカニズムを第一原理計算によって明らかにしたものです。この研究を進めるにあたって、ホウ化水素シートの合成法を最初に見出した筑波大学の近藤剛弘先生をはじめ、多くの方に協力していただきました。そのためこの成果は、様々な分野の方々の協力無くしては生まれなかったものだと考えています。

そして今後は水素キャリアとしての性能の向上に取り組むとともに、ホウ化水素シートがもつ二次元材料としてのユニークな特性をさらに明らかにしていきたいです。

  • 番組名
    TBS「未来の起源」
  • 放送予定日
    2020年1月12日(日)22:54 - 23:00(放送地域:関東地域、愛知、岐阜、三重)
  • 再放送予定日
    BS-TBS 2020年1月19日(日)20:54 - 21:00
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お問い合わせ先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

1月の学内イベント情報

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1月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

2019年度 第1回国際原子力基礎教育TVセミナー

2019年度 第1回国際原子力基礎教育TVセミナー

このTVセミナーは、大学生・高専生を主な対象として、遠隔TVシステムにより講義配信します。原子力関係以外の方でも、地球環境や原子力のことをわかりやすく学べます。

今回は「原子力の基礎と先進技術」をテーマに、東京工業大学より全国の拠点大学の会場(各拠点の開講状況はwebでご確認ください)へ講義を配信します。

日時
2020年1月9日(木) 10:30 - 17:00
会場
対象
一般、大学生、高専生
申込
必要(1月8日(水)12:00締切)

グローバル理工人育成コース シンポジウム2020

グローバル理工人育成コース シンポジウム2020

グローバル理工人育成コースのシンポジウムです。所属生および卒業生による講演を行います。

グローバル理工人育成コースでの活動を通して得られたものは?

将来計画にどう生かしていくのか?

そして、実際にどのように役立ったのか?

など、様々な経験をしたコース生が、自らの体験談を語ります。

所属生以外も大歓迎です。

日時
2020年1月15日(水)16:50 - 18:30
会場
申込
不要

東工大コンサートシリーズ2020冬 すずかけ台キャンパス演奏会 ピアノ・ソロによるニューイヤーコンサート

東工大コンサートシリーズ2020冬 すずかけ台キャンパス演奏会 ピアノ・ソロによるニューイヤーコンサート

本演奏会は、2015年から始まった東工大コンサートシリーズ(Art Meets Engineering@TokyoTech)の第2回すずかけ台キャンパス演奏会です。「ピアノ・ソロによるニューイヤーコンサート」と題し、世界的に活躍するピアノ演奏家をお招きし、令和最初のお正月に相応しい名曲の数々をお届けいたします。しばし日常を忘れ、珠玉のひとときをお楽しみください。

日時
2020年1月16日(木)17:30(17:00開場、19:00終演予定)
会場
申込
不要(先着順)

ToTAL OPENプログラム「未来洞察ワークショップ(社会課題の認知ワークショップⅡ)」

ToTAL OPENプログラム「未来洞察ワークショップ(社会課題の認知ワークショップⅡ)」

ToTAL科目「社会課題の認知ワークショップⅡ(TAL.S506)」の単位対象プログラムで、3日間のスケジュールで行う「未来洞察ワークショップ」のOPEN参加者を募集します。

日時
2020年1月20日(月)18:00 - 21:00
2020年2月1日 (土)10:00 - 18:00
2020年2月2日 (日)10:00 - 18:00
会場
申込
必要(1月10日(金)締切)

リベラルアーツ研究教育院シンポジウム「石牟礼道子の遺した言葉」

リベラルアーツ研究教育院シンポジウム「石牟礼道子の遺した言葉」

水俣病患者とその家族の苦しみを克明に綴った代表作『苦海浄土』や、西南戦争を題材にした『西南役伝説』など、石牟礼道子は郷土の南九州を舞台に豊かな言葉を紡ぎました。その作品群は小説にとどまらず、詩歌や謡曲にまでわたります。没後2年を迎えようとする2020年、作家の町田康氏をお招きして、文芸批評家でもある本学の若松英輔教授と石牟礼道子について語り合う夕べを企画しました。石牟礼文学に造詣の深いおふたりとともに、彼女の遺した言葉をじっくりと味わってみましょう。

日時
2020年1月20日(月)18:00 - 20:00(開場 17:30)
会場
申込
不要(先着順)

未来社会DESIGN機構トークセッション&ワークショップ「こんな“未来”ってどう思う?」

未来社会DESIGN機構トークセッション&ワークショップ「こんな“未来”ってどう思う?」

未来社会DESIGN機構(DLab)は、これからの科学・技術の発展などから予測可能な未来とはちがう「人々が望む未来社会とは何か」を、社会と一緒になって考えデザインするための組織です。ワークショップなどを通じて楽しく真剣に未来について語り合いながら、豊かな未来社会像を描いていきます。 DLabでは、これまでの活動を通してとりまとめた20を超える未来のシナリオをもとに、ひとつの「未来社会像」を描きました。 「未来社会像」を発表すると共に、DLabメンバーによるトークセッションと、みなさんと未来を考えるワークショップを行いますので、ぜひご体験ください。

日時
2020年1月20日(月) 17:00 - 19:30(16:30受付開始)
会場
渋谷スクランブルスクエア 15階 渋谷キューズ(SHIBUYA QWS)
申込
必要(先着100名、1月13日(月)締切)

2019年度 教育革新シンポジウム

2019年度 教育革新シンポジウム

東京工業大学 教育革新センターでは、教育の質の向上に資するよう、年に一度教育革新シンポジウムを開催しております。本年は国内外からその分野の第一線で活躍されている先生方をお招きし、以下の通り実施いたします。ぜひ多くの教育関係者の皆様に広くご参加いただけますと幸いです。

日時
2020年1月23日(木) 14:00 - 18:00 (13:30から受付開始)
会場
申込
必要

第12回高校生バイオコン&第13回バイオものコン

第12回高校生バイオコン&第13回バイオものコン

2019年10月12日(土)開催予定だった『第12回高校生バイオコン』が台風により延期になったため、今年度は『第13回東工大バイオものコン』と同日開催が決定しました。

全国から集結した高校生チームが小中学生向けバイオ系教材を開発、大学2、3年生のバイオに関わるものつくりの成果と競い合います。 ぜひおこし下さい!

日時
2020年1月25日(土) コンテスト 9:30 - 、お試しタイム 15:00 -
会場
申込
不要

CERI寄附公開講座「ゴム・プラスチックの安全、安心―身の回りか最新の話題まで―」(2019年度 後期)

CERI寄附公開講座「ゴム・プラスチックの安全、安心―身の回りか最新の話題まで―」(2019年度 後期)

近年モノやシステムの安全・安心が社会の重要なテーマであり、様々な製品とそのもととなる材料においても安全・安心が求められる時代です。

そこで本講座では、広く社会に浸透し私たちの身の回りにある化学品を含むプラスチックやゴムとその関連製品の安全・安心を取上げ、それらに関する情報とやさしい科学を紹介し、正しい知識を広く一般の方に持ってもらうとともに、学生を含む専門家に対しては、最先端の安全性評価技術、劣化と寿命予測技術、耐性向上技術、さらには高性能・高強度化技術・材料に関する科学を紹介し、将来の安心・安全な材料の設計の基礎を学べるようにします。

日時
2019年11月23日(土)、11月30日(土)、12月21日(土)、1月25日(土)、2月1日(土)、2月15日(土)、2月22日(土)全7回・14講座、各日13:20 - 14:50、15:05 - 16:35
会場
申込
必要(先着30名、各講義日の週の月曜日締切)

科学講座「中高生のための東工大 Gateway to Science~宇宙で生命を探す~」

科学講座「中高生のための東工大 Gateway to Science~宇宙で生命を探す~」

面白い科学・技術を見聞きすることで、若者たちが大きな夢を持ち科学者や技術者を目指すきっかけになってくれれば!そのような思いを込めて未来を担う中高生を対象とした「第3回 Gateway to Science~宇宙で生命を探す~」を開催します。

東京工業大学 地球生命研究所 玄田英典准教授のコーディネートにより、臼井寛裕(JAXA教授)、関根康人(東京工業大学教授)を講師としてお迎えし、「本気で宇宙生命を探そうとしている奴ら」による壮大なレクチャーをお届けいたします。

対象は中高生ですが、一般の方の御参加も大歓迎です。

日時
2020年1月25日(土)午前10:00 - 12:00/午後14:00 - 16:00(各回定員240名)
会場
対象
高校生・中学生・小学生高学年およびその保護者
申込
必要

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

令和2年度大学入試センター試験を「東京工業大学」で受験される方へ

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令和2年度大学入試センター試験

試験日
令和2年1月18日(土)~ 1月19日(日)
会場

東京工業大学試験場は以下の2つの会場があります。お間違えのないように受験票を今一度ご確認ください。

1.
大岡山試験場 / 大岡山キャンパス
2.
田町試験場 / 田町キャンパス(附属科学技術高等学校)
期間中は、上記キャンパス内への受験生および試験関係者以外の立ち入りを制限しております。

注意事項

所定の試験日程による試験実施が困難になるような不測の事態が発生した場合、「高校生・受験生向けサイト」の新着入試情報で情報発信しますので、定期的に確認をお願いします。

試験場へのアクセス

大岡山試験場 / 大岡山キャンパス

東急大井町線・目黒線「大岡山駅」下車1分

  • 改札を左手に出て、マクドナルド前の信号を渡るとすぐに正門があります。

田町試験場 / 田町キャンパス(附属科学技術高等学校)

JR山手線・京浜東北線「田町駅」下車2分

  • 芝浦口(東口)方面に進み、エスカレーターを降りてすぐ右手に正門があります。

都営地下鉄三田線「三田駅」下車5分

  • A4出口を出て、JR田町駅方面へ。以下同上。

なお、試験室等の詳細を記載した試験場案内については、令和2年1月17日(金)に「高校生・受験生向けサイト」の新着入試情報に掲載いたしますので、確認をお願いします。

令和2年度大学入試センター試験を「東京工業大学」で受験される方へ

海外の大学院生を招き「地球生命の進化 ウィンタースクール2019」を開催

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東京工業大学の理学院 地球惑星科学系(EPS)と地球生命研究所(ELSI)は、世界トップレベルの大学院生を海外から招いて「地球生命の進化 ウィンタースクール 2019」(Winter School on Evolution of Earth & Life、EEL 2019)を12月2日から6日まで実施しました。

2019年6月、ウェブサイトで参加学生の国際公募を行い、カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学、オーストラリア国立大学など世界のトップ大学をはじめとして計20か国、60余名の応募がありました。この中から最終的に15名の学生を選抜しました。いずれの学生もモチベーションが高く、推薦書を見てもトップレベルの優秀な学生です。これら海外招聘学生に理学院の集中講義である「理学特別国際実習outer」受講者の東工大大学院生5名を加え、計20名が1週間寝食をともにする合宿形式でウィンタースクールを行いました。英語でのコミュニケーションが不慣れな日本人学生も、1週間後には積極的に英語で会話する姿勢が見られました。東工大学生の英語力向上も、こうした集中講義の目的の一つです。

世界各国から優秀な学生が集合

世界各国から優秀な学生が集合

初日と2日目には丹沢山地(神奈川県)において日本独特の地質を学ぶための「巡検」を行いました。日本列島はプレート収束境界に位置しており、プレートの沈み込みに伴う地質現象を理解するには最適の場所です。特に丹沢山地は海洋プレート上にある伊豆小笠原諸島が本州に衝突するプレート境界にあたっており、地球の進化、とりわけ大陸地殻の形成とその進化過程を学習するのにうってつけの場所です。参加学生の関心は高く、活発な議論を現地で行いながら、日本でしか見られない地質学を堪能した様子でした。

丹沢山地での巡検
丹沢山地での巡検

フィリピン海プレートと北米プレートの境界に集合
フィリピン海プレートと北米プレートの境界に集合

3日目からは外部講師の招待講演や、5つのグループに分かれた演習を行いました。東京大学 大学院理学系研究科の橘省吾教授が「はやぶさ1・2」などの日本の宇宙探査ミッションについて、また、東京大学 大学院総合文化研究科の磯崎行雄教授は日本の地質からみた生命進化について講演しました。海外学生から活発な質問があり、刺激をうけた様子でした。

橘教授による招待講演
橘教授による招待講演

磯崎教授による招待講演
磯崎教授による招待講演

リサーチプロジェクトでは(1)微生物学(Microbiology)、(2)生物地球化学(Biogeochemistry)、(3)地球内部(Earth's Interior)、(4)宇宙化学(Cosmochemistry)、(5)惑星形成(Planet Formation)の5つのグループに分かれ、3日間の実験・実習を行いました。それぞれのグループでは海外の学生と東工大学生がペアになり、理学院 地球惑星科学系及び地球生命研究所教員の指導の下に、課題に取り組みました。最終日には発表会を行い、力作のプレゼンテーションが報告されました。数日間で質の高いデータを集めた出来栄えに驚く教員もいました。1週間という短期間でしたが、海外学生の理解力が高く、想定した以上のペースで演習が進みました。

  • 発表会でのプレゼンテーション
  • 発表会でのプレゼンテーション
  • 発表会でのプレゼンテーション

発表会でのプレゼンテーション

今回のウィンタースクールを通して、東工大で学びたいと真剣に考えている優秀な学生が世界には多くいることが分かりました。今後も世界から優秀な学生が集まる先端研究の推進に取り組んでいきます。

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お問い合わせ先

学院等事務部 理学院業務推進課 理学院運営事務グループ

E-mail : ryudou.jim@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-7660

リベラルアーツ研究教育院主催シンポジウム「石牟礼道子の遺した言葉」

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水俣病患者とその家族の苦しみを克明に綴った代表作『苦海浄土』や、西南戦争を題材にした『西南役伝説』など、石牟礼道子は郷土の南九州を舞台に豊かな言葉を紡ぎました。その作品群は小説にとどまらず、詩歌や謡曲にまでわたります。没後2年を迎えようとする2020年、作家の町田康氏をお招きして、文芸批評家でもある本学の若松英輔教授と石牟礼道子について語り合う夕べを企画しました。石牟礼文学に造詣の深いおふたりとともに、彼女の遺した言葉をじっくりと味わってみましょう。

日時
2020年1月20日(月)18:00 - 20:00(開場 17:30)
場所
参加費
無料
定員
200名(予約不要。先着順に入場。満員の場合はご入場できないこともあります。)
主催
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院シンポジウム「石牟礼道子の遺した言葉」 チラシ

リベラルアーツ研究教育院シンポジウム「石牟礼道子の遺した言葉」 チラシ

リベラルアーツ研究教育院シンポジウム「石牟礼道子の遺した言葉」 チラシ

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お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院文系事務

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Tel : 03-5734-7689


望ましい未来社会を“技術”の視点から議論する―広域塾、DLab共催ワークショップ― 若手研究者によるワークショップ開催報告

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人々が望む未来社会とは、どのようなものでしょうか。

未来社会DESIGN機構(以下、DLab)では、東京工業大学と社会が一緒になって、ワークショップなどを行いながら、その姿をデザインすることを目指しています。10月23日には大岡山キャンパス百年記念館において、科学技術創成研究院基礎研究機構の広域基礎研究塾(以下、広域塾)とDLabの共催で、若手研究者が未来社会のあり方について考えるワークショップを実施しました。参加者それぞれの専門知識を活かしながら、活発な議論が行われた当日の模様をレポートします。

若手研究者が「未来社会を実現するために必要な技術」を検討

人々が「こうありたい」と望む豊かな未来社会像を社会と共に描き、必要となる技術や政策を検討し、それを社会と共有しながら実現に向け共に活動を行うことで社会に貢献していく——。こうしたDLabの目的を実現するためには、未来社会像の検討を、広く、深く、さまざまな視点から進めていく必要があります。

10月23日、今回で2回目となる広域塾とDLab共催の「未来社会と自身の研究との繋がりを考えるワークショップ」では、その一環として、「未来社会を実現するために必要な技術」に焦点を当てながら、若手研究者による検討が進められました。

「広域塾」は、若手研究者が自由な発想で新たな課題に挑戦する場として、科学技術創成研究院内に創設された「基礎研究機構」の一組織です。その目的は若手研究者の人材育成で、今回のワークショップにはこの広域塾から13名が参加しました。

はじめに渡辺治理事・副学長(研究担当)が「今回のワークショップを新たな気づきの機会にしてほしい」と挨拶。続いて広域塾の塾長でありDLabの副機構長も務める科学技術創成研究院の大竹尚登副研究院長が「変化の速い時代に、その先を行く研究で社会に貢献するには、自分一人だけではなく社会と共に考えていくことが重要」とその日の課題の趣旨を説明した後、ワークショップがスタートしました。

挨拶する渡辺理事・副学長
挨拶する渡辺理事・副学長

この日の課題を説明する大竹副機構長
この日の課題を説明する大竹副機構長

他者の感覚を共有できたら、どんな商品・サービスが生まれるか

DLabでは今までに、学内構成員や各界有識者、一般の方から出されたアイデアをもとに、20を超える未来のシナリオを作成しました。当日はそのうちの1つである「五感を自在に着脱することで、深い共感体験が可能になる」というシナリオが実現した場合、どんな商品・サービスを提供できるかを4〜5人のグループに分かれて検討していきました。DLabでは、9月26日にも同様のテーマでワークショップを行いましたが、今回は「そこで必要になる技術」にフォーカスしたことがポイントです。

議論に先立ち、東工大研究・産学連携本部の新田元リサーチ・アドミニストレーター(URA)から、今回のワークショップで使う手法として、現在の延長線上にない未来の姿を捉えるための「未来洞察」や、ありたい未来像を基点に必要な技術を考える「バックキャスティング」などの手法について解説があった後、いよいよ具体的な作業に入ります。

まずは先のシナリオが実現して「他の人や動植物、静物などの感覚が共有できる」という未来が訪れた場合、自分がどんな体験をしたいかを参加者各自で考えます。次に各グループがベンチャー企業になったという設定で、所属メンバーの案をもとに、独自の体験を提供する「商品・サービス」を開発。「どんな層をメインターゲットに、どんな体験によって、どんな価値を提供するのか」までを検討した上で、この日のハイライトである「実現にはどんな技術が必要になるか」まで話を進めていきました。

「未来洞察」や「バックキャスティング」を説明する新田URA
「未来洞察」や「バックキャスティング」を説明する新田URA

グループワークの様子
グループワークの様子

東工大らしさが表れたディスカッションが展開

今、世の中にない商品・サービスを形にするには、新しいアイデアと技術が必要です。ワークショップでは、まずそのために必要な技術の全体像を把握した上で、細部を詰めていく形を取りました。例えば「スポーツ選手の能力を追体験できる」という製品を考えたグループでは、「選手が体験したことのデータは、脳波から取るのか、映像から取るのか」「体験を顧客に提供する際には、脳内でその感覚を疑似体験するのか、実際に身体を動かすのか」といった点を議論しながら、必要な技術を検討していきました。

工学・バイオテクノロジー・情報技術など、さまざまな専門分野の研究に取り組む参加者が、各分野の最新知識をシェアしながら熱心に意見を交わしたこのステップは、理工系総合大学である東工大らしさがもっとも良く表れた場面だと言えるでしょう。そして技術だけでなく、商品・サービスの提供にあたって必要となる政策や解決すべき社会的課題についてもあわせて検討した上で、全体への発表を行い、ワークショップは終了となりました。

参加した若手研究者からは、「未来が予想以上のスピードで近づいていることが実感できた」「他の分野を専門とする先生との意見交換が刺激になった」などの声が聞かれました。DLabでは自由な視点から検討した未来社会像を、実現性と説得力のある形で社会に提示したいと考えています。今後は2020年1月20日に、未来のシナリオを実現可能かと思われる年代順に並べた「東京工業大学未来年表」と、いくつかのシナリオをもとに描いたDLabとして最初の「未来社会像」を発表します。

全体発表の様子
全体発表の様子

参加者全員での集合写真
参加者全員での集合写真

DLabイベント情報

1月20日(月)17:00から渋谷スクランブルスクエア15階 渋谷キューズにて、DLabとして最初の「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」を発表します。
DLabメンバーによるトークセッションと、みなさんと未来を考えるワークショップも行いますので、ぜひご体験ください。

3月7日(土)に共創ワークショップを開催します。詳細は後日、TwitterouterFacebookouterなどでお知らせします。

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お問い合わせ先

未来社会DESIGN機構事務局

E-mail : lab4design@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3619

未来社会DESIGN機構(DLab)「未来社会像」「東工大未来年表」発表イベント 「こんな“未来”ってどう思う?―わたしたちが描いた未来の社会―」のご案内

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未来社会DESIGN機構(DLab)は、これからの科学・技術の発展などから予測可能な未来とはちがう「人々が望む未来社会とは何か」を、社会と一緒になって考えデザインするための組織です。ワークショップなどを通じて楽しく真剣に未来について語り合いながら、豊かな未来社会像を描いていきます。

DLabでは、これまでの活動を通してとりまとめた20を超える未来のシナリオをもとに、ひとつの「未来社会像」を描きました。

2020年1月20日(月)に渋谷スクランブルスクエア15階 渋谷キューズにて、「未来社会像」を発表すると共に、DLabメンバーによるトークセッションと、みなさんと未来を考えるワークショップを行いますので、ぜひご体験ください。

日時
2020年1月20日(月) 17:00 - 19:30(16:30受付開始)
会場
渋谷スクランブルスクエア 15階 渋谷キューズ(SHIBUYA QWS)outer
申込
定員 : 先着100名
事前登録制となっております。申込ページouterからお申し込みください。(申込締切 2020年1月13日(月))

未来社会DESIGN機構トークセッション&ワークショップ「こんな“未来”ってどう思う?」 チラシ

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NHK BSプレミアム「英雄たちの選択~孝明天皇」に上田紀行教授が出演

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上田紀行教授

上田紀行教授

本学 リベラルアーツ研究教育院長の上田紀行教授が、1月15日放送予定のNHK BSプレミアム「英雄たちの選択」にコメンテーターとして出演します。

テーマは「幕末の“ラストエンペラー”~孝明天皇 維新への道を決めた選択」です。

歴史の岐路に立ち、さまざまな選択肢の中からひとつを選び、決断をしてきた英雄たち。その英雄たちにも迷いや葛藤があったはずです。その決断の、背景と理由、その後の歴史の展開の可能性を、オリジナル映像によるシミュレーションとともに、各界の専門家がジャンルを越えて語り合います。

上田教授のコメント

歴史上の人物の「選択」を論じるこの番組、これまでは空海を除けば、聖武天皇、称徳天皇、後醍醐天皇、光格天皇と天皇の決断を論じてきました。今回は光格天皇の孫の孝明天皇です。江戸時代最後の天皇で、明治天皇の父。実は幕末の激動のドラマの立役者のひとりでもあります。でもなぜ孝明天皇の名はあまり知られていないのか、それには秘密がありました。幕府、薩摩、長州、会津…、天皇を巡って争われる権力の主導権争い。明治維新直前の幕末絵巻への新たな認識を深めていただけることと思います。

  • 番組名
    NHK BSプレミアム「英雄たちの選択」
  • テーマ
    幕末の“ラストエンペラー”~孝明天皇 維新への道を決めた選択
  • 放送予定日
    2020年1月15日(水)20:00 - 21:00
  • 再放送予定日
    2020年1月22日(水)8:00 - 9:00
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小天体衝突による火星から衛星への物質輸送、従来見積もりの10倍以上 火星衛星サンプルリターンで火星の全歴史の解明が可能

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要点

  • 火星上で起きた小天体の衝突によって、火星表層物質が吹き飛ばされ、その一部が火星衛星フォボスに降り積もっている。
  • 最新の数値計算によって、フォボスには従来の見積もりの10~100倍の火星表層物質が混入していることが明らかになった。
  • 日本が進める火星衛星サンプルリターン計画では、火星の全歴史が解読可能なサンプルを、欧米による火星本体の探査に先行して手に入れられる可能性がある。

概要

東京工業大学 地球生命研究所(以下、ELSI)の兵頭龍樹研究員(現:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)宇宙科学研究所 国際トップヤングフェロー)と玄田英典准教授、千葉工業大学 惑星探査研究センターの黒澤耕介上席研究員、JAXA 宇宙科学研究所の臼井寛裕教授(ELSIアフィリエイトサイエンティスト)と藤田和央教授は共同で、火星衛星の表土に含まれる火星由来の物質の量と質に関する理論研究を実施しました。火星本体で実際に過去に起こった複数回の隕石衝突について数値計算を実施したところ、火星衛星フォボスには、火星表層物質が従来の見積もり[参考文献]の10~100倍程度降り積もっていることがわかりました。さらにその表土には、火星の全領域かつ全時代からの物質が混入していることが明らかになりました。この研究成果により、JAXAが計画している火星衛星探査計画で採取される火星衛星サンプルは、全火星史解読の鍵という、質の面での新たな科学的価値を持つことになります。

成果は、2019年12月27日付けのネイチャー・リサーチ社の査読付き国際学術誌「Scientific Reports」電子版に掲載されました。

背景

「生命を育む惑星の起源と進化を知ること」という重要な科学目標を追求するにあたり、生命を持つ地球と似た表層環境をかつて保持していた火星は重要な探査対象になります。NASA(米国)とESA(欧州)は、「Mars2020」などの火星探査計画を協働して進めており、2030年代初頭の火星サンプルの地球帰還を目指しています。一方、JAXAは、「はやぶさ2」に続く次世代サンプルリターン計画として、火星衛星(フォボスとデイモス)を探査対象とした火星衛星探査計画(Martian Moons eXploration: MMX)を進めています。MMX計画では、2024年の探査機打ち上げ、そして2029年の火星衛星サンプルの地球帰還を目指しています。火星の近くを回っている衛星フォボスの表土には、火星本体の表層物質が混入している可能性があります。それは、火星本体に小天体が衝突することによって、火星表層物質が吹き飛ばされ、その一部がフォボスまで到達し、降り積もるためです(図1)。MMX計画では火星衛星の表土を採取しますが、同時に、火星衛星に混入した火星表層物質も採取できる可能性があります。

図1. 火星における無数の小天体衝突と、破片のフォボスへの輸送過程のイメージ図。小天体衝突は、火星形成後から恒常的に、あらゆる方向から飛来する衝突天体により、火星全球で起こります。本研究では、火星史で起こった衝突の衝突過程の数値計算と、破片の軌道計算を詳細に行うことで、火星物質の火星衛星(フォボス)への輸送量を定量的に算出しました。
図1.
火星における無数の小天体衝突と、破片のフォボスへの輸送過程のイメージ図。小天体衝突は、火星形成後から恒常的に、あらゆる方向から飛来する衝突天体により、火星全球で起こります。本研究では、火星史で起こった衝突の衝突過程の数値計算と、破片の軌道計算を詳細に行うことで、火星物質の火星衛星(フォボス)への輸送量を定量的に算出しました。

研究成果

研究チームは、高解像度の衝突計算と破片の詳細な軌道計算を用いて、5億年前注1から現在までの間に火星上に発生した小天体衝突による、火星からフォボスへの衝突破片の輸送過程を定量的に評価しました。具体的には、発生時期や規模が異なる、さまざまな種類の小天体衝突によってフォボスへ輸送される火星物質量をそれぞれ算出しました注2(図2)。それらを合計した結果、従来考えられていたよりも10倍以上の量の火星表層物質がフォボスへ運ばれたことを示しました。さらに、火星のあらゆる場所で起こった小天体の衝突によって、火星の全球の表層物質がフォボスへ運ばれ、フォボスの表面に均質に混入することがわかりました。研究チームの見積もりでは、フォボスからサンプルを10 g採取した場合注3、その中に少なくとも30粒以上の火星粒子が含まれます。それに対して、火星上で現在知られている地質年代区分は7つです。したがって火星物質粒子が30粒以上あれば、火星上のすべての年代区分、つまり全時代の情報を含んだサンプルを手にできる可能性が高いことになります。これらの結果は、JAXAが計画している火星衛星探査に、質の面での新たな科学的価値をもたらすものです注4

図2. 本研究で算出した、過去の小天体衝突によってフォボスへ輸送される火星表層物質の量。「Zunil」、「Corinto」、「McMurdo」、「Tooting」、「Mojave」は、火星表面上に存在する直径10 km以上の新しいクレータ(10万年以内)を作った衝突による輸送量。「Random」は、最近5億年間に直径100 km以下のクレータを作った無数の小天体衝突によって輸送される総量。「260 km」は、最近5億年間で少なくとも一度は起こると考えられる、直径260 kmのクレータを作る衝突による輸送量。「Total」は、これらの合計値。右の縦軸は、輸送された火星物質がフォボス表層1 mに均質に混ざった場合の、火星物質の割合を示します。1 ppm は、100万分の1の割合を表す単位です。
図2.
本研究で算出した、過去の小天体衝突によってフォボスへ輸送される火星表層物質の量。「Zunil」、「Corinto」、「McMurdo」、「Tooting」、「Mojave」は、火星表面上に存在する直径10 km以上の新しいクレータ(10万年以内)を作った衝突による輸送量。「Random」は、最近5億年間に直径100 km以下のクレータを作った無数の小天体衝突によって輸送される総量。「260 km」は、最近5億年間で少なくとも一度は起こると考えられる、直径260 kmのクレータを作る衝突による輸送量。「Total」は、これらの合計値。右の縦軸は、輸送された火星物質がフォボス表層1 mに均質に混ざった場合の、火星物質の割合を示します。1 ppm は、100万分の1の割合を表す単位です。

今後の展開

現在、欧米や中国、インド等、各国が火星探査を計画しており、2020年代には本格的な国際火星探査の時代に突入します。その中でも、NASAとESAが主導する火星本体からのサンプルリターン計画では、2020年に調査ローバー(Mars2020)が打ち上げられ、計画通り進めば、2026年打ち上げのサンプル回収機により、2031年に火星サンプルが地球に帰還します。このような火星サンプルリターン時代において、JAXAではMMX計画で火星衛星からのサンプルリターンを計画し、2029年のサンプル帰還を目指しています。

本研究の結果から、火星本体に行かずとも、火星衛星から火星表層物質を採取可能であることが明らかになりました。また、火星本体の探査では、ある特定の領域の詳細な調査およびサンプル回収ができますが、サンプル回収地域周辺の限られた地質と時代区分にしかアクセスできません。一方、火星衛星から採取される火星サンプルは、火星サンプルリターンに比べると少量ですが、火星史を包括的に理解できる多様な物質を含んでいると期待されます。

研究支援

本研究は科学研究費助成事業 JP17H03486、JP17H01176、JP17H02990、JP17H01175、JP17K18812、JP17J01269、JP18HH04464、JP18K13600、JP19H00726、及び自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの援助(AB301018)を受けて実施されました。

注1

フォボスの軌道は時間と共に火星に近づいています。5億年以上前にさかのぼると、フォボスの軌道は火星から大きく離れ、衝突破片がフォボスへ到達する量は大きく減少するため、この数値計算では最近5億年間のみを考えています。

注2

デイモスに輸送される火星表層物質の量は、デイモスがフォボスよりも火星から離れた距離を公転しているため、フォボスに比べて約20倍小さくなります。

注3

MMX計画では、10g以上のサンプル採取を目指しています(Kuramoto et al. 2019 EPSC)。

注4

今回の研究成果は、MMX計画の惑星保護分類に影響を与えません。仮に微生物が火星表層に存在していたとしても、衝突滅菌と放射滅菌によって死滅するため、MMX計画で地球に持ち帰る火星衛星サンプル中に生きた微生物が存在する確率は、従来の見積もり通り100万分の1以下になります。詳しくは、以下を参照してください。

火星衛星探査に向けた国際的な惑星保護方針への貢献について|JAXAouter

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Transport of impact ejecta from Mars to its moons as a means to reveal Martian history
著者 :
R. Hyodo, K. Kurosawa, H. Genda, T. Usui, K. Fujita
DOI :

参考文献

[1] Chappaz, L., Melosh, H. J., Vaquero, M. & Howell, K. C. Transfer of impact ejecta material from the surface of Mars to Phobos and Deimos. Astrobiology 13, 963-980 (2013).

[2] Ramsley, K. R. & Head, J. W. Mars impact ejecta in the regolith of Phobos: Bulk concentration and distribution. Planetary and Space Science 87, 115-129 (2013).

お問い合わせ先

東京工業大学 地球生命研究所

准教授 玄田英典

E-mail : genda@elsi.jp
Tel : 03-5734-2887

JAXA 宇宙科学研究所

国際トップヤングフェロー 兵頭龍樹

E-mail : hyodo@elsi.jp
Tel : 080-1296-8130

千葉工業大学 惑星探査研究センター

上席研究員 黒澤耕介

E-mail : kosuke.kurosawa@perc.it-chiba.ac.jp
Tel : 047-478-0320

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

千葉工業大学 入試広報課

E-mail : katsuma.ebine@p.chibakoudai.jp
Tel : 047-478-0222 / Fax : 047-478-3344

加熱だけで分子の形を環状に変換する手法を開発 環状構造の量産化とそれを利用した材料創製に貢献

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要点

  • 環状分子は他の形状分子と比べ特異な機能・物性を発現するが、合成が困難
  • 溶媒中で加熱することで、選択的に単一の環状構造へと変換することに成功
  • 大量合成に適し工業利用はもちろん環状骨格の詳細な機能・特性の解析に期待

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の青木大輔助教(JST さきがけ研究者兼務)、桑田繁樹准教授、大塚英幸教授らは、簡便な実験操作で、所望する分子骨格を環状のトポロジー(分子の形)へと変換する手法を開発した。

青木助教らは「加熱により安定ラジカル[用語1]を発生する分子骨格」と「環化させたい分子骨格」を重合反応で化学的に連結させ、直鎖状高分子[用語2]へと変換。その後に、直鎖状高分子を希釈し加熱することで、選択的かつ簡便に環状構造へとトポロジー変換させることに成功した。この手法に適用できる分子骨格は低分子から高分子と幅広く、環状構造の量産化とそれを利用した材料創製に役立つと期待される。

分子量が中程度以上の環状高分子も含む環状分子[用語3] は、古くから他の形状の分子とは異なる特異な機能・特性を発現することが知られている。しかし環状という特異なトポロジーは、その合成を困難にしており、純度よく大量に合成する手法の開発が望まれていた。

研究成果は1月9日「Angewandte Chemie International Edition(アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション)」に掲載された。

本研究の概念図

図1. 本研究の概念図

研究の背景

環状化合物、特に分子量が中程度からそれ以上の環状高分子は、古くから他の形状の化合物や高分子とは異なる特異な機能・特性を発現することが知られていた。しかし、一方で環状という特異な形状(トポロジー)は、その合成を困難にしており、狙った構造を選択的かつ大量に環状化する手法は今日の合成技術をもってしてもいまだ確立されていない。そのため、幅広い分野での工業的な利用はもちろん、学術的にも詳細な機能・特性の十分な解析は困難だった。

研究の経緯

環状化合物・高分子を合成[用語4]する際に最も重要となる反応ステップは「環化のプロセス」であり、いかに環化反応を効率よくかつ選択的に進行させるかが重要な鍵となる。今回の研究では、この環化のプロセスを副反応なく、自発的かつ選択的に引き起こすために動的共有結合[用語5]に着目した。

研究成果

青木助教らの研究グループは、環化のプロセスを副反応なく、自発的かつ選択的に引き起こすために動的共有結合に着目。中でも、熱によりその動的な特性を厳密に制御(on-off制御)することができる(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)ジスルフィド骨格[用語6](以下 BiTEMPSと省略)は、以下の理由から研究を遂行する上で理想的な骨格であることを見いだした。

1.
100 ℃以上の加熱により特定の共有結合が可逆的に均一開裂し、安定ラジカルを発生する動的特性「on」状態、また加熱しなければラジカルは発生せず安定な共有結合として振る舞う= 動的特性「off」状態。
2.
熱によって発生する安定ラジカルの官能基許容性[用語7] は高いため種々の分子骨格に適用できる。
3.
安定ラジカルの結合交換反応が非常に早く起こる。
4.
加熱するだけで反応を誘起でき、酸素ケアや高価な触媒を必要としない。

以上のような特性を有する動的共有結合ユニットであるBiTEMPS骨格を、「環化させたい任意の構造」と重合反応させることで、共有結合で連結させ直鎖状高分子へと変換した。次に、得られた直鎖状高分子を希釈し、加熱することで、選択的かつ簡便に環状構造へとトポロジー変換させることに成功した。

すなわち、動的な特性が「on」となる高温条件下において、他の外部因子(溶媒の種類や濃度)を適切に選択することで、所望する環状の形状へとそのトポロジーを変換させ、トポロジー変換後は、動的な特性が「off」となる100℃以下へと冷却することで、外部因子に応じて変形した環状のトポロジーを固定化することができる。

この手法は、所望の分子骨格を大量スケールで簡便に環化することができるため、従来にはない理想的な環状骨格の合成法と捉えることができる。また、環化する対象骨格を低分子とした場合、比較的高濃度条件(1 g / 100 mL およそ 20 mmol/L)においても環化反応を引き起こすことができ、さらにBiTEMPS骨格を1つのみ有する環状化合物を高収率で単離し、その構造をX線結晶構造解析[用語8]により明確にすることにも成功した。

BiTEMPSの動的特性(on-off制御)を利用した環状化合物・高分子の合成法

図2. BiTEMPSの動的特性(on-off制御)を利用した環状化合物・高分子の合成法

今後の展開

今回、開発した手法は酸素ケアや触媒が要らず、簡便な操作で行うことができることから、幅広い分野での工業的な利用はもちろん、学術的にも環状骨格の詳細な機能・特性についてより詳細な解析が期待できる。また狙った分子骨格に環状分子特有の分子認識能や包接能といった特異の機能・物性を付与することもできる。この研究を契機に、環状分子を機能材料開発のツールとする新しい材料設計の指針を立てることができる。

用語説明

[用語1] 安定ラジカル : ラジカルは不対電子(電子対にならない電子)を持つ原子や分子である。一般的にラジカルは反応性が高いために、生成するとすぐに他の原子や分子間で反応を起こし、安定な分子やイオンとなる。ラジカルは大気中の酸素とも反応するため、有機反応に利用する場合、酸素を系中から取り除く必要がある。本研究で扱うBiTEMPS骨格から発生するラジカルは、化学的安定性に優れたラジカルであるため酸素に対しても不活性であり、種々の反応に利用することができる。

[用語2] 直鎖状高分子 : モノマーと呼ばれる単位分子が重合し、連続して結合することで形成するひも状の高分子の総称。ひも状であるため2つの末端構造を有する。

直鎖状高分子

[用語3] 環状分子 : 構成する原子が環状に結合した化合物であり、分子量が大きいものは環状高分子と呼ばれる。他の形状の分子と比べその内孔を利用した包接能や分子認識能といった特異な機能・物性を発現する。

環状分子

[用語4] 環状分子(環状高分子を含む)の合成法 : 環状分子(環状高分子を含む)の合成法については、これまで(i)鎖状分子の両末端の連結、(ii)環状開 始剤の環拡大、及び(iii)縮合重合反応による環状成分の選択的合成、のおもに3つの方法が報告されている。それぞれの手法で利点がある一方で、(i)では他の高分子鎖との反応を避けるために高希釈条件での反応が必須である。 (ii)では環状の開始剤を合成する際に環化のプロセスを経ることと、適用できるモノマー構造が限定され所望の構造を導入することが困難である。(iii)では反応の起点となる官能基を高分子主鎖骨格中に導入する必要があり、また分子量とその分布の制御が難しい点に、それぞれ問題がある。

環状分子(環状高分子を含む)の合成法

[用語5] 動的共有結合 : 共有結合でありながら可逆的な解離-付加を実現できる結合(動的共有結合)を利用する化学システムは、「動的共有結合化学(Dynamic Covalent Chemistry)」として注目を集めている。こうした平衡系の共有結合に基づく分子構造体は、熱力学的に安定な構造を有するが、特定の外部刺激(温度、触媒、光、化学種添加など)によってその構造が変化するというユニークな特徴を合わせもっている。

[用語6] ジスルフィド骨格 : 熱によってその動的特性を制御可能な(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)ジスルフィド(BiTEMPS)の化学構造。

ジスルフィド骨格

[用語7] 熱によって発生する安定ラジカルの官能基許容性 : 化学反応を進行させる上で問題となるのはその選択性である。狙った骨格同士を共有結合で連結できれば理想的だが、反応性が高いものほど意図していない他の骨格とも反応してしまう。狙った骨格に対して反応性をもっていながらそれ以外の骨格(官能基)とは反応しない「官能基許容性」は有機合成反応を設計するにあたって重要な指標となる。

[用語8] X線結晶構造解析 : 単結晶X線回折法は、1つの単結晶内の電子雲の規則性を利用し、そのX線干渉模様を計測し、それを数値解析することによって、実像である電子雲の空間分布を解き明かす手法である。単結晶X線回折法を利用することで結晶内部の原子がどのように配列しているかを決定することができる。

今回の研究成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られた。

JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ

研究領域:
「トポロジカル材料科学と革新的機能創出」
研究総括:
村上修一(東京工業大学 理学院 教授)
研究課題名:
「空間結合を創る高分子トポロジー変換反応を鍵とした異種トポロジーの融合」
研究者:
青木大輔(東京工業大学 物質理工学院 助教)
研究実施場所:
東京工業大学
研究開発期間:
平成30年10月~令和4年3月

論文情報

掲載誌 :
Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル :
A Strategy toward Cyclic Topologies Based on the Dynamic Behavior of a Bis(hindered amino)disulfide Linker
著者 :
Nao Tsurumi, Rikito Takashima, Daisuke Aoki, Shigeki Kuwata, and Hideyuki Otsuka
DOI :
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助教 青木大輔

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