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マイスターに聞く ―鳥人間コンテスト2014を終えて―

9月3日に日本テレビ系列で放送された「鳥人間コンテスト2014」。

人力プロペラ機ディスタンス部門に東工大マイスターが連覇をかけて出場しました。当日、まさかの天候不順により多くのチームが飛行できず、大会は不成立となりました。

マイスターの活動は鳥人間コンテストを境に新旧メンバーが入れ替わります。今夏で活動を終えた3年生に集まってもらい、今年の機体について、コンテストを終えた感想について話を聞きました。

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主将(代表) 杉本大河さん(機械科学科3年生) 全体設計 岡部紘介さん(機械宇宙学科3年生) パイロット 大槻恒太さん(高分子工学科3年生) 翼班 石原和輝さん(国際開発工学科3年生) 駆動班 秦悠人さん(機械宇宙学科3年生) FRP(翼の骨組)班 京田浩平さん(有機材料工学科3年生)

主将(代表) 杉本大河さん(機械科学科3年生)
全体設計 岡部紘介さん(機械宇宙学科3年生)
パイロット 大槻恒太さん(高分子工学科3年生)
翼班 石原和輝さん(国際開発工学科3年生)
駆動班 秦悠人さん(機械宇宙学科3年生)
FRP(翼の骨組)班 京田浩平さん(有機材料工学科3年生)

  • 鳥人間コンテスト、おつかれさまでした。天候不順という難敵が現れ、大変残念な結果となりました。まずは、大会の様子を教えてください。

琵琶湖には前日に到着し、機体を組み立て、機体審査を受けました。審査をパスし、一度機体を解体した後、睡眠をとりにホテルに戻りました。空はすでに荒れていて、翌日の天気予報はギリギリ飛べるかどうか。予報が良い方向に傾けば飛べるかな、と思っていました。この段階では飛べないとは思っていませんでした。

人力プロペラ機ディスタンス部門は朝6時から始まります。われわれのフライトは11時〜12時ぐらいの予定でしたので、機体を組み立て、待機しました。6時の段階で、ちょっと厳しいかな、という天候でした。まずは3チームが飛びましたが、どのチームも苦戦していました。飛んだチームのパイロットに聞くと、かなり風にあおられ、浮いているのがやっとだったそうです。その後、風が強くなり、一時競技を止め、待機していると、そのうちに雨まで降ってきました。雷の予報が出たので、避難するよう本部から指示があり、バスに避難しました。やがて雷が鳴り始め、激しい雨が降り続きました。

雷雨は1時間ほどで止みましたが、本部に呼ばれ、「これから天気が悪化する予報なので、機体を組み上げた順に飛ばすことにする」と言われました。この時点で、あまりの風の強さにパイロットの安全のため棄権するチームや、待機中に機体が壊れたチームも出ていました。東工大チームは雨を避けるため一度解体していた機体を再度組み上げ、待機していましたが、遂に本部から競技中止が発表されました。

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大会当日の様子

大会当日の様子

  • “中止”と発表されたときの気持ちは?
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大槻さん

大槻さん

杉本さん(代表・フレーム班): 仕方がないかな、と思いました。

大槻さん(パイロット): 今年の機体は性能が良かったので、無理に飛ばして、壊してしまうよりは、完璧な状態で持って帰って他で飛ばしたいと思っていました。風がよければ長距離フライトができると思っていたので、中止はかえってラッキーだと思いました。

  • 今年の機体の特長を教えてください。
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岡部さん(左)、杉本さん(右)

岡部さん(左)、杉本さん(右)

岡部さん(全体設計): 一言でいうと、“高性能”。翼の設計の仕方を大幅に変えて、翼の抵抗を一気に減らしました。

杉本さん(代表・フレーム班): マイスター史上最高の機体を目指しました。

大槻さん(パイロット): テストフライトでの感触がとにかく良かったです。滑空比が良すぎて、漕ぐのをやめても機体が落ちてこない。慣性でプロペラが回っているので、ペダルに足が付いていっているだけでしたが、機体を支える人を配置している最後のラインまで機体が到達してしまったほどでした。

  • 2年半のマイスターでの活動を振り返って、いかがですか?
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今年の機体「宙(ソラ)」、コックピット部分

今年の機体「宙(ソラ)」、コックピット部分

杉本さん(代表・フレーム班): マイスターの活動は、企業からの援助、先生方からの指導、学長や蔵前工業会からの激励など、多くの方々に支えられています。その分プレッシャーも大きいです。代表として1年過ごすと本当に疲れます。途中から早く終わらないかなという気持ちになりますが、そこを踏ん張れば、何か素晴らしい景色が見られるはず、だったのですが。この一か月ずっと消化不良です。何とか消化できる終わり方にしたいと思っています。現在、私たちの機体を飛ばすために模索中です。

岡部さん(全体設計): ここまで色々あったな、と。そして、せっかく作った機体が長距離飛んだところを見てみたいと思ったりしています。一方で、設計とか機体制作の統括はもうやらなくてもいいかな、と思います。それくらい色々ありました。

大槻さん(パイロット): 以前は制作をやっていましたが、制作から離れて1年間トレーニングしてきました。トレーニング中には、他のメンバーが優しく励ましてくれました。大会後は、体力維持を兼ねてトライアスロン部に入りました。まだ機体が残っていますし、テストフライトがすごく良かったので、飛べる機会があれば、絶対、長距離飛んでみせます。

石原さん(翼班): 昨年、代替わりしてから、みんなで良い機体を作ろうとがんばってきました。鳥人間コンテストを楽しみにしていたので残念ですが、やることはやったので後悔はないです。

秦さん(駆動班): 駆動班はそんなにハードではないので、基本的に楽しく活動してきました。大変そうにしているメンバーの話を聞いたりして、チームとしての一体感が出ていたと思います。

京田さん(FRP班): FRP班は週一で徹夜作業でしたが、楽しく活動しました。2年半、マイスターにいただけでも東工大に来て良かったと思っています。

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京田さん(左)、秦さん(右)

京田さん(左)、秦さん(右)

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石原さん

石原さん

東工大マイスター 2014年5月3日 第3回テストフライト
(動画が正しく表示されない場合は最新版のブラウザでご覧ください。)

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杉本さん

杉本さん

代表から新代表へのエール

代表に就任したら、即、代表になれるのでなく、だんだん代表になっていくもの。これから1年は心労がたまる一方で、2月~3月がピークです。僕たちは、後輩に大会3連覇の挑戦権を与えるつもりでやってきました。今年は競技不成立で優勝なしだったので、マイスターは来年もディフェンディング・チャンピオンです。連覇目指してがんばって!

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田中さん

田中さん

新代表より

田中翔汰さん(機械宇宙学科2年)

来年は優勝を目指します。新パイロットも優勝してみんなで喜びたいと言っています。みんなで協力して1年やっていきます。

先輩から後輩へ、マイスターの魂は引き継がれていきます。

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東工大マイスター 鳥人間コンテストを境に新旧メンバー入れ替わる


DNA相同組換えの複雑な制御機構を解明 ―分裂酵母DNAヘリカーゼFbh1が多様な働き―

要点

  • Fbh1ヘリカーゼが組換え反応の品質管理を実施
  • Fbh1ヘリカーゼがRad51をユビキチン化することを世界で初めて確認

概要

東京工業大学大学院生命理工学研究科の伊藤健太郎大学院生、川野由美子元大学院生、筒井康博助教、岩﨑博史教授、同情報生命博士教育院の黒川裕美子特任助教らの研究グループは、DNA相同組換え[用語1] の複雑な制御機構の解明に成功した。細胞にとって大きなリスクを要するDNA組換えを精巧に制御している仕組みを世界で初めて明らかにしたもので、発がん機構などの基礎研究に貢献すると期待される。

具体的には、2つの異なる酵素活性を有する「Fbh1」[用語2] が、DNA相同組換えで中心的に働く酵素の「Rad51」[用語3] を質的量的に制御していることを突き止めた。すなわち、Fbh1のDNAヘリカーゼ活性[用語4] がRad51による適切な組換え反応を促進し、不適切な組換え反応を阻害すること、またユビキチンリガーゼ活性[用語5] がRad51をユビキチン化することを示した。 体細胞分裂期におけるDNA相同組換え機構は、主にDNA二重鎖切断の修復に働き、細胞ががん化するのを防いでいる(組換え修復)。しかし、なんらかの理由で組換えが頻発して不適切なDNA編成が起こると、これもまた、がん化や細胞死を引き起こすことが知られている。そのため、DNA組換えは適切にプロセスされるように様々なステップで制御されている。

この研究は国際高等研究所と共同で行った。成果は8月28日オープンアクセスジャーナル PLoS Genetics にオンライン掲載された。

研究の背景と経緯

DNA相同組換えとは、2本の相同なDNA分子を交換する反応であり、原核生物から真核生物まで広く保存された生命現象の一つである。体細胞分裂期においては、DNA二重鎖切断の修復などに働き(組換え修復)、その反応は複数のタンパク質によって多段階かつ多面的に制御されている。DNA相同組換えの制御機構の破綻は、遺伝情報(ゲノム)の不安定化や細胞死、ヒトにおいては、がん化の原因となりうる。

過去に岩﨑教授らは、真核生物のモデル生物の一つである分裂酵母を使った遺伝学スクリーニングによって、F-boxモチーフ[用語6] をもつユニークDNAヘリカーゼ、Fbh1を発見した。Fbh1はDNA相同組換えの制御に働くことが予想されたが、詳細は不明であった。

研究成果

今回は、生化学的手法と分子遺伝学的手法を用いてFbh1の機能解析を行った。試験管内で再構成した種々の反応系の結果から、Fbh1がDNAヘリカーゼ活性とユビキチンリガーゼ活性という2つの異なる酵素活性をもつことがわかった。

Rad51による試験管内組換え反応系にFbh1を添加して反応に与える影響を調べたところ、Fbh1のDNAヘリカーゼ活性は、Rad51が補助因子による活性化をうけていないとき(不適切な組換え反応に相当)には反応を阻害し、補助因子によって活性化されると(適切な組換え反応に相当)反応を促進することが分かった(図1)。

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図1 Fbh1はDNA組換え反応を質的に制御する

図1 Fbh1はDNA組換え反応を質的に制御する

(囲み部)試験管内で再構成したDNA組換え反応の模式図

環状の一本鎖DNA(基質DNA1)と相同な配列をもつ直鎖状の二本鎖DNA(基質DNA2)に、組換え酵素Rad51を反応させると、2つの基質DNAの間で、DNA鎖の交換反応がおこる。

(下図)Rad51による試験管内DNA組換え反応系にFbh1を添加した際の反応に対する影響を調べた結果

不適切な組換え反応においては、組換えが完了したDNAの量が減少するため、不適切な組換えを阻害していることがわかる。一方、適切な組換え反応に添加すると、組換えが完了したDNAの量が増加しており、適切な組換え反応を促進していることがわかる。

一方、試験管内で再構成したユビキチン化反応系を確立し、Fbh1がRad51リコンビナーゼをユビキチン化する活性(ユビキチンリガーゼ活性)も見出した。さらに、定常期に入った細胞において、Rad51のタンパク質量が著しく減少することが分かり、定常期におけるDNA相同組換えを抑制していると考えられた。

これらの知見を元に、Fbh1は2つの活性によって相同組換えを多面的に制御しているというモデルを提唱した(図2に不適切な組換え反応を阻害するモデルを示す)。

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図2 Fbh1が不適切なDNA組換えを抑制する分子モデル

図2 Fbh1が不適切なDNA組換えを抑制する分子モデル

DNA組換え反応には、組換え酵素Rad51(赤で表示)と一本鎖DNA(青で表示)が結合して、複合体を形成することが必要である。Fbh1は、Rad51とDNAの複合体の品質を監視しており、不適切な複合体に対しては、Rad51をDNAから引き剥がして、組換え反応の開始を阻害する。

今後の展開

ユビキチン化されることによって、Rad51がどのような影響をうけるのか(活性調節されるのか、あるいは、プロテアソームにより分解されるのか、など)は今後の興味深い課題の一つである。定常期の細胞において、Fbh1によってRad51のタンパク質の量が著しく減少していることはプロテアソームによる分解が起こっていることを想起させる。ユビキチン--プロテアソーム系がDNA相同組換えに直接関与することが報告された例はなく、ユビキチン化の新たな生物学的意義の発見の端緒となることが期待される。

また、このような分裂酵母を用いたモデル実験系に加えて、直接的に発がんメカニズムにも迫ってゆきたい。例えば、皮膚がん細胞の一種において、Fbh1をコードする遺伝子の欠損が頻繁に観察されており、まずは、様々ながん種における発がんへの関与の有無は早急に検討すべき問題であろう。

用語説明

[用語1] DNA相同組換え : 2本の相同な(塩基配列が極めて類似している)DNA分子を交換する反応。体細胞分裂期には、切断された二本鎖DNAの修復に関与する。また、減数分裂期の際には、父方由来と母方由来の遺伝情報をシャッフリングし、遺伝的多様性を生み出す原動力になっている。他方、遺伝子組み換え生物の創出にも応用されている。

[用語2] Fbh1 : 分裂酵母からヒトに至るまで広く保存されたDNAヘリカーゼである。原核生物にも、そのプロトタイプが存在する。

[用語3] Rad51 : DNA相同組換えにおいて中心的に働く酵素である。相同DNA配列の検索とDNA鎖交換を担う。原核生物ではRecAとよばれるタンパク質が類似の機能を有している。

[用語4] DNAヘリカーゼ活性 : 2本鎖DNAを1本鎖DNAにほどく活性。

[用語5] ユビキチンリガーゼ活性 : ユビキチンはアミノ酸76残基からなる小さなタンパク質で、真核生物で高度に保存されている。複数の酵素の連携により、標的となる特定のタンパク質のリジン残基に数珠状に結合(ユビキチン化)する反応がおこるが、ユビキチンリガーゼ活性はその反応に必須な酵素活性の一つである。ユビキチン化の働きとして、結合されたタンパク質の分解シグナルになる例や酵素活性の変換シグナルになる例が知られている。

[用語6] F-boxモチーフ : ユビキチン化反応に働く酵素のうち特定のグループに共通して存在するタンパク質配列である。

論文情報

掲載誌 :
PLoS Genetics (2014) 10, e1004542
論文タイトル :
Multiple Regulation of Rad51-Mediated Homologous Recombination by Fission Yeast Fbh1
著者 :
Yasuhiro Tsutsui, Yumiko Kurokawa, Kentaro Ito, Md. Shahjahan P.Siddique, Yumiko Kawano, Fumiaki Yamao, Hiroshi Iwasaki
DOI :
10.1371/journal.pgen.1004542 Image may be NSFW.
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お問い合わせ先

大学院生命理工学研究科 生体システム専攻
筒井康博 助教 岩﨑博史 教授
Email: ytsutsui@bio.titech.ac.jp, hiwasaki@bio.titech.ac.jp
TEL: 03-5734-3766 / FAX: 03-5734-3781

「地球とあそぼう2014 〜石の不思議を調べて地球を知ろう〜」開催報告

7月30日に小学5、6年生100名を対象とした「地球とあそぼう2014〜石の不思議を調べて地球を知ろう〜」を開催しました。
この企画は参加者に科学実習や実験を通して地球科学研究の興味・関心を喚起することを目的としています。

大きく分けて3つの実習を行いました。

  1. 1.きれいな鉱物をタガネで宝石のような形にけずって、その形や色を観察しよう
  2. 2.南アメリカ・ボリビア産化石を砂利の中から探し出そう
  3. 3.重液という薬品を使って重い石と軽い石に分ける実験を行おう

参加者のみなさんは、真剣に実習に取り組みました。

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顕微鏡で小さな世界を観察しよう。

顕微鏡で小さな世界を観察しよう。

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鉱物を割ってその形を観察しよう。

鉱物を割ってその形を観察しよう。

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たくさんの石の中からいろいろな種類の化石を探そう。

たくさんの石の中からいろいろな種類の化石を探そう。

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専用の椀を使って砂金探しをしよう。

専用の椀を使って砂金探しをしよう。

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重液という薬品を使って重い石と軽い石を分けよう。

重液という薬品を使って重い石と軽い石を分けよう。

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石が水に浮く?

石が水に浮く?

アンケートの結果、ほぼ全員が「また参加したい」と回答しました。また、以下のような感想がありました。

  • 色々なものを自分でやれるのがおもしろいです。見ているだけではつまらないけどここでは自分でやらせてくれるので、とてもおもしろかったです。
  • あまり体験できないようなことができてよかった。
  • どれもおもしろい内容で時間も忘れて夢中になりました。
  • 説明が分かりやすく、楽しく知ることができました。また参加したいです。
  • 大学生の人たちがわかりやすく説明し、笑顔でせっしてくれました。特に化石実験がおもしろかったです。
  • 色玉実験のかこう岩が2番目におもいとは思いませんでした。
  • 楽しくまなべてよかったです。

実習を通して地球の歴史と秘密に触れる事ができました。

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集合写真
記念撮影を行ないました。写真は参加者の皆さんに持って帰ってもらいました。

お問い合わせ先
地球生命研究所
Tel: 03-5734-2618
Email: shio@elsi.jp

大学教員のためのFD研修会 ~アクティブラーニング実現に向けて~ 開催報告

8月4日に大岡山キャンパスにおいて「大学教員のためのFD研修会 〜アクティブラーニング実現に向けて〜」を開催しました。

東京工業大学では、目下、教育改革を推進しており、2016年4月開始に向け、アクティブラーニングを積極的に取り入れた教育・学習環境整備を進めています。具体的には、南3号館322及び323号室の改修、耐震工事が終了した南5号館110及び111号室の整備が進められています。工事は2015年1月には終了し、AV機器が整備された講義室として完成する予定です。

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研修の様子

このようにハード面(箱)は整いつつありますが、アクティブラーニング、反転授業、MOOCsなど、ハードを活用するためのソフト、すなわち最近の先端教育手法の知識も必要となります。そのため、整備の一環として FD (Faculty Development) 研修会を継続実施しています。研修内容はAV機器の使用方法ではありません。今回の研修会では、参加教員がアクティブラーニング形式での研修を体験することで、自身の授業の振り返り、および、他学科の教員との情報共有を通じて、今後の授業改善に結びつけることを目的としており、全学科から教員約30名が参加しました。

研修会では、日本教育工学会FD特別委員会の協力の下、「大学授業デザインの方法―1コマの授業からシラバスまで―」をテーマに、参加者それぞれが授業実践事例を持ち寄ったワークショップ形式で行なわれました。授業のデザインに関する問題意識の明確化、情報・課題の共有など議論を進め、「何を誰に教えようとしているのか」、「どんな方法で教えるのか」、「続けたい点・変えたい点は何か」などグループ内で活発な議論が交わされました。

研修会後の参加者アンケートでは、「シラバスの目標設定の重要さに気づいたことは大きな収穫であり、学生の集中・興味を保つ方策のヒントを得られた」、「理論に基づき自分の授業改善について考えることができた。また、アクティブラーニングを体験しながら学べた」、「他学科の先生方と話す機会が持てて、いろいろヒントをいただいた。」等々の感想が寄せられており、参加者は手ごたえを得たようでした。

今回の研修を主催した創造性育成科目実施委員会の山田明委員長(大学院理工学研究科電子物理工学専攻 教授)は、以下のようにコメントしています。

大学教員として講義を行い、かれこれ20年以上経ちますが、初めて講義方法に関して系統的に聞くことができました。講義を通して学生が身につけるべき目標設定がシラバスで明らかになっているか、一発の期末試験ではなく単元毎にテストを行い、複数回の達成度チェックにより学生の評価を行った方が良いなど大変参考になる情報を得ることができました。
例えば以下の線形回路の演習問題などは「回路の電圧伝送比を求めよ。」と聞いてしまいますが、グループを作り、

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線形回路

1.
電圧伝送比を求める。
2.
横軸を周波数、縦軸を伝送比の絶対値としてグラフを描く。
3.
回路の役割をグループ全体で考えさせる。
4.
結果をグループ毎に発表、全体で議論する。

などひとつの問題に対して時間はかかりますが、学生の興味を引くやり方を工夫することが可能だと気がつきました。また、シラバスには15回分の講義内容が書いてありますが、各講義内容の連関を図で示すことによって学生の理解度が増すかもしれないと感じました。

お問い合わせ先
学務部 教務課 教育企画グループ
Tel: 03-5734-7603
Email: kyo.kyo@jim.titech.ac.jp

原子炉工学研究所の人材育成・研究提案が国家課題対応型事業に採択

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小原 徹 教授

原子炉工学研究所 小原 徹 教授

原子炉工学研究所が提案した「廃止措置工学高度人材育成と基盤研究の深化(代表者:小原 徹教授)」が「国家課題対応型研究開発推進事業(廃止措置等基盤研究・人材育成プログラム委託費)」に採択されました。

本事業は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所について、政府が策定した中長期ロードマップに位置づけられた「中長期の視点での人材育成及び大学・研究機関との連携」を進める観点から、廃止措置等の人材育成に関する重点分野の中でも、民間だけでは着手しづらい中長期的基礎基盤研究について、多様な分野の叡智を結集して課題を克服し、安全かつ着実に廃炉措置等を進めていく上で必要となる人材を育成するものです。

採択課題の概要

課題名
廃止措置工学高度人材育成と基盤研究の深化
代表者
原子炉工学研究所 小原 徹 教授
事業期間
平成26年10月~平成31年3月(予定)
参加部局・大学
原子炉工学研究所、理工学研究科機械系専攻、
東京医科歯科大学、芝浦工業大学、東海大学、東京都市大学

廃止措置工学の高度な知識と高いモチベーションを持った若手人材を継続的に育成するために、東工大をはじめプログラム参加大学の学生に高度な教育を行っていきます。最新の研究成果や廃炉措置の状況についての講義の他、炉心溶融物・汚染物を想定した材料・化学に関する実際に核燃料物質や放射性物質を扱ったホットラボでの実験を行い、さらにモックアップ施設を利用したロボット遠隔測定の実習も実施します。学生のキャリアパス形成のための活動も積極的に行っていきます。同時に、廃止措置の実施において重要な難分析核種分析、汚染除去、廃棄物処分・固定化、ロボット遠隔測定、臨界安全に関する基盤的研究を推進していきます。人材育成・研究の推進に当たり廃止措置機関との情報交換を密にして、得られた情報を人材育成及び研究活動に反映させ、高度な人材の継続的育成と基盤研究の深化を目指します。

ジャガイモの有毒アルカロイド生合成酵素遺伝子を同定 ―ジャガイモ食中毒の低減が図れる育種に期待―

本研究成果のポイント

  • ジャガイモの有毒ステロイドグリコアルカロイド(SGA)生合成に関わる酵素遺伝子「SSR2
  • 植物のコレステロール生合成機構解明への手がかり
  • SSR2遺伝子を標的とした有毒成分の少ないジャガイモ育種の可能性

理化学研究所(理研、野依良治理事長)、キリン株式会社(磯崎功典社長)、東京工業大学(三島良直学長)、大阪大学(平野俊夫総長)、広島大学(浅原利正学長)、日本大学(大塚吉兵衛学長)、千葉大学(徳久剛史学長)は、ジャガイモに含まれる有毒な「ステロイドグリコアルカロイド(SGA)」[1] の生合成に関わる酵素遺伝子「SSR2遺伝子」を同定しました。これは、理研環境資源科学研究センター(篠崎一雄センター長)統合メタボロミクス研究グループの斉藤和季 グループディレクターと澤井学 研究員、キリン株式会社基盤技術研究所(近藤恵二所長)の梅基直行 主任研究員、東京工業大学大学院理工学研究科の大山清 助教、大阪大学大学院工学研究科の村中俊哉 教授と關光 准教授と、広島大学、日本大学、千葉大学の研究者らの共同研究グループ[2] の成果です。

ジャガイモの芽や緑化した皮の近辺には、食中毒の原因となるα-ソラニン、α-チャコニンなどのSGAが含まれていることが知られています。ジャガイモの育種において、SGA含量を低く抑えることは重要な課題の1つとして考えられています。SGAはコレステロールを中間体として生合成されると考えられています。しかし、一般に植物に含まれるコレステロールは少ないため、詳しい生成機構は明らかではありませんでした。

共同研究グループは、酵母での異種遺伝子発現系を用いた酵素機能評価により、SGA生成に必要なコレステロール生合成の酵素遺伝子としてSSR2遺伝子を同定しました。このSSR2遺伝子発現を抑制、ならびにSSR2遺伝子を破壊した遺伝子組換えジャガイモでは、SGA含量が非遺伝子組換えジャガイモに比べ低いことを見いだしました。今回の成果は、将来のSSR2遺伝子を標的としSGAの含有量を低く抑えたジャガイモ育種につながるものと期待できます。

本研究の一部は、農林水産省農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「作物における有用サポニン産生制御技術の開発」(独立行政法人生物系特定産業技術研究支援センターイノベーション創出基礎的研究推進事業「作物における有用サポニン産生制御技術の開発」より移管)などの支援を受けて行いました。

本研究成果は、米国の科学雑誌『The Plant Cell』に掲載されるに先立ち、オンライン版(9月12日付け)に掲載されます。

1.背景

ジャガイモ、トマトを含むナス科植物には、有毒な「ステロイドグリコアルカロイド(SGA)」が含まれる場合があります。代表的なものとして、ジャガイモではα-ソラニン、α-チャコニンが主なSGAで、芽や緑化した皮の近辺に比較的多く含まれ、ジャガイモ食中毒の原因物質とされます(図1)。ジャガイモのSGA含量を低く抑えることは、ジャガイモ育種において重要な課題の1つと考えられます。

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図1 ジャガイモのSGA

図1 ジャガイモのSGA

ナス科植物には、有毒な「ステロイドグリコアルカロイド(SGA)」が含まれる場合がある。代表的なものとして、ジャガイモのα-ソラニンとα-チャコニンで、芽や緑化した皮の近辺に比較的多く含まれる。

SGAはコレステロールを中間体として生合成されると考えられています。しかし、一般の植物に含まれるステロール[3] の中では、コレステロールの含有量は少ないため、これまで植物におけるコレステロールの詳しい生成機構は明らかではありませんでした。

2.研究手法と成果

植物が有する主なステロールである 24-アルキルステロールとコレステロールの主な化学構造上の違いは、24位アルキル基[4] の有無です。24位アルキル基は、メチル基転移反応と 24(28)位還元反応を受けて生成されます。アブラナ科のシロイヌナズナでは、DWF1が24-アルキルステロール生合成における24(28)位還元反応を触媒します。一方、ヒトを含む動物では、DWF1のホモログ(相同体)[5] のDHCR24が、コレステロール生合成における24(25)位還元反応を触媒します(図2)。

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図2 24(28)位還元反応と24(25)位還元反応の1例

図2 24(28)位還元反応と24(25)位還元反応の1例

SSR1は、24(28)位還元反応の触媒活性を顕著に示し、24-アルキルステロール生合成に関わると考えられる。SSR2は、24(25)位還元反応の触媒活性を顕著に示し、SGA生合成中間体であるコレステロール生合成に関わると考えられる。

共同研究グループは、ジャガイモ、トマトで発現している遺伝子群の中に、DWF1およびDHCR24のホモログと考えられるタンパク質の遺伝子が2種類含まれていることを見いだし、「SSR1」、「SSR2」と命名しました。これらの遺伝子の働きを明らかにするため、出芽酵母での異種遺伝子発現系を用いてSSR1、SSR2の酵素機能を評価しました。その結果、SSR1は24(28)位還元反応の触媒活性を顕著に示し、SSR2は24(25)位還元反応の触媒活性を顕著に示しました(図2)。この結果から、SSR1遺伝子が24-アルキルステロール生合成に、SSR2遺伝子がSGA生合成中間体であるコレステロールの生合成に関与していると考えられます。さらに共同研究グループは、RNA干渉法[6] によりSSR2遺伝子の発現を抑制した遺伝子組換えジャガイモ、ならびに試験的にゲノム編集法の1つである TALEN法[7] によりSSR2遺伝子を破壊した遺伝子組換えジャガイモを作出しました。これら遺伝子組換えジャガイモのSGA含量を分析した結果、非遺伝子組換えジャガイモのおよそ1割に低下していました。このことはSSR2遺伝子がSGA生合成に関わっていることを支持します。

3.今後の期待

今回の成果により、将来、SSR2遺伝子を標的としてSGA量を低く抑えたジャガイモの育種が可能となると期待できます。

補足説明

[1] ステロイドグリコアルカロイド : 窒素原子を含むステロイドの配糖体。ナス科植物等が生成蓄積することが知られている。ジャガイモではα-ソラニン、α-チャコニンが主なステロイドグリコアルカロイドとして知られ、ジャガイモ食中毒の原因物質とされている。

[2] 共同研究グループ : 理研環境資源科学研究センター統合メタボロミクス研究グループの斉藤和季グループディレクター(千葉大学大学院薬学研究院教授)と澤井学研究員、同センター生産機能研究グループの榊原均グループディレクター、小嶋美紀子技師と竹林裕美子テクニカルスタッフ、キリン株式会社基盤技術研究所の梅基直行主任研究員、東京工業大学大学院理工学研究科の大山清助教(兼 理研客員研究員)、大阪大学大学院工学研究科の村中俊哉教授(兼 理研客員主管研究員)、關光准教授(兼 理研客員研究員)と安本周平大学院生、広島大学大学院理学研究科山本卓教授と佐久間哲史特任助教、日本大学生物資源科学部青木俊夫教授らで構成。

[3] ステロール : 3位にヒドロキシ基を有し、炭素数27のコレスタン骨格を基本とする化合物群。コレステロール、24-アルキルステロールなど。

[4] アルキル基 : 飽和炭化水素鎖(アルカン)の化学構造に由来する置換基。メチル基、エチル基など。

[5] ホモログ(相同体) : 共通の祖先を持つと考えられるもの。遺伝子、タンパク質についても用いられる。

[6] RNA干渉法 : 標的遺伝子配列の一部に相当する二本鎖RNAによって、標的遺伝子の発現を抑制する手法。

[7] TALEN法 : Transcription Activator-Like Effector Nuclease法。ゲノム編集法の1つ。DNA配列特異的に結合する部分 (Transcription Activator-Like Effector) とDNAを切断する部分(Nuclease)から構成される。結合部分は標的とする遺伝子配列特異に結合するよう人工的に設計することができるため、ゲノム上の標的遺伝子配列に結合し、DNAを切断することができる。切断されたDNAはその修復過程において、ある程度の頻度で欠損、挿入変異が発生するため、標的遺伝子の破壊(改変)が起こる。他に近年著しい発展をみせるゲノム編集法としてZFN法、CRISPR/Cas9法が知られている。

論文情報

掲載誌 :
The Plant Cell September 2014 tpc.114.130096
論文タイトル :
Sterol Side Chain Reductase 2 Is a Key Enzyme in the Biosynthesis of Cholesterol, the Common Precursor of Toxic Steroidal Glycoalkaloids in Potato
著者 :
Satoru Sawai, Kiyoshi Ohyama, Shuhei Yasumoto, Hikaru Seki, Tetsushi Sakuma, Takashi Yamamoto, Yumiko Takebayashi, Mikiko Kojima, Hitoshi Sakakibara, Toshio Aoki, Toshiya Muranaka, Kazuki Saito, and Naoyuki Umemoto
DOI :
10.1105/tpc.114.130096 Image may be NSFW.
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お問い合わせ先

大学院理工学研究科
助教 大山 清 (おおやま きよし)
TEL:03-5734-3568 / FAX:03-5734-2241

質量のないディラック電子の空間分布の観測に成功 ―ディラック電子の空間分布が特異であることを発見―

本研究成果のポイント

  • 走査型トンネル顕微鏡法/分光法でディラック電子の空間分布の画像化に成功
  • 磁気的に異なる2つの成分で構成されるディラック電子の特徴を検証
  • トポロジカル絶縁体表面のディラック電子を制御する新手法の開発に期待

理化学研究所(理研、野依良治理事長)と東京工業大学(三島良直学長)は、トポロジカル絶縁体[用語1] 表面に形成される質量のない電子(ディラック電子[用語2] )の空間分布の観測に成功し、特異な空間分布であることを解明しました。これは、理研創発物性科学研究センター(十倉好紀センター長)創発物性計測研究チームの付英双(フ・インシュアン)国際特別研究員(中国華中科技大学教授)、花栗哲郎チームリーダー、量子凝縮相研究チームの川村稔専任研究員、東京工業大学応用セラミックス研究所笹川研究室の笹川崇男准教授を中心とする共同研究グループの研究成果です。

トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体である一方、物質表面は金属であり、また物質表面の金属状態を担う電子には質量が無い特異な物質です。質量のない電子はディラック電子と呼ばれ、その電子の動きは2つの成分を持つ波動関数[用語3] で表現できます。トポロジカル絶縁体表面のディラック電子の場合、この2つの成分は電子の持つスピン[用語4] に関係しています。電子の動きとスピンを制御できれば、スピントロニクス[用語5] 応用に向けた新しい量子現象につながると期待されています。そのためには、ディラック電子の空間分布の直接観測が必要ですが、これまで行われていませんでした。

今回、共同研究グループは、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子をナノスケールの空間に閉じ込め、「走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS)[用語6] 」を用いてディラック電子の空間分布を直接観測しました。その結果、ディラック電子の空間分布は通常の質量を持つ電子の分布と異なっていることが分かりました。この結果を理論的に解析したところ、ディラック電子の2つの成分がそれぞれ異なる空間分布を持つことが特異な空間分布の原因であることが分かりました。さらに、2つの成分の空間分布の違いは、ユニークな磁気構造をもたらすことが示唆されました。本成果は、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子を制御する新しい方法の開発につながると期待できます。

本研究成果は、英国の科学雑誌『Nature Physics』オンライン版(9月14日付け:日本時間9月15日)に掲載されます。

1.背景

トポロジカル絶縁体は、物質内部は絶縁体である一方、物質表面は金属であり、また物質表面の金属状態を担う電子は質量を持たない特異な物質です。量子力学では、電子の振る舞いは波動関数と呼ばれる電子の存在確率分布に関連した関数で表現できます。質量を持つ通常の電子の波動関数は、シュレーディンガー方程式[用語3] で求められます。一方、質量のない電子の波動関数は、ディラック方程式[用語3] で求められることから質量のない電子を「ディラック電子」と呼んでいます。ディラック電子は、炭素原子が蜂の巣状に並んだ単一原子層結晶のグラフェンなど、いくつかの物質でその存在が知られていますが、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子は、電子の運動方向とスピンの向きが完全に固定されているため、他の物質のディラック電子にはない特徴を持っています(図1)。そのため、トポロジカル絶縁体は、電子の運動とスピンが絡み合った新しい量子効果の探索の場として、また将来のスピントロニクス材料として、活発に研究されています。

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図1 通常の電子とトポロジカル絶縁体表面のディラック電子の違い

図1 通常の電子とトポロジカル絶縁体表面のディラック電子の違い

通常の質量を持つ電子の場合、その運動方向とスピンの間に相関は無いが、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子の場合、スピンの向きは常に運動方向と垂直で表面と平行である。これにより、電子の運動を制御することで磁気的性質の制御が可能になる。

通常の電子の波動関数は1つの成分しか持っていませんが、ディラック電子の波動関数は電子の持つ自由度に関連した2つの成分を持っています。トポロジカル絶縁体表面のディラック電子の場合、この2つの成分は電子の持つスピンに関係しています。一般的にスピンは磁気的性質と密接な関係があるため、トポロジカル絶縁体をスピントロニクス材料として用いるには、さまざまな環境においてスピンがどのような振る舞いを示すのか知る必要があります。そのためには、波動関数の情報を含んでいる電子の空間分布を実験的に調べることが最も直接的な手がかりとなりますが、これまで空間分布を直接観測することは困難でした。

2.研究手法と成果

共同研究グループは、走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS)を用いて、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子の空間分布を直接観測しました。STM/STS は、さまざまなエネルギーを持つ電子がどのように分布しているのかを描き出すことが可能な手法で、電子分布から波動関数の情報が得られます。測定対象が一様な場合、電子はその質量の有無にかかわらず均一に分布してしまうので、ディラック電子の特徴をとらえるためには、何らかの方法で電子をナノスケールの空間に閉じ込める必要があります。通常の電子の場合、結晶中に正に帯電した欠陥があると、静電力で電子がそこに引き寄せられることを利用して電子を閉じ込めることができます。しかし、ディラック電子の場合、このような欠陥が作る「ポテンシャル」があってもそこに閉じ込められにくいという特徴があり、単純な STM/STS では空間分布を観測することが困難でした。そこで、強磁場を加え、ディラック電子を周回運動させることで、ポテンシャル中に閉じ込め、STM/STS で観測を行うことにしました。

理研の研究チームは、東京工業大学がビスマス(Bi)とセレン(Se)から作製した高品質 Bi2Se3単結晶をトポロジカル絶縁体として用い、11T(テスラ:1T は地磁気の約2万倍)に及ぶ強磁場を加え、STM/STS実験を行いました。波動関数の情報を得るには、さまざまなエネルギーを持つ電子の分布を知る必要があり、一日以上の長時間にわたってナノスケールの領域を観測し続けなければ十分な信号強度を得ることができません。そのため、装置を1.5K(ケルビン:1.5Kは約マイナス272℃)の低温に保ち、装置の熱膨張などの影響を徹底的に排除しました。この低温かつ強磁場下での安定したSTM/STS観測によって、ディラック電子の空間分布の直接観測に初めて成功しました。観測によってディラック電子は、ポテンシャルの「等高線」に沿ったリング状分布することが分かりました(図2左)。また、この分布は、ポテンシャルと磁場の効果を取り入れたディラック方程式から求めた理論的な電子分布とよく一致しました(図2右)。

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図2 欠陥が作るポテンシャルと磁場によってトラップされたディラック電子

図2 欠陥が作るポテンシャルと磁場によってトラップされたディラック電子

ディラック電子の空間分布が、ポテンシャルの底からわき出してエネルギーの上昇ととも同心円状のリングになって広がるように変化する様子を実験で観測した。また、この振る舞いを理論解析で再現することに成功した。電子が閉じ込められているリングの内部構造を調べることで、波動関数に関する情報が得られる。

磁場中では、通常の電子の場合もリング状の領域への閉じ込めは起こりますが、エネルギーが高くなると、リングを形成する帯の内部の電子状態分布にピークが多数現れることが知られています。しかし、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子の場合、十分なエネルギー分解能と空間分解能で測定しても、ピークの数は高々2つしか観測されませんでした。その理由を明らかにするため、ディラック方程式の理論解析を行いました。その結果、ディラック電子の波動関数を構成する2つの成分のそれぞれは、通常の電子と同様の多数のピークを持ちますが、成分ごとに異なる空間分布を示すため、実験で観測される2つの成分の和ではお互いが相殺されてしまい、結果として比較的相殺が起こりにくい帯の内端と外端に2つのピークが残ることが分かりました(図3)。

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図3 通常の電子とディラック電子のリング内部構造

図3 通常の電子とディラック電子のリング内部構造

電子分布に現れるリングを形成する帯をポテンシャルの等高線と垂直な方向に横に切ると、通常の電子では電子密度が高い部分が多数のピークを(このエネルギーでは3つ)持つのに対し、ディラック電子ではどんな場合でもピークの数は高々2つであることが、実験と理論計算の両面から分かった。

ディラック電子の2つの成分は、スピンに対応しているので、各成分が異なる空間分布を示すということは、スピンによる磁化が空間的に変化していることを意味します。そこで、解析に用いた理論モデルを用いて、スピン磁化の空間分布を計算したところ、ポテンシャルの形を反映した特異なスピン磁化分布が現れることが示されました(図4)。この結果は、ポテンシャルという一見磁気的性質とは無関係なパラメータの制御により、さまざまなスピン磁化の空間分布を作り出せる可能性を示しています。

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図4 トポロジカル絶縁体表面で期待されるスピン磁化分布

図4 トポロジカル絶縁体表面で期待されるスピン磁化分布

ディラック方程式を用いた理論解析から、ポテンシャル底を中心に同心円状のスピン構造が誘起されることが分かった。矢印の向きと大きさがスピン磁化の向きと大きさを表している。このパターンはエネルギーによって変化する。

3.今後の期待

今回、高度に調整したSTM/STSによる空間分布の直接観察と理論モデルを用いた解析により、トポロジカル絶縁体表面のディラック電子の空間分布とその解釈が明らかになりました。また、ポテンシャルと磁場を利用することで、スピンに関連した現象を探索する新しい舞台と方法が提示されました。今回の実験では、波動関数の各成分を分離して観察するまでには至りませんでした。しかし、スピン偏極STMという磁気的な性質を観測できるSTM/STSを用いると、2つの成分のうちの1つだけを観察することが原理的には可能です。今後、このような新しい手法を適用することで、ディラック電子の持つ未知の側面が観察可能になり、将来のエレクトロニクス応用に資することのできる量子効果の発見へつながると期待できます。

用語説明

[用語1] トポロジカル絶縁体 : 物質内部は絶縁体であるにもかかわらず、質量のない電子が電気伝導を担う特殊な金属状態が表面に存在する物質。この表面状態は、表面の凹凸や不純物があっても、安定に存在する。また、電子のスピンが進行方向に対して垂直に固定されるという性質を持っているため、スピントロニクス用の材料としても期待されている。

[用語2] ディラック電子 : 相対論的量子力学の基本方程式であるディラック方程式に従って運動する電子のこと。通常の質量を持つ電子の運動は、より簡便なシュレーディンガー方程式で近似的に記述できる。しかし、固体中の電子の質量は実効的に真空中の値から変更を受け、物質毎に様々な値を持つ。特に、トポロジカル絶縁体表面の電子の場合は質量がないため、近似が成り立たずディラック方程式で記述しなければならない。固体物質では、トポロジカル絶縁体の表面状態のほかにも、グラフェンや有機導体などでディラック電子の存在が確認されている。

[用語3] 波動関数、シュレーディンガー方程式、ディラック方程式 : 量子力学では、電子は粒子であると同時に波動であり、波動としての電子の運動を記述するのが波動関数である。波動関数は、シュレーディンガー方程式またはディラック方程式を解くことによって得られる。シュレーディンガー方程式は、通常の質量がある電子に適用できるが、質量が軽くなり相対論的効果が重要になってくると合わなくなる。ディラック方程式は、相対論的効果も含む方程式で、質量のない電子にも適用できる。

[用語4] スピン : 電子のもつ自由度の1つで、磁気的性質を表す。電子の自転の向きに例えられる。

[用語5] スピントロニクス : 電子の電荷とスピンの両方の自由度を用いて情報処理などに応用する技術。スピンとエレクトロニクスを合わせた用語。

[用語6] 走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS) : 先端を尖がらせた金属の針(探針)で物質の表面をなぞるように走査し、探針の高さをマッピングすることで物質表面の凹凸を原子スケールで観察することができる顕微鏡。走査中は、探針と試料の間に流れる電流が一定になるように制御することで、探針と表面の距離を一定に保つ。探針の高さの代わりに電流-電圧特性をマッピングすると、エネルギー分解(分光)した電子状態分布を得ることができる。

論文情報

掲載誌 :
Nature Physics, 2014
論文タイトル :
Imaging the two-component nature of Dirac-Landau levels in the topological surface state of Bi2Se3
著者 :
Ying-Shuang Fu, M. Kawamura, K. Igarashi, H. Takagi, T. Hanaguri and T. Sasagawa
DOI :
10.1038/nphys3084 Image may be NSFW.
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問い合わせ先

応用セラミック研究所
准教授 笹川 崇男
Email: sasagawa.t.aa@m.titech.ac.jp
TEL:045-924-5366

すずかけ台キャンパスにて第12回料理教室開催

8月6日(水)、すずかけ台キャンパスの食堂にて料理教室が開催されました。 この料理教室は東工大生協・季の実ガーデン・保健管理センターすずかけ台分室の共催で行われ、今年度2回目になります。

今回は「夏野菜をたっぷり使った料理!」ということで、ドライカレー、手作りピクルス、フルーツポンチを作りました。鮮やかな色の夏野菜たちを使い、食欲が落ちやすいこの時期にぴったりのご馳走が出来ました。学生さんたちからは、「食堂のメニューに入れてほしい!」との声が出るほどの自信作となりました。みんなで楽しく作った料理の味は最高でした。

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きれいな色をした夏野菜

1.きれいな色をした夏野菜。苦手な方も多いセロリも使いました。

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今回は沢山の野菜、果物を切りました

2.今回は沢山の野菜、果物を切りました。
トマトは湯剥きしてつるつるにしました。

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切った材料を炒める

3.切った材料を炒める!

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出来上がり

4.ドライカレー、手作りピクルス、フルーツポンチの完成です。

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今回もたくさんのご参加ありがとうございました。

今回もたくさんのご参加ありがとうございました。


資史料館リーフレット「とっておきメモ帳3」発行

東京工業大学資史料館が、リーフレット「とっておきメモ帳」の第3回を刊行しました。
今回は、1987(明治30)年に本学(の前身)に設置された工業図案科がテーマです。

東工大と千葉大の意外な関係

本学は近代デザイン史に大きな足跡を残し千葉大にバトンを残した

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東工大と千葉大の意外な関係 1ページ

カッコよくて使い易くなければモノは売れない。モノが売れなければ国は立ちゆかない。このように デザインに国の興亡がかかっているという考えのもとに いち早く本学に設置されたのが工業図案科だった(1897〔明治30〕年)。これが紆余曲折を経て、現在の田町キャンパスに工芸を専門とする新しい学校を創設することにつながり、それが戦災の影響で千葉県に引っ越していたことから、戦後の学制改革で、千葉大学ができる際の原資の1つとなった。戦災を免れ、田町に残っていた部分が本学に移管され、現在の附属科学技術高等学校になっている。附属高校が、一時期、千葉大の附属だったといわれるゆえんだ。工業デザインの“ゆりかご役” を果たした本学の工業図案科と“乳母役” を果たした人たちにスポットライトを当ててみることにしよう。

とっておきメモ帳 3 東工大と千葉大の意外な関係Image may be NSFW.
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PDF

※ PDF版のみの発行です。

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東工大と千葉大の意外な関係 2ページ
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東工大と千葉大の意外な関係 3ページ
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東工大と千葉大の意外な関係 4ページ
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東工大と千葉大の意外な関係 5ページ

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東工大と千葉大の意外な関係 6ページ

発行年月 2014年7月
発行 東京工業大学博物館 資史料館部門

お問い合わせ先
東京工業大学博物館 資史料館部門
Tel: 03-5734-3340
Email: centshiryou@jim.titech.ac.jp

高大連携サマーチャレンジ2014 開催報告

11年目の夏が来た

東京工業大学では、附属科学技術高校と連携し、大学レベルの講義を生徒に体験してもらって「未知の分野への挑戦から何かをつかみとる」というユニークな合宿「高大連携サマーチャレンジ」を、2004年度以来1年も欠かさずに継続しています。基礎学力はもちろんのこと、発想力・独創性・グループワーク力こそが、未来の科学技術をになう人材に必要と考え、高校生のうちからそうした力を涵養したいと意図してのことです。
11年目の今回は初めての試みとして、一般参加校の枠を設け、従来の連携先である東工大附属とお茶の水女子大学附属高校以外の高校に呼びかけ、5校から9名の生徒が参加しました。多様なバックグラウンドの生徒たちが集うことで現場はカオス化し、シナジー効果も発生し、サマーチャレンジ全体が大きくレベルアップしました。
生徒たちの期待に応えるべく、選りすぐりの講師陣も一世一代のコンテンツをぶつけて挑みます。そんな熱い3日間をレポートします。

実施記録

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サマーチャレンジ 2014 タイムテーブル

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  • 日時
    2014年8月6日~8日
  • 場所
    神奈川県三浦郡葉山町 湘南国際村
    IPC生産性国際交流センター
  • 参加人数
    • 生徒
      55名
      (東工大附属 40名 お茶大附属 6名 一般参加校5 校 9名)
    • 教員
      42名
      (東工大教員 22名 引率高校教員 6校 12名 見学高校教員 7校 8名)
      事務職員 8名
    • 合計
      105名

チャレンジ1

コラムランド

大学院社会理工学研究科 社会工学専攻 山室 恭子 教授

事前に各自が執筆してきた短い文章を、匿名の状態でディスカッションして評価しあうという、東工大の名物講義をそのまま持ち込んで、初対面のメンバー同士のアイスブレイクとしました。
お題は「氷」。地球温暖化からかき氷の思い出まで、多様な作品を自由に議論することで、なだらかなテイク・オフをどの班も達成できたようです。

チャレンジ2

あ・い・う・え・おはよう !――コンピュータは人の声をどう聞いているのか ?

大学院情報理工学研究科 計算工学専攻 篠田 浩一 教授

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二次元上のあいうえお

二次元上のあいうえお

各テーブルにマイクとパソコンを設置し、「そのマイクからコンピュータに話しかけてごらん。画面はどんなふうに反応するかな?」と指示を出すと、全10班が一斉に「あ・い・う・え・お」の大合唱。大きな声でも小さい囁きでも、渋い低音も女の子のソプラノも、似た模様を描くようです。音ごとの違いを「スペクトル」という概念で可視化すると、このように二次元空間に表現できるのです。実験から理論へ。段階を踏んで記号列と距離の概念を説明し、高校生達に計算してもらいました。この未知の記号列は、既知の「はい」と「いいえ」の記号列のどちらと距離が近いのでしょう。
「似ている」をどう数値化するかの方法論を知って、スマートフォンを見る目が変わりそうな音声認識チャレンジでした。

チャレンジ3, 4

珈琲メーカーに塩胡椒ミル ――キッチングッズを大解剖

大学院理工学研究科 材料工学専攻 篠崎 和夫 教授 、上田 光敏 准教授

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分解対象のグッズ

分解対象のグッズ

初日の夜は毎年恒例の「身近なグッズを分解してみよう」というテーマのコンテンツです。白い覆いをはずすと、珈琲メーカー、塩胡椒ミル、そしてホッチキスが出現しました。キッチングッズ中心のセレクトです。珈琲メーカーは、カプセルをセットし、スイッチをオンにすれば、おいしい珈琲ができあがります。こんな小さなカプセルが、どうやったら本格珈琲に変身するのでしょう。レギュラーと抹茶ラテでカプセルの底の穴の形状が違っているのは、なぜでしょう。塩胡椒ミルは、右にひねると胡椒が、左にひねるとお塩がパラパラ出てきます。どのような構造になっているのでしょうか。
大騒ぎの夜も更けて、翌日は班単位での発表です。「そこ、見落としじゃないの ?」など、同じグッズを分解しているだけに、他班から厳しい質問の矢が浴びせられます。丁々発止の真剣勝負を終えて、達成感もひとしおでした。

チャレンジ5

グルメなヒドラくん ――3種のエサを食べさせてみよう

バイオ研究基盤支援総合センター 立花 和則 准教授

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モニターでヒドラの様子を観察

モニターでヒドラの様子を観察

各テーブルにデジタル顕微鏡とモニター。シャーレに鎮座した主役はヒドラです。オレンジの胴体から触手がうねうね伸びています。限界まで絶食させてあるこのヒドラに、大好きなエビを食べさせてみましょう。エビは生タイプと抽出タイプと冷凍タイプ。ピペットで恐る恐るエビをあげると、顕微鏡の視野がカオスになります。ヒドラがエビを食べているのか、エビがヒドラを食べているのか、分かりません。
波立ちがおさまって観察してみると、ヒドラが太ったように見えます。生き物が生き物を食べる。その瞬間を真剣に見つめて「食べる」ことの意味を考えたヒドラ・チャレンジでした。

チャレンジ6

正20面体ができました ――生体材料で医学に貢献

大学院理工学研究科 材料工学専攻 生駒 俊之 准教授

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カラフルなパーツ

カラフルなパーツ

次はパズルです。三角・四角・五角に六角、4種類の形のカラフルなパーツが各テーブルに配置されました。パチンパチンと組み合わせて正12面体か正20面体を作ってみましょう。できあがったら、回転軸が何本あるか数えてみます。三次元の認識に頭を慣らした後で結晶の話に、さらにそこからラングミュアの等温式へ進みます。ラングミュアの等温式とは、生体反応を解明して制御するための、大切な式です。では、このバラバラの実験データを式にどう整合させるか、式を変換してグラフを描いてみましょう。
手と頭の両方を動かしつつ、どんな材料を生成すれば人の体のなかで効果を発揮するのか、最先端の医療を体感させてくれるチャレンジでした。

チャレンジ7

アインシュタイン・マジック ――目で見る相対性理論

大学院理工学研究科 物性物理学専攻 田中 秀数 教授

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手づくり装置で実演

手づくり装置で実演

ここに2本の平行導線があります。電流を同じ方向に流すと近づきます。逆向きに流すと反発します。何が起こっているのでしょう。光の速度は一定というアインシュタインの発見から、運動する物体の長さは短くなるというローレンツ収縮が導かれます。この考えに基づいて、導線1の動いている電子から導線2の止まっている陽イオンを見ると間隔が縮むので、正に帯電しているように見えるのです。
導線の動きが相対性理論で鮮やかに解明されてゆきます。憧れのスーパースターが身近な現象に舞い降りた瞬間です。夢がふくらむラスト・チャレンジでした。

高校教員の眼

一般参加校の引率の先生のほかに、新たに7校の高校教員に見学にお越しいただき、ミーティングや評価シートを通して、たくさんの有益な御意見をいただくことができました。

  • このようなアイスブレイクを初めて見ました。面白かったです。自分の文章を他人に議論されるという緊張感や恥ずかしさを乗り越えて、それぞれが自己開示できるのがよい。(コラムランド)
  • スタッフの先生方もわくわくされていたのが印象的。モノづくりの教育の場として、大人のこのような姿を生徒が見られるのはとても良い。(キッチングッズ大解剖)
  • 生徒が提出した用紙に、先生が一人ひとりコメントを書いてくださったことに、頭が下がりました。(グルメなヒドラくん)
  • 高校の物理が大学でどのようなものになるのか、その道筋が垣間見える講義で、生徒のモチベーションも上がった。(アインシュタイン・マジック)
  • すべてが素晴らしいほどシステムとして確立していて感心致しました。
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会場風景

会場風景

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全員で修了式

全員で修了式

「環境報告書2014」発行

2013年度における環境保全や改善に向けた本学の研究・教育活動、環境負荷低減のための取り組み等を「環境報告書2014」として発行しました。

環境報告書とは、企業などの事業者が、経営責任者の緒言、環境保全に関する方針・目標・計画、環境マネジメントに関する状況、環境負荷の低減に向けた取組の状況等について取りまとめ、名称や報告を発信する媒体を問わず、定期的に公表するものです。

2004年には、環境報告書の普及促進、信頼性向上のための制度的枠組みを整備し、環境報告書を社会全体として積極的に活用していくために「環境配慮促進法」が制定され、独立行政法人や、国立大学法人などにおいて発行が義務付けられています。

環境報告書2014

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環境報告書2014

目次
学長からのメッセージ

  • 第1章
    東京工業大学の概要
  • 第2章
    理工系総合大学としての環境・安全衛生マネジメント
  • 第3章
    環境負荷の低減
  • 第4章
    エコロジカルで持続可能な社会の創生に資する科学技術研究
  • 第5章
    持続可能な社会の創生への人材育成
  • 第6章
    社会貢献活動
「環境報告ガイドライン2012」との対照表
第三者からのご意見
「東京工業大学 環境報告書2014」の作成にあたって

詳細は、総合安全管理センターwebサイトでご覧いただけます。
また、各インフォメーション等に冊子体を置きましたので、ご一読ください。

お問い合わせ先
総合安全管理センター
Tel: 7184(内線)
Email: sog.anz.kik@jim.titech.ac.jp

遺伝子活性化の仕組みを生きた細胞内で観察 ―転写制御にはたらくヒストン標識の役割を解明―

要点

  • エピジェネティック修飾と転写活性化の生細胞同時計測に成功
  • ヒストンH3アセチル化の意義を解明

概要

東京工業大学大学院生命理工学研究科の木村宏教授と米国コロラド州立大学のスタセビッチ・ティモシー助教授(元・大阪大学大学院生命機能研究科)らの共同研究グループは、遺伝子の活性化の仕組みを生きた細胞の観察により明らかにした。ヒストンH3アセチル化[用語1] と転写を行う活性化型のRNAポリメラーゼII[用語2] を同時に生細胞で可視化し、数理モデルと合わせた解析により、ヒストンH3アセチル化が転写因子[用語3] のDNAへの結合と転写の伸長反応の両方に働くことを突き止めた。

細胞内でDNAと複合体を形成するヒストンたんぱく質の翻訳後修飾[用語4] は、遺伝子の抑制や活性化に働くと考えられている。中でもヒストンH3のアセチル化は、遺伝子活性化の目印として知られていたが、実際に細胞内でどのように働くのかは分かっていなかった。

共同研究には九州大学、かずさDNA研究所、モノクローナル抗体研究所などが参加した。成果は21日18時(英国時間)に英科学誌「ネイチャー(Nature)」オンライン速報に掲載される。

背景

遺伝子は細胞の形や機能を担うたんぱく質の設計図であり、遺伝子が働くためには、その情報が必要に応じて正確にmRNAとして読み取られる必要がある。RNAポリメラーゼIIは、mRNAの転写を行う酵素であり、転写因子や「エピジェネティクス」制御[用語5] などにより、その遺伝子への結合や転写開始、転写伸長などのさまざまな過程が調節される(図1)。

ヒストンの翻訳後修飾の中でも、特にヒストンH3のアセチル化修飾は遺伝子活性化の目印として働くと考えられており(図1)、発生や分化、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の形成過程で大きく変動することが知られている。

しかし、細胞内において、ヒストンH3アセチル化が、RNAポリメラーゼIIによる転写の調節に実際にどのように働くのかについての知見はほとんど得られていなかった。

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図1. ヒストン修飾と転写

図1. ヒストン修飾と転写

DNAと複合体を形成するヒストンたんぱく質は様々な翻訳後修飾を受けるが、一般に、アセチル化は遺伝子の転写活性化に、メチル化は転写抑制に働く。転写には、RNAポリメラーゼと転写因子の遺伝子への結合が必要である。最初にDNAに結合し、転写開始前複合体を形成するのはリン酸化されていないRNAポリメラーゼII(非リン酸化型)であるが、転写開始時には繰り返しアミノ酸配列中の5番目のセリンが、転写伸長時には2番目のセリンがリン酸化される。従って、これらのリン酸化を特異的に検出することで、転写状態が分かる。

研究の経緯

木村教授らは、これまで修飾特異的抗体を改変した蛍光プローブ[用語6] を用いて生細胞や生体内でヒストンの翻訳後修飾を計測する方法を開発してきた。今回、その方法を遺伝子の転写を行う蛋白質である活性化型RNAポリメラーゼIIの指標となるリン酸化修飾に適用し、転写の開始と伸長を生細胞で計測することに成功した。転写活性化のモデル系として、ステロイド系ホルモンである糖質コルチコイド[用語7] で誘導される遺伝子を用いた。

研究成果

ホルモン誘導性遺伝子の繰り返し配列(遺伝子アレイ)を持つ細胞に、ヒストンH3修飾や活性化型RNAポリメラーゼIIに特異的に結合する蛍光プローブを導入し、その活性化に伴うヒストン修飾とRNAポリメラーゼIIの動態を生細胞で計測した。ホルモンの添加により、転写因子がすみやかに核に移行し、遺伝子アレイ上に集積する。今回の解析により、RNAポリメラーゼIIによる転写が、転写因子の結合後、数分以内に起こることが示された(図2)。

また、生細胞観察結果の定量解析と数理モデルの併用により、一旦、転写を開始した RNA ポリメラーゼII(セリン5リン酸化型)は効率よく伸長反応(セリン2リン酸化型)に至ることが明らかとなった。

さらに、ホルモン添加前に高レベルのアセチル化状態にある遺伝子アレイでは、転写開始の効率は低レベルのアセチル化状態にある遺伝子アレイと変わらないものの、転写因子の結合と転写の伸長が促進されることが明らかとなった。これらのことから、ヒストンH3のアセチル化は、転写因子の結合と転写開始から伸長への移行の両方を促進すると考えられる(図3)。この考えは、モデルとして用いた遺伝子アレイのみならず、他の遺伝子群についての解析結果とも一致した。従って、アセチル化による転写伸長反応の促進は、遺伝子の転写制御における普遍的な現象であると考えられ、今回の研究は、生命現象の理解に対して重要な意義を持つと考えられる。

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図2. ホルモン添加による遺伝子活性化

図2. ホルモン添加による遺伝子活性化

ホルモン誘導性遺伝子の繰り返し配列(遺伝子アレイ)を持つ細胞にホルモンを添加すると、遺伝子が活性化される。RNAポリメラーゼIIのリン酸化に特異的蛍光プローブを細胞に導入することで、この様子を生細胞で観察できる。ホルモンを添加すると、まず蛍光たんぱく質(GFP)融合型転写因子が細胞核内に移行し、遺伝子アレイに集積する。次いで、RNAポリメラーゼIIが遺伝子アレイに集積するが、転写開始型のセリン2リン酸化、転写伸長型のセリン5リン酸化が順次検出できる。

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図3. ヒストンH3アセチル化の役割

図3. ヒストンH3アセチル化の役割

ヒストンH3がアセチル化されていると、RNAポリメラーゼIIによる転写伸長反応が促進される。

今後の展開

今回着目したステロイド系ホルモン誘導性遺伝子は、あらかじめアセチル化されており、ホルモンに応答してすみやかに転写が起こるように準備された状態であると考えられる。今後、メチル化などの抑制的な修飾を持つ遺伝子が、発生や分化の過程でどのように活性化するのかを解明していく必要がある。

また最近、がんをはじめとした多くの疾患で、エピジェネティクス調節が異常になることが明らかにされはじめ、ヒストン翻訳後修飾を制御する因子を標的とする薬剤の開発が注目を集めている。本研究の知見や計測システムは、今後の薬剤開発にも大いに役立つと期待できる。

用語説明

[用語1] ヒストンH3アセチル化 : DNAは、ヒストンたんぱく質の周りを取り巻いて存在している。ヒストンには、H2A、H2B、H3、H4 の4種類存在するが、その中でもヒストンH3のアセチル化は転写の活性化に、メチル化は転写の抑制に働く。

[用語2] 活性化型のRNAポリメラーゼII : RNAポリメラーゼIIは、遺伝子の転写を行うたんぱく質であるが、その活性はリン酸化により制御される(図1)。DNAに結合するのは非リン酸化型であるが、転写開始時には繰り返しアミノ酸配列中の5番目のセリンがリン酸化され、転写伸長反応時には2番目のセリンがリン酸化される。

[用語3] 転写因子 : 遺伝子の転写開始や転写調節に働くたんぱく質で、DNAに直接結合して、転写を誘導するものが多い。

[用語4] 翻訳後修飾 : 蛋白質は細胞内で生合成された後、アセチル化、メチル化、リン酸化など様々な化学修飾を受ける。細胞内のほとんどの蛋白質は、これらの修飾により機能や活性が調節されている。

[用語5] エピジェネティクス制御 : 「エピジェネティクス」とは、DNA配列の変化を伴わずに起こる遺伝子発現の制御であり、DNAのメチル化やDNAと複合体を形成するたんぱく質であるヒストンの翻訳後修飾が重要な役割を果たしている。

[用語6] 蛍光プローブ : 生体内の現象を観察するための、蛍光を発する化合物や蛋白質などの小分子。細胞内で標的に特異的に結合するため、蛍光顕微鏡下で、標的分子の動態計測が可能になる。

[用語7] 糖質コルチコイド : 副腎皮質から分泌されるステロイド系のホルモン。糖代謝に関与し、生体内では血糖値の上昇作用や抗炎症作用などをもつ。

論文情報

掲載誌 :
Nature
論文タイトル :
Regulation of RNA polymerase II activation by histone acetylation in single living cells
著者 :
Timothy J. Stasevich, Yoko Hayashi-Takanaka, Yuko Sato, Kazumitsu Maehara, Yasuyuki Ohkawa, Kumiko Sakata-Sogawa, Makio Tokunaga, Takahiro Nagase, Naohito Nozaki, James G. McNally, and Hiroshi Kimura
DOI :
10.1038/nature13714 Image may be NSFW.
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問い合わせ先

大学院生命理工学研究科 生体システム専攻
教授 木村 宏
Email: hkimura@bio.titech.ac.jp
TEL: 045-924-5742

東京工業大学AESセンター第7回シンポジウム 実証から実現へ 地域が拓くスマートコミュニティと日本の未来

 東京工業大学 先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)(センター長:柏木孝夫) は、大学と企業(51社)が対等の立場でスマートコミュニティの実現を目指す オープンイノベーション拠点です。これまで約5年間の活動を通じ、共同研究6件、自治体との連携5件のプロジェクト等を立ち上げました。

今後はそれらの研究が、実証実験段階から自治体を主体とした社会実装段階に進むことが期待されています。そこで、地域活性化の視点からスマート コミュニティの在り方を議論するシンポジウムを開催することといたしました。

東京工業大学AESセンター第7回シンポジウム

実証から実現へ~ 地域が拓くスマートコミュニティと日本の未来

日程・会場

日時
2014年10月3日(金) 13:20~17:30
会場
東京工業大学 大岡山キャンパス 蔵前会館1F「くらまえホール」
(東急目黒線・大井町線 大岡山駅前)

講演内容

13:20
開会挨拶
柏木孝夫東京工業大学特命教授 先進エネルギー国際研究センター長
13:30
特別講演
「日本経済を下支えする地域力の創造」
増田寛也 株式会社野村総合研究所顧問(元総務大臣)
14:10
特別講演
「スマートコミュニティ実証実験から実現へ」
上田隆之 経済産業省資源エネルギー庁長官
14:40
対談
「公共電力の実現と地域イノベーション」
柏木孝夫 東京工業大学特命教授 先進エネルギー国際研究センターセンター長
中上英俊 東京工業大学先進エネルギー国際研究センター特任教授
15:30
パネルディスカッション 
「地域エネルギーを活用した地域の自立と活性化」
[パネラー]
里見 晋  長崎県副知事
田岡 克介 石狩市長
真木 勝郎 株式会社NTTファシリティーズ理事
救仁郷 豊 東京ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
山東 理二 三菱商事株式会社 執行役員
黒川 浩助 東京工業大学先進エネルギー国際研究センター特任教授
[コーディネーター]
内野 善之 東京工業大学先進エネルギー国際研究センターセンター長補佐
17:20
総括・閉会挨拶
佐藤 勲 東京工業大学大学院教授 先進エネルギー国際研究センター副センター長
17:40
産学交流会
会場:蔵前会館 ロイヤルブルーホール 会費3,000 円

お申し込み

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実証から実現へ 地域が拓くスマートコミュニティと日本の未来

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PDF

お問い合わせ先
シンポジウムについて
東京工業大学 ソリューション研究機構 先進エネルギー国際研究センター
Tel: 03-5734-3429 Fax: 03-5734-3559
Email: aescenter@ssr.titech.ac.jp

取材申し込み
東京工業大学広報センター
Tel: 03-5734-2975 Fax: 03-5734-3661
Email: media@jim.titech.ac.jp

平成26年度9月東京工業大学学部・大学院学位記授与式を挙行

9月25日、東工大蔵前会館くらまえホールにて、平成26年度9月東京工業大学学部・大学院学位記授与式が執り行われました。

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学部・大学院学位記授与式 (東工大蔵前会館くらまえホール)

学部・大学院学位記授与式 (東工大蔵前会館くらまえホール)

この日、新しい学士が24名誕生し、修士の修了者は134名、専門職学位記を授与された修了者は11名、 博士の学位を授与された修了者は72名でした。東京工業大学では3月と9月の年2回、学位記授与式を行っており、9月の卒業生は国際大学院プログラムに所属する留学生とその家族が多数出席するため英語で執り行われています。国際色豊かでアットホームな雰囲気の中、新たな門出を祝う卒業生の笑顔溢れる式典となりました。

卒業生、修了生のみなさんのご健康と益々のご活躍を心よりお祈りいたします。

平成26年度9月東京工業大学学部・大学院学位記授与式次第

  • 開式
  • 大学歌斉唱
  • 学長式辞
  • 部局長式辞
  • 蔵前工業会理事祝辞
  • 学位記授与
  • 修了生答辞
  • 蛍の光斉唱
  • 閉式
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大学歌斉唱

大学歌斉唱

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学長式辞

学長式辞

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学位記授与

学位記授与

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修了生答辞

修了生答辞

公開時、内容に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。(9月26日13:45修正、15:00再修正)

「スーパーグローバル大学創成支援」に採択

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「スーパーグローバル大学創成支援」に採択

東京工業大学は、文部科学省による「スーパーグローバル大学創成支援(タイプA:トップ型)」に採択されました。この事業は、日本の高等教育の国際競争力の向上を目的としています。世界レベルの教育研究を行う日本のトップ大学が取り組む、海外の卓越した大学との連携や大学改革による徹底した国際化に対し、重点支援を行うものです。

採択事業の概要

構想名:「真の国際化のためのガバナンス改革によるTokyo Tech Qualityの深化と浸透」

本学の長期目標である「世界最高の理工系総合大学」の実現を目指して、既存の学科・専攻といった組織や教育体制を再編成し、国際化を推進します。そのために、大学全体としての方針・施策を迅速に実施できるよう、熱意と情熱を持った教職員が一致団結してガバナンス改革を断行する取組みです。

具体的には、「ガバナンス体制の改革」、「国際的視野での教育システムの刷新」、「国際的な研究活動の刷新」という3つの取組みを、有機的に実施します。

1. ガバナンス体制の改革

学長直属の一元的統括組織である「企画戦略本部(仮称)」と、教育研究評価にかかる情報を管理・分析・活用する組織である「IR室(仮称)」を設置し、人材、スペース、研究インフラ及び財政面でのガバナンス体制を改革します。

2. 国際的視野での教育システムの刷新

学士・修士、修士・博士を一貫した教育体系の構築、教育内容の国際的チューニング、教養教育の深化、学生の主体的学びを後押しする仕組みと教育方法の改革、達成度評価の厳格化、クォーター制の導入、 世界的特色を持つ国内外の企業や国際機関等を舞台としたPBL(Project-Based Learning 課題解決型学習)、国際的認証評価の受審等を推進します。

3. 国際的な研究活動の刷新

世界的最先端研究拠点となる研究所群を研究特区として設置し、これらの拠点での研究活動を通じた大学院学生の教育、「東工大博士研究員制度」創設による若手研究者の育成と交流を促進します。

これらの取組みを通して、国際通用性のある教育研究システムを構築し、国際的ネットワークの強化や学生と教職員の国際交流の飛躍的な活性化を図ります。そして、理工系分野における知と人材の世界的環流のハブとなることで、本学の教育研究の質と実、すなわちTokyo Tech Qualityを深化させ、世界へ浸透させることを目指しています。


NHK Eテレ サイエンスZEROに西森 秀稔教授が出演

大学院理工学研究科物性物理学専攻 西森秀稔 教授がNHK Eテレの科学番組、「サイエンスZERO」の量子コンピュータ特集にゲスト出演します。

番組名:
NHK Eテレ サイエンスZERO
タイトル:
ついに出た!? 夢の“量子コンピューター”
放送日:
2014年9月28日(日) 23:30~
(再) 2014年10月4日(土) 12:30~
番組サイト:

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大学院理工学研究科物性物理学専攻 西森秀稔 教授

大学院理工学研究科物性物理学専攻
西森秀稔 教授

エジプト日本科学技術大学(E-JUST)学長が三島学長を表敬訪問

8月6日、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)のAhmed Magdy Ibrahim El-Gohary学長が三島良直学長を表敬訪問しました。El-Gohary学長はE-JUST第2代の学長として7月に着任したばかりで、今回が初めての来学です。

E-JUSTは日本政府の協力の下に設立された大学で、東工大は設立以来、専攻幹事大学として教員の派遣を行ってきました。本年2月からは総括幹事校となり、4月には「東工大エジプトE-JUSTオフィス」を設立し、協力体制強化に努めています。

両学長の懇談は、本学名誉教授の鈴木正昭E-JUST学長アドバイザーを含む国際協力機構(JICA)の関係者、飯島淳一東工大エジプトE-JUST拠点長、市村禎二郎国際連携プランナーを交え、和やかに行われました。El-Gohary学長からは本学との協力関係の強化についての要望が示され、意見交換を行いました。

その後一行は、スーパーコンピュータTSUBAME2.5 、ものつくり教育研究支援センターや工学系の研究室(教授室、学生室、実験室)を視察し、産学連携推進本部の活動について説明を受けました。ものつくり教育研究支援センターにおいては、東工大に交換留学中のE-JUST学生と面会し、懇談を行いました。

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懇談の様子

懇談の様子

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スーパーコンピュータの説明を受けるEl-Gohary学長

スーパーコンピュータの説明を受けるEl-Gohary学長

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El-Gohary学長と三島学長

El-Gohary学長と三島学長

松岡聡教授がスーパーコンピュータの最高峰学術賞「シドニー・ファーンバック記念賞」を受賞

概要

東京工業大学 学術国際情報センター 松岡聡(まつおか さとし)教授が、2014年のIEEEコンピュータソサイエティの「シドニー・ファーンバック記念賞」[用語1] を受賞することが2014年9月に決定しました。

ファーンバック賞は1992年に創設され、「スーパーコンピュータのアプリケーションに対して傑出した貢献をもたらした画期的なアプローチ」に対して毎年与えられます。計算機科学の国際学会であるIEEEコンピュータソサイエティが毎年授与する最高レベルの研究技術賞の一つであり、スーパーコンピュータの学術賞としては世界的に最高峰のものです。情報分野全体のノーベル賞に相当するACMアラン・チューリング賞の次席の賞の一つに位置づけされます。同賞は今までスーパーコンピュータにおける高性能アプリケーションやソフトウェア分野の歴代のトップ研究者が受賞してきましたが、日本人の受賞は今回が初めてのことです。

授賞式は、2014年11月18日に米国ニューオーリンズ市にて開催されるIEEE-CSとACMが共同主催するSupercomputing(スーパコンピューティング)2014国際会議[用語2] の開会式の一部として執り行われ、更に同会議にて19日に記念招待講演が行われる予定です。

受賞理由

先進的なインフラ基盤・大規模スーパーコンピュータ・CPU/GPU型スーパーコンピュータ[用語3] のソフトウェアシステムにおける研究において目覚ましい成果を出した。

松岡教授からのコメント

東京工業大学 学術国際情報センターでの世界トップランクのスーパーコンピュータである一連のTSUBAMEシリーズの構築を含む、長年のスパコンに関する世界トップレベルの研究開発が国際的に評価されることは、大変光栄であり嬉しく思っています。この賞は多くの内外の共同研究者や各メーカーとの協業、更には種々の研究プロジェクトにおける国民の皆様のご支援なしには達成できなかったと思います。皆様のご支援、真に感謝しております。

松岡聡(まつおか さとし)

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松岡聡 教授

学術国際情報センター 松岡聡 教授

博士(理学)(東京大学、1993年)。2001年より東京工業大学 学術国際情報センター教授。専門は高性能並列システムソフトウェア(GPU/メニーコアプロセッサ・省電力・高信頼・大規模データ処理等)。JST-CREST Ultra Low Power HPC (2007-2012)、科研基盤S「10億並列・エクサスパコンの耐故障性基盤」(2011-2015)、文科省「ウルトラグリーンスパコン」(2011-2015)、JST-CREST「エクストリーム・ビッグデータ」等代表。

プロジェクトリーダを務めた2006年構築の東工大スパコンTSUBAME1は我国トップを2年間維持、更に2010年日本初の「ペタコン」のTSUBAME2.0はTop500世界4位。2013年11月にはTSUBAME3.0のプロトタイプTSUBAME-KFCにて、電力性能比のランキングGreen500において我が国のスパコンとしては初の世界一位、ビッグデータの電力性能ランキングGreen Graph 500においても世界一となり、二冠を達成。

ACM OOPSLA 2002、IEEE CCGrid 2003、ACM/IEEE Supercomputing (09論文、11コミュニティ、13プログラム)、 ACM HiPC (2011)を含む、主要国際学会のプログラム委員長職等を歴任。

情報処理学会坂井記念賞(1999年)、学術振興会賞(2006年)、 ISC賞(2008年)、ACM ゴードン・ベル賞(2011年)、文部科学大臣表彰(2012年)を含む種々の受賞。ACM&欧州ISCフェロー。

用語説明

[用語1] IEEEコンピュータソサイエティ (IEEE Computer Society) : アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会であるIEEEのテクニカルソサエティの一つとして、計算機科学の国際学会としての役割を担っており、10万人規模の会員を有する。多くの計算機科学の学術刊行物の発行、国際会議の主催、分野毎の技術委員会の運営、等を行う。

[用語2] IEEE/ACM Supercomputing(スーパコンピューティング)国際会議 : 1988年より毎年11月に米国においてIEEEコンピュータソサイエティと、もう一つの計算機科学の主要国際学会であるACM(Association For Computing Machinery - 米国に本部がある計算機械学会)が共同開催する世界最大のスーパーコンピュータ・計算科学・高性能計算分野に関する国際会議。毎年世界数十国から1万人以上が参加し、日本からも700人近くの研究者やメーカーが参加する。学会の個人業績賞としては、ファーンバック賞以外にも、計算機アーキテクチャのシーモア・クレイ賞、ソフトウェアと教育のケン・ケネディ賞、の三つが開会式にて表彰される。その他にもスパコンのアプリケーションソフトウェアに与えられるゴードン・ベル賞、主要スパコンランキングであるTop500、Green500、Graph500等も会議中に発表される。

[用語3] CPU/GPU型スーパーコンピュータ : 当初はグラフィックス用として開発され、近年では高性能並列プロセッサとしても用いられるGPU(Graphics Processing Unit)と通常のCPUを異機種結合したタイプのスーパーコンピュータである。この形式のスパコンは現在では世界一位の中国Tianhe-2や二位の米国Titanなど、多くの世界トップレベルのスーパーコンピュータで見られるが、そのパイオニアは、スパコンの世界ランキングであるTop500リストに世界で初めて2008年10月にランクインした東工大TSUBAME1.2である、とみなされている。

問い合わせ先

広報センター

TEL: 03-5734-2975 / FAX: 03-5734-3661

Email: media@jim.titech.ac.jp

宮本恭幸教授が電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞を受賞

大学院理工学研究科電子物理工学専攻の宮本恭幸教授が第17回電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞を受賞しました。

この賞は、エレクトロニクスに関する新しい発明、理論、実験、手法などの研究で、その成果の学問分野への貢献が明確であるもの、エレクトロニクスに関する新しい機器、デバイスまたは方式の開発、製造でその効果が顕著であり、数年以内に産業的業績の明確になったものに該当する業績を対象にして授与されます。

受賞理由: 低消費電力と高速動作を両立させるInP系電子デバイス構造に関する先駆的研究

近年Siに代わるMOSFET用材料として期待されているInGaAsを用いたMOSFETにおいてドレイン電圧0.5Vにおいてドレイン電流2.4A/mm、1Vにおいて3A/mmという従来の世界記録を2倍以上上回る高い電流密度を実現したことなどを評価されたものです。

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MOSFET断面図

MOSFET断面図

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宮本恭幸教授

宮本恭幸教授

今回の受賞を受けて、宮本教授は次のようにコメントしています。

「大変重要な賞をいただき、光栄に感じると同時に、今回選考に携わって頂いた関係各位、いままで研究を支えていただいて来た多くの先生方、諸先輩、学生諸氏など関係者の皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。 今回の受賞理由は、InP系化合物半導体電子デバイスについての業績を広く評価いただいたものでありますが、同時にSiに代わるMOSFET用材料として期待されているInGaAsで高い電流密度を出したことも大きな理由となっていると感じております。InGaAs MOSFETは実用化までもう少しのところでもあり、これからの 産業化においても、さらに貢献していければと思っております。」

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エレクトロニクスソサイエティ中野義昭会長(左)と宮本恭幸教授(右)

東工大、米MIT・ハーバード大などのオンライン講座コンソーシアム「edX」に参加

概要

東京工業大学(東工大 = Tokyo Tech、三島良直学長)は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)・ハーバード大学の共同設置による大規模オンライン講座「MOOC(s)」[解説1] のコンソーシアム「edX」[解説2] に参加しました。

東工大は世界トップ10のリサーチユニバーシティ(研究大学)を目指しており、このたび「スーパーグローバル大学創成支援」にも採択されました。「国際的視野での教育システムの刷新」の一環として、世界中の学習者にインターネットを通じて東工大の教育を「TokyoTechX」[解説3] として配信し、双方向の学びを提供します。加えて、東工大の学生に対しても反転授業[解説4] を導入したSPOC(Small Private Online Courses)[解説5] のコースを配信し、質の高い教育・学習環境の提供を実現します。

第1弾として、2015年秋学期に、文部科学省から世界トップレベル研究拠点プログラムとして採択されている地球生命研究所の廣瀬敬所長・教授による講義の配信を計画しております。

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TokyoTechX

画像をクリックでTokyoTechXへ

意義・狙い

東工大は卓越した専門性に加えてリーダーシップを備えた理工系人材の育成を目指して、大規模な教育改革を実施し、2016年より新しい教育システムをスタートさせます。edXへの参加は、この新しい教育環境の整備の一環として実施するもので、世界中のトップ大学が集まるedXで本学の教育を世界に発信することにより、世界中の学習者に最先端の理工系の研究を通じた学びを実現させるだけでなく、将来的には優秀な研究者を東工大に集めることが可能になります。

そして、edXを通じた世界中の学習者と東工大の学生による双方向コミュニケーションは、東工大の学生のグローバル化を促進することにつながると考えています。また、SPOCによる学内向けコンテンツの配信によって、理工系分野におけるアクティブラーニングを促進し、学生に主体的な学びと深い理解を導きます。一方で、質の高い教育を提供するための教授力の強化、また、それを支援する職員の能力向上も喫緊の課題です。edXのプラットフォームを通じて、本学の教職員向けのコンテンツ配信も検討しております。

今後の取り組み

文部科学省から世界トップレベル研究拠点プログラムとして採択され、世界中からトップクラスの研究者が集結し、地球と生命の謎の解明に取り組んでいる地球生命研究所Image may be NSFW.
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の廣瀬敬所長・教授による講義の配信を、2015年秋学期に計画しております。本年度は、廣瀬敬所長・教授による講義コンテンツ制作のほかに、2015年度春学期から在学生向けのSPOCの実施を目指し、コンテンツの制作を進めます。また、edXは新たに高校生に向けた取り組みも発表Image may be NSFW.
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しています。東工大も世界中の高校生に向けたコンテンツを開発し、講義の配信を検討していきます。

東工大のedXへの取り組みに対する三島良直学長のコメント

世界トップクラスの大学として世界中から優秀な留学生を集めるためには本学の教育の質を高めてそのコンテンツを世界に発信する必要があります。そして東工大生にとっても授業の予習・復習を効果的に行うことにより積極的な学びの姿勢を持つためのツールとしてその内容をいつでも閲覧できるシステムが必要です。現在進行中の本学の教育改革は2016年4月に本格的にスタートしますが、今回のedXへの参加が大きな役割を果たすことを期待しています。

解説

[解説1] MOOC(s) (Massive Open Online Course(s)) : インターネット上において無料提供され、誰もが受講することができる大規模な講義です。通常の講義のように学習期間が設定されており、学習者は科目提供者や同じ科目を登録している学習者とコミュニケーションを取ることができるなど、双方向の学びが提供されています。

[解説2] edX : マサチューセッツ工科大学とハーバード大学を中心に、世界のトップ大学によって構成される非営利のコンソーシアムです。edXでは、最先端の学習を世界中の誰もがどこからでも学ぶことができる環境をインターネット上で提供するだけでなく、最先端の教育学、教授法に基づいた学習環境の提供を実現しています。

[解説3] TokyoTechX : edXにおける各教育機関(大学等)は、機関名Xとして呼ばれます。本学はTokyoTechXとして、MOOCコンテンツを配信します。

[解説4] 反転授業 : インターネットやビデオなどを通じて、説明型の講義などの基本的な学習を授業前に行い、講義室では事前に学習した内容を踏まえ、個別指導やプロジェクト型学習などを行い知識の定着や応用力などを育成します。

[解説5] SPOC (Small Private Online Course) : MOOC(s)はインターネット上で誰にでも開かれていますが、SPOCは対象者や提供先などが限られている、オンラインでの講義です。主に企業や大学などの構成員に対して外部非公開の形で提供されます。

問い合わせ先

大学院理工学研究科
教授 Jeffrey Scott Cross (ジェフリー・スコット・クロス)

窓口

広報センター

TEL: 03-5734-2975 / FAX: 03-5734-3661

Email: media@jim.titech.ac.jp

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