Quantcast
Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
Viewing all 4086 articles
Browse latest View live

フィリピンオフィスによる派遣留学プログラム報告

$
0
0

9月1日~10日、グローバル理工人育成コースouterの一環としてフィリピンへの超短期の派遣留学プログラムが実施され、学部1年生から4年生までの学生計6名が参加しました。本プログラムは、東京工業大学フィリピンオフィスを活用したプログラムです。

東京工業大学フィリピンオフィスとは

東京工業大学フィリピンオフィス(Tokyo Tech Philippines Office)は2005年9月、タイに続き本学2つ目の海外オフィスとして、フィリピン共和国デ・ラ・サール大学マニラ校内に設置されました。
本学とフィリピンの学術交流の歴史は長く、これまでも様々なプロジェクトが行われてきました。フィリピンオフィスは、大学間学生交流、本学教員によるワークショップの共催、本学同窓会組織の1つであるATTARS(Association of Tokyo Tech Alumni and Research Scholars)への協力等、様々な活動に貢献してきました。

留学前準備

オリエンテーションに加え、本学に現在留学しているフィリピン出身の学生によるブリーフィングや、本学教員による安全講習を実施しました。また、派遣開始直前の8月27日には、現地訪問先について担当学生が調べたことを1人ずつ発表し、現地派遣をより有意義に行えるよう準備を進めました。

フィリピン留学プログラムの実施

スケジュール

日付
プログラム内容
9月1日
東京国際空港(羽田)発―ニノイ・アキノ国際空港(マニラ)着
9月2日
デ・ラ・サール大学カンルーバン校(Science and Technology Complex)訪問、Integrated School(幼稚園から高校まで)見学
タガイタイ・ピクニック・グローブ・コンプレックス(自然公園)見学
9月3日
デ・ラ・サール大学マニラ校訪問・講義参加
9月4日
Chiyoda Philippines事務所見学、EEI Corporation建設工事現場見学
9月5日
ワークショップ見学
デ・ラ・サール大学マニラ校見学・在学生との交流会(発表)
9月6日
マニラパシグ・マリキナ河川ODAプロジェクト工事見学
9月7日
フィリピン国立博物館訪問
イントラムロス見学
9月8日
JICAフィリピン事務所、ユニカセ(社会的企業)、Phivolcs訪問
9月9日
フィリピン大学ディリマン校訪問・講義参加
9月10日
ニノイ・アキノ国際空港(マニラ)発―東京国際空港(羽田)着

特に、JICAによる「フィリピン地震火山監視能力強化と防災情報の利活用推進プロジェクト(Phivolcs)」訪問や、日本のODAプロジェクトで洪水対策の一環でもあるパシグ・マリキナ河川改修工事の見学を通じて、フィリピンにおける防災対策のために日本が各分野で技術協力を行っていることを学びました。

デ・ラ・サール大学カンルーバン校(Science and Technology Complex)訪問の様子
デ・ラ・サール大学カンルーバン校
(Science and Technology Complex)訪問の様子

また、デ・ラ・サール大学マニラ校やフィリピン大学ディリマン校では、同じ理工系に所属する学生が、学生視点でキャンパスを案内してくれました。1日のプログラム終了後にも、学生同士で夕食を共にし、街を案内してもらう等、交流を深めることが出来ました。
本プログラムを通して、海外における生活を短い期間ながらも体験し、体調管理を含む危機管理の徹底を意識しながら過ごすことができました。参加した学生からは、長期留学への自信や、将来の職業選択の可能性を広げることにつながったとの感想が多く聞かれました。
また、「派遣中にお世話になった現地学生に会いに行き、彼らに紹介された観光地にも行ってみたい」と、新たな友人との今後の交流について意欲的に語る参加者もいました。

フィリピン大学ディリマン校の学生と フィリピン大学ディリマン校の学生と


Tokyo Tech-AYSEAS 2014 実施報告

$
0
0

9月7日~17日、本学学生16名が、短期海外派遣プログラムTokyo Tech-AYSEAS(東工大・アジア理工系学生派遣交流プログラム) 2014にて、ベトナム・ハノイを訪問しました。

Tokyo Tech-AYSEASの概要については、こちら

Tokyo Tech-AYSEAS 2014プログラム内容

ベトナムへは、JAYSES(AYSEASの前身プログラム) 2010 以来、4年ぶりの再訪となりました。今年度はハノイ工科大学が、ホスト大学として本プログラムを全面的にサポートしてくださいました。

現地では、海外協定校からの参加学生19名とともに、ベトナム企業、日本企業、大学、JICAプロジェクトを訪問しました。毎日の見学後にはグループに分かれて、見学先で得た知識や与えられたトピックについてディスカッションをし、それを基に最終日にプレゼンテーションを行いました。訪問の合間には、ハノイ市近郊見学やお互いの国の文化を紹介する文化交流会も行われ、国籍や宗教、文化を超えて学生同士の絆が深まりました。

11日間という短い期間でしたが、ベトナムの活気溢れる街並みと、同世代の海外学生との交流に刺激を受けた学生は、それぞれがかけがえのない経験と新たな課題を得て、今後の学習に対する決意も新たに日本に帰国しました。

ハノイ工科大学での開会式 ハノイ工科大学での開会式

企業訪問時の様子
企業訪問時の様子

企業訪問時の様子

最終プレゼンテーションの様子
最終プレゼンテーションの様子

最終プレゼンテーションの様子

スケジュール

日付
プログラム内容
6月~7月
事前学習
(英語による講義、現地語・現地文化学習、日産横浜工場見学、訪問先事前調査及びプレゼンテーション)
夏季休暇
参加学生による自主勉強会
9/7(日)
ベトナムへ出発、参加者との初顔合わせ
9/8(月)
ホスト大学・ハノイ工科大学にて開会式、キャンパスツアー
9/9(火)
土木工学専門国立大学
F-Ville(IT企業)
9/10(水)
デンソー
タンロン工業団地
HTMP機器株式会社
9/11(木)
Viglacera Ceramic(衛生陶器企業)
トヨタ
9/12(金)
JICAプロジェクト(天然ゴムを用いる炭素循環システムの構築プロジェクト)
9/13(土)
ハロン湾見学
9/14(日)
ハノイ市内見学
9/15(月)
文化交流会
9/16(火)
最終プレゼンテーション、閉会式
9/17(水)
日本へ向け帰国
10/20(月)
帰国報告会、懇親会

参加大学

参加学生の集合写真

ベトナム:ハノイ工科大学、ホーチミン市工科大学
インドネシア:バンドン工科大学、ガジャマダ大学、インドネシア大学
フィリピン:フィリピン大学ディリマン校

帰国報告会

帰国後の10月20日には、本プログラムの総まとめとして、帰国報告会が開催されました。ここでは、現地で行ったプレゼンテーションの内容に、全体の活動を通して学んだことを盛り込み、今回のベトナム訪問の成果を発表しました。発表後には丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)より、学生一人一人に修了証が授与されました。

  • 帰国報告会の様子
  • 成果発表
  • 修了証授与

帰国報告会の集合写真

帰国報告会に引き続き懇親会も行われ、ベトナムで共に切磋琢磨した仲間との懐かしい日々を思い返しながら、楽しいひとときを過ごしました。

懇親会の集合写真

お問い合わせ先

国際部国際事業課国際事業グループ
Email: ayseas@jim.titech.ac.jp
TEL: 03-5734-7607

RU11「日本の科学研究の未来のために ―ノーベル物理学賞受賞を祝して―」提言

$
0
0

学術研究懇談会(RU11)は、日本における最先端の研究・人材育成を担う、国立・私立という設置形態を超えたコンソーシアムです。北海道大学、東北大学、筑波大学、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の11大学で構成されています。

このたび、RU11の総長・塾長・学長は、ノーベル物理学賞受賞を祝して、日本の科学研究の未来のために提言をまとめました。

平成26年11月11日

提言:日本の科学研究の未来のために
―ノーベル物理学賞受賞を祝して―

学術研究懇談会(RU11)

北海道大学総長
山口 佳三
東北大学総長
里見  進
筑波大学学長
永田 恭介
東京大学総長
濱田 純一
早稲田大学総長
鎌田  薫
慶應義塾長
清家  篤
東京工業大学学長
三島 良直
名古屋大学総長
濵口 道成
京都大学総長
山極 壽一
大阪大学総長
平野 俊夫
九州大学総長
久保 千春

2014年度ノーベル物理学賞を赤﨑勇博士、天野浩博士、中村修二博士が受賞されること、私たち日本の研究の現場を支える学術研究懇談会(RU11)として心からお祝い申し上げます。3名の先生の卓抜な研究力とたゆまぬご努力と共に人類社会への大きな貢献が認められたものと敬意を表します。

光の3原色の赤・緑に続く青色発光ダイオード(LED)において窒化ガリウム(GaN)が最適であることを見抜き、研究をリードされた赤﨑博士と、その元で大学院生として二つの大きな技術的難関を突破された天野博士、そして革新的な手法で高輝度化、量産化を達成された中村博士が、20世紀中は難しいと言われた青色LEDを実用化まで導かれました。その結果、「インフラを持たない世界15億人を照らす」としてノーベル賞の授与が決定されたことを大変喜ばしく思います。この受賞にいたる研究の経緯、また受賞者のご発言の中には、研究推進のための三つの大きな鍵が示唆されています。

最初の点は、多くの研究者が見放したGaNの研究を継続させる支援が当時の大学では得られていたことです。基盤的経費(教官当積算校費)と科学研究費補助金(科研費)に支えられた研究により最初の重要な成果である高品質GaN結晶化が達成されました。赤﨑・天野両博士はこの成果が多くの基礎研究の中の一つから生まれたものであり、失敗に終わった試みにおいてもその結果をフィードバックして次の研究の方向が生まれる等、決して無駄ではなかったと指摘されています。そして、これまで文部科学省が広い分野で多くの研究者の様々な試みを支援して来たことが日本の大きな強みとなって来たと言う指摘も重要です。短期間に成果を求めるプロジェクト型研究ではGaNの研究も日の目を見る事はなかったかもしれないとも言われ、多様な基礎研究を幅広く支える運営費交付金や私立大学等経常費補助金および科研費を削減すると言う昨今の流れに危惧を示されています。

二つ目は、素晴らしいリーダーと突破力を持つ若い研究者が手を携えて難関を突破したことであります。高い見識から大学院生を指導し、若手研究者に方向性を示すことで自由な研究環境を与えるメンターの存在と、これに答える優秀な若手の組み合わせが存在しました。これは多くの日本のノーベル賞受賞研究に共通するものです。今回の受賞研究の中核が形作られた当時の赤﨑博士とほぼ同じ年齢となられた天野博士が、現在博士後期課程大学院生の必要性を強く指摘されていることは重要です。近年博士後期課程への進学者数が減少しており、その最大の原因は経済的負担と言われています。博士後期課程に安心して進学するために必要となる、給付型奨学金、日本学術振興会特別研究員(DC)の奨励費等やRA(リサーチアシスタント)給与はアカデミアだけでなく科学技術を求める社会全体のためにもその拡充が強く求められます。

三つ目は、科学技術振興事業団(現科学技術振興機構)が赤﨑・天野両博士の基礎的な研究成果を発掘し、実用化に向けて企業との連携を支援したことです。1989年以降に同事業団が豊田合成株式会社との共同研究を支援したことは実用化に向けて大きく寄与しました。現在、多くの大学で産学官連携の仕組みを構築しており、芽の出た成果を確実に実用化に推し進め、社会に実装していく努力を続ける所存です。また、この種の支援には国全体で比較的力が注がれておりますが、今後も重要な施策として一層の強化が求められます。

以上の様に、今回のノーベル賞への道筋を詳しく振り返ると、卓越した研究者が自らのアイディアや構想に基づいて博士課程の学生なども参画させながら安定的に研究活動に取り組む環境が不可欠だったことが分かります。今回のノーベル物理学賞受賞研究は、1970~80年代の名古屋大学を始めとする日本の大学における、このような基礎研究を持続的に支援することが大きな研究成果やイノベーションにつながるという確信とそれに対する中長期的研究投資の賜物だと言えます。現在の研究の最前線ではナノレベルから宇宙まで人間の認識範囲が質・量ともに急速に拡大し、エンドレスフロンティアである学術の新しい領域を誰が創成するかの国際競争は益々熾烈になっています。その中で優秀な研究者による独創的な研究こそが、我が国の未来を決すると言っても過言ではありません。それを育む今日の中長期的研究投資こそが将来のノーベル賞や非連続的なイノベーションにつながります。

そのためには、RU11は、科学技術・学術審議会が提言している科研費をはじめとする競争的資金改革と連携し、卓越性を追求する観点から大学としての研究力の抜本的な強化に取り組む覚悟です。2016年度にスタートする、第5期科学技術基本計画や第3期国立中期目標期間に向けて、現在予算や制度改革に関する議論が活発化しています。それらを踏まえて、各大学は機能強化の加速に着手しています。その中で、2015年度の予算編成において、ともすると短い時間で成果を求めがちな最近の風潮を再考し、真に革新的イノベーションのシーズを生み出すために以下の点に留意しなければならないと考えます。

(1)
運営費交付金・私立大学等経常費補助金等の基盤的経費や科研費の増額による質の高い多様な基盤的研究の中長期的な支援の確保
(2)
卓越した大学院の形成による大学院博士人材の育成・支援
(3)
研究開発法人等を活用した産学官連携による基礎と応用の橋渡し機能の強化

RU11ではこれまでも基礎科学支援の重要性を訴えて来ており、これらの中長期的研究投資を確実に行い、国を上げて大学の研究者から創造的・独創的な研究を引き出し、新しい社会的な価値の創出へと展開する環境を整備することが将来の日本の発展のために必要だと考えます。今回の受賞を機に文部科学省に留まらず、大学政策や学術政策、産業政策との連携強化の観点から、今一度日本の科学技術・イノベーション政策全体の見直しを政府に強く求めるものです。

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課研究企画グループ
TEL: 03-5734-3803
Email: pro.sien@jim.titech.ac.jp

簡易かつ高精度にインフラ構造物の耐力を評価 ―「幅厚比の比」というパラメータを活用―

$
0
0

概要

東京工業大学佐々木栄一准教授らは、鋼橋の腐食などの損傷による影響を、「幅厚比の比」というパラメータの導入により簡易かつ高精度に評価できることを明らかにした。佐々木准教授らはインフラ構造物のうち鋼構造物を主な対象として、その効率的維持管理手法の確立のため、点検・検査、評価、モニタリングに関する研究を行っている。その中でも重要な点検・結果に基づく評価の基礎となる構造物の残存耐力の評価方法について実験的、解析的に検討し、解明した。

研究の背景

インフラ構造物の維持管理の重要性が指摘されている。インフラ構造物の維持管理においては、今後の対象とすべきストック量などから、効率的な手法・システムの開発が不可欠となっている。これまでも点検・検査が行われているが、その結果に基づき、どの程度の耐力が残っているのかを評価し、今後の維持管理戦略を練るプロセスにおいて、耐力の評価の面で課題が残されていた。

目視などの点検・検査による評価と実際の構造物としての性能を結びつけることが重要な課題とされてきた。インフラ構造物のうち、橋梁は桁端部の損傷が多くみられ、それによる耐力の低下がどの程度であるかを明確にすることができれば大変重要な情報であると考えられる。本研究では、鋼橋を対象として、腐食などの損傷による耐力への影響を評価する方法について検討した。

研究成果

点検・検査の結果、様々な箇所での損傷が報告されるが、耐力への影響は損傷の発生箇所や範囲、レベルにより異なる。そのため、本研究では鋼橋端部を対象として、これまでの研究成果に基づき、損傷箇所を分類し、損傷レベルや範囲の大きさについて、詳細な解析と大規模再現実験により検討し、最終破壊形態を分類、それらの最終破壊形態が生じる条件などを明らかにした。その結果から、損傷位置の幅厚比と建設時(健全箇所)の幅厚比の比(幅厚比の比)をパラメータとすることで、簡易かつ高精度で、残存耐力評価することができることを示した。

これにより、どの位置にどの程度の損傷があれば、耐力はどの程度低下するのかを評価することができ、また、点検・検査においてもどの位置の計測を行えばよいかを示すことにつながる。

今後の展開

研究成果は、点検・検査からインフラ構造物の評価・診断をより定量的に扱い、今後の補修・補強計画など鋼構造物の維持管理戦略のための効率的なシステムの構築に役立てたいと考えている。また、その他の様々な損傷形式についても簡易評価方法を展開していく方針である。

実際の鋼橋端部の損傷事例

図1. 実際の鋼橋端部の損傷事例

損傷による耐力への影響評価の例

図2. 損傷による耐力への影響評価の例

論文情報

論文タイトル :
Experimental and numerical evaluation of bearing capacity of steel plate girder affected by end panel corrosion
掲載誌 :
International Journal of Steel Structures 14, 659-676 (2014)
執筆者 :
Nauman Khurram, Eiichi Sasaki, Hiroshi Katsuchi, and Hitoshi Yamada
DOI :

 

論文タイトル :
Analytical demonstrations to assess residual bearing capacities of steel plate girder ends with stiffeners damaged by corrosion
掲載誌 :
Structure and Infrastructure Engineering 10, 69-79 (2014)
執筆者 :
Nauman Khurram, Eiichi Sasaki, Hiroshi Katsuchi, and Hitoshi Yamada
DOI :

 

論文タイトル :
Finite element investigation of shear capacity of locally corroded end panel of steel plate girder
掲載誌 :
International Journal of Steel Structures 13, 623-633 (2013)
執筆者 :
Nauman Khurram, Eiichi Sasaki, Hiroshi Katsuchi, and Hitoshi Yamada
DOI :

お問い合わせ先

大学院理工学研究科 土木工学専攻
准教授 佐々木栄一
Email: sasaki.e.ab@m.titech.ac.jp
TEL: 03-5734-3099 / FAX: 03-5734-3577

単分子抵抗スイッチを開発 ―機械的な力により1分子の抵抗を3段階に制御―

$
0
0

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の藤井慎太郎助教と木口学教授、産業技術総合研究所の中村恒夫博士、物質・材料研究機構の杉安和憲博士の研究グループは、金属電極間に架橋した単分子の電気伝導度を、機械的な力で多段階かつ可逆的に制御することに成功した。

研究の背景

金属電極に架橋した単分子接合は単分子エレクトロニクス[用語1] への応用が期待されている。また、単分子接合は2つの金属―分子接合界面を有する低次元ナノ構造体であり、電極金属まで含んだ分子の新たな物質相として、孤立分子、結晶では発現しない革新的な機能の発現も期待され、現在、活発に研究が行われている。

研究成果

本研究では、電極金属と分子の接合界面の構造を機械的な力によって制御することで、電気抵抗を変化させる単分子スイッチの開発を行った。分子としては、チオフェン環[用語2] が4つ連結した被覆クオーターチオフェン分子(QT)を用いた。QT分子は、両端に電極との結合サイトとなる硫黄原子を対称的に2カ所ずつ有しているため、最大で3つの結合の仕方が可能となる。そして、中心部分を被覆することで、分子が積層してしまうことを防ぎ、接続箇所を規定している。

実験はQT分子を含む溶液中で走査型トンネル顕微鏡[用語3] を用いて、金(Au)の探針とAuの基板を接触、破断を繰り返すことで行った。基板との接触後、金属の接点が形成されるが、それを引き離すことでAuのナノギャップが形成され、分子がナノギャップ間にトラップされる。電極間距離を制御することで、架橋分子数、架橋様式を制御することが可能となる。QT溶液中でAu接合の破断過程における伝導度を測定したところ、3つの伝導度状態が観測された。それぞれの構造について、AuナノギャップのサイズおよびQT分子内の硫黄原子間の距離を定量的に評価することで、QT分子の電極への架橋位置に応じて、QT単分子接合が3つの伝導度を示すことが明らかとなった。

最後に、QT単分子接合が形成されている状態で、電極間距離を変調させ、接合の伝導度を観測した。その結果、接合の伝導度が3つの値を可逆的にスイッチする様子を観測することに成功した。

今後の展開

本研究では、機械的な力によって、電極間に架橋した単分子の電気抵抗を制御する革新的なスイッチについて報告した。このスイッチは金属と分子の接合形態を制御するという、新しい動作原理に基づく単分子素子である。本研究により、単分子接合に特徴的な物性を機能という形で具現化することが出来たので、今後、スイッチに限らず様々な機能を実社会に役にたつデバイスの形で応用することが可能になると考えられる。そのために、個々の素子の性能の向上、また特に集積化の技術開発がますます重要になっていく。

被覆クオーターチオフェン分子を用いた単分子スイッチ。金属電極間距離を変えることで、金属と分子の接合部位が変化し、3段階の伝導度変化をする。

図. 被覆クオーターチオフェン分子を用いた単分子スイッチ。金属電極間距離を変えることで、金属と分子の接合部位が変化し、3段階の伝導度変化をする。

用語説明

[用語1] 単分子エレクトロニクス : 1分子に素子機能を持たせて、電子デバイスを作る。この技術が実現すると、1素子のサイズを極限まで小さくすることが出来るので、従来の半導体デバイスと比較して桁違いの集積化、演算の高速化が可能になる。

[用語2] チオフェン : 硫黄1原子を含む5角形の環状分子。化学式はC4H4S

[用語3] 走査型トンネル顕微鏡 : 金属探針を導電性の基板上に極限まで近づけることで、流れるトンネル電流を利用した顕微鏡。探針の動きを圧電素子によって、高精度に制御することで、表面の構造を原子スケールで観測することが出来る。

論文情報

掲載誌 :
Journal of the American Chemical Society
論文名 :
Single molecular resistive switch obtained via sliding multiple anchoring points and varying effective wire length
執筆者 :
M. Kiguchi, T. Ohto, S. Fujii, K. Sugiyasu, S. Nakajima, M. Takeuchi, H. Nakamura
所属 :
東京工業大学理工学研究科、産業技術研究所、物質材料研究機構
DOI :

問い合わせ先

大学院理工学研究科 化学専攻
助教 藤井慎太郎、教授 木口学
Email: fujii.s.af@m.titech.ac.jp, kiguti@chem.titech.ac.jp
TEL: 03-5734-2071 / FAX: 03-5734-2071

西森秀稔教授 第13回日本イノベーター大賞特別賞に選出

$
0
0

西森秀稔教授(大学院理工学研究科)が、日経BP社が主催する第13回日本イノベーター大賞 特別賞を受賞しました。

日本イノベーター大賞は、「独創的なアイデアで新しい市場を切り開いた」「科学技術の分野で世界的に認められる功績をあげた」「基礎技術を画期的な商品やサービスに昇華した」など、日本独自の新しい価値を世界に発信し、日本に活気をもたらした人物に贈られる賞です。候補者は自薦の他、日経ビジネス誌の読者、編集部などの推薦によって幅広い分野から挙げられ、大賞・優秀賞・特別賞が選出されます。

西森教授は、グーグルやNASAが導入した量子コンピューター「D-Wave」の中核技術である「量子アニーリング」と呼ばれる原理を考案しました。量子アニーリングは、機械学習に関する課題や新薬開発などに応用できる「組み合わせ最適化問題」を量子力学的な効果を利用して計算する解法です。

西森教授のコメント

西森教授

量子アニーリングは、門脇正史さんをはじめとする歴代の研究室メンバーの大活躍によって考案し発展させてきた理論です。自由な研究環境を提供してくれてきた東工大に心より感謝するとともに、この分野が一般社会からも並々ならぬ注目を集めるようになってきたことを、極めて優秀な研究室の学生たちとともに喜びたいと思います。

大学発超小型人工衛星「TSUBAME」打ち上げ成功・運用開始

$
0
0

概要

東京工業大学 大学院理工学研究科 機械宇宙システム専攻の松永三郎 連携教授(JAXA連携講座、JAXA宇宙科学研究所教授)と同基礎物理学専攻の谷津陽一 助教、および東京理科大学 理工学部の木村真一 教授らの研究グループは、先進的な天体観測・地球観測技術の宇宙実証を目的とした50キログラム級超小型人工衛星「TSUBAME」を開発し、2014年11月6日、日本時間16:35にロシアのドニエプルロケットにより打ち上げました。TSUBAMEはインド洋上空にてロケットから切り離された後、同日21時過ぎに東京上空を通過しました。東京都目黒区にある東工大地上局では、開発に携わった学生たちが見守る中、衛星からのテレメトリ受信に成功し、衛星システムの正常動作が確認されました。現在、TSUBAMEは4枚の太陽電池パネルを展開し、太陽方向に向けて姿勢を安定させつつあります。今後、衛星の初期機能確認の後、本格的な姿勢制御実験・可視光地球観測・ガンマ線天文観測を順次行っていく予定です。

研究の背景と意義

ロケット技術の進歩により人工衛星の大型化が著しい現在にあって、全質量100kg未満の超小型衛星は、低コスト・短期間で開発できるという利点から、最先端技術の宇宙動作実証や、新しい宇宙ビジネスの事業展開に期待され、全世界で活発に研究開発が進められています。そのような中にあって、東工大の超小型衛星チームは2003年に打ち上げられた世界初のCubeSat衛星 CUTE-I の成功以降、超小型衛星の開発で世界を牽引してきました。このチームは民生部品を用いた安価で高性能な超小型衛星バスの技術実証とそれを用いた科学観測を目標として、これまでに3機の超小型衛星の開発・打ち上げ・運用を行ってきました。

今回の研究内容

東工大チームとして4機目となるTSUBAMEは、これまでの技術を応用してさらに本格的なミッション運用を実現するために、衛星サイズが50kgにまで大きくなりました。TSUBAMEの目指すミッションは大きく3つあり、その一つ目は衛星バス自身の高機能化を目的とした高速姿勢制御技術の軌道上実証です。この衛星には多摩川精機と協力して開発した小型・軽量ながら高トルクを発生するコントロールモーメントジャイロ(Control Moment Gyro: CMG[用語1] )が4機搭載されており、衛星としては異例の毎秒6度角の旋回を実現します。この機動性を武器として、TSUBAMEにはさらにX線・ガンマ線天体観測装置[用語2] が取り付けられており、ブラックホール[用語3] が誕生する瞬間に発生する強烈なガンマ線閃光現象の硬X線偏光観測[用語4] を行います。そして、自在な姿勢制御を駆使して、災害監視・海上の船舶航行状況監視・気象観測・植生観察などを行うための、高解像度可視観測装置が搭載されています。

TSUBAMEフライトモデルと開発メンバー
ロケットに取り付けられたTSUBAME

図1:(左)TSUBAMEフライトモデルと開発メンバー (右)ロケットに取り付けられたTSUBAME

TSUBAMEの工学ミッション
〜小型・高性能高速姿勢制御装置の宇宙動作実証〜

TSUBAME の想像図。CMG による高速姿勢制御が突発天体の観測を可能にします。 図2: TSUBAMEの想像図。CMGによる高速姿勢制御が突発天体の観測を可能にします。

宇宙において人工衛星が姿勢を変更するためには、専用の機器(アクチュエータ)が必要です。姿勢制御用アクチュエータには、円盤の回転反動を用いたリアクションホイール(RW)、推進薬を噴射するスラスタ、地磁気と電磁石の相互作用を用いた磁気トルカなどが一般に使われています。TSUBAMEは瞬時に方向転換してターゲットを観測するために、軽量な衛星構体に高トルクなCMGを搭載しているところが革新的です。一般的に姿勢制御に使われるRWと比較して、同じ質量のCMGはおよそ10倍以上の大きなトルクを発生することができます。このため、CMGは国際宇宙ステーションの様な大型宇宙構造物に搭載されてきた実績があります。一方で、トルク発生原理が複雑であるため制御が難解であり、トルクが大きすぎるために繊細な調整が難しいという欠点もあります。そのため、これまでに小型衛星に搭載された例はほとんどありませんでした。松永研では制御の難しいCMGを軽量な超小型衛星に搭載するため、民生品の高性能演算装置を搭載することで複雑な制御を可能にしています。

宇宙用の姿勢制御装置開発が困難である原因の一つとして、地上再現実験の難しさが挙げられます。このため、TSUBAMEプロジェクトでは数値シミュレーションによる設計検証を重ね、制御アルゴリズムの開発、そして実機の発生トルクや衛星構体の質量分布を考慮に入れたTSUBAME専用の姿勢シミュレータを開発し、入念に検証試験を重ねてきました。衛星の出荷前に行ったCMGによる姿勢制御の検証実験では、磁気トルカを用いた場合に数時間もかかるような大角度姿勢変更を、ほんの数十秒以内に実現できることを確認しています。TSUBAMEの姿勢系制御コンピュータには複数の制御則が実装されており、実際の宇宙環境において様々な姿勢変更実験を行う予定です。これによりCMGによる姿勢制御技術を確立し、後述の天体観測ミッションや地球観測ミッションの成功を目指します。

TSUBAMEの科学ミッション
〜高性能の新型観測装置でブラックホール誕生の瞬間を狙う〜

TSUBAMEに搭載された硬X線偏光計 図3: TSUBAMEに搭載された硬X線偏光計

太陽の数十倍以上の質量をもつ大質量星が燃え尽きるとき、超新星爆発に伴ってブラックホール[用語3] が生成されると考えられています。これまでに、ブラックホールだと考えられている天体は数多く発見されているものの、その生成メカニズムはいまだ謎に包まれています。TSUBAMEはこの「ブラックホールが誕生する瞬間」の極限の物理現象を探るために、東工大の超小型衛星 Cute-1.7+APD 2号機にて世界初の宇宙動作実証に成功したアバランシェ・フォトダイオードや、浜松ホトニクスと開発してきた高感度な宇宙用マルチアノード光電子増倍管を使った、小型ながら高性能なX線・ガンマ線検出器[用語2] を搭載しています。

TSUBAMEのメイン・ターゲットは、「ガンマ線バースト(GRB)」と呼ばれるブラックホールが誕生する瞬間に見られるガンマ線の強烈な閃光現象です。現在では、星の爆発によるエネルギーが「ジェット状に細く収束し相対論的な速度の爆風として射出されている」というモデルで説明されているのですが(図4)、

  • 爆発エネルギーがどうして特定の方向に向いて収束されているのか?
  • どうやって加速されるのか?
  • そこからどうやってガンマ線が放射されているのか

という根本的な疑問に対する答えは依然として得られていません。

ブラックホール誕生の産声だと考えられている宇宙最大級の高エネルギー現象「ガンマ線バースト」の想像図(NASA GSFCから)

図4: ブラックホール誕生の産声だと考えられている宇宙最大級の高エネルギー現象「ガンマ線バースト」の想像図(NASA GSFCから)

これらの問題を解決するのが難しい理由の一つは、対象天体が数億光年から百億光年というきわめて遠い宇宙にあるために、小さすぎて直接構造を観察することができないことです。

このガンマ線バーストの爆心に迫るために有効だと考えられているのがX線偏光観測です[用語4] 。偏光(電波の場合は偏波)とは、光子ごとの電場ベクトルの方向が一様にそろっている状態のことを意味します。実はこの偏光の「度合い」と「向き」は、放射源の磁場に密接に関連しているため、逆に天体からの放射の偏光度を測定することで天体内部の磁場の情報を知ることができるという訳です。研究グループではGRBの爆心近傍でどのような現象が起こっているのかをこの偏光測定によって解明していく予定です。

GRBの観測が難しい更なる理由は、いつ・どこで起こるのか予測ができないことと、放射継続時間がとても短いという点です。TSUBAMEには偏光計の他にGRBの検出・位置決めを行う広視野バーストモニタを搭載しています。これらの装置と高速姿勢制御装置が協調して自律的に動作することにより、継続時間の短い GRB の偏光観測を瞬時に実現します。

超低コスト小型地球監視カメラ CANAL-1

近年、地震などの大規模災害や原子力発電所の事故など、人工衛星を用いた宇宙からの災害監視の関心が高まっています。こうした宇宙からの災害監視を非常に低コストで実現することができれば、多くの衛星を連携して連続して情報を取得するなど、より詳細な状況把握が実現できると考えられます。

東京理科大学 木村研究室では、デジタルカメラや携帯電話などに使われている安価で高性能な民生部品を宇宙で活用することで、低コストで高機能な宇宙用カメラの開発を行ってきました。こうした技術はJAXAが開発した世界初の「ソーラー電力セイル技術実証機 IKAROS」などでも活用され、IKAROSの膜面展開の様子を小型分離カメラで撮影することに成功しています。なお、この小型分離カメラのスピン分離機構を含むシステム設計、開発、試験には、東京工業大学・松永研が全面的に協力・実施しました。

今回、東京工業大学の超小型大学衛星 TSUBAMEの開発に参加することで、民生技術の宇宙利用に関する技術を地球監視技術に応用すべく、超低コスト小型衛星搭載地球監視カメラ CANAL-1を開発しました。今回は光学系のサイズに制約があるものの、本実験で実証された技術をさらに長焦点の光学系と組み合わせることで、さらなる高解像度の画像取得も可能となり、さらにCMGの高速な姿勢制御と組み合わせることで、任意の観測ポイントを自在に監視することを可能にします。この様なフレキシブルな運用はこれまでに例が無く、衛星からの地球監視技術に大きな変革をもたらす第一歩といえます。

CANAL-1外観図

図5: CANAL-1外観図

打ち上げ・運用状況

TSUBAME衛星はヤスネ宇宙基地のサイロ(地下発射装置)から、ドニエプルロケットの第3段の下部に組み込まれて打上げられました。TSUBAMEは打ち上げから約15分後、インド洋上空にてロケットから分離され、現在は高度約500kmの太陽同期軌道を周回しています。

TSUBAMEにはアマチュア無線帯の送信機が搭載されており、分離直後から衛星の動作状態をモールス信号で常に送信しています。宇宙システム用には、通常、大掛かりで費用が嵩む高信頼性の専用通信設備を構築しますが、超小型衛星の分野では民生に流布するアマチュア無線機器を用いた通信設備がよく使用されています。低費用である一方、都心では妨害電波に悩まされることや通信レートを上げられないという超小型衛星の大きな弱点の一つとなっていますが、これを補う目的でTSUBAMEチームは全世界のアマチュア無線家に衛星からの電波受信を呼びかけました。これに対し、国内外を問わず多くの無線家の方々が即座に対応してくださり、打ち上げから約2時間後にドイツ上空で衛星の動作が確認されました。その後、日本時間20:50には東京付近を通過し、東工大地上局で開発チームもモールス信号によるデータ受信に成功しています。取得したデータを解析した結果、衛星は分離後直ぐに太陽電池パネルを展開し、パネルを太陽に向けてほぼ安定した姿勢を維持していると予想されます。

電源電圧も正常であり、これまでのところ順調に機能していることが確認されました。

今後の展開

今後、数週間にわたり衛星の搭載装置に順次電源を入れ、全ての装置が正常動作していることを確認します。その後、本格的な姿勢制御実験や天体観測・地球観測を行っていく予定です。また、高レート受信を行うため、JAXA宇宙研の小型衛星管制局設備の使用も予定しています。

東工大運用局にてTSUBAMEからのモールス信号に聞き入るTSUBAME 開発チーム(11/6 21:00 JST)

図6: 東工大運用局にてTSUBAMEからのモールス信号に聞き入るTSUBAME 開発チーム(11/6 21:00 JST)

このページは2014年11月7日現在の情報に基づいて構成されています。

最新の運用情報はTSUBAME運用ブログouterにてご覧いただけます。

用語説明

[用語1] コントロールモーメントジャイロ(CMG) : 高速で回転しているコマの回転軸の向きを変えることでトルク(ジャイロトルクと呼ばれる)を発生する装置。サイズに比較して高トルクを発生できることが特徴であり、複数個組み合わせて、衛星の姿勢を迅速に制御できる。

[用語2] X線・ガンマ線 : 非常にエネルギーの高い電磁波の一種。電波や我々の目に見える光も電磁波の一種であり、可視光の約1000倍以上のエネルギーを持つ電磁波をX線、さらにエネルギーの高いものをガンマ線と呼ぶ。

[用語3] ブラックホール : きわめて高密度で大質量のため、重力によって光さえも脱出できない天体。有名な候補天体として はくちょう座のX線源Cygnus-X1などが知られている。

[用語4] 偏光 : 電磁波の電場および磁場が特定の方向にのみ振動する光のこと。X線偏光観測ではこの電場ベクトルの方向と偏りを測定することにより、放射源付近の磁場の状態に制限を与えることができる。

詳細情報
本ミッションに関する詳細情報は以下のWebページで公開されております。

TSUBAMEプロジェクトouter 主に衛星バスシステム

超小型 硬X線偏光観測衛星TSUBAMEの開発outer ガンマ線センサシステム

Kimura-Lab.netouter CANAL-1

TSUBAME運用ブログouter 最新の運用情報

お問い合わせ先

衛星バスシステム

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 教授
東京工業大学 大学院理工学研究科 連携教授
松永三郎
Tel: 050-3362-4879
Email: matunaga.saburo@jaxa.jp
Tel: 03-5734-3176
Email: Matunaga.Saburo@mes.titech.ac.jp

ガンマ線センサシステム

東京工業大学 大学院理工学研究科 助教
谷津陽一
Tel: 03-5734-2388
Email: yatsu@hp.phys.titech.ac.jp

地球観測用高解像度可視光カメラシステム

東京理科大学 理工学部 教授
木村真一
Tel: 04-7122-9546
Email: skimura@rs.noda.tus.ac.jp

辻二郎栄誉教授がエルゼビア社 2014 Tetrahedron Prize を受賞

$
0
0

東京工業大学辻二郎(つじ じろう)栄誉教授が、スタンフォード大学の Barry Trost 教授と共同で、2014 Tetrahedron Prize を受賞することが発表されました。 本賞は有機・バイオ医薬品化学の分野において創造性に富んだ功績を残した研究者に授与されるものです。辻二郎栄誉教授は、有機合成化学の分野で広く利用されている「辻・トロスト反応」をはじめとする遷移金属触媒反応の開発と応用が評価されました。

授与式は2015年8月に米国化学会の秋期全国大会にて行われる予定です。

辻二郎栄誉教授のコメント

辻二郎栄誉教授

私の life-works であるパラジウムを用いる有機合成の研究成果が認められ、今回有機化学の国際賞として権威のある2014年度のテトラヘドロン賞 (2014 Tetrahedron Prize) を受賞することができ、たいへん幸いです。私は本年米寿を迎えましたが、幸い健康ですので、この受賞は引退のよき花道になります。


東工大に帝国データバンク社が共同研究講座を設置、ビッグデータ解析を用いた経営診断システムの開発を行う

$
0
0

要点

  • 東京工業大学に帝国データバンク先端データ解析共同研究講座が設置された。
  • 東京工業大学と帝国データバンクは、日本企業100万社のビッグデータを用いた中小企業の経営診断システムの開発を行う。

概要

株式会社帝国データバンクが保有する全国の企業およそ100万社の財務データや取引データなどの「ビッグデータ」を解析し、中小企業の経営改善や地域経済の活性化に役立てるシステムの開発に、東京工業大学と株式会社帝国データバンクが共同で取り組むことになりました。経済物理学の視点から帝国データバンクが保有する企業活動のビッグデータを解析し、企業の設立から業績向上・合併・倒産などのライフサイクルを記述する基礎モデルを構築、天気予報のように企業、産業の将来を予測するシミュレーションの実現を目指した共同研究講座です。

経営状態を B to B の企業間取引、資本関係、株の持ち合い、銀行との取引などの多層ネットワークを利用して解析するこの研究により、個々の企業、地域産業、日本の企業全体がもつ脆弱性をあぶり出し、危機を回避して発展するためのシナリオ抽出や数理科学に基づく企業経営計画や産業政策の立案が可能となります。科学技術基本計画[用語1] や Basel III[用語2] などに基づくリスク管理の高度化が実現できるようになります。

企業多層ネットワーク概念図

図1. 企業多層ネットワーク概念図

研究の背景と意義

2011年より、帝国データバンクと東京工業大学高安研究室との共同研究が始まり、その中で、企業活動が複雑ネットワーク上での動的なモデルとして記述できるようになってきました。すでに成果は、2014年の中小企業白書、メガバンクでの連鎖倒産シミュレーションなどで利用されています。講座開設により、複雑ネットワークの数理科学として、さらに超多変数の中から因果関係を抽出する新しい手法を構築することにより、ビジネスへの応用として、経営診断システム構築へと発展させようと考えています。

今回の研究項目

    (1)
    企業多層ネットワーク構造の時間的変化を記述するモデル構築
    (2)
    企業多層ネットワーク上のお金・もの・サービスの輸送モデル構築
    (3)
    企業多層ネットワークの時間発展シミュレーションの実施
    (4)
    企業多層ネットワークのストレステストの実施
    (5)
    企業活動の統計的特性に基づく分類手法の開発(大・中・小企業の分類、類似企業の抽出など)
    (6)
    企業多層ネットワークの基礎方程式の大規模エージェントベースモデルによる理解

今後の展開

  • 起こりうる災害時の産業への影響を推定できるようになります。
  • 地域産業の衰退を回避するためのシナリオ、頑強で持続可能な産業の発展のシナリオをシミュレーションによって確認できます。
  • 様々な環境の変化による経済活動への影響を推定できるようになります。

用語説明

[用語1] 科学技術基本計画 : 科学技術基本計画は、平成7年11月に公布・施行された科学技術基本法に基づき、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画であり、今後10年程度を見通した5年間の科学技術政策を具体化するものとして、政府が策定するものです。(文部科学省Webサイトouter より引用)

[用語2] Basel III : バーゼル合意とは、バーゼル銀行監督委員会が公表している国際的に活動する銀行の自己資本比率や流動性比率等に関する国際統一基準のことです。日本を含む多くの国における銀行規制として採用されています。バーゼルIIIは、金融危機の再発を防ぎ、国際金融システムのリスク耐性を高める観点から、国際的な金融規制の見直しに向けた検討が行われた結果、合意が成立しました。(日本銀行Webサイトouter より引用)

問い合わせ先

大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻

准教授 高安美佐子
Email: takayasu@dis.titech.ac.jp
TEL: 045-924-5640

株式会社 帝国データバンク

(東京都港区・代表取締役社長 後藤信夫)
産業調査部産業調査第1課 北村・後藤
TEL: 03-5775-3161

本学元教授等の研究費の不正使用(預け金)にかかる告訴及び逮捕について

$
0
0

国立大学法人 東京工業大学

大学院生命理工学研究科元教授等の研究費の不正使用(預け金)にかかる告訴及び逮捕について

本学は、大学院生命理工学研究科元教授等の研究費の不正使用(預け金)にかかる告訴及び逮捕につきまして、以下の資料のとおり記者会見を行いましたので、お知らせいたします。

学長コメント

本日、本学大学院生命理工学研究科元教授及び元秘書が詐欺罪の容疑で逮捕されました。

今回の元教授等に対する逮捕容疑は、本学が平成26年1月10日公表した不正行為とは異なる業者との不正行為であり、本学としては慙愧の念に堪えません。国民の皆様をはじめ関係者の皆様方に深くお詫び申し上げます。

本学は教職員一同、全学を挙げて研究費の不正使用防止に取り組んできたところですが、今回の事案を踏まえて、さらなる研究費不正の防止対策を推進し、信頼回復に努める所存です。

平成26年11月15日

国立大学法人 東京工業大学
学長 三島良直

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター
電話: 03-5734-2975 / FAX: 03-5734-3661
Email: pr@jim.titech.ac.jp

経済分析におけるモデルの識別性検定の改良

$
0
0

モデルの識別性検定は、多くの経済モデルにおいて、経済理論の正当性をテストするための重要な検定である。そのための標準的な手法として、一般化最小二乗法(GMM)という手法が使われてきた。

しかしGMMは、有限標本性質の点で問題があることが知られており、その一つとして仮説検定の実際のサイズが理論上の値と乖離してしまう場合が生じることが知られている。

東京工業大学情報理工学研究科の松下幸敏准教授とLondon School of Economicsの大津泰介教授は、モデルの識別性検定において、経験尤度法のバートレット補正に基づく新しい検定方法を開発した。

経験尤度法は、仮説検定のサイズの歪みの問題を扱うために有力な方法であり、松下准教授らはエッジワース展開という手法を用いることにより、補正によって検定のサイズの歪みを大幅に改善することが可能であることを示した。

モデルの識別性検定は経済理論の正当性をテストするために頻繁に利用される検定であり、この研究成果は経済実証分析の信頼性を高める上で重要な貢献となった。

各検定(サイズ5%)の棄却確率とサンプルサイズの関係

図. 各検定(サイズ5%)の棄却確率とサンプルサイズの関係

論文情報

論文タイトル :
Second-order refinement of empirical likelihood for testing overidentifying
掲載誌 :
Econometric Theory 29, 2013, 324-353
執筆者 :
松下幸敏、大津泰介
DOI :

お問い合わせ先

大学院情報理工学研究科 情報環境学専攻
准教授 松下幸敏
Email: matsushita.y.ab@m.titech.ac.jp

ゲノムによって解き明かされた巨大硫黄酸化細菌の生理生態

$
0
0

ポイント

  • 淡水湖沼に生息する硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌の完全長ゲノム配列を、メタゲノム解析により決定。
  • ゲノムから推定された機能が実際の生息環境で発揮されていることをタンパク質の解析で確認。
  • 環境に大きく影響する硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌の生態解明に向けた重要な手掛かりを提供。

概要

細胞内に硝酸イオンを蓄積する能力を持つ一群の硫黄酸化細菌は、バクテリアとしては非常に大きな体サイズを持ち、水界における炭素・窒素・硫黄・リンの循環に重大な影響を及ぼしていると考えられています。硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌は純粋培養が得られておらず、その生理学的特性は部分的にしか明らかになっていませんでした。本研究では、硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌の一種であるThioploca ingrica(チオプローカ)を対象とした解析を行い、このグループの細菌として初めての完全ゲノム配列を得ることに成功しました。さらに、タンパク質を網羅的に解析することにより、遺伝子の解析から示唆された重要な機能のいくつかが、実際に湖沼の堆積物中で発揮されていることを確認しました。

なお、本研究は文部科学省科学研究費新学術領域研究「ゲノム支援」(代表:小原雄治)により、宮崎大学の林哲也教授、東京工業大学の黒川顕教授らとの共同研究として実施しました。

背景

細胞内に硝酸イオンを蓄積する能力を持つ一群の硫黄酸化細菌は,バクテリアとしては非常に大きな体サイズを持ち,水界における炭素・窒素・硫黄・リンの循環に重大な影響を及ぼしていると考えられています。特定の微生物の性質を詳しく調べるためには、目的外の微生物が存在しない状態で培養すること(純粋培養)が必要となりますが、これらの硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌は純粋培養が得られておらず、その生理学的特性は部分的にしか明らかになっていませんでした。これらの中で唯一、淡水環境で安定した個体群を維持している種が、Thioploca ingrica(チオプローカ)です。チオプローカの生息は、琵琶湖などの限られた湖沼の堆積物中で確認されています。培養できない微生物の機能を探る手段としては、その生物が持つ全ての遺伝子を網羅的に検出、解析することが考えられます。

ある機能に関わる遺伝子を持つことは、潜在的にその機能を持つことを示唆しますが、実際に機能が発揮されるためには遺伝子の情報を基にタンパク質が合成されている必要があります。

研究手法

従来知見が欠けていた、淡水に生息する硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌の生理学的特性を明らかにするため、北海道千歳市に位置するオコタンペ湖で試料の採取を行いました。底泥堆積物から集めたチオプローカの試料を濾過滅菌した湖水で繰り返し洗浄することによって、他の微生物をできるだけ取り除いた上でDNAを抽出しました。このDNAを対象に、複数種の生物が混在した状態でのゲノム解析(メタゲノム解析)を行うことでチオプローカの全ゲノム塩基配列を決定しました。さらに、洗浄したチオプローカの試料からタンパク質を抽出した上で網羅的な解析を行い、ゲノム上の遺伝子が実際にタンパク質として発現しているかどうかを確認しました。

研究成果

洗浄したチオプローカ試料のメタゲノム解析により、このグループの細菌として初めての完全なゲノム配列を得ることに成功しました。これにより、チオプローカが持つ全ての遺伝子の配列が得られ、また近縁種で存在が示されていたいくつかの遺伝子をチオプローカが保持していないことが確認されました。存在の確認された遺伝子を解析することにより、生育に必要なエネルギーや細胞を構成するための材料(炭素・窒素・リン等)をどのようにして獲得しているのかを推定することができました。さらに、タンパク質の網羅的な解析により、遺伝子の解析から示唆された重要な機能のいくつかが、実際に湖沼の堆積物中で発揮されていることが確認されました。

今後への期待

今回確認されたチオプローカの着目すべき機能のひとつとして、硝酸イオンから窒素ガスへの還元(脱窒)が挙げられます。脱窒は、富栄養化の原因である窒素化合物を水界から除去する重要な機能です。チオプローカが実際に湖沼からの窒素除去にどの程度寄与しているかを解明することが、今後の課題として挙げられます。硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌は海洋において窒素をはじめとする諸元素の循環に大きく影響していることが知られています。その特殊な形態や硝酸イオン蓄積能力などからも注目されていますが、これらの特性がどのようにして生じているのかは、未だ解明されていません。硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌全体の生態や生理学的な特性を探る上でも,本研究で得られた成果が重要な手掛かりを提供するものと期待されます。

本研究を実施したオコタンペ湖の様子。一般の立ち入りは禁止されており、調査は環境省並びに森林管理署の許可を得て行っている。

  • 図1.
    本研究を実施したオコタンペ湖の様子。一般の立ち入りは禁止されており、調査は環境省並びに森林管理署の許可を得て行っている。
  • オコタンペ湖の底泥の拡大写真。矢印で示した白い糸状のものがチオプローカ。

    図2. オコタンペ湖の底泥の拡大写真。矢印で示した白い糸状のものがチオプローカ。

    チオプローカの顕微鏡写真。チオプローカの細胞は、単体硫黄(S0)の顆粒を内包しており、これが連なって糸状体と呼ばれる構造が形成される(上段)。さらに、数本から数十本の糸状体が束になり、その外側をシース(鞘)と呼ばれる構造が覆う形で生育している(下段)。 シースは長さ数cmに達し,肉眼でも十分に捉えることができる。

  • 図3.
    チオプローカの顕微鏡写真。チオプローカの細胞は、単体硫黄(S0)の顆粒を内包しており、これが連なって糸状体と呼ばれる構造が形成される(上段)。さらに、数本から数十本の糸状体が束になり、その外側をシース(鞘)と呼ばれる構造が覆う形で生育している(下段)。 シースは長さ数cmに達し,肉眼でも十分に捉えることができる。
  • 論文情報

    掲載誌 :
    The ISME Journal
    論文タイトル :
    Ecophysiology of Thioploca ingrica as revealed by the complete genome sequence supplemented with proteomic evidence
    (完全ゲノム配列と網羅的タンパク質解析によって明かされた Thioploca ingrica の生理生態)
    著者 :
    小島久弥1、小椋義俊2、山本希3、富樫智章3、森宙史3、渡邉友浩1、根本富美子1、黒川顕3、林哲也2、福井学1
    所属 :
    1: 北海道大学、2: 宮崎大学、3: 東京工業大学
    DOI :
    公表日 :
    2014年10月24日(金)オンライン公開

    問い合わせ先

    東京工業大学 地球生命研究所
    教授 黒川 顕(くろかわ けん)
    TEL:045-924-5139 / FAX:045-924-5139
    Email:ken@bio.titech.ac.jp

    「核時代を生きた科学者 西脇安」展 開催報告

    $
    0
    0

    東京工業大学博物館と原子炉工学研究所及び大学院社会理工学研究科の共催で、特別企画展「核時代を生きた科学者 西脇安」を開催しました。10月11日から3週間にわたって開催され、10月31日に盛況のうちに終了しました。工大祭に合わせて展示を始めましたので、一般の方々にも多く見ていただくことができました。入場者数は、特に東京新聞(10月23日夕刊)で紹介された後に増え、延べ約670名でした。

    会場の様子
    会場の様子

    東京工業大学原子炉工学研究所勤務時代の西脇名誉教授
    東京工業大学原子炉工学研究所勤務時代の西脇名誉教授

    日本の放射線生物物理学の草分けの一人である西脇安(にしわき・やすし 1917年~2011年、東工大名誉教授)。その生涯を通じて彼は、放射線被ばくと原子力の問題に向き合ってきました。核時代の黎明期に日本陸軍の原爆開発に参加し、ビキニ核実験時には「汚い水爆」の解明につながった「死の灰」の調査とその海外への発信、さらに国内外の原子力政策に関与し、福島原発事故の報道の中で他界しました。本企画展では西脇の足跡を辿り、核時代を生きた一科学者が、どのように信念を貫き、社会と関わったかを考えました。

    原水爆禁止運動を主導した英国の核物理学者ロート ブラット(Joseph Rotblat)は、パグウォッシュ会議とともにノーベル平和賞(1995)を受けましたが、そのきっかけを作ったのが西脇名誉教授だったことはあまり知られていません。そこで、英国BBCアーカイブズやケンブリッジ大学チャーチルアーカイブズ、さらには米国ラスベガスの核実験博物館で最近発見された西脇名誉教授の手紙や原稿などの展示を通して、その業績に光を当てました。

    また、米国が太平洋のビキニ環礁で初めての水爆実験を行い、近海で操業していた日本のマグロはえ縄漁船(第五福竜丸など)が被災し、死者まで出したビキニ事件から60年が経過しました。人々の記憶も次第に薄れつつありますが、東京都立第五福竜丸展示館の好意で、第五福竜丸の模型や当時の「死の灰」の現物等を借用して展示することができ、インパクトのある内容になりました。

    第五福竜丸の放射能を実際に測定し、その強さに驚いた西脇名誉教授は、4ヶ月かけてヨーロッパ各国を回り、悲惨さを訴えました。さらに、核の専門家との議論を通して、ビキニの核実験は従来の単純な原爆ではなく、驚異的な破壊力に加え強い放射能を撒き散らす新型の水爆であること、そしてそれが人類の存続を脅かすものであることを世界に知らしめるきっかけを作ったのです。

    なお、展示は3部構成になっていましたが、専門的な内容については、それぞれ以下の科学史家の方々に担当いただきました。

    1.
    西脇安とビキニ事件(中尾麻伊香 慶應義塾大学特別研究員)
    2.
    ビキニ事件をヨーロッパへ伝える(山崎正勝 東京工業大学名誉教授)
    3.
    原子力と西脇安(樋口敏広 京都大学白眉センター助教、栗原岳史 東京工業大学大学院社会理工学研究科研究員)

    感謝の会

    感謝状の贈呈
    感謝状の贈呈

    会期中の10月14日午後、西脇名誉教授の資料を寄贈いただいた奥様の栄様に、大谷清館長より感謝状を贈呈しました。ご親族の方々もお見えになり、若き日の西脇名誉教授の様子をうかがうことができ、偲ぶ会のひとコマのような場面もありました。

    記念シンポジウム

    回顧のみではなく将来を展望するために、10月24日午後、大学院社会理工学研究科価値システム専攻 池上雅子教授をオーガナイザーとして、記念シンポジウム「ポストフクシマの原子力・核不拡散と科学技術」を開催しました。会場は、百年記念館3階フェライト記念会議室でした。

    記念シンポジウムの様子。左から、山崎名誉教授、池上教授、井頭教授
    記念シンポジウムの様子。左から、山崎名誉教授、池上教授、井頭教授

    3名のパネリストが登壇し、まず、山崎正勝 東京工業大学名誉教授が、「核時代を生きた科学者 西脇安」と題し、西脇名誉教授の生涯や業績と、山崎名誉教授がリーダーになって進めている「西脇プロジェクト」の概要を紹介しました。

    次に、井頭政之 原子炉工学研究所教授は、「東工大・原子炉研の最先端研究」と題し、日本の原子力開発の歴史と西脇名誉教授の立場を概観した後に、本学の原子炉研における最先端研究を紹介しました。具体的には、核廃棄物の核変換処理技術の開発や、福島原発事故廃棄物の処理などに言及しました。

    最後に、池上雅子 大学院社会理工学研究科価値システム専攻教授は、「西脇安と核問題」と題し、時代状況を概観した上で、西脇名誉教授は現代が必要としている思慮深い現実主義的専門家だったと分析しました。永井陽之助 東京工業大学名誉教授と並ぶ、稀有なリアリストで、日本版ケネス・ウォルツ(国際政治学者、カリフォルニア大学バークレー校名誉教授)とみなせるのではないかとのことでした。

    講演に続いて、参加者にも加わってもらい議論を深めました。

    特別企画展「核時代を生きた科学者 西脇安」のパンフレットは、百年記念館2階 博物館事務室で現在も配布中です。

    お問い合わせ先

    東京工業大学博物館
    Email: centshiryou@jim.titec.ac.jp
    TEL: 03-5734-3340

    Startup Weekend Tokyo Tech レポート

    $
    0
    0

    11月1日~3日にかけて、東京工業大学を会場にStartup Weekend Tokyo Tech (SWTT) が開催されました。Startup Weekendouterとは、週末の54時間でアイデアピッチ(1分プレゼン)、チームビルディング、プロダクト開発、顧客開発、ビジネスプラン立案までを行うイベントです。最終日には、業界を代表する審査員が優劣を決めます。110ヶ国を超える世界中で開催され、実際に多くの起業家がこのイベントから生まれています。

    今回、東工大で開催されたのは、日本初の"Tech"に焦点をあてたSWで、80名が参加しました。科学技術に関連したビジネスを扱うということで、東工大からも浸透圧発電技術や、CO2発生体、力覚デバイス、紫外線の累積時間で色が変わる塗料など、最新の科学技術を提供しました。

    アイデアピッチ
    アイデアピッチ

    初日、11月1日は軽食付きのミニパーティーからスタートです。空気がほぐれウォーミングアップが終わったところで、1分間のアイデアピッチ。約45人の参加者が事前に考えてきたビジネスアイデアをプレゼンしました。プレゼン後はお互いに情報収集しながら「一緒にやってみたい!」と思うアイデアに投票をしながらチームメンバーを集め、最終的に13チームが結成されました。

    2日目開始
    2日目開始

    2日目、南4号館に会場を移して9:00スタートです。会場となった教室には数々の文具や工作道具が用意されています。3DプリンターやKinectも設置されていました。まずは今回のイベント・ファシリテーターDong Yol Lee氏によるプレゼンです。Lee氏の軽妙な進行でSWが目指すもの、審査基準、MVP(Minimum viable product:ビジネスの最小単位)とは何かについて説明が行われたら、さっそく作業開始。それぞれのチームに分かれて、自分たちがターゲットにしている顧客、どんな価値を提供するのか、どうやって実現するのか、熱い議論がかわされました。

    SWでは「試してみる」ことも重要視しています。MVPという最小の価値を提供できるものを作り、実際に試してみる。2日目はさっそくMVPを製作して自由が丘までリサーチに行ったチームや、Webを使ってアンケートを実施するチームも多くありました。3Dプリンターも大いに活用されていました。

    コーチの指導 コーチの指導
    3Dプリンター活用 3Dプリンター活用

    そして3日目。さすがに疲れが顔に出ているメンバーもいましたが、朝食でしっかり目を覚まして顧客検証の続きを行います。

    最終プレゼンは17:00から。ずらりと並んだ4人の審査員と、80名の参加者、そしてオブザーバーを前にプレゼン開始です。各チーム、緊張しながらも堂々と自分たちのアイデアをプレゼンします。中には、女性靴の辛さを体感するために朝からハイヒールを履いて過ごした男性がいたり、スポーツに入り込んで楽しめるサービスを実演したり、ウェアラブルガジェット(身につけられる端末)の紹介もありました。発表テーマが初日のアイデアピッチから変わったチームも多く、いかにこの2日間で様々な試行と議論が重ねられたのかが伺えます。中には、会場中が大爆笑になるようなビジネスアイデアもあり、非常に盛り上がった最終プレゼンとなりました。

    起業をリアルに体験するのがSWですから、質疑応答では審査員から鋭い質問が飛び、緊張した空気が流れる場面もありました。しかし、審査員からは、これからのビジネスの参考になる情報も惜しみなく提供され、起業という面のみならず、今後に向けて大いに参考になったのではないでしょうか。

    最終プレゼン 最終プレゼン
    最終プレゼン 最終プレゼン

    さて、緊張のプレゼンが終われば、優勝発表と打ち上げパーティーです。第1回目のSWTTの優勝は、生体情報を活用した企業向けの社員福利厚生サービスです。すでに1社目の顧客もほぼ内定しているとのことで、今後の展開が非常に楽しみです。

    表彰に引き続き、東工大 丸山理事・副学長の乾杯で始まった打ち上げパーティーは、緊張が解けてホッとした参加者や、自分たちのプレゼンのフィードバックを審査員にもらう参加者、次に集まる相談をするチームの姿が見られました。今回の体験が参加者にとってとても大きなものだったことが、熱気と興奮となって伝わってきました。

    最後に、Lee氏からSWはこれからも続くということ、この体験からの学びを次回に繋げて欲しいという話があり、みんなで記念写真を撮影して、この週末の熱い54時間は幕を閉じたのでした。

    優勝チーム 優勝チーム
    全員で記念撮影 全員で記念撮影

    次回のStartup Weekend Tokyo Techは半年後の開催を予定しています。東京工業大学CBEC(チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラム)では、引き続きSWTTを後援していきますので、興味を持った方は、ぜひご参加ください。

    お問い合わせ先

    チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラム事務局
    Email: query@cbec.titech.ac.jp
    TEL: 03-5734-3475

    「第22回大岡山蔵前ゼミ 社会資本について」開催報告

    $
    0
    0

    大岡山蔵前ゼミは、東工大の全学同窓会である蔵前工業会の東京支部が主催する、卒業生と学生の交流の場です。日本社会や経済をリードしている先輩を講師に迎え、これから社会に出る大学生・大学院生に、講演会・懇親会をとおして、様々な情報提供、意見交換を行っています。

    10月31日、東工大蔵前会館 くらまえホールにて、第22回大岡山蔵前ゼミが開催されました。今回は「社会資本について」と題して、元国土交通省事務次官 佐藤直良氏(本学卒業生)よりお話を伺いました。学生約145名、社会人55名が参加しました。

    講演会の様子
    講演会の様子

    講師 佐藤直良氏

    講師 佐藤直良氏

    佐藤氏は高3になって理系への進学を志し、東工大に入学しました。そして、現象を見て物事を考えることを学びました。国土交通省に拘わらず、社会のあらゆる場面でこの姿勢が重要である、と実感されたそうです。そのため、佐藤氏の講演では、様々な具体的データにより、実際に社会で起きている災害などの例が示されました。

    内容は、社会インフラ(社会生活を支えるために整備された公共的な仕組み、基盤)の整備の重要性を訴えるものでした。日頃我々が安全に生活できている空間が、如何に社会インフラによって守られているかが良くわかりました。さらに、イギリスのキャメロン首相による「われわれの社会資本が二流になれば、われわれの国も二流になる」との言葉を引用しつつ、インフラを長年かけて蓄積し、整備する事の重要性を指摘していました。

    最後は、「2位でなく1位を目指してもらいたい」と、現役学生に対する熱いメッセージをいただきました。講演の後は積極的な質疑がなされ、学生にとっても大変興味深いお話であった事が伺われました。

    講演会に引き続き、学生と先輩方の懇親会がロイアルブルーホールにて開催され、活発な交流が行われました。

    質疑応答

    質疑応答

    懇親会

    懇親会

    お問い合わせ先

    一般社団法人 蔵前工業会 東京支部事務局
    Email: kuramae-tokyo@deluxe.ocn.ne.jp
    TEL: 03-3748-4447 FAX: 03-3748-4448


    分子のカゴで毒を薬に ―癌の簡便な治療薬の開発につながる成果―

    $
    0
    0

    要点

    • ナノサイズの分子カゴによりガス分子の細胞内輸送に成功
    • 分子カゴに封じ込め無毒化した一酸化炭素により、癌の原因物質の活性制御に成功
    • 難しい医薬品製造を必要としない簡便な治療薬開発への応用に期待

    概要

    東京工業大学の大学院生命理工学研究科 上野隆史教授と藤田健太大学院生らは、細胞内に送り込んだ一酸化炭素(CO)をゆっくりと放出させ、癌(がん)の原因となる転写因子たんぱく質の活性を制御することに成功した。直径12ナノメートル(nm)のフェリチン[用語1] と呼ばれるカゴ状たんぱく質に、毒性の強いCO分子を閉じ込めるシステムの開発によって実現した。不明な点が多いCO分子の生体内での機能解明ばかりでなく、複雑で難しい医薬品製造を必要としない簡便な治療薬の開発につながると期待される。

    上野教授らは、生体中で鉄を貯蔵するカゴ状たんぱく質であるフェリチンに着目し、12nmのカゴの内部に、金属と結合したCOを閉じ込め、細胞内に送り込んだ後に、ゆっくりとCOを放出するシステムを開発した。その結果、従来の化合物に比べ、効率よくCOを細胞内で作用させることができ、癌の原因となる転写因子たんぱく質の制御に成功した。

    今回の成果は、内閣府の最先端・次世代研究開発支援プログラムの支援によるもので、化学分野において最も権威のある学術誌の一つである「Journal of the American Chemical Society(米国化学会誌)」のオンライン版で11月19日に公開される予定。

    研究背景

    ガス分子である一酸化炭素(CO)は体内の多くのたんぱく質と強く結合し、身体に悪い影響を及ぼすことが古くから知られている。同時に、近年ではCOとたんぱく質の結合は炎症や癌化を抑制する働きを持つことが明らかになり、次世代の医薬品として注目されている。そのため、生体内のCO分子濃度や、その分布を制御する研究が盛んにおこなわれているが、微量のCO分子を生体環境へ安定に供給するシステムはいまだに確立されていなかった。その理由は、COを輸送するには金属にCOを結合させた化合物が必要であり、その毒性と不安定性の克服法がなかったことに原因があった。

    研究の経緯(研究内容)

    上野教授らは、CO輸送化合物として使われている、ルテニウムカルボニル錯体[用語2] に着目し(図1a)、カゴ状たんぱく質フェリチンの内部へ集積することを試みた(図1b)。

    ルテニウムカルボニル錯体の化学構造(a)及びフェリチンのX線結晶構造(b)。

    図1. ルテニウムカルボニル錯体の化学構造(a)及びフェリチンのX線結晶構造(b)。

    フェリチンの内部に結合しているルテニウムカルボニルの様子はX線結晶構造解析によって明らかにした。さらに、生きたヒト胎児腎臓細胞(HEK293細胞)へ複合体を導入し、COを放出させることによって、従来のルテニウムカルボニル錯体と比較して、癌の増殖に関与する核転写因子NF-κB[用語3] をより効率的に活性化させることに成功した。

    1. 複合体の合成及びルテニウム結合部位の構造解析

    水溶液中でルテニウムカルボニル錯体分子とフェリチンを混和させることでCO放出フェリチン複合体1を合成した。X線結晶構造解析により、ルテニウムカルボニル錯体は、フェリチン内のGlu45とCys48[用語4] へ結合していることが分かった(図2)。このルテニウムが結合しているフェリチン内のアミノ酸残基を遺伝子工学的に改変することによって、さらにルテニウムカルボニル錯体の結合数を増加させた、複合体2を合成することにも成功した。

    CO放出フェリチン複合体1及び2のX線結晶構造及びそのルテニウムカルボニル結合部位の拡大図。(青:窒素元素、黄色:硫黄元素、赤:酸素元素、深緑色:ルテニウム元素)

    図2. CO放出フェリチン複合体1及び2のX線結晶構造及びそのルテニウムカルボニル結合部位の拡大図。
    (青:窒素元素、黄色:硫黄元素、赤:酸素元素、深緑色:ルテニウム元素)

    2. 複合体のCO放出挙動

    試験管内のCO放出実験からは、合成した複合体はルテニウムカルボニル錯体のみに比べ、18倍ゆっくりとCOを放出することが分かった。これは、CO放出の反応点がフェリチンの分子カゴに保護されているためだと考えられる。また、より多くのルテニウムカルボニル錯体を結合できる複合体2では、もとの複合体に比べて、COの放出量が2倍になっていることも分かった。

    3. ヒト生細胞内でのはたらき

    複合体をHEK293細胞へ導入し、NF-κBの活性化を評価した。従来のCO放出ルテニウムカルボニル錯体よりもCO放出フェリチン複合体は2.5倍、CO放出量の多い複合体ではさらにNF-κBの活性を4倍活性化する効果があることが分かった。

    これらの成果から、(1)CO放出速度を遅くすること、(2)より多くのCOを送り込むことが、NF-κBの効率的な活性化に重要な点であるということを新たに見出した。

    CO放出フェリチン複合体のHEK細胞への導入及びCO放出、NF-kBへの作用のイメージ図。

    図3. CO放出フェリチン複合体のHEK細胞への導入及びCO放出、NF-κBへの作用のイメージ図。

    今後の展開

    本研究で開発したカゴ状たんぱく質を用いた一酸化炭素の細胞内輸送法は、化学、生物学、医学など多方面において注目されているガス状分子による生理活性機能の調節に対して新たな潮流を生み出すばかりではなく、医薬品開発に従来と全く異なる概念を提供する可能性を有している。具体的には(1)いまだに不明な点が多い、COの細胞内の機能解明、(2)たんぱく質工学を利用した新しい薬物輸送法の確立、(3)癌などの重篤疾患を標的とした医薬品開発への貢献―により、ガス分子によるテーラーメイド型医療の実現につながると期待される。

    用語説明

    [用語1] フェリチン : フェリチンは24個の単量体から構成される外径12nmのカゴ状のたんぱく質であり、分子量は約480万である。生理学的な機能としては細胞内の鉄の貯蔵の機能が知られており、直径8nmの内部空間で数千もの鉄イオンをFeIIからFeIIIへ酸化し、酸化鉄ミネラルの状態で集めることができる。また、鉄以外の金属イオンや有機小分子もその内部空間に集積できることがわかっている。

    [用語2] ルテニウムカルボニル錯体 : 一酸化炭素を配位子にもつ遷移金属錯体の一種。CO放出分子としての利用のほかに、化学工業的に触媒としても利用されている。

    [用語3] 核転写因子NF-κB(エヌエフカッパービー) : 転写因子の一種。アメリカのボルティモア教授(1975年ノーベル生理学医学賞受賞)らのグループによって発見された。細胞外からの刺激に応じて癌細胞内のNF-κBが活性化され、細胞機能維持のための種々のたんぱく質がつくられることにより癌細胞の増殖や転移が制御される。つまりNF-κBの活性制御機構の解明が、癌治療への有用な知見を与える。さらに近年ではNF-κBが活性化されることでのみつくられるたんぱく質の機能の重要性も注目されている。

    論文情報

    掲載誌 :
    Journal of the American Chemical Society
    論文タイトル :
    Intracellular CO Release from Composite of Ferritin and Ruthenium Carbonyl Complexes
    著者 :
    Kenta Fujita, Yuya Tanaka, Takeya Sho, Shuichi Ozeki, Satoshi Abe, Tatsuo Hikage, Takahiro Kuchimaru, Shinae Kizaka-Kondoh and Takafumi Ueno
    DOI :

    問い合わせ先

    大学院生命理工学研究科 生体分子機能工学専攻
    教授 上野隆史
    Email: tueno@bio.titech.ac.jp
    TEL: 045-924-5844 / FAX: 045-924-5806

    「生きるって動くこと! ―植物のミクロな動きを顕微鏡で観察しよう―」開催報告

    $
    0
    0

    工大祭開催中の10月12日、小学生を対象に、植物を材料に植物細胞のミクロな世界を顕微鏡で観察する科学教室を開催しました。

    「生きるって動くこと! ―植物のミクロな動きを顕微鏡で観察しよう―」と題したこのイベントは、東工大基金を活用した日本再生プロジェクト「ものつくり人材のすそ野拡大支援」事業の支援を受けて実施しました。当日は大学院生命理工学研究科 基礎生物分野のスタッフが担当しました。

    濱口幸久名誉教授による始めの説明
    濱口幸久名誉教授による説明

    植物の模式図

    植物の模式図

    植物も動物も生き物です。生き物はたくさんの細胞が集まって組織を作り、その組織が組み合わさって器官となり、器官の集合が体を作っています。動物は動くことによって生きていることが実感できますが、多くの場合植物は目で捉えられるほどの運動をしないので、生きていることを感じることが乏しいかもしれません。しかし、植物細胞も動物細胞と同様に生きるためにさまざまな動きをしています。今回のイベントでは、このことを小学生の皆さんに理解してもらうため、オオカナダモ、ブライダルベール、ツユクサ、ベゴニアを材料にして植物の根、茎、葉、花のミクロな世界を観察しました。

    • ブライダルベールの根端の細胞分裂
      ブライダルベールの根端の細胞分裂
    • オオカナダモの原形質分離
      オオカナダモの葉の原形質分離
    • オオカナダモの原形質流動
      オオカナダモの葉の原形質流動

    当日は近隣の小学生だけでなく、近県からも保護者を含め30名以上が参加しました。顕微鏡を初めて触る参加者も見受けられましたが、まず、研究室のOB、大学院生の指導のもと、親子が協力してハサミやピンセット、カミソリなどを使ってプレパラート標本を作製しました。そして、根端の細胞分裂、茎の水の通り道、葉の細胞内の原形質流動や分離、気孔、花の花粉管の伸長などの植物細胞の動きを、顕微鏡で観察しました。

    参加した小学生達は茎の中のらせん状の構造に驚いたり、葉の細胞内の葉緑体の動きに感動したり、花粉管の伸長にも深い興味を示し、次は○○を観たい、とリクエストも受けました。今回の科学教室の開催によって、小学生達は植物のミクロな世界を観察することで、生き物の不思議を体感できたようです。

    オオカナダモからの標本作製

    プレパラート標本作製

    スタッフの指導を受けて親子で顕微鏡観察

    スタッフの指導を受けて親子で顕微鏡観察

    東工大基金

    このイベントは東工大基金によりサポートされています。

    東工大への寄附 > 東京工業大学基金

    お問い合わせ先

    生命理工学研究科 基礎生物分野
    Email: shokubutsu@kisoseibutsu.bio.titech.ac.jp
    TEL: 03-5734-2700

    ハラル推奨メニュー試食会開催 うどん・そばの提供開始

    $
    0
    0

    東工大生協では2010年から大岡山キャンパスで、2011年からすずかけ台キャンパスでハラル推奨メニューを提供しています。
    食事に関する制約の多いムスリム留学生にも学生食堂での食事を楽しんでもらいたいという東工大生協の想いのもとスタートしたこの取り組み。5年目となる今年も積極的に学生の声を取り入れています。

    10月22日(水)に大岡山生協第1食堂、11月6日(木)にすずかけ台学生食堂で新しいハラル推奨メニュー試食会が開催され、それぞれ20名前後のムスリム留学生が参加しました。
    今回はかねてより多くの要望があった「うどん」と「そば」の試食会です。アルコールを含む「醤油・酒・みりん」といった日本の一般的な調味料を使用することが出来ないため、日本人が食べても美味しいつゆを作ることは大きな課題でした。しかし、ムスリム学生からの強い要望、そして、東工大生協の「日本を代表するメニューを楽しんでもらいたい」という強い思いが実を結び、このたびハラル推奨の「つゆ」が誕生しました。

    試食会では「牛肉うどん・そば」、「鶏の揚げ煮うどん・そば」が提供され、甘辛い味付けの牛肉のトッピングが一番人気となりました。 新メニューに大満足の学生からは喜びの声と共に、また新たなメニューへの要望も出るなど、充実した試食会となりました。

    このハラル推奨メニューの提供は11月より、大岡山生協第2食堂、およびすずかけ台生協食堂で提供を開始しています。

    詳細は、東工大生協ホームページ、またはfacebookをご覧ください。

    一番人気の「牛肉うどん」

    一番人気の「牛肉うどん」

    新メニューを堪能する学生たち

    新メニューを堪能する学生たち

    新メニューを堪能する学生たち

    新メニューを堪能する学生たち

    リクエストにも耳を傾けます

    リクエストにも耳を傾けます

    試食会に参加した留学生と生協スタッフ(大岡山学生食堂)
    試食会に参加した留学生と生協スタッフ(大岡山学生食堂)

    「第25回 My Study Abroad 留学報告会」開催報告

    $
    0
    0

    10月28日の昼休みに、My Study Abroad 留学報告会を開催しました。国際室が募集するプログラムにより留学した学生によるこの報告会は、授業期間中、月1~2回開催されています。

    今回は派遣交換留学プログラムを使って留学した4名の学生が発表しました。

    • 理学部 情報科学科 4年 金川平志郎さん(メルボルン大学/オーストラリア)
    • 大学院理工学研究科  材料工学専攻 修士1年 大見俊基さん(ノルウェー工科・自然科学大学/ノルウェー)
    • 大学院理工学研究科 機械宇宙システム専攻 修士1年 金容載さん(スイス連邦工科大学チューリッヒ校/スイス)
    • 大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 修士2年 井上瑞紀さん(シャルマーズ工科大学/スウェーデン)
    報告会の様子
    報告会の様子

    報告会の様子

    メルボルン大学に留学した金川さんは、真のグローバル人材になるために、国際かつ多民族都市として有名なメルボルンへの留学を決めたそうです。留学中はその想いを実現して、シェアハウスにおける留学生との交流だけでなく、日本語サークル、ディベート大会等、課外活動にも積極的に参加しました。語学力の上達だけでなく、グローバル人材に必要な知性を磨くことができたとの報告がありました。また、家探しの方法や物価の高いメルボルンでの節約術等、留学に役立つ情報の提供もありました。

    ノルウェー工科・自然科学大学に留学した大見さんからは、授業の履修のみならず、研究室にも所属することで、専門分野(顕微鏡)に対する知識を深めることができたとの報告がありました。顕微鏡観察で得られた情報を分析することや、関連する論文を読むことを通して、世界最先端レベルの研究を実施し、その成果を国際学会で発表するという貴重な体験ができたそうです。また、受入指導教員や留学生と築いた深い信頼関係が大きな心の支えとなり、学業のみならずプライベートの面においても有意義な経験ができたとのことでした。

    研究室のメンバー

    研究室のメンバー

    留学先でできた親友

    留学先でできた親友

    スイス連邦工科大学チューリッヒ校に留学した金さんは、所属する研究室が進めるプロジェクトに力を注ぎ、その結果Entropyと呼ばれるジャーナルにも論文を2つ投稿することができたそうです。他方で、休み期間中はスキーやソリ等のスポーツをすることで十分にリフレッシュをし、学業とのメリハリをつけました。また、留学中10ヶ月間受給したスイス連邦工科大学の奨学金だけでなく、工学系国際交流留学生基金からも渡航費も受給することができたため、物価の高いスイスで生活するにあたり大きな手助けになったとの報告がありました。

    学内の研究室にて撮影したロボット
    学内の研究室にて撮影したロボット

    学内の研究室にて撮影したロボット

    シャルマーズ工科大学に留学した井上さんは、専門分野(音響)の教育環境が充実している点が決め手となり、早くからシャルマーズ工科大学を留学先として念頭に置いていたそうです。井上さんは留学中に一時帰国をして就職活動をしましたが、他大学にはない最先端の設備を使用し専門性を高められたことが大きなアピールポイントとなり、良い結果を出すことができたとの報告がありました。また、研究を共に行った留学生のみならず、様々な背景を持つシャルマーズ在住の日本人との出会いもまた、井上さんに大きな影響を与えたそうです。

    研究場所として使用した無響室

    研究場所として使用した無響室

    プレゼンスペースとして使用されている学内のアトリウム

    プレゼンスペースとして使用されている学内のアトリウム

    お問い合わせ先

    国際部留学生交流課派遣担当
    TEL:03-5734-7645
    Email : hakenryugaku@jim.titech.ac.jp

    公開時、内容に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。(11月21日15:00追記)

    「第26回 My Study Abroad 留学報告会」開催報告

    $
    0
    0

    11月7日の昼休みに、My Study Abroad 留学報告会を開催しました。国際室が募集する留学プログラムにより留学した学生によるこの報告会は、授業期間中、月1~2回開催されています。今回は、次の4名が発表しました。

    プログラム名
    所属・学年
    氏名
    留学先
    ルノー財団プログラム
    大学院理工学研究科
    機械制御システム専攻 ・博士1年
    讃井涼子
    ParisTech/フランス
    大学の世界展開力事業
    大学院理工学研究科
    機械制御システム専攻・修士2年
    加藤万裕
    ジョージア工科大学/アメリカ
    派遣交換留学
    大学院生命理工学研究科
    生物プロセス専攻 ・修士2年
    飯塚遥香
    スイス連邦工科大学チューリヒ校/スイス
    派遣交換留学
    工学部
    経営システム工学科・4年
    王舒
    メルボルン大学/オーストラリア

    報告会の様子
    報告会の様子

    ルノー財団プログラムはフランス語で専門教育を受け、渡航費・学費・奨学金が財団から支給されるプログラムです。讃井さんは、未来の交通システムと電気自動車に関する知識を修得する「モビリティと電気自動車」というプログラムを選択しました。このプログラムは、授業、研究室でのインターンシップ、企業インターンシップと三段階に構成されています。機械工学を専門としながら電気工学を基礎から学べたことや、企業で働くエンジニアと一緒に仕事ができたこと、成果を修士号取得という形に残せたことが大きな収穫だったそうです。また、世界中から学生や研究者がいる中で研究を行ったことにより、自分の意思を積極的に表明し、相手と意見をすり合わせることの重要性や、日本人としてのアイデンティティを再確認することができたと報告がありました。

    パリの景色

    パリの景色

    プログラム開始時にメンバーと撮影

    プログラム開始時にメンバーと撮影

    大学の世界展開力強化事業は研究活動がメインのプログラムのため、応募前に留学希望先の大学研究室から受入内諾を取る必要があります。加藤さんは、ジョージア工科大学で研究室に所属して自分の研究を進めながら、専門外ではあるけれども研究に役立ちそうな授業を履修しました。それぞれ高い水準を要求されるので両立させるのは困難でしたが、無料で利用できるジムで友達と運動したり、長期休暇には旅行をして気分転換しながら、2学期にわたる留学生活を充実させたそうです。

    スイス連邦工科大学チューリッヒ校に留学した飯塚さんも、研究活動に重きを置きながら、いくつか授業の聴講をしました。受入先の研究室では博士課程の学生がスーパーバイザーとして面倒を見てくれたため、充実した研究をすることができたそうです。研究室や滞在した寮には様々な背景を持つ方が所属していたので、「相手に主張する」ことの大切さを実感したそうです。多様な文化に触れ、友達がたくさんでき、その結果、日本のよさを再発見したと報告してくれました。

    校内の様子

    校内の様子

    楽しかった寮生活

    楽しかった寮生活

    旅行で行ったフィジー

    旅行で行ったフィジー

    メルボルン大学に留学した王さんからは、毎日の授業は課題が大量に出され大変だったが、懸命に勉強する学生たちの中で集中して勉強することはやりがいがあったと報告がありました。一方で、勉強をしていないときは、のんびりしているオーストラリアの風土に浸ってリラックスしたそうです。なお、留学中に遭遇したトラブルに対して、留学前に入った保険を利用したり、友達の助けを借りて乗り越えたことを、臨場感あふれる様子で説明しました。不足の事態に備えて、海外旅行保険に入ることの重要性を主張していました。

    街中の様子
    街中の様子

    お問い合わせ先

    国際部留学生交流課派遣担当
    TEL:03-5734-7645
    Email : hakenryugaku@jim.titech.ac.jp

    Viewing all 4086 articles
    Browse latest View live


    <script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>