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高等植物の雄しべ発達過程を制御する植物ホルモン輸送体を発見

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要点

  • 高等植物の形づくりの過程で植物ホルモンが適切なタイミングで作用する
  • 高等植物の雄しべの正常な発達を制御する植物ホルモンの輸送体タンパク質を発見
  • 植物ホルモンによる花の発達過程の制御機構を分子レベルで明らかにすることが可能に

概要

東京工業大学生命理工学研究科の斉藤洸大学院生、生命理工学研究科/地球生命研究所の太田啓之教授らと東北大学、理化学研究所の共同研究グループは、高等植物の雄しべの正常な発達を制御する植物ホルモン[用語1] の輸送に「GTR1」という輸送体タンパク質[用語2] が関わっていることを発見した。

モデル植物のシロイヌナズナの遺伝子発現データ解析により植物ホルモン輸送体候補を選び出し、その輸送体の機能が失われた植物体を詳細に解析した結果、雄しべの形成不全が起こることを明らかにした。この植物体に外部から植物ホルモンを与えることで、雄しべの生育が回復することから、この輸送体は生体内で植物ホルモンの輸送に関わることを確認した。この輸送体は植物の食害・病害応答物質の輸送を行うことが知られていたが、植物ホルモンの輸送にも関わっていることが初めて明らかになった。

今後は、この輸送体が構造の全く異なる化合物を輸送する仕組みを分子レベルで明らかにすること、植物ホルモンによって雄しべの発達を適切に調節する仕組みの全容を明らかにすることが期待される。

この研究は東工大生命理工学研究科の佐藤(金森)美有大学院生と地球生命研究所の佐々木結子特任助教、バイオ研究基盤支援総合センターの増田真二准教授、東北大理学研究科の上田実教授、東北大工学研究科の魚住信之教授と浜本晋助教、理化学研究所環境資源科学研究センターの瀬尾光範ユニットリーダーらと共同で行った。研究成果は2月4日発行の英国科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ(Nature Communications)」にオンラインで公開される。

研究の背景と経緯

高等植物が持つ複雑な器官が形成される過程は植物ホルモンによって厳密に制御されている。近年の研究から、植物ホルモンが作用部位に到達するためには、輸送体タンパク質による能動的な輸送が行われていることが明らかになってきた。

植物ホルモンであるジャスモン酸[用語3] とジベレリン[用語4] はいずれも花芽、特に雄しべの発達過程に重要であり、いずれかが欠損しても雄しべの発達に異常が生じ、雄性不稔となることが知られている。そのため、雄しべの発達過程でこれらの植物ホルモンが作用部位に輸送されると考えられるが、その輸送体の実体は知られていなかった。

研究内容

本研究では、モデル植物であるシロイヌナズナの遺伝子発現パターンを解析し、ジャスモン酸の合成遺伝子とよく似た発現パターンを示す遺伝子に着目した。この遺伝子にコードされている輸送体「GTR1」は、アブラナ科の植物で生産される病虫害防御物質であるグルコシノレート[用語5] の輸送体であることが報告されていた。GTR1輸送体の機能を失った植物体(gtr1)を作成し花の発達過程を調べたところ、雄しべの発達に異常が生じ雄性不稔となっていること、gtr1に人為的にGTR1遺伝子を導入してGTR1の機能を相補すると、稔性が回復することが明らかになった(図1)。

野生株(左)と比較してgtr1(中)は稔性が低下しているため、莢(さや)は短く少数の種しか得られない。gtr1に人為的にGTR1遺伝子を導入した植物(右)では稔性が回復した。

図1.
野生株(左)と比較してgtr1(中)は稔性が低下しているため、莢(さや)は短く少数の種しか得られない。gtr1に人為的にGTR1遺伝子を導入した植物(右)では稔性が回復した。

次にGTR1輸送体によって運ばれる低分子化合物を明らかにするために、アフリカツメガエルの卵母細胞でGTR1輸送体を人為的に合成し、細胞の外から与えた植物ホルモンが細胞内に輸送されているかを調べた。その結果、GTR1はグルコシノレートだけでなく生理活性を持ったジャスモン酸とジベレリンをも輸送できることが明らかになった(図2)。

アフリカツメガエル卵母細胞を用いてGTR1輸送体が植物ホルモンを輸送するかを調べた。(a)輸送活性を調べるための実験の模式図。GTR1が存在する卵母細胞では、植物ホルモンが卵母細胞内に取り込まれる。GTR1が存在しない場合には植物ホルモンは細胞内に取り込まれない。(b)GTR1によるジャスモン酸とジベレリンの輸送活性。卵母細胞あたりどれだけの植物ホルモンが取り込まれているかを調べた。

図2.
アフリカツメガエル卵母細胞を用いてGTR1輸送体が植物ホルモンを輸送するかを調べた。(a)輸送活性を調べるための実験の模式図。GTR1が存在する卵母細胞では、植物ホルモンが卵母細胞内に取り込まれる。GTR1が存在しない場合には植物ホルモンは細胞内に取り込まれない。(b)GTR1によるジャスモン酸とジベレリンの輸送活性。卵母細胞あたりどれだけの植物ホルモンが取り込まれているかを調べた。

gtr1にジャスモン酸とジベレリンをそれぞれ処理して稔性の回復を観察したところ、ジベレリンを処理した場合のみ完全な稔性の回復が見られた(図3)。この結果は、GTR1輸送体がジベレリンによる雄しべの発達制御に重要であることを示している。以上の結果より、GTR1は花芽の発達の過程においてジベレリンの輸送体として機能すると考えられる。

野生株(左)とgtr1(左から2番目)の花芽の拡大写真。野生株では雄しべの伸長と葯(やく)の裂開が起こることによって正常な受粉が行われるが、gtr1では雄しべが十分に伸びず、裂開も起こらないため、受粉が起こりにくく、少数の種しかつけることができない。gtr1にジベレリンを与えると稔性が回復するが(右から2番目)、ジャスモン酸を与えても稔性の回復は見られない(右)。

図3.
野生株(左)とgtr1(左から2番目)の花芽の拡大写真。野生株では雄しべの伸長と葯(やく)の裂開が起こることによって正常な受粉が行われるが、gtr1では雄しべが十分に伸びず、裂開も起こらないため、受粉が起こりにくく、少数の種しかつけることができない。gtr1にジベレリンを与えると稔性が回復するが(右から2番目)、ジャスモン酸を与えても稔性の回復は見られない(右)。

今後の展開

今回ジベレリンの輸送体が明らかになったことにより、花芽の発達過程における植物ホルモンの挙動を分子レベルで解析することが可能になる。植物ホルモンの輸送は花芽形成時だけでなく、傷害・虫害・病害応答時にも重要な働きをすると考えられるため、葉や根においてGTR1が輸送する対象を明らかにすることも重要である。さらに、どのようにして1つの輸送体が構造の異なる化合物を輸送できるのか、その分子機構の解明を目指す。また、植物ホルモンによる形態形成制御機構は、複雑な器官を発達させた高等植物の進化の過程で重要な役割を果たしたと考えられるため、植物が進化的にいつ、どのようにして植物ホルモン輸送機構を獲得したかを知るためにも、重要な指標となる因子であると考えられる。

用語説明

[用語1] 植物ホルモン : 高等植物の体内で合成され、生理的機能を調節する化合物。形態形成、生長促進や抑制に作用する。

[用語2] 輸送体タンパク質 : 生体膜を貫通して物質を運ぶタンパク質。

[用語3] ジャスモン酸 : 果実の熟化や老化促進などを誘導する植物ホルモン、環境ストレスへの耐性誘導ホルモンとして知られる。

[用語4] ジベレリン : 細胞の伸長、種子の発芽や休眠打破を促進する働きを持つ植物ホルモン。

[用語5] グルコシノレート : キャベツなどアブラナ科の植物に存在する化合物。植物の病害や食害に対抗するための防御物質としての働きを持つ。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications, 6, Article Number: 6095
論文タイトル :
The jasmonate-responsive GTR1 transporter is required for gibberellin-mediated stamen development in Arabidopsis
著者 :
Hikaru Saito, Takaya Oikawa, Shin Hamamoto, Yasuhiro Ishimaru, Miyu Kanamori-Sato, Yuko Sasaki-Sekimoto, Tomoya Utsumi, Jing Chen, Yuri Kanno, Shinji Masuda, Yuji Kamiya, Mitsunori Seo, Nobuyuki Uozumi, Minoru Ueda and Hiroyuki Ohta
DOI :

研究グループ

東京工業大学、東北大学、理化学研究所

研究サポート

本研究は、東京工業大学・東京大学による日本学術振興会、グローバルCOEプログラム「地球から地球たちへ」の支援により平成21年度より開始された(グローバルCOEプログラムは平成25年度に終了)。また、上田教授を領域代表とする科学研究費補助金(新学術領域研究)「天然物ケミカルバイオロジーの研究」からの支援は研究推進に不可欠な役割を果たした。

東京工業大学地球生命研究所について

地球生命研究所(ELSI)は、文部科学省が平成24年に公募を実施した世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、同年12月7日に産声をあげた新しい研究所。「地球がどのように出来たのか、生命はいつどこで生まれ、どのように進化して来たのか」という、人類の根源的な謎の解明に挑んでいる。

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は、平成19年度から文部科学省の事業として開始されたもので、システム改革の導入等の自主的な取組を促す支援により、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指している。

問い合わせ先

大学院生命理工学研究科
教授 太田啓之
Email: ohta.h.ab@m.titech.ac.jp
Tel: 045-924-5736 / Fax: 045-924-5823

広報センター(プレス担当)
Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel: 03-5734-2975 / Fax: 03-5734-3661


2014 AOTULE学生会議 参加記

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AOTULE(アジア・オセアニア工学系トップ大学リーグ)は、アジアとオセアニアの13大学からなる連盟です。加盟する大学間の合同ワークショップや、学生・教職員の派遣交流などを通して、工学系の教育研究の質を向上させ、国際意識を養うことが目的です。

AOTULEは年に一度、加盟大学の学生が集まり研究発表を行う「学生会議」を開催しています。2014年はオーストラリアのメルボルン大学で行われました。参加した東工大の学生に、会議を振り返ってもらいました。

橿渕 耕平

大学院理工学研究科 応用化学専攻 修士1年

研究発表後の立食形式のランチ

研究発表後の立食形式のランチ

この度私はオーストラリアのメルボルン大学にて開催されたAOTULE学生会議に参加させていただきました。11月末のメルボルンは夏に向かい暖かくなっている時期だったため、朝はやや冷えるものの、天候にも恵まれてとても過ごしやすかったように思います。滞在中メルボルン大学敷地内の学生寮に宿泊でき、他の学生との交流が気軽に行える点も魅力的でした。

初日は到着した私たちを立食パーティで歓迎していただき、翌日から二日間にわたって各大学の学生による研究の口頭発表が行われました。英語での研究発表を行う事そのものが私としては貴重な体験でしたし、今回のように様々な専攻の学生が一堂に会し研究発表を行うことは、普段自分とは関わりのない分野の研究を垣間見ることのできる貴重な機会でもありました。

研究発表2日目は午前中で全て終了し、立食形式でのランチの後、AOTULE参加者はバスでメルボルン市内を巡るシティーツアーに連れて行っていただきました。時間は3~4時間程度であったと記憶していますが、短時間で多くの名所や観光スポットを案内していただき非常に濃い時間を過ごすことができました。

昨年度のようなグループワーク等は無かったものの、研究発表1日目終了後にはBBQパーティを企画していただいたり、皆で大学内や市内を見学、学生寮で談話するなどの時間も多くあったため、学生間の交流を深めるには素晴らしい環境を提供していただけたと感じています。

研究発表中には「morning tea」と「afternoon tea」という休憩時間があり、ここでは飲み物だけでなく毎回工夫を凝らしたケーキや簡単な軽食などを楽しむことができました。このように参加者を楽しませるような工夫が多くなされており、滞在中ずっと快適に過ごすことができました。ただの研究発表の場としてだけではなく、学生間が積極的に交流することができるような環境を提供していただいたスタッフの皆様、共に研究発表し交流を深めた参加者の皆様には大変感謝しております。

シティツアー中に郊外から撮影したメルボルン
シティツアー中に郊外から撮影したメルボルン

このように非常に内容の濃いAOTULE学生会議も来年の開催で10回目を迎えることになりますが、今後も長く本会議が続き、より多くの学生、特にどうしても英語に苦手意識を持ちやすい日本の学生(私もその一人ですが...)がこの会議を通じて貴重な体験とより広い視野が得られることを期待しています。

ヤン・ミアオ

大学院理工学研究科 国際開発工学専攻 博士課程3年

10時間以上におよぶフライトや乗継ぎを経て、11月26日の午後、オーストラリアのメルボルンに到着。涼しい夏の気候に、うれしさと期待感も盛り上がります。ついに、やってきました!

トリニティカレッジ(学生宿泊施設)

トリニティカレッジ(学生宿泊施設)

11月26日から29日までの間、会議に参加する学生は、全員トリニティカレッジの学生寮に滞在することになっていました。この建物は伝統的なゴシック様式で、美しい庭園や公園などもあります。全員がそれぞれの部屋にチェックインしたあと、現地(メルボルン大学)の職員にお出迎えいただき、AOTULE学生会議の受付場所や歓迎レセプションに案内していただきました。移動中にスタッフの方が説明してくださったのですが、メルボルンは一日に4つの季節を体験できるとのことです。レセプションが行われたのは、法学部のある建物の最上階(10階)。その窓からは、都会的な町の様子を眺めることができます。レセプションでは、メルボルン大学副学長と工学部部長によるユーモアを交えた歓迎のごあいさつをいただき、くつろいだ気分になりました。おいしい飲み物と食事をごちそうになり一日が終わりました。

プレゼンテーションで最初のセッションがスタート

プレゼンテーションで最初のセッションがスタート

11月27日午前、オープニングセレモニーでいよいよ会議の幕開けです。セレモニーでの話によれば、インド、ベトナム、スリランカの大学がAOTULEへの参加の意向を示しているそうです。その後、全体会議があり、バーキット教授によるバイオニック・アイ(人工眼)に関する最先端の研究や、スミス博士による南極における環境修復についてのお話を聞くことができました。お二人はいずれもメルボルン大学で研究をされており、お話により研究の様子が理解できました。(AOTULEでは、毎年異なる加盟大学が主催で秋の会議を開催しています。)「morning tea」という休憩の後、本格的な学生会議が始まり、この日は、機械、土木、バイオメディカル、環境、材料工学の分野の会議が行なわれました。

加盟大学から集まった背景の異なる学生たちが、研究内容などについて積極的に語り合い、そのやり取りは、昼食の時間まで続いていました。こういった議論や談話を通じて、それぞれが、何か新しいものを得ることができたと思います。実り多き一日の活動が終わると、オーストラリア・スタイルのバーベキューディナーが待っていました。太陽の光がふりそそぐ芝生の上に座りながらおしゃべりや食事、そして、リラックスした雰囲気のなかで新しい出会いもあり、とても楽しいひとときでした。

太陽の下で、オーストラリア・スタイルのバーベキュー
太陽の下で、オーストラリア・スタイルのバーベキュー

28日の朝は、化学工学と電気工学の会議が行なわれました。プレゼンテーションと質疑応答、それぞれが素晴らしい結果を残せたと思います。全会議終了後、学部長をはじめ、教授や職員の方々とともに学生ラウンジでのランチとなりました。全員が集う最後の機会でしたので、フォーマルな立食形式で行われました。現地の学生や職員の方々と話ができるのもこれが最後だと思うと名残惜しく、お互いこれからも連絡取り合うことを約束し合いました。午後からは、メルボルン大学の好意で、バスで市内を巡るシティーツアーが行なわれ、メルボルンの歴史スポットやダウンタウン、海岸、史跡、オリンピック跡地などを訪れました。個人的に最も印象に残ったのは、ゴールドラッシュ時代の移民の歴史です。この素晴らしい観光をもって、3日目が終了しました。

29日には帰国の途につき、30日の朝に東京に無事到着。今回学生会議に参加させていただき、自分にとって有意義な忘れられない経験となりました。メルボルン大学だけでなく、東工大やAOTULE加盟大学の新しい友人もできました。さまざまな意見を交換したり語り合った経験は、自分の人生において、間違いなく貴重な財産になると思います。また、都会と自然の両方を併せ持つ、美しい国際都市メルボルンを体感できたのも素晴らしい思い出です。同時に、自分の将来に向けて決意を新たにすることができました。それは、グローバルな舞台で活躍することです。単にモノを創るだけではなく、いろんなアイデアを世界に発信できる技術者になりたいというのが私の目標です。

お問い合わせ先

大学院理工学研究科化学工学専攻 准教授 吉川史郎
Email : syoshika@chemeng.titech.ac.jp
TEL : 03-5734-3278

「テクノロジー×アート~問題提起型のモノづくり」トークイベント開催報告

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1月15日、東工大リベラルアーツセンター 冬のトークイベント 「テクノロジー×アート~問題提起型のモノづくり」が開催されました。

Perfumeの舞台演出サポートなどで知られるアーティスト/プログラマーの真鍋大度氏を招いて、リベラルアーツセンターの伊藤亜紗准教授との対談が行われました。

イベントポスター
イベントポスター

満員の会場

満員の会場

当日は冷え込む雨でしたが、東工大生を中心に多くの学生や一般の方などモノづくりへの愛を共有する人たちが多く集まり、会場のディジタル多目的ホールは異様なほどの熱気につつまれました。

トークでは、真鍋氏の作品が映像を交えて次々と紹介されました。ドローンによるダンスや顔の筋肉を使った演奏など、アートを使ってテクノロジーの可能性を開拓する作品の数々。話は未来の人間とテクノロジーの関係にまでおよび、テクノロジーが支配する社会で人間は自由を持ち得るのか、会場を交えて意見が交わされました。最後は作品のデモンストレーションも行われ、その場でプログラムしながら設営していく真鍋さんの手つきに、会場の学生たちは目を奪われました。

真鍋大度氏

真鍋大度氏

真鍋氏の作品の紹介

真鍋氏の作品の紹介

伊藤亜紗准教授との対談

伊藤亜紗准教授との対談

作品のデモンストレーション

作品のデモンストレーション

トーク終了後は有志の学生が集まって懇親会を開きました。技術者としてクリエイティブに生きて行くにはどうしたらよいのか。技術のみならず生き方まで学ぼうとする学生たちが真鍋氏を取り囲み、リラックスした雰囲気のまま終了しました。

学生目線の、和気あいあいとしたイベントとなりました。

お問い合わせ先

東京工業大学 リベラルアーツセンター
E-mail : office@liberal.titech.ac.jp

新しい珪酸塩強誘電体の発見と機構解明

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概要

東京工業大学応用セラミックス研究所の谷口博基助教(現名古屋大学理学部准教授)と伊藤満教授の研究グループは、新しい4配位型珪酸塩強誘電体を開発しその強誘電性発現の原理を解明した。

研究の背景

現在、実用化されている代表的な強誘電体[用語1]はペロブスカイト型構造[用語2]を有するBaTiO3やPbTiO3をベースとする物質群である。70年以上前に発見されたペロブスカイト型酸化物における強誘電性発現のメカニズムは第一原理計算[用語3]や構造解析によりほぼ全容が解明され、ペロブスカイト型構造における金属元素と酸素間の化学結合の役割も明らかにされてきた。伊藤教授らの研究グループはペロブスカイト型強誘電体に関する研究結果を集約し、結果に基づき演繹的に新しい強誘電体を創出することを試みた。従来は強誘電体を作ることが難しいと考えられていた珪酸塩(シリケート)で強誘電性を得ることに成功し、想定していた強誘電性発現の機構も証明した。

研究成果

これまでの研究からABO3型ペロブスカイト型構造中でAサイトイオンの果たす役目について検討し、AイオンとBイオンの果たす役割を定量化し、Aと酸素Bと酸素の結合に着目して構成元素を選択し、ペロブスカイト型構造類似構造を持つ珪酸塩に着目した。図1左は強誘電体として有名なAurivirius型酸化物(Bi2O2)(An-1BnO3n+1)(n=1-8)のうちn=1、B=Wの場合、すなわち、Bi2WO6の構造を示す。この構造は(001)面の構造から明らかなように、Bi2O2層とWO6層が交互にc軸方向に積み重なった構造をしており、これに対してB=Siの場合、図1右に示すとおり、Bi2O2層とSiO4鎖が1次元的に伸びた構造からなっている。

両構造の差は明らかに2次元的WO6層と1次元SiO4鎖のみである。一般的に、SiO4四面体中でのシリコンと酸素との結合は強く、外場によりSiO4四面体の変形は難しく、特に、中心のシリコン原子を変位させて強誘電性を発現させることは難しいと考えられてきた。本系のように2種類の金属元素を含む酸化物の場合、酸素に隣り合う異なる2種類の金属と酸素との結合は競合する。電子の数は決まっているのでA-Oの共有結合性が強くなれば隣り合うB-Oのそれは弱くなる。つまり、共有結合性とイオン性の相補性により-Bi-O-Si-におけるBi-OとSi-Oの結合の性格が決まる。

強誘電体Bi2WO6とBi2SiO5の構造の比較

図1. 強誘電体Bi2WO6とBi2SiO5の構造の比較

Bi2SiO5において高温相は中心対称性、つまり常誘電性であるCmCmの空間群を有し、温度低下とともに673 K(400℃)で非中心対称、極性空間群Ccをもつ強誘電体構造へと変化する。この変化は図2に示すとおり673 K以下ではBiが酸素側に移動してBiのもつ6s電子と酸素がもつp電子との結合を強くする。このBiの移動によりBiとO間で電気の偏りが生じ、電気双極子が生じる。このBi-O層での構造変化に同期してSiO4鎖でもSiが中心位置から移動してSiO4からSiO3を単位とするような構造変化が生じ、ここでもSiの変位によって誘起される電気双極子が生じる。

300 Kと773 KにおけるBi2SiO5の構造の比較。(b)(d)における矢印はイオンの変位によって生じる電気双極子モーメントを示す。

図2. 300 Kと773 KにおけるBi2SiO5の構造の比較。(b)(d)における矢印はイオンの変位によって生じる電気双極子モーメントを示す。

図2(b)(d)から明らかなようにBi2O2レイヤーとSiO3レイヤーでは電気双極子モーメントの方向が逆方向を向いている。つまり、正確に表現すればこの物質はフェライトで代表されるフェリ磁性体と類似の双極子配列を持つフェリ誘電体[用語4]であることがわかる。構造解析と第一原理計算に基づく電気分極の値は25μC/cm2であり、この値は実用上最も重要な強誘電体の1つであるチタン酸バリウムとほぼ同じ大きさである。さらに重要なことは、相転移に伴って原子が一方向に一斉に変位して電気的な偏りが生じること(光学モードのフォノンの凍結)で強誘電性が発生するというメカニズムが、光学測定、精密構造解析、第一原理計算で矛盾無く説明できたことである。

図3(a)は第一原理計算により求められたフォノンの分散を示している。高温相の常誘電体CmCm相では負の周波数を持つ強誘電性ソフトモード[用語5]が存在し、低温の強誘電体相では振動数がゼロになる(つまり、非中心対称性の構造に変化する)。本系の強誘電性がBi-Oの共有結合性の変化で誘起されるSiO4中のSi-Oの共有結合性の不均一化に伴う結合間距離の長短化が鎖のねじれiで表現され、図3(b)で示す定常的に鎖のねじれが存在する場合が強誘電相であることがわかる。

高温相(CmCm相)と低温相(Cc相)におけるフォノン周波数の方向依存性(a)。上2つの構造に対するねじれ運動モードが(a)における光学ソフトモードに対応しており、このモードの振動数がゼロになる温度が強誘電相転移点に相当する(b)。

図3. 高温相(CmCm相)と低温相(Cc相)におけるフォノン周波数の方向依存性(a)。上2つの構造に対するねじれ運動モードが(a)における光学ソフトモードに対応しており、このモードの振動数がゼロになる温度が強誘電相転移点に相当する(b)。

今後の展開

従来、チタン酸バリウムを代表とするペロブスカイト型六配位酸化物が強誘電体研究の中心であった状況を、物質探索の枠を拡げるという観点からも本系のような珪酸塩でしかも4配位系で従来型の強誘電体に匹敵する分極の値を有する物質が見つかった意義は大きい。さらに、Bi2SiO5ではペロブスカイト型強誘電体と同様な変位型の機構で相転移することが重要である。本研究を契機として、化学結合を利用した非ペロブスカイト、非六配位、非酸化物系での強誘電体の新物質探索が現実的であることが理解され、物質から材料への橋渡しが可能になると考えられる。

用語説明

[用語1] 強誘電体 : 温度低下とともにキュリー温度で誘電率が発散して相転移を起こし低温相で自発誘電分極を有する物質。低温相では正負イオンが高温相から変位して中心対称性を有しておらず、強磁性体の磁化曲線に似た分極-電場曲線でヒステリシスを示す。大別して変位型強誘電体と規則-不規則型強誘電体が代表例である。前者にはBaTiO3、PbTiO3、LiNbO3、SbSIがあげられる。20世紀後半にペロブスカイト型強(反)誘電体としてPbTiO3、PbZrO3(反強誘電体)、Pb(Zr,Ti)O3が発見され研究された。実用に供せられている物質としてBaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3が有名である。後者として東工大名誉教授沢田正三氏が発見したNaNO2が代表例としてあげられる。

[用語2] ペロブスカイト : 19世紀ロシアの科学者ペロフスキーによって発見された天然鉱物灰チタン石(CaTiO3)。ABO3型の複酸化物の総称。

[用語3] 第一原理計算 : 原子レベルやナノスケールレベルにおける物質の基本法則である量子力学(第一原理)に基づいて、原子番号だけを入力パラメーターとして、非経験的に物理機構の解明や物性予測を行う計算手法。

[用語4] フェリ誘電体 : 結晶が2種類の副格子からなり、それぞれ逆向きの電気双極子モーメントを有する物質。フェライトでは磁気双極子が同様な配列を有する。通常の強誘電体との区別は難しい。

[用語5] 強誘電性ソフトモード : 強く非調和的な低エネルギー光学フォノンであり、相転移温度に向かって振動数を減少(ソフト化)させ、最終的に凍結することで強誘電性相転移を誘起する。(一次相転移では、ソフト化の途中で相転移が生じて凍結しない。)このソフトモードの不安定化によって生じた強誘電性を有する物質は"変位型強誘電体"と呼ばれるが、ペロブスカイト型酸化物強誘電体にはこの型の強誘電体が特に多く、これまでに極めて多くの研究がなされてきた。しかしながらソフトモードが強誘電性相転移にまつわる諸物性を定性的ではあるが非常に良く説明する一方で、何故ソフトモードが存在するかという、"材料設計に応用できる形での"直感的な描像は未だ確立していない。

論文情報

論文タイトル :
Ferroelectricity Driven by Twisting of Silicate Tetrahedral Chains
掲載誌 :
Angewandte Chemie International Edition 52, 8088 (2013).
DOI :
著者 :
Hiroki Taniguchi1,2, Akihide Kuwabara3, Jungeun Kim4, Younghun Kim5, Hiroki Moriwake3, Sungwng Kim6, Takuya Hoshiyama7, Tsukasa Koyama7, Shigeo Mori7, Masaki Takata4,5,8, Hideo Hosono1,9, Yoshiyuki Inaguma10, and Mitsuru Itoh1
所属 :
1東京工業大学応用セラミックス研究所、2名古屋大学理学部、3(財)日本ファインセラミックスセンター、4公益財団法人 高輝度光科学研究センター、5東京大学大学院新領域創成科学研究科、6Sungkyunkwan University、7大阪府立大学、8理研播磨研究所、9東京工業大学元素戦略研究センター、10学習院大学理学部
論文タイトル :
Hierarchical Dielectric Orders in Layered Ferroelectrics Bi2SiO5
掲載誌 :
IUCrJ 1, 160 (2014)
DOI :
著者 :
Younghun Kim1,2, Jungeun Kim2,3, Akihiko Fujiwara3, Hiroki Taniguchi4, Sungwng Kim5, Hiroshi Tanaka6, Kunihisa Sugimoto2,3, Kenichi Kato2, Mitsuru Itoh7, Hideo Hosono7,8 and Masaki Takata1,2,3
所属 :
1東京大学大学院新領域創成科学研究科、2理研 放射光総合科学研究センター、3公益財団法人 高輝度光科学研究センター、4名古屋大学理学部、5Sungkyunkwan University、6島根大学、7東京工業大学応用セラミックス研究所、8東京工業大学元素戦略研究センター

謝辞

本研究は、文部科学省の元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型 電子材料拠点>により一部支援を受けたものです。

問い合わせ先

応用セラミックス研究所 教授 伊藤 満
Email : itoh.m.aa@m.titech.ac.jp
TEL : 045-924-5354
FAX : 045-924-5354

多糖類を用いて骨再生の蛍光検出を実現 ―MRIとのマルチモーダルイメージングプローブを開発―

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科の田中浩士准教授、高橋孝志名誉教授(元大学院理工学研究科教授)、放射線医学総合研究所の青木伊知男チームリーダーと京都大学再生医科学研究所の田畑泰彦教授らは、多糖類のデキストランを原料に用い、骨を対象としたマルチモーダルイメージングプローブの開発に成功した。マルチモーダルイメージングプローブは、複数の検出手法により対象部位の可視化を可能にするプローブであり、一つの検出方法では分析することが困難な病態を多角的に分析することを可能にする。今回、体内断層撮影を可能にするMRIと検出感度の高い蛍光検出が可能なマルチイメージングプローブの合成を達成した。

母体としたデキストランは、グルコースを構成糖とする多糖であり、食品添加物に利用されるなど人体に対する安全性が担保されているため、臨床応用に対するリスクも少ない。また、多糖を用いるイメージングプローブは、物性を大きく変えること無く、薬剤含有させることも可能であり、イメージングと治療を同時に行なうことも可能となる。

研究の背景

生体内現象を生きたまま可視化する分子イメージング技術は、病態を定量する次世代の診断技術として注目されている。病態の定量化は、適切な治療方針の決定だけでなく、医薬品開発候補品の効能の定量化にも繋がる。イメージングは、光学、核磁気および放射性などの原理に対応するモダリティー(検査手法)を用いて行なう。しかしながら、モダリティーには、短所および長所を含む特徴を有する。例えば、放射性核種を用いるPETやSPECTは、検出感度が非常に高いが、分解能が低く、また、放射性プローブの製造および取り扱いが難しい。

また、核磁気を用いるMRIは、体内の深部までイメージングでき、かつプローブの取り扱いは容易であるが、検出感度そのものが低く、多量のプローブを生体内に導入する必要がある。一方、蛍光検出は、感度が高くかつプローブの安定性も高いが、生体内におけるシグナルの減衰が大きいために、生体深部の測定には適していない。そこで近年、複数のモダリティーで検出可能な、マルチモーダルイメージングが注目されている。同手法は、それぞれの短所を補うことにより、より信頼性の高いイメージングが可能なると言われている。

生体適合性が高く、検出部位や組織認識部位導入の足掛かりとなる水酸基を多く含有する多糖は、イメージングプローブおよびドラックデリバリーシステム(DDS)のキャリアーの有望な基盤材料である。そのため、多糖を適切に修飾することができれば、有用なイメージングプローブになると期待できる。従来法では,反応時間、試薬の濃度および当量などを調整して、機能性部位の適切な導入量を調整している。

しかし導入する基質によりその反応性が、また、取り扱う物質量により撹拌効率等が異なるため、その都度の調整が必要となる。そのため、合成したプローブの再合成、およびそれを用いる機能性の再現性の確保が難しくなる場合がある。そこで、イメージングプローブの合成を指向した効率的かつ再現性の高い多糖の修飾方法が求められていた。

研究成果

今回の研究では、デキストラン多糖にアセチレンとアミノ基を導入したテンプレートに対するカップリング反応利用する骨のマルチモーダルイメージングプローブの合成を行なった(図1)。まず、あらかじめ適切な量のアセチレンとアミノ基を導入した多糖テンプレートを合成した。アセチレンはアジド基と、アミノ基はカルボン酸と水酸基存在下化学選択的にカップリングすることができる。そのため、同一のテンプレートを用いることにより、先に導入した官能基の量に応じた機能性部位を、それぞれ独立に再現性よく導入することができる。

今回はアジド基を有するビホスホナート(BP)を骨認識部位として、カルボン酸を有する検出部位カクテルをそれぞれ導入することに成功した。検出部としては、放射性金属や、MRI造影剤とした働く金属イオンを配位できる金属キレーター(DOTA)、数センチメータ単位では生体内を透過する近赤外蛍光を発光する色素(Cy5)を導入した。

多糖テンプレートを用いるマルチモダル骨イメージングプローブの合成
図1 多糖テンプレートを用いるマルチモダル骨イメージングプローブの合成

得られた化合物を用いて骨の等価体であるヒドロキシアパタイトに対する結合試験を行ったところ、骨結合部位であるビホスホナートの導入量が増えるとともに結合効率も向上した。さらに、下肢部に骨の再生モデルを移植したマウスを用いて再生部位のイメージングを行なった。その結果、蛍光イメージング法において、マウスの下肢部の再生モデルのイメージングに成功した(図2A)。さらに、Gdをキレートさせてプローブを用いて、MRIによる再生モデルの断層イメージングを行なった(図2B, C)。その結果、結合部の持っていないGd-DTPAと比較して、本イメージングプローブが再生部位により留まり、その部位の可視化を可能にしていることが示された。

A)マウス下肢部の蛍光イメージング B)MRI断層イメージング C)投与後におけるシグナル強度比
図2 A)マウス下肢部の蛍光イメージング B)MRI断層イメージング C)投与後におけるシグナル強度比

以上の研究成果により、多糖デキストランからなる新規テンプレートを原料としたマルチモーダルプローブの合成とそれを用いる骨の再生モデルのイメージングに成功した。本研究成果は、新たなイメージングプローブの開発に弾みをつけると期待できる。

今後の展開

本研究により開発したデキストラン誘導体は、さらに薬剤を結合させることにより、骨折の病態の診断だけでなく、患部への薬剤輸送を可能にすることにより、診断と治療を同時に行なうことを可能にする。また、本テンプレートを用いて様々な結合部位を導入することにより、他の診断プローブの開発に繋がると期待している。

論文情報

論文タイトル :
Synthesis of a Dextran-Based Bone Tracer for in vivo Magnetic Resonance and Optical Imagings by Two Orthogonal Coupling Reactions
掲載誌 :
RSC Advance 4, 7561 (2014).
DOI :
著者 :
Hiroshi Tanaka1, Sho Yamaguchi1, Jun-ichiro Jo2, Ichio Aoki2, Yasuhiko Tabata3 and Takashi Takahashi1
所属 :
1Department of Applied Chemistry, Tokyo Institute of Technology, 2Molecular Imaging Center, National Institute of Radiological Sciences, and 3Department of Biomaterials, Institute for Frontier Medical Sciences, Kyoto University

問い合わせ先

大学院理工学研究科応用化学専攻
准教授 田中浩士
TEL : 03-5734-2471
FAX : 03-5734-2884

系外惑星の深すぎる海と砂漠 ―地球のような惑星は低質量星のまわりではなく、やはり太陽型星のまわりにある?―

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東工大と清華大学(中国)の研究者のシミュレーションによると、惑星の含水量の観点で考えた場合、地球のような惑星は、観測的に現在注目されている低質量星のまわりではなく、太陽くらいの質量の恒星のまわり多く存在しそうだということがわかった。

生命が住める惑星(ハビタブル惑星)の探索は、現在、太陽質量の半分以下の質量のM型矮星と呼ばれる恒星に対して集中して行われようとしている。なぜならば、これらの恒星では、太陽と同程度の質量のG型矮星にくらべて、ハビタブル惑星を検出しやすいと考えられてきたからである。しかし、東工大の井田茂と中国清華大学のFeng Tianによるシミュレーションは、地球のような惑星を探すにはM型矮星は適していないであろうということを示す。

惑星が生命居住可能になるためには、その惑星の軌道が液体の水が表面に存在するのに温度が高すぎず低すぎずの軌道範囲(ハビタブル・ゾーン)に入っていることが必要になる。それに加えて、近年の研究は、海陸比が地球に近いことも必要ではないかということを示している。つまり、地球の場合の含水量程度(重量で0.01%程度)からあまり違ってはいけないだろうということである。たとえば、重量で1%を超えるような水を持つ惑星(陸がない「海惑星」)では気候が安定せず、栄養素の海への供給も制限されてしまう。一方、金星のような水に欠乏した「砂漠惑星」では生命は住めない。

太陽と同じくらいの質量の恒星であるG型矮星は、主系列に入る前の早期段階でほとんど明るさが変わらないが、M型矮星ではその段階で明るさが一桁以上も減少する。つまり、M型矮星をまわる、ちょうどいい量の水とちょうどいい距離を持つ惑星は、明るすぎる前主系列段階において海が干上がってしまうであろう。一方、海惑星はその大量の水を保持し続ける。

井田 茂とFeng Tian は、中心星が太陽質量の0.3, 0.5, 1.0 倍の質量の場合に、惑星分布をシミュレーションし、中心星の明るさの変化を考慮して水の蒸発過程を見積もった。彼らの計算結果によると、地球質量程度で地球くらいの含水量を持つ惑星の数は、G型矮星にくらべてM型矮星のまわりでは1/10~1/100しかなかった。彼らの結論は「地球のような惑星を探すならば、太陽型星で探すべきだ」というものである(注)

(注)
地球とは似ていないが、地球の生命とは異なる仕組みの生命が住む惑星は、M型矮星の惑星系にあるかもしれない。ここの結論はそのような可能性を排除するものではないことに注意。

背景

惑星形成シミュレーション

惑星は中心星の形成の副産物として形成される。星間雲中のガス塊の重力収縮が進行するにつれ、回転するガス塊は平たくなり、原始惑星系円盤を形成する。この円盤の中で、固体成分が合体成長して惑星ができる。

惑星形成ではいくつもの複雑なプロセスが同時進行する。形成される惑星の特徴は、円盤内の固体の初期分布、中心星の質量などのパラメータによって変わる。

いろいろな要素をとり入れたモデルが開発され、観測データと比較検討することで、どのような惑星が形成され、そのような特徴を持つのかが予言されるようになった。しかし、中心星の明るさの変化が、ハビタブル・ゾーンの惑星の表層環境(ここでは海の量)にあたえる影響についての解析は、これまで行われてこなかった。

系外惑星の観測

系外惑星の観測プロジェクトは、TESS、Platoなど、次々と計画されている。将来、惑星の平均密度の測定や多波長のスペクトル観測が行われれば、地球と似た水の量を持つ惑星は、海惑星や砂漠惑星と区別できるようになるであろう。

シミュレーション結果

太陽質量の0.3倍の恒星1,000個に対して計算したところ、69,000個の惑星が得られ、そのうちの5,000個は地球質量に近く、55個はハビタブル・ゾーンに入っていた。しかし、その55個のうち31個は海惑星で、23個は砂漠惑星で、地球と同じような含水量の惑星はたった1個しかなかった。

太陽質量の半分の恒星1,000個の場合は、75,000個の惑星が得られ、そのうちの9,000個は地球質量に近く、292個はハビタブル・ゾーンに入っていた、そのうち60個は海惑星で、220個は砂漠惑星。地球と同じような含水量の惑星は12個であった。

太陽質量の恒星については、38,000個の惑星が得られ、そのうちの8,000個が地球質量に近く、407個はハビタブル・ゾーンに入っていた、そのうち91個は海惑星で、45個は砂漠惑星。大部分の271個は地球と同じような含水量であった。

この結果にある詳細な数には意味はないが、地球と同じような含水量を持つ、ハビタブル・ゾーンにある惑星の割合は、太陽質量の恒星にくらべて、小質量の恒星のまわりでは極めて少ないということは確実に言える結果であり、重要な結論である。ただし、惑星内部(たとえばマントル)にどれくらいの水が取り込まれ得るのか、どれくらいの量が後から表面に出て来るのかということを調べることが、地球と同じような含水量を持つ、ハビタブル・ゾーンにある惑星が、実際にはどれくらい存在するのかを知る上では重要であり、それは今後の研究課題である。

ここでは地球質量程度の惑星の含水量を軌道半径の関数としてプロットしてある。中心星が前主系列段階に入ってから(そのときに惑星形成も始まったとした)9000万年後の時点の惑星のデータ。一点一点が惑星一個一個を示し、1000個の恒星で作られた惑星を重ねてある。a-c(左列)はそれぞれ、中心星質量が太陽の0.3倍(上段)、0.5倍(中段)、1倍(下段)の場合の結果。d-f(右列)は中心星の明るさの変化と水の蒸発の効果を入れた結果。主系列に入ったときのハビタブル・ゾーンを青緑の影で示してある。

ここでは地球質量程度の惑星の含水量を軌道半径の関数としてプロットしてある。中心星が前主系列段階に入ってから(そのときに惑星形成も始まったとした)9000万年後の時点の惑星のデータ。一点一点が惑星一個一個を示し、1000個の恒星で作られた惑星を重ねてある。a-c(左列)はそれぞれ、中心星質量が太陽の0.3倍(上段)、0.5倍(中段)、1倍(下段)の場合の結果。d-f(右列)は中心星の明るさの変化と水の蒸発の効果を入れた結果。主系列に入ったときのハビタブル・ゾーンを青緑の影で示してある。

論文情報

掲載誌 :
Nature Geoscience 8, March 2015
論文タイトル :
Water contents of Earth-mass planets around M dwarfs
著者 :
Feng Tian and Shigeru Ida
DOI :

東京工業大学地球生命研究所について

地球生命研究所(ELSI)は、文部科学省が平成24年に公募を実施した世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、同年12月7日に産声をあげた新しい研究所です。

「地球がどのように出来たのか、生命はいつどこで生まれ、どのように進化して来たのか」という、人類の根源的な謎の解明に挑んでいます。

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は、平成19年度から文部科学省の事業として開始されたもので、システム改革の導入等の自主的な取組を促す支援により、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指している。

問い合わせ先

地球生命研究所
教授 井田 茂
Email: ida@elsi.jp
TEL:03-5734-2620

リベラルアーツセンター 米国西海岸教育機関視察報告会

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2014年11月に、リベラルアーツセンターの池上彰教授、上田紀行教授、伊藤亜紗准教授が行った米国西海岸教育機関視察について、本学の教職員を対象に報告会を開催しました。

左から伊藤亜紗准教授、上田紀行教授、池上彰教授
左から伊藤亜紗准教授、上田紀行教授、池上彰教授

視察を行ったのは、カリフォルニア大学バークレー校、ポモナ大学、ハービーマッド大学、カリフォルニア工科大学の四大学です。報告会では、東工大の教育改革まっただなかという状況のなかで、すぐに活かせる実戦的なヒントを中心に紹介がなされました。

なかでも大人数の学生をかかえるカリフォリニア大学バークレー校の実践は、本学が直面する課題にとって、示唆的なヒントが数多くありました。水平と垂直の両方向にわたる学生間の「ともに学ぶ」関係づくり、GSI(院生講師)の制度と養成法、教員の教育活動の評価法、反転教育など、少ない人的資源で質の高い教育を行うための工夫が数多く見られました。そのほかの大学についても、ライティングセンターや少人数教育のメリットなど、教育改革にフィードバックすべき視点を得ることができました。

会場には20名あまりの教職員が集まり、意見交換の貴重な機会を持つことができました。

桑子敏雄センター長のあいさつ

桑子敏雄センター長のあいさつ

報告会の様子

報告会の様子

お問い合わせ先
東京工業大学 リベラルアーツセンター
E-mail : office@liberal.titech.ac.jp

電通 薬師寺肇氏 英語講演会「広告とコミュニケーションを通してみた日本」

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1月28日、大岡山キャンパス西9号館W935教室で、電通の薬師寺肇氏が、「広告とコミュニケーションを通してみた日本(Look inside Japan through Advertising and Communication)と題する講演を英語で行いました。

薬師寺氏は2005年に東工大電気電子工学科を卒業し、現在は、電通コミュニケーション・デザイン・センターで、統合キャンペーンの設計・実施などを担当しています。2013年には、日本で初めての理系文学賞である「星新一賞」の創設を手がけました。

薬師寺肇氏の講演

薬師寺肇氏の講演

講演では、情報の氾濫の中で、広告情報が消費者に十分に認知・記憶されていないことが問題点として挙げられました。その反省から、企業から消費者への情報やメッセージの伝達(コミュニケーション)を総合的にデザインする「コミュニケーションデザイン」が必要になっており、“from say to do”, “for society”, “collaboration”の3つが、効果的なコミュニケーションデザインのキーワードであることが説明されました。また、日本の企業・自治体・NPOによるコミュニケーションデザインの具体例も紹介されました。

学生の質問に答える薬師寺氏

学生の質問に答える薬師寺氏

この講演会は、東工大創造性育成科目助成を受けた文系発展科目Topics on Japan(英語で学ぶ日本事情)の一環として行われ、留学生32名、日本人学生4名が参加しました。講演後は活発な質疑応答が行われ、薬師寺氏の元に直接質問に来る学生も見られました。

お問い合わせ先
留学生センター准教授 佐藤由利子
Tel : 03-5734-3524


「生まれ変わる学び 生まれ変わるチーズケーキ」開催報告

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附属図書館大岡山本館の2階・3階(通称"チーズケーキ")が1月6日にリニューアルオープンしたことを記念して、リベラルアーツセンターと附属図書館主催のイベントを実施しました。

はじめに、高橋栄一附属図書館長(大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)からリニューアルしたフロアについて簡単に紹介がありました。2階は可動式什器を導入したことにより、様々な人数での学修に対応できるようになりました。3階は従来通りグループ用の学修室が利用できます。

第1部 ニューイヤートーク「今年を読もう!新聞を読もう!」

池上彰教授(リベラルアーツセンター)

池上教授のニューイヤートーク

池上教授のニューイヤートーク

池上彰教授が元日の大手新聞6紙を題材に、新聞の読み解き方や新聞制作の裏話などを語りました。一面記事や年始シリーズから読み取れる各社の意図や問題意識、出版社の広告から見える想定読者層といった内容が解説され、参加者に新聞を読む際の新しい視点が示されました。また、通常あまり意識されない新聞の版数を取り上げ、同じ新聞でも配達地域によって早版と遅版があり、見出しや内容が異なることがあるという豆知識も紹介されました。会場からはウェブが普及している状況下での紙の新聞の役割は何かという質問があり、池上教授が紙とウェブそれぞれの利点と、ウェブを利用する際の注意点を回答しました。参加者は、時折ジョークを交えたわかりやすい解説に興味深く耳を傾けました。

満員の会場
満員の会場

第2部 対談「アクティブ・ラーニングってなに?~大学図書館の新しいあり方について~」

高橋栄一附属図書館長×池上彰教授

高橋附属図書館長が、電子資料が普及する中での附属図書館利用者の推移と国内外の大学図書館の先進事例を話題提供し、池上教授と大学図書館の新しいあり方について対談しました。中央教育審議会による「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」では、生涯学び続ける力を習得するには、大学教育を能動的学修(アクティブ・ラーニング)へ転換する必要があるとされています。

高橋附属図書館長と池上教授の対談

高橋附属図書館長と池上教授の対談

今回の附属図書館のリニューアルは、本学の教育改革によって増加することが予想されるアクティブ・ラーニングに対応するものです。国内外の事例では、アクティブ・ラーニングに資する施設であるラーニング・コモンズを中心に、大学図書館の取り組みが紹介されました。池上教授は海外の大学の視察経験もふまえて、本学には講義室外で自由に議論できる場所が少ないので、そのような場所が附属図書館内にできたことが喜ばしいと話しました。参加者からは、学外の友人や研究者と話し合える場所を設置することはできないか、すずかけ台キャンパスでも教養授業を実施したり図書館でイベントを開催したりしてほしい、といった質問・要望が寄せられ、今後の大学や附属図書館の活動における課題が得られました。池上教授からは、イベントなどやりたいことがあれば自分でやってみる姿勢も大事だというコメントがありました。

最後に、高橋附属図書館長が、学修支援機能強化やその他のサービスの充実を実施するにあたり、附属図書館だけでできることには限りがあるので、学生や教職員の力を借りていきたい、学生も今回のイベントのように図書館でやりたいことがあったら提案してほしいと締めくくりました。

今回のイベントには学生および教職員が約120人参加し、会場となった附属図書館大岡山本館の2階フロアを埋めつくしました。附属図書館にとっては、新しくなったスペースを多くの方に見てもらうこと、また学修支援に関するイベント開催という新しい取り組みを提示することができる機会となりました。

今後も附属図書館では学修支援に関するさまざまな取り組みを実施していきます。

お問い合わせ先
研究推進部情報図書館課利用支援グループ
Tel : 03-5734-2097

「グローバル社会をいかに生き抜くか~企業と大学に求められる「工学力」~」開催報告

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1月28日、東京工業大学大岡山キャンパス西8号館E棟10階大会議室にて、シンポジウム「グローバル社会をいかに生き抜くか~企業と大学に求められる「工学力」~」が開催されました。このシンポジウムは、大学院情報理工学研究科情報環境学専攻が平成23年度より実施している「高度専門教育のためのOPLを核とした情報環境教育・研究システムの展開」プロジェクトの関連行事です。企業関係者、教員、学生、一般をあわせて、およそ80名の参加があり、活発な議論がなされました。

「高度専門教育のためのOPLを核とした情報環境教育・研究システムの展開」プロジェクト

情報環境学に関連する問題は、人間・機械-都市-地域-地球スケールの要因が複合的に作用し、その解決には、組織・専門分野の垣根を越えた研究の推進と、それに対応する教育を行う必要があります。そのために、企業や研究機関などと連携し、On the Project Learning(OPL)を核とした教育・研究システムを通じて、複合環境問題に対する問題解決志向を持つ人材育成を行うプロジェクトです。

シンポジウム「グローバル社会をいかに生き抜くか~企業と大学に求められる「工学力」~」

はじめに、情報環境学専攻長 廣瀬壮一教授が開会の挨拶として、本シンポジウムの趣旨と今年度は「国際化」をテーマとして設定した旨を述べました。

基調講演「海外建設工事におけるリスクマネジメント」

北氏による基調講演

北氏による基調講演

続いて、清水建設株式会社 国際支店副支店長 北直紀氏より「海外建設工事におけるリスクマネジメント」というタイトルで基調講演をいただきました。北氏は、日本と世界を行き来し、建設現場の最前線でご活躍中です。世界情勢の変化と海外建設市場の動向を踏まえ、Team Japan から Japan Initiative を目指し、日本以外の企業とも連携して事業を推進していくことについてのお話がありました。日本企業の競争力は何かを知るとともに、大切なことはリスクマネジメントであり、リスクのない仕事はないこと、いかにリスクを料理するか(と向き合うか)が重要であると指摘されました。海外においては、日本国内では考えられないようなリスク(例えば、戦争による破壊や工事可能時間が非常に限られてしまった事例、異常な物価上昇等)が発生することを写真とともに紹介いただきました。また、個人の知を組織の知へと培っていき、同じ失敗を違う人が繰り返さない「学習する組織」へと成長していくことの重要性や、海外は契約社会であり日本の考え方を中心に世界を見てはいけないなどのお話がありました。一方で、契約社会であっても最後は人間関係とのお話もあり、英語(語学力)だけでないコミュニケーション能力の重要さを指摘されました。

基調講演「サイエンスをテクノロジーに、国境を越えた智の競争」

橋本氏による基調講演

橋本氏による基調講演

基調講演の2人目は、シチズンホールディングス株式会社開発部の橋本信幸氏です。「サイエンスをテクノロジーに、国境を越えた智の競争」というタイトルで講演をいただきました。グローバル市場における研究開発について、EUにおける国際標準化戦略や米国におけるオープン標準化戦略、アジアにおける産業政策転換の状況を鑑み、ものづくりにおける日本型新しいビジネスモデルの構築を目指すお話がありました。具体的な事例として、光を自在に制御するオンリーワン技術について、サイエンスをテクノロジーとして実用化していった過程を紹介いただきました。実際の開発現場は泥臭い作業が多く、試行錯誤を繰り返すこと、リスクは必ず事前に検討すること、計画通りに世の中が動くと思っていてはいけないという、まさに現場でのご体験を踏まえたお話がありました。国内外を問わず、競争相手はライバルであって仲間であり、志を同じにする人と出会い懇親を深めるため、仲間作りのためのコミュニケーション能力が重要だと指摘されました。

情報環境学プロジェクトの成果報告会

第2部では、情報環境学専攻修士1年の学生が行ってきた、情報環境学プロジェクトの成果報告会が行われました。国内企業連携班が6班と、海外からの留学生と本専攻学生との混成チームによる国際班が2班の合計8班に分かれ、口頭報告を実施しました。タイトルと連携企業は下記のとおりです。

国内企業連携班

  • 1班
    「駅構内対応 ナビゲーションシステム」連携企業 清水建設
  • 2班
    「イベントお知らせアプリ」連携企業 JR東日本
  • 3班
    「災害時の適切な避難指示アプリ」連携企業 NEC
  • 4班
    「データを利用した食生活支援システム」連携企業 NTTデータ
  • 5班
    「災害時!助け合いアプリ」連携企業 ベクトル総研
  • 6班
    「おもてなし The Movie」連携企業 富士通

国際班

  • 1班
    「Investigation of methods to model a human lung undergoing FOT to aid in disease classification based on impedance results」
  • 2班
    「The Design and Analysis of a Novel Neck Protective Gear for Road Cyclists」

学生発表の様子
学生発表の様子

各班がそれぞれの問題意識に取り組み、協力企業の方々から多くのアドバイスをいただいて、プロジェクトとしての成果をまとめ上げました。学生からは、社会に通用するために必要な視点を持つことの重要性に気がついたとの意見や、プロジェクトを遂行するためのポイントや仲間と協力するためのコミュニケーションについての意見が出ました。また、企業の方々からは、柔軟な発想を具現化していくためのプロセスについての意見や、社会が求める工学力の実践として非常に良いプロジェクトであった等の意見をいただききました。

最後に情報環境学専攻 笹島和幸教授より総評が行われ、プロジェクトの開始時と比較してどれだけ増分を各々が作成できたか、社会に対して論理性を持った価値の創造を行うことに取り組めたかどうか、振り返って欲しいと締めくくりました。

お問い合わせ先
OPL事務局
Email : opl@mei.titech.ac.jp

平成27年度前期日程試験を受験される方へ

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平成27年度前期日程試験

2月25日(水) ~ 2月26日(木)

期間中キャンパス内への関係者以外の立ち入りを制限させていただいております。

注意事項

所定の試験日程による試験実施が困難になるような不測の事態が発生した場合、「高校生・受験生向けサイト」の新着入試情報で情報発信しますので、定期的に確認をお願いします。

試験場へのアクセス

試験場は以下の2つの会場があります。受験番号によって異なりますので、お間違えのないように今一度ご確認ください。

【受験番号 10001 ~ 12443 : 東京工業大学 大岡山キャンパス】

東急目黒線・大井町線 「大岡山駅」徒歩1分

  • 改札を左手に出て、マクドナルド前の信号を渡るとすぐに正門があります。

【受験番号 12444 ~ 13803 : 東京都市大学 世田谷キャンパス】

東急大井町線「尾山台駅」徒歩15分

なお、試験室等の詳細を記載した試験場案内については、2月24日(火)に「高校生・受験生向けサイト」の新着入試情報に掲載いたしますので、確認をお願いします。

平成27年度前期日程試験を受験される方へ

UCEEカフェ ~人事と語る将来の夢 開催報告

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1月24日、大岡山キャンパス石川台3号館において、UCEEネット主催の第23回UCEEカフェ ~人事と語る将来の夢 が開催されました。

UCEEネット・UCEEカフェとは

UCEE(University Coalition on Engineering Education)ネットは、産業界と学生が提携することで、世界的に重要な役割を積極的に担う人材を育成することを目的としたNPO法人です。東工大を含む八大学工学系連合会(北大、東北大、東工大、東大、名大、京大、阪大、九大)と、日本たばこ産業株式会社、三菱化学株式会社、千代田化工建設株式会社、鳥居薬品株式会社等の賛助企業により構成されています。

UCEEネットの事業のひとつであるUCEEカフェは、学生達が社会人や外国人留学生をゲストに迎え、普段の授業や研究の場では触れることのできないビジネスや異文化についてディスカッションを行うプログラムです。

第23回UCEEカフェ

司会の小柳友哉さん

司会の小柳友哉さん

司会の小柳友哉さん(生体分子機能工学専攻修士1年)の進行で「人事と語る将来の夢カフェ」が始まりました。本イベントでは、将来自分のやりたいことや職業選択の進路のこと等について、年間3000人以上の学生と対話するJT(日本たばこ産業株式会社)人事の方々と議論しました。

ゲストの平地圭氏(JT R&D企画部主任)と黒木豊氏(JT 人事部次長)の自己紹介の後、福島健太郎氏(電力中央総研究所)の進行でアイスブレイクを行いました。自己紹介を含むアイスブレイクで会場は和やかな雰囲気になりました。

JT R&D企画部 平地圭主任

JT R&D企画部 平地圭主任

JT 人事部 黒木豊次長

JT 人事部 黒木豊次長

アイスブレイクの様子
アイスブレイクの様子

続いてグループディスカッションを行いました。進路について抱える相談・疑問の内容は人それぞれです。今回のグループディスカッションでは、何かひとつのテーマに絞って議論するというより、進路や将来の選択について疑問に思っていること、質問したいことに関して参加者と人事の方が直接対話する形式をとりました。参加者によって希望する分野、学年、国籍などが異なっているため、多方面からの声があり、それに対してじっくり時間を取って話すことができました。

グループディスカッションの様子
グループディスカッションの様子

グループディスカッションの様子

参加学生からのアンケートでは、「自分で考えていたことに対してアドバイスをもらえ非常に為になった」「仕事選びのプロセスがわかった」等の感想が寄せられました。

集合写真

お問い合わせ先
特定非営利活動法人(NPO法人) UCEEネット
Email : uceenet@clear.ocn.ne.jp
Tel : 080-9511-7799

パックンによる「コミュニケーション術で高める教授力!」

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リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会 第1回 開催報告

「東工大発、世界を見据えたリベラルアーツとはなにか。」多彩なゲストを迎え、さまざまな視点から考えていく全7回の講演会シリーズです。東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。この講演会シリーズは同研究教育院の発足に向け、準備を進めている同研究教育院ワーキンググループが、スーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しています。

この講演会は東工大の大学院生、教職員を対象としていますが、東工大のリベラルアーツへの取り組みの一端を各講演会の様子を通じてご紹介します。

第1回
日時
2月12日(木)15:00~18:00
場所
本館H111講義室
タイトル
「コミュニケーション術で高める教授力!~授業、学会、メディアでも使えるテクニック~」
講師
パトリック・ハーラン(パックン)(本学非常勤講師)

パトリック・ハーラン(パックン)講師
パトリック・ハーラン(パックン)講師

パトリック・ハーラン(パックン)講師がまず強調したのは「どんな規模でも物語が大事」ということでした。小さな子に鬼の話をするといった、教育のための「物語」に始まり、たとえば世界の歴史を考えるときにも、「物語」は正確な説明以上に印象に残るものです。パックン曰く「物語はときに真実よりも大きな作用を及ぼす」――ここでの「真実」は、経験・思考によって確認できる事実と言いかえてよいでしょう。

さらに講演では、一般に論理のこととしてのみ捉えられがちなロゴス(概念、意味)の、もう一つの側面、すなわち表現としてのロゴスに光が当てられました。まさにこれが「物語」の第一要素です。その表現の魅力に、話者への信頼、聞き手の心の動きが合わさったとき、思考をこえていながら鮮やかに感じられる「物語」が生まれるのです。

講演会場では「お互いが予想もしていなかったアイデアを引き出す会話」を目指して、参加者どうしの会話が実践されました。それはちょうど、それぞれが持っている「枠」(フレーム)を交換するだけでなく、もちよった枠のどこにも入らない広がりをともに意識する試みのようでした。もちろん、論理やそれぞれの体験があってこそ「枠」が伝わり、そこから踏み出す面白さもあります。

参加者どうしの会話と笑いを引きだし、古代以来の修辞学を足場に、古く新しい<リベラルアーツ>の流れを感じさせてくれた講演となりました。私たちはどんな<自由>の「物語」を作れるでしょうか。

お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院WG
Email : ila2015@liberal.titech.ac.jp

地震工学論文誌の「最も引用された論文」に選出

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トロント大学のDeepak R. Pant研究員、東工大のAnil C. Wijeyewickrema准教授らが発表した論文が、地震工学の論文誌Earthquake Engineering and Structural Dynamicsで、2012年から2013年にかけて最も引用された論文の一つに選ばれました。Deepak R. Pant研究員は東工大で修士・博士課程を修了しています。以下はその論文の概要です。

RC造免震構造物の隣接構造物との衝突に関する応答の解析的研究

Anil C. Wijeyewickrema准教授

Anil C. Wijeyewickrema准教授

地震による構造物被害は多くの死傷者や経済的損失を生む。それゆえ地震工学では、そのような構造物被害を減らすような革新的な技術を開発する研究が行われてきた。免震技術は実績のある技術の一つであり、構造物基部にベアリングやアイソレータなどの装置を取り付けたものである。これらの装置は、地震による変形をベアリング部分に限定し上部構造物の損傷を小さく抑えるために、あえて水平方向に剛性が低く設計される。しかしこの技術は、大地震下での基部の変形により構造物が隣接する構造物と衝突する可能性をはらんでいる。このような衝突により、構造物は大きな損傷を受けてしまう。構造物の衝突は複雑な現象であるため、その数値シミュレーションは挑戦的な課題とされている。多くの先行研究では、構造物の弾性モデルとシンプルな衝撃力モデルを想定した簡易的方法を用いている。この研究論文は、RC造(鉄筋コンクリート構造)免震構造物の応答に対する衝突の影響が、衝突する構造物の違いと構造物間の間隔の影響を評価することにより調べられている。その目的から、基部に擁壁を有する典型的な四階建てRC造免震構造物と四階建てRC造耐震構造物の衝突挙動が、新たな衝撃力モデルを用いて調べられた。構造物と免震システムの非線形性を考慮した三次元の数値解析シミュレーションが、様々な地震動レコードを用いて行われている。この研究により複雑である構造物の衝突に対する洞察を得ることができ、また免震構造物の応答において構造物の衝突は重要な影響を持っていることがわかった。近接した耐震構造物との衝突では免震構造物に大きな損傷が見られないが、免震構造物と擁壁間のみの衝突では構造物の崩壊が起きることが示された。この研究論文の成果は、より良い免震構造物を設計するための次世代のガイドラインに有益な情報となるだろう。

論文情報

著者:
Pant, D. R. and Wijeyewickrema, A. C.
論文タイトル:
Structural performance of a base-isolated reinforced concrete building subjected to seismic pounding
掲載誌:
Earthquake Engineering and Structural Dynamics, 41: 1709-1716.
DOI:

高周波無線給電型の超低電力無線機で多値変調を実現

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要点

  • 5.8GHz帯、113μWで動作する無線送信機に、多値変調を適用
  • 「直交バックスキャッタリング回路」により32QAM,2.5Mビット/秒を実現
  • 無線機は高周波無線給電技術で生成した電源により動作

概要

東京工業大学フロンティア研究機構の益一哉教授と精密工学研究所の伊藤浩之准教授、ソリューション研究機構の石原昇特任教授らの研究グループは、高周波(RF)無線給電型の超低電力無線機で、多値変調による無線信号伝送技術を開発した。従来、ミリワット未満の低消費電力では周波数利用効率に優れる直交位相振幅変調[用語1] といった多値変調の実現が困難だったが、RFID技術[用語2] をベースとした「直交バックスキャッタリング回路技術」という新技術を駆使して実現した。

開発した無線機は最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル)のシリコンCMOSプロセスで試作し、市販の無線機の10分の1未満である113μW(マイクロワット)という極めて小さな消費電力で32QAM[用語3] の信号伝送に成功した。また、この無線機はRF無線給電により生成した電源で動作させた。ワイヤレスセンサネットワークの大容量化・低価格化・端末小型化につながる技術である。

研究成果は22日から米国サンフランシスコで開かれる「ISSCC(国際固体回路国際会議)」で現地時間24日に発表する。

研究背景・意義

様々な社会課題の解決手段としてセンサネットワーク技術が重要になってきた。2020年頃までにはセンサの出荷数が年間1兆個を超えると予想されている。すなわち,我々の周辺に何百個ものセンサが存在するようになり、これらがネットワークにつながる時代が間もなく到来する。この時、多数のセンサ端末が無線通信するため、無線トラフィックが増加し電波資源の枯渇がより深刻な問題となる。さらにセンサ端末の数が膨大であるため、電池交換や充電といったメンテナンスに要するコストも大きな負担となる。

メンテナンスの問題に関しては、環境発電技術やRFID技術を用いて電池レスにすることで解決できる。ただし、これらの技術で生成できる電力はせいぜい百μW程度であるため、無線送信機は低電力化のために単純なアーキテクチャしか選択できず、OOK[用語4] といった周波数効率が悪い変調方式しか実現できなかった。したがって、将来のセンサネットワークにおいて不可避なメンテナンスと電波資源枯渇という問題を同時に解決できる技術が存在しなかった。

同グループはこれを解決するために,直交バックスキャタリング回路技術という新規の直交変調技術を開発した。デジタル回路で一般に用いられるシリコンCMOS集積回路として実装し、環境発電素子により得られる微弱電力で動作可能な113μWの超低消費電力と、周波数利用効率が高い32QAMという多値変調を同時に実現した。さらに、この無線機チップを搭載したモジュールを試作し、RF無線給電により生成した微弱電力で無線機を動作させ、無線信号伝送に成功した。

技術内容

無線給電で動作する低電力無線送信機としてパッシブタイプRFIDタグ技術があり、これは親機から供給する搬送波をRFIDタグで反射させるバックスキャッタリングによって通信を行う。この反射波の振幅あるいは位相はRFIDタグのアンテナ負荷インピーダンスを送信データに応じて変化させることによって変調される。変調器がスイッチなどの受動回路のみで送信機を構成することができるため、マイクロワットオーダーの低い消費電力で動作させることができる。

一方、RFIDタグで周波数効率が高い多値変調を行う場合、インピーダンスが異なる負荷素子が多値数分必要だった。従来技術ではサイズが大きい受動素子を多数使うことになるため、面積やコストが増加する問題があった。また受動素子の特性が製造時のばらつきや温度変動の影響を大きく受けるため、変調精度が悪く、32QAMといった高多値変調が困難だった。

携帯電話などで用いられている無線送信機では多値変調を実現できるダイレクトコンバージョン方式などが採用されている。しかし、この方式で必要な周波数シンセサイザといった高周波回路がミリワット以上の電力を消費するため、高周波無線給電技術と組み合わせて利用することが困難である。

そこで同研究グループはバックスキャタリング技術とミキサ技術を応用することで周波数変換と直交変調を行う「直交バックスキャタリング技術」を開発し、無線送信機において低消費電力と多値変調を両立することに成功した。この技術では,トランジスタの入力インピーダンスを時間的に変化させることで,反射波の周波数変換と振幅・位相の変調を行う。

図1に開発した無線給電型無線機の全体構成を示す。この無線機は電源回路、受信機(RX)および送信機(TX)の3ブロックからなる。電源回路では親機から送信される無線給電のためのRF信号を整流し、一旦キャパシタに電力を蓄える。キャパシタに十分なエネルギーが蓄えられた後、送信機および受信機を動作させるための安定な電源電圧を生成する。送信機および受信機に供給する電源電圧を0.6Vと標準の電源電圧の半分にすることにより、消費電力を削減している。

開発した無線機のブロック図

図1. 開発した無線機のブロック図

図2に開発した直交バックスキャタリング技術を実現する送信機回路を示す。この技術では従来のRFID技術のように親機が送信する搬送波を用いることで高周波の周波数シンセサイザを排除する。直交変調器(QMOD)はRF搬送波と中間周波数(IF)で動作するミキサ(IF Mixer)が生成する変調信号(I/Q信号)を乗算することで周波数変換し、5.8GHz帯の多値変調信号を実現する。

送信機部分の回路図

図2. 送信機部分の回路図

従来のRF送信機で用いられている一般的なミキサ回路では図3(a)のパッシブミキサのように、乗算したい2つの信号の入力と乗算出力が別の端子である。したがって,RFIDのように1つのアンテナを使って親機が供給するRF搬送波信号を受信し乗算に利用しながら、乗算結果を出力するという動作には適していない。従来のバックスキャタリング技術では図3(b)に示すように、親機が供給するRF搬送波信号の受信端子と乗算結果の出力端子を共有できるが、ミキサに入力する信号はデジタル信号である。

この回路では図3(c)に示すように、デジタル信号ではなくIF帯のアナログI/Q信号を入力する技術を開発することによって、RF搬送波信号を利用してIF帯から5.8GHz帯へ周波数変換を行った。この結果、バックスキャッタリング変調信号の多値化を実現し、さらにIFミキサとQMODをパッシブ型の回路で構成できるようになったことで、主な電力消費がIF帯ローカル信号生成・分配のみに抑えられた。

RFミキサ部における信号と伝達方向 (a)一般的なパッシブミキサ、(b)一般的なバックスキャタリング技術、(c)本成果の回路

図3. RFミキサ部における信号と伝達方向 (a)一般的なパッシブミキサ、(b)一般的なバックスキャタリング技術、(c)本成果の回路

開発した無線機は最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル)のシリコンCMOSプロセスで試作した。図4にチップ写真を示す。回路部の面積は0.14mm2である。図5に送信機出力信号のコンスタレーションおよびスペクトラムの測定結果を示す。送信機は消費電力113μWで2.5Mb/sの32QAM変調を4.6%のエラーベクトルマグニチュード(Error Vector Magnitude: EVM)で実現した。このときの周波数効率は3.3b/s/Hzである。図6にこれまでに発表された低電力送信機の消費電力および周波数効率の比較を示す。今回の成果は低消費電力でありながら、32QAMという周波数効率が高い変調を実現した点が特徴である。

65nm Si CMOSプロセスにより製造したチップの写真

図4. 65nm Si CMOSプロセスにより製造したチップの写真

送信機出力信号のコンスタレーションとスペクトラム

図5. 送信機出力信号のコンスタレーションとスペクトラム

最新の超低電力無線送信機との性能比較

図6. 最新の超低電力無線送信機との性能比較

図7に開発したチップを用いた無線通信モジュールを示す。これを用いて温度センシングのデモンストレーションを行った。無線給電により生成した電力を利用して無線通信を行い、温度データを取得することに成功した。

開発したチップを用いた無線通信モジュール

図7. 開発したチップを用いた無線通信モジュール

発表予定

この成果は、2月22日~26日にサンフランシスコで開催される「2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC 2015): 2015年 IEEE国際固体回路国際会議」のセッション「Session 13 - Energy-Efficient RF Systems」で発表する。講演タイトルは「A 5.8GHz RF-Powered Transceiver with a 113μW 32-QAM Transmitter Employing the IF-based Quadrature Backscattering Technique(IF直交バックスキャタリング回路技術を用いた113μW 32-QAM送信機を有する5.8GHz帯RFパワード送信機)」である。現地時間24日16時45分から発表する。

論文情報

掲載誌 :
2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC 2015): 2015年 IEEE国際固体回路国際会議
論文タイトル :
A 5.8GHz RF-Powered Transceiver with a 113μW 32-QAM Transmitter Employing the IF-based Quadrature Backscattering Technique(IF直交バックスキャタリング回路技術を用いた113μW 32-QAM送信機を有する5.8GHz帯RFパワード送信機)
著者 :
Atsushi Shirane (白根篤史:博士後期課程,発表者), Haowei Tan (譚昊イ:修士課程), Y. Fang (方一鳴:修士課程修了生), Taiki Ibe (伊部泰貴:修士課程), Hiroyuki Ito (伊藤浩之:准教授), Noboru Ishihara (石原昇:特任教授), Kazuya Masu (益一哉:教授)

用語説明

[用語1] 直交位相振幅変調 : 互いに独立な2つの搬送波 (同相(In-phase)搬送波及び直角位相(Quadrature)搬送波)の振幅及び位相を変更・調整することによってデータを伝達する変調方式。

[用語2] RFID技術 : ID情報を埋め込んだ無線タグと電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりする技術。

[用語3] 32QAM : 直交位相振幅変調の一種で、搬送波の振幅と位相を変調することで32の状態を表す方式。

[用語4] OOK : 搬送波の有無によりデジタルデータを表す変調方式。

問い合わせ先

フロンティア研究機構
教授 益一哉
Email : masu.k.aa@m.titech.ac.jp
TEL : 045-924-5010
FAX : 045-924-5022


「温めると縮む」新材料を発見

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「温めると縮む」新材料を発見
―既存材料の2倍の収縮、少量でエポキシ樹脂の熱膨張を相殺―

概要

東京工業大学応用セラミックス研究所の東正樹教授らは、中央大学、高輝度光科学研究センター、京都大学との共同研究により、室温付近で既存材料の2倍以上の大きさの「負の熱膨張」[用語1]を示す酸化物材料「BiNi1-xFexO3(ビスマス・ニッケル・鉄酸化物)」を発見した。添加元素の量を変化させることで負の熱膨張が現れる温度域を制御できるほか、これまでの材料の問題点だった温度履歴[用語2]を抑制することもできる。

負の熱膨張材料は光通信や半導体製造装置など、精密な位置決めが求められる局面で、構造材の熱膨張を打ち消(キャンセル)したゼロ熱膨張物質[用語3]を作製するのに使われる。今回の新材料をエポキシ樹脂中に少量分散させることにより、熱膨張をゼロにできることも確認した。

共同研究グループは東工大の東教授のほか奈部谷光一郎、村松裕也、中野紀穂の各大学院生、北條元助教と中央大の岡研吾助教、高輝度光センターの水牧仁一朗副主幹研究員、肥後祐司研究員、原子力機構の安居院あかね研究主幹、京大の林直顕研究員、高野幹夫名誉教授(現一般財団法人 生産開発科学研究所 機能性酸化物研究室室長)。研究成果は、2月12日発行の米国科学誌「アプライド・フィジックス・レター(Applied Physics Letter)」オンライン版に掲載された。

研究の背景

ほとんどの物質は温度が上昇すると、熱膨張によって長さや体積が増大する。光通信や半導体製造などの精密な位置決めが要求される局面では、このわずかな熱膨張が問題になる。そこで、昇温に伴って収縮する「負の熱膨張」を持つ物質によって、構造材の熱膨張を打ち消す(キャンセルする)ことが行われている。

だが、現状では負の熱膨張を持つ物質の種類が少なく、市販品では最高でも温度上昇1度当たり100万分の40(-40×10-6 / ℃)の負の線熱膨張係数(収縮)と、小さいことが問題だった。東教授が2011年に報告したBi0.95La0.05NiO3(ビスマス・ランタン・ニッケル酸化物)は温度上昇1度当たり100万分の82(-82×10-6 / ℃)という巨大な負の熱膨張を示すが、温度履歴が大きいことが問題だった。また、熱膨張抑制材としての実証もなされていなかった。

研究成果

今回の研究では、図1に示す「ペロブスカイト[用語4]」という構造を持つ酸化物BiNi1-xFexO3(ビスマス・ニッケル・鉄酸化物)が、室温近傍の温度域で、温度上昇1度当たり100万分の187(-187×10-6 / ℃)という、Bi0.95La0.05NiO3の2倍以上の負の線熱膨張係数[用語5]を持つことを発見した。これにより、熱膨張抑制材として用いる量を半分に減らすことが出来る。

BiNi1-xFexO3の低温(左)と、高温(右)の結晶構造

図1. BiNi1-xFexO3の低温(左)と、高温(右)の結晶構造

大型放射光施設SPring-8[用語6]のビームラインBL02B2での放射光X線回折[用語7]による精密構造解析と、BL27XUでの放射光X線吸収実験[用語8]から、低温ではビスマス(Bi)の半分が3価、残りの半分が5価という、特異な酸化状態を持っているが、昇温すると、ニッケル(Ni)の電子が一つ5価のビスマスに移り、ニッケルの価数が2価から3価に変化し、酸素をより強く引きつけるようになることが分かった。

この際、ペロブスカイト構造の骨格をつくるニッケル(Ni)-酸素(O)の結合が縮むため、約3%の体積収縮が起こる。この変化は徐々に起こるので、広い温度範囲にわたって連続的に長さが収縮する、負の熱膨張が観測される。図2のように、X線回折実験で求めた微視的な格子定数[用語9]変化と、熱機械分析装置[用語10]を用いた巨視的な試料長さの変化の両方で、負の熱膨張を確認した。また負の熱膨張が起こる温度域を、ニッケル(Ni)を置換する鉄(Fe)の量を変化させることによってコントロールできることを突き止めた。Bi0.95La0.05NiO3(ビスマス・ランタン・ニッケル酸化物)ではLa濃度を増やした場合に70℃以上にもなってしまっていた温度履歴幅を、BiNi1-xFexO3(ビスマス・ニッケル・鉄酸化物)では組成によらず15℃以下に抑制できた。

X線回折実験で求めたBiNi1-xFexO3の体積の温度変化

図2. X線回折実験で求めたBiNi1-xFexO3の体積の温度変化

さらに、BiNi0.85Fe0.15O3の粉末をビスフェノール型のエポキシ樹脂に、体積にして18%分散させた図3のコンポジット(複合)材料を作成、温度上昇1度当たり100万分の80(80×10-6 / ℃)というエポキシ樹脂の熱膨張を相殺し、27℃から57℃の範囲でゼロ熱膨張を実現できることも示した。

18体積% BiNi0.85Fe0.15O3/エポキシ樹脂コンポジットの写真と、熱機械分析装置で測定した、エポキシ樹脂、BiNi0.85Fe0.15O3、コンポジットの試料長さ温度変化。エポキシ樹脂の大きな熱膨張がBiNi0.85Fe0.15O3の添加によって押さえられ、300-320K(27℃-57℃)の範囲で、ゼロ熱膨張が実現していることが分かる。
図3.
18体積% BiNi0.85Fe0.15O3/エポキシ樹脂コンポジットの写真と、熱機械分析装置で測定した、エポキシ樹脂、BiNi0.85Fe0.15O3、コンポジットの試料長さ温度変化。エポキシ樹脂の大きな熱膨張がBiNi0.85Fe0.15O3の添加によって押さえられ、300-320K(27℃-57℃)の範囲で、ゼロ熱膨張が実現していることが分かる。

今後の展開

今回、新たに発見された負の熱膨張材料は、精密光学部品や精密機械部品など、既存の負の熱膨張材料が担っていた様々な分野での利用が期待される。それに加えて、絶縁体-金属転移を伴うことから、長さの変化を電気抵抗の巨大な変化に変換する、高精度のセンサー材料への応用へつながることも考えられる。

付記

本研究の一部は、文部科学省・科学研究費補助金・新学術領域研究「ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 outer」(代表・田中功京都大学教授)、日本学術振興会・科学研究費補助金・若手研究B「巨大な正方晶歪みのもたらす特異的な物性の探索 outer」(代表・岡研吾中央大学助教)、「電界誘起の構造相転移を用いた巨大な圧電応答の実現 outer」(北條元東京工業大学助教)、日本板硝子材料工学助成会、ホソカワ粉体工学振興財団の援助を受けて行った。また、エポキシ樹脂はナミックス株式会社から提供を受けた。

用語説明

[用語1] 負の熱膨張 : 通常の物質は温めると体積や長さが増大する、正の熱膨張を示す。しかし、一部の物質は温めることで可逆的に収縮する。こうした性質を負の熱膨張と呼び、ゼロ熱膨張材料を開発する上で重要である。

[用語2] 温度履歴 : 昇温時と降温時で試料長さに差が出ること。

[用語3] ゼロ熱膨張材料 : 温度を変化させても伸び縮みしない材料。ナノテクノロジーを支える精密な位置決めのために重要。正の熱膨張を持つ物質と負の熱膨張を持つ物質を組み合わせることで実現する。

[用語4] ペロブスカイト : 一般式ABO3で表される元素組成を持つ、金属酸化物の代表的な結晶構造。

[用語5] 線熱膨張係数 : 温度を1℃変化させたときの、長さの相対的な変化量。

[用語6] 大型放射光施設SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その運転管理と利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(ギガ電子ボルト)に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

[用語7] 放射光X線回折実験 : 物質の構造を調べる方法。放射光X線を試料に照射し、回折強度を調べることで結晶構造(原子の並び方や原子間の距離)を決定する。

[用語8] X線吸収実験 : 連続的なスペクトルを持つ放射光X線を、エネルギーを変化させながら試料に照射し、透過してきたX線の強度を分析することで原子の価数や電子状態についての知見を得る。

[用語9] 格子定数 : 結晶構造中の原子の繰り返し周期の長さ。この変化が、物質の巨視的な長さの変化につながる。

[用語10] 熱機械分析装置 : 試料長さの温度変化を測定する装置。

論文情報

掲載誌 :
Applied Physics Letters, 106 (2015)
論文タイトル :
Suppression of Temperature Hysteresis in Negative Thermal Expansion Compound BiNi1-xFexO3 and Zero-Thermal Expansion Composite
著者 :
K. Nabetani, Y. Muramatsu, K. Oka, K. Nakano, H. Hojo, M. Mizumaki, A. Agui, Y. Higo, N. Hayashi, M. Takano, and M. Azuma
DOI :

問い合わせ先

本研究全般に関すること

東京工業大学 応用セラミックス研究所
教授 東正樹
Email : mazuma@msl.titech.ac.jp
TEL : 045-924-5315, 5342
FAX : 045-924-5318

中央大学問い合わせ先

中央大学 理工学部
助教 岡研吾
Email : koka@kc.chuo-u.ac.jp
TEL : 03-3817-1922
FAX : 03-3817-1895

高輝度光科学研究センター問い合わせ先

高輝度光科学研究センター
副主幹研究員 水牧仁一朗
Email : mizumaki@spring8.or.jp
TEL : 0791-58-0802(内線3870)
FAX : 0791-58-0830

京都大学問い合わせ先

京都大学物質-細胞統合システム拠点
研究員 林直顕
Email : hayashi@icems.kyoto-u.ac.jp
TEL : 075-753-9773
FAX : 075-753-9761

本学学生がエッジコンペ2015優勝

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本学学生3名を含むチームが、エッジ イノベーション チャレンジ コンペティション2015(EDGE INNOVATION CHALLENGE COMPETITION 2015:エッジコンペ)に参加し、優勝しました。

メンバー

全員が、博士課程教育リーディングプログラムouterに採択された、それぞれの大学が実施するプログラムに所属する学生です。

氏名
所属
学年
リーディングプログラム
辻理絵子さん
東京工業大学大学院理工学研究科
国際開発工学専攻
博士後期課程1年
グローバルリーダー教育院
安田翔也さん
東京工業大学大学院総合理工学研究科
知能システム科学専攻
修士課程2年
情報生命博士教育院
水口佳紀さん
東京工業大学大学院生命理工学研究科
生命情報専攻
修士課程2年
情報生命博士教育院
下島洋さん
早稲田大学理工学術院先進理工学研究科
先進理工学専攻
修士課程2年
リーディング理工学博士プログラム
橋香奈さん
東京大学大学院医学系研究科
病因・病理学専攻
博士後期課程2年
ライフイノベーションを先導するリーダー養成プログラム

エッジコンペとは

文部科学省EDGEプログラム(EDGE:Enhancing Development of Global Entrepreneur)主催によるアイデアコンペです。EDGEプログラムは、日本におけるイノベーション創出を担う人材育成を目的とした取り組みで、現在、全国13の大学が実施しており、東工大にも設置されています。

本コンペティションは、「科学技術視点」と「人間視点」の2つの視点を持つアイデア創出が求められます。特徴は2つあり、1つは、評価されるポイントに、アイデアそのものの良さもさることながら、アイデア創出のプロセスとアイデア実行へ向けた今後の実行計画も含まれる、という点にあります。もう1つは、本コンペで競い合うアイデアのテーマが発表されるキックオフ ワークショップから、わずか2週間でアイデアを練らなければならない点です。つまり、2週間という限られた時間をいかに効率的に使い本質へ近付くか、チームの戦略も問われます。

参加チームは、書類選考により約250名の中から選ばれた13チームで、参加者構成は、社会人が約9割・学生1割という構成です。 1月24日のキックオフ ワークショップで発表されたテーマは「働く母親と子供の、より良いコミュニケーションに向けて」で、2月8日に行われる発表会に向けて、各チーム新しい製品・サービスのアイデアを練り上げました。

優勝アイデア

OYAKonnectがある未来とない未来で生活がどう変わるのかプレゼン中

OYAKonnectがある未来とない未来で
生活がどう変わるのかプレゼン中

優勝アイデアは、「OYAKonnect」という情報提供サービスです。具体的には、我が子の保育園での発話から分析した興味・友達マップと保育園での写真、先生からのコメントをママに配信します。このOYAKonnectを見ることで、時間が限られたママでも、手軽に我が子の興味や遊びをお友達との社会関係を絡めて知ることができます。これにより子供との会話の幅を広げ、コミュニケーションを深めることができるシステムです。

優勝チームの代表 辻理絵子さんは以下のようにコメントしています。

今回、数あるチームから我々が優勝できたこと本当に嬉しく思います。このアイデア創出には多くの方のご協力を賜りました。改めて感謝申し上げます。我々チームの発想は、メンバー誰一人として子どもを育てた経験がない学生だからこそ新しいアイデアが生み出せるとの考えに基づき、あえて人間視点から出発するのではなく、科学技術視点から出発しました。初めにメンバーの専門分野や最近話題の技術をリストアップし、そこから技術同志の融合ができないか話し合いを重ねました。そこでできたアイデアを、人間視点でも有用なものとするために、ユーザインタビューを複数ステップ繰り返し改善していくことで、科学技術視点・人間視点の2つを合わせ持つアイデアを創出できたと思っています。チームでは、本アイデアについて今後の方向性を検討していますので、この報告をご覧の方でご興味があれば、以下の問い合わせ先までご連絡ください。

チームメンバー(左から辻さん、水口さん、下島さん、安田さん、橋さん)
チームメンバー(左から辻さん、水口さん、下島さん、安田さん、橋さん)

お問い合わせ先

大学院理工学研究科国際開発工学専攻
辻理絵子
Email : tsuji.r.aa@m.titech.ac.jp

スーパーグローバル大学創成支援事業キックオフ・シンポジウム 開催報告

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スーパーグローバル大学創成支援事業キックオフ・シンポジウム 「真の国際化のためのガバナンス改革による“Tokyo Tech Quality”の深化と浸透」が、1月27日に開催されました。この日はまさに快晴で、学内外からシンポジウムには約220名の参加があり、大盛況を収めました。

満員の聴衆
満員の聴衆

東京工業大学は、文部科学省による「スーパーグローバル大学創成支援(タイプA:トップ型)」に採択されています。この事業は、日本の高等教育の国際競争力の向上を目的としています。世界レベルの教育研究を行う日本のトップ大学が取り組む、海外の卓越した大学との連携や大学改革による徹底した国際化に対し、重点支援を行うものです。

東京工業大学 三島良直学長

東京工業大学 三島良直学長

キックオフ・シンポジウムは三島良直学長の開会挨拶に始まり、文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室 松本英登 室長よりご挨拶いただきました。

第一部「東工大と世界の大学の取り組み」では、はじめに三島良直学長より「東京工業大学 スーパーグローバル大学創成支援事業構想」という題目で、本事業における構想・取組および本学の将来像について講演を行いました。

続いて、海外からお招きした2名の方のご講演が行われました。

シンガポール南洋理工大学(NTU) ラム キンヨン副学長(研究担当)

シンガポール南洋理工大学(NTU) ラム キンヨン副学長(研究担当)

1人目は、シンガポール南洋理工大学(NTU)のラム キンヨン副学長(研究担当)です。「研究と学術発展を支援する優れた組織運営への取り組み:NTUのケーススタディ」という題目で講演いただきました。NTUでは、2010年以来強化分野を特定し、より迅速で包括的なガバナンス体系確立のためのプログラムを開始、大学全体のパフォーマンスの向上をめざしています。その結果、世界大学ランキングは上昇し続けています(2015年現在、Times Higher Education世界大学ランキング第61位)。

本講演では一連の事例を提示し、世界トップ企業との大型研究・教育プロジェクトを構築・強化するうえで優れたガバナンスの役割がいかに重要であるかを強調しました。そして、ガバナンスを展開する過程で直面する課題、NTUのガバナンス改革への取り組みによる効果、将来的な展望などについてお話いただきました。

カリフォルニア大学バークレー校 フォックス アーマンド教授

カリフォルニア大学バークレー校 フォックス アーマンド教授

2人目は、米国カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)工学部電気工学・コンピュータサイエンス専攻フォックス アーマンド教授です。「カリフォルニア大学バークレー校のオンライン教育の現状と課題」という題目で講演いただきました。カリフォルニア大学バークレー校(2015年現在、Times Higher Education世界大学ランキング第8位)は、2012年に本格始動したオンライン講座「MOOC(Massive Open Online Course)」の初期主要メンバーとしてコーセラ(Coursera)による初の公開講座に参加しました。また、MITやハーバード大学とともにエディックス(EdX)を共同で設立しています。

本講演では、UC Berkeleyのオンライン教育のヴィジョンについて、MOOCsと一般的なオンライン教育の両面から紹介がありました。また、UC BerkeleyがMOOCsの活用を通じ、新しい課題やチャンスにいかに取り組んできたかを、その失敗例も含めてお話しいただきました。

第二部は「若手教員はかく考える。-グローバル時代の大学教育とは?」の題目で、パネルディスカッションが行われました。

まずは、本パネルディスカッションのゲストスピーカーとして、レノボ・ジャパン株式会社UX&ノートブックSW開発部の吉山典利部長より、「グローバル企業が求めるこれからの人材」という題目で講演いただきました。

その他のパネリストは、本学大学院情報理工学研究科計算工学専攻博士2年ケロラ・トミーさん、本学大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻修士2年で、カリフォルニア大学バークレー校に交換留学生として留学経験のある磯野文香さん、本学大学院理工学研究科工学系共通講座クロス・ジェフリー教授、そして本学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻齋藤滋規准教授です。本学の佐藤勲副学長(国際企画担当)の司会進行のもと、パネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

パネリストの闊達な意見により、本学の教育システムや学生の気質の特長が浮き彫りにされ、さらに目指すべき姿についてシンポジウム参加者からも様々な意見がありました。今後、東工大がTokyo Tech ブランドを世界に認知させるためには、具体的にどのような取り組みが必要であるか等について議論が交わされました。

グローバル化する社会における次世代のリーダー育成は、国を超えた高等教育全体の課題であることを改めて共有した、大変有意義なシンポジウムとなりました。

お問い合わせ先
国際部国際連携課 キックオフ・シンポジウム担当
event.sgu@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2981, 7606

松井将器さん、青梅マラソンで堂々の7位

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2月15日に行われた第49回青梅マラソン男子30キロの部に、本学工学部機械宇宙学科3年の松井将器さんが初出場しました。

実業団の一線級ランナーも出場する中、1時間35分00秒(従来の東工大記録を4分以上短縮)の7位、学生の中では2番目と大健闘の結果を残しました。今回は、2週間後の3月1日に行われるびわ湖毎日マラソン大会に向けた最終練習の位置づけでの参加でした。

今後ともぜひご声援よろしくお願いします。

練習中の松井さん

お問い合わせ先
陸上部顧問 杉野暢彦
Email : sugino@ip.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5452

末松安晴栄誉教授への感謝状贈呈式

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2月5日、末松安晴栄誉教授に対する感謝状の贈呈式が、蔵前会館大会議室で行われました。

末松栄誉教授は、光通信の世界的研究者として知られており、2014年には大容量・長距離光ファイバー通信の実現に大きく貢献したとして日本国際賞(注釈)を授与されています。この度、末松栄誉教授より「若い研究者に対し、研究活動を奨励する一助にしてほしい」と、本学に多額の寄附をいただきました。このことに対し、今回の感謝状贈呈式が行われました。

末松栄誉教授からは「大学在職当時は研究環境に恵まれ、存分に研究ができた。ご恩返しのつもりで大学に対し寄附を行った」と話がありました。

学長より感謝状の贈呈

学長より感謝状の贈呈

末松栄誉教授のあいさつ

末松栄誉教授のあいさつ

(注釈)日本国際賞
全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に与えられる賞。毎年、科学技術の動向を勘案して決められた2つの分野で受賞者が選定される。

お問い合わせ先
基金室募金グループ
Email : koh.bok@jim.titech.ac.jp
TEL : 03-5734-2415

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