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Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
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留学生が農村の暮らしを体験

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今年で7回目となる留学生対象の角田市農村体験旅行を、2月9日~12日に実施しました。「東京/大阪だけが日本じゃない」というキャッチフレーズで、これまで140名以上の東工大の留学生(一部日本人学生も含む)と研究員を宮城県角田市に送って来ました。

角田では、歓迎会に大友角田市長、菊池教育長が来てくださるなど、市役所を始め、同市の農業振興公社の全面的なバックアップをいただいています。

歓迎会

農村の仕事体験

内容は、それぞれの参加者が農業、畜産業等を営む家庭にホームステイさせていただき、仕事を手伝う、あるいはそば打ちの体験など、さまざまな「農村の暮らし」を体験します。また、同市が2011年の津波被害の場所に近いことから、未だに被害の傷の癒えない山元町などを訪ね、記念の建物として残されている中浜小学校跡を見学しました。

結果として、角田の皆さんの暖かい心にふれて別の角度からの日本を体験することとなりました。

そば打ち体験
角田の皆さんとのふれ合い

参加メンバー

お問い合わせ先

東京工業大学留学生センター
Email : takei@ryu.titech.ac.jp


2015年4月学部入学の合格発表

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2015年4月学部入学に関する各選抜試験の合格者受験番号は、大岡山キャンパス「なごみの広場」(附属図書館の先)に掲示します。この掲示が正式なものですので必ず確認してください。

なお、合格者受験番号は、以下のwebページ上でも公開します。

各試験のwebページ上での発表日時は以下のとおりです。

試験名
発表日
学部入学者選抜試験 【前期日程】
2015年3月7日13:00頃
私費外国人留学生特別入試
2015年3月7日13:00頃
学部入学者選抜試験【後期日程】(第7類)
2015年3月20日13:00頃

理工系学生能力発見開発プロジェクト第9回シンポジウム「進化する教養教育~東工大~」

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1月29日に、理工系学生能力発見開発プロジェクト第9回シンポジウム「進化する教養教育~東工大~」を開催しました。

2016年4月から始まる「東工大教育改革」では、専門教育と同様に教養教育を重視しており、よりよい教育のために、そのあり方は大きな課題の一つとなってきます。

本シンポジウムには、水本哲弥副学長(教育運営担当)、本川達雄名誉教授、上田紀行教授(リベラルアーツセンター)、伊藤亜紗准教授(リベラルアーツセンター)をパネリストとして招き、東工大学部生の司会者をはじめ、学生を交えて熱く議論を行いました。

左:司会を担当した貴志崇之さん(工学部制御システム工学科2年)右:シンポジウムの趣旨を説明した石曽根香菜さん(工学部第2類1年)

左:司会を担当した貴志崇之さん(工学部制御システム工学科2年)
右:シンポジウムの趣旨を説明した石曽根香菜さん(工学部第2類1年)

シンポジウムでは、自分の専門のテーマに沿った教養の必要性や、社会の多様性と教養教育の関係、大学受験までの詰め込み教育の問題点、生物学と他の理系科目との違い、東工大生のコミュニケーション力を教養で改善できるか、社会人から見た大学の教養教育の重要性、教育改革後の東工大の授業方法についてなど、教養教育をさまざまな視点から論じることで、教養教育の大切さを再認識することができました。

理工系学生能力発見プロジェクトでは、シンポジウムのテーマ立案からパネリストへの出演交渉、開催当日の運営など、全ての活動を学生が主体となって行っています。企画を担当した工学部二年制御システム工学科の貴志崇之さんに、シンポジウムを終えての感想を聞きました。

「今回のシンポジウムを通して、理系学生は社会に対して当事者意識を持つことが大切だと感じました。理系学生は社会をシステムの視点から考えがちですが、実際に人々がその技術のことをどう思うのかを常に意識する必要があります。教養を身につけて、人の気持ちを考えることができる理系学生になりたいと改めて思いました。」

シンポジウムの様子

平成26年度手島精一記念研究賞授与式

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2月17日に東工大蔵前会館のくらまえホールにおいて、 手島精一記念研究賞の授与式が行われました。三島良直学長、理事・副学長、部局長、事務局長、監事、元手島工業教育資金団役員、蔵前工業会常務理事・事務局長が臨席しました。

手島精一記念研究賞は、理工系大学における研究を奨励するために設けたものであり、特に優れた研究業績をあげた本学関係者に対して、賞状並びに副賞の授与を行っています。この賞は、東京工業大学の前身である東京工業学校及び東京高等工業学校の校長であった手島精一先生の功績を記念して、財団法人手島工業教育資金団の事業の一つとして行われてまいりました。この財団法人手島工業教育資金団は、手島先生の功績を記念するため、政界、財界、教育界の多数の諸名士の賛同を得て創設されたものです。2009年4月に同財団の解散に伴い、本学に事業が継承され今日に至っています。

今年度は、22件・計75名の受賞者に対し、学長から賞状と副賞が授与されました。

授与式に引き続いて、ロイアルブルーホールにおいて、受賞者を囲んで祝賀会が行われ、出席者全員和やかな雰囲気のうちに閉会しました。

授与式の様子
授与式の様子

平成26年度受賞者

研究論文賞(2件)

  • 庄子 良晃(資源化学研究所・助教)
  • 田中 直樹(総合理工学研究科・物質電子化学専攻・修士課程2年)
  • 巳上 幸一郎(東京大学大学院・薬学系研究科・JSPS特別研究員)
  • 内山 真伸(東京大学大学院・薬学系研究科・教授)
  • 福島 孝典(資源化学研究所・教授)

“A two-coordinate boron cation featuring C-B+-C bonding”

  • 堀 孝一(生命理工学研究科・生体システム専攻・産学官連携研究員)
  • 山本 希(地球生命研究所・産学官連携研究員)
  • 山田 拓司(生命理工学研究科・生命情報専攻・講師)
  • 森  宙史(生命理工学研究科・生命情報専攻・助教)
  • 佐々木 結子(地球生命研究所・助教)
  • 下嶋 美恵(バイオ研究基盤支援総合センター・助教)
  • 増田 真二(バイオ研究基盤支援総合センター・准教授)
  • 岩井 雅子(生命理工学研究科・生体システム専攻・産学官連携研究員)
  • 信澤  岳(生命理工学研究科・生体システム専攻・産学官連携研究員)
  • 井田  茂(地球生命研究所・教授)
  • 黒川  顕(地球生命研究所・教授)
  • 太田 啓之(生命理工学研究科・生体システム専攻・教授) 外38名

“Klebsormidium flaccidum genome reveals primary factors for plant terrestrial adaptation”

博士論文賞(14名)

数学関係部門

  • 小鳥居 祐香(東京大学大学院・数理科学研究科)

“On the Milnor invariant for links and nanophrase”

  • 正井 秀俊(東京大学大学院・数理科学研究科・特任研究員)

“Hyperbolic Volume, Fibered Commensurability, and Exceptional Surgeries, Theory v. s. Computation”

物理学関係部門

  • 田原 弘量(京都大学化学研究所・元素科学国際研究センター・PD)

「半導体に生成された励起子のコヒーレント過渡現象」

化学関係部門

  • 中住 友香(産業技術総合研究所・環境化学技術研究部門)

「単分子接合の光化学反応の探索」

地球科学関係部門

  • 五味 斎(地球生命研究所・研究員)

“Electrical and thermal conductivity of the Earth's core”

  • 野村 龍一(地球生命研究所・WPI研究員)

“Chemical evolution and stratification of the primordial mantle and core”

応用化学関係部門

  • 小川 敬也(フロンティア研究機構・日本学術振興会・特別研究員PD)

「酸高密度構造における高プロトン伝導性の発現と伝導機構の解明」

機械工学関係部門

  • 伊吹 竜也(理工学研究科・機械制御システム専攻・助教)

“Passivity-based Visual Feedback Pose Synchronization in Three Dimensions”

情報学関係部門

  • 井上 中順(情報理工学研究科・計算工学専攻・助教)

“Efficient and Effective Semantic Indexing for Large-Scale Video Resources”

  • 佐藤 賢斗(学術国際情報センター・研究員)

“Design and Implementation for Optimal Checkpoint/Restart”

建設関係部門

  • 石田 孝徳(総合理工学研究科・特別研究員)

「軸方向と水平2方向の複合荷重を受ける角形鋼管柱の繰り返し劣化挙動」

エネルギー関係部門

  • 中瀬 正彦(日本学術振興会・特別研究員PD・日本原子力研究開発機構)

「テーラー渦誘起型液々向流遠心抽出システムの高度化研究」

人文・社会・外国語・保健体育関係部門

  • 田中 未来(東京理科大学理工学部・助教)

“Modeling techniques and algorithms on conic optimization”

その他境界領域的な関係部門

  • 大上 雅史(情報理工学研究科・計算工学専攻・日本学術振興会・特別研究員)

“Protein-Protein Interaction Network Prediction Based on Tertiary Structure Data”

留学生研究賞(4名)

  • Ariyakul Yossiri(King Mongkut's Institute of Technology Ladkrabang)

“Miniaturized olfactory display using electroosmotic flow and SAW streaming for instantaneous multi-component odor presentation”

  • Fu Jing(環境エネルギー協創教育院)

“Game Theoretic Approaches to Weight Assignments in Data Envelopment Analysis Problems”

  • 苗 陽(理工学研究科・国際開発工学専攻)

“Pattern Reconstruction for Deviated AUT in Spherical Measurement by Using Spherical Waves”

  • Pruethiarenun Kunchaya(理工学研究科・材料工学専攻)

“Comparative study of photoinduced wettability conversion between [PW12O40]3-/brookite and [SiW12O40]4-/brookite hybrid films”

中村健二郎賞(1名)

  • 坂東 桂介(社会理工学研究科・助教)

「学生最適ゲールシャープレイアルゴリズムにおける狭義強ナッシュ均衡の存在」

藤野志郎賞(1名)

  • 木口 学(理工学研究科・化学専攻・教授)

「金属電極に架橋させた単分子における新規物性の探索」

記念写真
記念写真

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課手島記念担当
Email : tokodai.tejima@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2016

知の拠点セミナー「必須化学資源の低環境負荷生産」開催報告

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大学には、学部や大学院のほかに、研究所や研究センターがあります。研究所・研究センターは、学術研究の最先端を担い、各大学の個性といえる存在です。 2010年4月から「共同利用・共同研究拠点」という国の制度が始まりました。現在、29国立大学に、合計77の拠点(89施設)があります。それらの拠点では、所属する大学の壁を越えて、全国の研究者と交流しています。

こうした共同利用・共同研究拠点が一体となって、さまざまな学問分野の最先端の知を広く一般の方々に届けるとともに、その声を直接聴く双方向のサイエンスイベントを目指し、毎月「知の拠点セミナー」を開催しています。

2月20日に開催された第41回知の拠点セミナーでは、拠点のひとつである本学応用セラミックス研究所の原 亨和(はら みちかず)教授が「必須化学資源の低環境負荷生産」についての講演を行いました。

アンモニアの大量生産を可能にした「ハーバー・ボッシュ法」は、文明を支え続ける必須化学資源生産プロセスのひとつですが、消費エネルギーが人類が消費するエネルギーの2%に達するほど大きいという問題があります。本講演では新材料「エレクトライド」を使う新しいタイプのアンモニア合成触媒が紹介されました。

眺めもすばらしい京都大学東京オフィスにおいて、一般の方々が多数参加し、金曜の夕方、サイエンスカフェ風のくつろいだ雰囲気のなかで、自由な談論が行われました。

原 亨和教授
原 亨和教授

お問い合わせ先

応用セラミックス研究所事務室
Email : jim@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5967

英文ニュースレター Bulletin No. 37 配信

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Tokyo Institute of Technology Bulletinは3か月に一度本学が配信している英文ニュースレターです。 東京工業大学の研究成果やニュース記事、学生の活動などを国内外へ広くメールで配信をしております。

この度、Tokyo Institute of Technology Bulletin No. 37 が発行されました。

メールでの配信をご希望の方は申込フォームからご登録ください。

※Tokyo Institute of Technology Bulletinは英語で配信を行っていますがコンテンツは全て日英両方でご覧頂けます。

Tokyo Institute of Technology  Bulletin|Research and education at Japan's foremost university dedicated to science and technology

Genetics research demystifies fatal glandular disease

Topics

Genetics research demystifies fatal glandular disease

FEATURE

RECENT RESEARCH

News

Through Students' Eyes

Tokyo Institute of Technology Bulletin No.37

事務職員独自採用試験(既卒者対象) 公募開始

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東京工業大学では2014年度、主に社会人経験を有する方を即戦力として採用するため、関東甲信越地区国立大学法人等職員採用試験の他に、事務職員独自採用試験を行いました。2015年度の採用についても、主に社会人経験者を対象とした独自採用試験を実施いたします。

東工大はこんな人材を求めています

大学運営のプロになれる人

先輩職員

近年、国立大学では職員の担う役割が拡がり、学生対応や事務的な業務に加え、大学運営に関する企画・立案の場でも活躍する機会が増えてきています。自分の領分を限定せずに、東工大職員としてのプロフェッショナリズムを持って、どのような仕事にも真剣に取り組む人財を求めています。

「成長・変革」できる人

先輩職員

東工大には、実務を通じてはもちろんのこと、様々な研修やプロジェクトなど、自分を磨くことのできる環境が整っています。その中で自身のキャリアマップを描き、高い志と学ぶ意欲を持って、自ら成長・変革していけるエネルギッシュな人財を求めます。

「協働」出来る人

先輩職員

大学は、学生を中心として教員をはじめ、様々な役割を持つスタッフによって構成されている組織です。その中で互いに理解・協力しながら良好な関係を築き、本学の発展に向けて「協働」できる人財を求めます。

独自採用試験で採用になった職員の意見

東工大を志望した理由は?

  • 元々大学職員の仕事に関心があったことに加え、独自採用試験ホームページに掲載されていた「事務局人財ポリシー」や「採用メッセージ」を読み、『教職協働』の体制、立場や役割を越えて東京工業大学を発展させていこうという姿勢に共感したためです。また、父親が技術者であることからも、理系人財・教育への貢献に興味を持っていました。(女性 20代)
  • 日本の将来を担っていく人たちの支援をしたいと思い、大学の職員になりたいと思っていました。特に、科学技術の発展はそのまま日本の発展につながると思うので、理系の研究大学である東工大に興味を持ちました。国立大学法人職員には、将来的に出向や研修体制など、ステップアップのためのいろいろなチャンスが用意されていることも魅力でした。(女性 30代)

実際に働いてみてどうでしたか?

  • 学生や教職員など多くの人と関わる機会が多く、協力しながら働くことの大切さを日々感じています。職場環境としては、親切な方が多く、風通しが良いと思います。(男性 30代)
  • 大学の成長、国際化に向けて教員が積極的に携わっていることが印象的です。私自身は、今まで携わってきた業務とは異なるためまだわからない点も多いですが、日々周りの方に支えられ仕事を行っています。(女性 30代)
  • 先を見据えて計画的に行動すべきことが多く、事務職員が担う業務量の多さ・責任の大きさを感じます。ただ、計画的に業務を進めることで、仕事後は余暇の時間を確保できるため、自己啓発や趣味など、プライベートも充実させることができます。(女性 20代)
  • 現在大学改革関連業務に携わっています。様々な部署との調整があり大変なこともありますが、今後どのように大学が変わっていくのかをリアルタイムに感じ、自分の仕事の一端が大学の将来に関わっていると思うと、とてもやりがいがあります。(男性 30代)
  • 想像していた以上に仕事の自由度が高く、自ら考え、行動する力が求められているように感じます。専門的な知識が必要とされる場面も多く、わからないことや大変なことがたくさんありますが、気軽に相談がしやすい雰囲気で上司や先輩方が丁寧に教えてくださるので、安心して仕事を進めることができる環境だと思います。(女性 20代)

職員を目指す方へメッセージをお願いします。

  • 東工大職員として働くことの魅力は、事務職員として、高等教育の発展や理工系分野を中心に次世代の人財育成に寄与・貢献できるところだと思います。私自身もまだまだ駆け出しの職員ですが、様々な業務を経験しながら一緒に成長できる方とお会いできることを、とても楽しみにしています。(女性 20代)
  • 大学の業務は多岐にわたり、また様々な方と関わるので、大学という一つの組織ですが色々な仕事をするチャンスがあります。また、語学やICTをはじめとする各種研修制度も充実しており、大学と一緒に自らも成長することが可能です。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。(女性 30代)
  • 東工大では事務職員が企画・立案に関わる機会も少なくありません。何をしたいかを明確に考え実践できる環境が東工大にはあります。是非自分が東工大で仕事をしている姿を具体的にイメージしてみてください。(男性 30代)

先輩職員の声

東工大には様々な業務があり、それに対応して幅広い部署があります。総務・人事系、財務・経理系、国際系、学務系、研究推進系、図書系、施設系等それぞれの業務内容について、以下のページで具体的に紹介しています。

公募案内

以下の内容を必ず確認の上、ご応募ください。

応募書類

履歴書は以下のファイルをA4用紙1枚(両面印刷)で印刷してください。指定の履歴書以外での応募はご遠慮ください。

お問い合わせ先

総務部人事課人事企画グループ
Email : jin.kik@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7620・2048

「革新的イノベーション創出プログラム」COI拠点に採択

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東京工業大学の研究拠点が、このたび文部科学省・科学技術振興機構による「革新的イノベーション創出プログラム(センター・オブ・イノベーション COI STREAM)」のCOI拠点に採択されました。

「革新的イノベーション創出プログラム」は、ハイリスクではあるが実用化の期待が大きい異分野融合・連携型の基盤的テーマに対し、集中的な支援を行い、産学が連携する研究開発チームを形成します。

今回採択されたCOI拠点「『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点」は、東京工業大学が中核機関となり、企業および地方自治体の参画を得て、2013年11月よりCOI-T(トライアル)活動をしてきましたが、このたび本格拠点となりました。

社会の変化と課題を解決する未来の社会像(ビジョン)を全世代ハピネス共創社会とし、バックキャスティングにより開発すべき技術の方向を、最先端の知性通信技術(Intelligent Communication Technology)による『以心電心』と定め、参画企業とともに知性サービス、知性ロボット、知性通信の社会実装を進める計画です。

なお、拠点の概要を以下に示します。

拠点名
『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点
プロジェクトリーダー
秋葉重幸(株式会社KDDI研究所)
研究リーダー
小田俊理(東京工業大学)
参画機関
東京工業大学(中核機関)
(株)KDDI 研究所、日本電信電話(株)、ソニー(株)、富士ゼロックス(株)、(株)竹中工務店、(株)リコー、ラピスセミコンダクタ(株)、凸版印刷(株)、(株)ぐるなび、北陸先端科学技術大学院大学、(株)KDDI総研、(株)野村総合研究所、(公財)日産厚生会玉川病院、関東中央病院、東京都大田区、(公財)大田区産業振興協会、諏訪産業集積研究センター
概要
言葉の行き違いや空気の読み違いによるトラブルを未然に防止するコミュニケーション手段の整備により、全世代が、人口構造に依らずに若さと活力を向上できるハピネス共創社会の構築を目指す。文化・言葉・生活習慣・世代の相違や記憶力の低下等で生じる困惑を感知するハピネスセンサーや、超低消費電力でエネルギーハーベスト機能を持つウェアラブルデバイスを開発。それらをもとに次の行動・対応を瞬時に指南するコンシェルジェロボットを知性サービスとして提供。開発成果のプロトタイプは2020年のオリンピック・パラリンピックにおいて、世界中から来日する観光客へのおもてなしサービスとして活用する。

東京工業大学COI拠点の概要図
東京工業大学COI拠点の概要図

お問い合わせ先
産学連携推進本部
Email : sangaku@sangaku.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2445


ビールを学んで、好きになる。~ものつくりセンターでのビールづくり体験講座~

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ものつくりセンターすずかけ台分館では、大学院生命理工学研究科と共同で、2011年に試験醸造のためのビール製造免許を取得しました。免許を取得してから毎年開催している「ビールづくり体験講座」は、学内の学生を対象として公募し、分野を問わず多くの学生が参加しています。ビールについて学びながら発酵過程と「ものづくり」の面白さを体験できる機会として、毎回参加者の好評を得ています。より多くの方々にビールづくりについて知ってもらうため、これまでの講座内容を紹介します。

こめた気持ちが味になる。それがビール。

原料は「麦芽、ホップ、水」だけ。ビールは基本的にシンプルなスタートからできあがります。ものつくりセンターで製造できる「すずかけビール」も、その3つの原料からつくっています。麦芽を細かく砕くところから作業が始まり、鍋を使って温めていきます。そこから一日中、温度と時間の管理を徹底しなければなりません。ビールをつくるためには相当な手間と時間がかかります。それを体験することでビールの奥深さ、ものづくりの面白さを実感してもらいます。気持ちをこめてつくった分、それだけビールの質も高くなります。普段、何気なく口にしているビールも、たくさんの人が気持ちをこめてつくっているからこそ、高い品質を保っているのです。

五感でビールを堪能してもらいたい。

講座では、製造過程で得られる「一番搾り麦汁」や、原料として使う「ホップ」を実際に味見してもらいます。「これがビールになるの?」と驚くような味や香りを体感することで、完成するのがますます楽しみになります。また、実際に手を動かしながら工程を進める中で、作業の役割やビールに関する豆知識を伝え、少しでも楽しい時間を過ごしてもらえるよう工夫しています。

ビールって“生もの”なんですよ。

ようやく仕込みが終わった「ビールの素」は、酵母によって発酵させることで、アルコールと炭酸ガスを生み出します。酵母は生き物です。そのため、温度と時間の管理が欠かせません。同じ条件でも全く異なる風味になることもあり、その管理の難しさが、ものづくりの醍醐味をより一層引き立たせてくれます。ドライな“のどごし”にするためには、もっとコクのある“味わい”にするためにはどうすればいいのだろうか。そう考えながら、さらに美味しいビールを追及するため、参加者自身が完成したビールを評価し、また次のビールづくりへとその経験を受け継いでいきます。

知ればもっと楽しくなる。

今後も引き続きビールづくりを続けて、より多くの学生にビールの奥深さ、発酵の面白さ、ものづくりの魅力を伝えていきます。さまざまな意見を取り入れることができれば、さらにものづくりの魅力が増し、洗練されたビールがつくれます。ぜひ学生には、気軽に講座に参加して、自らの気持ちをこめた「新しい」ビールづくりに挑戦してほしいです。

なお、このレポートはものつくり教育研究支援センターRAの遠藤 諭さん(生命理工学研究科 生物プロセス専攻 修士課程2年)が作成しました。

遠藤さんに、本講座を終えての感想を聞きました。

自身の専攻を超えてビールづくり講座の講師を担当してきて、普段は学ぶことができないビールの奥深さやものづくりの楽しさを学ぶことができました。
今後もより多くの東工大生にビールづくりの魅力を感じてもらいたいです。

ビールに魂を込めるホップ投入作業
ビールに魂を込めるホップ投入作業

お問い合わせ先

ものつくり教育研究支援センター すずかけ台分館
Email : suzukakedai@mono.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5802

平林金吾(大正5年建築科卒)資料のご寄付および感謝の会 開催報告

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東京工業大学博物館では、本学の前身、東京高等工業学校建築科を大正5年に卒業された建築家、平林金吾氏のご遺族より、氏が在学中に制作した設計課題図面等71点をご寄付いただきました。2月24日には感謝の会が催され、大谷館長(理事・副学長)より感謝状を贈呈しました。

平林氏は本学卒業後、大阪府庁舎や名古屋市庁舎の建築設計競技で一等当選を果たし、両庁舎とも氏の案に基づいて設計されています。そして後者は昨年重要文化財に指定されました。また、氏が設計に携わった建築物には明治神宮宝物殿や学士会館など日本近代建築史上著名なものがあるほか、関東大震災後の東京市において数多くの震災復興小学校の建築に従事しました。

このたび寄付を受けた資料は、関東大震災で多くの資料を消失した本学にあって、大正期の建築教育の実態を知る上で大変貴重なものです。また寄付に先立ち、建築学専攻藤岡洋保研究室において本資料の調査およびデータベース作成が行われました。今後博物館では、この資料を永年保管するとともに、教育研究に有効に活用していきます。

平林金吾資料ご寄贈感謝の会
平林金吾資料ご寄贈感謝の会

お問い合わせ先

東京工業大学博物館
Email : centshiryou@jim.titech.ac.jp

東工大広報誌「Tech Tech」 今面白い注目のフリーペーパー5選に選ばれる

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東工大広報誌「Tech Tech(テクテク)」が3月1日付ライフハッカーの記事で、今面白い注目のフリーペーパー5選に選ばれました。

「Tech Tech」は、現在26号を迎えた高校生向けの広報誌です。東工大のリアルを伝える情報誌として、春と秋の年2回発行されています。毎回東工大が誇る最先端の研究をわかりやすく特集し、他にも興味深いコンテンツが盛りだくさんです。

東工大広報誌「Tech Tech(テクテク)」

ライフハッカーは、生活全般に役立つ情報を掲載している米国生まれのWebメディアで、記事を書いた石崎孝多氏は、フリーペーパー専門店「Only Free Paper」の設立者です。Tech Techは記事内で、「出会ったときからずっと注目している1冊です。」と紹介されています。

なお、注目のフリーペーパーに選ばれた「Tech Tech」の最新号は、今月発行予定です。

  • Tech TechのPDFをダウンロードすることができます。
  • Tech Techの請求方法はこちら。

お問い合わせ先

広報センター
Email : publication@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

創造性育成科目事例発表会~アクティブ・ラーニング講義室披露

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創造性育成科目の事例発表会を1月22日に実施しました。創造性育成科目とは、学生に能動的・発見的に学習する機会を設け、新しいものや技術、アイディアを生み出すための創造力を育むための工夫を行っている講義科目のことです。今回で3回目の発表会となります。

第1回は、良い事例を学科間、専攻間で共有することを目的に実施しました。第2回は、事例紹介とパネルディスカッションを行い、教員間で意見交換を行いました。本年度第3回は、

  • 事例紹介
  • 教員間のディスカッション
  • アクティブ・ラーニング室の紹介

という構成で行いました。

発表会最初に行った事例紹介では、各学科、専攻の取り組みが共有できました。

齋藤先生による事例発表(スターリングエンジン製作によるものつくり体験)
齋藤先生による事例発表(スターリングエンジン製作によるものつくり体験)

つづくディスカッションでは、昨年のパネルディスカッションで話題となった、留学生ティーチングアシスタント(TA)の活用、産学連携の活用の方策について議論を行いました。当日は、十分に議論する時間が取れなかったのですが、事前アンケートを行いましたので、その結果を披露し、意見交換を行うことができました。学生の国際性涵養のための留学生TAの活用に対しては、

  • 博士課程学生の講義参加、活用が良い
  • 異文化コミュニケーションの観点からも、留学生TAの活用は賛同できる
  • 実験科目の場合は難しい

などの意見が出されました。また、産学連携の可能性に関しては、

  • 基礎研究と応用研究の接続性を考える上で産業界との連携は重要
  • 文化祭的な感覚で進めるべきではない

などの意見がありました。結論は出ていませんが、両者とも簡単なことから始めたら良いのではないか、という意見も多く、

  • 創造性育成科目の中で、学生の発表会などの機会を利用して、留学生TA、あるいは産業界の方を招待、英語での質問、産業界の方に質問頂くことが、英語の必要性、社会との繋がりの重要性の気づきになる

との雰囲気が得られたところで、ディスカッション自体は時間切れとなりました。

最後に、アクティブ・ラーニング講義室について説明します。ご存知のように現在、三島学長のリーダーシップのもと、教育改革が進んでいます。科目のナンバリング、達成度評価など、新しい試みが多く盛り込まれていますが、その中の一つとして学生参加型の講義の充実が検討されています。

残念ながら東京工業大学の講義室は、ほぼ机と椅子が固定されており、学生は教員のスライド・板書等を見て受動的に講義を聴くことが多くなっています。すなわち、学生同士がグループ・ディスカッション、グループ・ワークを講義中に行い、能動的に講義に参加することが可能な講義室が少ないのが現状です。

そこで今年度、アクティブ・ラーニングに適した講義室の整備を目的に、

電子黒板、高機能プロジェクタを生かした内容

電子黒板、高機能プロジェクタを生かした内容

  • 大岡山南3号館:S322、S323講義室
  • 大岡山南5号館:S517、S518講義室
  • すずかけ台J2棟:J232講義室

の3箇所、5部屋を改修しました。この講義室の披露を目的として、南5号館の講義室を使い、AV機器等の説明ならびに水本副学長(教育運営担当)の模擬講義を実施しました。整備された講義室には、電子黒板、高機能プロジェクタが準備されており、本年度中に整備が終了します。

水本副学長(教育運営担当)による模擬講義

水本副学長(教育運営担当)による模擬講義

ポスターセッションの様子

ポスターセッションの様子

創造性育成科目は、毎年、専攻、学科、教員から申請を受け、登録・選定を行っています。選定されると、科目に対して教材、実験器具等を充実させるための支援金が援助されます。創造性育成科目の概要や、選定・登録科目については、教育推進室のwebサイトで確認することができます。ぜひ一度、以下のページをご覧ください。

お問い合わせ先

教育企画グループ
Email : kyo.kyo@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7603

超深海・海溝生命圏を発見 ―マリアナ海溝の超深海水塊に独自の微生物生態系―

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概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)海洋生命理工学研究開発センターの布浦拓郎主任研究員らと国立大学法人東京工業大学、公立大学法人横浜市立大学、国立大学法人東京大学の共同研究グループは、世界最深の海であるマリアナ海溝チャレンジャー海淵内の超深海(水深6,000m以深)水塊(水温や塩分などの特性が比較的均質な海水の広がり)中に、上層に拡がる深海水塊とは明瞭に異なる微生物生態系、即ち、独自の超深海・海溝生命圏が存在することを世界で初めて明らかにしました。

超深海の海溝環境における微生物調査の歴史は1950年代に遡りますが、これまでの研究は主に海底堆積物を対象としており、海溝内水塊は未探査の海洋微生物生態系として残されていました。このため研究グループでは、2008年6月、KR08-05航海にて、チャレンジャー海淵中央域(11˚22.25'N, 142˚42.75'E, 水深10,300m)において、海洋表層から海溝底直上(水深10,257m)までの海水試料を大深度小型無人探査機 「ABISMO」により採取し、分子生態解析、化学解析を展開しました。

その結果、海溝内超深海層と上方の深海層(水深4,000~6,000m)では、塩分、温度、栄養塩濃度等の物理化学環境からも、また微生物数にも明瞭な違いが見られないにも関わらず、超深海の微生物群集構造は、深海層の微生物群集とは明瞭に異なり、従属栄養系統群[用語1]が優占することが明らかになりました。このことは、超深海環境特有の有機物源に依存する微生物生態系が超深海で発達していることを示唆しており、海洋微生物生態系像に全く新たな知見をもたらすものです。

マリアナ海溝は他の海溝から独立しているため、他の海溝からの有機物流入など、上層水塊と完全に異なる有機物源の存在を考えることは困難です。従って、今回発見された海溝水塊独自の生態系は、いったん海溝斜面に堆積した有機物が、地震等による海溝斜面の崩壊に伴って放出される現象に支えられている、即ち、超深海・海溝生命圏は、海溝地形を形作る地球活動に支えられた生態系であると考えられます。

なお、本研究の一部は、日本学術振興会の科研費24370015outerの助成を受けて実施したものです。本成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Science」に2月24日付け(日本時間)で掲載されました。

研究の背景

超深海環境(水深6,000m以深)に棲息する微生物を対象とした研究は1950年代より開始され、主に堆積物や動物体内からの単離培養が行われてきました(Bartlett 2009)[文献1]。また、分子生態解析の普及当初には、無人探査機「かいこう(初代)」がマリアナ海溝底から採取した堆積物を対象とした解析が、JAMSTEC研究者により試みられています(Kato et al. 1998)[文献2]。また、近年では、JAMSTEC研究者を含むグループによる、マリアナ海溝底堆積物では近傍深海底に比べ微生物活動が盛んであるとする発見(Glud et al. 2013)(2013年3月18日既報)[文献3]や、小笠原海溝底での物質循環に関与する微生物活動が報告されています(Nunoura et al. 2013)[文献4]。しかし、超深海・海溝水塊の微生物生態研究は、依然として全く未踏の研究対象として残されていました。

一方、海洋水塊中の微生物生態系像は、近年、著しく変貌しています(図1)。従来の海洋水塊中の微生物生態系とは、海洋表層で珪藻やシアノバクテリア等が行う光合成により生産された有機物が、微生物や動物プランクトンに分解されつつ沈降し、最終的には深海域の生命圏を支えるというものでした。即ち、深海水塊に棲息する微生物の殆どは従属栄養生物であると認識されていました。ところが、近年の研究は、海洋表層で生産された有機物の分解等に伴って生じるアンモニアや硫黄化合物をエネルギー源として炭素固定[用語2]を行う微生物が、深海水塊中の微生物生態系において、相当程度優占することを示唆しています。即ち「暗黒での炭素固定」を行う化学合成生物群が深海水塊において重要な役割を果たしており、海洋表層で生産された有機物はただ分解されて沈降するのではなく、有機物の分解と合成を繰り返しながら海底に至るという新しい生態系像が構築されつつあります(布浦・木庭 2014a[文献5];横川 2014[文献6])。特に、炭素固定能を有す系統群の代表格であるアンモニア酸化アーキアは、深海水塊中微生物の数十%を占めることがあり、また、エネルギー源となるアンモニアの供給量に応じて各アンモニア酸化アーキア系統群が棲み分けていることも指摘されています(布浦・木庭2014b[文献8])。

従来の深海微生物生態系像(左)と、近年の知見を反映した深海微生物生態系像(右)の比較
図1.
従来の深海微生物生態系像(左)と、近年の知見を反映した深海微生物生態系像(右)の比較
現在の深海微生物生態系像では、有機物分解によって生じた還元的な物質(アンモニア、硫黄化合物等)をエネルギー源とする化学合成生物が重要な構成者として認識されている。

本研究では、この新たな生態系像を体系的に確認するために、海洋表層から海溝底直上までの海水試料について、無機化学分析を行うと共に、微生物群集構造を微生物・ウイルス計数、培養評価という伝統的手法と、分子生態解析技術を駆使して比較検討し、超深海・海溝水塊の微生物生態系を世界で初めて明らかにしました。

成果

本研究では、マリアナ海溝チャレンジャー海淵中央部(図2)において、海洋表層から超深海・海溝底直上(水深0-10,257m)まで50~1,000mおきに採水した試料を対象に、無機化学解析、微生物・ウイルス数計数、分子生態解析を展開しました。栄養塩濃度や微生物・ウイルス数には、深海層と超深海に違いが観察されません(図3)。しかし、微生物群集構造解析からは、中深層から深海層にかけて、炭素固定能を有す化学合成系統群が優占するのに対し、超深海水塊には、従属栄養系統群が優占することが明らかになりました(図4)。更に、有機物分解により生じるアンモニアをエネルギー源とするアンモニア酸化菌、アンモニア酸化で生じた亜硝酸をエネルギー源とする亜硝酸酸化菌とも、深海層と超深海層では、優占するグループに変化が生じることが示されました(図5)。これらの観察結果は、超深海・海溝内水塊に、上層の深海層とは異なる有機物の供給源が存在し、その有機物に強く依存した生態系が成立していることを示すものです。

マリアナ海溝チャレンジャー海淵の海底地形
図2.
マリアナ海溝チャレンジャー海淵の海底地形 赤丸が調査地点を示す。NOAAのデータを基にJAMSTECで作成
マリアナ海溝チャレンジャー海淵水塊の物理構造(A)、化学プロファイル(B)、微生物・ウイルス粒子量(C)

図3. マリアナ海溝チャレンジャー海淵水塊の物理構造(A)、化学プロファイル(B)、微生物・ウイルス粒子量(C)

マリアナ海溝チャレンジャー海淵上の微生物群集構造
図4.
マリアナ海溝チャレンジャー海淵上の微生物群集構造
SSU rRNA遺伝子タグ解析により示す。中深層から深海層ではアンモニア酸化アーキアを初めとする炭素固定能を有す系統群が優占するが、超深海・海溝水塊では、従属栄養系統群(Bacteroidetes、SAR406、Gammaproteobacteria)が優占する。
マリアナ海溝チャレンジャー海淵上における硝化菌(アンモニア酸化菌・亜硝酸酸化菌)群集の組成変化
図5.
マリアナ海溝チャレンジャー海淵上における硝化菌(アンモニア酸化菌・亜硝酸酸化菌)群集の組成変化
この海域から検出されたアンモニア酸化菌(アンモニア酸化アーキア系統群及びBetaproteobacteriaに属すアンモニア酸化バクテリア)、亜硝酸酸化菌(Nitrospina及びNitrospira属)について、遺伝子レベルでの定量解析を行い、それぞれの系統群の各深度における分布量を割合で示した。なお、エネルギー物質(電子供与体)に対するそれぞれの系統群の好みを高濃度側から並べるとアンモニア酸化菌では、Betaproteobacteria > Group D > Group A > Group Bの順に、亜硝酸酸化菌では、Nitrospira > Nitrospinaとなると考えられている。

深海への有機物供給には、(1)当該海域海洋表層での日光に依存した光合成による一次生産(炭素固定)に由来する沈降有機物、(2)深海の潮流により他海域から運ばれた沈降有機物、そして、(3)堆積物から懸濁された有機物が考えられます。マリアナ海溝は他の海溝からは独立している為、(2)のような超深海独自の潮流による有機物供給はありません。また、(1)の海洋表層からの沈降有機物に単純に依存するならば、海溝の沈み込み深度である水深6,000m付近を境界として、深海層と超深海・海溝とで異なる生命圏が存在していることの説明がつきません。従って研究グループは、他の状況証拠とも併せ(3)に示される海溝地形故に生じる地震等に起因する海溝斜面の崩壊と、それに伴う堆積物からの有機物放出が海溝内水塊中の微生物生態系を支えていると結論づけました(図6)。即ち、超深海・海溝生命圏は、海溝地形を形作る地球活動に支えられた生態系であると考えています。

超深海・海溝生命圏のモデル図

図6. 超深海・海溝生命圏のモデル図

なお、深海斜面における地崩れが深海水塊微生物生態系へ影響を及ぼす現象は、既に東日本大震災に伴う現象としても観察されており(Kawagucci et al.2012)(2012年2月17日既報)[文献7]、そこで観察された微生物相の変化も、今回、超深海・海溝生命圏で観察された微生物群集構造の変化と類似の傾向を示していました。このことも、今回提唱する超深海・海溝生命圏成立メカニズムに関する仮説を支持するものです。

今後の展望

今回観察された現象は、頻度を考慮すると、斜面崩壊等により堆積物から放出された有機物が、周辺相当程度の長期間、広範囲にわたり、ある程度物理的に隔離された海溝環境において水塊中の微生物生態系に影響を与えうることを示唆しています。超深海・海溝生命圏形成メカニズムは、自然現象だけでなく、海底資源開発等、人為的要素による海底環境攪乱に伴う堆積物からの有機物放出の深海環境へ与える影響の程度、範囲等を考える上で、非常に重要な知見であると考えられます。

研究グループでは今後、有機化学分析等を加えた更に学際的な研究により、今回の調査結果を検証していくことで、超深海・海溝生命圏が、堆積物から放出される有機物に支えられた生態系であることを、より直接的に証明する予定です。さらに、今回の調査で強く示唆された超深海・海溝生命圏を支える仕組み、そして微生物生態系が、海溝環境共通の現象であるのかどうか検証するため、マリアナ海溝だけでなく他の海溝環境においても調査・研究を展開していきます。

用語説明

[用語1] 従属栄養生物 : 生育に必要な炭素を得るために有機化合物を利用する生物を従属栄養生物といい、動物・菌類の全て、バクテリア・アーキアの多くもこれに属する。従属栄養生物は炭素を固定することができないので、他の生物が合成した有機化合物を得なければならない。これに対し植物は独立栄養生物である。

[用語2] 炭素固定 : 植物や一部の細菌が光あるいは化学エネルギーを用いて、取り込んだ二酸化炭素から有機化合物を生産(固定)すること。前者を光合成、後者を化学合成という。

論文情報

掲載誌 :
Proceedings of the National Academy of Science
論文タイトル :
Hadal biosphere: insight into the microbial ecosystem in the deepest ocean on Earth
著者 :
布浦拓郎1、高木善弘1、平井美穂1、島村繁1、眞壁明子1,2,3、小出修1、菊池徹4、宮崎淳一1、木庭啓介2、吉田尚弘3、砂村倫成5、高井研1
所属 :
1独立行政法人海洋研究開発機構、2東京農工大学、3東京工業大学、4横浜市立大学、5東京大学
DOI :

問い合わせ先

大学院総合理工学研究科および地球生命研究所
教授 吉田尚弘
Email : yoshida.n.aa@m.titech.ac.jp

細野秀雄教授が知的財産特別貢献賞(第2回)を受賞

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細野秀雄教授

細野秀雄教授がJSTの第2回知的財産特別貢献賞を授賞しました。

細野教授が発明したIn-Ga-Zn-O(インジウム・ガリウム・亜鉛からなる酸化物)を用いた半導体薄膜トランジスタ(以下、IGZO-TFT)は、技術ディスプレイ業界に一大センセーションを巻き起こしました。その産業界への影響の大きさからも画期的な発明として評価されています。IGZO-TFTは、高解像度・3次元・大画面のディスプレイのほか、スマートフォンやタブレット端末の新しいタイプの液晶として期待されているとともに、有機ELディスプレイへの適用も可能で、ディスプレイ分野の革新的技術として期待されています。

本賞は、大学や公的研究機関などの、真に独創的な研究成果に基づく知的財産の創造と活用を通して、日本の科学技術の発展に寄与し経済社会上大きな成果をあげた特に優れた研究者に対し、その業績を称え表彰するものとして、JSTが平成23年度に創設したもので、第1回は青色発光ダイオードの開発に寄与した赤崎名誉教授が授賞しています。

2月25日に、表彰式が行われました。表彰式には細野教授をはじめ、本学からは岡田清理事・副学長(企画担当)や細野研究室の関係者も出席し、細野教授の栄誉を称えました。

JST中村道治理事長から賞状とメダルが授与される

JST中村道治理事長から賞状とメダルが授与される

賞状とメダルと細野教授

賞状とメダルと細野教授

細野秀雄教授のコメント

1995年の第16回アモルファス半導体国際会議で初めて発表した移動度の大きなアモルファス酸化物半導体(TAOS)の設計指針を基に、1999年から開始したJST ERATO「透明電子活性プロジェクト」のなかでそのTFT応用の研究を行い、その成果を論文(Sciece誌とNature誌)と知財化しました。論文と特許が既に5,000回以上も引用されることになっただけでなく、実用化にも繋がり、良かったと思います。移動度の大きいIGZOなどの酸化物TFTは、有機ELの駆動を想定して研究を始めたもので、やっとここにも使われだしたようです。

野村研二博士(現Qualcomm)、神谷利夫博士(東工大)、平野正浩博士(元JST)、太田裕道博士(現北大)、折田政寛博士(元ホーヤ)など共同研究者の方々に厚く感謝いたします。また、故清水勇教授(当時、東工大TLO理事長)の紹介で、有益な共同研究を実施できたキヤノンの関係者の方々にも御礼を申し上げます。

引き続き、ジャンプを伴う研究成果の創出に精進したいと思います。

お問い合わせ先

広報センター
Email : pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

リベラルアーツ教育FD研修会開催報告

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東京工業大学では目下、教育改革を進めており、2016年4月から学士課程から博士課程まで一貫したリベラルアーツ教育をスタートさせます。これらを担当するリベラルアーツ研究教育院(2016年4月発足予定)に所属予定の教員44名のうち30名が、2月19~20日に湘南国際村センターで開催されたFD研修に参加しました。FD(ファカルティ・ディベロプメント)研修とは、大学教員の教育能力高めるための実践的な研修です。

“グループワーク”を学ぶ

研修初日は、東工大のリベラルアーツ教育の改革の枠組みが説明された後、ソーシャルワークの技法のひとつである“グループワーク”に関するFDが行われました。グループワーク第一人者である中野民夫教授(同志社大学)を講師に、その手法を教員自身が体験しながら学びます。初対面の教員も多く緊張するメンバーを、様々な方法を用いて、リラックスさせながらグループワークが始まりました。積極的に参加せず意見を言わないメンバー、いわゆる「フリーライダー」をいかに減らすか、また、グループの組み換えをどのようにするかなども論議しながら進んでいきます。アメリカの大学の授業でも頻繁に使われるグループワークを、その有効性や難しさとともに理解できたことは大きな収穫でした。

皆で輪になって話を聞いています
皆で輪になって話を聞いています

グループワーク実践:リベラルアーツ教育の改善について

グループワークでアイディアを書く

グループワークでアイディアを書く

研修2日目は、「リベラルアーツ教育の改善について」というテーマのグループワークを実践しました。まずは自分たちで個別テーマを出して、興味あるテーマに分かれてグループワークを開始します。結論は得られないような大きなテーマ、具体的な課題、グループワークに向かないような学生をどうするか、授業の試行をどうするかなどなど、様々なテーマが出されます。グループワーク後には、目から鱗の落ちるようなアイディアを出すグループもありました。なかには明確な結論が得られないグループもありましたが、問題意識と解決策を参加者全員で共有できたことは大きな成果でした。

2日目の午後は、ブリティッシュカウンシルから講師を招き、「講義とプレゼンテーション essential」講義を受講しました。座学のスタイルでしたが、まさに精選された講義内容と、参加者の積極的な参加により、アクティブな講義となりました。

本研修はスーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しました。

参加者集合写真
参加者集合写真

お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院WG
Email : ila2015@liberal.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3185


テクノルネサンス・ジャパン全応募テーマで本学学生が受賞

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1月19日、第7回「企業に研究開発してほしい未来の夢」アイデア・コンテスト(愛称:テクノルネサンス・ジャパン)の授賞式が日本経済新聞社東京本社で行われ、全応募テーマで本学学生が最優秀賞、優秀賞、優良賞のいずれかを受賞しました。

テクノルネサンス・ジャパンとは

テクノルネサンス・ジャパンは、日本経済新聞社主催のコンテストです。理工系学生が日ごろの研究のなかで思い描くアイデアと、企業の技術や事業を組み合わせたらどんな画期的なことができるかを考える場です。参加企業の募集テーマごとに提案を募集します。

第7回結果

株式会社スリーボンド賞

  • 応募テーマ: next シール

優秀賞

受賞アイディア
カラダとココロをまもるシール~歯根膜の場合~
受賞者
Team 慶“応”BOYS
東京工業大学大学院 理工学研究科機械制御システム専攻 倉元昭季
長崎大学 歯学部歯学科 上田大佑

大日本印刷株式会社賞

  • 応募テーマ: 未来の本のカタチ~次世代の情報コミュニケーションを考える~

優秀賞

受賞アイディア
DropBooks~落として拾って繋がって~
受賞者
Team めがねーず(仮)
東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻
倉元昭季・乾祐馬・有田圭佑・吉澤玄

株式会社デンソー賞

  • 応募テーマ: 未来から「ありがとう!」と言ってもらえる「魔法の箱」は?~クルマの進化で実現する夢のアイデア大募集!~

最優秀賞

受賞アイディア
半自走式ドローンによる俯瞰運転の実現
受賞者
Lab環's
東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻 桑原宏介
東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻 輪湖謙太

東レ株式会社賞

  • 応募テーマ: 東レの先端材料を用いた新しい商品の企画大募集!~あなたのアイデアで次の時代を創ろう!~

優秀賞

受賞アイディア
炭素繊維鉗子で超低侵襲手術
受賞者
Lab環's
東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻 桑原宏介
東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻 輪湖謙太

藤森工業株式会社賞

  • 応募テーマ: 未来の「包む価値」とは?~快適な社会を実現するためのアイデア募集!~

優秀賞

受賞アイディア
パネルとあなたの間に
受賞者
チャリできた
東京工業大学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻 岩崎耀・筒場豊和・文字山峻輔・赤江要祐
東京工業大学 工学部高分子工学科 岩瀬卓也

優良賞

受賞アイディア
新しい絆創膏 アンジェリー
受賞者
愉快な仲間たち(究)
東京工業大学大学院 理工学研究科物質科学専攻 馬ノ段月果・杉山晴紀・寺岡浩太
慶應義塾大学 経済学部経済学科 棚橋研悟

2つの賞を受賞した倉元昭季さんのコメントです。

大日本印刷株式会社賞 優秀賞について

普段の研究でも未知の事柄を追う事が多いですが、そのために現在の当たり前を認識する事の重要性を思い出させて貰えました。「紙だからこその「個性」を探し出して大事にして、それも次に活かす」という考え方をチーム内で共有するには時間が掛かりましたが、最終的にその発想が評価された事は嬉しかったです。

株式会社スリーボンド賞 優秀賞について

異なる分野を遠くで学ぶ友人と、二人三脚での取り組みでした。直接顔を合わせてリアルタイムでの議論が出来ない分、相手側の領域を少しでも学び、自分の普段の分野の境界線を越えてアイディアを出し続ける事をお互いに心掛けました。意識してはいませんでしたが、こういうモノが欲しい!という熱意がプレゼンから溢れていたと聞き、新しい物を創り出すには情熱が大事だと感じました。

前列は大日本印刷株式会社賞 優秀賞を受賞した4名(左から乾さん、有田さん、倉元さん、吉澤さん)後列は大日本印刷株式会社の方々

前列は大日本印刷株式会社賞 優秀賞を受賞した4名
(左から乾さん、有田さん、倉元さん、吉澤さん)
後列は大日本印刷株式会社の方々

株式会社スリーボンド賞 優秀賞を受賞した2名(左から上田さん(長崎大)、倉元さん)

株式会社スリーボンド賞 優秀賞を受賞した2名
(左から上田さん(長崎大)、倉元さん)

本コンテストの受賞詳細は、2月17日付日本経済新聞朝刊受賞報告記事に掲載されています。また、このテクノルネサンス・ジャパンは毎年開かれており、例年5月から募集が始まります。募集時期には本学で説明会も開かれています。詳細は日経テクノルネサンス・ジャパンwebサイトで。

東京工業大学・清華大学大学院合同プログラム卒業式典報告

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「東京工業大学・清華大学大学院合同プログラム」生が1月27日に清華大学の大学院卒業式典に出席しました。このプログラムは、東京工業大学と中国トップクラスの大学である清華大学が共同で大学院の学生教育を行います。修士課程は、双方の学位が取得できるダブル・ディグリープログラムです。

清華大での式典に参加した東工大8期生の林田駿弥

清華大での式典に参加した東工大8期生の林田駿弥

清華大学韓景陽党委員会副書記と記念写真

清華大学韓景陽党委員会副書記と記念写真

清華大側は1・7月、東工大側は9・3月に施行される卒業式典ですが、今回の出席者は東工大8期生中1名のみでした。相手大学滞在期間の研究スケジュールが学生個々の計画に基づき進むため、相手大学の卒業式のタイミングに滞在することが難しいのが現状です。今回も他の数名の卒業生は、残念なことに清華大学での式典に参加することができませんでした。

そのようにハードスケジュールをこなすプログラム生のために、プログラムのバイオコース研究交流会のため来日していた清華大邢新会(シン シンホエイ)運営委員長兼バイオコース長、王釗教授、劉錚教授、蒋国强(ジャン グォチャン)副教授の計らいにより、1月29日に東工大すずかけ台キャンパスで簡易卒業式が開催されました。

すずかけ台キャンパスでの学位記・卒業証書授与式
すずかけ台キャンパスでの学位記・卒業証書授与式

清華大学では学位記と卒業証書と二つの証書が発行されます。赤いマークがついているものが学位記です。
(写真左から蒋国强副教授、劉錚教授、東工大9期生南隆之、東工大8期生藤亮介、東工大9期生梅津純平、丹治保典バイオコース長、邢新会運営委員長兼バイオコース長、王釗教授)

バイオコース8期生藤亮介と清華大指導教員の王釗教授

バイオコース8期生藤亮介と清華大指導教員の王釗教授

「清華大では日本の大学と異なり卒業と学位の取得が別で、それぞれ要件を満たす必要があります。私の場合、卒業時に学位要件を満たしておらず、卒業してからとても苦労しましたが、卒業後、学位取得に向けて清華大の教授に遠隔でご教示いただき論文投稿を行い、無事に学位取得に至りました。このプログラムの最大の難所は学位取得要件が卒業要件に比べてとても厳しいことですが、諦めずに最後まで課題に取り組んで学位を取得することができ、強い達成感を感じました。」と東工大8期生藤亮介さん。

ダイナミックな式典ではなくても、清華大の先生より直接学位記と卒業証書を授与していただき、卒業生たちは感謝と喜びの笑顔でした。

お問い合わせ先

国際部留学生交流課 清華事務室
Email : seika@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7650

ホットキャリアによるトランジスタ性能の劣化を回復 ―電気的な手法で出力電力の再生を実証―

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科の松澤昭教授と岡田健一准教授らは、パルス状の逆電圧を印加するという電気的な手法を用い、ホットキャリア注入現象[用語1]により劣化したトランジスタの性能を回復させる新技術を開発した。この回復機構をミリ波帯無線機に組み込み、低下した出力電力が回復できることを世界で初めて実証した。

製品出荷後のトランジスタはホットキャリア注入により経時的に劣化が進み、それが製品寿命を決める主要因の一つだった。劣化を高温ベークにより回復する方法はあったが、専用の装置が必要だった。新技術は回路に組み込むだけで性能を回復できる。

回復機構を組み込んだミリ波帯無線機を、最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル) のシリコンCMOSプロセスで試作し、出力電力の回復を確認した。この技術が実用化されれば、半導体集積回路の製品寿命を自由に調整することができるようになる。

研究成果は2月22日から米国サンフランシスコで開かれた「ISSCC(国際固体回路国際会議)」で2月25日に発表された。

研究の背景・意義

現在、ほぼすべての半導体集積回路で用いられるCMOS技術は微細化により、高速に動作する一方で、信頼性の問題が顕在化している。トランジスタのドレイン-ソース間の距離が短くなっている一方で、電源電圧はあまり下がっていないため、相対的にドレイン-ソース間の電界が強くなっている。キャリアがこの電界で加速され、稀(まれ)に非常に高いエネルギーを持つホットキャリアが生成される。このようにチャネル中で加速されたホットキャリアや、ドレイン近傍での高電界で加速され電離衝突により発生したホットキャリアは、ゲート酸化膜に注入され、そのまま浮遊電荷としてトラップされる(図1)。ホットキャリア注入(HCI : Hot Carrier Injection)と呼ばれる現象である。

CMOSトランジスタの断面

図1. CMOSトランジスタの断面

特徴:CMOSトランジスタが微細化されるほど、横方向電界が強まり、キャリア(n形の場合は電子)が過剰に加速され、ホットキャリア注入の発生頻度が高まる。

トラップされたキャリアは、しきい値電圧の上昇や移動度の低下を引き起こし、結果として電流値が減少する。デジタル回路では動作速度が低下し、アナログ回路では利得が減少するなどの問題を起こし、回路性能を低下させる。経時的に劣化が進んでいくため、最終的には所望の性能を満たせなくなり、動作不良を起こす。CMOSトランジスタの寿命を決める主要な物理現象の一つになっている。従来、高温ベークにより劣化を回復する方法があったが、高温ベークのための専用装置が必要だった。

研究成果

東工大の松澤教授と岡田准教授らは、ホットキャリア注入によるダメージを、トランジスタにパルス状の逆電圧を印加するという電気的な手法で回復させることに成功した。パルス状の逆電圧を印加することにより、ゲート酸化膜中にトラップされたキャリアを減少させ、ホットキャリア注入によるダメージからCMOSトランジスタを回復させることができる(図2)。

逆バイアス印加によるホットキャリア注入ダメージの回復

図2. 逆バイアス印加によるホットキャリア注入ダメージの回復

特徴:ドレインおよびゲート端子を接地し、基板電位を瞬間的に上げることで、トラップされたキャリアを抜き、ホットキャリア注入ダメージを回復する。

代表的な不揮発性メモリー(電源を切っても記憶を保持できるメモリー)であるフラッシュメモリーでは、順電圧・逆電圧を印加することにより、ソース・ドレイン間のチャネル領域から、ゲート電極の間に配置された浮遊ゲートへ意図的に電荷を貯めたり抜いたりすることで動作する。このフラッシュメモリーの動作に着想を得て、浮遊ゲート中の電荷だけでなく、ホットキャリア注入による酸化膜中の電荷を抜くことができないかと考えたのが、今回の技術開発の発端である。

最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル)のシリコンCMOSプロセスで試作したトランジスタで試験した(図3)。トランジスタ単体のドレイン電流を測定すると、ダメージを受けていない状態(Fresh)から、ホットキャリア注入により徐々に電流が減少する(Damaged)。開発した技術を用いると、電流値を回復できる(Healed)ことを確認した。

ホットキャリア注入ダメージによる電流の減少および回復

図3. ホットキャリア注入ダメージによる電流の減少および回復

特徴:ダメージを受けていない状態(Fresh)から、ホットキャリア注入により徐々に電流が減少する(Damaged)。提案技術を用いることにより、電流値を回復できる(Healed)。

次に、回復機構を実際に組み込んだ60GHz(ギガヘルツ)帯ミリ波無線機を、最小配線半ピッチ65nmのシリコンCMOSプロセスで試作した。無線機で必要とされる電力増幅器は、出力電力を高くとるために、大きな電圧振幅が必要であり、特にホットキャリア注入によるダメージを受けやすい回路である電力増幅器としての動作と、回復のための逆電圧印加を可能とする新たな回路構成を考案した(図4)。無線機全体の回路図を図5に示す。図6にチップ写真および各部の面積を示す。非常に小面積で回復機構の実装に成功した。

電力増幅器への組み込み

図4. 電力増幅器への組み込み

特徴:通常の電力増幅器としての動作とホットキャリア注入回復動作を両立。

ホットキャリア注入ダメージ回復が可能な60GHz無線機のブロック図

図5. ホットキャリア注入ダメージ回復が可能な60GHz無線機のブロック図

特徴:ホットキャリア注入ダメージの回復技術(HCI healing)を組み込んだ60GHz帯無線機

チップ写真と各部の面積

図6. チップ写真と各部の面積

特徴:CMOS 65nmプロセスにより製造した。

無線機としての出力電力と変調精度(EVM)の実測結果を図7に示す。IEEE802.11ad規格[用語2]準拠のために、EVM<=-21dBの変調精度を満たす必要がある。EVM=-21dBの条件で、元々の出力電力が8.5mW(Fresh)であったが、HCIダメージ(電源電圧Vdd=1.5V, 出力電力17.8mWのストレス条件で40時間)により、出力電力が3.4mW(Damaged)にまで減少する。本技術により、6.0mW(Healed)まで回復できることを確認した。

従来、ホットキャリア注入によるダメージは経時的に蓄積し、製品寿命を決める大きな要因の一つであった。この技術が実用化されれば、製品出荷後においてもホットキャリア注入による性能劣化を回復でき、半導体集積回路製品の長寿命化が期待できる。

送信電力の回復

図7. 送信電力の回復

特徴:送信電力がHCIダメージにより減少する(Damaged)が、本技術を用いることにより、出力電力が回復できた(Healed)。60GHz帯ミリ波無線機ではIEEE802.11ad規格で規定されるEVM<=-21dBの変調精度を満たす必要がある。EVM=-21dBの条件で、元々の出力電力が8.5mW(Fresh)であったが、HCIダメージ(電源電圧Vdd=1.5V, 出力電力17.8mWのストレス条件で40時間)により、出力電力が3.4mW(Damaged)にまで減少する。本技術により、6.0mW(Healed)まで回復できることを確認した。

発表予定

この成果は、2月22日~26日にサンフランシスコで開催された「2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2015): 2015年IEEE 国際固体回路国際会議」のセッション「Session 19 - Advanced Wireless Techniques」で発表された。講演タイトルは「An HCI-Healing 60GHz CMOS Transceiver(HCI回復機能を実現した高信頼60GHz帯CMOS無線機)」である。現地時間2月25日10時45分から発表された。

なお、本研究は総務省委託研究「電波資源拡大のための研究開発」の一環として実施された。

用語説明

[用語1] ホットキャリア注入(HCI: Hot Carrier Injection) : トランジスタの寿命を決める主要な物理現象の一つ。MOSトランジスタのドレイン-ソース間電界により加速されたキャリア(ホットキャリア)がゲート酸化膜に注入され、トランジスタの特性が劣化する。注入されたキャリアは酸化膜中にトラップされ、経時的に増加する。トランジスタの電流値が減少し、回路特性が劣化する。

[用語2] IEEE802.11ad規格 : IEEE802.11ad規格は、IEEE802委員会下のIEEE802.11ワーキンググループが標準化を行った60GHz帯のミリ波を用いる次世代の無線LAN規格であり、最大約7Gb/s(プリアンブル含まず)の無線通信が可能である。現在市販されている2.4GHz帯や5GHz帯の無線LANに次ぐ、次世代無線LANとして実用化が進められている。

論文情報

掲載誌 :
2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2015): 2015年IEEE 国際固体回路国際会議
論文タイトル :
An HCI-Healing 60GHz CMOS Transceiver(HCI回復機能を実現した高信頼60GHz帯CMOS無線機)
著者 :
Rui Wu (博士課程学生), Seitaro Kawai (河合誠太郎:修士課程学生), Yuuki Seo (瀬尾有輝:修士課程学生), Kento Kimura (木村健将:修士課程学生), Shinji Sato (佐藤慎司:修士課程卒業生), Satoshi Kondo (近藤智史:修士課程卒業生), Tomohiro Ueno (上野 智大:修士課程卒業生), Nurul Fajri (修士課程学生), Shoutarou Maki (眞木翔太郎:修士課程学生), Noriaki Nagashima (永島典明:修士課程学生), Yasuaki Takeuchi (竹内康揚:修士課程卒業生), Tatsuya Yamaguchi (山口達也:修士課程卒業生), Ahmed Musa (博士課程卒業生), Masaya Miyahara (宮原正也:助教), Kenichi Okada (岡田健一:准教授), and Akira Matsuzawa (松澤昭:教授)

問い合わせ先

東京工業大学大学院理工学研究科電子物理工学専攻
准教授 岡田健一
Email : okada@ssc.pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2258
Fax : 03-5734-3764

東工大リベラルアーツ研究教育院WG主催 リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会

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東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。同研究教育院の発足に向け、準備を進めているリベラルアーツ研究教育院ワーキンググループは、新たにはじまるリベラルアーツ教育を、様々な視点から考えていくために、講演会を開催しております。

「Tokyo Tech Qualityへ ~ リベラルアーツが動き出す」という統一テーマのもと「プレゼンテーション」「外国語教育」「新たな教養教育」「文章作成支援」「自然科学と教養教育」の5つのトピックスにより、世界を見据えた新たなリベラルアーツ教育とはなにか、様々な視点から考えていきます。 一般の方にもご参加いただける講演をご案内いたします。広くみなさまのご参加、ご聴講を歓迎いたします。

概要

日時・場所
詳細は各回詳細を参照ください。
対象
一般、東工大教職員、大学院生
参加費
無料
申込み
不要

各回詳細

第3回
日時
3月4日(水)14:00~17:00
場所
西8号館10階大会議室
講師
猪木武徳(青山学院大学特任教授、大阪大学名誉教授)
タイトル
「大学の反省――新しい教養教育を目指して」
第4回
日時
3月12日(木)14:00~17:00
場所
西9号館コラボレーションルーム
講師
佐渡島紗織(早稲田大学ライティング・センターディレクター、教授)
タイトル
「理科系学生の文章作成を支援する―早稲田大学ライティング・センターでの取り組みから」
第5回
日時
3月16日(月)14:00~15:30
場所
西8号館10F大会議室
講師
藤田一郎(大阪大学教授)
タイトル
「脳ブームの迷信、真実、教訓~学生とともに学ぶ」
第6回
日時
3月16日(月)15:45~17:15
場所
西8号館10F大会議室
講師
彼末一之(早稲田大学教授、大阪大学名誉教授)
タイトル
「スポーツする楽しさ、スポーツ科学の面白さ―教養として、専門として」
第7回
日時
3月17日(火)14:00~17:00
場所
西9号館コラボレーションルーム
講師
樋口裕一(多摩大学教授)
タイトル
「文章指導の方法と実践――書く楽しさを伝える」
全ての講演会は、スーパーグローバル大学支援経費を受けております。

東工大リベラルアーツ研究教育院WG主催 リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会

申込・受講に関する問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院WG
Email : ila2015@liberal.titech.ac.jp

取材申し込み及び問い合わせ先

広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975
Fax : 03-5734-3661

※取材をご希望の方は、広報センターまでご連絡ください。

3月の学内イベント情報

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2015年3月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

2015年3月の学内イベント情報

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