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地球生命研究所野村研究員がSPring-8関連の2つの賞を受賞

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本学地球生命研究所(ELSI)の野村龍一研究員が、SPring-8に関連する2つの賞「SPRUC 2014 Young Scientist Award」及び「SPring-8萌芽的研究アワード」を受賞しました。

野村龍一研究員
野村龍一研究員

SPring-8とは

SPring-8とは、独立行政法人理化学研究所が施設者の大型放射光施設です。国内外の産学官の研究者等に開かれた共同利用施設であり、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。

SPRUC 2014 Young Scientist Award

この賞は、SPring-8の利用法や解析手法の開発に顕著な成果を創出した若手研究者、あるいは測定手法や解析手法は確立された方法であったとしても、SPring-8の特徴を活用し測定対象の分野にとって顕著な成果を創出した若手研究者に与えられる賞です。

SPring-8萌芽的研究アワード

将来の放射光科学を担う若手研究者の育成を目的とする「SPring-8萌芽的研究支援ワークショップ」において口頭による成果発表を実施し、選考される賞です。「研究テーマの新規性、独創性、発展性」「SPring-8利用結果の有効性」等を基準に審査されます。

野村龍一研究員の研究内容

ダイヤモンドアンビルセル

ダイヤモンドアンビルセル

野村研究員は、2014年3月に東京工業大学大学院理工学研究科博士課程を修了し、同年4月からELSIでの研究活動を始めました。博士課程から理工学研究科地球惑星科学専攻の廣瀬敬教授(現ELSI所長)の研究室に所属し、高圧地球科学の実験的研究を行ってきました。

実験では、ダイヤモンドアンビルセルとよばれる直径5センチメートルほどの装置を使って、地球深部の圧力温度に相当する超高圧高温の環境を作り出します。地球の中心は約360万気圧、摂氏5000度にもおよびます。その状態を作り出すために、2つのダイヤモンドで試料をはさんで高い圧力を加え、レーザーをあてて加熱します。例えばよく行われている手法として、その上で試料をX線で観測し、結晶構造や体積密度から、その圧力温度状態に相当する地球がどんな様子なのかを予測します。

現在の地球は表面から、地殻、マントル、液体コア(外核)、固体コア(内核)の層構造をとっています。現在のマントルはほぼ全域が固体ですが、約46億年前に地球が誕生したときは、マグマオーシャンと呼ばれるドロドロに融けた液体岩石の海が地球表層から深部にかけてひろがっていました。その後、10億年ほど前まではまだ大量の液体が残っていたと考えられています。さらに地球が冷えていくに従ってマントルは固まり、現在の状態になりました。

野村研究員は地球の歴史、特に原始マントルの化学進化(固化)に注目し、マントル物質に圧力と温度をかけて融かし、従来のX線回折測定に加え、様々な化学分析を行いました。

マントルの成分は、鉄やマグネシウム、ケイ素などです。まず行ったのは、マントルの主成分である鉄とマグネシウム、ケイ素だけの試料に圧力を加えて、高温で融かす実験です。マントル物質を融かしていったところ、深さ1800キロメートルに相当する圧力付近で固体マントルの鉄成分が少なくなる一方、融けたマントル(マグマ)に鉄が入り込み、マグマが重くなる現象が起きました。このマグマは固体マントルよりも重く、マントルの底へと沈んでいきます。原始地球では、それがマントルの底に沈むマグマの海として存在していた可能性が高いことがわかったのです。このマグマの海が冷え固まることで、地震波観測から予想されていたマントル深部の化学不均質構造をうまく説明できます。この研究成果は2011年Nature誌に掲載されましたouter

さらに、実際のマントル物質により近づけた試料を使ったところ、マントル物質は予測されていた温度よりはるかに低い温度で融けはじめることがわかりました。現在のマントル最下部は固体であるため、そこでの温度はマントル融け始めの温度よりも低くなければなりません。この結果はマントル最下部やその下にある液体コアの温度が従来予想されていた温度より低いことを意味します。さらに、外核は液体であるため、コアの融点も予測より低いことを意味します。

野村研究員は、外核(液体コア)の融点低下は、コアに水素原子が入り込むことで実現できると考えました。その水素量は水に換算すると地球の海水の約80倍。大量の水素は、地球形成時に獲得したものと推定されます。この研究成果は2014年Science誌に掲載されましたouter

野村龍一研究員

野村研究員はELSIで、引き続きマントルやコアを中心に、原始地球の全球的進化について研究を進めています。大学院時代は鉄・マグネシウム・ケイ素といった主要成分で実験を行いましたが、隕石に含まれるような微量元素を新たに試料に足して実験を続けています。高圧実験が予言する原始地球内の微量元素分布と、ELSIの地質学研究チームが持つ情報と照らし合わせることで、実際に地球がどのような歴史をたどってきたのかを実証論的に解明することができると考えています。

なお、野村研究員は今年度、井上研究奨励賞と手島精一記念研究賞も受賞しています。

お問い合わせ先

地球生命研究所広報室
Email : pr@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163


新型デジタル発振器を開発 ―電圧サブサンプリングにより低消費電力、低ジッタ実現―

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科の松澤昭教授と岡田健一准教授らの研究グループは、アナログデジタル変換器(ADC)[用語1]を用いた新方式のデジタルクロック生成器の開発に成功した。従来のデジタルPLL[用語2]に比べ、低消費電力かつ低ジッタ[用語3]で動作することを確認した。

位相同期を電圧差の検出によって行うという新たな発想に基づき、発振器出力を直接、標本化する電圧サブサンプリング技術により実現した。従来のデジタルPLLは位相同期のために時間差検出による帰還(フィードバック)制御を行っていたが、時間差検出の分解能を高くできないことが課題だった。新技術はこの課題を解決する成果である。

最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル)のシリコンCMOSプロセスで試作した新型デジタルPLLは、2.2GHz(ギガヘルツ、1Gは10億)のクロックを生成可能であり、クロックの揺れが発振周期の0.08%と非常に良好なジッタ特性を達成した。消費電力は4.2mWと低い。この技術が実用化されれば、身のまわりのあらゆる電子機器に超小型バッテリーレスセンサーを組み込むことが可能となる。

研究成果は22日から米国サンフランシスコで開かれた「ISSCC (国際固体回路国際会議)」で、25日に発表された。

研究の背景・意義

クロック生成回路は、あらゆる電子機器に必要な基盤要素回路であり、低ジッタかつ低消費電力であることが求められる。デジタル回路用のクロックのほか、無線通信・有線通信やデータコンバータ用のクロックとして用いられる。クロック生成には、通常、位相同期回路(PLL : Phase-Locked Loop)を用いる。従来のアナログ方式のPLLでは、フィルタの面積が大きいことが問題であり、この問題を解決するため、近年、デジタルフィルタを用いるデジタルPLLが盛んに研究されている。

デジタルフィルタにすることで、フィルタ部分の面積が小さくでき、所望周波数に達するまでのロック時間を短くすることができる。デジタルPLLでは、発振器の出力を分周した信号と基準信号との時間差を検出する時間差デジタル変換器(TDC : Time-to-Digital Converter)[用語4]を用いる。

帰還ループをデジタル化することで、柔軟かつ堅牢な制御が可能である一方で、TDCの時間分解能があまり高くできないことが原因でジッタが劣化するのが問題点である。TDCの時間分解能が荒いと、帯域内位相雑音[用語5]が劣化し、結果として、ジッタが大きくなる。

研究成果

松澤教授と岡田准教授らはTDCの代わりに、ADC(Analog-to-Digital Converter)を用いることで解決を試みた。時間差を検出するよりも、電圧差の方が高精度で検出できることに基づく回路構成である。つまり、従来のデジタルPLLではTDCを用いていたが、新規デジタルPLLではADCを用いることにより、低ジッタかつ低消費電力な特性を可能とした(図1)。分周器を用いない電圧サブサンプリングにより実現した。

(a)TDCによるPLL(従来型)

(a)TDCによるPLL(従来型)

(b)ADCによるPLL(提案型)

(b)ADCによるPLL(提案型)

図1. デジタルPLLの校正

特徴:デジタル型位相同期回路(PLL)において、従来は時間デジタル変換器(TDC : Time-to-Digital Converter)が用いられていたが、提案型ではアナログデジタル変換器(ADC : Analog-to-Digital Converter)を用いることにより、非常に良好なジッタ特性の実現が可能である。

時間軸処理に対する電圧軸処理の利点は、(1)容量により電圧値をサンプリングできる、(2)正確に線形な電圧増幅ができる、(3)ジッタを減らすのに、余分な電力が不要、(4)ばらつきや電源電圧・温度変化などにより基準電圧範囲が変動しない、(5)抵抗ラダー(抵抗をはしご形に接続した回路)などにより容易に中間の電圧値を生成できることである。

これらの特徴により、電圧差による位相検出の方が、より高分解能かつ低消費電力な特性を実現できる(表1)。デジタルPLLにこのADCによる位相検出器を用いれば、非常に低い帯域内位相雑音かつ低ジッタ特性の実現が可能となる。消費電力も低くできる。

表1. TDC型デジタルPLL(従来)とADC型デジタルPLL(本技術)の特徴比較

特徴:位相比較器としてADC型では高い分解能および線形性を実現でき、PLLとして非常に低い帯域内位相雑音かつ低ジッタ特性の実現が可能。消費電力も低い。

 
(従来技術)
TDCを用いた時間差→デジタル変換
(本技術)
ADCを用いた電圧差→デジタル変換
線形性
悪い
非常に高い
分解能
普通
高い
消費電力
内部ジッタを抑えるために大電力が必要
低い

ADCを用いた新規デジタルPLLを、最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル)のシリコンCMOSプロセスで試作した。図2にチップ写真を示す。表2にTDC型のデジタルPLLとの比較を示す。本開発品は、4.2mWの消費電力を用い、2.2GHzの周波数で発振する。帯域内位相雑音は-112dBc/Hzと非常に良好であり、クロックの揺れを表すジッタ特性は、RMS値で380fsであり、発振周期に対して0.08%と、非常に良好である。ジッタを消費電力で正規化したPLL FoM[用語6]特性において非常に良好な特性を実現した(低いほど良好)。

チップ写真

図2. チップ写真

特徴:CMOS 65nmプロセスにより製造した。

表2. 従来のTDC型PLLとの性能比較

特徴:ADC型は位相分解能が高く、帯域内位相雑音を低減できるため、低ジッタ特性を実現できる。消費電力も低い。 ジッタを消費電力で正規化したPLL FoM特性において非常に良好な特性を実現した(低いほど良好)。

 
本研究
C. Hsu JSSC'09
C.Yao JSSC'13
Chilara ISSCC'14
方式
ADC-based
TDC-based
TDC-based
TDC-based
周波数
2.2GHz
3.6GHz
2.7GHz
2.4GHz
RMSジッタ
380fs
200fs
230fs
1.71ps
帯域内位相雑音
-112dBc/Hz
-107dBc/Hz
-110dBc/Hz
-90dBc/Hz
PLL FoM
-242dB
-237dB
-240dB
-236dB
消費電力
4.2mW
47mW
17mW
0.9mW
面積
0.15mm2
0.95mm2
0.62mm2
0.20mm2

今後の展開

松澤教授と岡田准教授らが開発したADC型PLLは、従来、不可能であった低消費電力かつ低ジッタ特性を同時に達成するものである。無線機の小型・低消費電力化、マイクロプロセッサや専用LSIの大幅な低消費電力化・高速化・小型低価格化に威力を発揮する技術といえる。超小型バッテリーレスセンサーなどあらゆる機器に組み込むことが期待される。

発表予定

この成果は、2月22日~26日にサンフランシスコで開催された「2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2015): 2015年IEEE 国際固体回路国際会議」のセッション「Session 25 ? RF Frequency Generation from GHz to THz」で発表された。講演タイトルは「A 2.2GHz -242dB-FOM 4.2mW ADC-PLL Using Digital Sub-Sampling Architecture(ADCを用いたサブサンプリングPLL)」である。現地時間2月25日午後2時から発表された。

用語説明

[用語1] アナログデジタル変換器(ADC : Analog-to-Digital Converter) : 入力されたアナログ値をデジタル値に変換する変換器。

[用語2] 位相同期ループ (PLL : Phase-Locked Loop) : 集積回路中では正確な周波数基準が作れないため、水晶発振器による基準周波数frefを用い、それをN逓倍して所望周波数Nfrefの周波数の信号を得る。PLLには、位相周波数比較器、チャージポンプ、ローパスフィルタを用いるアナログPLLと、時間差デジタル変換器(TDC)とデジタルローパスフィルタを用いるデジタルPLLが知られている。

[用語3] ジッタ : クロックの重要な特性の一つで、クロック信号の立ち上がりまたは立ち下りタイミングが揺らぐ現象で、本来のタイミングからのずれが統計的にどれぐらいの幅を持つかで評価する。ジッタが小さいほど、クロックの揺らぎが小さい状況を示す。クロックを生成している発振器の位相雑音特性に大きく依存し、位相雑音が低いほど、ジッタも小さくなる。

[用語4] 時間差デジタル変換器(TDC : Time-to-Digital Converter) : 二つのデジタル入力信号の立ち上がりの時間差、もしくは、立ち下がりの時間差をデジタル値に変換する変換器。時間デジタル変換器とも呼ばれる。

[用語5] 位相雑音 : 発振器の重要な特性の一つ。必要な周波数の信号に対し,どれだけ不要な周波数のスペクトルを持つかを表す。

[用語6] FoM : FoM(Figure of Merit)の略で、消費電力で規格化したジッタ性能を示す。ジッタと消費電力はトレードオフの関係にあり、発振器の消費電力を増やすとジッタが減少し、消費電力を減らすとジッタが増加する。
FoMは、ジッタの標準偏差(σt)と消費電力PDCを用いて、以下の式で定義される。
FoMの定義式
ジッタ特性が同じでFoMが10dB小さければ、消費電力が10分の1であることに相当する。

論文情報

掲載誌 :
2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2015): 2015年IEEE 国際固体回路国際会議
論文タイトル :
A 2.2GHz -242dB-FOM 4.2mW ADC-PLL Using Digital Sub-Sampling Architecture(ADCを用いたサブサンプリングPLL)
著者 :
Teerachot Siriburanon(博士課程学生), Satoshi Kondo(近藤智史:修士課程卒業生), Kento Kimura(木村健将:修士課程学生), Tomohiro Ueno(上野智大:修士課程卒業生), Satoshi Kawashima(川嶋理史:修士課程学生), Tooru Kaneko(金子徹:修士課程学生), Wei Deng(博士課程卒業生), Masaya Miyahara(宮原正也:助教), Kenichi Okada(岡田健一:准教授), and Akira Matsuzawa(松澤昭:教授)

問い合わせ先

東京工業大学大学院理工学研究科電子物理工学専攻
准教授 岡田健一
Email : okada@ssc.pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2258
Fax : 03-5734-3764

3月10日13:30 表1の項目名に誤りがありましたので、修正しました。

TSUBAME e-Science Journal Vol.13を発行

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学術国際情報センターが、TSUBAME e-Science Journal Vol.13を発行しました。
TSUBAME e-Science は、東工大のスーパーコンピュータTSUBAMEを利用した研究成果を発表する広報紙です。
Vol.13には、TSUBAMEグランドチャレンジ大規模計算制度で採択されたouter挑戦的な大規模計算の研究課題を含む、3つの事例が掲載されています。

  • マルチフェーズフィールド法を用いた金属多結晶組織形成シミュレーションの大規模GPU計算
  • 量子モンテカルロ法に基づく振動状態解析の大規模並列計算
  • 個別要素法による粉体の大規模シミュレーション

ご希望の方には、日本語(前半)と英語(後半)を合冊して印刷した冊子を郵送いたします。
送付先の住所(学内の場合はメールボックス番号)、所属、氏名を以下のアドレスまでお知らせください。
宛先: tsubame_j@sim.gsic.titech.ac.jp

TSUBAME e-Science Journal Vol.13

TSUBAME e-Science Journal Vol.13

お問い合わせ先
学術国際情報センター TSUBAME ESJ 編集室
Tel: 03-5734-2085
Email: tsubame_j@sim.gsic.titech.ac.jp

東京工業大学附属科学技術高等学校 卒業式挙行

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3月10日(火)、大岡山キャンパスにて東京工業大学附属科学技術高等学校の卒業式が執り行われ、185名が晴れの卒業の日を迎えました。

附属高校齋藤校長は式辞で、卒業生へのエールと、世界をさらに良くするために科学の力を存分に生かして欲しいと話しました。

附属高校の生徒達は、在学中に東京工業大学の教授を訪問し学ぶ機会も設けられるなど、東京工業大学と密に連携した教育を受けています。

ご卒業された皆様、おめでとうございます。

東京工業大学附属科学技術高等学校 卒業式

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

「グローバル時代」の外国語教育とは

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外国語教育に造詣の深い斎藤兆史教授、堀茂樹教授、増本浩子教授の3氏を講師に迎え、外国語研究教育センター長の山崎太郎教授の司会のもと、講師陣による報告とディスカッションが行われました。

語学教育の立場からグローバル時代の外国語教育についてお話いただきました

語学教育の立場からグローバル時代の外国語教育について
お話いただきました

まず斎藤・堀両氏の報告では、今日「グローバル化」の掛け声のもと、母語と英語さえできればこと足りるとする、貧しい「バイリンガリズム」が教育に弥漫しつつあることへの懸念が表明されました。とりわけ印象に残ったのは、「各大学で『英語だけで卒業できる』コースの設置が進んでいるが、それは(意義はあるにせよ)自慢すべきものではない」という堀氏の指摘です。大学教育が、目指すべきは「英語だけ」ではなく、その先、つまり学生・留学生が希望すれば多言語・多文化を学べる機会を広く提供することであり、そこに大学が本来誇るべき豊かさ、真のグローバル化があるという主張は、説得力あるものでした。

両氏の主張の背後にあるのは、外国語とは“他者の母語”に他ならず、それを学ぶことは文化的な驚きの経験だ、という古くて新しい認識です。自らの殻を破って他者と出会うスリリングな体験こそ、本当の意味での教養に必要なもので、文明にとっても不可欠だということを両氏は重ねて強調しました。

一方、増本氏は、海外への研究者派遣事業に自身が携わった経験をもとに、言語と力の問題、国際会議で何語を用いるかは参加者の力関係に大きく影響する、という事例を挙げ、学問的議論のできる英語力の必要性を述べました。一見、それは先の二氏の主張と対立するようですが、実はそうではなく、ごく単純化すれば、「実学的な、ツールとしての外国語習得の支援」と「異文化・他者との出会いとしての、教養としての外国語教育」とは二者択一ではなく、その両輪が大学教育に必要だということは、3氏から異口同音に確認することができました。

ディスカッションは、外国語担当教員の役割、多言語国家スイスの言語教育の現状、訳読という教授法の意義など、多岐に渡りました。また「他者との出会いとしての外国語教育」という見方に対し、聴衆からは「『他者との出会い』というが、大学教員自身はともすると“オタク的研究者”で、『他者』に開かれた姿勢をもっているといえるだろうか?」という質問が出され、会場が沸く場面もありました。

フロアからも核心をつく質問が出されました
フロアからも核心をつく質問が出されました

今回の講演会は、狭義の外国語教育のみならず、「大学とは、言語とは何か」について考える刺激と材料と得る機会となりました。このような機会を通じ、外国語教育の今日的意義を内外に向けてアピールすることの重要性を再認識するとともに、このような企画が今後も開催することされてゆくことが期待されます。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

ロシア・スコルコヴォ工科大学長が三島学長を表敬訪問

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2月10日、ロシアのスコルコヴォ工科大学(Skoltech, Skolkovo Institute of Technology)のエドワード・クローリー学長、ミハエル・ミヤフコフ副学長が本学を訪問し、三島良直学長と懇談しました。

Skoltechは2011年に米国マサチューセッツ工科大学(MIT)との連携のもと、技術革新を担う人材の育成や科学知識の発展、ロシアや世界が直面している様々な問題に対応する新技術の開発を目的として設立された大学院大学です。

三島学長、クローリー学長、ミヤフコフ 副学長
三島学長、クローリー学長、ミヤフコフ 副学長

懇談には、丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)、水本哲弥副学長(教育運営担当)、関口秀俊副学長(国際連携担当)も同席し、今後の両学の連携促進のために意見交換を行いました。

クローリー学長の本学訪問は昨年10月に続き、2回目です。今回の訪問では、本学の研究活動や教育理念をより深く理解するために「ものつくり教育研究支援センター」や河合研究室(基礎物理学専攻)を見学し、今後の交流について、関係者と意見交換しました。

訪問の最後には、“Building a University for the 21st Century”(21世紀の大学創成)というテーマで、クローリー学長が講演を行い、社会や産業の大きな技術革新につながる人材育成を目指すSkoltechの特色や研究分野、その目的について紹介しました。

河合研究室(基礎物理学専攻)にて河合教授(前列左)と学生たちと。

河合研究室(基礎物理学専攻)にて
河合教授(前列左)と学生たちと。

講演会 “Building a University for the 21st Century”「21世紀の大学創成」にて。

講演会 “Building a University for the 21st Century”
「21世紀の大学創成」にて。

東工大の西洋古典語授業

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東工大では世界文明センターの授業科目として、西洋古典語(古典ギリシア語・古典ラテン語)の講義が開講されています。これらの科目は2012年度から2学期分が開講され、2014年度からは4学期分が開講されています。2014年度後学期の授業を終えて、4学期分の授業を全て履修し終えた学生も出てきました。そこで、西洋古典語の授業を担当する世界文明センター 安村典子非常勤講師に、東工大で西洋古典語を学ぶ意義や、学生の印象について語ってもらいました。

ホメロス『オデュッセイア』6巻 オデュッセウスとナウシカアとの出会いの段
ホメロス『オデュッセイア』6巻 オデュッセウスとナウシカアとの出会いの段

西洋古典語と西洋古典学について

「西洋古典語」という名称を初めて目にする方も多いでしょう。古典ギリシア語(主として紀元前8~3世紀頃に古代ギリシアで用いられていた言語)と、古典ラテン語(同じく紀元前3~紀元後2世紀頃にローマ帝国で用いられていた言語)を総称する用語です。古典ラテン語はローマ帝国時代に地中海世界に広くゆきわたった後、ローマ帝国崩壊後の中世においては学問の言語として、そして更にはキリスト教ラテン語として、今日まで大きく変容を受けることなく生き続けています。

学問の分野としての西洋古典学(英名Classics)は、古代ギリシア・ローマの文学、哲学、歴史、言語等を学びます。西洋古典学の対象分野の中でよく知られている名前を挙げれば、ギリシア文学ではホメロス(『イリアス』『オデュッセイア』)、ギリシア悲劇(アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデス)、哲学ではプラトン、アリストテレス、歴史ではヘロドトス、ツキディデスなどがあります。ラテン文学としてはウェルギリウス、オウィディウス、哲学はセネカ、キケロ、歴史はリーウィスなどによる緒作品が有名です。

東工大において西洋古典語を学ぶ意義

西洋古典語を学ぶことによる第一の意義は、古典古代の哲学や文学を翻訳に頼ることなく、直接に読むことができる、ということでしょう。このことにより、2000年を経ても変わらぬ普遍的な価値をもつ古代の文献を、自分の眼で読み、内容を自ら吟味することができます。その結果それらの文献が、その時代の空気、風潮を反映したものであり、いかに時代の制約を受けざるを得なかったかということも、発見できるかもしれません。このように、原典を読むことにより、様々なレベルの批判精神を培うことができるのです。そして批判精神こそ、あらゆる学問の根本に位置するべきものであり、学問研究の発展はここから始まるといっても過言ではないでしょう。東工大の学生諸君が、自然学の領域であれ、工学の領域であれ、人文学の領域であれ、正確な知識に基づいた批判精神をもつことは、今後の研究・社会生活を進めるための、最も重要な必須条件であると思われます。

西欧文明は古代ギリシアとキリスト教をその源泉とする、といわれます。ギリシア文明はラテン文明を経由して、近現代の西欧社会に多大な影響を与えました。東工大の卒業生は将来、広く世界に羽ばたいてゆくはずです。そのとき、西欧文明の根源をなす古代ギリシア・ラテンについての知識を得ていることは、彼らにとって計り知れない意味をもつことでしょう。例えば、NASAによる火星探索機「オデッセイ」は、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』(英名Odyssey)から命名されました。なぜこの言葉が火星探索機の名前として選ばれたのか、その理由は西欧の科学者であれば常識として理解されているでしょう。『オデュッセイア』という叙事詩は、主人公(オデュッセウス)が幾多の冒険をし、幾度となく生命の危険にさらされながら、ついに故国への帰郷を果たすという英雄叙事詩です。火星探索機もその物語にならって、数々の調査をしたうえで、無事に地球に戻ってきてほしい、との願いをこめて命名されたのです。

東工大学生の古典学学習について

ギリシア語・ラテン語の初級文法と原書購読の授業を受講している学生は、実に勤勉で、よく勉強します。理工系の大学でこれほどまでに古典語を熱心に学ぶ学生がいることは、本当に大きな嬉しい驚きでした。複雑で難解な古典語の文法を、週1回の授業により1年で学び終えることは、予習復習に多大な時間を費やさなければ不可能です。一コマの授業のために、6~7時間の勉強をする学生も少なくないでしょう。「楽をして単位を取る」というのが一般の風潮であるのに、敢えて困難で大きな努力を必要とする課目に挑戦しよう、という東工大生の意欲は、どれほど賞讃してもし尽くせません。

受講生に、古典語の受講を決めた理由を尋ねると、多くの学生が「これまでに学んだことのない新しいことに挑戦してみたかったから」と答えてくれます。未知の分野への好奇心、たとえそれが困難を伴うものであっても、自分が全く知らなかったものに取り組んでみようという心意気は、本当に感動的です。

私がこれまで教えてきたのは、いずれの大学でも文学部の学生たちでした。そのどの学生たちよりも、東工大の学生たちは意欲、勤勉、学力のうえで優っていると思います。日本西洋古典学会や、イギリスの古典学関係の友人たちに、東工大で古典語の授業をしている、と話すと、彼らは一様に驚きの声を上げます。文学部の中ですら古典学の重要性が理解されにくいのが現状なのに、どうして理工系の東工大で?と驚き、東工大の教育方針の高い理想を讃嘆するのです。さらに、学生たちが素晴らしく良く勉強し、試験でもほぼ完璧な答案を出す学生がいると話すと、ますます驚き、古典関係の知人たちはそのことを大いに喜んでくれます。

実利に結びつかない学問領域は片隅に追いやられることの多い現状のなかで、東工大の教育理念は誠に賞讃に値するものです。古典学の重要性に着眼し、そこから多くを学びとろうとする教育方針は、よりよき教育のための理想的な姿であると思います。これを実践する東工大は、日本の教育における輝かしい先進事例であるといえるでしょう。

お問い合わせ先

世界文明センター 非常勤講師 安村 典子
Email : jim@cswc.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3824

鈴木啓介教授が日本学士院賞を受賞

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鈴木啓介教授が日本学士院賞を受賞しました。

授賞理由

鈴木啓介教授は、生理活性天然有機化合物の全合成、および、その基礎となる合成反応の開発に関する研究を行いました。動植物や微生物などが産生する有機化合物には種々の有用な生理活性を示すものがありますが、中には入手源や産生量の制約から、天然から十分な量が得られないものもあります。そのような場面では有機合成による供給が期待されますが、目的物の構造が極めて複雑な場合は、合成も容易ではありません。鈴木教授は、この観点から従来困難とされていた、多くの不斉中心や官能基を有する化合物の合成に関し、基礎化学の立場から新しい合成反応の開発や合成経路の設計を行いました。反応開発では高反応性化学種を活用し、斬新かつ有用な有機分子構築法や立体制御法を編みだしました。一方、合成研究では糖質、テルペン、ポリケチドなどの生合成の異なる部分構造が複合化した高次構造天然有機化合物を標的として、数々の全合成を実現しました。

日本学士院賞は、優れた業績を挙げた研究者に贈られる学術賞です。

鈴木啓介教授のコメント

鈴木啓介教授

鈴木啓介教授

身に余る光栄に、感激しています。多くの学生さん、スタッフの皆さんのおかげです。恩師、同僚、友人、そして家族に感謝します。

お問い合わせ先

広報センター
Email : pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975


細野秀雄教授が恩賜賞・日本学士院賞を受賞

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細野秀雄教授が恩賜賞・日本学士院賞を受賞しました。

授賞理由

細野教授は、独自の材料設計指針に基づき酸化物系の電子機能を探索し、以下の成果をあげました。

1.
鉄系高温超伝導体の発見
鉄化合物(オキシニクタイド)が高い臨界温度で超伝導を示すことを見出しました。
2.
透明酸化物半導体の分野の開拓
多くのp/n型、および両極性半導体物質を報告しました。また、透明アモルファス酸化物(TAOS)を設計し、それを薄膜トランジスタ(TFT)に用い、アモルファスシリコンより一桁高い移動度を実現しました。その一つIGZOを用いたTFTは、新型ディスプレイの駆動用に実用化されました。
3.
安定な電子化物の創製と物性の解明
石灰とアルミナから構成されるC12A7結晶を、絶縁体―金属―超伝導体への変換に成功しました。低仕事関数で化学的不活性という性質を見出し、これを利用し高性能なアンモニア合成触媒を実現しました。

日本学士院賞は、優れた業績を挙げた研究者に贈られる学術賞で、今回、細野教授は特に優れた業績を挙げた研究者に贈られる恩賜賞も合わせて受賞しました。

細野秀雄教授のコメント

細野秀雄教授

細野秀雄教授

1994年から本学で始めた研究テーマを、科研費、JSTのERATOや内閣府FIRSTプログラムで支援をいただき、恩師や多くの共同研究者、PDや研究室の卒業生らのおかげで、面白い物質・材料研究をやってこられました。お世話になりました方々に厚く御礼申し上げます。もう少し研究に集中して、新しい機軸でこれまでと違った世界をみてみたいと思います。

お問い合わせ先

広報センター
Email : pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

三島学長が中国・北京に出張し清華大学にて講演

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三島良直学長が、12月21日~22日に中国・北京に出張し、滝久雄客員教授(蔵前工業会理事長)、加藤隆行国際部長等と共に清華大学を訪問しました。

東工大と清華大学は、1985年に全学協定を締結して以来、大学院合同プログラムや「日中韓先進科学技術大学教育環」(TKT CAMPUS Asia Consortium)プログラム、アジアの理工系トップ大学で組織するASPIREリーグの活動等を通して、長年にわたり研究交流や学生交流を幅広く行っています。

講演する三島学長

講演する三島学長

清華大学で、12月22日午前、三島学長は「Toward World - Class Education and Research(世界トップレベルの教育と研究を目指して)」をテーマとして、東工大の教育改革について講演を行いました。本講演は、ノーベル賞受賞者や財界人など世界各国の著名人が講演を行う「Tsinghua Global Vision Lectures(清華海外名師講堂)」シリーズの一つとして行われました。講演は在中国日本国大使館の轟渉一等書記官ほか、多数の清華大学の教職員・学生や、清華大学に留学中の東工大生らが聴講し、講演後も教員や学生との質疑応答が活発に行われました。

これに先立って三島学長はXie Weihe副学長、Qu Delin日本研究センター長(北京蔵前会会長)、Xing Xinhui教授らと面会しました。Xie副学長は、清華大学と東工大は長い交流の歴史があり信頼関係で結ばれていて今回の訪問を歓迎しますと述べられました。三島学長と両大学がそれぞれ取り組んでいる大学改革や人材育成、教育・研究交流等について幅広く意見交換を行いました。

また、Chen Jining学長と全学協定及び授業料等不徴収協定更新の署名式が行われ、Yang Jian教授、Shi Jinghuan教授らが立ち合いました。署名式の後は、Chen学長主催の昼食会が催されました。三島学長とChen学長は、東工大と清華大学との交流を、幅広い分野で更に発展させていくことで意見が一致しました。

全学協定及び授業料等不徴収協定更新の署名式(左:三島学長、右:Chen学長)
全学協定及び授業料等不徴収協定更新の署名式(左:三島学長、右:Chen学長)

三島学長とChen学長

三島学長とChen学長

三島学長とXie副学長

三島学長とXie副学長

今回の訪問の最後に、三島学長はキャンパスツアーで学生寮China-Japan Youth Exchange Centerを訪れ、東工大からの留学生達を激励しました。

なお、清華大学訪問の前日21日には、北京蔵前会総会が開催され、蔵前工業会滝理事長、本房文雄事務局長とともに三島学長を含む東工大一行が出席しました。総会には在中国日本国大使館の横井理夫参事官らが出席し、Qu Delin会長、滝理事長の挨拶に続き、三島学長から現在、東工大が取り組んでいる教育改革の紹介が行われました。総会に出席した東工大の卒業生からの近況報告もあり、卒業生が日中両国にとどまらず世界各国の学術や産業分野で活躍している様子が発表されました。総会後の懇親会では、和気藹々とした雰囲気の中、三島学長は卒業生らとの交流を楽しみました。

北京蔵前会総会で三島学長を囲んで
北京蔵前会総会で三島学長を囲んで

今回の三島学長の北京訪問により、東工大と清華大学そして北京の学生や卒業生等との友好関係が一層深まり、今後のさらなる交流の契機となる、実り多い訪問となりました。

「もっと身近にサイエンス!  超分子化学:ナノサイズのカプセルを作る」開催報告

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3月8日、東工大蔵前会館のロイアルブルーホールで、サイエンスカフェ「もっと身近にサイエンス!  超分子化学:ナノサイズのカプセルを作る」 を開催しました(開催責任者:吉沢道人 准教授)。今回は、本学博物館と目黒区教育委員会の連携講座として、高校生対象に参加者を募集したところ、予想に反して小学生から大人(80代)まで幅広い年齢の方々から申込みがあり、約30人が参加しました。

資源化学研究所 穐田・吉沢研究室は、約2年半前に同様の企画を、本学博物館と共同で開催していますが、今回はその経験を活かした拡大版(2倍)として、講義と実験と“カフェ”を含めて3時間の内容を準備しました。ポイントのひとつ目は、身の回りのサイエンスから大学の研究成果までを理解してもらい、研究室で初めて作った化合物の合成や初めて見つけた現象を参加者の手で再現してもらうことです。もうひとつは、日々研究と格闘している学生に指導してもらい、実際の研究を参加者に直接伝えることです。今回は、穐田・吉沢研究室メンバーの近藤 圭さん(博士課程3年)が中心となり、11名の大学院生が2人1組となって実験指導を行いました。

分子模型を使った講義

分子模型を使った講義

前半の講義(60分)では、吉沢准教授が「新しい分子フラスコの開発を目指して」と題して、身近にある“分子”のフラスコの例を紹介した後、研究室の最近の研究成果として、新しい分子フラスコの設計や合成を説明しました。講義中の急な質問(「なぜ、ガラスのフラスコを使うの?」など)にも参加者は積極的に答えてくれました。また、分子フラスコの性質について、現在進行中の研究成果も含めて紹介しました。講義後の質問時間では、「新しい分子フラスコに可愛いネーミングを!」というアドバイスもありました。専門的な内容を多く含みましたが、終了後のアンケートでは、参加者の7割が講義を“良く理解できた”または“理解できた”と答えていました。

大学院生の指導による化学実験

大学院生の指導による化学実験

講義後は6つの班に分かれて、各机で参加者と学生が飲食をしながら科学について気軽に語り合い(カフェ:20分)をした後、後半の実験(110分)をスタートしました。まず、分子模型を組み立て、実験に使う分子の立体構造を理解してもらいました。その後、大学院生に1つ1つの操作や原理を教わりながら、参加者は水中で組み上がる“柔軟な”分子カプセルの合成や、そのカプセル内への様々な大きさや形の分子の取り込み実験を行いました。そして、このカプセル特有の溶液色や蛍光色の変化などを観察してもらいました。沢山の疑問や質問に大学院生が丁寧に答えつつ、用意していた12個の全実験を完了することが出来ました。実験についてのアンケートでは、約9割の参加者が“理解できた”以上でした。

サイエンスカフェの実行委員
サイエンスカフェの実行委員

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

資源化学研究所 吉沢道人
Email : centcafe@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3340

Art at Toyo Tech 12年の軌跡

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大学院社会理工学研究科主催の一般向けイベントArt at Tokyo Techは、東工大の芸術活動として2004年秋に開始されました。現在に至るまで12年間継続し、一区切りがつきましたので、Art at Tokyo Techの展開と教訓をご紹介します。

Art at Tokyo Techの展開

東工大と芸術の関係は非常に深く、1881年の設立当時から、主要輸出工業製品であった絹や陶器の製作にあたっては芸術性が重視されてきました。板谷波山(文化勲章受章者)、浜田庄司(同)から人間国宝 島岡達三などにいたる、そうそうたる人々が関わり、建築分野でも、谷口吉郎(文化勲章受章者)、篠原一男(ベネチアビエンナーレ特別賞受賞)につながる系譜が、この伝統を継承しています。さらに、これらの造形芸術ばかりでなく、時間芸術の音楽においても、すでに第2次世界大戦以前から、1920年代につくられた世界最高ピアノである、ドイツ、ベヒシュタイン社のフルコンサートグランドピアノを用いた授業がおこなわれていました。

Art at Tokyo Techはこれらの伝統に立脚し、東工大にArtを再興する為に企画された活動です。最初の行事は2004年秋に、大岡山キャンパスの西9号館の竣工記念として行なわれました。この活動の特色は、以下の点にあります。

  • 有名か無名か、年齢に関わらず、また東工大との関係があるかによらず、世界の真に実力のある芸術家を招聘
  • 西9号館を中心とした芸術空間の創造と連動
  • 学生教職員を巻き込んでいる

従って、学外有名タレントの公演を中心とする活動とは一線を画しています。

第1の特色は国際的に展開してきたことです。2004~2006年にかけては、女優の岸田今日子、一人芝居のイッセー尾形など、一般的に有名な方もお招きしました。しかし、それ以降は、国際的に活躍されているアメリカのロブ・フィシャー、英国のホアン・クルス、日本の鈴木昭男など芸術家、著名な美術史家であるドイツのアンジェラ・シュナイダー、あるいは学生などが中心となっています。

第2の特色は、西9号館のホールおよび建物の美的向上を目指していることです。オーストラリアのヨルク・シュマイサーが南極を訪れ、製作した氷山の芸術作品や、前述の東工大の宝の一つで有るベヒシュタインピアノが展示されています。また、矢萩 喜從郎のホール入り口付近に有る情報ボード、西9号館西の1階付近の石のベンチなど、一体になって芸術空間を作り上げています。

第3の特色は、東工大の正規授業(文明科目、専門科目)と連動していることです。オーディションによって選ばれた学生や教職員によるエントランスホールコンサート(西9号館入り口のエントランスホールで実施)が開催されています。また、ベヒシュタインピアノ友の会のメンバーによる、ピアノのメンテナンスも日常的に行われています。

Art at Tokyo Techの活動は2007年以降、年度ごとにテーマを決め、それにそった芸術家を招聘しています。これは、同じシーズンに行なわれる行事が連携し、全体として参加者の意識と感性を揺り動かすことを目指したためです。2007年から2013年までは、「異邦からのまなざし」の共通テーマのもとに、東工大の活動を世界的視点から見直すサブテーマを毎年決めて行なってきました。また、2014年は東工大ベヒシュタインピアノが製造されて90年周年を迎えたことを記念して実施されました。特に学外者に多くのリピータがあり、大きな成果をあげました。

Art at Tokyo Techの教訓

これまで延べ76回のメインイベント、18回のプロムナードコンサート、72回のエントランスホールコンサートが開催されました。参加人数はそれぞれ合計で、メインイベントが10,450名(平均140名)、プロムナードコンサートは1,700名(平均100名弱)、エントランスホールコンサートは3,520名(平均50名)です。これらは少なくない値だと言えるでしょう。

時系列的に参加者の推移を見ると、2004~2007年と比較してその後、参加者数は減少傾向にあります。これは学外の参加者が、比較的有名な講師や演奏家の行事に多いためと考えられます。また、2006年以降招聘した美術家は、現代芸術作家であるため、現代美術の難解さから、多くの学外者はこれを敬遠したのでしょう。一方、学生の直接参加があるエントランスコンサートや、東工大のラテンジャズビッグバンド ロスガラチェロスによる演奏会の参加人数は、現時点でもほとんど変化ありません。このことから、少なくとも参加者数という点では、学生の参加が行事の実施にとって不可欠だといえます。

Art at Tokyo Techのもたらす質的な効果

特別に才能の有る東工大学生の参加はすでに当初からなされていました。一般の学生が受講する講義との関係が明確になったのは、2007年以降です。世界的なハーピストであるフローレンス・シトラック氏(ジュネーブ・コンセルバトワール教授)による講義が始まりでした。ハープの演奏技術を学ぶのではなく、音楽の基本となる感性に関する内容でした。

その後、世界的なサウンドアーテストである鈴木昭男氏により音の創造、京都賞を受賞した現代ダンスの巨匠ピナ・バウッシュカンパニーのダンサーであるジャン・ローレン・サスポータス氏によりパーフォーマンスの講義がなされました。ジャン・ローレン・サスポータス氏の講義の成果発表会となった2008年の学生パーフォーマンスは、サスポータスの演技を超えるほどの素晴らしい出来となりました。

このような経験から、2013年のベヒシュタインピアノ90周年記念プログラムでは、学生の参加を大幅に取り入れました。具体的には、公開オーディションと、イヴ・アンリ氏(パリコンセルバトワール(国立パリ高等音楽院)ピアノ科教授)による公開レッスンが実施されました。これは、東工大という理工系大学で世界最高の音楽教育が受けられるという、歴史的な行事となりました。さらに2014年、劇場付舞踊団マドモアゼルシネマとそれを率いる伊藤直子氏が、学生と実施した合同公演「東京物語」は、ダンスシアターの地平を広げるものとなりました。

行事に参加した学生の感想

  • 貴重なベヒシュタインピアノが東工大で保管されていたというのが重要であり、あのピアノの存在なしでは語れないと思います。ピアノは、数多くの楽器の中で最も多くの技術が注入された技術の結晶ともいえる精密機械(メカ)です。特にそれも古いものとなれば、エンジニアの卵である東工大の学生は、音楽に興味がなくてもそれなりの興味を持って接するものかと思います。つい最近、音楽にそこまで縁が無い研究室の学生数人が、目の前にあるピアノについていろいろ話していたのが印象的でした。当時のエンジニアの知恵を結集した機械製品に対して特別な接し方をする文化がある東工大の土壌は、非常に重要かと思います。学業や研究を進める上では、精神的疲労からの解放というヒーリング効果ももちろんですが、特に研究においては、芸術に触れることで新たなアイデアや解決法を得ることも期待できます。
  • イヴ・アンリ先生の公開レッスンに参加し、先生の指導を受けて「こんな風な楽譜の捉え方があるのか」「こういう解釈ができるのか」と一気に視野が広がったと記憶しています。この時から身に付け始めた楽譜を精読・分析する習慣や、曲を大掴みに捉える力は、学業を修める上でも大変役立っているように感じます。Art at Tokyo Techの存在は、どれだけ学業が忙しくなっても、音楽にふれ、心を豊かに保つのを助けてくれています。Art at Tokyo Techに小学生の時に参加して「東工大には立派なグランドピアノがあるんだなぁ」という認識も、受験校を決めるに至った大きな理由の一つになっていたように思います。
  • 学業・研究を進める上での効果は、みんなで何かを作る達成感が得られ、グループワークの良さを知ることができることです。また、創造性や独創性に関して、伊藤直子先生の授業は、普段の何気ない生活や自分の中の気持ちからの気づきを学生から引出し、それを動きとすることが多いです。研究もひょっとした気づきから生まれるのかもしれません。一人で考えるのもいいけど、みんなで考えた方が良いものが創れる。でも、それは最初に他人任せにしないで、ひとりひとりが考えを練らなければならないというプロセスは、非常に重要だとおもいます。
  • 伊藤直子先生は、一見とても些細なことにでも着目をして、発想力豊かな振り付けを構成していきます。学業や研究、またそれ以外のことに対して(例えば人と話をするときなど)、自分の感受性を最大限に開くことが、物事への取り組みに独自の発想力を加えることに繋がり、より強い影響を人に与えると感じました。

このように、Art at Tokyo Techは学生への教育・研究推進およびセラピーなど、多方面で大きな効果があることが証明されています。

大学の社会貢献という観点から捉えたArt at Tokyo Tech

大学の社会貢献が、その本来の機能である教育・研究に基づいた独自の発信であるとすれば、Art at Tokyo Techにおける学生のパーフォーマンスはその最たるものでしょう。

「東京物語」を観劇した一般の方のアンケートからその一部を紹介します。

  • 信頼されるものづくりをしたいといって後ろに倒れ、仲間が支える。ピナ・バウッシュのシーンにもありますが、日本・アジアのものづくりの信頼を、アートの融合で表現する。本当に面白かったです。
  • 発想が自由なのでとても面白かったです。学生さんもとても素直にダンスしていて、新しい印象でした。せりふや歌も新鮮でした。

このようにArt at Tokyo Techは、東工大におけるArt の復興ばかりか、学生の教育、および社会への発信におおきく寄与したことがわかります。

今後さらにこれを定着させるために、世界で活躍する芸術家によるまとまった講義への、学生の創造的かつ真剣な参加が必要です。つまり、言語化された評論家によるリレー講義は適しません。また、世界に広がったパーフォーマンスアート(すなわち、音の演奏や身体的活動をふくむ芸術)を基軸とし、美術映像を含む総合芸術の推進を進めることが大切です。さらに、特定の才能に秀でた学生を対象にするのではなく、誰でも参加可能な芸術、モノの創作、パーフォーマンスを、一体化することが望ましいといえるでしょう。このためには、学内の講義科目の整備とともに展示スペースを含む音響に優れた、学外にも開かれたパーフォーマンスのおこなえる芸術空間の創設が不可欠です。

Art at Tokyo Tech 2014 東京物語
Art at Tokyo Tech 2014 東京物語

お問い合わせ先

肥田野 登
Email : nhidano@soc.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3185

教員のプレゼンテーション力向上を‐FDセミナー開催報告

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本学教員のプレゼンテーション力向上を目的としたFDセミナーが、3月4日、3月5日の2日間にわたり、大岡山キャンパスとすずかけ台キャンパスにて計3回開催されました。FDはファカルティ・ディベロップメントの略称で、教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称です。

このセミナーは大学の世界展開力強化事業の主催で、昨年度に続き実施されました。大学の世界展開力強化事業は、平成23年度より文部科学省が開始したプログラムで、国際的に活躍できるグローバル人材の育成と大学教育のグローバル展開力の強化を目指しています。本学からは、「日中韓先進科学技術大学教育環」と「グローバル理工系リーダー養成協働ネットワーク」の2件が採択されています。

今年度は、ベルリッツ・ジャパン株式会社より英国人講師マーク・バッテン氏を迎え、1セミナー最大5名という少人数制を生かした、3時間の密度の濃いセミナーが行われました。

挨拶をする原正彦教授(大学の世界展開力強化事業「日中韓先進科学技術大学教育環」構想責任者)

挨拶をする原正彦教授(大学の世界展開力強化事業
「日中韓先進科学技術大学教育環」構想責任者)

講師のマーク・バッテン氏

講師のマーク・バッテン氏

参加者は、それぞれ事前に準備した6~7分のプレゼンテーションスライドを、順番に皆の前で発表します。

発表後は、聴衆である他の参加者から評価を受けます。まずは良かった点、次に、「クリティカル・フレンド(批評してくれる友人)として、改善点を挙げてもらいます。発表者はその評価のひとつずつを、自分の手でホワイトボードに書いていきます。

例えば、ある発表者のホワイトボードには次のような言葉が羅列されていきました。(注:日本語は参考訳)

Positive points 良かった点

  • well prepared and well organized slides スライドがわかりやすい
  • using images 画像挿入が効果的
  • memorizing the speech 話す内容をきちんと覚えている
  • appropriate pace 配分ペースが適切
  • simple words for good understandings シンプルな単語を用いて理解しやすい
  • rhetorical question for the effect 会場への質問の投げかけが効果的
  • positive language during Q and A 質疑応答での受け答えが明確

Suggestions 改善点

  • lack of eye contact 会場とのアイ・コンタクトを増やして
  • more conversational, more smile もう少し打ち解けた口調で、笑顔を見せて
  • relax リラックスして
  • use more body language もっとジェスチャーを使って
  • use Tokyo Tech template 東工大のプレゼンテーション用テンプレートを使うといいのでは?
  • typo in the first page スペル・ミスに気をつけて

参加者からのコメントの後では、講師のバッテン氏より改めて良かった点、気をつける点について講評がありました。

少人数で行うことのメリットは、一人一人の発表に時間をとることが出来るのはもちろんですが、参加者の緊張感が軽減されることにより、本来の力を発揮しての発表が出来ること、また参加者同士、参加者と講師の相互交流が活発になることです。今回のセミナーを受講した教員は、リラックスした環境で自分のプレゼンテーションについて客観的に見直し、改良点を見つけることが出来たようでした。

3月4日大岡山キャンパスでのセミナー

3月4日大岡山キャンパスでのセミナー

3月5日すずかけ台キャンパスでのセミナー

3月5日すずかけ台キャンパスでのセミナー

お問い合わせ先

大学の世界展開力強化事業 タイプA「日中韓先進科学技術大学教育環」
Email : campusasia@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3026

不揮発性パワーゲーティングがCMOSロジックシステムの待機時電力削減に威力

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不揮発性パワーゲーティングがCMOSロジックシステムの待機時電力削減に威力
―不揮発性SRAMを用いた記憶回路で実証―

要点

  • 不揮発性パワーゲーティング(NVPG)とノーマリオフ(NOF)のエネルギー性能を定量評価。
  • 不揮発性メモリ素子である強磁性トンネル接合(MTJ)をSRAMに付加した不揮発性SRAMから構成される記憶回路で評価。
  • 不揮発性パワーゲーティングによって高効率の待機時電力の削減が可能。

概要

東京工業大学像情報工学研究所の菅原聡准教授、周藤悠介特任助教、山本修一郎特任助教らの研究グループは、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー(KAST;カスト)と共同で、不揮発記憶を用いたCMOSロジックの待機時電力削減アーキテクチャとして期待されている不揮発性パワーゲーティング(NVPG[用語1])とノーマリオフ(NOF[用語2])について、そのエネルギー性能の解析を行い、NVPGの有効性を明らかにした。マイクロプロセッサやシステム・オン・チップ(SoC)に搭載される上位階層の記憶回路を想定し、不揮発性メモリ素子である強磁性トンネル接合(MTJ[用語3])とCMOSとの融合回路から構成される不揮発性SRAMについて高精度シミュレーションによるベンチマークを行った。その結果、待機時電力の削減効率は、不揮発記憶に要する過剰なエネルギーと動作上待機状態にならざるを得ないセル部分における待機時エネルギーとの拮抗によって決まるが、記憶回路へのアクセス回数が多いマイクロプロセッサやSoCへの応用の場合ではNVPGの方が圧倒的に有利になることを明らかにした。

研究成果は3月10日からフランス・グルノーブルで開催されたヨーロッパで最大級の集積回路に関する国際会議DATEで3月11日に発表された。

背景と研究の経緯

パーソナルコンピュータやサーバに搭載されているマイクロプロセッサや、スマートフォンなどの携帯機器に搭載されているシステム・オン・チップ(SoC)などのCMOSロジックシステムでは、トランジスタの微細化と高密度集積化によって高性能化を実現してきた。この一方で、トランジスタのリーク(漏れ)電流によってシステムの待機(スタンバイ)時に消費するスタンバイ電力が著しく増大し、重大な問題となっている。

このような待機時電力はロジックシステムにおける待機状態の回路ブロックへの電源供給を遮断することで削減できる(これがパワーゲーティングと呼ばれる技術である)。しかし、従来のCMOSロジックシステムでは電源遮断によってシステム内に存在する重要なデータ(情報)が失われるといった問題があるために、この方法を用いる場合には制約が大きく、効果はあるもののその本来の能力を十分に発揮できていない状況にあった。近年、不揮発記憶を利用して、ロジックシステムの電源遮断を効果的に行い高効率に待機時電力を削減する方法がいくつか提案されている。

その一つが菅原聡准教授らの研究グループが提案した不揮発性パワーゲーティング(NVPG)である。通常、CMOSロジック内で用いられる高速動作可能な記憶回路(SRAMやフリップフロップなどと呼ばれる双安定記憶回路)は電源遮断によって記憶内容を失ってしまうが、このような双安定記憶回路に不揮発性メモリ素子を付加することで、電源遮断を行ってもデータを保持できるようにできる。同研究グループの提案した不揮発性双安定回路[用語4]では、CMOSロジックが通常の動作を行っているときには、不揮発記憶は用いずに通常の双安定記憶回路として動作し、電源遮断を行うときにだけ不揮発記憶を行うところに特徴がある。これによって、通常動作には影響を与えず、高効率にエネルギーを削減できるNVPGが実行できる。

これとは別の待機時電力削減アーキテクチャとしてノーマリオフ(NOF)がある。これはデータの記憶に常に不揮発記憶を用いる。このため、通常は電源遮断しておき、必要なときにのみ記憶回路に通電して、可能な限り待機時電力を削減する。しかし、通常、不揮発記憶には従来のCMOS構成の記憶回路に比べて大きなエネルギーを要し、また、動作速度も遅いといった問題がある。したがって、情報処理量が小さく、待機時間が非常に長いマイクロコントローラなどに用いる場合にはメリットがあるが、マイクロプロセッサやSoCのように情報処理量が多く演算時間の長い応用には適していないと考えられる。しかし、現状では、これらのアーキテクチャの理解不足による誤った見解も多い。

この原因の一つは、それぞれのアーキテクチャがそれぞれ異なった不揮発性記憶回路を用いて提案されており、システマティックな比較・検討が行われていなかったことが大きい。また、不揮発性記憶回路の導入による効果を従来の揮発性の記憶回路の場合と比較してそのメリットを判断することも重要になるが、このような検証もほとんど行われていない(これには後に述べるBreak-even timeと呼ばれる指標を用いることが重要となる)。

同研究グループの提案している不揮発性双安定記憶回路は、どちらのアーキテクチャにも用いることが可能なことから、これを用いて高精度シミュレーションから二つのアーキテクチャに関する性能を従来の双安定記憶回路と比較し、定量的評価を行った。

研究成果

本研究グループが提案している不揮発性SRAM(NV-SRAM)を用いてNVPGおよびNOFのアーキテクチャを検討した。マイクロプロセッサやSoCにおける上位階層のキャッシュメモリを想定して、それぞれのアーキテクチャの特性を解析した。

図1に解析に用いたNV-SRAMセルの構造を示す。通常のSRAMセルにトランジスタを介して、不揮発性メモリ素子である強磁性トンネル接合(MTJ)を接続しているところに特徴がある。このトランジスタによって、通常動作時(不揮発記憶を用いない双安定回路のみの読み出し/書き込み動作時)にはMTJをSRAMから電気的に切り離すことが可能となる。また、NV-SRAMに接続されたパワースイッチでセルへの電源遮断を行う。このNV-SRAMセルを用いて、メモリアレイ(Mビット×Nライン)および周辺回路を構成してシミュレーションを行った。

NV-SRAMセルの回路構成

図1. NV-SRAMセルの回路構成

トランジスタを介してMTJを通常のSRAMセルの記憶ノードに接続してある。パワースイッチによってセルへの電源遮断ができる。

図2に評価に用いたNVPGおよびNOFのベンチマークのシーケンスを示す。NVPGでは電源遮断を行うときにだけ、MTJへの書き込みを行い、短い時間の待機時はスリープモードとした(双安定回路のデータが消えない程度に供給電圧を絞る動作。パワーゲーティングほどではないが待機時電力の削減に効果がある)。NOFでは、データの書き込みには常にMTJへの書き込みを行い、待機時および毎回の読み出し後と書き込み後電源遮断を行っている、比較のための通常のSRAMでは、待機時はすべてスリープモードを用いた(現在、SRAMにスリープモードを導入することは常套手段となっている。SRAMとの性能比較を行う場合、SRAMにはスリープモードによる待機時電力の削減の効果を含めておくことが重要である。スリープモードのないSRAMとの比較は実用上の意味を持たない)。

ベンチマークシーケンス

図2. ベンチマークシーケンス

NVPGではセルアレイの全ビットを読み出し/書き込み後、時間tSLのスリープモードを実行する。これをnRW回繰り返し、MTJに書き込み(ストア)してから時間tSDシャットダウンし、復帰(リストア)する。通常のSRAM(OSR)では、待機時はすべてスリープモード、NOFでは待機時および読み/書き後はすべでシャットダウンしている。

以上の回路構成とアーキテクチャを用いて、高精度の回路シミュレーションを行った。CMOSデバイスについては最先端のCMOSデバイスであるFinFET(立体的なチャネルを持つ高性能の電界効果型トランジスタ)のPredictive Technology Modelを、MTJについては同研究グループの開発した高精度マクロモデルを用いた。

図3に動作波形を示す。NVPGでは、通常の(双安定回路部のみの)SRAM動作と、MTJへ書き込みを行う不揮発記憶の動作を分離できる。したがって、NVPGにおける通常の読み出しと書き込みはSRAMと同じ速度で実行できる。一方、NOFでは、通常動作と不揮発記憶動作を分離せず常に不揮発記憶を用いる。このため、不揮発記憶の必要のない通常の書き込みにも不揮発記憶を実行しなければならず、動作速度が大きく劣化する。さらに、毎回の読み出し時にも復帰動作と電源遮断を行うため、動作速度が低下する。また、この余計な動作に要する電力も余分に消費している。NOFではこのような動作速度の劣化があっても頻繁に電源遮断を行うことによって、エネルギー的にメリットが生じると考えられているが、以下に示すようにこれは正しくない。

各アーキテクチャによるNV-SRAMとSRAMの動作波形

図3. 各アーキテクチャによるNV-SRAMとSRAMの動作波形

左図は図2のシーケンスにしたがって動作させた場合の波形。右図はその拡大図である。NVPGでは通常のSRAMと同じ速度で読み出しと書き込みが実現できる。NOFでは読み出しや書き込みの度に復帰およびシャットダウン動作するため、動作速度が劣化するだけでなく、リストアやストアに伴う余計なエネルギー消費を生じる。

図4にnCYC=1における消費エネルギーEcycの読み出し/書き込み動作サイクル数nRW依存性を示す(nCYC、nRWは図2参照)。ここでは、セルのシャットダウン時間tSD(図2参照)を零としている。この条件は、不揮発記憶動作(ストア動作)と電源遮断からの復帰動作(リストア動作)の影響を評価するのに効果的である。NVPGではEcycはnRWの増加とともに通常のSRAMのエネルギーに漸近することがわかる。すなわち、ストア、リストアの影響はnRWの増加とともに消失する。これは同研究グループの提案しているNVPGの特徴の一つである。

消費エネルギーEcycのnRW依存性

図4. 消費エネルギーEcycのnRW依存性

ここではストアとリストアの効果を明らかにするためにtSD=0とした。NVPGのEcycはnRWの増加とともに通常のSRAMの場合に漸近するが(ストアとリストアによる過剰なエネルギーの効果はnRWの増加とともに薄れる)、NOFではこのような効果はない。

一方、NOFセルでは、このような依存性は見られず、しかも、消費エネルギー自体が通常のSRAMに比べて大きい。この特徴はシステムが電源遮断時に不揮発記憶を必要とする容量(プロセッサコアでは数K~10Kバイト程度)を変化させても変わらない。情報処理量が多く、メモリアクセスも極めて多い上位階層のキャッシュでは、NVPGのこの特徴は特に重要になる。まとまった演算処理の終了後に電源遮断を行うNVPGはマイクロプロセッサのコアやSoCのパワーゲーティングに有効であることがわかる。

図5に、Break-even time (BET[用語5])のnRW依存性を示す。BETは電源遮断によってエネルギーを削減できる最低の電源遮断時間である。NOFでは、nRWの増加にともない、BETが大きく増大している。これは、不揮発記憶と電源遮断を繰り返すことで、エネルギー削減の効果が小さくなることを示している(nRWの増加にともない、エネルギー削減のために、より多くの電源遮断時間が必要になる)。一方、NVPGでもBETはnRWに依存するが、その依存性は小さく、特にnRWの増加に伴うBETの増大は、NOFに比べてはるかに小さい。したがって、NVPGでは電源遮断によってより効果的にエネルギーを削減できる。さらに、NVPGでは我々の提案しているストアフリーシャットダウン(既書き込みのデータと同じデータは書き込まない不揮発記憶のアーキテクチャ)の導入によってBETはさらに大きく削減できる。したがって、細粒度のNVPGが可能となる。

Break-even time(BET)のnRW依存性

図5. Break-even time(BET)のnRW依存性

NOFではnRWの増加とともにBETは大きく増加する(最低限必要なシャットダウンの時間が延びる)。一方、NVPGでは、nRWの増加にとともなうBETの増大は緩やかである。NVPGは情報処理量の多いマイクロプロセッサのコアやSoCのスタンバイ電力の削減に有効である。

NOFにおいて、十分なエネルギーの削減効果を実現するためには、不揮発記憶に必要となる書き込みのエネルギーをSRAMより小さくすることが重要となる。今回の解析では不揮発性メモリ素子として用いたMTJは他の不揮発性メモリ素子に比べて、比較的に低エネルギーで書き込みが可能な素子であるが、SRAM以下に低減するのは容易ではない。MTJでは書き込み電流を小さくすると、スイッチングのエラーレートは増大する。また、マイクロプロセッサやSoCでは動作時のチップ温度はかなり高くなるが、エラーレートはチップ温度の上昇によっても増大する。さらに、トランジスタのバラツキ程度(小さくない)またはそれ以上にMTJの特性バラツキもあることを考えるとMTJの書き込みエネルギーをこのように小さく下げることは相当に困難であると考えられる。このことと、図4と図5に述べた特性を考慮すれば、マイクロプロセッサやSoCへの応用ではNVPGの方が圧倒的に有利であることがわかる。

今後の展開

現在のマイクロプロセッサやSoCの高性能化ではマルチコア化が必須の技術になっているが、今後はさらに大規模なマルチコア化(メニーコア化)が重要になってくる。この一方でダークシリコンと呼ばれる各コアの消費エネルギーのため同時に動作できるコアの数に制限が加わるという問題も発生する。このような問題では各コアの低消費電力化がより重要となるが、NVPGはこのようなメニーコアのプロセッサやSoCに極めて有効な待機時電力削減アーキテクチャとなる。一部に、コアでは従来のCMOS技術のみによるパワーゲーティングのみで十分であるという意見があるがこれは正しくない。従来技術のみではダークシリコンの問題は解決できない。従来のCMOS技術以上に細粒度で電源遮断することが可能となるNVPGが重要となる。

用語説明

[用語1] 不揮発性パワーゲーティング(NVPG) : マイクロプロセッサやSoCにおけるメモリシステムに不揮発の機能を付加し、高効率の待機時電力の削減が可能なパワーゲーティングを実現するアーキテクチャで、菅原准教授らの研究グループによって提案された。通常動作と不揮発記憶の動作を分離することで、コア内部まで不揮発化をすることが可能となり(コア内のすべての記憶回路を不揮発化する必要はない)、現状のパワーゲーティングでは実現できない最適な空間的・時間的粒度のパワーゲーティングを実行できる。このため、待機時電力の削減効率を極限まで高くできる。通常動作/不揮発記憶の機能分離によって、マイクロプロセッサやSoCの既存アーキテクチャとの整合性も高い。NVPGを実現するためには不揮発性SRAM(NV-SRAM)や不揮発性フリップフロップ(NV-FF)などの不揮発性双安定回路が必要であるが、通常動作と不揮発記憶の動作を完全に分離できる回路構成であることが必要となる。ロジックシステムに不揮発の機能を取り入れる発想は古くからあるが、パワーゲーティングに不揮発記憶を導入してパワーゲーティングの能力を極限まで引き出そうという試み(NVPG)は同研究グループによって初めて提案された。

[用語2] ノーマリオフ(NOF) : NVPGはノーマリオフ(NOF)としばしば混同されることがあるが、NVPGはこれとは以下に示すように全く異なる。NOFは不揮発性メモリを用いて、システムの電源遮断を頻繁に行い、またできるだけ高速に電源遮断状態からリブート(再起動)するアーキテクチャである(高性能化したインスタントオンともいえる)。オリジナルのアイデアではメモリシステムのすべてを不揮発化して頻繁にシステムのオン/オフ繰り返すアーキテクチャであった。したがって、システムのランタイムに待機時電力の削減の効果がなく、この削減のためにはパワーゲーティングを併用する必要があった。最近の構成では、メモリシステムの上位階層は不揮発化を行わないで、通常のパワーゲーティングを行うものに変更している。このシステムでは従来のパワーゲーティングの問題はそのまま残る。

[用語3] 強磁性トンネル接合(MTJ) : 薄い絶縁性薄膜(トンネル障壁)を2つの強磁性電極で挟んだトンネル接合構造の2端子素子で、不揮発性メモリMRAMの記憶素子に用いられる。強磁性電極の相対的な磁化状態が平行な場合と、反平行の場合で素子の電気抵抗が異なる。また、100nm程度以下に微細化されたMTJではスピン注入磁化反転と呼ばれる現象によって、磁場を用いることなく、MTJを流れる電流によって電気的に磁化状態を変化させることができる。

[用語4] 不揮発性双安定記憶回路(不揮発性SRAM(NV-SRAM)、不揮発性フリップフロップ(NV-FF)) : NV-SRAMやNV-FFなどの不揮発性双安定回路はこれまでにもインバータループに不揮発性メモリ素子を直接接続する方法がいくつか提案されてきたが、このような従来の方式ではインバータループに接続された不揮発性メモリ素子が、通常の双安定回路の動作に悪影響を与え、動作速度の劣化や消費電力の増大、さらにはバラツキ耐性やノイズマージンの減少など回路性能の劣化を生じる。このため、同研究グループが提案しているように通常動作と不揮発記憶の動作を完全に分離できる回路構成が必要になる。同研究グループの提案した不揮発性双安定回路は、インバータループ外にトランジスタを介して不揮発性メモリ素子を接続するため、インバータループと不揮発性メモリ素子を電気的に分離できる。したがって、通常のSRAM動作やフリップフロップ動作に影響を与えることなく、不揮発記憶/NVPG動作を実行できる。

[用語5] Break-even time(BET、損益分岐時間) : NVPGやNOFでは不揮発記憶を行うが、このとき大きなエネルギー消費を伴う。また、セルの構成によってはリーク電流なども従来の記憶回路に比べて増加していることがある。このような不揮発性記憶回路の導入に伴う余計なエネルギー消費があるため、闇雲に不揮発性記憶回路を用いると、むしろエネルギー消費を増大させてしまうことがある。“不揮発”=“低消費電力”といわれることがあるが、これは大きな間違いである。一般に“不揮発”≠“省エネ”であることに注意する必要がある。不揮発性記憶回路の導入に伴う余計なエネルギー消費をシャットダウンによって埋め合わすことができる最低限必要なシャットダウン時間がBreak-even time (BET)である。このBETは損益分岐時間と呼ばれることもある。BETを短くすることで時間的・空間的細粒度のNVPGやNOFが実現可能となる。BETの算出にはいくつか方法があるが、最も重要なものは既存の記憶システムと新しく導入した記憶システムとの比較から求めるBETである。新たに導入する記憶回路にどのような回路構成や駆動方式を用いていても、記憶回路であれば必ずBETを算出できる。例えばSRAMを不揮発性メモリMRAMで置き換えてもBETは算出できる。従来のCMOSロジックシステムにおいてはBETの概念はすでに用いられていたが、不揮発記憶を使ったパワーゲーティングにこの概念を導入したのは同研究グループが初めてである。

論文情報

掲載誌 :
18th Design, Automation and Test in Europe (DATE15), Grenoble, France, March 9-13, 2015, paper 7.7.3.
論文タイトル :
Comparative study of power-gating architectures for nonvolatile FinFET-SRAM using spintronics-based retention technology
著者 :
Y. Shuto, S. Yamamoto, S. Sugahara

問い合わせ先

東京工業大学 像情報工学研究所
准教授 菅原聡
Email : sugahara@isl.titech.ac.jp

東京工業大学 像情報工学研究所
特任助教 周藤悠介
Email : shuto@isl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5456
Fax : 045-924-5456

KASTの事業に関して

公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
イノベーションセンター・研究支援グループ
後藤・前川
Email : res@newkast.or.jp
Tel : 044-819-2034

取材申し込み先

東京工業大学広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975
Fax : 03-5734-3661

「新たなキャリアを拓く 博士人材との出会い」をテーマに学生フォーラムを開催

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3月6日午後、東工大田町キャンパス キャンパス・イノベーションセンターにおいて、博士課程教育リーディングプログラムに採択された4教育院による第2回合同学生フォーラムを開催しました。

水本副学長よりご来場歓迎の挨拶

水本副学長よりご来場歓迎の挨拶

「博士課程教育リーディングプログラム」は、優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーへと導くことを目的とした、文部科学省による事業です。本学からは、環境エネルギー協創教育院、情報生命博士教育院、グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院、グローバルリーダー教育院の4プログラムが採択されています。

130名余の参加者を集めた今回のフォーラムでは「新たなキャリアを拓く 博士人材との出会い」をテーマに、4教育院所属の39名の博士学生が、それぞれの教育プログラムでの取り組みや将来のキャリアプランをきっかけとして、産業界を中心とした参加者と交流を深めました。

フォーラムは、学生による「自己アッピールプレゼンテーション」から始まりました。一人3分の持ち時間で、専門とする研究内容だけでなく、リーディングプログラムで体験した国内外でのインターンシップや国際イベント企画などを通じて得た強みを、それぞれ個性豊かに発表しました。深いが狭い専門能力が特徴という従来の博士学生のイメージを覆し、数々の実践の中から俯瞰的な視野を広げ、独創力を身に付けつつある姿を参加者に印象付けることができました。

学生自己アッピールプレゼンテーション
学生自己アッピールプレゼンテーション

続くポスターセッションと交流会では、学生と企業等からの参加者が、研究内容やリーディングプログラムでの体験、将来のキャリアパスなどについて、親しく意見交換を行いました。特に、興味のある企業等からの参加者のテーブルに学生が赴き、質疑や相談を行う交流会では、それぞれの持つ経験を活かせる機会や、さらに身に付けるべき能力について真剣に意見交換をする学生の姿が見られました。

ポスターセッションで研究の紹介

ポスターセッションで研究の紹介

交流会で学生と企業との意見交換

交流会で学生と企業との意見交換

本学4教育院では、これからも協力しながら、時に切磋琢磨しつつ、社会の期待に応える博士課程学生の育成に努めて参ります。

お問い合わせ先

学務部リーディング大学院支援室
Email : lead.sui@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3117


より優れた教育の推進に‐平成25年度東工大教育賞授与式

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3月11日に西8号館情報理工学研究科大会議室において、東工大教育賞の授与式が行われました。

この賞は、教員の教育方法及び教育技術の向上を図り、より優れた教育を推進することを目的として制定されたもので、今回で12回目となります。

授与式では、最優秀賞に選ばれた松澤昭教授、阿部直也准教授ほか5名の出席者に対して三島学長から賞状及び報奨金(目録)が授与されました。

最優秀賞 松澤昭教授

最優秀賞 松澤昭教授

最優秀賞 阿部直也准教授

最優秀賞 阿部直也准教授

平成25年度における授業科目の教育方法等が優れているとして次の9名の教員が選ばれました。

最優秀賞

  • 大学院理工学研究科 電子物理工学専攻 松澤 昭 教授
    対象業績:電気電子系の教育改革・改善に向けたリーダーシップの発揮

  • 大学院理工学研究科 国際開発工学専攻 阿部 直也 准教授
    対象業績:多様性と自主性を重視した国際的交流・教育活動への貢献

優秀賞

  • 大学院理工学研究科 化学専攻 岩澤 伸治 教授
    対象業績:小テストの活用による、学生の理解度と疑問点の共有化

  • 大学院理工学研究科 機械物理工学専攻 水谷 義弘 准教授
    対象業績:材料力学関連科目への参加体験型学習法の導入

  • 大学院理工学研究科 機械制御システム専攻 伏信 一慶 准教授
    対象業績:AO地域での交流プログラム融合を通じた工学系学生の国際化

  • 大学院理工学研究科 機械制御システム専攻 塚越 秀行 准教授
    対象業績:モノ作りの感動体験を重視した次世代ロボコン教育への展開

  • 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻 千葉 明 教授
    対象業績:クラウドサービスHandbookによるeラーニング導入とアクティブラーニングへ展開

  • 大学院理工学研究科 建築学専攻 奥山 信一 教授
    対象業績:国際大学院プログラム等による先駆的な建築デザインスタジオ教育

  • 大学院情報理工学研究科 計算工学専攻 西崎 真也 准教授
    対象業績:情報教育における教材開発とカリキュラム開発

(所属順)

集合写真
集合写真

TBS「別冊アサ秘ジャーナル」に東京工業大学が登場します

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3月22日(日)25:29~27:00放送のTBS「別冊アサ秘ジャーナル」で、浅草キッド(水道橋博士さん・玉袋筋太朗さん)と、江口ともみさんの3人が東工大の魅力に迫ります。

「アサ秘ジャーナル」は2001年からスタートしたTBSの名物深夜番組です。

2013年春からは、「別冊アサ秘ジャーナル金のたまごナビ」として、日本全国の大学を取材し、各分野の最先端の研究教育と、未来を支える金のたまごである学生や研究者を紹介します。

撮影の様子

東京工業大学でも、個性豊かな金のたまご達に取材が行われました。

小池研究室(計算工学専攻)では、バスタブの水面に映像を投影する実験を体験し、最新のデジタル技術に触れあいます。
岡田研究室(機械物理学専攻)では、渋滞を再現するロボットなど、今まで開発したロボット達を紹介します。
伊能研究室(機械制御システム専攻)では、“揺れるベッド”を体験し、快適な睡眠の秘訣を聞きます。
伊原研究室(化学専攻)では、東工大が誇る最新のエネルギー研究について学びます。
特に、江口ともみさんは、全面太陽電池パネルに囲まれた環境エネルギーイノベーション棟が以前から気になっていたということで、興味津々でした。
安藤研究室(電気電子工学専攻)では、はやぶさ2の通信アンテナの実験も行われたという、電波暗室を体験します。
伊藤研究室(リベラルアーツセンター)では、学生主導で行うプロジェクトの東工大グッズ開発に参加します。

撮影の様子
撮影の様子

この他、池上彰教授(リベラルアーツセンター)が理系における教養教育の重要性を語ります。部活動からはコールクライネスと写真部の学生が登場します。また、東工大OBが創業メンバーに在籍する、「ハイボット」や「チームラボ」にも企業訪問します。
以上のように、盛りだくさんな内容となっています。

番組名
TBS「別冊アサ秘ジャーナル」
放送日
3月22日(日)25:29~27:00

お問い合わせ先

広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

大学の反省―新しい教養教育を目指して

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リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会 第3回 開催報告

「東工大発、世界を見据えたリベラルアーツとはなにか。」多彩なゲストを迎え、さまざまな視点から考えていく全7回の講演会シリーズです。東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。この講演会シリーズは同研究教育院の発足に向け、準備を進めている同研究教育院ワーキンググループが、スーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しています。

このシリーズ講演会は主に東工大の大学院生、教職員を対象としていますが、今回の講演会から一般にも公開しています。

第3回
日時
3月4日(水)14:00~17:00
場所
西8号館10階情報理工学研究科大会議室
タイトル
「大学の反省―新しい教養教育を目指して」
講師
猪木武徳(青山学院大学特任教授、大阪大学名誉教授)
講師の猪木武徳氏

講師の猪木武徳氏

猪木武徳氏の講演では、(1)大学と大学論の歴史、(2)日本の大学について論じる際の注意点、(3)知の性格、(4)フマニタス[用語1]を指す概念としての「人文学」、(5)今後の大学で残っていくもの、という五つの観点から、今日の大学教育の問題点が指摘されるとともに、大学での教養教育の重要性が述べられました。講演の焦点は、特に研究大学における教養教育の意義をめぐるものでした。

指摘された問題点のひとつは、今日の日本の大学における行き過ぎた成果主義や実利主義の追求です。

学部教育において、早い段階でカリキュラムが専門分化するため、学生には、一般教養科目(外国語や数学といった基礎科目を含む)を勉強する時間が十分に与えられていません。また大学院に進学すると、学生は就職を目指していち早く業績をあげねばならず、学業は専門領域だけに限られてきます。この成果主義は、大学教員の世界でも同様で、イギリスでは大学教員の採用にポイント制が導入されており、専門分化の進みすぎた環境で領域横断的な発想が出にくくなることが懸念されています。

メモを取りながら熱心に聴き入っています

メモを取りながら熱心に聴き入っています

この問題の裏を返せば、教養を培うことは、長期的には好奇心や知識欲、高度な文章読解力、持続する豊かな発想力を育むことになるのです。この点が猪木氏自身の経験や様々な大学の事例、さらには古代ローマの文人キケローなどからの引用も交えて説き明かされました。

発想力とともに強調されたのは、「社会あるいは人へのまなざし」と「自分へのまなざし」です。あらゆる学問はなんらかの形で人間に関わっており、学生が人間の複雑さに気づくことは、学問への取り組みを豊かにします。人間の複雑さや多様な営みに気づくためには、古典や文学に触れることほど効果的なものはありません。こうした気づきの場を用意するのが教養教育であり、気づきの積み重ねは学生の想像力や歴史意識を涵養し、「人へのまなざし」を育みます。こうした提言が、福沢諭吉の「智徳の弁」の議論に基づいて説明されました。

講演後には活発な質疑応答が交わされ、講演会は盛況のうちに幕を閉じました。

質疑応答はなごやかな雰囲気の中で行われました
質疑応答はなごやかな雰囲気の中で行われました

用語説明

[用語1] フマニタス(humanitas) : ラテン語では人類や人間性のこと。古代ローマ時代には品行方正であること、またそれを身につけるのに必要な教養を意味した。ルネサンス期にはイタリアで古代ギリシアや古代ローマの古典文献精読を通して人間性について研究する「人間学(studia humanitatis)」が始まり、近代以降の学問領域としての人文学の礎が築かれた。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

「理科系学生の文章作成を支援する」講演会開催

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リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会 第4回 開催報告

「東工大発、世界を見据えたリベラルアーツとはなにか。」多彩なゲストを迎え、さまざまな視点から考えていく全7回の講演会シリーズです。東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。この講演会シリーズは同研究教育院の発足に向け、準備を進めている同研究教育院ワーキンググループが、スーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しています。

このシリーズ講演会は主に東工大の大学院生、教職員を対象としていますが、今回の講演会は一般にも公開されました。

第4回
日時
3月12日(木)14:00~17:00
場所
西9号館コラボレーションルーム
タイトル
「理科系学生の文章作成を支援する―早稲田大学ライティング・センターでの取り組みから」
講師
佐渡島紗織(早稲田大学ライティング・センターディレクター、教授)
佐渡島紗織教授

佐渡島紗織教授

大学生は、アカデミックな文章を書く事ができるようになることが求められています。かつては、多くの場合自分で学ぶしかありませんでした。しかし、現在、大学では、組織的にライティングを教える必要に迫られています。そのような状況の中、独立した機関でライティングを学ぶことの出来る機会を提供することが大学の課題になっています。この課題にいち早く取り組んできた日本におけるパイオニアが、早稲田大学ライティング・センターです。講演会には、学内外の学生、教員、そしてメディア関係者が50人以上集まりました。

前半では、ライティング・センターの意義、立ち上げ方、運営、チューターの養成について詳しく説明がありました。ライティング・センターでは、書き手の自立を促すために、文章を診断し修正する観点を指導しながら、内容をよくしていくことを目指します。書き手自身が内容を深めていくことができるように、対話で書き手を導きます。このチュータリングセッションにおける、文章の磨き方の理念と技術についても言及がありました。添削をするのではなく、書き手に修正案をいくつか見つけてもらう手助けをするのがポイントとのことです。

家庭教師のように、学習に関する指導やサービスを行うこと

後半は実践です。参加者が1枚の小論文を書いて、パートナーに見てもらい、チェックリストを使って互いに評価しあいました。その後、4人グループに分かれ、チュータリング体験を振り返り、その意義について語り合いました。

チュータリング体験実習

チュータリング体験実習

4人グループに分かれて議論

4人グループに分かれて議論

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

光通信デバイスに"透磁率"の概念を導入 ―メタマテリアルを実装した光変調器開発に成功―

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要点

  • InP系光通信プラットフォームに透磁率の概念を導入することに成功
  • 光周波数帯において電圧制御可能な特殊なメタマテリアルを実現
  • 光変調器のサイズを現在の1/100程度まで小型化可能

概要

東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センターの雨宮智宏助教と荒井滋久教授、理化学研究所の田中拓男准主任研究員、岡山大学自然科学研究科の石川篤助教らの共同研究グループは、インジウム・リン(InP)系光通信プラットフォーム[用語1]に “透磁率” [用語2]の概念を導入することに世界で初めて成功した。

具体的には、InP系マッハツェンダー光変調器をベースとして、デバイス内部に特殊なメタマテリアルを実装。電圧印加に伴う透磁率の変化を利用して、透過光の強度を変調することに成功した。ナノスケールの金属構造で構成されたメタマテリアルに3次元トランジスタの技術を組み合わせることで、光周波数帯において電圧印加による透磁率の制御を可能とした。

現在の光通信デバイスは“誘電率”[用語3]の制御によって、所望の動作を得ているが、そこに透磁率の概念を加えることで、既存技術を凌駕する小型かつ高性能なデバイスが実現可能となる。本技術は、光変調器に限らず光通信プラットフォームにおいて広く利用できるため、将来、さまざまなデバイスへの応用が期待される。

研究成果は3月23日 午前10時(英国時間)に、英国科学誌ネイチャー(Nature)姉妹誌のオンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。

研究の背景・意義

すべての物質は、その物質を特徴付ける何らかのパラメーターを持っているが、誘電率と透磁率の2つの概念は、電磁波(光)にとって特に重要である。しかし、一般的な光通信の教科書には誘電率の記述はあるものの、透磁率については一切登場しない。これは「光通信で用いるような高周波の光にとっては、すべての物質の比透磁率は1である」という純然たる事実が存在するためである。裏を返せば、現在の光通信では、本来であれば制御できる可能性のあるパラメーターをまったく利用していないことになる。

従来の光通信で用いられているレーザーや変調器、光スイッチなどの各種デバイスは、主にInP系の材料でできているが、このプラットフォームにおいて、前述した「透磁率一定」の制約を超えることは、大きな意味を持つ。特に以下の2点において、光通信の世界に新たなフロンティアを拓くことに寄与する(図1参照)。

1. 既存デバイスの大幅な小型化・高性能化

誘電率と透磁率、2つのパラメーターを同時に制御することで、本来、屈折率の可変幅が狭いInP系デバイス内において、極めて大きい屈折率変化を持たせることが可能となる[用語4]。これは、既存デバイスの大幅な小型化・高性能化に繋がる。

2. 既存技術の枠組みを超える性質を実装可能

誘電率と透磁率を適当な値に設定することで、負の屈折率に代表されるような従来技術の枠組みを超えた性質をInP系プラットフォーム上に作り出すことが可能となる。この応用先として、光メモリーや光無線アンテナなどが考えられる。

透磁率で拓く、光通信デバイスの2つのフロンティア

図1. 透磁率で拓く、光通信デバイスの2つのフロンティア

研究成果

同研究グループは、光通信で最も一般的なInP系プラットフォームにおいて、透磁率の概念を導入することに世界で初めて成功した。具体的には、InP系マッハツェンダー光変調器[用語5]をベースとして、デバイス内部に特殊なメタマテリアル[用語6]を実装。電圧印加に伴う透磁率の変化を利用して、透過光の強度を変調することに成功し、デバイスの大幅な小型化が可能であることを示した。

キーとなる主な成果は下記のトライゲート(Tri-gate)メタマテリアルとメタマテリアル集積型マッハツェンダー変調器の2つ。

  1. 1.トライゲート(Tri-gate)メタマテリアル: InP系化合物半導体上に浅い溝を掘り、その内部にナノスケールの金属構造を作りこむことで、電圧制御が可能な特殊なメタマテリアルの開発に成功(図2参照)。この構造では、上部から電圧を印加することで、半導体内のキャリア密度を変化させることができ、それに伴って金属微細構造の応答(=メタマテリアルの特性)に変化が生じる(キャリア発現の原理は3次元トランジスタと同一)。これにより、電圧印加の有無によって、透磁率の値を制御できることになる。
  2. 2.メタマテリアル集積型マッハツェンダー変調器: トライゲートメタマテリアルの技術を光通信デバイスへ実装することで、「透磁率制御によるメタマテリアル装荷型変調器」を実現(図3参照)。この素子は、マッハツェンダー干渉器の各アームにトライゲートメタマテリアルが一列に埋め込まれた構造となっており、素子上部から電圧をかけ、アーム部の透磁率を変化させることで強度変調を行う。
電圧制御が可能なトライゲートメタマテリアル

図2. 電圧制御が可能なトライゲートメタマテリアル

メタマテリアルを実装した光変調器

図3. メタマテリアルを実装した光変調器

透磁率を制御することで、本来、屈折率の可変幅が狭いInP系デバイス内において大きな屈折率変化を持たせることが可能となり、200 μmのデバイス長において約7.0dB(デシベル)の変調特性を得ることに成功した。誘電率と透磁率を両方使うことにより、さらなる高性能化を図ることができ、将来は、実用化されている既存デバイスと同じ性能を維持しながらサイズを1/100程度まで小型化できることが予想される。

今後の展開

現在のメタマテリアル研究の大部分は、物性物理学、あるいは基礎工学の領域で行われている。特に2010年ころまでは、「メタマテリアルの材料としての固有特性」に研究の重きが置かれていたが、現在はその多くがデバイス応用へ向かっている。実際、米国ではKymeta社、カナダではMTI社(Metamaterial Technologies Inc)などのベンチャー企業も立ち上がっており、いよいよ実用化へ向けて動き出している。こうした流れからも分かるように、今後、工学的な立場の研究がますます重要となってくることは明らかである。

今回の研究はレーザー・変調器をはじめとするInP系光通信プラットフォームで透磁率の概念を世界で初めて導入したことに特徴がある。光変調器に限らず、InP系光デバイスに広く利用できるため、さまざまなデバイスの小型化・高性能化・特殊動作化に寄与するものと期待される。

用語説明

[用語1] InP系光通信プラットフォーム : レーザーに代表される光通信デバイスの多くはInP基板上にインジウム(In)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ヒ素(As)、リン(P)などの所望の元素を組み合わせた化合物半導体を成膜して作られる。

[用語2] 透磁率 : 入射電磁波(本研究では光)に対して、物質の磁化のしやすさを表す定数(物質固有の磁気的性質を表す)。比透磁率とは、真空の透磁率との比をとったもの。

[用語3] 誘電率 : 入射電磁波(本研究では光)に対して、物質の分極のしやすさを表す定数(物質固有の電気的性質を表す)。比誘電率とは、真空の誘電率との比をとったもの。

[用語4] 「屈折率」と「比誘電率・比透磁率」の関係 : 屈折率nと比誘電率ε・比透磁率μの間には、屈折率nと比誘電率ε・比透磁率μの関係式という関係がある。比誘電率と比透磁率、2つのパラメーターを同時に制御することで、従来の比誘電率のみを用いる屈折率変化(比誘電率のみを用いる屈折率変化式)に比べて、遥かに大きい変化(比誘電率と比透磁率を用いる屈折率変化式)が望める。

[用語5] マッハツェンダー変調器 : 電気信号により透過光強度を変化させる外部光変調器の一種。2つの光路の干渉を利用することで、光の強度を変化させる。

[用語6] メタマテリアル : 「メタ」は「超越」、「マテリアル」は「物質」を意味する言葉で、メタマテリアルは人工的に作り出した「超物質」あるいは「疑似物質」といった意味になる。つまり自然界にはない性質を備えた人工の「物質のようなもの」。自然界の元素や化合物に固有の性質を変えるには化学的組成を変える必要があるが、メタマテリアルは原材料の物性はそのままに、超微細な形状パターン、つまりカタチによって性質を変化させることができる。今回の発表では、自然界では制御できないといわれていた透磁率をメタマテリアルによって制御可能にした。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Permeability-controlled Optical Modulator with Tri-gate Metamaterial: Control of Permeability on InP-based Photonic Integration Platform
著者 :
T. Amemiya, A. Ishikawa, T. Kanazawa, J. Kang, N. Nishiyama, Y. Miyamoto, T. Tanaka, and S. Arai
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 量子ナノエレクトロニクス研究センター

助教 雨宮智宏、教授 荒井滋久
Email : amemiya.t.ab@m.titech.ac.jp / arai@pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2555
Fax : 03-5734-2907

理化学研究所 田中メタマテリアル研究室

准主任研究員 田中拓男
Email : t-tanaka@riken.jp
Tel : 048-467-9341
Fax : 048-467-9441

岡山大学 大学院自然科学研究科(工)

助教 石川篤
Email : a-ishikawa@okayama-u.ac.jp
Tel : 086-251-8140

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