Quantcast
Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
Viewing all 4086 articles
Browse latest View live

コマツと東京工業大学が組織的連携協定を新たに締結

$
0
0

コマツ(社長:大橋徹二)と、国立大学法人東京工業大学(学長:三島良直)は、研究開発のための組織的連携に関する協定を4月1日に新たに締結しました。1. 将来建機に求められる機械、電気、材料、情報通信などの分野における革新的技術、2. 現象解明につながる計測、分析、CAE(Computer Aided Engineering)などの先進的「見える化」技術、3. 将来の建設・鉱山向けソリューションビジネスを支える要素技術、の3つを主要な対象として、コマツおよび東京工業大学の双方から人材を集結し、積極的に研究に取り組むことで、建設、鉱山機械に関する革新技術の開発を進めます。

また同時に、東京工業大学大学院理工学研究科にコマツ建機革新技術共同研究講座を設置しました。共同研究講座ではトライボロジー技術の研究に取り組み、建機のキーコンポーネントである油圧機器の高性能化を目指します。東工大のトライボロジーにおける機械、材料、化学各分野の研究者とコマツの研究者による学際的な研究体制を構築しました。コマツと東工大が互いに協力してトライボロジー技術の発展と人材育成に取り組んでいきます。

なお、コマツの国内大学との協定は、横浜国立大学、大阪大学、金沢大学、東京大学に続き5校目、また、東工大の企業等との組織的連携協定は、15機関目となります。

トライボロジー技術 : 潤滑、摩擦、摩耗、焼付きなど摺動にともなう現象を扱う科学技術
コマツ 取締役(兼)専務執行役員CTO 髙村藤寿(左)と東京工業大学学長 三島良直(右)

コマツ 取締役(兼)専務執行役員CTO 髙村藤寿(左)と東京工業大学学長 三島良直(右)

共同研究講座の概要

名称
コマツ建機革新技術共同研究講座
場所
東京都目黒区大岡山2-12-1 東京工業大学大岡山キャンパス 石川台3号館
設置期間
2015年4月1日~2018年3月31日
大学代表者
岸本 喜久雄(東京工業大学大学院理工学研究科 工学系長)
会社代表者
住谷 明(コマツ 開発本部材料技術センタ 所長)
共同研究担当教員
大竹 尚登(東京工業大学大学院理工学研究科 教授)
京極 啓史(東京工業大学大学院理工学研究科 教授)
青木 才子(東京工業大学大学院理工学研究科 准教授)
共同研究講座教員
菊池 雅男(東京工業大学大学院理工学研究科 特任教授※コマツから出向)
田中 真二(東京工業大学大学院理工学研究科 特任准教授)
その他研究員2名

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

コマツ コーポレートコミュニケーション部

Tel: 03-5561-2616


高校生向け広報誌「TechTech」27号発行

$
0
0

東京工業大学広報誌「TechTech(テクテク)」27号を発行しました。

「TechTech」は、主に高校生を対象とし、東工大の最新の研究、学生生活、研究室、先輩の活躍など本学のさまざまな面を豊富な画像とわかりやすい文章でご紹介する広報誌です。

最新号の特集は「Labo01 HCI 人間×コンピュータの相互作用」「Labo02 光ドミノ効果」です。

学内での配布場所や、郵送での請求方法については、以下のページをご確認ください。

TechTech No27

CONTENTS

  • 特集
    Labo01 HCI 人間×コンピュータの相互作用
    大学院情報理工学研究科計算工学専攻 小池英樹教授
    Labo02 光ドミノ効果
    大学院理工学研究科物質科学専攻 腰原伸也教授
  • “今”を創る、先輩がいる。
    株式会社東芝 鈴木 翔さん
  • 世界が学びのフィールドだ!
    地惑巡検
    建築史
  • 学生企画 Night Tech

お問い合わせ先

広報センター
Email : publication@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

平成26年度 東京工業大学 学位記授与式挙行

$
0
0

3月26日、大岡山キャンパスの体育館にて、学位記授与式を執り行いました。

平成26年度 東京工業大学 学位記授与式

学長と来賓の方々、本学役員、研究科長等列席のもと、卒業生、教授陣、そして卒業生のご家族も大勢出席し、午前11時より学部、午後2時より大学院の学位記授与式が開始されました。

学長式辞(三島良直学長)

学長式辞(三島良直学長)

学長式辞で三島良直学長は、卒業生・修了生・ご家族へのお祝いの言葉を述べるとともに、「自信を持って何事にも積極的に挑戦していただきたいと思います。教養を含めた幅広い知識と柔軟な考え方、グループで作業が出来る協調性等々幅広い能力を付けるための努力を惜しまず、グローバル社会において世界のトップレベルの若者たちと力を併せて持続可能な社会を作り、守り、そして人々が平和で幸福に暮らせる環境を作り出すことに貢献してくれることを願っています。」と、卒業生を激励しました。

来賓祝辞(滝久雄氏)

来賓祝辞(滝久雄氏)

また、多くの来賓の方々を代表し、本学同窓会「社団法人蔵前工業会」理事長で株式会社ぐるなび創立者・取締役会長の滝久雄氏(昭38年理工学部機械工学科卒)より祝辞をいただきました。

学位記授与

学位記授与

続いて、学部学位記授与式では各学科1名ずつの代表者が学位記を授与され、大学院学位記授与式では修士課程・専門職学位課程については専攻代表者、博士課程は修了者全員が、学位記を授与されました。今年は、学部生、1110名が卒業、大学院では、修士課程1480名、専門職学位課程31名、博士課程219名が修了いたしました。

式後は、家族、友人たちと本館を背景に記念写真を撮り、穏やかな春の日の旅立ちを祝いました。

卒業生、修了生のみなさんのご健康と益々のご活躍を心よりお祈りいたします。

卒業生総代謝辞(学部)
卒業生総代謝辞(学部)

卒業生総代謝辞(大学院)
卒業生総代謝辞(大学院)

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

平成27年度 東京工業大学入学式 挙行

$
0
0

4月2日、大岡山キャンパスにて平成27年度入学式が執り行われました。今年度入学者数は、学部1,109名、大学院1,836名(修士課程1,530名、専門職学位課程30名、博士課程276名)の計2,945名です。

午前中の学部入学式、午後の大学院入学式の双方とも、アカデミックガウンを身にまとった学長、来賓の方々、本学理事・役員、研究科長や研究所長の教授陣の入場で始まりました。末永隆一氏の指揮のもと本学管弦楽団が行進曲を演奏する中、厳かな入場です。開式のアナウンス後、大学歌斉唱。本学混声合唱団コールクライネスの歌声とともに列席者一同で斉唱しました。

学長式辞
学長式辞

学長式辞で三島学長は学部新入生に向けて、日本一の理工系総合大学の学生として、科学技術の専門性を培うことだけでなく、学内外での様々な経験・海外留学に挑戦し力をつけてほしいと話しました。

大学院新入生へは、自分の将来を見据えて積極的に熱意をもって挑戦すること、国際感覚を身につけることを常に意識し、社会人になる暁には世界を舞台にして活躍することの重要性を力強く語りました。

来賓の方々を代表して、本学同窓会「一般社団法人蔵前工業会」理事長の滝久雄氏、「ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社」代表取締役社長の井原勝美氏より祝辞をいただきました。

続いて来賓紹介、本学役員・部局長紹介が行われ、その後、新入生総代よりこれから始まる東工大生活での抱負が力強く宣誓されました。

新入生総代答辞(学部)

新入生総代答辞(学部)

新入生総代答辞(大学院)

新入生総代答辞(大学院)

学部入学式に続いて、同会場で入学記念コンサートが開催されました。
これは毎年、新入生の門出を祝う意味をこめて、プロのピアニストにお願いして演奏していただく催しです。
今年のピアニストは栗田奈々子さんです。
栗田さんは東京藝術大学附属音楽高校、同大学を経て、 同大学院修士課程を修了し、大学院学位審査において藝大クラヴィーア賞を受賞されています。

入学記念コンサート

満開の桜とともにこの晴れの日を迎え、大岡山キャンパスは新入生やそのご家族の晴れやかな笑顔であふれました。新入生のみなさま、入学おめでとうございます。

満開の桜

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

文章指導の方法と実践―書く楽しさを伝える―

$
0
0

リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会 第7回 開催報告

「東工大発、世界を見据えたリベラルアーツとはなにか。」多彩なゲストを迎え、さまざまな視点から考えていく全7回の講演会シリーズです。東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。この講演会シリーズは同研究教育院の発足に向け、準備を進めている同研究教育院ワーキンググループが、スーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しています。

このシリーズ講演会は主に東工大の大学院生、教職員を対象としていますが、今回の講演会は一般にも公開されました。

第7回
日時
3月17日(火)14:00~17:00
場所
西9号館コラボレーションルーム
タイトル
文章指導の方法と実践―書く楽しさを伝える―
講師
樋口裕一(多摩大学教授)
樋口裕一教授

樋口裕一教授

『頭がいい人、悪い人の話し方』、『ホンモノの文章力』、『やさしい文章術』、『文章力の鍛え方』などの多くの著書を執筆し、樋口式小論文メソッドを活用した文章作成の指導に多く実績があり、“小論文の神様”とも称される樋口裕一教授を講師に迎え、外国語研究教育センター長の山崎太郎教授の司会のもと、講演と小論文添削の実践および人に物事を頼むときの説得力のある文章の作成の実践が行われました。

講演では、文章力をつけることの大切さ、樋口式四部構成の型を用いた文章の書き方、文章の添削の仕方についての話題が提供されました。

「文章力の大切さ」では次の3点が強調されました。

  • 大学生および社会人は情報を受信しているだけではなく情報を発信し自分自身をアピールすることが重要であり、ヒトの心を動かしたり、事実をリアルに伝えたりするためには文章力がなければならないこと。
  • 文章を書くことは論理的な思考のパターンを練習することになり、社会的な視野を持つ必要があるため、情報の受信力も高めることができること。
  • 文章は自分が書きたいと思わなければ書けないため、自分の考えや意見を持つことができること。

「文章の書き方」では、作文と小論文の違い、樋口式四部構成の型について解説されました。体験や感想を書くことが作文であり、小論文では物事の是非、すなわちイエス・ノーの立場を示し、自分の意見や提案を示すことが大切であること。そのために、型を重視した文章の書き方が重要であること。例えば、フランス人の説得の方法は「理由は三つある」と必ず付けることや、ドラえもんの漫画、水戸黄門のドラマ、ミステリー小説は型があるので、何作も続きができることを説明しました。

それを踏まえ樋口式四部構成の型を用いた小論文の書き方が紹介されました。第1部(問題提起)はこれから述べようとする内容に主題を導く部分で、イエス・ノーの形にすること、第2部(意見提示)はイエス・ノーのどちらの立場を取るのかの方向を定め、問題となっている事柄の状況を正しく把握し、「確かに・・・。しかし・・・」というパターンを使って、反対意見を考慮した上で自分の意見を示すこと、第3部(展開)は第2部で示した自分の意見の根拠を示す部分であり、問題となっている事柄の背景、原因、歴史的経過、背後にある思想など深い部分まで掘り下げると説得力が増すこと。第4部(結論)はもう一度全体を整理し、イエスかノーかをはっきり述べる部分であることが示され、模範例を示しながら解説されました。

「添削の仕方」では、添削は書き直すための資料なので、悪いところは悪いとはっきり言い、どう書き直すべきなのかを示すことが大切であること。そのために、まず型を点検すること、事実誤認を点検すること、文体はいじらずに論理的な矛盾があるかないかを点検すること、主義や主張に対して議論はせずに、価値観は全て認めながら、読み手に対して説得できる根拠が示されているかを点検することの手続きが解説されました。

講演会の様子
講演会の様子

講演後には、小論文の悪い例が4編提供され、どこがよくないのかを指摘する添削を実践しました。問題提起ができているか、自分の意見を述べているか、社会的な視野が書けているか、問題提起と結論のつじつまが合っているかなどを点検することが強調されました。

最後に樋口先生が多摩大学で実践している文章力を高める講義の実例が紹介されました。そこでは、論理的な展開ができるようになること、志望理由書やエントリーシートなどで自分をアピールする文章が書けるようになること、事実をリアルに伝えられるようになること、ヒトに物事を依頼するときに必要な文章術(正論で攻める、おだてる、得することを示す、お涙頂戴、損することを示す、脅し、言質をとる)を活用した文書を作成させコミュニケーション力、交渉力、人間力を育てることなどが紹介されました。その実例の一端を体験するべく、友人に借金をお願いする文章を交渉が成立することを目指して書く実践も行われました。

講演会の締めくくりとして、司会の山崎教授が、樋口教授の著書『ホンモノの文章力』のあとがきに書かれている「文書の奥は深い。私は一冊を通じて、文章の書き方の基本を説明した。私に説明できるのは、ここまでだ。本書は、実は、文章という大山脈への道のほんの入口を書いたものにすぎない。果てには、『源氏物語』、『カラマーゾフの兄弟』、『失われたときを求めて』など巨大な尾根が待ち受けている。」を引用し、「だからこそ、文書を書くことの大切さがある」ことを強調して閉会となりました。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

サイエンス・インカレで工学部4年大塚貴子さんに奨励表彰

$
0
0
大塚貴子さん

大塚貴子さん

神戸国際会議場で開催された第4回サイエンス・インカレで、工学部4年の大塚貴子さんが奨励表彰を受けました。

サイエンス・インカレは自然科学分野を学ぶ全国の学生が研究の成果を発表し、競い合う場として、文部科学省が平成23年度から開催しています。今回発表を行った172組(口頭発表48組、ポスター発表124組)の中から計16組が表彰され、大塚さんは優秀な発表を行ったとして奨励表彰を授与されました。

表彰された発表の概要は以下の通りです。

有機高分子材料PEDOT:PSSを用いた二層積層有機EL内部のキャリア挙動解析

有機ELは軽量、薄型、フレキシブルといった多くの利点からディスプレイや照明用途として研究が進み、近年では実用化段階に到達している。しかしながら、有機デバイスにおける電気伝導機構は未だ十分に理解されていない。電気伝導に寄与するキャリアの挙動を明らかにし、それらの制御を実現できれば有機デバイスのさらなる発展が期待される。これまで有機ELの透明電極には無機材料であるITOが用いられてきたが、ITOはフレキシブル用途に不向きであることから代替材料として導電性高分子材料PEDOT:PSSが注目を集めている。本研究では、PEDOT:PSSおよびITOを陽極とする二層積層有機EL素子について時間分解電界誘起光第二次高調波発生測定法(TR-EFISHG法)を用いて素子内部のキャリア挙動を比較検討した。その結果から、PEDOT:PSSは正孔注入促進の働きから、透明電極として優れた特性を示すことが明らかとなった。

大塚さんは、「今後は、これまで得られたことを生かして有機デバイスにおけるキャリア注入過程の解明を目標に研究を進めたいと考えています」とコメントしています。

小寺哲夫准教授が矢崎学術奨励賞を受賞

$
0
0

大学院理工学研究科電気電子物理学専攻の小寺哲夫准教授が矢崎学術奨励賞を受賞しました。

この賞は、過去に公益財団法人矢崎科学技術振興記念財団から研究助成を受けた研究者の中から、優れた業績をあげた研究者が表彰されるものです。小寺准教授は2011年に同財団から、〈エネルギー〉、〈新材料〉、〈情報〉に関する分野で、独創的で成果が科学技術の進歩に大きく貢献すると考えられる研究を対象とした研究奨励助成を受け、研究を進めました。

受賞テーマ:量子ドット構造を用いたスピン情報素子の開発と高感度センサーへの応用

小寺哲夫准教授

小寺哲夫准教授

今回の受賞を受けて、小寺准教授は以下のようにコメントしています。

半導体中のスピンを情報の担い手として用いるデバイスの創製と物理の解明を目指して研究を行ってきました。特に、電子1個やスピン1つを扱うことができる量子ドット構造を実現してきました。超高速計算機として注目されている量子コンピュータの要素技術になると考えています。また、この量子ドット構造は、周囲の電荷やスピンの変化に敏感であり、高感度なセンサーとしての応用も期待されています。

今回、矢崎学術賞という光栄な賞をいただけたことを大変有り難く思います。これまでご指導いただいた先生方や、共同研究者の皆様、研究室のメンバーに大変感謝いたしております。今後、より一層研究に邁進し、実用化を目指した工学研究と数十年先を見据えた基礎研究の両方を推進してまいりたいと思います。

授賞式での講演
授賞式での講演

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

液晶性を活用した高性能有機トランジスタ材料を開発 ~高い耐熱性と酸化物半導体並みの高い移動度実現~

$
0
0

概要

東京工業大学像情報工学研究所の半那純一教授、飯野裕明准教授らは、液晶性を付与した高性能な有機トランジスタ材料の開発に成功した。この材料は、均一で平坦な薄膜が容易に形成できる液晶薄膜を前駆体として用いて結晶薄膜を作製することにより、酸化物半導体(IGZO)並みの10cm2/Vsを超える高い移動度を実用性の高いボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタで実現できる。さらに、この材料は、低分子有機トランジスタの材料の問題点であった均一性と耐熱性を大幅に改善できることから、素子間のばらつきの小さい実用性の高い有機薄膜トランジスタの実現につながる成果といえる。将来、実用化が期待されるプリンテッドエレクトロニクス用半導体の材料基盤技術として期待される。

研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)「ナノ科学を基盤とした革新的製造技術の創製プログラム(堀池靖浩研究総括)」により実施した。研究成果は日本時間4月10日発行の英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」オンライン版に掲載される。

研究の概要図

研究の背景

近年、有機半導体を用いた電子デバイスの開発が進み、複写用の感光ドラム[用語1]に続いて、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が実用化された。さらに液晶や有機ELディスプレー、電子ペーパー等の画像表示を駆動するアクティブマトリックス[用語2]やRFICタグ[用語3]などへの応用を目的として有機トランジスタの開発が急ピッチで進められている。

従来、このような応用に用いる半導体材料は、移動度[用語4]の点から、アモルファス(非晶質)シリコンや多結晶シリコン、あるいは最近、実用化された酸化物半導体(IGZO)などの無機半導体材料の独壇場だった。しかし、1990年代後半になり、ペンタセン[用語5]をはじめとする有機半導体材料の結晶薄膜を用いた有機トランジスタがアモルファスシリコンを超える、1cm2/Vs以上の高い移動度を示すことが明かにされて以来、こうした応用にも有機半導体の利用が注目されるようになった。

さらにもう一つ、有機半導体の利用が注目される背景には、プリンテッドエレクトロニクス[用語6]の開発がある。この技術は、従来、行われてきた真空プロセスによる製膜やフォトレジストを用いたパターニングを用いたデバイスに代わって、溶液プロセスや印刷技術を活用した製膜とパターニングを用いることにより、大掛かりな設備を必要とせず、安価にデバイスを作製することを可能にする。さらに、150℃程度の低温でデバイスの作製できれば、従来のガラス基板に代わって、安価で柔軟性に富むプラスチック基板が利用できるため、フレキシブルなデバイスの作製が可能になる。

プリンテッドエレクトロニクスを実現するためには、トランジスタも、溶液プロセスにより形成できる必要がある、さらに、熱に弱いプラスチック基板を用いるためには、従来の無機半導体材料では実現が困難な150℃以下の低温プロセスによりトランジスタが形成ができることが必須で、それを可能にする半導体材料が必要となる。その最も有力と考えられている半導体材料が有機半導体である。しかし、これまで多くの有機トランジスタ用半導体材料が合成されてきたが、トランジスタの信頼性や素子間のばらつきの抑制に不可欠な、均一性に優れた結晶薄膜の作製が困難であること、また、デバイス作製に不可欠な熱プロセスに対する耐熱性が100℃程度と低いという問題点を残していた。また、移動度も3cm2/Vs程度に留まり、実用的に必要なプロセス適性と高移動度を兼ね備えた材料は実現できていなかった。

有機トランジスタに用いる有機半導体材料には、大別すると低分子系材料と高分子系材料がある。低分子系材料は精製が容易で、高品質の結晶を得やすい半面、均一で表面平坦性に優れた結晶薄膜を得ることが困難で、また耐熱性が低いという問題がある。これに対し、高分子系材料は成膜性、耐熱性に優れる半面、結晶性が低く、高い移動度を示す薄膜を得るためには200℃を超える高温での熱処理が必要となる。それに加え、材料の精製、分子量分布の制御、合成の信頼性など高分子材料特有の問題点がある。

それぞれの材料の問題点の克服は実用的な材料の開発に不可欠だが、実際には、これらの長所と欠点はこの場合、トレードオフの関係にあるため、解決が困難なのが現実である。

研究成果

東工大の半那教授らはCRESTで行われた研究課題、「液晶性有機半導体材料の開発」に係わる基礎研究の成果をもとに、液晶性[用語7]をトランジスタ材料に付与することにより、低分子系材料の課題であった成膜性、耐熱性の改善を実現したばかりでなく、酸化物半導体に匹敵する10cm2/Vsを超える高移動度を実現する高性能な液晶性有機トランジスタ材料(Ph-BTBT-10)(図1)を開発した。

高次の秩序性をもつ液晶相を発現する新規有機トランジスタ材料

新規液晶性有機トランジスタ用材料 Ph-BTBT-10の化学構造

図1. 新規液晶性有機トランジスタ用材料 Ph-BTBT-10の化学構造

特徴

Ph-BTBT-10 はアルキル基がPh-BTBT骨格の片側だけ置換した構造をもち、結晶相への相転温度が冷却時と加熱時で結晶相/スメクチックE相転移温度が異なる。このため、一旦、結晶化した膜は、142℃まで結晶膜として振る舞う。

この物質は、「結晶に如何に揺らぎを与えて、高い秩序性を持つスメクチック液晶相を発現させるか」という考えに基づいて開発された分子設計の指針により、設計されたもので、狙い通り、142℃から210℃の温度領域で、結晶相にきわめて近いスメクチックE相[用語8]を発現する。この液晶相の発現により、結晶膜は温度が上昇して液晶相に転移したとしても、結晶に近い固体様の液晶相のおかげで、膜形状は保持され、温度が下がると再び、結晶薄膜に戻る。これにより、耐熱性が確保される。実際、この材料で作製したトランジスタは、スメクチックE相を発現する142~210℃の温度領域においても素子構造を保つ。このため、トランジスタを作製後、配線や素子の保護層の形成などに必要な熱処理プロセスに200℃まで耐えることができる。

この材料の溶液を用いて、結晶薄膜を作製する際、液晶相温度で製膜することによって、均一で平坦性に優れた液晶薄膜をまず作製。これを室温まで冷却することによって結晶薄膜を作製すると、均一性が高く、分子ステップ・テラス構造[用語9]が観測されるほど平坦な結晶膜が容易に得られることが分かった。(図2)成膜温度の低温化も可能で、溶媒の選択により、40℃までの低温化にも成功した。

110℃(液晶相温度)でスピンコート法により作製した多結晶薄膜

Ph-BTBT-10を用いて、110℃でスピンコート法により作製した多結晶薄膜の顕微鏡写真と共焦点レーザ顕微鏡(左)、および、原子間力顕微鏡により観察した多結晶膜の表面形状(右)
図2.
Ph-BTBT-10を用いて、110℃でスピンコート法により作製した多結晶薄膜の顕微鏡写真と共焦点レーザ顕微鏡(左)、および、原子間力顕微鏡により観察した多結晶膜の表面形状(右)

特徴

液晶相温度で製膜した均一で平坦性に優れた液晶膜(前駆体)を冷却することによって作製した多結晶薄膜は、液晶薄膜の均一性と平坦性を引き継いで結晶化するため、均一で、分子ステップが観測されるほどの平坦性に優れた結晶膜を作製することができる。

Ph-BTBT-10は、液晶性に由来するこのような優れた特性に加え、もう一つ優れた特性を示すことが見出された。この材料で作製した結晶薄膜は120℃、5分程度の短時間の熱処理により、移動度が約1桁向上する。この物質の単結晶のX線構造解析、相転移、熱処理に伴う熱容量特性や原子間力顕微鏡(AFM)による表面形状の観察から、熱処理に伴って、単分子層構造から、2分子層構造へと結晶構造が変化(図3)することが分かった。この移動度の大幅な向上は、結晶構造の変化に伴って、分子層内の分子配置が変化し、電荷の移動が改善されたことによるものと考えられる。

結晶薄膜の熱アニールに伴う結晶構造の変化

Ph-BTBT-10結晶薄膜の熱処理による推定される結晶構造の変化

図3. Ph-BTBT-10結晶薄膜の熱処理による推定される結晶構造の変化

特徴

120℃5分の熱処理により、結晶薄膜は単分子層からなる凝集構造から、2分子層構造をもつ結晶薄膜に変化する。

Ph-BTBT-10のトランジスタ材料としての高い可能性を実証するため、5枚の基板に多結晶薄膜を形成し、この結晶膜を用いて、より実用的な素子構造であるボトムーゲート・ボトムコンタクト型トランジスタ[用語10]を作製し、その特性を評価した。その結果、図4に示すように、一般に、すぐれた特性を示すボトムーゲート・トップコンタクト型トランジスタ[用語11]に劣らず、ボトムコンタクト型トランジスタにおいても、優れたトランジスタ特性を示すばかりでなく、酸化物半導体(IGZO)に匹敵する10cm2/Vsを超える高い移動度を示すことが分かった。トランジスタの平均移動度は11.2cm2/Vs(標準偏差1.17、最大移動度13.6cm2/Vs)で、均一性と再現性にも優れるばかりでなく、素子特性の点から見ても、Ph-BTBT-10 の結晶膜で作製したトランジスタは高い耐熱性(図5)を持つことを実証することができた。

ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタの優れた特性

Ph-BTBT-10の多結晶薄膜を用いたトランジスタの動作特性

図4. Ph-BTBT-10の多結晶薄膜を用いたトランジスタの動作特性

特徴

ヒステリシスもなく、安定したトランジスタ特性を示す。
ボトムコンタクト・ボトムゲート型にも関わらず、移動度は熱処理後で10cm2/Vsを超える高い移動度を示す。

作製したトランジスタの高い耐熱性

さまざまな材料にルテニウムを担持した触媒を用いた窒素分子切断反応

図5. Ph-BTBT-10の多結晶薄膜を用いて作製した、ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタの熱安定性

特徴

高次の秩序性を持つスメクチックE相を発現するPh-BTBT-10では、スメクチックE相の温度領域で加熱されても薄膜形状を保つことができる。200℃で、5分間加熱した後、室温で測定したトランジスタ特性は移動度の低下は見られるものの、3cm2/Vsを超える高い移動度を示す。

今後の展望

今回の成果は、三つの大きな意味がある。一つは、低分子系有機トランジスタ材料の問題点であった耐熱性と成膜性を高い秩序性を有する液晶相を発現させることにより解決したこと。この考え方は、分子構造が異なる他の低分子系トランジスタ材料についても普遍的に成り立ち、材料の一つの基盤技術として材料開発に活かすことが可能だ。

二つ目は、10cm2/Vsを超える高移動度を実用性の高い、作製容易な多結晶薄膜で実現したこと。従来、有機トランジスタにおいて、酸化物半導体に匹敵する10cm2/Vsを超える高移動度は有機トランジスタ用材料の単結晶薄膜でしか実現されていなかった。多結晶膜による高移動度の実現は素子の応用範囲を広げるばかりでなく、素子間のばらつきの大きい単結晶膜を用いる場合に比べて、特性のそろったトランジスタの作製を可能にする。高移動度を溶液プロセスによる多結晶薄膜で実現できることを実証したことは、有機トランジスタの実用化を進める上で、実現可能な高移動度の一つの目安を与えることになる。

三つ目は、今回、観測された結晶膜の2分子層構造への構造変化に起因する大幅な移動度の向上。これは、従来、高移動度を求めて、分子の化学構造の設計に終始するトランジスタ材料開発の取り組みに対し、新しい材料設計の可能性を示したもので、新材料開発の可能性が広がる。

今後、これらの知見を活用し、実用性を兼ね備えた高移動度の有機トランジスタ材料が開発されると期待される。プリンデッドエレクトロニクス技術の開発が進めば、将来、液晶(液晶性有機半導体)によって駆動される、安価で薄型・軽量、フレキシブルな液晶テレビや有機ELディスプレーの実現も夢ではない。

用語説明

[用語1] 複写機用感光ドラム : アルミドラム上に、絶縁性のポリマー材料と有機半導体からなる薄膜を形成した構造を持ち、複写機やレーザプリンタでコピーやプリントを作る際に用いられる。かつては、材料に無機半導体である非晶質のセレン薄膜が用いられたが、現在は、安価で作製が容易な有機半導体薄膜が用いられている。

[用語2] アクティブマトリックス : ディスプレーにおいて、画素の高速駆動と画素間の干渉を抑制するため、個々の画素にスイッチを設置し、画像のマトリックス表示を可能にする装置。スイッチング素子には一般に薄膜トランジスタ(TFT)が用いられ、その半導体には、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、酸化物半導体が用いられている。

[用語3] RFICタグ : 無線(RF)を利用してICチップの中のデータを非接触で読み書きする素子で、データを記録するICチップと小型のアンテナで構成される。個々の「モノ」のタグを取りつけることで、非接触で「モノ」を識別することができるため、バーコードなどでは実現が困難であった「モノ」の管理や配送・集計業務の効率化が図れるため、低コスト化による普及が期待されている。

[用語4] 移動度 : 物質中で電荷が移動する際の移動のしやすさを表す物性値で、単位電場(1V/cm)当たりの電荷の移動速度のこと。単位電場(1V/cm=1cmあたり1ボルト)をかけた時の電荷(電子または正孔)の移動速度(1cm/s=毎秒1cm)。したがって単位はcm2/Vsで表す。半導体材料の電気的特性の優劣を判断する指標となる。

[用語5] ペンタセン :
ペンタセンの化学構造
有機トランジスタ材料として広く研究が行われている物質で、図のような化学構造をもち、真空蒸着法により作製される結晶薄膜をトランジスタの作製に用いる。移動度は~1cm2/Vsの値を示す。大気中で酸化されやすく、実用素子に用いることは難しい。また、溶媒に不溶なことから、溶液プロセスを用いたトランジスタの作製はできない。

[用語6] プリンテッドエレクトロニクス : 従来の電子デバイスでは、基板上にCVD法や真空蒸着法などの真空プロセスを用いて、半導体、絶縁膜、電極などを成膜し、レジストを用いてパターニングを行い、素子を作製するが、このようなプロセスに代わり、成膜とパターニングを同時に行うことができる印刷技術を用いて、半導体、絶縁膜、電極などを形成することを特徴とするエレクトロニクスをプリンテッドエレクトロニクスという。製造設備のコストが安価であるばかりでなく、素子の高い生産性と安い生産コストが期待される。

[用語7] 液晶性 : 一般の物質は、融点において、3次元的な長距離の秩序性をもつ結晶から、ランダムな分子凝集形態をとる液体へと転移する。有機物の中には、結晶から温度を上げると、結晶にみられる分子配向や分子位置に関する秩序性の一部が失われ、ランダムな凝集形態をとる液体に比べて秩序性をもつ凝集状態(液晶相)が自発的に形成されるものがある。このような凝集状態(液晶相)を発現する特性を液晶性という。液晶性は、芳香環などからなる棒状、あるいは、円盤状の分子構造に柔軟な炭化水素鎖を置換した構造を持つ分子にしばしば現れる。液晶相は多様で、液晶表示に用いられる配向秩序性のみを残し、液体性の強いネマチック相から、ここで取り扱う結晶にきわめて近い秩序性を持つスメクチックE相など、多数の液晶相が知られている。

[用語8] スメクチックE相 : 液晶物質が示す分子が層状に凝集した液晶相(スメクチック相と呼ばれる)の一つで、分子層を形成する分子が矩形の配置をとり、さらに、層間にも秩序性を持つ、極めて結晶に近い秩序性を持つ液晶相である。限定的ではあるが、ある程度、3次元の秩序性を示すことから、結晶学的には結晶相の一つ(Crystal E)として、取り扱われることもある。結晶に近い秩序を持つため、流動性はなく、分子結晶に近い様態を示す。

[用語9] 分子ステップ・テラス構造 : 分子長に対応した段差構造(ステップ)と分子層からなるテラス状の構造をいう。結晶薄膜の場合、この構造は、分子スケールで膜が平坦であることを示す。この観察には、原子力顕微鏡や電子顕微鏡などが用いられる。

[用語10] ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタ :
ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタ
電界効果トランジスタの素子構造の一つで、図の様に、ゲート絶縁膜上に、ソース、ドレイン電極を配置し、その上に半導体層を配置した構造のトランジスタ。素子の作製が容易で、溶液プロセスを用いてソース、ドレインの形成を行う場合、有機半導体層のダメージを防ぐことができるため、有機半導体を用いた実用素子の作製に採用されている。

[用語11] ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタ :
ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタ
電界効果トランジスタの素子構造の一つで、図の様に、ゲート絶縁膜上に半導体層を配置し、その上にソース、ドレイン電極を配置した構造のトランジスタ。有機半導体上に、真空蒸着などの手法により金属電極を形成すルため、一般に、有機半導体層と電極材料の電気的接触が良く、ボトムコンタクト型素子比べて、高い移動度が得やすい。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Liquid Crystals for Organic Thin Film Transistors
(有機薄膜トランジスタのための液晶)
著者 :
Hiroaki Iino, Takayuki Usui, Jun-ichi Hanna
(飯野裕明、臼井孝之、半那純一)
DOI :

問い合わせ先

研究に関すること

東京工業大学 像情報工学研究所
半那純一
Email : hanna@isl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5176
Fax : 045-924-5175

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部グリーンイノベーショングループ
古川雅士
Email : crest@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3531
Fax : 03-3222-2066

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975
Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課
Email : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404
Fax : 03-5214-8432


「白馬とカガクの奇跡 ~白馬八方温泉と生命誕生との驚きの関係を知ろう~」を開催

$
0
0

3月15日、東工大地球生命研究所(ELSI:エルシー)は、講演会「白馬とカガクの奇跡 ~白馬八方温泉と生命誕生との驚きの関係を知ろう~」を、長野県白馬村のウイング21で実施しました。この講演会は、「冥王代生命学の創成」シンポジウム(3月13日~15日)に併せて開催されました。

平成26年度科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」に新規採択された研究領域。ELSI 黒川 顕 教授が領域代表者を務める。原始的な生命が誕生したと考えられる、地球誕生から約6億年間(46~40億年前)の「冥王代」に焦点をあて、生命がいつ、どこで、どのように誕生したかを、最先端の地球惑星科学、生命科学および有機化学などを結集し明らかにする。

講演会「白馬とカガクの奇跡 ~白馬八方温泉と生命誕生との驚きの関係を知ろう~」は、長野県白馬地域の温泉が生命誕生のメカニズムを解き明かすことにつながると期待されていることを、白馬の方に伝えたいという思いから開催されました。この地域の温泉は、蛇紋岩と呼ばれる特殊な岩石と水が反応することによってできた強いアルカリ性の温泉で、かつ水素濃度が高いことが特徴です。このような温泉は、現在の地球では稀ですが、生命誕生前の初期地球ではありふれた環境であったと考えられています。この研究は、2014年1月にELSIの吉田 尚弘 教授、丸山 茂徳 教授、黒川 顕 教授、東工大大学院理工学研究科の上野 雄一郎 准教授らの研究グループにより、欧州の科学雑誌「アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ(Earth and Planetary Science Letters)」に発表されました(DOI:10.1016/j.epsl.2013.11.001outer)。

講演会には、小学生から社会人、リタイア層まで、170名を超える来場者がありました。開場時間前にはホワイエにて、展示パネルを使ってELSIの今枝研究員や北台研究員らが研究の説明をしました。

シンポジウムと講演会のチラシ

シンポジウムと講演会のチラシ

来場者の方に説明をする北台研究員

来場者の方に説明をする北台研究員

講演内容

ELSIの紹介と白馬八方温泉での研究内容紹介

黒川 顕 教授

黒川 顕 教授

黒川 顕
ELSI 副所長・教授
「冥王代生命学の創成」代表

講演の前半では、ELSIが「地球がどうやってできたのか、生命はいつ、どこで生まれ、どのように進化して来たのか」という人類の根源的な謎を、どのように解明していくかを紹介しました。講演後半は、白馬八方温泉地域に大量に存在する蛇紋岩が、生命誕生のメカニズム解明にどのような役割を持っているかを語りました。

生命はどのようにして誕生したか? ~化学進化研究の最前線~

青野 真士 准教授

青野 真士 准教授

青野 真士
ELSI 准教授

「生命とは何か」「生命誕生に必要なものは何か」という問いに対しての青野准教授の解釈を話しました。そしてELSIでは、「生命」の誕生をどのように実験的に再現しようとしているのかを現在進行中の研究も含めて紹介しました。専門的な内容を多く含みましたが、終了後のアンケートでは、ご年配の方々からの満足度が高く好評でした。

酸素のないところに微生物はたくさんいる!

鎌形 洋一 所長

鎌形 洋一 所長

鎌形 洋一
産業技術総合研究所
北海道センター 所長

「微生物がどのような環境で生息しているのか」「一体、微生物とは何なのか」を具体例を挙げつつ解説しました。「微生物と比べて、人間がいかに贅沢な食事をしているのか」を説明した際には会場からたくさんの笑い声が聞こえました。図や例を多く使った講演は小中学生からの人気が高く、「かまがた先生のお話がおもしろかった!」とたくさんのアンケートコメントをいただきました。

人間のこれまでとこれから 未来社会を先取りした国造り

丸山 茂徳 教授

丸山 茂徳 教授

丸山 茂徳
ELSI 主任研究員・教授

講演の前半では、白馬の蛇紋岩や、白馬地域の特性について分かりやすく話しました。講演の後半では、人類の進化を踏まえ、白馬地域の今後のさらなる発展の実現に向けて、提言をしました。白馬地域に対しての丸山教授の熱い気持ちが溢れる講演は来場者の方の心を刺激し、「次回が楽しみです」というアンケートコメントが多数届きました。

講演後に行われたパネルディスカッションでは、事前に来場者に記入していただいた質問カードを元に「なぜ白馬では蛇紋岩が大規模に地表にあるのですか?」「どのように英語を勉強しましたか?」といった幅広いジャンルの質問に、講演者が回答しました。パネルディスカッションは大いに盛り上がり、講演者と来場者の距離が一気に縮まりました。

さまざまな質問に答える講演者ら
さまざまな質問に答える講演者ら

イベント後に回収したアンケートには「パネルディスカッションは時間が短く感じました」「定期的に開催して欲しい」という内容が多数寄せられました。

今後もELSIや「冥王代生命学の創成」プロジェクトの研究を紹介する一般講演会を開催予定です。どうぞご期待ください。

お問い合わせ先

地球生命研究所(ELSI) 広報室
Email : pr@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163

若井史博 応用セラミックス研究所長 就任挨拶

$
0
0

2015年4月1日付で就任した、若井史博 応用セラミックス研究所長からの挨拶をご紹介します。

ごあいさつ

若井史博

若井史博

伊藤満前所長の後任として、本年4月から応用セラミックス研究所長を仰せつかりました。よろしくお願いします。

応用セラミックス研究所(応セラ研)の歴史は、建築材料研究所(1934年設立)と窯業研究所(1943年設立)の工業材料研究所への統合(1958年)、全国共同利用型附置研究所としての応用セラミックス研究所への改組(1996年)、共同利用・共同研究拠点、先端無機材料研究拠点としての認定(2009年)を経て現在につながっています。すなわち、本研究所における研究は、常識的なセラミックス分野に留まらず、それを超えた先端無機材料と建築構造に関わる基礎から応用まで多様な分野に広がっています。本研究所における応用とは、物理と化学の原理から出発して社会に役立つ材料、技術を生み出し、実用化につなげることを目指す研究・開発の立場をいいます。

東京工業大学は世界トップ10に入るリサーチユニバーシティを目指して研究改革を進めようとしており、国際的な研究活動の展開、新たな研究分野を開拓していくための柔軟な研究体制の構築、研究機能を高めるための環境整備、が求められています。応セラ研は電子、光、磁性などの新機能性酸化物、鉄系高温超電導体、新規触媒材料など大きな応用に結び付く画期的な成果を次々に生み出しています。また、応セラ研は共同利用・共同研究拠点として、大学の枠を超えた全国の関連分野の研究者コミュニティとの共同研究、さらには国際共同研究のハブとしての機能を果たし、この研究分野の学術発展を先導してきました。建築物理研究センターでは地震災害に直面する我が国において、安全・安心で、かつ高い持続性をもつ都市や社会の実現を目指して、材料、部材、建築構造について研究しています。柔軟な研究組織として設立され、安全で安心な社会の構築という社会的価値を志向した材料研究を推進してきたセキュアマテリアル研究センターは本年度末で時限を迎えます。センターは新しい研究分野に研究者を結集する頭脳流動のハブとしての機能を担っています。電子・原子から始まり、部材、建築構造にいたる広範な研究を俯瞰する方法論を追及します。そのためにも次の10年を見据えて新たな研究分野を開拓する次期センターの準備を進めます。

大学の附置研究所の立場は大きな時代の中で変化していきますが、共同利用・共同研究拠点である応用セラミックス研究所は全国に、また、世界に開かれた研究所として、この分野の一層の学術発展に貢献するよう努力していく所存です。

学内、学外の皆様方のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

三原久和 大学院生命理工学研究科長 就任挨拶

$
0
0

2015年4月1日付で就任した、三原久和 大学院生命理工学研究科長からの挨拶をご紹介します。

大学院生命理工学研究科 三原久和研究科長

三原久和

1995年に生命理工学部に助教授として赴任し、2005年から大学院生命理工学研究科の教授を務めています。本学に着任してからちょうど20年になります。

私は九州大学理学部化学科で学士を修了し、九州大学大学院理学研究科化学専攻にて修士と博士課程を修了しました。日本学術振興会特別研究員、米国ロックフェラー大学博士研究員、九州工業大学工学部助手、長崎大学工学部助教授を経て、本学に着任しています。本学では、国際室立ち上げの際から企画員として参画させていただき、三島学長が理事・副学長(教育・国際担当)の際と現丸山理事・副学長(教育・国際担当)の総括補佐を務めさせていただきました。現在では、スーパーグローバル大学創成支援事業やグローバル人材育成推進事業等にて委員を務め、大学院生命理工学研究科の副研究科長職とともに、国際化や大学改革のための職務を果たしております。研究室では、生物有機化学を専門とし、アミノ酸が10~30個連なったペプチドといわれる物質を種々人工的にデザイン・合成し、タンパク質や細胞を検査するためのバイオチップや細胞工学や再生医療分野に応用するためのペプチド自己組織化材料等の創成研究を行っています。

本学は2014年度から集中的な議論を行い、大学改革案を作成し、グローバルな人材育成のための教育改革を実行に移す準備を行っています。2016年4月には、生命理工学部と生命理工学研究科は、現在の2学科、5専攻の体制から、学部は生命理工学系の1コース 、大学院はライフエンジニアリングの融合コースを加えた、2コースからなる生命理工学院に改組・発展する予定です。総合理工学研究科等から多くの教員が参画し、約70名の教授・准教授陣からなる国内最大級のバイオを中心とする理工系学院組織になります。英語名も現在のBioscience and BiotechnologyからLife Science and Technologyに改名され、文字通り、バイオに関する理学と工学の分野からヒトを含む生物体のライフに関する理工融合の新分野開拓を目指す研究教育を行い、それを実行できるグローバル理工人を輩出する組織となることが期待されています。新しい「東工大のバイオ」研究教育組織となるよう2015年度から教職員が一丸となってより一層努力しなければならないと考えています。今後とも、皆様の御支援・御協力をよろしくお願いします。

本計画は本学による構想であり、文部科学省大学設置・学校法人審議会の審査結果によって確定するため、変更があり得ます。

渡邊治 大学院情報理工学研究科長 就任挨拶

$
0
0

2015年4月1日付で就任した、渡邊治 大学院情報理工学研究科長からの挨拶をご紹介します。

情報理工学研究科長就任にあたって

渡邊治

この度、情報理工学研究科長を拝命しました。よろしくお願いします ... という文章を書こうと思って考えてみると、大変な時期に研究科長になったのだなぁ、と改めて実感させられます。大学改革への期待と要望が世の中でますます大きくなる中、本学でも本格的な改革が動いています。もちろん、改革は必要ですが、あまりにいろいろなことがめまぐるしく変わるために、変化に翻弄されそうな心配もあります。ですが、考えてみると、これは情報理工学が経験していることにも当てはまります。

情報理工学は若い学問分野です。まだ100年にも満たない歴史しかありません。しかし、情報科学技術の急速な進歩と広がりは驚くべきことで、いまや科学技術、産業、政治、経済、庶民の暮らしの中まで、情報科学技術が浸透しています。これはなぜでしょう?なぜ、コンピュータをはじめとする情報通信機器が、ここまで広く浸透したのでしょうか?それは非常に多くのことが「計算」として表すことができるからです。俗に言う「計算機に載せる」ことができるからです。その意味では、「計算」が情報科学技術の1つの核でしょう。ものごとをいかにうまく計算として表し、それをうまく利用して社会を豊にしていくか、という点が情報理工学の主要命題なのです。一方、情報科学技術が、あまりに急速に、そしてあまりに広範囲に広まったため、学問分野自体がその変化に翻弄され、このような核の存在も忘れがちです。それに比べると歴史のある学問分野では、核となる部分が常にあり、その上に新たな進展を生み出しているように思えます。しかし、そのような中でも情報理工学研究科では、情報科学技術の核の教育研究も大切にしながら、その上で、新たな試みや、より広い分野への展開を進めてきました。

以上はあくまで学問の話ですが、大学改革の中でも、この精神を生かし私たちは堅実に物事を進めて行けると思っています。もちろん、重要な改革の機会ですので、皆でいろいろなアイデアを出し、ときには大胆に、よりよい方向に進んで行く必要があります。そのためにもアイデアを提案しやすい、チャレンジのしやすい研究教育環境を作っていきたいと思っています。

東工大関係者5名が「科学技術分野の文部科学大臣表彰」を受賞

$
0
0

このたび、東工大教員等5名が、科学技術分野で顕著な功績があったとして、科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞しました。

科学技術分野の文部科学大臣表彰では、「科学技術賞」として「開発部門」、「研究部門」、「理解増進部門」などいくつかの部門に分かれて表彰されています。文部科学省より発表された今年度の受賞者に、日ごろの研究活動、研究成果を認められた東工大関係者2名が含まれています。

また、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた若手研究者を対象とした「若手科学者賞」を3名の東工大教員が受賞しました。

本賞を受賞した東工大関係者は以下のとおりです。

科学技術賞(研究部門)

伊藤 満 応用セラミックス研究所 教授

受賞業績:「機能性酸化物新材料の創出に関する研究」

研究の概要とコメント

伊藤 満 応用セラミックス研究所 教授
伊藤 満 応用セラミックス研究所 教授

既存の物質・材料を改良して所望の性質を有する材料を得る従来型の物質・材料研究とは対照的に、本研究の特徴は全く新しい考え方でリチウムイオン伝導体、強誘電体、電気伝導体、磁性体、蛍光体等の新物質を作り出して、その物性・機能発現の原因を徹底して調べ上げたことにあります。考え方をまとめて体系化する過程で多くの学生、スタッフ、国内外の研究者の方々と直接実験を遂行し議論を交わすことができました。その結果を多数の論文として公表できたお蔭で本賞をいただけたと思います。改めて関係者に感謝いたします。今後も研究に集中してより重要かつ有用な新物質を報告してゆこうと思っています。

齊藤 正樹 名誉教授・特命教授 グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院 院長

受賞業績:「平和と持続的発展に向けた軍事転用困難なプルトニウムの研究」

齊藤 正樹 名誉教授・特命教授 グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院 院長
齊藤 正樹 名誉教授・特命教授
グローバル原子力安全・セキュリティ・
エージェント教育院院長

研究の概要とコメント

ウラン燃料を使用する原子炉で生成される従来のプルトニウムは、数千年に亘るエネルギー源と言われていますが、軍事転用可能であり、非常に機微で厄介な核物質の一つであります。

しかし、使用済み燃料に含まれるマイナーアクチニド(ネプツニウムやアメリシウム等の総称:これまでは、厄介な「核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)」として扱われてきましたが)を、ウラン燃料に少量添加し、中性子によって核変換すれば、軍事転用が困難な強い核拡散抵抗性を有するプルトニウムを生成することが可能であることが分かりました。また、その生成メカニズムを、国内外の2種類の研究炉を使って実験的に実証しました。

本研究により、マイナーアクチニドは、決して厄介な「核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)ではなく、プルトニウムの軍事転用を防ぐ貴重な物質「宝」あることが示されました。

この研究成果を活用すれば、今後の世界の原子力の平和利用に大きく貢献するのみならず、オバマ米国大統領の提唱する「核なき世界」の実現に寄与することが期待されます。また、「核のゴミ」も低減され、人類の持続的発展に寄与することが期待されます。

本研究に対して、平成27年度文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)に選ばれたというお知らせを頂きました。大変光栄であると同時に本研究を進めるにあたり素晴らしい研究仲間に恵まれたことに感謝したいと思います。また、これまでの研究を支えて頂きました東京工業大学に深く感謝を致します。

若手科学者賞

臼井寛裕 理工学研究科 地球惑星科学専攻 助教

受賞業績:「火星の水の起源および消失過程の研究」

研究の概要とコメント

臼井寛裕 理工学研究科 地球惑星科学専攻 助教
臼井寛裕 理工学研究科
地球惑星科学専攻 助教

近年の探査研究により、地球の隣を周回する火星にも、かつては液体の水(海・湖・河川)が存在していたことが明らかになりました。私は、火星生命環境と密接に関連する水の歴史を明らかにすることを目標に、2010年頃より本研究テーマに取り組んできました。

本研究の特色は、火星隕石に残された過去の水の痕跡(水素同位体比)を系統的に調べることにより、従来の探査研究では分からなかった、火星の「水の起源」と「海の消失過程」を明らかにしたことです。幸い、東工大大学院生を含む国内外の多くの共同研究者に恵まれ、研究を進める上で鍵となった化学分析法やデータ解析モデルを独自に開発することができました。この場をお借りして、改めて深く感謝の意を表します。

本研究成果は、生命の発生・進化に直結する水の歴史を明らかにしており、火星生命検出を目的とした将来探査計画の策定に強く反映されると期待しています。今後は、日本初の火星着陸探査および世界初の火星衛星サンプルリターン計画の成功を目指し、研究・教育活動に邁進していきたいと思います。

宗宮健太郎 理工学研究科基礎物理学専攻 准教授

受賞業績:「大型重力波検出器KAGRAの開発研究」

研究の概要とコメント

宗宮健太郎 理工学研究科基礎物理学専攻 准教授
宗宮健太郎 理工学研究科
基礎物理学専攻 准教授

重力波はアインシュタインが予言した時空のさざ波です。ブラックホールの振動や連星中性子星の合体など、大質量の変動を伴う天体現象が引き起こす時空の歪みが波となって地球まで伝わってきます。我々はこれまで検出されていない重力波の観測を目指して大型望遠鏡“KAGRA”の建設を進めています。

2017年頃には望遠鏡を完成させ、重力波を用いた新しい天文学の創成を目標にまい進していきたいと思っています。

今回の受賞は、200人を超えるKAGRAメンバー各位の協力があって実現したものです。私は、トンネル掘削からサファイア鏡の開発まで、多岐にわたるサブシステムの統合を担うシステムエンジニアとして、研究開発を進めていますが、各サブシステムの絶え間ない努力には日々感服しています。

私の研究室に所属した学生のみなさんには、望遠鏡の建設地である岐阜県神岡に滞在して開発に尽力してもらうなど、大変がんばってもらっています。

彼らの協力なしに本賞の受賞はなかったと思います。また、平成23年に東工大へ所属して以来、研究活動を支援してくださっている基礎物理学専攻、理学研究流動機構、テニュアトラック制度事務局の各位にこの場を借りて感謝の意を表したいと思います。

只野耕太郎 精密工学研究所 准教授

受賞業績:「空気圧駆動を用いた手術支援ロボットシステムの研究」

研究の概要とコメント

只野耕太郎 精密工学研究所 准教授
只野耕太郎 精密工学研究所 准教授

これまで、腹腔鏡手術を対象とした手術支援ロボットシステムの研究開発に取り組んで参りました。より直感的で安全性の高いロボット手術を実現すべく、患者腹腔内で作業を行う鉗子マニピュレータを空気圧駆動とし、その圧力情報から手先の外力を推定することで、術者への力覚フィードバックを実現しました。

この度は、本活動に対しこのような栄誉ある賞を賜ることができ身に余る光栄に存じます。これもひとえに学内外関係者の方々のご支援、ご協力によるものであり、この場をお借りして心より感謝申し上げます。これを励みにより一層精進して参ります。

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

FD研修「アクティブラーニング研修」実施報告

$
0
0

東京工業大学では、平成27年度から教育改革の一環として、新たに大岡山キャンパスとすずかけ台キャンパスに合計7つのアクティブラーニング※1教室が設置されます。アクティブラーニング教室の活用や、アクティブラーニングを活用した授業実施のために、平成27年3月19日に、平成26年度東京工業大学FD(ファカルティ・ディベロプメント)※2研修「アクティブラーニング研修」を実施しました。各研究科の助教から教授まで、様々な立場の意欲溢れる計12名の教員が参加しました。

「アクティブラーニングとは何か」について説明を行う森秀樹准教授

「アクティブラーニングとは何か」について説明を行う森秀樹准教授

今回のFD研修では、近年アクティブラーニングが注目されている背景や、アクティブラーニングのメリットとデメリット、様々なアクティブラーニングを促す教育方法についての理解を深めました。また、研修参加者は、実際にクリッカーを活用したピア・インストラクション※3などを体験しながら、アクティブラーニングを本学で導入する意義や新たに設置されたアクティブラーニング対応教室の授業での活用方法についてグループで議論を行いました。本研修の参加者からは、「4月からの講義でアクティブラーニングを一部導入してみたい。」、「さまざまなアクティブラーニングの手法とその効果を知ることができた。」、「アクティブラーニングの実践例を詳しく知ることができました。」などの感想がありました。本研修は平成27年度も引き続き開催される予定です。

ピア・インストラクションの実例を行う室田教授

ピア・インストラクションの実例を行う室田教授

クリッカーを実際に活用している様子

クリッカーを実際に活用している様子

※1
アクティブラーニング : 学生側の能動的で積極的な参加の取り組みに主眼の置かれた教育のあり方や授業の形態です。教員が学生に一方向的に伝達し教授する従来の講義形式の授業のあり方に代わる方式として注目されています。
※2
FD(ファカルティ・ディベロプメント)研修 : 大学教員の教育能力を高めるための実践的な研修です。
※3
ピア・インストラクション : クリッカーを使い、学生の意見を収集することで、どのくらいの人が同じ意見を持っているか確認します。その後、グループに分かれ意見を交換し進めていく授業形態です。

ブロックを使いアクティブラーニングを実践している様子
ブロックを使いアクティブラーニングを実践している様子

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

お問い合わせ先

教育企画グループ
Email : kyo.kyo@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7603

講演会「リベラルアーツ ~輝く未来(あした)へ~」 開催報告

$
0
0

東工大の社会人教育院では、2010年度より蔵前工業会と共催で講演会シリーズを開催しています。

2014年度第2回は2月上旬から3月中旬にかけて、講演会「リベラルアーツ ~輝く未来(あした)へ~」を5回シリーズで開催しました。

本講演会では、「みずからの世界を広げるとともに、自己を深める」分野としてのリベラルアーツを取り上げ、各界で活躍している講師の先生方が、思い思いのテーマでお話されました。

  • 桑子敏雄教授(東京工業大学)
    桑子敏雄教授(東京工業大学)
  • 今野真二教授(清泉女子大学)
    今野真二教授(清泉女子大学)
  • 山口香准教授(筑波大学)
    山口香准教授(筑波大学)
  • 伊藤亜紗准教授(東京工業大学)
    伊藤亜紗准教授(東京工業大学)
  • 入不二基義教授(青山学院大学)
    入不二基義教授(青山学院大学)

初回、桑子敏雄教授(哲学)の講演では、選択・自由・教養の関係について、哲学と土木を架橋する研究をおこなっている桑子教授自身の選択を実例にして話がありました。桑子教授が実践している「社会的合意形成」についてオーディエンスから様々な質問がありました。

第2回の今野真二教授(日本語学)の講演では、日本語の歴史の中で一貫して使われている漢字をめぐるいくつかのことがらから、日本語をとらえ直すという視点での講演になりました。 理工系出身のバックグラウンドを持つ人の割合が多いオーディエンスからは、「知らない世界を広げることになる」、「日本語の変化について学べた」などの感想がありました。

第3回の山口香准教授(体育学、柔道家)は、「教養としてのスポーツ」というテーマで、前半は、近代スポーツの特徴、日本のスポーツ政策について、後半は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックをめぐっての話題などについて幅広く語りました。

第4回の伊藤亜紗准教授(美学)は、リベラルアーツを「自由になるための技」としてアートの意義について話しました。オーディエンスの側もさまざまな受けとめやバックグラウンドを背景に、質疑応答の内容も多様性に富み、お互いの知見や感性を深め合うことができたようです。

第5回の入不二基義教授(哲学)の講演では、大乗仏教の経文「維摩経」を題材に、哲学的なものの考え方について解説があり、会場は皆でひとつのテーマについて考えを深めていました。

今回の講演会は、リベラルアーツという「くくり」で幅広いジャンル、テーマの展開となりました。毎回、オーディエンスの半数前後は、蔵前工業会会員で理系のバックグラウンドを持つ人が参加しましたが、講師陣からの一般の社会人を対象としたわかりやすい話により、参加者はおおいに楽しんでいたようです。

社会人教育院では、来年度以降も蔵前工業会と共催での講演会を予定しています。

社会人教育院主催/蔵前工業会共催講演会 これまでの講演会

問い合わせ先

社会人教育院

Email : jim@kyoiku-in.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8867、03-3454-8722


刺激に対する脳神経の環境適応能力を解明―神経回路の過剰な興奮伝達を抑制―

$
0
0

要点

  • 光を長時間ショウジョウバエに当て続けると視神経のシナプスの数が減少
  • 下流の神経(脳神経)が、上流の神経(視神経)にWNTというタンパク質を送り改変指令を伝達
  • 学習や記憶など経験による神経シナプスの改変能力の分子メカニズム解明

概要

東京工業大学の鈴木崇之(たかし)准教授らはドイツ神経変性疾患研究所(DZNE)の杉江淳(あつし)研究員らと共同で、外界からの継続した刺激に対し、脳の神経細胞がシナプス(神経細胞の接続部分)[用語1]の構成タンパク質を入れ替え、数を減らすことによって、環境に適応することを発見した。この適応能力は、シナプスの下流から上流に運ばれる「WNT」と呼ばれる分泌タンパク質が伝達役となっていることも突き止め、シナプスが柔軟に変化する分子レベルのメカニズム解明に成功した。

鈴木准教授らはショウジョウバエ[用語3]に3日間普通の強さの光を当て、自然環境に近い形で実験を行い、シナプスの構成タンパク質の変化とシナプスの減少を観察した(図1、2参照)。この環境適応能力は経験による学習や記憶などと類似のメカニズムと考えられ、脳神経系に無数にあるシナプス接続の柔軟な適応能力の分子メカニズムの全貌解明につながる。またこの能力は、過剰な情報伝達を抑制し、過剰な興奮による細胞死を抑制する自己防衛機能を反映していると考えられる。

ショウジョウバエのような寿命の短い動物ではシナプスを変化させる神経系はあまり見出されていなかったが、スピーディーな遺伝子機能解明に定評のあるショウジョウバエで見つかったことは、シナプス変化のカギを解く研究が加速することになる。将来はヒトの心の仕組みまで理解できるような主要な共通原理の発見、神経変性疾患や精神疾患の治療に役立つほか、記憶や脳機能の向上につながることが期待される。この成果は4月16日発行の米国の脳科学誌「ニューロン」オンライン版に掲載された。

ショウジョウバエの複眼に3日間光を当てると、WNTという分泌タンパク質が減少することにより視神経細胞のシナプスの数が減少することが分かった。
図1.
ショウジョウバエの複眼に3日間光を当てると、WNTという分泌タンパク質が減少することにより視神経細胞のシナプスの数が減少することが分かった。(作図:鈴木崇之)

研究の背景

ヒトは、見たり聞いたりしたことによって、ものを覚えたり、ものの考え方が変化したりする。それは外界からの刺激により、神経が興奮し、その入力によって神経の全体としてのつながり方が変化するからである。主に、神経と神経の接続部分であるシナプスという構造の特性が変化することで、それが行われていると考えられている。

このことを神経活性依存的なシナプスの可塑的な変化と呼ぶ。シナプス可塑性の変化は非常によく研究されている分野で、さまざまな動物の脳神経系において、さまざまな形の変化が起こっていることはよく知られている。

しかし、シナプスの可塑性において、後シナプスの変化の研究は比較的進んでいるが、前シナプスの活性部位の変化については、よく分かっていなかった。また、シナプス可塑性をコントロールする分子実体についてもよく分かっていない。特に前シナプスと後シナプスを行き来して相互の情報を交換する分子についてはほとんど分かっていなかった。

研究成果

今回は、その可塑的な変化の中でも、以下の4点を解明した。

  1. 1.前シナプスと呼ばれる構造の構成分子が再構成を起こすことが詳細にわかった。(図2参照)
  2. 2.生体内で、はっきりと一つ一つの神経のシナプスの数が数えられる状態での実験で、シナプスの減少が測定できた。(図1参照)
  3. 3.自然な強さの光を当てるという普通の刺激に対するシナプスの可塑的な変化を生体内で捉えることができた。(図1参照)
  4. 4.後シナプス側の神経活性が必要であるということが分かり、後シナプス側から前シナプス側に情報の伝達が行われる必要があることが明らかになった。その実体がWNTと呼ばれる分泌タンパクであった。(図1、2参照)

今後の展開

鈴木准教授らはショウジョウバエを用いて、長時間光に当てることにより、視神経細胞を通常より長く活性化し、シナプスの構成タンパク質の変化とシナプスの減少を観察した。(図1参照)この環境適応能力は、経験による学習や記憶などとメカニズムが類似であると考えられ、脳神経系に無数にあるシナプス接続の柔軟な適応能力の分子メカニズムの全貌を解明することにつながると考えられる。

また、ショウジョウバエという遺伝子探索・機能解析が得意である実験動物で、簡便な方法でシナプス可塑性をはっきりと観察できる系を発見し、確立したことが注目される。これによって、さらなる遺伝子発見と分子メカニズムの解明が進むものと期待される。

さらに、ヒトの心の仕組みまで理解できるような主要な共通原理の発見につながり、シナプスの挙動を理解して操作することにより、記憶や脳機能の向上につながることが期待される。

さらに言えば、今回発見されたシナプスの変化は、過剰な情報の伝達を抑制し、過剰な興奮による神経細胞死から守る自己防衛機能を反映していると考えられる。本研究で発見されたWNTシグナルを操作し、シナプスの変化を自在に操作することによって、神経回路を神経細胞死から守ることが出来るようになり、神経変性疾患や精神疾患の治療に役立つことが期待される。

分子レベルでどのようなことが視神経細胞内で起こっているかを解き明かした。(右上)ショウジョウバエの複眼部分の断面図。視神経細胞がびっしりと並び、軸索を脳の内部に伸ばしている(青)。(左上)視神経細胞の軸索は脳神経とシナプスと呼ばれる接続部分を形成する(緑の点)。(下)シナプスの拡大図。光を受けた視細胞のシナプスでは、活性部位を構成するタンパク質のいくつかが離散し、シナプスの数の減少が起こる。この変化は可逆的で、暗所に戻すと再びシナプスの数は元に戻る。
図2.
分子レベルでどのようなことが視神経細胞内で起こっているかを解き明かした。(右上)ショウジョウバエの複眼部分の断面図。視神経細胞がびっしりと並び、軸索を脳の内部に伸ばしている(青)。(左上)視神経細胞の軸索は脳神経とシナプスと呼ばれる接続部分を形成する(緑の点)。(下)シナプスの拡大図。光を受けた視細胞のシナプスでは、活性部位を構成するタンパク質のいくつかが離散し、シナプスの数の減少が起こる。この変化は可逆的で、暗所に戻すと再びシナプスの数は元に戻る。(作図:杉江淳)

用語説明

[用語1] シナプス : 神経細胞と神経細胞が接続している構造のこと。上流の神経が下流の神経に神経伝達物質[用語2]を放出して興奮を伝えていく。前シナプス構造とは、神経伝達物質を放出する側の細胞の構造。後シナプスとはその神経伝達物質を受け取る側の構造。

[用語2] 神経伝達物質 : 上流側の神経が興奮することによって、シナプスから放出され、受け取った神経の興奮や抑制を引き起こす化学物質。アドレナリン、アセチルコリン、ドーパミンなどが有名。

[用語3] ショウジョウバエ : 遺伝子の発見、機能解析に優れ、歴史的に他の動物の研究の礎となるような発見をいち早く行ってきたことで、実験動物としての高い評価がある。

論文情報

掲載誌 :
Neuron
論文タイトル :
Molecular Remodeling of the Presynaptic Active Zone of Drosophila Photoreceptors via Activity-Dependent Feedback.
著者 :
Atsushi Sugie, Satoko Hakeda-Suzuki, Emiko Suzuki, Marion Silies, Mai Shimozono, Christoph Moehl, Takashi Suzuki*, and Gaia Tavosanis*
DOI :

研究グループ

東京工業大学、ドイツ神経変性疾患研究所(DZNE)、国立遺伝学研究所、ヨーロッパ神経科学研究所(ENI)

研究サポート

本研究は、東京工業大学による「東工大挑戦的研究賞」のサポートを受けた。科学研究費補助金である「研究活動スタート支援」、東京医科歯科大学岡澤教授を領域代表とする新学術領域研究「シナプス病態」からの支援は研究推進に不可欠な役割を果たした。また、三菱財団(自然科学研究助成)、日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子 基金、住友財団、ライフサイエンス振興財団、伊藤科学財団、第一三共生命科学研究振興財団(海外帰国研究者研究継続支援助成)、東レ科学技術研究助成に研究の様々な推進段階において、多大な支援を受けた。さらに、国立遺伝学研究所の共同研究支援により、鈴木えみ子博士との共同研究を円滑に進めることが出来た。

問い合わせ先

大学院生命理工学研究科
バイオフロンティア共通講座 生体システム専攻
准教授 鈴木崇之
Email : suzukit@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5796 / Fax : 045-924-5974

サイエンスカフェ「腸内細菌ってなんだ?」開催報告

$
0
0

3月27日、東京工業大学博物館は、大学院生命理工学研究科 山田研究室との共催で、サイエンスカフェを開催しました。テーマは「腸内細菌ってなんだ?」です。

サイエンスカフェとは、科学技術の分野で従来から行われている講演会、シンポジウムとは異なり、科学の専門家と一般の人々が、比較的小規模な場所で科学について気軽に語り合う場をつくろうという試みです。一般市民と研究者を繁ぎ、科学の社会的な理解を深める新しいコミュニケーションの手法として、世界で注目されている活動です。

ヒトの腸内には、1000種100兆個体の細菌が共生していると言われています。近年、腸内細菌の解析技術が飛躍的に向上し、これらの細菌を網羅的に調査する事が可能になり、様々な発見が相次いでいます。

今回のサイエンスカフェは、そうした目に見えない細菌達の活動や仕組みを子ども達に分かりやすく学んでもらおうと、生命理工学の学部生たちが開発した腸内細菌ボードゲームを使っておこなわれました。

桜のつぼみもほころび始めた大岡山キャンパスの附属図書館学習棟2階にて、サイエンスカフェはスタートしました。小学生から一般の方々まで約40名が参加しました。最初に山田講師が腸内細菌の仕組みについて説明をした後、実際にトーナメント形式でゲームが行われました。

山田講師による腸内細菌の仕組みの説明

山田講師による腸内細菌の仕組みの説明

カードゲーム風景

カードゲーム風景

ゲームのために10テーブル用意され、その各々のテーブルには、ホスト役の東工大学生スタッフがつきました。参加者は、ルールや腸内細菌の仕組みの説明をうけながら、ゲームを楽しみました。はじめは緊張気味だった参加者も、次第にゲームを通じ和やかな雰囲気になりました。決勝リーグでは山田講師との対戦となりました。勝者はなんと参加者の小学生!小学生には難しいかと心配されましたが、飲み込みの早さと集中力にスタッフや保護者は驚きの連続でした。

決勝リーグ:山田講師と参加者が対決
決勝リーグ:山田講師と参加者が対決

「腸内細菌の大切さが分かった」
「人間の中にちがう生物がいる事を学んだ」
「難しい事もゲームを通じて学ぶ事が出来ました」
「次回もまた参加したいです」

アンケートには、このような感想が寄せられました。保護者の方々にも「子どもを東工大に入学させたい」「東工大生の明るく親しみやすい対応に、子どもがリラックスして参加出来ました」等と好印象でした。そして、スタッフとして参加した本学学生達は、自身の研究テーマを教える、伝えるといったスキルを磨く良い機会に恵まれました。

なお、附属図書館2階学習棟を学外の方向けイベントに利用したのは、今回が初めての試みでした。アクティブラーニングの場として学内外に今後も大きな役割を果たしていくものと期待されます。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

問い合わせ先

東京工業大学博物館

Email : centcafe@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3340

カリフォルニア大学バークレー校講師がTA制度について講演

$
0
0

平成28年度から始まる東工大の新しい教育制度では、学部生から博士課程までの一貫したリベラルアーツ教育を実施する予定です。修士課程1年目に、講義「東工大リーダーシップ道場」を履修した学生が、学部3年目必修科目「教養卒論」のピアレビューアー(査読者)として活動するというダイナミックな教育プログラムを準備しています。

授業全般に当てはまることですが、特にこうしたプログラムでは、学生の学習活動を活性化するために大学院生の教務補佐員(TA)が非常に重要となります。TAとして教え、クラスを活性化することは、大学院生本人にとっても教えることを介して学ぶ機会となります。加えて、研究・教育者としてのキャリア形成や、共同作業のリーダーシップ養成としての実用性もあります。「教養卒論」のピアレビューアーとしての活動は単位取得の要素の一つであり、給与が発生しないため、一般的に言うTAとは異なりますが、同様の狙いのもとで活躍してもらうことになります。

講師のLinda von Hoene先生

講師のLinda von Hoene先生

TAについて先進的な取り組みをしている大学として、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)があります。UCBでは、TA(UCBではGraduate Student Instructor: GSIと呼びます)がかなり多くの教育を担当しています。GSI Teaching & Resource CenterがTAの教育・調整・管理を担当しており、全米でも日本でも注目されています。そこでリベラルアーツ研究教育院ワーキンググループは、DirectorのLinda von Hoene先生と、Sabrina Soracco先生とを招き、講演会とワークショップを開催しました。

3月23日にロイヤルブルーホールで開催された講演会には、リベラルアーツ研究教育院所属予定の教員21名に加え、学内外から12名が参加しました。

UCBでのTAの多様な活動と教員による指導・管理体制

アメリカでは1940年代から大きなクラスの弊害が指摘され、対応策としてTAを雇用しました。ところが、「子供が子供を」教えるという批判が学生の保護者から挙がります。そこで、UCBでは1989年にGSIのセンターを設立し、TAの教育活動の改善が開始されました。

講演の様子

講演の様子

現在、UCBでは1学期間に1,800名のTAが活動しています。講義の74%では受講者が30名以下ですが、大きなクラスでは、セクションに分けて複数のTAが対応することもあります。TAを担当する学生は講義プランの作成やオフィスアワーの設定、さらには成績評価まで担当しています。これらは教員の指導下で行われ、TAの指導・管理を行う体制が維持されています。講演後の質疑応答は50分を超える熱のこもったものになりました。

TAの活動の幅が広いこと、その活動が具体的に規定されて、教員がどのように管理するかがしっかりと決められていることなど、TAの有効活用と、TAがどのように成長するのかについて、具体的な話を聞くことができました。これからTAを活用しようとする上で大変有意義な講演会となりました。

TAの効果的な活用に向けて

教員のためのケーススタディー

教員のためのケーススタディー

講演会の後、リベラルアーツ研究教育院所属予定教員を対象としてケーススタディーが行われました。TA、教員、学生の具体的な行動例が練習問題として設定され、問題点、その背景、解決策が話し合われました。TAと教員のコミュニケーションや、TAが行うことを具体的に記述しておくことの重要性が強調されました。

さらに、倫理的な問題や、問題となりそうな行動、ハラスメントとなりそうな行動について、具体例を基に問題点を議論しました。それらの行動を防ぐためにTAにどのような指導をするのが有効なのかについても話し合われました。

良い授業とは何か?学生参加のワークショップ

講演会の翌日、3月24日にロイヤルブルーホールで開催されたワークショップには、学部から博士課程の学生12名が参加しました。「ひきだすスキル」「教えるスキル」を身に着けたい学生が全学から集まりました。講師は、前日に引き続き、UCB GSI Teaching & Resource CenterのLinda von Hoene先生と、Sabrina Soracco先生です。

4名にわかれてのグループワーク

4名にわかれてのグループワーク

テーマは、良い授業とは何かをグループディスカッションを通して考えることでした。グループで考えたことを代表して答えると、すぐにHoene先生にWhy? と聞かれます。講義も質疑も英語ですが、理由を答えるのが難しい質問にも学生はすぐに答えていました。

講師からは、教えることから学ぶことへのパラダイムシフトが起こり、受動的に知識を学習する形態からアクティブラーニングへ変わりつつあるといった説明を受けました。「コースが終わった後に何をできるようになっているのか」を基準に授業を設計することが重要といった、教員にとっても役立つ授業設計について、学生は熱心に聞いていました。

中でも印象的だった話題として、ルーブリック(目安を記し、達成度を評価するスケール)による評価の説明がありました。評価にルーブリックを利用する利点、ルーブリックの形式や、どのようにルーブリックを作成するかについてペアワークやグループワークを通して議論しました。そばで聴講している教員でも考えるのが大変なほどでしたが、学生は緊張も解けてきて、積極的な発言が聞かれるようになりました。

フリーディスカッションの様子

フリーディスカッションの様子

ワークショップ終了後は、参加者でフリーディスカッションを行いました。ワークショップ中には聞けなかったことが次々と質問され、講師の二人も熱心に答えてくださいました。

聴講している教員は、学生の様子を見て、大学院生がTAとして活躍できる教育プログラムの提供が重要であることを再認識しました。東工大の中で「教え合い、学び合う」雰囲気が醸成されれば、学生が主体的に学ぶようになり、学生自らがリーダーシップを持ってクラスを引っ張っていくことが期待できます。その期待が高まると同時に、教員の教育のブラッシュアップが欠かせないことを実感できる有意義なワークショップとなりました。参加した学生にとっても、自分自身の学びや、今後教える現場に活かせる、英語でのアクティブラーニング体験となりました。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院WG

Email: ila2015@liberal.titech.ac.jp

平成26年度「東工大の星」支援STAR 採択者決定

$
0
0

平成26年度「東工大の星」支援(STAR:Support for Tokyotech Advanced Researchers)の採択者3名が決定しました。

(前列左から)稲邑朋也准教授、吉沢道人准教授、西山伸彦准教授 (後列左から)辰巳敬理事・副学長(3月31日付退職)、三島良直学長
(前列左から)稲邑朋也 准教授、吉沢道人 准教授、西山伸彦 准教授
(後列左から)辰巳敬 理事・副学長(3月31日付退職)、三島良直 学長

「東工大の星」支援とは、東工大基金を活用し、将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者や、基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者へ大型研究費の支援を行うものです。次世代を担う、本学の輝く「星」を支援します。

「東工大の星」支援の概要

目的

東工大基金を活用し、本学における優秀な若手研究者への大型支援を実施することにより、本学の中期目標である基礎的・基盤的領域の多様で独創的な研究成果に基づいた新しい価値の創造を促進し、もって、学長の方針に基づく本学の研究力強化に資することを目的とする。

支援対象者

公募によらず、様々な業績を勘案し、学長及び研究戦略室長の協議により選考する。

観点

  • 将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者
  • 基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者

役職等

  • 若手研究者は准教授以下(原則40歳以下)とする

第2回目の今回は、3名の「星」が学長及び研究戦略室長の協議により選考されました。

所属部局
専攻
職名
氏名
大学院理工学研究科(工学系)
電気電子工学専攻
准教授
西山 伸彦
資源化学研究所
准教授
吉沢 道人
精密工学研究所
准教授
稲邑 朋也
授与式の様子

授与式の様子

学長との懇談の様子

学長との懇談の様子

東工大基金

この支援プロジェクトは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課研究企画グループ
Email: kensen@jim.titech.ac.jp

「日本再生:科学と技術で未来を創造する」プロジェクト開催報告

$
0
0

「日本再生:科学と技術で未来を創造する」プロジェクト -半導体微細加工プロセス体験を通じた知的創造力の育成- が2015年3月12日に開催されました(開催責任者:理工学研究科電子物理工学専攻・小寺哲夫 准教授)。本プロジェクトの目的は、日本の未来を担う進学校の高校生が最新の科学技術を体験することで、その重要性を実感し、さらに知的創造力を育むことにあります。具体的には、半導体微細加工プロセスの体験、また最先端の半導体やナノテクノロジーに関する研究についての紹介を行いました。さらに学部4年生、大学院生との議論を通じて、理解を深めました。

半導体微細加工体験は、南9号館4階半導体実験室で行いました。ここは、電気電子工学科の学生実験で使用している部屋となります。高校生全員がクリーンウェアを着用し、クリーンルームにおいて作業を行いました。まず、アルミニウム金属の真空蒸着を体験しました(写真1)。金属が真空チャンバー内で加熱され、半導体基板に蒸着される様子を見ると、高校生からは歓声があがりました。「どのような力で金属が半導体に付くのか」など、活発に質問が出ました。

写真1 アルミニウムの蒸着体験
写真1 アルミニウムの蒸着体験

写真2 フォトマスクのデザイン

写真2 フォトマスクのデザイン

次にフォトリソグラフィ※1を体験しました。デザインは東工大と開成高校の校章や漢字が入ったものです(写真2)。レジストを半導体基板に塗布し、予め準備したフォトマスクを用いて、フォトリソグラフィを行いました。感光しないようにイエロールーム※2でフォトリソグラフィを行うことなどを、大学院生が説明しながら、体験しました(写真3、写真4)。高校生たちは、「半導体微細加工プロセスでは様々な化学薬品を用いていることがわかり、物理の研究にも化学の知識が必要になるということを初めて知った、とても楽しかった」といった感想を述べました。

写真3 フォトリソグラフィ体験

写真3 フォトリソグラフィ体験

写真4 サンプル作製結果

写真4 サンプル作製結果

微細加工体験を終えた後、南9号館3階と1階にあるナノテクノロジーに関係する実験装置の見学を行いました。金属をオングストローム単位※3の膜厚で制御して蒸着できる電子線蒸着装置や、ナノ材料を形成するためのCVD装置、ナノ構造を観測するための走査電子顕微鏡等を紹介しました。

写真5 EEI棟実験室見学風景

写真5 EEI棟実験室見学風景

さらに、環境エネルギーイノベーション棟(EEI棟)に移動し、見学を行いました。太陽電池に囲まれたビルに大興奮の様子でした。内部では、研究室のダイヤモンド成長装置の見学を行いました(写真5)。「どのくらいの大きさのダイヤモンド薄膜が形成されるか、またどのような応用が期待されるか」など、多くの質問が出ました。対応した大学院生らは、「活発に質問が出て、また説明に対するリアクションが多くあり、とても楽しく刺激をもらった」と感想を述べました。日本の未来を担う進学校の高校生らとの交流は東工大生にとっても知的創造力を共に育むことができる有意義な時間になったようです。その後、高校生と案内役を務めた東工大生、教員の記念撮影が行われました(写真6)。

写真6 高校生・TA・教員での記念撮影
写真6 高校生・TA・教員での記念撮影

※1
フォトリソグラフィ : 感光性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術。
※2
イエロールーム : クリーンルーム内で特に感光性物質が扱われるフォトリソグラフィー工程のために蛍光灯の特定の波長領域(紫外線)をカットしたエリアの事。
※3
オングストローム単位 : 原子や分子、可視光の波長など、非常に小さな長さを表すのに用いられる。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

Viewing all 4086 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>