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Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
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「教育革新センター(CITL)」がスタート

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東工大は、現在教育改革に取り組んでおり、2016年4月から新しいプログラムによる教育を開始する予定です。その実現のため、新たに「教育革新センター(Center for Innovative Teaching and Learning:以下CITL)」が設置され、4月1日に開所式が行われました。

CITLは、教育改革の推進機能として、「教育の質保証体制の構築」、「教育能力開発」、「教育学習環境開発」を3つの柱として活動を行います。さらに、昨年より展開しているMOOCs※1への取り組みや、学内でのオンライン教育環境の企画・整備等を行う「オンライン教育開発室※2」をCITL内に設置し、MOOCsや反転授業※3コンテンツの企画・制作などを行います。

看板を掲げる松澤センター長と三島学長、丸山理事・副学長
看板を掲げる松澤センター長と三島学長、丸山理事・副学長

※1
Massive Open Online Courses : 大規模公開オンライン講座
※2
Online Education Development Office : OEDO
※3
授業と宿題の役割を「反転」させ、授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ、教室では知識確認や問題解決学習を行う授業形態

開所式では、三島学長によるCITLへの期待と改革に向けた想いが込められたメッセージののち、丸山理事・副学長から「教員がCITLに相談に来て、出ていくときには明るい顔になって出ていくようなセンターにして欲しい」とのコメントがありました。また、松澤センター長からは、CITL設置に至った経緯と背景、教育の質向上に向けた取り組みへの決意が語られました。

今後は、2016年4月からの新しい体制に向けた授業設計、学生を中心とした学びの実現のためのFD※4研修を実施するほか、MOOCsコンソーシアムであるedX※5を通じて夏以降に講義配信を行い、世界トップレベル大学と比肩する教育の実現に向けた活動を行います。

※4
ファカルティ・ディベロップメントの略称で、教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称
※5
マサチューセッツ工科大学とハーバード大学を中心に、世界のトップ大学によって構成される非営利のコンソーシアム

教育革新センター(CITL)のメンバー
教育革新センター(CITL)のメンバー

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

問い合わせ先

「教育革新センター(CITL)」オフィス

大岡山キャンパス西9号館212号室
Email : citl@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2993

「オンライン教育開発室(OEDO)」オフィス

大岡山キャンパス南3号館1006
Tel : 03-5734-3445(不在時はCITLまで)


東京工業大学附属科学技術高等学校 入学式挙行

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4月6日、大岡山キャンパスで東京工業大学附属科学技術高等学校の入学式が執り行われ、198名が晴れの入学の日を迎えました。

附属科学技術高等学校 入学式

附属高校宮本文人校長は式辞で、「科学技術をしっかり修得して、将来、グローバルに活躍するリーダーとなり、日本及び世界の発展に貢献することを期待しています。」と述べました。

その後、東京工業大学の三島良直学長、附属高校の灰原多香子PTA会長、門馬進教育後援会会長(代理)らの来賓祝辞、仲道嘉夫副校長の挨拶・担任紹介に続き、新入生代表による誓いが行われ閉式となりました。

附属高校は、大学並みの実験・実習施設も整備されており、東京工業大学と密に連携した教育を受けることができます。

ご入学された皆様、おめでとうございます。

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

4月27日12:00 附属高校校長の氏名に誤りがありましたので、修正しました。

FD研修「英語による教授法(導入)研修」実施報告

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3月23日と3月24日の2日間、FD※1研修「英語による教授法(導入)研修」が実施され、各研究科の助教から教授まで、計21名の教員が参加しました。この研修は、3月上旬に行われた実践編のFD研修と同様に、2016年4月スタートの教育改革に向けた教員へのサポートの一環として開催されたものです。同じプログラムを既に、2014年12月に実施しており、受講者から好評だったため、今回再実施されました。

ペアワークの様子
ペアワークの様子

ペアワークの様子

今回の研修はブリティッシュカウンシル※2より講師を迎え、「講義とプレゼンテーション」という内容のプログラムに沿って行われました。このプログラムは、教員が英語で講義やプレゼンテーションを行うにあたり、明確で論理的、かつ分かりやすいように行う方法を学ぶことを目的としています。研修は90分×4セッションで構成され、受講者は最初の3つのセッションで基本的な構成、必要な英語表現、効果的な視覚教材、ボディーランゲージの使い方等を学び、最終セッションで、全員がそれぞれの選んだ題材について4分間の簡単なプレゼンテーションを行いました。題材はバラエティに富んでおり、自身の専門分野についてはもちろん、趣味や所属するキャンパスの紹介、学生のやる気を引き出す方法など、個性溢れるプレゼンテーションが展開されました。研修後には講師より一人一人へフィードバック結果が配られ、受講者は自身のプレゼンテーションへの評価を確認することができました。

プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子

プレゼンテーションの様子

受講者からの声

  • 講義を円滑に進めるための言い回しを知れて良かったです。
  • 実際の講義を体験できて良かったです。
  • プレゼンテーションが不安でしたが、楽しく参加できました。
  • プレゼンの心得が再認識できました。
  • 自分のプレゼンをチェックしてもらったことが一番有効でした。
  • 今回は導入編だったので、今後も継続して研修を受講したいと思います。

講師の説明に聞き入る受講者たち
講師の説明に聞き入る受講者たち

東工大では、教育の質の保証や教育能力開発を目的として、「教育革新センター」が4月1日に新しく設置されました。今後は教育革新センターが中心となり、このようなFD研修を継続的に開催し、教員の教育能力の向上を支援していく予定です。

※1
FD : ファカルティ・ディベロップメントの略称で、教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称
※2
ブリティッシュ・カウンシル : 教育機会と文化交流を目指す、英国の公的な国際文化交流機関です。1934年より世界中で活動を広げており、現在は、日本を含む世界100以上の国と地域で190以上のオフィスを展開しています。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

お問い合わせ先

学務部教務課教育企画グループ
Email : kyo.kyo@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7602

動画で見る東工大研究 ~Tokyo Tech Research 『手術支援ロボット』

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東工大は、環境、情報、電気、生命科学など、幅広い分野で最先端の研究に取り組んでいます。そうした研究内容を、今後、動画で紹介していきます。

第一弾として今回取り上げたのは、精密工学研究所の只野耕太郎准教授が東京医科歯科大学と共同で開発を進める「手術支援ロボット」。開腹手術よりも患者への負担が少ない腹腔鏡手術に使用されるロボットです。最大の特徴は、医師の手に代わって患部を掴んだり引っ張ったりする鉗子(かんし)の動きが空気圧でコントロールされていること、そして鉗子にかかる力を数値で計測し、その力を医師が握る機器に伝えることにより医師が手元で鉗子先端の抵抗を感じることができる点です。動画ではその仕組みを説明しています。ぜひご覧ください。

「第8回学生応援フォーラム」開催報告

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3月12日、「第8回学生応援フォーラム」を大岡山キャンパス蔵前会館ロイアルブルーホールにて開催しました。

本学の学生、教職員、蔵前工業会からの参加者に加えて、千葉大学、筑波大学、東京大学、産業能率大学、清泉女子大学の学生教職員など、一般の方を含めて55名の参加がありました。

開会の辞を述べる三島学長

開会の辞を述べる三島学長

三島良直学長の開会挨拶に始まり、岡村哲至教授(大学院総合理工学研究科)より学生支援センター自律支援部門がサポートする学生活動の方針について説明がありました。

平本嶺王さん(理学部地球惑星科学科2年)の司会のもと、自律支援部門がサポートしている4団体の各活動に参加している学生から、その活動内容や意義等について口頭発表をおこないました。

4団体と発表者

  • 「東工大学生ボランティアグループ(東工大VG)」栗林純平さん(工学部高分子工学科2年)
  • 「東京工業大学国際交流学生会(SAGE)」加藤真悟さん(6類 1年)
  • 「学勢調査」望月泰英さん(工学部無機材料工学科3年)
  • 「理工系学生能力発見・開発プロジェクト」加藤健太さん(工学部機械科学科3年)
口頭発表
口頭発表

口頭発表

続いて、合同ポスター発表会として、「東工大テクノガールズ」、「蔵前工業会学生分科会」、「ピアサポーター」、「TEDxTitech」も加わり、あわせて8団体がポスター発表をおこないました。

ポスター発表
ポスター発表

ポスター発表

丸山理事・副学長の閉会挨拶をもってフォーラムを終了しました。

今回のフォーラムでは、ポスター発表への参加団体を増やしたことで、これまで以上に活発な議論と情報交換がなされました。発表を聞いた参加者からは、学生に対しての質問や意見だけでなく励ましの言葉も多くありました。

参加者アンケートには、「科学技術系ならではの活動が数多く聞けた点が良いと思った」、「主体的に熱心に活動されている様子をうかがい大変感心した。今後の更なる活躍を期待している」、「若い時から社会へアクセスする機会を得ることは素晴らしいと思った」、「学生が大学をより良くするために活動をするというのは大学にとっても望ましいことだと思う」等の感想が寄せられました。

今回のフォーラムでは、企画運営にも学生が積極的に参加しました。

司会の平本嶺王さん

司会の平本嶺王さん

司会の任を担った平本嶺王さんは、「第8回学生応援フォーラムでは司会だけでなく、運営にも大きく携わらせていただきました。参加団体を拡張したこともあって、他団体とスムーズで正確な連絡をすることは困難だったというのが本音です。しかし色々な工夫を経て、活動体制や忙しさが異なる複数の団体を自主的に取りまとめてフォーラムを成功に導いた経験は確かな自信になりました。」と感想を述べました。

学生支援センター自律支援部門では、学生の主体性や社会性の涵養を目的とする学生の活動支援を今後も継続して続けていきます。

お問い合わせ先

学生支援センター 自律支援部門室
Email : siengp@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7629

文明科目の取り組みの総括

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東工大には、様々な芸術・文化に触れることができるよう世界文明センターが設置されています。このセンターは、世界の第一線で活躍しているアーティストや学者による数多くの文明科目を開講しています。今年度、文明科目の一部改定を行いましたので、これまでの取り組みを総括してみます。

文明科目が出来たのは2007年度です。それまでのいわゆる文系科目とは異なり、人文学と芸術を教授することを目的としスタートしました。人文学に関しては、当初は、知名度の高い、学内外の講師の方に、大教室での講義をお願いしました。

また芸術に関しても、音楽家からダンサーまで多様な分野の方に講師に就いていただき、芸術全般を幅広く教授しました。芸術科目の一部はワークショップという実技の伴うものでした。ところが、人文科目に関しては文系科目との差別化が困難になり、また、楽に単位が取れる科目として学生に認知される科目が出てきました。座学を中心とした芸術科目でもこのことが当てはまることもありました。

そこで2011年に外部の専門家に特別にお願いして、全ての授業に複数回出席し、授業ごとにレポートを作成していただきました。その結果から、国際的水準に達していないと判断された科目は順次廃止しました。また、合格者の平均点を80点程度にするように講師の方にお願いしました。その結果、学生の満足度は高く、かつ、単位を取得しやすいと認識される授業はほとんどなくなりました。

しかしながら、文明科目の人文学系の科目における、言説と評論を中心とした授業では、学問的方法論が明確でなく、一般教養としての知識の教授以上の効果がないことが明確になりました。そこで、2013年度に大学院理工学研究科建築学専攻の安田幸一教授がセンター長に就任されたことを契機に、人文科目は基本的に廃止し、芸術を支える思想に関して特化した講義を残すことにしました。すなわち、政治哲学、社会哲学、西洋古典語である古代ギリュシャ語、ラテン語です。一方芸術科目は、原則的にワークショップ科目に限定しました。

アーティストによる映像ワークショップ
アーティストによる映像ワークショップ

今年度、さらに文明科目の一部改定を行いましたが、その狙い・特色は以下の3点です。

1.
ものつくりの原点に戻り、抽象的な言説でなく、具体的な形を作り出すことを目的としています。
2.
過去にとらわれた模倣ではなく、真の意味で、独創的かつ創造的な発想とそれを具体化できる能力を涵養します。
3.
グローバル化、国際化を前提として、世界水準での教育を日本人学生と留学生が、ともにバリア無く参加できる、英語日本語の授業を実施します。

多くの方が疑問に思うことは、これらの芸術科目が果たして、科学技術の創造性につながるのだろうか?あるいは、芸術は特別の才能のある人だけのものであって、たとえ一般の学生に教授したとしても真の実力が学生自身に宿るのだろうか?という論点ではないでしょうか。

第一の点に関して、芸術の発想と、それを、ものとして現実化する力は、科学技術の革新に大きな意味をもつことは間違いありません。なぜならブレークスルーした古今東西の多くの科学技術者は、全てこれまでの伝統、定説を覆していることから、無から有をつくり出す、芸術行為と何ら異なることはないからです。

また、芸術が特別な才能の持ち主のもので、通常の科学技術者とは無関係というのは、芸術に関しての誤解にもとづくものと考えられます。現代の芸術は、ルネッサンス期のミケランジェロ、17世紀のレンブラントや18世紀のモーツアルトの時代とは異なり、全ての人がゼロからスタートしていかに個人を表現するかということに力点があります。特別の才能が必要ということにはなりません。また、芸術技術は表現したいという欲求から向上するものであって、技術だけを取り出して教えることもできなければ、学ぶこともできません。むしろ大学時代に、このような真の芸術創作体験をすることで表現したいという欲望がうまれ、多くの学生にとってその創造性を開花させることにつながります。

最後に、東工大で文明科目を学び、現在他大学の博士課程に在学している卒業生の意見を紹介したいと思います。

私が東工大に入った時には、他の多くの学生と同様、文明センターの主催するような文化・芸術に関する授業にはあまり期待していませんでした。大学で得られるものは純粋に専門の知識であると考えていたからです。しかし東工大で学部・修士を過ごし終えた後に気がつくのは、私にとって大学時代の最も重要な学びの多くを文明センターの授業から得ていたということです。

学生が専門で学ぶ学問は数式や言語を用い、何が真実に近いか、もしくは近いらしいかを実証なり論証することを目的とするものです。そこには常に「正・誤」を定めようという動機が働きます。学問は大変有用です。しかし何が「正しい」かが固定化されるときが、学問の行き詰まるときではないでしょうか。「失敗を恐れず新しいやり方に挑戦しよう」というメッセージを発信することがあります。では学生はどうやってこのような話を自分に応用すればいいでしょう。実際には失敗が非難される対象であると信じられている社会の中で、どうやって失敗することを学んでいけばいいでしょうか?

文明センターが教える芸術の方法論は試行錯誤を学ぶ場として際立って有効であると思います。芸術を通して試行錯誤の体験を学ぶとき、学生は「失敗」という言葉についてまわる緊張や恐怖から自由な立場で発想することが許されます。私が文明センターの授業において最も驚いた点は、そこで「正・誤」ないし「勝・敗」の価値観がほとんど重要視されないように思えたことです。その代わりに、教義や慣習によりかかるのでなく、自分の言葉や表現で発信することを徹底的に要求されます。その過程であらゆる試行錯誤を経験し、実際に失敗が予想していたものより遥かに上回るすばらしい答えを導くことがあることを、偉人の体験談ではなく自らの経験として、極めて短時間のうちに知ることができるのです。このような経験は、学問や実務に帰った時に必要な、自ら発言する態度や新しい選択肢を試みる勇気を養う土台となりました。また、国内外の芸術家、留学生たちとの関わりを持つことができたことも、私にとって大きな財産となりました。異分野の人間同士が互いに興味を持ちながら、英語日本語問わず何とかコミュニケーションをとりあおうとする授業の雰囲気は、文明センターにしかない独特のものであったと思います。私個人としても、長期休暇には講師の方々を尋ねて京都、アメリカ、ドイツに滞在することができたのも、文明センターでの非常にインタラクティブなやりとりの結果でした。

文明センターは技術を教えませんし、授業内容は実際的でないように見えます。しかし、ノーベル賞受賞者や学長の入学式でのスピーチで謳われるような「失敗を恐れず」「自由に」「グローバルに」といった価値をどうやって体現していくのか、その非常に具体的な機会と方法、を文明センターは示していました。その意味で、私にとって文明センターの科目は東工大で最も実際的であり、それらの価値を体験する貴重な学びの場になりました。

お問い合わせ先

肥田野登
Email : hidano.n.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3824

「第47回外国人研究者へのオリエンテーション及び外国人研究者等との懇談会」開催報告

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2月5日、第47回外国人研究者へのオリエンテーション及び外国人研究者等との懇談会が、東工大蔵前会館で開催されました。

外国人研究者との懇談会は、学長主催により、本学で教育・研究に従事している外国人研究者を招き、本学の教員及び各国の研究者の親睦を深めることを目的として、1991年12月4日より例年2回開催されているイベントです。第39回(2010年1月実施)からは、本学に関する理解を深める機会としてオリエンテーションも併せて実施しています。

オリエンテーション:三島学長による挨拶

オリエンテーション:三島学長による挨拶

今回の外国人研究者へのオリエンテーションでは、三島学長と丸山理事・副学長が本学における教育、研究、国際交流についての講演を行いました。

三島学長は、東工大が採択されている文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(タイプA:トップ型)」事業について語りました。また、大隅良典栄誉教授や細野秀雄教授による最近の研究成果を紹介しました。丸山理事・副学長は、2016年4月に予定されている教育改革について説明しました。

ゲストスピーチ:サヴェドラ ヴァレリアノ オリベル クリスティン特任准教授

ゲストスピーチ:
サヴェドラ ヴァレリアノ オリベル クリスティン特任准教授

外国人研究者等との懇談会では、岡田理事・副学長の開会の辞から始まり、大学院理工学研究科土木工学専攻 サヴェドラ特任准教授が、ゲストスピーカーとして、ご自身の研究活動や東工大E-JUSTオフィスの報告をしました。

サヴェドラ特任准教授はボリビアで生まれ育ち、ドイツで修士号を、日本で博士号を取得しました。東工大には2010年から所属し、生態系、水質管理、水化学と水資源管理などの水関連分野の研究を行っています。サヴェドラ特任准教授はさらに、E-JUSTオフィスに多大なる貢献をしています。E-JUSTとは、エジプト・アラブ共和国において、日本型の工学教育の特長を活かした「少人数、大学院・研究中心、実践的かつ国際水準の教育提供」をコンセプトとする国立大学を新設するためのプロジェクトです。

その後、辰巳理事・副学長の発声による乾杯で会が進行し、和やかな雰囲気の中、交流が深められました。最後は伊藤応用セラミックス研究所長の閉会の辞をもって、大盛況のうちに終了しました。

懇談会の様子
懇談会の様子

問い合わせ先

国際部国際事業課

Email : kokuji.kib@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7690

ものつくりセンター 高校生・新入生歓迎の展示「ものつくり協奏曲」

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東工大ものつくり教育研究支援センター(以下ものつくりセンター)は、センター内の設備を利用して、学生がものつくりの楽しさを満喫できる環境を提供している施設です。

在学生は、各種機械工作・電気工作の機器を、事前に講習を受けることで自由に使用する事ができます。研究に使用する装置製作、サークル活動など幅広い用途に活用できます。

3月より、大岡山キャンパスのものつくりセンターで高校生・新入生を歓迎する展示企画が始まりました。

「ものつくり協奏曲」の展示
「ものつくり協奏曲」の展示

現在、ものつくりセンターでは、学生や職員が製作した、5つの展示物を体験することができます。

どの展示物も、ものつくりセンターにある工具・機械を使い製作されました。

ウェルカムボード:時計の機構を利用しておもりの重さを歯車に伝え歯車とボードが規則正しく動いています。

ウェルカムボード:時計の機構を利用しておもりの重さを
歯車に伝え歯車とボードが規則正しく動いています。

今回の企画の発案者であるものつくりセンターのスタッフは「多い月は300人ほど高校生や海外からの見学者がいるので、研究を説明したパネルに加えて、実際に手で触れ目で見て楽しめるような魅力的なものが欲しく始めました。その企画案を受けて、スタッフ・学生のアイデアと技術力で興味を引く動的展示になりました。センター保有のレーザー加工機を巧みに自由自在に操った作品の結集です。」と話しました。

展示のひとつ「非円形歯車」の製作者、ロボット技術研究会の五十嵐純さんは「とにかく体験してほしい、あえてモーターじゃなく手で回すようにしています。」と語ってくれました。

非円形歯車:非円形の歯車を回すことで、回転速度や力のかかり具合の変化を体験することができます。

非円形歯車:非円形の歯車を回すことで、
回転速度や力のかかり具合の変化を体験することができます。

真ちゅう+アルミ、鉄+アルミの独楽:真ちゅう+アルミ、鉄+アルミという違い材料で作製した独楽を回し、違いを体験することができます。

真ちゅう+アルミ、鉄+アルミの独楽:真ちゅう+アルミ、鉄+アルミと
いう違う材料で作製した独楽を回し、違いを体験することができます。

Magnetic Wave Machine:磁石の引力と斥力のバランスによって回転の伝わり方が変化し、プレートの全く異なる動きを体験できます。

Magnetic Wave Machine:磁石の引力と斥力のバランスによって
回転の伝わり方が変化し、プレートの全く異なる動きを体験できます。

マーブルマシン:電池とモーターで動作し、水車のように回転する円板と、カムで交互に上下する階段で、ビー玉が自動で循環する仕組みになっています。

マーブルマシン:電池とモーターで動作し、水車のように回転する
円板と、カムで交互に上下する階段で、ビー玉が自動で循環する
仕組みになっています。

ものつくりセンターの講習会やイベントなどで作製された成果物

ものつくりセンターの講習会やイベントなどで作製された成果物

また、今回の展示のほかにも、ものつくりセンターでの講習会・イベントで作られた成果物や、ロボット技術研究会、Meister、CREATEのサークル活動の様子をパネルや実物で見ることができます。

回転計、スターリングエンジン回転計、スターリングエンジン

ものつくりセンターでは一般の方でも自由に見学可能です。ぜひ新しい展示を体験しに来てください。

問い合わせ先

広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975


シンポジウム「MOOCs for Science & Engineering Education」開催報告

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東工大は、教育改革の取り組みのひとつとして、オンライン学習環境を整備し充実した学修の機会を増やすためにMOOCs(Massive Open Online Course(s))※1のコンソーシアムであるedX※2に2014年10月から参加しました。また、2015年夏の東工大発のコース開始に向けてオンライン教育開発室(OEDO : Online Education Development Office)を中心にコンテンツ開発を進めており、学内への取り組みの周知並びに、近年の世界のオンライン教育の潮流を学ぶためにシンポジウム「MOOCs for Science & Engineering Education」を開催しました。

OEDOでは教員とTAが一緒にMOOCsコンテンツの開発を行っている
OEDOでは教員とTAが一緒にMOOCsコンテンツの開発を行っている

edX本部があるボストンから、教育担当シニアディレクターのシェリー・ヘフナー氏を含む4名のスタッフ、講演者として香港科技大(HKUST)からティン・チュエン・ポン教授、大阪大学から竹村治雄教授らが参加し、TTFロイヤルブルーホールにて開催しました。東工大卒業生など学外者10名を含む約51名が参加、講演やパネルディスカッション等を通じて活発な意見交換を行われました。

シェリー・ヘフナー氏(edX)

シェリー・ヘフナー氏(edX)

当日は三島学長の挨拶の後、ヘフナー氏より、「Empowering Learning in the Classroom and Around the Globe」として、現代社会におけるオンラインコースの存在意義及び活用事例、edX参加大学並びに利用者のデータ分析に基づく取り組み状況の紹介、及び今後の展開などについての講演がありました。

ティン・チュエン・ポン教授(香港科技大)

ティン・チュエン・ポン教授(香港科技大)

次に香港科技大(HKUST)のポン教授による「New Education and Research Opportunities offered by MOOCs」の講演がありました。ポン教授はedXを通じて工学系の教授としての講義に加え、自らMOOCsによって世界中に講義を配信し、ブレンデッド・ラーニング※3を実践しています。既存の講義形式から、アクティブ・ラーニング※4、ブレンデッド・ラーニング、特にオンラインコースを使ったフリップドラーニング※5を用いた学習者中心のスタイルによる新しい学びの効果や流れに関して報告しました。また、ポン教授はMOOCとオンキャンパスによるプロジェクトベースドラーニング※6を融合させた講義を実現したほか、MOOCコースで優秀な成績を収めた海外の学習者を夏休みを利用して香港科技大の学生と共にフォローアッププロジェクトを受けてもらうなど、様々な新しい取り組みを実践しています。

講演の最後として、東工大のジェフリー・スコット・クロス教授から東工大のMOOCsへの取組状況、特に、昨年12月より活動を開始したオンライン教育開発室(OEDO)を通じた学生との協働によるコンテンツ開発の状況などについて報告がありました。

竹村治雄教授(大阪大学)

竹村治雄教授(大阪大学)

TAの田川翔さんによる活動の紹介

TAの田川翔さんによる活動の紹介

休憩の後は、大阪大学の教育学習支援センター長竹村治雄教授、edXプロダクトディレクターのルー・ワン氏、東工大で現在建築に関するコンテンツを企画中のデビット・スチュワート特任教授、そしてOEDOのTA※7として、本学最初のMOOCコンテンツである「Deep Earth Science(DES)」の開発に参加している東工大の学生 田川翔さんを交え、クロス教授の進行によりパネルディスカッションが行われました。会場のアンケートでは、参加者のほぼ全てから「満足した・良く理解できた」などの高い評価をいただきました。また「オンラインコースウェアにかぎらず、学生の学習に対する動機づけが重要であることへの気付き」、「通常の講義にも役に立つようなことが得られた」、「他大学や他機関の先進的な取り組みを知ることができた」などのコメントが寄せられました。また当日参加していた複数の教員から、自分の講義でオンラインコンテンツを作ってみたいという相談や、OEDOの活動に対する賛同の意見なども寄せられました。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

本学でスタートしたオンライン教育への新たな取り組みを広める機会として、本シンポジウムは大変意味のあるものになりました。今後は、4月1日に開設された教育革新センター(CITL: Center for Innovative Teaching and Learning)の中の組織としてOEDOの活動と共にMOOCsへの取り組みを含めた教育の質向上、充実した学修環境の整備が進められていきます。

※1
MOOC (Massive Open Online Course(s)) : インターネット上において無料提供され、誰もが受講することができる大規模な講義です。通常の講義のように学習期間が設定されており、学習者は科目提供者や同じ科目を登録している学習者とコミュニケーションを取ることができるなど、双方向の学びが提供されています。
※2
edX : マサチューセッツ工科大学とハーバード大学を中心に、世界のトップ大学によって構成される非営利のコンソーシアムです。edXでは、最先端の学習を世界中の誰もがどこからでも学ぶことができる環境をインターネット上で提供するだけでなく、最先端の教育学、教授法に基づいた学習環境の提供を実現しています。
※3
ブレンデッド・ラーニング : 対面授業とオンライン授業を融合させた授業。
※4
アクティブラーニング : 学生・生徒側の能動的で積極的な参加の取り組みに主眼の置かれた教育のあり方や授業の形態です。教員が生徒に一方向的に伝達し教授する従来の(講義形式の)授業のあり方に代わる方式として注目されています。
※5
フリップドラーニング : 「反転授業」とも言われる。授業と宿題の役割を「反転」させ、授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ、教室では知識確認や問題解決学習を行う授業形態。
※6
プロジェクトベースドラーニング : 学生が自主的に学習して授業の準備をします。1つのテーマに対して、幾つかのグループに分かれて作業を分担し授業を行い、主に学生同士の質疑応答で授業が進行していきます。
※7
TA : ティーチングアシスタントの略。大学などにおいて、担当教員の指示のもと、学生が授業の補助や運用支援を行うこと、あるいはそれを行っている学生のこと。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

問い合わせ先

教育革新センター(オンライン教育開発室) 森田

TEL: 03-5734-2993

Email: citl@jim.titech.ac.jp

「生命とは何か? ―生命科学と複雑系科学―」開催報告

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昨年に続き、高校生を対象にした公開講座「生命とは何か? ―生命科学と複雑系科学―」が開催されました。この講座は東工大基金を活用した日本再生プロジェクト「ものつくり人材のすそ野拡大支援」事業の支援を受けて行われました。

公開講座用ポスター

公開講座用ポスター

近年の生命科学は生命現象を要素に分解して理解しようとする要素還元型の研究手法によって、生命現象の構成要素(DNA、タンパク質、細胞など)の構造と機能が明らかにされてきていますが、未だに“生命とは何か?”に対する明確な答えは得られていません。そこで、将来の生命科学の発展には、これらの構成要素の関連性、協調性、統合性など生命現象全体の振る舞いや創発性に焦点を置く「複雑系科学」の研究手法が必要不可欠になると考えられています。今回の公開講座では、この複雑系科学の例としてBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応をモデルとして使いました。

BZ反応とは化学者ベロウーソフが1951年に発見した化学現象です。ベロウーソフは単純な「化学反応が複雑なリズムやパターンを作り出す」ということを世界で初めて報告しましたが、この奇妙な現象は当時の学問の世界では認められませんでした。しかし、後に、化学者ジャボチンスキーがベロウーソフの追試実験を行い、化学反応のリズムがより明瞭な形で現れる系を確立し、学会で認められ、2人の名前をとって、 Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応と呼ばれるようになりました。現在では非線形化学振動反応(複雑系のモデル反応の一つ)として有名です。

公開講座では、この化学反応系の時間的秩序※1、空間的なパターンダイナミックス※2、さらにはパターンの創発現象※3に着目して、注意深く観察することにより、化学反応と生命系の振る舞いとの類似性を理解し、考えることを目的としました。BZ反応においてのマロン酸は生命系における食物、臭素酸カリウムは酸素、フェロインは酵素に対比できます。つまり、BZ反応は生命系の代謝回路のモデルでもあり、このような観点から、高校生が生命現象を複雑系科学という新たな切り口で見つめるためにコンピュータ画像解析も取り入れました。

BZ反応動画の画像解析
BZ反応動画の画像解析

まず、濱口幸久名誉教授からの「生物である私たちの体は一個の受精卵が、46回の細胞分裂を繰り返すことで生じる60兆個の細胞からできていて、この細胞分裂のたびに『サイクリン』というタンパク質の量が増減するリズムが認められます。このようなリズムを今回観察するBZ反応でも観ることができます」という話から始まりました。

実際の実験は、BZ反応のための試薬を混ぜると反応が開始します。そして、パターンが形成され、色調が変化する様子をデジタルカメラに録画しました。この動画をコンピュータに取り込み、ImageJというソフトで画像解析を行いました。一定域の画像を時間経過で並べて一定域の時間的連続変化が判別できる画像(キモグラフ)を作成しました。このようなキモグラフからBZ反応の時間的な色調変化、パターン変化、反応速度などを理解することができます。

BZ反応中のシャーレ

BZ反応中のシャーレ

BZ反応のキモグラフ

BZ反応のキモグラフ

溶液中にツバメ型のろ紙を入れた時のBZ反応
溶液中にツバメ型のろ紙を入れた時のBZ反応

終了後、高校生から「興味深い実験と講義を体験し、反応という初めて学ぶ化学現象を通して、生物学だけでなく化学、そして物理学にまで幅広い知識を得ることができ、次回も参加したい。ありがとうございました。」といったメールが寄せられました。参加者は複雑系科学の現象から生命系を考えるきっかけを得て、大変意義のある公開講座になったようです。

※1
時間的秩序 : 規則正しく反応溶液の色調が変化すること。生命系における拍動、呼吸、サーカディアンリズムなど
※2
パターンダイナミックス : 反応溶液の色調変化によるパターンの時間的変化、リズムの出現、空間的な秩序など。発生、形態形成、成長など
※3
創発現象 : 部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れること。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

問い合わせ先

佐藤節子

Email : bzreaction@kisoseibutsu.bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2700

5月の学内イベント情報

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2015年5月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

2015年5月の学内イベント情報

光学的手法による異方的なキャリア輸送の可視化

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科電子物理工学専攻の間中孝彰准教授と岩本光正教授は、有機単結晶中における異方的なキャリア輸送を直接可視化する手法を開発した。

研究の背景

キャリア移動度は有機デバイスの特性を決定する重要な指標であり、高移動度材料の開発や作製プロセスの研究が盛んに行われている。単結晶は高移動度を実現する上で有効ではあるが、キャリア輸送が単結晶特有の異方性[用語1]に支配されたものとなるため、実際にデバイスに用いるにあたって移動度異方性を評価する必要がある。

一般に、移動度の異方性は電気特性から評価するが、電極を多数用意する必要があり分解能に制限がある、接触抵抗などの影響を除去する必要があるといった課題があった。

研究成果

移動度を電気特性から評価する一般的な手法の課題に対して、間中准教授らは時間分解顕微光第2次高調波発生法(TRM-SHG)[用語2]と円形電極を用いて、有機半導体薄膜における移動度異方性を直接評価した。第2次高調波発生(SHG)信号は反転対称中心を持つ材料からは発生しないが、電界が材料に印加されることで発生するようになる。

材料に注入された電荷は、それ自身が電界の源となるため、電界の時間的変化をTRM-SHG法によって捉えることで、キャリア輸送の様子を直接観測することが可能となる。また、電極形状を工夫し、円形の単一電極を用いることで、電極の周囲全方向に同時にキャリアを注入・輸送させることができるため、キャリア輸送の異方性を直接可視化することができる。

Dip-coating法[用語3]によって得られたTIPSペンタセン薄膜[用語4]において、円形電極を用いて輸送特性を評価した結果を一例として図に示す。方向によってキャリアの進行距離が異なっており、輸送の異方性を画像として捉えることをできた。この結果からは移動度の最大値が2.1 cm2/Vs[用語5]、最小値が0.55 cm2/Vs、移動度異方性が約3.8程度と見積もられた。

今後の展開

TRM-SHGと円形電極による手法を用いることで、単結晶材料や配向した高分子半導体材料において、異方性を含めた移動度の評価が可能となる。特に、接触抵抗などがある場合においても、その影響を考慮した解析ができ、新しい材料開発への貢献が期待される。一方で、この手法の特徴は材料中の電界を直接評価できることにある。そのため、移動度だけでなく、デバイス中に存在するトラップなどの情報に関しても得ることができる。また、有機デバイスのみならず、無機の半導体デバイスの評価法としても有効である。

(a)TIPSペンタセンの単結晶グレインの偏光顕微鏡像(矢印の方向は消光位を示し、中心に電極が確認できる)。(b)~(d)TIPSペンタセンで観測されるキャリア輸送の異方性。時間経過にともなって、キャリアが電極から周辺に広がっていく様子を確認できる。

(a)TIPSペンタセンの単結晶グレインの偏光顕微鏡像(矢印の方向は消光位を示し、中心に電極が確認できる)。
(b)~(d)TIPSペンタセンで観測されるキャリア輸送の異方性。時間経過にともなって、キャリアが電極から周辺に広がっていく様子を確認できる。

用語説明

[用語1] 異方性 : 物体の物理的性質が方向によって異なること。移動度異方性はキャリアの移動する方向によって移動度が異なること。

[用語2] 時間分解顕微光第2次高調波発生法(TRM-SHG) : SHGとは光第2次高調波発生のことで、材料に光を入射すると、入射した光の波長の半分を持つ光が新たに発生する現象のこと。対称性の高い材料においては、このSHG光が材料にかかっている電界の2乗に比例するため、電界を計測する手法として用いることができる。このSHG測定を非常に速い時間スケールで行い、電荷の動きを捉える。

[用語3] Dip-coating : 有機半導体溶液に基板を浸漬し、それを引き上げることによって薄膜を形成する手法。

[用語4] TIPSペンタセン薄膜 : 6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン。有機FETにおいて広く用いられる材料であるペンタセンを、溶液プロセスにより薄膜形成できるようにした材料。

[用語5] cm2/Vs : キャリア移動度の単位(cm=センチメートル、V=ボルト、s=秒)。単位電界(V/cm)をかけた時のキャリアの速さ(cm/s)を表す。

論文情報

掲載誌 :
Applied Physics Express
論文タイトル :
Direct Observation of Anisotropic Carrier Transport in Organic Semiconductor by Time-Resolved Microscopic Second-Harmonic Imaging
著者 :
Takaaki Manaka, Kohei Matsubara, Kentaro Abe, and Mitsumasa Iwamoto
所属 :
Department of Physical Electronics, Tokyo Institute of Technology
DOI :

問い合わせ先

大学院理工学研究科 電子物理工学専攻
准教授 間中孝彰
Email : manaka@ome.pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2673 / Fax : 03-5734-2673

「東工大留学フェア2015」開催報告

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4月15日にすずかけ台キャンパス、4月22日に大岡山キャンパスで東工大留学フェアが開催されました。留学フェアは、東工大の多彩な国際交流プログラムや、留学経験者の生の声を紹介し、学生に留学のイメージをふくらませてもらうためのイベントです。外国政府を含む多くの学外団体や、留学経験者が一斉に集まり、留学を考えている学生のための一大イベントとなっています。

4月15日のすずかけ台キャンパスでは、60名以上の学生が参加し、先輩の体験談や各種留学プログラムの説明に熱心に耳を傾けていました。

すずかけホールでの全体説明では、大学院総合理工学研究科の末包哲也教授の挨拶、留学生交流課による各種留学プログラムの説明の後、カリフォルニア大学バークレー校に留学した磯野文香さん(大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻 博士1年)と、Tokyo Tech-AYSEAS(東工大・アジア理工系学生派遣交流プログラム)に参加した今井暁久さん(大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻 修士1年)が留学体験談を発表しました。発表の後に設置された個別相談ブースでは、参加者がプログラム担当者や留学経験者と直接話す機会を設けました。参加者からは「留学に関する考えが固まりました」「留学してみたい国が増えました」との声があり、留学をより具体的に考えるきっかけとなったようです。また、キャリアアドバイザーに留学と就職活動の兼ね合いについて相談できたことで、留学に対する不安が解消されたという感想もありました。

学生による留学体験談の発表

学生による留学体験談の発表

個別相談ブース

個別相談ブース

4月22日の大岡山キャンパスでは、学内団体に加え、外国政府等の学外団体の協力も得て開催され、約350名の学生が参加しました。

くらまえホールの全体説明では、大学院理工学研究科の奥山信一教授の挨拶、留学生交流課による各種留学プログラムの説明の後、メルボルン大学に留学した瀧戸健太郎さん(大学院理工学研究科土木工学専攻 修士2年)と、スイス連邦工科大学チューリッヒ校に留学した服部雅之さん(大学院理工学研究科建築学専攻 修士2年)が留学体験談を発表しました。また、英語運用能力試験に関する説明会も開催され、国際教育交換協議会の方からTOEFL(Test of English as a Foreign Language)、日本英語検定協会の方からIELTS(International English Language Testing System)の受験に関する説明がありました。

個別相談では、学外団体、外国語学習相談室、留学経験者、プログラム担当者等のブースを設置しました。海外派遣を含むプログラムのひとつ「グローバル理工人育成コース」のブースでは、個別相談と報告会を同時に開催し、見学者からは「グローバル人材になりたい!」といった感想もありました。各大使館ブースでは、留学を予定している学生が、ビザの取得手続きや留学後の現地での生活についてアドバイスを受けることもでき、貴重な機会になったようです。

職員による留学プログラムの説明

職員による留学プログラムの説明

プログラムごとに相談ブースが設置されました

プログラムごとに相談ブースが設置されました

終了時間を過ぎてもブースの人だかりは収まらず、学生達の留学への関心の高さがうかがえました。今後も東工大のサポートを受けて、多くの学生が世界に目を向けてくれることを期待しています。

留学に関する質問や相談は、随時留学生交流課(南6号館3階)で受け付けています。

問い合わせ先

国際部留学生交流課派遣担当

Email : hakenryugaku@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7645

長時間咀嚼すると食後のエネルギー消費が増える

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概要

東京工業大学大学院社会理工学研究科の林直亨(はやし・なおゆき)教授らは、急いで食べる時に比べて、ゆっくり食べる方が食後のエネルギー消費量(食事誘発性体熱産生[用語1])が増加することを明らかにした。早食いと遅食いの消費量は食後のガム咀嚼(そしゃく)によっても埋められない程度の差であることも分かった。

合計621kcal(キロカロリー)の食事をできるだけ急いで食べると、その後、3時間の食事誘発性体熱産生は15kcalだった。一方、食塊がなくなるまでよく噛(か)んで食べた時には30kcalと有意に高い値だった。この結果は林教授らの先行研究(Obesity誌, 2014)を支持するものであった。食後15分間ガムを噛むと、6~8kcalのエネルギー消費量の増加が認められたが、食事の速さの違いに匹敵するほどの影響には至らなかった。

この成果は、ゆっくりよく噛んで食べることが良い習慣であることの裏づけとして、また咀嚼を基本にした減量手段の開発に役立つものとして期待される。

この成果は第92回日本生理学会で発表した。

研究の背景

早食いが過食をもたらし、それが原因で体重が増加する可能性が示唆されている。一定量の食事を摂取した場合にも、食べる速さが体型に何らかの影響を与えるかどうかについては明らかではない。

林教授らはこれまでに300kcalの試験食をゆっくり摂取すると、早く摂取するよりも食事誘発性体熱産生が増加することを示した。今回の研究では、通常の食事でも同様のことが起こるのかを確認し、また食後のガム咀嚼が、食事の早さを遅くすることに匹敵する効果があるのかについて検討した。

研究成果

被験者12名に安静状態での測定後、スパゲティ、ヨーグルト、オレンジジュース(合計621kcal)を与えた。食品をできるだけ急いで食べる試行と、できるだけゆっくり食べる試行とを行った。加えて、食事終了後に15分間ガムを噛む試行と、噛まない試行とを行った。安静時から摂食、摂食後3時間までの酸素摂取量を計測し、食事誘発性体熱産生量を算出した。

その結果、食後3時間のエネルギー消費量は、急いで食べた試行の場合平均15kcalだった一方、ゆっくり食べた時には30kcalと有意に高い値を示した。ガムを噛むことによってこれらの値は平均6~8kcal増加した。

急いで食べるよりも、よく噛んでゆっくり食べると、食後のエネルギー消費量が増えることが確認された。ガムを噛むことによってこの差は多少埋まることが示されたが、15分間のガム咀嚼では、食べる早さの違いを埋める程の効果には至らなかった。

早く食べた際(左)と遅く食べた際(右)の、食後3時間の体重1kg当りの食事誘発性体熱産生の個人値、平均値および標準誤差を示した。食べる早さは有意に食事誘発性体熱産生に影響した。ガム咀嚼も有意な効果を示したものの、食べる早さの影響には匹敵するものではなかった。

早く食べた際(左)と遅く食べた際(右)の、食後3時間の体重1kg当りの食事誘発性体熱産生の個人値、平均値および標準誤差を示した。食べる早さは有意に食事誘発性体熱産生に影響した。ガム咀嚼も有意な効果を示したものの、食べる早さの影響には匹敵するものではなかった。

今後の展開

ゆっくりよく噛んで食べることが良い習慣であることの裏づけとして、また咀嚼を基本にした減量手段の開発に役立つものとして期待される。今後は、咀嚼時間と咀嚼回数のどちらが食事誘発性体熱産生に影響を及ぼすのかについて検討する予定である。

用語説明

[用語1] 食事誘発性体熱産生 : 摂食後に起こる栄養素の消化・吸収によって生じる代謝に伴うエネルギー消費量の増加である。基礎代謝量の1割程度を占める。

論文情報

掲載誌 :
The Journal of Physiological Science, 65 (1): S240 (2015)
論文タイトル :
Effect of postprandial chewing gum on diet-induced thermogenesis.
著者 :
HAMADA Yuka, HAYASHI Naoyuki

問い合わせ先

大学院社会理工学研究科 人間行動システム専攻
教授 林直亨
Email : naohayashi@hum.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3434 / Fax : 03-5734-3434

東工大レクチャーシアター竣工

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東工大では現在、2016年4月スタートに向けて、教育システムの抜本的な改革を進めています。そのための新しい教育環境整備の一貫として、大岡山キャンパス西5号館3階W531講義室を「東工大レクチャーシアター」に改修し、4月3日にお披露目会を開催しました。

レクチャーシアター外観

「東工大レクチャーシアター」では、本学最先端研究者並びに国内外から最先端の研究者やノーベル賞級の発見・発明者を講師として招き、主に初年次の学生を対象に、レクチャー講義(創造的討論や実験の実演を伴った講義)を開講します。

学生が、科学・技術の最先端を体感し、奥深さ、楽しさを再発見することにより、理工系の専門を学ぶ動機を得て、夢を膨らませるための環境です。

オペレーター室
照明による空間演出

設計コンセプト

最先端研究の実験講義を実現するため、従来の講義室とはまったく異なるレクチャーシアターを整備するという方針のもと、本改修設計においては、魅せられる講義、臨場感のある演出が実現できるよう、下記の項目を考慮し、計画を行いました。

空間

空間

既存の限られた構造空間の中で、階段座席の傾斜を急勾配にして、演台を取り囲む配置にすることにより、どの席へも臨場感の伝わる平面及び断面計画としました。

演台

演台

講師が講義・実験を行う場所は、段差の無いフラットな床を広くとり、スクリーン2枚、電子黒板1台、を配備し、前面の壁は全て黒板塗装を施して、多様なプレゼンテーションに対応できるように工夫しました。

座席

座席

固定座席は劇場仕様のシートを用いて、快適な座り心地を追及しながらも必要座席数を確保し、シンプルで自由なスタイルで聴講ができると共に、講義ノートが取れる収納型机を各座席に配備しました。

オペレーター室

レクチャーシアター内の照明や音響設備等の調整を、講義を邪魔せずに一貫して行えるようにオペレーター室を設けました。

照明による空間演出

照明パターンを多数用意し、多様な講義・実験スタイルに合わせて最適な照明演出ができるように工夫しました。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革


移動通信研究グループ オープンハウス2015 開催報告

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4月23日、大岡山キャンパス西9号館で、移動通信研究グループオープンハウス2015を開催しました。本イベントは、移動通信に関連する5研究室(高田研究室outer阪口研究室outer府川研究室outer安藤・広川研究室outer松澤・岡田研究室outer)からなる移動通信研究グループの主催により、グループの研究活動を広く社会に紹介するとともに、学外の企業や研究機関との連携を深めるという主旨の下、2005年から毎年4月に開催されています。本年は関係者を含め120名以上が参加し、「Green evolution in 5G wireless communications」と題して、昨年に引き続き5G(第5世代移動通信システム)※1について、将来求められるGreenな無線通信※2とは何なのか、議論が行われました。

デモ展示の様子
デモ展示の様子

オープンハウスは、各研究室の研究室紹介、ポスターでの研究発表、招待講演とパネルディスカッションからなります。27件のポスター発表・デモでは多くの参加者が興味を持ったようで、実験機器の構成やプログラム、製作コスト等についての質問が多くありました。

質問に対して受け答えする学生

質問に対して受け答えする学生

ポスター展示会場の様子

ポスター展示会場の様子

講演中の岡田准教授

講演中の岡田准教授

招待講演では、本学から岡田健一准教授、エリクソン・ジャパンから藤岡雅宣氏、EnOceanアライアンスから板垣一美氏、そして富士通研究所から福田英輔氏が講演し、チップやデバイス※3、IoT※4、ネットワークといった様々な視点から、5Gに求められるGreenな無線通信について、現在の取り組みや最新の技術動向などを通して紹介がありました。パネルディスカッションでは、デバイスとネットワークの省電力化を比較した場合にどちらがより効果的なのか、またGreen 5Gネットワークの将来像について、ここでしか聞けないオープンなディスカッションが展開され、参加者にも好評だったようです。

2016年も、オープンハウス2016が開催される予定です。

※1
5G(第5世代移動通信システム) : 現在用いられている第3.9世代システム(LTE、Long Term Evolution)や、第4世代システム(LTE Advanced)に続く、次世代の移動通信システム。
※2
Greenな無線通信 : 省電力な無線通信のこと。
※3
デバイス : ここでは無線通信機器全般を指す。
※4
IoT : Internet of Things(モノのインターネット)の略称。パソコンや携帯電話などの、従来インターネットに接続していた端末以外の様々なモノがインターネットに接続する仕組みのこと。

問い合わせ先

オープンハウス事務局

Email : committee_oh@mcrg.ee.titech.ac.jp

アーヘン工科大学長一行が三島学長を表敬訪問

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3月30日、ドイツのアーヘン工科大学のエルンスト・シュマハテンベルク学長一行が三島良直学長を表敬訪問しました。懇談には、丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)、香川利春教授(メカノマイクロ工学専攻)も同席しました。

関係者での記念撮影
関係者での記念撮影

本学とアーヘン工科大学は2007年の全学協定締結以来、研究、学生の活発な交流を行ってきました。また、シュマハテンベルク学長が議長を務めるIDEAリーグ※1と、本学が事務局を務めているASPIREリーグ※2では、各リーグのサマースクール等を通して学生交流を行っています。

懇談では、三島学長とシュマハテンベルク学長がそれぞれの大学の状況について説明した後、ヨーロッパ、アジアを代表する理工系大学として、今後どのように両学の連携を強化すべきか意見交換を行いました。

シュマハテンベルク学長と三島学長
シュマハテンベルク学長と三島学長

懇談後、一行はくらまえホールで開催された「東工大―アーヘン工科大学国際産学連携共同シンポジウム」に出席し、シュマハテンベルク学長が、「アーヘン大学の産学連携の戦略」と題した講演を行い、同学工作機械研究所のフリッツ・クロッケ教授が「ITテクノロジーとエンジニアリング・サイエンス融合による未来の生産の強化」をテーマに約200人の聴衆の前で講演を行いました。

講演後、一行は今後の交流について本学関係者と意見交換を行い、学術国際情報センター(GSIC)を訪問しました。同センターでは、遠藤敏夫准教授(先端研究部門)からスーパーコンピュータ「TSUBAME2.5」の概要説明を受け、施設を見学しました。

※1
IDEAリーグ : ヨーロッパの理工系トップ大学によって構成される連携体制。アーヘン工科大学(ドイツ)、デルフト工科大学(オランダ)、スイス連邦工科大学チューリヒ校、シャルマーズ工科大学(スウェーデン)で構成されている。
※2
ASPIREリーグ : アジアの理工系トップ大学によって構成される連携体制。東京工業大学、香港科技大学、韓国科学技術院、南洋理工大学(シンガポール)、清華大学(中国)で構成されている。

DNA配列の相同性検索を200倍高速化―類似配列のクラスタリングで実現、メタゲノム解析も容易に―

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概要

東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻の秋山泰教授らは、ゲノム解析[用語1]で広く使われる配列相同性検索[用語2]を高速に実行する新しいアルゴリズム(問題を解く手順)を開発し、「GHOSTZ」ソフトウェアとして公開した。これは新たに決定した遺伝子等のDNA配列を、すでに決定されている配列のデータベースと比較して類似の配列を見つけ出すソフトウェア。土壌やヒト体内の微生物解析の大規模データで実測したところ、これまで一般的に使われている「BLASTX」ソフトウェア[用語3]に比べて、185~261倍高速に検索できることがわかった。

データベース内の配列をあらかじめ類似配列ごとにクラスタリングして(束ねて)おくことで高感度の比較を保ったままで高速化を実現した。膨大なデータ処理が必要なメタゲノム解析[用語4]も現実的な時間内でこなせる。

研究の背景

配列相同性検索は、ゲノム解析などの基盤となる重要な情報処理である。新しいDNA配列読み取り技術の登場により配列データは日々増加しており、データベースの規模は拡大の一途をたどっている。このため、配列相同性検索に必要な計算負荷は大幅に増加している。

なかでも、土壌・海洋・ヒト体内などの諸環境中に生息する多様な微生物を一網打尽に調査するメタゲノム解析は、得られるデータ量の多さもさることながら、DNA配列が多数の生物種の混合であり、データベース内に近縁の参照配列が存在しない場合が多いことなどから、感度の高い相同性検索を実施する必要があり、計算負荷が特に高くなる。必要な感度を確保できる既存のBLASTXソフトウェアを利用すると、膨大なデータの処理を現実的な時間内では実行できないという点が大きな問題となっていた。

研究成果

秋山教授らが開発したアルゴリズムは、まず元データのDNA塩基配列を、考え得る何通りかのタンパク質アミノ酸配列に翻訳した上で、既知のアミノ酸配列のデータベースと高感度な比較を行う。このとき、データベース内に出現する部分文字列(既知タンパク質のアミノ酸配列の一部)をあらかじめ類似配列ごとにクラスタリングしておくことで比較処理を高速化した。検索対象となる配列データから、文字列マッチングの核となる短い部分文字列を探索する過程(シード探索)において、初めにデータベース内に作ったクラスターごとの代表配列とだけ比較を行うことにより、全体の比較回数を大幅に減らすことができる。同時に、その後に実施する文字列伸張と呼ばれる計算負荷の大きなステップに持ち込む比較相手の候補を正確に選び出すことにも成功した。

このとき、部分文字列間の距離に関して成立する三角不等式[用語5]に着目したことで、初めは各クラスターの代表配列とだけ比較を行っても、各クラスター内の他のメンバー配列との距離の下限も正確に推定できるために、他の配列との類似性をさらに計算すべきか否かが瞬時に判断できて、見逃しが生じない。これを実現するために必要なデータベース側の前処理も簡単であり、感度を犠牲にせずに、検索速度を向上できた。

この手法をGHOSTZソフトウェアとして効率的に実装し、コンピュータープログラムのソースコードを公開した。土壌細菌や、ヒト口腔内細菌など、メタゲノム解析の複数の実データで測定したところ、GHOSTZは、RAPSearch[用語6]の2.2~2.8倍高速であり、BLASTXの185~261倍高速であった。

今後の展開

GHOSTZは、主にメタゲノム解析において、遺伝子の機能に関する注釈付けや、生物の分類群に関する注釈付けを支援する目的で設計されている。感度の高い相同性検索が必要となるようなメタゲノム研究において、広く用いられることが期待される。さらに、プロテオーム解析[用語7]などの他の研究領域でも利用することが可能である。

部分文字列間の距離に関する三角不等式を用いた類似度フィルタリング

図. 部分文字列間の距離に関する三角不等式を用いた類似度フィルタリング

表.
各手法を用いてSRR407548 配列をKEGG GENES データベースと比較した時の所要時間(秒)。加速率はBLASTXを1スレッドで実行した場合との相対比。
各手法を用いてSRR407548 配列をKEGG GENES データベースと比較した時の所要時間(秒)。加速率はBLASTXを1スレッドで実行した場合との相対比。

用語説明

[用語1] ゲノム解析 : ある生物の遺伝情報(DNAの塩基配列)の全体構成と機能を解明する研究。

[用語2] 配列相同性検索 : DNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列を調べるときに、すでに配列決定されデータベースに登録されている配列と比較照合して、類似の配列を見つけ出す処理。

[用語3] BLASTXソフトウェア : 配列相同性検索のためのコンピューターソフトウェア。現在、広く使われているソフトウェアである。米国立衛生研究所(NIH)の研究者が製作。

[用語4] メタゲノム解析 : 土壌・海洋・ヒト体内などの環境中に生息する多様な微生物群集について、それぞれの微生物を単離培養せずに、全体としてのゲノム情報を調べる研究。

[用語5] 三角不等式 : A-B間の距離とB-C間の距離の和は、A-C間の距離より大きくなるといった性質を表す数式。本研究の場合は、配列間の編集距離という概念に基づいて式を立てた。

[用語6] RAPSearch : タンパク質のアミノ酸配列に対する配列相同性検索の高速化に特化したソフトウェア。米インディアナ大学の研究者が製作。

[用語7] プロテオーム解析 : ある系(生物種や細胞など)に存在しているタンパク質の全体構成と機能を解明する研究。

論文情報

掲載誌 :
Bioinformatics 31(8), 1183-1190 (2015)
論文タイトル :
Faster sequence homology searches by clustering subsequences
著者 :
鈴木脩司、角田将典、石田貴士、秋山泰
所属 :
東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻; 東京工業大学情報生命博士教育院
DOI :

問い合わせ先

大学院情報理工学研究科 計算工学専攻
教授 秋山泰
Email : akiyama@cs.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3645

安藤真 理事・副学長(研究担当) 就任挨拶

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2015年4月1日付で就任した、安藤真 理事・副学長(研究担当)からの挨拶をご紹介します。

安藤真 理事・副学長(研究担当)

安藤真

4月1日付けで、理事・副学長(研究担当)に就任しました安藤です。

私は、1979年に電気電子工学専攻の博士課程を修了し当時の日本電信電話公社へ就職しました。民営化の動きを4年ほど経験し東京工業大学へ戻り現在へ至っています。昨年11月に学部卒業40周年の集いがあり、時の経つ速さに驚くとともに改めて母校への想いを同窓生と共有しました。40年と言っても大岡山に偏った経験しかありませんが、専門家が認める我々東工大人の底力を、もっと広く、社会や世界に示すことができないかと常に願ってきた一人です。大変な変革期に、思いもよらない大役を引き継ぎましたが、本学の「研究」活動の発展のために、微力ではありますが全力を尽くす所存でありますので、よろしくお願い申し上げます。

折しも、我が国では財政難を背景に、大学改革が急速に進行中です。法人化以来ともいうべき、今回の大学改革の流れは「社会に求められる大学」を重視したもので、厳しい状況が続く日本経済において、さらに震災という試練を経験し、国費に拠る大学にも相応の社会貢献を問うものです。大学は、人材育成や学理の追求という古来の目標に加え、研究成果の社会実装や、教育研究活動の向上を、線表に従った定量的な指標とともに目標に掲げることを求められます。「大学のあるべき姿」と「社会が求める大学」とを調和する理想の姿については、普遍の定義として定まっているとは思えません。当事者が現況の不完全さを謙虚に認め、不断の向上心を持って改革に取り組む努力の中でこそ、理想の姿が見えてくると、自己流ではありますが、解釈しています。

この状況にあって本学は、世界最高の理工系総合大学を標榜し、定量的な指針として「世界トップ10に入る大学」を掲げ平成の「教育改革」を進めています。これに遅れることなく「研究改革」を遂行せねばなりません。近年の社会的問題はいずれも科学技術の知恵なしに解決できないものばかりです。科学技術への期待は東京工業大学への期待と重なり、真に社会や産業界から頼られる大学への改革の成否は、本学の復権どころか、日本の浮沈そのものとも言えるものでしょう。

冒頭に述べましたが、一般社会や海外から東京工業大学へ与えられる評価・評判が、必ずしも個々の研究者、教員の力量を反映したものではないことは、改革の中心課題と認識すべき点です。社会の複雑で大きな課題に対応し、分野横断の学内連携チームを組織し、産業界、企業との連携も得て、より具体的で総合的な貢献をすることが、大学の評判を上げるには有効です。平成の「研究改革」を大転機と捉え、評価されたい対象を、学協会から社会や産業界へ拡げて行く方策に、多くの研究者のご理解を頂けたらと考えています。以上は大学間の競争を意識した改革について述べたものですが、ちなみに国は、大学や企業の組織を超えた協働や人材交流、共同利用施設としての研究所の支援も詠っています。この観点はすでに欧州では定着し、EUの旗の下国境も越えた形で技術課題毎の協働チームを募り、研究資金の獲得に、大学間ではなく、技術分野間での競争原理が導入されています。人事の流動性に劣る日本にこそ適した、競争的資金の導入策とも言えます。これらも考慮に入れ、研究体制の改革を急がねばなりません。

就任のご挨拶が、山積する課題を列挙する形となりました。皆様のご協力、ご支援を得て少しでも研究改革が進むことを夢見て、筆を置きます。

遺伝子大量発現による細胞リプログラミングの原理を解明

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概要

東京工業大学大学院総合理工学研究科地球生命研究所の木賀大介准教授らは、理化学研究所と共同で、数理モデルと培養実験を組み合わせる合成生物学の研究により、遺伝子大量発現[用語1]による細胞リプログラミング(初期化)の原理を明らかにした。

研究の背景

遺伝子からのタンパク質の生産を大量に行わせることが、iPS細胞の作成過程など、細胞の性質を転換させるリプログラミングの種々の研究と活用での、再現性の高い重要な実験操作になっている。しかし、京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授が発見したiPS細胞の作成における4遺伝子の役割など、遺伝子の大量発現がリプログラミングの過程において、どのようなメカニズムを誘起しているかということについては明らかになっていなかった。

合成生物学は、伝統的な生物学が「観る」ことに立脚していたことに対し、「つくる」ことを研究手段とする生物学の新たな領域である。50年以上の歴史を持つ分子生物学においても、生物の構成要素を分離して「観る」ことが続けられてきたが、生物の複雑さに起因して、他分野の科学に多くみられる、数理モデルに立脚した理解が進みにくいという状況があった。

そこで、合成生物学の一部では、単純化された系を生物の中につくり、そのナマものの挙動と、モデルの挙動とを比較することで、生物システムの根本的な理解を目指している。2000年に発表された、2つの遺伝子が、お互いの生産能力を阻害する、遺伝子による相互抑制回路「トグルスイッチ」[用語2]の研究や、これに細胞間通信を組み合わせるように拡張して「細胞状態の地形」を描いた2011年の木賀准教授らの研究は、この路線によって行われている。

研究成果

木賀准教授らは、2種類の遺伝子について、生産の相互抑制回路と、この抑制制御とは別途に研究者が指定する任意の速度で生産を行う「大量発現回路」とを組み合わせて、上位階層の回路を作成した。その結果、この生産速度の研究者による設定に応じて、(1)上位階層の回路の安定性を単安定(図で谷が1つの状態)と相安定(図で谷が2つの状態)の間で切り替えられること、(2)単安定となる状態の位置も設定できること―を理論的に示した。そして、この予測を培養実験によって、設計された生物の挙動として示すことができた。

実験操作の開始前に、2つある安定状態の片方の内部状態を持つ細胞のみからなる集団について、遺伝子の大量発現による単安定性への変化により、その内部状態が、基底の地形での「山」の位置へと遷移する。その後、大量発現の解除によって基底の地形へと戻ることで、細胞たちは「山」の部分にとどまることができない。このため、引き続く培養によって、1種類の内部状態(左図では緑)であった細胞群から、内部状態が異なる2種類の細胞群(左図では赤、緑)へと多様化する。
図.
実験操作の開始前に、2つある安定状態の片方の内部状態を持つ細胞のみからなる集団について、遺伝子の大量発現による単安定性への変化により、その内部状態が、基底の地形での「山」の位置へと遷移する。その後、大量発現の解除によって基底の地形へと戻ることで、細胞たちは「山」の部分にとどまることができない。このため、引き続く培養によって、1種類の内部状態(左図では緑)であった細胞群から、内部状態が異なる2種類の細胞群(左図では赤、緑)へと多様化する。

本研究では、遺伝子からの生産速度の調整と解除を続けて行う実験操作によって、状態Aの細胞集団から状態AとBの細胞集団を、予測通りに作り出すことができた。最初の状況では、細胞集団が二つの谷のうち片方の谷(状態A)のみに存在する。遺伝子の大量発現によって、谷が一つとなった状態での谷の位置を、基底の地形である相安定状態での「山」の部分に持ってくることを想定した。この位置に細胞の内部状態が引き寄せられる結果、谷の数が二つに戻った際には細胞の集団が尾根をまたぐように位置する。その結果、続く培養によって、それぞれの谷(状態AとBに)細胞が分配される状況を作り出した。その逆に、状態Bの細胞集団から状態AとBの細胞集団を作り出せることも培養実験によって示した。これは、細胞のリプログラミング操作と、続く培養による細胞の自律的な分化に相当する。

続いて、拡張した数理的な解析から、この生産速度の調整による単安定性の誘導に基づくリプログラミングが、種々の制御系から成り立っている天然の遺伝子ネットワークにも適用できることを示した。

今後の展開

これまでの細胞リプログラミングの過程を今回の研究の観点から改めて検証することで、より効率の良い幹細胞の作成手順の確立につながる。また、微生物を用いた有用物質の生産の高度化が期待できる。

用語説明

[用語1] 遺伝子大量発現 : 生物学では、遺伝子からのタンパク質の生産を、「発現」と呼ぶ。天然の状態よりも極めて速い生産速度でタンパク質を生産することは、特に、遺伝子の大量発現と呼ばれる。

[用語2] 遺伝子相互抑制回路「トグルスイッチ」 : 遺伝子による相互抑制回路は、分子の各種性質を総合することで、個々の遺伝子産物の存在量によって示される内部状態として、2つの安定状態を持つ場合と、一つしか安定状態がない場合とに分かれることが、理論と実験によって示されている。

論文情報

掲載誌 :
ACS Synthetic Biology 3(9):638-644 (2014).
論文タイトル :
General applicability of synthetic gene-overexpression for cell-type ratio control via reprogramming.
著者 :
Kana Ishimatsu, Takashi Hata, Atsushi Mochizuki, Ryoji Sekine, Masayuki Yamamura, and Daisuke Kiga
所属 :
Department of Computational Intelligence and Systems Science, Tokyo Institute of Technology, Earth-Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology,. RIKEN Advanced Science Institute
DOI :

問い合わせ先

大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻
准教授 木賀大介
Email : kiga.d.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5213 / Fax : 045-924-5213

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