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Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
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三島学長がシンガポールを訪問

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2月11日~12日、三島学長、水本哲弥副学長(教育運営担当)らがシンガポールを訪問しました。

一行はまず、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)を訪問しました。シンガポール工科デザイン大学は、米国のマサチューセッツ工科大学の協力によって2009年に創立された新しい大学です。知識の詰め込みではなく、実社会をより良いものに変革できるリーダーを育てることを主眼においた新しい教育方法をとっています。三島学長とシンガポール工科デザイン大学の張道昌副学長はそれぞれの大学の教育システムについて紹介し、今後目指すべき教育と両大学の交流などについて意見交換を行いました。張副学長は、本学電気・電子工学科の卒業生です。

SUTD副学長と三島学長

SUTD副学長と三島学長

SUTD研究室見学

SUTD研究室見学

翌日、三島学長一行は、本学の全学協定校である南洋理工大学を訪問し、バーティル・アンダーソン学長、ラム・キンヨン副学長(研究担当)らと面談しました。ラム副学長には1月27日に本学で開催したスーパーグローバル大学創成支援事業のキックオフ・シンポジウムで、南洋理工大学における組織運営改革について講演いただくなど、 両大学は、ASPIRE League、世界展開力強化事業等を通じた研究・学生交流にとどまらず、幅広い交流を行っています。 両学長は、今後、合同ワークショップの開催等を通じてさらに交流を深めることで合意しました。

南洋理工大学長と三島学長
南洋理工大学長と三島学長

シンガポール滞在中、三島学長は Nikkei Asian Reviewの取材を受け、本学の教育改革や国際化について語りました。


タイ王国シリントーン王女殿下が東工大を訪問

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4月21日、タイ王国シリントーン王女殿下とタイ石油公社(以下、PTT)の代表者を含む視察団ご一行が東京工業大学を訪問されました。

科学技術分野に大変高い関心をお持ちの、シリントーン王女殿下による本学へのご訪問は2006年に続き2回目です。本学は1985年のチュラロンコン大学との全学協定締結以来、タイ王国の多数の大学や研究機関と連携しています。2002年には、連携強化を図るため、バンコク近郊にタイオフィスを設立しました。2007年6月には、タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)、タイ王国の大学グループと連携して、連携大学院(Thailand Advanced Institute of Science and Technologyouter 以下、TAIST)を設立し、長年に亘って良好な関係を築いています。

シリントーン王女殿下と三島学長
シリントーン王女殿下と三島学長

今回のご訪問では、三島良直学長との懇談や教員による本学説明等を受けられた後、王女殿下のご希望により、最新のエネルギー技術を駆使した環境エネルギーイノベーション棟(以下、EEI棟)、地球・生命の起源を解明することを目的として2012年に設立された地球生命研究所outer(以下、ELSI)を見学されました。

学生たちによる歓迎

学生たちによる歓迎

まずは、シリントーン王女殿下の到着を、三島学長がお迎えした後、タイ王国と王女殿下のシンボルが入った紫の手旗を持ち、正装して出迎えた本学在学中のタイ留学生会67名の学生たちの歓迎に、笑顔でお応えになりながら懇談会場へ移られました。

その後、シリントーン王女殿下と、シハサック・プアンゲッゲオ駐日タイ王国特命全権大使、スメート・タンティウェーチャクン博士、ピヤサワット・アマラナン博士と本学卒業生でPTT会長のパイリン・チュチョーターウォン博士を含む視察団代表者8名と、三島学長以下8名による懇談が行われました。最初のご挨拶で4月2日に60歳のお誕生日を迎えられた王女殿下にお祝いの言葉をお贈りすると、王女殿下は笑顔でお応えになるなど、終始和やかな雰囲気で懇談が行われました。

懇談の様子
懇談の様子

懇談後、その他の視察団メンバーがいる別会場へ移られた王女殿下を水本哲弥副学長、佐藤勲副学長がお迎えし、水本副学長が本学の概要説明を行いました。続いて行われた質疑応答では、教育改革、東工大の国際化、TAISTと本学との教育連携等について、王女殿下及び視察団メンバーより質問がなされました。

会場を出られたシリントーン王女殿下は、タイ人留学生たちと言葉を交わしながら、笑顔で贈り物を受け取られ、グループ写真撮影が行われました。

一行は続いてEEI棟を訪れ、伊原学准教授(現・教授、化学工学専攻)より太陽電池の特徴ある設置方法やビルのエネルギーシステム、最先端環境エネルギー技術について説明を受けられました。王女殿下一行は、本学のスマートグリッド管理システム「エネスワロー」に高い関心を示され、熱心に質問をされました。伊原准教授は、シリントーン王女殿下と数名の方をEEI棟屋上へご案内し、排熱を高度に利用する燃料電池システムなどのエネルギー関連設備について説明しました。

水本副学長と王女殿下

水本副学長と王女殿下

EEI棟にて伊原准教授と

EEI棟にて伊原准教授と

実験について説明をする廣瀬所長

実験について説明をする廣瀬所長

最後に、王女殿下一行はELSIを訪問され、廣瀬敬所長による研究所の設立の背景や目的、研究員の構成に関する説明を受けられました。主な研究の一つである「地球内部の高温高圧の環境再現」を理解していただくために、水に圧力を加えて室温で氷を作る実験に、シリントーン王女殿下にご参加していただきました。実験の様子はスクリーンに映し出され、圧力により水が変化していく様子を視察団一行も観察しました。引き続き、ジョン・ハーンルンド教授・主任研究者(副所長)も加わり、生命の起源、惑星誕生の過程、太陽系外の生命の存在の可能性などについて、活発な質疑応答が行われました。

3時間半に亘るご訪問中、熱心にメモをとりながら質問をされ、ご自身のカメラで写真を撮られるなど、王女殿下の科学技術への関心の高さがとても印象的でした。また、シリントーン王女殿下と視察団ご一行を本学にお迎えし、本学の世界的な研究大学を目指す実学に根ざした最先端の教育研究「Tokyo Tech Quality」をご紹介できる機会を得たことは、本学にとって大変光栄なことでした。

シリントーン王女殿下を囲んで
シリントーン王女殿下を囲んで

Startup Weekend Tokyo Tech Vol.2 レポート

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4月24日~26日の3日間、東京工業大学を会場にStartup Weekend Tokyo Tech(以降SWTT)Vol.2が開催されました。Startup Weekend(以降SW)とは、参加者が、起業する仕組みを実際に体験できるイベントです。週末の54時間でアイデアピッチ(1分プレゼン)、チームビルディング、プロダクト開発、顧客開発、ビジネスプラン立案まで行い、最終日に業界を代表する審査員によってその優劣を競うイベントで、110カ国を超える世界中で開催され、実際に多くの起業家がここから生まれています。日本でも2012年に第1回が開催され、現在は全国各地で毎回80名近くを集める人気のあるイベントです。

今回、東工大で開催されたのは、“Tech”に焦点をあてたSWで、去年11月の開催に続き2回目となります。科学技術に関連したビジネスを扱うということで、今回も東工大は、音圧分布測定器や酸素濃度で色が変わる素材、ERFマイクロアクチュエータなど様々な最新の科学技術を提供しました。

アイデアピッチ
アイデアピッチ

チーム作り

チーム作り

初日、4月24日の夕方、会場となった蔵前会館には多くの参加者が集まりました。今回の参加者は会場の都合で、限定された30名です。その中にはSW最年少になる14歳の中学生も参加していました。開始の18時になると、本学の丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)の挨拶でSWTT Vol.2が開幕しました。

その後、参加者は軽食付きのパーティー雰囲気をほぐし、ミニゲームが開始されました。30分ほどのゲームでも参加者の思考の癖や、個性が見受けられ、会場は非常に盛り上がったようです。ミニゲームでのウォーミングアップが終了したところで、1分間のアイデアピッチが行われました。約20人の参加者が事前に考えてきたビジネスアイデアのプレゼンを行い、プレゼン後は互いに情報収集しながら「一緒にやってみたい!」と思うアイデアに投票をします。投票しながらチームメンバーが集まっていき、最終的に5チームが結成されました。

2日目、大岡山キャンパスの石川台地区に4月にオープンした「デザイン工房」に会場を移し、朝9時から開始されました。デザイン工房には6台の3Dプリンターが並び、3Dスキャナーや数々の文具・工具も用意されています。ここはスタンフォード大でインタラクティブ・ティーチングの経験を積んだ教員たちがデザインした工房で、チーム活動がしやすいテーブルと椅子が配置されています。

朝食の後、イベント・ファシリテーターのリー氏によるプレゼンがありました。リー氏の進行で、SWが目指すもの、審査基準、Minimum Viable Product※1とは何かについて説明があり、参加者は作業を開始しました。各自のチームに分かれて、白熱した議論を行いました。午後からは、12名のビジネスコーチ・技術コーチが参加し、それぞれの専門的な観点からコーチングを行いました。技術コーチがついているところがこのSWTTの特徴です。ビジネスの面からも、コーチたちの経験を生かした的確で現実的な意見が、参加者に向けられました。

ビジネスアイデアの検討

ビジネスアイデアの検討

ビジネスの方向性に悩む

ビジネスの方向性に悩む

SWでは「試してみる」ことも重要視されています。今回は、3Dプリンターが参加者の目の前に並んでいることから、「ちょっと作ってみたい」というニーズにもすぐに対応することができます。工房の工作室では大きな発泡スチロールを切り出して試作品を作るチームや、アプリのモックを作ってユーザーヒアリングし、仮説を検証するチームもいました。中には、自由が丘まで行きインタビューをしてきたチームもありました。この日は、21時で終了でしたが、閉場ギリギリまで粘るチームや、場所を近くのお店に移して自主的に議論を続けたチームもあったようです。

3Dプリンターで試作

3Dプリンターで試作

試作品

試作品

朝から集中してディスカッション

朝から集中してディスカッション

3日目は顧客検証の続きが行われました。最終プレゼンは17時からとなっており、2日目に実施したアンケートを元に試作品に修正を加えるチームや、再度、街に出て現物検証してくるチームなどさまざまな試行が行われていました。デザイン工房にはソファがある部屋もあり、車座になってプレゼンを検証するチームもありました

最終プレゼンでは、3人の審査員と、CBEC(チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラム)※2の運営委員、その他大勢のゲストを前にプレゼンが行われました。4月24日にお台場で開催されたSLUSH ASIA※3の仕掛人であるアンティ・ソンニネン氏も参加しました。

また、今回は5つのチームのプレゼンが終わった後、特別なプレゼンがありました。最年少で参加した14歳の少年は人前に出るのがとても苦手だったそうですが、頭の中にはアイデアが渦巻いていたようで、自分からアイデアピッチをしたいと言い出したのです。そして、見事に2分間、聴衆の前に立つことができました。自分のアイデアをテックのチカラを借りて形にしていく過程はその場での体験は少年のみならず、参加者全員の糧になったようです。体験することで味わえる感動や達成感が、この日のデザイン工房には溢れていました。

緊張のプレゼン

緊張のプレゼン

審査員からのコメント

審査員からのコメント

プレゼン終了後、優勝発表と打ち上げパーティーが行われました。SWTT Vol.2の優勝は、工作室で何回も試作品を作っていた入力デバイスのチームが受賞しました。打ち上げパーティーは、参加者とゲストやコーチが熱をもって語り合ったり、さっそく次に集まる相談をするチームも見受けられ、参加者にとって、とても有意義な体験になったようです。最後に、リー氏から「SWはこれからも続きますこの体験からの学びを次回に繋げて欲しい」という話があり、全員で記念写真を撮影して、白熱した週末の54時間は幕を閉じました。

審査員からの優勝発表

審査員からの優勝発表

打ち上げ

打ち上げ

次回のStartup Weekend Tokyo Techは半年後の開催を予定しております。

興味を持った方は、ぜひご参加ください。

集合写真
集合写真

※1
Minimum Viable Product : ビジネスアイデアの価値を検証するために、最小限の機能をもたせた製品
※2
CBEC(チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラム) : 2014年に採択された文科省グローバルアントレプレナー育成促進事業の本学プログラム名称(特別教育研究コース)。新規事業創出のマインドセットと、起業に必要なMBA関連知識をもち、異分野多国籍チームで共創するための実践的な人材育成を行っている。
※3
SLUSH ASIA : フィンランドで毎年11月に開催される北欧最大級のテック・スタートアップのイベント「SLUSH」が初めてアジア(東京・お台場)で開催され、10カ国を越える国から3000人以上が集まった。

問い合わせ先

チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラム事務局

Email : query@cbec.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3475

東工大関係者が平成27年春の叙勲を受章

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平成27年春の叙勲において、高橋清名誉教授、藤井光昭名誉教授が瑞宝中綬章を、齋藤臻元総合理工学研究科等事務部長が瑞宝双光章を受章しました。

高橋清名誉教授

高橋清名誉教授

経歴

高橋清名誉教授は、1962年東京工業大学大学院博士課程を修了し、64年工学部助教授に就任しました。

1974年からは教授として、半導体エレクトロニクス、特に光電変換デバイス、薄膜デバイス、中でも太陽光発電、センサ、などの新しい分野で日本の指導的・並びに国際的な研究開発を展開し、更には国際的教育の育成・発展等にも幅広く活躍し、教育・研究の分野で多大な貢献を果たしました。

高橋清名誉教授のコメント

半導体エレクトロニクスの黎明期に、東工大を卒業し、その後半世紀以上にわたり、本学で半導体エレクトロニクス分野の教育・研究に従事することが出来、誠に幸せな研究生活を送ることが出来ました。これも偏に本学の学風はもとより、素晴らしい指導者・先輩・同僚・研究室の優秀な大学院生・学部学生に恵まれた賜物でして、この場をお借りしてお礼申し上げます。

藤井光昭名誉教授

藤井光昭名誉教授

経歴

藤井光昭名誉教授は、1963年に理学部助手として東京工業大学に着任しました。

その後、工学部助教授、理学部助教授を経て、1977年からは理学部教授として、統計学、ことに時系列解析の分野において多くの研究成果をあげるとともに、国際的な活動も展開し、現在の同分野の発展の基礎を築きました。本学においては、教務部副部長(入試担当)、理学部長、大学院理工学研究科長、大学院情報理工学研究科長、図書館長、Titanet(東工大情報ネットワーク)運営委員会委員長等を歴任し、大学運営に多大な貢献を果たしました。

藤井光昭名誉教授のコメント

学生時代を京大で過ごし、統計学の研究に携わりたいとの希望を持っていたものですから、恩師のお世話で統計数理研究所に就職しました。3年ほどいて、東京工業大学の何人かの先生方から東工大助手として来ないかというお誘いを受け、応募させていただき、幸いにして東工大数学科助手として転任させていだだくことができ、その後一般教育、数理計算科学専攻と所属は変わりましたが、定年まで勤めさせていただくことが出来ました。

東工大では優れた先生方に囲まれ、施設設備など研究環境が整い、優秀な学生さんにいつも若い活力をもらい、何よりも自由で絶えず時代の先端をいく雰囲気のもとで研究をすすめられ、自分では本当に充実した日を過ごさせていただきました。

今回叙勲者の末席に重ねていただきましたが、これもひとえにこれら皆様方のお陰と肝に銘じ、深く感謝の意を表させていただきます。

齋藤臻元総合理工学研究科等事務部長

経歴

齋藤臻元総合理工学研究科等事務部長は、1959年11月に東京工業大学に事務員として採用されました。

東工大の人事課、庶務部を経たのち、群馬工業高等専門学校、大阪外国語大学、宇都宮大学、長野工業高等専門学校の整備の拡充と管理運営に尽力しました。

1994年4月から2年間は東京工業大学総合理工学研究科等事務部長として在籍し、豊富な知識と経験を生かし、様々な面で東工大の発展に多大な貢献を果たしました。

齋藤臻元総合理工学研究科等事務部長のコメント

この度の叙勲受章は私にとりまして大変名誉なことであり大きな喜びです。13日には勳記・勲章伝達のあと皇居に参内し、陛下の拝謁の栄に浴し感激の極みでした。

1959年に東京工業大学に奉職、以来38年、その間良き上司、先輩にも恵まれ、また多くの人々とめぐり合い共に仕事が出来たことは大変幸せでした。これら多くの皆様のご指導のお陰と感謝いたしております。

問い合わせ先

広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

中東工科大学長が三島学長を表敬訪問

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4月20日、中東工科大学のアフメト・アジャル学長が東工大を訪問し、三島良直学長、丸山俊夫理事・副学長、佐藤勲副学長等と懇談をしました。

三島学長(中央左)とアジャル学長(中央右)
三島学長(中央左)とアジャル学長(中央右)

東工大と中東工科大学は1992年の全学協定の締結以来、20年以上にわたって、教育や研究分野で連携しています。

三島学長とアジャル学長

懇談では、三島学長による本学の概要、教育改革、スーパーグローバル大学創成支援事業への取り組みに関する説明があり、続けてアジャル学長から中東工科大学の組織や国際観、海外の大学との研究プロジェクト、同大学が持つサイエンスパークと企業との連携について説明がありました。その後、今後の連携関係強化について意見交換が行われました。

学生による国際交流プログラム「6th ASCENT」開催報告

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2015年3月、東工大を拠点に活動をしている「東京工業大学 国際交流学生会SAGE」が、「第6回アジア理工系学生連携促進プログラム 6th ASCENT」を開催し、東京工業大学を含む4か国19人のアジア圏の学生が参加しました。

本館前での集合写真

ASCENTの概要

アジア理工系学生連携促進プログラムASCENTは、Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technologyの略であり、東京工業大学 国際交流学生会SAGEに所属する学生が主体となって企画・運営される短期国際交流プログラムです。これまで毎年3月に東京で開催されており、東工大生の国際交流の促進、アジア圏の理工系学生間の持続的ネットワークの構築を目的としています。

毎年異なるテーマを元に、参加者はそれに関連した研究やビジネスを行っている企業、研究所、学内研究室の見学や基調講演を通して、近年東南アジア各国が抱える問題や、現地で適用されうる日本の技術を学び、グループディスカッション・最終報告会での成果報告を行います。各グループでは熱心に議論が行われ、一つの結論を共に創りあげる経験を通して、強固な学生間ネットワークが生まれます。また、学術的な活動を軸に据えながらも、文化交流会・日本文化研修などを通して異文化交流や学生間の交流を促進し、学習だけではない総合的な体験の場となることを目指しています。

6th ASCENTの開催

最終報告会

今回の6th ASCENTは2015年3月13日~23日に行われ、「エネルギーの未来像 The Future Image of Energy」というテーマに沿って、日本や東南アジアの抱えるエネルギー問題に様々な視点からアプローチをしました。合計19人の参加者は、参加国の日本、インドネシア、フィリピン、タイを含めたアジア圏のエネルギー事情や抱える課題の分析から始まり、見学や講義を通して学んだことを課題の解決にどう適用できるか、グループディスカッション、発表を通して「アジアにおけるエネルギーの未来像」について提案を行いました。

スケジュール

  • 3月13日
    到着日、歓迎会
  • 3月14日
    開会式、事前学習報告会
  • 3月15日
    基調講演(NEDO)、文化交流会
  • 3月16日
    企業見学(ネオモルガン研究所)
  • 3月17日
    企業見学(東芝 京浜事業所、東京ガス 横浜研究所)
  • 3月18日
    特別講義
  • 3月19日
    研究室見学(大岡山キャンパス、すずかけ台キャンパス)
  • 3月20日
    中間発表会、ディスカッション
  • 3月21日
    最終報告会
  • 3月22日
    日本文化研修、送別会
  • 3月23日
    出国日

参加大学

  • 日本 東京工業大学
  • インドネシア バンドン工科大学、インドネシア大学、ディポネゴロ大学
  • フィリピン デラサール大学
  • タイ チュラロンコーン大学
研究室見学

研究室見学

TSUBAME見学

TSUBAME見学

基調講演・企業見学

今回のASCENTでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による基調講演、ネオモルガン研究所、東芝 京浜事務所、東京ガス 横浜研究所の企業見学が実施されました。日本の大企業や研究所による現在進行中のプロジェクトや展望に触れるだけでなく、各分野のエネルギー事情に精通している研究者・技術者との質疑応答、実際に研究で使われる機器や設備の見学をすることで、参加者が将来のエネルギーについて考える良い機会となったようです。

基調講演・NEDO

基調講演・NEDO

企業見学・東京ガス

企業見学・東京ガス

特別講義

東工大のホープ トーマス エドウィン准教授による、魅力的で伝わりやすいプレゼンテーション技法の特別講義を行いました。参加者はプレゼンテーションの伝わりやすい構成や気を付けるべきこと、細かなテクニックなどに関する講義を受け、その技法を用いたプレゼンテーションの練習として「基調講演・企業見学で得たもの」というテーマの下、数グループに分かれて発表を行いました。座学では身につけられない体験型の学びの経験は、その後の中間発表会、最終報告会で活かされたようです。

プレゼンテーション特別講義
プレゼンテーション特別講義

ディスカッション・中間発表会・最終報告会

ディスカッションの様子

ディスカッションの様子

ASCENTでは、グループごとで行われるディスカッションの時間が設けられています。講演や見学を通して知識を得るだけでなく、参加者同士で議論を行うことで、体験を反芻して理解を深めることが狙いです。また、「アジアにおけるエネルギーの未来像」をテーマとした最終発表に向け、最終報告会の前日に中間発表会を行うことで、他のグループやSAGEメンバー、さらには教員から、建設的なフィードバックを得る貴重な機会になりました。これらの準備を行い迎えた最終報告会では、各グループに色のある魅力的な発表となりました。

中間発表会

中間発表会

最終報告会

最終報告会

最終報告会の後に開かれた懇親会では、ASCENT参加者に加え発表を見学に来た東工大生や、お世話になった企業の担当者と共に、最終発表での内容、日本との文化の違い、さらには各国のエネルギー問題に関する企業や政府の取り組みなど、自由に語らいながら、会食を楽しむ様子がうかがえました。

文化交流会・日本文化研修

文化交流会では、日本、インドネシア、フィリピン、タイの学生がそれぞれ用意した自国文化の発表を行いました。東工大生による「茶道」の体験会の企画や、海外学生による自国でよく知られている踊り、伝統的な文化の紹介など、互いに今まで体験することのなかった文化に触れました。最終報告会後には、参加者間の友好をさらに深めるために、日本文化研修として高尾山のハイキングが行われました。

文化交流会
文化交流会

文化交流会

日本文化研修・高尾山
日本文化研修・高尾山

プログラム統括からの声

SAGE 石丸智貴(東京工業大学 修士課程2年)

参加者との写真

参加者との写真

ASCENTは、東工大の学生が東南アジアにて学習を行う短期海外派遣プログラムTokyo Tech-AYSEAS(当時JAYSES)に参加した学生が「日本で勉強できる同じようなプログラムがあればいいな」という現地の学生の声を聞き、SAGEを設立、プログラムの企画を行ったという経緯を持ちます。私自身もJAYSESに2012年度に参加させていただき、ぜひ日本で同じような機会をつくりたいという気持ちが強く、統括を務めさせていただきました。

今回は新たにフィリピンから学生が加わり、合計4カ国、6大学の学生により構成される参加者がAYSEAS同様に楽しく、かつ真剣にプログラムに取り組むことができたと感じています。プログラムが終了した現在でも、SNSなどを通じて参加学生、そして私たちSAGEの学生は交流を続けています。今後も、そして将来私たちが社会に出てからも、今回できた国際ネットワークが続くことを願っています。

7th ASCENTについて

次回ASCENTについて、ASEAN諸国のセメスター制度の変更に伴い、これまでの3月開催から夏開催に変更し、2016年夏の開催を計画しています。時事に基づいた次回のテーマや見学先企業などが今後決定されていきます。

また、ASCENTはアジア内の大学に属する学士・修士・博士課程の学生であれば、応募することが出来ます。プログラム詳細や応募方法などはSAGEのウェブサイトや各種SNS、メールマガジンを通して発信される予定です。ASCENTでの貴重な経験が、理工系学生間のネットワークを構築するだけでなく、今後の国際的な活動への最初の一歩となることを期待しています。

問い合わせ先

東京工業大学 国際交流学生会SAGE

Email : sage.tokyo.tech@gmail.com

教育改革による教育プログラム 学生説明会開催及び関係資料の公開

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東工大は、現在教育改革に取り組んでおり、2016年4月から新しい教育プログラムによる教育を開始する予定です。

今回の教育改革は、本学130年あまりの歴史において、最大の改革と言っても過言ではありません。「将来、科学技術の力で世界に貢献するため、学生が自ら進んで学び、鍛錬する"志"を育てる」という三島学長の思いとリーダーシップの下、全教職員が一丸となって取り組んでいます。

夢と希望を持って本学に入学する学生が、科学技術のおもしろさ、奥深さ、あるいは、科学技術には社会を変える力があるのだ、ということを感じ取って、将来自分が目指すもののために、自主的に学ぶ力を育てられるような教育を行うための改革です。

こうした目的で行われる教育改革の具体的な内容を学内外に広くご紹介するため、4月から5月にかけ合計8回の説明会を開催しました。説明会で使用した資料は、「教育改革特設ページ」の中の「入試情報・説明会情報」のページに掲載されています。

学外からの大学院受験生向け説明会は、大岡山キャンパスでは4月30日及び5月23日に、すずかけ台キャンパスでは5月16日(すずかけ台オープンキャンパス開催日)に開催しました。平日、週末ともに、多数のご参加をいただきました。

高校生向け説明会は、すずかけ台オープンキャンパスと同日の5月17日に開催し、午前中の早い時間から開催されたにも拘わらず、保護者の方も含め多数の方にご参加いただきました。

在学生向け説明会は、5月13日は大岡山キャンパス(2回)、19日はすずかけ台キャンパス(2回。うち1回は遠隔配信により大岡山からも参加者あり。)で開催し、多くの学生が参加しました。

全ての回におきまして、大変多くの皆様にご参加いただき、学院、系及びコースのこと、クォーター制による学事歴のこと、留学・海外経験に関すること、大学院課程での英語による授業のことなどなど、多岐にわたる多くのご質問をいただきました。丸山理事・副学長、また、水本副学長は、改革のポイントや期待される効果について、皆様にご理解いただくため、ひとつひとつのご質問に真摯にお答えいたしました。

8月8日に開催される大岡山オープンキャンパスouterでも、同様の説明会を開催予定ですので、ぜひご参加ください。

大学院受験生向け説明会(すずかけ台キャンパス)
在学生向け説明会(大岡山キャンパス)
大学院受験生向け説明会(大岡山キャンパス)
高校生向け説明会(すずかけ台キャンパス)

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

問い合わせ先

学務部教育改革事務室

Email : kaikaku.qa@jim.titech.ac.jp

泰日工業大学長が三島学長を表敬訪問

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泰日工業大学のバンディット・ローアラヤノン学長一行が4月14日に東工大を訪問し、三島良直学長、安藤真理事・副学長(研究担当)、岸本喜久雄理工学研究科工学系長等と懇談を行いました。

懇談の様子
懇談の様子

三島学長から歓迎の挨拶に続いて、東工大の教育改革などの最近の活動状況の説明がありました。バンディット学長からは泰日工業大学の設立の経緯や、日系企業のニーズにあった現場でのマネジメントが行える人材を育成することを目的としていること等の説明がありました。現在も日本の多くの大学と学生交流を行っており、今後は研究交流についても行っていきたいと話しました。

バンディット学長は本学の卒業生で、三島学長とも面識があり、安藤理事・副学長と学生時代、同じ研究室の後輩ということもあり、終始和やかな雰囲気で懇談が行われました。

三島学長(前列左)とバンディット学長(前列中央)
三島学長(前列左)とバンディット学長(前列中央)


英文ニュースレター Bulletin No. 38 配信

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Tokyo Institute of Technology Bulletinは3か月に一度本学が配信している英文ニュースレターです。 東京工業大学の研究成果やニュース記事、学生の活動などを国内外へ広くメールで配信をしております。

この度、Tokyo Institute of Technology Bulletin No. 38 が発行されました。

メールでの配信をご希望の方は申込フォームからご登録ください。

※Tokyo Institute of Technology Bulletinは英語で配信を行っていますがコンテンツは全て日英両方でご覧頂けます。

Tokyo Institute of Technology  Bulletin | Research and education at Japan's foremost university dedicated to science and technology

Innovative technology to recover performance of CMOS devices damaged by hot carrier injection

Topics

Innovative technology to recover performance of CMOS devices damaged by hot carrier injection

FEATURE

RECENT RESEARCH

News

Through Students' Eyes

Tokyo Institute of Technology Bulletin No.38

バイオインフォマティクス分野の国際シンポジウムを開催

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4月16日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館くらまえホールにて、国際シンポジウム「International Symposium for Frontier of Bioinformatics(バイオインフォマティクス分野の最前線についての国際シンポジウム)」が開催されました。

開会の挨拶をする山田講師

開会の挨拶をする山田講師

バイオインフォマティクスとは、生物に関係する膨大なデータをコンピューターで解析する研究分野で、今や生命科学において欠かすことのできない重要な分野となっています。NGS※1や、その他のオミクスデータ※2は日々膨大な量で蓄積されており、その解析技術も日進月歩です。生命科学においてデータ生産の大規模化は今後も進んでいくことが予想され、バイオインフォマティクスが益々重要視されていくことは間違いありません。

※1
NGS [Next Generation Sequence] : 21世紀に入って開発された革新的な遺伝子解析技術のこと。遺伝子(DNA)から遺伝子情報を読む技術、読み込んだデータを解析する新しい技術を指す言葉。
※2
オミクス(オミックス)データ [Omics data] : 生物学のある分野で集められるデータのこと。遺伝子情報とそれを調べることから派生的に分かる様々な情報をまとめて指した言葉。

今回のシンポジウムは、EMBO(欧州分子生物学機構)、日本バイオインフォマティクス学会、ライフサイエンス統合データベースセンターの共催により開催されました。バイオインフォマティクス分野で活躍する、国内外8名の精鋭の研究者が、大規模データ解析の最前線について、英語で講演を行いました。

  • 人間の腸マイクロバイオーム(生物環境を構成する微生物群のゲノムの総称)のための代謝経路データベースの構築
    山田 拓司(東京工業大学)

  • 医療データとテキストマイニング(テキストデータを計算機で定量的に解析、有用な情報を取り出すための技術):リンク疾患、薬物、および副作用
    ラース ユール ヤンセン(コペンハーゲン大学)

  • メタゲノム(培養を行わずに環境中の微生物のゲノムDNAをすべて抽出・収集し、これらの塩基配列を網羅的に読む手法)の機能アノテーションのためのKEGGデータベース
    五斗 進(京都大学)

  • 人間の腸マイクロバイオームのメタゲノム解析とその先
    ピア ボーク(欧州分子生物学研究所)

  • 構造的側面からのゲノム機能の理解
    須山 幹太(九州大学)

  • ゲノミクスデータからの繊毛に関連する遺伝子の特定
    マルタイン ハイネン(ラドバウド大学)

  • てんかんにおける遺伝学および薬理遺伝学 - バイオインフォマティクスの視点
    ローランド クラウス(ルクセンブルク大学)

  • 翻訳後修飾の機能とその進化
    ヴェラ ヴァン ノールト(ルーヴァン・カトリック大学)

  • タンパク質存在量の進化とそのシステムレベルの制約
    クリスティアン フォン メーリング(チューリッヒ大学)

講演中のピア ボーク博士

講演中のピア ボーク博士

講演中のマルタイン ハイネン博士

講演中のマルタイン ハイネン博士

シンポジウムには本学の教職員・学生、関連分野の大学教員、および、国内外の大学の研究者、企業研究者など110名を超える参加がありました。最新の生命情報研究と将来について活気ある講義が行われ、会場からも多くの質問がありました。

また、翌日からは場所を移し、沖縄科学技術大学院大学にてバイオインフォマティクスの実践演習コースが1週間にわたり開催され、欧州分子生物学研究所から派遣された講師陣により、世界各国の学生や若手研究者に有意義な演習がおこなわれました。

問い合わせ先

大学院生命理工学研究科 生命情報専攻 山田研究室

Email : info@jchm.co.jp
Tel : 03-5734-3629

第10回東京オリエンテーリング開催報告

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東京工業大学 国際交流学生会SAGEでは、新入留学生に東京の生活や交通に慣れてもらうことを目的として、毎年春と秋の2回、東京オリエンテーリングを開催しています。今年の春は4月25日に開催されました。参加者たちは国籍等を混合したグループに分かれ、東京メトロの様々な駅に設けられたミッションをクリアしながら、都内を一日かけて観光しました。

作戦会議

作戦会議

グループに分かれると、まず作戦会議が行われどの駅のミッションから解くべきか、どの観光地に行ってみたいかなどを話し合いながら、ミッションリストや路線図を確認しながら、行動予定を立てていました。

出発後はグループごとに目的地をめざして地下鉄に乗り込みます。参加者たちはミッションを達成すべく、おみくじを買ったり東京の有名なスポットをまわります。
ミッションの回答やスタッフとのコンタクトなどは主にTwitter経由で行われ、回答とともにユニークな写真が添付されていたりと、楽しそうに東京の観光地を訪れているようでした。

今回のミッションは東京メトロの駅近く、上野駅、東京駅、新宿駅などに設定されました。
たとえば新宿では都庁の展望台から写真を撮るというミッションが設定されていました。

多くのチームが、東京の有名な観光地のひとつである東京スカイツリーを訪れました。
また、参加者からは「ミッションを通じてグル―プの仲がよくなった」「とても貴重な時間を過ごせた」という感想が聞かれました。

オリエンテーリング
オリエンテーリング

ビンゴ

ビンゴ

オリエンテーリングの後は交流会が開かれました。一日都内を歩き回った参加者たちは、準備されたオードブルと飲み物に疲れを癒された様子でした。日中は都合が合わず朝から参加できなかった人も交流会から参加して、オリエンテーリング参加者たちのエピソードを楽しそうに聞いている姿もありました。他グループだった人やスタッフとも交流ができ、新しく友人を作る良い機会になったようです。

交流会の最後には、オリエンテーリングを通じて最もポイントを獲得したチームが表彰されました。オリエンテーリングの際に解いたミッション、交流会でのビンゴゲーム、写真コンテストの結果が反映されます。順位発表では会場全体が盛り上がり、和やかな雰囲気でオリエンテーリングは終了しました。

集合写真
集合写真

東京オリエンテーリングは毎年春と秋の2回開催しています。東工大生だけではなく、他大学や一般の方、教員の参加も可能です。次回の第11回東京オリエンテーリングは秋に開催を予定しています。

問い合わせ先

東京工業大学国際交流学生会SAGE

Email : sage.tokyo.tech@gmail.com

キャリアセミナー「ITエンジニアが語る開発現場」開催報告

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東京工業大学 情報生命士教育院(ACLS)では、産業界で活躍する博士号取得者によるキャリアセミナーを、定期的に開催しています。

情報生命博士教育院」は、生命科学と情報科学の複合領域でグローバルに活躍するリーダー人材の養成を目指して、東京工業大学内に新たに設置された教育組織です。大学院生命理工学研究科、総合理工学研究科、情報理工学研究科の教員が密接に協力して、学際的な教育プログラムを実施しています。
講師のサイボウズ長谷川氏

講師のサイボウズ長谷川氏

「第6回ACLSグローバルキャリアセミナー」は、「ITエンジニアが語る開発現場」をテーマとして、5月1日に本学大岡山キャンパスで開催されました。講師は、サイボウズ株式会社 グローバル開発本部に勤める長谷川淳氏です。グループウェア国内シェアNo.1のサイボウズは、企業間の商取引のための業務アプリケーションを、パッケージ製品から自社クラウドサービスまで展開しています。また、サイボウズは博士号取得者向けの採用を行っているユニークな会社です。

長谷川氏は、2008年3月東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻にて博士号取得しました。その後、同大学院の助教、独立行政法人科学技術振興機構の研究員を経て、2011年4月にサイボウズ株式会社に入社しました。入社後は、プログラマーとしてクラウドサービスのkintoneの開発に従事し、現在もエンジニアとして活躍されています。

セミナーでは、IT業界の最近の動向、ご自身の会社での業務を説明された後に、IT業界で活躍するために求められるスキルや資質、博士号取得者に期待されることなどについて語っていただきました。特に印象的だったのは次の点でした。

  • 技術はあった方が良いが、必須ではない(何らかの言語と情報科学の素養があれば、後は業務の中で覚えることができる)。
  • 研究をそのまま活かすのはなかなか難しい。
  • 博士号取得者の中には専門に囚われ、新しい知識の吸収が遅い人がいるが、そのような人が民間企業で活躍することは難しい。

フロアを交えてのディスカッションも大変盛況でした。今後もACLSではキャリアセミナーを定期的に開催しますので、ぜひご参加ください。

東工大の留学支援:初めての留学に向けて

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「海外に興味はあるけれど、英語にも自信がないし、何をしていいかわからない」

そのような学生のために、東工大では、様々な留学プログラムの用意や留学支援を行っています。初めての留学に、夏は最良の季節です。協定校等で実施するサマースクールなどもあり、プログラムの数も種類も充実しています。東工大で紹介しているプログラムだけでも、選び方に迷う学生が、毎年見受けられます。

そこで、東工大の留学担当者に、学生が自分にあった留学プログラムを選ぶためのコツを聞きました。

自分の足で情報収集を!

太田絵里 特任教授

太田絵里特任教授

太田絵里特任教授

専門性を深めたい、海外で研究したい、就職したい、自身の専門が世界でどのように利用されるのか現状を知りたい、海外の取組を知りたい、とりあえず世界をみてみたい、海外の若者と交流したい、などなど、留学の目的は様々です。まずは、自身の渡航の目的をはっきりさせましょう。その上で、自身がどの地域に興味があるのかを考えてみましょう。東工大のウェブページ等で情報収集をしたら、複数のプログラムからどれが一番今の自分に合っているのか、さらなる情報収集に努めましょう。訪問先や訪問国のことをより積極的に調べたり、留学フェアに行ったり、学内の関係者に話を聞いたりしてみましょう。東工大では、留学報告会も多数開催しています。積極的に参加して、経験者の生の声を聴いたりしているうちに、ネットワークも広がり、自身の目的意識やすべきことがはっきりしてくると思います。

また、東工大では、学部生を対象としたグローバル理工人育成コースを開設しています。海外に興味のある学生は、留学生とのグループワークや「使える英語」を身に付ける英語学習プログラム、専門以外の教養科目の履修や専門に沿った課題解決のための演習等を通じ、将来海外で活躍できる人材を育成しています。本コースには、「実践型海外派遣プログラム」として、数多くの超短期派遣プログラムを提供しています。コースに所属しプログラムに参加した学生は、活動の中で、自身の将来計画や現在やるべき事柄について、明確な目的を持つことができるようになります。

留学体験談

実際に、留学を体験した学生の皆さんは、現地で生活し、授業を受ける中で、その国と日本について多くの発見をし、自分自身の成長にも気づいていきます。参加者の感想からは、留学で得た経験の面白さ、嬉しさがまっすぐ伝わってきます。

2014年2-3月 南アジア超短期派遣プログラム(スリランカ)参加者 山野 花穂さん

これまでの私は先進国への関心ばかりが強く、欧米へは何度か行っていたのですが、アジアの国を訪れたのは初めてでした。実を言えば、数ある短期派遣プログラムの中でスリランカを選んだのも「自分から行こうと思い立つことはきっとないだろうから」という消極的な理由からでした。しかし研修を終えて「もっと広く色々な世界を見てみたい、アジアやアフリカにも行ってみたい」という思いでいっぱいです。食習慣や町並みに始まり、緑の多さ、そこら中にいる犬(時々猿や大きなトカゲも)、信号がほぼ皆無の道路交通システム、ヒンドゥー教と仏教の融合した寺院、当時の技術でどうして作れたのか皆目見当がつかない遺跡シーギリヤロック、向こう岸が見えないくらい巨大な人口湖、いくらでも流れ星を見つけられそうなほど澄んだ星空、そして現地学生や先生方との交流...全てが驚きに満ちあふれ、既存の概念や価値観を打ち破られっぱなしで、それがとても新鮮で面白かったのです。今回の研修を通じて最も得たものといえばやはり、こうした既成価値観の打破です。この先世界に出て研鑽を積みたいと願っている身としては、これから出会うであろう人々の多様な背景を理解してより深くコミュニケーションするための大きな第一歩になったと感じています。

参加者集合写真
参加者集合写真

2015年3月 欧州超短期海外派遣プログラム(英国)参加者 片岡 裕介さん

イギリス国立物理学研究所 (National Physical Laboratory) にて発表

イギリス国立物理学研究所 (National Physical Laboratory) にて発表

今回、私にとってこの海外派遣は初めての海外経験でした。イギリスに到着してすぐは見るもの聞くものあらゆるものが日本とは違い戸惑うことがありました。また、日本人ではない人との交流の中でうまく思いを伝えることができず苦心することがありました。しかし、うまく伝えられなくても伝えようという気持ちが助けになって多くのことを伝え合うことができていました。気が付かないうちに自分がイギリスでの生活に順応していたのです。単純に移動のときに地下鉄に乗れるようになったり、コンビニエンスストアで水が買えるようになったりしただけであるのに、自分にとってのこういった変化がとてもうれしく思いました。また、この留学で多くの人とつながることができました。海外で活躍されている研究者と話をした際、何を考えて海外に来たのかということを伺えました。研究内容や最先端技術はインターネットで得られますが、研究者自身がなにを思っているのかということは直接伺うことでしか知ることができません。 また、この海外派遣に参加することで今までだったら想像できなかった自分の新しい姿を描けるようになりました。参加したことで海外を知ることができるだけでなく自分の変化を感じ、たった10 日間であっても旅行とも日常の授業とも違う成長をすることができました。これからもこの成長を止めないように海外に目を向け続けたいと思います。

体験談のように、渡航するまでの心理的ハードルを高く感じる学生が多いですが、実際に留学を経験してみると、訪問した国をより詳しく知りたい、再訪したいと思ったり、今後の留学や海外就職を前向きに考えるなど意識の変化があるようです。

留学プログラム

東工大では、今年の夏こそ留学をしたいと考えている学生に向けた留学プログラムを用意しています。世界トップレベルの大学での聴講・学生交流・ラボ見学や、国際機関などの現地企業訪問を通じて、長期派遣や海外でのキャリア形成に備える体験留学です。事前学習を行い、海外危機管理サポートデスクへの加入を義務づけることで、初めての留学体験が充実かつ安全なものとなるように配慮しています。また、留学期間が10日間~1か月程度の短期プログラムですので、研究活動等に影響することなく、夏休みを利用して、気軽に参加することができます。

  • 南アジア超短期派遣(スリランカ):ペラデニア大学 他
  • 欧州超短期派遣(フランス):パリ第6大学、アール・ゼ・メティエ、ストラスブール大学 他
  • AOTULE バンドン工科大学 サマースクール(インドネシア)
  • 南アジア超短期派遣(インド):インド工科大学マドラス校 他
  • 欧州超短期派遣(ドイツ・オーストリア):アーヘン工科大学、ウィーン工科大学 他
  • 北欧超短期派遣(スウェーデン):スウェーデン王立工科大学、ストックホルム大学 他
  • 理工系学生のための海外英語研修プログラム(オーストラリア):モナシュカレッジ
  • TiROP 欧州超短期派遣(英国):インペリアル・カレッジ・ロンドン、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学 他

各プログラムの詳細はこちらから。

2015年夏 超短期海外派遣プログラム 募集outer

留学は準備を入念にすることで、充実度が高くなるため、留学に向けた準備のサポートも提供しています。

プログラム紹介・体験談報告会

語学・留学準備サポート

  • 外国語学習相談室:語学学習に関する相談に専任教員が直接お答えします。

  • English Café:ネイティヴスピーカーの教員を中心に、ランチをかねて英会話ができます。

  • English Office Hour:ネイティヴスピーカーの教員達が、英語学習についての相談に応じます。

  • 外国語学習相談室・English Café・English Office Hourouter

  • Think Aloud! LUNCHouter:科学的・社会学的なトピックを英語でディスカッションする機会です。

  • Spotlight:英語でのプレゼンテーション能力を身につけられます。

また、海外からの留学生の交流の場を設けている学生団体等もあります。これらに参加することで、留学準備にもなり、留学しなくても、留学に近い体験をすることができます。

この他、留学プログラムのページでは夏だけでなく、一年を通じて、東工大及び協定校等の提供する留学プログラムや奨学金などの案内を提供しています。

また、毎年発行している「東工大生のための海外留学のてびき」でも、留学体験談、準備の方法・スケジュール、プログラム概要などを読むことができます。

東工大は、「東工大に留学する人」、「東工大から留学する人」、双方の支援を通じて「世界最高の理工系総合大学」を目指します。

東工大ネパール人学生会によるネパール大地震被災者支援の募金活動

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5月13日の午後、大岡山キャンパス本館前ウッドデッキにて、東工大ネパール人学生会を中心に、ネパール大地震の被災者支援を目的とした募金活動が行われました。

募金活動をする発起人のラジャリ・マハラジャンさん(左)
募金活動をする発起人のラジャリ・マハラジャンさん(左)

三島良直学長とラジャリ・マハラジャンさん

三島良直学長とラジャリ・マハラジャンさん

4月25日にネパール中部で発生した大地震は、首都カトマンズほかネパール各地に甚大な被害をもたらし、多くのネパール国民が被災しました。災害後、大学院理工学研究科国際開発工学専攻修士2年のラジャリ・マハラジャンさんほか、本学に留学中の8名のネパール人で構成される東工大ネパール人学生会(NESAT: Nepalese Students' Association TokyoTech)は、母国の被災者のために募金活動を開始しました。東京工業大学国際学生会TISAの集会や大岡山駅前等で募金活動を個別に続け、その集大成として、日本人学生等の協力も得た5月13日の募金活動へとつながりました。震災被害や支援活動を本学の多くの教職員、学生に知らせるきっかけとなりました。

当日、ウッドデッキには現地の被災状況を示した写真も合わせて掲示され、三島良直学長を始め、多くの教職員、学生が協力し、この日だけで191,028円が集まりました。これで、募金総額が活動当初に目標としていた100万を超えたことから、募金活動は一旦終了しています。集められた募金は、日本赤十字社ほか、カトマンズのライオンズクラブ、地元のボランティア団体Bibeksheel Nepalなど、現地の被災者支援活動組織に寄託される予定です。また、本学の修士課程以上のネパール人留学生は、ネパールの理工系トップ大学であるトリブバン大学の出身であり、母校の卒業生と密に連絡を取り合いながらさらに適切な寄託先を検討しているところです。今後の母国の復旧・復興活動への貢献にも強い意欲を持っています。

被災状況を示した写真を見る人々
被災状況を示した写真を見る人々

募金する学生たち

募金する学生たち

募金活動をする東工大ネパール人学生会の学生たち

募金活動をする東工大ネパール人学生会の学生たち

問い合わせ先

東工大ネパール人学生会(NESAT: Nepalese Students' Association TokyoTech)

Email : titechnepal@gmail.com

6月の学内イベント情報

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2015年6月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

2015年6月の学内イベント情報


元素戦略研究センター新棟「元素キューブ」オープン

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6月3日、材料科学研究の新たな拠点として、元素戦略研究センターの新棟(通称:元素キューブ)がすずかけ台キャンパスに開所しました。学内の材料研究体制の強化を図るとともに、国内外の研究機関や企業との連携を促進し、共同研究や実用化に向けたオープンでグローバルな研究拠点として機能を充実していきます。

「元素キューブ」外観
「元素キューブ」外観

元素戦略研究センター(センター長:細野秀雄応用セラミックス研究所教授)は文部科学省元素戦略プロジェクト※1の一環として2012年8月に設置され、「石ころ」や「セメント」のようなありふれた物質から人類に役立つ革新的な材料を生み出すことを目標として研究を行ってきました。センター長である細野教授はこれまでに液晶パネルや有機ELディスプレイの駆動に適したIGZO-TFTの提唱や、常識を覆した鉄系超電導体の発見など、数々の研究成果を生み出してきています。また、2013年10月には、科学技術振興機構(JST)の新プログラムACCEL※2の第一号課題に選定され、その「エレクトライドの物質科学と応用展開」では、電子化物の創製や、それを生かしたアンモニア合成触媒や電子材料の研究を行っています。

「元素キューブ」は地上5階地下1階、延床面積は4,515 m2です。1階は129名収容のレクチャーホールを備えオープンな交流の場を提供します。2階は企業や学外研究機関の研究者との共同研究を行うスペースとして用意されています。3階から5階は各階毎にセキュリティーが保持された学内研究者の研究室、実験室です。地下1階には透過型電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザなど精度を要する実験のための特殊な設備を備えています。研究者、機器のエキスパート、学生を含めた人材が集結し、大学ならではのオープンな場としての利点を活かし、材料科学研究のさらなる発展と研究人材育成を図っていきます。

新棟概要

名称
東京工業大学元素戦略研究センター(通称:元素キューブ)
所在地
東京工業大学すずかけ台キャンパス内
住所
横浜市緑区長津田町4259
開設日
平成27年6月3日
建物
地上5階、地下1階
人員
約50名
延床面積
4,515 m2
※1
文部科学省 元素戦略プロジェクト(研究拠点形成型) :
レアアース等の希少元素の供給不足を契機に、希少元素を用いない全く新しい材料の開発を目指し、最先端の物理・化学理論を駆使して機能設計から部材試作までを一貫して実施するために開始されたプロジェクト。平成24年度からは卓越した代表研究者が若手研究者を結集した異分野共同研究拠点と研究ネットワークを形成する拠点形成型プロジェクトとして強化された。
※2
科学技術振興機構 ACCEL :
世界をリードする研究成果の技術的成立性の証明・提示と、適切な権利化を推進することで、企業やベンチャー、他事業などに研究開発の流れをつなげるためのプログラム。研究開発課題ごとにプロジェクトマネージャーが研究代表者と協力して、研究成果を最大限に生かした社会的・経済的価値創造に向けてのビジョン、具体的用途と技術的成立性の証明・提示を設定し、研究開発課題の提案からマネジメントまでを行う。

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email: media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

細胞の核と小胞体を分解する新しい仕組みを発見

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細胞の核と小胞体を分解する新しい仕組みを発見
―オートファジーの目印を特定、感覚神経障害との関連も示唆―

要点

  • 細胞の核と小胞体がオートファジーで分解されることを発見
  • それぞれの分解の目印となるタンパク質を特定し、メカニズムを解明
  • 小胞体分解の目印タンパク質は感覚神経障害の原因遺伝子と関連

概要

東京工業大学大学院生命理工学研究科の中戸川仁准教授と持田啓佑大学院生らの研究グループは、モデル生物「出芽酵母」[用語1]を用いて、細胞内の大規模分解システム「オートファジー(自食作用)」が核や小胞体をも分解の対象とすることを発見した。さらに核と小胞体に結合して「目印」となる2つのタンパク質を特定し、それらを分解するメカニズムを解明した。

細胞内の核の分解は栄養飢餓時の細胞の生存に重要であり、小胞体の分解の目印タンパク質は、ヒトの遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーII型[用語2]の原因遺伝子から作られるタンパク質に相当することが示唆された。

研究成果は、英国科学誌「ネイチャー」のオンライン版で6月3日(米国東部標準時)に公開される。

研究の背景

私たちの体を形作る細胞の中では、様々なものが作られ、機能しているが、生命活動の維持には、それらを適宜分解することも重要である。オートファジーは、このような役割を担う、細胞内の大規模な分解システムである。タンパク質や核酸などの生体高分子から細胞小器官[用語3]まで、大小問わず様々な細胞内成分をオートファゴソームと呼ばれる脂質膜の袋で包み込み、種々の分解酵素を含むリソソームや液胞といった分解専門の細胞小器官に運び入れて分解する(図1)。

近年、パーキンソン病などの神経変性疾患の原因ともなり得る機能不全となったミトコンドリアなど、いくつかの細胞小器官がオートファジーで選択的に(狙いを定めて)分解されることが明らかとなり、そのメカニズムの解明や制御方法の開発を巡って世界中で激しい研究競争が繰り広げられている。しかし、細胞小器官の恒常性維持や機能制御にオートファジーがどの程度広く関与しているのかについては不明であった。

オートファジーのプロセス

図1. オートファジーのプロセス

オートファジーで選択的に分解すべき対象が細胞内に生じると、それらには特定のタンパク質で目印が付けられる。目印タンパク質は、オートファゴソームを作る装置を分解対象上に呼び寄せ、オートファゴソームの形成を開始させる。目印タンパク質はさらに、オートファゴソーム膜上のAtg8というタンパク質と結合することで、分解対象を効率良くオートファゴソームに包み込ませる。完成したオートファゴソームは、液胞(酵母や植物などの場合)やリソソーム(哺乳類などの場合)と融合し、対象物の分解が達成される。

研究成果

オートファジーで選択的に分解されるためには、分解の対象上に「目印タンパク質」が提示されることが必要となる(図1)。目印タンパク質はそれぞれ決まった分解対象を正確に認識して結合する。既知の目印タンパク質はすべて、オートファゴソーム膜上の「Atg8」というタンパク質にも結合することが明らかとなっていた。この結合により分解対象がオートファゴソームに効率良く包み込まれる(図1)。

持田大学院生と中戸川准教授らは、Atg8と結合するタンパク質を網羅的に決定すれば、その中に未知の目印タンパク質が含まれているに違いないと考えて研究を進め、これまでまったく解析されていなかった2つのタンパク質を見いだし、「Atg39」、「Atg40」と名付けた。解析の結果、Atg39は核の分解の目印であり、Atg40は小胞体の分解の目印となることを明らかにした。

核は遺伝情報の格納・発現・伝承を担い、小胞体は多くのタンパク質や脂質の合成の場である、共に極めて重要な細胞小器官である。Atg39は核に集まり(局在し)、核の一部をちぎりとったようなものをオートファゴソームに包み込ませる(図2)。Atg40は小胞体に集まり、その一部を折り畳まれたチューブあるいはシートのような状態でオートファゴソームに取り込ませる。

本研究で明らかになった核と小胞体のオートファジーによる分解経路

図2. 本研究で明らかになった核と小胞体のオートファジーによる分解経路

酵母が栄養飢餓に晒されると、Atg39、Atg40という目印タンパク質が作られる。Atg39は核へ、Atg40は小胞体に局在し、これら細胞小器官のオートファゴソームによる取り込みを誘導する。

これら目印タンパク質はどちらも細胞が栄養飢餓状態に陥ると発現し、それぞれの細胞小器官の分解を誘導する。Atg39を持たない酵母細胞は栄養飢餓時に核の形態に異常を来たし、通常の細胞よりも早期に死に至ることが明らかとなった。飢餓時に必須の分子を核の一部を分解することで供給している可能性がある。あるいは、異常となった核成分を分解除去することが細胞の生存に重要である可能性も考えられる。

一方、本成果と同時に「ネイチャー」に報告される論文では、ゲーテ大学(ドイツ)のグループが、ヒトの遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーII型の原因遺伝子であるFAM134Bの遺伝子産物(タンパク質)が、哺乳類でのオートファジーによる小胞体分解のための目印タンパク質であることを明らかにした。

構造上の特徴の類似性などから、本研究で発見した酵母のAtg40は、このFAM134Bに相当すると考えられ、小胞体のオートファジーによる分解が、生物の進化の上でも極めて重要であったと推察される。

今後の展開

本成果は、高等動植物を含む他の生物種における研究の発展の引き金となり、オートファジーによる核および小胞体の分解の生理的意義、疾患との関連、分子メカニズムの解明のための足掛かりとなると期待される。Atg40を介した小胞体の分解は、その破綻が特定の遺伝性神経障害と関連があることが示唆されたが、Atg39が誘導する核の分解については、Atg39に相当するタンパク質の哺乳類での存在を含め、未だ多くの謎が残されており、さらなる研究の発展が期待される。

用語説明

[用語1] 出芽酵母 : 単細胞の真核生物。パンやワインなどの発酵食品の製造にも利用される有用微生物であるが、基本的な生命現象についてはヒトを含めた高等動植物と共通の原理が成立するため、生命科学の研究においても優れたモデル生物として酵母を用いた研究が先導的な役割を果たしている。

[用語2] 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーII型 : 主に末梢の感覚神経および自律神経が傷害される進行性の疾患。痛覚の喪失を特徴の1つとする。最近になっていくつかの原因遺伝子が特定されたが、発症機構など不明な点が多く残されており、根本的な治療法は確立されていない。

[用語3] 細胞小器官 : 細胞は脂質膜(細胞膜)で外環境と自己とを隔てているが、その内部にも膜で仕切っていくつかの空間、すなわち細胞小器官を作りだし、それぞれに独自の役割を担わせている。

論文情報

掲載誌 :
Nature
論文タイトル :
Receptor-mediated selective autophagy degrades the endoplasmic reticulum and the nucleus.
著者 :
Keisuke Mochida, Yu Oikawa, Yayoi Kimura, Hiromi Kirisako, Hisashi Hirano,Yoshinori Ohsumi and Hitoshi Nakatogawa
DOI :

研究グループ

東京工業大学、横浜市立大学

研究サポート

本成果は、主に、科学技術振興機構CREST「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」および、文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)「オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで」のサポートを受けて得られた。

問い合わせ先

大学院生命理工学研究科 生体システム専攻
准教授 中戸川仁
Email : hnakatogawa@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5879 / Fax : 045-924-5113

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部
ライフイノベーショングループ 川口 哲
Email : crest@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3524 / Fax : 03-3222-2064

取材に関すること

東京工業大学 広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課
Email : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

高秩序な大面積分子集積膜の構築に成功―基材を選ばず、簡単な成膜法により均一な有機薄膜形成が実現―

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要点

  • 分子レベルの構造規則性をセンチメートル規模に伝搬する新デザイン戦略を提示
  • 簡便な操作で、ガラス、プラスチックなどの基板に大面積分子集積膜形成を実現
  • 有機トランジスタなどフレキシブルデバイスの高機能化に期待

概要

東京工業大学資源化学研究所の福島孝典教授らの研究グループは、科学技術振興機構ERATO「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」の染谷隆夫研究総括、理化学研究所放射光科学総合研究センターの高田昌樹主任研究員(現東北大学多元物質科学研究所教授)、引間孝明研究員と共同で、センチメートル規模の大面積でドメイン境界[用語1]のない有機薄膜を形成することに成功した。

有機薄膜は様々な応用上極めて重要であるが、それらの作製時、膜内にドメイン境界が生じ、膜の強度や電気伝導性などの機能が低下してしまうことが問題であった。研究グループは、2次元物質であるグラフェン[用語2]のハニカム構造をヒントに、高秩序な有機薄膜を実現するための分子・分子集積体の空間充填デザインを考案した。これを具現化するため、3枚羽プロペラ状のトリプチセン[用語3]分子を設計し、薄膜を形成した。

大型放射光施設SPring-8の放射光X線[用語4]で観察したところ、得られた薄膜にドメイン境界がないことを確認した。この有機薄膜は真空蒸着、加熱溶融状態からの冷却、スピンコート[用語5]といった簡便な操作で形成できるため、電子素子の高性能化、基材の表面改質、新規分子デバイス創出など多様な応用展開が期待される。本成果は6月5日(米国東部標準時)発行の米科学誌「サイエンス(Science)」誌に掲載される。

研究の背景

薄膜は実用上、重要な物質形態である。例えば有機薄膜は、絶縁材料、半導体材料などの電子材料をはじめ、構造材料、光学材料など多種多様な用途に利用され、今日の科学技術を支えている。有機薄膜で構成分子の配向や配列を完全に制御できれば、分子が本来持つ性質を最大限引き出すことにつながり、有機電子デバイス、光学材料、さらにソフトアクチュエータ(人工筋肉)のような動的応答性材料などの多様な高機能薄膜の開発が期待される。

薄膜の形成過程では、一般的な核生成・成長[用語6]メカニズムにより、生成したたくさんの結晶核から構造成長が起きてしまうため、ドメイン境界の生成は避けられなかった。ドメイン境界は膜の強度や、半導体膜であれば伝導度など、膜の機能を低下させる要因になる。しかし、ドメイン境界のない有機薄膜を大面積で作製することは極めて難しく、これまでに有効な手法はなかった。

研究成果

東工大の福島教授らの共同研究グループは、構造規則性の長距離伝搬を可能にする分子・分子集積体の空間充填デザインを考案した。グラフェンのハニカム構造(蜂の巣のように6角形が隙間なく並んだ構造)をヒントに幾何学的な考察を行い、2次元平面を規則的に充填する理想的なモチーフとして、3枚羽のプロペラ状ユニットが歯車のように相互に噛み合った入れ子状のハニカム構造を考案し、ドメイン境界のない有機薄膜の形成に成功した(図1a)。

この構造モチーフでは、ドメイン境界形成の原因となるような、プロペラ状ユニットの並進・回転自由度が制限される。このような2次元シートが構築できれば、それらがさらに1次元的に積み重なることで、3次元空間を規則的に充填することができる(図1a)。そこで研究グループは、上記「2次元 + 1次元」の空間充填デザインを実現する分子として、3枚羽プロペラ状のトリプチセン分子を設計した(図1b)。

(a)3枚羽プロペラユニットに基づいた、構造秩序の長距離伝搬を可能にする「2次元 + 1次元」の空間充填デザイン。 (b) 空間充填デザインを具現化するトリプチセンの分子構造。
図1.
(a)3枚羽プロペラユニットに基づいた、構造秩序の長距離伝搬を可能にする「2次元 + 1次元」の空間充填デザイン。 (b) 空間充填デザインを具現化するトリプチセンの分子構造。

このトリプチセン分子が集まってできる物質の構造をSPring-8(BL44B2, BL45XU)の放射光X線を用いて詳細に解析したところ、期待したとおり、3枚羽が相互にかみ合った2次元状ハニカム構造と、それが1次元に積み重なった「2次元 + 1次元」の構造が形成されていた(図1a)。さらに、トリプチセンをサファイア基板にはさみ、加熱溶融状態からゆっくり冷却することで、均一な薄膜がセンチメートル規模で形成できた(図2a)。

この薄膜の構造についても同様に放射光X線を用いて調べたところ、驚くべきことに、膜全体にわたって「2次元 + 1次元」の構造が完全に揃った、あたかも単結晶のような構造規則性を持っていることが分かった(図2a)。例えるならば、1畳の畳をユーラシア大陸一面にずれなく敷き詰めた状態が達成されたことになる。

なぜ、このようなセンチメートル規模での構造の秩序が実現されているのかを調べるために、トリプチセンを加熱溶融状態から冷却し、結晶相への相転移温度[用語7]からわずかに低い温度に保った状態で放射光X線による分析を行った。その結果、結晶化によりいったん生成したドメインが、相転移温度よりも低い温度にも関わらず大きく配向を変えたり、融合したりする動的な様子を観察することができた。すなわち、このトリプチセンは通常の「核生成・成長」だけではなく、「核生成・成長・融合」ともいえるプロセスで構造化しているとみられる。その過程で、3枚羽プロペラ構造の歯車がかみ合うことで、構造の秩序がセンチメートル規模にわたって伝搬されていると考えられる。

トリプチセンは加熱溶融状態からの冷却以外にも、スピンコートや真空蒸着法によって、完全に配向した均一な膜形成が可能である(図2b)。スピンコートによる成膜では、単分子膜を構築できることも明らかにしている。また真空蒸着法で製膜した薄膜についても、放射光X線による構造解析により、センチメートル規模にわたってドメイン境界がないことが示された。さらに真空蒸着法では、ガラス、プラスチックなど、基材を選ばずに高秩序な薄膜が形成できた。これらの特徴は分子集積膜の応用可能性を大きく広げるものである。

(a) 加熱溶融状態からの冷却により形成した分子集積膜の構造模式図(左上)、膜のスナップショット(左下)、およびX線回折像(右)。 回折像で黒、紫および白の楕円で囲まれた部分には、2次元状ハニカム構造に由来する、六角形状に並んだ回折スポットが観測される。 (b) 真空蒸着によりサファイア基板(上)およびシリコン基板(下)に成膜した均一な分子集積膜。
図2.
(a) 加熱溶融状態からの冷却により形成した分子集積膜の構造模式図(左上)、膜のスナップショット(左下)、およびX線回折像(右)。 回折像で黒、紫および白の楕円で囲まれた部分には、2次元状ハニカム構造に由来する、六角形状に並んだ回折スポットが観測される。 (b) 真空蒸着によりサファイア基板(上)およびシリコン基板(下)に成膜した均一な分子集積膜。

今後の展開

今回、トリプチセンの3枚羽のかみ合ったハニカム構造に基づく「2次元 + 1次元」の空間充填デザインにより、真空蒸着、加熱溶融状態からの冷却、スピンコートといった簡便な操作だけで、ドメイン境界のない高秩序な分子集積膜をセンチメートル規模で構築することに成功した。今回開発した分子は、基材を選ばずに大面積分子集積膜を形成できることから、表面改質の汎用的な手段として多方面への応用が期待される。

分子レベルの構造規則性がセンチメートル規模にまで伝搬された有機薄膜は、有機誘電体や有機トランジスタなどの開発に非常に有効である。既存の成膜方法と組み合わせることで、超高精細分子膜を用いたフレキシブルデバイスの創出など、新しい応用展開が期待される。

さらに、トリプチセンの3枚羽には、多様な機能性ユニットを付与することができる。これにより半導体特性、絶縁性などの電気的特性に加え、潤滑、親液撥液といった様々な機能を分子集積膜に組み込むことが可能となる。今回の成果は、「分子薄膜工学」という、有機機能材料開発の新しい視点を与えるものといえる。

本成果は、以下の研究支援により得られた。

  • 研究課題 :
    「新学術領域研究(研究領域提案型)」
    π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出(領域略称名「π造形科学」)
    「大規模分子集積化による巨視的π造形システム」
  • 研究代表者 :
    福島 孝典(東京工業大学資源化学研究所 教授)
  • 研究期間 :
    平成26~30年度
  • 研究課題 :
    基盤研究(B)「ナノスケールヘテロ接合構造の精密設計と機能開拓」
  • 研究代表者 :
    福島 孝典(東京工業大学資源化学研究所 教授)
  • 研究期間 :
    平成24~26年度

科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)

  • 研究課題 :
    「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」
  • 研究代表者 :
    染谷 隆夫(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
  • 研究期間 :
    平成23年8月~平成29年3月

用語説明

[用語1] ドメイン境界 : 結晶や液晶の中で、局所的に構成分子の配向や配列が揃っている領域をドメインと呼ぶ。ドメイン境界は、隣り合うドメイン同士が接している部分を指す。有機半導体材料の場合には、ドメイン境界はドメイン内部よりも抵抗が大きく、伝導度の低下をもたらす。

[用語2] グラフェン : グラフェンは炭素の同素体のひとつで、原子一層の厚みの2次元物質。完全なグラフェンでは、炭素原子はハニカム状格子を形成している。優れた機械特性や電気伝導性を示し、エレクトロニクス材料の素材として大きな注目を集め、これを用いた研究は2010年のノーベル物理学賞の受賞対象となった。

[用語3] トリプチセン : 3枚のベンゼン環が120°の角度で連結された剛直なプロペラ状分子。分子の周辺には、ベンゼン環に挟まれた大きな空間(自由体積)がある。これまで主に、トリプチセンの自由体積を活かしたホスト材料の開発が行われてきたが、本研究では視点を変え、3枚羽プロペラ構造をハニカム状の最密充填構造形成に利用した。

[用語4] 放射光X線 : 放射光X線とは、電子を光速に近い速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波のことを指す。兵庫県にある大型放射光施設 SPring-8 では、世界最高輝度の放射光を用いて、基礎研究から産業利用まで幅広い実験が行われている。

[用語5] スピンコート : 回転させた基板の中央に素材の溶液を滴下し、遠心力により基板全体に広げることで均一な薄膜を形成させる手法。

[用語6] 核生成・成長 : 核生成とは、固体、液体、気体などの相の中に、それとは異なる相が局所的に生成することを指す。本系の場合には、加熱溶融状態(液体状態)や溶液状態から、分子の微小な結晶核が生成することを意味する。この結晶核表面上に、さらに分子が配向・配列を揃えて付着していき、より大きな結晶へと成長する。これら一連のプロセスを「核生成・成長」と呼ぶ。

[用語7] 相転移温度 : 物質がある相(気体、固体、液体など)から異なる相に変化する温度を指す。

論文情報

掲載誌 :
Science 348 (6239), 1122-1126 (2015)
論文タイトル :
"Rational Synthesis of Organic Thin Films with Exceptional Long-Range Structural Integrity"
著者 :
N. Seiki, Y. Shoji, T. Kajitani, F. Ishiwari, A. Kosaka, T. Hikima, M. Takata, T. Someya, T. Fukushima
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課
Email : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

JST事業に関すること

科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部
水田 寿雄
Email : eratowww@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3528 / Fax : 03-3222-2068

本学での男女共同参画活動により前学長が女性研究者研究業績・人材育成賞を受賞

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伊賀健一前学長(東京工業大学名誉教授)が、応用物理学会による第5回「女性研究者研究業績・人材育成賞(小舘香椎子賞)」を、人材育成部門において受賞しました。

応用物理学会は、応用物理学分野の研究活動において顕著な研究業績をあげた女性研究者・技術者、または、女性研究者・技術者の人材育成に貢献することで科学技術の発展に大いに寄与した研究者・技術者または組織・グループに対し、「女性研究者研究業績・人材育成賞」を贈り、表彰しています。この賞は、小舘香椎子 日本女子大学名誉教授(応用物理学会フェロー)からの寄付を基金として、女性研究者・技術者の活躍の場の拡大を祈念し、設立されたものです。

  • 受賞業績
    大学・学術振興・学界における男女共同参画活動への持続的貢献

特に、学長在任中は、本学における男女共同参画推進の礎を築き、科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」プログラム等による各種施策を通じて、男女共同参画に向けた意識改革、環境整備、女性研究者の登用などを推進しました。

3月11日の授賞式にて(賞の創設者である小舘香椎子教授(左)と伊賀健一前学長(右))

3月11日の授賞式にて(賞の創設者である
小舘香椎子教授(左)と伊賀健一前学長(右))

今回の受賞を受けて、伊賀前学長は以下のようにコメントしています。

2007年に東工大学長になり「女性研究者支援モデル育成」プログラム応募することになったのです。準備委員会を作り、大倉一郎、堤田直子、高田十志和、柳田保子、尾形わかは、野村淳子の皆さんと作戦を立ててヒヤリングに臨みました。女性研究者、女子学生の割合を増やそう、快適に職務や学業ができる"テイラーメイド型の支援"を骨格としました。採択となった事業の推進時・評価時には、林ゆう子、岡村純、三石ちはる、矢野容子、有山智子、平賀香織さんらが加わりました。企画の1つに、蟻川芳子さんの講演があり有意義なものでした。蟻川さんは筆者と東工大・大学院の同期生で、当時日本女子大学の学長でした。評議員や部局長など大学の運営に責任ある立場の人に対する講演で、意識改革を意図したものでした。その後、構成員の努力により東工大のプログラムは高評価を得たのです。

東工大の男女共同参画への取り組み

本学の男女共同参画への取り組みは、2004年、企画室に「男女共同参画に関する検討ワーキンググループ」が設置されたことに始まります。その後、2008年4月に、「男女共同参画ポリシー」「男女共同参画を推進するための基本指針」を策定・公表し、同年5月に文部科学省「女性研究者支援モデル育成」事業に採択され、7月に男女共同参画推進センター(GEC)を設置し、強力に推進していくことになります。

さらに、2014年には「スーパーグローバル大学創成支援」に採択されました。女性教職員の比率は、国際化・多様性の指標とされています。「真の国際化」を実現していくためには、男女共同参画を推進する取り組みが、一層緊要となっています。

現在、「ワーク・ライフ・バランス支援」「意識改革」「裾野拡大」「女性同士の交流」「女性研究者増員」という5分野で様々な事業を行っています。ワーク・ライフ・バランスを支援する制度や事業はもちろん男性・女性ともに対象です。具体的な内容については、男女共同参画推進センターのwebサイトをご覧ください。

非対称な光学迷彩装置を理論的に実証―光を自在に曲げることで物体を見えなくする理論―

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要旨

理化学研究所(理研)理論科学研究推進グループ階層縦断型基礎物理学研究チームの瀧雅人研究員と東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センターの雨宮智宏助教と荒井滋久教授らとの共同研究チームは、非対称な光学迷彩を設計する理論を構築しました。

光学迷彩は、光を自在に曲げる装置を設計、開発することで、物体や人を光学的に見えなくする技術です。これまで様々な理論的提唱や実験的な確認がなされてきました。しかし、光学迷彩装置は向かってくる光を迂回させることで、装置自体を見えなくしています。したがって、装置内に入射する光がなく、装置内からは外部を見ることができませんでした。このように、これまでの原理では外部からも内部からも見えないという“対称的”な振る舞いを示す光学迷彩装置しか作ることができませんでした。そこで共同研究チームは、光に仮想的にクーロン力[用語1]とローレンツ力[用語2]を働かせる光学迷彩装置を提唱し、それにより光がその進行方向に対して非対称になっているような状況を理論的に実現しました。高校で学習するフレミングの左手の法則からわかるように、磁場が電子に及ぼす力の向きは、電子の進行方向を反転させることにより逆向きとなります。そこで同様の働きをする力を、光に仮想的に作用させることのできる光学迷彩装置を設計しました。それにより逆方向から入射した光が、全く異なる曲がった光路をたどることができるようになりました。この理論は、外部からは見えないが、内部からは外部を見ることができる、“非対称”な光学迷彩を可能にします。

本研究は、米国の科学雑誌『IEEE Journal of Quantum Electronics』に掲載され、2015年3月/4月号の表紙に選ばれました。

背景

光学迷彩は、光を自在に曲げる装置を設計、開発することで、物体や人を光学的に見えなくする技術です。最近では、メタマテリアル[用語3]と呼ばれる人工素材が注目されており、その特異な光学的性質を用いた、いわゆる透明マントのような光学迷彩装置の研究が進められています。2006年にPendryらやLeonhardtのグループによって、最初に光学迷彩装置の設計方法が理論的に提案されました)。この論文では、曲がった空間の電磁気学と異方性媒質とを対応させることによって光学迷彩装置を設計しており、空間のどの位置にどのような誘電率、透磁率の物質を置けばよいかということを具体的に示しています。その後、これらの考えに基づいて、マイクロ波領域から可視光に至るまでメタマテリアルを用いた光学迷彩装置の実験結果が活発に報告されるようになりました。

J. B. Pendry et al., Science 312, 1780 (2006), U. Leonhardt, Science 312, 1777 (2006).

これまで提唱されてきた光学迷彩装置というのは、入射した光が一つの閉領域(シールド領域)を迂回するようにし、外部から見た人にとって、あたかもこのシールド領域内にある物体が存在しないように見せるというものです。この概念に基づけば、シールド領域の中に人が隠れたとき、外部からは 360°どの方向から見てもその人が見えないようにできます。しかし、シールド領域には光が入らないので、そこに隠れている人は外部を見ることができません。 つまり「外部からも内部からも見えない」という“対称的”な振る舞いを示す光学迷彩装置しか実現できませんでした(図1)。そこで共同研究ではこの問題を解決し、「内部から外部を見ることができるが、外部からは内部は見えない」という、“非対称性”を持つ光学迷彩装置を実現するための理論を考えました。

これまでの光学迷彩と非対称光学迷彩の概念図

図1. これまでの光学迷彩と非対称光学迷彩の概念図

これまでの光学迷彩(左)では、光の伝搬の経路は向きに依存しないため、シールド領域に入ってくる光は存在しない。非対称光学迷彩(右)では、これまでの光学迷彩同様、外部から内部へ届く光はない。しかし同時にシールド領域内には光が届くため、内部から外部を見ることができる。

研究手法と成果

共同研究チームは、光に作用する「仮想的な電磁気力の理論(有効電磁場)」を用いることで非対称光学迷彩を設計する理論を構築しました。この基礎となった理論は2012年にスタンフォード大学のグループが提唱した「光子に作用するローレンツ力」の概念です。彼らは、光を捕捉する光学的な共振器[用語4]を格子状に配置し、その共振器間を光が曲がりながら伝搬する理論モデルを考えました。

そこで共同研究チームは、この格子共振器のアイデアが光学迷彩装置にも活用できる点に着目し、格子共振器を拡張し電場に相当する効果を発生させる、光学格子共振器を用いた理論モデル(光学格子共振器モデル)を構築しました。その結果、光があたかも一般的な電磁場中を運動する電子のように振る舞うことで、光学格子共振器のパラメータを調整するだけでかなり自由な伝搬光路を実現できることがわかりました。特に磁場が及ぼすローレンツ力により、完全反対称な光路を実現できます。また、電場から受けるクーロン力に相当する力により光路を調整することで、より多様で非対称な光の伝搬経路が実現できることが分かりました。このように光学格子共振器モデルは、光学迷彩の設計において新たな方向性を与えています。

今後の期待

現在の研究は理論の提案に留まっていますが、今回提唱する光学格子共振器モデルは、フォトニック結晶[用語5]を用いた非対称光学迷彩を実現に近づける理論です。また、非対称な光学迷彩という研究テーマは、まったく新たなメタマテリアルの開発をも促しています。理論とメタマテリアル開発双方の進展により、非対称光学迷彩の構築が可能になることが期待できます。

用語説明

[用語1] クーロン力 : 電場中の荷電粒子の受ける力がクーロン力である。その向きは正電荷の場合は電場の方向、負電荷なら電場の逆方向である。この力は粒子の運動の方向に依存しない。

[用語2] ローレンツ力 : 磁場中の荷電粒子の受ける力。フレミングの法則により、中指、人差し指、親指を互いに垂直に向けた場合、左手の中指の方向を電流の進行方向(電子の進行方向と逆)、人差し指を磁場の方向とすると、電子は親指方向の力を受ける。したがってバンド電子の進行方向を反転させると、受ける力の向きも反転する。

[用語3] メタマテリアル : メタマテリアルは、金属などの微細共振器を電磁波長より小さなサイズで周期配列して物質の誘電率・透磁率を変化させた人工素材である。これを利用すれば、隠したい物体の周囲に特異な電磁気学的場を作り上げることができるので、擬似的な透明マントが実現可能となる。

[用語4] 共振器 : 共振現象を利用して特定周波数の波を一定の範囲内に閉じ込めたり、それを取り出したりする装置。

[用語5] フォトニック結晶 : ナノスケールで、屈折率が周期的に変化する構造を持ち、この中では光があたかも半導体中の電子のような振る舞いをし、バンド構造をもつ。これを応用し、光を閉じ込める共振器構造が実現できる。

論文情報

掲載誌 :
IEEE journal quantum electronics, Vol. 51, No. 3, pp.6100110
論文タイトル :
Optical Lattice Model Towards Nonreciprocal Invisibility Cloaking
著者 :
Tomohiro Amemiya, Masato Taki, Toru Kanazawa, Takuo Hiratani, Shigehisa Arai
DOI :

問い合わせ先

量子ナノエレクトロニクス研究センター

助教 雨宮智宏
Email : amemiya.t.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2555 / Fax : 03-5734-2907

理化学研究所

理論科学研究推進グループ
階層縦断型基礎物理学研究チーム
研究員 瀧雅人
Email : taki@riken.jp
Tel : 048-462-9111 / Fax : 048-462-4641

広報室 報道担当
Email : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

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