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講演会「バーチャルリアリティの最前線」

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東京工業大学社会人教育院は(一社)蔵前工業会と共催で、9月30日(水)より5回にわたり、「バーチャルリアリティの最前線」と題した講演会を開催いたします。

知覚を刺激し、ものの<本質>を再現すること。「バーチャルリアリティ」(VR)の技術は産業界のみならず、わたしたちの身近な生活に浸透しています。広告、観光、通信、医療、スポーツ、芸術、教育――。これら様々な分野で、たとえば、超高速度カメラやシミュレータ、ヘッドマウントディスプレイなど、VR技術を搭載した製品が次々と開発されてきました。VR技術は時間、空間等の制約を変えうる無限の可能性を秘めたテクノロジーとして期待されています。

本講演会では、最先端のVR研究・技術に携わる5名の講師をお迎えして、最新の成果、今後の展望をお話いただきます。5名の講演者はいずれも、本学教員、もしくは本学出身者です。最終日となる第5回講演会には、国内外で注目を集める<ウルトラテクノロジスト集団>、チームラボより田村哲也取締役をお迎えして、本学長谷川晶一准教授(本講演会第1回講師)との講演・対談を開催します。

多数の皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時
2015年9月30日(水)、10月7日(水)、10月14日(水)、10月21日(水)、10月28日(水) 各回18:30~20:30
場所
参加対象
どなたでもご参加いただけます(事前申込要)
参加人数
定員100名
申込方法
詳細は東京工業大学 社会人教育院WEBサイトouterをご確認ください。
(各公演日によって締め切りが異なります)

参加料金

No.
区分
講演会1回あたり
全5回一括
1.
一般社会人
2,500円
10,000円
2.
蔵前工業会会員(会費納入者)および蔵前ゴールドカード家族会員
無料
3.
東京工業大学学部学生・大学院生・附属科学技術高等学校生徒
無料
4.
No.3を除く大学、大学院等学生、高等学校等生徒(25歳以下)
※当区分によるお申込みにつきましては、システムの都合上WEBによる受付ができませんのでご注意ください(FAX・郵送等による受付となります)
1,100円
5,000円
5.
社会人教育院講座受講生・修了生
2,000円
8,000円
6.
東京工業大学教職員
2,000円
8,000円

講演スケジュール

開催日時
講演タイトル・講演者
9月30日(水) 18:30~20:30
「バーチャルリアリティという夢、拡張現実という現実解」
長谷川晶一准教授(東京工業大学 精密工学研究所)
10月7日(水) 18:30~20:30
「身体の未来」
稲見昌彦教授(慶應義塾大学 大学院 メディアデザイン研究科)
10月14日(水) 18:30~20:30
「嗅覚ディスプレイの現状と今後の展望」
中本高道教授(東京工業大学 精密工学研究所)
10月21日(水) 18:30~20:30
「画像認識を用いた次世代ユーザインタフェース」
小池英樹教授(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 計算工学専攻)
10月28日(水) 18:30~20:30
「『バーチャルリアリティ』をキーワードに『共創』やテクノロジーなどについて」
講演者:田村哲也取締役(チームラボ)
対談者:長谷川晶一准教授(※)
第5回は、長谷川晶一准教授(第1回講師)にもご登壇頂きます。お二方による各ご講演(長谷川准教授15分、田村取締役45分※予定)の後、対談(30分※予定)を開催いたします。尚、講師の都合により、時間・順番等は変更となる可能性がございます。

講演会「バーチャルリアリティの最前線」

関連ページ

取材についてのお申込・お問い合わせ先
東京工業大学 広報センター
Tel: 03-5734-2975
FAX: 03-5734-3661
E-mail:media@jim.titech.ac.jp

イベントについてのお問い合わせ先
東京工業大学 社会人教育院 事務室
Tel:03-3454-8722、03-3454-8867
E-mail:jim@kyoiku-in.titech.ac.jp


役員会トピックス:「研究の種発掘」支援 採択者決定

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役員会は、東工大における最高意思決定機関です。東工大では毎月2回役員会を開催し、大学の組織、教育、研究などについて、審議し決定しています。

7月16日の会議で承認された、意欲的で新しい取り組みについて、紹介します。

「研究の種発掘」支援 採択者決定

「研究の種発掘」支援とは、従来にない画期的なアイデア等を含む、きわめて斬新な着想による研究を支援することを目的として、本学の基金により研究費の支援を行うものです。過去の実績は問わず、科学研究費補助金の「挑戦的萌芽研究」等の外部資金に出す前段階にある基礎的・基盤的領域の研究で、いまだ誰も着手していない類の「研究の種」の発掘を目指します。

第4回目の今回は49件の申請があり、そのうち16件の「研究の種」への支援を決定しました。

所属
専攻
職名
氏名
大学院理工学研究科(理学系)
基礎物理学専攻
助教
谷津 陽一
物性物理学専攻
助教
井上 遼太郎
物性物理学専攻
助教
橋坂 昌幸
化学専攻
准教授
前田 和彦
化学専攻
助教
水瀬 賢太
大学院理工学研究科(工学系)
応用化学専攻
助教
柴田 祐
応用化学専攻
助教
吉松 公平
機械物理工学専攻
助教
青野 祐子
機械制御システム専攻
助教
原 謙介
電子物理工学専攻
助教
田口 大
大学院生命理工学研究科
分子生命科学専攻
助教
金森 功吏
生物プロセス専攻
助教
小川 熟人
生体分子機能工学専攻
助教
安部 聡
大学院総合理工学研究科
物理情報システム専攻
助教
中村 友哉
精密工学研究所
共通部門
助教
土方 亘
原子炉工学研究所
システム・安全工学部門
助教
近藤 正聡

東工大基金

この活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

カリフォルニア大学サンタバーバラ校との合同ワークショップ 開催決定

東京工業大学は、文部科学省による「スーパーグローバル大学創成支援(タイプA:トップ型)」に採択されました。この事業は、日本の高等教育の国際競争力の向上を目的としています。世界レベルの教育研究を行う日本のトップ大学が取り組む、海外の卓越した大学との連携や大学改革による徹底した国際化に対し、重点支援を行うものです。

このたび、世界トップ大学と戦略的に連携強化を図る新たな試みとして、8月下旬にカリフォルニア大学サンタバーバラ校との合同ワークショップを開催することが決定いたしました。日程等の詳細については、後日東工大webサイト新着イベント情報で改めてお知らせします。

今後、複数の分野において研究交流から学生交流へとつなげていく交流活動を積極的に推進していきます。

その他の主な審議事項

  • 公文書室へ移管する法人文書ファイルについて

  • 平成27年9月東京工業大学学部・大学院学位記授与式及び平成27年10月東京工業大学大学院入学式について

「第33回My Study Abroad 留学報告会」開催報告

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6月30日の昼休みに、My Study Abroad 留学報告会を開催しました。国際室が募集するプログラムにより留学した学生によるこの報告会は、授業期間中、月1~2回開催されています。

今回は派遣交換留学プログラムにより留学した4名の学生が発表しました。

所属・学年
氏名
留学先
大学院社会理工学研究科
経営工学専攻 修士2年
江部ゆり夏
スイス連邦工科大学チューリッヒ校/スイス
大学院理工学研究科
建築学専攻 修士2年
吉池葉子
ミラノ工科大学/イタリア
工学部
国際開発工学科 学部4年
ミョウゲツ
スウェーデン王立工科大学/スウェーデン
大学院理工学研究科
建築学専攻 修士2年
服部雅之
スイス連邦工科大学チューリッヒ校/スイス

江部さんは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)のD-MTEC(経営工学系の修士プログラム)に1学期間留学しました。ETHには、アプリを利用した双方型スタイルのもの等、印象的な授業が数多くあったそうです。また、ケース・スタディや企業の講演を取り入れている授業を通じて、実務に即した専門知識を習得することができたと感想を述べました。さらに、フラッシュ・モブ・コンサート(公共の場で行うミュージックパフォーマンス)でバイオリン奏者として演奏するなど、積極的に課外活動に参加することで、現地スイス人との交流も深めることができたそうです。最後に、留学を経て英語でのディベート力は磨かれた一方、出発前にどれだけ語学力を高めることができるかが留学を充実させる鍵である、と報告していました。

スイスの大自然のなかの江部さん
スイスの大自然のなかの江部さん

2番目の発表者の吉池さんはイタリアのミラノ工科大学に、私費留学と派遣交換留学を合わせて1年間留学しました。ミラノ工科大学を選んだ理由は、日本にはない多様なデザイン手法を学べることにありました。学外でも、ミラノ工科大教授の設計事務所で、ミラノ万博のパビリオンの設計業務や東工大教授のミラノ・サローネ(世界的に有名な家具見本市)出展に携わるなど、留学ならではの貴重な経験を得ることができたそうです。また、私費留学と派遣交換留学の違いについても言及しました。私費留学生としての授業料は年間10万円と経済的であった一方、派遣交換留学生の身分時には国際室から奨学金を受給できました。それだけでなく、派遣交換留学のほうが登録可能な授業数も多いこと等、幅広い利点があったと報告がありました。さらに、これから留学する学生に向けて、クレジット・カードを複数用意しておくことや、イタリアでは高価格の文房具は日本で揃えること等、留学経験者ならではの具体的な情報を提供しました。

吉池さんが発表中の報告会の様子
吉池さんが発表中の報告会の様子

ミョウゲツさんは、履修科目が少ない学部3年後期を利用して、スウェーデン王立工科大学に留学しました。スウェーデン王立工科大学の学部授業は、基本的にスウェーデン語で行われるため、英語で行われる大学院の授業を履修しました。少人数の指導体制やグループワークなど、多様なスタイルの授業に参加できたことが留学の大きな収穫であり、さらに、世界各国から集まった様々な経歴を持つ学生との触れ合いから刺激を受けたそうです。留学はこのような「多様性」を経験できるので皆さんに挑戦してほしい、と述べました。

最後に、江部さんと同じスイス連邦工科大学チューリッヒ校に1学期間留学した服部さんが発表しました。研究分野の知見を深めるために、専攻(建築)とは異なる機械工学に所属したそうです。初めは授業に追いつくことに苦戦したものの、同じ科目を履修する仲間と授業前に配布される資料を用いて予習することで、専門外の授業も克服することができたと報告しました。また、ESN(学生団体)の主催するイベントに積極的に参加し、課外活動も充実させました。世界一物価が高いといわれるスイスですが、生活費など必要経費を賄うのにスイス連邦工科大学の奨学金が助けになったそうです。「待っていてもチャンスは来ないので自分からチャレンジしましょう」と前向きな言葉で報告会を締めくくりました。

東工大基金

この海外派遣プログラムは東工大基金により実施されています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

問い合わせ先

国際部留学生交流課派遣担当

Email : hakenryugaku@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7645

8月7日15:30 本文中に一部誤りがありましたので、修正しました。

電子商取引の経営に科学の光を当てる―段階的成長モデルを提案―

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概要

東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科博士課程(当時)の林滋と比嘉邦彦教授は、電子商取引(EC:E-コマース)では信用と価値を段階的に高めていくことが顧客の購買行動に結びつくというECの段階的成長(SG:Staged Growth)モデルを提案した。

SGモデルを使用することにより、ECの経営者らはビジネスや顧客について科学的に分析することが可能となる。

研究の背景

世界市場においてECの取引額は増加し続けている。従来型の商取引に比べ多くの利点を持つECではあるが、ECビジネスで成功することは簡単なことではない。

今のところ、多くのECビジネスの経営者らは学習からの推測、経験法則、表面的な数値データ、予感などの非科学的な方法で意思決定を行っている。

研究成果

東工大の林氏と比嘉教授は、信用と価値の要素が相互に影響しあうECの段階的成長モデルを提案した。具体的には、第1段階は「一時的な信用構築」と「価値の提示と普及」、第2段階は「信用構築」と「同質の価値の継続的供給」、第3段階は「ブランドの確立」と「新しい価値の創造や追加」というモデルである。

ここでいう信用と価値は、商品・サービスそのものに加え、生産者やECビジネス独自の信用と価値も対象となる。例えば、有名ブランドの新商品は、商品そのものの信用・価値はまだ認識されていなくても、生産者独自の信用・価値が顧客の認識に影響を与えると考えられる。

実際のECビジネスのデータを基にSGモデルの有効性を検証した。その結果、ECビジネスの顧客の購買行動は、信用と価値の要素によって約80%説明可能であった。また、7名のECビジネス経営者へのヒアリング調査からSGモデルの実務的な有効性も確認された。

今後の展開

SGモデルを使用することにより、実務家はマーケティング活動ごとの効果分析が行え、研究者は顧客の購買行動の遷移状況分析や信用と価値の相互影響の分析などが行えるようになると期待される。

ECの段階的成長モデル

図1. ECの段階的成長モデル

論文情報

掲載誌 :
日本経営工学会論文誌 60, 191-196 (2009)
論文タイトル :
Analysis of Differentiating Factors among Trust and Value Stages in e-Commerce Growth Process.
(「E-コマースの成長過程における信用と価値の段階差を生む要素の分析」)
著者 :
林滋、比嘉邦彦
CiNii :

問い合わせ先

大学院イノベーションマネジメント研究科
教授 比嘉邦彦
Email : khiga@craft.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8732

第21回スーパーコンピューティングコンテスト 高校生・高専生の熱き知的な戦い「夏の電脳甲子園」開催

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昨年度開催風景

昨年度開催風景

スーパーコンピューティングコンテスト(以下、スーパーコン)は、スパコン上で行う高校生・高専生対象のプログラミングコンテストです。

予選を通過した高校生・高専生の20チームがスパコンを使い、4日間をかけて難題を解くプログラムを作成し、その性能を競います。

1995年より毎年夏に行われ、「夏の電脳甲子園」という名で、プログラミングが大好きな若者を惹きつけてきました。このコンテストからは、毎年、様々なドラマが生まれています。また、情報オリンピック等で活躍する生徒たちも出てきます。

  • 予選を通過した強豪20チームが東工大と阪大に集結、本選(8月17日~21日)に挑む
  • 今年は、阪大に昨年12月に導入された最新のスーパーコンピューターを使用
  • 成果発表会・表彰式を8月21日に東工大・阪大で同時開催

最終日の成果発表会・表彰式では、その奮闘の様子を紹介いたします。成果発表会・表彰式にお越しいただき、若者たちの熱い戦いをご覧ください。

本選

日時
2015年8月17日(月)~21日(金)
場所

成果発表会・表彰式

日時
2015年8月21日(金)11時30分~14時00分
場所

スーパーコンに関する問い合わせ先

スーパーコン15実施委員会
(大阪大学サイバーメディアセンター、東京工業大学学術国際情報センター)
E-mail: sc15query@gsic.titech.ac.jp

取材に関する問い合わせ先

東京工業大学広報センター
TEL: 03-5734-2975
FAX: 03-5734-3661
E-mail: media@jim.titech.ac.jp

8月7日16:30 学術国際情報センターのリンク先に誤りがありましたので、修正しました。

「日中大学図書館フォーラム2015」開催報告

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東工大附属図書館は、6月30日に「日中大学図書館フォーラム2015」を開催しました。公益財団法人 日本科学協会との共催により、本学卒業生の陳進氏(上海交通大学図書館長)を団長とする「中国大学図書館担当者訪日団2015」(図書館長・副館長等35名)を迎え、企画・実施されたものです。

開会にあたり、丸山俊夫 理事・副学長(教育・国際担当)と、大島美恵子 日本科学協会会長から、挨拶及び開催趣旨説明がありました。その後、フォーラムのテーマである「大学図書館の変遷と発展」について、日中双方の図書館長・副館長、図書館情報学研究者による2本の基調講演と4本の講演(いずれも日中同時通訳)、そして総合討論が行われました。

丸山理事・副学長

丸山理事・副学長

大島日本科学協会会長

大島日本科学協会会長

竹内副学長・附属図書館長(千葉大学)

竹内副学長・附属図書館長(千葉大学)

基調講演では、竹内比呂也 千葉大学副学長・附属図書館長が、大学図書館が学習をどのようにサポートするかにフォーカスを当て、北米や日本の状況を紹介しながら、大学のミッションから図書館のミッションを考える必要性を述べられました。千葉大学「アカデミック・リンク」での実践も紹介され、施設整備はスタートであり、そこからの学習環境整備の重要性を強調されました。

陳図書館長(上海交通大学)

陳図書館長(上海交通大学)

陳進 上海交通大学図書館長は、中国の大学のイノベーションの方向性やビジョンから、大学図書館の改革における発展プロセスやチャレンジについて提示され、改革に向けての方法論や実践について紹介されました。図書館サービスの質を高め、イノベーションを繰り返す大きな変化の中で発展を続けることが可能となる、と述べられました。

講演では、日本側からは、呑海沙織 筑波大学図書館情報メディア系准教授が、ラーニング・コモンズの現状と課題、学生スタッフを活用した課題解決とその意義について解説されました。そして高橋栄一 附属図書館長から、日本の研究大学における学術情報基盤である電子ジャーナルの現状と課題について話しました。中国側からは、別立謙 北京大学副図書館長が、北京大学や中国における高等教育機関の図書館の動向、現在進められている北京大学図書館の5年間に及ぶ行動計画の概要を説明されました。講演の最後は、楊海天 大連理工大学図書館長が、今回の訪日団を招聘した日本科学協会が行っている図書寄贈の概要と今後の提案について話されました。

呑海准教授(筑波大学)

呑海准教授(筑波大学)

別立副図書館長(北京大学)

別副図書館長(北京大学)

高橋附属図書館長

高橋附属図書館長

楊図書館長(大連理工大学)

楊図書館長(大連理工大学)

日中双方から、関係者含めて約80名の参加者があり、総合討論では、中国側の参加者を中心に多数の質問と意見が出され、予定時間を過ぎるほどで、日本の大学図書館運営に高い関心が伺えました。

質疑応答
質疑応答

質疑応答

三島学長

三島学長

終了後の懇親会には、東工大から三島良直 学長、丸山俊夫 理事・副学長、史蹟 教授、陳団長の東工大在学時の恩師である萩原一郎 名誉教授や学友も参加し、参加者との交流を深めるだけでなく、旧交も温められた一日となりました。

なお、開催にあたり、「中国大学図書館担当者訪日団2015」の陳団長ほか6名の方々が、訪日団を代表して、丸山理事・副学長を表敬訪問しました。

陳団長(左)と丸山理事・副学長(右)
陳団長(左)と丸山理事・副学長(右)

基調講演

  • 竹内比呂也(千葉大学副学長・附属図書館長/日本)
    「これからの大学図書館 -教育・学習支援機能を中心に-」

  • 陳進(上海交通大学図書館長/中国)
    「未来に向けた思考、革新による転換」

講演

  • 呑海沙織(筑波大学図書館情報メディア系准教授/日本)
    「ラーニング・コモンズと学生アシスタント」

  • 別立謙(北京大学図書館副館長/中国)
    「北京大学図書館世界一流に向けての行動計画2014~2018概要」

  • 高橋栄一(東京工業大学附属図書館長・大学院理工学研究科教授/日本)
    「研究大学における電子ジャーナル」

  • 楊海天(大連理工大学図書館長/中国)
    「日本科学協会の大連地区の大学への図書寄贈の現状及び提案」

問い合わせ先

研究推進部情報図書館課総務グループ

Tel : 03-5734-3222

パトリック・ハーラン講師による特別講義 開催報告

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7月22日大岡山キャンパスの東工大レクチャーシアターにて、第4回キャンパスアジア・サマープログラムの授業の一環として、「Technology of Tomorrow(明日の技術)」をテーマにした特別講義が開催されました。

キャンパスアジア・プログラムとは、文部科学省補助事業「大学の世界展開力強化事業」により実施している、日中韓のトライアングル交流事業です。

本学リベラルアーツセンター パトリック・ハーラン講師(以下、パックン先生)を迎え、プログラムを共に推進している中国・清華大学、韓国・KAIST(韓国科学技術院)からの留学生、東工大生、欧州からの留学生、そして同じくキャンパスアジア・プログラムを実施している名古屋大学、九州大学の学生、留学生がパネリストとして登壇しました。

東工大、名古屋大、九州大の各パネリスト
東工大、名古屋大、九州大の各パネリスト

会場との意見交換

会場との意見交換

科学技術によって5年後、さらには10年後の環境・エネルギー、住居・生活、移動手段、通信システム、そして娯楽がどのようになっているべきか。現状の問題をどうやって解決し、そして自分はそこにどのような貢献ができるか―。各自の研究分野をベースに、各国からの留学生と東工大生、および他大学の学生が英語でプレゼンテーションを行い、さらにはパックン先生のリードのもと、学生が英語でディスカッションしました。

また、当日は名古屋、九州、東北の3大学と本学会場を遠隔講義システムで繋ぎ、特別講義の様子を中継すると共に、各大学の学生にもディスカッションに参加しました。

学生によるプレゼンテーション、ディスカッション

学生のプレゼンテーションは、ナノ技術を利用して病原菌を感知するセンサー、2020年東京オリンピックに向けた渋滞緩和策、また2030年に世界の人口の60%が中流層になることによる地球全体の資源問題など多岐にわたりました。会場の東工大生や留学生は、中継で結ばれた各大学の学生達も交えて、活発な意見交換を行いました。

学生によるプレゼンテーション、ディスカッション
学生によるプレゼンテーション、ディスカッション

学生によるプレゼンテーション、ディスカッション

日本人学生にとって英語でのプレゼンテーションや、留学生に交じってのフリーディスカッションは、まだ簡単なものではありません。そんな中、パックン先生はファシリテーター(進行役)として、各プレゼンテーションへのコメントや、会場も含めた学生達の、英語によるディスカッションを的確に導きました。そのため、リラックスした雰囲気の中で意見を述べ合う場が出来ていました。

コメントするパックン先生
コメントするパックン先生

今後も国際部では、このような学生交流プログラムを通して、留学生と東工大生の討論の場などを企画・提供する予定です。

問い合わせ先

留学生交流課事業推進グループ

Email : campusasia@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2984

超小型大気圧低温プラズマジェットの開発に成功―3Dプリンター活用、微細加工や医療応用に期待―

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概要

東京工業大学大学院総合理工学研究科の沖野晃俊准教授と神戸大学大学院医学研究科の東健教授は、3Dプリンターを用いた大気圧低温プラズマジェットの開発に成功した。 従来の機械加工では作成が困難な直径3.7mm、重さ3.5g、チタン製の小型大気圧低温プラズマジェットをチタンで造形し、高強度なプラズマを安定的に生成できることを確認した。

3Dプリンターによる造形は設計の自由度が高いことを生かし、小型化と高い処理効果を両立したプラズマ装置の開発を実現した。微細部の表面処理や内視鏡治療などに用いる医療機器への応用が期待される。

この成果は7月31日に米国物理学協会(AIP)の学会誌「AIPアドバンス(Advances)」で発表された。

研究成果

3DプリンターはCADの設計により、継ぎ目のない鎖や複雑な水路、切削加工では不可能な微小な構造などが金属や樹脂で精密に造形できる。本研究ではこの3Dプリンターを用い、従来の機械加工では作成が困難な直径3.7mm、重さ3.5g、チタン製の大気圧低温プラズマ源を開発した。

3Dプリンターは小型の放電電極の中に微細な水冷チャンネルを配置するなどの自由な加工ができるため、放電部の小型化とプラズマの高強度化を両立できる。また用途に合わせたプラズマ生成部の構造を短時間かつ安価に設計・作成できるため、表面処理などの産業応用のみならず、医療用機器としての利用も期待できる。

開発技術の内容

現在、大気圧低温プラズマは室温~100℃程度の低温でありながら高い活性力を持つ活性種を生成できるため、表面親水化による接着性向上、細菌やウイルスなどの殺菌、血液凝固、植物の成長促進など様々な効果が報告されている。さらに、放電損傷のない、手で触れるプラズマも生成可能なため、生体殺菌や手術時の止血などへの応用も検討されている。

しかし、従来は金属や樹脂を旋盤やドリルなどの機械加工でプラズマ生成部を作成していたため、小型化や設計の自由度に制限があり、微小でかつ高強度なプラズマ装置を製作することは困難だった。

例えば、内視鏡の鉗子口は内径3.7mm前後であるため、内視鏡下でプラズマを使用するためには、それよりも細いプラズマ装置を作成する必要がある。これに対し、東工大の沖野准教授らは、世界に先駆けて金属の3Dプリンターを用いてプラズマ生成部を試作し、高強度なプラズマを安定に生成することに成功した。図1上は窒素のプラズマジェット、下は内視鏡の鉗子口にこのプラズマジェットを組み込んだ写真である。

3Dプリンターで作成したプラズマ生成部 上:窒素プラズマ 下:内視鏡に組み込んだ様子

図1. 3Dプリンターで作成したプラズマ生成部

上:窒素プラズマ 下:内視鏡に組み込んだ様子

窒素プラズマのほかにアルゴンやヘリウムのプラズマも生成できる。また、生成されるプラズマは室温程度の低温であり、図2のように熱損傷なく生体に照射処理することができる。

指に窒素プラズマを照射

図2. 指に窒素プラズマを照射

今後の展望

プラズマ生成部が微小であることから、従来の機械加工では製作が困難であった複雑な構造や屈曲した構造を持つプラズマ装置の開発ができる。小型化だけでなく、通常の大きさのプラズマ装置の電極内に水冷機構を配置するなど、3Dプリンターの様々な応用が期待できる。

論文情報

掲載誌 :
AIP Advances, 5, 077184 (2015).
論文タイトル :
Atmospheric nonequilibrium mini-plasma jet created by a 3D printer
著者 :
Toshihiro Takamatsu, Hiroaki Kawano, Hidekazu Miyahara, Takeshi Azuma and Akitoshi Okino
DOI :

問い合わせ先

大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻

准教授 沖野晃俊
Email : aokino@es.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5688

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


COI「『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点」サイトビジット

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東京工業大学では、「『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点」が、文部科学省・科学技術振興機構による「革新的イノベーション創出プログラム(センター・オブ・イノベーション COI STREAM)」のCOI拠点に採択されています。7月28日、大岡山キャンパスにおいて、ビジョナリーチーム(ビジョン2:豊かな生活環境の構築(繁栄し、尊敬される国へ))によるサイトビジット(現地調査)が行われました。

サイトビジット冒頭の挨拶を行う東工大 三島良直 学長

サイトビジット冒頭の挨拶を行う東工大 三島良直 学長

COI STREAMでは、現在潜在している将来社会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿、暮らしのあり方(ビジョン)を設定し、拠点設計や拠点構成に係る検討等を行う「ビジョナリーチーム」を、ビジョンごとに設置しています。 ビジョナリーチームは各拠点に対して、活動成果や研究開発の進捗状況の把握、拠点構想に対する意見聴取等を行うことを目的に、サイトビジットを実施しています。

今回のサイトビジットにあたり、ビジョナリーチームからビジョン2のビジョナリーリーダー横田昭氏、ビジョナリーチームメンバーの大垣眞一郎氏、木本成一氏、水野正明氏ほか7名、文部科学省からは神田忠雄氏、江頭基氏ほか2名が来学しました。

当拠点からは、秋葉重幸プロジェクトリーダー(株式会社KDDI研究所)、小田俊理研究リーダー(東京工業大学教授)をはじめ、若林整サブリーダー(東京工業大学教授)、サテライト機関の北陸先端科学技術大学院大学、NTT、ソニー、富士ゼロックス等の企業関係者が対応しました。

サイトビジットでは、拠点運営状況、ならびに長谷川准教授による視線対話エージェントや浅田教授・鈴木准教授によるテラヘルツ通信デバイスなどのデモンストレーションや各グループによる研究進捗状況等について、ビジョナリーチームへ説明を行いました。説明後には、今後の社会実装の方向性・進め方などについて質疑・総括が行われ、現在取り組んでいるCOI拠点のビジョン、社会実装への取り組みについて理解を深めていただくとともに、今後の進め方について有益なご意見・ご助言をいただくことができました。

デモンストレーションの様子
デモンストレーションの様子

問い合わせ先

『以心電心』ハピネス共創研究推進機構

Email : akiba@ee.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2922

8月17日14:30 本文中に誤字がありましたので、修正しました。

横浜ゴム、東京工業大学バイオマスを原料とした合成ゴム(ブタジエンゴム)の新技術開発

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横浜ゴム(株)は、国立大学法人東京工業大学との共同研究により、バイオマス(生物資源)であるセルロース(植物繊維の主成分である糖)から直接ブタジエンを合成する触媒の開発に成功した。ブタジエンは自動車タイヤなどの原料となる合成ゴム(ブタジエンゴム)の原料として使用される。現在、ブタジエンは石油精製の副産物として工業的に生産されているが、新技術の開発によって、今後石油への依存度が低減でき、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素削減に貢献できる。

横浜ゴムと東京工業大学は、2012年からバイオマスから合成ゴムを作りだす共同研究を進めてきた。東京工業大学(大学院総合理工学研究科 馬場俊秀教授)は糖から直接ブタジエンを合成する触媒の研究を進め、工業的に適した固体触媒を使って高効率にブタジエンを合成することに成功した。今後、量産化に向けた触媒設計を進め、2020年代前半を目標に実用化を目指す計画。ブタジエンゴムは、合成ゴムの中でもスチレン・ブタジエンゴムに次いで使用量が多い。このため新技術の開発は、化石燃料の使用削減への大きな効果が期待できる。

バイオマスを原料とした合成ゴム(ブタジエンゴム)合成のイメージ

東京工業大学は1881年創立の理工系総合大学。持続可能な社会の実現に向け、バイオマスの利用を始めとした様々な基礎研究を推進している。横浜ゴムはタイヤ・ゴム製品の総合メーカー。カーボンニュートラル(排出される二酸化炭素=吸収される二酸化炭素)な植物由来のバイオマスを活用する研究に積極的に取り組んでいる。

問い合わせ先

横浜ゴム(株)広報部 担当:田中

Tel:03-5400-4531
FAX:03-5400-4570

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel:03-5734-2975
FAX:03-5734-3661

磁性で創る新しいフォトニクス材料とデバイス―弱い光で磁化が変化する光磁石の発見と応用―

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概要

東京工業大学総合理工学研究科の山本康介修士課程修了、北本仁孝教授、像情報工学研究所の宗片比呂夫教授らのスピンフォトニクス研究グループは、コバルト(Co)とパラジウム(Pd)のごく薄い膜を交互に積層した磁性薄膜が光励起に対して極めて高い感受性を示す「光磁石」(光により磁性を変えられる材料)候補であることを発見した。パルス光強度 1μJ/cm2 (1平方メートル当たり1マイクロジュール)以下の超短レーザーパルス光[用語1]を用いた光励起磁化才差運動[用語2]の実験によって見出した。

さらに、同研究グループの東工大像情報工学研究所の西林一彦特任講師は、電気通信大学の米田仁紀教授、NHK放送技術研究所の久我淳氏らとの共同研究により、類似の磁性薄膜と光ファイバーを一体化した光導波路を用いて、導波路を伝搬するモード光の選択的な偏光変調に成功し、光磁石材料と偏光変調を組み合わせた光信号多重伝送の可能性を切り拓いた。

研究の背景

デジタル情報技術は私達の生活スタイルに多大な影響を及ぼしつつあるが、そのことが、研究者にとっては、いっそう高速でエネルギー効率の高いデジタル信号の扱い方の研究に対する大きな動機となっている。実際、電気電子工学者は半導体チップ上で光デジタル信号を使うことを検討し始めており、固体物理学者はチップ上で電子の電荷[用語3]に代わって電子のスピン[用語4]を用いたデバイスを研究している。

光は宇宙で最速であり、スピンが磁気シグナルを伝送する際に発生する熱量は、電荷輸送に伴って発生する熱量よりも格段に小さい。しかし、光とスピンを組み合わせて最強タッグチームを作ろうとすると大きな問題がある。それは、光とスピンとの間の相互作用は光と電荷との間の相互作用に比べて小さいという問題である。

研究成果

宗片教授らの研究グループは、電荷とスピンの間の相互作用が大きな物質群に着目した。具体的には、スピン安定状態が異なる2種類の物質の接合界面、この場合はCoとPdの界面で発生する電荷のわずかな偏りに基づくスピンに着目した。超短時間に圧縮した弱い光パルスを試料に照射して、一気に光-電荷-スピン間の相互作用を変調することで、スピンの向き、実際にはスピンが一方向にそろったスピン集団全体の向き(磁化[用語5])を変化させることができることを、磁化の才差運動(コマの首振り運動)を観測することで示した。

ところで、通常の実験では、自由空間を伝搬する光ビームを用いて物質と光の間の相互作用を調べることが多い。しかし、光ファイバーなどの導波路内では、干渉の結果、光は強度分布が複雑な多くのモード光に分かれて伝搬する。したがって、スピンを含む領域をモード光が伝搬する場合、光-スピン間の相互作用が伝搬光全体としてはどのように変調されうるか自明でない。西林特任講師らの実験結果は、スピンを含む空間位置とそれによって変調されるモード光の間に強い相関が存在することを明らかにしている。

今後の展開

弱い光パルスで磁化の周期的な運動を発生させることができると、その周囲を通過する光デジタル信号の偏光面や群速度を制御できる可能性が拓ける。光の多重伝送をはじめ、これまでの光回路では着想されなかったデバイス、例えばスピンと光だけで構成する光メモリや遅延再生、などの研究に発展する可能性を秘めている。具体的なデバイス試作はこれから始まると期待される。

光磁石の発見を示唆する光励起磁化才差運の実験データ(左)とCo/Pd極薄積層構造概略図(中上)、ならびに、その現象を活用した三端子光素子概略図(右下)
図1.
光磁石の発見を示唆する光励起磁化才差運の実験データ(左)とCo/Pd極薄積層構造概略図(中上)、ならびに、その現象を活用した三端子光素子概略図(右下)

用語説明

[用語1] 超短レーザーパルス光 : 100フェムト秒ないしそれ以下に圧縮されたパルス状の光波。今回の実験では基本波長 790nm(ナノメートル)を用いた。

[用語2] 才差運動 : 磁化が方向AからBに変化する際、めざす方向Bを軸としてその周りを周回する運動。

[用語3] 電荷 : ここでは固体中で電流を流す役割を担う電子の電荷を指す。

[用語4] スピン : ここでは電子固有の磁気モーメントと電子軌道が発生する磁気モーメントの両者を指す。

[用語5] 磁化 : スピンが集団的に一方向にそろった安定状態を指す。磁石の強さに相当する。

論文情報

掲載誌 :
IEEE Trans. Mag. 49, 3155 (2013)
論文タイトル :
Low-power photo-induced precession of magnetization in ultra-thin Co/Pd multi-layer films
著者 :
K. Yamamoto, T. Matsuda, K. Nishibayashi, Y. Kitamoto and H. Munekata
DOI :
掲載誌 :
Applied Physics Letters 106, 151110 (2015).
論文タイトル :
Demonstration of polarization modulated signals in a multi-mode GdFe-silica hybrid fiber
著者 :
K. Nishibayashi, H. Yoneda, K. Kuga, T. Matsuda, and H. Munekata
DOI :

問い合わせ先

像情報工学研究所
教授 宗片比呂夫
Email : hiro@isl.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5185

橋梁点検ロボットの大型模型実験を開始

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株式会社建設技術研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:村田和夫)、株式会社ハイボット(本社:東京都品川区、ミケレ・グアラニエリCEO)、国立大学法人東京工業大学理工学研究科・塚越研究室(東京都目黒区、大岡山キャンパス)は、総合科学技術・イノベーション会議の「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(管理法人:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))による共同受託として進めていた橋梁点検ロボット開発の一環として、川崎市内に実験施設を確保しました。実験施設内に製作した実物大橋梁模型を使い、橋梁桁下を橋梁横断方向に駆動するセンサ搭載型ロボットの実験を今秋より開始します。このロボットは、従来の点検ロボットに比べて作業性が飛躍的に向上する点に特徴があります。

従来の橋梁点検は、L字型の長大なアームを有する橋梁点検車を用いるのが一般的でした。橋梁点検車を用いた作業では、橋梁上に大型車両を停止させる必要があり、大掛かりな交通規制が必要であったほか、橋梁幅員が長大な場合にはアーム長が不足して点検できない個所が発生するなどの問題点がありました。

こうした課題を踏まえて、建設技術研究所、ハイボット、東京工業大学では、新たな橋梁点検ロボットの開発に向けて共同研究を実施してきました。この技術開発は、NEDOが公募を行った「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」に応募をして選考されたものです。NEDOからの委託に基づき、平成26年度~平成30年度の5年間の事業期間で研究開発を行っています。

共同研究に取り組んでいる3者では、開発した技術の有効性確認、効率的な現地作業手順の確立を目的とする実証実験を行うこととし、川崎市内に実験施設を確保したうえで、橋長が20mある大型の橋梁模型2基(鋼・コンクリート各1基)を設置しました。こうした実験施設を活用することにより、ロボット開発における迅速なプロトタイプ製作を実現することができます。

橋梁点検ロボットは現在開発中で、今秋より、実験施設で動作実験を開始します。今後4年間を目標に、開発したロボットの効率的な運用方法の確立を図る予定です。

川崎市内に確保した実験施設

川崎市内に確保した実験施設

実験施設内に設置した2基の実物大橋梁模型

実験施設内に設置した2基の実物大橋梁模型

問い合わせ先

株式会社建設技術研究所 広報室 見附(みつけ)

Email : mitsuke@ctie.co.jp
Tel : 03-3668-4378 / Fax : 03-3639-9426

株式会社ハイボット 取締役 北野

Email : kitano@hibot.co.jp
Tel : 03-5791-7526 / Fax : 03-5791-7527

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

ゲルマニウム導入し光るダイヤを開発―バイオマーカーや量子暗号通信への応用へ期待―

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要点

  • ダイヤモンド中の空孔とゲルマニウムの新しい単一カラーセンターを作製
  • プラズマ化学堆積法を使用し高品質ゲルマニウム-空孔センターを形成
  • 生細胞イメージング用のバイオマーカーや量子暗号通信への応用を期待

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の岩崎孝之助教と波多野睦子教授らの研究グループは、ダイヤモンド中の空孔(V[用語1])とゲルマニウム(Ge)からなる新しいカラーセンターの形成に世界で初めて成功した。

ダイヤモンド中にゲルマニウムを導入することによって、ゲルマニウムと格子欠陥(空孔)が結びつき、室温・大気中で安定して発光することを見いだした。アンサンブル状態(カラーセンターが多く含まれている状態)だけでなく、ゲルマニウム原子1個と空孔の組合せからなる単一カラーセンター[用語2]も安定して形成できることを確認した。さらに、マイクロ波プラズマ化学堆積法[用語3]を使用し、発光波長の均一性に優れた高品質アンサンブルGeVセンターを作り出すことにも成功した。生細胞イメージング用のバイオマーカー[用語4]や量子暗号通信[用語5]への応用が期待でき、さらに高感度センサーとしての可能性も有している。研究成果は8月7日に、英国ネイチャー出版グループのオンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。

研究の背景

ダイヤモンド中のカラーセンターは、ホスト材料であるダイヤモンドの高い生体適合性、退色しない安定した発光、室温での単一光子放出などの特長を有することから、生細胞イメージング用のバイオマーカー、量子暗号通信、高感度センサーなどの応用に向けて世界中で研究が活発に進められている。これらの応用には強く発光し、かつ形成を制御しやすいカラーセンターが求められている。様々な応用を実現するためには、アンサンブル状態および単一(ひとつのカラーセンターが孤立している状態)の両方を形成することが重要である。発光が強いアンサンブルカラーセンターはバイオマーカーやセンサー応用に適しており、単一光子源として機能する単一カラーセンターは量子暗号通信への応用が期待できる。

これまでに、ダイヤモンド中のカラーセンターにおいて窒素(N)‐空孔のNVセンターとシリコン(Si)‐空孔のSiVセンターだけが単一状態を示し、かつ再現性良く形成されていた。しかし、NVセンターは主要な発光波長であるゼロフォノンライン(ZPL[用語6])での強度が小さく、SiVセンターは合成装置中の不純物から取り込まれやすく形成が制御しづらいという問題があった。

研究成果

東工大の岩崎助教と波多野教授らは、ダイヤモンド中にゲルマニウムを導入することにより、ゲルマニウムと空孔からなるGeVセンターを形成した。GeVセンターは、外部からの光励起により波長602ナノメートル(nm)で強い発光を示し(図1)、高い再現性で形成できることを確認した。アンサンブル状態だけでなく、単一の状態でも安定したカラーセンターとして機能させることに成功した。

2次自己相関関数測定[用語7]から、単一GeVセンターが単一光子源として働くことを証明し(図1)、飽和発光強度[用語8]として170kcpsという高い値が得られた。励起波長の最適化により、GeVセンターの発光強度をさらに上昇させることができ、再現性良く形成できるダイヤモンド中のカラーセンターのうちで最も高輝度な構造となる可能性がある。第一原理計算により、ゲルマニウム原子は炭素原子が存在する格子位置ではなく、格子と格子の間に存在していることを明らかにした(図1)。

イオン注入法[用語9]を用いると、ダイヤモンド自体にダメージを与えてしまい、GeVセンターの発光波長がばらついてしまうことが観測された。一方、マイクロ波プラズマ化学堆積法を用いると、より鋭く発光波長の均一性に優れたアンサンブルGeVセンターを作り出すことにも成功した(図2)。SiVセンターはマイクロ波プラズマ化学堆積装置中の真空チャンバ-(容器)部品などから容易にダイヤモンド中に取り込まれてしまうが、GeVセンターはより制御しやすく、拡張性が高い発光源として利用される可能性を有している。

ダイヤモンド中の単一GeVカラーセンターの構造と性質

図1. ダイヤモンド中の単一GeVカラーセンターの構造と性質

マイクロ波プラズマ堆積法による高品質アンサンブルGeVカラーセンターの形成

図2. マイクロ波プラズマ堆積法による高品質アンサンブルGeVカラーセンターの形成

今後の展開

ダイヤモンド中のGeVセンターは炭素とゲルマニウムからなる新しい原子レベルサイズの機能性構造であり、ダイヤモンドの特長である高い生体適合性を有する。さらに、発光強度が大きいことから、ナノダイヤモンド中へのGeVセンターの形成により、細胞内で退色しない安定な高輝度マーカーとして機能し、生体機能の解明や細胞レベルでの新しい診断技術につながる。さらに、均一な発光波長の単一GeVカラーセンターによって、量子暗号通信用光源への応用が期待される。

本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構のCREST・研究領域「素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロ ニクスの創成」(炭素系ナノエレクトロニクスに基づく革新的な生体磁気計測システムの創出)の支援を受けて行われた。また今回掲載された「Scientific Reports」は、大阪大学、産業技術総合研究所、滋賀医科大学、ドイツウルム大学の共著論文である。

用語説明

[用語1] 空孔 : 固体結晶において、本来あるべき原子が抜けて孔となっている格子位置のこと。ダイヤモンドの場合は、炭素原子が格子位置からはずれることで空孔が発生する。空孔のVはベーカンシー(Vacancy)の頭文字。

[用語2] カラーセンター : ダイヤモンドなどの固体物質中に形成される欠陥構造で、光の吸収や外部励起による発光を示す。欠陥構造が孤立して存在し、単一光子源として機能するものを単一カラーセンターと呼ぶ。それに対して、光の回折限界以下の距離に単一カラーセンターが密集した状態をアンサンブルと呼ぶ。

[用語3] マイクロ波プラズマ化学堆積法 : 原料(今回の場合はメタンガス、水素ガス、ゲルマニウム小片)をマイクロ波プラズマで分解することによって材料を作製する手法。

[用語4] バイオマーカー : 個々のタンパク質や細胞内部の機能を計測するためのナノサイズのマーカー。複数のマーカーにより細胞内部のイメージングが可能。

[用語5] 量子暗号通信 : 量子状態の特性を利用した通信技術で、外部からの盗聴に対して完全に安全な通信を可能とする技術。

[用語6] ゼロフォノンライン(ZPL) : 発光においてフォノンの遷移を伴わないもの。

[用語7] 2次自己相関関数 : 発光源の時間コヒーレンスを調べる方法。遅延時間(τ)が0のときに、値が0.5以下になる場合に発光源が単一光子を発生していることがわかる。

[用語8] 飽和発光強度 : 単一カラーセンターの最大の発光強度。単位のkcpsはキロ・カウント・パー・セコンド(1秒間のカウント数)

[用語9] イオン注入法 : イオンを加速することによって固体中に導入する手法。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Germanium-Vacancy Single Color Centers in Diamond
著者 :
Takayuki Iwasaki, Fumitaka Ishibashi, Yoshiyuki Miyamoto, Yuki Doi, Satoshi Kobayashi, Takehide Miyazaki, Kosuke Tahara, Kay D. Jahnke, Lachlan J. Rogers, Boris Naydenov, Fedor Jelezko, Satoshi Yamasaki, Shinji Nagamachi, Toshiro Inubushi, Norikazu Mizuochi and Mutsuko Hatano
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 大学院理工学研究科 電子物理工学専攻

岩崎孝之助教、波多野睦子教授
Email : iwasaki.t.aj@m.titech.ac.jp / hatano.m.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3999 / Fax : 03-5734-3999

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部

古川 雅士
Email : crest@jst.go.jp
TEL : 03-3512-3531 / Fax : 03-3222-2066

報道担当

科学技術振興機構 広報課

Email : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

量子コンピュータに関する国際会議 開催報告

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量子アニーリングおよびその関連問題についての国際会議「New Horizons of Quantum and Classical Information 2015 - Quantum annealing, Error correcting codes, and Spin glasses -」が、8月3日から5日の3日間にかけて、東工大蔵前会館で開催されました。

2011年、カナダのベンチャー企業D-Wave Systems社によって、既存のコンピュータと全く異なる量子力学の原理で動作する量子コンピュータが開発されました。このコンピュータの動作原理となるのが、量子アニーリングとよばれる手法です。1998年、本学の西森秀稔教授および本学の修了生である門脇正史氏(当時大学院生)によって提案されました。量子コンピュータの実現にはまだ何十年もかかると言われていたところに出現したD-Waveマシンは大きな反響をよび、現在さまざまな研究が行われています。本会議はそのような中で、関連研究者間での密な議論や情報交換を主な目的として開催されました。

会議には70名近くの参加者が集まりました。実際にD-Waveマシンを用いた研究を行っている4つのグループ(D-Wave社、Google、南カリフォルニア大学、テキサスA&M大学)からの研究者を含む、9名の招待講演および8名の一般講演が行われました。

会場の様子
会場の様子

会場の様子

実際にD-Waveマシンを用いて研究を行っている講演者からは、実際にどのような計算が行われているか、得られたデータをどのように解釈するか、生じる問題をどのように克服するかについてなどの講演が行われました。また、他の技術を用いて量子アニーリングを実装する研究、理論的に計算時間を速めるための手法など、さまざまな関連する話題について、多方面からの議論が行われました。

講演する西森教授
講演する西森教授

量子アニーリングによって解かれる問題は、最適化問題と呼ばれるものです。それは自然科学上の長年の難問である「ガラス」状態に関する理解から、現代のコンピュータ社会を支える情報理論の諸問題、人々の生活を一変させる勢いを見せる最先端の人工知能、機械学習にまで至る広範な問題に解決方法を与えてくれます。本会議では、そのような量子アニーリングの応用範囲となる様々な問題についての講演も行われました。

融解液体の温度を徐々に冷却すると、普通は一定温度で結晶化して固体となるが、このような結晶化をせず、冷却とともに次第に粘度を増し、明確な凝固点を示さずに、原子の配置あるいは原子のつながりが大きく乱れた状態で固化する現象。(出典:『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』2014版)

また、西森教授とともに量子アニーリングの初期研究に携わった門脇氏に、研究の経緯について特別講演を行っていただきました。発表から何年もたって原論文の引用数が伸びているという言及には、研究活動というものの奥深さ、面白さが感じられました。

門脇・西森の量子アニーリングについての論文(1998年)の引用数(Google Scholar Citationsより引用)
門脇・西森の量子アニーリングについての論文(1998年)outerの引用数(Google Scholar Citationsより引用)

連日35度を越える猛暑の中、会議は終始活発な議論で、更に熱気に満ちあふれていました。それでも参加者同士の交流を通して、非常にリラックスした雰囲気の中で行われ、多くのさまざまな議論が交わされました。

問い合わせ先

理工学研究科物性物理学専攻 高橋和孝

Email : nhqci2015@stat.phys.titech.ac.jp

平成27年度「東工大挑戦的研究賞」受賞者決定

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挑戦的研究賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するとともに、研究費の支援を行うものです。本賞を受賞した研究者からは、数多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。

14回目となる今回は10名が選考されました。

受賞者一覧

受賞者
所属
職名
研究課題名(★は学長特別賞)
大学院理工学研究科
(理学系)物性物理学専攻
准教授
★新奇物性開拓に向けた真空中の超低温ナノ粒子系の実現
大学院理工学研究科
(理学系)化学専攻
准教授
★有機高分子半導体と金属錯体を融合したCO2還元光触媒の創出
大学院総合理工学研究科
物質電子化学専攻
助教
★革新的ナノ分光計測法の開拓
大学院理工学研究科
(理学系)数学専攻
准教授
測度距離空間上の確率解析と最適輸送理論
大学院生命理工学研究科
生体システム専攻
准教授
生物の多様性を生み出す分子基盤の解明
大学院生命理工学研究科
生命情報専攻
講師
ヒト腸内環境マルチオミクスデータを用いた超早期大腸がんマーカーの発見
資源化学研究所
無機機能化学部門
准教授
金属ナノ粒子の原子数と形を同時に制御する超微細精密合成法の開発
資源化学研究所
スマート物質化学部門
助教
フォトレドックス触媒が拓くラジカル反応を基盤とした新合成戦略
精密工学研究所
共通部門基盤研究分野
助教
人工心臓装着患者のクオリティ・オブ・ライフの向上
応用セラミックス研究所
材料融合システム部門
助教
木質高層建築を実現・普及させる効率的な制振設計法の開発

(所属順・敬称略)

昨年度の同賞受賞式でのプレゼンテーションの様子
昨年度の同賞授賞式でのプレゼンテーションの様子


鰭から四肢への進化はどうして起ったか―サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす―

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要点

  • 四肢への進化過程で、位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト
  • 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定
  • サメ鰭の前側と後側のバランスを後ろ寄りにすると鰭の付け根の骨は1本に変化

概要

東京工業大学大学院生命理工学研究科の田中幹子准教授と鬼丸洸元大学院生(現CRG博士研究員)らの研究グループは、スペインCRG[用語1]のジェームズ・シャープ(James Sharpe)教授らと共同で、鰭(ひれ)から四肢への進化をもたらした要因の解明に成功した。軟骨魚類ハナカケトラザメ(Scyliorhinus canicula:以下、サメ)の鰭を解析し、サメ胚(個体発生の初期段階)の胸鰭は、付け根の部分が3つの骨からなる原始的な鰭の特徴を持つが、鰭から四肢への進化の過程で、前側と後側の位置価[用語2]をもつ領域のバランスが、後側寄りにシフトすることがわかった。

位置価のシフトの原因は、四肢の原基[用語3]の前側で発現するGli3 遺伝子[用語4]が、サメの胸鰭原基では後側で強く発現しているためであることが考えられた。さらに、Gli3 遺伝子の発現を変化させた原因となったゲノム配列を同定した。

そこで、サメ胚の鰭の位置価を人為的に後側寄りにシフトさせると、陸にあがる直前のティクターリク(Tiktaalik[用語5])の胸鰭のように、付け根の部分の骨が1つに融合し、先端の骨の数が減少していることがわかった。このことから、鰭から四肢への進化の過程では、Gli3 遺伝子の発現が変化したことで、前側と後側の位置価をもつ領域のバランスが、後側寄りにシフトすることが重要な原因のひとつであることが示された。

研究成果は8月18日に国際科学誌「eLife」[用語6]で公開された。

研究の背景

私たちの四肢は、原始的な魚類の鰭から進化したものである。原始的な魚類の鰭は、鰭の付け根の部分が3つまたはそれ以上の骨からなっており、この特徴を備えている鰭をもつ現存の生物としては、軟骨魚類があげられる(図1a)。一方、四肢の場合は、付け根の部分は1つの骨からなっている(図1a)。そこで、東京工業大学の田中准教授と鬼丸洸元大学院生らは軟骨魚類サメ胚を題材に、鰭が四肢へと進化したメカニズムを調べることにした。

研究成果

四肢の原基では、前側(親指側)と後側の領域で様々な形態形成に関わる遺伝子が発現している(図1b)。軟骨魚類サメ胚の胸鰭の原基において、これらの遺伝子の発現パターンを調べてみると、前側と後側の領域のバランスが、四肢の原基よりも後側寄りになっていることがわかった(図1b)。これは、鰭から四肢への進化の過程で、前側と後側の位置価をもつ領域のバランスがシフトしたことを意味している。

軟骨魚類ハナカケトラザメ(S. canicula)の胸鰭とマウスの前肢。(a)骨格パターン。サメの鰭は付け根の部分は3つの骨があり、体幹に付着している。一方、マウスの前肢は、ほかの四肢動物でもみられるように付け根の部分には1つの骨があり、体幹に付着している。(b)遺伝子発現パターン。前側(親指側)の遺伝子(Alx4, Pax9)の発現している領域と 後側の遺伝子(Hand2)の発現している領域のバランスがシフトしているのがわかる。
図1.
軟骨魚類ハナカケトラザメ(S. canicula)の胸鰭とマウスの前肢。(a)骨格パターン。サメの鰭は付け根の部分は3つの骨があり、体幹に付着している。一方、マウスの前肢は、ほかの四肢動物でもみられるように付け根の部分には1つの骨があり、体幹に付着している。(b)遺伝子発現パターン。前側(親指側)の遺伝子(Alx4, Pax9)の発現している領域と 後側の遺伝子(Hand2)の発現している領域のバランスがシフトしているのがわかる。

四肢の形成過程では、前側と後側の位置価をもつ領域のバランスは、四肢の原基の前側の広い領域で発現しているGli3 という遺伝子によって制御されている。そこで、サメ胚の胸鰭の原基において、Gli3 遺伝子の発現を調べたところ、サメの鰭では、Gli3 遺伝子が、四肢の原基とは異なり、後側で強く発現していることがわかった。

この特徴は、軟骨魚類全頭類[用語7]のゾウギンザメ胚の鰭でも確認されたことから、軟骨魚類の鰭で保存されている特徴と考えられた。さらに、Gli3 遺伝子の発現パターンの変化の原因について解析したところ、軟骨魚類から四肢動物への進化の過程においてGli3 遺伝子の発現を制御するゲノム配列が変化していることに起因していることを明らかにした。

これらの結果は、Gli3 遺伝子の発現パターンが変化したことにより、前側と後側の位置価をもつ領域のバランスがシフトして、鰭が四肢へと進化した可能性を示唆していた。そこで、サメの胸鰭の前側と後側の領域のバランスを人為的な方法(レチノイン酸という物質で処理する手法)でシフトさせ、後側化させることで、鰭を四肢へと変化させることができるか検証した。その結果、後側化させたサメの胸鰭は、絶滅した肉鰭類Tiktaalikでみられるような付け根に1つの骨をもつ四肢様の鰭に形を変化させることがわかった(図2)。

サメの鰭を人為的に後側化させた実験の結果。コントロールの鰭(左)では、Hand2遺伝子は後側の限局された場所に発現しており、付け根には3つの骨(ppr, pmr, pmt)がある。一方、人為的に後側化させたサメの鰭(右)では、Hand2遺伝子の発現が前側に広がっている(矢尻)。後側化させた鰭の中でも最もシビアな表現型を示した骨格をみると、付け根の骨は1本になり、先端の骨の数も減少している。興味深いことに、魚類と四肢動物の中間的な形態的特徴をもつとされる絶滅した肉鰭類のTiktaalikでも、付け根の骨(humerus)は1本になっていた。
図2.
サメの鰭を人為的に後側化させた実験の結果。コントロールの鰭(左)では、Hand2遺伝子は後側の限局された場所に発現しており、付け根には3つの骨(ppr, pmr, pmt)がある。一方、人為的に後側化させたサメの鰭(右)では、Hand2遺伝子の発現が前側に広がっている(矢尻)。後側化させた鰭の中でも最もシビアな表現型を示した骨格をみると、付け根の骨は1本になり、先端の骨の数も減少している。興味深いことに、魚類と四肢動物の中間的な形態的特徴をもつとされる絶滅した肉鰭類のTiktaalikでも、付け根の骨(humerus)は1本になっていた。

これらの結果から、鰭から四肢への進化の過程では、Gli3 遺伝子の発現パターンの変化により、前側と後側の位置価のバランスが少しずつシフトしていくことが、付け根の部分に1つの骨をもち、先端には5本の指をもつ四肢へと進化していく上で重要な要因の一つであったと考えられた(図3)。

鰭から四肢への進化のモデル。前側(緑)と後側(青)の位置価をもつ領域のバランスがシフトすることが、鰭から四肢への進化を引き起こす引き金になったのかもしれない。
図3.
鰭から四肢への進化のモデル。前側(緑)と後側(青)の位置価をもつ領域のバランスがシフトすることが、鰭から四肢への進化を引き起こす引き金になったのかもしれない。

研究成果

サメを題材にした今回の研究によって、鰭から四肢への進化が、前側と後側のバランスのシフトが一因となっていることを初めて示すことに成功した。Gli3 遺伝子の発現を制御するゲノム配列の変化が鍵であることを示したが、実際には、Gli3 とあわせて複数の因子が前側と後側のバランスのシフトに関わっていたと思われる。

また、鰭から四肢への進化の過程では、なぜ5本指になったのか(原始的な両生類は7-8本指あったと考えられている)などの問題は解明されていない。今後もサメを題材に、鰭から四肢への進化の過程で働くGli3 以外の因子や、その作用機序を明らかにしていくことで、鰭から四肢への進化の謎に迫りたい。

用語説明

[用語1] CRG : Center for Genomic Regulation スペイン・バルセロナにある生命科学の研究所

[用語2] 位置価 : 個々の細胞に与えられる分子的な番地表示のことで、体の中での相対的位置を示す。遺伝子発現レベルなどによって与えられる。

[用語3] 原基 : 将来ある器官になることに予定されてはいるが,まだ形態的・機能的には未分化の状態にある部分。

[用語4] Gli3 遺伝子 : 四肢では、前側と後側領域のバランスを決める鍵となる遺伝子。

[用語5] ティクターリク(Tiktaalik : 3億年以上前に生息した絶滅肉鰭類で、四肢動物と多くの共通点を持つ。

[用語6] 「eLife」 : 生命科学・生命医学分野の一流の成果が発表されるオープンアクセス誌である(インパクトファクター 9.322)。

[用語7] 全頭類 : 軟骨魚類の現生種は板鰓類と全頭類に大きくわけられる。ハナカケトラザメ(文中の「サメ」)は板鰓類で、ゾウギンザメは全頭類。

論文情報

掲載誌 :
eLife 2015;4:e07048.
論文タイトル :
A shift in anterior-posterior positional information underlies the fin-to-limb evolution.
著者 :
Koh Onimaru, Shigehiro Kuraku, Wataru Takagi, Susumu Hyodo, James Sharpe and Mikiko Tanaka
DOI :

研究グループ

東京工業大学、Center for Genomic Regulation (CRG)、理化学研究所、東京大学

研究サポート

本成果は、文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(B)、東京工業大学グローバルCOEプログラム「生命時空間ネットワーク」、日本学術振興会 日本-オーストラリア二国間交流事業、稲盛財団研究助成金、CREA、及び CRG のサポートを受けて得られた。

問い合わせ先

大学院生命理工学研究科生体システム専攻

准教授 田中幹子
Email : mitanaka@bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5841-7251

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

革新材料・グラフェンの大量生産に大きな指針―電子レンジとイオン液体で高速、高効率なグラファト剥離に成功―

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発表のポイント

  • 革新材料として注目されるシート化合物、グラフェンの大量生産へ向けた発展が期待できる手法を開拓した。
  • 新たに合成したオリゴマーイオン液体[用語1]にグラファイト(グラフェンの積層物)を入れ、マイクロ波(電子レンジ等に使用されている電磁波)を30分間照射するとグラフェンが収率93%で生成し、そのほとんど(95%)が単層グラフェンであった。
  • 得られたグラフェンのイオン液体分散液は初のグラフェン物理ゲルの性質を示した。

発表概要

1原子分の厚さしかない2次元炭素シート、グラフェンは導電性、機械的強度、熱伝導度などの物性を異次元の高さで併せ持つ、「奇跡の材料」(“the miracle material”)として多大な注目を集め続けている。近年、このグラフェンを用いた基礎・応用研究を通じて既存の技術を圧倒的に凌駕する数々の成果が報告されている。しかしながら、グラフェンが発見されてすでに10余年が経つにも関わらず、グラフェンの恩恵は現段階においては研究室の外まで広がっていない。これは高品質グラフェンの大量生産法が確立されていないためである。今回、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻の相田卓三教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 副センター長兼任)、同大学院工学系研究科の松本道生大学院生、東京工業大学資源化学研究所の福島孝典教授らの研究グループは、新しく合成開発したイオン液体とマイクロ波の組み合わせを用いることで、30分という短時間に天然グラファイト(グラフェンの積層体)を1層、1層のグラフェンへと破格に高効率(単層グラフェン選択性:95%)に剥がす手法を開拓した。この手法では原料グラファイトに対し生成物であるグラフェンを93%という高い効率で回収することが可能で、さらに得られるグラフェンは構造欠陥をほとんど含まず、また、剥離が完全に進行しないがゆえに生成される複層物のグラフェンによる実験汚染も少ないことを明らかにした。

本研究によって示されたグラファイトの破格な高効率剥離法は、より複雑・高機能なナノ構造体に関する科学技術の進歩と次世代エレクトロニクス分野での応用に大いに貢献すると期待される。

なお本研究は、総合科学技術・イノベーション会議の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)により、科学技術振興機構を通して委託されたものです。

発表内容

本研究グループは特別な溶剤にグラファイト(グラフェンの積層体)を懸濁させ、マイクロ波を30分照射するだけで、グラファイトを1層、1層の高純度グラフェンへと破格に高効率に剥がす手法を開拓した。得られるグラフェンは93%の単層グラフェン選択性を誇り、また、収率は93%と著しく高い。これまでグラフェンを作り出す手法はさまざま提案されてきた。例えば、スコッチテープを用いてグラファイトから剥がしだす手法は非常に高純度のグラフェンを単離することが可能である一方、全く工業化には適さない。反対に、大規模での生産が可能な酸化グラフェンを還元する手法で得られる還元酸化グラフェンは非常に多くの構造欠陥を有し、今ではグラフェンとは全く異なるものと理解されている。つまり、既報のグラフェン生産法に関して(1)収率、(2)単層グラフェンの選択性、(3)純度、(4)処理時間の4点で分類した時にすべてを満足させる方法は未だに存在しない。本研究グループは、上述の条件すべてを高いレベルで満たす手法を初めて見出すことに成功した。

2003年に本研究グループはイミダゾリウムを主骨格に有する市販のイオン液体が非常に高い親和性をカーボンナノチューブ(CNT[用語2])のπ表面に対して示し、束になったCNTを一本一本にバラけさせることができることを発見した。(Fukushima, T., Aida, T. et al., Science 2003)しかしながら、筒同士の束であるCNTの束は線と線でお互いに接しているのに対し、シートが重なったグラファイトは面と面とで相互作用しているため、著しくお互いへの拘束が強く、その結果としてこのイオン液体をもってしてもグラファイト中のグラフェンを剥がしだすことは難しかった。

そこで本研究グループは、有機合成化学を用いてイオン液体となる分子に工夫を加える事でこの剥離効率を向上することを目指した。具体的には従来のイオン液体と比べてより強くグラフェン/グラファイトのπ平面とイオン液体分子が相互作用をするイオン液体分子を用いれば剥離の効率が向上するのではないかと考えた。本研究グループは1分子内に2つのイミダゾリウム部位を持つイオン液体分子IL2PF6を設計・合成した。この分子は生体・ウイルスなどで見られる多点相互作用[用語3]の効果から相互作用の向上が期待できる。このイオン液体に原料であるグラファイトを25 mg/mLの濃度で懸濁させ、CEM社のマイクロ波合成装置でマイクロ波を30分間照射した。このマイクロ波照射後、懸濁液からイオン液体を洗い流すことで黒色の粉末固体を得た。この粉末を各種分析評価したところ(1)収率 93%(2)単層選択性 95%、(3)純度は原料のグラファイトとほぼ変わらないことが明らかとなった。この手法は(4)30分という短時間で作られたものであることも考慮にいれると上述した条件(1)-(4)をすべて満たす驚きの手法であることが判明した。(図1)

電子レンジとオリゴマーイオン液体でグラファイトの高効率剥離を実現

図1. 電子レンジとオリゴマーイオン液体でグラファイトの高効率剥離を実現

この非常に高効率な剥離を実現したイオン液体IL2PF6は今までの液相分散媒よりも破格に大量のグラフェン(100 mg/mL)を分散させることが可能であることが、さらなる測定の結果明らかになった。得られたグラフェンを再度IL2PF6に混合すると容易に再分散させることができ、ある濃度を超えるとゲル化することが明らかになった。さらに混合するグラフェン量を増加させることにより100 mg/mLと非常に高濃度な状態まで、そのゲルとしての強度を増強することに寄与した。構造欠陥のないグラフェンによる物理ゲル[用語4]は本例が初めてであり、このような高濃度グラフェンゲルは様々な電子材料への応用が期待できる。

この珍しい挙動を示すグラフェンゲルが発見されたことの大きな要因としては、高品質グラフェンを大量に得ることに成功したことが挙げられる。本研究はイオン液体とマイクロ波という組み合わせがグラフェンの大量生産に大きな指針になることを示唆している。折り曲げ可能なディスプレーやウエアラブルデバイスなどの次世代デバイスのコア材料として期待されるグラフェンを研究室の中の技術に留めず、広く社会に使える技術として拡散させる基盤づくりをすることは現在の科学技術における主要な命題の一つであり、本研究がその命題に対して大きな指針を与えることが期待される。

用語説明

[用語1] イオン液体 : 塩と同じく、プラス電荷の部位とマイナス電荷の部位しか含まないにも関わらず、室温で液体として振る舞う物質の総称。分子構造を自由に改変して様々な性質の液体を作れることから「デザイナー溶媒」と呼ばれる。

[用語2] カーボンナノチューブ : グラフェンを筒状にした炭素材料の一つ。名城大学終身教授飯島澄男博士によって発見され、その高い導電性、物理強度から大変注目されている。宇宙エレベータなどへの応用展開も積極的に研究開発されている。

[用語3] 多点相互作用 : 生体やウイルスなどに見られる引き合う力を強くする手法の一つ。お互いに引き合う分子部位を複数示すものを組み込むことで、分子どうしの引き合う力を強くする効果がある。

[用語4] 物理ゲル : ゲルの分散質が非共有結合と呼ばれる可逆な結合により架橋されているもの。物理ゲルとしての性質を示す分散体は、分散質である非共有結合性ユニットの分散媒中の濃度を上げていくと、ある一点の濃度(臨界ゲル化濃度)でゾル-ゲル転移を起こしゲル化することが知られる。

論文情報

掲載誌 :
Nature Chemistry(オンライン版 8月10日号)
論文タイトル :
Ultrahigh-throughput exfoliation of graphite into pristine 'single-layer' graphene using microwaves and molecularly engineered ionic liquids
著者 :
松本 道生、斉藤 雄介、朴 致映、福島 孝典、相田 卓三
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻

教授 相田卓三
Email : aida@macro.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-7251

E-JUST設立5周年記念行事 開催報告

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5月19日から21日までの3日間、エジプト アレキサンドリア図書館にて、E-JUST設立5周年記念行事が開催され、東工大関係者が複数出席しました。

E-JUSTは、エジプト・アラブ共和国が日本政府に支援を要請し、2010年アレキサンドリアに新設された大学です。日本型の工学教育の特長を活かした「少人数、大学院・研究中心、実践的かつ国際水準の教育提供」をコンセプトとしています。本学は、準備段階からE-JUST設立プロジェクトに積極的に貢献し、設立後は、同大大学院に設置された8つの専攻のうち3専攻に専攻幹事校として協力しています。

日程

5月19日
E-JUST理事会および学位記授与式 (学位記授与式式次第(English))PDF、ICIE 2015
5月20~21日

今回の記念行事では、19日にE-JUST理事会および学位記授与式が挙行されました。また、19日夕方、20日および21日には、The 2nd E-JUST International Conference on Innovative Engineering(E-JUST主催 第2回革新的な工学に関する国際会議:ICIE 2015)が開催されました。

3日間を通じて、E-JUSTに関わる日本の大学からの来訪者をはじめ、エジプト国内外から多数の参加者が集い、行事は成功裏に終わりました。

本学からは、鈴木正昭 名誉教授、市村禎二郎 名誉教授、オリバーC.サアベドラ 土木工学専攻特任准教授、藤祐司 経営工学専攻特任准教授、および、招待基調講演者として田中義敏 技術経営専攻教授が参加しました。

E-JUST理事会および学位記授与式

19日10:00から行われたE-JUST理事会には、鈴木正昭 名誉教授がE-JUST副学長として、また、市村禎二郎 名誉教授がE-JUSTエネルギー環境化学工学 学類長アドバイザーとして参加しました。

また、15:30から行われた学位記授与式は、過去先延ばしにされていた、2014年2月から2015年2月までの修了生を対象に行われました。本学が支援している3専攻からも複数の修了生が輩出されており、その立派な姿を見せていました。

特に、修了生総代となったアリヤーさんは、東工大 経営工学専攻が支援するIndustrial Engineering and Systems Management(経営工学・システム管理)専攻初の博士号取得者であり、2013年2月から9か月間、東工大に留学した経験を持っています。スピーチでは、アラビア語・英語および日本語を用い、東工大で過ごした日々の素晴らしさについても言及していました。このような質の高い修了生達を輩出できたことは、E-JUSTを支援する東工大として誇るべきものです。

  • 学位記授与式にて(左端が市村名誉教授、左から3番目が鈴木名誉教授)

    学位記授与式にて
    (左端が市村名誉教授、左から3番目が鈴木名誉教授)

  • 修了生総代アリヤーさんによるスピーチ

    修了生総代アリヤーさんによるスピーチ

修了生一同集合写真
修了生一同集合写真

ICIE 2015

ICIE 2015は、E-JUSTおよび日本のこれまでの活動や取り組みの報告を核とした、中東およびアフリカにおける高等教育の推進を目的とした国際会議です。

本会議開催にあたっては、鈴木正昭 名誉教授(E-JUST第一副学長)が先頭に立って指揮をとり、アブデル-ファター・エル-シーシー エジプト大統領の後援のもに行なわれました。開催期間中、日本、エジプトはもとより、周辺諸国の大学関係者や、ビジネス分野からも多数の参加がありました。

19日夕方に行われたオープニング・セッションは、鈴木正昭 名誉教授の開会あいさつに始まり、香川剛廣 在エジプト日本国大使館 特命全権大使や、アーメド・マグディ・イブラヒム・エル-ゴハリー E-JUST学長らのスピーチが続きました。その後、白井克彦 元早稲田大学総長による"Overview of Higher Education in Japan(日本の高等教育の概要)"という題目のオープニング・レクチャーがありました。

5月20日

20日は、小寺清国際協力機構(JICA)理事による"JICA's Contribution for Higher Education(高等教育のためのJICAの貢献)"という題目の基調講演に始まりました。また、中東およびアフリカの高等教育に関わる取り組みについて、エジプト周辺の大学における活動および日本の支援に関する招待講演が行われました。東工大からは、市村名誉教授が"Educational Linking between Universities and Schools(大学と学校の間の教育リンク)"という題目で講演を行ないました。日本の文部科学省や科学技術振興機構が支援している教育プログラム(スーパーサイエンスハイスクールouterサイエンス・パートナーシップ・プログラムouterなど)や東工大の地域教育への貢献事例などを紹介しました。さらに、E-JUSTで体験したエジプトの高校生との交流(科学実験講座)などについて述べました。

  • E-JUST第一副学長として登壇した鈴木名誉教授

    E-JUST第一副学長として登壇した鈴木名誉教授

  • 市村名誉教授

    市村名誉教授

5月21日

21日は主に、E-JUSTにおける日本の大学および周辺企業などとの連携によって行われた、イノベーションに関わる活動についての講演がありました。

東工大からは田中義敏 技術経営専攻教授が、"Japanese experience in implementing and managing technology transfer office(実装し、技術移転オフィスを管理する上で日本の経験)"という題目の基調講演を行ないました。東工大の事例を中心とした、産官学連携による知的財産創造に関する取り組みについて紹介しました。

  • 田中教授

    田中教授

  • 証明書および贈物を受取る田中教授

    証明書および贈物を受取る田中教授

その後、2会場に分かれ、E-JUSTの8専攻それぞれの活動に関する報告が行われました。

東工大が支援を行っているIEsM (経営工学専攻)、ERE (エネルギー資源工学専攻)、ENV (環境工学専攻) も、それぞれに報告を行いました。また、E-JUSTのTechnology Management Department(技術経営専攻)の運営に当初から携わっている松下慶寿 博士(東工大出身のJICA専門家)による報告も行われ、E-JUST運営における東工大の貢献が改めて認識される機会となりました。

  • 松下慶寿 博士

    松下慶寿 博士

  • E-JUST学生

    E-JUST学生

TBSテレビ「未来の起源」に宍戸厚研究室の学生が出演

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本学、資源化学研究所 高分子材料部門 宍戸厚研究室の博士後期課程3年・王静さんが、TBS「未来の起源」に出演しました。王さんが研究している「強い光だけを弱めるフィルム」について紹介されました。

番組は、8月16日(日)にTBSで放送され、BS-TBSで再放送が予定されています。見逃した方はぜひご覧ください。

番組名:
BS-TBS 「未来の起源」
タイトル:
たった一枚のフィルムで見える世界が変わる
放送日:
8月23日(日) 20:54~21:00
  • 宍戸厚准教授

    宍戸厚准教授

  • 王静さん

    王静さん

低励起エネルギーにおける核分裂の動的様相

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概要

東京工業大学原子炉工学研究所の千葉教授は、有友特任准教授、Ivaniuk客員教授と共同で低励起エネルギーにおけるウラン領域原子核の核分裂を記述する動的模型をランジュバン方程式に基づいて構築し、そのメカニズムの探求を行った。

研究の背景

低励起エネルギーにおけるウラン領域原子核の核分裂は基礎・応用両面から重要であるが、いまだそのメカニズムには定説がなく、定量的な予測も困難な状況にある。

研究成果

  • 核分裂で生成する二つの原子核の質量数が等しくない非対称核分裂の二つのピーク値はサドル領域で決定され、分布の幅は断裂時近辺におけるランダム力によるものであることを見いだした。
  • 核分裂メカニズムの解明は原子核の大振幅集団運動の理解と原子力エネルギーの安全な利用に直結する。

今後の展開

現在の模型で置かれているいくつかの制限を緩和し、より現実的なシミュレーション計算を可能とすることで、広い領域の原子核に対する定量的予測を行い、原子力開発に必要な核データを提供する。

ランジュバン軌道の例(赤線)。横軸は原子核の伸びに対応し、縦軸は質量非対称度を表す。

図1. ランジュバン軌道の例(赤線)。横軸は原子核の伸びに対応し、縦軸は質量非対称度を表す。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review C 90, 054609-1-8(2014).
論文タイトル :
Fission dynamics at low excitation energy.
著者 :
有友嘉浩、千葉敏、F. Ivaniuk
DOI :

問い合わせ先

原子炉工学研究所
教授 千葉敏
Email : chiba.satoshi@nr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3066 / Fax : 03-5734-2959

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