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科学教室「生命現象」「海辺に棲む生物の観察」開催報告

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工大祭期間中の10月10・11日の2日間に、科学教室「生命現象 ―物理と化学からのアプローチ―」と「海辺に棲む生物の観察 ―ウニやヒトデはどうやって生きているの?―」を開催しました。この教室は、東工大基金を活用した日本再生プロジェクト「ものつくり人材のすそ野拡大支援」事業の支援を受けて行われました。

濱口名誉教授による「BZ 反応」の実験についての説明
濱口名誉教授による「BZ 反応」の実験についての説明

薬品を混ぜ合わせ、出て来たパターンは色々

薬品を混ぜ合わせ、出て来たパターンは色々

初日の「生命現象 ―物理と化学からのアプローチ―」は、高校生を対象としました。

生物が作り出すシマウマの縞模様やキリンの斑点、熱帯魚のカラフルな模様を、シャーレの中の化学反応で作るという内容です。ベロウソフ・ジャボチンスキー(BZ)反応は、この化学反応の有名な例です。生物現象の複雑さを考えると、極めて単純な試薬の混合によって容易に実現といえるでしょう。

パターンを動画で撮影

パターンを動画で撮影

BZ反応のパターンをカメラで動画撮影し、コンピュータに取り込んで画像解析を行いました。得られた画像から、BZ反応の速度や周期性などを理解してもらい、これらのことから「生物現象の複雑さ」を考えてもらいました。

事前に調べて実験に参加した高校生もいて、「確認することができてさらに興味が深まった」「生物、物理、化学の密接な関係に触れた事が新鮮だった」という感想を述べていました。

撮影した動画をコンピュータで画像解析

撮影した動画をコンピュータで画像解析

ディスカッション

ディスカッション

2日目は、小学生を対象にして、ウニやヒトデ、ウミホタルを材料に「海辺に棲む生物の観察 ―ウニやヒトデはどうやって生きているの?―」を行いました。

2日目も濱口名誉教授から「海辺に棲む生物の観察」について説明

2日目も濱口名誉教授から
「海辺に棲む生物の観察」について説明

夏に海で見かけたウニやヒトデはどうやって生きているのでしょう? ウニは棘だらけで動けるの? ヒトデは柔らかいの? 硬いの? 実際に見て、さわって確かめてみました。これらの生物は想像もつかない動きをして、餌をとり、移動します。環境の異なるところに棲むウニやヒトデの動きを観察し、かれらの餌について考えたり、実際に手に取って触って行動を推測したりして、動きの仕組みを考えました。

小学生は生き物に触れ、ヒトデの硬い状態と柔らかな状態に驚き、ウミホタルの光にも強い興味を持ったようです。

ヒトデのブリッジ

ヒトデのブリッジ

ウニが砂の中へ移動

ウニが砂の中へ移動

海辺の生き物はどんな動きをしているか観察
海辺の生き物はどんな動きをしているか観察

動きについて話を聞く

動きについて話を聞く

話し合いの様子

話し合いの様子

皆さんから様々なリクエストをいただき、大学院生命理工学研究科 基礎生物講座では、次の科学教室の企画を考え始めています。

東工大基金

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お問い合わせ先

生命理工学研究科基礎生物
Email : ssatoh@bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2700


電池を使うと超伝導に―超伝導エレクトロニクス実現に道筋―

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成果のポイント

  • チタン酸リチウム薄膜を負極に用いたリチウムイオン電池セルを形成
  • セルの充放電によりチタン酸リチウムの超伝導-常伝導状態の制御に成功
  • 超伝導エレクトロニクス応用につながる新技術

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の吉松公平助教と大友明教授らの研究グループは、リチウムイオン電池[用語1]の充電・放電原理を用いることにより、チタン酸リチウム[用語2]の超伝導[用語3]状態制御(スイッチング)に成功した。

超伝導材料であるチタン酸リチウム薄膜を負極材に用いたリチウムイオン電池セル構造を形成して充電・放電操作を繰り返し行い、同時にチタン酸リチウムの電気抵抗を測定した。その結果、充電時には常伝導に、放電時には超伝導にと可逆的[用語4]に電気抵抗が切り替わることを実証した。

これにより、超伝導-常伝導状態のスイッチングが可能となり、超伝導エレクトロニクスの実現が期待される。研究成果は、英国の科学誌ネイチャー(Nature)の姉妹紙のオンラインジャーナル「サイエンティフィック リポーツ(Scientific Reports)」で11月6日に公開された。

研究成果

東工大の吉松助教と大友教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の動作原理に着目し、超伝導制御をリチウムイオンの移動で行う新たな電子デバイス原理の提案・実証を行った。同研究グループは、高品質なチタン酸リチウム薄膜を作製し、その薄膜を負極としたリチウムイオン電池構造を形成(図1)した。この電池に対し、充電・放電操作を行い、同時にチタン酸リチウム薄膜の電気抵抗を測定した。

今回の研究で作製したリチウムイオン電池構造の概略図。超伝導材料であるチタン酸リチウム薄膜を負極に用いている。
図1.
今回の研究で作製したリチウムイオン電池構造の概略図。超伝導材料であるチタン酸リチウム薄膜を負極に用いている。

その結果、超伝導状態のチタン酸リチウム薄膜にリチウムイオンを挿入する充電反応を行うと、常伝導状態への転移が観測された。一方、チタン酸リチウム薄膜からリチウムイオンを脱離する放電反応を行なうことで、超伝導状態を回復させることに成功した(図2)。

チタン酸リチウムの可逆的な超伝導転移の様子。初期状態と放電状態では11ケルビンで抵抗率が0になり、超伝導状態が発現している。一方で、充電状態では抵抗率が0にならず常伝導状態となっている。さらに初期状態と放電状態の超伝導転移温度が一致しており、可逆的な転移であることがわかる。
図2.
チタン酸リチウムの可逆的な超伝導転移の様子。初期状態と放電状態では11ケルビンで抵抗率が0になり、超伝導状態が発現している。一方で、充電状態では抵抗率が0にならず常伝導状態となっている。さらに初期状態と放電状態の超伝導転移温度が一致しており、可逆的な転移であることがわかる。

また、充電・放電操作前後での超伝導転移温度を比較したところ、両者が完全に一致しており「可逆的な超伝導転移」であることを発見した。この超伝導転移は、充電・放電サイクルを繰り返しても安定に発現する(図3)。すなわち、「超伝導・常伝導」状態を「On・Off」とする超伝導デバイスへとつながる成果である。

充電・放電状態でのチタン酸リチウムの超伝導転移温度変化の様子。充電・放電反応を繰り返しても、充電状態では常伝導、放電状態では超伝導をとる。
図3.
充電・放電状態でのチタン酸リチウムの超伝導転移温度変化の様子。充電・放電反応を繰り返しても、充電状態では常伝導、放電状態では超伝導をとる。

研究の経緯

超伝導体は核磁気共鳴画像法(MRI)により医療分野で活躍し、送電ケーブルやリニアモーターカーなどへの応用が期待される重要な技術である。この超伝導現象を電子デバイスへと適用する超伝導エレクトロニクスに関しても、実用化に向けた研究が行われている。超伝導状態と常伝導状態のスイッチングには、非常に多くの電子が必要である。しなしながら、超伝導状態を制御できるほどの電子をそのまま扱う基盤技術が存在せず、実用化への道のりは遠いと考えられている。そのため、この超伝導状態を制御可能なスイッチング手法の開発が強く望まれていた。そこで、本研究では電子とイオンをペアで扱うリチウムイオン電池に着目した。イオンを同時に移動させることで、従来よりも遥かに多くの電子を超伝導体に与えることができると考えられる。

今後の展開

今回の結果は、リチウムイオン電池の充電・放電現象を用いて超伝導状態が制御できることを実証したものである。今後は、セル構造の小型化や全固体化などを進め、超伝導エレクトロニクス実現へ向けた応用研究へと進展させる。

用語説明

[用語1] リチウムイオン電池 : リチウムイオンが伝導を担い、充電により繰り返し使用できる二次電池の1つ。リチウムイオン電解液が正極材と負極材に挟まれた構造を持つ。現在、携帯電話やノートパソコンのバッテリーなどに幅広く利用されている。

[用語2] チタン酸リチウム : Li1+xTi2O4の組成で表される複合酸化物材料。リチウムの組成xが-0.3 ≤ x ≤ 1の範囲で存在し、リチウム組成により超伝導状態にも常伝導状態にもなる。

[用語3] 超伝導 : 物質を非常に低い温度まで冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象。

[用語4] 可逆変化 : 物質がある状態AからBへと変化した際に、再び状態BからAに戻ることができる場合に、可逆変化と呼ばれる。一方、戻ることができない場合には不可逆変化と呼ばれる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Reversible superconductor-insulator transition in LiTi2O4 induced by Li-ion electrochemical reaction
著者 :
K. Yoshimatsu, M. Niwa, H. Mashiko, T. Oshima, and A. Ohtomo
DOI :

問い合わせ先

大学院理工学研究科応用化学専攻
助教 吉松公平

Email : k-yoshi@apc.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2146

大学院理工学研究科応用化学専攻
元素戦略研究センター(兼務)
教授 大友明

Email : aohtomo@apc.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2145

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

日野自動車奨学金 2015年度授与式開催

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8月31日、タイ王国パトゥムタニー県タイランドサイエンスパーク内のタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)outerにおいて、第3回日野自動車奨学金授与式を開催しました。TAIST-Tokyo Tech(TAIST)の自動車工学に入学した学生のうち、コントーン・タマクンさんが今年度の受給者に選ばれました。

コントーンさん(右から3番目)とHino Motors Manufacturing (Thailand) Ltd.の皆様コントーンさん(右から3番目)と
Hino Motors Manufacturing (Thailand) Ltd.の皆様

TAISTは、NSTDAと、タイの4大学(キングモンクット工科大学ラカバン校outerキングモンクット工科大学トンブリ校outerタマサート大学シリントーン国際工学部outerカセサート大学outer)、東工大の連携により、2007年に設立された国際協働による大学院です。運営にあたっては、日本・タイ両国の産業界の皆様や、本学同窓生の皆様からもご支援をいただいています。

スピーチするマノップ・ナクブート人事担当専務スピーチするマノップ・ナクブート人事担当専務

日野自動車奨学金は、日野自動車株式会社創立70周年記念事業の一環としていただいたご寄付を基にスタートした制度です。TAISTの自動車工学コースで学ぶ特に優秀な学生1名に、修士課程2年間にわたって奨学金を支給します。学生は授業料についてNSTDAからの支援を受けているため、日野自動車奨学金を受給することで、TAISTに所属する2年間、生活基盤を心配することなく勉学に集中することができます。コントーンさんは、3人目の日野自動車奨学金受給者となります。

授与式では、日野自動車株式会社の現地拠点であるHino Motors Manufacturing (Thailand) Ltd.のマノップ・ナクブート人事担当専務より、学生にメッセージをいただいた後、コントーンさんに目録が授与されました。その後、感謝の意を表して、本学の丸山俊夫理事・副学長およびNSTDAのオムジャイ副長官より、花束と記念品が日野自動車株式会社に贈呈され、一同で記念写真に納まりました。

コントーンさん(右から3番目)を囲んでコントーンさん(右から3番目)を囲んで

東工大基金

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問い合わせ先

国際部国際事業課 TAIST事務室

Email : taist@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2237

ハスの葉を鋳型にメタマテリアル作製―反射率1%以下の超薄膜光吸収構造実現―

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要点

  • ハスの葉表面のナノ構造を鋳型に高効率で大面積の光吸収構造を作製
  • 光をトラップして反射率1%以下の光吸収構造を実現
  • 太陽電池の効率向上や光熱変換素子への応用に期待

概要

東京工業大学大学院総合理工学研究科の梶川浩太郎教授と、修士課程2年海老原佑亮、芝浦工業大学工学部の下条雅幸教授は共同で、ハス(蓮)の葉のナノ構造を鋳型に使い、高効率で大面積の「超薄膜光吸収メタマテリアル」の作製に成功した。

研究グループは高分解能走査型電子顕微観察により、ハスの葉の表面に直径100nm程度の多数のマカロニ状のナノ構造があることを見いだし、その上に膜厚10~30nmの金を被覆するだけで、照射された光をトラップして外に逃がさない光メタマテリアル[用語1]構造を作製した。このメタマテリアルはすべての可視光領域で反射率が1%以下という良好な光吸収構造[用語2]となっている。

この成果は、生体が持つナノ構造を鋳型とすれば、様々な機能を持つ大面積のメタマテリアル(バイオ・メタマテリアル)を低コストに作製することにつながると期待される。研究成果は、英科学誌ネイチャーグループのオンラインジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に11月4日掲載された。

研究成果

東工大の梶川教授、芝浦工大の下条教授らの共同研究グループは、ハスの葉を金の薄膜で被覆するだけで、表面に照射した光を吸収する大面積光メタマテリアル構造を作製した。その写真を図1(a)に示す。中心部分が光を吸収するため黒く、固定のためのテープの表面は金色である。いずれも金が被覆されているが、その違いは明らかである。金を被覆しても黒くなる性質は、図1(b)に示すハスの葉が持つ多数のマカロニ状のナノ構造が光をトラップするためと考えられる。

比較のため、同じように金で被覆してもドクダミの葉は図1(c)に示すように金色をしている。ヨモギやサンショウ(山椒)の葉を被覆しても同様に金色であった。ドクダミの葉の表面の電子顕微鏡像を図1(d)に示す。ドクダミはナノ構造を持たないことから、ハスの葉のナノ構造が光のトラップに重要な役割を果たしていることがわかる。

この構造は10~30nmという極めて薄い金属膜で光吸収構造が構築できるため、太陽電池の効率向上や高効率の光熱変換材料として期待できる。また、自然界のナノ構造を使った様々な大面積光メタマテリアル実現の可能性を示唆する。

(a)ハスの葉を30nm厚の金で被覆したメタマテリアル (b)ハスの葉の電子顕微鏡写真 (c)ドクダミの葉を30nm厚の金で被覆した試料 (d)ドクダミの葉の電子顕微鏡写真
図1.
(a)ハスの葉を30nm厚の金で被覆したメタマテリアル (b)ハスの葉の電子顕微鏡写真 (c)ドクダミの葉を30nm厚の金で被覆した試料 (d)ドクダミの葉の電子顕微鏡写真

研究の背景

光メタマテリアルは人工的なナノ構造を使った特異な光学的性質を示す物質である。負の屈折や物質の不可視化(クローキング)、高効率光吸収構造などに利用できる可能性があるため、多くの研究者の注目を集めている。光メタマテリアルの多くは、これまで微細加工技術を使って作製されてきた。そのため、低コストで大面積の光メタマテリアルを作製することは難しかった。

研究グループは自然界のナノ構造を利用して、特異な光学的性質を持つ人工材料の作製に成功した。自然界のナノ構造を利用すれば低コストで大面積のメタマテリアルが作製できる可能性があるため、基礎的な興味だけでなく応用上も意義がある。今回は高効率な光を吸収する構造を研究した。

研究の経緯

図2(a)に示すようにハスは夏に綺麗な花を咲かせるが、その葉の表面は強い撥水性(水を弾く性質)を持つ。これは、図2(b)に示すような表面のミクロな凹凸のこぶ構造が撥水性を強めているためである。このミクロなこぶ構造に加えて、こぶの表面に図1(b)に示した多数のマカロニ状のナノ構造が分布している。それらの模式図を図3に示した。これを鋳型として利用すれば光メタマテリアルを作製できると考えて研究を行った。

(a)蓮の花 (b)葉の表面のミクロ構造

図2. (a)蓮の花 (b)葉の表面のミクロ構造

蓮の葉の構造の模式図

図3. 蓮の葉の構造の模式図

今後の展開

自然界にはさまざまなナノ構造が多数存在し、今後、多様な性質を持つ光メタマテリアルが作製できると期待される。

用語説明

[用語1] メタマテリアル : 人工的なナノ構造を使った特異な光学的性質示す物質。負の屈折や物質の不可視化(クローキング)、高効率光吸収構造などに利用できる可能性がある。

[用語2] 光吸収構造 : 光を効率よく吸収する物質。太陽電池や光検出器、光熱変換素子などに利用できる。また、光をよく吸収する物質は、高効率に光を輻射するので特に赤外領域の発光素子として利用できる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Biometamaterials:Black Ultrathin Gold Film Fabricated on Lotus Leaf
著者 :
Yuusuke Ebihara, Ryoichi Ota, Takahiro Noriki, Masayuki Shimojo and Kotaro Kajikawa
DOI :

問い合わせ先

大学院総合理工学研究科物理電子システム創造専攻
教授 梶川浩太郎

Email : kajikawa@ep.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5596 / Fax : 045-924-5596

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

芝浦工業大学 経営企画部企画広報課

Email : koho@ow.shibaura-it.ac.jp
Tel : 03-5859-7070 / Fax : 03-5859-7071

平成27年度「東工大学生リーダーシップ賞」授与式挙行

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平成27年度の「東工大学生リーダーシップ賞」授与式が、10月22日に学長室で行われました。

この賞は、本学学部の2年次から4年次の学生を対象とし、学生の国際的リーダーシップの育成を目的としています。知力、創造力、人間力、活力など、リーダーシップの素養に溢れる学生を表彰し、さらなる研鑽を奨励するために平成14年度から実施されています。

授与式後の記念撮影
授与式後の記念撮影

授与式では、学長から賞状の授与と副賞の贈呈が行われました。授与式終了後は、学長、理事・副学長及び学部長と受賞者との歓談が行われました。

今回表彰された学生は以下の通りです。

平成27年度「東工大学生リーダーシップ賞」受賞者

所属
学年
氏名
主な受賞理由
工学部
金属工学科
4年
山野 花穂
  • 金属工学科創成プロジェクトでのオルゴール製作活動
  • Tokyo Tech AYSEAS派遣プログラムでの活動
工学部
無機材料工学科
4年
望月 泰英
  • ASPIRE League での活動
  • 学勢調査での活動
工学部
化学工学科
4年
西山 奈菜
  • 東工大Science Technoでの活動
工学部
高分子工学科
3年
栗林 純平
  • 東工大ボランティアグループでの活動
  • 学勢調査での活動
工学部
機械科学科
4年
ガーワル ロビン
  • TISA、TEDx Tokyo Tech等での活動
工学部
建築学科
3年
平尾 しえな
  • 海外で開催されたワークショップ等での活動

受賞学生
受賞学生

東京工業大学COIシンポジウム2015開催報告

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10月20日、大岡山キャンパスレクチャーシアターにおいて、「東京工業大学COIシンポジウム~『以心電心』ハピネス共創社会の実現に向けて~」が、東京工業大学『以心電心』ハピネス共創研究推進機構主催、日本経済新聞社後援により開催されました。

東京工業大学では、「『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点」が、文部科学省・科学技術振興機構による「革新的イノベーション創出プログラム(センター・オブ・イノベーション COI STREAM)」のCOI拠点に採択されています。COI STREAMでは、現在潜在している将来社会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿、暮らしのあり方(ビジョン)を設定しています。「『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点」は、ビジョン2:豊かな生活環境の構築(繁栄し、尊敬される国へ)として活動しています。

会場の様子
会場の様子

本拠点では、皆が多様な絆で結ばれ、共感の輪が広がる社会(ハピネス共創社会)を目指し、世代・文化・言語の違いを超えて真意と感情を伝える『以心電心』コミュニケーションサービス実現のため研究開発を進めています。シンポジウムでは、この活動を一般から専門家そしていろいろご支援いただく方々を含めて広く社会にアピールし、将来のビジョンや研究開発活動を紹介すると共に、東京工業大学COI拠点が目指すハピネス共創社会への夢を語りました。

当日は三島良直学長の挨拶に続いて、文部科学省科学技術・学術政策局 川上伸昭局長、ビジョン2 横田昭ビジョナリーリーダーから来賓挨拶をいただき、イノベーションの必要性と東工大の本機構への期待が寄せられました。基調講演では、東日本電信電話株式会社代表取締役 山村雅之社長と、本学リベラルアーツセンター 池上彰教授から、コミュニケーションの歴史とその社会的影響の大きさ及びコミュニケーションの重要性などが語られました。

  • 三島良直学長

    三島良直学長

  • 川上伸昭局長

    川上伸昭局長

  • 横田昭ビジョナリーリーダー

    横田昭ビジョナリーリーダー

  • 池上彰教授

    池上彰教授

基調報告では、秋葉重幸プロジェクトリーダー、小田俊理研究リーダーのCOI全体活動紹介に続いて、参画企業(KDDI研究所、富士ゼロックス、ぐるなび)からこれまでの途中経過と今後のプログラム遂行に対する意気込みが発表されました。

最後に、東京藝術大学の宮廻正明教授が講演し、同じビジョン2に参加している東京藝術大学COI拠点~感動を創造する藝術と科学技術による共感覚イノベーション~の活動が紹介されました。ビジョン2がめざす豊かな生活環境の構築の多様な取り組みを、参加者で共有することができました。

  • 秋葉重幸機構長

    秋葉重幸機構長

  • 小田俊理教授

    小田俊理教授

閉会挨拶では、安藤真理事・副学長が参加者および講演者、プログラム支援者に謝意を表しました。そして、今後もイノベーション創造やバックキャスト手法への理解を一層深め、全学を挙げて本プログラムを支援していく決意を述べました。

サテライト会場である百年記念館も含め、参加者は約220名にのぼり、盛況のうちに幕を閉じました。多くの参加者から、東京工業大学COI拠点が目指すハピネス共創社会への夢と、研究開発活動内容がよく理解できたとの声が寄せられました。

バックキャスト:持続可能な目標となる社会の姿を想定し、逆に現在なすべきことを考えること。

問い合わせ先

『以心電心』ハピネス共創研究推進機構

Email : coi.info@coi.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3891

繊維工学科創立60周年記念シンポジウム・祝賀会開催

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10月16~17日、東工大蔵前会館において、繊維工学科創立60周年記念シンポジウム、ならびに記念祝賀会が開催されました。

祝賀会における記念撮影
祝賀会における記念撮影

有機材料工学科の前身である繊維工学科は、東工大建学時の諸学科にその源流をもち、日本の主要産業であった繊維工業の発展に大きく寄与するとともに、その後の材料研究への道を切り開いてまいりました。1972年に現在の有機材料工学科と改称し、現在では繊維にとどまらず、全産業分野を視野に入れた研究と教育を担っています。

2015年は繊維工学科設立60周年の記念の年にあたり、記念シンポジウムと記念式典が企画されました。記念シンポジウムでは、繊維工学科、有機材料工学科の卒業生や元研究生が国外から7名、国内から7名招待され、最新の研究成果等に関する講演を行うとともに、現役の有機材料工学科大学院生によるポスター発表も行なわれました。記念式典は、多数の卒業生、新旧教職員が集い、再会し、旧交を温める機会となりました。

国内外から総勢400名を越える参加者が集まり、その隆盛をたたえるとともに、変革の時代にあってなお、新たな意気込みと結束を、旧知の仲間や、恩師、後輩と分かち合いました。三島学長も出席のもと、スタインウェイのピアノ演奏を堪能し、博物館収蔵の織機を見学する機会にも恵まれ、伝統と革新の融合する本学の歴史に思いを馳せるひとときともなりました。

第3回ELSIトークライブ「生物進化の起源にせまる!」を開催

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11月3日、東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の新棟である石川台7号館(ELSI-1)で、第3回ELSIトークライブが開催されました。

ELSIトークライブは2014年に開始し、以降毎年開催されています。ELSIの最新の研究を、一般の方にも分かりやすく解説するトークイベントです。

10代~80代の幅広い年齢層の方々が来場
10代~80代の幅広い年齢層の方々が来場

今回は、地質学を専門とする佐藤友彦研究員を講師に、「生物進化の起源にせまる!」というテーマでお送りしました。

佐藤研究員は「地球生命は、いつどこで、どんな条件下で進化してきたのか」という謎について6~5億年前=エディアカラ紀~カンブリア紀の爆発的な生物進化や、21億年前=前期原生代の謎の大型生物の出現に焦点を当て、中国やアフリカでのフィールドワークにより得られた地質学的証拠を用いて語りました。

リン酸塩岩を手に取り観察する参加者

リン酸塩岩を手に取り観察する参加者

まず、「綱(恐竜が鳥類へ進化)」「科(猿から人へ進化)」「種(フィンチのくちばしの進化)」と、進化には色々なレベルがあると解説しました。

そして、フィールドワークへ赴いている中国雲南省澄江(Chengjiang)の紹介をしました。この地域には、リン酸塩岩が大量に存在しています。そして、カンブリア爆発に先駆けて小型化石(small shelly fossils)が多く保存されていることでも注目されています。

休憩をはさんだ後半では、佐藤研究員が今、まさに研究を進めている「ガボン化石」についてのお話をしました。

6億年前の「カンブリア大爆発」と21億年前の「ガボン化石の誕生」時の共通点の仮説を説明する佐藤研究員
6億年前の「カンブリア大爆発」と21億年前の「ガボン化石の誕生」時の共通点の仮説を説明する佐藤研究員

ガボン化石とは、2010年に西アフリカのガボンで発見された4cm~17cmの化石です。今まで5cm以上の大きな化石は、5億8000万年前の「エディアカラ生物」が最古であると考えられていました。しかし、ガボン化石はその遥か昔、なんと21億年前の化石で、その大きさや形態の複雑さから多細胞生物だったのでは?と考えられています。

佐藤研究員は、カンブリア大爆発やガボン化石の誕生を引き起こした「多細胞生物となるための条件」が解明できれば、宇宙の他の星でも多細胞生物の存在が見つけられるかもしれない。それが出来るのは、色々な分野の研究者が集まっているELSIならではと語りました。

休憩時間にアノマロカリス折り紙を楽しむ参加者

休憩時間にアノマロカリス折り紙を楽しむ参加者

緻密に書き込まれたフィールドノートを熱心に見る参加者

緻密に書き込まれたフィールドノートを熱心に見る参加者

今回のトークライブでは、佐藤研究員の仮説段階の内容が多く含まれたため、来場者アンケートでは「研究に進捗があったら是非、またトークライブをしてほしい」という要望をたくさんいただきました。

ELSIでは、今後も皆様のご期待に沿えるようなイベントを開催する予定です。第4回ELSIトークライブをどうぞ楽しみにお待ちください。

お問い合わせ先

地球生命研究所 広報室
Email : event@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163


本学学生チームがiGEM世界大会で金賞連続受賞の世界記録を更新

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本学学生チームが、iGEM世界大会で金賞を受賞し、連続受賞の世界記録を、金賞制度の創設以来の9年間に更新しました。この連続記録を持つチームは全257チーム中、東工大、エジンバラ大(英国)、フライブルグ大(ドイツ)の3校のみです。

東京工業大学チーム
東京工業大学チーム

iGEM(The International Genetically Engineered Machine Competition)は国際的な合成生物学の大会で、学部生主体のチームがBioBrickと呼ばれる規格化された遺伝子パーツを組み合わせることにより、新しい人工生命システムの設計・構築 を行い、その成果をプレゼンテーションして審査されます。今年度は9月24日~9月28日にボストンで大会が開催され、マサチューセッツ工科大学(アメリカ)、ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク(ドイツ)、清華大学(中国)など世界各国から257チームが参加し、8つの部門と7つの新部門に分かれて競い合いました。

発表の様子

発表の様子

今年度の東工大チームは、「バイオクリエーティブデザインII」の講義を受講する生命理工学部の学生12名、工学部の学生2名で構成されました。合成生物学の重要性を社会に発信するための題材として、ゲーム理論で有名な「繰返し囚人のジレンマゲーム」に対応した挙動を示す大腸菌を作成しました。さらに、ゲーム理論ではどのようなオプションを選択するかを決める戦略が重要であることに対応して、しっぺ返しなど有名な戦略を大腸菌に実装するための遺伝子ライブラリを整備しました。さらに、遺伝子組換え技術の使用におけるジレンマについての調査から、新規技術と社会とのかかわりについての検証を進めました。

これら結果が、東工大チームに金賞をもたらしました。さらに、東工大が例年優秀な成績を収めているInformation Processing(情報処理)部門において、部門賞にノミネートされたのみならず、ほとんどのチームが獲得を目指すParts Collection(部品集整備)賞についてもノミネートされています。これは本学学生の総合力の高さが世界に評価された結果であるといえます。

学生参加メンバー

  • 徳間啓
    (生命理工学部 生命工学科 生命情報コース 3年)
  • 安部航司
    (生命理工学部 生命工学科 生物工学コース 3年)
  • 柏木貴裕
    (生命理工学部 生命工学科 生物工学コース 3年)
  • 川村淳
    (生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 高良勇輝
    (生命理工学部 生命工学科 生物工学コース 3年)
  • 古清水智夏
    (生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 篠原陸
    (生命理工学部 生命工学科 生物工学コース 3年)
  • 増山愛理
    (生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 峯岸美紗
    (生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 安西秀平
    (生命理工学部 生命科学科 生命情報コース 3年)
  • エリーン・シン・ツーシェン
    (生命理工学部 生命工学科 生命情報コース 3年)
  • 山﨑裕太
    (生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 笹原悠輝
    (工学部 化学工学科 応用化学コース 3年)
  • 布施瑛水
    (工学部 機械知能システム学科 3年)

指導陣

  • 木賀大介
    (大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻 准教授 兼 地球生命研究所)(主指導)
  • 山村雅幸
    (大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻 教授)
  • 鮎川翔太郎
    (情報生命博士教育院 特任助教)
  • 三原久和
    (大学院生命理工学研究科 生物プロセス専攻 教授)
  • 中島信孝
    (大学院生命理工学研究科 生命情報専攻 准教授)
  • 相澤康則
    (バイオ研究基盤支援総合センター 大学院生命理工学研究科 分子生命科学専攻 講師)
  • 太田啓之
    (バイオ研究基盤支援総合センター/大学院生命理工学研究科 生体システム専攻 教授)
  • 伊藤武彦
    (大学院生命理工学研究科 生命情報専攻 教授)
  • 田口英樹
    (大学院生命理工学研究科 生体分子機能工学専攻 教授)

学内サポート(順不同)

  • グローバル人材育成推進事業
  • 相澤基金
  • 蔵前工業会 本部
  • 蔵前工業会 神奈川支部
  • バイオ創造設計室

学外サポート(順不同)

  • 株式会社医学生物学研究所(MBL)- Integrated DNA Technologies(IDT)
  • コスモ・バイオ
  • プロメガ株式会社-株式会社リバネス
  • MathWorks

プレゼンテーション指導

  • 大学院生命理工学研究科:
    和地正明、中村聡、福居俊昭、平沢敬、ロバート・ティアー
  • 大学院総合理工学研究科:
    寺野隆雄

お問い合わせ先

大学院総合理工学研究科 木賀大介
Email : kiga.d.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5213

葉緑体が植物の成長を制御する新たな仕組みを発見―細胞内共生した細菌の宿主細胞制御戦略―

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要点

  • 約25億年前に光合成細菌が細胞内共生して誕生した葉緑体は、細菌の遺伝子発現・代謝調節システムを保持している
  • そのシステムは、植物の成長・栄養応答を統括的に制御していることが判明
  • 生物進化における細胞内共生の解明、貧栄養耐性植物の開発に直結

概要

東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター/地球生命研究所の増田真二准教授らの研究グループは、葉緑体が植物の成長・栄養応答を制御する新たな仕組みを発見した。この仕組みは、葉緑体の祖先であるシアノバクテリア[用語1]が細胞内共生[用語2]した際に植物細胞にもたらされたもので、その後、宿主である植物の成長をコントロールするシステムとして進化したことを明らかにした。

実際にその仕組みを強化すると、植物が大きく育ち、貧栄養応答も改善された。この制御機構のさらなる解明は、生物進化における細胞内共生のインパクトを明らかにするだけでなく、貧栄養耐性植物の開発に直結する。

研究成果は11月9日発行の英国ネイチャー出版グループの「ネイチャープランツ(Nature Plants)」誌に掲載された。

研究の背景と経緯

細菌には、緊縮応答[用語3]と呼ばれる遺伝子発現[用語4]・代謝制御機構が普遍的に存在することが知られている。緊縮応答は、飢餓応答/温度適応/抗生物質耐性/病原性などに関与する細菌にとって必須の環境応答機構である。

近年のゲノム[用語5]解析の進展により、緊縮応答に関与する遺伝子が、植物や動物といった真核生物[用語6]のゲノムに保存されていることがわかってきた。しかし真核生物における緊縮応答の機能はよくわかっていなかった。

研究内容

増田准教授らは、モデル植物シロイヌナズナを用いて、植物における緊縮応答の役割を調べた。まず緊縮応答を担うタンパク質はすべて、葉緑体で働いていることを明らかにした。それらの遺伝子は、シアノバクテリアのものと似ていることから、葉緑体がシアノバクテリアの細胞内共生によって誕生した際に植物細胞にもたらされたと考えられた(図1)。

細胞内共生で誕生した葉緑体とミトコンドリア

図1. 細胞内共生で誕生した葉緑体とミトコンドリア

(A)葉緑体とミトコンドリアはそれぞれ、シアノバクテリアと紅色細菌(プロテオバクテリアとも呼ばれる)が細胞内共生して誕生したと考えられている。(B)緑色蛍光タンパク質(GFP)で光らせたタマネギ表皮細胞内の葉緑体(タマネギ内では葉緑素を持たないので通常プラスチドと呼ばれる)とミトコンドリア。

緊縮応答を過剰に引き起こす組換え植物体を作出したところ、葉緑体の遺伝子発現や代謝産物量が減少していた。また葉緑体のサイズも小さくなっていた(図2)。このことから、葉緑体で行われる緊縮応答は、葉緑体の機能を全体的に抑制することがわかった。

緊縮応答が過剰となった植物体は、通常条件下において、野生型の約1.5倍の大きさに成長した。貧栄養条件で育てると、野生型は枯死するのに対し、組換え体は緑を保ちつつ光合成を継続した(図2)。

緊縮応答強化植物の表現型

図2. 緊縮応答強化植物の表現型

緊縮応答を過剰に引き起こす組換え植物体は、通常条件において、葉緑体のサイズは減少するが、個体は大きく育った。この組換え体を窒素欠乏条件下に曝すと、緑色を保ち、光合成を継続した。

近年、マックスプランク研究所(ドイツ)のグループが、葉緑体で作られるデンプンやアミノ酸などの代謝物が少ない植物体は、個体のサイズが有意に大きい傾向にあることを報告した。これらのことから、植物型緊縮応答は、葉緑体の遺伝子発現や代謝などを調節することで、植物の成長を統括的にコントロールしていると考えられた。

今後の展開

今回の研究により、植物における緊縮応答の生理的役割が明らかとなった。これを足掛かりに、動物における緊縮応答の存在の有無、その応答の詳細、栄養飢餓応答との関わりなどの研究が進むものと期待される。一方、葉緑体における緊縮応答は、どのような環境要因により、どのように引き起こされるのかはわかっておらず、今後その点を明らかにする必要がある。それらの情報は、貧栄養耐植物の開発に応用できると考えられる。

用語説明

[用語1] シアノバクテリア : 光合成を行う細菌の一種。葉緑体はシアノバクテリアが動物細胞に細胞内共生してできた細胞内小器官と考えられている。

[用語2] 細胞内共生 : 外界の生物が、細胞内に入り込み、その細胞内の小器官となる(なった)こと。植物細胞の葉緑体はシアノバクテリアが、動植物細胞のミトコンドリアはプロテオバクテリアが細胞内共生したものとする考えは現在定説となっている。

[用語3] 緊縮応答 : 細菌に普遍的に保存された環境応答機構。グアノシン4リン酸の合成と分解を介して遺伝子発現や代謝関連酵素群の活性が調節される。

[用語4] 遺伝子発現 : 遺伝情報からタンパク質が作り出される過程を指す。すなわち、遺伝子の実体DNAからRNAが合成され、RNAからタンパク質が作られる一連の過程を指す。

[用語5] ゲノム : 遺伝子(DNA)にコードされた遺伝情報全体を指す。

[用語6] 真核生物 : 動物や植物など、核をもつ細胞からなる生物。

論文情報

掲載誌 :
Nature Plants
論文タイトル :
Impact of the plastidial stringent response in plant growth and stress responses
著者 :
Mikika Maekawa, Rina Honoki, Yuta Ihara, Ryoichi Sato, Akira Oikawa, Yuri Kanno, Hiroyuki Ohta, Mitsunori Seo, Kazuki Saito, Shinji Masuda
DOI :

付記

本研究は、科学研究費補助金 新学術領域研究「植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで」(領域代表者:長谷あきら京都大学教授)と最先端研究基盤事業「植物科学最先端研究拠点ネットワーク」の支援を受けて実施した。

共同研究グループ

本研究は、理化学研究所環境資源科学研究センター・山形大学農学部及川彰准教授、東京工業大学大学院生命理工学研究科太田啓之教授、理化学研究所環境資源科学研究センター瀬尾光範ユニットリーダー、理化学研究所環境資源科学研究センター・千葉大学大学院薬学研究院斉藤和季教授と共同で実施した。

問い合わせ先

バイオ研究基盤支援総合センター
准教授 増田真二

Email : shmasuda@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5737 / Fax : 045-924-5823

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大 グローバル水素エネルギーコンソーシアム 発足記念シンポジウム

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海外の未利用エネルギーを水素に変換して日本に輸送するグローバルなスケールでの水素サプライチェーンの構築、および、国内の未利用エネルギーからの水素製造/輸送/貯蔵との連携について、燃料電池に限らず様々な水素利用技術をも抱合して、将来の水素利用体系に関する総合的かつ技術的な検討を産学官が連携して推進するための組織として、「東工大グローバル水素エネルギーコンソーシアム」が発足しました。公平で客観的な立場からの議論や評価も期待されています。

このコンソーシアムの発足を記念して、下記の通り、公開シンポジウムを開催致します。水素エネルギー関係者の多数の参加を歓迎致します。

主催:東京工業大学 ソリューション研究機構 グローバル水素エネルギー研究ユニット

開催概要

日時
2015年11月26日(木)
シンポジウム: 13:00~17:00
意見交換会: 17:30~19:30
場所
東工大蔵前会館outer(大岡山駅前)
シンポジウム: くらまえホール
意見交換会: ロイアルブルーホール
参加費
無料(意見交換会は3000円、当日払い)
参加登録
関連サイトouterから参加登録をお願い致します。
※先着300名

シンポジウムプログラム

開会
13:00~
学長あいさつ
三島良直 東工大学長
13:05~
来賓挨拶
谷明人 経済産業省技術総括審議官
13:10~
全体構想説明
岡崎健 特命教授 (コンソーシアム代表)
13:25~
東工大としての取り組み説明
伊原学 教授
参加組織からの発表
水素社会への取り組みとコンソーシアムへの要望・期待など
各10~15分、詳細は別表「参加組織講演プログラム」を参照
東工大の取り組み
16:00~
東工大における水素エネルギー関連研究
加藤之貴 教授
16:15~
東工大における燃料電池関連研究
平井秀一郎 教授
16:30~
東工大における太陽光エネルギー関連研究
山田明 教授
16:45~
講評・あいさつ
久間和生 総合科学技術・イノベーション会議議員
16:50~
終了あいさつ
安藤真 研究担当理事・副学長
17:30~19:30
意見交換会(3000円、当日払い) 
(別表) 参加組織講演プログラム
13:40~
(15分)
「CO2フリー水素システム ―普及の可能性と今後の動向―」
一般財団法人 エネルギー総合工学研究所 坂田興氏 (プロジェクト試験研究部部長、参事)
13:55~
(15分)
「未利用資源"褐炭"から造るクリーン水素サプライチェーン構想」
川崎重工業株式会社 西村元彦氏 (水素チェーン開発センター副センター長、理事)
14:10~
(15分)
「弊社酸素吹き石炭ガス化技術の水素製造技術への適用について」
電源開発株式会社 作野慎一氏 (技術開発部研究推進室上席課長)
14:25~
(15分)
「SPERA水素システムと今後の展望」
千代田化工建設株式会社 岡田佳巳氏 (技師長)
14:40~
(15分)
「水素供給 ―つくる、はこぶ、ためる― への取組みと課題」
JX日鉱日石エネルギー株式会社 斎藤健一郎氏 (中央技術研究所上席フェロー)(東京工業大学 AESセンター 特任教授)
14:45~15:00
休憩
15:00~
(10分)
「水素の関する取り組み」
東京ガス株式会社 藤田顕二郎氏 (エネルギーシステム研究所長)
15:10~
(10分)
「大阪ガスの水素エネルギーに関する取り組み」
大阪ガス株式会社 田中琢実氏 (技術戦略部 企画チーム)
15:20~
(10分)
「イワタニの水素事業のご紹介」
岩谷産業株式会社 中島康広氏 (プロジェクト部マネージャー)
15:30~
(10分)
「水素利活用に向けた高砂熱学の取組み」
高砂熱学工業株式会社 加藤敦史氏 (技術研究所 主査)
15:40~
(10分)
「株式会社日本製鋼所における水素社会に向けた取り組みについて」
株式会社日本製鋼所 久保和也氏 (システム技術グループ主任研究員)
15:50~
(10分)
「水素社会への取り組みについて」
三菱商事株式会社 大槻晃嗣氏 (地球環境・インフラ事業グループ、環境事業本部 環境 R&D 事業部 事業部長)

※すべての参加組織にショートプレゼンをしていただきます。

※タイトルは多少の変更があるかも知れませんが、御了承下さい。

東工大 グローバル水素エネルギーコンソーシアム 発足記念シンポジウム パンフレット 表

東工大 グローバル水素エネルギーコンソーシアム 発足記念シンポジウム パンフレット 裏

関連情報

問い合わせ先

グローバル水素エネルギーコンソーシアム事務局

E-mail : ghec@ssr.titech.ac.jp

高温高圧力下における流体水素のプラズマ相転移を観察―木星の内部構造の再現に成功、常温超伝導にも一歩近づく―

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要点

  • 高温高圧下で高密度流体水素のプラズマ相転移を観察
  • 木星などの内部で巨大な磁場を作り出している流体金属水素の解明に迫る
  • 今後、室温超伝導が期待される固体金属水素への応用が期待される

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の太田健二講師と大阪大学大学院基礎工学研究科附属極限科学センターの清水克哉教授らの研究グループは、水素を高温高圧下においても周囲の物質との化学反応なく安定して保持する技術を開発した。この技術を利用して、公益財団法人高輝度光科学研究センターと共同で行った高温高圧実験によって、高密度の水素の分子流体から単原子流体への相転移(プラズマ相転移)現象を80~110万気圧の範囲で観察し、その相転移境界を明らかにした。

観察した高温高密度水素流体のプラズマ相転移は絶縁体—金属転移に対応している可能性が高く、木星や土星などの水素を主成分とするガス惑星の内部構造やガス惑星磁場の生成メカニズムの解明につながる成果である。また、水素の温度圧力相関係が明らかになることで、室温付近の高い超伝導転移温度が予想されている固体金属水素の合成のための指針となることが期待される。

本研究成果は11月9日に英国ネイチャーグループの電子ジャーナルScientific Reports誌に掲載された。

背景

水素は宇宙に最も豊富に存在する元素であり、太陽などの恒星や木星、土星などのガス惑星の主成分である。また近年、盛り上がりを見せる水素エネルギー社会の実現のため、水素の温度圧力に対する挙動は惑星科学だけでなく材料科学などの様々な研究分野の興味の対象となっている。

恒星やガス惑星内部では水素は分子解離し、金属的な電気伝導性を持つ高密度高温流体の状態にあると考えられている。しかし、水素の温度圧力状態図はまだ十分にわかっておらず、ガス惑星の内部構造や密度分布にはまだ大きな不確かさがある。

水素は拡散性・反応性が非常に高い元素であるため、実験のために高温高圧発生装置の内部に安定して保持し続けることが困難であることが、高温高圧水素の研究を阻む大きな要因となっていた。

研究成果

同研究グループはまず、高温高圧発生装置であるダイヤモンドアンビルセル[用語1]の内部に、水素を高温高圧力下においても周囲の物質との化学反応なく安定に保持するための技術開発を行った。その結果、100万気圧を超える高圧力かつ2000ケルビン(絶対温度、K)以上の高温条件での水素の実験が可能となった。

レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル(A)、対向する一組のダイヤ(B)

図1. レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル(A)、対向する一組のダイヤ(B)

(B)の間に試料を挟み、高圧下でレーザーを試料に照射することにより、実験室内で地球内部の温度圧力を発生させることができる。

大型放射光施設SPring-8[用語2]の高圧構造物性ビームライン「BL10XU」 に設置されたレーザー加熱システムを使用し、約80~110万気圧、2650 Kまでの条件での実験から流体水素の相転移現象を明らかにした。また、BL10XUのX線マイクロビームを使用したX線回折像から高温高圧環境状態を確認、さらに水素試料と高圧装置との間に化学反応が起きていないことも確認した。

高圧高温下における水素の状態図

図2. 高圧高温下における水素の状態図

黒い点線は理論計算によって報告されている流体水素のプラズマ相転移境界。青線は水素の融解曲線、赤線は固体水素の相転移境界を表す。赤、青、緑色のシンボルが実験を行った温度圧力条件。黒三角のシンボルは先行研究で報告されている結果。

この実験によって決定された高密度流体水素のプラズマ相転移境界は理論計算によって報告されているものとよい一致を示している。観察した流体水素のプラズマ相転移は水素の絶縁体—金属転移とも密接に関連していると考えられる。

今後の展開

ガス惑星内部では、金属流体水素の対流によって磁場の生成・維持が行われていると考えられているため、今回、明らかにされた水素の高温高圧相関係はガス惑星内部の構造やダイナミクスの解明に寄与すると期待される。

また、水素は圧縮することで最終的には固体金属相へと相転移し、室温に近い超伝導転移温度を示すと予想されているが、固体金属水素の安定領域は不明であり、その合成はまだ実現していない。同研究グループが行った、水素の高温高圧保持技術と高温高圧相関係の解明は人類未達成の固体金属水素の合成への手助けとなる。

用語説明

[用語1] ダイヤモンドアンビルセル : 宝石用ダイヤモンドを用いた小型の高圧装置。ダイヤモンドは圧力を発生させる尖頭状の部品(アンビル)として用いられる。ガスケットと呼ばれる金属の板に小さな穴をあけ、その穴に試料と圧力媒体を入れて2つのダイヤモンドアンビルで挟み込むことで高圧を発生させる。ダイヤモンドの先端のサイズを小さくすれば、地球中心部に相当する圧力(約360万気圧)の発生が可能。

[用語2] 大型放射光施設SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その運転管理は高輝度光科学研究センターが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports(出版元:Nature Publishing Group)
論文タイトル :
Phase boundary of hot dense fluid hydrogen
(邦訳:高温高密度流体水素の相転移境界)
著者 :
Kenji Ohta1,2,*, Kota Ichimaru2, Mari Einaga2, Sho Kawaguchi2, Katsuya Shimizu2, Takahiro Matsuoka2, Naohisa Hirao3, and Yasuo Ohishi3
1東京工業大学 大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻、2大阪大学 大学院基礎工学研究科附属極限科学センター、3高輝度光科学研究センター
*Corresponding author
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻
講師 太田健二

Email : k-ohta@geo.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2590

大阪大学 大学院基礎工学研究科
附属極限科学センター 超高圧研究部門
教授 清水克哉

Email : shimizu@stec.es.osaka-u.ac.jp
Tel : 06-6850-6675

(SPring-8に関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
利用推進部 普及啓発課

Email : kouhou@spring8.or.jp
Tel : 0791-58-2785 / Fax : 0791-58-2786

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

TiROP英国超短期派遣プログラム実施報告

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9月16日~27日の12日間にわたり英国超短期派遣プログラムが実施され、学部3年生6名が、インペリアル・カレッジ・ロンドン、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学を訪問しました。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのスミス教授(右から2人目)による特別市内ツアー
インペリアル・カレッジ・ロンドンのスミス教授(右から2人目)による特別市内ツアー

超短期派遣プログラムとは

超短期派遣プログラムは、大学の世界展開力強化事業※1「グローバル理工系リーダー養成協働ネットワーク(TiROP:タイロップ)」の海外派遣プログラムのひとつです。同時に、グローバル理工人育成コース※2の一環として実施されるため、本プログラムへの参加にはコースの単位が付与されます。

本プログラムは、本学の学部生をパートナー大学に短期間(10日間程度)派遣するプログラムです。パートナー大学の教員から直接指導等を受けることで、国際意識の涵養を図るとともに、実際の研究内容や生活環境について理解し、将来の長期間にわたる派遣留学に向けた準備となることを目的としています。

平成24年度から26年度までは米国、本年度は英国を訪問いたしました。

※1
アジア・米国・欧州等の大学との国際教育連携を目的として、文部科学省が実施している事業
※2
国際水準の教育研究活動を行い得る、高度な能力を身に付けさせることを目的として、本学に設置されているコース

英国超短期派遣プログラム2015実施スケジュール

日時
活動
場所
9/15(火)
9/16(水)
22:30 集合 於羽田空港
00:30 羽田空港出発
12:15 ヒースロー空港到着
東京→ロンドン
9/17(木)
11:00-12:00 大学紹介
12:00-13:00 キャンパスツアー
13:45-16:00 科学博物館見学
インペリアル・カレッジ・ロンドン
9/18(金)
09:30-14:30 特別市内ツアー
9/19(土)
自主活動
ロンドン
9/20(日)
9/21(月)
10:00-12:00 移動(Oxford Tube)
14:00-16:00 カレッジ・ツアー
ロンドン→オックスフォード
オックスフォード
9/22(火)
08:30-11:30 シンポジウム見学
12:30-15:00 企業訪問 ミニ
19:00-21:00 シンポジウム晩餐会
オックスフォード
9/23(水)
08:30-12:30 シンポジウム見学
14:00-16:30 移動(貸切バス)
17:00-18:30 カレッジ・ツアー
オックスフォード
オックスフォード→ケンブリッジ
ケンブリッジ
9/24(木)
10:00-12:00 ガードン研究所見学
13:00-16:00 工学部見学
ケンブリッジ大学
9/25(金)
10:00-12:00 キャヴェンディッシュ研究所見学
14:00-15:00 BBCラジオ局見学
9/26(土)
10:00-11:30 天文学研究所訪問
14:30-17:30 移動(鉄道→地下鉄)
20:40  ヒースロー空港出発
ケンブリッジ
ケンブリッジ→ヒースロー
ロンドン→
9/27(日)
22:45 羽田空港到着
→東京
ケンブリッジ大学工学部曽我教授(左から2人目)による施設案内

ケンブリッジ大学工学部曽我教授(左から2人目)による施設案内

オックスフォードでの晩餐会

オックスフォードでの晩餐会

キャヴェンディッシュ研究所を見学
キャヴェンディッシュ研究所を見学

左から:鈴木さん、貴志さん、清水さん、関根さん、ケンブリッジ大学研究員 杉目さん、ケンブリッジ大学博士課程 篠原さん、東工大SERP派遣生 結城さん、中澤さん、一色さん、高橋助教(引率)

帰国報告会

グループでの発表(左から貴志さん、鈴木さん、関根さん、清水さん)

グループでの発表(左から貴志さん、鈴木さん、関根さん、清水さん)

10月28日南4号館422講義室にて、本プログラムを無事終了した派遣学生たちによる帰国報告会が開催されました。この報告会は、グローバル理工人育成コースによる「2015夏 実践型海外派遣プログラム報告会」と合同で開催されました。

本プログラムの学生たちは、訪問大学や見学した国際シンポジウムや各大学のキャンパスの様子、そして現地で感じた印象などを、パワーポイントを用いて紹介しました。

帰国報告会の様子
帰国報告会の様子

英国超短期派遣プログラムを終えて~参加学生の声

貴志崇之(工学部制御システム工学科3年)

自分の専門とは異なる学生や先生と話す機会が多くあり、自分の価値観が変わり、将来の進路の選択肢を増やすことができました。

鈴木新(工学部土木・環境工学科3年)

専門に関係あることとしては、シェアサイクルなどロンドンの交通事情を知ることが出来ました。専門に関係ないこととしては、オックスフォードで晩餐会に参加できたのは貴重な体験となりました。

清水悠太(工学部土木・環境工学科3年)

英語学習に対するモチベーションが上がりました。考えられる進路の幅も広がりました。

関根達侑(理学部物理学科3年)

Googleで学んだことと、実際にその場で学んだことは質が違うということを感じました。海外は価値観を大きく拡げてくれます。

中澤知己(工学部社会工学科3年)

将来や研究について日本規模で考えていて行き詰っていましたが、世界規模で考えられるようになって、またワクワクするようになれました。

一色裕次(理学部化学科3年)

大きく成長したのは、初対面の人に積極的に話せるようになったことです。いろいろな人と話さないと、せっかく得られる情報や人とのつながりを失うという焦りから、勢いで話しかけたら意外と何とかやり過ごすことができました。いろいろな国から来た人のユニークな考え方に触れることで、自分の考え、ものの見方の幅を広げることができました。

お問い合わせ先

留学生交流課 「大学の世界展開力強化事業」TiROP事務局
Email : tirop@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2984

グローバル・システム開発研修 実施報告

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8月30日~9月12日、大学院情報理工学研究科のIT特別教育研究コース※1による「グローバル・システム開発研修」が実施され、3人の修士1年生が参加しました。

※1
ソフトウェア構築に必要な基礎概念や、それを基にした実用的問題に適用可能な理論、開発の実践的な側面までの高度な専門性を持ち、近未来ソフトウェアの発想力を持つスペシャリストの育成を目的とする大学院教育プログラム

最終日の集合写真
最終日の集合写真

研修場所はフィリピン、セブ島です。フィリピンは英語が公用語の国で、特にセブは訛りのない英語を話せる人が多いため、ここでの研修開催となりました。

この研修は、特にコミュニケーションが苦手なICT(情報・通信)系学生に、英語でのコミュニケーション力をつけようという目的で企画されたもので、以下の2点を狙いとしています。

  • グローバルな状況下でのシステム開発を実体験を通して学習する
  • チーム開発を経験し異文化について理解を深める

研修内容は、2つに分かれています。

プレゼンテーションの練習

プレゼンテーションの練習

まず1週目は「コミュニケーション研修」です。現地の語学学校の協力を得て、1日10時間みっちり英会話と異文化コミュニケーションを学びました。英語でのプレゼンテーションやディベート(討論)、寸劇による文化交流など、実践的なレッスンが続き、一日の終わりには日本語が下手になるぐらい英語のシャワーを浴びました。韓国や中国、ベトナムなど色々な国から学生が来ていることもあり、自然と英語でのコミュニケーションのハードルが下がったようです。

市内視察の経験がアプリ開発に活かされる

市内視察の経験がアプリ開発に活かされる

2週目は、セブ・シティのITパークに場所を移して、現地IT企業とのシステム開発演習です。開発テーマは「セブ旅行者をサポートするAndroidアプリ」です。学生は各々3つのチームに分かれ、現地エンジニアやフィリピン大学の学生とチームを組み、アプリケーション(プログラム。以下、アプリ)を開発しました。

演習はデザイン思考※2の手法を中心にしたもので、初日はITパークで街頭インタビューを実施しました。いきなりのインタビューでしたが、1週目に英語シャワーを浴びた効果か、みんなしっかりインタビュー出来たようです。

※2
イノベーションを起こすための1つのアプローチ法。問題を調査して、情報を取得・分析し、解決策を選定する。
リサーチ結果を元にディスカッション

リサーチ結果を元にディスカッション

1日目の後半は、インタビュー結果を元に、アプリの内容についてブレインストーミング(集団でのアイディア出し)。そして、ペーパープロトタイピング(紙での実装)の製作を経て、2日目の午後には、プロトタイプ(原型)の評価インタビューのため、セブ最大のショッピングモールへ。ショッピング中の人にインタビューをして、プロトタイプへのフィードバック(意見)をたくさんもらってきました。

リサーチ結果を元にディスカッション
リサーチ結果を元にディスカッション

3日目と4日目はデモアプリ(試作アプリ)の開発です。チームごとに作業を分担して開発をすすめます。チームでは熱心な議論もしつつ、開発がすすめられました。

ディスカッション

ディスカッション

アプリ開発中

アプリ開発中

そして、最終日。協力いただいた企業のマネージャたちがずらりと並ぶなか、プレゼンテーション(発表会)が行われました。アプリのコンセプト(基本概念)と、リーンキャンバス※3を使ってのアイデア評価結果の紹介と、デモンストレーション(実演)で構成されました。

※3
ビジネスモデルの企画のためのツール。1ページに収まるサイズというのが大きな特徴。

アプリのコンセプト
アプリのコンセプト

プレゼンテーション

プレゼンテーション

観光客の宿泊ホテルを起点とした観光ルートの紹介アプリ、Wi-Fi(無線ネットワーク)をつかまえるためのアプリ、ジプニーというフィリピンの乗り物のルート案内アプリと、市内視察の実体験から着想を得た有用性の高いアプリが発表されました。とても短い開発期間でしたが、3チームとも素晴らしい発表でした。

10月7日には、帰国後の報告会が行われました。

  • いい経験ができた
  • 英語を話すハードルが下がった
  • 留学生とも臆せず会話できる気がする
  • もっと英会話の勉強をしたい
  • とにかく話してみればいいんだと分かった

と、頼もしい報告がなされ、英語でのコミュニケーションに対して意欲が湧いたことが伺えました。

お問い合わせ先

IT特別教育研究コース
Email : jimu@itpro.titech.ac.jp

地球深部の水の循環を担う鉱物の性質解明

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概要

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)[用語1]愛媛大学サテライト(地球深部ダイナミクスセンター(GRC))の土屋旬准教授と米国コーネル大のマイナック・ムカジー博士は、地球マントル下部において安定な新しい含水鉱物[用語2]であるH相[用語3]の構造と弾性的性質を理論計算により解明しました。

地球のマントル(深さ30-2900キロメートル)[用語4]には、地表付近に大量に存在する水の一部が、プレートの沈み込みにより含水鉱物としてもたらされます。2013年、土屋准教授はプレートにより運ばれた含水鉱物が下部マントル[用語5]付近において新たな含水鉱物(H相)へと変化(構造相転移[用語6])するという理論予測を発表しました(図1)。この理論予測を受けて2014年に、愛媛大の実験グループは超高圧装置MADONNAを用いた実験や、世界最大放射光施設SPring-8での放射光その場観察実験に基づき、H相の存在を実験により確認しました。この一連の発見をもとに、各国の研究者によりH相の研究がなされています。本研究は、H相の更なる詳細な結晶構造や、H相の存在を観測で調べるために不可欠な弾性的性質について、第一原理計算[用語7]と呼ばれる理論計算手法により明らかにしたものです。

H相は地球のマントルと中心核の境界領域まで安定に存在する可能性が強く、地球深部における水の大循環やマントル-核境界での上昇流(プルーム)の発生、また地球中心核の主要物質である溶融鉄への溶け込みなど、地球深部の物質構成や運動(ダイナミクス)に大きな影響を及ぼすと考えられます。

今回の成果は英科学誌Scientific Reports誌に、10月23日に電子版がオンラインで先行出版されました。

地球内部構造と地球深部への水の輸送

図1. 地球内部構造と地球深部への水の輸送

下部マントルに沈み込んだプレート内では、D相が新しい含水鉱物H相に変化し、中心核付近まで水を運ぶことが可能であると考えられる。

研究の背景

地球内部には、地球表層を覆う海水の数倍から数十倍の水が存在すると見積もられています。しかし、その水の状態や量についてはほとんどわかっていません。地球表層に存在する水は岩石と反応して蛇紋石などの含水鉱物を形成します。このような含水鉱物がプレートによって地球深部まで運ばれると高密度含水マグネシウムケイ酸塩(DHMS)と呼ばれる含水鉱物へと変化します。これらのDHMSは、発見された順にA相、B相、D相などアルファベットを用いて名づけられています。最近まで、下部マントル上部領域(約40万気圧・深さ1250 km)で、D相[用語2]と呼ばれる含水鉱物が脱水分解し、それ以上の深さにDHMSが水を輸送することはないと考えられていました。しかし2013年に土屋准教授は、第一原理シミュレーションに基づき、この40万気圧付近でD相が異なる結晶構造をもつ新たな含水鉱物に変化し、さらなる地球深部へ水を輸送しうることを発表しました(図2)。本研究は約30年ぶりに見つかった新たなDHMS相であるH相の続報であり、より詳細な結晶構造と弾性的性質について第一原理計算を行い、報告しました。土屋准教授とムカジー博士はともに第一原理計算を用いた含水鉱物の研究の専門家であり、今回は共同研究の成果を発表しました。

D相からH相への相転移

図2. D相からH相への相転移

2013年にD相の結晶の配列が圧力を加えることによってH相へと変化することが理論計算により示された。

近年、コンピューターの性能が飛躍的に向上するにつれ、第一原理計算法は、物質科学分野において非常に有力な研究手段となっています。この方法を用いて、物質の構造や安定性、物性を高い精度で見積もることができるようになってきました。特に、地球深部のような超高圧条件では高精度な実験が難しいため、非常に有力な手段となっています。

弾性的性質とは、体積弾性率や剛性率など物質の固さや壊れにくさを示す性質で、これらを用いて物質中を伝播する波の速度を見積もることができます。実際に試料を手に取って調べることができない地球深部においては、岩石の弾性率から決定された弾性波速度と、観測された地震波速度を比較することによって、地球深部の化学組成や構造が調べられています。

研究の成果

土屋准教授と、ムカジー博士は、第一原理計算と呼ばれるコンピューターシミュレーションによりH相の詳細な結晶構造と弾性的性質を明らかにしました。2013年のH相の理論予測をうけて日本、米国、イタリアや英国の研究者らがH相の理論計算や実験を行っていますが、これまで弾性的性質についての報告はありませんでした。今回決定された弾性率をもとにこのH相を伝わる地震波速度を見積もることができます。これは、実際に地震波観測により地球深部においてH相を探す場合、不可欠な情報です。今回決定された弾性的性質は、H相を地震波が伝播する場合、ある特徴(高い異方性[用語9])を示すことを示唆しています。

H相はマントルと核の境界付近の2900キロメートルまで水を運ぶ可能性を持っています。水の存在は岩石の溶ける温度を下げるため、マントル最下部でのマグマの発生を引き起こし、これによりマントル最下部に観測される超低速度層や、この付近に起源を持つマントル上昇流(プルーム)などの原因になる可能性があります。また、地球中心核の主要物質である溶融鉄への溶け込みなど、地球深部の物質や運動(ダイナミクス)の解明において、重要な影響を及ぼすものと考えられます。今回決定されたH相の弾性的性質は、このような地球深部の水の循環経路を調べるうえで非常に重要な情報となるでしょう。

H相の弾性的性質

図3. H相の弾性的性質

これらの体積弾性率や剛性率、地震波速度(S波、P波)、地震波異方性と、実際に観測された地震波速度を比較することによって、地球深部の水の循環経路が今後解明されると期待される。

今後の展望

地球内部での水の存在量とその循環は、地球の起源物質の特定や内部の運動を知る上で大変重要であるとともに、太陽系の他の惑星における水の存在や、太陽系の生成過程を理解する上でも重要です。今後、地球深部の地震波が高精度で観測できるようになれば、H相やこれまでに決定された他の鉱物の弾性率との比較により、地球深部の水の循環経路が決定できると期待されます。また、H相のより詳細な研究は理論計算、実験ともに現在も続けられており、新たな研究成果が出つつあります。今後も理論計算と実験が相補的に協力することにより、地球や惑星深部の水の循環について新しい成果が得られると期待されます。

成果のポイント

  • D相発見以来30年ぶりに発見された新たなDHMS相であるH相の続報
  • 高精度な理論計算によるH相の結晶構造と弾性的性質の決定
  • 日本と米国の含水鉱物の理論計算の専門家による共同研究

用語説明

[用語1] 地球生命研究所(ELSI) : 東京工業大学の廣瀬敬教授をリーダーとして採択された、地球・生命科学分野のWPI(世界トップレベル研究拠点)プログラムに基づき2012年に設立された同大学の新しい研究所。愛媛大学の地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)は、ELSIの国内唯一のサテライト拠点となっている。

[用語2] 含水鉱物 : 蛇紋石など、水素を主成分の一つとして構造に含む鉱物。特に地球内部の高温高圧下で生じる、マグネシウムに富む含水鉱物は、高圧型含水マグネシウムケイ酸塩鉱物(DHMS)あるいはアルファベット相と称され、プレートの沈み込みとともに地球深部にもたらされると考えられている。

[用語3] Phase H(H相) : 2013年に土屋准教授によって理論予測され、2014年に愛媛大学の西真之博士らによって実際に存在が確かめられた新しい含水鉱物。DHMSのなかで最も高圧下で安定。アルミニウムを含むことによって深さ約2900kmの核―マントル境界まで水を運ぶ可能性が示唆されている。

[用語4] マントルと核 : 地球は薄い地殻(深さ約30キロメートルまで)、マントル(深さ30-2900キロメートル)、核(2900-6400キロメートル)の3層からできている。マントルはかんらん岩などの岩石が主な成分であるのに対し、核は主に鉄からできている。

[用語5] 下部マントル : マントルは上部マントル(深さ30-410キロメートル)、マントル遷移層(410-660キロメートル)、下部マントル(660-2900キロメートル)の3つの領域に区分される。下部マントルは最も大きな領域であり、地球全体の体積の6割を占め、その最下部は地球の中心核と接する。

[用語6] 構造相転移 : 固体物質において規則的に配列されている原子位置が温度や圧力条件に応じて全く異なる構造へ再配列されること。たとえばグラファイト(黒鉛)は約5万気圧でダイヤモンドへと構造相転移する。グラファイトもダイヤモンドも同じ炭素という元素のみから成る。

[用語7] 第一原理計算 : 近代物理学の基礎である量子力学の基本原理に基づき、実験などにより得られる先験的なパラメーターを用いずに結晶構造の安定性や物性を予測する計算方法。最近の数値シミュレーション技術の進歩により高い精度での予測が可能になっている。

[用語8] Phase D(D相) : 含水鉱物の一つで、これまで下部マントルにおいて存在する唯一のDHMSと考えられていた。1986年にオーストラリアの研究者により発見された。その後Phase E, F, Gなどの発見が報告されているが、Phase Eの存在はマントルのより浅い領域に限られており、またPhase FとPhase Gは、Phase Dと同じものであることが明らかになっている。

[用語9] 地震波異方性 : 地震波速度が伝播する方位や波の振動方向によって異なる現象。方位異方性と偏向異方性があり、方位異方性は伝播する方向により速度が変化する現象を差し、偏向異方性は同じ方向に伝播する横波において、振動方向によって速度の差異を生じる現象を差す。地殻やプレート内部、マントル最下部などで高い異方性が観測されている。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports (イギリスネイチャー出版)
論文タイトル :
Crystal structure, equation of state, and elasticity of phase H (MgSiO4H2) at Earth's lower mantle pressures
(邦訳:地球下部マントルにおけるH相の結晶構造と状態方程式)
著者 :
Jun Tsuchiya(土屋旬)and Mainak Mookherjee
DOI :

問い合わせ先

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター

Tel : 089-927-8197 / Fax : 089-927-8167

准教授 土屋旬(つちやじゅん)

Email : junt@ehime-u.ac.jp
Tel : 089-927-8152

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
センター長/教授 入舩徹男

Email : irifune@dpc.ehime-u.ac.jp
Tel : 089-927-9645 / Fax : 089-927-8167

参考意見を聞ける関連分野の研究者

東京大学大学院理学系研究科 地殻化学実験施設
教授 鍵裕之

Email : kagi@eqchem.s.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-7625

東京工業大学に関するお問い合わせ

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

地球生命研究所に関するお問い合わせ

東京工業大学 地球生命研究所 広報室

Email : pr@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163 / Fax : 03-5734-3416


地域内経済循環からひらく地域の未来~グローバル社会における地方創生戦略~

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10月26日、大岡山キャンパス西5号館W531講義室レクチャーシアターで、講演会「地域内経済循環からひらく地域の未来~グローバル社会における地方創生戦略~」が開催されました。本学グローバルリーダー教育院※1の講義「人間力基礎第二」が、環境省第III期「環境経済の政策研究」※2の助成プロジェクト「低炭素・循環・自然共生の環境施策の実施による地域の経済・社会への効果の評価について」※3と共催しました。

※1
グローバルリーダー教育院(AGL)は、国際的リーダー人材を養成する学位プログラムを実施する教育組織。本学全研究科と連携先である一橋大学より学生を募り、個々の専攻分野における深い専門知識をベースに、日本や世界における文化の理解と国際性、技術経営に関する知識、コミュニケーション能力、俯瞰力や行動力を備えた人材の育成を目的とする。
※2
環境省による事業。持続可能な社会の形成の基礎となる「環境と経済の調和」を目指した、経済と調和した環境政策の企画・立案に資する研究や、環境政策がもたらす経済・社会への影響・効果や両者の関係等に関する研究を実施。
※3
島根県中山間地域研究センター 藤山浩 研究統括監(島根県立大学連携大学院 教授)が代表研究者を務めている。

真剣に聞き入る聴衆
真剣に聞き入る聴衆

社会がますますグローバル化する一方で、地方創生の動きが全国各地で進むなか、多くの地域が直面しているのは、どのように定住人口と所得の増加を実現するかという課題です。そのためには、これまでの地域から大都市圏へのヒト・モノ・カネの一方的な流出を食い止め、地域内に持続性のある良い循環を生み出すこと、またその地域経済への効果を、地域の現場でも簡単に評価することのできる、ツールづくりが急務です。

本講演会では、こういったツールである地域内乗数3(LM3)※4の開発と地域の現場での普及にも携わってこられた、英国の独立系シンクタンク、ニュー・エコノミック・ファンデーション(NEF)のエリザベス・コックス氏をお招きしました。地方創生戦略としての地域内経済循環の活性化をテーマにした講演に、中央省庁、自治体、研究所、大学などから多数の参加者がありました。

※4
資金循環の最初の3回を対象として、政府支出・投資や地域事業主体の当初売り上げの地域内循環効果を測定する方法。

まず主催者挨拶として、島根県中山間地域研究センターの藤山氏より、今回の講演会の趣旨説明がありました。続いて、AGL佐藤院長より、理工系が占める東工大の学生にも、将来のグローバルリーダーとして、ぜひ大きな社会の問題に関心を持ち、課題解決に取り組んでもらいたい、という期待が述べられました。

コックス氏講演の様子

コックス氏講演の様子

NEFのエリザベス・コックス氏の講演では、気候変動や格差拡大など、様々な社会的福祉の低下を招いている現在の経済に代わる経済を構築しようとしている、NEFのミッションや取り組みについての紹介がありました。また、よりよい地域社会の構築へと導くために、お金を地域でより有効活用するための指標であるLM3の開発と、地域での活用事例についての紹介がありました。

続いて、島根県中山間地域研究センターの藤山浩氏も講演しました。環境政策を地域の経済・社会問題につなげていくことの重要性、またそのための戦略として、所得や人口を1%取り戻す可能性を踏まえ、LM3を日本でも適用していく今後の環境省プロジェクト研究の展望が述べられました。

パネルディスカッションでは、徳島県海陽町、福井県池田町の自治体職員も登壇し、地域のお金が地域内で循環していない現状の共有を行いました。地域内経済循環を進めていくことは、行き過ぎたグローバル化、均質化した社会に対し、資源の制約を踏まえ、バランスと多様性を取り戻すことであり、決してグローバル化や国際化に相反する概念ではないことが議論されました。講演内容をふまえ、日本でLM3のようなツールを適用する際の課題や、グローバル化を続ける社会において地域内経済循環を進めることの意義等についても議論が深められました。

パネルディスカッション登壇者
パネルディスカッション登壇者

本学学生からも本質を突いた鋭い意見や質問が出され、多様なバックグラウンドを持つ参加者が、社会の課題解決に向けて議論する重要性を認識する、良い機会になりました。

お問い合わせ先

グローバルリーダー教育院
Email : agl.jim@agl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3116

「トビタテ!留学JAPAN」応募者のための説明会開催

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10月14日、「トビタテ!留学JAPAN」応募者のための説明会が、大岡山キャンパス西9号館1階 インターナショナル・コミュニケーションズ・スペース(HUB-ICS)において、国際室主催で開催されました。

文部科学省による「トビタテ!留学JAPAN」は、官民協働で海外留学を支援するプログラムで、2020年までに日本人大学生の海外派遣を、現行の6万人から12万人に倍増することを目指しています。「理系、複合・融合系人材コース」「世界トップレベル大学等コース」「新興国コース」などがあり、希望者自身が留学プランを作成すること、留学目的に沿った「実践活動」の組み入れが応募要件にあることなどが特徴です。

座学や知識の蓄積型ではなく「実社会との接点」から多様な学びを得ることができる学修活動

大村貴康氏によるプログラム説明の様子
大村貴康氏によるプログラム説明の様子

今回は、第4期生の募集締切を控え、文部科学省トビタテ!留学JAPAN事務局から大村貴康氏を講師としてお招きしました。学生日本代表を1万人海外に派遣するというプログラムの目標や6コースの概要、支援企業とのコラボによる海外インターンシップの内容、派遣学生OBが自主的に始めた「トビタテ!学生発信局」の活動等が紹介されました。

参加者は29名で、海外留学を具体的に考えている学生が多く、「プログラムの内容がよく分かり、とても良かった」という感想が寄せられました。

問い合わせ先

留学生交流課・長谷川喜俊
留学生センター准教授・佐藤由利子

Tel : 03-5734-7645

氷の体積同位体効果の本質を解明―統一的な理論構築と実験による実証に成功―

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要点

  • 氷における体積同位体効果[用語1]とその圧力誘起転移について研究を行った。
  • 水素結合に由来するフォノン[用語2]モードの圧力依存性の特殊さによって、その現象を統一的に説明できることを突き止めた。
  • 第一原理計算[用語3]による理論予測と、実験による実証に成功した。

概要

東京工業大学地球生命研究所の梅本幸一郎研究員、廣瀬敬所長・教授、高輝度光科学研究センターの大石泰生副主席研究員らの研究チームは、H2O氷と水素の同位体である重水素Dで出来たD2O氷の体積の違いとその圧力変化を、理論予測と実験の両面から解明することに成功した。

本研究成果は2015年10月22日、米国物理学会誌「フィジカルレビューレターズ(Physical Review Letters)」オンライン版に掲載された。

今回の発見により、物質の持つ体積同位体効果を統一的にあらわすことに成功した。これにより、氷以外の物質の体積同位体効果のふるまいもすべて説明できるようになる。

背景

われわれの最も身近な物質の1つである氷H2Oは、圧力や温度を変えると、結晶構造(水素と酸素の結合の仕方)やその物性が大きく変わることが知られており、その相図は非常に複雑である(図1)。

通常、原子をより質量の重い同位体原子に置き換えると、体積が減少する。ところが、氷のIh相(普段私たちが目にする氷)とXI相(Ih相において水素が秩序的に分布している相)では、重水素からなるD2Oは、軽水素から成るH2Oよりも質量は大きいが体積も大きい(通常と逆)ことが、実験および理論的に知られていた。この現象は、異常体積同位体効果と呼ばれている。一方で、VIII相およびVII相(水素が無秩序に分布した、VIII相に類似する相)では、H2OをD2Oに置き換えたとき、0ケルビンの常圧下では、通常どおり質量は増加し体積が減少する体積同位体効果が起こることが理論的に予想されていた。

きわめて単純な物質である氷に関して、異なる体積同位体効果が発生する理由は、これまで明らかになっていなかった。

氷の相図

図1. 氷の相図

研究成果

本研究では、密度汎関数法に基づいた第一原理計算とSPring-8[用語4]のBL10XUを用いた放射光X線回折実験によって、氷のVIII相とVII相の体積同位体効果とその圧力依存性を調べた。

VIII相に対する理論計算により、300ケルビンにおいて、14万気圧以下では通常の体積同位体効果が見られ、14万気圧で体積同位体効果が通常のものから異常なものへ変化することがわかった(図2)。つまり、今までのVIII相の体積同位体効果に対する予想は14万気圧までは正しいが、さらに圧力が高くなると異常なものに変化することを理論的に予言した。そしてこの変化には、分子内の水素酸素結合の伸縮に対応するフォノンモードの圧力依存性が決定的な役割を果たすことを突き止めた。

VIII相について計算された、H2OとD2Oの体積差

図2. VIII相について計算された、H2OとD2Oの体積差

VIII相について計算された、H2OとD2Oの体積差の数式)。
この量が正のとき、体積同位体効果は異常である。

一方、水素が無秩序に分布したVII相に関する放射光実験でも、室温(およそ300ケルビン)での16万気圧において、体積同位体効果が通常のものから異常なものへの変化が観測され、理論を精度よく裏付けた。

VIII相とVII相の比較から、氷の相の体積同位体効果の変化について、水素が秩序的に分布しているかどうかは、無関係であることを示した。

さらに、実験および理論で異常体積同位体効果が知られていたIh相の水素秩序相であるXI相でも、体積同位体効果は圧力により通常から異常なものへ転移することが、理論計算によって示された。ところがその転移は負の圧力(およそマイナス1万気圧)で起きる。その結果、常圧下では異常な体積同位体効果が観測されていたのである。つまり、IhやXI相において常圧下で起きていた異常体積同位体効果は、VIIやVIII相について明らかにしたメカニズムで統一的に説明することが出来ることが明らかになった。

今後の展開

本研究で明らかになった体積同位体効果の圧力変化とそのメカニズムは、他の氷の相のみならず、液体相である水や、他の水素結合を含む全ての物質においても普遍的に成立すると期待される。

用語説明

[用語1] 体積同位体効果 : 原子をより質量の重い同位体原子に置き換えると、質量は増加するが体積が変化する(通常は減少する)という、物質の一般的な性質。

[用語2] フォノン : 結晶中の格子振動を量子化して粒子のように取り扱ったもの。N個の原子から構成される結晶では、3N個のフォノンモードが存在する。個々のフォノンモードはそれぞれ固有の振動数を持つ。氷では一般的に、水分子が剛体として振る舞うモード、分子内の2つの水素酸素結合の間の角度が変化する運動に対応するモード、そして分子内の水素酸素結合長の変化に対応するモードが存在する。通常、圧力下では振動数は増加するが、水素酸素結合の伸縮に対応するモードの振動数は圧力下で減少する。これは水素結合からなる系の特有な性質であり、体積同位体効果の圧力誘起転移において決定的な役割を果たす。

[用語3] 第一原理計算 : 実験によって決められるパラメータを用いずに行う理論計算。

[用語4] SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高エネルギーの放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その運転管理と利用者支援などは高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(ギガ電子ボルト)に由来している。放射光とは、電子を光速に近い速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、強力な電磁波のことである。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Letters
論文タイトル :
Nature of the Volume Isotope Effect in Ice
著者 :
Koichiro Umemoto, Emiko Sugimura, Stefano de Gironcoli, Yoichi Nakajima, Kei Hirose, Yasuo Ohishi, and Renata M. Wentzcovitch
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

地球生命研究所
研究員 梅本幸一郎

Email : umemoto@elsi.jp
Tel : 03-5734-2187

地球生命研究所 広報室

Email : pr@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163 / Fax : 03-5734-3416

SPring-8に関するお問い合わせ

公益財団法人高輝度光科学研究センター
利用推進部普及啓発課

Email : kouhou@spring8.or.jp
Tel : 0791-58-2785 / Fax : 0791-58-2786

東京工業大学陸上競技部エースが箱根駅伝関東学生連合チームに2年連続で選出

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10月17日、第92回東京箱根間往復大学駅伝競走(以下、箱根駅伝)予選会に本学陸上競技部が出場し、この予選会の結果、松井将器さん(工学部機械宇宙学科4年)が関東学生連合チーム選手16名に選出されました。昨年に続き2年連続での選出です。

箱根駅伝予選会は、出場資格として10名以上14名以下のエントリー者全員に、5,000m 16分30秒以内もしくは10,000m 34分以内の公認記録を有することを定めており、本学陸上部は昨年に引き続き4年連続の出場です。各大学10名以上12名以下がそれぞれ20kmを走り、各校上位10名の合計タイムで競われます。

当日は小雨ながら好記録が期待されるコンディションの中、本戦の出場枠10校をめざして、出場49大学の選手が自衛隊立川駐屯地を朝9時35分に一斉にスタートしました。会場には陸上競技部部員の他、OB・OGらも応援に駆け付けました。

前半からかなりのハイペースで進行する中、松井さんは冷静に自分の走りに徹し、後半の細かい起伏が続く昭和記念公園内で追い上げ、1時間00分32秒と昨年の自己ベストを更新(東工大記録)して、完走576選手中32位の好順位につけました。この結果、本戦への出場を決めた上位10校を除く選手により構成される関東学生連合チームへの選出につながりました。

本学チームは出場選手の全員が完走し、うち11名が自己ベストを更新する走りを見せて39位となり、上位10名の合計も11時間24分34秒と、これまでの記録を8分以上短縮しました。

本学チーム
本学チーム

第92回箱根駅伝は2016年1月2日、3日に行われます。引き続き、陸上競技部、そして松井さんへの声援、よろしくお願いします。

集合写真
集合写真

東工大基金

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東京工業大学 陸上競技部 杉野暢彦
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大隅良典栄誉教授 ガードナー国際賞授賞式に出席

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生命科学や医学の分野で世界的な発見や貢献をした研究者へ贈られるガードナー国際賞の授賞式が10月28日、カナダ・トロントで開かれ、東京工業大学フロンティア研究機構大隅良典栄誉教授が出席しました。大隅教授の受賞理由は、細胞自身が不要なたんぱく質を分解する仕組み「オートファジー(自食作用)現象」を分子レベルで解明した功績です。2015年のガードナー国際賞受賞者は、大隅教授、大阪大学の坂口志文教授ら5人です。

左からジョン・ダークス ガードナー財団理事長、大隅教授、門司健次郎 駐カナダ大使、ローネ・ティレル ガードナー財団理事会議長 (c)Gairdner Foundation/Della Rollins Photography

左からジョン・ダークス ガードナー財団理事長、大隅教授、門司健次郎 駐カナダ大使、
ローネ・ティレル ガードナー財団理事会議長
(c) Gairdner Foundation/Della Rollins Photography

授賞式が開かれたオンタリオ博物館は自然史と世界の文化紹介に焦点をあてた博物館

授賞式が開かれたオンタリオ博物館は
自然史と世界の文化紹介に焦点をあてた
博物館

授賞式はトロントのオンタリオ博物館で行われ、ガードナー財団関係者、研究者、カナダの大学、研究機関などから550人が出席しました。ガードナー財団のジョン・ダークス理事長による開会あいさつに続き、カナダ総督のデイヴィッド・ロイド・ジョンストン氏が登壇。「今日、受賞される研究者は人類の健康、そしてウェル・ビーイング(より健康的な生活)のために、ブレイクスルーを起こした方々です。彼らの研究に心から感謝したい」と受賞者たちを褒めたたえました。

大隅良典栄誉教授

受賞者として登壇した大隅教授は「この場に受賞者として居合わせられることを光栄に思います。関係者の方々に感謝したい」とあいさつをし、続けて「私は酵母研究者です。長い間、酵母研究に執着したその一番の理由は、ワイン、お酒、ビール好きの私にとって、酵母(ビール酵母やワイン酵母など、お酒には欠かせない要素)が“研究仲間”としてとてもやりやすい相手だったから」と述べ会場を沸かせました。また「好奇心でオートファジーの研究を始めましたが、今となっては、この研究が医療の進歩につながるところまできました。私たちの発見が、将来の病気の解明に役立つのであれば嬉しく思います。今まで協働してきた仲間たち、研究の環境を与えてくれた大学、支援をしてくれた政府、そして家族に感謝します」と述べてあいさつを締めくくりました。

大学での講演 /受賞者によるアウトリーチ活動

ガードナー国際賞の受賞者は、「ガードナーナショナルプログラム」の一環としてカナダ国内の大学で開かれる学生や一般市民に対する講演や交流会に出席します。これは、世界レベルの研究者をカナダ国内に紹介し、高校生や大学生、若い研究者たちに科学の研究の道を歩むことを奨励することが目的です。

トロント大学での講演
トロント大学での講演

トロント大学での講演

大隅教授も授賞式の3日前から、ブリティッシュコロンビア大学、ゲルフ大学、そしてトロント大学で計5回の講演を行いました。ブリティッシュコロンビア大学、ゲルフ大学での講演の合間には少人数での雑談形式の交流会も設けられ、出席した若い研究者や学生からオートファジーの研究に関する質問だけでなく、「留学先をどう決めたらよいのか」など進路についてのアドバイスを求められる場面もありました。大隅教授は「すべてのイベントにおいて若い学生たちに参加の機会が与えられ、学外の研究者との交流の場となっているのが印象的でした。自由に質問をしてくれるのが楽しい。若い時にこのような機会があるのはいいことです」と話していました。

ガードナー賞の盾

ガードナー賞の盾

約1週間の慌ただしいスケジュールを終えて帰国した大隅教授。今度は、日本の若者に向けて講演を行う予定です。11月23日に東工大のシアターホールで開かれる「高校生のための生命理工学レクチャー2015」にて研究の楽しさを高校生たちに伝えます。ご興味のある方は事前申し込みのうえ、ぜひご参加ください。

講演の合間にトロントを拠点にする日本語雑誌「bits」の取材を受ける大隅教授

講演の合間にトロントを拠点にする日本語雑誌「bits」の取材を受ける大隅教授

2015年のガードナー賞受賞者とダークス理事長、ティレル理事会議長(大隅教授は左から4番目)(c)Gairdner Foundation/Della Rollins Photography
2015年のガードナー賞受賞者とダークス理事長、ティレル理事会議長(大隅教授は左から4番目)
(c)Gairdner Foundation/Della Rollins Photography

大隅教授のカナダでの主な行程

10月26日(月)
7:15
ブリティッシュコロンビア大学にて講演
Life Sciences Breakfast: Looking back on my 27 years of autophagy studies
10:50
子ども家庭研究所(Child and Family Research Institute)にて講演
Autophagy – Intracellular recycling system
12:30
研究所の研修生とランチセッション
16:10
ブリティッシュコロンビア大学生命科学研究所にて講演
Autophagy – Intracellular recycling system
18:30
同大学研究担当副理事と会食
10月27日(火)
 
ゲルフ市へ移動
10月28日(水)
9:00
ゲルフ大学の教員、学生とラウンド・テーブル・セッション
10:35
ゲルフ大学にて講演
Lessons from yeast – Molecular machinery of autophagy
12:00
ゲルフ大学幹部と会食
 
トロント市へ移動
17:30
ガードナー財団によるウェルカム・レセプション
10月29日(木)
9:00
トロント大学医学部にて講演
Lessons from yeast – Molecular machinery of autophagy
17:00
ガードナー賞 授賞式
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