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高分子ファイバーでワイヤレス電極をつなぐ―電子デバイス配線への応用に道―

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要点

  • 導電性高分子ファイバーの自発的成長現象を発見
  • ワイヤレス電極(導電体)間のネットワーク化に成功
  • エレクトロニクスデバイスにおける新しい配線技術として期待

概要

東京工業大学大学院総合理工学研究科の稲木信介准教授、小泉裕貴博士後期課程1年、冨田育義教授らは、ワイヤレス電極(バイポーラ電極[用語1])を用いた電解重合法[用語2]により、導電性高分子[用語3]がファイバー状に成長する現象を発見した。この現象を応用して、ワイヤレス電極間を高分子ファイバーでつなぎ、ネットワーク化することにも成功した。

通常の電解重合法では膜状の導電性高分子が生成するが、稲木准教授らはバイポーラ電極上でモノマー[用語4]の電解重合を行うことで、様々な形状のファイバーを作成する技術を開発、今回は数マイクロメートル(μm)径のファイバー状に成長させた。

ワイヤレス電極に金属線を用いた場合、その末端同士を導電性高分子ファイバーにより選択的につなぎ、ネットワーク化できる開発技術は、エレクトロニクスデバイスにおける配線技術としても期待される。研究成果は1月25日発行の英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」オンライン版に掲載される。

研究成果

稲木准教授らは、バイポーラ電気化学[用語5]に基づくワイヤレス電極上での電解重合を検討した結果、モノマーとして用いた3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の重合体であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)がワイヤレス電極末端からファイバー状に成長する現象を見出した。

図1に示すように、低濃度の電解質を含むアセトニトリル電解液中に独立して並べられた二つの金線の外部より交流電圧を印加し、バイポーラ電極化させた。ワイヤレス電極の両端が陽極、陰極としてそれぞれ振る舞い、その極性は交流周波数に依存し周期的に変化することから、両端においてEDOTの重合が進行した。それぞれの金線末端から外部電場方向にPEDOTファイバーが成長する様子は、光学顕微鏡により観察可能であり、1mm間隔を約90秒で架橋した。また、得られたファイバーの電子顕微鏡像から数μm径のファイバーを形成していることがわかった。モノマー構造を変えることで、多彩なファイバー形状を得ることにも成功した。

交流電場の印加と低電解質濃度条件が鍵であることを実証し、重合初期段階のイオン種が外部電場の影響を受けて電気泳動[用語6]しながらファイバー状の重合体が析出するメカニズムを明らかにした。

ワイヤレス電極上での電解重合により得られた導電性高分子ファイバー。

図1. ワイヤレス電極上での電解重合により得られた導電性高分子ファイバー。

背景と経緯

PEDOTに代表される導電性高分子は有機半導体・導電性材料として有望である。導電性高分子ワイヤやファイバーなどの一次元構造体は、一般にエレクトロスピニング法[用語7]やテンプレート電解重合法[用語8]により得ることができるものの、エレクトロニクス分野における回路の配線には不向きであり、インクジェット法によるプリント配線技術などが近年発展している。

近年、稲木准教授らは、バイポーラ電気化学の特徴を利用した様々な高分子材料開発に成功しており、今回の研究は文部科学省科学研究費新学術領域研究「元素ブロック高分子材料の創出(領域代表:中條善樹京都大学教授)」の一環として行われた。

今後の展開

本研究で発見した電解重合法は、外部から電場を印加するだけの簡便な手法で、金属線末端から導電性高分子を自発的にファイバー成長させることができるため、所望の金属線間を選択的に導電性高分子ファイバーで架橋することができる。これは導電性高分子配線のエレクトロニクス応用に向けた画期的な技術である。

用語説明

[用語1] ワイヤレス電極 : 電源からの給電がないにもかかわらず、電気化学反応を駆動する導電体。バイポーラ電極とも呼ぶ。バイポーラ電気化学[用語5]の原理により発現する。

[用語2] 電解重合法 : 電気化学反応により進行する重合(高分子合成)反応。芳香族化合物の電解酸化反応により、導電性高分子[用語3]が得られる。

[用語3] 導電性高分子 : 芳香族化合物が共役系で連結した高分子の通称。化学的重合法または電解重合法により得られる。高分子主鎖の電子状態により、半導体性~導電性を示す。

[用語4] モノマー : 高分子の前駆体であり、高分子中の繰り返し構造の基本骨格となる。

[用語5] バイポーラ電気化学 : 低電解質濃度条件の電解液中に外部電圧を印加することで、電解液中に生じた電場を駆動力として、ワイヤレス電極(バイポーラ電極)上で酸化反応と還元反応が同時に進行する。この現象を利用した分野をバイポーラ電気化学と呼ぶ。

[用語6] 電気泳動 : 電解液中の電場の影響を受けて荷電粒子が移動する界面動電現象。

[用語7] エレクトロスピニング法 : 高分子溶液に高電圧を印加することで射出しながら高分子ファイバーを製造する方法。

[用語8] テンプレート電解重合法 : 一次元の多孔質膜などをテンプレートとし、制限された空間で電解重合を行うこと。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Electropolymerization on Wireless Electrodes towards Conducting Polymer Microfibre Networks
著者 :
Y. Koizumi, N. Shida, M. Ohira, H. Nishiyama, I. Tomita, S. Inagi
(小泉裕貴、信田尚毅、大平雅人、西山寛樹、冨田育義、稲木信介)
DOI :

研究支援

JSPS科研費(26708013)、MEXT科研費(15H00724)

問い合わせ先

大学院総合理工学研究科 物質電子化学専攻
准教授 稲木信介

Email : inagi@echem.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5407 / Fax : 045-924-5407

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


三島学長が第21回AEARU年次総会に出席

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発表をする三島学長

発表をする三島学長

2015年12月4日・5日に、東アジア研究型大学協会(AEARU:The Association of East Asian Research Universities)の第21回年次総会が、香港科技大学で開催され、東工大からは、三島良直学長、関口秀俊副学長(国際連携担当)が出席しました。今回の年次総会には、東工大を含む18の加盟大学から、55名の参加がありました。

AEARUは、1996年に東アジアにおける研究型大学間の交流促進を目的として設立されたフォーラムで、日本・中国・韓国・香港・台湾から18の大学が加盟しています。

総会の前に開催された理事会での審議に基づき、次期(2016~2017年)の議長校、副議長校、理事校について提案があり、承認されました。次期の議長校はソウル国立大学、副議長校は筑波大学が務めることとなり、東工大は、任期満了になった東北大学に代わり、理事校となりました。

年次総会の前半では、加盟大学が2015年に行ったワークショップ、学生キャンプ等のAEARUの活動報告が行われたほか、2016年のAEARUの活動計画案が紹介されました。東工大が2016年8月に開催することを提案した「第6回エネルギー・環境ワークショップ」について、理事会で承認を得られたことが報告されました。

総会の後半では、加盟大学による教育・研究に関する取り組みについてのプレゼンテーションが行われ、三島学長は、「学部教育強化に向けたAEARU加盟大学の取り組み」をテーマとするセッションにおいて、2016年4月に東工大が実施する教育改革の紹介を行いました。他の加盟大学の参加者から多くの質問・コメントが寄せられ、関心の高さがうかがえました。

(左から)トニー・F・チャン香港科技大学(ホスト校)学長、ジュン・チェン南京大学(議長校)学長、三島学長

(左から)トニー・F・チャン香港科技大学(ホスト校)学長、ジュン・チェン南京大学(議長校)学長、三島学長

会議の様子

会議の様子

2016年春のAEARU理事会は、台湾国立清華大学で、秋のAEARU総会は、ソウル国立大学で開催される予定です。

1月27日 関連リンクを追加いたしました。

GaN増幅器モジュールを加熱源とする産業用マイクロ波加熱装置を開発

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GaN増幅器モジュールを加熱源とする産業用マイクロ波加熱装置を開発
―化学産業分野の省エネルギー化に貢献―

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「クリーンデバイス社会実装推進事業/省エネルギー社会を実現する高効率高出力マイクロ波GaN増幅器」において、三菱電機株式会社、国立大学法人 東京工業大学、龍谷大学、マイクロ波化学株式会社の4者は、出力電力500WのGaN※1増幅器モジュールを加熱源とする高効率な産業用マイクロ波加熱装置を共同開発しました。これにより、産業用加熱装置のエネルギー消費の70%低減※2と化学物質生成時の生産効率性の3倍向上※3を実現します。今後は、化学産業分野の省エネルギー化に貢献すべく、実用化に向けた取り組みを進めていきます。

※1
gallium nitride:窒化ガリウム
※2
現在主流である化石燃料を加熱源とした外部加熱方式との比較において
※3
現在主流である分散加熱時との比較において
GaN増幅器モジュールを加熱源とする産業用マイクロ波加熱装置

図1. GaN増幅器モジュールを加熱源とする産業用マイクロ波加熱装置

開発の特長

1. 産業用加熱装置のエネルギー消費を70%低減

  • 装置内部から加熱するマイクロ波内部加熱方式の採用によりエネルギー消費を70%低減
  • 産業用加熱装置の加熱源としてGaN増幅器モジュールを初めて適用

2. 化学物質生成時の生産効率性を3倍に向上

  • マイクロ波のビーム制御により、局所的な加熱を可能とする技術を開発
  • 試料の反応領域を局所的に加熱し、化学物質生成時の生産効率性を3倍に向上
 
加熱方式
加熱源
加熱状態
エネルギー消費比
生産効率性比
今回
内部加熱方式
GaN増幅器
モジュール
局所加熱
0.3
3
従来
内部加熱方式
マグネトロン
分散加熱
0.3
1とする
外部加熱方式
化石燃料
分散加熱
1とする
-

今後の展開

本プロジェクトの成果を活用し、マイクロ波加熱装置の大型化に向けた開発を行い、化学プラントへの適用を目指します。

開発の背景

GaN増幅器モジュールは、Si(シリコン)やGaAs(ガリウムひ素)を使用した増幅器モジュールに比べて高出力が得られるとともに装置の小型化に貢献します。近年では通信・レーダー分野においてGaN増幅器モジュールへの置き換えが進められているほか、高効率という特長を活かして産業分野での新たな活用も期待されています。

三菱電機株式会社、国立大学法人 東京工業大学、龍谷大学、マイクロ波化学株式会社の4者は、国内製造業のエネルギー消費の3分の1(経済産業省調べ)を占める化学産業分野の省エネルギー化に着目し、産業用加熱装置の加熱源を現在主流の化石燃料からGaN増幅器モジュールに置き換え可能なマイクロ波加熱装置を新たに開発しました。これにより、化学産業分野の省エネルギー化に貢献します。

開発の特長の詳細

1. 産業用加熱装置のエネルギー消費を70%低減

現在主流である化石燃料を加熱源とする外部加熱方式は、試料を加熱する前に装置自体を加熱する必要があり、その分のエネルギーが無駄に消費されています。そこで、GaNデバイスを用いた出力電力500WのGaN増幅器モジュールを開発し、電子レンジと同じ原理で試料を局所的に加熱するマイクロ波内部加熱方式の採用を可能にしました。これにより、エネルギー消費の低減を実現します。

2. 化学物質生成時の生産効率性を3倍に向上

現在、マグネトロンを加熱源としたマイクロ波内部加熱方式は一部導入されていますが、マグネトロンは位相コヒーレンス※4 が低いために大電力化が難しく、従って、燃料油や石炭などの試料を分散的に加熱するしかなく、加熱装置内部で生成される化学物質の大量生産が困難でした。

一方、GaN増幅器モジュールが出力するマイクロ波は位相コヒーレンスが高いため、加熱源にGaN増幅器モジュールを採用することで大電力化が可能となります。さらに位相を制御することにより温度分布を自在に制御し、局所的に内部加熱することで、化粧品やインク塗料などの化学物質生成時の生産効率性を向上します。

※4
マイクロ波などの電波のもつ性質の1つであり、位相に一定の関係性があることを表す指標
開発したGaN増幅器モジュール

図2. 開発したGaN増幅器モジュール

各社・各大学の主な開発内容

三菱電機株式会社
  • GaNデバイスの製造
  • マイクロ波GaN増幅器モジュールの開発
国立大学法人東京工業大学
  • 試料選定、マイクロ波加熱による生産効率性の妥当性、および生産効率向上に向けた基礎実験
  • 標準化活動
龍谷大学
  • マイクロ波GaN増幅器モジュールの設計
  • マイクロ波加熱装置の高効率化の基礎検討
マイクロ波化学株式会社
  • GaN増幅器モジュールを加熱源とするマイクロ波加熱装置試験炉のスケールアップ、低消費電力化の有効性の実証実験

今後の展開の詳細

三菱電機株式会社

マイクロ波加熱装置に適用するGaN増幅器モジュールを2016年度以降実用化する予定です。さらにGaNデバイス・GaN増幅器モジュールは気象レーダーなどのレーダー事業や無線通信基地局などの通信事業に幅広く展開していきます。

国立大学法人 東京工業大学

マイクロ波加熱により化学反応が大幅に向上するメカニズムを解明し、化学物質生成のさらなる生産性向上方法を検討します。

龍谷大学

マイクロ波GaN増幅器の効率向上のための新規回路を検討します。また半導体増幅器の特長を活かした新しいマイクロ波加熱装置の基礎検討を続けます。

マイクロ波化学株式会社

マイクロ波GaN増幅器などの半導体増幅器を用いた工業用加熱炉のスケールアップによる化学プラントへの適用を検討します。

問い合わせ先

(報道関係)

三菱電機株式会社 広報部

Tel : 03-3218-2359 / Fax : 03-3218-2431

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

龍谷大学 学長室(広報)

Tel : 075-645-7882 / Fax : 075-645-8692

マイクロ波化学株式会社

Email : info@mwcc.jp
Tel : 06-6170-7595 / Fax : 06-6170-7596

(開発関係)

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 業務部

Tel : 0467-21-2828 / Fax : 0467-41-2142

国立大学法人 東京工業大学
大学院理工学研究科 応用化学専攻
教授 和田雄二

Tel : 03-5734-2879 / Fax : 03-5734-2879

龍谷大学 理工学部電子情報学科 石崎研究室

Tel : 077-543-7798 / Fax : 077-543-7428

マイクロ波化学株式会社

Email : info@mwcc.jp
Tel : 06-6170-7595 / Fax : 06-6170-7596

(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)

電子・材料・ナノテクノロジー部
主査 栗原廣昭

Tel : 044-520-5211 / Fax : 044-520-5212

学生主体の国際交流~SAGE活動報告2015

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東京工業大学国際交流学生会SAGEは、海外学生への東工大の認知度向上、東工大生の国際交流の機会増加を目的として、2015年も様々な活動を行いました。

6th ASCENT(第6回アジア理工系学生連携促進プログラム)

6th ASCENT

6th ASCENT

ASCENT (Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technology)は、SAGEに所属する学生が主体となって企画・運営される短期国際交流プログラムのことで、アジア圏の理工系学生間の持続的ネットワークの構築を目的としています。参加者は毎年異なるテーマをもとに基調講演などの講義を受け、それに関連する企業・研究室を訪問します。

2015年3月に11日間にわたって開催された6th ASCENTでは、「エネルギーの未来像 The Future Image of Energy」をテーマとし、日本、インドネシア、タイ、フィリピンからの参加者19名が、アジアにおけるエネルギーの未来像について話し合いました。

海外大学院留学説明会

海外大学院留学説明会

海外大学院留学説明会

大岡山キャンパス本館H111講義室で2015年7月11日、海外の大学院へ学位取得のために留学する「学位留学」を意識することを目的とした「海外大学院留学説明会」を、米国大学院学生会と共催しました。

説明会には学位留学経験者の方をお招きし、パネルディスカッションなどを行いました。東工大生を含む55名がこのイベントに参加し、学位留学について見識を深めました。

第10回、第11回東京オリエンテーリング

東京オリエンテーリング

東京オリエンテーリング

東京オリエンテーリングは、新入留学生に東京の生活や交通に慣れてもらうことを目的として、毎年春と秋に開催されています。参加者は4、5人のグループに分かれ、東京を観光しながら東京メトロの様々な駅に設置されたミッションをクリアすることで得点を得て、その合計点を他のグループと競い合います。イベントは全て英語で行われ、参加者の満足度も高い、大人気のイベントとなっています。

2015年は4月と10月に開催し、春には23名、秋には52名が参加しました。参加者が東京を観光している間に撮影した写真を用いてフォトコンテストも行われ、大盛況のうちに終了しました。

東工大を訪問した海外学生に対してキャンパスツアーの実施

SAGEは東工大へ訪問を希望する海外学生に対して、キャンパスガイドや学内施設・研究室見学ツアーの企画を行っています。昨年は韓国、アメリカ、シンガポール、ブラジル、スイス、中国、ベトナム、タイから来た学生計218名に対して、キャンパスツアーや東工大生との交流会を行いました。

キャンパスツアー
キャンパスツアー

2016年もSAGEは国際交流の場を東工大生に提供すべく活動する予定です。

お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流学生会SAGE

Email : sage.tokyo.tech@gmail.com

細野秀雄教授が2016年日本国際賞(Japan Prize)を受賞

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材料科学の世界的研究者として知られる細野秀雄教授に、この度、2016年日本国際賞(Japan Prize)を授与されることが決定しました。

今回受賞した細野秀雄教授(左)とスティーブン・タンクスリー博士(右)
今回受賞した細野秀雄教授(左)とスティーブン・タンクスリー博士(右)

日本国際賞(Japan Prize)とは、「国際社会への恩返しの意味で日本にノーベル賞並みの世界的な賞を作ってはどうか」との政府の構想に、松下幸之助氏が寄付をもって応え、1985年にはじまった国際賞です。この賞は、全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に与えられるもので、毎年、科学技術の動向を勘案して決められた2つの分野で受賞者が選定されます。また、授賞式は、天皇皇后両陛下ご臨席のもと各界を代表する方々のご出席を得、盛大に挙行されます。

細野秀雄教授は、2016年の授賞対象分野の一つである「物質、材料、生産」分野の受賞者として選ばれました。

受賞理由

ナノ構造を活用した画期的な無機電子機能物質・材料の創製

細野秀雄教授は、ナノ構造を活用することによって元素や化合物の固定概念を打ち破る数々の電子材料や物質を創り出しました。たとえば、電気伝導性を示さないとされていた透明アモルファス酸化物を使って半導体を開発。そのひとつであるIn-Ga-Zn-O(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)系薄膜トランジスタ(IGZO-TFT)は省エネ性の高い液晶ディスプレイとしてパーソナルコンピューターやタブレットなど、現代のごく身近な生活の中に実用化されています。さらに、大型の有機ELテレビにも実装が開始されています。この他にも、セメント材料から電気伝導性をもつ化合物を創り出したり、超伝導には有害とされる鉄を含む高温超伝導体の発見など、ユニークな視点から材料科学の新領域を開拓し、産業にも大きく貢献してきました。

コメント

細野秀雄教授

細野秀雄教授

受賞の対象となった成果は、1993年に本学で始めた透明酸化物の電子機能開拓の研究で得られたものです。当時の応用セラミックス研究所の「大きな構想を描けないなら、ここにいる資格はない」という凄まじい活力と緊張感に後押しされて始めた研究が、1999年にJSTのERATOプロジェクトに採択され、構想を思い切って展開できるチャンスを与えられたことが飛躍の契機になったと思います。恩師、共同研究者、研究室の学生の方々などのお蔭です。厚く御礼申し上げます。

物質には思いもよらない機能が潜んでいるようです。私たちはそのほんの一部分しか未だ知らないようだという感を深くしています。2012年の設立された「元素戦略研究センター」は、物質の可能性を開拓し、材料にまでジャンプさせる研究を強力に推進することが目的です。このセンターを中心に一層 物質・材料の開拓研究に精進したいと思っています。

お問い合わせ先

広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

世界最高速!毎秒56ギガビットの無線伝送に成功―ミリ波帯無線機をCMOS集積回路で実現―

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国立大学法人東京工業大学[注1](以下、東京工業大学)と株式会社富士通研究所[注2](以下、富士通研究所)は、無線装置の大容量化を目指して、72から100ギガヘルツ(以下GHz)と広い周波数範囲にわたり、高速に損失が少なく信号処理できるCMOS無線送受信チップとそのモジュール化技術を開発しました。これにより、世界最高速となる毎秒56ギガビットの無線伝送に成功しました。

近年、スマートフォンなどの普及に伴うデータ通信量の増大に対応するために、基地局間ネットワークでは、光ファイバーが用いられていますが、都市部や、河川や山間に挟まれた地域など光ファイバー通信網の敷設が困難な地域へのサービス展開が難しいという課題がありました。そのため、今回、競合する無線アプリケーションが少なく大容量の通信が可能なミリ波帯(30から300GHz)を利用した高速無線送受信技術を開発しました。

本技術により、光ファイバー通信網の敷設が困難な用途において、屋外設置可能な大容量無線装置の実現を可能にします。

本技術の詳細は、1月31日(日曜日)から米国サンフランシスコで開催される半導体技術に関する最大の会議である「国際固体素子回路会議ISSCC 2016(IEEE International Solid-State Circuits Conference 2016)」で発表します(ISSCC発表番号13.3)。

開発の背景

スマートフォンの普及に伴いデータ通信量が急激に増大しており、無線基地局とコアネットワーク、もしくは基地局間を結ぶ基幹ネットワークの大容量化が加速しています。従来、数キロメートルの広範囲をカバーするマクロセル方式が中心でしたが、近年では、数百メートル以内の小さいエリアをカバーする基地局を多数設置するスモールセル方式を組み合わせることによって通信量の増大に対応しています。

また、現在、基地局間の通信回線は、大容量なデータを伝送できる光ファイバーが主流です。建物が密集している都心部や、山間や河川などで隔たれた地域では新規に光ファイバーを敷設することが困難であり、屋外に簡便に設置できる大容量無線装置の実現が期待されています。

課題

大容量データを無線伝送するためには、広い周波数範囲を利用することが必要です。そのためには、競合する無線アプリケーションが少なく広帯域なミリ波帯(30から300GHz)の利用が適しています。しかし、ミリ波帯は、周波数が非常に高く、CMOS集積回路の動作限界に近いところで設計する必要があるため設計の難易度が高く、広帯域な信号を、高品質にミリ波帯へ周波数を変復調する送受信回路や、回路基板とアンテナを接続するインターフェース回路を低損失に実現することが困難でした。

開発した技術

今回開発したCMOS無線送受信チップと、これを搭載した無線モジュール(図1)は主に2つの技術により構成されます。

CMOS無線送受信チップとそのモジュール

図1. CMOS無線送受信チップとそのモジュール

1. 送受信回路の低損失化、広帯域化技術

今回、新たに、データ信号を2つに分けて、それぞれを異なる周波数帯へ変換してから混合することで、送受信回路を広帯域化・低損失化する技術を開発しました(図2)。低帯域信号は72から82GHz、高帯域信号は89から99GHzのそれぞれ10GHz幅ごとに変復調を行います。この技術により、20GHz幅の超広帯域信号においても、低雑音で、入力と出力の電力比が一定となる範囲が従来の10GHz幅と同等となる変復調が可能になり、高品質な信号伝送を実現しています。

また、ミリ波帯に周波数変換された信号を電波として送受信するための増幅器も合わせて開発しました。周波数によって部分的に増幅率が低下してしまう信号成分に対し、出力信号の振幅を入力側へフィードバックすることで増幅率を安定化させる回路技術を用いて設計することにより、72から100GHzの超広帯域の増幅器を実現しました。

開発した送受信機の構成

図2. 開発した送受信機の構成

2. モジュール化技術

半導体チップ上でミリ波帯に周波数変換された信号は、プリント基板上の信号線路を伝搬してアンテナへ供給されます。アンテナは導波管(金属状の筒)で形成されているため、プリント基板と導波管の間を超広帯域、かつ低損失に接続することが必要です。プリント基板上の配線パターンを工夫することで、超広帯域向けにインピーダンス整合させた導波管と基板の間のインターフェースを開発し、所望の周波数範囲で大幅に損失を低減できました。

なお、本成果については、東京工業大学は送受信回路の低損失化、広帯域化技術を、富士通研究所はモジュール化技術を主に開発しております。

効果

室内において、10cmの距離を隔てて2台のモジュールを対向させてデータ伝送試験を実施しました。その結果、導波管と基板の間の損失について10%以下を実現し、世界最高速となる毎秒56ギガビットのデータ伝送に成功しました。

今回開発した技術に加えて、信号を増幅して伝搬距離を伸ばすための高出力増幅器技術や、超広帯域信号を処理するベースバンド回路技術を組み合わせることで、屋外設置可能な無線装置の大容量化が可能になります。これにより、新規に光ファイバーを敷設することが困難な都市部や河川を挟んだ山間部などへも無線による大容量な基地局ネットワークを展開できるようになり、快適な通信環境を提供することに貢献します。

今後

スマートフォンなどの基地局間通信向けの無線基幹回線をターゲットとして2020年頃の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

[注1] 国立大学法人東京工業大学:所在地 東京都目黒区、学長 三島良直

[注2] 株式会社富士通研究所:本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸

問い合わせ先

大学院理工学研究科
准教授 岡田健一

Email : okada@ssc.pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3764 / Fax : 03-5734-3764

株式会社富士通研究所 デバイス&マテリアル研究所

Email : fbh@ml.labs.fujitsu.com
Tel : 046-250-8244

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

富士通株式会社 広報IR室

Tel : 03-6252-2174(直通)

東工大外国語研究教育センター講演会 瀬戸口郁氏「ドラマを書くこと・演じること」開催報告

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2015年12月17日、文学座の俳優である、瀬戸口郁氏を講師にお招きし、東京工業大学外国語研究教育センター主催の講演会が行なわれました。

講演する瀬戸口氏
講演する瀬戸口氏

瀬戸口氏は同劇団の『女の一生』『再びこの地を踏まず』、さらには俳優座劇場プロデュースの『十二人の怒れる男たち』や音楽劇『わが町』をはじめ、多くの舞台作品に出演するほか、近年は『真砂女』『吾輩はウツである』『南の島に雪が降る』などの舞台台本を執筆し、脚本家としても高い評価を確立しています。今回は「俳優の仕事とは?」「ドラマって何?」「俳優と脚本との関係」「企画はどのように生まれるか」などのテーマを立て、「書くこと」と「演じること」のあいだを自由に往還するご自身の体験から、芝居の魅力について縦横に語っていただきました。

深みのある声に、豊かな表情と落ち着きある挙動をまじえた瀬戸口氏の話しぶりは、まさにそれ自体、舞台の上の役者のようでした。さらには、一見あちこちに話題が飛ぶかのような流れの中で、一本筋の通った大きなテーマが浮かび上がり、脚本家ならではの巧みな構成で講演が行われました。

女優の故・杉村春子氏の強烈な存在感に魅せられ、芝居の道を志した大学時代、文学座研修生として雑巾がけに明け暮れた修業の日々、食事の場面をリアルに演じられるよう、箸で豆をつまみ、口に含むまでの練習に半年をかけたものの本番で失敗し、それを見ていた憧れの大女優からお叱りの言葉を頂いたことなど、たくさんの芸談を披露していただきました。

「髭がないとこの役はできないのです」と、当日は髭を持参して血脇守之助(『再びこの地を踏まず―異説・野口英世物語―』より)の台詞を読む瀬戸口氏

「髭がないとこの役はできないのです」と、
当日は髭を持参して血脇守之助(『再びこの地を踏まず
―異説・野口英世物語―』より)の台詞を読む瀬戸口氏

「俳優の身体は本人が演じてきた脚本によって作られてゆく」という自論を紹介し、「役づくりにはかたちが大切」と言って口ひげをつけ、背筋のピンと伸びた明治時代の学者の台詞を読み上げるかと思えば、ミニ作劇講座のように会場から意見を募り、男女の出会いから結婚に至る粗筋を肉付けしていくことで、面白い芝居の条件を自ずと説き明かすなど。

瀬戸口氏は「芝居とは、ある状況に置かれたときの登場人物の行動を通して、人間の本質を描くもの」であり、瀬戸口氏が書き、演じるものの根底には必ず「人間とは何ぞや?」という問いかけがあると語りました。そしてこの問いかけこそは、ギリシャ悲劇の古典的名作『オイディプス王』以来、古今東西二千年余の文明の歴史を通して、変わらずに受け継がれてきたものだと、話を結びました。

講演の演題「ドラマを書くこと・演じること」をそのまま体現するような、濃密で味わい深い90分間となり、まるで劇場と化した大岡山西3号館LL教室で、20人あまりの聴講者は、一人芝居のような瀬戸口氏の話にひたすら惹きつけられていました。

お問い合わせ先

外国語研究教育センター 外国語準備室

Tel : 03-5734-2287

東京工業大学社会人教育院「製造中核人材育成講座」「金属熱処理スーパーマイスタープログラム」開講

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東京工業大学社会人教育院では、「製造中核人材(スーパーマイスター)育成講座」を設置し、ものつくりを支える現場の高度技能と、ボーダーレスな先端技術を統合して、新技術・新製品を開発する人材の育成をめざしています。

このうち、「金属熱処理スーパーマイスタープログラム」は、開催5回目を迎え、多くの皆様にご好評いただいてまいりました。1年半をかけ、一流の講師陣により、講義と実習をセットで行います。

この一連のプログラムを通じて、日本の経済の根幹、モノづくり産業の根幹を支える熱処理製造現場の将来のリーダーを育てます。

企業の将来を担う皆様のご参加を、心よりお待ちいたしております。

募集概要

募集期間
2016年1月24日(日)~2016年3月25日(金)
※ただし、申込者が定員に達しましたら締め切らせていただきます
募集人員
20名
備考
その他募集に関する詳細は募集要項PDFをご確認ください

実施概要

日時
2016年4月23日、5月14日/28日、6月11日/25日、7月9日/23日、8月6日/20日、9月3日、10月1日/15日/29日、11月5日/19日、12月3日/17日
2017年1月14日/18日、2月18日(以降は別途インターンシップを行う)
場所
備考
その他詳細はこちらPDFをご確認ください

「金属熱処理スーパーマイスタープログラム」受講者募集 パンフレット

問い合わせ先

東京工業大学 社会人教育院事務室

E-mail : jim@kyoiku-in.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8722、8867


2月の学内イベント情報

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2016年2月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

2016年2月の学内イベント情報

芥川賞作家 磯﨑憲一郎教授 講演会「私の考える小説とは」開催報告

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1月12日、大岡山キャンパス西9号館ディジタル多目的ホールにて、昨年本学に就任した磯﨑憲一郎教授による講演会「私の考える小説とは」が、本学リベラルアーツセンター主催で開催されました。磯﨑教授は現在、大学院社会理工学研究科価値システム専攻に属しており、小説生成論を担当しています。客席には一般の方を含め100人以上の聴衆が集まりました。

講演会ポスター

講演会ポスター

磯﨑教授

磯﨑教授

自己紹介の様子

自己紹介の様子

磯﨑教授はまず最初の自己紹介で、学生時代は競艇部で活躍し体育会系の根性を持っていたこと、就職は商社に入社し若いうちに北米デトロイトなどで7年間の貴重な海外経験を積んだことなどを説明しました。磯﨑教授にとって人生で一番身になったのがこの7年だったそうで、若いうちに海外に行って世界に触れてみることの面白さを伝えました。

小説執筆について

小説執筆について

小説については、プロット(事前の設計図)は一切なしに、あるのは最初の一文だけで書いていく、磯﨑教授ならではの書き方を紹介しました。一行書いて、そこまで書いた部分と相談しながら次の一行をひねり出していく、ひねり出すことが小説を書く推進力になっているそうです。また、ストーリーをたまに断ち切ることもメリハリをつけるために必要ということなど、小説を生み出す工程について「もしかしたら小説家としては変わった書き方なのかもしれない」と客席とやりとりをしながら話しました。

会場の様子
会場の様子

磯﨑教授の著書を展示

磯﨑教授の著書を展示

また、手元資料の自身の著書「世紀の発見」やカフカ作「変身」などの抜粋を用いて、文章の表現やストーリーの展開を説きました。自身の小説を書くひらめきや展開は、寝ているときに見る夢(どんな突拍子もないありえない設定でもすんなりと受け入れてしまう)と同じような感覚であるとのことです。これが自分の小説の原理と例えられるのではと考え、誰にでも経験がある「夢」での出来事が小説を書くひらめきにつながる可能性があると述べ、会場の興味を引きました。

講演会の前後の期間中、東工大附属図書館で磯﨑教授の著書の特別展示が行われ、たくさんの学生が手に取っていました。当日の会場内にも展示されました。今後の磯﨑教授の執筆にもどうぞご注目ください。

最新著書「電車道」
最新著書「電車道」

お問い合わせ先

東工大 リベラルアーツセンター

Email : office@liberal.titech.ac.jp

スポーツ講座2015「『オリンピック』バドミントン選手に聞く」開催報告

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2015年12月18日、大岡山キャンパス西9号館ディジタル多目的ホールにて、「『オリンピック』バドミントン選手に聞く」と題して、スポーツ講座2015を開催しました。スポーツ講座は、日本を代表するスポーツ選手を招いて講演いただくイベントで、2005年から毎年開催しています。東工大を含む日本の多くの大学が、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会と連携しており、このスポーツ講座も組織委員会との連携イベントのひとつとして実施しています。18回目となる今回は、バドミントンの元オリンピック選手である池田信太郎氏と小椋久美子氏にお越しいただきました。フリーアナウンサーの吉田填一郎氏に聞き手をお願いし、約1時間半いろいろなお話を伺いました。

講演の様子
講演の様子

池田信太郎氏

池田信太郎氏

池田信太郎氏は福岡県出身で、5歳の頃からバドミントンを始め、高校ではインターハイで上位に入りました。しかし大学時代には目立つ成績がなく、福岡県で教員になり、バドミントンの指導をすることがほぼ決まっていたそうです。ところが、ふとしたきっかけで日本ユニシスに入り、その後、紆余曲折ありながら世界選手権で男子ダブルス三位、北京オリンピック、ロンドンオリンピック出場と活躍しました。今後は、バドミントンアカデミーを作り、ジュニアの指導、バドミントンの発展に向けて力を注いでいくと話しました。

小椋久美子氏

小椋久美子氏

小椋久美子氏は三重県出身で、兄弟がバドミントンをしていたことや、バドミントン以外に男女一緒にできるスポーツが周りになかったため始められたそうです。高校卒業後、三洋電機に入り、初めて出場した全日本総合バドミントン選手権大会では、予選から勝ち上がってシングルスで日本一になりました。その後は女子ダブルスで活躍、北京オリンピックに出場されました。オリンピックでは通常の試合と全く異なる空気感で、大変な緊張の中、試合をされたそうです。取材の仕事で行ったロンドンオリンピックでも、会場に入ると選手の時と同じ空気を感じたと話しました。現在、日本のバドミントン界には優秀なプレーヤーがおり、ロンドンオリンピックの銀メダルに続き、リオデジャネイロオリンピックでもメダル獲得を十分期待できると、熱をもって語りました。

吉田填一郎氏

吉田填一郎氏

聞き手の元日本テレビアナウンサー吉田填一郎氏は、講演者の緊張を和らげ、オリンピック選手になるまで、そして今後のバドミントンの発展に至るまでの話を引き出していただきました。講演者の興味深いお話で、盛況のうちに閉会しました。

普段、理工系の講義や研究に多くの時間を費やす東工大の学生にとっては、スポーツという異分野の話を聞くことができ、視野を広げる有意義な対談となったようです。

お問い合わせ先

大学院社会理工学研究科 須田和裕 准教授

Email : suda@hum.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2290

多面的なアプローチによる疾患介入~第4回生命理工国際シンポジウム~

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1月13日(水)、東工大すずかけ台キャンパス大学会館において第4回生命理工国際シンポジウムが開催されました。本シンポジウムは、大学院生命理工学研究科と情報生命博士教育院(ACLS)が共催し、主に大学院生を含む若手研究者を対象に英語で行われています。

今回は“Multifaceted Approaches to Disease Intervention(多面的なアプローチによる疾患介入)”というテーマのもと、海外から2名、国外から3名の招待講演者と学内講演者2名が、基礎的な生命医科学研究から創薬研究、さらにはケミカルバイオロジーやナノテクノロジーを用いた技術開発に至るまで、多様な切り口で本テーマに関する最先端の研究を紹介しました。

シンポジウムの様子
シンポジウムの様子

セッション1では、コーネリス・ミュア教授(米国カリフォルニア大学サンディエゴ校)、岡田眞里子チームリーダー(理化学研所統合生命医科学研究センター)、粂昭苑教授(本学大学院生命理工学研究科)が、生命の神秘を解明し、それを計算機や試験管内で再構成する研究を紹介しました。セッション2では、アンソニー D. ウィリアム チームリーダー(シンガポール科学技術研究庁(A*STAR))と安達邦知主席研究員(田辺三菱製薬株式会社)が、新規の標的に対する創薬研究について講演しました。続いてセッション3では、西山伸宏教授(資源化学研究所)と浦野泰照教授(東京大学)が、診断やドラッグデリバリー(薬物輸送)に向けたケミカルバイオロジーやナノテクノロジーの技術開発について講演しました。

共催のACLSの山村雅幸教授(大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻)は、「セッション1でランジュバン方程式が出てきたのには驚きました」とコメントし、ミュア教授はセッション2について「創薬化学に関する詳しい講演を聞いたのは初めてでしたが、とても勉強になりました」と話すなど、これまでになく計算科学の「色」が前面に強く出たシンポジウムとなりました。さらに、セッション3でのお2人の講演は大変素晴らしく、いかなるタイプのがんも近い将来、必ず発見・治療できてしまうのではないかという印象を会場の多くの人々に与えました。

招待講演者とシンポジウム関係者
招待講演者とシンポジウム関係者

今回のシンポジウムの参加人数は事前登録段階で400名を超え、過去4回中最大となりました。今後も継続して質の高い国際シンポジウムを開催し、大学院生や若手研究者に国際的に活躍する第一線の研究者と交流する機会を提供していきます。

懇親会の様子
懇親会の様子

懇親会の様子

鉛フリー圧電体の開発に新しい一歩―巨大な正方晶歪み有する新しい極性酸化物を合成―

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概要

東京工業大学応用セラミックス研究所の于潤澤博士研究員と北條元助教、東正樹教授は、環境に有害な鉛を含まず、巨大な正方晶歪みを有した新しい極性酸化物、「亜鉛酸バナジウム酸ビスマス」を合成することに成功した。有害な鉛を廃した新しい圧電体[用語1]の開発につながると期待される。

この成果は、アメリカの科学誌「ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chemistry of Materials)」に掲載された。

研究の背景

電気と運動を変換する圧電体は、センサーやアクチュエーターとして様々な電子機器で使われている。現在の主流はPZTと呼ばれる、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体材料だが、毒性元素である鉛を重量で68%も含むため、代替物質の開発が望まれている。

圧電体は、正の電荷を持つ陽イオンと負の電荷を持つ陰イオンの重心が一致しない、「極性」と呼ばれる結晶構造を持つ。鉛は結晶構造を歪ませる作用があるため、鉛を含む化合物ではこの正電荷と負電荷の不一致(自発分極)が増大される。PZTの優れた圧電特性は、縦方向に分極を持つ正方晶ペロブスカイト[用語2]のチタン酸鉛と、斜め方向に分極を持つ菱面体晶ペロブスカイト[用語3]のジルコン酸鉛との相境界で発現することが知られている。鉛を含まない代替の圧電材料を開発するためには、正方晶または菱面体晶ペロブスカイト構造をもつ新しい極性酸化物を見つけ出す必要がある。

研究成果

非鉛の正方晶ペロブスカイト構造をもつ材料として、亜鉛酸チタン酸ビスマスが知られている。一方、バナジウム酸鉛は、チタン酸鉛と同じ正方晶ペロブスカイト構造をもつことが知られていることから、バナジウムにはチタンと同様に、極性の構造を安定化させる効果があると考え、亜鉛酸バナジウム酸ビスマスを合成した。

電子線回折[用語4]と、大型放射光施設SPring-8[用語5]のビームラインBL02B2での放射光X線回折[用語6]を組み合わせた精密構造解析の結果、亜鉛酸バナジウム酸ビスマスが巨大な正方晶歪みを有した極性構造を持つことを確認した。これまでに報告されている同形物質には、チタン酸鉛、バナジウム酸鉛、コバルト酸ビスマス、亜鉛酸チタン酸ビスマスがあるが、今回発見した亜鉛酸バナジウム酸ビスマスは、これらの中で最も大きな自発分極を持つ。

今後の展開

今回の成果は、巨大な正方晶歪みを有した新しい非鉛の極性酸化物亜鉛酸バナジウム酸ビスマスを合成したことである。今後は、PZTに倣い、亜鉛酸バナジウム酸ビスマスを端成分とした固溶体を合成することで、有害な鉛を廃した新しい圧電材料の開発が進むことが期待できる。

亜鉛酸バナジウム酸ビスマスの結晶構造

図. 亜鉛酸バナジウム酸ビスマスの結晶構造

用語説明

[用語1] 圧電体 : 応力をかけると表面に電荷が現れ、一方電界を印可すると変形する物質。

[用語2] 正方晶ペロブスカイト : ペロブスカイトは一般式ABO3で表される元素組成を持つ、金属酸化物の代表的な結晶構造。結晶構造中の原子の繰り返し周期である単位格子が、立方体ではなく、一方向に伸びた直方体である物を正方晶と呼ぶ。

[用語3] 菱面体晶ペロブスカイト : 単位格子が立方体ではなく、頂点方向に伸びたペロブスカイト。

[用語4] 電子線回折 : 電子顕微鏡の中で試料に電子線を照射し、回折パターンを調べることで、対称性や格子定数(単位格子の長さ)を決定する。

[用語5] 大型放射光施設SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す施設。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、指向性の高い強力な電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

[用語6] 放射光X線回折実験 : 物質の構造を調べる方法。放射光X線を試料に照射し、回折強度を調べることで結晶構造(原子の並び方や原子間の距離)を決定する。原子の座標から分極の大きさと方向を計算することができる。

論文情報

掲載誌 :
Chemistry of Materials
論文タイトル :
New PbTiO3-type Giant Tetragonal Compound Bi2ZnVO6 and it Stability under Pressure
著者 :
Runze Yu,1 Hajime Hojo,1 Kengo Oka,1,2 Tetsu Watanuki,3 Akihiko Machida,3 Keisuke Shimizu,1 Kiho Nakano,1 and Masaki Azuma1
所属 :
1Materials and Structures Laboratory, Tokyo Institute of Technology
2Department of Applied Chemistry, Faculty of Science and Engineering, Chuo University
3Quantum Beam Science Center, Japan Atomic Energy Agency
DOI :

問い合わせ先

応用セラミックス研究所
教授 東正樹

Email : mazuma@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5315 / Fax : 045-924-5318

東工大松井将器選手、2度目の箱根駅伝を快走

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1月3日、第92回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に東京工業大学陸上競技部の松井将器さん(工学部機械宇宙学科4年)が関東学生連合チームのメンバーとして出場し、復路第8区(平塚~戸塚:21.4キロメートル)で見事な走りを見せました。

第8区の快進撃!

快走する松井さん(左)

快走する松井さん(左)

関東学生連合チームは、前日の往路を5時間39分1秒、15位相当で終え、翌日復路にたすきをつなぎました。この日、第8区出走の松井さんは、平塚中継所で第7区の駿河台大学3年の平賀喜裕さんからたすきを受け取ると、ほぼ同時にたすきを受け取った他校2選手をみるみる引き離しました。その後も松井さんの好走は続き、第9区を走る平成国際大学3年の柴田拓真さんにたすきを渡すまで、さらに3選手を抜き去り、区間記録1時間6分12秒、区間7位相当という素晴らしい結果を残しました。

本選出場を逃した大学の個人記録上位者で編成される関東学生連合チームはオープン参加であるため、順位、チーム、記録、個人記録とも参考扱いとなる。

松井さんの出場は、昨年の復路9区出場に続き今年2度目。今年は、昨年かなわなかったたすきの受け渡しを果たすだけでなく、区間17位相当から7位相当と順位を大きく伸ばしました。関東学生連合チームの総合成績も11時間15分30秒、21チーム中11位相当という結果になり、チームに大きく貢献しました。

東工大応援団の前を駆け抜ける松井さん(左)
東工大応援団の前を駆け抜ける松井さん(左)

沿道に並ぶ青いのぼり旗

沿道に並ぶ青いのぼり旗

当日は沿道に東工大の青いのぼり旗が並び、学長や理事・副学長も応援にかけつけました。東工大陸上部のユニフォームを着た松井さんが前を通ると、横断幕を掲げて熱い声援が送られました。文武両道を貫く松井さんの活躍はメディアの目にもとまり、「異色の理系ランナー」「東工大の台風」等、各紙でも取り上げられました。

沿道には学長や丸山理事・副学長の姿も

沿道には学長や丸山理事・副学長の姿も

横断幕を掲げて応援

横断幕を掲げて応援

松井将器さん(工学部機械宇宙学科4年)コメント

箱根駅伝関東学生連合チームの8区として走りました。結果は66分12秒で区間7位相当でした。
去年は私の前後で繰上げスタートとなりタスキをもらう事も渡すことも出来ませんでしたが今年は無事タスキをつなげることができました。

箱根を走るに当たり多くの人にサポート、応援をしていただきました。おかげ様で去年以上の良い経験をすることが出来ました。この経験は私の一生の宝です。本当にありがとうございました。

東工大基金

陸上競技部の活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

連想辞書情報から脳の反応を予測する―グラフ指標MiFをfMRIデータ解析に導入―

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概要

東京工業大学大学院社会理工学研究科の赤間啓之准教授は、マルコフ逆F尺度(MiF[用語1])という新しいグラフ指標を提案し、それを小さな単語連想辞書[用語2]に適用すると、言葉の意味を考える脳について、そのfMRI(機能的磁気共鳴画像法)反応予測モデルの精度が有意に向上することを解明した。

研究の背景

カーネギーメロン大学チームのScience論文(2008)以来、電子化された言語資料の集成(コーパス)をもとに、人間の脳がそれぞれの言葉の意味をどう処理して反応するか、個別の単語についてfMRIデータに現れるパターンを分類し推定する人工知能の手法が開発されてきた。fMRIデータの機械学習はMVPA(多変量パターン解析[用語3])と呼ばれるが、言語コーパスからの情報を変数としてモデル化すると、人間の脳がいまどんな言葉を考えているか、たとえfMRIデータがその言葉の反応情報を含んでいなくとも、言語コーパスの方から予測できる(いわゆる「心を読む」ことができる)。これまでは、GoogleやWikipediaのような大規模知識資源を利用する場合が多かったが、簡単に計算できる極めて小さいコーパスからも精度の高い予測モデルを計算することは行われていなかった。

研究成果

この研究では、脳の意味処理をめぐって共同研究先のカーネギーメロン大学のfMRIデータに対し、非常に小さい単語連想辞書EATの意味ネットワークから計算したマルコフ逆F尺度(MiF)値行列を適用すると、脳の反応が、小さなコーパスサイズでも従来の方法より高い78%の精度で推定できることがわかった。さらに、単語連想辞書の意味ネットワーク、すなわち単語と単語の間の概念の関連関係を表すネットワーク(グラフ)を、単語の意味処理を行う脳神経内の同時賦活ネットワーク(グラフ)に投影させる手法を提案し、異なるネットワーク(グラフ)間の関連性を解析する糸口を見出した。

今後の展開

MVPAは人間の脳の心理的・生理的状態を「読む」技術として、意思表明が困難な障碍を持つ人々への支援を目標に、基礎研究が盛んに行われているが、本研究成果を発展させた場合、特に、個性的な連想・思考情報のプロファイルをもとに、人間の脳内の個人的な意味表現をさらに高い精度で検出して「読む」ことができるようになると期待される。

連想辞書の意味ネットワークとそこから推定される脳の意味処理反応

図. 連想辞書の意味ネットワークとそこから推定される脳の意味処理反応

用語説明

[用語1] マルコフ逆F尺度(MiF) : グラフの測地線情報と共起情報を同時に導入して計算された点間の距離。Jaccardなど従来の距離指標を、重み付きの調和平均(F尺度)で調整しながら、さらに最短ステップ数による重み付けの形で、グラフ構造まで反映させる独自の点間計測尺度。

[用語2] 単語連想辞書 : 心理学実験で参加者に単語を刺激語(お題)として与え、そこから思い付いた単語を反応語として集め(たとえば「バラ」→「赤」など)、連想概念情報全体をデータベース化したもの。単語と単語の関連を繋ぎ合わせると分かりやすい意味ネットワーク(グラフ)になる。意味ネットワーク内で近傍にある単語は、その意味構造の共通性から、それらの単語を考える脳のfMRIデータにあっても、類似する賦活パターンや結合ネットワークを示すと考えられる。

[用語3] 多変量パターン解析 : 脳神経の反応データの一部から、条件ごとに分類するモデルを計算(学習、訓練)し、それを残りのデータに適用して、交差評価によりモデルの精度を計算する機械学習の方法。fMRIの場合は、脳画像の画素(ヴォクセル)の持つ値の集合に対して使われるので多ヴォクセルパターン分析とも呼ばれる。

論文情報

掲載誌 :
PLoS ONE
論文タイトル :
Using Graph Components Derived from an Associative Concept Dictionary to Predict fMRI Neural Activation Patterns that Represent the Meaning of Nouns
著者 :
Hiroyuki Akama1*, Maki Miyake2, Jaeyoung Jung1, Brian Murphy3#
所属 :
1Graduate School of Decision Science and Technology, Tokyo Institute of Technology, Tokyo, Japan
2Graduate School of Language and Culture, Osaka University, Osaka, Japan
3Machine Learning Department, Carnegie Mellon University, Pittsburgh, United States of America
#Current Address: School of Electronics, Electrical Engineering and Computer Science, Queen's University, Belfast, United Kingdom
DOI :

問い合わせ先

大学院社会理工学研究科 人間行動システム専攻
准教授 赤間啓之

Email : akama.h.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3254 / Fax : 03-5734-3254


国内初のIT-CMF資格取得講座開講を日刊工業新聞が紹介

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東工大社会人教育院が、グローバル産業リーダー育成プログラム(GINDLE)の一環として開講した、ITの利活用に焦点を当てた「Enterprise Engineeringコース(0)」の取り組みと、本学・飯島淳一社会理工学研究科教授(社会人教育院院長)へのインタビュー内容が、2015年12月3日と2016年1月5日の日刊工業新聞で紹介されました。

IT-CMFの構成(出典:Innovation Value Institute)

IT-CMFの構成(出典:Innovation Value Institute)

この講座では、国内で初めて「IT-CMFプロフェッショナル」の資格を取得することができます。「IT-CMF」とは、企業におけるIT利活用の度合いを評価する新たな評価軸のことで、既に欧米では広がりを見せています。企業はIT利活用に関する組織の強みと弱みを知り、成熟度を向上する指針を得ることができます。イノベーションに不可欠なITが、欧米に比べると日本は生産性向上にあまり寄与していないという課題がある中で、日刊工業新聞では、本講座の開講を「日本が生まれ変わる第一歩となりそうだ」と紹介しています。

35のクリティカル・ケイパビリティ―(出典:Innovation Value Institute)
35のクリティカル・ケイパビリティ―(出典:Innovation Value Institute)

社会人教育院では、2016年3月8日に「ビジネス価値創出のための成熟度フレームワーク:IT-CMF」と題して、アイルランド国立メイヌース大学にあるIVI(Innovation Value Institute)の教育担当ディレクター、マイケル・ハンリー氏を迎えた講演会を大阪で開催します。

本記事内の図の監修・協力:
東京工業大学社会理工学研究科 飯島淳一教授・東京工業大学社会理工学研究科経営工学専攻修士課程 猪爪健太

IVI(Innovation Value Institute):アイルランド国立大学とインテルヨーロッパ研究所が共同で設立した、ITを利活用してイノベーションにつなげるための方策を研究テーマとした研究所

お問い合わせ先

東京工業大学 社会人教育院事務室

Email : jim@kyoiku-in.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8722 / 03-3454-8867

タンパク質合成過程における「緩急のリズム」を実証―大腸菌遺伝子産物の中間状態を網羅的に解析―

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要点

  • 個々のタンパク質分子が合成される途上で経験する「一時停止」を直接観察
  • 80%以上の遺伝子は一時停止(緩急のリズム)を伴って翻訳される
  • 翻訳の一時停止が正しい品質のタンパク質をつくることに寄与することを提唱
  • タンパク質の高品質大量生産や人工的デザインへの応用の途を開く

概要

生命現象を担うタンパク質は、すべてリボソーム[用語1]というタンパク質合成装置で作られます。このとき、遺伝暗号に従って選ばれたアミノ酸が順次、鎖状に繋がれていきます。この翻訳における伸長と呼ばれる過程は一定の速度で進むのでしょうか?最近になって、タンパク質合成過程で「一時停止」が起こる現象が知られるようになり、一時停止がタンパク質の機能発現に重要な意味を持つのではないかと考えられるようになりました。しかし、細胞内に存在する数千、数万種類のタンパク質でそのような一時停止がどの程度普遍的に起こるのかについてわかっていませんでした。

京都産業大学総合生命科学部の茶谷悠平博士研究員(現・東京工業大学大学院生命理工学研究科博士研究員)と伊藤維昭シニアフェローおよび千葉志信准教授、東京工業大学大学院生命理工学研究科の田口英樹教授および丹羽達也助教からなるグループは、リボソームでタンパク質が合成される際の「一時停止」の頻度を大腸菌の1000種類以上のタンパク質について系統的に調べ、80%以上のタンパク質は緩急のリズムとともに合成されてくることを明らかにしました。

この実験から得られた大規模なデータセットでは、近年注目を集めているリボソームプロファイリング[用語2]という方法に比べてより直接的に翻訳の中間状態(ペプチジルtRNA[用語3])を捉えています。本研究は、遺伝情報が機能的タンパク質に変換されるという生命の基礎となる過程の詳細に迫る意義を持つばかりではなく、バイオ医薬のような有用タンパク質の効率的な生産などの応用利用にも貢献しうるものです。

背景

タンパク質は、生命現象において生物が発揮する機能の担い手として中心をなしています。タンパク質は20種類のアミノ酸が連結した鎖(ポリペプチド鎖)が立体構造をつくったものですが、この鎖はDNA配列をもとにリボソームというタンパク質合成装置でアミノ酸が一つ一つ連結されてできてきます。DNA配列の写し(メッセンジャーRNA)を介してリボソームでタンパク質が作られる過程は「翻訳」と呼ばれ、我々ヒトのタンパク質を含む全ての生物のタンパク質は例外なく翻訳を経て産まれてきます。リボソームには新たに生まれ出てくるポリペプチド鎖(新生鎖)の通り道(出口トンネル)があることが知られています。その出口トンネルの立体構造が解明された当初は、トンネル内部は「テフロン」のようにつるつるで新生鎖は停滞することなく産まれてくると考えられていましたが、その後、新生鎖が出口トンネル内で一時停止する「翻訳アレスト現象」が、さまざまな生物で見つかり、その翻訳アレストによって停止した新生鎖そのものが生理学的な機能を発揮する例が知られるようになりました。翻訳アレストはごく限られた遺伝子の翻訳時の特別な現象と考えられがちです。しかし、細胞における全てのタンパク質は合成途上に新生鎖としてトンネルに収容された状態を経験しなければならない事実や、遺伝暗号の使い方によっても局所的な翻訳速度が変化することなどを考え併せると、翻訳の一時停止(pausing)が例外ではなく広範に起こっている、遺伝子発現における本質的な現象である可能性が十分考えられます。

合成途上のタンパク質(赤)はtRNAに繋がれて、一部(アミノ酸約40個分)はリボソームのトンネルに収容されている。番号はアミノ酸を示す。図は、49番目まで合成が進んだ状態を示す。次におこることは、49番の次に50番を繋げる反応である。次いで、リボソーム1遺伝暗号の分、矢印の方向に進行する。通常、数百個のアミノ酸が一つの完成タンパク質を作ることが多い。
図1.
合成途上のタンパク質(赤)はtRNAに繋がれて、一部(アミノ酸約40個分)はリボソームのトンネルに収容されている。番号はアミノ酸を示す。図は、49番目まで合成が進んだ状態を示す。次におこることは、49番の次に50番を繋げる反応である。次いで、リボソーム1遺伝暗号の分、矢印の方向に進行する。通常、数百個のアミノ酸が一つの完成タンパク質を作ることが多い。

研究内容

今回本研究グループは、この疑問を解決すべく、各遺伝子の発現において、翻訳途上の中間体であるペプチジルtRNAが鎖のどのような配列の部位でどの程度蓄積するのかを、生きた大腸菌(in vivo)及び再構成型無細胞試験管内翻訳反応系(in vitro)を用いて検討しました。大腸菌ゲノム上の遺伝子の約1/4に相当する1038遺伝子をこの方法(iNP = integrated in vivo and in vitro nascent chain profilingと命名)によって解析した結果、80%以上の遺伝子で、翻訳途上産物の蓄積が観察され、翻訳の一時的停滞が1回あるいは複数回起こっていることが明らかになりました。そのうち半数近くでは、「翻訳アレスト現象」で解析された結果と同様に、リボソームの翻訳活性が阻害されるため翻訳の一時停止が起こることがわかりました。新生鎖とリボソーム出口トンネルが相互作用することによるリボソーム機能の制御は、これまで考えられた以上に普遍的な生命現象であると言えそうです。

従来、リボソームでのタンパク質合成は停滞することなく一定の速度で進むものと考えられていたが、ときには「一時停止」が起こり、その一時停止そのものがタンパク質の機能に直結する例があることがわかってきた。
図2.
従来、リボソームでのタンパク質合成は停滞することなく一定の速度で進むものと考えられていたが、ときには「一時停止」が起こり、その一時停止そのものがタンパク質の機能に直結する例があることがわかってきた。

翻訳の一時停止がこのように広範囲、高頻度に発生することには、生物にとって有利な点があるのでしょうか? 生物情報学的な解析の結果、多くの膜タンパク質において、特徴的な翻訳停滞パターンが見られました。また、以前の研究で、合成後に分子シャペロンの助けを借りることなく、正しく可溶性の構造を形成できることがわかっているタンパク質の一部では、膜タンパク質で見られたものとは異なるパターンの翻訳停滞が頻発しているようすも見出されました。これらのことから、翻訳の一時停止は膜タンパク質の膜への挿入や、細胞質タンパク質の翻訳の進行と協調した自発的フォールディングの促進など、新しくできるタンパク質の「成熟化過程」をガイドしているのではないかと考えられます。我々は、緩急制御という概念は、DNA→RNA→タンパク質という情報の流れと変換を記述した「セントラルドグマ」の理解に新しい視点を提供するものであると考えています。

大腸菌ゲノム上遺伝子の約1/4にあたる1038遺伝子について一時停止が起こるかどうかを試験管内および細胞内で解析したところ、80%以上の遺伝子で一時停止が1回もしくは複数回起こっていることが明らかとなった。観察された一時停止の総数(3,510個所)の約57%(2,015個所)は試験管内と生細胞内の両方で観察されたが、試験管内のみ(約28%)、生細胞内のみ(約15%)でしか起こらない一時停止もあった。一時停止が遺伝子内のどこで発生するかについて、停止が起こる状況に応じて固有の傾向を持つこともわかった。
図3.
大腸菌ゲノム上遺伝子の約1/4にあたる1038遺伝子について一時停止が起こるかどうかを試験管内および細胞内で解析したところ、80%以上の遺伝子で一時停止が1回もしくは複数回起こっていることが明らかとなった。観察された一時停止の総数(3,510個所)の約57%(2,015個所)は試験管内と生細胞内の両方で観察されたが、試験管内のみ(約28%)、生細胞内のみ(約15%)でしか起こらない一時停止もあった。一時停止が遺伝子内のどこで発生するかについて、停止が起こる状況に応じて固有の傾向を持つこともわかった。

今後の展望

本研究により、広範囲、高頻度に翻訳の停滞が発生していること、また少なくともそれらの一部にはタンパク質の成熟化を助ける役割が想定可能であることが示されました。しかし、こうした翻訳の停滞のそれぞれがどのような分子機構によって起こっているのかに関しては未だ全容はつかめていません。今後、個々のケースについて、メカニズムと生理機能の徹底した解析が必要になり、それによって以下のような展望にもつながっていくものと思われます。近年では、翻訳速度調節の破綻がさまざまな疾患の原因であることも明らかになりつつあります。今後、翻訳停滞の原因となる因子、メカニズムの解明からその制御機構に研究をひろげていくことで、これまで不明だった疾患の原因解明、ひいては生物がどのようにしてタンパク質合成を最適化しているか、その一側面を明らかにできると考えています。さらに本研究を発展させていくことで、これまで困難とされているような工業的、医薬学的に有用なタンパク質の高品質大量生産や、ゼロベースからの遺伝子設計など、さまざまな分野へと波及的効果が期待できるのではないかと考えています。

用語説明

[用語1] リボソーム : RNAとタンパク質からなる巨大な複合体で、メッセンジャーRNAの塩基配列を読み取って、そこに書き込まれている遺伝暗号に従い20種類あるアミノ酸から特定のものを順番に繋げていくことにより、タンパク質の鎖(ポリペプチド鎖)を合成する。

[用語2] リボソームプロファイリング : 細胞内でリボソームが翻訳しているメッセンジャーRNAの部分だけを取り出して、次世代シークエンサーで配列を決めることにより、どのような遺伝情報がある時点でまさに翻訳されているのかの配列情報を大規模に得る方法。極めて多くの情報が得られる強力な方法であるため近年盛んに利用されている。ただし、メッセンジャーRNA上のリボソームの「影」を見る方法であるための問題点も指摘されている。本研究では、翻訳中間体を直接検出する方法を考案し使用した。

[用語3] ペプチジルtRNA : 翻訳においてリボソーム内部で実際に遺伝暗号を読み取るのがtRNAである。翻訳の中間状態では合成途上のタンパク質鎖の末端にtRNAが結合している。このような中間体分子をペプチジルtRNAと呼ぶ。本研究ではtRNAの存在を手掛かりに合成途上鎖を検出している。

論文情報

掲載誌 :
Proceedings of the National Academy of Sciences of United States of America, Volume 113 (2016)
(米国科学アカデミー紀要)2016年2月1日、電子版公表
論文タイトル :
Integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling reveals widespread translational pausing
(生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性)
著者 :
Yuhei Chadani, Tatsuya Niwa, Shinobu Chiba, Hideki Taguchi, Koreaki Ito
DOI :

問い合わせ先

京都産業大学 総合生命科学部
シニアリサーチフェロー 伊藤維昭

Email : kito@cc.kyoto-su.ac.jp
Tel / Fax : 075-705-2972

東京工業大学 大学院生命理工学研究科
生体分子機能工学専攻
教授 田口英樹

Email : taguchi@bio.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5785

取材申し込み先

京都産業大学 広報部

Email : kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp
Tel : 075-705-1411

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大フットサル部、FFCカレッジフットサルリーグ2部Dグループ優勝

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東京工業大学フットサル部 Tokyo Tech.が、2015年度のF-NET主催FFCカレッジフットサルリーグ2部Dグループにおいて優勝を果たしました。この結果により、2月24日に行われる1部昇格戦への出場が決定しました。

東京工業大学フットサル部Tokyo Tech.
東京工業大学フットサル部 Tokyo Tech.

FFCカレッジフットサルリーグは、日本最大級の学生フットサルリーグで、現在40大学以上55チームが参加しています。2部Dグループに所属したTokyo Tech.は、平成27年12月26日に行われた最終節に10-2で勝利したことで、8ヶ月間におよんだリーグ戦を8勝1分1敗で終え、優勝を決めました。昨年度に引き続き2年連続の2部グループ優勝となりました。2部リーグの4グループそれぞれの優勝チームが集まる昇格戦で、昨年度果たす事が出来なかった初の1部昇格を狙います。

副部長の住田弘毅さん(理学部物理学科3年生)のコメント

リーグ開幕初戦で引き分けてしまい、また途中でも一敗を喫し、グループ優勝まで苦しい道のりでしたが優勝出来て良かったです。必ず1部に昇格します。

お問い合わせ先

東京工業大学フットサル部 Tokyo Tech.

Email : tokyotech12@gmail.com

2月10日15:40 部の名称に表記ゆれがありましたので、修正しました。

分子が金属のどこにどのように吸着しているかの識別に成功―高性能分子デバイス実現に道拓く―

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要点

  • 分子が金属のどこに吸着しているかを識別する単分子分光法を世界で初めて開発
  • 電気計測と光学計測の同時計測により実現
  • 究極の微細化と高い信頼性を有する分子デバイス作製に威力

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の金子哲助教と木口学教授、物質・材料研究機構の塚越一仁国際ナノアーキテクトニクス研究拠点主任研究者らは、分子の吸着構造を区別できる単分子分光法の開発に成功した。単分子の電流―電圧特性、表面増強ラマン散乱(SERS[用語1])の同時計測を可能とするシステムを新たに構築して実現した。

開発したシステムを金電極に架橋したベンゼンジチオール(BDT)単分子に適用し、分子が特定の吸着構造をとる場合のみSERSが観測されることを明らかにした。これは世界で初めての吸着サイト[用語2]選択的な単分子分光計測である。今回は、金属電極間に架橋した単分子についてサイト選択的な分光計測に成功したが、今後は特定の吸着構造をもつ分子のみを抽出し集積化することで、究極の微細化と高信頼性を実現する分子デバイス[用語3]開発を目指す。

研究成果は1月27日発行の米国化学会誌「Journal of American Chemical Society」に掲載された。

背景

有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池をはじめとする分子を用いた有機デバイスは、様々な所で実用化されている。これら有機デバイスでは、分子と金属接合界面の局所構造がデバイス性能に決定的な役目を与える。金属に対する分子の配向角、そして吸着サイトによって、金属と分子の間の電子移動の速度、電気伝導性が変わり、デバイス特性が変化するからである。分子の吸着構造の決定およびその制御は有機デバイスの信頼性、性能向上において重要な課題である。

しかしながら、現在、金属―分子接合界面の局所構造を分子レベルで完全に制御することは困難で、分子ごとに異なった吸着構造をもつ。この吸着構造の揺らぎによるデバイス特性のばらつきは、有機デバイス開発で大きな課題となっている。このデバイス特性の揺らぎは単分子を用いた分子デバイスではより顕著となり、これが分子デバイス実用化の大きな障害となっている。

例えば、ベンゼンジチオール単分子の伝導度は、吸着するサイトによって100倍以上も伝導度が異なることが理論的に予測されている。仮に、分子の吸着サイトを制御することが出来れば、有機デバイス・分子デバイスの信頼性は桁違いに向上することが期待される。しかし、分子の吸着サイトの決定、制御は最も単純な単分子接合[用語4]でさえ困難であった。

研究成果

図1に、開発した単分子の表面増強ラマン散乱(SERS)と電流―電圧特性の同時計測装置の概念図および実験に用いたナノ電極の電子顕微鏡図を示す。実験では、まず分子を吸着させたナノ電極を破断することでナノギャップを作製した。室温で分子は電極表面上を動いている。ナノギャップまで到達した分子が両電極間を架橋することで、単分子接合が形成される。

電極間に架橋した単分子の表面増強ラマン散乱(SERS)と電流―電圧特性の同時計測装置および実験に用いたナノ電極の電子顕微鏡像。
図1.
電極間に架橋した単分子の表面増強ラマン散乱(SERS)と電流―電圧特性の同時計測装置および実験に用いたナノ電極の電子顕微鏡像。

図2(a)に伝導度とSERSの同時計測結果を示す。単分子接合に対応する領域IIにおいてSERSが著しく増強されていることが分かる。図2(b)には多数の単分子接合について計測した電流―電圧特性(I-V)の分布を示す。高伝導度状態(H)、中伝導度状態(M)、低伝導度状態(L)と三状態が選択的に形成されていることが分かる。図2(c)はI-Vから求めた金属と分子の波動関数の重なり(coupling=カップリング)の分布関数で、三状態が明瞭に区別されている。

理論計算により単分子接合の伝導度、カップリングを求め、実験結果と比較することで、図2(c)に示すようにHが2つの原子の隙間(bridge)のサイト、Mが最表面の金属原子3個あるいは4個の隙間(hollow)のサイト、Lが原子の直上(atop)のサイトに対応することを明らかとなった。単分子接合のI-Vを計測することで、これまで困難であった金属―分子接合界面の局所構造の決定が可能となった。

さらに詳細にI-VとSERSの同時計測結果を解析することで、bridgeに対応するHサイトの場合のみSERSが観測されることが明らかになった。図2(c)において、オレンジに着色した接合がSERSの観測された接合である。この結果は逆に言えば、SERSが観測される単分子接合では分子がbridgeサイトに吸着しているということになる。I-VとSERSの同時計測を行うことで、サイト選択的な分光計測に成功した。

(a)ベンゼン単分子接合の形成および破断過程におけるSERSと伝導度の同時計測結果。3つの領域に分けられ、領域IはAu単原子接合、領域IIはBDT単分子接合。(b)ベンゼン単分子接合のI-V特性の分布。(c)I-V特性から求めたカップリング強度の分布関数。オレンジはSERSが観測された単分子接合に対応。
図2.
(a)ベンゼン単分子接合の形成および破断過程におけるSERSと伝導度の同時計測結果。3つの領域に分けられ、領域IはAu単原子接合、領域IIはBDT単分子接合。(b)ベンゼン単分子接合のI-V特性の分布。(c)I-V特性から求めたカップリング強度の分布関数。オレンジはSERSが観測された単分子接合に対応。

今後の展望

分子デバイスを含む分子を用いた有機デバイスでは、分子の吸着構造を制御することがデバイスの信頼性向上に不可欠である。現在、金属と分子の組み合わせを適切に選択することで、局所構造をある程度は制御することが出来るようになりつつある。今回、サイト選択的な単分子分光法の開発に成功したが、本手法を用いることで、確実に特定の吸着構造をもつ単分子素子を選びだすことができる。抽出した単分子素子のみを使って回路を組むことで、信頼性の高い分子デバイスを実現できると考えている。

用語説明

[用語1] 表面増強ラマン散乱(SERS) : ラマン散乱は光を分子に照射すると、分子の振動を励起することで分子振動のエネルギー分失った光が散乱される現象を表す。散乱光強度のエネルギー依存性を調べることで、分子の振動モードを調べることが出来る。
表面増強ラマン散乱(SERS)は、光の波長より圧倒的に小さな金属ナノ構造体に光を照射すると、電子の集団運動である局在プラズモンが励起される。ナノ構造体を近づけるとプラズモン同士が相互作用するようになり、非常につよい電場(光増強場)が形成される。表面増強ラマンでは、光増強場を利用することでラマン散乱強度が著しく増強される効果を利用している。

[用語2] 吸着サイト : 金属表面では、hollow, bridge, atopが代表的な吸着サイトである。hollowとは最表面の金属原子3個あるいは4個の隙間、bridgeとは2つの原子と原子の隙間、atopは原子の直上の吸着する場所を表す。

[用語3] 分子デバイス : 1分子に素子機能を持たせた電子デバイスを意味する。この分子デバイスを実現できると、1素子のサイズを極限まで小さくすることが出来るので、従来の半導体デバイスと比較して桁違いの集積化、演算の高速化が可能になる。現在すでに、スイッチ、トランジスタ、ダイオード特性など演算に必要な機能が報告されている。

[用語4] 単分子接合 : 金属電極間に単分子を架橋させた構造体を意味する。単分子接合に機能を賦与することで分子デバイスとなる。単分子接合では、分子が2カ所で金属電極と接続しているため、界面において電荷移動、軌道混成がおこり、分子は孤立分子や結晶とは異なった振る舞いをするようになる。単分子接合に特徴的な性質を利用できる点でも分子デバイスは注目を集めている。

論文情報

掲載誌 :
Journal of American Chemical Society, 2016, 138, 1294–1300
論文タイトル :
Rectifying Electron-Transport Properties through Stacks of Aromatic Molecules Inserted into a Self-Assembled Cage
著者 :
Satoshi Kaneko1, Daigo Murai1, Santiago Marques-Gonzalez1, Hisao Nakamura*2, Yuki Komoto1, Shintaro Fujii1, Tomoaki Nishino1, Katsuyoshi Ikeda3, Kazuhito Tsukagoshi*4, Manabu Kiguchi*1
所属 :
1Department of Chemistry, Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2-12-1 W4-10 Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8511, Japan,
2Nanosystem Research Institute (NRI) 'RICS', National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Central 2, Umezono 1-1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-8568, Japan,
3Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology, Gokiso, Showa, Nagoya 466-8555, Japan,
4WPI Center for Materials Nanoarchitectonics (WPI-MANA), National Institute for Materials Science, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan.
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 大学院理工学研究科 化学専攻
助教 金子哲

Email : kaneko.s.aa@m.titech.ac.jp

教授 木口学

Email : kiguti@chem.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2071 / Fax : 03-5734-2071

物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
主任研究者 塚越一仁

Email : TSUKAGOSHI.Kazuhito@nims.go.jp
Tel : 029-860-4894 / Fax : 029-860-4706

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

物質・材料研究機構 企画部門 広報室

Email : pressrelease@ml.nims.go.jp
Tel : 029-859-2026 / Fax : 029-859-2017

第5回国際シンポジウム&セミナー開催

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グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院では、2016年2月21日~3月3日に国際シンポジウム・セミナー ~原子力安全・セキュリティ・核物質防護のための国際原子力人材養成について~ を開催致します。

会期前半のプレナリーセッション(参加無料)および意見交換会(有料)は一般の方もご参加頂けます。ご希望の方は「参加登録受付フォームouter」よりweb登録をお願いたします。
(当日参加も可能ですが、資料や座席等が準備できない可能性がありますので、事前のご登録にご協力ください)

なお、クローズセッションは招へいされた学生のみ参加可能です。一般参加は受け付けしておりません。

概要

日時

2016年2月21日(日)
9:00~17:30
開会式、プレナリーセッション1、2(無料)
18:00~20:00
意見交換会(一般5,000円/学生2,000円)
2016年2月22日(月)
9:00~17:00
プレナリーセッション3(無料)
2016年2月23日(火)
9:00~10:30
プレナリーセッション4(無料)

場所

参加登録

参加登録受付フォームouterよりお申込ください。

※登録受付締切 : 2016年2月17日(水)

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問い合わせ先

グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院

E-mail : u-atom.suishin@nr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3279

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