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「科学技術倫理についての講演会」開催報告

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2月8日、大岡山キャンパス西9号館ディジタル多目的ホールにて、科学技術倫理についての講演会が開催されました。本講演会は、教育推進室と教育革新センターの共催で行われたもので、学外の方を含め、70名近くの参加者が集まりました。

講演する札野教授

講演する札野教授

講演会では、「科学技術倫理の本当の意味とは-あなたは誤解しているかもしれない-」というサブタイトルにちなみ、まずは札野順教授(東工大大学マネジメントセンター)より「志向倫理」と「予防倫理」という2つの倫理についての解説がありました。従来の、やってはならないことや守るべきことを示す「予防倫理」にとどまらず、優れた意思決定と行動を促す「志向倫理」によって、個人と社会が「よく生きる(well-being)こと」を目指そうという札野教授の考えは、多くの参加者の心を掴んでいました。

札野教授に続いては、海外からの2人のゲストスピーカーによる講演がありました。

イボ・ヴァン・デ・ポール教授 (オランダ、デルフト工科大学)は、「志向倫理」とも関連が深く、現在欧州で注目されている「責任ある研究とイノベーション(Responsible Research and Innovation)」を含む技術と倫理に関する新しい考え方を論じました。さらに、デルフト工科大学における技術者倫理教育の現状と将来構想を解説しました。また、技術者倫理教育のために自身が開発に参画したeラーニング教材「Agora」についての紹介もありました。

デナ・プレモンス教授(米国、カリフォルニア大学サンディエゴ校)は、米国科学財団(National Science Foundation)の支援を受けて開発された「研究の現場で倫理教育を行うためのワークショップ」の設計理念や内容および効果について解説しました。

プレモンス教授による講演の様子
プレモンス教授による講演の様子

講演の後には活発な質疑応答が行われ、科学技術倫理に対する関心の強さが伺えました。

講演会終了後に行ったアンケートでは、これからも科学技術倫理に関する講演会や、さらに具体的な内容のワークショップを開いてほしいという声が多く挙がっていました。今回の講演会は、科学技術倫理への参加者の興味関心をより引き出す有意義な機会となったようです。

活発な質疑応答

活発な質疑応答

質問に答える札野教授とヴァン・デ・ポール教授

質問に答える札野教授とヴァン・デ・ポール教授

お問い合わせ先

学務部教務課教育企画グループ

Email : kyo.kyo@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7602


本館前 桜並木の樹勢回復処置

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春の訪れと共に、その年の卒業生に母校の伝統や温かみを印象付け、新入生には東工大の歴史と期待に満ちた学園生活を感じさせる桜。この伝統を守るため、1月12日~2月19日にかけて本館前 桜並木の樹勢回復処置が実施されました。

本館前 桜並木
本館前 桜並木

経緯

回復措置が行われた桜

本館前の桜並木は施設運営部が年間管理を行っていますが、樹齢75歳(昭和25年植樹)の老齢により、枯れ枝の発生が年々増えていました。今年度は特に、例年に比べ落葉が異常に早いことが見受けられ、樹木医の診断により、活力が急激に衰えていることがわかりました。

早期の治療を行えば、樹勢の回復が見込めますが、処理が遅れると回復困難です。年々活力が衰え、開花が少なくなり、倒伏の危険性が増します。このことから今年度、桜16本の樹勢回復処置を実施しました。

樹勢回復措置方法と実施スケジュール

  • 桜16本各々の根を根元から長さ4m幅1.5m程度露出させ、土壌改良材と有機質肥料を混入させた土の入替えを行いました。
  • ウッドデッキを外す必要がありましたが、本ウッドデッキは学内外の方々が利用することから、完全通行止めにはせず、片側ずつ高さ1.2mのプラスチックバリケードで囲い、立入禁止として実施しました。
  • 落葉し開花前の1月~2月が最も効果的であることから、その期間に実施しました。
樹勢回復措置
樹勢回復措置

樹勢回復措置

お問い合わせ先

施設運営部施設整備課

Tel : 03-5734-3456

木賀大介准教授が第12回日本学術振興会賞を受賞

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大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻の木賀大介准教授が、第12回日本学術振興会賞を受賞しました。

授賞式に出席した木賀准教授(左)とお母様
授賞式に出席した木賀准教授(左)とお母様

日本学術振興会賞とは

同賞は、独立行政法人日本学術振興会が、優れた研究を進めている若手研究者を見い出し、早い段階から顕彰してその研究意欲を高め、独創的、先駆的な研究を支援することにより、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させることを目的に2004年に創設されたものです。

受賞対象者は、人文・社会科学及び自然科学の全分野において、45歳未満で博士又は博士と同等以上の学術研究能力を有する者のうち、論文等の研究業績により学術上特に優れた成果をあげている研究者となっています。 受賞者には賞状、賞牌及び副賞として研究奨励金110万円が贈呈されます。記念受賞式は2月24日に日本学士院にて開催されました。

受賞理由

合成生物学による人工生命システムの構築

生命システムは構成単位の組み合わせによって、様々な特性を持ちます。構成単位の組み合わせの場合の数が非常に大きいことが天然の生物の多様性の根源であり、人類が生物を改良して人工的に活用できることの担保でもあります。

木賀准教授は、生化学のバックグラウンドをもとに、物理学、情報科学やシステム科学の知見を活用し、試験管内や細胞内に生体分子を組み合わせた人工生命システムを具現化してきました。また、20種類のアミノ酸が鎖状に連なって構成されるタンパク質に対し19種類や21種類のアミノ酸を使用するタンパク質の合成系や、試験管内での生体分子による論理演算系、生きた細胞間の相互作用によって多様化を維持する人工遺伝子回路、などの構築を行いました。

これらの成果は国際的にも高い評価を受けており、木賀准教授は合成生物学という新しい分野において日本のキーパーソンとして認識され、人工生命や生命の起源に関する研究者の一人として、今後も世界をリードする幅広い活躍が期待されています。

木賀准教授のコメント

遺伝子工学の発展版として様々な応用が期待されている合成生物学の本質は、wetと称される生物実験と、dryと称されるシステム科学・情報科学を適切に融合することにあります。このため、私の研究の根源は生命の起源に関する理学的な問いから発していますが、研究の実践のためには、様々な科学を融合することが必要であり、東工大着任前の私一人の力では何も成すことはできませんでした。現在所属する、知能システム科学専攻の山村雅幸教授をはじめとする皆様や、融合組織としての情報生命博士教育院、地球生命研究所、およびこれらで育ってきた学生と共に一連の研究を楽しんでこれたことを光栄に思い、恩師や共同研究者、各種研究資金の提供元皆様へと合わせ、深く感謝します。今後も、さらなる学際融合研究・教育に精進します。また、私事にて恐縮ですが、私の基盤を形づくった父、父亡き後私たち兄弟を育て上げてくれた母、経済面のサポートを下さった学術振興会をはじめとする各種団体や出身高校と大学に、そして現在の生活を豊かにしてくれている家族に深く感謝します。

お問い合わせ先

大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻
木賀大介

Email : kiga@dis.titech.ac.jp

「平成27年度 創造性育成科目 事例発表会」開催報告

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1月7日、創造性育成科目の事例発表会を実施しました。創造性育成科目とは、学生に能動的・発見的に学習する機会を設け、新しいものや技術、アイディアを生み出すための創造力を育むための工夫を行っている講義科目のことです。

第4回目となる今回は、事例発表会を教員主体ではなく学生主体としたことや、臨場感の伝わる東工大レクチャーシアターで行ったこともあり、これまで以上に活発な議論が行われた事例発表会となりました。

学生の事例発表

学生の事例発表

前半は、学科・専攻での良い講義事例を共有することを目的に、4件の事例発表を行いました。「機械知能システム創造」「サイエンスカフェ -組織と運営-」「コンクリート実験」「バイオクリエイティブデザインII」というタイトルで、教員が講義の目的について説明した後、実際に受講した学生が講義に対する感想を踏まえ、体験談を発表しました。後半は、「学生主体の講義」をテーマに、水本哲弥副学長と事例発表を行った学生によるパネルディスカッションを行いました。

  • 創造性育成科目の感想
  • 講義(一般)に対する要望
  • グループワークについて
  • 東工大にこんな講義があれば

の4項目について、予定終了時刻を15分以上オーバーするほど活発な意見交換が行われ、有意義なパネルディスカッションとなりました。

創造性育成科目の感想、一般の講義に対する要望として、

  • 創造性育成科目は、自分で行ったことが結果としてすぐに分かる。普通の講義においてもリアクションがあるとやる気が起きる
  • 講義において、教員と学生との双方向性はとても大事。講義中に小テストを行っても返却されない場合もあるが、返却していただけると復習になるし、講義に対するモチベーションも上がる

などの声がありました。本学は昨年度から本格的にアクティブ・ラーニング室を整備していますが、学生側からも講義に対して双方向性を求めていることがうかがえる意見が出されました。

創造性育成科目の特徴のひとつであるグループワークについては、

  • 課題達成のためにはスケジューリングが重要であることを学んだ。座学と異なり、新鮮だった
  • 普通の座学以上に予復習をして臨むことが多い
  • 時に紛糾することがあるが、先生が発言すると意見がそれに流れてしまう。学生の主体性に任せて欲しい
  • グループワークにおいて学生同士の一体感を出すには、初めに簡単な課題を出すと良い(教員)

などの意見が出されました。

最後に、学生パネラー全員にグループワークの意義を聞いたところ、

  • 他人の意見を聞き、自分を客観視することができること
  • 人の長所を見出すことができること
  • 自分のみでなく、周りを見なくてはいけないこと

などの回答を聞くことができました。

学生を交えてパネルディスカッション
学生を交えてパネルディスカッション

創造性育成科目は毎年、専攻、学科、教員から申請を受け、登録・選定を行っております。平成27年度の登録科目ついては、下記のページをご覧下さい。

お問い合わせ先

学務部 教務課 教育企画グループ

Email : kyo.kyo@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7602

ラーニング&インフォメーション・コモンズ活用促進イベント「LAUNCH UP!」開催報告

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2015年10月にリニューアルオープンした百年記念館1階のラーニング&インフォメーション・コモンズ。このスペースの活用促進のPRを兼ねた、学びの空間の可能性と新しい学びのカタチを模索するイベント「LAUNCH UP!」が、2015年12月21日・22日の2日間にわたり開催されました。

  • 主催:
    東京工業大学博物館/広報センター
  • 協賛:
    パナソニックシステムネットワークス株式会社/パナソニック株式会社/株式会社ウチダシステムズ/株式会社内田洋行/株式会社デジタル・アド・サービス
  • 協力:
    東京工業大学社会理工学研究科/教育革新センター

盛況な会場
盛況な会場

期間中は会場内にて、実装された様々な機器や設備の紹介、それに関連する教育・ICTソリューションの企業展示・デモンストレーションが行われました。また、

  • 学修や活動をサポートするインフラとしての設備
  • 学修空間の活用における多様性

という2つの視点から、学内ラーニングスペースの紹介展示や、各種のイベントやセミナーなど、多くの実践的な試みを行いました。

2日間という限られた時間ではありましたが、約300人の来場者があり、イベントの内容やこのスペースの活用方法の可能性について、数多くの貴重な意見が寄せられました。

展示内容

協賛企業展示

  • 普段の学修から授業、研究まで、大学における様々な教育・学修シーンとの関連が深いICTソリューション技術展示(パナソニックシステムネットワークス株式会社)
  • グループディスカッションやワークショップなど、授業内外のアクティブラーニングをサポートする支援ツールの紹介展示とデモンストレーション(株式会社ウチダシステムズ)
パナソニックシステムネットワークス株式会社による展示

パナソニックシステムネットワークス株式会社による展示

株式会社ウチダシステムズによる展示

株式会社ウチダシステムズによる展示

東工大のラーニングスペース紹介

東京工業大学のラーニングスペース紹介

東京工業大学のラーニングスペース紹介

学内にあって学生や教職員が自由に利用できるラーニングスペースの存在はあまり共有されていません。現在進みつつある講義室を中心とした学修環境整備の取り組みとともに、学生同士のコミュニケーションや自修、セミナー、サークル活動など様々に活用可能なスペース情報をパネルで紹介しました。

ネーミングコンテスト「百年1階愛称募集!」

学生・教職員の学びと活動のための開かれたスペースであり、学内外の方々への情報発信拠点でもある百年記念館1階の愛称募集を行いました。会場内の電子黒板と博物館Webサイトで応募を呼びかけ、投稿状況をWebサイト上で随時更新・公開しました。1月22日まで応募を受け付け、審査の結果「T-POT」に決定しました。「Tokyo tech, People, Opportunity, Technology」という意味が込められており、また、人が集まりお茶を飲みながら議論を楽しむあたたかい場所(器=POT)のイメージと呼びやすさが高い評価を得ました。

ネーミングコンテスト「百年1階愛称募集!」
ネーミングコンテスト「百年1階愛称募集!」

イベント・セミナー

ラーニングコモンズとなった百年記念館1階のスペースは、これまでも談話や休憩、食事のためのラウンジとして、博物館や学内他部署が主催する展示やイベントスペースとして様々に利用されてきました。

そこに積極的な学修や情報発信の機能が備わり、利用主体が学生であることが明確になりました。これにより、新たな空間と連動した学びのあり方の開発と実践を試みる、学修の「実験場」としての役割が加わりました。

今回の「LAUNCH UP!」では、この実験の第一弾として、様々な空間活用法と学びの実践を取り入れた催しを行いましたので、以下にその概要を記載します。

オープニングイベント

大谷清 博物館長(理事・副学長)と丸山俊夫 理事・副学長から、生まれ変わった百年記念館1階スペースが、大学での新たな学びの場として活用されることを期待する旨の挨拶がありました。あわせて、教育改革によって多様化する学びに対応できる、新たに実装された設備機能が紹介されました。

大谷清 博物館長(理事・副学長)

大谷清 博物館長(理事・副学長)

丸山俊夫 理事・副学長

丸山俊夫 理事・副学長

東工大では現在、2016年4月スタートに向けて、教育システムの抜本的な改革を進めています。

公開授業「対話を育む実践ファシリテーション論」
第10回 「教える」より「学び合う」場を創ろう!大教室でのアクティブラーニング

中野民夫教授(大学マネジメントセンター)が開講している、教員の話を聞くだけではなく、学生同士が主体的に話し合って学び合う授業を公開しました。見学ではなく、来場の方々も授業に参加し、学生含め約100名が議論を交わす熱気に満ちた講義が行われました。このような大人数でのグループワークを実施できる講義室は大学に少なく、百年記念館1階は新しい学びに対応した「教室」としての活用も望まれています。

公開授業
公開授業

Art at Tokyo Tech Extensionコンサート

学生による企画のひとつとして、開放的な空間を活かした室内楽コンサートが2回開催されました。1日目は夕方開催のため授業を終えた学生達が足を運び、2日目昼は食事をとりながら教職員や親子連れが演奏を楽しみました。百年記念館全体に響き渡るヴァイオリンやフルートの音色に耳を傾けたひとときでした。

弦楽四重奏

弦楽四重奏

フルート、弦楽三重奏

フルート、弦楽三重奏

ワークショップ「キャンパスツアーをデザインしよう」

ワークショップ「キャンパスツアーをデザインしよう」

ワークショップ「キャンパスツアーをデザインしよう」

東工大へ見学に来る高校生を日々案内している広報サポーターの学生が、キャンパスツアーをデザインするワークショップを企画しました。参加者は、大岡山キャンパスの地図をベースに、広報サポーターから学内の魅力的なスポットの説明を受けつつ、独自のキャンパスツアーのデザインに取り組みました。

トークセミナー1 MOOCS紹介イベント「MOOCをもっと知りたい件」

トークセミナー1

トークセミナー1

インターネット上で大学などの講義を受けることができるMOOC(ムーク)。東工大でも2つの講義を提供しています。オンライン教育開発室を担当する森秀樹准教授(大学マネジメントセンター)による本セミナーでは、コンテンツの制作に関わった学生からオンライン講義やコンテンツ制作過程が説明されると共に、将来の学びの姿を模索するレゴを用いたワークショップが行われました。MOOCのコンテンツ制作は、学生が動画撮影・編集を行っていることが特徴です。制作に携わった学生からの苦労話など、オンラインでは知ることができない興味深い内容が紹介されました。また、MOOCの撮影を実際に体験できるブースも設置され、参加者は興味深そうに説明を聞いていました。

トークセミナー2 「アクティブラーニングと空間について」「博物館のアクティブラーニングとは」「アクティブラーニングとICT環境整備」

トークセミナー2

トークセミナー2

数多くの大学など教育機関でアクティブラーニング環境をデザイン・構築してきた以下の3名に、具体的活用事例を通じ、百年記念館1階スペースの可能性についてお話しいただきました。

  • パワープレイス株式会社教育・公共デザイン室 デザイナー 中森康裕氏
  • 内田洋行教育総合研究所 主任研究員 平野智紀氏
  • パナソニックシステムネットワークス株式会社 教育ソリューションタスクフォースリーダー 則木博司氏

吹き抜けがあり天井の高い開放的空間であること、大学の成果が集約している博物館の中にあること、学修の場であるとともに情報発信の場であることなど、百年記念館1階スペースは他のアクティブラーニングスペースに比べて大きな魅力を有していることが語られました。

プログラム外企画

BONENKAI

大学院理工学研究科国際開発工学専攻の学生を中心に、様々な学部・学科や研究科・専攻、多様な国籍の学生間交流の活性化を目的に、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのイベントが開催されました。百年記念館1階の今までにない活用の試みです。準備・運営は全て学生がおこない、100名以上が参加した大イベントとなりました。学術的な交流に加え、授業終了後の新たな形の学生交流の場としても活用出来る可能性が垣間見えました。

寄せられた声(アンケート結果より抜粋)

1.イベント全般についての満足度

  • 非常に満足
    1%
  • 満足
    89%
  • やや不満
    0%
  • 不満
    7%
  • 回答なし
    3%

2.スペースの活用アイデアについてのコメント

  • 学生と外部のつながりの場として最適
  • 教員、学生、OBの取り組みを発表するなどの交流の場
  • 壁面のホワイトボード全体を使ったトークセッション、コンサートや交流会など定期的な学生企画イベントの開催
  • 体験型イベントや学生によるレクチャーイベントの開催
  • 館内風景を学内にリアルタイム配信

3.展示やイベントについての感想

  • 学内ラーニングスペース紹介を見て、多くの講義室がアクティブラーニングに対応した改修を行っていることに驚いた
  • 愛着のある身近なスペースに愛称をつけることのできるネーミングコンテストの試みが良い
  • トークセミナー2について、アクティブラーニングに関わる様々な分野の専門家の話が聴けて良かった
  • 学生企画イベントが良かった
  • 音楽イベントはこのスペースを盛り上げるのにふさわしいと思う
  • 音が響きすぎるため、スピーカー設備は改良の余地があるのではないか
  • 公開授業について、社会では対話やコミュニケーション発表、意味出しを日常的に行うため、学生時代にこのような主体性が磨かれる環境があることはとても良いことだと思う
  • 建物の形に興味があり来訪したが、中に入り、イベントを楽しむことができて良かった

博物館 遠藤康一 特任講師、同 阿児雄之 特任講師からのコメント

この2日間の経験を経て、百年記念館1階は、東工大の教育改革のコンセプト「自ら進んで学び、鍛錬する"志"を育てる」ための空間として、機能整備の段階から、その積極的活用により充実した学びを育む段階へとLAUNCH(船出)を果たしたことになります。今後は、ここが学生・教職員他の様々な活動を受け止め、キャンパスの中でも常に活発で賑やかな場所となるよう、そのための活用支援等も行っていく予定ですので、まずはお気軽にお立ち寄りください。そしてご利用にあたって様々なご意見をお寄せいただくと共に、大学全体としてこの場所をさらに育てていっていただきたいと思います。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

お問い合わせ先

博物館

Email : centjim@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3340

3月の学内イベント情報

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本学が開催する、学生及び一般の方を対象とした公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

理工系学生能力発見・開発プロジェクト 第10回特別講義「大地震による被害と対策」

理工系学生能力発見・開発プロジェクト 第10回特別講義「大地震による被害と対策」

地震防災、地震工学を専門分野とする翠川教授とともに地震とその対策について追及します。

日時
3月2日(水)17:30~19:00
会場
参加費
無料
対象
一般
申込
不要(当日参加可能)

Enterprise Engineering コース(O)開講

Enterprise Engineering コース(O)開講

「グローバル産業リーダー育成プログラム(GINDLE―Global INDustrial LEader)」のうちの1つとして、ICTの利活用に焦点を当てたコースです。企業活動におけるICT活用力の向上につなげていただきたいと思います。

日時
3月4・5日(金・土)3月11・12日(金・土) ※受講内容によって異なります
会場
参加費
1.
1月8・9日、2月5・6日、3月4・5日:198.000円(税込)
2.
1月8・9日、2月5・6日、3月11・12日:198.000円(税込)
3.
1月8・9日、2月5・6日、3月4・5日、3月11・12日の全日程:248.000円(税込)
対象
一般20名(最少開催人数5名)
申込
必要(締切12/13)

第9回 東工大 学生応援フォーラム

第9回 東工大 学生応援フォーラム

学生支援センターが支援している、東工大学生ボランティアグループ(東工大VG)、東工大国際交流学生会(SAGE)、学勢調査、理工系学生能力発見・開発プロジェクトの4 活動が口頭発表とパネル発表をおこないます。

日時
3月7日(月)13:30~15:30
会場
参加費
無料
対象
学生・一般
申込
不要

国際シンポジウム Biomimetic Robotics 2016

国際シンポジウム Biomimetic Robotics 2016

生物を規範としたロボットに関する国際シンポジウム“Biomimetic Robotics 2016”を開催します。海外から招待する若手研究者2名と東工大機械系の若手教員4名が研究発表を行います。

日時
2016年3月8日(火) 13:30~17:15
会場
参加費
無料
対象
学生・一般
申込
必要

シンポジウム ビジネス価値創出のための成熟度フレームワーク:IT-CMF

シンポジウム ビジネス価値創出のための成熟度フレームワーク:IT-CMF

東京工業大学・社会人教育院では、アイルランド国立メヌース大学にあるIVI(Innovation Value Institute)から教育担当ディレクターのMichael Hanley氏をお迎えし、シンポジウムを開催します。

日時
3月8日(火)13:30~16:55(受付開始 13:00)
会場
大阪商工会議所 2号会議室(B1)
参加費
無料
対象
一般(定員50 名)
申込
必要(3/4 締切)

第6回「みなとCSRアイデアソン」

第6回「みなとCSRアイデアソン」

港区立エコプラザにて開催される、第6回「みなとCSRアイデアソン」に、市村禎二郎東京工業大学名誉教授・国際室国際連携プランナー特命教授が登壇します。

日時
3月15日(火)16:30~17:30
会場
港区立エコプラザ
参加費
無料
対象
一般(先着30名)
申込
必要

MOTオープンハウス「MOT分野で活躍する女性たち」

MOTオープンハウス「MOT分野で活躍する女性たち」

東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科技術経営専攻(平成28年4月より 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程と改称)による最先端のMOT(技術経営)のオープンハウスを開催します。

日時
3月26日(土)13:30~16:30
会場
参加費
無料
対象
学生・一般
申込
必要(3/24 締切)

科学教室「棘皮動物の不思議な世界」

科学教室「棘皮動物の不思議な世界」
日時
3月29日(火)13:20~16:00
会場
参加費
無料
対象
中学生以上(定員30名)
申込
必要(3/15締切)

桜花観賞2016

本年も桜花の季節を迎えました。この機会に、近隣の皆様にも本学大岡山キャンパスの桜を愛でていただきたく、下記の日時にキャンパスを開放いたします。

桜花観賞2016
日時
3月30日(水)~4月3日(日)10:00~18:00
※卒業式(3月28日)・入学式(4月4日)挙行日の観賞はご遠慮願います。
会場
大岡山キャンパス
参加費
無料
対象
一般
申込
不要

サイエンスカフェ 2015 VOL.2 「腸内細菌ってなんだ?2」

サイエンスカフェ 2015 VOL.2 「腸内細菌ってなんだ?2」

今回のサイエンスカフェの舞台は皆さんの腸内です。
腸内細菌の仕組みをボードゲームを使って、遊びながら学べる企画です。

日時
3月30日(水)13:30~15:30
会場
参加費
無料
対象
小学新4年生~中学新3年生向け 保護者同伴可(定員40名抽選)
申込
必要(3/21締切)

コンピュータビジョン・ヒューマンビジョン・あなたのビジョン2016

中高生向けのスマホを使ったVR(バーチャルリアリティ)体験イベント「コンピュータビジョン・ヒューマンビジョン・あなたのビジョン2016」を以下の日程で開催します。

コンピュータビジョン・ヒューマンビジョン・あなたのビジョン2016
日時
3月30日(水) 14:00~16:30(13:30受付開始)
会場
参加費
無料
対象
学生・一般(定員50名)
申込
必要(3/22締切)

一部締め切りを過ぎていますが、取材をご希望の場合はご連絡ください。

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

第1回「末松賞」授賞式を実施

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2月4日、第1回末松賞の授賞式が行われました。

末松賞は、末松安晴栄誉教授の「若い研究者たちが様々な分野で未開拓の科学・技術システムの発展を予知して研究し、隠れた未来の姿を引き寄せて定着させる活動が澎湃としてわき出て欲しい」との思いから、本学に対し多額の寄附をいただいたことにより創設され、今回が初めての授賞式となりました。

(前列左から)金森功吏助教、末松安晴栄誉教授、井上遼太郎助教(後列左から)小野功副学長、三島良直学長、安藤真理事・副学長
(前列左から)金森功吏助教、末松安晴栄誉教授、井上遼太郎助教
(後列左から)小野功副学長、三島良直学長、安藤真理事・副学長

末松栄誉教授は、光通信工学の分野において、光ファイバーの伝送損失が最小となる波長の光を発し、かつ、高速に変調しても波長が安定した動的単一モードレーザーを実現しました。現在のインターネット社会を支える大容量長距離光ファイバー通信技術の確立に大きく寄与するなどの優れた業績を挙げ、本領域の発展に多大な貢献をしました。その功績が評価され平成27年度の文化勲章を受章しています。

金森助教(左)と井上助教(右)

金森助教(左)と井上助教(右)

初回となる本年度は、大学院理工学研究科 物性物理学専攻 井上遼太郎助教、大学院生命理工学研究科 分子生命科学専攻 金森功吏助教の2名が選考されました。

授賞式には末松栄誉教授も出席し、三島良直学長からの挨拶の後、賞状の授与が行われました。次いで末松先生からも挨拶があり、その後、受賞者2名が受賞に対しての感謝と今後の意気込みを述べました。

受賞式に続き、記念撮影、懇談会が行われました。井上助教と金森助教から現在行っている研究について説明すると、それに対して末松栄誉教授と三島学長から自分たちの若手時代のことを交えて話がされ、大変盛り上がった懇談会となりました。

懇談会の様子
懇談会の様子

東工大基金

この活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

広報・社会連携課基金室

Email : koh.bok@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2415 / 03-5734-2417

2016年4月入学に係る学士課程入試の合格発表

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2016年4月入学に係る学士課程入試の合格者受験番号は、大岡山キャンパス「なごみの広場」(附属図書館の先)に掲示します。

なお、合格者受験番号は、以下のwebページ上でも公開します。

各試験のwebページ上での発表日時は以下のとおりです。

試験名
発表日
入学者選抜試験 【前期日程】
2016年3月8日13:00頃
私費外国人留学生特別入試
2016年3月8日13:00頃
入学者選抜試験【後期日程】(第7類)
2016年3月22日13:00頃

社会人教育院(社会人アカデミー) 2016年度「理工系一般プログラム」

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東京工業大学社会人教育院(2016年度から社会人アカデミーに改称)では、昨年度ご好評をいただいた理工系一般プログラムを本年度も開講予定です。

2016年度は「環境科学」、「環境工学リサイクルコース」、「環境工学エネルギーコース」、「食の安全と安心」の4コースとして新規開講いたします。

各コースへのお申込み方法等はこちらのページouterをご覧ください。

理工系一般プログラムの特徴

  • 理工系一般プログラムは、私たちを取り巻く生活環境に焦点を当て、受講者自身で新たに問題と解決策について考えていただく位置づけとして実施しています。
  • コースは「環境科学」「環境工学リサイクルコース」「環境工学エネルギーコース」「食の安全と安心」の4つで、理工系に基本を置く学問を様々な視点から学んでいただきます。
  • 大学・大学院レベルの講義内容となります。
  • 受講の動機付けが明確であれば年齢等の受講資格は問いません。
  • 各コースともに2016年4月下旬より開講(全講義終了後、最終レポート課題あり)。

各コースの概要

「環境科学」(コースレベル:初・中級)

環境科学 パンフレット環境科学 パンフレットのダウンロードPDF

環境の科学について概説します。環境科学はわからない部分が多く複合的な応用分野を数多く含んでいるので、個別的な知識の集積や性急・一面的な結論を述べるのではなく、いろいろな考え方があることを並列的に論述し、受講者の科学的・合理的な環境観や柔軟な判断力を育てる一助になることを目指します。理工系向きにのみならず、文科系や一般市民にもわかりやすい内容で構成されています。講師は、"環境"に関して研究・教育を重ねてきた大学・研究機関のスペシャリストたちが担当します。

受講期間:2016年4月23日(土)~6月18日(土)

受講をおすすめする方:

  • 地球環境問題についてきちんと学習したい方
  • 環境保全活動等へ参加するにあたり、地球環境の基本的な知識を得たい方
  • 大学において地球環境に関連する科目を専攻する予定で、具体的な学習内容をイメージしたい高校生等

「環境工学①リサイクルコース」(コースレベル:中級)

環境工学①リサイクルコース パンフレット環境工学①リサイクルコース
パンフレットのダウンロード
PDF

環境問題としては、地球規模における環境問題と、より生活に密着した地域環境とに大別されます。ここでは、地域環境に影響の大きい廃棄物処理と、地球環境に大きな影響を与えるエネルギーに焦点を当て、基幹となる個々のシステムを紹介するとともに、問題点とその解決策、今後のあり方について、現場に精通したエンジニアの立場から、安全で安定したシステム構築について論じます。また、それぞれが現在おかれている状況と今後の方向性について、グローバルな立場から持続可能な社会構築の可能性について指摘します。主に当該分野のエンジニアを長く経験した者たちが講師を担当します。

受講期間:2016年4月22日(金)~6月17日(金)

受講をおすすめする方:

  • ご自身の仕事において、"廃棄物処理"、"リサイクル"の知識を習得する必要がある方
  • 地球環境問題において上記キーワードに関連した学習をしたい方

「環境工学②エネルギーコース」(コースレベル:中級)

環境工学②エネルギーコース パンフレット環境工学②エネルギーコース
パンフレットのダウンロード
PDF

環境問題としては、地球規模における環境問題と、より生活に密着した地域環境とに大別されます。ここでは、地域環境に影響の大きい廃棄物処理と、地球環境に大きな影響を与えるエネルギーに焦点を当て、基幹となる個々のシステムを紹介するとともに、問題点とその解決策、今後のあり方について、現場に精通したエンジニアの立場から、安全で安定したシステム構築について論じます。また、それぞれが現在おかれている状況と今後の方向性について、グローバルな立場から持続可能な社会構築の可能性について指摘します。主に当該分野のエンジニアを長く経験した者たちが講師を担当します。

受講期間:2016年6月24日(金)~8月19日(金)

受講をおすすめする方:

  • ご自身の仕事において、"エネルギー"の知識を習得する必要がある方
  • 地球環境問題において上記キーワードに関連した学習をしたい方

「食の安全と安心」(コースレベル:基礎)

食の安全と安心 パンフレット食の安全と安心
パンフレットのダウンロード
PDF

我々は、多様性に富んだ食生活を享受し、飽食を謳歌しています。一方、カロリーベースでの自給率を見ると40%を割り込むなど輸入食品に頼らざるを得ない状況です。衛生学的には、食中毒等は減少する気配はなく、天然あるいは人工的な有害物質によって食品が様々な形で汚染され、急性あるいは慢性中毒の危険にさらされています。最近でも細菌性食中毒や放射能汚染食品あるいは食品偽装など、消費者を震撼させる事件や事故があとをたたない状況です。食の体系も加工食品を中心に保健機能食品やバイオテクノロジー応用食品の登場と変貌を遂げています。このような現状を踏まえ、食の安全確保について学びます。例年定評のある担当講師が分かりやすい説明で基礎から講義を行います。

受講期間:2016年4月19日(火)~8月2日(火)

受講をおすすめする方:

  • ご自身の仕事において、食品に潜む危険や問題、その対応策を知っておく必要がある方
  • 食品の善し悪しがきちんと判断できる賢い消費者になりたい方

問い合わせ先

東京工業大学社会人教育院事務室

E-mail : jim@kyoiku-in.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8867/03-3454-8722

平成27年度手島精一記念研究賞授与式

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2月23日に東工大蔵前会館のくらまえホールにおいて、手島精一記念研究賞の授与式が行われました。授与式には、本学学内関係者ほか、蔵前工業会理事長、元手島工業教育資金団役員が臨席しました。

記念写真
記念写真

授与式の様子

授与式の様子

手島精一記念研究賞は、理工系大学における研究を奨励するために設けたものであり、特に優れた研究業績をあげた本学関係者に対して、賞状並びに副賞の授与を行っています。この賞は、東京工業大学の前身である東京工業学校及び東京高等工業学校の校長であった手島精一先生の功績を記念するため創設された財団法人手島工業教育資金団の事業の一つとして行われてまいりました。2009年4月に同財団の解散に伴い、本学に事業が継承され今日に至っています。

今年度は、24件・計55名の受賞者に対し、学長から賞状と副賞が授与されました。授与式に引き続いて、ロイアルブルーホールにおいて、受賞者を囲んで祝賀会が行われ、出席者全員和やかな雰囲気のうちに閉会しました。

平成27年度受賞者

研究論文賞(2件)

  • 持田啓佑(大学院生命理工学研究科・生体システム専攻・大学院生)
  • 及川優(フロンティア研究機構・博士研究員)
  • 木村弥生(横浜市立大学・先端医科学研究センター・准教授)
  • 桐浴裕巳(大学院生命理工学研究科・生体システム専攻・研究補佐員)
  • 平野久(横浜市立大学・先端医科学研究センター・特任教授)
  • 大隅良典(フロンティア研究機構・特任教授)
  • 中戸川仁(大学院生命理工学研究科・生体システム専攻・准教授)

“Receptor-mediated selective autophagy degrades the endoplasmic reticulum and the nucleus”

  • 早川哲(大学院生命理工学研究科・博士研究員)
  • 水野-山崎英美(大学院理工学研究科・博士研究員)
  • 川口紘平(大学院生命理工学研究科・博士課程1年)
  • 佐伯泰(東京都医学総合研究所・生体分子先端研究分野・副参事研究員)
  • 田中啓二(東京都医学総合研究所・所長)
  • 駒田雅之(大学院生命理工学研究科・生体システム専攻・教授) 外14名

“Mutations in the deubiquitinase gene USP8 cause Cushing's disease”

博士論文賞(14名)

数学関係部門

  • 田神慶士(大学院情報理工学研究科・数理・計算科学専攻・日本学術振興会・特別研究員PD)

“Khovanov type link invariant and homotopy quantum field theory”

物理学関係部門

  • 中村一平(理化学研究所・創発物性科学研究センター 統合物性科学プログラム量子多体ダイナミクス研究ユニット・特別研究員)

“Spectroscopy of a single rare-earth ion in a crystal at cryogenic temperature”

  • 野辺拓也(東京大学ICEPP・学振特別研究員PD)

“Search for scalar top quarks and higgsino-like neutralinos in pp collisions at a center-of- mass energy of 8 TeV with the ATLAS detector”

地球科学関係部門

  • 今田沙織(高輝度光科学研究センター・研究員)

“Sound velocity and density of liquid Fe-Ni-S alloy at high pressure”

  • 國友正信(名古屋大学大学院・理学研究科・研究員)

“Evolution of Pre-Main Sequence Stars and Its Environmental Impact on Their Circumstellar Disks”

材料工学関係部門

  • 角屋智史(兵庫県立大学・物質理学研究科・助教)

“Chemical Doping and Charge Injection in Organic Field-Effect Transistors”

  • 篠原百合(精密工学研究所・助教)

「Ti-4Au-5Cr-8Zr超弾性合金の開発とその変態挙動に関する研究」

電気・電子工学関係部門

  • 小野峻佑(像情報工学研究所・助教)

“A Study of Priors and Algorithms for Signal Recovery by Convex Optimization Techniques”

  • 林寧生(精密工学研究所・博士研究員)

“A Study on Brillouin Scattering Properties in Plastic Optical Fibers for Sensing Applications”

情報学関係部門

  • AMER Abdelhalim(Argonne National Laboratory・Postdoctoral Appointee)

“Parallelism, Data Movement, and Synchronization in Threading Models on Massively Parallel Systems”

  • 紋野雄介(大学院理工学研究科・機械制御システム専攻・産学官連携研究員)

“A Practical One-Shot Multispectral Imaging System Using a Single Image Sensor”

建設関係部門

  • 毎田悠承(千葉大学大学院・工学研究科・建築・都市科学専攻建築学コース・助教)

「鉄筋コンクリート骨組における座屈拘束筋違の接合部挙動および制振効果に関する研究」

エネルギー関係部門

  • 白石貴久(東北大学・産学官連携研究員)

「水熱合成法による(KxNa1-x)NbO3膜の低温合成とその圧電特性評価に関する研究」

その他境界領域的な関係部門

  • 鈴木脩司(株式会社富士通研究所・研究員)

“Faster Protein Sequence Homology Searches for Large-scale Metagenomic Data”

留学生研究賞(4名)

  • Siriburanon Teerachot(大学院理工学研究科・電子物理工学専攻)

“Low-Power Low-Jitter Frequency Synthesizers for High-speed Wireless communications”

  • Zamengo Massimiliano(大学院理工学研究科・有機・高分子物質専攻・助教)

“Development of heat-transfer enhanced composite for chemical heat storage/pump and numerical analysis of practical system for waste heat recovery in a steel making process”

  • KARMA WANGCHUK(大学院理工学研究科・国際開発工学専攻)

“Cooperative Relaying Channel and Outage Performance in Narrowband Wireless Body Area Network”

  • Wu Rui(大学院理工学研究科・電子物理工学専攻)

“Reliability-Enhanced Low-Power High-Data-Rate 60-GHz Transceivers in CMOS Technologies”

発明賞(2件)

  • 細田秀樹(精密工学研究所・教授)
  • 稲邑朋也(精密工学研究所・准教授)
  • 堤聡(JFEスチール株式会社・研究員)
  • 金高弘恭(東北大学・准教授)

「Pt系形状記憶合金」

  • 林﨑規託(原子炉工学研究所・准教授)
  • 服部俊幸(名誉教授)
  • 石橋拓弥(高エネルギー加速器研究機構・助教)
  • 山内英明(タイム株式会社・代表取締役)

「四重極型加速器および四重極型加速器の製造方法」

中村健二郎賞(1件)

  • 顧暁冬(精密工学研究所・特別研究員)

「超高解像光ビーム掃引とその波長選択光スイッチへの応用」

藤野志郎賞(1件)

  • 北野政明(元素戦略研究センター・准教授)

「12CaO・7Al2O3エレクトライド担持Ru触媒によるアンモニア合成」

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課 手島記念担当

Email : tokodai.tejima@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2016

大隅良典栄誉教授が第45回ローゼンスティール賞と第15回ワイリー賞を受賞

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東京工業大学フロンティア研究機構 大隅良典栄誉教授が、医学分野での重要な功績に対して贈られるローゼンスティール賞とワイリー賞の受賞者に選ばれました。

大隅良典栄誉教授
大隅良典栄誉教授

今回、大隅栄誉教授が第45回目の受賞者となるローゼンスティール賞は、米国ブランダイス大学ローゼンスティール基礎医科学研究センターによって、1971年より毎年、基礎医学の発展における顕著な功績に対して授与されています。

一方、ワイリー賞は、2002年から毎年、米国学術出版社ワイリー社が出資するワイリー財団より、バイオメディカル分野で顕著な業績を上げた研究者に贈られるもので、同教授はその第15回目の受賞者に選ばれました。これまでの受賞者のうち5名がその後にノーベル賞を受賞しています。

両賞とも、大隅栄誉教授のオートファジーの研究功績を高く評価し授与されるものです。オートファジーとは細胞が自分自身のタンパク質を分解する仕組みのことで、同教授は、細胞や細胞組織の維持と修復に不可欠であることを解明し、生物医学分野の発展に大きく寄与しました。

大隅良典栄誉教授コメント

この度、ブランダイス大学から第45回ローゼンスティール賞を、ワイリー財団から第15回ワイリー賞を受けることになりました。4月6日ボストンで行われるローゼンスティール賞受賞式の後、ニューヨークに移動し、4月8日のワイリー賞受賞式に出席します。ワイリー賞受賞式の会場となるロックフェラー大学は、私のポスドク時代の3年間の留学先であり、現在に至るまで研究材料としている酵母の研究を始めた場所なので感慨深いものがあります。

東工大フットサル部、FFCカレッジフットサルリーグ1部昇格

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東京工業大学フットサル部 Tokyo Tech.が、2015年度のF-NET主催FFCカレッジフットサルリーグの1部昇格戦で勝利し、1部リーグへの昇格を決めました。この結果により、来季から1部リーグで戦うことになります。

1部昇格を決めたフットサル部のメンバー
1部昇格を決めたフットサル部のメンバー

FFCカレッジフットサルリーグは、関東地域で行われている日本最大の学生フットサルリーグで、現在40大学以上55チームが参加しています。1部と2部に分かれたリーグは、1部12チームと2部4グループ各およそ10チームから構成されます。2015年度、2部Dグループに所属したTokyo Tech.は成績8勝1分1敗でグループ優勝を果たしました。そして、2016年2月24日に行われた2部の各グループ優勝チームが集まる1部昇格戦に進出しました。そこで2部Cグループ優勝の東京都市大学に5-2で勝利したことで、史上初となる1部昇格を決めました。

1年間キャプテンを務めた六岡諒介さん(工学部金属工学3年生)のコメント

一年間この昇格を目標にして活動してきました。苦しい時期もありましたが、皆の努力が実を結び、達成できて本当に嬉しいです。これから1部リーグで良い成績を残せるよう頑張っていきます。

お問い合わせ先

東京工業大学フットサル部 Tokyo Tech.

Email : tokyotech12@gmail.com

映画「オデッセイ」監修 NASA ジム・グリーン氏 一般講演会

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ジム・グリーン氏ジム・グリーン氏

NASA惑星科学部門ディレクターのジム・グリーン氏の来日にあわせ、一般向け講演会を2016年3月15日(火)に開催いたします。

講演では、ジム・グリーン氏がメインコンサルタントを担当し、大ヒット上映中の映画「オデッセイ」についてやNASAのミッション、最新の宇宙の姿をお話する予定です。

また20分間の質疑応答時間もありますので、映画「オデッセイ」で気になったシーンや最新の火星ミッションについてジム・グリーン氏に直接ご質問いただけます。(日英同時通訳あり)

日時
2016年3月15日(火) 15:30~16:30(開場15:00)
場所
主催
東京工業大学地球生命研究所
参加費
無料
言語
日英同時通訳
定員
先着100名
お申込

映画「オデッセイ」監修 NASA ジム・グリーン氏 一般講演会 ポスター01

映画「オデッセイ」監修 NASA ジム・グリーン氏 一般講演会 ポスター02

問い合わせ先

地球生命研究所 広報室

E-mail : pr-mail@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163

TSUBAME e-Science Journal Vol.14を発行

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学術国際情報センターが、TSUBAME e-Science Journal Vol.14を発行しました。
TSUBAME e-Science は、東工大のスーパーコンピュータTSUBAMEを利用した研究成果を発表する広報紙です。
Vol.14には、TSUBAMEグランドチャレンジ大規模計算制度で採択されたouter挑戦的な大規模計算の研究課題を含む、3つの事例が掲載されています。

  • 大規模GPUコンピューティングによる天然岩石内の二相流シミュレーション
  • 大規模画像データセットの機械学習のための分散コンピューティング
  • マルチGPU超並列クラスタシステムを用いた大規模ナノ炭素分子の電子状態計算

TSUBAME e-Science Journal Vol.14

TSUBAME e-Science Journal Vol.14

お問い合わせ先
学術国際情報センター TSUBAME ESJ 編集室
Tel: 03-5734-2085
Email: tsubame_j@sim.gsic.titech.ac.jp

原子核からほんの少しあふれた2個の中性子

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原子核からほんの少しあふれた2個の中性子
―重い酸素同位体の質量測定が明らかにする極限原子核の世界―

要点

  • 中性子の数が極端に多い酸素同位体「酸素26」の質量を高精度で決定
  • 酸素26では2個の中性子をつなぎとめるエネルギーがほんの少し足りない
  • 未解決問題である中性子ドリップライン異常や核力の解明の手掛かりに

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の近藤洋介助教、中村隆司教授、理化学研究所(理研)仁科加速器研究センターの大津秀暁チームリーダー、米田健一郎チームリーダーらの研究グループは、8個の陽子と18個の中性子からなる重い酸素同位体「酸素26」を人工的に生成し、中性子のうち2個は原子核に結びつけておくためのエネルギーがわずかに足りず、その不足分が通常の原子核における2中性子の結合エネルギーの1000分の1程度と極めて小さいこと(いままで観測されたものの中で最小)を見出した。さらに酸素26の励起状態を発見した。

世界的な不安定核研究施設である理研RIビームファクトリー[用語1]に最近建設された高性能の多種粒子測定装置SAMURAI[用語2]により酸素26の質量を精度よく測定することに初めて成功した。

原子核に付け加えることのできる中性子の数が、酸素同位体ではフッ素同位体(酸素の隣の元素)に比べて極端に少ない。今回の結果はこの問題の解決の鍵となる。また、いまだに謎の多い、陽子と中性子を結びつける力「核力」や、中性子が過剰になったときに発現する「魔法数の異常」の理解にもつながると期待される。すれすれで結びついていない状態にある2個の中性子は、ダイニュートロン相関[用語3]をもった2中性子系となる可能性も指摘されている。

この研究は東工大、理研のほか、カン素粒子原子核研究所(LPC-CAEN)(フランス)、ソウル国立大(韓国)等と共同で行いました。研究成果は3月9日に米国物理学会の学術雑誌「フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)」電子版に掲載された。

研究成果

原子核は、いくつかの陽子・中性子が、湯川秀樹博士の提唱した「核力」によって結びついてできている。天然に存在する安定な原子核(安定核)は陽子数と中性子数がほぼ等しく、中性子数を増やしていくと不安定になる(不安定核)。さらに中性子数を加えていくと、中性子を原子核に結びつけておくことができなくなる。中性子をさらに無理矢理結合させようとしたときに原子核はどうなるのか、これがこの研究のテーマである。陽子の2倍以上の中性子を含む酸素26の場合、実際、最後の2個の中性子はもはや結合されていない非束縛の状態にある。

今回の研究では、寿命が極めて短いこの原子核を理研RIBFにおいて2段階の反応(カルシウム48→フッ素27→酸素26)で生成し、酸素26の2つの状態(基底状態、第一励起状態[用語4])の質量を高精度で求めることに成功した。その結果、酸素26(基底状態)は、2個の中性子を原子核に結合させるのに、わずかに18キロ電子ボルトだけ足りないだけの特異な共鳴状態であることが明らかになった。

これは通常2個の中性子を結合しているエネルギー(約16メガ電子ボルト)に比べると、わずか1000分の1程度である。これ以上、中性子を束縛しておけなくなる原子核の限界を「中性子ドリップライン[用語5]」と呼んでいるが、酸素同位体では、付けられる中性子の数が、隣のフッ素同位体(陽子数9)より6個も少なく、この原因が不明であることが問題となっていた(酸素ドリップライン異常)。

今回、高精度で決定されたドリップラインを超えた原子核「酸素26」の質量は、この謎を解明するための鍵になると考えられる。また、得られた2つの状態の質量(エネルギー)は、中性子を原子核に結びつけるのに必要な「核力」の優れたベンチマークになることが、多くの理論計算で示されている。特に、よくわかっていない「三体力」に制限を与えると期待されているが、これは謎に包まれている中性子星の性質を決めるために重要であると最近考えられている。また、中性子過剰核で問題となっている「魔法数の異常」の理解にもつながる結果である。これは、宇宙での元素合成過程の理解に不可欠である。さらに2個の中性子が強く相関している「ダイニュートロン相関」の可能性が指摘されており、原子核の新しい量子相関が見えるかもしれない。一方、酸素26では通常の2中性子を放出する原子核に比べて寿命が長くなる可能性も指摘されている(二中性子放射性)。

2個の中性子が原子核からあふれ出るイメージ

図1. 2個の中性子が原子核からあふれ出るイメージ左側は安定同位体の酸素16、右側は酸素26を示し、赤は陽子、青は中性子を表している。酸素16では陽子・中性子が深く束縛されているのに対し、それよりも10個中性子の多い酸素26では2個の中性子が束縛されることなくあふれ出てしまう。

研究の背景

すべての物質は原子という基本単位に分解することができるが、原子核はその原子の中心に存在し、大きさが1兆分の1cmに満たないほどの微小な粒子である。この微小な粒子は、いくつかの陽子と中性子が「核力」で互いに結びついてできている。20世紀末になると、陽子数・中性子数が天然に存在する原子核と比べて著しくアンバランスな不安定核のビームを効率よく生成する手法が発明され、陽子数に比べて中性子数の多い中性子過剰核を人工的に作り出すことが可能になった。

中性子数を増やしていくと、結合のエネルギーが減っていき、最終的には原子核にとどめておくことのできる限界に達し、それを超えると中性子は原子核に束縛されずにあふれ出てしまう。この原子核が束縛できるかどうかの境界を中性子ドリップラインと呼んでいる。

図2は束縛することができる原子核(束縛核)を、横軸に中性子数、縦軸に陽子数をとって示した核図表と呼ばれるものである。中性子ドリップラインの位置は原子核を結びつける「核力」や「多体効果」に大きく依存するため、原子核はいったいどこまで存在することができるのか、という根本的な問いは、原子核を理解することに等しい。そのため、この領域の原子核の研究が実験・理論により精力的に行われている。

中性子ドリップラインは安定核から離れたところに位置するので(図2参照)、そこに位置する原子核は生成が難しい。そのため、現在のところ実験的に到達できている中性子ドリップラインは陽子数8の酸素同位体までであり、それより陽子数の大きい領域ではドリップラインの位置は理論計算に頼るしかない。酸素同位体(陽子数8)のドリップラインは中性子数16の酸素24であるのに対し、フッ素同位体(陽子数9)では中性子数22のフッ素31が束縛することが実験的にわかっている。

中性子数・陽子数を軸にとって原子核を表す核図表の一部

図2. 中性子数・陽子数を軸にとって原子核を表す核図表の一部それぞれの四角は原子核を示し、黒い四角は天然に存在する安定核を表している。
今回の研究対象である酸素26(赤色)は中性子ドリップライン(紫色)の外側に位置している。

結合できる中性子数は陽子数が増えるにつれて徐々に増えていくが、酸素・フッ素同位体のように中性子数が6個も変化する例はほかにない。なぜ中性子ドリップラインが急激に変化するのか、その理由は現在のところよくわかっていない。鍵をにぎると考えられているのが、核力でも特に謎の多い「三体力」や、原子核の秩序の崩れである「魔法数の異常」、中性子があふれ出たことによる「連続状態効果」などである。

ドリップラインを超えた原子核、つまり中性子があふれた状態になっている酸素25~酸素28は非常に寿命が短い(10‐22秒から10‐12秒程度)が、もし生成することができれば、「酸素ドリップライン異常」の謎に迫り、さらに上で述べたような興味深い原子核物理の謎を明らかにすることに発展すると期待される。

研究の経緯

本研究の対象である酸素26は、多くの理論では中性子ドリップラインの内側に位置する束縛核であると計算されるのに対し、実験的に中性子ドリップラインの外側に位置する非束縛核であることが知られていた。ただし束縛するために必要なエネルギーはどれくらいなのか、非束縛の度合いはわかっていなかった。

これまで酸素26の質量測定は米国、ドイツで行われた先行研究が2例あったが、生成量が十分でなかったため、質量の上限値しか与えられていなかった。また励起状態については未知であった。本研究では、2012年に新たに建設された理研RIBFの測定装置SAMURAIを用いて実験を行い、先行研究に比べて約5倍の統計量を得ることができ、それにより初めて質量を高精度で決定することに成功した。

さらに、先行研究では確認されていなかった第一励起状態を初めて観測することにも成功した。これらの成果は、原子核反応で放出される複数の粒子を高効率で検出することができるSAMURAIとRIBFが供給することのできる大強度の不安定核ビームを組み合わせることにより初めて達成することができたと言える。

今後の展開

今回得られた結果は、多くの理論研究が束縛すると予想していた酸素26について、非束縛の度合いを初めて実験的に示したものである。これは「中性子ドリップライン異常」の議論において、さまざまなモデルを検証するための重要なベンチマークとなる。三体力、魔法数、ダイニュートロン相関、連続状態などの複合的効果により問題が生じている可能性があり、これらの効果を解き明かしていくためにさらなる理論の進展が期待される。また、第二段階の実験として、酸素26よりもさらに中性子数の多い酸素27、酸素28の質量測定を2015年11月~12月に行った。

これにより、さらに「中性子ドリップライン異常」の謎に迫ることができると期待される。中性子ドリップライン異常を解明することができれば、実験で到達できない領域での原子核の安定性をより高い精度で予想することが可能となり、元素合成の解明や中性子星の性質の理解に大きく貢献すると考えられる。

今回の研究で用いた新しい測定装置SAMURAIは、原子核反応で生じる複数の粒子を高効率で検出できるため、様々な実験に用いることができる。中性子ドリップライン近傍の原子核の研究をはじめ、中性子よりも陽子を多く含む陽子過剰核の研究や、原子核同士の衝突実験などが計画されている。これらの研究は、宇宙での元素合成や中性子星の性質の理解につながるものであり、今後SAMURAIが原子核物理で中心的な役割を果たすと考えられる。

今回の研究について

今回の研究は科研費若手B(No.24740154)および新学術領域(No.24105005)、韓国の世界水準研究中心大学育成事業(R32-2008-000-10155-0)とグローバルPhDフェローシッププログラム(NRF-2011-0006492)、ドイツ・ヘルムホルツ国際センターの補助を受けている。また共同研究者のN. L. Achouri、F. Delaunay、J. Gibelin、F. M. Marqués、N. A. Orrは仏日国際連携(FJ-NSP)、A. Navinは日本学術振興会の外国人研究者招へいプログラムの補助を受けている。

用語説明

[用語1] RIビームファクトリー(RIBF) : 埼玉県の理化学研究所にあるRIビーム発生系施設と独創的な基幹実験設備で構成される重イオン加速器施設。2基の線形加速器、5基のサイクロトロンと超伝導RIビーム分離生成装置「BigRIPS」で構成される。ウランまでの重イオンを核子あたり345メガ電子ボルトまで加速することができ、世界最大強度の不安定核ビームを供給することができる。また、これまで生成不可能であったRIも生成でき、世界最多となる約4,000種のRIを創出できる性能を持つ。そのため、原子核研究の世界的拠点となっている。

[用語2] SAMURAI : 2012年に理研RIビームファクトリーに完成した多種粒子測定装置。最大中心磁場3.1テスラの超伝導双極子磁石、荷電粒子用検出器群、中性子検出器から構成される。原子核反応で放出されるすべての粒子を高効率で検出することができる。

[用語3] ダイニュートロン相関 : 2個の中性子が原子核内で空間的に近い位置に存在するような相関。

[用語4] 基底状態・励起状態 : 原子核には複数の量子状態がある。基底状態はエネルギー(質量)のもっとも小さい安定な状態であり、励起状態はそれよりもエネルギーの高い状態である。基底状態の質量や、励起状態へと励起するためのエネルギーは原子核の構造により大きく変化するので、これらを調べることにより、原子核の構造を知ることができる。

[用語5] 中性子ドリップライン : 陽子数・中性子数がほぼ同数の安定同位体に中性子を加えていくと、あるところで中性子が原子核に結合することができずにこぼれ出てしまう。この境界を中性子ドリップラインと呼ぶ。実験的には陽子数8の酸素同位体までしか確定されていない。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Letters
論文タイトル :
Nucleus 26O: A Barely Unbound System beyond the Drip Line
著者 :
Y. Kondo,1 T. Nakamura,1 R. Tanaka,1 R. Minakata,1 S. Ogoshi,1 N. A. Orr,2 N. L. Achouri,2 T. Aumann,3, 4 H. Baba,5 F. Delaunay,2 P. Doornenbal,5 N. Fukuda,5 J. Gibelin,2 J. W. Hwang,6 N. Inabe,5 T. Isobe,5 D. Kameda,5 D. Kanno,1 S. Kim,6 N. Kobayashi,1 T. Kobayashi,7 T. Kubo,5 S. Leblond,2 J. Lee,5 F. M. Marqu'es,2 T. Motobayashi,5 D. Murai,8 T. Murakami,9 K. Muto,7 T. Nakashima,1 N. Nakatsuka,9 A. Navin,10 S. Nishi,1 H. Otsu,5 H. Sato,5 Y. Satou,6 Y. Shimizu,5 H. Suzuki,5 K. Takahashi,7 H. Takeda,5 S. Takeuchi,5 Y. Togano,4, 1 A. G. Tuff,11 M. Vandebrouck,12 and K. Yoneda5
所属 :
1Department of Physics, Tokyo Institute of Technology, 2-12-1 O-Okayama, Meguro, Tokyo 152-8551, Japan
2LPC Caen, ENSICAEN, Universit'e de Caen, CNRS/IN2P3, F-14050, Caen, France
3Institut f¨ur Kernphysik, Technische Universit¨at Darmstadt, D-64289 Darmstadt, Germany
4ExtreMe Matter Institute EMMI and Research Division, GSI Helmholtzzentrum
f¨ur Schwerionenforschung GmbH, D-64291 Darmstadt, Germany
5RIKEN Nishina Center, Hirosawa 2-1, Wako, Saitama 351-0198, Japan
6Department of Physics and Astronomy, Seoul National University, 599 Gwanak, Seoul 151-742, Republic of Korea
7Department of Physics, Tohoku University, Miyagi 980-8578, Japan
8Departiment of Physics, Rikkyo University, Toshima, Tokyo 171-8501, Japan
9Department of Physics, Kyoto University, Kyoto 606-8502, Japan
10GANIL, CEA/DSM-CNRS/IN2P3, F-14076 Caen Cedex 5, France
11Department of Physics, University of York, Heslington, York YO10 5DD, United Kingdom
12Institut de Physique Nucl'eaire, Universit'e Paris-Sud,IN2P3-CNRS, Universit'e de Paris Sud, F-91406 Orsay, France
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975


有機化合物で巨大な熱電効果を発見―大きな熱電効果の発現に新たな指針を提示―

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要点

  • 有機化合物において、巨大な熱電効果を発見
  • これまでの予測を覆す、新しいメカニズムによる新奇な現象
  • 大きな熱電効果を発現する物質の開発に新たな指針を提示

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の町田洋助教と井澤公一教授、梨花女子大学(韓国)のウォン・カン(Woun Kang)教授、パリ高等物理化学学校(フランス)のカムラン・ベニア(Kamran Behnia)博士らの共同研究グループは、有機化合物(TMTSF)2PF6(テトラメチルテトラセレナフルバレン塩)の低温の半導体状態において、現在最も利用されている熱電変換材料[用語1]の100倍にも達する巨大な熱電効果を発見した。

この結果は、半導体の熱電効果は低温で消失するというこれまで広く信じられてきた理論予測を覆すものであり、新しいメカニズムに基づく新奇な現象であることを強く示唆している。この発見により、今後の大きな熱電効果を発現する物質の開発に新たな指針が与えられるものと期待される。

研究成果は2月25日発行の米国学術誌「フィジカル レビュー レターズ(Physical Review Letters)」電子版に掲載され、編集者の推薦論文(Editor's Suggestion)に選ばれた。

研究の背景

物質の両端に温度差を与えると、起電力が発生する現象をゼーベック効果と呼ぶ。ゼーベック係数Sはこの効果の大きさを表す尺度であり、温度差1 K(絶対温度)当たりに発生する電圧で定義される。したがって、同じ温度差でもSが大きいほど大きな起電力が得られる。ゼーベック効果は排熱エネルギーを電気エネルギーに変換可能な技術として注目され、高効率の熱電変換材料の開発は大きなゼーベック係数をもつ半導体を中心として、現在精力的に行われている。

このような特性をもつ半導体は、温度を下げると電気が非常に流れにくい状態へと変化する。この時ゼーベック係数の大きさは減少することが多くの実験で確認されており、絶対零度では消失するという理論予測が一般に広く信じられている。

一方、最近電子間のクーロン相互作用[用語2]が強い、強相関電子系と呼ばれる金属物質において、電子相関の効果により大きな熱電効果がもたらされることが分かってきている。半導体においても電子相関の効果により熱電効果が増強され得るのかということは興味がもたれる点である。

しかし、これらの点は実験的にはまだ全く分かっていない。

研究成果

同研究グループは、温度変化に伴いマイナス261.15 ℃(絶対温度12 K)で金属から半導体へと変化する強相関電子系の有機化合物(TMTSF)2PF6(テトラメチルテトラセレナフルバレン塩)を研究対象とし、そのゼーベック係数を極低温まで精密に測定した。その結果、同物質のゼーベック係数|S|は電気が非常に流れにくい極低温下でも顕著な増大を示し、マイナス273.05 ℃(絶対温度0.1 K)付近では40 mV/Kと非常に大きな値に達することを見出した。

有機化合物(TMTSF)2PF6のゼーベック係数|S|の絶対値の温度依存性。この物質は絶対温度12 K(マイナス261.15 ℃)で金属から半導体に変化する。ゼーベック係数|S|は低温で顕著な増大を示し、およそ絶対温度0.1 K(マイナス273.05 ℃)で約40 mV/Kの巨大な値に達する。
図.
有機化合物(TMTSF)2PF6のゼーベック係数|S|の絶対値の温度依存性。この物質は絶対温度12 K(マイナス261.15 ℃)で金属から半導体に変化する。ゼーベック係数|S|は低温で顕著な増大を示し、およそ絶対温度0.1 K(マイナス273.05 ℃)で約40 mV/Kの巨大な値に達する。

このようなゼーベック係数の温度変化は、低温で減少傾向を示す多くの半導体とは明らかに異なる振る舞いである。また得られたゼーベック係数|S|の最大値は、典型的な半導体材料のシリコンやゲルマニウムに比べ10倍大きく、また現在最も利用されているBiTe系の熱電変換材料の100倍と非常に巨大である。このように半導体のゼーベック係数が、絶対零度近傍の十分低温においても増大を続け、有限かつ巨大な値をとることは、広く信じられてきた従来の理論予測を覆す驚くべき結果であり、半導体の熱電現象に対する考え方に修正を迫るものである。

一方、電子間にはたらくクーロン相互作用によって半導体のゼーベック係数が低温においても有限に残るという予測が過去に存在する。今回の発見は、この可能性を含めた新しいメカニズムに基づく新奇な現象であることが強く示唆される。

今後の展開

今回の研究で、有機化合物において巨大なゼーベック効果が発現することを明らかにした。この成果は、固体の熱電現象における基礎学術研究上の重要性をもつばかりでなく、今回見出された知見を基盤とした巨大な熱電効果を発現する物質の開発に重要な指針を与えることが期待される。

用語説明

[用語1] 熱電変換材料 : 温度差を起電力に変換したり、電流を温度差に変換したりすることができる熱電変換機能をもつ材料。

[用語2] クーロン相互作用 : 2つの電子の間にはたらく反発力。この相互作用が強い強相関電子系では、高温超伝導や巨大磁気抵抗効果などの多彩な現象が発現することが知られているが、その発現にはクーロン相互作用の存在が深く関わっている。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Letters
論文タイトル :
Colossal Seebeck Coefficient of Hopping Electrons in (TMTSFT)2PF6
著者 :
Yo Machida1, Xiao Lin2, Woun Kang3, Koichi Izawa1, and Kamran Behnia2
所属 :
1Tokyo Institute of Technology(東京工業大学)
2ESPCI(パリ高等物理化学学校)
3Ewha Womans University(梨花女子大学)
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 大学院理工学研究科 物性物理学専攻
教授 井澤公一

Email : izawa@ap.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3832 / Fax : 03-5734-2751

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

ヒドリドイオン"H-"伝導体の発見―水素を利用した革新的エネルギーデバイスの開発の可能性―

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ポイント

  • 水素の陰イオンであるヒドリド(H-)がイオン伝導する新物質を開発した。
  • ヒドリドイオン伝導体を固体電解質に用いた全固体電池を作製し、機能することを実証した。
  • 高い電池電位が期待できるヒドリドのイオン伝導を利用することで、既存の蓄電池や燃料電池などの延長線上にない全く新しい作動原理をもつエネルギー貯蔵・変換デバイスを開発できる可能性を示した。

概要

分子科学研究所の小林玄器特任准教授と、東京工業大学大学院の菅野了次教授、京都大学大学院の田中功教授、高エネルギー加速器研究機構の米村雅雄特別准教授らの研究チームは、水素の陰イオンであるヒドリド(H-)伝導性の固体電解質La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-y(以下LSLHO)を開発しました。

イオン伝導体[用語1]は、二次電池や燃料電池の基幹材料として電極や電解質に用いられ、プロトン(H+)やリチウム(Li+)を伝導する物質が実用材料として開発されています。ヒドリド(H-)は、イオン伝導に適したイオン半径と、卑な酸化還元電位[用語2]を持つことから、H-を電荷担体[用語3]とするイオン伝導体を蓄電・発電反応に利用することができれば、高電位・高容量のエネルギーデバイスを実現できる可能性があります。しかし、化学的に安定であり、かつH-のみがイオン伝導する物質はこれまでに発見されておらず、H-をエネルギーデバイスに応用する試みはありませんでした。

本研究チームは、純粋なH-伝導体であるLSLHOを開発することに成功しました。H-が酸化物イオン(O2-)と共存する副格子[用語4]をもつ酸水素化物[用語5]と呼ばれる物質系に着目し、構成元素にH-より電子供与性の強いリチウム(Li)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)を採用して、H-からの電子供与を抑制することで固体電解質として利用できる初めてのH-伝導体の発見に至りました。

さらに、開発したLSLHOを用いて、H-を電荷担体とする全固体型の電気化学エネルギーデバイスが作動することを初めて見出し、H-電気化学デバイスの作動原理を実証しました。

この研究成果は、ヒドリドのイオン伝導を利用した電気化学デバイスの可能性を初めて示したものであり、水素のエネルギー利用に新たな可能性をもたらすとともに、既存の蓄電・発電デバイスの延長線上にない新しいエネルギーデバイスの開発に道を拓くものと期待されます。

本研究は、JST戦略的創造研究推進事業(さきがけ)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(新学術領域研究)の助成を受けて行われました。

本研究成果は、2016年3月18日(米国東部時間)に米国科学振興協会(AAAS)発行の科学誌「Science」に掲載されました。

研究の背景と経緯

持続可能なエネルギー社会の実現に向け、電気化学反応を利用した蓄電・発電の重要性が高まっています。リチウム二次電池や燃料電池を越える次世代のエネルギーデバイスの実現をめざして、激しい開発競争が世界的に繰り広げられていますが、いまだ本命は不在の状況です。次世代エネルギーデバイスには、エネルギー密度、作動温度、耐環境性能など、用途に応じたさまざまな性能が求められます。これらを達成するためには、既存の研究開発の延長線上にはない、基幹材料のブレークスルーが必要になります。これまでプロトンやリチウム、ナトリウム、マグネシウムなどのイオンを利用した燃料電池や蓄電池の開発が行われてきましたが、新たな電荷担体を伝導種とする電極や固体電解質材料が出現すると、全く新しい作動原理をもつエネルギーデバイスが創成できると期待されます。本研究チームは、ヒドリド(H-)の酸化還元電位が-2.25Vと大きく、電荷担体として魅力的であることに着目し、高速でH-が伝導することのできる新物質を探索しました。

研究の内容

固体内でH-伝導を実現するためには、十分な濃度のH-が互いに相互作用できる距離で結晶格子中に存在すること、安定な骨格構造をもつこと、H-より電子供与性の強い陽イオンの副格子をもつことが鍵となります。本研究チームは、La-Li系の酸水素化物La2LiHO3のLaをSrで置き換えると、H-濃度と結晶内の配位環境を制御できることを見いだし、H-伝導体LSLHOの開発に成功しました。

H-伝導体LSLHOは、高圧合成法[用語6]で合成しました。Li、Sr、Laの酸化物と水素化物を出発物質に用い、その割合を調整してLSLHOの組成を制御しました。本研究で開発したH-伝導体LSLHOは、広い組成範囲(O≤x≤1,O≤y≤2)を持ち、LaとSrの組成比を変えると結晶格子内のH-とO2-の比率を制御することが可能です。大強度陽子加速器施設J-PARC[用語7]と(米)オークリッジ国立研究所に設置された粉末中性子回折装置による中性子回折測定[用語8]によって決定した結晶構造を図1に示します。LSLHOがK2NiF4型構造[用語9]をとり、Liと陰イオンで構成されるLiX6x=H-,O2-)八面体の頂点位置をO2-が、LiX4面内をH-が好んで占有することを明らかにしました。La2LiHO3x=y=0)ではH-とO2-がLiX4面内に規則的に配列するのに対し、LaSrLiH2O2x=0,y=1)ではH-が面内および O2-が頂点位置を占有し、Sr2LiH3O(x=0,y=2)ではH-が頂点位置の1/2を占有します。さらにx>0の組成では、LiX4面内のH-が欠損し空孔が導入されることが分かりました。各構成元素の価数を第一原理計算[用語10]によって調べ、結晶格子内に含まれる水素がヒドリド(H-)として存在していることを明らかにしました。

La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-yの結晶構造

図1. La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-yの結晶構造

H-含有量の増加に伴い、Liと陰イオンで形成される八面体内の配位環境が変化する。La2LiHO3ではLiにH-が直線的に二配位する。LaSrLiH2O2ではLiにH-が4配位してLiH4平面が形成される。Sr2LiH3Oでは新たに八面体の頂点位置の半分がH-で占有される。

LSLHOのH-伝導特性を調べた結果、図2に示す様に高いイオン伝導率が出現することを確認しました。イオン伝導率はH-濃度の増加または空孔の導入によって向上し、La0.6Sr1.4LiH1.6O2x=0.4,y=1)の組成では300度で0.1mScm-1を越える高いヒドリド伝導率が得られました。

La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-yのイオン伝導率の温度依存性

図2. La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-yのイオン伝導率の温度依存性

温度の逆数に対して伝導率の対数を示したアレニウスプロットと呼ばれるグラフ。傾きからイオン伝導における活性化エネルギーが導出できる。左図:La2LiHO3、LaSrLiH2O2、Sr2LiH3Oの伝導率の比較。H-含有量の増加に伴い、伝導率が向上していることが分かる。右図:LaSrLiH2O2x=0, y=1)のH-位置に空孔を導入したLa1-xSr1+xLiH2-xO2のイオン伝導率の比較。空孔量の増加(xの増加)に伴って伝導率が向上している。

さらに新しいヒドリド伝導体を固体電解質に用いた全固体電池を作製し、電気化学反応が可能であることを明らかにしました。LSLHOを固体電解質に用いた全固体セルTi/LSLHO/TiH2は正の起電力を示し、定電流放電によって放電容量が得られました(図3)。電池反応によって生じた生成物を、大型放射光施設SPring-8[用語11]に設置されている粉末放射光X線回折装置で調べました。それぞれの電極で水素の吸蔵と放出に伴う構造変化を観測し、放電時にTi+xH-→TiHx+xe-(負極)とTiH2+xe-→TiH2-x+xH-(正極)の電極反応が進むことが明らかになりました。すなわち、TiH2から放出された水素がH-としてLSLHOを伝導してTi電極に吸蔵されたことを示します。この結果は、LSLHOが固体電解質として機能することを実証しただけでなく、H-のイオン伝導を利用した新しい電気化学デバイスが創成できる可能性を示しています。

本研究で作製した固体電池Ti/La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-y/TiH2の定電流放電測定の結果

図3. 本研究で作製した固体電池Ti/La2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-y/TiH2の定電流放電測定の結果

起電力と放電反応での流れる電流の向きから電荷担体がH-であることが証明できた。TiH2電極からの水素の放出とTi電極への水素吸蔵に伴って放電容量を得たこの実験結果は、H-が電荷担体として電池反応に適用できることを示した初めての報告である。

今後の展開

本研究を通して、H-が電荷担体として固体内をイオン伝導することが明らかになり、H-伝導体を固体電解質に利用した新しいエネルギーデバイスの開発が可能であることを初めて示しました。今後は、より伝導率の高いH-イオン伝導体の創成を目指して物質探索を進めると共に、H-の酸化還元電位を活かした電池反応の構築を目指します。本成果を通し、既存のエネルギーデバイスに用いられているLi+やH+、O2-、Mg2+などのイオン伝導種に新たにH-が加わったことで、次世代エネルギーデバイスの開発に向けた新たな潮流が生まれることを期待しています。

用語説明

[用語1] イオン伝導体 : イオンが拡散することで電気伝導が生じる物質。固体電解質には電気伝導にイオンのみが寄与する物質が用いられるのに対し、電極材料には電子とイオンが同時に伝導する混合伝導体が用いられることが多い。

[用語2] 標準酸化還元電位 : 標準酸化還元反応における電子授受に必要な電位。水素標準電極(SHE:2H++2e-=H2)に対してプラス側に大きな電位を持つ物質を貴な物質、マイナス側に大きな電位を持つものを卑な物質とする。電子の放出または受取りやすさの定量的な尺度でもあり、マイナス側に大きいほど(卑な物質)電子供与性が強い。ヒドリドでのH2+2e-=2H-の酸化還元電位は、水素標準電極に対して-2.25Vの電位である。リチウム二次電池に用いられているLi、次世代二次電池への検討がなされているマグネシウム(Mg)の酸化還元電位は-3.04、-2.36Vであり、H-はMgと同程度の標準酸化還元電位をもつ。

[用語3] 電荷担体 : 電気伝導の担い手。金属では電子、半導体では電子とホール、イオン伝導体ではイオンが伝導することで電気が流れる。

[用語4] 副格子 : 結晶格子を構成する原子または分子の中で、同じ性質や状態をもつもの同士が形成する部分的な格子のこと。LSLHOの結晶格子は、陽イオン副格子と陰イオン副格子で構成されていると考えることができる。

[用語5] 酸水素化物 : 結晶格子内に酸化物イオン(O2-)とヒドリド(H-)が共存する物質。酸化物イオンとの共有結合により水酸化物イオン(OH-)として格子間を占有することの多いプロトン(H+)と異なり、H-は酸化物イオンと同様に陰イオン位置を占有する。

[用語6] 高圧合成法 : 原料を圧力媒体内に密閉してGPa(ギガパスカル:1GPaが1万気圧に相当)オーダーの高圧下で熱処理する合成法。高圧相の合成や、水素やリチウムのように揮発性の高い元素を反応系内に留めることができるため、酸水素化物の合成に適している。

[用語7] 大強度陽子加速器施設J-PARC : 高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で茨城県東海村に建設した大強度陽子加速器施設と利用施設群の総称。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質、生命科学、原子核、素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用がおこなわれている。

[用語8] 中性子回折測定 : 中性子線の回折を利用して物質の結晶構造や磁気構造を調べる測定。X線回折ではX線が外殻電子によって散乱するのに対し、中性子回折では、原子核が散乱に関与する。このため、X線では検出しにくい水素やリチウムなどの軽元素の情報を得るのに適している。本研究では、中性子回折を用いてLSLHOに含まれる水素濃度と結晶格子内の水素の位置を決定した。

[用語9] K2NiF4型構造 : 陽イオンが陰イオンと6配位8面体を構成しているペロブスカイト型構造と岩塩型構造が一層ずつ積層した構造。イオン伝導体、超伝導体、磁性体など、さまざまな物性を示す物質が発見されている結晶構造。

[用語10] 第一原理計算 : 量子力学の原理のみに基づいて電子状態を調べ、構造や物性を予測する計算手法。本研究では、H-伝導体LSLHOの電子構造と、各構成元素の価数を調べた。

[用語11] 大型放射光施設SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設。放射光とは、電子を光速に近い速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、強力な電磁波のことである。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究がおこなわれている。

論文情報

掲載誌 :
Science
論文タイトル :
“Pure H- Conduction in Oxyhydrides“
(酸水素化物におけるH-導電現象)
著者 :
Genki Kobayashi1,2, Yoyo Hinuma3, Shinji Matsuoka4, Akihiro Watanabe1,4, Muhammad Iqbal4, Masaaki Hirayama4, Masao Yonemura5, Takashi Kamiyama5, Isao Tanaka3, and Ryoji Kanno4
所属 :
1 Research Center of Integrative Molecular Systems (CIMoS), Institute for Molecular Science, 2 Japan Science and Technology Agency (JST), Precursory Research for Embryonic Science and Technology (PRESTO), 3 Department of Materials Science and Engineering, Kyoto University, 4 Department of Electronic Chemistry, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, 5 Neutron Science Laboratory (KENS), Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization (KEK)
DOI :

問い合わせ先

自然科学研究機構 分子科学研究所
協奏分子システム研究センター
特任准教授 小林玄器

Email : gkobayashi@ims.ac.jp
Tel : 0564-55-7440 / Fax : 0564-55-7245

東京工業大学 大学院総合理工学研究科 物質電子化学専攻
教授 菅野了次

Email : kanno@echem.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5401 / Fax : 045-924-5401

京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻
教授 田中功

Email : tanaka@cms.mtl.kyoto-u.ac.jp

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
特別准教授 米村雅雄

Email : yone@post.kek.jp

JSTの事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部
グリーンイノベーショングループ

Email : presto@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3525 / Fax : 03-3222-2066

取材申し込み先

科学技術振興機構 広報課

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Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

自然科学研究機構 分子科学研究所 広報室

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Tel : 0564-55-7262 / Fax : 0564-55-7262

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

京都大学 企画・情報部 広報課

Email : kohho52@mail.adm.kyoto-u.ac.jp
Tel : 075-753-2071 / Fax : 075-753-2094

高エネルギー加速器研究機構 広報室

Email : press@kek.jp
Tel : 029-879-6046

J-PARCセンター 広報セクション

Email : pr-section@j-parc.jp
Tel : 029-284-4578 / Fax : 029-284-4571

東工大が第25回地球環境大賞を受賞

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東京工業大学を含むECM共同研究開発チームが第25回地球環境大賞 日本経済団体連合会会長賞を7者と共同受賞しました。

株式会社竹中工務店、鹿島建設株式会社、株式会社デイ・シイ、日鉄住金高炉セメント株式会社、国立大学法人東京工業大学、太平洋セメント株式会社、日鉄住金セメント株式会社、竹本油脂株式会社

フジサンケイグループ主催の地球環境大賞は、「産業の発展と地球環境との共生」を目指し、産業界を対象とする顕彰制度です。地球温暖化防止や循環型社会の実現に寄与する新技術・新製品の開発、環境保全活動・事業の促進や、21世紀の社会システムの探求、地球環境に対する保全意識の一段の向上を目的としています。

受賞理由

ECM(エネルギー・CO2・ミニマム)セメント・コンクリートシステムの開発

「ECMセメント」を開発し、「ECMコンクリート・地盤改良体への適用技術」を確立したことで、従来に比べ建設時のCO2の大幅な削減が可能となり、低炭素社会の実現、サステナブル社会の構築へ大きく貢献できる点が評価されました。

ECMセメント
ECMセメント

開発の背景

コンクリートの主要な材料であるセメント(普通ポルトランドセメント)は、製造時に石灰石などの原料を高温で焼成するため、多くのエネルギーを必要とするほか、大量のCO2が発生します。セメントの製造にかかるCO2排出量は我が国全体の3%強を占めていることから、セメント製造に係る低炭素化が喫緊の課題となっていました。

「ECMセメント・コンクリートシステム」の概要

ECMセメントを用いた構造体

ECMセメントを用いた構造体

国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の助成のもと、鉄鋼製造副産物の高炉スラグ微粉末を60~70%混合する「ECMセメント」を開発すると同時に、コンクリート・地盤改良体構造物へ使用する汎用的な建設技術システムを構築しました。「ECMセメント」は環境性能に優れる一方で、長期耐久性や安定性など検証すべき課題がありましたが、今回の研究で従来セメントの製造時のCO2排出量を6割以上削減することに成功しました。「ECMセメント」を用いたコンクリート構造体、地盤改良体の開発により従来構造物より3~6割のCO2削減が可能となりました。セメントの材料成分・構成の最適化や、新規の化学混和剤の開発を行い、構造物への適用に向けてのコンクリート・地盤改良技術を開発することで、従来の品質・性能上の課題を解決しました。

2020年から開発成果を段階的に公開し、25年には一般公開する計画です。事業化と市場の確立が実現できれば、年間1,000万トンの供給可能量に対し、 20年には利用量110万トン(45万t-CO2削減)、30年には440万トン(180万t-CO2削減)までの普及拡大が予想されます。

ECMコンクリート打設状況
ECMコンクリート打設状況

今回の受彰を受けて、研究開発に関わった本学大学院理工学研究科材料工学専攻 坂井悦郎教授は以下のようにコメントしています。

この研究は、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の助成のもと、先導研究(自 2008年6月23日 ~ 至 2011年 2月28日:通算期間 2年8ヵ月)および実用化開発(自 2011年8月10日 ~ 至 2014年2月28日:通算期間 2年7ヵ月)として実施したものです。鉄鋼製造の副産物の高炉スラグを60~70%混合する「ECM(エネルギーCO2ミニマム)セメント」を開発すると同時に、コンクリート・地盤改良体構造物へ使用する汎用的な建設技術システム(ECMセメントコンクリートシステム)を構築しています。「ECMセメント」は環境性能に優れる一方で、長期耐久性や安定性など検証すべき課題が多くありましたが、今回の研究では、これらの問題点を解決し、従来セメントの製造時のCO2排出量を6割以上削減できる技術を開発しました。基礎研究の大学および材料製造会社と使用者である建設会社が連合し材料開発から実用化研究までを一貫してグループとして実施したことが特徴です。日本でも例を見ない研究体制です。材料、施工、構造と統合的な検討を行うために個別の検討会と総合検討会を組織し、綿密な情報交換を行って研究を進めたことが早期の実用化に結びついていると思います。なお、現在は日本スラグセメント・コンクリート研究会を組織し、本技術の普及活動を行っています。また、既に、この技術研究開発は、平成27年度地球温暖化防止活動環境大臣賞(技術開発・製品化部門)を受賞しています。

お問い合わせ先

理工学研究科 坂井悦郎

Email : esakai@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3368

研究力のさらなる強化に向けて「科学技術創成研究院」設置を記者発表

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三島良直学長、安藤真理事・副学長(研究担当)は記者会見を行い、2016年4月からスタートする東工大の研究改革について、その目的と概要を説明しました。

概要

4月1日付けで、研究体制を集約し、約180名の研究者を擁する科学技術創成研究院(以下、研究院)を設置します。研究院には現行の研究に関わる組織を再編成し、新たなミッションを担う研究所・研究センターを設置するとともに、最先端研究を小規模のチームで機動的に推進する「研究ユニット」を10個設置します。研究ユニットは卓越したリーダーが"尖った"研究を大きく育てるための仕組みです。これらの改革により、複雑化する社会の要請に応え、新たな分野や融合分野の研究を創出し、研究成果の社会への還元を一層促進します。

科学技術創成研究院の概要

今後とも東工大の研究改革にご注目ください。

「東工大研究改革」について記者発表する三島良直学長
「東工大研究改革」について記者発表する三島良直学長

内容の詳細は、プレスリリース、説明資料をご確認ください。

超イオン伝導体を発見し全固体セラミックス電池を開発―高出力・大容量で次世代蓄電デバイスの最有力候補に―

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要点

  • 世界最高のリチウムイオン伝導率を示す超イオン伝導体を発見
  • 超イオン伝導体を利用した全固体セラミックス電池が最高の出力特性を達成
  • 高エネルギーと高出力で、次世代蓄電デバイスの最有力候補に。

概要

東京工業大学大学院総合理工学研究科の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士、高エネルギー加速器研究機構の米村雅雄特別准教授らの研究グループは、リチウムイオン二次電池の3倍以上の出力特性をもつ全固体型セラミックス電池[用語1]の開発に成功した。従来のリチウムイオン伝導体の2倍という過去最高のリチウムイオン伝導率をもつ超イオン伝導体[用語2]を発見し、蓄電池の電解質に応用して実現した。

開発した全固体電池は数分でフル充電できるなど高い入出力電流を達成し、蓄電池(大容量に特徴)とキャパシター(高出力に特徴)の利点を併せ持つ優れた蓄電デバイスであることを確認した。次世代自動車やスマートグリッドの成否の鍵を握るデバイスとして熾烈な開発競争が繰り広げられている蓄電デバイス[用語3]のなかで、最も有力なデバイスといえる。

同研究グループは超イオン伝導体の結晶構造を、大強度陽子加速器施設J-PARC[用語4]に茨城県が設置した粉末中性子回折装置「茨城県材料構造解析装置(iMATERIA:BL20)」で解明し、三次元骨格構造中の超イオン伝導経路[用語5]を明らかにした。さらに電極反応機構を、電解液を用いるリチウムイオン二次電池と比較し、高出力特性が全固体デバイスの本質的な利点であることを解明した。

研究成果は3月21日(現地時間)発行の英国の科学誌「ネイチャーエナジー(Nature Energy)」電子版に掲載された。また、成果の一部は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業にて得られたものである。

研究成果

東工大の菅野教授らの研究グループは超イオン伝導体「Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3」(リチウム・シリコン・リン・硫黄・塩素)と、広い電位窓[用語6]を持ち、リチウム金属負極の電解質として利用できる超イオン伝導体「Li9.6P3S12」を発見した。これらを用い、不燃性・高安全性の面で期待されていた全固体セラミックス電池を製作、現在のリチウムイオン電池よりもはるかに高速充電と高出力が本質的に可能であることを実証した。

発見したリチウムイオン伝導体は、室温(27 ℃)でLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3が25 mS cm-1(1センチメートル当たり25ミリジーメンス)の極めて高いイオン伝導率を示した(図1、2)。またLi9.6P3S12はリチウム金属負極に対しても安定に作動して、全固体電池の電解質材料として優れていることが分かった。

a 今回発見した超イオン伝導体(Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3とLi9.6P3S12)のイオン伝導率の温度依存性を従来のリチウムイオン伝導体Li10GeP2S12とその類似構造を持つ物質と比較して示す。発見したLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3のリチウムイオン伝導率は室温(27 ℃)で25 mS cm-1を示し、従来のリチウムイオン伝導体Li10GeP2S12(12 mS cm-1)の2倍の伝導率を示す。b, c 今回発見した超イオン伝導体Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3の結晶構造とイオン伝導経路。この構造は大強度陽子加速器施設J-PARCに設置された茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)を用いて明らかにした。bは全体の構造、cは一次元のリチウムイオン伝導経路を示す。bではリチウムイオンの熱振動の様子を示す。リチウムイオンは上下方向に非常に大きく熱振動しており、リチウムが超イオン伝導に関与していることがわかる。また、c図はリチウムが三次元的に連なり、室温での三次元的なイオン拡散を示している。
図1.
a 今回発見した超イオン伝導体(Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3とLi9.6P3S12)のイオン伝導率の温度依存性を従来のリチウムイオン伝導体Li10GeP2S12とその類似構造を持つ物質と比較して示す。発見したLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3のリチウムイオン伝導率は室温(27 ℃)で25 mS cm-1を示し、従来のリチウムイオン伝導体Li10GeP2S12(12 mS cm-1)の2倍の伝導率を示す。
b, c 今回発見した超イオン伝導体Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3の結晶構造とイオン伝導経路。この構造は大強度陽子加速器施設J-PARCに設置された茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)を用いて明らかにした。bは全体の構造、cは一次元のリチウムイオン伝導経路を示す。bではリチウムイオンの熱振動の様子を示す。リチウムイオンは上下方向に非常に大きく熱振動しており、リチウムが超イオン伝導に関与していることがわかる。また、c図はリチウムが三次元的に連なり、室温での三次元的なイオン拡散を示している。
超イオン伝導体の研究の歴史
図2.
超イオン伝導体の研究の歴史。それぞれの物質が発見された年代とイオン伝導率との関係を示す。第一世代の材料は、イオンが固体中を高速で動き回ることの現象を追求する過程で探索された。第二世代の材料は実用材料として応用することも加味して開発された物質群。本発見の超イオン伝導体は、LGPS(リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄)グループの中でもイオン伝導率の値が25 m Scm-1と最も高く、既存のLi10GeP2S12より2倍以上のイオン伝導率である。リチウムイオン電池に用いられている有機溶媒系より、はるかに高いイオン伝導率であることもわかる。

開発した全固体電池は、既存のリチウムイオン電池より室温で出力特性が3倍以上になるとともに、有機電解液を用いるリチウムイオン電池の課題である低温(-30℃)や高温(100℃)でも優れた充放電特性を示した(図3)。室温や高温での高電流放電において1000サイクルに及ぶ安定した特性を持ち、実用電池に匹敵する耐久性を兼ね備えていることを明らかにした。

開発した全固体セラミックス電池の特性
図3.
開発した全固体セラミックス電池の特性。a 高容量型と高出力型の放電特性。1Cは1時間の放電率を表す。室温では60 C(1分での放電)、100 ℃では1500C(2.5秒)での放電が可能であることを示している。b 高出力型の全固体電池の充放電特性。c 高出力型の全固体電池の100 ℃での耐久性試験。500-1000サイクルに及ぶ充放電試験においても、劣化がほとんど無いことを示している。図中、○(黒)は充放電効率、△(青)は充電容量、□(赤)は放電容量を示す。

また、iMATERIAを利用した中性子構造解析で、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3が三次元骨格構造を持つ物質であり(図1)、その骨格構造内にリチウムが鎖状に連続して存在していること、室温で三次元的な伝導経路を持っていることが、高いリチウム伝導性を実現していることを明らかにした。新しく発見した固体電解質は、これまでのLGPS系固体電解質とは異なり、室温においても三次元のイオン伝導経路が存在し、革新的な電池性能の発現に寄与していると考えている。開発した全固体電池の出力と容量の基準を示すラゴンプロット(二次電池のエネルギー密度と出力密度の関係を示したグラフ、図4)を用いると、全固体電池は急速充放電が可能なキャパシターより出力特性が優れていること、リチウムイオン電池はむろんのこと、現在、次世代電池として開発が進んでいるナトリウムイオン電池やリチウム空気電池、マグネシウム電池、アルミニウム電池などと比較しても、はるかに優れた出力とエネルギー特性を持つことが明らかになった。

各種蓄電デバイスのエネルギーと出力の関係を示すラゴンプロット
図4.
各種蓄電デバイスのエネルギーと出力の関係を示すラゴンプロット。既存のリチウムイオン電池やスーパーキャパシターと、現在開発が進められている各種革新電池(ナトリウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、リチウム空気電池)の特性に加え、本開発の全固体セラミックス電池の特性を併せて示す。既存のリチウムイオン電池やキャパシターが達成できていない高出力と高エネルギーを兼ね備えた領域(右上の領域)を、開発した全固体電池が可能にしている。出力特性とエネルギー密度とを兼ね備えた蓄電デバイスが初めて開発できた。特にリチウムイオン電池との比較では、出力特性がほぼ3倍以上である。また、現在開発が進んでいる各種革新電池(ナトリウムイオン電池やリチウム空気電池、マグネシウム電池、アルミニウム電池など)と比較しても、全固体電池がエネルギーと出力特性を兼ね備えた優れた電池系であることを示している。

背景

電気自動車やプラグインハイブリッド車、スマートグリッドが社会に浸透するための鍵を握るデバイスが、電気を蓄える電池である。その容量・コスト・安全性のいずれの面でも、現在のリチウムイオン電池を超える次世代電池の開発が喫緊の課題となっている。次世代の蓄電池開発の鍵を握るのが電解質だ。

現在のリチウムイオン電池は電解質として有機電解液が用いられているが、全固体電池は固体電解質を用いる。電解質の固体化により、従来の電解液系ではなしえないバイポーラ積層構造[用語7]など、既存の電池パック設計の常識を覆すコンセプトが可能であり、電池のさらなる高容量化・高出力化が期待される。加えて、電池をすべてセラミックスで構成することにより、電池の安定性がさらに高まり、全固体電池は次世代の蓄電デバイスとして位置づけられている。

しかし、固体電解質の特性が実現を阻んでいた。これまでに同研究グループは、有機電解質に匹敵するイオン伝導率を持つ材料Li10GeP2S12(LGPS=リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄):12 mScm-1程度のイオン伝導率)の開発を行なってきたが、これまでに構築した全固体電池の特性は既存の電池の特性を凌駕するものではなかった。

研究の経緯

同研究グループはこれまでの全固体電池の特性が既存のリチウムイオン電池に比べて劣る状況を解決するには、優れた特性を持つ材料を探し、電解質と電極材料の組み合わせを工夫することにより高出力と高容量を達成できると考え、超イオン伝導体として高いイオン伝導率の期待できる硫化物系で新物質探索を行った。その結果、イオン伝導率が高く、リチウム金属との接触によっても分解しない安定な超イオン伝導体を発見した。

その構造をiMATERIAによる中性子回折測定によって決定し、イオン伝導機構を解明した。開発した全固体電池は-30℃の低温から100℃の高温まで、一般的なリチウムイオン電池の限界値の3倍以上の出力が可能であることが明らかになった。さらに、出力を維持したまま従来のリチウムイオン電池の2倍以上のエネルギーを取り出すことができるなど、優れた特性を示すことと同時に、1000サイクルの充放電可逆性も達成し、実用電池に匹敵する耐久性を兼ね備えていることを明らかにした。

今後の展開

同研究グループが開発した全固体電池は、既存のリチウムイオン電池の特性をはるかに超えた出力が可能であるのはむろんのこと、キャパシターよりも優れている(図4)。全固体化した蓄電デバイスが、これまでに例のない優れたデバイス特性を示したことが最大の成果である。

パッケージングの自由度や安定性・信頼性の向上によって電池の大容量化が可能になることが、全固体セラミックス電池の利点であると考えてられていたが、今回の発明により、蓄電デバイスを全固体化することによって、電解液を用いる電池では達成できなかった高速充放電が可能であることが明らかになった。

同研究グループは既存の蓄電池やキャパシターでは実現できなかった特性が、全固体セラミックス電池で実現できることを初めて証明した。数ある革新電池の候補の中で、このような優れた特性を示す次世代型の電池は皆無であり、今後、次世代電池の全固体[用語8]への歩みを加速する道筋を開いたといえる。

用語説明

[用語1] 全固体型セラミックス電池 : 電池の構成部材である正極、電解質、負極をすべてセラミックスで構成した電池。有機電解液をセラミックス固体電解質に置き換えることで、さらなる安全性の向上が期待されている。主に電解質材料のイオン伝導率が低いことが原因で出力に課題を有する。解決の鍵は電解質材料のイオン伝導率の向上であるとされる。

[用語2] 超イオン伝導体 : 固体中をイオンがあたかも液体のように動き回る物質。銀・銅イオン伝導体では0.5 Scm-1程度、リチウムイオン伝導体では1 mScm-1程度の値が最高のイオン伝導率とされてきた。特に、高エネルギー密度電池として期待されているリチウム超イオン伝導体で、イオン伝導率と安定性を兼ね備えた物質の開発が望まれていた。ポリマー、無機結晶、無機非晶質などの様々な分野で物質開拓が行われており、その開発は1960年代から始まり、現在も引き続き行われている。(図2に開発の歴史的な経緯と、達成したイオン伝導率を示す)

[用語3] 蓄電デバイス : ガソリン車並みの航続距離を持つ電気自動車の実現のためには、現在の蓄電池の5倍から7倍の容量が必要であるとされている(出典:経済産業省「次世代自動車用電池の将来に向けた提言」平成18年8月)。この目標に向かって、革新電池の開発が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や科学技術振興機構(JST)を中心に進められている。いわゆる革新電池と目されている新規な電池系として、金属空気電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、リチウム硫黄電池などが知られている。

[用語4] 大強度陽子加速器施設J-PARC : 高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で茨城県東海村に建設し運用している大強度陽子加速器施設と利用施設群の総称。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用が行われている。

[用語5] 超イオン伝導経路 : 固体物質の結晶構造内でリチウムイオンが移動するために必要な連続的な空間。空間の大きさや、まわりに存在する他の原子との相互作用に伝導率は依存する。

[用語6] 電位窓 : 電解質が適正に動作する電位の範囲。動作範囲が広いほど、正極と負極の組み合わせを工夫して高電圧の電池を作ることができ、電池のエネルギー密度を上げることが可能になる。

[用語7] バイポーラ積層構造 : 集電体の一方の面に正極、他方の面に負極を配置したバイポーラ電極を、電解質層に挟んで複数枚を直列に積層して作製する電池。電解質が固体の場合に可能な電池構造で、高電圧の電池がシンプルな構造で実現できる。

[用語8] 電池の全固体 : 電池の安全性/安定性/長寿命を達成するために、5V系正極材料を用いた電池やポストリチウムイオン電池として注目されているLi-S電池(リチウム硫黄電池)などに、固体電解質の検討が進んでいる。NEDOやJSTの研究プロジェクトにおいても、このような電解質を利用した全固体電池の開発が進んでいる。日経エレクトロニクス2016年1月号に、全固体電池の開発を巡る企業の動きが掲載されるなど、これまで研究の段階と考えられてきた全固体電池の技術開発が近年急速に進み、実用化が前倒しで実現するとの期待が高まっている。

論文情報

掲載誌 :
Nature Energy
論文タイトル :
High power all-solid-state batteries using sulphide superionic conductors
著者 :
Yuki Kato1,2,3, Satoshi Hori2, Toshiya Saito1, Kota Suzuki2, Masaaki Hirayama2, Akio Mitsui4, Masao Yonemura5, Hideki Iba1 and Ryoji Kanno2
所属 :
1Battery Research Division, Higashifuji Technical Center, Toyota Motor Corporation,
2Department of Electronic Chemistry, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology
3Battery AT, Advanced Technology 1, TOYOTA MOTOR EUROPE NV/SA
4Material analysis Department, Material engineering Division, Toyota Motor Corporation
5Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization
DOI :

問い合わせ先

東京工業大学 大学院総合理工学研究科 物質電子化学専攻
教授 菅野了次

Email : kanno@echem.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5401 / Fax : 045-924-5401

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
特別准教授 米村雅雄

Email : masao.yonemura@kek.jp
Tel : 029-284-4703 / Fax : 029-284-4899

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

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