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スポーツ講座2016「オリンピックを語る」開催報告

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5月14日、東京工業大学すずかけホールにて、「オリンピックを語る」と題して、スポーツ講座2016を開催しました。スポーツ講座は、日本を代表するスポーツ選手を招いて講演いただくイベントで、2005年から毎年開催しています。東工大を含む日本の多くの大学が、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会と連携しており、このスポーツ講座も同組織委員会との連携イベントのひとつとして実施しています。

19回目となる今回は、2000年のシドニーオリンピック水泳400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得した田中雅美氏をゲストスピーカーとして、フリーアナウンサーの吉田填一郎氏が聞き手となって、約1時間半お話を伺いました。

田中雅美氏のご講演内容を紹介します。

講演中の田中雅美氏
講演中の田中雅美氏

「私は北海道遠軽の出身で自宅から通えるスイミングクラブで水泳を始めました。高校のとき同じ系列のスイミングクラブに誘われて上京しました。その時期は1年で記録が4秒伸び、日本一になりました。高校3年生で迎えたアトランタオリンピックは世界とはまだ戦えないレベルで、日本全体でもメダルがないという残念な大会でした。大学4年生で迎えたシドニーオリンピックの予選では記録が伸び、周囲から金メダルも期待されました。しかし不安が大きく、それも人には言えないので苦しみました。2000年のシドニーオリンピックでもなかなかメダルが取れなかったのですが、リレーの前に先輩から「4人なら絶対にメダルがとれるから」と言われ、1人ではないと考えたら気が楽になりました。その結果、ライバルのドイツチームに勝つことができ、銅メダルを獲得することができました。

聞き手の吉田填一郎氏
聞き手の吉田填一郎氏

2001年にアメリカに留学しました。それまでは他の人が敷いたレールの上を走っているようでしたが、自分でレールを敷くことが必要だと感じていたからでした。その時のコーチが、記録ではなく毎日100%の力を出せたかが重要だ、ということを教えてくれました。今も仕事する時にはそのことを考えています。2002年のソルトレークシティ冬季オリンピックでは選手としてではなく伝える側でしたが、上村愛子さん、葛西紀明さんが競技に対する愛情を語ってくれたので自分自身の水泳に対する気持ちが変わり、もう一度オリンピックに挑戦しようと思い立ち、2004年のアテネオリンピックに挑みました。」

この他、オリンピックでは北島康介選手が水泳チームを引っ張ってくれ感謝していること、池江璃花子選手にはリオオリンピックで経験を積んで欲しいこと、萩野公介選手はきっとリオオリンピックにピークを持っていけると期待していること等、多くのことをお話してくださいました。また、東工大の学生達には挑戦する気持ちが大事というメッセージが送られました。

講演の途中には、ストレッチの指導があり、参加者と一緒にストレッチを行う等、とても有意義な講演となりました。

ストレッチの指導をする田中雅美氏
ストレッチの指導をする田中雅美氏

会場でのストレッチの様子
会場でのストレッチの様子

お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院
准教授 須田和裕 

Email : suda@hum.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2290


「東工大レクチャーシアター」を360度動画で紹介

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東工大では、4月から学院の創設を始めとする画期的な教育改革がスタートしています。

新しい教育環境整備の一環として、学生が科学・技術の最先端を体感し、その奥深さ、楽しさを再発見することにより、理工系の専門を学ぶ動機を得て、夢を膨らませるための環境として、2015年4月に「東工大レクチャーシアター」(西5号館3階)が誕生しました。

レクチャーシアター外観
レクチャーシアター内観

東工大レクチャーシアターは、最先端研究の実験や臨場感のある講義を行う場として、教員が行う実験を様々な角度からとらえることが出来るカメラワークや電子顕微鏡、元素分析装置などを備え、教員と学生との双方向性を意識した作りとなっています。

特に、学士課程入学直後の学生を対象とする講義「科学・技術の最前線」でその環境を活用し、本学の最先端研究者並びに、国内外から最先端の研究者やノーベル賞級の発見・発明者を講師として招いて、創造的討論や実験の実演を伴った講義を開講しています。

また、高校生向けに「魔法教室」と題した講義を行ったり、英国王立科学研究所で毎年クリスマスの季節に開かれる「クリスマス・レクチャー」を開催するなど、学外の方にもイベント時に公開しています。

このたび、最先端機器を整え、東工大生の学びを支えるレクチャーシアターの機能と、大岡山駅からの道順を紹介する、最新の映像技術360度動画(パノラマビューイング)が出来ました。是非ご覧下さい。

360度動画を視聴するには、パソコン用のGoogle Chrome、Opera、Firefox、またはInternet Explorerの最新バージョンが必要です。
モバイル端末(スマートフォン等)の場合は、最新バージョンのAndroidまたはiOS向けYouTubeアプリをご利用ください。

お問い合わせ先

国際フロンティア理工学教育プログラム

Email : kokusais@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3190

大隅良典栄誉教授が2016年ポール・ヤンセン生物医学研究賞を受賞

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大隅良典栄誉教授大隅良典栄誉教授

東京工業大学科学技術創成研究院の大隅良典栄誉教授が、生物医学分野において重要な功績に対して贈られるポール・ヤンセン生物医学研究賞の受賞者に選ばれました。

今回、大隅栄誉教授が受賞するポール・ヤンセン生物医学研究賞は、人類の健康に著しく貢献する基礎研究や臨床研究をした科学者などに授与されます。 類まれな才能で、数々の薬を生み出し、現代薬学に大きく貢献したポール・ヤンセン博士の偉業を讃え、博士の創立した会社をグループ化した米国のJohnson & Johnson社が2005年より毎年授与しています。

今回の受賞は、大隅栄誉教授のオートファジーの研究功績が高く評価されたものです。オートファジーとは飢餓状態に置かれた細胞が飢餓を乗り切るために自らの細胞の一部を分解し、栄養源とする機能。大隅栄誉教授は、そのメカニズムや関連する遺伝子を次々と明らかにし、細胞や細胞組織の維持と修復に不可欠であることを解明し、生物医学分野の発展に大きく寄与しました。

大隅良典栄誉教授のコメント

Dr. Paul Janssenは、数々の重要な医薬を次々と開発し偉大な業績を挙げた巨人です。私は基礎生物学者として、酵母を用いてオートファジーと呼ばれる細胞内分解機構を長年研究してきました。27年前、この研究を始めた当初から医学領域に拡がることを期待した訳ではありませんし、創薬などを目指していた訳ではないので、この大きな賞に相応しいかという戸惑いもあります。しかし医学、薬学領域にあっても基礎的な研究が重要であることを認めて頂いたことに素直に感謝したいと思います。

大隅栄誉教授の受賞スピーチ

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学研究戦略推進センター 川口

Email : kawaguchi.e.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7268

東工大発ベンチャーのハイボットが第3回「Rise Up Festa」で最優秀企業賞受賞

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東工大発ベンチャーの株式会社ハイボットが、株式会社三菱東京UFJ銀行主催の第3回BTMU ビジネスサポート・プログラム「Rise Up Festa」のロボット・先端技術分野において、最優秀企業に選ばれ、4月25日に行われた授賞式に同社代表取締役会長・広瀬茂男氏(本学名誉教授)が出席しました。

「Rise Up Festa」最終審査会
「Rise Up Festa」最終審査会

最終審査会にて発表する広瀬茂男代表取締役会長
最終審査会にて発表する広瀬茂男代表取締役会長

「Rise Up Festa」は、新規性・独創性を有する事業や既存の事業領域を超えて新たな事業に取り組んでいる中小企業や成長企業に対し、同行が経営支援を含めた中長期的なサポートを行うプログラムです。「バイオ・ライフサイエンス」「ロボット・先端技術」「情報・ネットワークサービス」「ソーシャルビジネス」の4分野があり、各分野1社(合計4社)が最優秀企業として採択され、表彰されます。

株式会社ハイボット 広瀬代表取締役会長のコメント

私は東京工業大学時代に、ヘビ型ロボットなどを代表とする多様なロボット開発をしていましたが、現在は、東工大発20番目のベンチャー企業である株式会社ハイボットで、配管点検ロボット、橋梁点検ロボットなどの人が入れないまたは危険が伴う作業を行うインフラ点検用ロボットの開発をしています。今後は、米国シリコンバレーの支店を拠点に米国市場に配管点検ロボットのビジネスを進め、さらにそれを世界に展開させようと意気込んでいます。今回は、我々の技術とビジネスモデルが高く評価され、大変うれしく感じています。

「東工大発ベンチャー」とは

東工大が認定したベンチャー企業に与えられる称号で、東工大での研究成果や技術、特許等の知的財産権などを活用して創業した企業、もしくは、学生が起こした企業に対して与えられます。2016年5月現在、本称号は総計75社に対して付与されています。

在学中に加え、卒業または退学後1年以内に創業するケースが含まれます。また、学生の身分を失ってのち、起業までに他の職に就かなかった場合も該当します。

お問い合わせ先

産学連携推進本部

Email : san.kik.kan@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2445

冨田育義教授が平成27年度高分子学会賞(科学)を受賞

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物質理工学院応用化学系の冨田育義教授が平成27年度高分子学会賞(科学)を受賞しました。

同賞は、公益社団法人高分子学会により、我が国の高分子科学および技術の進歩をはかるため、高分子科学、技術(工学、工業化技術を含む)に関する独創的かつ優れた業績を挙げた研究者に対し与えられる賞で、科学及び技術の2種の部門があります。

受賞となった研究題目
「精密高分子反応を基盤とする第14族~第16族元素ブロックをもつ未踏のπ共役高分子の開拓」

冨田育義教授(2016年5月26日の授賞式にて)
冨田育義教授
(2016年5月26日の授賞式にて)

今回の受賞は、冨田教授が展開してきた精密な高分子反応に基づく新合成手法により様々な元素ブロックを付与したπ共役高分子を構築し、それらの未踏の高分子材料が特異な光・電子特性をもつ優れた機能材料としての可能性を明らかにしてきた研究が高く評価されたものです。今回の受賞にあたり、冨田教授は次のようにコメントしています。

合成化学的手法に基づく基礎研究を評価して頂き、大変嬉しく感じております。多大なご支援をいただいた研究室スタッフ、卒業生、在校生、および学内外の共同研究者の皆様に心よりお礼申し上げます。

π共役高分子:ポリアセチレンやポリチオフェンのように主鎖に不飽和結合に基づくπ電子系の広がりをもつ高分子のこと。電子受容体や電子供与体によるドーピング処理によって導電性高分子となるほか、トランジスタ機能、光電変換機能、発光特性、磁気特性などをもつ機能性高分子として注目されている。π共役高分子に元素ブロックを付与すると優れた光・電子特性の発現が期待されるが、既存の合成法ではその多くは手にすることができなかった。

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に新たに発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

体の深部を探る世界初の近赤外発光基質を開発―生体発光イメージングの感度を飛躍的に高め、創薬研究の推進に貢献―

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要点

  • 発光酵素ホタルルシフェラーゼと反応して近赤外光を産生する基質[用語1]を開発
  • マウス腫瘍モデルを用いた実験で最大40倍検出感度を上げることに成功
  • 疾患の新規治療法や新薬の開発に貢献できる

概要

東京工業大学の口丸高弘助教と近藤科江教授らは、電気通信大学の牧昌次郎助教と丹羽治樹教授らと共同で発光酵素ホタルルシフェラーゼ(以下、F-Luc[用語2])の基質の開発を行い、体内深部からの発光シグナルを感度良く観察することができる近赤外光を産生する実用的な基質Aka-HClの開発に世界で初めて成功した。F-Lucを用いた発光イメージングは、世界標準の光イメージング技術で、小動物を用いた創薬研究には不可欠な技術となっている。しかし、自然界に存在するF-Lucの発光基質[用語3]D-ルシフェリン(以下、D-luci[用語4])は、組織透過性が乏しい可視光領域の光を産生するため、これまで体内深部の観察には限界があった。また、これまでに開発された近赤外発光[用語5]を産生する基質は、産生する光が極端に弱かったり、水溶性が乏しく生体に応用できなかったり、F-Lucの変異体にしか反応しなかったりして、実用的ではなかった。今回開発した基質Aka-HClは、水溶性にも優れ、マウスを用いた実験でD-luciよりも最大40倍高い検出感度を示し、近赤外光を産生できる世界初の実用的な基質である。この基質を利用することで、これまでの方法では検出されなかった小さな病変の観察が可能になるため、新規治療法や新薬の開発への貢献が期待できる。本成果は、ネイチャー・パブリッシング・グループのオンラインジャーナルNature Communicationsに6月14日に掲載された。

研究成果

F-Lucと各基質との発光スペクトル
図1. F-Lucと各基質との発光スペクトル

このたび開発に成功した基質Aka-HClは、水溶性に優れ、毒性も無く、効率よく近赤外光を産生する(図1)。D-luciや、同じく可視光に発光ピークをもつ改良型D-luciのCycLuc1と比較すると、F-Lucと反応して産生する発光の組織透過性の高い事が牛肉スライス(厚さ4 mm, 8 mm)を用いた実験で示された(図2)。

牛肉スライスを用いた組織透過性評価

図2. 牛肉スライスを用いた組織透過性評価

マルチウェルプレートにF-Lucと各基質を入れて、その上から図に示した厚みの牛肉スライスを乗せて、牛肉を透過してくる光を上部からイメージング(左)し、透過光の強度を測定した(右)。

さらに、生体内深部の発光シグナルの検出感度を検証するために、検出が特に難しい肺がんモデルマウスを用いてイメージングを行ったところ、他の基質に比べて極めて高い感度で肺がんを検出することができた(図3)。

このように、今回開発した基質は、野生型のF-Lucと反応して近赤外領域の光を産生することができ、現在汎用されている基質と比較しても、組織透過性に優れ、体内深部からのシグナルを感度良く検出することを可能にした。

肺がんの可視化

図3. 肺がんの可視化

F-Lucを発現するがん細胞を移植した肺がんモデルマウスに、各基質を図に示した濃度で投与した後、発光イメージングでがん細胞を可視化した。

背景

生体発光イメージングは、小動物を対象に2000年頃から普及し始めた非侵襲的画像技術で、F-Lucとその天然基質であるD-luciとの組み合わせで産生される562 nmにピークをもつ可視領域の光を利用している。生体発光イメージングは、疾患モデルマウスや腫瘍モデルに汎用されており、この組み合わせが、世界標準として、創薬研究や基礎医学研究には不可欠なものとなっている。

しかし、可視領域の光は、体内に多く存在するヘモグロビンやメラニンなどにより吸収されるため、組織透過性に乏しく、非侵襲的な観察には限界があり、より感度の良い発光イメージング技術の開発が望まれていた。近赤外光は、体内で吸収されにくく、組織透過性に優れているため、体の深部にあるシグナルを体外から感度良く観察することを可能にする。そのため、体に傷をつけずに、生体内を観察する次世代の診断技術開発において注目されている。

研究の経緯

D-luciを改変して近赤外光を産生する基質は、これまでも開発されていたが、生体への応用には課題が多く、実用的な基質として使えるものは無かった。その理由は、基質を合成する研究者と生体内での有効性を評価する研究者が共同で開発してこなかった事が大きな要因である。今回我々は、F-Lucと反応して、近赤外領域に発光のピークを示すD-luciの誘導体を電通大で合成し、それらの生体イメージングでの有用性を、F-Lucを発現するがん細胞を移植した腫瘍モデルマウスを用いて、東工大で評価することで、効率よく目的の基質開発に繋げることができた。

今後の展開

今回開発した近赤外光を産生する基質は、既存のF-Lucの遺伝子改変マウス[用語6]や遺伝子導入細胞を用いた実験系に広く応用可能である。これまでよりも高い感度で体内深部の観察を可能にするため、広範な研究分野で、研究の推進に貢献できると期待される。今回開発した基質Aka-HClは、TokeOni (808350-5MG)という名称でSigma-Aldrich (米国ミズーリ州セントルイス市)より販売されている。

TokeOni(近赤外生物発光基質)outer

用語説明

[用語1] 基質 : 「酵素」と特異的に反応する化合物を「基質」という。ルシフェラーゼが「酵素」で、ルシフェリン、CycLuc1、Aka-HClが「基質」となる化合物。

[用語2] ホタルルシフェラーゼ(F-luc) : 北米産ホタルから単離された酵素で、ATP(アデノシン三リン酸)、マグネシウムイオン存在下で基質であるルシフェリンの酸化反応(発光反応)を触媒する。

[用語3] 発光基質 : 発光酵素と反応して光を産生する化合物

[用語4] D-ルシフェリン : ホタルルシフェラーゼと反応して光を産生する発光基質(化合物)

[用語5] 近赤外発光 : 650 nmより長波長側にピーク波長を有する生物発光。

[用語6] 遺伝子改変マウス : 特定の遺伝子が全身組織細胞もしくは特定の組織細胞に組み込まれている、または、変異導入されているマウス。

研究サポート

この研究は、新学術領域「がん微小環境ネットワークの統合的研究」および、JST・A-STEP(ハイリスク挑戦)の支援を受けて実施した。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
A luciferin analog generating near-infrared bioluminescence achieves highly sensitive deep-tissue imaging
著者 :
Takahiro Kuchimaru, Satoshi Iwano, Masahiro Kiyama, Shun Mitsumata, Tetsuya Kadonosono, Haruki Niwa, Shojiro Maki, Shinae Kizaka-Kondoh
DOI :

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系
教授 近藤科江

Email : skondoh@bio.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5800

電気通信大学 大学院情報理工学研究科
基盤理工学専攻 化学生命工学プログラム/
脳科学ライフサポート研究センター
助教 牧昌次郎

Email : s-maki@uec.ac.jp
Tel : 042-443-5493

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

電気通信大学 総務課広報係

Email : kouhou-k@office.uec.ac.jp
Tel : 042-443-5019 / Fax : 042-443-5887

日本人学生と留学生の交流を促進!「テニスフェスティバル2016」開催

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5月1日、大岡山キャンパスのテニスコートにて、「テニスフェスティバル(Tennis Festival) 2016」が開催されました。本イベントは、東工大の日本人学生と留学生の交流を促進することを目的として、東京工業大学留学生会(Tokyo Tech International Student Association、以下TISA)が主催し、東工大テニス部、東工大テニスサークルSEVEN、Sominityの協同により行われました。

積極的に交流を図る参加者
積極的に交流を図る参加者

メンバーの過半数が留学生で構成されるTISAと、部員のほとんどが日本人学生で構成される東工大テニス部および東工大テニスサークルが協同で開催した本イベントは、テニス部・テニスサークルのメンバーによるテニス未経験者への援助もあり、参加者のテニスの熟練度を問わず、多くの学生がテニスを通じて国際交流を行うことができました。

テニスを楽しむ様子1

テニスを楽しむ様子2

テニスを楽しむ様子3

テニスを楽しむ様子4

テニスを楽しむ様子

TISA 徳永唯希さん(理学院化学系 エネルギーコース 修士1年)のコメント

通常多くの部活・サークル団体は大半が日本人の学部生で構成されており、特に修士以上で学位取得のために日本に留学に来た留学生や、日本語が得意でない留学生にとって、部活動やサークル活動との接点は限られています。本イベントは普段あまり接する機会のない日本人学生と留学生との架け橋となるべく企画され、初めての協同企画にもかかわらず、多くの日本人学生と留学生が参加しました。今後も東工大のセパタクローサークルや合気道部など様々な部活・サークル団体とイベントを企画し、学生間の国際交流を促進していきたいと思います。

テニスサークルSEVEN 中釜雄太郎さん(機械宇宙学科 2年)のコメント

東工大のテニスサークルに所属する者として、普段活動しているだけでは気付かないことがありました。それは、参加者の留学生の多くが、テニスをやってみたい、あるいはテニスを本格的に練習したい、と思っているということです。結果として、私の所属するサークル(SEVEN)に興味を持ち、連絡をくれた留学生もいました。これまで彼らを受け入れる体制が、少なくとも私のサークルでは整っていなかったことも、現実問題としてあります。留学生がテニスをする機会がない、ほとんどのサークルが学部生を対象としている、といった問題点を解決していくことが、東工大におけるテニスを通した国際交流を発展させることにつながっていくのではないでしょうか。いずれにしても、多くの参加者がこのイベントに満足していたことを嬉しく思います。そして、来年以降もこのイベントが継続していくことを期待したいです。

参加者のコメント

台湾からの留学生 トウ・ショウヨさん

今回、TISAの活動に初めて参加し、とても良い思い出になりました。この活動が海外の友達を作る機会となり、またテニスも大いに楽しむことができました。今後もTISAの活動に参加したいと思います。ありがとうございました。

タイからの留学生 ハンピニットサック・パナウィットさん

とても楽しかったです。私はこの活動を通してテニスに興味を持った海外や日本人の友達ともっと知り合いたいです。今後もこのような活動に参加したいと思います。

集合写真

TISAは、東工大留学生の学生生活の援助及び学内の国際交流を促進することを目的として、2007年に設立された学生団体です。学内の留学生との接点を増やしたい・異文化交流に興味がある・将来留学を考えている・語学力を伸ばしたい、そんな東工大生をいつでも歓迎しています。

次回のサークル共催イベントは、東工大セパタクロークラブの協力のもと6月19日(日)に大岡山キャンパスの体育館にて行われます。より詳しいイベント情報やその他の活動に関して興味のある方は、TISAのウェブサイトouter等をご覧ください。

お問い合わせ先

東京工業大学留学生会(TISA)

Email:contact@mytisa.net

リサーチリポジトリシステムT2R2の論文公開件数が5,000件を突破!

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4月20日、T2R2システムにて学外公開されている論文等の本文ファイルが5,000件を突破しました。

T2R2システム(Tokyo Tech Research Repository)は、東工大の学術研究論文等の一元的な蓄積・管理・発信を目的としたシステムです。東工大所属の全ての研究者が執筆した学術研究論文等の書誌情報や、PDFファイル形式の論文本文を登録・保存・公開するための機能を備えています。また、T2R2システムに登録された論文・著書は、T2R2システムの検索サイトを通して、広く学内外の利用者による検索・閲覧が可能です。

5,000件目の論文を登録した髙橋篤司教授(工学院)に、T2R2で公開している論文について聞きました。

LELECUT(描いて描いて消す)
LELECUT(描いて描いて消す)

論文名
著者名
Yukihide Kohira, Chikaaki Kodama, Tomomi Matsui, Atsushi Takahashi, Shigeki Nojima, Satoshi Tanaka
掲載誌
Journal of Micro/Nanolithography, MEMS, and MOEMS(JM3)
巻号頁
Vol. 15 No. 2 pp. 1-7

論文の概要を教えてください

髙橋篤司教授
髙橋篤司教授

集積回路の製造では、光露光装置で回路パターンをウエハ上に転写し、エッチングによりウエハ上に回路パターンを形成します。しかし、現在、大量生産に用いられる光露光装置では、波長193ナノメートルのArFエキシマレーザーが光源として主に用いられており、線幅、線間隔が数十ナノ以下の微細な回路パターンをウエハ上に形成することは原理的に不可能であるため、これを形成するために様々な製造方法が用いられます。その中の一つが、この論文が対象とするLELECUTと呼ばれる製造方法です。LELECUTでは、露光・エッチング工程(LE)を2回繰り返しウエハ上にパターンを形成(LELE)したのち、3回目の露光・エッチング工程でパターンの一部を除去(CUT)することで、線幅、線間隔が数十ナノ以下の微細な回路パターンの形成を実現します。このとき、それぞれの露光・エッチング工程で形成されるパターンは、露光・エッチング工程で形成できるための条件を満たさなければならないだけでなく、工程間の合わせズレの影響を最小限に抑えることが求められます。この論文では、LELECUTのための、合わせズレに強いパターン分割を、半正定値計画緩和法を用いて効率よく求める手法を提案しました。

T2R2システムで公開されたファイルをどのような方々に読んでいただきたいですか

最先端の集積回路製造技術に関する論文誌に掲載された論文ですが、リソグラフィ関連の技術に興味を持たれている方だけでなく、アルゴリズムなどに興味を持たれている方にも是非読んでいただきたいと思います。

今後の研究活動のご予定を教えてください

理論面と実用面の両方から様々な次世代リソグラフィ技術を分析することで、次世代リソグラフィ技術にマッチした実用的な集積回路設計フローが構築できるよう研究していきたいと考えています。

本学では、今後もT2R2システムを通じ、東工大の研究成果を世界へ向けて発信していきます。

お問い合わせ先

リサーチリポジトリWG(事務担当)

Tel : 03-5734-2099


高周波圧電共振器の課題を解消する回路技術を開発―IoT時代に向けた無線通信システムの小型化・低コスト化・高速化を実現へ―

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要点

  • 無線機の性能を決める重要な技術要素である発振器において、高周波圧電共振器の周波数ばらつきなどの課題を解決する新アルゴリズムに基づく回路技術を開発。
  • 信号の時間軸の揺らぎを示すジッタ特性において極めて優れた180fs RMSを達成。小数点分周位相同期回路(PLL)としては世界トップクラスの性能。
  • 外付け部品である水晶発振器を、集積回路に内蔵可能な高周波圧電共振器に置き換えることが可能となり、IoT時代に向けた無線通信システムの小型化・低コスト化・高速化に大きく貢献。
本成果の適用効果についての概念図

本成果の適用効果についての概念図

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の伊藤浩之准教授、益一哉教授らは情報通信研究機構(NICT)と共同で、高周波圧電共振器[用語1]を位相同期回路(PLL[用語2])に用いるための新しいアルゴリズムと回路技術を開発した。従来のPLLに比べ、低雑音かつ優れた性能指数(FoM[用語3])で動作することを確認した。

この技術により、従来の無線モジュールで小型化・低コスト化のネックになっている水晶発振器[用語4]を高周波圧電共振器に置き換えることができ、IoT時代に向けた無線通信システムの小型化・低コスト化・高速化に大きく貢献できる。高周波圧電共振器は小型で集積化でき、Q値[用語5]に優れており、これを用いた発振器は優れたジッタ[用語6]特性を有する。高周波圧電共振器は水晶共振器に比べ共振周波数のばらつきや温度依存性が大きいことが課題だったが、新規のアルゴリズムであるチャネル調整技術を用いたPLLの開発により課題を解決した。

最小配線幅65nmのシリコンCMOSプロセスで試作、最高約9GHzの周波数出力をわずか180フェムト秒[用語7]の位相ゆらぎで達成した。消費電力は12.7mW。この性能はPLLの性能指数(FoM)で-244dB[用語8]に相当し、小数点分周(フラクショナルN)PLL[用語9]としては世界トップクラスの性能である。無線通信システムの小型化・低コスト化、高速化に貢献できる。

成果は6月14日からハワイで開催される「The 2016 Symposium on VLSI Circuits」で現地時間6月17日に発表される。

研究背景

近年の無線通信システムでは、必要な機能の大部分が集積回路チップ上に実装されている。一方で、周波数基準信号(参照信号)を生成するために水晶共振器がいまだに個別の部品として用いられており、これらがモジュールの小型化・低コスト化のボトルネックになっている。多くのシステムでは、32kHzのクロックを生成する水晶発振器と、無線通信用のPLLの基準信号となる数十MHzのクロックを生成するために水晶発振器が用いられている。

これらを集積回路内の発振器や、集積化可能なMEMS[用語10]素子を利用した発振器で置き換えるための研究開発が行われている。数十MHzのクロックについては、高Q・高安定なMEMS素子を使った発振器で置き換える手法が検討されている。しかし、無線通信用途では、周波数の安定性や精度に加えて信号の時間軸の揺らぎであるジッタが小さいことが求められるため技術的ハードルが高く、水晶発振器の代替となる実用的な発振器技術は実現していない。

一方、低ジッタな発振器技術として、GHz帯で動作する高Qな圧電共振器を利用する手法が提案されており、極めて優れた性能が実現できている。また、MEMS技術で作成する一部の圧電共振器は集積化できるため、水晶発振器が抱える実装上の課題も解決できる。しかし、製造工程や電源電圧・温度の変化に起因する周波数ばらつき(PVTばらつき)が発振器の周波数可変レンジよりも一般的に広いため、ターゲット周波数の信号が得られない可能性があることが実用上の課題だった。

研究成果

伊藤准教授らは、これらの問題を解決するための新規アルゴリズムであるチャネル調整技術と、それを用いたPLL(図1)を開発した。この技術は2つのPLLを接続したカスケードPLLの構成を利用する。まず、高い周波数分解能を有する初段PLLが、フィードバック制御がかかっていない自走状態で発振器の周波数を測定し、圧電共振器帯域内で動作できるように出力周波数を決定する。その後、フィードバック制御を行い、その目標周波数にロックさせる。

後段PLLの参照信号は前段PLLから供給されるが、その周波数情報はアナログ信号(図1中のf1st)とデジタル信号(N2nd)で、位相情報はアナログ信号(f1st)で伝えられる。周波数チューニングレンジが広い後段のPLLは、初段PLLの圧電共振器の周波数ばらつきを補正するようにデジタル信号(N2nd)を使って周波数逓倍比を設定する。このような自動的に動作周波数レンジ(チャネル)を割り振るアルゴリズムがチャネル調整技術であり、製造ばらつきや温度依存性が比較的大きい圧電共振器も利用できるようになる。また、ばらつきが大きい圧電共振器が利用できる以外に、以下のメリットがある。

1.
初段PLLのアナログ出力信号f1st(後段PLLの位相参照信号)の位相雑音は、それが圧電共振器を用いた発振器で決まるように設計することで極めて小さくできる。さらに、この参照信号の周波数は高いため、後段PLLのループ帯域を広く設計できる。したがって、後段PLL出力信号の位相雑音の大部分が初段PLLの位相雑音で決まるように設計できるため、最終的な出力信号の位相雑音を小さくできる。また、参照信号の周波数が高いため、後段PLLのループフィルタの物理的サイズを小さくできる。
2.
初段PLLは32kHzの参照信号で低速動作するため、小さい電力で高ビットのΔΣ変調器[用語11]が利用できる。本回路では20bitのΔΣ変調器を使用しているため、1ppb[用語12]以下の周波数分解能が理論上実現できる。
同回路は、最小配線半ピッチ65nm(ナノメートル)のシリコンCMOSプロセスで試作した(図2)。同回路は約9GHzの信号を出力し、180fsのRMSジッタを12.7mWの消費電力で実現した(図3)。これは-244dBのFoMに相当し、小数点分周(フラクショナルN)PLLとしては世界トップクラスの性能である(図4、5)。
開発したPLLのブロック図

図1. 開発したPLLのブロック図

チップ写真と出力信号スペクトラム

図2. チップ写真と出力信号スペクトラム

位相雑音の測定結果

図3. 位相雑音の測定結果

従来のフラクショナルN PLLとの性能比較

図4. 従来のフラクショナルN PLLとの性能比較

従来のフラクショナルN PLLとのFoM比較

図5. 従来のフラクショナルN PLLとのFoM比較

発表予定

この成果は、6月14日~17日にハワイで開催される「The 2016 Symposium on VLSI Circuits」のセッション「Session 22 — Clock and Frequency Synthesis」で発表する。講演タイトルは「An 8.865-GHz -244dB-FOM High-Frequency Piezoelectric Resonator-Based Cascaded Fractional-N PLL with Sub-ppb-Order Channel Adjusting Technique(サブppb級チャネル調整技術を用いた8.865GHz -244dB FOM高周波圧電共振器ベースカスケードフラクショナルN PLL)」である。

論文著者

Sho Ikeda(池田翔、東工大 博士後期課程3年)、Hiroyuki Ito(伊藤浩之、東工大 准教授)、Akifumi Kasamatsu(笠松章史、NICT)、Yosuke Ishikawa(石川洋介、東工大 博士後期課程1年)、Takayoshi Obara(小原崇義、東工大 修士課程2年)、Naoki Noguchi(野口直記、東工大 修士課程2年)、Koji Kamisuki(紙透航志、東工大 修士課程2年)、Yao Jiyang(東工大 昨年度修了)、Shinsuke Hara(原紳介、NICT)、Dong Ruibing(董鋭冰、NICT)、Shiro Dosho(道正志郎、東工大 特任教授)、Noboru Ishihara(石原昇、東工大 特任教授)、Kazuya Masu(益一哉、東工大 教授)

用語説明

[用語1] 圧電共振器 : 圧電膜を利用した共振器であり、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)やSAW(Surface Acoustic Wave)共振器などがある。GHz帯で高いQ値[用語5]を有するため、低雑音発振器への利用が検討されている。

[用語2] 位相同期回路(Phase Locked Loop、PLL) : フィードバック制御により外部入力信号(参照信号、リファレンス)に位相が同期した別の周波数の信号を生成する電子回路。

[用語3] 性能指数(Figure of Merit、FoM) : 発振回路の性能を比較するための指標である。数値が低いほど性能が良い。FoM = 位相雑音 - 20log10(発振周波数/離調周波数) + 10log10(消費電力[mW])

[用語4] 水晶発振器 : 圧電材料である水晶を共振器に用いた発振器であり、無線通信システムなどで参照信号源として広く利用されている。高周波圧電共振器と比較して、周波数精度や安定性が桁違いに高いことが特徴である。

[用語5] Q値 : 共振回路の共振のピークの鋭さを表す値。この値が高いほどピークが鋭い。水晶共振器のQ値は数万程度、圧電共振器のQ値は数千程度、一般的なLC共振器のQ値は数十程度である。

[用語6] ジッタ : 信号の時間軸方向に発生する揺らぎ成分。雑音。

[用語7] フェムト(femto、f) : 国際単位系における接頭辞の一つで、10-15倍の量。

[用語8] dB(デシベル) : 電気工学等の分野で、物理量をレベル表記する際に使用される単位。

[用語9] 小数点分周(フラクショナルN)PLL : PLLに入力する参照信号の整数倍の周波数しか出力できない整数分周PLLに対して、参照信号の分数倍で出力信号を変化させることができるPLLであり、帯域内の任意の周波数が生成できるメリットがある。

[用語10] MEMS(Micro Electro Mechanical Systems) : シリコン基板などの上に微小な機械要素部品や電子回路などをまとめたデバイス。プリンタヘッドや加速度センサなどがある。

[用語11] ΔΣ変調器 : アナログデジタル変換器やデジタルアナログ変換器で利用されている技術である。小数点分周PLLでは、出力周波数を決める分周器の分周比をある一定の割合でランダムに切り替えて小数点分周を実現するために利用される。

[用語12] ppb : パーツパービリオン(parts per billion)の略であり、10-9倍。

問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所
准教授 伊藤浩之

Email : ito.h.ah@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5010 / Fax : 045-924-5022

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部 報道室

Email : publicity@nict.go.jp
Tel : 042-327-6923

東北の高校生と進路について考える合宿「夢見つけよう!東北」開催報告

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3月12日~14日、本学グローバルリーダー教育院に所属する学生や一橋大学、東京女子大学の学生などが主体となり、青森県立青森高校と宮城県立石巻高校の生徒を対象に2泊3日の合宿を行いました。

現状、高校生が大学受験の枠を越えて進路と向き合う機会は限られています。本活動の目的は、合宿中に行う研究室見学や座談会などを通して、世代間のボーダーを取り払い、高校生と大学生・大学院生が交流する場を作り、高校生が進路について一歩立ち止まって向き合う機会を作ることです。今回で2回目となる合宿では地方に焦点を当て、東北地方の2校、青森高校と石巻高校から生徒29名を招待しました。

1日目

研究紹介

研究紹介

本学の大学院生が主体となり、高校生に研究紹介を行いました。各自用意したプレゼン資料を用いて、高校生にもわかりやすく説明していました。普段耳にすることのない専門的な話に高校生も興味深く耳を傾けていました。

ワールドカフェ

ワールドカフェとは「カフェのようなリラックスした雰囲気で、気楽に、でも真剣味ある話をする場」のことです。テーマは「10年後に存在する職業」。高校生、大学生、大学院生、新卒社会人らが議論を交わしました。高校生も積極的に発言し、大学生があっと驚くアイデアがたくさんありました。

研究紹介

研究紹介

2日目

東工大大岡山キャンパス研究室見学

東工大大岡山キャンパス研究室見学

本学の大学院生が東工大大岡山キャンパスの研究室を案内しました。オープンキャンパスでもなかなか見ることができない研究室の内側です。高校生たちは興奮しながら目を丸くして研究室の中を見渡していました。

留学生と原宿を散策

留学生と原宿を散策

本学の留学生が高校生と一緒に原宿を散策しました。散策では英語だけを使い留学生とミッションに取り組みます。ミッションクリアのため、高校生も積極的に英語を使っていました。地元で英語を使う機会は少ないこともあり、今回のミッションを通してツールとしての英語の重要性、そしてグローバルを体感するきっかけとなりました。

座談会

座談会

夕食後の講義室で、参加者全員が自由に話し合いました。2日間行動を共にしたことで仲が深まり、進路や受験に関する相談で会話は大きく弾み、終了予定時間を大幅にオーバーするほど盛り上がりました。

3日目

東工大すずかけ台キャンパス研究室見学

東工大すずかけ台キャンパス研究室見学

本学の大学院生が理工系志望の高校生を東工大すずかけ台キャンパスに招待し、研究紹介を行いました。広大な研究室や最新の機械など、世界最先端の研究に触れました。

一橋大学国立キャンパスツアー

文系志望の高校生は一橋大学国立キャンパスを見学しました。一橋大学大学院商学研究科の守島基博教授による模擬講義を体験しました。テーマは「大学で学ぶ意義について」。高校と大学の学びの違いなどの話に高校生は注意深く耳を傾け、緊張しつつも積極的に質問をしていました。

参加した高校生から「たくさんの大学院生と交流し、将来や進路を決めるきっかけになった。これからも人とのつながりを大切にしていきたい」「大学を見に行くつもりだったけど、多くの人たちと接する中でたくさんのことを考えた。視野が広がるってこういうことだと思った」「志望理由とか大学のこととかもっともっと知らなければならないと思った」などの感想がありました。3日間を通して、高校生たちは実際に大学を内側から眺め、普段会話することのない多くの人たちに出会いました。高校生たちにとって、大学受験の先にある自分の進路について考える貴重な3日間となりました。

総括集合写真
総括集合写真

2015年9月から本格的な取り組みが始まった今回の合宿について、リーダーを務めた本学グローバルリーダー教育院の博士後期課程1年(当時)の新井達之さんと林聖雷さんは「社会の厳しさや資金集めなどの困難に直面し、様々な経験を積むことができた。この合宿には100人を超える多くの方々にご協力頂き、人をつなぐ大切さを実感した」と感想を述べました。高校生、大学院生双方への影響のみならず、高校の先生方やボランティアで参加した社会人のみなさんにとっても新しい気づきがあり、視野が広がる機会となったことを期待しています。

また、本イベント開催にあたっては、東工大基金の日本再生プロジェクト「ものつくり人材のすそ野拡大支援」事業とロート製薬株式会社、その他個人の方々による支援をいただきました。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

グローバルリーダー教育院 松木道場

Email : agl.jim@agl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3116

キングモンクット工科大学ラカバン校学長が東工大を訪問

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3月23日、タイのキングモンクット工科大学ラカバン校(KMITL)のスシャシャウィー・スワンサワット学長を団長とした視察団が東工大を訪問し、三島良直学長と懇談を行いました。懇談には、岡田清理事・副学長(企画・人事・広報担当)、丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)、大学マネジメントセンターの友石正彦教授らが同席しました。

キングモンクット工科大学ラカバン校学長が東工大を訪問

1992年に全学協定を締結以来、KMITLと東工大は研究者や学生の交流を長年にわたって行っています。また、KMITLは、東工大がタイ王国科学技術開発機構(NSTDA※1)及びタイの各大学と連携して2007年に設立した国際連携大学院TAIST-Tokyo Tech※2の連携大学の1つで、設立当初より自動車工学プログラムを開講しています。

三島学長の歓迎の挨拶の後、スワンサワット学長によるKMITLと日本との連携の歴史、KMITLの概要及び将来構想について説明がありました。

1960年に国際協力機構(JICA)の訓練センターとして設立されたKMITLは、タイ最大の理工系大学です。現在約24,800人の学生(うち4,600人は修士課程)がバンコクとチュムポーンにあるキャンパスで、工学、建築学、科学、産業教育、情報技術、農業技術、農産業、経営学といった分野で学んでいます。今後も革新センターやメディカルセンターの設立等が計画されており、さらなる発展が期待されています。

※1
National Science and Technology Development Agency
※2
Thailand Advanced Institute of Science and Technology-Tokyo Institute of Technology

懇談の様子

懇談の様子

懇談の様子

今回の来日では、日本の大学の学内情報ネットワークの構築と運用や人材育成に関する意見交換を目的の1つとしており、懇談の後半は東工大の情報ネットワークの構築と運用、人材育成システムについて、それぞれ、友石教授、岡田理事・副学長が説明を行い、KMITLの担当者と熱心に意見を交わしました。

懇談の最後には、両学長が両学の連携関係をさらに強化するために協力することを確認しました。

三島学長(左)とスワンサワット学長(右)
三島学長(左)とスワンサワット学長(右)

ファッションとテクノロジー?シンシナティ大学生が東工大生とディスカッション

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5月11日、米国シンシナティ大学※1の学生が東工大を訪問し、国際室のディスカッションイベントThink Aloud! LUNCHで東工大生と交流しました。

シンシナティ大学の参加者、ホープ准教授とSAGEの学生たち
シンシナティ大学の参加者、ホープ准教授とSAGEの学生たち

Think Aloud! LUNCHとは

Think Aloud! LUNCHは、留学生と日本人学生が気軽に触れ合える場です。環境・社会理工学院 融合理工学系のトム・ホープ准教授と一緒に科学や技術に関するテーマを英語で議論する、昼食時の自由参加のイベントです。毎週水曜日のお昼休みに大岡山キャンパスのHUB-インターナショナル・コミュニケーションズ・スペース※2で開催され、毎回様々な国籍の学生が参加しています。各回、「FBI vs Apple 」や「ドーピング」など、時事問題を含め興味深いトピックが与えられ、短いビデオクリップを観た後、グループにわかれて英語でディスカッションを行います。本イベントでは、自分の考えを他者に伝え、他者の考えに耳を傾けることで、深く考える能力を養うことを目的に、名前の通り、参加者はお弁当を食べながら議論しています。

シンシナティ大学とのThink Aloud! LUNCH

自由な発想が飛び交うディスカッション
自由な発想が飛び交うディスカッション

この日のテーマは「ファッション、文化とテクノロジー」。参加者は、「普段着る服をどう選んでいるか」、「テクノロジーを、どのように衣類に組み込むことができるか」などの話題で意見を交わしました。シンシナティ大学 会計・財政学専攻のイアン・ウェストさんは、米国では、ビジネスを専攻している学生は、普段からワイシャツにスラックスのようなビジネスカジュアルの格好をすることを紹介し、社会規範がファッションに与える影響を説明しました。これを受けて、東工大 土木・環境工学科の山守雅也さんは、就職活動の時期になると、日本中の学生が、各々の普段のファッションから一転して「リクルートスーツ」と呼ばれる保守的な白いワイシャツと黒いスーツに身を包むようになる、という日本の慣習を紹介しました。

テクノロジーの衣類への応用については、ヘルスケアから再生可能エネルギーまで、幅広い分野でアイデアが出ました。シンシナティ大学 グラフィックデザイン専攻のキャサリン・フェントンさんは、心臓発作の発症を察知して、救急車を呼ぶ機能をもつ衣類を提案しました。同じくシンシナティ大学 環境・地学専攻のサラ・アルダニさんは、運動エネルギーや太陽エネルギーを利用して、スマートフォンを充電できる衣類のアイデアを披露してくれました。

普段以上に集まった参加者
普段以上に集まった参加者

話題は、ファッションとテクノロジーがポップカルチャーに与える影響にも及びました。シンシナティ大学の学生の中には、BABYMETAL(ベビーメタル)やバーチャル歌手の初音ミクといった、日本のミュージックグループについて詳しい人も多数いることがわかり、会場は大いに盛り上がりました。お互いの国の文化を知り、日本人と外国人の垣根なく楽しめる内容でした。

イベント終了後は、SAGE(東工大国際交流学生会)によるキャンパスツアーが行われました。

※1
シンシナティ大学:アメリカ合衆国オハイオ州の都市部に位置する、1819年創立の世界トップレベルの研究大学。2014年以来、毎年東工大を訪れており、Think Aloud! LUNCHへの参加は3回目。
※2
HUB-インターナショナル・コミュニケーションズ・スペース:略称HUB-ICS。西9号館1階に設置されている、言語やコミュニケーション、国際化に興味がある学生と教職員が利用できる空間。English Cafe等のイベントも開催されている。

お問い合わせ先

国際部国際事業課国際基盤グループ

Email : ics@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2014

東京工業大学社会人アカデミー グローバル産業リーダー育成プログラム Enterprise Engineeringコースのご案内

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東京工業大学 社会人アカデミーでは、産業のグローバル化に対応できる企業人材を育成することを目的として、グローバル産業リーダー育成プログラム(GINDLE―Global INDustrial LEader)を設置しております。

その中のコースとして、業務に効果的なITの活用をお考えの情報システムベンダー/ユーザ企業の情報システム関連部署の部課長レベル・シニアコンサルタントを対象にEnterprise Engineeringコースを開講いたします。

企業経営者や専門家等とともに議論し、演習を行うことで、ビジネスにおけるIT活用のための実践力を修得します。

開催概要

Enterprise Engineeringコース(前期)

戦略的思考に欠かせない「デザイン思考」、「ビジネスアナリシス」、「エンタープライズ・アーキテクチャ」の視点から、講義と演習を行います。

受講期間
2016年9月2日(金)、3日(土)、9日(金)、10日(土)、16日(金)、17日(土)
定員
20名(※最小開催人数10名)
受講料
19万8千円(税込)

Enterprise Engineeringコース(IT-CMF)

IT-CMF(IT Capability Maturity Framework)についての解説及び演習を行います。一定の成績を修められた方には、「Tier3」講座が受講可能となる「IT-CMF associate」の受験資格が付与されます。

受講期間
2016年9月23日(金)、24日(土)
定員
10名(※最小開催人数5名)
受講料
8万1千円(税込)

受講場所

〒108-0023 東京都港区芝浦3-3-6 東京工業大学 田町キャンパス・イノベーションセンター410教室

お申込期間

2016年6月13日(月)~8月13日(土)(締切日必着)

申込方法および詳細

東京工業大学 社会人アカデミーWEBサイトouterをご確認ください。

「Enterprise Engineeringコース」ポスター表

「Enterprise Engineeringコース」ポスター裏

お問い合わせ先

東京工業大学 社会人アカデミー事務室

E-mail : jim@kyoiku-in.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8722、03-3454-8867  FAX : 03-3454-8762

東工大生命理工学院創設記念式典を開催

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東工大生命理工学院は、学院創設記念式典を5月31日にすずかけ台キャンパスの大学会館で開催し、来賓、学内外関係者ら約110名が出席しました。

来賓・記念講演者及び生命理工学院の執行部メンバー
来賓・記念講演者及び生命理工学院の執行部メンバー

記念式典では、三島良直学長及び生命理工学院の三原久和学院長の挨拶に続き、科学技術振興機構の相澤益男顧問(本学名誉教授、元本学学長)、筑波大学の永田恭介学長、バイオインダストリー協会の塚本芳昭業務執行理事・専務理事から祝辞が述べられました。

挨拶をする三島良直学長
挨拶をする三島良直学長

挨拶をする三原久和学院長
挨拶をする三原久和学院長

祝辞を述べる科学技術振興機構の相澤益男顧問・本学名誉教授・元本学学長
祝辞を述べる科学技術振興機構の
相澤益男顧問・本学名誉教授・元本学学長

祝辞を述べる筑波大学の永田恭介学長
祝辞を述べる筑波大学の永田恭介学長

祝辞を述べるバイオインダストリー協会の塚本芳昭業務執行理事・専務理事
祝辞を述べるバイオインダストリー協会の
塚本芳昭業務執行理事・専務理事

続いて、生命理工学院の太田啓之副学院長による「植物リピドミクスの時間軸への展開から広がる新たな生命理工学」、山口雄輝教授による「生命理工における創薬を目指した研究」の2つの記念講演が行われました。

式典後の交流会では、蔵前工業会(東工大同窓会)の本房文雄業務執行理事・事務局長、株式会社みらい創造機構の岡田祐之代表取締役、コスモ・バイオ株式会社の櫻井治久代表取締役社長から祝辞が述べられ、芝田政之理事・副学長(総務・財務担当)・事務局長、関根光雄元大学院生命理工学研究科長による挨拶が続きました。

和やかな雰囲気のなか歓談し、学院創設を祝うとともに産学間の交流を深めました。

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

鈴木大地さんが「先端技術大賞」ニッポン放送賞を受賞

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大学院理工学研究科 電子物理工学専攻の鈴木大地さん(博士後期課程2年)が、「第30回独創性を拓く 先端技術大賞」の学生部門にてニッポン放送賞(優秀賞)を受賞しました。

先端技術大賞とは、科学技術創造立国の実現に向け、優れた研究開発成果をあげた全国の理工系学生と企業の若手研究者、技術者を表彰するものです。 表彰式は2016年7月28日(木)東京・元赤坂の明治記念館にて行われます。

受賞論文
「非破壊・非接触検査における新産業創造への挑戦~ナノカーボンを用いたテラヘルツ帯フレキシブル撮像デバイスの開発と応用~」
指導教員
河野行雄准教授、小田俊理教授

受賞コメント

鈴木大地さん
鈴木大地さん

この度は先端技術大賞ニッポン放送賞という栄誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に感じております。これを励みとし、本研究成果が出来るだけ早く社会に貢献できるようより一層研究に邁進する所存です。多大なるご支援を頂きました先生方、研究メンバーの方々、家族に感謝を申し上げます。

鈴木大地さん(右)と指導教員の河野行雄准教授(左)
鈴木大地さん(右)と指導教員の河野行雄准教授(左)

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に新たに発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer


希少元素を使わずに赤く光る新窒化物半導体を発見

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希少元素を使わずに赤く光る新窒化物半導体を発見
―マテリアルズ・インフォマティクスと実験の連携による成果―

要点

  • 発光デバイスや太陽電池への応用に期待
  • マテリアルズ・インフォマティクスが物質探索を加速できることを実証
  • 窒素化合物に限らず新物質開拓の新たな道を開く

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所/元素戦略研究センターの大場史康教授、平松秀典准教授、細野秀雄教授らは京都大学大学院工学研究科の日沼洋陽特定助教、田中功教授らと共同で、希少元素[用語1]を含まず、赤色発光デバイスや太陽電池への応用が期待できる新しい窒化物半導体を発見した。最先端の第一原理計算[用語2]を用いたスクリーニングによる効率的な物質選定と高圧合成実験[用語3]の連携により、見いだした。

この成果は窒化物半導体の応用の可能性を広げるだけでなく、先進計算科学に基づいたマテリアルズ・インフォマティクス[用語4]により物質探索を加速できることを実証したものであり、本アプローチは今後の材料開発において有力な手法になると期待される。

研究成果は6月21日に英国の科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」に掲載された。

研究の背景

わが国の「元素戦略プロジェクト」[用語5]が標榜するように、地球上に豊富に存在する元素により構成され、卓越した機能はもちろん、安価で高い環境調和性をもつ新物質・新材料の開拓が急務である。物質・材料探索では、元素の種類と組成の無限の組み合わせの中で可能な限り広く探索し、そこから有望な候補を的確に絞り込むための指針と手法が要となる。

近年の計算科学の進展とスーパーコンピュータの演算能力の向上により、物質の安定性や特性を高精度かつ網羅的に理論予測できるようになってきた。このような先進計算科学、さらにはデータ科学や合成・評価実験に基づいたスクリーニングにより物質・材料開発の加速を目指した「マテリアルズ・インフォマティクス」が世界各国で盛んになっている。

数ある物質の中でも、窒化物は半導体としての応用に適した電子・光学物性だけでなく、地球上に豊富に存在する窒素の化合物というメリットをもつ。しかし、現在実用化されている窒化物半導体は、緑色や青色、紫外線の発光ダイオードに用いられる窒化ガリウムと、窒化インジウムまたは窒化アルミニウムとの固溶体にほぼ限定されている。また、既存の赤色や黄色の発光ダイオードには、高コスト、希少、あるいは使い捨てや廃棄が容易でない元素が使用されている。

希少元素を含まず、伝導キャリア(電子や正孔)の輸送特性に優れ、さらには太陽光をはじめ、人類にとって有用な光の波長領域のバンドギャップ[用語6]をもつ窒化物半導体が開発できれば、赤色の発光デバイスや太陽電池など、窒化物半導体のより広範な応用が期待できる。

研究成果

東工大の大場教授らの研究グループは、最先端の第一原理計算を用いたマテリアルズ・インフォマティクスと高圧合成実験を連携させて、新しい窒化物半導体を探索した。様々な候補物質を対象に計算スクリーニングを実行し、特性および安定性の観点から有望な物質を選び出した。伝導キャリアの輸送に有利な電子構造の観点から、亜鉛を含む3元系窒化物半導体に対象を絞り、既知および仮想的な物質を含む約600種類の候補物質のリストを作成した。

その候補物質を対象に、格子振動[用語7]に対して結晶が安定に保たれること、3元系状態図における競合相に対して安定またはわずかに準安定であること、バンドギャップをもつこと、有効質量[用語8]が小さいことを条件に、半導体として有望な物質を絞り込んだ。(図1)

第一原理計算を用いた窒化物半導体のスクリーニングの概念図

図1. 第一原理計算を用いた窒化物半導体のスクリーニングの概念図

計算スクリーニングにより、図2に示すような21種類の窒化物半導体を選定した。このうち物質群Iに示すのは既知の半導体であり、これらが的確に選ばれたことは今回のスクリーニング手法の妥当性を示す結果である。IIについては合成の報告はあるものの、半導体としての応用が未開拓である。そして、IIIは合成の報告すらない新物質である。このように、多様なバンドギャップをもつ有望な窒化物半導体を計算スクリーニングにより提案した。

計算スクリーニングにより選定された21種類の窒化物半導体

図2. 計算スクリーニングにより選定された21種類の窒化物半導体

物質群IIIの中でも、図3に示すCaZn2N2は、Ca、Zn、N(カルシウム、亜鉛、窒素)という豊富な元素のみで構成されるだけでなく、以下の計算結果から特に有望な新物質といえる。

1.
発光や吸光に適した直接遷移型[用語9]のバンド構造を有する。バンドギャップは1.8 eV(電子ボルト)であり、赤色の発光が期待できる。またSrZn2N2、CaMg2N2などの類縁窒化物との固溶体化により、バンドギャップを1.6 eV~3.3 eVの範囲で制御可能である。
2.
電子の有効質量が電子静止質量の0.2倍、重い正孔の有効質量が0.9倍と小さく、電子や正孔の輸送に有利である。これらは、例えば窒化ガリウムの電子の有効質量が電子静止質量の0.2倍、重い正孔の有効質量が2.0倍であることと比べても優れた値であることが分かる。
3.
p型とn型の両方にキャリアの制御が可能である。つまりシリコンやヒ化ガリウムのような既存の半導体と同様なデバイス構造が利用できる新半導体である。
第一原理計算により予測されたCaZn2N2の結晶構造と特性

図3. 第一原理計算により予測されたCaZn2N2の結晶構造と特性

そこで、このCaZn2N2を合成実験のターゲットとした。合成方法としては、3元系状態図の計算よりCaZn2N2が高い窒素分圧下において安定であることを踏まえ、高圧合成を選択した。図4に示すように、計算から予測された通り1,200 ℃、5.0 GPa(約5万気圧)の高温・高圧条件下においてこのCaZn2N2相が得られ、その結晶構造は予測されたものと等しいことが分かった。

また、実験で得られた格子定数[用語10]と計算による予測値との差は0.3%と小さく、今回の理論予測が高精度であることを実証した。さらに拡散反射[用語11]測定およびフォトルミネッセンス[用語12]測定により、バンドギャップは1.9 eVと理論予測にほぼ一致する値に見積もられ、直接遷移型のバンド構造を示唆する急峻な光吸収スペクトルの立ち上がりと赤色発光を観測した。

高圧合成により得られたCaZn2N2試料のX線回折パターン、吸収スペクトル、フォトルミネッセンススペクトルおよび赤色発光の写真

図4. 高圧合成により得られたCaZn2N2試料のX線回折パターン、吸収スペクトル、フォトルミネッセンススペクトルおよび赤色発光の写真

今後の展望

11種類の有望な新3元系窒化物に関する理論予測と、CaZn2N2の実験的な実証に関する以上の結果は、窒化物半導体のこれからの応用の可能性を広げるだけでなく、マテリアルズ・インフォマティクスにより物質探索を加速できることを示す実例である。今後、探索範囲を拡張して計算スクリーニングを実行し、より多様な新物質を選定し、実験により検証することで、新物質のさらなる開拓が期待できる。

本研究は、文部科学省元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>東工大元素戦略拠点(TIES)、科学技術振興機構イノベーションハブ構築支援事業「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI2I)」、科学研究費補助金新学術領域研究「ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開」の助成により行われた。計算には東京工業大学スーパーコンピュータTSUBAME2.5および京都大学スーパーコンピュータACCMSを用いた。

用語説明

[用語1] 希少元素 : 地球上の存在量が少ないか、技術的・経済的な理由で抽出困難な元素。

[用語2] 第一原理計算 : 量子力学の基本原理に基づいた計算。物質の性質を支配する電子の状態だけでなく、安定性や構造を決定する際の指標となる全エネルギーが得られ、結晶や分子の構造を予測できる。

[用語3] 高圧合成実験 : 数万気圧(数ギガパスカル)の高い圧力下での試料合成実験。

[用語4] マテリアルズ・インフォマティクス : 計算科学、データ科学、合成・評価実験及びこれらの連携手法により膨大な数の物質の評価を行い、その結果に基づいて新物質や新機能を開拓することを目指したアプローチの総称。

[用語5] 元素戦略プロジェクト : 物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し利用する観点から材料研究のパラダイムを変革し、希少元素の代替や新材料の創製につなげることを目標とする文部科学省の研究プロジェクト。

[用語6] バンドギャップ : 半導体において電子がとることができないエネルギー範囲であり、吸光波長の閾値や発光波長に関わる。

[用語7] 格子振動 : 量子効果や熱による格子の振動。

[用語8] 有効質量 : 物質中の伝導電子やホールの見かけ上の質量であり、値が小さいほど高い輸送特性が期待できる。

[用語9] 直接遷移型 : 価電子帯の上端と伝導帯の下端の電子状態が同じ波数ベクトルをもつ半導体のバンド構造であり、発光や吸光に適している。

[用語10] 格子定数 : 結晶格子の各辺の長さを与える定数。

[用語11] 拡散反射 : 物質からの光の反射から半導体のバンドギャップを見積もる手法。

[用語12] フォトルミネッセンス : 半導体のバンドギャップより高い光子エネルギーの光を照射し光を吸収させ、逆遷移の発光を観察する手法。

論文情報

論文タイトル :
Discovery of earth-abundant nitride semiconductors by computational screening and high-pressure synthesis
(和訳:豊富な元素で構成される窒化物半導体の計算スクリーニングと高圧合成による発見)
著者 :
Yoyo Hinuma, Taisuke Hatakeyama, Yu Kumagai, Lee A. Burton, Hikaru Sato, Yoshinori Muraba, Soshi Iimura, Hidenori Hiramatsu, Isao Tanaka, Hideo Hosono, and Fumiyasu Oba
(日沼 洋陽、畠山 泰典、熊谷 悠、バートン・リー、佐藤 光、村場 善行、飯村 壮史、平松 秀典、田中 功、細野 秀雄、大場 史康)
掲載誌 :
Nature Communications (ネイチャー・コミュニケーションズ) 7, 11962 (2016).
DOI :

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葉緑体機能の制御に重要な新たな還元力伝達経路―二つの経路の協調が光合成や生育に必須―

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要点

  • 還元力伝達経路は、光合成をはじめとする葉緑体の機能調節に重要な役割。
  • NADPHを起点とする還元力伝達経路の生理的な重要性を解明。
  • 光合成生物を用いた物質生産などの応用研究への展開に期待。

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の吉田啓亮助教と久堀徹教授は、植物細胞内の機能制御に重要な還元力伝達経路として、これまで知られていたもののほかに、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH[用語1])を起点とする経路が重要な役割を担っていることを発見した。

光合成の場である植物の葉緑体には、酸化力や還元力が酵素タンパク質に伝達され、タンパク質自体を酸化あるいは還元することによってその機能を調節するシステムがある。これまでは、光合成電子伝達系から電子を受け取るフェレドキシン[用語2]というタンパク質を起点とする還元力伝達経路がその主要経路であると考えられていた。吉田助教らは、これ以外にNADPHを起点とする還元力伝達経路が重要な役割を担っており、この二つの経路が協調して機能することが、植物の光合成や生育そのものに必須であることを明らかにした。

光合成反応は地球上最大の規模で行われる光エネルギー-化学エネルギー変換反応であり、植物による物質生産のかなめである。絶え間なく変動する自然環境の下で植物が効率よく安定して光合成反応を維持していくために、葉緑体の生理機能は柔軟に、そして精密に調節されている。

今回の研究成果は、この調節に重要な酸化力と還元力の伝達による葉緑体機能調節のネットワークを新たに解明したもので、光合成生物を用いた物質生産など、今後の応用研究への展開にも有効な重要な知見である。6月22日(現地時間)発行の「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」電子版に掲載された。

研究の背景と経緯

植物の光合成は、光エネルギーを利用して炭水化物を生産する、いわば地球上のあらゆる生命を支える重要なエネルギー変換反応である。植物の緑葉の細胞の中には、葉緑体と呼ばれる細胞小器官があり、ここが光合成反応の場となっている(図1A)。個々の葉緑体の内部には、チラコイド膜とよばれる積層した生体膜があって、この膜に埋め込まれている光合成電子伝達系の働きによって光エネルギーが化学エネルギー(エネルギーを蓄積する化合物であるアデノシン三リン酸=ATPと、還元力を蓄える化合物であるNADPH)に変換されている。

次に、葉緑体の膜以外の部分(ストロマ)に存在する酵素群が働いて、大気中の二酸化炭素を原料として糖など炭水化物が生産されている。二酸化炭素を糖に変換する反応経路は、13種類の酵素が連続して働く複雑な反応で、発見者の名前を取って、Calvin-Benson(カルビン・ベンソン)回路とよばれている(図1B、2A)。Calvin-Benson回路が働くためには、上記のATPとNADPHが使われるが、この回路の酵素反応はいずれも光エネルギーを直接には必要としていない。そこで、以前はこの回路全体が“暗反応”と呼ばれ、明反応と呼ばれた電子伝達反応とは区別されていた。ところがその後の研究で、Calvin-Benson回路の少なくとも4つの酵素は光照射によって電子伝達系が働くとそれに連動して活性化される、ということがわかった。つまり、光を必要としないと考えられていた暗反応という定義が、実体に合わなくなってしまった。このため、暗反応、明反応という呼び名は使われなくなった。葉緑体内には、この“光照射のシグナル”をCalvin-Benson回路の酵素などに還元力として伝達し、葉緑体の機能全体を制御している還元力伝達経路がある。

このような還元力伝達経路は生物の細胞内に一般に見られるもので、系全体の酸化力あるいは還元力の蓄積レベルに応じて、特定の酵素が酸化されたり還元されたりするのを制御し、その酵素の活性を調節するシステムである。多くの場合、酵素は酸化されると活性を失い、還元されるとその活性が高くなる。このような制御システムで中心的に働いているのは、チオレドキシン[用語3]というタンパク質である。葉緑体では、光合成の電子伝達系から還元力を受け取ったチオレドキシンは、標的となる酵素に還元力を渡して、その酵素を活性型にする。そして、これまで30年以上、フェレドキシンからFTR[用語4]、チオレドキシンを介して標的酵素に到る単純な一本道の還元力伝達経路が制御システムとして働いていると考えられてきた(図2A)。

ところが、2000年に緑色植物であるシロイヌナズナの全ゲノムDNAの塩基配列が解読されて以来、植物細胞の中には、チオレドキシンやチオレドキシンに類似したタンパク質が合計20種類以上もあることがわかってきた。また、これらのタンパク質に還元力を伝達する上流の酵素も複数種類あることがわかった。さらに、チオレドキシンが還元力を渡す相手の酵素を解析する技術が発達し、葉緑体の中では実にさまざまな酵素がチオレドキシンから還元力を受け取っていることも報告されている。すなわち、葉緑体の還元力伝達経路は、これまで考えられていたような単純な一本道ではなく、複雑に分岐した“ネットワーク”によって構成されているらしいというわけである(図2B)。

イネのゲノム解析に基づいて、チオレドキシンの還元に関わるNADPH-チオレドキシン還元酵素(NTR)が2004年に3つ発見され、それぞれA,B,Cと命名された。このうち、3番目のNTRC[用語5]は、他の酵素と違った特徴を持っていた(図3)。このタンパク質は、植物細胞の細胞質にあるNTRと機能・構造が同じ部分とチオレドキシン部分が直列につながったハイブリッドタンパク質で、NADPHが蓄えた還元力を他の酵素に直接伝達することができるという、面白い葉緑体タンパク質だったのである。吉田助教らは緑色植物のNTRCの生化学・生理学的な特性を調べ、NTRCを通る還元力伝達経路とフェレドキシンを起点とする経路の違いを比較した。

光合成の場である葉緑体の模式図

図1. 光合成の場である葉緑体の模式図

(A)植物の葉/細胞/葉緑体。チラコイド膜の電子顕微鏡写真は村上悟先生(東京大学名誉教授・故人)の提供による。
(B)葉緑体チラコイド膜の電子伝達系と葉緑体ストロマのCalvin-Benson回路の模式図。

葉緑体の還元力伝達システムの模式図

図2. 葉緑体の還元力伝達システムの模式図

(A)以前から知られていた葉緑体の還元力伝達システム。FTR/Trxシステムによる一本道の還元力伝達経路により、光照射のシグナルが還元力として標的酵素に伝達される。Calvin-Benson回路を構成する4つの酵素(GAPDH, FBPase, SBPase, PRK)は還元されて活性化される。
(B)新たに明らかになった葉緑体の還元力伝達ネットワーク。さまざまな還元力伝達因子(Trxファミリータンパク質やTrx様タンパク質など)といろいろな葉緑体の生理機能に関わる標的酵素によって構成されている。還元力経路をネットワーク状に組織化することによって、葉緑体機能は柔軟に、かつ、精密に調節されていると考えられる。

NTRCの分子構造と反応の模式図。タンパク質のアミノ基末端側(図ではNと表示)にNADPH-チオレドキシン還元酵素部分(NTRd)、カルボキシル基末端側(図ではCと表示)にチオレドキシン部分(TRXd)を持つ。NTRdに結合したフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)がNADPHから還元力を受け取り、NTRdとTRXdがそれぞれ持っているふた組のシステインのペアに順次伝達する。そして、最終的に標的酵素が還元される。

図3. NTRCの分子構造と反応の模式図

タンパク質のアミノ基末端側(図ではNと表示)にNADPH-チオレドキシン還元酵素部分(NTRd)、カルボキシル基末端側(図ではCと表示)にチオレドキシン部分(TRXd)を持つ。NTRdに結合したフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)がNADPHから還元力を受け取り、NTRdとTRXdがそれぞれ持っているふた組のシステインのペアに順次伝達する。そして、最終的に標的酵素が還元される。

研究成果

吉田助教らは、まず、NTRCから還元力を受け取る可能性のあるタンパク質を調べるために、NTRCをクロマトグラフィー担体に固定し、葉緑体から抽出したタンパク質を結合相手のタンパク質群として用いてアフィニティークロマトグラフィー(生体物質を単離・精製する手法)を行った。その結果、すでにチオレドキシンの相手として報告されていたタンパク質のほか、NTRCが特異的に還元力を渡すタンパク質を見出した。さらに、この方法で見つかった相手のタンパク質について、NTRCから還元力がどのように伝達されるのかを試験管内で詳しく調べた。その結果、NTRCは、還元力の伝達速度や特異性の点で、これまで知られていたチオレドキシンとは異なる特長を持っていることを発見した(図4A)。

このNTRCの特長は、植物が生きる上でどのように重要なのだろうか。吉田助教らは、NTRCを欠損させた植物を育ててみたところ(図4B)、NTRCを欠損した植物の葉は、緑色にならなかった。そして、NTRCとFTRの両方を欠損させると、ほとんど育たなくなった。これらのタンパク質を欠損した植物の光合成効率などを調べてみると、NTRCを欠損させた植物では、光合成システムが全般的に機能不全に陥っているということがわかった。

これまで、葉緑体では光合成の電子伝達系が生み出す還元力を直接利用するFTRとチオレドキシンを経由する経路が、葉緑体の機能調節を行う唯一の還元力伝達経路である、というのが光合成研究分野の共通認識だった。しかし、今回の研究によって、葉緑体内ではNTRCも独自の機能を持っており、両者が協調して働くことが植物の葉緑体機能の調節にきわめて重要であるということがわかった。

FTR/Trx経路とNTRC経路はそれぞれ異なる還元力伝達経路によって協調的に葉緑体の機能調節と植物の生長を支える。

図4. FTR/Trx経路とNTRC経路はそれぞれ異なる還元力伝達経路によって協調的に葉緑体の機能調節と植物の生長を支える。

(A)TrxファミリーとNTRCの異なる標的選択性の模式図。還元力伝達効率の違いを矢印の太さで示した。赤矢印は、今回の研究で明らかになった経路。括弧内に各標的酵素が関与する生理機能を示している。
(B)シロイヌナズナのFTRとNTRC変異株、および、二重変異株。

今後の展開

葉緑体内の新しい還元力伝達経路の発見は、植物が進化の過程で獲得した環境応答戦略の新たな一面を明らかにしたものといえる。植物の機能制御に関わるこのような経路の発見は、将来、葉緑体の機能制御システムを人為的に改変・最適化することによって葉緑体機能を増強するなど、植物を利用した物質生産などの今後の応用研究にも役立つ重要な情報である。

この研究の主要部分は、現在、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の久堀教授らの研究チームが取り組んでいるシアノバクテリアを用いた物質生産の基礎研究として実施された。また、研究の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金・若手研究(B)(代表:吉田啓亮助教)と基盤研究(B)(代表:久堀徹教授)のサポートを受けている。

用語説明

[用語1] NADPとNADPH : ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(酸化型は正電荷を帯びるのでNADP+とも書く。還元型はNADPHと表記される)。葉緑体内では光合成の電子伝達系の還元力によってNADPHが生じるほか、ペントースリン酸回路のグルコース6-リン酸脱水素酵素の働きでも生産される。

[用語2] フェレドキシン(Fd) : 分子内に2Fe-2S型の鉄硫黄クラスターを持ち、還元力を鉄の価数の変化として分子内に貯めることが出来る。

[用語3] チオレドキシン(Trx) : 生体内の還元力伝達に中心的な役割を果たすタンパク質。生物界に普遍的に存在し、Trp-Cys-Gly-Pro-Cysというよく保存されたアミノ酸配列の活性部位モチーフを持っており、この二つのCys(システイン)のチオール基の酸化還元状態の変化によって還元力の伝達を行う。

[用語4] フェレドキシン/チオレドキシン還元酵素(FTR) : 電子伝達タンパク質であるフェレドキシンからチオレドキシンに還元力を受け渡す還元力伝達タンパク質。

[用語5] NADPH-チオレドキシン還元酵素C(NTRC) : 2004年、Serrato A. J.らによって報告された新規のNADPH依存的に標的酵素を還元する還元力伝達タンパク質(J. Biol. Chem. (2004) 279, 43821-43827)。その後、植物葉緑体やシアノバクテリアなど、光合成生物が特異的に持っていることがわかった。

論文情報

論文タイトル :
Two distinct redox cascades cooperatively regulate chloroplast functions and sustain plant viability
著者 :
Keisuke Yoshida, Toru Hisabori
掲載誌 :
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2016, in press
DOI :

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6月24日9:00 論文掲載日に誤りがあったため、修正しました。

東工大の研究者らが日本セラミックス大賞を受賞

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本学、科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の細野秀雄教授、神谷利夫教授と川副博司名誉教授が、「無機電子機能材料の創出と応用に関する研究」で、28年間受賞者のいなかった日本セラミックス大賞を受賞しました。

後列右から川副博司名誉教授、神谷利夫教授、細野秀雄教授
後列右から川副博司名誉教授、神谷利夫教授、細野秀雄教授

日本セラミックス協会の表彰で最高位の「日本セラミックス大賞」は、セラミックスの産業において発明、開発あるいは実用化等又はセラミックスの科学・技術に関する発見等において独創性のある画期的な業績を挙げた研究者に授与されます。28年前に銅酸化物のセラミックス超伝導体の研究で世界をリードした東京大学の研究グループと、セラミックスターボチャージャを開発した日本特殊陶業株式会社と日本ガイシ株式会社の研究者に贈られて以来、受賞者が出ていませんでした。

28年ぶりになるセラミックス大賞の授賞式は、6月3日に同協会の総会で行われました。セラミックスの主原料である透明な酸化物を対象に、独自の物質設計指針に基づき、透明p型半導体、大きな電子移動度をもつ透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)などを創出し、紫外発光ダイオード、IGZOに代表される高移動度薄膜トランジスタや酸化物CMOSなどの電子デバイスを実現することで、透明酸化物エレクトロニクスの領域を切り拓いたことが評価されました。

受賞者代表 細野秀雄教授のコメント

この研究は、旧応用セラミックス研究所において、川副、細野、神谷の3代、20余年に亘り実施してきたものです。先ごろ急逝された宇田川重和名誉教授をはじめ、すずかけ台と大岡山キャンパスの先生方のご推挙の賜物です。本学のセラミックスの研究実績は、世界のトップレベルにありますが、新しい潮流や分野融合が急速に進んでいますので、果敢に挑戦が不可欠な状況です。引き続き、研究に精進したいと思います。

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日高一義教授に「情報処理学会フェロー」の称号授与

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本学環境・社会理工学院 日高一義教授に、情報処理学会より2015年度情報処理学会フェローの称号が授与され、6月3日に認証式が行われました。

日高一義教授
日高一義教授

情報処理学会フェローは、情報処理および情報通信等の分野で貢献した情報処理学会会員に対して付与される称号です。その貢献を称えるとともに、その貢献が広く周知されるよう社会的認知度を高めることを目的としています。「情報工学、情報科学、情報学、コンピュータサイエンス、および情報通信工学などの学術研究」「情報教育」「情報技術・装置・システム・ソフトウェアにおける研究、開発、普及、および標準化」「情報産業の振興」「学会の運営」の5つの分野があり、各分野で学術的または産業的発展・普及・振興などに著しい貢献をした会員に本称号が授与されます。本年度は、日高教授のほか、14名に授与されました。

対象業績
「情報科学技術におけるサービスサイエンス新領域の確立と日本のコミュニティー創出に対する貢献」

サービスを科学の対象ととらえ、サービス産業および製造業のサービスプロセスに適応してイノベーションを起こすというサービスサイエンスの基礎概念を構築し、その具体的な社会展開を推進しました。また、情報科学、数学、経済学、心理学など、複数領域における科学的知見を統合した新領域としてのサービスサイエンスの必然性と重要性を提唱し普及させたほか、サービスサイエンスに関わる文部科学省、科学技術振興機構、日本学術振興会の事業等に貢献し、情報科学技術の新たな展開にも大きく寄与しました。

日高教授のコメント

フェロー認証状を手にする日高教授
フェロー認証状を手にする日高教授

サービス科学に関わる経済産業省、文部科学省、科学技術振興機構、日本学術振興会の事業・研究等に携わらせていただき、情報科学・技術の新たな展開に貢献させていただけたことは、研究者としての大きな喜びであります。近年注目されているIoT、Big Data、そしてAIも、その価値が最大限に発揮できる適応領域はサービス領域であると思われます。その意味ではサービス科学の役割は今後も重要性を増すに違いありません。情報科学・技術を中心とした様々な学術領域の統合による知的社会基盤の再設計に今後とも貢献できればと思っております。

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第44回My Study Abroad 留学報告会」開催報告

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5月10日、今年度第1回目となる「My Study Abroad留学報告会」を開催しました。東工大の国際室が募集するプログラムにより留学した学生によるこの報告会は、授業期間中の昼休みに、月1~2回開催されています。

今回は、海外派遣プログラムの紹介と参加した学生による体験談の発表が行われました。

まずはじめに、東工大グローバル人材育成推進事業の実践型海外派遣プログラムの一つであるTokyo Tech-AYSEAS※1について、プログラム担当者が紹介しました。本プログラムは、東工大生が東南アジアの国に赴き、現地・近隣諸国の大学生とともに企業、政府機関、大学、国際協力機構(JICA)等の施設を訪問し、インターカルチュラルコミュニケーションを通してグローバル化へのモチベーションの向上を図るものです。国籍・文化・言語・専門等バックグランドの異なる学生および教員による対話形式の講義が行われます。事前学習、約10日間の東南アジア訪問、レポート作成まで、6月~10月の約5カ月間のプログラムで、今年はタイを訪問し、「アジアから世界へ(From Asia to the World)」 について考えます。

Tokyo Tech-AYSEASの概要
Tokyo Tech-AYSEASの概要

次に、ASPIRE※2リーグ及び同リーグの活動について、プログラム担当者が説明しました。ASPIREリーグは香港科技大学(中国)、韓国科学技術院(韓国)、南洋理工大学(シンガポール)、清華大学(中国)及び東工大の5大学をメンバーとして2009年に設立されました。世界トップレベルの理工系大学ネットワークを構築することにより、学生・研究者間のより一層の学術交流促進を目指しています。ASPIREリーグでは毎年各加盟大学の副学長及び研究者等が集うASPIREフォーラムや、学部生を対象とした「ASPIRE アンダーグラジュエイト リサーチアカデミー(ASPIRE Undergraduate Research Academy(UGRA))」、大学院生を対象とした「ASPIREフォーラム学生ワークショップ(ASPIRE Forum Student Workshop(STWS))」などの学生向けの交流プログラムを開催しています。

学生発表者

  • 大学院理工学研究科 国際開発工学専攻のラジャリ・マハラジャンさん(博士後期課程1年)STWS2015に参加
  • 物質理工学院 材料系の望月泰英さん(修士課程1年)UGRA2015に参加
  • 理学院 化学系の徳永唯希さん(修士課程1年)UGRA2015に参加
  • 工学部 機械知能システム学科の申東哲さん(学士課程4年)UGRA2015に参加

ASPIREフォーラム学生ワークショップ2015について報告するラジャリ・マハラジャンさん
ASPIREフォーラム学生ワークショップ2015について報告する
ラジャリ・マハラジャンさん

ラジャリ・マハラジャンさんは、香港科技大学で開催されたSTWS2015について報告しました。このワークショップは、開催校が設定したテーマに沿った講義や、見学が盛り込まれた学生交流プログラムです。昨年は、ASPIREフォーラムと同時期に香港科技大学で開催された「イノベーション&起業家トレーニングキャンプ(Innovation and Entrepreneurship Training Camp)」の講義等も受講しました。

トレーニングキャンプでは、起業に必要な事業プランの立て方や新しい価値を生み出すイノベーションの考え方、プレゼンテーションスキルなどを学び、ワークショップでは、他大学の専門分野が異なる学生たちとグループワークを行い、昨年のテーマ「スマートグリーンシティ(Smart Green Cities)」に関する提案をまとめて各加盟大学の副学長の前で発表を行った他、自由時間には香港観光も満喫したと話しました。

UGRA2015参加時の経験を語る望月さん、徳永さん、申さん
UGRA2015参加時の経験を語る望月さん、徳永さん、申さん

続いて、望月さん、徳永さん、申さんはUGRA2015について合同で報告しました。UGRAは、テーマに沿った講義やグループワーク、施設見学等が盛り込まれた交流プログラムで、昨年はシンガポールの南洋理工大学で開催されました。徳永さんをはじめとした本学からの参加学生は全員、UGRAのハイライトである個人発表にむけて渡航前に指導教員等に発表内容や構成、英語表現について指導をうけ、準備を重ねて挑みました。また、専門分野の異なる講義や学生の発表は、大変興味深かったと語りました。申さんは、募集要項には「4年生が望ましい」とあっても、2・3年生でも学科内で許可が取れれば参加できることや、テーマに関連性があればどの専攻でも参加できることについてアドバイスしました。望月さんは、UGRAは4日間という短い日程であるが、各国の学生と交流する時間も十分に設けられていることなどについてコメントしました。

Tokyo Tech-AYSEASやASPIREのプログラムで育まれた友情や経験が東工大生の成長の糧となることを期待しています。

留学報告会は授業期間中に毎月開催されています。事前申込不要、飲食が可能ですので、興味のある方は、ご参加ください。

※1
Tokyo Tech-AYSEAS(エイシアス):東工大・アジア理工系学生派遣交流プログラム。Tokyo Tech-Asia Young Scientist and Engineer Advanced Study Programの略称。
※2
ASPIRE:アジア地域における理工系5大学からなるコンソーシアム。Asian Science and Technology Pioneering Institutes of Research and Educationの略称。

東工大基金

この海外派遣プログラムは東工大基金により実施されています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

国際部留学生交流課派遣担当

Email : hakenryugaku@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7645

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