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TAIST須山チャレンジプロジェクトの表彰式を初めて開催

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7月21日、タイ王国パトゥムタニー県タイランドサイエンスパーク内のタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)において、須山チャレンジプロジェクト試作品コンテストの表彰式が開催されました。

本コンテストは、TAIST-Tokyo Tech(TAIST)の賛助会員である本学同窓生の須山英三氏(1953年卒)の「TAIST学生が活動的、創造的、協力的になれるための活動に寄付金を活用して欲しい」という希望から、「須山チャレンジプロジェクト」と名付けられた取組みの一環として今回初めて企画され、6月22日に開催されたものです。現代社会が直面する問題に対し、科学技術の力と創造的なアイデアで解決策を提案することをテーマに、TAISTの「自動車工学」「組込情報システム」「環境工学」の3つのプログラムを横断して編成された4チームが参加して行われました。当日は、須山氏ほか、東工大の関係教員がテレビ会議システムを通じて日本からコンテストに出席しました。

参加した4チームからは、「デジタル合成写真識別システム」「交通事故緊急救援要請システム」「壁登りロボット」「アーチェリー擬似体験システム」と、いずれも異なる専門性が融合したユニークな試作品が提案されました。審査の結果、最優秀賞には、高層ビルや船体、大きな建造物の検査や掃除に活用されることを目指した「壁登りロボット」が、努力賞には「アーチェリー擬似体験システム」がそれぞれ選ばれました。

表彰式は、後日TAISTの修了式と同時に行われ、須山チャレンジプロジェクトの紹介の後、須山氏に代わり本学工学院 西原明法特任教授が最優勝賞チームに目録を授与し、来賓からは盛大な拍手が送られました。

東工大、NSTDA、タイの四大学(キングモンクット工科大学ラカバン校、キングモンクット工科大学トンブリ校、タマサート大学シリントーン国際工学部、カセサート大学)の連携により、2007年に設立された国際協働による大学院です。

西原特任教授と、最優秀賞チームメンバー
西原特任教授と、最優秀賞チームメンバー

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TAIST-Tokyo Techは東工大基金によりサポートされています。

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お問い合わせ先

国際部国際事業課 TAIST事務室

E-mail : taist@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2237


腸内細菌ボードゲーム「バクテロイゴ」が学び体験フェアに登場

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8月20日、21日の2日間、東京国際フォーラムにて開催された学び体験フェア「マナビゲート2016」に、本学がブース出展しました。ブースでは生命理工学院の山田拓司准教授、及びJCHMの本学学生パートナーによる「腸内細菌ってなんだ?」が企画され、参加者は自らが腸内細菌となり個体の増殖を目指す対戦型ボードゲーム、「バクテロイゴ」の試遊を楽しみました。

東工大のブース
東工大のブース

学び体験フェアマナビゲートは、子ども目線でアレンジした大学の知的財産を、子どもたちに「見て・聞いて・触れて」体験してもらう夏休みイベントです。NPO法人学びの支援コンソーシアム主催、文部科学省後援のもと開催され、今年度は本学を含め12大学が出展し、土日の2日間で約22,000人が来場しました。

腸内細菌陣取りバトル!!バクテロイゴ

今回ブースに登場した「バクテロイゴ」は、腸内細菌のしくみを楽しく学べるボードゲームで、大学院生命理工学研究科(現:生命理工学院)の学生たちが山田拓司准教授と考案したものです。ヒトの腸内には、1,000種100兆個体の細菌が共生していると言われています。近年、腸内細菌の解析技術が飛躍的に向上し、これらの細菌を網羅的に調査する事が可能になり、様々な発見が相次いでいます。 「バクテロイゴ」はそうした目に見えない細菌たちの活動や仕組みを、子どもたちに分かりやすく学んでもらうべく開発されました。

プレイヤーはそれぞれ特徴の異なる4種類の腸内細菌の中から、好きなものを1つ選びます。そして「分裂」カードを使って自身を増殖させたり、「蠕動(ぜんどう)運動」によって腸内を移動したり、あるいは「抗生物質」を投与してライバルの細菌を倒したりと様々な戦略を用いて、自身の細菌が腸内で最多数を獲得できるように競います。

4種類の細菌に分かれて対戦
4種類の細菌に分かれて対戦

「バクテロイゴ」は対象年齢が9歳からのゲームですが、その多様なカードを用いた生存戦略の奥深さには、思わず大人でもゲームに入り込んでしまうものがあります。当日は、マナビゲート、及び同時開催された私立学校展(進路説明会)に訪れた子どもたちのみならず、同卓した保護者も対戦に熱中している様子が伺えました。

遊び方を説明する山田准教授と学生パートナー
遊び方を説明する山田准教授と学生パートナー

試遊会終了後には、ヒトの身体に住んでいる細菌たちが一目で分かる「ヒト細菌フローラマップ」をお土産に配布しました。「トイレに貼って勉強してね!」と学生がフローラマップを渡すと、子ども達は大事そうにマップを抱えていきました。今回のイベントでは多くの方に本学のブースにお越しいただき、またゲームを通じて腸内細菌の研究に興味を持っていただくことができました。

山田拓司准教授のコメント

たくさんの小学生やその保護者の方々に参加してもらい有意義な会となりました。

腸内細菌研究、そして東京工業大学に理解を深めてもらえたならば幸いです。

また、暑い中、アシストしてくれた学生達の熱意に心から感謝しています。

※1
JCHM(Japanese Consortium for Human Microbiome、日本人腸内環境の全容解明とその産業応用プラットフォーム)とはヒトの腸内には 1,000種100兆個体の微生物が共生していると言われ、 それらの腸内細菌の乱れは多くの疾病に関わっている事が知られています。 欧米では腸内細菌解析の重要性が早くから認識され、 大型予算が割り当てられ多くの研究者が携わっていることから、日本においても日本人腸内環境の全容解明は急務と言えます。そのため、JCHMでは、日本人腸内環境の全容 解明をテーマに掲げ、 日本人腸内微生物データーベース構築による「日本人固有の腸内環境及び腸内代謝系の発見」と 「疾病マーカーの発見」を目指したプロジェクト活動を推進しています。

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E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

超精密集積で新たな機能性材料に成功―発光体やセンサー、医薬材料に期待―

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要点

  • ビスマスを利用した精密集積型発光分子を開発
  • 発光強度が減少する濃度消光[用語1]を抑えることで強度制御と固体発光を達成
  • 発光要素の自在な出し入れで発光のスイッチング機能を発現

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 ハイブリッドマテリアル研究ユニットおよび化学生命科学研究所の山元公寿教授、神戸徹也助教らは、発光体を1つの分子内に最大60個まで導入した新たな発光体の開発に成功した。発光体は集積中にある濃度になると濃度消光を起こす問題があったが、これを解決し、発光強度の自在な制御や固体発光、スイッチング特性を持つ機能性の高い発光体を構築した。

この研究は発光分子の精密集積が機能性発光材料に応用できることを実証したものであり、本アプローチは今後の材料設計の有力な手法になると期待できる。

この研究は東京工業大学「ハイブリッドマテリアル研究ユニット(リーダー:山元公寿)」で実施した。研究成果は9月22日(現地時間)発行のドイツ化学誌「Angewandte Chemie, International Edition(アンゲヴァンテ・ケミー国際版)」オンライン版に掲載された。

研究成果

東京工業大学の山元教授らの研究グループは、当グループが独自開発していたデンドリマー[用語2]と呼ばれる規則的に枝分かれを繰り返す樹状構造をした高分子を利用することで、発光体を精密に配置した分子を作ることに成功した。分子内に配置する化学種として塩化ビスマスに着目した。この塩化ビスマスがデンドリマー内に精密に集積され発光特性を発現することで、制御可能な発光デンドリマーの構築が実現した。

このデンドリマーは金属を取り込める場所を予め設計したものであり、塩化ビスマスを中心部から順番に、決められた場所に結合させて作った。これにより濃度消光を抑え、増やした分だけ発光強度を高めることに成功した(図1)。 構成要素であるビスマスの錯体[用語3]は固体状態で濃度消光するのに対し、この発光デンドリマーは固体状態という極限の高濃度状態でも発光を保持した(図2)。

発光体の分子内精密集積による強度制御

図1. 発光体の分子内精密集積による強度制御

デンドリマー集積による固体状態での発光特性

図2. デンドリマー集積による固体状態での発光特性

この発光はデンドリマー内でビスマスの錯体を形成することで発現する。そのため、ビスマスとデンドリマーを自在に結合/切断することができる。この特性に基づき、ビスマス添加量の調整や酸化還元反応[用語4]を駆使することで、発光強度の自在かつ可逆な制御を可能にした。またこの可逆性にはデンドリマーのカプセル特性が寄与していることが分かった。カプセル特性は内部に取り込んだ物質を外部の物質から保護する効果であり、本研究で利用したデンドリマーが取り込んだビスマスを外部から保護できることを見出した(図3)。

ビスマス錯体の可逆結合特性を利用した発光特性のスイッチング

図3. ビスマス錯体の可逆結合特性を利用した発光特性のスイッチング

背景と研究の経緯

発光材料は基礎・応用共に活発に研究されている分野である。これまで様々な発光分子が開発されてきたが、今後はその機能化が求められている。例えば、我々の日常では光を強くしたい場合、光源を複数集めればその発光強度は強くでき、集める個数により強さを制御できる。しかしこれを分子の世界で行うと単純には上手くいかない。望みの場所に配置出来ないことに要因がある。これは発光体それぞれの強度を制御できないだけでなく、発光分子間の距離が近すぎる場合に生じる濃度消光も引き起こす。即ち発光体を一つ一つ適切な場所に配置できれば濃度消光を抑制でき、強度制御可能な機能性発光体の構築が期待できる。

こうした研究背景に対して、山元教授の研究グループは中心部から段階的に精密に金属を配置できる独自開発したデンドリマーが利用できると考えた。当グループはこれまでに白金や鉄、チタンなど様々な金属がこのデンドリマーに精密に配置できることを見出してきた。今回はビスマスの特性を活かすことで、この精密デンドリマーに発光特性を持たせることを目的とした。さらに本デンドリマーは構造を制御して構築した画一的な樹状高分子であるのみならず、剛直な骨格を持っている。従って分子内に1つずつ独立して発光分子を配置できるため濃度消光が抑制でき、発光強度が制御できると期待された。

今後の展開

ビスマスイオンの集積による発光体は、新発光材のみならずセンサーとしても利用できるため、生体の重金属解毒防御機能(メタロチオネイン)などの解明に役立つ。

さらにこの集積手法は種々の発光分子に応用でき、ガラスやポリマーへ塗布することで高輝度発光材料が作成できる。特に魅力的なのは、微弱発光の分子に対しても集積させることで強度を補強できる点である。これは光センサーや光スイッチの新たな構築法として期待できる。

用語説明

[用語1] 濃度消光 : 発光体の濃度を上げていくと、ある一定の濃度以上で発光強度が減少する現象。

[用語2] デンドリマー : コアと呼ばれる中心分子と、デンドロンと呼ばれる側鎖部分から構成される樹状構造をした高分子である。高分子であるが単一の構造を有するという特徴がある。本研究で利用したデンドリマーは、デンドロンが金属を取り込めるように設計したものであり、内部から段階的に金属を取り込むことができる。

[用語3] 錯体 : 金属塩と有機物からなる分子。

[用語4] 酸化還元反応 : 電子の授受を伴う化学変化過程。電子を失う化学反応を酸化、電子を受け取る反応を還元と呼ぶ。

論文情報

掲載誌 :
Angewandte Chemie International Edition
(アンゲヴァンテ・ケミー国際版)
論文タイトル :
Bismuth Complexes in Phenylazomethine Dendrimers: Controllable Luminescence and Emission in the Solid State
(和訳:フェニルアゾメチンデンドリマーの中のビスマス錯体:発光の制御と固体発光)
著者 :
T. Kambe, A. Watanabe, T. Imaoka, K. Yamamoto
DOI :

お問い合わせ先

科学技術創成研究院
教授 山元公寿

Email : yamamoto@res.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5260

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

ダブリン大学トリニティカレッジ学長が東工大を訪問

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プレンダガスト学長(前列左)と三島学長(前列右)

プレンダガスト学長(前列左)と三島学長(前列右)

7月12日、アイルランド ダブリン大学トリニティカレッジのパトリック・プレンダガスト学長一行が東工大を訪問し、三島良直学長と懇談を行いました。懇談には、関口秀俊副学長(国際連携担当)らが同席しました。

ダブリン大学の学長による日本訪問は今回が初めてです。

懇談はまず、三島学長が東工大の概要と本年4月に本学が導入した教育システムについて説明を行い、続いて、プレンダガスト学長がダブリン大学の歴史や特色とともに、ナノサイエンスや生物医学、神経科学、人文科学の研究所等について話し、将来的な連携について意見交換を行いました。

プレンダガスト学長は、ダブリンがその立地や言語等の利点から世界でも有数のビジネス拠点として認知されていること、ダブリン市内やアイルランド国内にはグーグルやアップルなど、750社以上の世界企業がヨーロッパ本部を設置しており、ダブリン大学がそれらの企業との強いつながりを持っていることを紹介しました。また、同大学が学生の起業や研究の事業化を推進していることを話しました。

懇談の後半では、両学長は両学の連携を深めるためには、学生交流や共同研究を通した研究者交流が重要であることを確認し、特に両学が注力している、工学、環境、エネルギー分野の研究について意見交換を行いました。三島学長は同分野の本学の研究成果を応用した例として、環境エネルギー・イノベーション(EEI)棟を、プレンダガスト学長は同大学が新設したE3(工学、エネルギー、環境)研究所をそれぞれ紹介しました。懇談後、一行はEEI棟を見学しました。

ダブリン大学は1592年に設立されたアイルランド最古の大学で、国内トップの総合大学です。世界122か国から来た、約17,000人の学生がダブリン市内中心部のキャンパスで、芸術・人文・社会科学、工学・数学・科学、健康科学の3学部、24専攻で学んでいます。また、新設された「トリニティアジア研究センター」では、アジア研究が行われ、現在約30人の学生が日本の言語と文化を学んでいます。同大学の図書館には、600万冊の蔵書と地図、音楽、歴史的な文書のコレクションがあり、珍重される中世の写本コレクションの中には、世界的評価を受ける18世紀の「ケルズの書」も含まれています。

懇談の様子

高大連携サマーチャレンジ2016開催報告

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13年目の夏

大学レベルの講義内容に高校生がグループあるいは個人で立ち向かい、「未知の分野への挑戦から何かをつかみ、何かを生みだす」ユニークな夏の合宿「サマーチャレンジ2016」が開催され、2004年以来13回目の開催となりました。しっかりとした基礎学力の上に培った発想力・独創性・グループワーク力こそが、未来の科学技術を担う人材の必要条件と考え、高校生のうちからそうした力を身につけてほしいと意図して実施しています。

今年は初めての屋外スケッチ体験、自由研究チャレンジなど新機軸もあり、運営面では合宿途中でのグループメンバーの交代といった新しい試みも行われました。参加校12校、参加生徒数64名、うち女子生徒数は31名と、ついにほぼ半数となりました。64名の高校生の真剣なまなざしの先に、あっと驚く創意工夫にあふれた科学の冒険のかずかずが広がり、たくさんの知的冒険と出会いの花が咲いた嵐山の森の3日間でした。

2016実施記録

  • 日時:2016年8月2日~4日
  • 場所:埼玉県比企郡嵐山町 国立女性教育会館
  • 参加生徒:64名
    (東工大附属36名、お茶大附属9名、学芸大附属10名、協力参加校9名)
  • 参加教員:41名
    (東工大教員26名、引率高校教員9校15名)
  • 事務職員:10名
  • 合計:115名

チャレンジ1
コラムランド

工学院 経営工学系 山室恭子 教授

事前に各自が執筆してきた短い文章を、匿名の状態でディスカッションして評価しあうという、東工大の名物講義をそのまま持ち込んで、初対面のメンバー同士のアイスブレイクとしました。

今年のお題は「青」。空を見上げたり青春を謳歌したりと個性を競うなか、意表を衝いたスポーツドリンクネタが一等賞でした。自分たちが書いた文章を議論することで、メンバー同士の親しみも湧き、個性を認めあってのテイク・オフをどの班も達成できたようです。

チャレンジ2
大切な人に見せたい情景 ―ムチャ振りと戦うのが建築家です―

環境・社会理工学院 建築学系 塚本由晴 教授

蝉しぐれの中でのスケッチ
蝉しぐれの中でのスケッチ

「外に出て日本庭園周辺でスケッチしてきてね、20分後に再集合」

いきなりのムチャ振りから始まります。お題は「大切な人に見せたい情景」。虫除けスプレーを噴射して、てんでに緑まぶしい戸外へ行き、大急ぎでスケッチして戻ってくると、ムチャ振りその2が待っていました。

「その情景を室内から見られる部屋を設計してください。制限時間10分」

大騒ぎしながらも、そこは高校生ならではの柔軟性を発揮します。外の道がそのまま室内に入ってくる奇抜な設計だったり、大切な人は将来生まれてくる自分の子どもだから低い視線で見られる窓にしましたというほのぼのした発想だったり、ユニークなアイディア続出の作品発表会となりました。

誰のための建築であるかということから起案する重要性をしっかり体得したチャレンジでした。

チャレンジ3-4
おそうじ用品にひそむ秘密 ―なつかしの自由研究気分で―

物質理工学院 材料系 上田光敏 准教授、篠崎和夫 教授

マイクロスコープで凝視
マイクロスコープで凝視

初日の夜から翌日午前へとつながる長丁場のチャレンジです。今年のグッズは何かなと、わくわくしながら会場入りした高校生たちを出迎えたのは、なんとおそうじグッズのラインナップでした。スポンジ、クロス、そしてスプレー。

身近なモノを分解し、その材質や機構がどうやって機能に結びつくのかを考える毎年恒例のチャレンジ「身近なグッズを分解してみよう」、通称「分解チャレンジ」が今年は変身して、便利な日用品の「なぜ?」を考える自由研究へと進化しました。みるみる汚れの落ちるスポンジ2種類、ぐんぐん水を吸い取るクロス3種類、独自の視点で各製品の違いを解明します。

各班、様々なアイディアを出しあって、吸水力をチェックしたり、繊維の構造をマイクロスコープで覗き込んでまとめたり、成果を余すことなく翌日のチャレンジで発表しました。

チャレンジ5
コンビナトリアル化学って? ―未知の物質の発見を加速する―

物質理工学院 応用化学系 大友明 教授

初めて聞く「コンビナトリアル・ケミストリー」とは、無限にある組み合わせへの挑戦ともいえる、コンピュータを駆使して、大量にある材料を一挙に合成し、すばやく評価しようという最先端テクノロジーです。分子を自由に組み合わせて、地球上にまだ存在しない新しい物質をつくりだすということに期待が膨らみます。

そして、この並列合成と高速評価という発想法を、身近な何かの解明に応用してみるという課題が出されました。

各班でアイディアを出し合って勝負したところ、「味覚」と「芸術」に答えが集中しました。数値化・定量化できないものを何とかつかまえようとする新しい手法ですが、身近なものを解明してみることから、とても難しい研究・技術に触れることができた気がします。

クッキングを例にした図
クッキングを例にした図

チャレンジ6
重力波をつかまえろ! ―宇宙買い物ゲーム―

理学院 物理学系 宗宮健太郎 准教授

「ちゃれんじ銀行札」で宇宙プロジェクト始動
「ちゃれんじ銀行札」で宇宙プロジェクト始動

課題が発表された瞬間に、ロケットが打ち上がった時のような興奮に室内が沸きました。

各班に「ちゃれんじ銀行札」で150億円ずつ配布され、重力波検出器を設計することになりました。つくる場所を地上にするか地下にするか、地下にしてトンネルを掘ると費用も時間もかかりますが、より大きなブラックホールを見ることができます。また、鏡の材質は石英ガラス、サファイア、シリコンなど色々な素材が考えられます。レーザーの熱に強いのはサファイアですが、シリコンだと大きいから揺れないという利点があります。各班内で、鏡チーフ、防振チーフにシステムエンジニアと役割を分担して費用を計算して、最適の組み合わせの発見を競います。

大規模な科学プロジェクトを成功させるための、いわば大人のお買い物ゲームですが、ブラックホール連星を見るために、遠い宇宙のかなたへ人類の叡智のアンテナを伸ばすがごとき壮大な夢にあふれた真夏の夜の冒険ともいえるチャレンジでした。

チャレンジ7
サイキンのサイキン事情 ―小さくてスゴいやつら―

生命理工学院 生命理工学系 山田拓司 准教授

ヒト腸内細菌は個人によって異なっている

細菌は、いたるところに生息し、その量たるや、地球全体のバイオマスの半分に達すると推測されるくらいですが、なんと99パーセントの細菌は培養できないので、どんな振る舞いをするか分からないのです。そうした未知の細菌世界について、土をまるごとDNA抽出して遺伝子配列を得たあと、コンピュータにかけて、どんな細菌がどれくらい生息するかを推計するバイオインフォマティクス(生命情報学)という革命的な突破口があらわれました。そこで、ニューヨークの地下鉄全駅の細胞分布をみて、ここからどんな情報が得られるかを考えてみました。

最先端のバイオ探究へいざないつつ、データの海に溺れずに、つねに「なにがしたいの?」「それは、していいことなの?」と研究目的と倫理観を意識し続ける重要さを学びました。

高校教員の眼

参加いただいた高校教員は15名。全員から評価シートを通して、たくさんの有益な御意見をいただくことができました。一部をご紹介します。

コラムランド

  • 作品がどれも素晴らしく、生徒の自由な発想力の高さを知ることができました。
  • 事前準備を行い、コメントを付けて返却することまで行う、手のこんだアイスブレイクでした。

大切な人に見せたい情景

  • 絵の得意でない生徒ものめり込んでいました。講義室から飛び出してという企画自体もチャレンジでした。
  • 先生の、生徒のマイナス的な思考を全てポジティブにかえてしまう自由な発想に感銘を受けました。

おそうじ用品にひそむ秘密

  • 生徒たちが、分担してどんどん調べて行く姿は新鮮でした。探究の初期段階で、生徒に経験させたいと思いました。
  • 時間は少し短いかも知れませんが、あえてダラダラ作るよりも限られた時間の中でできることをすることに意味があるでしょう。

コンビナトリアル化学って?

  • 化学の実験というと一つ一つ慎重にやるものと思っていましたが、並列にたくさんやるというおどろきが入ったすばらしい講義でした。
  • 非常に難しいテーマであったと思いますが、生徒の柔らかな発想にびっくりしました。

重力波をつかまえろ!

  • 重力波検出というタイムリーな話題でもあり、いきなりの150億円でもあり、刺激的なチャレンジでした。
  • 物理学の計算もしながら,限られた予算の中で最高のものを探す経営的な側面がゲーム的で新鮮でした。

サイキンのサイキン事情

  • 職業研究者として何のために研究をするのか、ということを考えさせることができて良かったです。
  • 技術の革新によって、それまで考えられなかった研究やビジネスチャンスが広がるという実感ができました。

チームワークの11班
チームワークの11班

笑顔の集合写真「次は大岡山で会おう!」
笑顔の集合写真「次は大岡山で会おう!」

「微生物ゲノム×地域」で食のブランディング―ぐるなびとの共同研究講座が本格始動

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東京工業大学と株式会社ぐるなび(以下ぐるなび)は、日本の食文化を支える微生物を科学し、食のブランディングを実現することをテーマとした「ぐるなび食の価値創成 共同研究講座」(以下、本研究)を開設し2016年10月より本格始動します。

本研究では、日本食の中でも健康によいとされる「発酵食品」、中でも味噌・漬物・日本酒など多くの発酵食品に影響を与える「乳酸菌」と「麹菌」に着目し調査を実施します。また、調査した発酵食品に関する微生物ゲノム情報、食品機能性、栄養性、文化的背景等多次元情報を蓄積し発酵食品のデータベース化を目指します。また、日本の各地域には気候・地質・歴史に裏付けられた食文化が根付いており、地域の伝統食品や伝統料理はその土地の風土を色濃く反映しています。

ぐるなびがこれまでに構築してきた地方自治体や飲食店・生産者などのネットワークを活用して各地方での調査研究を進め、現地の食に新たな価値を発見することで伝統食や地域をブランドアップすることを目指します。 現在、研究モデル地域を検討中です。

このデータベース化が実現することで、食材・食品を機能的価値や健康への効果など科学的根拠で評価し、ブランディングすることが可能になります。また、ゲノム解析情報を活用した食品の開発や、その土地に行かなければ食べることができない地域固有の菌(微生物)で作られた食材・食品をめぐる観光ツアーの実施など、地域活性化や2020年に向け日本の優れた食文化を世界に発信することが可能になると予測しています。

研究のイメージ

初年度は、地域の風土や伝統に根ざした発酵食品から健康効果や消費者需要を勘案した分析対象の選定を行い、その後2019年までに、選定した食品の発酵に関わる微生物のゲノム解析、それによる食品のキャラクタライズや食文化の調査、データ化、キャラクタライズされた食材・食品の機能的価値や健康効果の評価を実施する予定です。さらに、本研究の第2段階として、データベース化した食品由来の微生物が人の常在菌にどのように影響を与えるかも含めて評価していく方針です。

研究のステップ

市場ニーズの調査、研究テーマ設定

  • Step 0
    地域の風土や伝統に根ざした発酵食品から健康効果や消費者需要を勘案した分析対象の選定

実験、データ解析(仮説と検証)

  • Step 1
    選定した食品の発酵に関わる微生物のゲノム解析、食品のキャラクタライズや食文化の調査、データ化
  • Step 2
    キャラクタライズされた食材・食品の機能的価値の評価

学術界・産業界へのアウトプット・連携

  • Step 3
    学術論文の発表、シンポジウム開催
    ぐるなびインフラを活用した食材プロモーション、健康メニュー考案、生産者や地域行政との商品開発など

共同研究講座の概要

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

株式会社ぐるなび コミュニケーション部門 広報グループ

Email : pr@gnavi.co.jp
Tel : 03-3500-9700

ラン藻による有用物質の大規模生産に道を拓く―高価な誘導剤使わずに遺伝子発現を誘導するネットワークを構築―

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概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の久堀徹教授と肥後明佳特任助教(JST・CREST研究員)らの研究グループは、合成生物学[用語1]的手法により原核光合成生物であるラン藻(シアノバクテリア[用語2])の遺伝子発現を高効率に誘導するシステムを開発した。人工的に改変した遺伝子発現ネットワークをラン藻に導入することで、今までよりも低濃度の遺伝子発現誘導剤を使用、もしくは誘導剤を用いなくても、長時間・強力に遺伝子発現を誘導することに成功した。

ラン藻は、その代謝系を遺伝子操作することで有用物質を生産することの出来る生物として期待されている。肥後特任助教らの研究は、ラン藻の代謝系の改変を実際的に行えるようにするもので、今後、ラン藻を用いて産業上有用な物質を生産する大規模なシステムの開発に道を拓く成果である。同研究グループは今年初め、ラン藻内で生産された含窒素化合物を細胞外に放出させることに成功したが、誘導剤は高価で、持続時間が短いという欠点があった。今回はこの問題を解決したもので、ラン藻による有用物質生産の実用化に一歩近づいたといえる。

本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」研究領域(研究総括:松永是 東京農工大学・学長)の支援を受けて実施したもので、研究成果は、9月22日発行の米国化学会の「ACSシンセティックバイオロジー(ACS Synthetic Biology)」誌電子版に掲載された。

研究の背景と経緯

二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みの一環として、光合成生物を用いてエタノールや油などの有用物質を生産させる研究が近年注目を集めている。これは、生物の代謝系を本来の経路とは異なる方向に働かせることで、その生物が作る代謝産物を適当な形で蓄積させたり細胞外に放出させるなどの方法で、いわば横取りする技術の開発である。微細藻類[用語3]の一種であり、原核光合成生物であるラン藻は、緑色植物が持っている光合成を行う細胞内小器官である葉緑体の起源となった生物と考えられている。培養の簡便性、速い生育速度、整備された遺伝子改変技術などの長所により、ラン藻を利用した有用物質生産の実現には期待が大きい。

ところが、目的の物質をラン藻に作らせるために行う、遺伝子の破壊や導入といった代謝系の改変がラン藻の細胞にとっては大きな負荷となり、代謝速度が低下して目的物質の生産性が落ちるというケースが少なくない。そこで、スイッチを入れた時のみ、代謝経路を切り替えて、目的物質を生産させる技術の開発が待たれていた。肥後特任助教らは、糸状性ラン藻Anabaena sp. PCC 7120(アナベナ[用語4])においてこのような代謝系の改変を実現するための遺伝子発現制御技術を開発し、実際にラン藻内で生産された含窒素化合物を細胞外に放出させるという成果をあげ、今年初めに発表した(Higo, A. et al. Plant Cell Physiol. (2016) 57: 387-396)。

しかし、この先行研究で遺伝子発現誘導に用いた薬剤は高価であり、また、光感受性であるため光合成生物のような光環境で生きている生物に作用させても誘導持続時間が短いといった欠点があった。そこで、肥後特任助教らは拡張性に優れている機能性RNAを用いて、人工的な遺伝子発現ネットワークをデザインし、これまでの発現誘導系を改良することにした。

研究成果

先行研究では、転写[用語5]抑制因子TetR(抗生物質であるテトラサイクリン[用語6]で機能を制御できる)を利用して、遺伝子発現誘導システムを構築した。今回の研究では、誘導剤であるテトラサイクリンにより遺伝子発現が誘導される(スイッチを入れる)と、TetRの遺伝子発現を抑制する機能を阻害するRNAアプタマー[用語7]の発現が誘導されるという遺伝子発現ネットワークを構築した(図1)。

今回、構築された遺伝子発現誘導系
図1.
今回、構築された遺伝子発現誘導系。通常は、転写抑制因子TetRの抑制能が誘導剤aTcによって解除され、遺伝子発現制御の指標として用いたGFPの発現が誘導される。本システムでは、TetRの機能を阻害するRNAアプタマーの作用により、ポジティブフィードバックループが形成され、通常のシステムより効率のよい発現誘導が実現される。また、TetRの発現は図に示すように硝酸塩やアデニンの有無によって制御されているので、柔軟な遺伝子発現誘導が可能である。

すなわち、遺伝子発現が誘導されればされるほどTetRの機能が阻害され、遺伝子発現がより誘導されやすくなるというポジティブフィードバックループ回路をラン藻の細胞内に構築したわけである。これにより、従来のシステムと比較して、1/10量の誘導剤で長期間、目的遺伝子の発現を誘導することに成功した。さらに、転写抑制因子であるTetRの発現量をアデニンリボスイッチ[用語8]や培地の窒素源の有無により制御する遺伝子発現ネットワークを構築したことで(図1)、高価なテトラサイクリン系の誘導剤を用いなくても、スイッチを入れることができるシステムを実現した。実験では緑色蛍光タンパク質であるGFPの細胞内での発現をコントロールし、細胞が蛍光を持つようになる様子を観察した(図2)。

構築したシステムによる遺伝子発現誘導
図2.
構築したシステムによる遺伝子発現誘導。アデニンやテトラサイクリン誘導体のaTcによって、GFP蛍光が誘導されている。自家蛍光は、ラン藻が光合成を行うために必要なフィコビリタンパク質[用語9]由来のものである。

今後の展開

今回の研究では、機能性RNAを適切に組み合わせた回路をデザインすることで既存のシステムを改良し、効率のよい柔軟な遺伝子発現誘導系をラン藻細胞内に構築した。この技術をさらに発展させれば、多細胞生物であるラン藻・アナベナの、炭素固定(光合成)と窒素固定という異なった代謝の役割を持つ細胞それぞれで、より精密に遺伝子発現制御による代謝改変を行うことも可能になり、ラン藻を用いた大規模物質生産の実現につながることが期待される。

用語説明

[用語1] 合成生物学 : Synthetic Biologyの訳語で、生体部品を新たにデザインしたり適切に組み合わせたりすることで、目的の機能を持つシステムを構築する、ボトムアップ型の研究分野である。

[用語2] ラン藻(シアノバクテリア) : 光合成を行う原核光合成生物で細菌の一種。光合成を行うチラコイド膜という膜構造を細胞内に持つ。原始の時代に真核生物に食べられて細胞内共生したことにより、緑色植物の葉緑体の起源となった生物と考えられている。

[用語3] 微細藻類 : ラン藻のような原核光合成生物から緑藻など真核光合成生物まで、主に単細胞の藻類の総称。物質生産に利用できる生物として注目されている。

[用語4] アナベナ : ラン藻の一種で、光合成を行う栄養細胞が数珠状につながった多細胞性である。窒素源の乏しい条件で培養すると数珠状の細胞のところどころにヘテロシストと呼ばれる特殊な細胞が形成される。この細胞で窒素分子を直接アンモニアに変換する窒素固定反応が行われる。

[用語5] 転写 : 遺伝子発現では、DNAに保存されている遺伝子情報から、mRNAが合成され(転写という)、このRNAの情報をもとにアミノ酸が数珠状につながってタンパク質が合成される(翻訳という)。

[用語6] テトラサイクリン : 放線菌が作る抗生物質のひとつで、微生物のタンパク質合成を阻害する。このため、細菌感染症の治療薬として用いられているが、近年、耐性菌(テトラサイクリンが効かない菌)が増えている。

[用語7] アプタマー : 特定のタンパク質や低分子に特異的に結合するDNAやRNA、ペプチドである。

[用語8] アデニンリボスイッチ : リボスイッチは特定の低分子が結合するアプタマー部分と、下流の遺伝子発現を制御するプラットフォーム部分からなる。枯草菌由来のアデニンリボスイッチは、核酸を構成する塩基のうちの一つであるアデニンがアプタマー部分に結合すると、プラットフォーム部分の構造変化を介し、下流の遺伝子の発現が抑制される。

[用語9] フィコビリタンパク質 : ラン藻などが光合成を行う際、光を集めるために必要なタンパク質。青色をしており、ラン藻(藍藻)がラン藻と呼ばれる由縁である。身近な食品にも着色料として使用されている。

論文情報

掲載誌 :
ACS Synthetic Biology
論文タイトル :
Designing synthetic flexible gene regulation networks using RNA devices in cyanobacteria
著者 :
Akiyoshi Higo, Atsuko Isu, Yuki Fukaya, Toru Hisabori
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所
教授 久堀徹

Email : thisabor@res.titech.ac.jp

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所
特任助教 肥後明佳

Tel : 045-924-5234 / Fax : 045-924-5268

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

9月29日13:20 お問い合わせ先に誤りがありましたので、修正しました。

東京工業大学と南洋理工大学との研究交流促進に関する覚書の締結

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東京工業大学は、南洋理工大学(シンガポール)と2009年に学術交流協定を締結し、学生の派遣・受入れ、共同研究の実施、ワークショップの開催など、様々な連携活動を行ってきました。このたび両大学は、研究交流の促進を目的とした覚書を締結することについて合意に至り、9月28日、国連大学(東京都港区)で開催された日本・シンガポール国交50周年記念シンポジウムの席上、覚書の調印式が行われました。

覚書に署名する本学丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)(右から2番目)および南洋理工大学ラム・キンヨン副学長(同3番目)
覚書に署名する本学丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)(右から2番目)および南洋理工大学ラム・キンヨン副学長(同3番目)

また同日夕刻には、赤坂迎賓館において安倍晋三内閣総理大臣とリー・シェンロンシンガポール共和国首相の立会いのもと、本学三島良直学長と南洋理工大学副学長ラム・キンヨン副学長による覚書交換式が行われました。

11月には、第2回東京工業大学・南洋理工大学ジョイント・ワークショップの開催も予定されており、本覚書の締結により、両大学間における研究交流が今後ますます深化していくことが期待されます。

お問い合わせ先

国際部 国際連携課 総務グループ

Email : kokuren.som@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2981


10月の学内イベント情報

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10月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

一般公開講座「バイオインフォマティクスと30年後の研究」

一般公開講座「バイオインフォマティクスと30年後の研究」

第5回生命医薬情報学連合大会(9/29~10/1)の最終日に一般公開講演が開催されます。

日時
10月1日(土) 15:00 -
会場
東京・お台場 東京国際交流館プラザ平成 国際会議場
参加費
無料
対象
一般 (先着50名)
申込
不要

健康・衛生週間特別講演会「健診結果の活かし方」

健康・衛生週間特別講演会「健診結果の活かし方」

健診結果の見方、考え方について判りやすく解説いたします。健診結果をご持参されることをお勧めします。

日時
10月3日(月) 15:30 - 17:00
会場
大岡山キャンパス 西9号館 コラボレーションルーム
すずかけ台キャンパス J2棟 20階中会議室
参加費
無料
対象
本学学生・教職員・一般
申込
不要

CERI寄附講座「ゴム・プラスチックの安全、安心 ―身の回りから先端科学まで―」(2016年 後期)

CERI寄附講座「ゴム・プラスチックの安全、安心 ―身の回りから先端科学まで―」(2016年 後期)

私たちの身の回りにある化学品を含むゴムやプラスチックとその製品の安全・安心に関する情報とやさしい科学を、一般の方にもわかりやすく紹介します。将来の安心・安全な材料・製品設計の基礎を学べるようにします。

日時
スケジュール1: 10月5日・12日・19日・26日、11月2日・9日・16日
スケジュール2: 11月30日、12月7日・14日・21日、2017年1月11日・18日・25日、2月1日
各日水曜日 10:45 - 12:15
会場
参加費
無料
対象
一般 (先着25名)
申込
必要

第2回 大岡山健康講座

第2回 大岡山健康講座

リベラルアーツ研究教育院と東急病院共催で、地域や沿線にお住まいの方々を対象にした「大岡山健康講座」を開催します。

日時
10月5日(水) 14:30 - 16:00(予定)
会場
大岡山キャンパス 東工大蔵前会館outer ロイアルブルーホール
参加費
無料
対象
一般 (定員120名)
申込
必要
内容
  • 「椅子を使った運動でサルコぺニア(加齢性筋減弱症)を予防しよう!」
  • 「加齢に伴う膝の痛み」~その原因と対策、治療法について~

東工大 グローバル水素エネルギー研究ユニット 第2回公開シンポジウム

東工大 グローバル水素エネルギー研究ユニット 第2回公開シンポジウム

国内外の水素利用技術の現状と将来展望を共有するための公開シンポジウムを開催します。

日時
10月5日(水)
シンポジウム: 13:30 - 17:30
意見交換会: 17:30 - 19:00
会場
大岡山キャンパス 東工大蔵前会館outer (シンポジウム: くらまえホール、意見交換会: 同建物内(調整中))
参加費
無料(意見交換会は3,000円、当日払い)
対象
一般
申込
必要 (先着300名)

リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」

リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」

リベラルアーツ研究教育院教授であり、ワーグナーの専門家でもある山崎太郎先生による連続講演会です。

日時
10月6日(木)・13日(木)・26日(水)、11月16日(水)・24日(木) 
いずれも18:00 - 21:00 (17:30開場)
会場
参加費
  • 東工大生および東工大教職員は無料(要:身分証明書提示)
  • 一般の方は1回につき1,000円(当日徴収) ※初回には5回シリーズ券(4,000円)も販売
対象
一般
申込
不要 (事前申込も可)

科学技術創成研究院 設立記念式典

科学技術創成研究院 設立記念式典

科学技術創成研究院の設立記念講演会・記念式典を開催いたします。細野秀雄教授、大隅良典栄誉教授、そしてノーベル化学賞受賞の白川英樹博士が講演します。

日時
10月7日(金) 第1部 10:00 - 15:00  第2部 15:00 - 17:30
会場
記念講演会: すずかけ台キャンパス 大学会館 多目的ホール
記念式典・祝賀会: すずかけ台キャンパス 大学会館 3階ラウンジ
参加費
学外の方:無料、学内の方:2,000円/人
対象
一般
申込
必要

工大祭2016

工大祭2016

工大祭とは、東京工業大学 大岡山キャンパスにて、毎年10月に開催される学園祭です。

日時
10月8日(土)・9日(日) 10:00 - 18:00
会場
参加費
無料
対象
一般・学生
申込
不要

東京工業大学社会人アカデミー主催/蔵前工業会共催 講演会「深海と宇宙」

東京工業大学社会人アカデミー主催/蔵前工業会共催 講演会「深海と宇宙」

研究、開発、制作の最前線に立つ5名の講師による「深海と宇宙」と題した講演会を開催いたします。

日時
10月11日・18日・25日(いずれも火曜日) 各回19:00 - 21:00(開場:講演開始20分前予定)
会場
大岡山キャンパス 西9号館 ディジタル多目的ホール
参加費
  • 一般: 2,500円/回
  • 本学社会人教育院および社会人アカデミー講座受講生・修了生: 2,000円/回
  • 小・中・高・専門学校・大学・大学院等学生(専門学校・大学・大学院等学生は当日、要学生証提示): 900円/回
  • 蔵前工業会会員・ゴールドカード家族会員、本学学生、本学教職員: 無料(席数に限り有)
対象
一般・学生(定員各回287名)
申込
必要(先着順)
内容
「超小型衛星・宇宙機による新しい宇宙活動」「深海の宇宙とはなんだったのか 作品を通じて伝えたかった事」「地上最高の星作りを目指して~MEGASTAR開発ストーリー~」

Tokyo Tech Inspiring Lecture Series 2016「材料が拓く未来社会」

Tokyo Tech Inspiring Lecture Series 2016「材料が拓く未来社会」

2014年ノーベル物理学賞に輝いた、名古屋大学の天野浩教授をお迎えし、細野秀雄教授と共に、先生方の切り拓いてきた材料科学・技術の世界と、それらがもたらす未来社会へのインパクトについてお話しいただきます。

日時
10月13日(木) 15:00 - 17:30(開場14:30)
会場
参加費
無料
対象
一般・学生
申込
必要(先着360名)
内容
「GaNの工学と未来社会へのインパクト」 「元素戦略と未来の材料」

第35回蔵前科学技術セミナー

第35回蔵前科学技術セミナー

「地球と生命の謎 ~生命の起源はどこまでわかったのか? 宇宙における生命の存在確率は?~」を特集テーマとする講演会を開催致します。

日時
10月22日(土)
講演会: 13:00 - 17:15(受付開始12:30)
交流会: 17:30 - 19:00
会場
大岡山キャンパス 東工大蔵前会館outer くらまえホール(講演会)、ロイアルブルーホール(交流会)
参加費
講演会: 無料、交流会: 3,000円(学生無料)
対象
一般 ・学生
申込
必要
内容
  • 「系外惑星 ― 宇宙における生命」
  • 「熱湯の中の微生物・ウイルスから探る生命の起源と進化」
  • 「生命を宿す惑星の条件」

第9回 高校生バイオコン2016&教材で遊ぼう!

第9回 高校生バイオコン2016&教材で遊ぼう!

高校生たちが独自のアイディアで小中学生向けバイオ系教材を開発し、その出来映えを競い合うコンテストです。

日時
10月22日(土)
コンテスト開始: 10:00 -
教材で遊ぼう(おためしtime): 14:30 -
会場
参加費
無料 入退場自由
対象
一般・学生・小中学生
申込
不要

第1回神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア講座

第1回神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア講座

新たな医療や技術の創出、それに付随する人材育成に向けて、「健康増進と豊かな暮らしを実現するための最先端技術とその産業応用」というテーマのもと、3回の公開講座を行います。

日時
10月23日(日) 13:30 - 16:30(開場:13:00)
会場
崎陽軒本店5階マンダリン(横浜駅東口改札から徒歩1分)
参加費
無料
対象
一般・学生
申込
必要(先着130名)

東工大AESセンター第9回シンポジウム

東工大AESセンター第9回シンポジウム

科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)の9回目となるシンポジウム「強靭なまちづくりを支えるエネルギーシステムの構築」を開催します。

日時
10月27日(木) 14:00 - 17:15(13:30 開場)
会場
参加費
無料
対象
一般・学生
申込
必要

TdX講演会#05「チームとゲームづくり」

TdX講演会#05「チームとゲームづくり」

「どうすればチームでゲーム開発できるのか?」実際にゲームの開発に携わっていらっしゃる方々をお迎えして、ゲーム開発に絡めたチームづくりの話をお聞かせいただきます。

日時
10月28日(金) 18:30 - 20:00
会場
参加費
無料
対象
一般・学生
申込
必要(先着)

RSC Inorganic Chemistry Symposium

RSC Inorganic Chemistry Symposium

海外講演者3名、国内講演者6名とRSCの Dalton Transactions誌編集部編集長による講演があります。Dalton Transactionの領域に焦点を当てており、広い意味での無機・錯体化学をテーマとしたシンポジウムです。

日時
10月28日(金) 10:00 - 17:30
会場
大岡山キャンパス 西9号館 2階(入口階) ディジタル多目的ホール
参加費
無料
対象
一般・学生
申込
必要

一部締め切りを過ぎているものがございますが、取材をご希望の場合はご連絡ください。

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

ロケットサークルCREATEが能代宇宙イベントMHIアワードで最優秀賞を受賞

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東工大公認ロケットサークルCREATE(以下、クリエイト)が、8月18日から25日に開催された第12回能代宇宙イベントにて、大学生ロケット海打上実験に参加しました。25日に打ち上げが成功し、その当日のオペレーションなどが評価され、「ハイブリッドロケット海打ちの部」において、翌26日に三菱重工業株式会社(MHI)よりMHIアワード最優秀賞を受賞しました。

ロケット海打ち団体懇親会でのMHIアワード表彰式の様子。サークル代表の北井菜央子さん(中央、工学部機械科学科2年)とプロジェクトマネージャーの中込さん(右、工学部機械宇宙学科2年)

ロケット海打ち団体懇親会でのMHIアワード表彰式の様子
サークル代表の北井菜央子さん(中央、工学部機械科学科2年)とプロジェクトマネージャーの中込さん(右、工学部機械宇宙学科2年)

能代宇宙イベントとは

今回で12回目となる能代宇宙イベントは、秋田県能代市で毎年8月中旬に行われる日本最大規模の学生、社会人によるロケット打上及び自律ロボット制御のアマチュア大会です。ハイブリットロケットと呼ばれる爆発物を使わない全く新しいタイプのロケット打上や缶サットと呼ばれる自立制御型のロボットが気球から落下され、目的地を目指す競技などが行われます。今年は悪天候で厳しいスケジュールとなりましたが、多くの学生や能代の方の協力によってイベントは盛況のうちに幕を閉じました。

  • 今回打ち上げた機体C-18Kがランチャに挿入された後の様子

    今回打ち上げた機体C-18Kがランチャに挿入された後の様子

  • C-18Kを打ち上げた瞬間。飛翔後、パラシュートが開放し海に着水

    C-18Kを打ち上げた瞬間
    飛翔後、パラシュートが開放し海に着水

東工大ロケットサークル クリエイトの紹介

クリエイトは、ハイブリッドロケットの打ち上げ、および缶サットの製作を行っているサークルです。まだ2014年に公認サークルとなったばかりの比較的新しいものつくり系サークルで、現在20人弱で活動しています。ロケットに関するミッションを自分たちで定め、それを達成するために年3回の打上を行っています。

受賞コメント

プロジェクトマネージャー 中込航さん(工学部機械宇宙学科 2年)

今回このような賞を頂けたことを光栄に思います。ただ、プロジェクトを進める上での反省点は多く、改善すべき点の指摘もあったので、これに慢心することなく今後に生かしていきたいと思います。

大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞決定

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大隅良典栄誉教授(科学技術創成研究院)の2016年ノーベル生理学・医学賞受賞が決定しました。

大隅良典 栄誉教授

研究概要

“細胞の環境適応システム、オートファジーの分子機構と生理学的意義の解明”

オートファジーは、細胞内におけるリサイクリング機能です。細胞が栄養環境などに適応して自らのタンパク質分解を行う自食作用「オートファジー」に関して、酵母を用いた細胞遺伝学的な研究を進めて世界をリードする成果をあげ、その分子機構や多様な生理学的意義の解明において、多大な貢献を果たしています。

細胞の環境適応システム、オートファジーの分子機構と生理学的意義の解明

略歴

1967(昭和42)年3月
東京大学教養学部基礎科学科 卒業
1974(昭和49)年11月
東京大学大学院理学系研究科 理学博士号取得
1974(昭和49)年12月
米国ロックフェラー大学 研究員
1977(昭和52)年12月
東京大学理学部 助手
1986(昭和61)年7月
東京大学理学部 講師
1988(昭和63)年4月
東京大学教養学部 助教授
1996(平成8)年4月
岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所 教授
2004(平成16)年4月
大学共同利用機関法人自然研究機構基礎生物学研究所 教授
2009(平成21)年4月
東京工業大学統合研究院 特任教授
2010(平成22)年4月
東京工業大学フロンティア研究機構 特任教授
2014(平成26)年5月~
東京工業大学 栄誉教授
2016(平成28)年4月~
東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授

主な受賞歴

2005(平成17)年
藤原賞
2006(平成18)年
日本学士院賞
2007(平成19)年
日本植物学会学術賞
2008(平成20)年
朝日賞
2012(平成24)年
京都賞
2013(平成25)年
トムソン・ロイター引用栄誉賞
2015(平成27)年
ガードナー国際賞
2015(平成27)年
国際生物学賞
2015(平成27)年
慶應医学賞
2015(平成27)年
文化功労賞 顕彰
2016(平成28)年
ローゼンスティール賞
2016(平成28)年
ワイリー賞
2016(平成28)年
国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞

関連リンク

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

東工大基金

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東工大への寄附 > 東京工業大学基金

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

世界第一線科学者らから学ぶ授業「科学・技術の最前線」初実施

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はじめに

2016年度に始まった東工大教育改革の中で、学士課程入学直後の高度創造性育成教育に焦点をあてた「国際フロンティア理工学教育プログラム」は、世界に飛翔する気概と人間力を備え、科学・技術を俯瞰できる優れた理工系人材を育成するための革新的な創造性育成プログラムで、「バックキャスト型低学年教育」を創成・展開し、学内外におし広げていくことを目的としています。

現在の工学教育における最大の問題点は、高校から大学への接続にあり、大学が将来を担う人材を育成するためには、高校の延長線上の教育ではなく、科学技術の先端を一部でも学生に体得させ、一流技術者として必要な目標の高さを理解し、そこに至る道程を自ら考える力を育成する必要があります。その意味で、バックキャスト型の教育は、フロンティア科学・技術を維持すべき現在の日本にとって極めて重要な役割を担います。

この型の教育の核を成す「科学・技術の最前線」が、学士課程入学直後の学生に対して科学・技術の最先端を紹介する授業として2016年度にスタートしました。新入生を4グループに分け、国内外から招へいした世界第一線の科学者・技術者が講師として授業を実施します。第一線で活躍する人々がどのような考え方で課題に向き合っているかを体感することで、学生自身の将来像を描いてもらい、その将来像と現在をつなぐことで、大学でどのように学修するかを考えてもらうことが狙いです。

※バックキャスト…未来を予測する際、目標となるような状態を想定し、そこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考え、分析、実行すること。

講師と授業内容

バラエティーに富んだ各類の授業

この授業は選択科目にもかかわらず、本授業に相応しい場として2015年度に開設された「東工大レクチャーシアター(TLT)」の定員をほぼ毎回満たすほどの学生が履修しました。第1、2類の授業は、4クラスとも同じテーマで1人の講師が担当、第5、7類は、同じテーマで複数の講師が担当、そして第3、4、6類は、複数の講師がそれぞれ異なったテーマで授業するなど、バラエティーに富んだ構成となりました。

バラエティーに富んだ各類の授業
バラエティーに富んだ各類の授業

バラエティーに富んだ各類の授業

氏名
職名
所属
テーマ
1
若山正人
理事・副学長
九州大学
数学-永遠に枯渇しないエネルギーの科学・技術応用最前線-
2
原亨和
教授
東京工業大学
サバイバルサイエンスの挑戦
3
菅野了次
教授
東京工業大学
蓄電池・燃料電池の開発の歴史と将来
山口猛央
教授
地球温暖化問題と燃料電池技術
4
只野耕太郎
准教授
東京工業大学
医療用ロボット
輪島義彦
航空機エンジンR&Dセンター
センター長
本田技研
ホンダにおけるジェットエンジン開発への挑戦
呉允鋒
開発部長
ファナック
最先端マニファクチャリングシステム
-ファナック(株)の取り組み-
5
中村正人
教授
あかつきプロジェクトリーダー
JAXA
あかつきとはやぶさ2
廣川二郎
教授
東京工業大学
ラジアルラインスロットアンテナとミリ波
津田雄一
准教授
はやぶさ2プロジェクトリーダー
JAXA
あかつきとはやぶさ2
6
今石尚
部長
大成建設 技術センター
土木技術開発部
厳しい海洋環境に挑んだ ボスポラス海峡横断鉄道トンネル
伊藤一教
室長
大成建設 技術センター
土木技術研究所
水域・環境研究室
彦根茂
代表
Arup Japan
ARUPの世界への展開
納口恭明
総括主任研究員
防災科学技術研究所
ドクターナダレンジャー-災害のメカニズム-
罇優子
専門員
防災科学技術研究所
7
山口雄輝
教授
東京工業大学
GFP-緑色蛍光タンパク質の科学と応用
木村宏
教授
村上聡
教授
田口英樹
教授
白川英樹
ノーベル化学賞
受賞者
筑波大学名誉教授
導電性高分子の発見とセレンディピティ

(敬称略)

各回の講師、授業内容は以下の通りです。

第1類

九州大学の理事・副学長が講師となり、冒頭、授業当日の西暦、年月日からなる7桁の数字を素因数分解し、それを意味のある文に読み替えてみせました。この種の能力、文化が古くから日本に根付いていたことを紹介し、日本の数学発展の歴史を展開しました。後半は講師の専門である「ゼータ関数」について、やや専門的な話題に移り、オイラーらが導いた無限級数の和の不思議さについて解説しました。さらに真空空間に平行な金属板を置くと微弱な力によって引きあうというカシミール効果を紹介し、この力がゼータ関数によって表されることを示しました。

第2類

アンモニア生産の重要性に関する授業が行われました。将来の人口増を支える食糧増産にはアンモニアを原料とする肥料が不可欠であり、その生産には今もって20世紀初頭に開発されたハーバー・ボッシュ法が使われているが、大量エネルギー消費型のプロセスであるため、より効率よくアンモニアを生成するために、本学教員らが新たな触媒を開発したことの説明がありました。授業では、実際にこの触媒を用いた実験により、学生たちが舞台上で匂いや指示薬による色変化でアンモニアの生成を確認し、現在はさらに高性能の触媒の開発にめどをつけたことが紹介されました。

第3類

エネルギー、環境問題に関連する「電池」をテーマに、1、2回目はリチウム電池、3、4回目は燃料電池の研究者が講師を務めました。前半の授業では、一般的なリチウム電池が抱える安全性の課題を克服し開発された全固体電池の特徴、性能、原理などについて解説し、後半は、コストや使用条件の広さなどから注目されている固体高分子型燃料電池の研究者が、新たな電解質膜や触媒層を開発し、この組み合わせによるさらに高性能な電池を開発しつつあることを紹介しました。いずれも問題点を設定し、それをクリアしてゆく過程を、実例を挙げながら示しました。

第4類

医療手術支援ロボットに注目し、本学教員が開発した空気圧駆動のロボットの特徴や性能について実機を操作しながら解説が行われました。次にエンジンをテーマに、実機によるデモを行いながら様々な原理のエンジンについて概説し、ホンダジェットに搭載されたターボファンエンジンの開発担当者が、その特徴、開発時のトラブルとその解決策などを紹介しました。最後の産業用ロボットの話題では、本学教員がロボットの水平、高さ方向への移動、回転運動のコントロール方法について、直交3軸およびデルタ機構のデモ機を操作しながら解説し、ついで、ファナックの開発担当者が最先端技術の紹介を行いました。

第5類

2015年末の再挑戦で打ち上げに成功し、現在金星探査を行っている宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「あかつき」と、2014年の打ち上げ後、順調に小惑星「リュウグウ」を目指して現在飛行を続けている「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーが両プロジェクトの特徴、現況を説明しました。また、両探査機に使用されている平面アンテナについて、東工大の開発担当教員がその特徴、構造について述べるとともに、多量の情報を短時間で送るデモ実験を行いました。

第6類

土木分野からは、ボスポラス海峡横断トンネル建造にかかわった経験をもとに、講師がさまざまな困難を乗り越えた末に完成させた同トンネルの構造や特徴について述べました。建築分野からは、ARUP社の手がけた建築例を示しながら建築分野の最新技術の一端を紹介しました。最後は、防災科学技術研究所の雪崩の専門家が、簡単な模型を駆使しながら、雪崩の特徴についてわかりやすく解説したほか、地震による建物の揺れ方、液状化現象などについても模型を使って紹介しました。

※ARUP社…建築分野全般におけるエンジニアリング、設計、計画、およびコンサルティング・サービス事業を国際的に提供している技術コンサルタント会社

第7類

下村脩博士が講師を務め、2008年ノーベル化学賞を受賞した「緑色蛍光タンパク質 GFP」について解説しました。GFPは、特定の分子が、いつ、どこで、どの分子と連関して機能しているかを可視化する技術に使われており、いまでは生命科学の研究者にとって必要不可欠な技術となっているが、それがノーベル賞につながったのは発見から50年以上たってからのことだったと述べました。その後、一部実物を示しながら、4人の講師それぞれの専門分野で、GFPがどのように使われているかを説明しました。

授業終了時の課題の記入と並行して設けられた質問の時間にも多くの質問が寄せられ、すべての質問に答えられず打ち切りになる授業もありました。また、終了後に講師に直接質問する学生も多く、いずれの授業も学生にとってきわめて良い刺激となったことが伺えました。最終回のノーベル賞受賞者の白川英樹博士の特別講演を除き、授業は全てTLTで行われ、類によっては実験・実演を交え、これをスクリーンに映しながら進める等、TLTならではの授業となりました。

白川英樹博士の特別講演

講演を行う白川博士
講演を行う白川博士

本授業の最終回の6月1日、本学出身で2000年にノーベル化学賞受賞した白川英樹博士による、「導電性高分子の発見とセレンディピティ」と題する講演が行われ、約800名の学生が聴講しました

幼少期から高校卒業、東工大入学から博士後期課程修了までの様子、そしてノーベル賞受賞につながった導電性高分子の発見に至った研究の話まで、新入生にとって非常に示唆に富むものでした。単科大学で学生数も少なく、同学年の多くの学生と友達になれそうだと考えて東工大を選んだが、同じような考えを持った集団の中で過ごすデメリットもあったと語り、自分と異なる分野や考え方の人と付き合うことの大切さ、教養の大切さを強調しました。

ノーベル賞を受賞した導電性高分子の研究については、触媒量を1,000倍にするという失敗が、それまで粉末しかできなかったポリアセチレンの合成を薄膜状へと導き、それにより高度な構造解析が可能となったことが、その後の研究の転換点となったと振り返りました。そして、この薄膜状ポリアセチレンがたまたま東工大を訪れていたペンシルベニア大学のマクダイアミッド博士の目にとまって同大学での共同研究につながり、それがハロゲンのドーピングによる導電性高分子の発見につながったと述べました。このように失敗から生まれた偶然の発見をそのままで終わらせずに、その原因を追究しさらなる進展につなげる姿勢の大切さを強調する博士の言葉に、偶然をひき寄せる力「セレンディピティ」を授業のタイトルに入れた意図を伺うことができました。

最後に、失敗や偶然を期待するのは邪道であるが、偶然を積極的に求めることには意味があり、そのためには、当たり前と思っていることを改めて疑ってみること、できるだけ多くのことを学び、経験すること、何にでも興味を抱く努力を怠らないことが大切であること説きました。専門的な話はもちろん、新入生としての心構え、励ましなど、本授業の締めくくりにふさわしい講演となりました。

おわりに

2年間の試験的な実施を経て、「科学・技術の最前線」の授業が学士課程1年目の学生を対象に実施されました。アンケート結果にも、本授業が目指す、理工学者として高い志を持たせ、学習意欲を高める効果が得られていることが表れていました。受講した学生達が、高い学修意欲と目指す人物像から「どのように学修を進めて行くか」をバックキャストすることにより、今後大きく成長することが期待されます。

舞踏研究部 国公立大学学生競技ダンス選手権大会にて団体準優勝

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9月4日に東京都調布市の電気通信大学体育館で開催された第101回国公立大学学生競技ダンス選手権大会(東部日本学生競技ダンス連盟主催)に、本学舞踏研究部が出場し、団体の部において総合準優勝を果たしました。同部から出場した22組のうち、ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部とラテンアメリカン・チャチャチャ 1年生の部に出場した佐藤大樹(工学部第5類1年)・木村ノイ(杉野服飾大学) 組が両部門共に見事優勝、その他にも8組が決勝進出を果たしました。

ラテンアメリカン・チャチャチャ 1年生の部 優勝 ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部 優勝 佐藤大樹・木村ノイ(杉野服飾大学)組、ラテンアメリカン・チャチャチャ 1年生の部 3位入賞 ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部 4位入賞 金子和夢・榮みな美(白百合女子大学)組

ラテンアメリカン・チャチャチャ 1年生の部 優勝、ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部 優勝
佐藤大樹・木村ノイ(杉野服飾大学)組

ラテンアメリカン・チャチャチャ 1年生の部 3位入賞、ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部 4位入賞
金子和夢・榮みな美(白百合女子大学)組
(写真提供/今市紘太)

競技ダンスとは

男女がペアになって踊る社交ダンスとほぼ同じものですが、社交ダンスが社交を目的としているダンスであるのに対し、競技ダンスは競技会にて技術を競うことを目的としています。

学生の競技ダンスには、大きくスタンダードとラテンアメリカンにわかれており、それぞれ4種目ずつ、全部で8種目のダンスがあります。

スタンダード

男女が組んで踊ります。

  • ワルツ
  • タンゴ
  • スローフォックストロット
  • クイックステップ

ラテンアメリカン

基本的に男女が離れて踊ります。

  • チャチャチャ
  • サンバ
  • ルンバ
  • パソドブレ

今大会の上位入賞者

今回の国公立大学選手権の東工大チームの決勝進出者をご紹介します。

ラテンアメリカン・サンバ 2~3年生の部 6位入賞、ラテンアメリカン・ルンバ 2~3年生の部 6位入賞 田添康平・水野都(白百合女子大学)組(写真提供/百川美彩)
ラテンアメリカン・サンバ 2~3年生の部 6位入賞
ラテンアメリカン・ルンバ 2~3年生の部 6位入賞
田添康平・水野都(白百合女子大学)組
(写真提供/百川美彩)

スタンダード・ワルツ 1年生の部 準優勝 佐藤大樹・榮みな美(白百合女子大学)組
スタンダード・ワルツ 1年生の部 準優勝
佐藤大樹・榮みな美(白百合女子大学)組
(写真提供/百川美彩)

ラテンアメリカン・ルンバ 2~3年生の部 4位入賞 栗崎義紀・輿水早記(津田塾大学)組(写真提供/百川美彩)
ラテンアメリカン・ルンバ 2~3年生の部
4位入賞 栗崎義紀・輿水早記(津田塾大学)組
(写真提供/百川美彩)

スタンダード・スローフォックストロット 2~3年生の部 3位入賞 渡辺雅紀・佐藤洸佳(白百合女子大学)組 (写真提供/百川美彩)
スタンダード・スローフォックストロット 2~3年生の部 3位入賞
渡辺雅紀・佐藤洸佳(白百合女子大学)組
(写真提供/百川美彩)

スタンダード・タンゴ 2~3年生の部 4位入賞 武田龍河・小泉渚(白百合女子大学)組 (写真提供/百川美彩)
スタンダード・タンゴ 2~3年生の部 4位入賞
武田龍河・小泉渚(白百合女子大学)組
(写真提供/百川美彩)

スタンダード・タンゴ 2~3年生の部 6位入賞 スタンダード・クイックステップ 2~3年生の部 5位入賞 斎藤悠太郎・大木あかり(杉野服飾大学)組 (写真提供/百川美彩)
スタンダード・タンゴ 2~3年生の部 6位入賞
スタンダード・クイックステップ 2~3年生の部 5位入賞
斎藤悠太郎・大木あかり(杉野服飾大学)組
(写真提供/百川美彩)

主将 重原悠太郎さん(地球惑星科学科 3年)のコメント

今大会において個人の部で優勝者を出すことができただけでなく、団体成績でも2位入賞できたのは、日頃の練習の成果だと思います。日々の練習では3年生が主体となって1年生を教えていくのですが、その1年生が非常に良い結果を残してくれたことがとても嬉しかったです。10月以降も多くの試合が続くので、いい成績が残せるよう部員一同練習に励んでいきます。

東工大 舞踏研究部について

東京工業大学舞踏研究部は、学生競技ダンス連盟に所属している大学公認の部活です。共同加盟校として、白百合女子大学と杉野服飾大学と共に活動しています。部員数は、東工大生25人、白百合女子大生12人、杉野服飾大生9人(2016年9月現在)です。

競技会にむけて日々練習しています。

お問い合わせ先

舞踏研究部

Email : tsubame.buken@gmail.com

東京工業大学が救急業務協力者感謝状を受賞

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教職員および学生に対する普通救命講習の普及に取り組んできた東京工業大学に、目黒消防署から感謝状が贈られました。

贈呈式で感謝状を受ける保健管理センターの山室センター長(中央)と細井看護師(左)
贈呈式で感謝状を受ける保健管理センターの山室センター長(中央)と細井看護師(左)

9月9日の救急の日に、救急業務協力者感謝状贈呈式が目黒消防署で行われました。日頃からキャンパス内の救急業務に従事してきた業績に対し、東京工業大学が救急業務協力者感謝状の表彰を受け、保健管理センターの山室恭子センター長(工学院 教授)と同センターの細井佐津子看護師が代表して贈呈式に出席しました。

救急業務を普及する一環として、長年、保健管理センターでは、大岡山キャンパスとすずかけ台キャンパスの教職員および学生を対象に、消防署と共催でAEDや心肺蘇生法を学ぶ普通救命講習を行ってきました。突然起こる非常事態において、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)として積極的に手を差し伸べ人命救助を行う「東工大救命クルー」が一人でも増えることを目指し、今後も本学総合安全管理センターを始め、他部署との連携を強化し、救命の輪を広げる活動に邁進していきます。

お問い合わせ先

保健管理センター

E-mail : hokenkanri@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2065

BSフジ「ガリレオX」に生命理工学院の田川陽一准教授が出演

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生命理工学院の田川陽一准教授が、BSフジ「ガリレオX」に出演します。

田川陽一准教授
田川陽一准教授

田川陽一准教授のコメント

私どものラボでは、ES細胞やiPS細胞からさまざまな細胞へ分化誘導して、臓器特異的な生理機能を有した組織の構築に取り組んでいます。それらの組織をマイクロ流体デバイスで培養(組織チップ)し、各組織チップを連結した「からだ」に対応する人工的な培養システムを創ることに挑戦しております。

その「からだ」のチップは、人工生命体と呼ばれ、動物実験や臨床試験の一部の代替法として期待されています。そのような応用への期待とは別に生命とは何かを考えることもできると思っています。受精卵から発生した個体は、初めから最後まで生命体ですが、このように細胞から積み上げて人工的に生命体に迫ることにより生命とは何かを考えることもできるのではないかと考えています。このような手法が合成生物学という学問領域です。

本番組では、人工生命から探る生命と非生命の境界をテーマに、他の人工細胞や人工生命、合成生物学の研究を紹介します。

  • 番組名
    BSフジ「ガリレオX『生命とはなにか?人工生命からさぐる生命と非生命の境』」
  • 放送予定日
    2016年10月9日(日) 11:30 - 12:00
    (再放送)2016年10月16日(日) 11:30 - 12:00

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975


第22回スーパーコンピューティングコンテスト本選開催報告

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「夏の電脳甲子園」として、高校生・高専生が4日間をかけて難題を解くプログラムを作成し、その性能を競う「スーパーコンピューティングコンテストSuperCon(スーパーコン)2016」(以下、スーパーコン)の本選が、8月22日から8月26日にかけて東京工業大学学術国際情報センターで開催されました。

遠藤准教授による解説
遠藤准教授による解説

東京工業大学学術国際情報センター、大阪大学サイバーメディアセンターが主催するスーパーコンは、高等学校もしくは高等専門学校の高校相当学年の学生からなる2~3人のチームが、TSUBAME2.5等、主催校のスーパーコンピュータを駆使して難問を解くプログラミングコンテストです。今回は、35チームの応募があり、その中から予選により20チーム(東日本8チーム、西日本12チーム)が選抜されました。本学の会場には東日本8チームが、大阪大学サイバーメディアセンターの会場には西日本12チームが集まり、本選を戦いました。なお、本コンテストの開催にあたり、東京工業大学基金からの支援を受けております。

本選課題に取り組む参加者(東京会場)
本選課題に取り組む参加者(東京会場)

本選課題に取り組む参加者(大阪会場)
本選課題に取り組む参加者(大阪会場)

今年の本選課題

今年の本選課題は「でっかい小さなグラフ設計問題」です。

現代のスーパーコンピュータ(スパコン)の多くは、非常に多数の演算装置(計算ノードという)が並列に動くことで高速化を達成しています。こうした計算ノード群は高速にデータ交換をしなければなりません。そのため、計算ノードは高速ネットワークでつながれています。しかし、各計算ノードから出すことができる線(つまり次数)の数は限られています。すべての計算ノードは他の計算ノードを中継して、目的の計算ノードにデータを送ることができますが、そうした転送距離は短い方が望ましいわけです。その設計に、小さいグラフ、つまり、総最短経路長が小さいグラフが必要となってくるのです。

課題は次のように与えられました。

問題(小さなグラフの構成問題)

入力として与えられる以下のグラフの条件パラメータに対し、総最短経路長(ASPL)が最小となる単純正則無向グラフを求めよ。

上記の「グラフの条件パラメータ」など、詳しい解説はスーパーコンウェブサイトouterに掲載しています。

大阪会場とタイミングを合わせつつリアルタイム対戦開始を宣言する権藤教授
大阪会場とタイミングを合わせつつリアルタイム対戦開始を宣言する権藤教授

これまでのスーパーコンでは、各チームにプログラムを提出してもらい、事前に用意した入力データを用いた場合の正解数や総実行時間などを計測して、順位を決定していました。しかし、今年はこれまでとは異なり、各チームが参加してリアルタイム対戦を行い、その結果により順位を決定しました。制限時間内に9個の問題に挑戦してもらい、時間内に最も多くの得点をチームが優勝するという方式です。

このリアルタイム対戦は8月25日13時から15時までより良い解の作成を競うべく、東京会場(本学)と大阪会場(大阪大学)とをインターネットを介してスーパーコンピュータTSUBAME2.5上で行われました。

この対戦結果は、対戦中はチームにはわからないようになっており、最終結果は発表会・表彰式において公表されました。

発表会・表彰式

発表会・表彰式は8月26日に、東工大蔵前会館手島精一郎記念会議室(東京会場)、大阪大学サイバーメディアセンター豊中教育研究等7階会議室(大阪会場)において、テレビ会議システムを用いた中継のもと、開催されました。本学 学術国際情報センター長の山田功教授(工学院 教授)の開会の挨拶に始まり、本学 岡田清理事・副学長(企画・人事・広報担当)からの主催校挨拶(東京会場)、大阪大学サイバーメディアセンターの森原一郎副センター長からの主催校挨拶(大阪会場)、情報処理学会情報処理教育委員会の萩谷昌己委員長の来賓挨拶に続いて、参加チームの紹介や本選課題・審査方法の説明等を本学 情報理工学院の渡辺治学院長(情報理工学院 教授)、実施委員会の権藤克彦委員長が行いました。

本選結果

岡田理事・副学長(企画・人事・広報担当)から優勝チームGhostDivへの賞状贈呈
岡田理事・副学長(企画・人事・広報担当)から優勝チームGhostDivへの賞状贈呈

上記発表会・表彰式において、1位から3位までのチームにメダルと賞状が、岡田清理事・副学長(企画・人事・広報担当)から贈呈されました。

また優れたアルゴリズムやプログラムを作成したチームに贈られる学会奨励賞(電子情報通信学会通信・システムソサイエティスーパーコンピューティング奨励賞、情報処理学会若手奨励賞)は2位のチーム「KISS」が受賞しました。

順位
チーム名
学校名
得点
1
GhostDiv
久留米工業高等専門学校
175
2
KISS
慶應義塾高等学校
135
3
kingyo
奈良工業高等専門学校
119

対戦中の状況(動画)は、YouTubeにおいて公開されています。

優勝チームGhostDiv
優勝チームGhostDiv

東京会場の全体記念写真
東京会場の全体記念写真

大阪会場の全体記念写真
大阪会場の全体記念写真

なお、本コンテストの入賞は東京工業大学 第1類の推薦入試の実績として評価されます。

来年も「夏の電脳甲子園」の熱戦を期待しています。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

学術国際情報センター
スーパーコン16実施委員会

Email : sc16query@gsic.titech.ac.jp

大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞記者会見を開催

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大隅良典東京工業大学栄誉教授が10月3日、「オートファジーの仕組みの解明」に寄与したとしてノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

同日18時30分頃に行われたノーベル財団による発表時には、大隅研究室に大隅栄誉教授と研究室メンバーや報道陣が集い、賞の行方をカウントダウンしながら見守り、受賞が決定した瞬間にはこの栄えある賞を得た喜びを皆で分かち合いました。

受賞決定後、すずかけ台キャンパスから大岡山キャンパスに到着し、花束を受ける大隅栄誉教授

受賞決定後、すずかけ台キャンパスから大岡山キャンパスに到着し、花束を受ける大隅栄誉教授

受賞決定後、すずかけ台キャンパスから大岡山キャンパスに到着し、花束を受ける大隅栄誉教授

記者会見中、安部総理大臣から祝電を受ける大隅栄誉教授
記者会見中、安部総理大臣から祝電を受ける大隅栄誉教授

これを受けて、東京工業大学は、同日20時頃から大岡山キャンパス百年記念館フェライト会議室にて三島良直学長、安藤真理事・副学長(研究担当)同席のもと大隅栄誉教授のノーベル賞受賞記者会見を開催しました。

会場には200名近い報道陣が集まり、大隅栄誉教授の喜びの声とオートファジー研究の概要等について1時間程度にわたり会見が行われました。

受賞決定当日の記者会見の様子
受賞決定当日の記者会見の様子

大隅栄誉教授 記者会見冒頭の受賞コメント

受賞の喜びを語る大隅栄誉教授
受賞の喜びを語る大隅栄誉教授

本日、夕刻にノーベル委員会から受賞のお知らせをいただきました。もちろん研究者としてはこの上もなく名誉なことだと思っております。この数年思いもかけずいろんな賞をいただくことになりましたけれども、ノーベル賞には格別の重さを感じております。ノーベル賞、私は少年時代にはまさしく夢だったように記憶しておりますが、実際に研究生活に入ってからは、ノーベル賞は私の意識の全く外にありました。

私は自分の知的な興味に基づいて、生命の基本単位である細胞がいかに動的な存在であるかということに興味を持って、酵母という小さい細胞に長年いくつかの問いをしてまいりました。私は人がやらないことをやろうという思いから、酵母の液胞の研究を始めました。

三島学長、安藤理事・副学長の横で
三島学長、安藤理事・副学長の横で

1988年、今から27年半ほど前に液胞が実際に細胞の中での分解に果たす役割に興味をもちまして、東大の教養学部の私自身たった一人の研究室に移ったときに始める機会があり、それ以降28年にわたりオートファジーという研究をしてきました。オートファジーという言葉は耳慣れないかと思いますが、酵母が実際に飢餓に陥ると自分自身のたんぱく質の分解を始めます。その現象を光学顕微鏡で捉えることが出来たということが私の研究の出発点になりました。馬場美鈴さんが電子顕微鏡でその過程を解析することで、実はそれがそれまで知られていた動物細胞のオートファジーという現象とまったく同一の過程であることがわかりました。酵母は遺伝学的な解析にとってもすぐれた生物なので、早速私たちはオートファジーに必須の遺伝子を探すことを始めました。幸いこれも大学院生として所属していた塚田美樹さんの努力で、わりに短時間でたくさんのオートファジーに必須の複数の遺伝子をとることが出来ました。それらの遺伝子は実はオートファジーの膜現象に必須の装置であるということが私たちの解析で分かりました。幸いこれらの遺伝子は酵母のみならず、人とか植物細胞にも広く保存されているということが分かりました。こうしてオートファジーの遺伝子が同定されたことでこれまでのオートファジー研究の質が大きく変換をすることになりました。その後は様々な細胞でオートファジーがどのような機能をしているかということが世界中のたくさんの研究者によって解析され、今日に至っています。

受賞の喜びを語る大隅栄誉教授

私はずっと酵母という材料でオートファジーの研究をしてまいりました。酵母を使った基礎的な研究が今日のオートファジーの研究のきっかけになったということであれば、私は基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだと思っております。もちろん現代生物学は一人でやりおおせるものではありません。この28年間、私の研究室でたゆまぬ努力をしてくれた大学院生、ポスドク、スタッフの方々の努力のたまものだと思っております。それから、酵母から動物細胞のオートファジーへと転換してくれました水島昇、吉森保両氏にも、今現在の動物細胞におけるオートファジー研究で世界を牽引している二人とも、今日の栄誉を分かち合いたいと思っております。オートファジーというたんぱく質の分解は細胞が持っているものすごく基本的な性質なので、今後ますますいろんな現象に関わってくることが明らかになってくるのを私も期待しております。

一つだけ強調しておきたいのは、私がこの研究を始めた時に、オートファジーが必ずがんにつながる、人間寿命の問題につながると確信して始めたわけではありません。基礎研究はそういう風に展開していくものだとぜひ理解していただきたいと思います。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたいと思っております。

これまで私に研究の場を与えてくれた東大教養学部、理学部、基礎生物学研究所、東京工業大学には厚く御礼申し上げます。これまでの研究のほとんどが文科省の科研費によって支えられたことにも感謝したいと思います。この間、私の研究を支えていただいた2人の恩師、この5月に亡くなられた今堀和友先生、安楽泰宏先生にも感謝の意を申し上げます。戦後の非常に大変な時代から常に私を温かく見守ってくれた両親にまず報告したいと思います。私の家族、とりわけ折に触れて私を支えてくれた妻、萬里子に深く感謝したいと思います。

学長 記者会見冒頭のご挨拶

大隅栄誉教授の受賞を称える三島学長
大隅栄誉教授の受賞を称える三島学長

本日は多数お集まりいただき、ありがとうございます。私どもも本当にうれしく思いますし、今回の大隅先生の受賞は大学にとっても大きな誇りでございます。先生の研究に臨む姿勢につきましては何度も伺ったことがございますけれども、基礎研究に真摯に、そして人がやったことがないことをやるんだ、そしてそれをしっかりと止めることなく続けてこういう成果に繋がったんだろうというふうに思って、私も感動している次第です。このような本当の基礎研究、これから人類のために役に立っていくであろうこうした基礎研究の成果がこういう賞をお取りになられたということで私も大変嬉しく思いますし、改めて大変名誉に思うというところでございます。大隅先生、おめでとうございました。

また、翌日は11時からすずかけ台キャンパス大学会館3階多目的ホールにて、萬里子夫人、三島学長同席のもと、2回目の記者会見を行いました。会場には大隅研究室メンバーを含む多くの学生・教職員や30名程度の報道陣など350名が集まり、約1時間にわたって開催されました。

受賞翌日、萬里子夫人と臨んだ記者会見
受賞翌日、萬里子夫人と臨んだ記者会見

萬里子夫人と

萬里子夫人と

萬里子夫人と

東工大関係者のノーベル賞受賞者は、2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹先生(本学卒業生)、そして今回の大隅栄誉教授の受賞により2名となりました。

東工大は、今年度新たに発足した科学技術創成研究院を筆頭に、世界トップレベルの研究を引き続き発展させていきます。

リンク集

称号授与

研究成果

受賞

メディア出演

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Email : nobel@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

高校生・大学院受験生向け広報誌「TechTech」30号発行

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東京工業大学広報誌「Tech Tech(テクテク)」30号を発行しました。

Tech Techは、高校生・大学院受験生向けに、東工大の最新の研究や、学生生活、研究室の様子、卒業生の活躍など本学のさまざまな面を豊富な画像とわかりやすい文章でご紹介する広報誌です。

最新号では、「感性工学 meets 茶道」と題した遠州茶道宗家十三世家元の小堀宗実氏と工学院機械系のムージュノ・セリーヌ准教授による対談と、工学院システム制御系の中島求教授の「最速のクロール泳法」に関する研究と研究室の様子などをご紹介しています。

TechTech No30

CONTENTS

  • 感性工学 meets 茶道
    工学院 ムージュノ・セリーヌ准教授 × 遠州茶道宗家十三世家元 小堀宗実氏
  • 最速のクロール泳法
    工学院 中島求教授
  • TOKYO TECH × LIBERAL ARTS
    リベラルアーツ研究教育院 上田紀行教授、中野民夫教授、磯﨑憲一郎教授、中島岳志教授、伊藤亜紗准教授
  • 博士たちのキャリアデザイン論
    第一三共RDノバーレ株式会社 高橋瑞稀さん
  • 学生企画 東工大生のイメージとリアル

学内の配布場所や、郵送での請求方法については、以下のページをご確認ください。

バックナンバーはこちら

低温で高活性なアンモニア合成新触媒を実現

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要点

  • カルシウムアミドにルテニウムを固定した触媒が300 ℃程度の低温度領域で従来よりも一桁高いアンモニア合成活性を実現した。
  • 平らな形状の大きさのそろったルテニウムのナノ粒子が自然に形成された。
  • 約1ヶ月の反応を継続しても触媒活性が劣化しないことが分かった。

概要

JST戦略的創造研究推進事業において、東京工業大学の細野秀雄教授と原亨和教授、北野政明准教授、井上泰徳研究員、高エネルギー加速器研究機構の阿部仁准教授らは、カルシウムアミド(Ca(NH2)2[用語1]にルテニウムナノ粒子を固定した触媒が、300 ℃程度の低温度領域で、従来の触媒の10倍以上の高い触媒活性を示すことを発見しました。さらに、Ba(バリウム)を3%添加したCa(NH2)2にルテニウムを固定した触媒(Ru/Ba-Ca(NH2)2)では、700時間(約1ヵ月)以上に亘り反応を行っても触媒活性はほとんど低下せず極めて安定に働く触媒であることも明らかにしました。

アンモニアは窒素肥料原料として膨大な量が生産されており、最近では水素エネルギーキャリアとしても期待が高まっています。本研究成果は、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化技術を大幅に促進する結果であるといえます。従来から使われてきたルテニウム触媒の多くは、金属酸化物やカーボン材料などに固定されていました。本触媒では、窒素含有無機化合物であるカルシウムアミドを用いることで、ルテニウムと窒素が結合し、カルシウムアミド上に大きさのそろった平らな微粒子状でルテニウムが固定されます。このことにより低温で高活性かつ安定な触媒活性が発現しました。

本研究成果は米国科学誌「エーシーエス・キャタリシス(ACS Catalysis)」オンライン速報版に2016年10月8日午前0時(日本時間)に公開されました。

本成果は、以下の事業・研究開発課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 ACCEL

研究開発課題名:
「エレクトライドの物質科学と応用展開」
研究代表者:
東京工業大学 元素戦略研究センター センター長 細野秀雄
プログラムマネージャー:
科学技術振興機構 横山壽治
研究開発実施場所:
東京工業大学
研究開発期間:
平成25年10月~平成30年3月

研究の背景と経緯

人工的にアンモニアを合成する技術は、約100年前にハーバーとボッシュによって初めて見いだされ、この技術(ハーバー・ボッシュ法、以下「HB法」という)は工業化された現在でも、人類の生活を支えるために必要不可欠となっています。また、アンモニア分子は分解することで多量の水素発生源となり、かつ室温、10気圧で液体になることから、燃料電池などのエネルギー源である水素運搬の物質としても期待されています。

一方、HB法は高温(400~500 ℃)、高圧(100~300気圧)の条件が必要であるため、温和な条件下でのアンモニア合成技術が求められています。

アンモニア合成触媒として、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物を添加した鉄やルテニウムなどの触媒が用いられてきました。しかし、300 ℃以下の低温度領域では効率よく働く触媒は見いだされていませんでした。

本研究グループは、2012年に12CaO・7Al2O3エレクトライド(C12A7:e-[用語2]にルテニウムを固定した触媒が、低温で高活性を示すことを見いだしました。ところが、この触媒の表面積が1 m2/gと小さいため、単位重量あたりの触媒性能が低いという問題点がありました。

研究成果

同研究グループは、窒素含有無機化合物であるカルシウムアミド上にルテニウムを固定した触媒(Ru/Ca(NH2)2)を用いることで、300 ℃程度の低温度領域で従来のルテニウム触媒の10倍以上の高い触媒活性を示すことを見いだしました。

Ca(NH2)2自体は熱的に安定ではなく、図1に示すように、340 ℃で窒素と水素の混合ガス雰囲気下で加熱するとアンモニアを生成しながら分解してしまうので、触媒として持続してアンモニアを生成することはできません。ところが、Ca(NH2)2上にルテニウムを固定すると、長時間にわたって安定してアンモニアを生成し、触媒として機能することがわかりました。このとき、ルテニウムはCa(NH2)2の窒素と結合し、ルテニウムと窒素の強い相互作用によってCa(NH2)2上に平らな微粒子状体で固定されることが高エネルギー加速器研究機構のX線吸収微細構造(XAFS)[用語3]解析や電子顕微鏡観察によって明らかとなりました(図1)。また、Ru/Ca(NH2)2触媒のアンモニア合成に対する活性化エネルギー[用語4]は、59 kJ/molであり既存のルテニウム触媒(Cs-Ru/MgO、113 kJ/mol)の約半分でした。この値はRu/C12A7:e-触媒(50 kJ/mol)と同程度であることから、担体からの電子注入効果が効いており、Ru/C12A7:e-触媒と同様に窒素分子の解離が反応を遅らせずにアンモニア合成を進行させることが示されました。

(左)カルシウムアミドおよびカルシウムアミドにルテニウムを固定した触媒を用いたアンモニア合成反応(Ru担持量:8wt%,反応条件:340 ℃,0.1 MPa)、(中)カルシウムアミドにルテニウムを固定した触媒の電子顕微鏡画像、(右)さまざまな担持量でルテニウムを固定したカルシウムアミドのRuK殻EXAFSフーリエ変換スペクトル。ルテニウムの担持量をwt%で表わしている。
図1.
(左)カルシウムアミドおよびカルシウムアミドにルテニウムを固定した触媒を用いたアンモニア合成反応(Ru担持量:8wt%,反応条件:340 ℃,0.1 MPa)、(中)カルシウムアミドにルテニウムを固定した触媒の電子顕微鏡画像、(右)さまざまな担持量でルテニウムを固定したカルシウムアミドのRuK殻EXAFSフーリエ変換スペクトル。ルテニウムの担持量をwt%で表わしている。

340 ℃で反応時の圧力を変化させてアンモニア合成反応を調査すると、これまでに報告されたルテニウム触媒では、触媒活性はほとんど増大しないことがわかります(図2)。これは、ルテニウム表面が解離吸着した水素原子によって覆われる現象によって、触媒としての機能つまり窒素を解離させる機能が阻害されるためであることが知られています(水素によって触媒機能が削がれる被毒効果)。一方、カルシウムアミドにルテニウムを固定した触媒では、圧力に依存して触媒活性が大きく向上することがわかりました(図2)。これは、Ru/Ca(NH2)2触媒が水素によって能力を削がれていないことを示しています。また、アンモニアは、液化して回収する方が、工業的に利点が大きいため、ある程度加圧した条件(10気圧(約1 MPa)程度)で効率よく働く触媒は、実用的な観点からも意義が大きいことがわかります。

340 ℃でさまざまな圧力条件下で行ったアンモニア合成反応の結果

図2. 340 ℃でさまざまな圧力条件下で行ったアンモニア合成反応の結果

赤:ルテニウムを固定したカルシウムアミドの触媒性能、青:ルテニウムを固定したセシウム添加MgOの触媒性能

表1に、各触媒を用いて加圧条件下でアンモニア合成を行った結果をまとめました。Ru/Ca(NH2)2は、300 ℃程度の低温で他の触媒よりも10倍以上活性が高いことがわかります。また、この活性はRu/C12A7:e-触媒の400 ℃での触媒活性に匹敵することも明らかとなりました。

表1. 各触媒を用いさまざまな反応条件でアンモニア合成を行った結果

Catalyst
表面積
(m2g-1
NH3生成速度
(mmol g-1 h-1
出口NH3濃度
(%)
反応条件
WHSV(ml/gh)
Ru(10%)/Ca(NH2)2
50
31.7
2.2
340 ℃, 0.8 MPa
36,000
Ru(10%)/Ca(NH2)2
50
15.8
1.1
300 ℃, 0.8 MPa
36,000
Cs-Ru(10%)/MgO
20
1.28
0.087
300 ℃, 0.8 MPa
36,000
Ru(2%)/C12A7:e-
1
0.34
0.023
300 ℃, 0.8 MPa
36,000
Ru(2%)/C12A7:e-
1
8.2
1.1
400 ℃, 1 MPa
18,000

さらに、340 ℃大気圧下で長時間にわたるアンモニア合成の触媒活性を調べた結果を図3に示します。Cs-Ru/MgO触媒は100時間程度の間に急激に活性が低下しますが、Ru/Ca(NH2)2触媒はCs-Ru/MgO触媒に比べ、安定な触媒活性を示したあとで、徐々に活性の低下がみられました。

340 ℃長時間アンモニア合成反応を行った結果

図3. 340 ℃長時間アンモニア合成反応を行った結果

赤:ルテニウムを固定したバリウムドープカルシウムアミドの触媒性能、黒:ルテニウムを固定したカルシウムアミドの触媒性能、青:ルテニウムを固定したセシウム添加MgOの触媒性能

Ba(バリウム)を3%添加したCa(NH2)2にルテニウムを固定した触媒(Ru/Ba-Ca(NH2)2)では、700時間(約1ヵ月)以上触媒活性が低下せず安定してアンモニアを生成できることも明らかになりました。

今後の展開

本触媒は、低温微加圧条件下で優れたアンモニア合成活性を示し、長期間安定して活性を保つことができます。今後、触媒の調製条件などを最適化することでさらなる活性向上が見込まれ、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化に大きく貢献することが期待できます。

用語説明

[用語1] カルシウムアミド : Ca2+とNH2-から形成されるイオン性化合物。

[用語2] C12A7エレクトライド : C12A7は12CaO・7Al2O3(酸化カルシウムと酸化アルミニウム化合物)でセメントの材料。
エレクトライドは電子がアニオンとして働く化合物の総称。通常の物質とは異なるユニークな性質を持つのではと関心を集めていたが、あまりに不安定なため、物性がほとんど不明のままだった。細野グループは、2003年に直径0.5ナノメートル程度のカゴ状の骨格が立体的につながった結晶構造をしているアルミナセメントに構成成分の1つC12A7を使って、安定なエレクトライドを初めて実現した。
このエレクトライドは金属のようによく電気を通し、低温では超伝導を示す。またアルカリ金属と同じくらい電子を他に与える能力を持つにもかかわらず、化学的にも熱的にも安定というユニークな物性を持っている。

[用語3] X線吸収微細構造(XAFS) : 試料にX線を照射することにより、内殻電子の励起に起因して得られる吸収スペクトルであり、測定したい元素の価数や配位構造などの情報が得られる解析手法である。

[用語4] 活性化エネルギー : 反応の出発物質の基底状態から遷移状態に励起するのに必要なエネルギーのことであり、このエネルギーが小さいほど、その反応は容易になる。反応中に触媒が存在することで、活性化エネルギーを下げることが可能となる。

論文情報

掲載誌 :
ACS Catalysis
論文タイトル :
"Efficient and Stable Ammonia Synthesis by Self-Organized Flat Ru Nanoparticles on Calcium Amide"
(カルシウムアミド上に自己組織化された平らなルテニウムナノ粒子による高効率かつ安定なアンモニア合成)
著者 :
Yasunori Inoue, Masaaki Kitano, Kazuhisa Kishida, Hitoshi Abe, Yasuhiro Niwa, Masato Sasase, Yusuke Fujita, Hiroki Ishikawa, Toshiharu Yokoyama, Michikazu Hara, Hideo Hosono
DOI :

お問い合わせ先

研究に関すること/触媒物質について

東京工業大学 元素戦略研究センター センター長
科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所
教授 細野秀雄

E-mail : hosono@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5009 / Fax : 045-924-5196

触媒反応について

科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所
教授 原亨和

E-mail : mhara@msl.titech.ac.j
Tel : 045-924-5311 / Fax : 045-924-5381

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部 ACCELグループ
寺下大地

E-mail : suishinf@jst.go.jp
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取材申し込み先

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Tel : 029-879-6046 / Fax : 029-879-6049

西田亮介准教授が社会情報学会優秀文献賞を受賞

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本学リベラルアーツ研究教育院 社会・人間科学系の西田亮介准教授の著書である『メディアと自民党』(角川新書)が、社会情報学会優秀文献賞に選出されました。

社会情報学会は2つの「日本社会情報学会」を土台に2012年に発足し、情報現象の過程・構造や、情報技術の進展と社会との関係等を、理論実証の両面から解明することを目指し順調に発展してきました。本学会では学会賞として9つの表彰区分があります。そのうちの1つである優秀文献賞は、著書、翻訳、論文等で、社会情報関係諸学の発展に特に貢献のあったと認められる文献につき表彰されるものです。

西田准教授のコメント

西田亮介准教授と著書『メディアと自民党』(角川新書)
西田亮介准教授と著書『メディアと自民党』(角川新書)

『メディアと自民党』は、ともすれば我々が信頼し、そのまま字句通りに受け取ってしまいがちなメディア上の言説に対して、政治がどのように向き合い、影響しているのか、その歴史的背景はどのようなものかといった主題を、多くの取材や資料をもとにして分析した一冊で、これまでも同書をきっかけに多くのメディア業界の実務家らが研究室に訪ねてきてくれました。今回学界でも、このように評価されたことを嬉しく思っています。今後もメディア研究と実務の双方で評価いただける成果を出すべく精進します。

リベラルアーツ研究教育院

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2016年4月に新たに発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

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