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オートファジー-ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授の研究とは

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ノーベル生理学医学賞を受賞した大隅栄誉教授の研究「オートファジー」の概要、研究への想いや研究室の様子をご紹介します。

2016年3月に発行した広報誌『Tech Tech-テクテク-』29号で特集した「オートファジー 命をつなぐ細胞内のリサイクル機能」を、今回の受賞を受けて再掲します。

オートファジー 命をつなぐ細胞内のリサイクル機能

年間3,000本以上の研究論文が発表される生物学のテーマがある。

「自ら(Auto)」を「食べる(Phagy)」という意味を持つ「オートファジー(Autophagy)」だ。

パーキンソン病など神経変性疾患にも関係すると言われ、
その研究は今、世界中で大きな注目を集めている。

細胞

大隅良典東京工業大学栄誉教授

Yoshinori Ohsumi

大隅 良典

東京工業大学 栄誉教授

科学技術創成研究院
細胞制御工学研究ユニット
ユニットリーダー

略歴

オートファジーの仕組み

細胞中に膜が現れ、分解対象となる細胞質成分を包み込んで二重膜構造体の「オートファゴソーム」を形成する。その外膜が液胞膜と融合し、内膜構造体「オートファジックボディ」が液胞内へ。液胞内の分解酵素が内膜を破壊し、内容物も分解される。

オートファジーの仕組み

小さな細胞内で繰り広げられるダイナミックな生命活動

生命活動に必要なタンパク質は、DNAに従って合成されている。分子生物学の基本概念となる「セントラルドグマ」だ。この緻密なプロセスによって、体内では1日におよそ200 gのタンパク質が作られる。材料となるアミノ酸は、食べ物から消化・吸収するが、人間が摂取しているタンパク質の量は70 gほど。足りない分は、一体どこから調達しているのだろうか。

その答えを解くカギのひとつが、今回取り上げる「オートファジー」である。細胞が自らの細胞質成分(合成したタンパク質など)を食べて分解することでアミノ酸を得る機能で、細胞内の「リサイクルシステム」とも言われている。

例えば1日絶食すると、肝臓の体積は約7割に縮小するという。絶食時、肝臓では生命を維持するためにオートファジーが活発に行われているのである。数日間食べなくてもすぐに死んでしまうことがないのは、このためだ。

脇役だった「液胞」への着目が
オートファジー研究の扉を開ける

毎秒300万個つくられる赤血球

人間の体を形成する細胞は、およそ60兆個。「へぇ」と驚いたその1秒間で、例えば赤血球だけでも300万個が作られ、同じ数だけ壊される。天文学的規模でのダイナミックな活動が、あなたの体で、絶え間なく繰り返されている。

近年注目が高まるオートファジーだが、その歴史は半世紀以上前に遡る。名づけ親は、ベルギーの生化学者のクリスチャン・ド・デューブ博士。博士は細胞分画法によって、リソソームやペルオキシソームといったオルガネラ(細胞内小器官)を発見。その後リソソームの持つ加水分解酵素によって同じ細胞内の細胞質成分が分解されている様を確認し、オートファジーを提唱した。しかし生化学的解析などの技術的問題から、そのメカニズムなどはわからぬまま、研究は何十年もの間、進展を見せなかった。

1992年、オートファジー研究を長い眠りから呼び覚ます人物が現れた。東京工業大学フロンティア研究機構の大隅良典栄誉教授である。大隅栄誉教授は酵母を用いて、オートファジーの全容を光学顕微鏡(肉眼)で初めて観察し、電子顕微鏡でその過程を解明。翌年からオートファジーにかかわる遺伝子の特定に取り掛かり、14の主要な遺伝子「ATG(AuTophaGy)遺伝子」を発見した。

もともと大隅栄誉教授が研究していたのは、酵母における液胞の働きだった。液胞は、植物では細胞全体の約90%を占めるにもかかわらず、1980年代当時「不活性なオルガネラで、細胞内にあるゴミ溜め」程度にしか考えられていなかった。「誰も注目していなかったから」と液胞を研究テーマにした理由を語る大隅栄誉教授は顕微鏡観察が大好きなのだと言う。液胞は、光学顕微鏡で見ることができる唯一のオルガネラだった。

大隅栄誉教授は、液胞がリソソーム同様に分解酵素を豊富に含んでいることから、分解する働きを持っていると予測した。「液胞に分解機能があるとすれば、飢餓状態でもっとも活発に働くはず。液胞内での分解を止めれば、何がどう分解されるのかわかるのではないか」と考え、あえて分解酵素が欠損している酵母を用意し、飢餓状態の液胞を観察していた。すると液胞内で、小さな粒々が激しく動き回っているのを確認。それは細胞質成分が液胞内に次々に取り込まれている様子であった。この発見から、電子顕微鏡などを使ってさらに研究を進めていく。オートファジーでは、まず膜が現れて、細胞質成分を包み込み「オートファゴソーム」を形成することや、それを液胞内に取り込んで分解しているという全容を明らかにしていった。

細胞を壊して遠心分離機にかけ、オルガネラを種類ごとに集める方法
全長約5 μmの酵母内部を観察する

全長約5 μmの酵母内部を観察する

光学顕微鏡の約500倍の拡大率を持つ電子顕微鏡を使う酵母内部の観察には、下処理が必要になる。液体窒素で瞬間凍結し、生きた状態で固定した酵母の集団を樹脂に埋め込む。これを50 nmの薄さで切断できる「マイクロトーム」でスライスする。

オートファゴソームの連続切片(スライスした断面)。ちょうどよいところで切れた断面(写真左)は、膜がクリアに見える。少しずれると(写真右)、膜がはっきり観察できない。

オートファゴソームの連続切片(スライスした断面)。ちょうどよいところで切れた断面(写真左)は、膜がクリアに見える。少しずれると(写真右)、膜がはっきり観察できない。

オートファジーの分子機構を明らかにするため、大隅栄誉教授は次のような方法で研究を展開した。まず薬品処理によって、酵母のDNAにランダムに傷をつける。するといろんな箇所の遺伝子に傷が入った酵母の集団ができるので、そこから“オートファジーが起こらない”変異株を光学顕微鏡でひとつひとつ地道に探す。この実験で、14個のATG遺伝子=オートファジーにかかわる遺伝子が特定されることになる。後の研究でATG 遺伝子は全18個とされた。

期待が高まる一方、基本メカニズムは依然謎だらけ

ATG遺伝子が特定され、これらの遺伝子で合成されるタンパク質(Atgタンパク質)がわかったことで、研究は一気に広がりを見せた。哺乳類などの動物細胞におけるオートファジー研究が世界中で行われ、ガン細胞の抑制や病原体の排除、細胞内の浄化など、飢餓への適応以外のさまざまな生理機能とのかかわりが続々と明らかになってきた。

その一方で、大隅栄誉教授は根本メカニズムを解明するという基礎研究にこだわる。「ガンを治すために、ガン細胞の研究だけをすれば原因がわかるのかといえば、生物学はそんなに単純ではありません。根本的に細胞の機能を解明するのが私の使命だと思っています」

2014年まで大隅研究室に所属し、現在は大学院生命理工学研究科 生体システム専攻に籍を置いて大隅研究室と共同でオートファジーの基礎研究に取り組んでいる中戸川仁准教授は「オートファジーで膜形成がどうなっているのか、そんな基本的なことすら、まだわかっていません。世界中でいろんなデータや成果が報告されていますが、実はみんなが納得できるモデルはあまりありません」と教えてくれた。

中戸川仁 准教授

Hitoshi Nakatogawa

中戸川 仁 准教授

生命理工学院 生命理工学系

2002年京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了。東京工業大学フロンティア研究機構特任助教、特任准教授、大学院生命理工学研究科生体システム専攻准教授を経て、2016年より現職。
「博士課程を修了した頃、学会で大隅先生の講演を聴講。なんて魅力的な現象だろうと感動して以来10年以上、オートファジーの研究を続けています」

研究室研究者情報

中戸川准教授の研究テーマは、オートファゴソームの「膜形成機構」と、その膜がどのように分解対象を見つけるのかという「標的の認識機構」である。標的認識に関しては、2014年にオルガネラの中でも重要な核と小胞体の選択的オートファジーにかかわるタンパク質を特定。その研究結果は英ネイチャー誌に掲載された。

「オートファジーはただ無差別に細胞質成分を分解するだけではなく、分解の標的上に『目印タンパク質』(=受容体)を提示して選択的に行うこともあります。今回の発見で、Atg39は核の、Atg40は小胞体の目印として機能することがわかりました。では、なぜ選択的に分解する必要があるのか、は次の段階。これから解明していきたいですね」(中戸川准教授)

一人ひとりの研究が、大きな謎の解明につながる

膜がどう作られ、どのように分解対象物を判断するのか。この基本メカニズムを解明するには、各段階におけるタンパク質の機能を根気強く調べ上げていく必要がある。

学生たちもまた、それぞれに謎を追っている。「複合体で膜形成にかかわっているとされるAtg12/5/16の3つのタンパク質を扱います。別のタンパク質の機能を促進する働きを持っていることまではわかっていますが、具体的にどんな挙動を示すのかを調べています」と中戸川研究室の原田久美さんは自身の研究を説明する。「最近の研究では、Atgタンパク質以外のタンパク質もオートファジーにかかわっている、といった報告が相次いでいます。僕の場合は、一般的な生体膜形成で働くタンパク質が、オートファジーではどの段階でどう機能しているのか。その関連性を研究しています」大隅研究室の志摩喬之さんは基礎研究を選択した理由を続ける。「誰かがやらないといけないことだと思うんです」

クリアな答えを「酵母」で見つける

こうした東工大の一連の研究は、すべて酵母で行われている。

「基本的な問題を解くには、酵母が最適。ヒトの遺伝子の染色体は2組になっていますから、一方に不全が起こってももう一方がカバーするので見つかりにくい。酵母の半数体は染色体が1組なので遺伝子に変化が起こるとすぐに表現型として現れます」(大隅栄誉教授)

また中戸川准教授も「哺乳類の場合、多細胞生物なので、どういった組織の細胞を使うかによって、結果が左右される場合もある」と言う。

まずは、酵母のような「シンプルな生き物で、クリアな答えを出す」「根本にある分子メカニズムを明らかにする」―言葉の端々に、何十年か先の思いもよらぬ役立ち方や、大きな発見につながる“科学”を担っているのだという自負が滲む。

「科学は人類の長い営みの上に成り立つもの。私も一人の研究者として、この歴史的な活動を少し嵩上げできればいいと思っています。今は研究が『すぐに役に立つか』という基準で語られることが多い。社会や若い人もそうですね。オートファジーがきちんと解明されるまでには、あと50年はかかるかもしれません。でも私自身はもう研究をやめていいなという気にはなりません」(大隅栄誉教授)

酵母には、染色体が1組の半数体の世代と、2組になる二倍体の世代があり、この周期を生活環という

根本的な問いへの探求心から、
パラダイムシフトが生まれる

大隅栄誉教授らのオートファジー研究は、共同研究なしには語れないという。「構造を全部決めようよ」を合言葉に、北海道大学の稲垣冬彦教授をはじめとする研究者同士の、息の長い信頼関係があったからこそ進めることができた。そこにあるのは、利害関係でなく「根本を突き止めたい」という共通の純粋な欲求だ。

最後に、大隅栄誉教授に地道な研究のなかで発見や気づきを継続していくコツについて聞いた。

「実験の9割は失敗ですし、心が折れそうになることばかりです(笑)。ただ、その人がそれまでの知識でわかることや想像できる結果は、実はたいしたものではありません。失敗の過程で、違う発見があるんだと、気持ちに余裕を持って進んでいると、あるときそこをポンと飛び越えるパラダイムシフトが起こせるのではないでしょうか」

左:蛍光顕微鏡を使い、特定のタンパク質の細胞内での挙動を観察。右:シーソーのような動きで、ゲルなどの染色や脱色を行うシェーカー(振とう器)や、超高速で回転する遠心機(遠心分離機)などが、研究室のあちらこちらで稼働している。

左:蛍光顕微鏡を使い、特定のタンパク質の細胞内での挙動を観察。
右:シーソーのような動きで、ゲルなどの染色や脱色を行うシェーカー(振とう器)や、超高速で回転する遠心機(遠心分離機)などが、研究室のあちらこちらで稼働している。

志摩 喬之

Student Interview 01

志摩 喬之(しま・たかゆき)

大学院生命理工学研究科
生命情報専攻 博士後期課程3年
(取材当時)

大隅先生って?大隅先生
今でも時折先生ご自身でピペットマンを握って実験をされる姿を見かけることもあります。
中戸川先生って?中戸川先生
真面目で穏やか。学生との距離感が近く、研究を進める際にもとても議論がしやすいです。
将来の夢や目標は?
大隅先生や中戸川先生のように、何かしらの分野を開拓していけるような人になりたいです。誰も解き明かしていない謎に対して、挑戦していきたいと思っています。

原田 久美

Student Interview 02

原田 久美(はらだ・くみ)

大学院生命理工学研究科
生命情報専攻 博士後期課程3年
(取材当時)

大隅先生って?大隅先生
研究者としてはものすごく遠い憧れの存在。でも普段は学生にもフラットで優しい先生。
中戸川先生って?中戸川先生
研究室では、先生用のデスクスペースを設けずに、学生と肩を並べてお仕事されています。
将来の夢や目標は?
自分の研究が、いつか何かの役に立つ基盤になればと思います。語学にも興味があるので、自分の能力を活かしながら世界中の人たちと仕事がしたいです。
2016年10月時点の略歴を掲載しています。

オートファジーに関する研究成果

大隅良典栄誉教授 関連リンク集

称号授与

受賞

メディア出演

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2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


第4回日英工学教育ワークショップ開催報告

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第4回日英工学教育ワークショップ(UKJEEL)が8月5日から8月8日の4日間にかけて、大岡山キャンパスで開催されました。英国、ヨーロッパ、アジア、北米から総勢約60名の教員と博士後期課程の学生が参加し、交換留学プログラム、工学教育、研究課題などについて活発な議論が交わされました。

UKJEEL参加者(大岡山キャンパスにて)

UKJEEL参加者(大岡山キャンパスにて)

ワークショップは座長の岸本喜久雄教授(環境・社会理工学院)と英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのロドリック・スミス教授の挨拶で幕を開けました。続いて、ジェフリー・クロス教授が各プログラムについて説明しました。

初日、学生は各自の研究についてポスター発表とポスターの内容を3分間で紹介するショットガン講演をそれぞれ行いました。その後、5つのグループに分かれて、東京のような巨大都市「メガシティ」の抱える、 エネルギー、交通渋滞、災害からの回復力、気候変動などの諸問題の解決策について話し合い、グループワークの成果を最終日に発表しました。

ポスター発表
ポスター発表

参加学生22名のポスターの中から、東工大の竹谷 晃一さん(大学院理工学研究科 土木工学専攻 博士後期課程3年)、長澤 剛さん(大学院理工学研究科 機械制御システム専攻 博士後期課程2年)、ディッタプーン・シナブスさん(大学院理工学研究科 機械宇宙システム専攻 博士後期課程2年(イベント当時1年))、オックスフォード大学(材料学科 博士課程1年)のユアンボ・タンさん、の4名が最優秀ポスター賞に選ばれました。

一方、教員は、産学連携と教員と学生の移動性について意見交換をしました。このディスカッションは、本学教員の教育および研究能力を高める「ファカルティ・ディベロプメント(Faculty Development、FD)」の一環として、本学を拠点とする日本の6つの大学で構成されるHuman Assets Promotion Project for Innovative Education and Research(次世代工学系人材養成機構 (次世代工学系人材育成コア事業))が企画したものです。

  • FDの様子

    FDの様子

  • インペリアル・カレッジ・ロンドンのスミス教授

    インペリアル・カレッジ・ロンドンのスミス教授

2日目となる土曜日には、ユネスコの世界遺産に認定された群馬県の富岡製糸場の視察に訪れました。埼玉県川越市にも立ち寄り、日本の伝統的な蔵造りの建物などを楽しみ、参加者は終日東京を離れて日本文化を堪能し、日本の近代化と産業化の歴史を学びました。近代化と産業化はエンジニアリングと深い結びつきを持ち、今回のワークショップのテーマであるメガシティの礎となるものです。

富岡製糸工場にて

富岡製糸工場にて

  • MISW との共同講演

    MISW との共同講演

  • メガシティ問題に関するグループ発表

    メガシティ問題に関するグループ発表

最終日には、Multidisciplinary International Student Workshop(多専門領域にわたる国際学生ワークショップ、MISW)との共同講演が行われました。また、ランチミーティングではUKJEELの活動全般と、2017年9月に英国グラスゴー大学で開催される次回のワークショップの内容についても意見交換して、4日間のワークショップは幕を閉じました。

最優秀ポスター賞 オックスフォード大学ユアンボ・タンさん

最優秀ポスター賞 オックスフォード大学ユアンボ・タンさん

東工大ボート部 関東理工系レガッタの男子シングルスカル、男子舵手付きフォアで優勝

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東京工業大学 端艇部(ボート部)が、6月5日に埼玉県戸田市の戸田ボートコースで開催された関東理工系レガッタに出場し、男子シングルスカル、男子舵手付きフォアにて優勝しました。

健闘したボート部メンバー
健闘したボート部メンバー

関東理工系レガッタは東京工業大学、東京海洋大学などの関東の理工系大学や理工系学部のボート部で構成される大会で、ボートに乗って行われる1,000mレースの大会です。

今回東工大が優勝したのは、1人乗りボートのシングルスカルと、1人1本のオールを持ち、舵きり専門で漕がない舵手(コックス)を合わせた5人で乗る舵手付きフォアです。

両種目ともに、東工大は予選から1位を取り、決勝でも1位でゴールし、見事優勝を果たしました。

  • チーム ロンディーネ出艇

    チーム ロンディーネ出艇

  • 試合前にウォーミングアップ

    試合前にウォーミングアップ

男子シングルスカル優勝者のコメント
チーム HANNIVAL 井上裕達さん(所属:物質理工学院 応用化学系 修士課程1年)

男子シングルスカルに出場した井上裕達さん
男子シングルスカルに出場した井上裕達さん

結果を残すという意志を持ちながら続けてきたので、今大会で優勝することができたことを大変嬉しく思っています。どんな大会であっても一位になることは貴重な経験であり、こういった積み重ねが大きな結果に繋がると信じています。これからも応援よろしくお願いいたします。

男子舵手付きフォア優勝メンバーのコメント
チーム Rondine 菅野康平さん(所属:工学部 機械宇宙工学科 4年)
馬場俊輔さん(所属:工学部 経営システム工学科 3年)、池田郁也さん(所属:生命理工学部 生命工学科 3年)
舩岡知広さん(所属:理学部 地球惑星科学科 2年)、中島雪暢さん(所属:工学部 電気電子工学科 2年)

男子舵手付きフォアで追い上げを見せるチーム ロンディーネ
男子舵手付きフォアで追い上げを見せるチーム ロンディーネ

主将の菅野です。この大会は全日本級ではなく、強豪大学が全て出場している訳ではありません。しかし、全国の強豪私立大学も出場している中、花形のフォア種目で我ら東京工業大学が理系で一番強いことを証明できたのは嬉しいです。この勝利に慢心せず、部の絶対目標である全国1位を達成するために日々全力で練習に取り組んでまいります。皆様何卒ご声援よろしくお願いいたします!

この日はこれらの他に東工大端艇部1年生初の試合である新人レースも行われ、ほかの大学の1年生とともにレースを行いました。

お問い合わせ先

東京工業大学端艇部

E-mail : titboat@green.ocn.ne.jp
Tel : 048-442-5581

悪性化したがん細胞をその場で可視化―近赤外発光分子で高感度かつ迅速ながん検出手法を開発―

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要点

  • 悪性化したがん細胞を検出する新しい血中投与型発光分子を開発
  • マウスの腫瘍・転移組織に存在する低酸素がん細胞を高感度かつ迅速に検出
  • 様々な疾患研究に適用可能な高感度イメージング材料の設計指針を提案

概要

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の近藤科江教授と口丸高弘助教らは、腫瘍組織に存在する悪性化したがん細胞を非侵襲的に可視化することに成功した。悪性がん細胞で活性化する低酸素誘導因子[用語1]に応答して、近赤外発光[用語2]を生成するイメージングプローブ[用語3](POL-N)を開発して実現した。このイメージングプローブはユビキチン-プロテアソーム系(UPS)[用語4]による低酸素誘導因子の分解制御機構と、近赤外生物発光分子を組み合わせたタンパク質分子であり、血中に投与するだけで、高感度かつ迅速に腫瘍組織の低酸素誘導因子を発光できた。

低酸素誘導因子は多くの腫瘍組織で活性化が認められ、薬剤抵抗性や転移といった悪性化に関わることが報告されており、治療標的や診断マーカーとして有望な分子である。これまで、腫瘍組織における低酸素誘導因子の活性化を非侵襲的に可視化するためには、がん細胞やマウスに前もって遺伝子を導入する必要があり、その場観察は困難だった。開発したイメージングプローブは、外部から生体に血中投与した後、低酸素誘導因子が活性化したがん細胞内に蓄積され、生体組織透過性の高い近赤外発光シグナルを生成することで悪性化したがん細胞を可視化する。マウスを用いたがんの悪性化機構に関する研究を加速させるとともに、低酸素誘導因子が関わる多くの疾患研究に有用なツールとなる。研究成果は10月4日発行のネイチャー・パブリッシンググループのオンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。

研究成果

イメージングプローブは、低酸素誘導因子が活性化していない細胞に取り込まれると即座に分解され発光シグナルを生成しないが、低酸素誘導因子活性化細胞においては安定化し、生体組織透過性に優れる近赤外発光を生成する(図1)。イメージングプローブを、皮下腫瘍が形成されたマウスに尾静脈から全身投与したところ、従来の蛍光プローブに比べ、非常に短時間(投与後1時間)かつ高感度に、腫瘍組織の低酸素誘導因子が活性化した悪性がん細胞の非侵襲的な可視化に成功した(図2)。また、これまでの蛍光イメージングでは膀胱、肝臓や腎臓といった臓器で排泄過程にあるイメージングプローブが長時間にわたって強い光シグナルを発してしまい、高感度なイメージングが困難であった、大腸がんの肝転移病巣における低酸素誘導因子活性の検出が可能であることを示した(図3)。

イメージングプローブによる低酸素誘導因子活性化細胞の可視化機構

図1. イメージングプローブによる低酸素誘導因子活性化細胞の可視化機構

低酸素誘導因子が活性化した皮下腫瘍のイメージングの違い(左)と今回開発した近赤外生物発光画像(発光)と従来の蛍光画像(蛍光)の検出感度(特異的シグナル/非特異的シグナル)の比較(右)
図2.
低酸素誘導因子が活性化した皮下腫瘍のイメージングの違い(左)と今回開発した近赤外生物発光画像(発光)と従来の蛍光画像(蛍光)の検出感度(特異的シグナル/非特異的シグナル)の比較(右)
従来の蛍光画像では、腎臓より排せつされる蛍光色素からの非特異的なシグナルが強すぎて腫瘍からの特異的なイメージを得られない。
低酸素誘導因子が活性化した肝転移病巣のイメージングの違い

図3. 低酸素誘導因子が活性化した肝転移病巣のイメージングの違い

従来の蛍光画像では、膀胱より排せつ途中の蛍光色素からの非特異的なシグナルが強すぎて、肝臓がんをイメージすることができない。

背景

細胞の低酸素応答を司る転写因子低酸素誘導因子は、多くの腫瘍組織で活性化して、薬剤抵抗性や転移といった、がんの悪性化に関わることが知られている。低酸素誘導因子は、有酸素下では、UPSによって選択的に分解されているが、腫瘍内低酸素環境[用語5]ではUPSの分解をのがれ、がん細胞の悪性化を促す多くの遺伝子の制御に関わる。多くの腫瘍悪性化マーカー分子と異なり、低酸素誘導因子は幅広いがん種において悪性化に関わっていることから、がん細胞が低酸素誘導因子の活性化を介して悪性化する分子機構や、治療・診断薬の開発まで活発な研究が世界中で進められている。

これまで、腫瘍組織の低酸素誘導因子の活性化を可視化するためには、準備に長期間を要する細胞や動物への遺伝子導入が必要であった。それを克服するために、その場で血中に投与可能な蛍光分子を用いた機能性材料によるイメージング手法が試行されてきたが、蛍光シグナルの制御が難しく、検出感度が十分でないことに加え、検出までに長時間を要していた。

研究の経緯

今回の研究では、これまでの蛍光イメージングプローブの欠点を解消するため、光シグナルの精密な制御が可能な生物発光タンパク質ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)を利用した。しかし、Rlucが生成する最大発光波長は547 nm(ナノメートル)と、生体組織に吸収されやすく、生体組織の非侵襲イメージングには不向きであった。そこで、Rlucに近赤外蛍光色素を結合し、生物発光共鳴エネルギー移動[用語6]を介して最大発光波長を702 nmに長波長化することで、この問題を解決した。

今後の展開

POL-Nイメージングプローブを用いて発がんや転移過程における低酸素誘導因子の役割を明らかにしていく予定である。また、イメージングプローブの分子設計は、低酸素誘導因子に限らず、UPSで制御される様々な分子活性を可視化するイメージングプローブの開発に利用可能であり、今後、多くのイメージング材料の開発に貢献することが期待される。

用語説明

[用語1] 低酸素誘導因子(HIF, hypoxia-inducible factor) : 細胞が低酸素環境に晒されると安定化し、転写活性を介して細胞の低酸素応答を司る分子。

[用語2] 近赤外発光 : 650 nmよりも長い波長を有する発光。

[用語3] イメージングプローブ : 特定の標的を可視化する材料の総称。

[用語4] ユビキチン-プロテアソーム系(UPS, ubiquitin-proteasome system) : 細胞内のタンパク質を特異的に認識して分解する機構。

[用語5] 腫瘍内低酸素環境 : 不完全な血管形成とがん細胞の過増殖によって慢性的な酸素欠乏に陥った環境。

[用語6] 生物発光共鳴エネルギー移動 : 生物発光反応によって生成されたエネルギーが近傍の蛍光物質に移動する現象。

研究サポート

この研究は、新学術領域「がん微小環境ネットワークの統合的研究」と日本学術振興会の特別研究員奨励費の支援を受けて実施した。

論文情報

掲載誌 :
Scientific reports
論文タイトル :
A novel injectable BRET-based in vivo imaging probe for detecting the activity of hypoxia-inducible factor regulated by the ubiquitin-proteasome system.
(ユビキチンプレテアソーム系により制御されている低酸素誘導因子活性を検出する新規投与型生体イメージングプローブ)
著者 :
Takahiro Kuchimaru, Tomoya Suka, Keisuke Hirota, Tetsuya Kadonosono, Shinae Kizaka-Kondoh
DOI :

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2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

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東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系
教授 近藤科江

E-mail : skondoh@bio.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5800

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

地球内部に最も多いブリッジマナイトの結晶選択配向の決定 沈み込んでいくプレートの流れる方向を解明

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地球内部に最も多いブリッジマナイトの結晶選択配向の決定 沈み込んでいくプレートの流れる方向を解明
―火山や地震に影響を与えるマントルダイナミクスの解明に前進―

岡山大学 惑星物質研究所の辻野典秀JSPS特別研究員(PD)、山崎大輔准教授と愛媛大学、神戸大学、公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)、東京工業大学の共同研究グループは、地球内部で最も多く存在するブリッジマナイト[用語1](図1)多結晶体のせん断変形による結晶選択配向[用語2]を実験により解明。スラブ(沈み込んだプレート)近傍の地球下部マントル[用語3]の流れ場(図2)を明らかにしました。本研究結果は10月17日(英国時間午後4時)、英国の科学雑誌「Nature」のLetterとして公開されました。

本研究成果により、地震波異方性が観察されている領域の流れ場を明らかにすることができ、火山や地震に影響を与えるマントルダイナミクスに重要な知見を与えることが期待されます。

ブリッジマナイトの結晶構造

図1. ブリッジマナイトの結晶構造

トンガーケルマディックスラブ近傍の地球マントルの内部構造

図2. トンガーケルマディックスラブ近傍の地球マントルの内部構造

業績

岡山大学 惑星物質研究所の辻野典秀JSPS特別研究員(PD)、山崎大輔准教授と愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の西原遊准教授、神戸大学 大学院理学研究科 惑星学専攻の瀬戸雄介講師、公益財団法人高輝度光科学研究センターの肥後祐司研究員、東京工業大学 理学院の高橋栄一教授らの共同グループは、高圧実験技術の改良により、ブリッジマナイト多結晶体の大歪(だいひずみ)せん断変形実験に成功。SPring-8[用語4]のBL04B1の高輝度単色X線を利用して、回収試料の変形したブリッジマナイト多結晶体の結晶選択配向を決定しました。決定した結晶選択配向をもとに、これまで報告されている地震波速度異方性から、沈み込んでいるスラブの流れの方向を明らかにしました。

背景

地球マントルの物質循環(プレートの沈み込み、プルームの上昇、対流様式等)を理解する上で、マントルのレオロジー(流動特性)を知ることは必要不可欠です。特に、深さ660 km以深の下部マントルはマントル全体の約70体積%を占め、また、下部マントルのおよそ77体積%はブリッジマナイトという鉱物が占めると考えられていることから、ブリッジマナイトの流動特性の解明は下部マントルの流動特性を理解するために必須です。

地球物理学的観測によって、スラブ周辺の下部マントルにおいて、S波[用語5]の地震波速度の異方性が観測されています。この異方性の要因として、マントル鉱物、この場合はブリッジマナイトのせん断変形による結晶選択配向が考えられます。しかしながら、これまで実験的困難さから、下部マントル条件下でせん断変形によって引き起こされるブリッジマナイトの結晶選択配向は明らかとなっていません。そのため、地震波速度の異方性の成因は未解決の問題でした。

見込まれる成果

下部マントル上部の温度圧力条件(25万気圧、1600 ℃)でせん断変形実験を行うことによって、世界で初めて変形に伴うブリッジマナイトの結晶選択配向を明らかにし、 結晶のa面内をc軸方向に転位[用語6]が移動するすべり系が主要になっていると推定しました。これらの結果とこれまでに報告されているブリッジマナイトの弾性定数と組み合わせることにより、下部マントルでのスラブ近傍で観測されている地震波速度異方性がスラブに沿った変形によって説明できることを明示しました。

結晶選択配向は地震波異方性を引き起こす重要な要因のうちの一つです。実験的に各マントル鉱物の変形による結晶選択配向を明らかにすることは、マントルダイナミクスを理解するうえで重要なアプローチの一つです。本研究成果は、これまで、明らかにされていなかったブリッジマナイトのせん断変形誘起の結晶選択配向を明らかにし、スラブの流動方向を確定しました。さらに、本研究での変形実験技術の開発で下部マントル条件での大歪変形実験を可能としたことにより、今後更なる下部マントル鉱物のレオロジー(特に粘性率)に関する重要な知見を提供できるようになると期待されます。

用語説明

[用語1] ブリッジマナイト : 深さ660 km - 2900 kmに広がる下部マントルの最主要鉱物(77体積%)であると考えられている鉱物です。主な組成は(Mg,Fe)SiO3であり、結晶構造はペロブスカイト型構造です。2014年に国際鉱物学連合によりブリッジマナイトという名称が承認されました。この名称は高圧物理学でノーベル物理学賞を受賞したパーシー・ブリッジマンに由来します。

[用語2] 結晶選択配向 : 鉱物の多結晶体の各粒子がランダムな方位を向いているのでなく、ある特定の方位を向いている状態。地球マントルでの結晶選択配向は主に、マントル対流(塑性変形)により発達すると考えられています。

[用語3] マントル : 地球型惑星では金属核の外側に広がる岩石層。地球において、大陸地域では地表下30 - 70 kmから、海洋地域では海底面下約7 kmから約2900 kmの深さまでに広がっています。また、地震学的観測および鉱物学的検討から深さ410 kmまでを上部マントル、深さ410 - 660 kmを遷移層、深さ660 km - 2900 kmを下部マントルと呼びます。

[用語4] SPring-8 : 兵庫県にある世界最大級の大型放射光施設。リング型の施設で、電子を光速程度まで加速して得られる非常に強いX線を用いて、様々な研究が行われています。

[用語5] S波 : Secondary wave(第二波)の略称。進行方向に対し、直行した方向に振動する弾性波です。

[用語6] 転位 : 結晶中に含まれる線状の結晶欠陥。転位が生成され、移動することによって、結晶の変形に要する力は、結晶内での原子間の結合力よりも小さくなります。

論文情報

掲載誌 :
Nature
論文タイトル :
Mantle dynamics inferred from the crystallographic preferred orientation of bridgmanite
「ブリッジマナイトの結晶選択配向から読み解くマントルダイナミクス(仮)」
著者 :
Noriyoshi Tsujino, Yu Nishihara, Daisuke Yamazaki, Yusuke Seto, Yuji Higo, Eiichi Takahashi
DOI :

この研究は辻野典秀JSPS特別研究員の東京工業大学での博士論文研究を発端とし、JSPS KAKENHI Grant Number 15J09669, 25247088, 21109001によって支援されました。

お問い合わせ先

岡山大学 惑星物質研究所
JSPS特別研究員(PD) 辻野典秀

E-mail : tsujino@okayama-u.ac.jp
Tel : 0858-43-3739 / Fax : 0858-43-3755

愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)
准教授 西原遊

E-mail : yunishi@sci.ehime-u.ac.jp
Tel : 089-927-8150 / Fax : 089-927-8405

神戸大学 大学院理学研究科 惑星学専攻
講師 瀬戸雄介

E-mail : seto@crystal.kobe-u.ac.jp
Tel / Fax : 078-803-5742

取材申し込み先

岡山大学 広報・情報戦略室

E-mail : www-adm@adm.okayama-u.ac.jp
Tel : 086-251-7292 / Fax : 086-251-7294

愛媛大学 総務部 広報課

E-mail : koho@stu.ehime-u.ac.jp
Tel : 089-927-9022 / Fax : 089-927-9052

神戸大学 総務部 広報課

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公益財団法人高輝度光科学研究センター
利用推進部 普及啓発課

E-mail : kouhou@spring8.or.jp
Tel : 0791-58-2785 / Fax : 0791-58-2786

東京工業大学 広報センター

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半導体トランジスタ中の欠陥でコヒーレンス制御に成功―ノイズの原因だった欠陥から新たな現象を発見―

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要点

  • 半導体トランジスタの特性を低下させる欠陥のコヒーレント制御に成功
  • トランジスタ電流とマイクロ波が共鳴することで従来と比較して3桁長いコヒーレンス時間(1~40 μ秒)を実現
  • 欠陥による量子2準位系は将来の量子コンピュータ[用語1]への応用が可能

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 量子ナノエレクトロニクス研究コアの小田俊理教授、テノリオ・パール・J・O特任助教、E・D・ハーブシュレブ日本学術振興会外国人特別研究員の研究グループは、ケンブリッジ大学工学部のW・I・ミルン教授(世界トップレベルの海外大学教員招聘プログラムで東工大に滞在中)と共同で、半導体デバイスである電界効果トランジスタ(FET)の酸化膜中の欠陥について、通常ノイズとして扱うところを、注意深く制御し、それがコヒーレンス時間[用語2]の長い2準位状態[用語3]になることを発見した。この2準位状態は、既存のスーパーコンピュータを凌駕する計算能力を持つ量子コンピュータへの応用が期待される。

この成果は、2016年9月19日発行のNature Materials誌オンライン版に掲載された。

背景

電界効果トランジスタ(FET)の半導体/酸化膜界面の欠陥は、電子をトラップ(捕獲)して動かなくするため、半導体デバイスの性能を低下させるという問題がある。特に微細FETや低温下での動作では、欠陥によるトラップへの電子の出入りで電流が顕著に変化するため、それが大きなノイズ源となり、対策が求められていた。

近年、従来のスーパーコンピュータでは何年もかかる計算が、量子コンピュータを使用すると短時間で可能になることがわかってきた。量子コンピュータの実現のためには、安定した量子2準位系と長いコヒーレンス時間を実現することが必要だった。

研究の経緯

小田俊理教授は長年、ケンブリッジ大学 工学部のW・I・ミルン教授(世界トップレベルの海外大学教員招聘プログラムで東工大に滞在中)と共同研究を実施してきた。2014年にケンブリッジ大学 ミルン教授の研究室で博士の学位を取得したテノリオ・パール・J・O博士は、学位取得後直ぐに小田研究室の特任助教に採用され、同じくケンブリッジ大学で博士を取得しJSPS外国人特別研究員として小田研究室に滞在中のE・D・ハーブシュレブ博士と協力して、電界効果トランジスタにおけるゲート酸化膜中の欠陥が作る電子状態とマイクロ波の相互作用を低温下で測定した。欠陥は電子をトラップ(捕獲)して動かなくするため、半導体デバイスの性能を低下させ、トラップへの電子の出入りは、ノイズとして取り扱われる。しかし、トラップの性質を注意深く制御すると、コヒーレンス時間の長い2準位状態になることを発見した。

研究成果

今回、図(a)に示すFETを作製した。半導体/酸化膜界面に多くの欠陥準位を導入するため、酸化膜の素材にはTiO2やAl2O3を用いた。実験では、温度が80 Kの時、電極(ソース・ドレイン電極[用語4])間のチャネルを流れる電流が図(b)に示すように時間の経過と共に大きくなったり小さくなったりする。これはランダムテレグラフノイズ(RTN)と呼ばれる。

図(b)上部に示すように、欠陥準位に電子が捕獲された状態と解放された状態で電流の輸送経路が変わるためにRTNが発生する。さらに4.2 Kに冷却すると熱エネルギーが小さくなるため、RTNは凍結されてほとんど観測されなくなる。この状態で、周波数0.8~2.5 GHzのマイクロ波を照射したときのチャネル電流を図(c)に示した。マイクロ波と欠陥にある電子との共鳴現象により電流が極端に増加して、Q値[用語5]が100,000におよぶ鋭い共鳴ピークを示した。このピークの位置は大変安定で、数日間放置しても変わらなかった。図(c)に周波数スケールを拡大表示したが、ピークの形状はファノ型とローレンツ型[用語6]に分類することができる。

図(d)にはAl2O3試料の状態密度分布(赤)、電流分布(青)およびコヒーレンス時間(挿入図)のヒストグラムを示した。TiO2試料の場合にはコヒーレンス時間は1~40 μ秒に達し、これまでに発表された電荷ベースQubit(100ナノ秒)と比較して3桁大きい値を示している。これは、将来の量子コンピュータへの応用が期待できる特性である。

(a)本研究で用いた電界効果トランジスタの模式図。(b)欠陥(トラップ)に捕獲された電子とマイクロ波の相互作用により、トランジスタチャネルの電流経路が変化する様子の模式図(上)とトラップに出入りする電子による電流の時間変化、80 Kで測定(下)。(c)チャネル電流の広帯域マイクロ波スペクトル。4.2 Kで測定。鋭いスパイク状の電流変化は高分解能プロット(挿入図)でファノ型とローレンツ型に分離される。(d)状態密度分布(赤)と電流分布(青)およびコヒーレンス時間(挿入図)のヒストグラム。
図.
(a)本研究で用いた電界効果トランジスタの模式図。
(b)欠陥(トラップ)に捕獲された電子とマイクロ波の相互作用により、トランジスタチャネルの電流経路が変化する様子の模式図(上)とトラップに出入りする電子による電流の時間変化、80 Kで測定(下)。
(c)チャネル電流の広帯域マイクロ波スペクトル。4.2 Kで測定。鋭いスパイク状の電流変化は高分解能プロット(挿入図)でファノ型とローレンツ型に分離される。
(d)状態密度分布(赤)と電流分布(青)およびコヒーレンス時間(挿入図)のヒストグラム。

今後の展開

FET中の欠陥のミクロな起源について解明していく必要がある。それは、高いQ値の共鳴現象が材料由来ではなく、また、長いコヒーレンス時間を持つことからミクロな起源の候補は絞られるが、さらに研究が必要となる。

今後は、今回発見した現象を活用して量子コンピュータを実現するため、ラビ振動[用語7]の観測や量子ゲート[用語8]の動作、エンタングルメント[用語9]の観察などを行っていく。

用語説明

[用語1] 量子コンピュータ : 通常のコンピュータは“1”と“0”の2値で逐次的に計算するが、量子コンピュータでは“1”と“0”の重ね合わせ状態で計算するので、複雑な計算を短時間で処理することができる。

[用語2] コヒーレンス時間 : 量子干渉状態が光や電子との衝突によって壊れるまでの時間。この時間内に演算を行う必要がある。

[用語3] 2準位状態 : 物理的に明確に定義できる2つのエネルギー準位の重ね合わせが、量子計算の最小単位(量子ビット)になる。

[用語4] ソース・ドレイン電極 : MOS(金属/酸化物/半導体)型FETでは、金属(ゲート)電極に電圧を掛けると、半導体のソース電極およびドレイン電極の間に電子が湧いてチャネルが形成される。

[用語5] Q値 : 共鳴スペクトルピークの鋭さを表す。不純物による散乱があるとQ値は低くなる。

[用語6] ファノ型とローレンツ型 : ローレンツ型は左右対称のスペクトルピークであるのに対し、ファノ型は、トラップされた電子以外の原因による低Q値ピークの影響を受けて非対称なピークを形成する。

[用語7] ラビ振動 : 2準位系の電子がマイクロ波の刺激に共鳴して基底状態と励起状態の間で振動を起こす現象。

[用語8] 量子ゲート : 古典コンピュータが論理ゲートで演算するように、量子コンピュータでは量子ビットを組みあわせた量子ゲートで計算を行う。

[用語9] エンタングルメント : 離れた場所にある2個の粒子の状態が“1”と“0”の重ね合わせの状態にあり、一つの粒子の状態を測定して“1”と判ったとき、離れた場所にいる他方の粒子の状態は“0”に確定するという、量子力学に特有な現象。

論文情報

掲載誌 :
Nature Materials
論文タイトル :
Observation and coherent control of interface-induced electronic resonances in a field-effect transistor
(和訳:電界効果トランジスタ中の界面電子共鳴の観測とコヒーレント制御)
著者 :
Jaime Oscar Tenorio-Pearl1, 2, Ernst David Herbschleb1, Stephen Fleming2, Celestino Creatore3, Shunri Oda1, William Milne1,2, and Alex Chin3
所属 :
1Quantum Nanoelectronics Research Center, IIR, Tokyo Institute of Technology.
2Electrical Engineering Division, Department of Engineering, University of Cambridge.
3Cavendish Laboratory, University of Cambridge.
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所
教授 小田俊理

E-mail : soda@pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3048 / Fax : 03-5734-3565

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
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アフリカツメガエルの複雑なゲノムを解読―脊椎動物への進化の原動力「全ゲノム重複」の謎に迫る―

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発表のポイント

  • 2種類の祖先種が異種交配して「全ゲノムが重複」したとされるアフリカツメガエル。その複雑なゲノムの全構造を明らかにした。これにより、ついに全ての主要モデル生物のゲノム情報が出揃った。
  • 祖先種から受け継いだ2種類のゲノム(サブゲノム)を特定することに成功し、約1800万年前の「全ゲノム重複」の後に、ゲノムがどのように進化したかを初めて明らかにした。
  • 本ゲノム情報は、生命科学の発展に多大な貢献をするだけではなく、約5億年前に脊椎動物が誕生する過程で起きたとされる「全ゲノム重複」の謎を解く鍵、ロゼッタストーンとなる。

発表概要

東京工業大学 生命理工学院の田中利明助教が参画しているアフリカツメガエルゲノム国際コンソーシアムは、アフリカツメガエルの複雑なゲノムの全構造を明らかにしました。

さまざまな生物の全ゲノム解読は、全遺伝子の解明を通じて広く生命科学に寄与するとともに、生物進化の研究に多くの知見をもたらしてきました。多くの動物は父方と母方からの同一のゲノムをもつ「二倍体」ですが、アフリカツメガエルは、異種交配と全ゲノム重複により1つの生物の中に異なる2種類のゲノムをもった「異質四倍体」とされていました。そのため、非常に有用なモデル生物であるにもかかわらず、全ゲノム解読が非常に困難と諦められ、主要モデル生物の中で唯一行われていませんでした。しかし日本とアメリカを中心とする国際コンソーシアムは、アフリカツメガエルの全ゲノム解読に挑み、見事その全貌を明らかにしました。得られた情報は今後生物学から医学に至るさまざまな研究分野に大きく貢献すると期待できます。加えて、アフリカツメガエルのゲノムの中にある2種類のゲノム(サブゲノム)が別々の染色体のセットに分かれて存在するという重要な発見をしました。それにより、このカエルは約1800万年前に、2つの種が異種交配と全ゲノム重複を起こして誕生した異質四倍体であること、その後2つのサブゲノムが1つの生物の中で異なる進化を辿ったことが明確に示されました。今日の地球上には実に多様な種類の脊椎動物が生息し繁栄していますが、その最大の要因と考えられるのが約5億年前の古生代カンブリア紀に起きたとされる「2回の全ゲノム重複」です。その謎を解くための重要な鍵、いわゆるロゼッタストーンとしてアフリカツメガエルのサブゲノムの進化の仕組みが役立つことになります。これは生命科学における画期的な成果です。

この研究成果は、英国科学雑誌「Nature(ネイチャー))」に10月20日付けで掲載され、注目すべき成果として同誌の表紙を飾りました。

発表内容

背景と課題

1つの生物がもつ全遺伝情報をゲノム[用語1]と言い、その本体はDNAです。今日、種々の生物のゲノムDNAが解読されており、そこで得られたゲノム情報は生命科学の発展に大きく寄与しています。それと共にゲノム情報を生物間で比較することは、生物進化の研究に多くの知見をもたらしてくれます。それは、数十億年の生物の歴史のなかで途切れることなく子孫へと受け継がれてきたゲノムを調べれば、その中に痕跡として残されている進化過程を探し出すことができると考えられるからです。これまで脊椎動物のゲノム解読は、まずヒトで行われ、その後はマウスやゼブラフィッシュ、メダカなど世界的に多くの研究者に用いられている実験モデル生物を中心に行われてきました(図1)。アフリカツメガエル[用語2](図2)は、1950年代から現在に至るまで、動物の発生の仕組みや細胞の性質を調べる上で非常に有用な実験モデル動物として使われてきました。2012年に山中伸弥博士と共にノーベル生理学・医学賞を受賞したジョン・ガードン博士はこのカエルを用いて、「細胞の初期化」を初めて実験的に示したことで有名です。しかしながら、研究の歴史が古くこれまで多くの重要な発見をもたらしてきた主要モデル生物の中で、唯一ゲノム解読されていなかったのが、複雑なゲノムのため解読が困難とされていたアフリカツメガエルでした。

脊椎動物の系統樹と全ゲノム重複。系統樹は分類群の分岐年代に従って表し、右端にゲノム解読された動物名を示す。全ゲノム重複(星印)は、脊椎動物の共通祖先種で約5億年前に2回起きたとされている。さらに真骨魚類の共通祖先種では約3.2億年前に3回目の全ゲノム重複が起き、ニジマスの系統では1億年前にさらに4回目の全ゲノム重複が起きた。両生類ではアフリカツメガエルの系統で1800万年前に3回目の全ゲノム重複が起きた。
図1.
脊椎動物の系統樹と全ゲノム重複。系統樹は分類群の分岐年代に従って表し、右端にゲノム解読された動物名を示す。全ゲノム重複(星印)は、脊椎動物の共通祖先種で約5億年前に2回起きたとされている。さらに真骨魚類の共通祖先種では約3.2億年前に3回目の全ゲノム重複が起き、ニジマスの系統では1億年前にさらに4回目の全ゲノム重複が起きた。両生類ではアフリカツメガエルの系統で1800万年前に3回目の全ゲノム重複が起きた。
アフリカツメガエルとネッタイツメガエル。(a)成体メスの比較。外見は良く似ているが、アフリカツメガエルの方がネッタイツメガエルより大きい。(b)頭部の拡大図。アフリカツメガエル(上)とネッタイツメガエル(下)では顔つきが異なる。このアフリカツメガエルは近交系のJ系統である。(c)胚の比較。アフリカツメガエル(上)とネッタイツメガエル(下)の胚。アフリカツメガエルとネッタイツメガエルの卵の直径はそれぞれ1.2 mmと0.7 mmであり、アフリカツメガエルの方が大きく、この時期の胚も大きい。
図2.
アフリカツメガエルとネッタイツメガエル。(a)成体メスの比較。外見は良く似ているが、アフリカツメガエルの方がネッタイツメガエルより大きい。(b)頭部の拡大図。アフリカツメガエル(上)とネッタイツメガエル(下)では顔つきが異なる。このアフリカツメガエルは近交系のJ系統である。(c)胚の比較。アフリカツメガエル(上)とネッタイツメガエル(下)の胚。アフリカツメガエルとネッタイツメガエルの卵の直径はそれぞれ1.2 mmと0.7 mmであり、アフリカツメガエルの方が大きく、この時期の胚も大きい。

多くの生物は、父方と母方から受け継いだ同一種類のゲノムを2つもつ「二倍体」ですが、1つの生物の中に2種類のゲノムを2つずつもつものがあり、これを「異質四倍体[用語3]」と言います(図3)。図3に示すように異質四倍体となるきっかけは近縁な2つの種の異種交配であり、そのあと染色体数の倍加、すなわち全ゲノム重複[用語4]が起こり異質四倍体となります。アフリカツメガエルは、新生代の頃に2つの種の異種交配で生じた異質四倍体の種であると考えられていました。しかしこれら2つの祖先種は既に絶滅し、現存していません。このようにアフリカツメガエルのゲノムはいわば、1種のカエルの中に2種の絶滅した祖先種ガエルのゲノム(これをサブゲノム[用語5]と言います;図4)が共存した状態といえます。したがって全ゲノム解読はこれらの2種類の互いに良く似たサブゲノムを区別して解読する必要があるため、非常にチャレンジングでありました。しかし、主要モデル生物として生命科学の発展に不可欠であること、また、脊椎動物の初期の進化の過程において起きたとされる2回の全ゲノム重複に重要な示唆を与えることから、2009年に日本と米国で期を同じくして独立にプロジェクトチームが立ち上がり、全ゲノム解読が始まりました。

異質四倍体は雑種の全ゲノム重複によってつくられる。ここでは簡単にするため祖先種の染色体は1対のみを描いてある。実際の染色体数は、祖先種は9対もち、アフリカツメガエルは18対をもつ。
図3.
異質四倍体は雑種の全ゲノム重複によってつくられる。ここでは簡単にするため祖先種の染色体は1対のみを描いてある。実際の染色体数は、祖先種は9対もち、アフリカツメガエルは18対をもつ。
異質四倍体は祖先種に由来する2つのサブゲノムをもつ。ここでは簡単にするため祖先種aとbの染色体は1番と2番の2対のみを描いた(実際は祖先種は9対でアフリカツメガエルは18対である)。異質四倍体化の直後は、同祖染色体間に区別がないが現在までに一方が短くなったと考えられる。そこで長い方をL(long)、短い方をS(short)と命名した。今回、詳細なゲノム解析を行った結果、染色体LのセットとSのセットが、祖先種由来のゲノム(これをサブゲノムという)にそれぞれ対応することが示された。そこで、2つのサブゲノムをLとSと命名し、さらに祖先種もLとSと命名した。この発見により、倍数化後のサブゲノムの変化を解析することが可能となった。
図4.
異質四倍体は祖先種に由来する2つのサブゲノムをもつ。ここでは簡単にするため祖先種aとbの染色体は1番と2番の2対のみを描いた(実際は祖先種は9対でアフリカツメガエルは18対である)。異質四倍体化の直後は、同祖染色体間に区別がないが現在までに一方が短くなったと考えられる。そこで長い方をL(long)、短い方をS(short)と命名した。今回、詳細なゲノム解析を行った結果、染色体LのセットとSのセットが、祖先種由来のゲノム(これをサブゲノムという)にそれぞれ対応することが示された。そこで、2つのサブゲノムをLとSと命名し、さらに祖先種もLとSと命名した。この発見により、倍数化後のサブゲノムの変化を解析することが可能となった。

研究内容

日本チーム(代表:東京大学・平良眞規)と米国チーム(代表:カリフォルニア大学・ダニエル・ロクサーとリチャード・ハーランド)は、2012年に国際コンソーシアムとして共同でゲノム解読を行うことで合意しました。それを可能にしたのが、日本が独自に作出した近交系動物(J系統[用語6]、図2)を、両チームが用いたことです。J系統はゲノムのDNA塩基配列に個体差がないため、2種の祖先種由来のサブゲノムの塩基配列の違いを浮かび上がらせることができました。それにより米国チームは、短く断片化したDNAの塩基配列を明らかにし、それらをパズルのピースのようにつなげていくことが可能となりました。しかしそれだけではよく似た2つのサブゲノム由来の塩基配列を区別して解読するには不十分です。日本チームの国立遺伝学研究所の藤山秋佐夫・豊田敦グループは、非常に長いDNA断片の塩基配列を明らかにし、名古屋大学の松田洋一・宇野好宣グループがそれらのDNA断片がアフリカツメガエルの染色体18対のうちどの染色体に対応するかを何百も調べました。さらに日本ツメガエル研究会(XCIJ)を母体とする研究グループ(広島大学・鈴木厚、北海道大学・福井彰雅、長浜バイオ大学・荻野肇、東京大学・近藤真理子ら16名)が、根気の要る緻密な確認作業を丹念に行いました。これらの共同作業により、ようやくゲノムの全体を、しかも非常に正確に、染色体ごとに解読することに成功しました。

次に、解読された全ゲノムDNA塩基配列を用いた解析を行いました。広島大学の彦坂暁グループは、「化石化した」トランスポゾン[用語7]のDNA塩基配列に注目することで、2つの祖先種から受け継いだサブゲノムをみごとに区別しました(図4と図5)。驚いたことに、2つのサブゲノムは1つの細胞の中でそれぞれが9本の染色体のセットとして維持されていました。つまり絶滅した祖先種それぞれがもっていた9本の染色体のセットがほぼそのままアフリカツメガエルの中に残っていたことになります。しかも注意深く比較すると、一方の染色体セットの染色体の長さが他方に比べて少しずつ短いことが分かりました(図4と図5)。そこで長い染色体のセットをL(long)、短い方をS(short)と名付け、それらの起源となる絶滅した祖先種もLとS、さらにそれに対応するサブゲノムもLとSと名付けました。

アフリカツメガエルのサブゲノムの同定。サブゲノムSに特異的な“化石化”DNA配列を用いて、染色体(青)をFISH法で赤く染色したもの。染色体1番~9番(9_10番)のSの染色体により多くの赤い染色が見られる。これらは祖先種Sに由来したものと考えられる。9番目の染色体は、ネッタイツメガエルの9番と10番染色体が融合した染色体に相当するため染色体9_10番と呼ぶ。
図5.
アフリカツメガエルのサブゲノムの同定。サブゲノムSに特異的な“化石化”DNA配列を用いて、染色体(青)をFISH法で赤く染色したもの。染色体1番~9番(9_10番)のSの染色体により多くの赤い染色が見られる。これらは祖先種Sに由来したものと考えられる。9番目の染色体は、ネッタイツメガエルの9番と10番染色体が融合した染色体に相当するため染色体9_10番と呼ぶ。

サブゲノムLとSが区別できたことで、2つの祖先種が誕生したのが約3400万年前であること、それらが異種交配して異質四倍体になったのが、新生代の中新世に入った約1800万年前であることが分かりました(図4)。アフリカツメガエルの遺伝子はゲノム中に全部で45,099個見つかりました。この数は二倍体の近縁の種のネッタイツメガエル[用語8]の約2倍でした(表1)。染色体に存在する遺伝子を対応させると、ネッタイツメガエルの1本に対してアフリカツメガエルの2本の染色体LとSが丁度対応しました。そこでさらに詳しく比較をすると、染色体セットLの方がネッタイツメガエルの染色体に良く似ており、染色体セットSの方がより多くの遺伝子が無くなっていることが分かりました。さらに使われ方にも大きな差があり、染色体セットLに存在する遺伝子の方がより多く使われていました。これらの結果から、異質四倍体になる時の全ゲノム重複の後、どのようにサブゲノムが進化するかが初めて明らかになりました。

表1. 遺伝子数の比較と同祖遺伝子の保持について

 
ネッタイツメガエル
アフリカツメガエル
全遺伝子数
約21,000
45,099
解析した遺伝子数
15,613
24,419
1対2
8,806
17,612
1対1
6,807
6,807
Lの遺伝子数
-
13,781
Sの遺伝子数
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10,241

結論と今後の展望

では異質四倍体になることの利点は何だったのでしょうか。ツメガエル属のカエルの生息域を見てみますと、二倍体の種は赤道付近に限られていますが、異質四倍体の種は生息域を大きく広げています(図6)。この広い生息域には、アフリカツメガエルを含めた、幾つもの異質四倍体の種が生息していますが、それらの種はいずれも約1800万年前に一度だけ起きた異質四倍体化が基になっています。このように異質四倍体となった最初の種は、異なる2つのサブゲノムを獲得したことで、環境適応と生存競争に打ち勝つ進化の潜在能力が備わり、その結果、幾つもの種に進化しながら生息域を広げて行ったと考えられます。二倍体の祖先種が絶滅したのも、2つの種のそれぞれの優れた遺伝子をゲノムに合わせもった異質四倍体の子孫に凌駕されたため、と想像するに難くありません。

異質倍数化により何がもたらされたか。アフリカにおける、ツメガエル属の二倍体種と異質四倍体種の生息域を示す(Evans et al, 2004改変)。二倍体種は赤道付近の熱帯地方に限られているが、四倍体種はチャドから南アフリカまで広く分布する。このことから、異質四倍体化により環境適応能力が増して広範囲に生活範囲を広げたと考えられる。なお、二倍体のネッタイツメガエルの適温は26度前後、異質四倍体のアフリカツメガエルは14~23度である。
図6.
異質倍数化により何がもたらされたか。アフリカにおける、ツメガエル属の二倍体種と異質四倍体種の生息域を示す(Evans et al, 2004改変)。二倍体種は赤道付近の熱帯地方に限られているが、四倍体種はチャドから南アフリカまで広く分布する。このことから、異質四倍体化により環境適応能力が増して広範囲に生活範囲を広げたと考えられる。なお、二倍体のネッタイツメガエルの適温は26度前後、異質四倍体のアフリカツメガエルは14~23度である。

全ゲノム重複は生物の進化の過程でしばしば起こる現象と考えられています。その例が、約5億年前の古生代カンブリア紀に脊椎動物が出現する過程で起きたとされる「2回の全ゲノム重複」です。これによって遺伝子数を格段に増やしたことが、脊椎動物の誕生とその後の多様化と繁栄をもたらした要因であったと考えられています。その後、脊椎動物の中には、さらに3回目、4回目の全ゲノム重複を起こしたものがいます。例えば、魚類の仲間の真骨魚類の系統では約3.2億年前に3回目の、さらにニジマスの系統では約1億年前に4回目の全ゲノム重複を起こしています(図1)。しかしいずれもゲノム重複後に1億年以上も経過しているため、サブゲノムを明らかにできていません。今回、約1800万年前という比較的最近に全ゲノム重複が起こったアフリカツメガエルのゲノムを解読することで、初めてサブゲノムを区別することができ、それを基に重複後のサブゲノムの変化を初めて明らかにすることができました。ツメガエル属のカエルの中でも、さらに4回目と5回目の全ゲノム重複が想定される種が見つかっています。今回のような解析をさらに進めることで、これまで謎であった約5億年前に起こったとされる脊椎動物の初期の進化での2回の全ゲノム重複や、約3.2億年前や約1億年前に起こったとされる魚類の系統での全ゲノム重複が、その後の進化にどのようなインパクトを与えたかを読み解く鍵、すなわちロゼッタストーン[用語9]になるものと期待されます。このようにゲノムの中に痕跡として残されている脊椎動物の進化の道筋の謎を解き明かすことは、人類にとっての大きな知的財産となります。

全ゲノム情報の利用方法は多岐に渡ります。アフリカツメガエルはこれまでもモデル生物として、胚の発生や細胞の機能などにおける遺伝子の役割やその分子メカニズムの解析に使われてきましたが、今回の研究で得られた全ゲノム情報を用いることで、さらに多くの知見がもたらされると期待されます。例えば、遺伝子を改変する「ゲノム編集」という技術が近年注目されていますが、全ゲノム情報を基にこの技術を使えば、任意の遺伝子を改変してその遺伝子のもつ役割を解析することができます。アフリカツメガエルを用いたこれらの解析は、ヒトの遺伝的疾患の診断や治療などに役立つものであり、生命科学の発展に大きく貢献するものです。

用語説明

[用語1] ゲノム : ゲノムとは遺伝子の基本セットで、父親と母親からそれぞれ1セットずつ子に受け継がれる。その実体であるDNAはA、G、C、Tの4つの文字(塩基)からなり、DNAの長さ(塩基の数)と塩基の並び順が生物を特徴付ける。ヒトのゲノムのDNA塩基配列の数は約31億である。このようなゲノムのDNA塩基配列を全て決定することを解読という。またDNAはタンパク質に巻き付いて染色体と呼ばれる構造体となり、細胞の中に存在している。ヒトは23対の染色体をもつ。

[用語2] アフリカツメガエル : 両生類・無尾目(カエル目)ツメガエル属に属し、学名をXenopus laevisといい、ゼノパスとも呼ばれる。他のカエルと異なり一生を水の中で過ごす。南アフリカ原産で、日本各地で養殖されており、発生学、細胞生物学、生化学、薬学、医学などで広く使われているモデル生物である。18対の染色体をもち、ゲノムのDNA塩基配列は約31億である。

[用語3] 異質四倍体 : 図3を参照。異なる2つの祖先種が異種交配すると、通常は精子や卵子を作れず、子孫を残すことができない。しかし、何らかの偶然で雑種ゲノムが全ゲノム重複を起こすと、精子や卵子を作れるようになり、子孫を残せるようになる。

[用語4] 全ゲノム重複 : 生物が持つ遺伝情報の1セットであるゲノムが、そのまま倍加することを全ゲノム重複という。全ゲノム重複で遺伝子数が一度に倍になると、余剰な遺伝子に新たな機能をもたせることができるため、生物進化の大きな原動力の一つとされている。脊椎動物は今日の地球上で最も繁栄している生物種の一つだが、その要因として今から5億年前にその祖先種において2回起きた全ゲノム重複が考えられている(図1参照)。しかしその後に5億年も経ってしまったため、現存する脊椎動物のゲノムにはその痕跡が断片的に見られるのみである。

[用語5] サブゲノム : 異質四倍体のゲノムのうち、一方の祖先種から由来するゲノムのこと。図4を参照。

[用語6] J系統 : 片桐千明と栃内新(北海道大学)によって1973年からオスメス一番(ひとつがい)を用いて樹立された、アフリカツメガエルで唯一の高度に純化された近交系。近交系とは、兄弟姉妹の集団から近親交配を繰り返して得られた、父親由来のゲノムと母親由来のゲノムが同じになった系統のことである。JはJapanから命名。現在その系統が井筒ゆみ(新潟大学)により維持され、免疫学の実験に用いられている。

[用語7] トランスポゾン : 動く遺伝子と呼ばれ、自身のDNA塩基配列をコピーしながらゲノムの中で位置を変えつつ増殖していく。たくさんの種類が知られているが、動物種ごとに特有な配列を持つものが存在する。また、長い時間の間にその転移活性がなくなり、それ以上増殖しなくなったものは「化石化」したと言われ、進化学的にゲノムの起源を探る貴重な手がかりとなる。

[用語8] ネッタイツメガエル : アフリカツメガエルと同じツメガエル属に属する近縁なカエルで、両者は約4,800万年前に分岐した(図1参照)。ネッタイツメガエルは異種交配および異質四倍体化しておらず、外見はアフリカツメガエルと良く似た形だが体のサイズが小さい(図2)。ゲノム解読は2010年に発表された。

[用語9] ロゼッタストーン : エジプトのロゼッタで1799年に発見された石碑の一部と考えられる石版。碑文には同一の文章が3つの言語(ヒエログリフ、デモティック、ギリシア文字)で記述されており、1803年にギリシア文字の部分が完全に翻訳され、それを基に20年後にヒエログリフとデモティックの文章が解読された。これによって、それまで解読不能であったヒエログリフが初めて解読可能となった。現在ではこの言葉は「暗号を解くための決定的な鍵」という意味で用いられている。

論文情報

掲載誌 :
Nature(出版日:10月20日)
論文タイトル :
Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis
(異質四倍体であるアフリカツメガエルXenopus laevisのゲノム進化)
著者 :
全著者数は74名、うち日本の著者は30名(海外在住も含む)。
下記に3名の筆頭著者と3名の責任著者を以下に示す。
Adam Session1, Yoshinobu Uno1, Taejoon Kwon1, Richard Harland*, Masanori Taira*, Daniel Rokhsar*
DOI :

本論文に関わった日本チームの機関と共著者一覧(18機関、23研究室)

  • 東京大学(平良眞規、近藤真理子、道上達男、鈴木穣)
  • 国立遺伝学研究所(藤山秋佐夫、豊田敦)
  • 名古屋大学(松田洋一、宇野好宣)
  • 広島大学(高橋秀治、彦坂暁、鈴木厚)
  • 基礎生物学研究所(上野直人、山本隆正、高木知世)
  • 産業技術総合研究所(浅島誠、原本悦和、伊藤弓弦)
  • 北海道大学(福井彰雅)
  • 長浜バイオ大学(荻野肇)
  • 山形大学(越智陽城)
  • 国立成育医療研究センター(黒木陽子)
  • 東京工業大学(田中利明)
  • 徳島大学(渡部稔)
  • 立教大学(木下勉)
  • メリーランド大学(太田裕子)
  • 北里大学(回渕修治、伊藤道彦)
  • バージニア大学(中山卓哉)
  • 新潟大学(井筒ゆみ)
  • 沖縄科学技術大学院大学(安岡有理)

主な研究費

科研費新学術研究「ゲノム支援」(国立遺伝学研究所、東京大学、国立成育医療研究センター)、科研費・基盤(A、B、C)

その他の主な機関と主な共著者

  • カリフォルニア大学バークリー校(米国)(アダム・セッション、ダニエル・ロクサー、リチャード・ハーランド)
  • ウルサン国立科学技術研究所(韓国)(テジュン・クワン)
  • ラドバウンド分子生命科学研究所(オランダ)(サイモン・ファン・ヘーリンゲン、ガート・ヴィーンストラ)
  • ソーク研究所(米国)(イアン・キグレイ)
  • 沖縄科学技術大学院大学(日本)(ダニエル・ロクサー、オレグ・シマコフ)

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻
准教授 平良眞規

E-mail : m_taira@bs.s.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-4434

東京工業大学 生命理工学院
助教 田中利明

E-mail : ttanaka@bio.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5747

取材申し込み先

東京大学 大学院理学系研究科・理学部
特任専門職員 武田加奈子、教授 広報室長 山内薫

E-mail : kouhou.s@gs.mail.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-0654

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

TAIST-Tokyo Tech 2015年度修了式を開催

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7月21日、タイ王国パトゥムタニー県タイランドサイエンスパーク内のタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)において、TAIST-Tokyo Tech (TAIST)の修了式が挙行され、51名の学生が修了証書を授与されました。当日は多数の来賓のご列席を賜り、盛大に修了生の門出を祝しました。

丸山俊夫理事、オムジャイ・サイメック副長官と記念撮影

丸山俊夫理事、オムジャイ・サイメック副長官と記念撮影

挨拶するNSTDAのオムジャイ・サイメック副長官
挨拶するNSTDAのオムジャイ・サイメック副長官

TAISTは、タイ政府からの要望により、理工系分野での高度な「ものつくり人材」の育成と研究開発のハブを目指して、2007年に設立された国際連携大学院です。タイの先端研究機関であるNSTDA 、タイの4大学(キングモンクット工科大学ラカバン校(KMITL)、キングモンクット工科大学トンブリ校(KMUTT)、カセサート大学 、およびタマサート大学(SIIT))、東工大の連携により運営され、今年6月に10周年を迎えました。今回の修了生51名を含め、これまでに215名の修了生を輩出してきました。

修了式では、NSTDAからオムジャイ・サイメック副長官、本学から丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)、タイの4大学から代表者が出席し、修了生たちに祝辞を述べました。また、在タイ日本国大使館の福島秀夫臨時代理大使からも、修了生へのお祝いの言葉をいただきました。

  • 挨拶する本学の丸山俊夫理事・副学長

    挨拶する本学の丸山俊夫理事・副学長

  • 挨拶する在タイ日本国大使館の福島秀夫臨時代理大使

    挨拶する在タイ日本国大使館の福島秀夫臨時代理大使

修了生は、丸山理事・副学長からプログラム修了証書を、サイメック副長官から記念品を授与されました。また式典の最後には、修了生およびTAIST協力教員らによる集合写真の撮影も行いました。

修了するみなさんと協力教員ら

修了するみなさんと協力教員ら

修了生の進路は、東工大を含む博士後期課程への進学、民間企業や政府機関への就職などさまざまです。修了生がTAISTで学んだ知識や経験を活かし、大いに活躍することが期待されます。

東工大基金

このプロジェクトは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

国際部国際事業課 TAIST事務室

E-mail : taist@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2237


土星の輪、誕生の謎を解明

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神戸大学 大学院理学研究科の兵頭龍樹研究員、大槻圭史教授、東京工業大学 地球生命研究所の玄田英典特任准教授、パリ地球物理研究所/パリ・ディドゥロ大学のシャノーズ教授の研究グループは、コンピュータ・シミュレーションを用いた研究に基づき、土星リング形成に関する新たなモデルを発表しました。本研究の結果は他の巨大惑星にも適用でき、土星と天王星のリング組成の違いも説明可能です。この研究成果は10月6日に米国の国際学術雑誌 Icarusにオンライン掲載されました。

ポイント

  • 土星、天王星、海王星などの巨大惑星は多様なリングを持つ。観測によると土星リングは95%以上が氷から成るが、天王星や海王星のリングは岩石成分も多く含むと考えられている。このような多様性をもつ巨大惑星リングの起源は未解決である。
  • 本研究では、冥王星サイズのカイパーベルト天体が巨大惑星の近くを通過した際に惑星からの潮汐力により破壊される過程をコンピュータ・シミュレーションを用いて調べた。その結果、部分的に破壊されたカイパーベルト天体の破片の一部が、惑星の周囲に捕獲されリングが形成されうることを初めて明らかにした。
  • 内部に岩石核、外側に氷マントルという二層構造をもつ天体が巨大惑星の近くを通過する際、岩石核まで破壊・捕獲されれば岩石質も含むリングが形成されるのに対し、氷マントルのみが破壊・捕獲されると氷からなるリングが形成される。本研究によれば、このようなメカニズムによって、土星と天王星のリング組成の違いも説明できる。

研究の背景

太陽系の巨大惑星は非常に多様性に富むリングをもっている。例えば観測によると、土星リング粒子は95%以上が氷から成るが、天王星や海王星のリングは暗く、リングを構成する粒子は岩石成分も多く含むことが示唆されている。

17世紀に初めて土星リングが観測されて以来、地上の望遠鏡のほか、探査機ボイジャーやカッシーニによってリングの詳細な観測が進んできた。しかし、リングの起源には不明な部分が多く、またその多様性の原因を説明することはできていなかった。

探査機カッシーニによる土星リングの観測画像
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した天王星リングの観測画像
図1.
(左)探査機カッシーニによる土星リングの観測画像。NASA提供outer
(右)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した天王星リングの観測画像。NASA提供outer

研究の内容

本研究では、約40億年前に太陽系内で起こった“後期重爆撃期[用語1]“と呼ばれる巨大惑星の軌道不安定期に注目した。かつて太陽系外縁の海王星以遠の軌道には冥王星サイズ(地球の約5分の1の大きさ)のカイパーベルト天体[用語2]が数千個存在していたと考えられている。そこで本研究ではまず、後期重爆撃期にこのような大きなサイズのカイパーベルト天体が、巨大惑星からの潮汐力により破壊されるくらい惑星から十分近いところを通過する確率を見積もった。その結果、土星、天王星、海王星は、少なくとも数回のそのような大きな天体の近接遭遇を経験することがわかった。

次に、そのように大きなカイパーベルト天体が巨大惑星の近傍を通過する際に惑星からの潮汐力を受けて破壊される過程を、コンピュータ・シミュレーションを用いて調べた(図2)。シミュレーションの結果は、カイパーベルト天体の初期の自転の状態、惑星への最接近距離などによって様々である。しかし多くの場合で、破壊されたカイパーベルト天体の初期質量の0.1~10%程度の破片が、巨大惑星周りに捕獲されることがわかった(図2a、b)。このようにして捕獲された破片の総質量は、現在巨大惑星がもつリングの質量を説明するのに十分である。つまり、十分大きなカイパーベルト天体ひとつが巨大惑星のごく近くを通過し破壊されたことにより、現在の惑星リングが形成されたと考えることができる。本研究ではさらに、捕獲後の破片の長期的な進化を、国立天文台が所有する計算機等を用いたシミュレーションにより調べた。その結果、捕獲直後の破片は数キロメートルサイズと大きなものであるが、その後、破片同士の衝突を繰り返すことによって徐々に粉々になるとともに軌道も円軌道に近づき、現在観測されるリングが形成されることがわかった(図2b、c)。

さらに、このモデルは以下のように、土星と天王星のリングの組成の違いも説明できる。天王星や海王星は土星に比べて惑星本体の密度が大きい(天王星1.27 g cm-3、海王星1.64 g cm-3、土星0.69 g cm-3)。このため、天王星や海王星の場合には、惑星からの重力の影響を強く受ける、ごく近傍を通過するような遭遇が可能となる(土星の場合には惑星本体の密度が小さく質量に対して惑星半径が大きいため、そのようなごく近傍を通過しようとすると土星本体に衝突してしまう)。その結果、惑星近傍を通過するカイパーベルト天体が内側に岩石核、外側に氷マントルという二層構造をもっていた場合、天王星や海王星の場合では、岩石核まで破壊・捕獲され、岩石成分も含むリングが形成される。これに対して土星の場合は通過する天体の氷マントルのみが破壊されるため、氷から成るリングが形成される。このように本研究の結果は、土星リングと天王星(および海王星)リングの組成の違いも説明できる。

リングの形成過程の概念図
図2.
リングの形成過程の概念図。点線は、巨大惑星の重力が強く働き潮汐破壊が起こる臨界距離。(a)カイパーベルト天体が巨大惑星に近接遭遇をする際に、巨大惑星の潮汐力によって破壊される。(b)潮汐破壊によって破片の一部が巨大惑星まわりに捕獲される。(c)破片同士の衝突によって捕獲された破片は破砕され、軌道も徐々に円軌道に近づき、現在のリングが形成される(Hyodo, Charnoz, Ohtsuki, Genda 2016, Icarusの図を一部改変)。

今後の展開

本研究の結果は、巨大惑星のリングが太陽系の惑星形成過程の中で、自然に形成された副産物であることを示している。このため、近年多数発見されている太陽系外の巨大惑星においても、同様な過程でリングが形成されると考えられる。系外惑星の衛星-リング系に関する今後の観測が期待される。

用語説明

[用語1] 後期重爆撃期 : 約40億年前に起こった太陽系の軌道不安定期。この時期には海王星以遠の軌道に、惑星に成長しきれなかった天体が現在よりも多数存在していたと考えられる。巨大惑星との重力相互作用の結果、これらの天体の軌道が大きく乱され、太陽系全体に無数に飛び交い、形成後の惑星にも多数衝突したと考えられるため、このように呼ばれている。月表面のクレータの大部分もこの時期に形成されたと考えられる。

[用語2] カイパーベルト天体 : 海王星より太陽から遠い位置に無数に存在している氷岩石天体。

論文情報

掲載誌 :
Icarus
論文タイトル :
Ring formation around giant planets by tidal disruption of a single passing large Kuiper belt object
著者 :
Ryuki Hyodo, Sébastien Charnoz, Keiji Ohtsuki, Hidenori Genda
DOI :

お問い合わせ先

神戸大学 大学院理学研究科 惑星学専攻
日本学術振興会特別研究員 兵頭龍樹

E-mail : ryukih@stu.kobe-u.ac.jp
Tel : +33 183 95 7498 (France)

神戸大学 大学院理学研究科 惑星学専攻
教授 大槻圭史

E-mail : ohtsuki@tiger.kobe-u.ac.jp
Tel : 078-803-6476

東京工業大学 地球生命研究所
特任准教授 玄田英典

E-mail : genda@elsi.jp
Tel : 03-5734-2887

研究に関する英語でのお問い合わせ

Institut de Physique du Globe de Paris
(パリ地球物理研究所)
Professor Sébastien Charnoz

E-mail : charnoz@ipgp.fr

取材申し込み先

神戸大学 総務部 広報課

E-mail : ppr-kouhoushitsu@office.kobe-u.ac.jp
Tel : 078-803-6696

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

学生の声を大学に届ける「学勢調査2016」開始

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東京工業大学では、本学における教育改善や施設建設・整備、学内サービス向上といった大学の事業に学生の声を取り入れ、本学をより魅力ある大学とすることを目的とした全学的アンケート調査「学勢調査」を、2年に1度実施しています。今年は、10月18日~11月17日に実施します。

「東工大をこうしたい!あれがやりたい!でも…」「もう少し、こうなってくれればいいのに…」といった学生の声を集め、実現する形へと学生自らがつなげる場、それがこの学勢調査です。全学生を対象に大規模なWebアンケート調査を行うという、全国でも例を見ないこの独自の取り組みは、国勢調査になぞらえて「学勢調査」と名付けられ、2004年の試行を経て2005年より本格実施となりました。

この調査のユニークな点は、調査結果の集計、解析、提言書作成を、公募に応じたサポーター学生の主導で実施していることです。学生は、学生の視点でアンケート結果を読み解き、建設的な提言書を作成し、学長にアンケート結果とともに提出します。この提出をうけて、学内の各組織はできる限りの対応に取り組みます。提言の中には、慎重な検討を要するものや大きな予算を伴うものなど、対応しきるには時間がかかるものもありますが、これまでに多くの改善が行われてきており、学勢調査は学生の意見を大学側に伝えるために大きな役割を果たしています。

学勢調査2016 ポスター
学勢調査2016 ポスター

お問い合わせ先

学生支援センター自律支援部門

Email : gakuseichousa1@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7629

2次元ナノシート表面に"整列"するペプチドを開発―タンパク質がグラフェンのエレクトロニクスを制御する―

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要点

  • 二硫化モリブデン半導体ナノシートの電子・光特性もペプチドで変調
  • アミノ酸配列の部分的な変更で、ナノシートの電気特性変調を制御
  • 新たな機構を有するバイオセンサーの開発などにつながる成果

概要

東京工業大学 物質理工学院 材料系の早水裕平准教授は、米国ワシントン大学のサリカヤ教授らと共同で、グラフェン[用語1]に代表される2次元ナノシート[用語2]の表面で自発的に規則正しくナノ構造を形成するペプチド[用語3]を開発した。この自己組織化[用語4]ペプチドは、グラフェン・トランジスタの表面に整列することにより、単層グラフェンの電気伝導特性を特異的に変調する。また、ペプチドのアミノ酸配列を一部変更することによって、半導体ナノシートとして近年注目を集める単層二硫化モリブデンの電子および光物性を自在に制御することにも成功した。これらは小さいタンパク質であるペプチドが、新しいエレクトロニクス材料として期待されている2次元ナノシートの電子・光特性を制御できることを実証したものであり、生体材料とナノ材料の界面を電子的に制御する新たな手法を確立したといえる。さらに、生体分子と固体エレクトロニクス材料の相互作用の機構を理解する上で有用なプラットフォームとなることも期待される。将来は、ナノシートを使用した新たな機構を有するバイオセンサーの開発などにつながる成果である。今回の成果はネイチャー誌の姉妹誌である学術誌「サイエンティフィックレポート(Scientific Reports)」オンライン版に掲載された。

背景

タンパク質は私達の体の中で、様々な機能を有し、多様な構造を形成している。その構造や機能は、タンパク質自体の自発的な挙動である“自己組織化”によって成り立っている。これまで、生物から学ぶことによって様々な人工的なタンパク質が開発され、多様な形状の自己組織化構造が実証されてきた。

大部分の研究は水溶液中でのタンパク質の挙動に関するものであるが、一方で、固体表面でのタンパク質の自己組織化の研究もなされ、特にタンパク質の中でも、構成するアミノ酸の数が少ない「ペプチド」による固体表面での自己組織化の理解が進んできた。

これまでの研究は、ペプチドが形成する構造やその形成メカニズムに集中している。一方で、ペプチドが固体表面の電子状態に与える影響についての研究には限りがあった。近年、研究の進捗が著しいグラフェンなどの2次元ナノ材料は、将来のバイオセンサーの要素として大きな期待が寄せられており、生体分子とグラフェンの電子的な相互作用を理解することは、基礎科学的にも重要な問題であった。

研究成果

東工大の早水准教授はワシントン大学との共同研究により、遺伝子工学的手法を用いて、グラファイトに強く吸着する60種類のペプチドを実験的に発見した。これらのペプチドは、わずか12個のアミノ酸から構成されている。中でも、最も高い吸着力を持つペプチドは、水溶液をグラファイトに滴下するだけで、自発的にグラファイト表面でナノワイヤ状のナノ構造へと自己組織化することが観測された(図1)。

グラフェン上におけるペプチド自己組織化の模式図

図1. グラフェン上におけるペプチド自己組織化の模式図

同様にシリコン基板上に形成された単層のグラフェン表面においても、ペプチドのナノワイヤへと自己組織化することが観測された(図2左)。このペプチドは、アミノ酸配列に芳香族を持つチロシン[用語5]を有しており、このチロシンがグラフェンに吸着するために重要な役割を果たしていることがわかった。また、このアミノ酸配列の一部を変更することによって、単層の二硫化モリブデン表面においてもペプチドがナノワイヤ構造へと自己組織化することが観測された(図2右)。

さらにアミノ酸配列を制御することにより、セレン化モリブデンや窒化ホウ素の表面でも自己組織化するペプチドの開発に成功した。上記のグラフェンは半金属、二硫化モリブデンやセレン化モリブデンなどは半導体、そして窒化ホウ素は絶縁体であり、種々の電気特性を有するナノシートに適合したペプチドを開発することに成功した。

シリコン基板上の単層グラフェン(左)と単層二硫化モリブデン(右)の表面に形成された自己組織化ペプチドのナノワイヤ

図2. シリコン基板上の単層グラフェン(左)と単層二硫化モリブデン(右)の表面に形成された自己組織化ペプチドのナノワイヤ

グラフェン・トランジスタを使用した電気伝導測定の結果から、ペプチドがグラフェン表面にナノワイヤ構造を形成すると、ペプチド・ナノ構造によってグラフェンの電気伝導度が局所的に変調を受けることが観測された。これは、ペプチドが直下のグラフェンから電子を奪うことに起因する。

この局所的な電気伝導特性の変調は、生体分子を用いた実験による初めての現象である。同様に、半導体特性を有する二硫化モリブデン・トランジスタを用いた実験でもペプチドによる二硫化モリブデンの電気伝導特性の変調が観測された。

グラフェン・トランジスタ表面に形成された自己組織化ペプチドのナノワイヤ(左)とグラフェンの電子状態(右)の模式図

図3. グラフェン・トランジスタ表面に形成された自己組織化ペプチドのナノワイヤ(左)とグラフェンの電子状態(右)の模式図

今後の展開

近年、グラフェン・トランジスタを使用した超高感度バイオセンサーの開発が盛んに行われている。最近では半導体特性を有する二硫化モリブデンによってさらに高感度のバイオセンサーが確立されつつある。

今回の研究により、規則正しい構造へと自己組織化するペプチドが、グラフェンや二硫化モリブデンなどの電気特性を空間的に変調することが実証された。このペプチド・ナノ構造を機能性タンパク質の足場として使用することにより、ナノシート上に特定の生体分子と相互作用する機能性タンパク質を固定したバイオセンサーを開発することができる。

これによってバイオセンサーの感度の向上だけでなく、センシングのターゲットとなる生体分子などへの選択性を向上させることが可能になる。また、研究が進む種々のナノシートに生体親和性を付与することができ、それらの生体への応用が期待される。

用語説明

[用語1] グラフェン : 黒鉛(グラファイト)の一層分に相当するシート状の物質。グラファイトと同様に電気を流す性質をもっている。

[用語2] 2次元ナノシート : グラファイトなどの層状物質の単一層、厚さがナノメートル・スケールを有する。2004年のグラフェンの発見から、種々の単一層が発見され、遷移金属や希土類元素などを含む各種の半導体性や絶縁性の2次元ナノ材料まで、幅広く研究がなされている。

[用語3] ペプチド : 複数のアミノ酸がペプチド結合により形成する鎖状分子。タンパク質との区別は、一般にアミノ酸数によってなされ、アミノ酸数が50程度以下のものをペプチドと呼ぶ。

[用語4] 自己組織化 : 秩序立った構造を持たずに存在する物体や分子が、それぞれの間に働く力によって、外力を受けず自発的に組織構造や模様を形成するプロセスの総称。

[用語5] チロシン : タンパク質を構成する芳香族アミノ酸のひとつ。絹糸・カゼインに特に多く含まれる。生体内でフェニルアラニンから生成され、アドレナリン・チロキシン・メラニンなどの重要な物質に変わる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports 6, Article number: 33778
論文タイトル :
Bioelectronic interfaces by spontaneously organized peptides on 2D atomic single layer materials
著者 :
Yuhei Hayamizu, Christopher R. So, Sefa Dag, Tamon S. Page, David Starkebaum & Mehmet Sarikaya
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に新たに発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 物質理工学院 材料系
准教授 早水裕平

E-mail : hayamizu.y.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3651

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京工業大学基金「修学支援基金」の募集開始

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東京工業大学基金では、経済的な理由により修学に困難がある学生を支援するため、「修学支援基金」を設置し、このたび募集を開始しました。

修学支援基金

「修学支援基金」は、平成28年度税制改正(個人所得課税)により、新たに創設された税額控除制度の対象となる特定基金で、次の事業に充てられます。

  • 授業料減免事業

  • 奨学金事業

  • 留学支援事業

  • TA(ティーチング・アシスタント)、RA(リサーチ・アシスタント)事業

学ぶ意欲と能力のある学生が希望する教育を受けられるよう、ぜひ「修学支援基金」へのご支援をお願いいたします。

ご寄附は1口1千円から、ゆうちょ銀行を含む銀行からの振り込み、またはインターネット募金(クレジットカード、インターネットバンキング、コンビニエンスストア)のいずれかの方法からお選びいただけます。

東工大基金

このプロジェクトは東工大基金によるものです。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

東京工業大学 基金室

E-mail : bokin@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2415

IIBMP2016 一般公開講演「ヒト、菌、そして環境」開催報告

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9月29日から10月1日の3日間、東京国際交流館(お台場)にて、第5回生命医薬情報学連合大会(IIBMP 2016)が開催されました。

公開討論の様子

公開討論の様子

講演をする荒川和晴特任准教授
講演をする荒川和晴特任准教授

最終日に行われた一般講演では、「ヒト、菌、そして環境」をキーワードにバイオインフォマティクス(生命情報)がどのように生命科学の広い領域を支えているか、さらに、身近な社会にバイオインフォマティクスがどのように繋がっているのかについて広く一般の方に向けて講演が行われました。

講演の後は、公開討論形式で未来のバイオインフォマティクスについて、講演者と高校生が議論を交わしました。

  • 講演をする荻島創一准教授

    講演をする荻島創一准教授

  • 講演をする黒川顕教授

    講演をする黒川顕教授

  • 荒川和晴 (慶應義塾大学 特任准教授)
    「超高機能構造タンパク質による素材産業革命に向けたクモ類網羅的シーケンシング」

  • 荻島創一 (東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 准教授)
    「あなたのゲノム、あなたの医療」

  • 黒川顕 (国立遺伝学研究所 ゲノム進化研究室 教授)
    「バイオインフォマティクスと未来社会」

公開討論
「バイオインフォマティクスと30年後の研究」
司会・進行
奥田修二郎(新潟大学 准教授)、山田拓司(東京工業大学 准教授)
パネリスト

荒川和晴(慶應義塾大学 特任准教授)

荻島創一(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 准教授)

黒川顕(国立遺伝学研究所 ゲノム進化研究室 教授)

お茶の水女子大学附属高等学校 生徒7名

東京学芸大学附属高等学校 生徒6名

東京工業大学附属科学技術高等学校 生徒6名

  • お茶の水女子大学附属高等学校

    お茶の水女子大学附属高等学校

  • 東京学芸大学附属高等学校

    東京学芸大学附属高等学校

東京工業大学附属科学技術高等学校
東京工業大学附属科学技術高等学校

今回の一般講演を企画するにあたり、高校生を中心とした未来を担う若い世代にもバイオインフォマティクスという研究分野を広く知ってもらおうと高校にも広く参加を呼びかけました。後半に行われた公開討論に各校を代表してパネリストとして参加した高校生は、事前にテーマについて議論を重ねた上で今回の発表に臨みました。生徒たちは緊張した様子でしたが、各校とも新鮮で大胆なプレゼンテーションを披露し、他のパネリストや聴講者も興味深く聴き入っていました。研究者や企業関係者に加え、高校生や学士課程の学生らも参加して会場はほぼ満席となりました。

参加した高校生の意見をご紹介します。

  • 「バイオインフォマティクスの基礎的な知識や応用について、生物分野のなかでもものすごく具体的なフィールドの研究に関する展望を知ることができ、高校の先のみならず、大学の先も見ることができた。」
  • 「(バイオインフォマティクス研究は)自分たちの提案が予想以上に様々な方向につながって、また進展していく可能性がある。」
  • 「高校で学んでいることがまだまだ理系の入口にも入れていないようなちっぽけなものだと思った。」

大学受験という目前の大きな関門を控えている高校生ですが、最先端の研究を行っている研究者との交流をとおしてその先の目標を見据え、視野を広げる良い機会になったようです。

そして司会・進行を務めた本学 生命理工学院の山田拓司准教授は、今回の試みが若い世代により深くバイオインフォマティクスという研究分野を知ってもらう良い企画になったと述べ、成功の手応えを感じたようです。

全員で記念撮影

全員で記念撮影

本学では、今後も積極的に同様の活動を展開していきます。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

生命理工学院山田研究室

E-mail : info@jchm.jp
Tel : 03-5734-3529

第1回大岡山健康講座開催報告

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9月13日、東工大リベラルアーツ研究教育院は、大岡山駅上にある東急病院との共催で、本学メインキャンパスのある大岡山駅の周辺地域や東急線沿線にお住まいの方々を対象にした「大岡山健康講座」を開催しました。当日は約200名の参加があり、健康に対する関心の高さが伺えました。

東急病院の母体である東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)は、2015年3月に従業員の健康管理を行う優良企業として東京証券取引所より「健康経営銘柄」に選定されたことに伴い、東急病院のある大岡山駅周辺を「健康ステーション大岡山」と称し、健康の発信拠点として、さまざまな取り組みを実施しています。東工大でもこれまで、リベラルアーツ研究教育院の林直亨教授の監修で、健康啓発ポスターの作成や、工大祭でのウォーキングイベントの開催に取り組んでいます。今回の大岡山健康講座も、この取り組みの一環です。

最初に東急病院の徳留悟朗院長から挨拶があり、「大岡山を健康の街のモデルとしていきたい」と今後の意気込みが語られました。

続いて東急病院医療連携室の長瀬崇志課長補佐から東急病院の詳細な説明があり、「大岡山を健康長寿の街にしたい」との話しがありました。

  • 徳留悟朗院長

    徳留悟朗院長

  • 長瀬崇志課長補佐

    長瀬崇志課長補佐

その後、3部にわたる講座が開かれました。

第1部「よく噛むことの重要性」~エネルギー消費量の観点から~

リベラルアーツ研究教育院 林直亨教授

林教授は、研究者の目線から健康について話しました。

まず林教授から参加者に対し「自分が早食いだと思う人は手を挙げてください」と質問をすると、多くの人の手が挙がりました。これに対し林教授が「結構いますね」と返すと会場には笑い声が漏れました。

肥満の予防としては、食べる量を減らすことか運動して消費エネルギーを高めることの2つが通常考えられるとしたうえで、林教授の研究でもある食べ方で解決していく方法が紹介されました。

欧米では以前から普及していたフレッチャリズム(ひと口あたり30回から40回の咀嚼をする)を提唱したホレス・フレッチャー氏は保険に加入できない程の肥満だったが、よく噛んで食べることで、50代でも大学生並みの体力があったということや、厚生労働省や日本肥満学会も約30回噛むことを良いとしているなど、よく噛むことが重要とされている背景があります。

林直亨教授
林直亨教授

林直亨教授

よく噛むと、食後のエネルギー消費量である食事誘発性体熱産生(DIT:Diet-Induced Thermogenesis)が増えることを林教授の研究グループが明らかにしており、よく噛むと早食いよりも食後のエネルギー消費量が10 kcalほど増加し、換算すると1年で10,000 kcal、体脂肪1.5 kg分の差に相当すると話しました。また、食後のガム咀嚼はDITを増やすとはいえ、食事中によく噛むことのほうが効果が高いことや、飲料を使った実験結果に基づいて咀嚼の刺激だけでなく、味覚の刺激も両方とも大切であると語りました。

これらのことから「太りたくなきゃ、やせたきゃ、味わえ!」として話を締めくくりました。

第2部「健康のためにできること」~リハビリテーションの立場から~

東急病院 リハビリテーション科 辰濃尚医長

辰濃医長は、医療従事者の目線から健康について話しました。

大岡山駅の消費エネルギー表示がある階段
大岡山駅の消費エネルギー表示がある階段

メタボリックシンドロームにならないためには、食事、運動、禁煙が大切であり、例えばエスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活でも取り入れられることは多くあると話しました。大岡山駅では階段に消費エネルギー表示があり、楽しんで階段を使えるようになっていることが紹介されました。

その後認知症の話に移りました。認知症は単なる老化現象ではなく、脳の神経細胞が壊れてしまう病気であることを示し、「朝ごはんの内容を忘れるのは老化による物忘れだが、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるのは認知症による記憶障害です」と説明しました。

辰濃尚医長
辰濃尚医長

辰濃尚医長

生活習慣病対策としては運動を、頭の老化には人と交流することや趣味を持つなど生活の中で脳に刺激を取り入れていくことを勧めました。

第3部「自宅で簡単にできる!かんたんエクササイズ!!」~今より10分多く、毎日からだを動かしてみませんか?~

東急スポーツシステム株式会社 山城智幸ヘルスケアコーディネーター

山城コーディネーターは実際に体を動かすインストラクターの目線から健康について話しました。

まず一息つくために会場全体で脳トレを行いました。これは手をグーパーしたり、指で数を数えたりするもので、一見簡単そうですが意外に難しく、参加者は集中して取り組んでいました。その後、厚生労働省の+10(プラス・テン)活動が紹介されました。これは今より10分多く体を動かすだけで健康寿命を伸ばせるという考えに基づく活動です。

  • 山城智幸ヘルスケアコーディネーター

    山城智幸ヘルスケアコーディネーター

  • 脳トレをする参加者

    脳トレをする参加者

ロコモ予備軍かどうかの7つのチェック
ロコモ予備軍かどうかの7つのチェック

続けて山城コーディネーターから「ロコモって知っていますか」という質問が投げかけられると、会場からは「携帯電話の会社」という回答があり、笑いが起きました。ロコモというのは日本整形外科学会が提唱した運動器症候群(ロコモティブシンドローム)の略称です。

自分がロコモ予備軍かどうかの7つのチェック項目が会場のスクリーンに映し出され、自己診断したのち、このロコモを予防するための運動を、再び会場全体で行いました。もも上げ体操、つま先あげ体操、かかとあげ体操、腕のトレーニング、腰背部のトレーニング、腰と背中のストレッチ、胸のストレッチです。

最後に「明日から今より10分多く、毎日体を動かしましょう!合言葉は+10です!!」と呼びかけました。

同じ「健康」をテーマにしていても、研究、医療、運動実践と違った切り口の話を聞くことで、いろいろな角度から健康について考えることができ、参加者にとって大変有意義な講座となりました。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に新たに発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

ニュースレター「AES News」No.7 2016秋号発行

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科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センターouterは、ニュースレター「AES News」No.7秋号を発行しました。

AESセンターは、従来の大学研究の枠組みを越えて、企業、行政、市民などが対等な立場で参加する研究拠点である「オープンイノベーション」を推進しています。ここでは、低炭素社会実現のための研究プロジェクトを創生することを大きな目的の一つとしています。

本学教員と本センター企業・自治体が連携し、既存の社会インフラを活かしながら革新的な省エネ・新エネ技術を取り入れ、安定したエネルギー利用環境を実現する先進エネルギーシステムの確立を目指しています。

本センターの活動を、より多くの方々にご理解いただき、また、会員および本学教職員の連携を深めるために、ニュースレター「AES News」を2015年度より季刊誌として発行しています。今回は第7号となる2016年秋号をご案内します。

ニュースレター「AES News」第7号 2016秋号

第7号・2016秋号

  • 環境・社会理工学院 屋井鉄雄教授
    巻頭記事「歩きたくなる都市づくりに向けた道デザインの工夫」
  • 地域プロジェクト(三菱商事共同研究講座「対馬環境エネルギーコンソーシアム」)
  • 研究プロジェクト
  • AES活動報告(2016年8月~9月)
  • 共催・協力・後援等活動(2016年9月)
  • AES行事開催予定

ニューレターの入手方法

PDF版
冊子版
  • 大岡山キャンパス:東工大百年記念館1階 閲覧コーナー
  • すずかけ台キャンパス:すずかけ台大学会館1階 広報コーナー

お問い合わせ先

科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センター

Email : aescenter@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3429


オープンキャンパス2016 開催報告

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夏休み期間中の8月11日に、「高校生・受験生のための東京工業大学オープンキャンパス2016」を開催しました。当日は連日の暑さも少し和らぎ、約15,000名が来場しました。

本年度は、メインテーマを「世界トップクラスの教育システムで学ぶ」と定め、この4月から始まった新たな教育システムの魅力を高校生・受験生に伝えることを最大の目標として、様々な企画を行いました。ここでその一部をご紹介します。

オープンキャンパス2016

全学入試説明会・各類入試説明会

各類入試説明会

入試説明会は、本学の魅力や学べる分野、入学後のキャンパスライフなどを紹介するとともに、本学の入試制度の案内を行うことを目的としています。全学説明会を計3回、第1類から第7類の説明会をそれぞれ1回ずつ行いました。各回とも定員以上の申込みがあり、大変盛況でした。

入試相談会

入試相談会

全学共通と類ごとに設置されたそれぞれのブースにおいて、教員が来場者の相談を直接受けて、入学後の学修内容や入試の具体的な仕組みに関する疑問に答えました。来場者の熱心な質問に、各類の教員が親身になって答える姿が多くみられ、アンケートでも、非常に満足度が高かった企画の1つとなりました。

留学報告会

留学報告会

本学では、現在年間400名以上の学生が様々な留学プログラムを利用して留学しており、この企画では6名の留学経験者がそれぞれ体験談を語りました。本学では、この4月から始まった新たな教育システムの目標の1つとして、「世界トップクラスの教育システムで学ぶ」ことができる教育環境の構築を掲げており、本学が採択されているスーパーグローバル大学創成支援(SGU)プログラムなどと連動して、今後も留学プログラムを拡大していくとともに、国際的な視野を養うために在学期間中に短期間でも留学経験を積むことを積極的に推奨しています。

体験企画

体験企画

各類では、模擬実験や模擬講義など様々な工夫を凝らした体験型の企画を用意して、来場者を迎えました。高校の授業では味わうことのできない、本学ならではの研究内容や研究成果を、高校生にもわかりやすく、そして科学への興味をかきたてる内容に仕上げたプログラムはいずれも好評で大勢の参加者がありました。

研究室公開

研究室公開

本年度は、100以上もの研究室が公開されました。教員や学生が時に実演を交えながら、最前線の研究内容をわかりやすく説明するとともに、来場者からの熱心な質問に答えていました。本企画は、来場者アンケートでも最も良かった企画としてあげられ、教員だけでなく研究室に所属する学生とも会話することができる点が満足度に大きく貢献しました。

オープンキャンパス2016を終えて

山の日の開催となった今年のオープンキャンパスには、真夏の暑さにもかかわらず多くの方が訪れ、東工大の優れた研究・教育内容を紹介するとともに、キャンパスやなかなか足を踏み入れる機会のない研究室の雰囲気を感じてもらえる大変よい機会となりました。本年度のアンケート結果をもとに、今後も一層充実したオープンキャンパスを目指していきますので、どうぞご期待ください。

お問い合わせ先

アドミッションセンター・学務部入試課

E-mail : opencampus@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3990

東工大関連ベンチャーキャピタルファンド設立

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東工大は、産学連携活動の推進に向け、5月に株式会社みらい創造機構(代表取締役:岡田祐之、以下「みらい創造機構」)と組織的連携協定を締結しました。このたび、組成の準備を進めていた本学関連の研究成果及び知的財産の事業化を推進し、本学に関連する研究者・卒業生等の人材や最先端技術を利活用するベンチャー企業を中心に投資・経営支援を行うベンチャーキャピタルファンド「みらい創造一号投資事業有限責任組合(以下、本組合)」が設立されました。

本組合はみらい創造機構が中心となって設立するもので、本学が強みを有するビッグデータ解析、人工知能、IoT、ロボティックスや新材料領域の技術・ノウハウを活用しながら、環境・エネルギー、ライフ&ヘルスケア、海洋開発等、各種マーケットニーズを捉えた新たな事業化とベンチャーの創出を行っていくものです。

本学は、本組合を通して、技術系ベンチャーの創出を加速する取組みをより一層推進していきます。

本組合概要

名称
みらい創造一号投資事業有限責任組合
投資対象
1.
東工大の研究成果を活用したベンチャー
2.
東工大と企業とのジョイントベンチャー
3.
東工大の卒業生・関係者が創業したベンチャー
4.
東工大“着”ベンチャー(東工大技術・研究成果を導入、または導入予定の企業等)
5.
その他の大学・研究所関連ベンチャー
(医学領域、農学領域、海洋領域等について、東工大を含む大学その他の研究機関等と連携)
無限投資組合員
株式会社みらい創造機構
有限責任組合員(1次締切時)
  • 金融機関
    • みずほ証券プリンシパルインベストメント株式会社
    • 株式会社東京都民銀行
    • 芙蓉総合リース株式会社
    • 西武信用金庫
    • 三菱UFJキャピタル株式会社
  • 事業会社
    • 東急不動産ホールディングス株式会社
    • 株式会社デンソー
    • ツネイシカムテックス埼玉株式会社
設立
2016年9月1日
出資約束金額
16億円(1次締切時)
40億円(最終締切時目標:2017年3月31日)

※ベンチャーキャピタルファンド

ベンチャー・キャピタルとは、上場(株式公開)前のベンチャー企業に投資し、投資先企業が上場した後に、株式などを売却して利益を得る会社のことである。ベンチャー・キャピタルによる投資は出資金の出所によって、ベンチャー・キャピタルの自己資金により投資するものと、個人投資家や機関投資家などから出資を募り、ファンド(投資事業組合)を組成し、これを元手に投資するものの2種類に分けることができる。

お問い合わせ先

広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

11月の学内イベント情報

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11月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

教育革新シンポジウム CITL INSTITUTE 2016

教育革新シンポジウム CITL INSTITUTE 2016

東工大教育革新センターの1年間を振り返り、海外大学の動向と共に今後の教授学習支援の姿を考える、教育革新シンポジウムを以下の要領で開催します。

日時
11月1日(火)14:00 - 17:30(受付開始 13:30 - )
会場
参加費
無料、情報交換会は会費制3,000円
対象
本学教職員ならびに学外の高等教育開発支援などに携わる教職員など
申込
必要

CERI寄附講座「ゴム・プラスチックの安全、安心 -身の回りから先端科学まで-」(2016年 後期)

CERI寄附講座「ゴム・プラスチックの安全、安心 -身の回りから先端科学まで-」(2016年 後期)

私たちの身の回りにある化学品を含むゴムやプラスチックとその製品の安全・安心に関する情報とやさしい科学を、一般の方にもわかりやすく紹介します。将来の安心・安全な材料・製品設計の基礎を学べるようにします。

日時
スケジュール1: 9月28日、10月5日・12日・19日・26日、11月2日・9日・16日
スケジュール2: 11月30日、12月7日・14日・21日、2017年1月11日・18日・25日、2月1日
各日水曜日 10:45 - 12:15
会場
参加費
無料
対象
一般(先着25名)
申込
必要

Startup Weekend Tokyo Tech vol.5 【11/4 - 6開催、プレイベント10/19】

Startup Weekend Tokyo Tech vol.5 【11/4 - 6開催、プレイベント10/19】

本学・チーム志向越境型アントレプレナー育成(CBEC)プログラムが協賛する(主催はStartup Weekend)起業イベントStartup Weekend Tokyo Tech vol.5を大岡山キャンパスで開催します。

日時
11月4日(金)18:00 - 21:00(受付17:30 - )
11月5日(土)、6日(日) 9:00 - 21:00
会場
参加費
学生チケット(7食付き) 5,000円、一般チケット(7食付き) 9,000円
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

12th バイオコン&バイオで遊ぼう

12th バイオコン&バイオで遊ぼう

東京工業大学生命理工学院の1年目の学生がバイオに関するテーマで社会に役立つ“ものつくり”をする授業「バイオものつくり1、2」に取り組んできました。このコンテストはその成果発表会です。

日時
11月12日(土) コンテスト 9:30 - 、発表会/お試しタイム 14:45 - 16:15
会場
参加費
無料
対象
一般
申込
不要

東工大コンサートシリーズ2016秋 Fleur de Paris

東工大コンサートシリーズ2016秋 Fleur de Paris

2015年から始まった東工大コンサートシリーズ(Art Meets Engineering@Tokyo Tech)の2016年度第2回目は、パリへのオマージュをお送りします。

日時
11月14日(月)18:00開演(17:20開場、19:40終演予定)
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教員・職員、一般(未就学児童はお断りしています)
申込
必要

リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」

リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」

今年の秋から来年にかけて、リヒャルト・ワーグナーの四部作「ニーベルングの指環」が日本各地で上演されます。 ワーグナーの作品をより広く、深く知っていただくために、ワーグナーの専門家である本学リベラルアーツ研究教育院の 山崎太郎教授による連続講演会を開催します。

日時
10月6日(木)、10月13日(木)、10月26日(水)、11月16日(水)、11月24日(木)
いずれも18:00 - 21:00(17:30開場)
会場
参加費
本学の学生および職員は無料(要:身分証明書提示)
一般の方は1回につき1,000円(当日徴収)
対象
本学の学生・教員・職員、一般
申込

不要

当日そのまま来ていただいても入場は可能ですが、おおよその人数把握のため、以下のお問い合わせアドレスに簡単に受講希望の日にち、氏名(人数)を明記して送っていただけると、席・配布資料の用意も確実にできます。申込みがあった時点で、メールにて確認の返信をいたします。
お問い合わせアドレス : ila2016@ila.titech.ac.jp

第2回 NTU―東工大合同ワークショップ開催

第2回 NTU―東工大合同ワークショップ開催

本学の協定校であるシンガポール南洋理工大学(NTU)との合同ワークショップを開催します。

日時
1日目: 11月17日(木) 9:30 - 17:20 (受付9:00 -)
2日目: 11月18日(金) 9:30 - 12:40 (受付9:00 -)
会場
参加費
無料
使用言語
英語(同時通訳なし)
対象
本学の学生・教員・職員、一般
申込
必要

バイオテンプレート研究会第5回講演会

バイオテンプレート研究会第5回講演会

バイオテンプレート研究会第5回講演会「社会を変えるエネルギー変換材料」を開催いたします。

日時
2016年11月18日(金) 13:00 -
会場
参加費
一般:2,000円、学生:1,000円、会員:無料
対象
一般・学生
申込
必要

東京工業大学COIシンポジウム2016

東京工業大学COIシンポジウム2016

人と技術の共生は、どこへ向かうべきでしょうか。東工大COIでは、人が互いの違いや価値を認めながらも、コミュニケーション支援を通じて多様なかたちの絆で結ばれる「ハピネス共創社会」の実現を目指しています。

日時
11月24日(木) 13:00 - 17:40(12:30開場)
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教員・職員、一般
申込
必要

グローバルリーダー教育院・経済産業省共同開催「政策シミュレーション(政策立案体験):官民で世界の巨大マーケットを獲得せよ - インフラ輸出、インド政策を例に - 」

グローバルリーダー教育院・経済産業省共同開催「政策シミュレーション(政策立案体験):官民で世界の巨大マーケットを獲得せよ - インフラ輸出、インド政策を例に - 」

本ワークショップは、政策立案のプロセスを体験し、経済産業省の役割・業務を、体験・理解いただくために、経済産業省が毎年・各地で行っているものですが、今回は、広く世界を牽引するリーダーを養成する当AGLの学生も参加し、共同開催で行うものです。

日時
11月25日(金)17:30 - 21:30
会場
参加費
無料
対象
学部生・大学院生(本学以外の学生も応募可能です)
申込
必要

平成28年度 東工大博士後期課程 全学説明会

平成28年度 東工大博士後期課程 全学説明会

平成28年度 東工大博士後期課程 全学説明会

博士後期課程に少しでも興味のある学生や保護者の方々を対象とした全学説明会を開催します。

日時
11月28日(月) 10:00 - 12:00、11月29日(火) 15:30 - 17:30
※いずれも同内容で、大岡山とすずかけ台の両キャンパスで遠隔実施します(28日はすずかけ台、29日は大岡山がメイン会場です)。
会場
参加費
無料
対象
学内・学外、学生・保護者問いません。博士後期課程に興味がある方は是非ご参加ください。
申込
不要

一部締め切りを過ぎているものがございますが、取材をご希望の場合はご連絡ください。

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

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東京工業大学 - アーヘン工科大学国際産学連携共同シンポジウムを開催

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安藤理事・副学長
安藤理事・副学長

10月6日、東京工業大学-アーヘン工科大学国際産学連携共同シンポジウムが、東工大蔵前会館くらまえホールで開催されました。2015年3月の東京での開催、2015年6月のドイツ・アーヘンでの開催に続き、今回は3回目となります。

日本と欧州を代表する理工科系総合大学である東工大とアーヘン工科大学は全学交流協定を締結しており、かねてより研究、教育両面で活発な交流を進めています。

今回のシンポジウムのテーマは、「ロボティクス+ AI - 生産現場とサプライチェーン・マネジメント での現状と可能性 - 日本とドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の研究と応用」です。NRW州経済振興公社の日本法人であるNRWジャパン社の全面的な協力のもと、ロボティクスとAIの融合をテーマに200名を超える参加者を迎え、熱気あふれるイベントとなりました。

日本の関連ベンチャー企業やNRW州進出企業を招いて、ドイツ政府が推進し、「第4の産業革命」と呼ばれている製造業の高度化を目指す戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」の柱の一つとしてロボティクス技術の紹介があり、また、AIのドイツの生産現場やロジスティックの現場での取り組みが紹介されました。

主催者を代表して東工大の安藤真理事・副学長(研究担当)の開会挨拶に続き、オープニングセッションでは、アーヘン工科大学のサビーナ・イエシュケ教授から「インダストリー4.0の舞台裏:次世代AIと、製品・生産・プロセスへのその影響」と題した講演が行われました。また、東工大工学院機械系の武田行生教授からは「日独の成功例:アーヘン工科大と東工大の共同研究による高性能パラレルロボットの開発」の講演が行われました。最後のパネル・ディスカッションでは会場からの活発な質疑応答もあり、大学と産業界の連携について、具体的な事例と展望が議論されました。ロボティクスとAIの活用による影響は、今後あらゆる産業への応用が予想されます。東工大は、アーヘン工科大学や、日独企業との幅広い国際産学連携、共同研究への発展に引き続き尽力していきます。

  • アーヘン工科大学 イェシュケ教授

    アーヘン工科大学 イェシュケ教授

  • 東京工業大学 工学院 機械系 武田教授

    東京工業大学 工学院 機械系 武田教授

プログラム

14:00

開会の辞

株式会社エヌ・アール・ダブリュージャパン 代表取締役社長 ゲオルグ・ロエル
14:10

挨拶

東京工業大学 理事・副学長 安藤 真
14:20

4.0の舞台裏:次世代AIと、製品・生産・プロセスへのその影響

アーヘン工科大学 サイバネティック・クラスター 機械工学情報マネジメント研究所(IMA)
及びラーニング/知識マネジメントセンター(ZLW)代表 教授 サビーナ・イェシュケ
14:50

日独の成功例:アーヘン工科大と東工大の共同研究による高性能パラレルロボットの開発

東京工業大学 工学院 機械系 教授 武田行生
15:20

ドイツIndustrie 4.0におけるロボティクス/AI:ドイツNRW州でのビジネスチャンスと協働へのプラットフォーム

NRW.INVEST社 日本担当プロジェクト・マネージャー リオニー・バウアー
15:40

コーヒーブレイク

16:00

物流におけるロボティクス/AIの活用について

株式会社日通総合研究所 Advanced Technology Unit Senior Consultant 井上文彦
同社 Business Development Unit ティム・ブランドル (ドイツ フラウンホーファー IML代理)
16:20

産業ロボットによるIoT技術の現場での実装

欧州 Kawasaki Robotics社 社長 高木登
16:40

シンプルな原点から、インダストリー4.0へ向けて:RW州における、エプソンロボット30年の歩み

エプソン ヨーロッパ社 ロボティック・ソリューション長 フォルカー・シュパニア
17:00

MUJINコントローラが起こすロボット革命 ~鬼門の物流多品種ピッキングとEU市場拡大に挑む~

株式会社 MUJIN CEO兼 共同創業者 滝野一征
17:20

パネル・ディスカッション

司会

株式会社 エヌ・アール・ダブリュージャパン 代表 ゲオルグ・ロエル

パネリスト

アーヘン工科大学 教授 ザビーナ・イェシュケ

東京工業大学 教授 武田行生

株式会社 日通総合研究所 Business Development Unit

ティム・ブランドル(ドイツ フラウンホーファー IML代理)

欧州 Kawasaki Robotics社 社長 高木登

エプソン ヨーロッパ社 ロボティック・ソリューション長 フォルカー・シュパニア

株式会社 MUJIN CEO兼 共同創業者 滝野一征

講演者一同

講演者一同

※ 写真はNRWジャパン社提供

お問い合わせ先

東京工業大学 研究戦略推進センター

E-mail : ru.staff@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3790

NHK BSプレミアム「英雄たちの選択」に上田紀行教授が出演

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リベラルアーツ研究教育院長 上田紀行教授が、NHK BSプレミアム「英雄たちの選択」にコメンテーターとして出演します。テーマは、『空海 「密教伝来の真相(仮)」』です。

上田紀行教授
上田紀行教授

上田教授からのコメント

「個性的な3人の天皇について語った後、とうとう空海を取り上げます。
空海はそこから「日本仏教」が始まったともいえるスーパースター。
謎の多い人生を解き明かしたいと思います。

  • 番組名
    NHK BSプレミアム「英雄たちの選択」
  • 放送予定日
    11月10日(木)20:00 - 21:00

日本の運命を決める岐路に立った英雄たちは、さまざまな選択肢の中から、たったひとつの「選択」を行ってきました。同番組は、英雄たちがその選択をした理由・背景や後世への影響など英雄たちの心中に深く分け入り、各界の専門家たちとともに、新しいアプローチで日本の歴史を描く歴史的エンターテインメント番組です。

上田教授は、同番組に3回出演しましたが、その際の意外性のあるテーマ選びとコメントで、番組を毎回興味深い方向に展開させてきました。

  • 2014年10月23日:称徳天皇「道鏡か否か?愛に揺れた女帝」

  • 2015年3月19日:後醍醐天皇「闘う覇王~未完に終わった“建武の新政”」

  • 2015年5月14日:聖武天皇「未完の遷都計画~最新発掘が明かした大国家構想~」

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リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に新たに発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

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