Quantcast
Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
Viewing all 4086 articles
Browse latest View live

「国立大学法人理学部長会議声明 ―未来への投資―」の記者発表を開催

$
0
0

10月31日、東工大蔵前会館手島精一記念会議室において、本学の岡田哲男理学院長が出席し、全国34の国立大学法人の理学系部局の責任者で構成される「国立大学法人理学部長会議」による声明について記者発表を行いました。

記者発表で発言する岡田理学院長(右から2番目)

記者発表で発言する岡田理学院長(右から2番目)

「国立大学法人理学部長会議」は、我が国の基礎科学研究を継承・発展させ、豊かな社会を形成するために必要な『知』の教育と研究を推進することによって社会に貢献することを目指して組織されています。「基礎科学こそが 、科学・技術の基盤であり、我が国の国力のもとであり、これなくしては、科学・技術の人類への貢献も我が国独自の産業の抄出もおぼつかないのではないか」と考え、今回声明を出すこととなりました。そして、我が国の置かれている困難な財政上の問題を十分理解した上で、未来への投資として基礎科学の推進を訴えました。

記者発表では、岡田理学院長のほか、東京大学、お茶の水女子大学、琉球大学、北海道大学、茨城大学、広島大学の理学系研究科長や理学部長が登壇し、基礎科学の重要性と国立大学法人の基礎研究のおかれる危機的状況について、広く国民にむけて訴えました。


大隅良典栄誉教授 ノーベル賞受賞記念展示

$
0
0

緑ヶ丘6号館入口 展示案内
緑ヶ丘6号館入口 展示案内

10月8日、9日の2日間にわたり大岡山キャンパスにて開催された工大祭において、大隅良典栄誉教授の2016年ノーベル生理学・医学賞受賞を記念した緊急特別企画展を開催しました。

百年記念館および緑ヶ丘6号館の2会場に、オートファジーや大隅研究室について紹介したパネルを展示したほか、記者会見時の動画配信や、大隅研究室の研究員、中戸川研究室の学生らが、来場者からの途切れない質問に答えるなど、各会場を盛り立てました。

来場者の質問に答える学生
来場者の質問に答える学生

来場者の質問に答える学生

百年記念館の会場は10月3日にノーベル賞受賞決定の記者会見を行った会場でもあったことから、記者会見場をそのまま再現したコーナーを設置し、記念撮影の順番を待つ長蛇の列が出来るなど大盛況でした。また、緑が丘6号館の会場には、大隅栄誉教授がこれまで受賞した数々の賞を記念するメダルや賞状、研究室のOB・OGからプレゼントされた萬理子夫人と大隅栄誉教授が描かれた絵や、新聞報道等で話題になった「四つ葉のクローバー」などを展示し、来場者は足を止めて熱心に観覧していました。

  • 百年記念館3階会場 記者会見を再現

    百年記念館3階会場 記者会見を再現

  • 緑ヶ丘6号館1階会場 記念品の展示

    緑ヶ丘6号館1階会場 記念品の展示

受賞決定から工大祭までの期間が短く十分な事前告知ができなかった上、あいにくの雨天でしたが、2日間で約4900名の方にご来場いただき、関心の高さがうかがえました。各会場に設置した大隅栄誉教授へのメッセージノートには、5歳の子どもからの「せんせいをめざしてがんばります。」といったメッセージや、「おめでとうございます。うれしいニュースで元気が出ました」「勇気と希望が湧いてきました。先生の発見が難病の治療につながることを期待しています」「東工大に入れるよう頑張ります」など、多数のお祝いや期待の言葉をいただきました。

  • 大隅栄誉教授にメッセージを書く来場者

    大隅栄誉教授にメッセージを書く来場者

  • 大隅栄誉教授へのメッセージノート

    大隅栄誉教授へのメッセージノート

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

シンポジウム「ビッグデータが社会を大きく変革する:ビッグデータ数理科学研究ユニットの挑戦」

$
0
0

東京工業大学科学技術創成研究院ビッグデータ数理科学研究ユニットでは、帝国データバンク先端データ解析共同研究講座を設置し、企業活動・地域経済・産業構造を分析し、持続可能な社会に貢献する研究を推進しております。

この度、科学技術創成研究院に設置されたWorld Research Hub Initiative(WRHI)が招聘した世界トップレベルのデータサイエンスを専門とする科学者による基調講演、及び産学官において第一線で活躍しているメンバーによるパネルディスカッションを通して、ビッグデータがこれからどのように日本や世界の産業を変えていくのかを浮き彫りにしてくことを目的として本シンポジウム開催いたします。

日時
2016年11月24日(木) 13:00 - 19:30(12:00開場)
会場
東工大藏前会館くらまえホールouter(東急目黒線・大井町線大岡山駅下車1分)
懇親会:東工大藏前会館 ロイアルブルーホール
参加費
無料(懇親会:\2,000)
参加の申し込み
一般席は予約で満席となりましたが、記者席をご用意しています。参加をご希望の方は、FAX又はメールでご連絡ください。
なお、講演会後引き続き、講演者を交えて情報交換会(懇親会)を開催いたします。出席をご希望の方は合わせてお知らせください。

プログラム

オープニング
13:00 - 13:30
開会挨拶、概要説明
講演
13:30 - 16:10

日英同時通訳

  • 「TDB企業データを用いたネオGDPの計算+日本の未来を見る」
    高安美佐子(東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット 代表・准教授、帝国データバンク先端データ解析講座 研究代表、日本学術会議連携会員(物理学・情報学))
  • 「ビッグデータの弱点:頻度の低い巨大事象に注意せよ」
    ディディエ・ソネット(東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット 特任教授、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich) 教授)
  • 「ネットワーク科学:ビッグデータを理解するための基盤」
    シュロモ・ハブリン(東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット 特任教授、バル=イラン大学(Bar-Ilan University) 教授)
  • 「ノーベル賞をめざす人工知能:科学発見の新たな原動力」
    北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長)
休憩
16:10 - 16:30
パネル討論
16:30 - 17:50

日英同時通訳
「ビッグデータは社会をどのように変えていくのか?」

パネリスト
  • 高安美佐子(東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット 代表・准教授)
  • 北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長)
  • 後藤健夫(株式会社帝国データバンク産業調査部長 兼 株式会社帝国データバンクアクシス代表取締役社長)
  • 長谷川秀司(内閣府 経済社会総合研究所国民経済計算部長)
  • 田岡卓晃(経済産業省 地域経済産業グループ地域経済産業調査室長)
総括コメント
  • ディディエ・ソネット(東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット 特任教授、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich) 教授)
  • シュロモ・ハブリン(東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット 特任教授、バル=イラン大学(Bar-Ilan University) 教授)
クロージング
17:50 - 18:00
懇談会
18:05 - 19:30

お問い合わせ先

東京工業大学
科学技術創成研究院 WRHIイベント担当

E-mail : wrhi-event@iir.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5804

株式会社帝国データバンク
産業調査部先端データ分析サービス課

E-mail : bigdata@mail.tdb.co.jp
Tel : 03-5775-1092

スパコン向けアプリケーション開発を大幅に容易にする手法を開発

$
0
0

スパコン向けアプリケーション開発を大幅に容易にする手法を開発
―高性能計算技術の世界最高峰の会議で最優秀論文賞を受賞―

要旨

理化学研究所(理研) 計算科学研究機構 プログラム構成モデル研究チームの丸山直也チームリーダーとモハメド・ワヒブ特別研究員、東京工業大学 学術国際情報センターの青木尊之教授の共同研究チームは、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(高性能計算技術)に関する世界最高峰の国際会議であるSC16[用語1]において最優秀論文賞を受賞しました。SC16では442報の論文が投稿され、共同研究チームは「適合格子細分化法[用語2]に関する論文」を投稿しています。

適合格子細分化法はAMRとも呼ばれ、必要な計算およびメモリ使用量を大幅に削減できるため、シミュレーションの高速化に有効です。一方で、大規模なスーパーコンピュータで用いるには、データの移動を無駄なく効率良く行うプログラムなどの開発が必要で、シミュレーションソフトウェアの開発においてさまざまな技術的課題がありました。

共同研究チームは新しいソフトウェア技術を開発し、大規模なスーパーコンピュータ上で簡単に適合格子細分化法を利用できる環境を実現しました。開発したソフトウェアは、プログラムの自動的な変換技術に基づき、従来必要であった煩雑なプログラミングや最適化の多くを自動化します。これによって、シミュレーションソフトウェアの開発コストが大幅に削減されました。GPU[用語3]などのアクセラレータ[用語3]を用いたスーパーコンピュータは性能や省電力に優れるものの、そのプログラミングの手間から使い勝手に劣る点が問題でしたが、開発した手法を用いることで、一般的な適合格子細分化法の利用においては、この問題を解決することができます。SC16での最優秀論文賞の受賞は、共同研究チームの開発内容が国際的に高く評価されたことを示しています。

本研究成果は、SC16の講演要旨集『Proceedings of the ACM/IEEE International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis (SC'16)』に掲載されます。

本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「ポストペタスケール高性能計算に資するシステムソフトウェア技術の創出」(研究総括:佐藤三久)における研究課題「高性能・高生産性アプリケーションフレームワークによるポストペタスケール高性能計算の実現」(研究代表者:丸山直也)の一環として行われました。

格子細分化のアルゴリズムと、界面に適合して格子を細分化した計算結果

図1. 格子細分化のアルゴリズムと、界面に適合して格子を細分化した計算結果

格子を界面からの距離に応じて細分化することで、高解像度が必要な界面近傍に細かい格子を集めている。

図2. 格子を界面からの距離に応じて細分化することで、高解像度が必要な界面近傍に細かい格子を集めている。

背景

コンピュータを使ったシミュレーションは天気予報から工業製品の設計など社会において幅広く利用されています。特にスーパーコンピュータなどの大規模なコンピュータを使うことで、より高精度・高精細なシミュレーションを高速に行うことが可能になります。一方でコンピュータの性能の向上スピードは次第に鈍化しつつあり、今後、さらにシミュレーションの精度や速度を向上させるためには、シミュレーション手法そのものの改善が、これまで以上に重要になります。

適合格子細分化法はシミュレーションにおいて頻繁に用いられる手法の一つである格子法[用語2]の一種で、通常の格子法に比べて必要な計算およびメモリ使用量を大幅に削減することができます。そのため、原理的にはより高速かつ高精細なシミュレーションが可能になります。しかし、実際に最先端スーパーコンピュータにおいて適合格子細分化法を用いるには多くの課題があります。例えば、最近のコンピュータは計算の性能に比べてデータを移動する性能が低いため、適合格子細分化法によって必要な計算を削減するだけでなく、データの移動を無駄なく効率良く行うプログラムの開発が必要になります。また、GPUなどのアクセラレータを使ったスパコンでは、アクセラレータ用のプログラム開発も必要になります。その結果、適合格子細分化法は原理的に有望な手法であるにも関わらず、実際の利用は通常の格子法に比べて限定的なものになっていました。

研究手法と成果

共同研究チームは、適合格子細分化法におけるこれまでの問題を解決する新しいソフトウェア技術を開発し、大規模なスーパーコンピュータ上で簡単に適合格子細分化法を利用できる環境を実現しました。開発したソフトウェアは、プログラムの自動的な変換技術に基づき、利用者が作成した適合格子細分化法プログラムからスーパーコンピュータ上で並列に動作する高性能なプログラムを、自動的に作成します。利用者が作成するプログラムはスーパーコンピュータ用に作られている必要がないため、これまでと比較して容易にスーパーコンピュータで適合格子細分化法を使うことができます。通常であればスーパーコンピュータを用いるためには並列化や最適化など、種々の煩雑なプログラミングが必要となりますが、それらの多くが研究チームの開発した手法によって自動化されるため、シミュレーションソフトウェアの開発コストが大幅に削減されました。

実際に開発したソフトウェア技術を、東京工業大学のTSUBAME2.5スーパーコンピュータ[用語4]上で用いたところ、自動的に1,000台規模の多数のGPUを同時に用いた高速かつ大規模なシミュレーションを行うことに成功しました。GPUなどのアクセラレータを用いたスーパーコンピュータは性能や省電力に優れるものの、そのプログラミングの手間から使い勝手に劣る点が問題となっていました。今回の研究結果は、プログラミングを自動化することよってそれらの問題を解決できることを示したものです。

適合格子細分化法に限らず、大規模な最先端のスーパーコンピュータの性能を最大限に引き出すシミュレーションアプリケーションの開発は、次第に困難になりつつあります。今回のSC16では442報の論文が投稿されましたが、これらの問題を解決する共同研究チームの新しいソフトウェア技術が高く評価され、最優秀論文賞を受賞しました。

今後の期待

将来のスーパーコンピュータのハードウェアは、さらなる高性能化のために大きく変わることが想定されています。一方で、アプリケーションプログラムの大幅な書き換えが必要となるなど、利用上の問題が懸念されています。今回、共同研究チームが開発した手法は、原理的には将来のスーパーコンピュータ上でもアプリケーションをそのまま用いることが可能です。そのため、将来のスーパーコンピュータでのシミュレーションを実現する有望なアプローチと考えられています。

共同研究チームは、引き続き開発した手法の改善・改良を続けると同時に、適合格子細分化法に限らず、さまざまな手法で将来のスーパーコンピュータにおけるシミュレーションソフトウェアの開発コストを削減するソフトウェア技術を研究開発していく予定です。

用語説明

[用語1] SC16 : 米国のソルトレイクシティで開催されているHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議(2016年11月13日~18日)。各種カンファレンス・展示が催されるとともにゴードン・ベル賞・TOP500・Graph500などの表彰も執り行われる。

[用語2] 適合格子細分化法、格子法 : 格子法とは科学技術シミュレーションにおける代表的な手法の一つであり、シミュレーション対象とする空間を格子上に分割し、分割した部分空間ごとに数値方程式に基づいた計算を行う。格子はその間隔を細かく区切るほど計算する部分空間が増大するが、より精緻なシミュレーションが可能になる。適合格子細分化法とはAMRとも呼ばれる格子法の一種。格子の間隔を、物理現象を解像するための必要に応じて適切に調整することによって、より精緻さが求められる領域は細かく、そうでない領域は粗く計算する手法である。例えば自動車の空力をシミュレーションでは、車体表面に接した領域には厚さの薄い境界層が発達するため、格子間隔を密にした計算を行う必要がある。一方で自動車から離れた領域については格子間隔を広くとり簡略化した計算を行う。これにより通常の格子法では必要な精緻さを確保するために均一に格子間隔を細かくする必要があるが、適合格子細分化法では必要な箇所のみ細かく計算することによってシミュレーションの精緻さを損なわずに計算を削減することができる。適合格子細分化法を導入することにより、均一格子での計算と比較して、計算量と使用するメモリの両方ともに1/100 - 1/1,000に低減することができる。

[用語3] GPU、アクセラレータ : コンピュータで用いられるアクセラレータとは計算の一部をCPUに代わってより高速に行う装置である。GPUはGraphics Processing Unitの略であり、当初はコンピュータの画面描画のためのアクセラレータであったが、シミュレーション等の数値計算を行うアクセラレータとしても用いられている。

[用語4] TSUBAME2.5スーパーコンピュータ : 東京工業大学学術国際情報センターに設置されているスーパーコンピュータ。1,400台強の計算機(ノード)から構成され、1台あたり2つのIntel Xeon CPUおよび3つのNVIDIA Tesla GPUを搭載した総演算性能5.7 PFLOPSのクラスタ型システムである。

論文情報

掲載誌 :
Proceedings of the ACM/IEEE International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis (SC'16)
論文タイトル :
著者 :
Mohamed Wahib Attia, Naoya Maruyama,and Takayuki Aoki

お問い合わせ先

理化学研究所 計算科学研究機構 研究部門 プログラム構成モデル研究チーム
チームリーダー 丸山直也
特別研究員 モハメド・ワヒブ

E-mail : nmaruyama@riken.jp
Tel : 078-940-5794 / Fax : 078-304-4963

東京工業大学 学術国際情報センター 先端研究部門高性能計算先端応用分野
教授 青木尊之

E-mail : taoki@gsic.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3667 / Fax : 03-5734-3276

取材申し込み先

理化学研究所 計算科学研究推進室
担当 岡田昭彦

E-mail : aics-koho@riken.jp
Tel : 078-940-5625 / Fax : 078-304-4964

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

国際共同研究を加速―第3回東工大-ウプサラ大 合同シンポジウムを開催―

$
0
0

シンポジウム

9月12日から2日間の日程で、スウェーデンのウプサラ大学との第3回合同シンポジウムを開催しました。

本シンポジウムは、2014年9月にウプサラ大学で開催した第1回、2015年11月に本学で開催した第2回に続いて、再度ウプサラ大学にて開催したものです。本学からは三島良直学長、安藤真理事・副学長(研究担当)、関口秀俊副学長(国際連携担当)をはじめ40名が参加、ウプサラ大学からはエヴァ・オーケソン学長他63名が参加しました。また日本学術振興会(以下、JSPS) ストックホルムセンターからは川窪百合子副センター長らが出席し、初日のレセプションには山崎純在スウェーデン日本大使も参加しました。

オープニングセッション

インゲルマン教授のプレゼンテーションインゲルマン教授のプレゼンテーション

ウプサラ大学のオーケソン学長から温かい歓迎の言葉と、両大学のさらなる研究交流や学生交流への期待が述べられました。三島学長からは、本学の教育・研究・ガバナンス改革を含む近況が紹介されました。その後、JSPS ストックホルムセンターの川窪百合子副センター長からセンターの活動紹介、ウプサラ大学研究戦略担当部長のクリスティーナ・エドストローム教授からはスウェーデンの研究インフラ動向に関する紹介があり、最後にウプサラ大学のグンナー・インゲルマン教授による、科学研究におけるセレンディピティをテーマにしたスピーチがありました。

全体会議

高安美佐子准教授のプレゼンテーション高安美佐子准教授のプレゼンテーション

「ビッグデータ」をテーマとしてウプサラ大学のアンドレアス・ヘランダー准教授と本学の高安美佐子准教授から、「イノベーションと産業協働」をテーマとしてラーシュ・ストルト教授と本学の阪口啓准教授から、 また「革新的教育」をテーマにSTUNSエネルギー社のハンス・ニレーン氏と本学の飯島淳一教授から、豊富な事例を織り交ぜながら取り組みを紹介しました。

分科会

8つの分科会が開催され、参加者はそれぞれのテーマに分かれて熱心な議論を行いました。

1.
エネルギー技術
2.
材料科学
3.
エネルギーシステムと分析
4.
企業家精神とイノベーション
5.
数学
6.
応用核物理学
7.
シリアスゲームとヒューマンインターフェース
8.
デジタライゼーション

クロージングセッション

部局間協定の取り交わし(左)安藤理事・副学長(右)テュスク副学長部局間協定の取り交わし
(左)安藤理事・副学長(右)テュスク副学長

各分科会より、今回のシンポジウムで検討した内容や今後の活動についての報告が行われました。本学の安藤理事・副学長がそれぞれに講評を行い、各分野で両大学の研究者が交流することにより新たな発想が生まれることの意義を強調しました。

ヨハン・テュスク副学長より、ウプサラ大学と東工大との関係はお互いを理解し合う段階から具体的な協力関係に入る段階に来たとの認識が示されました。

最後に東工大の工学院、理学院、物質理工学院、環境・社会理工学院の4学院とウプサラ大学オングストローム研究所の部局間協定締結のセレモニーが行われ、今後の交流の一層の深化を目指すことで合意しました。

レセプション

シンポジウム1日目の終了後には、リンネ庭園において、JSPS主催のレセプションが開かれました。また2日目の夜には、ウプサラ大学主催のレセプションが催されました。

リンネ庭園で開催されたJSPS主催のレセプション(左から)三島学長、オーケソン学長、山崎在スウェーデン日本大使

リンネ庭園で開催されたJSPS主催のレセプション
(左から)三島学長、オーケソン学長、山崎在スウェーデン日本大使

スウェーデン王立科学アカデミー、スウェーデン王立工学アカデミー表敬訪問

(左から)関口副学長、ドルホプフIVA国際コーディネーター、ウェイゲルトIVA事務局長、三島学長、安藤理事・副学長(左から)関口副学長、ドルホプフIVA国際コーディネーター
ウェイゲルトIVA事務局長、三島学長、安藤理事・副学長

本シンポジウムの機会を利用して、9月12日の午後、三島学長、安藤理事・副学長、関口副学長らが、スウェーデン市内にあるスウェーデン王立科学アカデミー(以下、KVA)とスウェーデン王立工学アカデミー(以下、IVA)を表敬訪問しました。

KVAではクリスティーナ・モーベリ会長らと面談を行うとともに、KVAの活動内容について説明を受けました。また、ノーベル化学賞、物理学賞、経済学賞の発表が行われるセッション・ホール等の施設を見学しました。

IVAでは、ヨハン・ウェイゲルト事務局長らと面談を行い、IVAと活動内容について説明を受けました。

  • (左から)平澤コーディネーター、関口副学長、ヘーデンクヴィストKVA常任理事、三島学長、モーべりKVA会長、インゲルマンウプサラ大学教授、安藤理事・副学長

    (左から)平澤コーディネーター、関口副学長
    ヘーデンクヴィストKVA常任理事、三島学長、モーべりKVA会長
    インゲルマンウプサラ大学教授、安藤理事・副学長

  • KVAのセッションホールを見学

    KVAのセッションホールを見学

訪問先について

  1. ウプサラ大学スウェーデンの首都ストックホルムから北に約1時間のウプサラに本部を置く、創立1477年の北欧最古の大学です。
  2. KVA1739年に設立された科学アカデミーで、科学の振興を目的として、ノーベル化学賞、物理学賞、経済学賞の選考をはじめとする顕彰事業等を行っています。
  3. IVA1919年に設立された工学アカデミーで、工学と経済学の振興と経済産業の推進を目的として、セミナーの開催等を行っています。

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課研究企画グループ

E-mail : kenkik.kik@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3803

蔵前科学技術セミナー「地球と生命の謎~生命の起源はどこまでわかったのか?宇宙における生命の存在確率は?~」開催報告

$
0
0

10月22日、蔵前工業会(東工大同窓会)主催、東工大ならびに地球生命研究所(以下、ELSI)共催で、第35回蔵前科学技術セミナーを開催しました。今回は「地球と生命の謎 ~生命の起源はどこまでわかったのか? 宇宙における生命の存在確率は?~」をテーマに、東工大蔵前会館くらまえホールにて行われ、240名を超える参加者が集まりました。

三島良直学長の開会挨拶に続いて、「地球と生命の起源は何か」という人類の根源的な問いに対して、ELSIの3名の研究者が地球と生命に関する理解を深める講演を行いました。参加者は大いに知的好奇心を刺激され、本セミナーは盛況のうちに終了しました。

初めに井田茂教授から、ELSIがどのような研究をしているかについての説明があり、それに続いて、「系外惑星 ― 宇宙における生命」をテーマに、太陽系の外の惑星についての研究の歴史を振り返りながら、地球外生命に関する研究と議論の変遷について講演を行いました。

  • 三島学長と3名の講演者(左から、黒川特別研究員、望月研究員、井田教授、三島学長)

    三島学長と3名の講演者
    (左から、黒川特別研究員、望月研究員、井田教授、三島学長)

  • ELSI 井田教授

    ELSI 井田教授

次に、地球ウイルス学を専門とする望月智弘研究員から「熱湯の中の微生物・ウイルスから探る生命の起源と進化」をテーマに、極限環境に生息する菌ならびにそれらに感染するウイルスに関する研究を通して、地球生命の起源や進化、さらには地球外生命体が存在する可能性などについての議論が紹介されました。

最後に惑星科学を専門とする黒川宏之日本学術振興会特別研究員から「生命を宿す惑星の条件」をテーマに、生命はどのようにして誕生したのか、地球以外の星に生命は存在するのかという「地球と生命の謎」について、生命を宿す場である惑星の科学という観点から最新の知見が紹介されました。

  • ELSI 望月研究員

    ELSI 望月研究員

  • ELSI 黒川特別研究員

    ELSI 黒川特別研究員

本セミナーの参加者は、科学への知的好奇心が旺盛な東工大OB・OGが多数を占め、各講演の終わりには活発な質問が登壇者に投げかけられました。また講演内容への関心が入り口となって、それらの研究活動を行っているELSIという研究組織にも注目が集まり、ブースに設置されたELSIの広報物を多くの方が手に取ってくださいました。

  • 会場の様子

    会場の様子

  • 活ELSI広報ブース

    ELSI広報ブース

各分野でグローバルに活躍する講演者が日本語で発表する機会は意外と少ないため、今回の講演は参加者にとっても理解しやすく、最新の研究内容に触れる良い機会となりました。

お問い合わせ先

地球生命研究所 ELSI

E-mail : pr-mail@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163

CBEC第3回シンポジウム開催報告

$
0
0

10月31日、東京工業大学CBEC(チーム志向越境型アントレプレナー育成)プログラムによる第3回CBECシンポジウムを東工大蔵前会館くらまえホールにて開催しました。

シンポジウム開催

シンポジウム開催

CBEC(シーベック)とは

CBECとは、Cross Border Entrepreneur Cultivationの頭文字を取ったものです。文部科学省グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)の採択を受けているCBECは、様々なステークホルダーとの間の自律的な協力関係を保ちながら、専門の違い、文化の違い、ジェンダーの違いなどの境界を乗り越え、多様な価値観を許容し、互いに協力しながらチームとして活動することのできる人材の育成を目的としたカリキュラムを開発し、2014年から活動してきました。

EDGEプログラム
専門性を持った大学院生や若手研究者を中心とした受講者が、起業家マインド、事業化ノウハウ、課題発見・解決能力および広い視野等を身につけることを目指し、受講者の主体性を活かした実践的な人材育成の取組みへの支援を行うプログラムです。特に、短期的な人材育成プログラムへの支援のみではなく、ベンチャー関係機関、海外機関、民間企業との連携を行うことで関係者間の人的・組織的ネットワークを構築する取組みを重点的に支援し、持続的なイノベーション・エコシステム(イノベーション創出のための生態系)の形成を目指します。

CBEC2.0に向けて

飯島CBEC代表の挨拶
飯島CBEC代表の挨拶

第3回目となる今回、「CBEC2.0に向けて:アントレプレナー育成とそのエコシステムの展開」をテーマにこれまでの活動を振り返るとともに、海外の先進事例を通して、CBECの今後のあるべき姿について議論しました。当日は、学生や企業からの参加者を含め70名近い参加があり、東工大のアントレプレナー教育とイノベーション教育の未来に対して、高い関心があることが伺えました。

主催者を代表して、CBECプログラム代表である飯島淳一教授(本学工学院)が挨拶した後、文部科学省の松尾泰樹審議官が、日本のアントレプレナー教育の現状と将来展望について、三島良直学長が東工大の大学改革で目指している未来についてそれぞれスピーチを行いました。

続いて、4名の講演がありました。まず、東工大からは工学院の妹尾大准教授が、エンジニアリングデザインプロジェクトでの成果を中心に、CBEC教育の成果報告を行ました。続いて、南洋理工大学(シンガポール)のフウィ教授が、シンガポールが国家戦略として取り組んでいるアントレプレナー教育への取り組みと、同大学の教育哲学を紹介し、シャルマーズ工科大学(スウェーデン)のファクスヘデン准教授が、同大学で20年以上の実績があるイノベーション教育について話し、修士課程にベンチャー創造のコースがあること、実際にビジネスが始動するまでをサポートしていること等を紹介しました。最後に、アールト大学(ドイツ)のエクマン教授から、芸術と経営をエンジニアリングが繋いだことを言及し、「PBL」は通常“Project-based learning(プロジェクト型学習)”または“Problem-based learning(問題発見解決型学習)”を指すが、アールト大学の「PBL」は“Passion-based learning(情熱型学習)”だという話が特に印象的でした。

4名の講演のあとは、パネルディスカッションが行われました。会場からもたくさんの質問があり、非常に活発で熱気を感じる討論会となりました。

また、シンポジウムのプログラム終了後に続いて行われた懇親会でも、パネルディスカッションの熱気が引き継がれ、アントレプレナー教育についての熱心な議論が行われました。最後は、三島学長を中心に本日の登壇者、CBEC担当教員で円陣を組んで「ヤー」と発声し、イノベーション創出の未来への思いを一つにしました。

  • 盛り上がる質疑応答

    盛り上がる質疑応答

  • 最後はイノベーション教育の未来に向け全員で円陣

    最後はイノベーション教育の未来に向け全員で円陣

プログラム

(敬称略)

14:00
開会
14:00
主催者からの挨拶 CBECプログラム統括 飯島淳一
14:05
来賓挨拶 文部科学省 審議官(科学技術・学術政策局)松尾泰樹
14:20
学長挨拶 三島良直
14:45
講演
  • CBECプログラムのこれまでの活動
    工学院 妹尾大

  • アジアのもっとも歴史のあるアントレプレナー教育
    南洋理工大学 デン・フウィ

  • ヨーロッパのもっとも歴史のあるアントレトレプレナー教育
    シャルマーズ工科大学 トマス・ファクスヘデン

  • SLUSH発祥の地ヘルシンキでの、藝術・経営との融合
    アールト大学 カルヴィ・エクマン

16:10
パネルディスカッション

お問い合わせ先

チーム志向越境型 アントレプレナー育成プログラム 事務局

E-mail : query@cbec.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3475

東工大ボート部 第39回東日本新人選手権競漕大会入賞

$
0
0

東京工業大学 端艇部(ボート部)が、10月22日、23日に埼玉県戸田市の戸田ボートコースで開催された、一般社団法人東京都ボート協会主催 第39回東日本新人選手権競漕大会に出場し、男子ダブルスカルで3位、男子舵手付きフォアで2位に入賞しました。

男子舵手付きフォア表彰式(左から井上さん、服部さん、中森さん、奥井さん、植田さん)
男子舵手付きフォア表彰式(左から井上さん、服部さん、中森さん、奥井さん、植田さん)

東日本新人選手権大会は主にボートを漕ぎ始めて1年目、2年目の選手による東日本地区の大会です。

競技に使われるボートには多くの種類がありますが、大きいオールを1人1本、両手で持って漕ぐスウィープタイプと、小さいオールを1人2本、片方に1本ずつ持って漕ぐスカルタイプの2種類に大きく分けられます。今回、東工大が入賞したのは、2人乗りボートのダブルスカルと、1人1本のオールを持ち、舵きり専門で漕がない舵手(コックス)を合わせた5人で乗る舵手付きフォアです。

男子ダブルスカル表彰式(左から長谷川さん、矢部さん)
男子ダブルスカル表彰式(左から長谷川さん、矢部さん)

メンバーを紹介します。

男子ダブルスカル

男子ダブルスカル決勝戦
男子ダブルスカル決勝戦
  • 長谷川青春さん(工学部土木・環境工学科 2年)
  • 矢部拓海さん(工学部土木・環境工学科 2年)

矢部さんからのコメント

大会で入賞する時いつも感じるのが、様々なところからの応援です。大学をはじめ、部活のOBや女子マネージャーの並々ならぬ支援にはいつも感謝しています。私は試合で勝つことがこの応援に応えるベストな表現だと考えていて、今回それを示せたことは非常に良かったです。今後とも、私矢部と長谷川は努力していくつもりです。引き続き応援をお願いします。

男子舵手付きフォア

男子舵手付きフォア決勝戦
男子舵手付きフォア決勝戦
  • 井上幸大さん(第4類 学士課程1年)
  • 服部広暉さん(第4類 学士課程1年)
  • 中森康友さん(第4類 学士課程1年)
  • 奥井優さん(第1類 学士課程1年)
  • 植田紳之介さん(第4類 学士課程1年)

服部さんからのコメント

4月に初めてボートを漕いでから、新人コーチの指導の下で練習を続けてきた僕たち一年生にとって、今回の東日本新人選手権はほとんど初めての大きな大会でした。緊張もしましたが、クルーの皆で持てる力を発揮し、銀メダルを獲得することができました。この成果は、これからのボート部生活の中でも貴重な経験になると思います。しかし、結果を残せたといっても僕たちの技術や体力はまだまだ未熟なので、これからもさらに精進していきます。応援よろしくお願いいたします。

お問い合わせ先

東京工業大学端艇部

Email : titboat@green.ocn.ne.jp
Tel : 048-442-5581


スーパーコンピュータ「京」がGraph500において4期連続で世界1位を獲得

$
0
0

スーパーコンピュータ「京」がGraph500において4期連続で世界1位を獲得
―ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高の評価―

概要

九州大学と東京工業大学、理化学研究所、スペインのバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター、富士通株式会社による国際共同研究グループは、2016年11月15日(火)(米国ソルトレイクシティ現地時間)に公開された最新のビッグデータ処理(大規模グラフ解析)に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングであるGraph500において、スーパーコンピュータ「京(けい)」[用語1]による解析結果で、2016年6月に続き4期連続(通算5期)で第1位を獲得しました。

大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析において重要となるもので、「京」は正式運用開始から4年以上が経過していますが、今回のランキング結果によって、現在でもビッグデータ解析に関して世界トップクラスの極めて高い能力を有することが実証されました。

本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「ポストペタスケール高性能計算に資するシステムソフトウェア技術の創出」(研究総括:佐藤三久 理化学研究所 計算科学研究機構)における研究課題「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤」(研究代表者:藤澤 克樹 九州大学、拠点代表者:鈴村豊太郎 バルセロナ・スーパーコンピューティング・センター)および「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」(研究総括:喜連川優 国立情報学研究所)における研究課題「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術」(研究代表者:松岡聡 東京工業大学)の一環として行われました。

スーパーコンピュータ「京」

2016年11月15日に公開されたGraph500上位5位

順位
システム名称
設置場所
ベンダー
国名
1
理研 計算科学研究機構
富士通
82,944
40
38,621
2
神威太湖之光
(Sunway TaihuLight)
無錫国立スーパーコンピューティングセンター
NRCPC
40,768
40
23,756
3
Sequoia
ローレンス・リバモア研究所
IBM
98,304
41
23,751
4
Mira
アルゴンヌ研究所
IBM
49,152
40
14,982
5
JUQUEEN
ユーリッヒ研究所
IBM
16,384
38
5,848

Graph500とは

近年活発に行われるようになってきた実社会における複雑な現象の分析では、多くの場合、分析対象は大規模なグラフ(節と枝によるデータ間の関連性を示したもの)として表現され、それに対するコンピュータによる高速な解析(グラフ解析)が必要とされています。例えば、インターネット上のソーシャルサービスなどでは、「誰が誰とつながっているか」といった関連性のある大量のデータを解析するときにグラフ解析が使われます。また、サイバーセキュリティや金融取引の安全性担保のような社会的課題に加えて、脳神経科学における神経機能の解析やタンパク質の相互作用分析などの科学分野においてもグラフ解析は用いられ、応用範囲が大きく広がっています。こうしたグラフ解析の性能を競うのが、2010年から開始されたスパコンランキング「Graph500」です。

規則的な行列演算である連立一次方程式を解く計算速度(LINPACK[用語2])でスーパーコンピュータを評価するTOP500[用語3]においては、「京」は2011年(6月、11月)に第1位、その後、2016年11月14日に公表された最新のランキングでも第7位につけています。一方、Graph500ではグラフの幅優先探索(1秒間にグラフのたどった枝の数(Traversed Edges Per Second; TEPS[用語4]))という複雑な計算を行う速度で評価されており、計算速度だけでなく、アルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が求められます。

今回Graph500の測定には、「京」が持つ全計算ノード[用語5]82,944台を用いています。約1兆個の頂点を持ち16兆個の枝から成るプロブレムスケール[用語6]の大規模グラフに対する幅優先探索問題を0.45秒で解くことに成功しました。ベンチマークのスコアは38,621 GTEPS(ギガテップス)です。Graph500第1位獲得は、「京」が科学技術計算でよく使われる規則的な行列演算だけでなく、不規則な計算が大半を占めるグラフ解析においても高い能力を有していることを実証したものであり、幅広い分野のアプリケーションに対応できる「京」の汎用性の高さを示すものです。また、それと同時に、高いハードウェアの性能を最大限に活用できる研究チームの高度なソフトウェア技術を示すものと言えます。「京」は、国際共同研究グループによる「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤プロジェクト」および「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術」の2つの研究プロジェクトによってアルゴリズムおよびプログラムの開発が行われ、2014年6月に17,977 GTEPSの性能を達成し第1位、また「京」のシステム全体を効率良く利用可能にするアルゴリズムの改良が行われ2倍以上性能を向上させ、2015年7月に38,621 GTEPSを達成し第1位でした。そして今回のランキングでもこの記録は神威太湖之光等の新しいシステムに比べても大幅に高いスコアであり、世界第1位を4期連続(通算5期)で獲得しました。

今後の展望

大規模グラフ解析においては、アルゴリズムおよびプログラムの開発・実装によって今回のように性能が飛躍的に向上する可能性を示しており、研究グループでは今後も更なる性能向上を目指していきます。また、上記で述べた実社会の課題解決および科学分野の基盤技術へ貢献すべく、スーパーコンピュータ上でさまざまな大規模グラフ解析アルゴリズムおよびプログラムを研究開発していきます。

用語説明

[用語1] スーパーコンピュータ「京(けい)」 : 文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、理研と富士通が共同で開発を行い、2012年に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。

[用語2] LINPACK : 米国のテネシー大学のジャック・ドンガラ博士らによって開発された規則的な行列計算による連立一次方程式の解法プログラムで、TOP500リストを作成するために用いるベンチマーク・プログラム。ハードウェアのピーク性能に近い性能を出しやすく、その計算は単純だが、応用範囲が広い。

[用語3] TOP500 : TOP500は、世界中のコンピュータシステムの、連立一次方程式の処理速度上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクト。1993年に発足し、スーパーコンピュータのリストを年2回発表している。

[用語4] TEPS(Traversed Edges Per Second) : Graph500ベンチマークの実行速度をあらわすスコア。Graph500ベンチマークでは与えられたグラフの頂点とそれをつなぐ枝を処理する。Graph500におけるコンピュータの速度は1秒間あたりに調べ上げた枝の数として定義されている。G(ギガ)は10の9乗(=10億)倍を表す接頭辞。

[用語5] ノード : スーパーコンピュータにおけるオペレーティングシステム(OS)が動作できる最小の計算資源の単位。「京」の場合は、ひとつのCPU(中央演算装置)、ひとつのICC(インターコネクトコントローラ)、および16GBのメモリから構成される。

[用語6] プロブレムスケール : Graph500ベンチマークが計算する問題の規模をあらわす数値。グラフの頂点数に関連した数値であり、プロブレムスケール40の場合は2の40乗(約1兆)の数の頂点から構成されるグラフを処理することを意味する。

情報理工学院

情報理工学院 ―情報化社会の未来を創造する―
2016年4月に新たに発足した情報理工学院について紹介します。

情報理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

問い合わせ先

九州大学広報室

Email : koho@jimu.kyushu-u.ac.jp
Tel : 092-802-2130 / Fax : 092-802-2139

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

理化学研究所 広報室 報道担当

Email : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

富士通株式会社 富士通コンタクトライン(総合窓口)

Tel : 0120-933-200

受付時間:9時~17時30分
(土曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)

科学技術振興機構 広報課

Email : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

役員会トピックス:2016年4月以降の運営体制に関する基本方針について

$
0
0

役員会は、東工大における最高意思決定機関です。東工大では毎月2回役員会を開催し、大学の組織、教育、研究などについて、審議し決定しています。 11月7日の会議で承認された、意欲的で新しい取り組みについて、紹介します。

11月7日 役員会

主な審議事項等

  • 平成29年4月以降の運営体制に関する基本方針について

  • 国立大学法人東京工業大学個人情報管理規程の一部改正について

  • シンガポール工科・デザイン大学(シンガポール)全学協定の新規締結について

  • 東京工業大学すずかけ台ハウス規則一部改正について

トピック1:平成29年4月以降の運営体制に関する基本方針について

学長のリーダーシップを十分に発揮できる運営体制を構築すべく、基本方針では、(1)先行して設置した「企画戦略本部」について、戦略を統括する機関であることを明示するため、名称を「戦略統括会議」に変更する、(2)大学の戦略に基づき企画立案から執行までを機動的に行うため、現在の企画立案組織および特定業務企画組織の機能を4名の理事・副学長の下に集約し、「広報・社会連携本部」「教育・国際連携本部」「研究・産学連携本部」「キャンパスマネジメント本部」に再編・設置する、こととしています。

これにより、現在18ある室・センター等を、4つの本部等に集約・大括り化し、会議等の効率化や支援スタッフ等の活用による教員の負担軽減、予算の効率的・効果的な執行、教員と職員の協働による新しい課題への柔軟な対応等の促進が期待されます。

トピック2:シンガポール工科・デザイン大学と全学協定の開始

シンガポール工科・デザイン大学は2009年にシンガポール第4の国立大学として創立され、世界的企業や海外トップ大学との連携、分野を横断するような学際的アプローチなど、ユニークなカリキュラムで特徴のある大学です。このたび、本学と学生・研究者交流に関した全学協定を締結します。

2015年にシンガポール工科・デザイン大学と本学はLetter of Intent(覚書)を締結し、チーム思考越境型アントレプレナー(CBEC)プログラムでの学生交流をはじめとし、工学院および環境・社会理工学院を中心とした交流を続けてきましたが、今後は、教育・研究面ともに全学的な交流促進が見込まれます。

この締結により、本学の全学協定の数は111となります。

工大祭2016「Palette」開催報告

$
0
0

10月8日、9日の2日間にわたり、東京工業大学大岡山キャンパスで恒例の工大祭2016が開催されました。途中激しい雨に見舞われたにもかかわらず、約43,300人もの来場がありキャンパスは大変賑わいました。

工大祭2016「Palette」

今年のテーマは「Palette(パレット)」。様々な色を混ぜ合わせて無限の色を作り出すパレットのように、様々な個性が混ざり合うことで、無限の可能性を生み出せるような場所であってほしいという意味が込められています。そのテーマのとおり、公開講義や研究室による最先端の研究の展示、学生が工夫を凝らした様々な企画や賑やかな模擬店などでキャンパスは熱気に包まれました。

本年は、「チーズケーキ」という愛称で親しまれている新図書館の完成と、工大祭のマスコットキャラクターである「テックちゃん」の誕生からそれぞれ5周年を迎え、これらを記念し、図書館付近には「チーズケーキカフェ」が設置され、西9号館では新企画の「テックちゃんミュージアム」が開かれました。

  • マスコットキャラクター「テックちゃん」

    マスコットキャラクター「テックちゃん」

  • チーズケーキカフェ

    チーズケーキカフェ

また、工大祭で実施された企画の中から人気ナンバー1を決める「グランプリ2016」では、ジャグリングサークル「ジャグてっく」の「ジャグてっく ストリートパフォーマーず」が「ベストオブ工大祭」に選ばれました。

  • 「ジャグてっく ストリートパフォーマーず」

    「ジャグてっく ストリートパフォーマーず」

  • 賑わう野外ステージ

    賑わう野外ステージ

工大祭実行委員会からのメッセージ

このような盛り上がりの中、無事に工大祭を終えることができたのは、ご来場いただいた多くの方々、協賛企業の方々、ご支援いただいた多くの教職員をはじめとする大学関係者と学生の皆さん、そして、一丸となって工大祭を作り上げていった参加研究室、学生団体やサークルの皆さんのご協力のおかげです。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。天候に恵まれない中の開催が続いていますが、来年の工大祭もさらに盛り上げていきたいと思いますので楽しみにしてください。

お問い合わせ先

工大祭実行委員会

E-mail : info@koudaisai.jp
Tel : 03-5734-2480

ノーベル賞受賞者らが本学科学技術創成研究院設立記念式典記念講演会にて講演

$
0
0

10月7日、今年4月に発足した本学、科学技術創成研究院の設立記念式典がすずかけ台キャンパスにて開催されました。

式典に先立って記念講演会が行われ、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授(科学技術創成研究院)、2009年ノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士(本学卒業生、筑波大学名誉教授)、2016年日本国際賞を受賞した細野秀雄教授(科学技術創成研究院)による講演が行われました。

メイン会場から同キャンパス内の2つの会場にも同時中継を行い、計388名の来場がありました。また、大隅栄誉教授のノーベル賞受賞決定後初めての講演ということもあり、20名を超える報道機関が集いました。

以下に、3名の講演者による講演内容の概要をご紹介します。

細野秀雄教授(科学技術創成研究院)
「大学附置研と研究プロジェクト」

大学における研究の現状

細野教授は、まず、国立大学運営費交付金が年々減少しており、この状態が続くと現在の国力の維持が難しいこと、また、それに付随して様々なことが起きていると言及しました。

細野秀雄教授
細野秀雄教授

1つ目の例として、修士課程修了者(自然科学系)の博士後期課程への進学率の減少を挙げ、大学の学術の担い手は大学院生、特に博士後期課程の学生であり、博士後期課程の学生数の減少が研究力の低下に繋がっている現状を述べました。二つ目の例として、主要国の論文数シェアおよびトップ10%補正論文数の推移に関するデータを示し、(トップ10%論文数の多い国から)アメリカ、中国、イギリス、ドイツ、日本、フランス、韓国の順であり、日本は運営費交付金の減少時期とトップ10%論文数の減少時期とが一致していると指摘した上で、このままではフランスと韓国にも抜かれるとの見方を示しました。そうした観点から、国力という意味では危ない状況であり、大隅先生がノーベル賞をもらって非常におめでたいが、20年後を考えると相当荒んだ状況になるというのが、サイエンティストだったらお分かりになると思う、と述べました。

続けて、大学等が企業・独立行政法人等と実施する共同研究の規模と件数のデータを示して、80%程度が300万円未満の規模に納まっていること、また、大学等の特許実施等件数および特許実施等収入の推移に関するデータでは、国立大学や独立行政法人など100機関全てを合わせた特許収入が20億円程度であることを示し、日本の産学連携が実効的な効果を上げていない現状を語りました。

大学にある研究所の役割

自らが籍を置く大学における研究所の役割については、研究所は研究に特化したところであり、学術の場である大学に対して「新しい学術領域の開拓」「インパクトの大きい領域の発展・展開」「プロの研究者の育成」を行う場であると述べました。私見と断った上で、教育プログラムをいくら整備してもそれだけでは優秀な研究者は育たず、優秀な研究者は優秀な研究者に触発されて育つこと、優秀な研究者の近傍にいて、影響を受けて、背中を見て育つ、それがプロの研究者の育成であり、それを行うのが本来は研究所であると強調しました。

その役割を果たすための制度としては、研究所のメンバーには「旬の研究を行っている人」がいて、若い世代に“あの人が研究所にいるからここで研究したい”と思わせる「透明で厳しい人事」を行うことが重要であると指摘しました。また、研究所のインフラとして、学院の研究室では困難な研究が科学技術創成研究院の研究所では出来るよう、特殊な条件や広いスペースを備える必要があると述べました。学院と科学技術創成研究院の関係については、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)とバークレーラボを一つの見本として取り上げました。バークレーラボには専任の研究員もいるが、バークレーの大学の先生がバークレーラボで主任研究員を兼務する例があり、東工大においても、たとえば大岡山キャンパスの教員が研究に特化したいと考えて大岡山の研究室を保持したまま、すずかけ台キャンパスの研究所でもう一つ研究室を持ってもよいのではないか、そうしたシステムを作らないとトップの研究は出来ないと思う、と述べました。

研究環境の充実に向けて

学術審議会総合政策特別委員会の座長をされていた野依先生の言葉「附置研究所の卓越拠点はWPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)である」を引用し、WPIが取れないようでは世界トップレベルの研究所とはいえないこと、また東北大学のWPIの施設の評価委員として携わった経験から、この度発足した科学技術創成研究院を中心として、世界の冠たる軸となるような研究所を東工大にも作って欲しいとの希望を語りました。

東工大の今後の産学連携について語る細野教授
東工大の今後の産学連携について語る細野教授

そうした研究環境を整えるためには、国に頼っているだけでなく、大学として産学連携を積極的に進めることで、東工大発のオリジナリティを伸ばしていくことが重要であると言及しました。産学連携の具体的な課題として、大学に対しては(1)機密保持が可能な専用施設の完備、(2)キャンパスから歩いていける距離へのリサーチパークの誘致、(3)産業が出来るだけの規模の大きな産学連携が出来るよう特許を取得し、それを売ってキャッシュが回っていく継続的なシステムの構築、(4)研究者をサポートするチームとしての知財保護に関する取組みの充実、(5)研究者が基礎研究は大学、応用研究は企業というステレオタイプにとらわれず、基礎の中から応用が、応用の中から基礎の問題が出てくるのがサイエンスであるとの認識を持つことを、国に対しては知的財産の流出を防ぐための施策への取組み、を求めました。

ここから先は各論として、1993年に東工大応用セラミックス研究所(2016年4月に科学技術創成研究院に改組)で研究を始めた頃に、野心的な教授陣の研究に対する姿勢にカルチャーショックを受けたことや、自身の研究分野である材料分野の特性等について話しました。さらに、自身の研究「透明酸化物半導体」について、文科省科研費の100万円規模の研究費支援が、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(ERATO)プロジェクトに採択されたことで年間3億円(計18億円)規模に増加したことを受け、論文の引用回数等も飛躍的に伸びたと述べました。また、自身の経験をもとに、研究プロジェクトの本質は、時間をお金で買うことであり、本来15年で研究することを5年で成果を出すことになるため、当然負担もかかる一方で感動も多いので、研究院のメンバーは、旬を迎える時期が来たら一度は大きな規模のプロジェクトに挑戦するべきだと思う、と話しました。

大隅良典栄誉教授(科学技術創成研究院)
「海外の大学を見て感じていること、私が東工大に抱いている夢」

科学と技術は車の両輪

大隅良典栄誉教授
大隅良典栄誉教授

大隅教授は、ノーベル賞受賞発表以降、異次元の生活を強いられているため講演準備が万全ではないとした上で、「科学とは、人類が営々として蓄積してきた知の総体であり、私たちがどういう時代に生きているかということとは決して切り離しようのないもので空想の世界にあるものではないこと、また、科学の本質は、“知りたい”という人間の知的な欲求そのものだと思っている。科学技術という言葉が盛んに出てくるが、科学は技術の基礎という位置付けではなく人間が持っている非常に大事な文化活動の一つであり、科学と技術は車の両輪であり、その二つで展開されていくのが本来あるべき姿だろう」と言及しました。

液胞に魅せられて

生命は、外部から供給されたエネルギーを変換して代謝しながら自己組織化しているという意味で極めて動的な存在であり、近代生物学の歴史は生命がいかに動的にしか存在しないのかを明らかにしてきたと言え、自身もその視点で研究をしていると述べました。分子生物学では大腸菌を材料にして全ての基本原理が明らかにされてきたが、その後私たちの身体を構成している真核細胞の問題に意識が移った時に、酵母という小さな細胞が非常に有用な役割を果たすようになってきた背景があり、さらに、“人があまりやらないことをやりたい”と考え、酵母の何の変哲もないオルガネラ(細胞内小器官)であり、ゴミ溜め程度で大したことをしていないとその当時多くの人が考えていた「液胞」というコンパートメントに興味を抱くようになったと話しました。

ノーベル賞に繋がった飢餓状態の液胞観察について語る大隅栄誉教授
ノーベル賞に繋がった飢餓状態の液胞観察について語る大隅栄誉教授

バラの美しい色は液胞の中の色素を見ていることや、生薬の成分が液胞の中に詰まっていることなどを例に挙げながら、私たちは日常生活において液胞から多くの恩恵を受けていると述べ、生物学的に面白い問題が液胞の中にあると話しました。また、液胞の研究を進める中で、トランスポーターとしての機能から、1998年頃に分解コンパートメントとしての液胞の意味へと関心が移ったことや、当時は分解が合成よりもネガティブな雰囲気があって、生物科学の中で注目されない課題であったと述懐しました。分解の例として、私たちが1日に70~80gのタンパク質を摂る一方、200~300gのタンパク質を毎日合成しており、そのギャップを埋めるのは、私たちの身体で分解されたものがアミノ酸になって合成され、タンパク質になるというリサイクルのシステムがあるためであり、タンパク質にも寿命があって制御されていると述べました。さらに分かりやすい例として稲穂を挙げ、夏には緑色をしていて光合成をするための葉緑体をたくさん持つが、秋には光が弱くなるので葉っぱが黄色くなり、葉っぱにある全てのタンパク質を分解してコメに送って次世代を育てているとし、分解が次世代のためのリサイクルシステムであり、分解なくしては次の世代は生まれないと説明しました。私たちの身体もタンパク質の合成と分解の平衡によって支えられていて、1~2ヵ月でほぼ全て置き換わり、水だけでも10日間くらい生きていられるのはそうしたシステムによるものであること、また、分解は「壊れる」という受動的なものではなく、「壊れながら維持している」という能動的な過程であって、合成に劣らないたくさんの遺伝子が分解のために働いていると言及しました。

オートファジーとの出会い

タンパク質の細胞の中での分解を解明する中で、クリスチャン・ド・デューブ氏(ベルギーの生化学者)が細胞の一重膜の中に分解酵素をもっているライソゾームを発見し、エンドサイトーシス(細胞の外からライソゾームに運ぶシステム)と同時に細胞の中のもの(細胞質)をライソゾームに運ぶ自分自身の分解システムを「オートファジー(Self-Eating)」と名付けたことを紹介し、その後、オートファジーという現象が色々な細胞にあることが発見されたものの、メカニズムの解明が進んでいなかったこともあり、チャレンジングな問題であることを覚悟してこの問題を解きたいと思ったと話しました。

顕微鏡を眺めるのが好きで、その過程が見えないかと思って、分解酵素が無い酵母で飢餓状態の液胞を観察したところ、液胞の中に非常にきれいな球形の構造がたくさん溜まって、3時間くらい小さな液胞の中で動き回るのを確認できたのはとてもラッキーだった。これを見つけた時に、これはとても面白い現象に違いないと思ってこの28年間研究を続けてきたと語りました。細胞が飢餓を感じると小さな膜構造が現れて細胞質の一部を取り囲み二重膜構造を作って融合現象が起こり、自身らが「オートファジックボディ」と名付けた構造が液胞の中に運ばれる現象が酵母で発見出来た。それを受け、オートファジーに関わっている遺伝子群としてATGという遺伝子を見つけたこと、その解析に苦しんだ時代もあったが、それらの18個のオートファジーの遺伝子群が何をしているのかを突き止めることが出来たと話しました。それらの遺伝子を組み合わせ、分解のメカニズムを解明したことにより、オートファジーの研究が非常に大きな進展を得たことや、生存戦略としてオートファジーが非常に重要な役割を果たしていることを酵母で初めて示し、それに関わる遺伝子を見出してきた。その後、ATGのノックアウトやオートファジーの変異が動物細胞でどういう風に起こるのかを、東大の水島さんや新潟大学の小松さんをはじめとする多くの研究室で、多くの生物で解析される時代を迎えたと述べました。

オートファジーは、自分自身のリサイクルのシステムであることに加えて、異常なタンパク質やオルガネラを除去するという意味で細胞の中をいつもきれいにしておくという大事な機能を持っていることが分かってきたと述べ、バクテリア侵入、腫瘍細胞などにもオートファジーが大きな役割を果たしているという研究も進んできて、大きな領域になってきたと説明しました。私たちの研究でも、オートファジーがリサイクルシステムとしてだけでなく、分解されたものを一旦外に捨てられる装置として機能していることも分かっている。まだまだ取り掛からないといけない問題が山積しており、また、データを蓄積していかないといけないフィールドであると認識している。生命科学には本当の意味でゴールがなくて、あることが分かると次の疑問を生むという側面がある。これですべてが分かったというにはまだほど遠いとオートファジー研究の現状を語りました。

日本の科学の現状と東工大への期待

続いて、日本の科学の現状について、日本の大学の基礎体力が非常に低下しているのは深刻な問題だと述べました。教員自身も研究時間が少なくなって、論文を書く時間がないとか色々な雑事に追われて時間がなくなっている。教員があまり楽しげにしていなかったら大学院生が博士(後期)課程に行こうという意欲もなくなると指摘しました。今は、全ての研究資金が競争的資金になってしまい、長期的な新しいことにチャレンジするのが非常に難しい状況になっている。競争が激化すればするほど、手っ取り早くネイチャーに載るようなことをやろうとして多くの人が流行の分野の研究に集中してしまうのが日本の生物科学の弱いところで、いかにネイチャーに論文がたくさん出ようが、本当に革新的な研究はそこからは実は生まれていないと思う。大学人として、企業の研究などへの目配りもして気概を持ってほしいと述べました。

東工大に期待することとして、小さい大学のメリットを考えると良く、東工大は小さいがゆえに意思決定が早くチャレンジングなことが出来ると思うと述べました。MIT(マサチューセッツ工科大学)やCaltech(カリフォルニア工科大学)に伍した大学にすることを標榜するとしたら、ある一点突破をして、あるところで国際的な拠点になることを目指さないといけない。これからは民間との連携が必要で、連携のあり方としては必ずしも共同研究ではなく、緊密な情報交流が出来るようなシステムを作ってみたらどうかと提案しました。また、若い人がチャレンジングな課題に取り組める環境整備や、ケンブリッジ大学の新しい研究所やイギリスのクリック研究所のようなコア・ファシリティといった環境整備も必要で、個人個人が努力するという時代ではないのかもしれないと指摘しつつ、自身らの(細胞制御工学)研究ユニットが、センターもしくは研究所になることを願っており、国際レベルの研究が出来る細胞生物の拠点であってほしい、そうした新しいシステムが導入される中で、次世代を担う研究者がそこから育っていくよう導くことが私たちの使命であると述べました。

最後に、日本の今の大学院生に向けて、自分の興味や抱いた疑問を大事にしてほしい。一番競争の激しいところで勝てるという自信があるのなら流行を追ってもよいと思うが、そうでないのなら、“何がまだわかってもいない問題で、新しい問題なのか”を見極める目を持ってほしいと話し、人と違うことを恐れずに自分のやりたいことをやってもらいたい。自身の支えになるような、自分の研究の理解者を作る努力を惜しまないでほしいとメッセージを送りました。

白川英樹博士(本学卒業生、筑波大学名誉教授)
「東京工業大学で学んだこと」

研究する上で大切なこと

白川英樹博士
白川英樹博士

まず、東工大を離れたのが1979年頃であり、すずかけ台キャンパスが当時は長津田キャンパスだったことや、久しぶりに訪れて建物が増えていて驚いたと語りました。

新しい研究院の創立にあたっては、研究にはお金がかかり、立派な機械や施設が必要である、細野先生の講演では100万、200万円は非常に少額だとの話しもありましたが、私自身はそれだけいただければ、ノーベル賞とまでは行きませんけれどもそこそこの研究をする自信はある、と述べ、会場から笑い声が上がりました。続いて、確かに研究費は多ければ多い方がよく、設備は立派なほどよいが、それは必要条件であって十分条件ではない。では十分条件は何かというと、「人」であり、その研究にふさわしい人をどう育てるかが大学の役目だと思うと言及しました。

次に、自身の経歴について触れ、1957年に東工大理工学部に入学し、学部、修士、博士の9年間と助手の11年間は大岡山キャンパスにて研究を続け、その間1年間アメリカ留学(ペンシルバニア大学)をして、帰国後長津田キャンパスに2年間、筑波大学に移って20年間を研究に費やしたと語りました。小さい頃は昆虫採集や植物採集、ラジオの組み立てや読書に夢中で、それらを通じて本物・実物、自然に学ぶことが大切だと学び、よく観察する、よく記録する、よく調べる、最後によく考えるということが知らず知らずのうちに身に付いていて、大学に入って研究を行う上でも役立ったと話しました。

人との出会いの大切さ

理工学部一つの単科大学である東工大で科学者を目指そうと思ってお兄さんに相談したところ、“そんな頭の中が同じ人間ばっかりのところに行くな、もっと多様な考えをもつところに行け”と大反対されたが、有機化学、高分子化学の分野に著名な先生がおり、また、小さな単科大学で非常に風通しがよくて進路選択の自由度が大きそうだと考え、入学を決意したと語りました。当時の入学者は380名ほどと少なく大体の学生の顔が分かって話が出来る環境にあったこと、また“頭の構造が同じでも、専門が違えば少しは違うだろう”と積極的に他専攻の学生とも交流を持ったことや、研究室所属にあたり、合成を専門にする神原先生のところに行きたかったが競争率が高くて、高分子物性が専門で非常に厳しい金丸研究室に入ることになったが、結果的に非常に良い訓練になったと当時を述懐しました。

また、当時の教養教育では、英語の伊藤整先生、哲学の鶴見俊輔先生、心理学の宮城音弥先生、教育社会学の永井道雄先生などから講義を受けるなど充実していたことや、今思うと、自然科学は大好きだったが、それだけが大切なのではなく、社会科学、人文科学などの学術全般、さらに言えば芸術を含めた教養教育の大切さを実感したと語りました。

理科好きだった子供時代について語る白川博士
理科好きだった子供時代について語る白川博士

大学院で神原研究室に移り、大学院での研究を通じて、人との出会いが非常に重要であることに気付かされたと述べ、神原研究室では研究室での研究だけではなく、当時助手をされていた山﨑升先生が積極的に外部(他大学や研究所)の研究者に引き合わせてくれ、さらにそこで研究もするという環境を作ってくれたと話しました。アメリカ留学のきっかけも、山本明夫先生がノーベル賞の共同受賞者の一人であるアラン・マクダイアミッド先生に引き合わせてくれたおかげであって、ノーベル化学賞受賞に繋がる研究ができたという意味でも極めて重要な出会いだったと述べました。

ノーベル賞に繋がった研究に対する姿勢

ノーベル賞を共同受賞したアラン・ヒーガー先生は固体物理学者、アラン・マクダイアミッド先生は無機化学者、自身は高分子科学者と、異なる背景を持つ研究者が巡り合ったことが、研究の発展において極めて重要であったとの経験から、研究の質を高めるためには(1)人と人との出会いと交流が必要で決定的な役割を果たしていること、(2)化学(高分子科学)と物理学(固体物理学)の単なる共同研究ではない密接な交流の結果であること、(3)接点だけでの学際(協力)的関係では機能しないこと、(4)相手の分野のことを十分理解した上で研究を行っていく融合が必要であること、を挙げました。

最後に、新たに発足した科学技術創成研究院が学内や国内だけでなく、海外の研究者や研究機関との交流や活発な連携を実行することで素晴らしい研究成果を上げることを期待している、また、設備とお金だけではなく、「人」が大切であるということを念頭に置いて発展してほしいとの応援メッセージをいただきました。

(左から)益科学技術創成研究院長、白川博士、大隅栄誉教授、細野教授
(左から)益科学技術創成研究院長、白川博士、大隅栄誉教授、細野教授

科学技術創成研究院は、新たな研究領域の創出、人類社会の問題解決、および将来の産業基盤の育成を使命として、2016年度に研究改革の目玉として設立されました。

すずかけ台・大岡山両キャンパスにまたがる4つの研究所、2つの研究センターおよび10個の研究ユニットから構成され、全体で約180名の常勤研究者を擁しています。学内外の研究者の人事交流や、異なる専門領域の融合研究を推進するとともに、研究に没頭できる支援体制を整備し、次世代の革新的研究の創出に向けた仕組みを備えた組織を目指しています。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

お問い合わせ先

広報センター

Email : nobel@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2976

東工大基金「平成28年度感謝の集い」開催報告

$
0
0

東京工業大学では、東京工業大学基金(以下、東工大基金)等へのご寄附など、本学をご支援いただいている個人、企業(団体)の方々をお招きし、感謝の意を表する「感謝の集い」を例年開催しています。今年は、11月2日に東工大蔵前会館で開催されました。

東工大基金とは

東工大基金は2011年に迎えた創立130周年を契機に、戦略的な大学運営を支える財政的基盤を強化すべく創設され、これまで個人や企業(団体)の多くの方々から多大なご支援をいただきました。

皆様からのご支援は、学生への奨学金給付や海外派遣支援、外国人留学生の受入支援、若手研究者への研究支援、小中高生に対する理科教育振興支援等に活用しています。

国立大学法人化による自主自立型の経営が求められる国際的な競争環境の中で、本学は「世界トップ10に入るリサーチユニバーシティ」を目指して、今年4月にスタートした教育改革・研究改革・ガバナンス改革を強力に進めていきます。

平成28年度感謝の集い

上田リベラルアーツ研究教育院長の特別講演
上田リベラルアーツ研究教育院長の特別講演

プログラム前半では、「自ら輝き、世界を輝かす~東工大の新しいリベラルアーツ教育と日本の未来」と題したリベラルアーツ研究教育院の上田紀行研究教育院長による特別講演が行われました。

プログラム後半では、三島良直学長の挨拶の後、日置滋副学長(基金担当)による東工大基金の支援事業報告がありました。

続いて、東工大基金から支援を受けた学生や教職員から、海外留学、国際交流活動、社会貢献活動等の報告が行われ、出席された支援者の方々から多くの質問がありました。

  • 三島学長挨拶

    三島学長挨拶

  • 日置副学長(基金担当)による東工大基金の支援事業報告

    日置副学長(基金担当)による東工大基金の支援事業報告

また、夕刻からは、くらまえホールにて交流会が行われ、東工大基金から支援を受けた学生や教職員の活動内容についてパネル発表や展示等を行い、支援者の方々と学生、教職員が活発に議論し、交流する場面が見られました。

交流会での様子
交流会での様子

交流会での様子

お問い合わせ先

東京工業大学基金室

E-mail : bokin@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2415

「財務レポート2015」公表

$
0
0

このたび、平成27年度財務諸表を基にした「東京工業大学 財務レポート2015」を公表しました。

財務レポート2015

東京工業大学では、本学を支えてくださるみなさまに、大学の財務情報や新しい取り組みをわかりやすい形で提供することを目的として、財務レポートを作成しております。

平成27年度は、大学改革の総仕上げとしてさまざまな取り組みを行いました。国立大学特有の会計処理の解説と共に紹介しております。

「財務レポート2015」の内容は、以下のpdfファイルをご覧ください。

財務レポート 2015

財務ハイライト

平成27年度財務ハイライト

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 業務実施コスト計算書

東京工業大学を支えてくださるみなさまへ

  • 国民のみなさまへ
  • 学生・保護者のみなさまへ
  • 卒業生のみなさまへ
  • 企業のみなさまへ
  • 本学の教職員へ

財務諸表の経年変化

指標から見る財務状況

会計処理解説

国立大学法人特有の会計処理について

財務諸表の表示科目について

お問い合わせ先

財務部主計課決算グループ

E-mail : syu.kes@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2304

第1回神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア講座 開催報告

$
0
0

10月23日、横浜崎陽軒本店会場において、「神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア講座~第1回健康増進と豊かな暮らしを実現するための最先端技術とその産業応用~」を開催しました。本講座は、本学の複合系コースの1つである、ライフエンジニアリングコースが神奈川県からの委託を受けて行っている事業で、2016年度に計3回の開催を予定しています。

複合系コース:複数の学院や系にまたがる異なる学問領域を融合させ、新たな学問領域を確立した上で教育にあたる大学院課程における先駆的なコース

初回となる本講座では、様々な医療・福祉に関わる科学技術が開発される中、人工知能や脳科学に着目をし、これらの研究開発が私たちの健康や日常生活のサポートにおいてどのような役割を果たしているかをヘルスケアに関心を持つ方々に説明しました。

第1部はライフエンジニアリングコースの梶原将主任(生命理工学院 教授)の開会挨拶から始まり、神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室の関口仁氏より、現在、神奈川県が推進している未病産業研究会(ME-BYO)やCHO構想等、超高齢化社会に向けて行っているヘルスケア・ニューフロンティアの施策についての説明がありました。

企業や団体等が、組織内に「CHO(Chief Health Officer=健康管理最高責任者)」の職を設け、従業員やその家族の健康づくりを企業理念に取り入れ、経営責任として従業員等の健康マネジメント、いわゆる健康経営を進めるもの。

その後、セラピー用アザラシ型ロボット「PARO」の開発者である、産業技術総合研究所の柴田崇徳氏が、「世界一セラピー効果があるロボット-科学的エビデンスに基づく非薬物療法」をテーマに講演しました。PAROを活用することにより、薬を使わない治療が可能となり、コスト削減の面だけではなく、患者の状態を健康的かつ効果的に回復させることができることから、海外からも注目を集めていると話しました。

  • 神奈川県政策局の関口氏

    神奈川県政策局の関口氏

  • 産業技術総合研究所の柴田氏

    産業技術総合研究所の柴田氏

続いて、本学情報理工学院の三宅美博教授より「リズム歩行アシストロボットWalk-Mate(ウォークメイト)とパーキンソン病治療への応用」をテーマに、三宅教授が開発した「Walk-Mate」の動きを動画で説明するとともに、デザイン画を使って現在開発中の「着るロボット」についても紹介しました。

次に本学科学技術創成研究院 バイオインターフェース研究ユニットの吉村奈津江准教授が登壇し、「脳波による脳情報のデコーディングとリハビリテーションへの応用」と題し、脳波を活用した介護サポートロボットや、脳波を利用して患者の身体機能を回復させる仕組み等について解説しました。

  • 情報理工学院の三宅教授

    情報理工学院の三宅教授

  • バイオインターフェース研究ユニットの吉村准教授

    バイオインターフェース研究ユニットの吉村准教授

休憩時間には、柴田氏開発のPAROが会場に用意され、多くの来場者が頭を撫でたり、声をかけたりと、PAROとのふれあいを楽しんでいました。

第2部では、本学の水本哲弥副学長(教育運営担当)が「東京工業大学の新教育システム」について、将来、科学技術の力で世界に貢献するため、学生が自ら進んで学び、鍛錬する「志」を育てたい等、印象的なキャッチフレーズをいくつか交えて紹介しました。

最後に、梶原主任より「ライフエンジニアリング分野の大学院教育」について説明し、第2部を締めくくり、第1回講座を終了しました。全体を通して鋭い質問も挙がるなど、大変有意義な講座となりました。

  • 水本副学長

    水本副学長

  • ライフエンジニアリングコースの梶原主任

    ライフエンジニアリングコースの梶原主任

お問い合わせ先

東京工業大学 ヘルスケア・ニューフロンティア運営事務局

E-mail : life.eng@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3805


本学学生の雪崩事故について

$
0
0

本日、富山県にて発生した雪崩事故について、下記のとおり学長コメントを公表いたします。

学長コメント

本日、本学ワンダーフォーゲル部に所属する学部学生複数名が、富山県立山町の北アルプス・立山連峰で発生した雪崩に巻き込まれ、そのうち1名が亡くなりました。

前途有為な学生が志半ばにして亡くなられたことは痛恨の極みであり、ご家族の皆様に謹んで哀悼の意を表すとともに、被害にあわれた学生の早期回復を心よりお祈りいたします。

平成28年11月29日

国立大学法人 東京工業大学
学長 三島良直

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター
電話: 03-5734-2975 / FAX: 03-5734-3661
Email: pr@jim.titech.ac.jp

リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」第3回開催

$
0
0

10月26日、リベラルアーツ研究教育院の山崎太郎教授による連続講演会の第3回「ライトモチーフ-ワーグナーの音楽技法」が、大岡山キャンパス西5号館で開催されました。 全5回のうち、3回目となる今回は、これまでの講座内容をコンパクトに解説するところからスタートしました。山崎教授は映像と音楽を交えながら、『ニーベルングの指環』のあらすじと、「ライトモチーフ」と呼ばれる音楽技法、登場人物ジークリンデに起きた心理現象「フラッシュバック」などを、詳しく複合的に語りました。

ニーベルングの指環:リヒャルト・ワーグナーが、1848年(35歳)から1874年(61歳)まで26年かけて作曲した4部作の音楽劇。上演に約15時間を要する長大な作品で、序夜『ラインの黄金』、第1日『ヴァルキューレ』、第2日『ジークフリート』、第3日『神々の黄昏(たそがれ)』から成立しています。

山崎教授自らの手書きの図による説明

山崎教授自らの手書きの図による説明

物語は、ジークリンデとジークムントの愛、歓喜と絶望、狂乱、ブリュンヒルデの自我の目覚め、ジークムントの死、ジークリンデの受胎告知、ジークフリート命名へと展開していきます。全作を通じて、ワーグナーの「人は神よりも尊く、人間は神の完成態である」という考えが貫かれていると山崎教授は語ります。

その作品に用いられている「ライトモチーフ」とは、舞台上にはない事物・人物・観念などを聞き手の意識に呼び起こす、特定のメロディー・リズム・和音とされています。作品の中に繰り返し現れ、聴き手の無意識の次元に働きかけて、深々としたイメージを作り上げます。山崎教授は、ライトモチーフの技法があってこそ、ワーグナーの音楽が成立するとし、また、その中でのオーケストラの存在について、「オーケストラは実際の舞台が立脚する硬く凍り付いた動かざる地面をいわば、流れるように柔らかく、感受性に富む、霊気に満ちた水面へと溶解する」(『未来の芸術作品』1849年 ワーグナー著)という文章を引用し、ワーグナーの最上の文章の一部であると紹介しました。また、ジークリンデの激しい言動、狂乱については、その時点までに起きたことに対して彼女が抱いてきた絶望に、幼児期の体験のフラッシュバックが一気に加わったことを説明しました。彼女自身が自分自身を守るために、思い返すことも言葉にすることさえもなく来た恐怖の体験が、心身の極限状態の中で一気に表出し、彼女を突き動かしたのです。

今回の講座は、ワーグナーファンでなくとも、音楽や心理学の理論としても堪能できる内容でした。来場者は、ワーグナー自身の深層心理から物語が創出されて音楽作品となり、その音楽が聴き手の深層心理に働きかけること、それによって、聴き手がそれぞれのワーグナーの物語の世界を作り上げていくことを認識しました。また、聴き手は、作品をストーリーとして表面的に楽しむだけではなく、心の奥底から揺り動かされ感動し、そのみずみずしい心の動きに身を委ねることができる、これこそがワーグナーの音楽の魅力であると改めて感じ入りました。 最後の質疑応答の際、ライトモチーフについて山崎教授からの回答を聞いた男性は、「40年以上、ずっと疑問に思っていたことが、今日はっきり理解できました。本当にありがとうございます。」と語りました。

熱心な来聴者の質問に答える山崎教授

熱心な来聴者の質問に答える山崎教授

次回講座のテーマは、「『ジークフリート』-森と世界のトポロジー」です。いよいよジークフリートの登場へとストーリーが展開していきます。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に新たに発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

リベラルアーツ教養講座事務局

E-mail : ila2016@ila.titech.ac.jp

12月の学内イベント情報

$
0
0

12月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

2016年度「蔵前ベンチャー賞」・「蔵前特別賞」講演会

2016年度「蔵前ベンチャー賞」・「蔵前特別賞」講演会

一般社団法人蔵前工業会(東京工業大学同窓会)は、ベンチャー企業の育成を目的に2007年度から「蔵前ベンチャー賞」を、2009年度から「蔵前特別賞」を設置し、社会に顕著に貢献した個人および企業・団体を表彰しています。

日時
12月1日(木)
17:00 - 授与式、17:30 - 講演会、19:15 - 20:45 交流会
会場
大岡山キャンパス 西9号館
授与式・講演会:ディジタル多目的ホール
交流会:コラボレーションルーム
参加費
講演会は無料
交流会参加費は一般3,000円(当日支払)、学生無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要(11月28日締切)

第54回 My Study Abroad 留学報告会

第54回 My Study Abroad 留学報告会

国際室が募集する留学プログラムにより留学した学生の報告会を開催します。経験者の話を聞き、質問できるチャンスです。

日時
12月2日(金)12:15 - 13:15
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
不要

リベラルアーツ教養講座 「歴史劇の現場から―新国立劇場『ヘンリー四世』の上演をめぐって―」

リベラルアーツ教養講座 「歴史劇の現場から―新国立劇場『ヘンリー四世』の上演をめぐって―」

今年2016年は、ウィリアム・シェイクスピアの没後400年に当たる年です。新国立劇場の舞台には、11月から12月にかけて『ヘンリー四世』二部作が上演されます。リベラルアーツ研究教育院は、この二部作の魅力を、新国立劇場での上演にもふれながら掘り下げてゆくシンポジウムを企画しました。

日時
12月5日(月) 17:30開場、18:00開始
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
不要

東工大テニュアトラック教員2016年度研究成果発表会

東工大テニュアトラック教員2016年度研究成果発表会

東工大テニュアトラック教員が2016年度の研究活動と研究成果の発表を行います。また、テニュア獲得教員がテニュアトラック時代を振り返って講演を行います。

日時
12月6日(火)10:00 - 16:00
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
不要

平成28年度創造性育成科目事例発表会

平成28年度創造性育成科目事例発表会

学生が能動的・発見的に学修を行う創造性育成科目の事例を受講生自ら発表します。

日時
12月6日(火)14:30 - 17:00
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要(11月16日締切)

TdX講演会#06「チームとスタートアップづくり」

TdX講演会#06「チームとスタートアップづくり」

第6回目となる今回は「スタートアップを始めるときにチームとして気を付けることは?」について学びます。

日時
12月7日(水)18:30 - 20:00
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

CERI寄附講座「ゴム・プラスチックの安全、安心 -身の回りから先端科学まで-」(2016年 後期)

CERI寄附講座「ゴム・プラスチックの安全、安心 -身の回りから先端科学まで-」(2016年 後期)

私たちの身の回りにある化学品を含むゴムやプラスチックとその製品の安全・安心に関する情報とやさしい科学を、一般の方にもわかりやすく紹介します。将来の安心・安全な材料・製品設計の基礎を学べるようにします。

日時
スケジュール1: 9月28日、10月5日、12日、19日、26日、11月2日、9日、16日
スケジュール2: 11月30日、12月7日、14日、21日、2017年1月11日、18日、25日、2月1日
各日水曜日 10:45 - 12:15
会場
参加費
無料
対象
一般(先着25名)
申込
必要

平成28年度情報活用IR研究会開催

東京工業大学情報活用IR室では、大学IR研究の一環として内外の専門家を招いた講演と議論や意見交換を行う研究会を催しております。

日時
12月12日(月)14:00 - 16:00
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

IT特別教育プログラム 成果展覧会

IT特別教育プログラム 成果展覧会

情報理工学院 情報工学系 情報工学コースでは、ソフトウェアのスペシャリストの育成を目的とした実践的教育プログラム 「IT特別教育プログラム(ITSP)」 を実施しています。ITSPの中心科目「システム開発プロジェクト」では1年間をかけてプロジェクト型(PBL:Project Based Learning)でAndroidアプリケーションを学生主体で開発してきました。

日時
12月15日(木)15:00 - 18:30(15:30 - 17:30 プレゼンテーション)
12月16日(金)12:00 - 17:00(14:00 - 16:00 プレゼンテーション)
会場
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
不要

WPIプログラム10周年記念講演会「日本の科学の未来に向けて」

WPIプログラム10周年記念講演会「日本の科学の未来に向けて」

本講演会に本学地球生命研究所(ELSI)副所長 井田茂教授が研究講演者として登壇します。

日時
12月17日(土)13:30 - 18:30(開場12:45)
会場
文部科学省 東館3階講堂
参加費
無料
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

一部締め切りを過ぎているものがございますが、取材をご希望の場合はご連絡ください。

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

平成28年度「東工大学生リーダーシップ賞」授与式挙行

$
0
0

平成28年度の「東工大学生リーダーシップ賞」授与式が、10月12日に学長室で行われました。

この賞は、本学学士課程の2年次から4年次の学生を対象とし、学生の国際的リーダーシップの育成を目的としています。知力、創造力、人間力、活力など、リーダーシップの素養に溢れる学生を表彰し、さらなる研鑽を奨励するために平成14年度から実施されています。

授与式後の記念撮影
授与式後の記念撮影

授与式では、学長から賞状の授与と副賞の贈呈が行われました。授与式終了後は、学長、理事・副学長および学部長と受賞者との歓談が行われました。

今回表彰された学生は以下の通りです。

平成28年度「東工大学生リーダーシップ賞」受賞者

所属
学年
氏名
主な受賞理由
理学部
化学科
4年
一色 裕次
  • 学生団体ATOMSでの活動
  • 高エネルギー加速器研究機構主催のサマーチャレンジでの活動
  • TiROP短期派遣プログラムでの活動
工学部
金属工学科
4年
永島 涼太
  • サイクリング部(サイクルサッカー)での活動
  • 派遣留学での活動
  • 東日本大震災に関するボランティア活動
工学部
制御システム工学科
4年
佐々木 凌太
  • 海外研修(グローバル理工人育成コース等)での活動
  • 制御システム工学科の講義「創造設計第二」での活動
工学部
情報工学科
4年
鶴田 篤広
  • プログラミングコンテストでの受賞
  • 商用スマートフォンアプリ開発等の活動
工学部
国際開発工学科
4年
氏家 大祐
  • Tokyo Tech AYSEAS派遣プログラムでの活動
  • 柔道部での活動
生命理工学部
生命工学科
4年
徳間 啓
  • JCHM学生活動におけるボードゲーム開発等の活動
  • iGEM Tokyo Tech2015における9年連続金賞受賞

受賞学生
受賞学生

大隅良典栄誉教授がスウェーデン大使館主催の受賞祝賀会に出席

$
0
0

11月23日、大隅良典栄誉教授はスウェーデン大使館でのノーベル賞受賞祝賀会に出席しました。祝賀会は、大隅栄誉教授の2016年ノーベル生理学・医学賞受賞決定の功績をたたえ、マグヌス・ローバック大使夫妻が開催したものです。

ローバック大使とクリスマスツリーの前で
ローバック大使とクリスマスツリーの前で

当日は、日本の歴代のノーベル賞受賞者や三島学長夫妻を含む学術関係者など90名余りが出席し、大隅栄誉教授の受賞決定をお祝いしました。

冒頭、ローバック大使が挨拶し、3年連続で祝賀会を開催できることは非常に喜ばしいこと、日本が科学技術大国であり、基礎研究と応用研究の分野の両方でバランス良く受賞していることなどを述べ、2018年に迎える日本とスウェーデン国交150年に向けてより一層協力関係を強めていきたいと締めくくりました。

続いて、日本学術振興会の安西祐一郎理事長から、大隅栄誉教授のノーベル賞受賞は日本の基礎研究が高く評価されたものであり、若い研究者に大きな勇気を与えたと挨拶がありました。

  • 前川事務次官の乾杯の挨拶に耳を傾ける大隅栄誉教授

    前川事務次官の乾杯の挨拶に耳を傾ける大隅栄誉教授

  • 多数集まった報道陣

    多数集まった報道陣

祝賀会は、文部科学省の前川喜平事務次官の乾杯でスタートし、大隅栄誉教授夫妻は、クリスマスツリーが飾られた大使館内の会場で歴代の受賞者夫妻と歓談し、12月初旬に迫った授賞式に向けてのアドバイスなどを受けていました。また、大使館関係者や招待された学術関係者からお祝いの言葉が夫妻に贈られました。

歴代ノーベル賞受賞者と談笑中(写真左から 小林誠氏(2008年物理学賞)、梶田隆章氏(2015年物理学賞)、大隅栄誉教授、野依良治氏(2001年化学賞)、田中耕一氏(2002年化学賞)
歴代ノーベル賞受賞者と談笑中(写真左から 小林誠氏(2008年物理学賞)、梶田隆章氏(2015年物理学賞)、大隅栄誉教授、野依良治氏(2001年化学賞)、田中耕一氏(2002年化学賞)

祝賀会の中で、記者から、授賞式に向けての準備状況を訊かれると、大隅栄誉教授は忙しく準備に追われていると話し、また現在の心境については、授賞式出席は一生に一度のことなのでできるだけ頑張って努めたい、とコメントしました。

大使夫妻や歴代の受賞者との写真撮影の機会もあり、終始お祝いムードに包まれた会場で和やかな時間を過ごしました。

歴代のノーベル賞受賞者ご夫妻、スウェーデン大使ご夫妻と記念撮影
歴代のノーベル賞受賞者ご夫妻、スウェーデン大使ご夫妻と記念撮影

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

お問い合わせ先

広報センター

Email : nobel@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

Viewing all 4086 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>