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微細化によるシリコンパワートランジスタの高効率化に成功―電力制御システムの飛躍的高効率・低コスト化に新たな道―

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要点

  • パワートランジスタ(Si-IGBT)のスケーリングよる性能向上を実証
  • オン状態の抵抗を従来技術の約50%に低減
  • 現在、市場で主流のSi-IGBTのさらなる高性能化・低価格化へ

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の筒井一生教授らは、シリコンによる電力制御用の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(IGBT)[用語1]をスケーリング(微細化)することで、コレクタ-エミッタ間飽和電圧(Vce(sat)[用語2]を従来の約70%に、オン抵抗を約50%に低減することに成功した。

スケーリングには素子寸法の「3次元的微細化」という新スキームを用いた。性能向上はオン動作時の単位面積あたりの電流密度を高めることで実現した。現在、主流のシリコン(Si)-IGBTのスケーリングによる性能向上が確認でき、市場のさらなる拡大とともに、電力制御システムの高効率・低価格化につながる技術として、省エネルギー社会への貢献が期待される。

この研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「新世代Si-IGBTと応用基本技術の研究開発」(代表:平本俊郎東京大学教授)で行われた。研究成果は12月6日に米サンフランシスコで開かれる国際会議International Electron Devices Meeting(IEDM2016)で、東工大、東大、九州工業大学、明治大学、産業技術総合研究所、東芝、三菱電機の共同研究として発表される。

研究成果

図1および図2に作製したSi-IGBTの断面と垂直方向の構造、各部の寸法変数を示す。図1の上部(表面)に間隔Sで接近形成した縦のトレンチ(溝)ゲートに挟まれたエミッタ領域から電子電流が流入し、それに応じた正孔電流が下部(裏面)全面のコレクタ領域から流入することで、全体に縦方向のオン状態の電流が流れる。一方、トレンチゲートに加えるゲート電圧の制御によってエミッタからの電子電流の流入を止めることにより正孔電流も止まり、全体がオフの電流遮断状態になる。このようなIGBTの構造と電流をオン・オフする動作は通常のデバイスと変わらない。

Si-IGBTの断面構造

図1. Si-IGBTの断面構造

Si-IGBTの断面および奥行き方向の構造

図2. Si-IGBTの断面および奥行き方向の構造。ラッチアップ現象を抑制するため、奥行き方向のp領域とn領域の繰り返し寸法もスケーリングの対象となっている。

現在、製品化されているIGBTと同様の寸法のデバイスと、新規のスケーリングの概念により微細化した新構造デバイスを製作し、特性を比較した。図3と表1に両デバイスの寸法の比較を示す。寸法の微細化の比率をスケーリングファクタ1/kで表し、従来デバイスがk=1、新デバイスがk=3に対応する。

IGBTの3次元方向にわたる各構造寸法の変数

図3. IGBTの3次元方向にわたる各構造寸法の変数。表1の各項目に対応

表1. スケーリングによる各部の寸法およびゲート電圧(Vg)とスケーリングファクタ

Parameters in IGBT, symbol
k=1
k=3
Scaling factor
Cell pitch, W (µm)
16
16
1
Mesa width, S (µm)
3
1
1/k
Trench depth, DT (µm)
6
2
1/k
Trench depth, WT (µm)
1.5
1.0
2/k
p-base depth, DP (µm)
3
1
1/k
n-emitter depth, DN (µm)
0.4
0.13
1/k
Gate oxide thickness, tox (µm)
100
33
1/k
Length of p* region, Lp+ (µm)
4.5
1.5
1/k
Length of n* region, Ln+ (µm)
4.5
1.5
1/k
Gate voltage, Vg (V)
3
1
1/k

断面構造で、トレンチゲート周りの寸法は1/kに比例縮小する一方で、隣接するトレンチゲートまでの距離(W)(図1参照)は一定とした。IGBTの2次元のスケーリングは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)のスケーリングと違って縦横のスケーリングが及ぼす効果が逆に働くこともあり、その効果は複雑だが、すでにシミュレーションでは単位面積あたりのオン電流の密度を増大することが予測されていた。その予測を今回、デバイスを試作して初めて実証した。

さらに試作に当たってスケーリングパラメータを一部見直すとともに、デバイスの奥行き方向に交互に作られる表面のp形領域とn形領域のピッチ(Lp+およびLn+)も1/kに縮小した。これはスケーリングで予測されるラッチアップ耐性[用語3]の劣化に対する対策である。この奥行き方向のスケーリングを含めて3次元スケーリングと呼んでいる。

図4に試作したSi-IGBTのオン状態でのコレクタ-エミッタ間の電流-電圧特性を示す。同じオン電流密度(飽和電流密度:Ice(sat)、図では200 A/cm2)における電圧をエミッタ-コレクタ間飽和電圧(Vce(sat))と呼ぶが、これがk=3のスケーリングで、従来(k=1)に比べ約70%の1.26 Vが得られた。また、同じエミッタ-コレクタ間電圧(Vce)における両デバイスの電流比も同図に示し、スケーリングにより電流が約2倍、すなわちオン抵抗が半減したことがわかる。これらはいずれも、IGBTのオン動作においてデバイス内部でのエネルギー損失に比例するため、スケーリングによりIGBTの低損失・高効率化が実現できたことを示している。

試作した2つのIGBTのオン状態におけるエミッタ-コレクタ間電流-電圧特性
図4.
試作した2つのIGBTのオン状態におけるエミッタ-コレクタ間電流-電圧特性。特定の電流密度(図では200 A/cm2)における電圧がエミッタ-コレクタ間飽和電圧(Vce(sat))と定義される。Vce(sat)がスケーリング(k=1→k=3)により1.70 Vから1.26 Vに低減(約70%)している。また、一定電圧における電流がk=3で倍増しており、オン抵抗が半減したことを示す。
一方、ゲート電圧(Vg)も、スケーリングにより低い電圧(k=3において5 V)で動作している。

また、表1および図4に示すように、寸法とともにIGBTの制御入力の電圧となるゲート電圧(Vg)も従来の15 Vから5 Vに低下させた。これにより、将来、IGBTを駆動するゲートドライブ回路の消費電力が大幅に低減されるとともに、従来のSi-CMOS回路技術との親和性が高まる。このことは、回路、システムレベルでの高性能化と低コスト化につながることが期待される。

なお、このスケーリングはIGBTのゲート周りの微細化であり、トランジスタの耐圧を決めるその下のn-ベース層の厚さは変えないので、n-ベース層の厚さの選択によって従来のIGBTが持つ1000~数1000Vの耐圧はそのまま維持される。

表2に、今回の新構造IGBT(k=3)を現在市場にある製品も含めて比較したベンチマークを示す。VgおよびVce(sat)(常温と150 - 175 ℃で)の低減が達成された。

表2. 今回試作したIGBT(k=3およびk=1)と市場に出ている製品の例で特性を比較したベンチマーク

 
This work
k=3
This work
k=1
IGC99T120
T8RM
FGW25N
120W
Blocking voltage (V)
1200
1200
1200
1200
Vg (V)
5
15
15
15
Vce(sat) Tj=25 ℃
1.26
1.70
1.75
2.0
Vce(sat) Tj=150 - 175 ℃
1.26
1.95
2.05
2.6

背景

省エネルギー化には電力制御システムの高効率化が重要である。そのシステムは大規模では発電、送電、また鉄道や自動車から、小さいものでは家電製品やモバイル機器に組み込まれた電源回路に至るが、そこにはインバータに代表される電力制御装置が必須で、それを構成するパワー半導体トランジスタがその性能と製造コストに大きな影響を与える。

パワートランジスタの市場は価格の面からSi-IGBTが主流で、今後10年以上にわたってこれは揺るがないと予想されている。Si-IGBTは種々の技術革新により高性能化、小型化と低コスト化を進めてきたが、昨今はその進化が飽和する傾向となり、デバイス技術のコモディティ化も予想され、次世代に向けた新たな技術革新が求められている。

これまで日本はパワー半導体トランジスタの分野では世界の中で優位にあった。この分野での日本の産業力を今後も維持するためにも、日本発の新技術開発は大きな意義があり、特にその主流であるSi-IGBTの性能への技術革新は極めてインパクトが大きい。

Si-IGBTの性能面では、低損失化が重要で、そのためにはオン抵抗の低減が必要である。新しい方法としてスケーリングに注目して、これを実現したのが今回の研究成果である。

研究の経緯

Si-IGBTのスケーリングによる高性能化技術は、2012年に九州工業大学の大村一郎教授らにより理論モデルをベースに提案された。これは、IGBTの電流制御を行うトレンチゲート周りの構造を幅方向と深さ方向に2次元的に縮小し、かつ、隣接するトレンチゲート構造同士の距離は広く保つという2次元的なスケーリングを行うものであり、特許提案を行っている。大村教授らは今回の研究を推進しているNEDOプロジェクトでの共同研究グループの一つである。

スケーリング技術はデバイスシミュレーションに基づく提案だったが、実デバイスでの実証はこれまでなかった。実デバイスの作製には、構造設計において2次元の単純スケーリングスキームを試作に適したものに焼き直して、その特性を予想することや、プロセス技術の探索が要求され、さらにラッチアップ耐性の対応策の検討も必要である。

また、トランジスタ単体の技術にとどまらず、これを使う回路技術上の課題もあった。このように基礎から応用まで含めた幅広い研究の必要性から現在の日本の産業界だけでこの研究を推進していくことは困難が伴い、産官学の連携が強く望まれていた。

この課題を解決するため、2014年に産官学のNEDOプロジェクトが始まり、スケーリングによる新構造IGBTの試作研究とそれを活かす回路技術研究を密接に結びつけた体制のもとで研究が推進され、デバイス技術側での重要なマイルストーンとなる今回の研究成果を得た。

今後の展開

Si-IGBTは価格の面から少なくとも今後10年はパワーデバイスの主流を占めると予想されているが、一方で、性能向上の限界に近付いているともいわれてきた。今回の成果によって、スケーリングによる性能の向上が確認されたことは、日本がこれからもSi-IGBTという主流市場で価格競争でなく性能による差別化で勝負できるという意味で重要である。

また今回の実証は1/3のスケーリングであるが、さらにそれ以上の可能性も秘めた技術である。Si-IGBTのエネルギー損失を顕著に低減するこの技術が産業レベルで実用化されれば、電力制御システムの高効率化に直接貢献できる。またドライブ回側での技術開発により低電圧駆動が実用化されれば、システムとしてさらに高効率化、高機能化と低コスト化が実現し、これが世界に広く普及すれば将来の省エネルギー社会の実現への貢献が期待できる。

用語説明

[用語1] 絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor: IGBT) : エミッタ電極とコレクタ電極の間の電流を、絶縁層を介したゲート電極に加える制御電圧信号により制御するトランジスタ。高電圧、大電流を直接オン・オフできる高性能パワートランジスタとして広く用いられている。

[用語2] コレクタ-エミッタ間飽和電圧(Vce(sat) : トランジスタがオン状態になるゲート電圧を入力している状態で、ある一定のエミッタ-コレクタ間電流密度におけるエミッタ-コレクタ間の電圧。この電圧と電流の積がトランジスタ内部でのエネルギー損失になるため、電圧を低減することが高効率化に重要である。

[用語3] ラッチアップ耐性 : 薄い導電層に電流を横方向に流すことによりその層の電位が変動し、本来は絶縁状態にあるp形層とn形層の積層構造中に過剰電流が流れ、デバイス中に制御できない過剰電流がながれてしまう現象がラッチアップ。十分なラッチアップ耐性の確保はパワーデバイスにとって重要である。

参考資料

International Electron Devices Meeting(IEDM2016)で出版されるTechnical Digest(会議録)に掲載される論文:
K. Kakushima, T. Hoshii, K. Tsutsui, A. Nakajima, S. Nishizawa, H. Wakabayashi, I. Muneta, K. Sato, T. Matsudai, W. Saito, T. Saraya, K. Itou, M. Fukui, S. Suzuki, M. Kobayashi, T. Takakura, T. Hiramoto, A. Ogura, Y. Numasawa, I. Omura, H. Ohashi, and H. Iwai;
"Experimental Verification of a 3D Scaling Principle for Low Vce(sat) IGBT";
Technical Digest of IEDM2016, 講演番号:10.6, (2016).

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所
教授 筒井一生

E-mail : ktsutsui@ep.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5462

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


副反応を起こしやすいアミノ酸を迅速かつクリーンに合成―抗HIV抗菌ペプチドの大量生産に道―

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要点

  • 安価な試薬を用いて10 ℃の条件下において、4.8秒でアミド結合を形成
  • 副生物は二酸化炭素とアミンの塩酸塩のみのクリーンなプロセス
  • 副反応を起こしやすいアミノ酸を一残基ずつ連結してペプチド鎖を伸長することに成功

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院の布施新一郎准教授、御舩悠人大学院生、中村浩之教授、物質理工学院の田中浩士准教授は、非常に副反応(ラセミ化[用語1])を起こしやすいアミノ酸を多数含む抗HIV・抗菌ペプチド「フェグリマイシン」を迅速・安価・クリーンに合成できる手法を開発した。置換フェニルグリシンは、臨床で利用されている重要な抗菌剤を構成するアミノ酸だが、全てのアミノ酸の中でも最も副反応を起こしやすいため、その連結は困難であった。今回の目的化合物であるフェグリマイシンは極めて副反応を起こしやすい置換フェニルグリシンを5つも含み、副反応の進行し易さから、一残基ずつペプチド鎖を伸長する一般的な合成手法は適用不可能とされてきた。本研究では、マイクロフロー合成法[用語2]を駆使して、この不可能とされてきたペプチド鎖伸長を実現することに成功。開発した手法により副反応を起こしやすい有用ペプチドの大量・低コスト供給が可能になると考えられる。この成果は、11月28日付け(日本時間)の英国学術誌「Nature Communications」に掲載された。

研究成果

今回、安価・高活性・低毒性の試薬・トリホスゲンを用いて、穏和な温度条件下(10 ℃)で、わずか0.5秒でカルボン酸を迅速に活性化し、副反応を抑制しつつアミンと反応させて高収率で目的のペプチドを得る手法を確立した。本手法を駆使することで、最もラセミ化しやすいアミノ酸を5つも含む抗HIV・抗菌ペプチドのフェグリマイシンの合成に成功した。この化合物は非常にラセミ化しやすいアミノ酸を多数含むことから、最も一般的な、1残基ずつペプチド鎖を伸長する方法(直線的合成法)では合成が不可能とされてきた。しかしながら今回、マイクロフロー法を駆使することで、世界初となる直線的合成法による全合成に成功した。

これまでの問題:ラセミ化しやすいアミノ酸を短時間、低コストでクリーンに連結する手法がない。→本研究:安価・高活性試薬を使い、ラセミ化を抑えつつ、短時間(5秒未満)、クリーンに反応。迅速・安価・クリーンな抗HIV・抗菌ペプチドフェグリマイシンの合成に成功 最もラセミ化しやすいアミノ酸を5つ含む。不可能とされてきた一残基ずつのペプチド鎖伸長に成功。

背景

バンコマイシンやラモプラニンなど臨床で利用されている重要なペプチド系薬剤の中には置換フェニルグリシンを構成要素とするものが多数存在する。近年、ペプチド系薬剤は脚光を浴びており、承認医薬品数も大きな伸びを示しているため、その高効率な合成法の開発が強く求められている。しかしながら、置換フェニルグリシンが非常にラセミ化を起こしやすいことから、迅速かつ低コストな大量合成法の確立が求められていた。

研究の経緯

布施准教授らの研究グループは、これまでのペプチド合成の常識を覆す、マイクロフローリアクター中での「短時間の迅速な活性化」という新しい概念に基づくペプチド合成法を開発してきた(S. Fuse, Y. Mifune, T. Takahashi, Angew. Chem. Int. Ed. 53, 851, (2014))。この経験から開発した手法を、非常にラセミ化しやすいアミノ酸を含むペプチドの合成に生かすことを着想した。反応条件検討の結果、使用する溶媒、反応温度、保護基等を工夫することにより、活性化0.5秒とアミド化[用語3]4.3秒の計4.8秒で、ラセミ化しやすいアミノ酸を連結することに成功した。副生成物は除去が簡単なため、簡便な分液精製と再結晶操作でペプチドを精製できる点が大きな利点となる。

今後の展開

マイクロフロー合成法は、連続・並列運転により容易にスケールアップ可能であることから工業法への展開も十分に期待できる。今後、産業利用を目指して反応の自動化に向けた研究を推進する。

将来的には、副反応を起こしやすいアミノ酸を自在に連結し、医薬品として重要なペプチドを大量・低コストに供給できると期待される。

用語説明

[用語1] ラセミ化 : 多くの天然アミノ酸は4つの異なる置換基をもつ不斉炭素を有するため、右手と左手の関係に似た対掌体が存在する。置換基の配置が変わって、一方の対掌体がもう片方の対掌体に変換される反応をラセミ化と呼ぶ。

[用語2] マイクロフロー合成法 : 微小な流路を反応場とするマイクロフローリアクターを駆使する合成法。旧来のフラスコ等を用いるバッチ合成法と比較して、反応時間(1秒未満も可)、反応温度の厳密な制御が可能である。

[用語3] アミド化 : ペプチドはアミノ酸がアミド結合により連結された構造をもつ。このアミド結合を形成する反応のことをアミド化と呼ぶ。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Total Synthesis of Feglymycin based on a Linear/Convergent Hybrid Approach using Micro-flow Amide Bond Formation
著者 :
Shinichiro Fuse1, Yuto Mifune1, Hiroyuki Nakamura1, and Hiroshi Tanaka2
所属 :
1Laboratory for Chemistry and Life Science, Institute of Innovative Research, Tokyo Institute of Technology, 4259 Nagatsuta-cho, Midori-ku, Yokohama 226-8503, Japan
2Department of Chemical Science and Engineering, School of Material and Chemical Technology, Tokyo Institute of Technology, 2-12-1 Ookayama, Meguro, Tokyo 152-8552, Japan
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所
准教授 布施新一郎

E-mail : sfuse@res.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5245 / Fax : 045-924-5976

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術創成研究院 先導原子力研究所 設立記念行事開催報告

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今年4月に実施された教育・研究改革により、東工大の組織が大きく変わりました。その中で、4つの研究所と2つの研究センター、および10個の研究ユニットから構成される科学技術創成研究院が創立され、旧・原子炉工学研究所を主な母体とする研究所「先導原子力研究所」が新たにスタートを切り、10月14日に設立記念行事の講演会および式典が大岡山キャンパス東工大蔵前会館くらまえホールにて行われました。

集合写真

集合写真

前半の記念講演会では、まず先導原子力研究所の矢野豊彦所長(科学技術創成研究院 教授)が、前身となる原子炉工学研究所(原子炉研)からの歩みを振り返りつつ、先導原子力研究所設立に至った経緯について話しました。そして、原子炉研で取り組んできた教育・研究の軸を保ち、その体制をより発展させる形で先導原子力研究所が設立できたことへの感謝の言葉を述べました。続いて、関本博名誉教授(元・原子炉研教授)が、1990年当時の原子炉研改組の内実や、その後の存在感を高めるための革新炉研究を中心とする21世紀COEプログラム※1「世界の持続的発展を支える革新型原子力」(COE-INES)や革新的原子力研究センター(CRINES)の取り組み、また高速増殖炉用の鉛ビスマス合金冷却材プロセスの開発、超長寿命中小型炉であるCANDLE(キャンドル)炉※2の研究など、当時の経緯を交えた興味深い話がありました。また、近年の日本人によるノーベル賞受賞ラッシュもさることながら、人類の発展に大きく貢献する研究領域のひとつとして「原子力」に誇りを持ち、同分野を先導する研究を推進してほしいと激励しました。

※1
文部科学省の研究拠点形成費等補助金事業
※2
濃縮ウランやプルトニウムを必要としない革新的原子炉

次に、先の震災時に甚大な被害を受けた福島第一原子力発電所の中にあって、唯一、冷温停止に導くことのできた第5・6ユニットの指揮官を務めた、技術研究組合国際廃炉研究開発機構(IRID)専務理事の吉澤厚文氏(大学院理工学研究科修士課程修了、元・東京電力福島第一原子力発電所第5・6ユニット長)が登壇しました。震災時、想像を絶する過酷な状況の中、吉田昌郎福島第一原子力発電所長(当時)とともに、現場の人々が叡智を結集して尽力し、命を賭して原子炉制御に取り組んでいくことで破局的結末の回避がなされたと話し、安全技術の最後の砦は人間の持つレジリエンス(逆境力)と五感で感じる能力であり、これまでのシステム安全向上に加え、そうした対応力の育成が重要であると力強く語りました。

講演会最後は、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のリーダーである藤田玲子氏(大学院総合理工学研究科博士課程修了、元・日本原子力学会長)より、顕在化した高レベル放射性廃棄物問題への革新的対応法への国家的な取り組みであるImPACTプログラム「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」が紹介されました。その中で、同氏は、ガラス固化体や高レベル廃棄物融液からの長寿命核分裂生成物(LLFP)元素抽出技術、LLFPの核反応データの取得および短半減期核種または安定核種に変換する世界初の核反応経路の検討、加速器など核変換に適用する核変換システムの要素技術開発など、各プログラムにおける研究の推進状況について説明し、今こそ他分野からの参入による原子力研究の拡がりが大切であると強調しました。また、原子力は工学から始まったが、実用化から40年が経ち、新たなフェーズ(段階)を迎えた現在こそ、この分野の基礎研究を見直すべきであると述べ、講演を締めくくりました。

後半に行われた記念式典では、まず、矢野所長が当日の出席者への感謝の意を述べた後、今後の先導原子力研究所に対する指導、支援を求めました。続いて、安藤真理事・副学長(研究担当)が、エネルギー、環境といった今後さらに重要性を増す課題に包括的に取り組むためには、今回の研究改革で集結した各研究所を横断する課題の設定が必要であり、先導原子力研究所の今後の活動と発展に大いに期待すると述べました。科学技術創成研究院の益一哉院長からは、これからの研究組織には国際性も加味したダイバーシティ(多様性)が強く求められること、研究内容も含め、それを実現するための組織としての先導原子力研究所が果たすべき役割について言及がありました。また、来賓の方々からも、学生時代や原子炉工学研究所時代の交流を懐かしむ話や、今後の科学技術創成研究院と各学院間との連携のあり方への期待、原子力人材育成の大切さについての提言などがありました。

当日は、講演会には約150名、式典には約70名の学内外からの来場があり、盛会のうちに終わりました。1956年に旧・原子炉研の母体となる研究施設が設立されてからちょうど60年、言わば還暦を迎えたこの年に新たな体制で誕生した今後の先導原子力研究所の活動にご期待下さい。

お問い合わせ先

科学技術創成研究院 先導原子力研究所
小林能直

E-mail : ykobayashi@lane.iir.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3075

AESセンター第9回シンポジウム開催報告―強靭なまちづくりを支えるエネルギーシステムの構築

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三島学長
三島学長

東京工業大学 科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)は、10月27日、大岡山キャンパスの東工大蔵前会館で「強靭なまちづくりを支えるエネルギーシステムの構築」と題した第9回シンポジウムを開催し、約250名の参加がありました。

開会挨拶で三島良直学長は、東工大の教育改革、研究改革、ガバナンス改革に言及し、AESセンターの位置付けとともに、同センターの飛躍にふさわしいテーマで講演を行う今回の講演者の方々に対する期待を述べました。

次に、若松謙維参議院議員(前・復興副大臣)が来賓として挨拶し、議員自身が取り組む福島県の復興について説明しました。同県では、2040年に再生可能エネルギーを100%にするビジョンを掲げており、地産地消モデルを推進し、ネットワークを広げることがレジリエンス(強靭さ・回復力)につながると話しました。

続いて特別講演では、和泉洋人内閣総理大臣補佐官が登壇し、日本の強靭化施策とアクションプラン等を紹介しました。当該施策は、企業活動にも波及しており、今年は国土強靭化貢献団体認証制度をスタートさせていて、このような取り組みを世界に発信していくと話しました。

  • 若松参議院議員

    若松参議院議員

  • 和泉内閣総理大臣補佐官

    和泉内閣総理大臣補佐官

村上理事長
村上理事長

建築環境・省エネルギー機構の村上周三理事長は、「地域エネルギー計画におけるレジリエンスと価値創出の視点」というタイトルで基調講演を行いました。ハード面での都市インフラとソフト面での社会インフラの両面の対策により、レジリエンスが向上すると指摘しました。また、災害時の生産能力の評価事例や、地域エネルギー計画のケーススタディについても紹介がありました。

パネルディスカッションでは「レジリエンスにつながるエネルギーシステムとは」と題し、エネルギーの視点から国家強靭化のあり方を見通しました。まず各パネリストが、自身の関わる事業を紹介しました。

スマートエネルギーネットワークの実装事例
東京ガス株式会社 安岡省 取締役常務執行役員
水素を核としたインフラ構築
JXエネルギー株式会社 五十嵐仁一 取締役常務執行役員
堅牢なエネルギーセンタービルの活用
株式会社NTTファシリティーズ 眞木勝郎 理事 スマートビジネス本部長
自社のスマートコミュニティ事例
株式会社日立製作所 清治岳彦 電力情報制御システム事業部 事業部長
レジリエントなまちづくり事業
株式会社東芝 西田直人 執行役専務
電池事業の取り組み
三菱商事株式会社 柏木豊 地球環境・インフラ事業グループ環境事業本部本部長

シンポジウムの様子

コメンテーターの金谷年展AESセンター特任教授は、コミュニティレベルでのレジリエンス評価の仕組みを構築しつつあることを語りました。また、小鑓隆史AESセンター特任教授は、さまざまな地域のニーズを掘り起こすことが重要であり、産官学民連携で研究プロジェクトを推進するAESセンターのような役割が大学で担われることが重要だと話しました。

コーディネーターの柏木孝夫AESセンター長は、メガインフラの中に分散性をもたせ、平時には上位と下位の連携を、有事には重要な要素が自立分散で働ける「システムオブシステムズ」の重要性を説き、その推進のためには産官民学の連携が必要と結論づけました。

国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)制度

内閣官房国土強靭化室が2016年2月に作成したからガイドラインに基づき、国土強靱化の趣旨に賛同し、事業継続に関する取組を積極的に行っている事業者を「国土強靱化貢献団体」として認証する制度。

お問い合わせ先

科学技術創成研究院
先進エネルギー国際研究(AES)センター

E-mail : aescenter@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3429

原子のようにふるまうナノカプセルを結合―ナノ材料の配列制御へ―

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要点

  • 原子のように振る舞う球状の微小なナノカプセルを結合して、一次元構造体(直線状)と二次元構造体(平面状)を構築
  • ナノカプセル内に金属塩が取り込めることを実証
  • 様々なナノ材料を取り込んで配列するという応用へ期待

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所のアルブレヒト(山下)建助教、山元公寿教授らの研究グループは、同大学 フロンティア材料研究所の東康男助教、真島豊教授と共同で、原子のように方向性と価数を持つナノカプセルであるデンドリマーをつなぎ役の架橋分子を介して一次元と二次元状に並べることに成功しました。

分子でありながら原子のように振る舞う原子模倣特性(atom mimicry feature)を持つ物質[用語1]の研究が近年盛んになっています。樹木の枝が伸びるように規則正しい分岐を持つ球状の高分子でありながらナノサイズ(10億分の1)のカプセルとしての機能も併せ持つデンドリマーも原子模倣物質の一例として注目されています。

本成果ではこのようなデンドリマー[用語2]を原子のように結合(重合)させて並べることを達成しました。また、このカプセルに金属塩を集積できることを見出しました。金属塩はサイズ制御されたナノ粒子へと変換可能であることから様々な機能を持ったナノ粒子を配列することが可能になります。また、このカプセルには金属塩に限らず様々なナノ材料を取り込めることが知られており、カプセルと架橋分子のデザインによって様々な次元性をもってナノ材料を配列できるテンプレートとなることが期待できます。本成果は、基礎科学的にも、新しい原子模倣物質の科学の開拓へつながると考えられます。

本成果は、2016年12月2日に米国科学雑誌「Science Advances」(オンライン)に掲載されました。

研究の背景

特定原子数の金属原子からなる金属クラスターが他の原子のような振る舞いを見せる超原子の研究は1980年代から行われてきました。近年、周期表の元素に対応するようにサイズ変化によって周期的に物性が変化したり、原子が結合を作るときのように結合の方向性や価数を持たせたりするナノ物質も含めて、原子模倣物質という新しいカテゴリーの物質群の概念へと拡張されつつあります。規則正しい分岐を持つ球状の高分子であるデンドリマーもそうした物質の1つと考えられています。しかし、原子軌道に電子が充填されるかのような振る舞いを見せ、結合の方向や価数を持つようなデンドリマーは知られていませんでした。

研究内容と成果

フェニルアゾメチンデンドリマーは金属塩などのルイス酸と錯体を形成して内包することが出来るナノカプセルとして知られています。その内包挙動は内層から外層に段階的に起きるという特徴を持っており、古典的なボーア原子モデル[用語3]の原子軌道に電子が充填する様子を模倣していると捉えることが可能です(図1)。

フェニルアゾメチンデンドリマーの構造とルイス酸の内包挙動及びその原子軌道への電子充填との類似

図1. フェニルアゾメチンデンドリマーの構造とルイス酸の内包挙動及びその原子軌道への電子充填との類似

このように原子模倣物質として捉えることの出来るフェニルアゾメチンデンドリマーを原子のように結合して分子を作ることは可能でしょうか。同グループはあたかも原子が最内層の軌道を使って電子を共有して結合するように原子模倣物質であるデンドリマーを結合することを考えました。そのため、両端に有機ルイス酸を有する架橋分子を合成し、これとデンドリマーを混ぜることで結合を形成できるのではないかと考えました(図2)。

カプセル機能を有する原子模倣デンドリマーと架橋分子から形成される一次元、二次元構造体と金属塩の内包

図2. カプセル機能を有する原子模倣デンドリマーと架橋分子から形成される一次元、二次元構造体と金属塩の内包

本研究ではこのような架橋分子を合成し、実際に一次元及び二次元の構造体が構築可能であることを実証しました。また、塩化スズのようなルイス酸をこの構造体に集積できることを通じて、この構造体がナノカプセルの集合体から出来ていることも実証しました。

今後の展開

ナノカプセルには金属塩以外にも有機金属錯体、有機カチオン、疎水性分子、蛍光色素など様々な分子を取り込むことが可能であり、ナノカプセルと架橋分子の組み合わせによって配列間隔やパターンの制御が可能だと考えられます。ナノ材料を直接並べるのではなく取り込み可能なカプセルを並べることによって様々なナノ材料を配列化させる新手法として開拓していくことが可能だと考えられます。

取り込まれた金属塩はサイズ制御されたナノ粒子へと変換できるため、このナノ粒子を配列化させることが可能になると期待できます。これを例えば「プラズモニック結晶」へと発展させることで生体物質の微量検出や屈折率の制御された物質の創成につながると考えられる他、「ナノ電極アレイ」へと発展させることで高効率な物質変換を可能とする電極触媒や細胞表面の物質分布を可視化するような化学センサーとしてなどナノ物質の配列化によってこれまでにない物性を引き出す端緒となることが期待されます。

用語説明

[用語1] 原子模倣特性(atom mimicry feature)を持つ物質 : 分子や集合体でありながら特定の原子の機能や振る舞いを模倣している物質群。特定原子数の金属原子から構成され他原子のような特性を示す超原子(Super atom)と呼ばれる金属ナノ粒子やフラーレン類、デンドリマーなどが含まれる。安定性や軌道エネルギー、発光や磁性といった模倣の他に結合方向や価数といった振る舞いの模倣を示す物質が当てはまる。
参考文献: Chem. Rev. 2016, 116, 2705-2774, DOI: 10.1021/acs.chemrev.5b00367 outer

[用語2] デンドリマー : 通常の直鎖状高分子と異なり、繰り返し単位ごとに分岐を持った樹状高分子、その形状の特異性や多数の末端を有することなどを利用して基礎から応用まで幅広い研究がなされている。

[用語3] ボーア原子モデル : 原子核の周りに存在する電子が離散的なエネルギーを持った電子軌道を周回しているとする原子モデル

論文情報

掲載誌 :
Science Advances 2 e1601414 (2016)
論文タイトル :
Polymerization of a divalent/tetravalent metal-storing atom-mimicking dendrimer
著者 :
Ken Albrecht1, Yuki Hirabayashi1, Masaya Otake1, Shin Mendori1, Yuta Tobari1, Yasuo Azuma2, Yutaka Majima2, Kimihisa Yamamoto1
DOI :
所属 :
1Laboratory for Chemistry and Life Science, Tokyo Institute of Technology, 4259 Nagatsuta Midori-ku, Yokohama 226-8503, Japan.
2Laboratory for Materials and Structures, Tokyo Institute of Technology, 4259 Nagatsuta Midori-ku, Yokohama 226-8503, Japan.

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所
教授 山元公寿

E-mail : yamamoto@res.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5259 / Fax : 045-924-5259

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東京工業大学 広報センター

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

工系国際交流基金派遣募集説明会および工系留学報告会 開催報告

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11月2日、大岡山キャンパス本館の講義室にて、工系国際交流基金派遣募集説明会および工系留学報告会が開催されました。

工学院物質理工学院環境・社会理工学院の3学院は、合同で国際性を持った工学を専門とする高度技術者を養成するため、所属学生を海外の大学等に派遣しています。海外で様々な国の研究者や学生と研究を行うことで自身の専門性を深め、より広範な先端科学技術・知識を学びながら、異文化に触れることで学生自身の修学意欲のさらなる向上と国際意識の涵養を図ることをねらいとし、学生国際交流プログラムを独自に実施しています。このプログラムは、(1)海外大学との交流協定締結などを通じた学生相互派遣のための環境整備、(2)各種基金等を利用した所属学生の海外派遣支援制度、を運営しています。

前半に行われた工系国際交流基金派遣募集説明会では、工系国際連携室の留学プログラム担当職員が、プログラムの概要ならびに現在募集中である来年度の夏季派遣について説明を行いました。

また、後半に行われた工系留学報告会は、全学または前述の3学院と交流協定のある海外の大学へ、今夏に短期留学した学生が履修対象となっている授業「国際研究研修」の一環として実施されたものです。留学経験者が、自身の留学生活について英語で発表を行いました。

  • 工系3学院国際交流委員会の竹村次朗主査(環境・社会理工学院 准教授)による開会の辞

    工系3学院国際交流委員会の竹村次朗主査
    (環境・社会理工学院 准教授)による開会の辞

  • アーヘン工科大学への留学について報告する物質理工学院 材料系 伊勢八起さん(修士課程1年)

    アーヘン工科大学への留学について報告する
    物質理工学院 材料系 伊勢八起さん(修士課程1年)

オックスフォード大学に留学した物質理工学院 材料系の水谷麻衣さん(修士課程1年)は、「今はネット社会になり、日本にいても海外の情報が入ってきますが、実際に自分が現地へ行き、生活し、人と触れ合うのとでは全く違います。自分の目で見て、感じ、体験することは語学だけではないたくさんのことを吸収できるいいチャンスだと思います」と、後輩へのメッセージで発表を締めくくりました。

オックスフォード大学への留学について報告する物質理工学院 材料系 水谷麻衣さん(修士課程1年)

オックスフォード大学への留学について報告する物質理工学院 材料系 水谷麻衣さん(修士課程1年)

工系国際交流基金派遣のプログラム5種の中でも、3学院が独自に結んだ学生交流協定であるSummer Exchange Research Program(SERP)は、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校など欧米のトップ大学へ、3学院からの経済支援を得て留学でき、さらに年に1回のみの募集および派遣であるため、大変人気があります。

本イベントは、留学プログラムについての理解を深めるとともに、帰国して間もない留学経験者からの新鮮な現地情報や感想に触れることができる貴重な機会となりました。参加者に配布したアンケートには「就職活動の時期と重なり、留学は難しいかと思っていたが、調整次第で可能であることが分かって良かったです」といった感想もあり、留学を検討している学生にとって、大変有意義な時間となりました。

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工系国際連携室

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Tel : 03-5734-3969

大隅良典栄誉教授が生命科学ブレイクスルー賞を受賞

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12月5日、大隅良典栄誉教授は、オートファジーの解明に寄与したとして生命科学ブレイクスルー賞を受賞しました。また、同日(現地時間は12月4日)に米国シリコンバレーにて開催された授賞式に夫妻で出席しました。

生命科学ブレイクスルー賞は、アップル会長のアーサー・レヴィンソン氏やグーグルの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏等を設立者とする生命科学ブレイクスルー賞財団が、2013年に創設した賞です。難病治療や延命に関する顕著な研究を行った研究者に対し贈られるもので、一人あたり300万ドルが賞金として与えられます。2012年には、ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授も同賞を受賞しています。

大隅良典栄誉教授
大隅良典栄誉教授

大隅栄誉教授コメント

生命科学ブレイクスルー賞の存在は知ってはおりましたが、自分には無縁の賞だと思っておりました。本賞の受賞は思いもよらなかったことであり、非常に光栄なことだと思っております。今後も、この分野の研究がさらに発展するように、努力する所存です。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

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第2回大岡山健康講座開催報告

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10月5日、東工大リベラルアーツ研究教育院は、大岡山駅上にある東急病院との共催で、本学メインキャンパスのある大岡山駅の周辺地域や東急線沿線にお住まいの方々を対象にした「第2回大岡山健康講座」を開催しました。 当日は約120名の参加があり、健康に対する関心の高さが伺えました。

東急病院の母体である東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)は、2015年3月に従業員の健康管理を行う優良企業として東京証券取引所より「健康経営銘柄」に選定されました。それに伴い、東急病院のある大岡山駅周辺を「健康ステーション大岡山」と称し、健康の発信拠点として、さまざまな取り組みを実施しています。東工大も、リベラルアーツ研究教育院の林直亨教授の監修のもと、健康啓発ポスターの作成や、工大祭でのウォーキングイベントの開催に取り組んでいます。 今回の本講座も、この取り組みの一環として、2部にわたって開かれました。

第1部 「椅子を使った運動でサルコぺニア(加齢性筋減弱症)を予防しよう!」

リベラルアーツ研究教育院 佐久間邦弘教授

佐久間教授は、研究者の目線から健康について話しました。

まず、日本の高齢化率(65歳以上人口の総人口に占める割合)が、2016年現在は26.7%であることを示しました。

続けて、サルコぺニア(加齢性筋減弱症)について、語源がSarco(肉体)+penia(欠乏、不足、貧弱などの意味)であり、症状としては、加齢に伴って筋肉が萎縮していき、それまで可能であった行為ができなくなるとの説明がありました。また、骨格筋の構造や、体の中に存在する大部分のものがタンパク質でできていると話しました。加齢に伴い骨格筋に起きる現象として個々の筋細胞(筋線維)萎縮があるというくだりでは、筋細胞には速筋線維と遅筋線維があると述べました。速筋線維は、強い力を発揮するが長く続かず、走ったり重いものを持ち上げたりする場合に使うものであり、遅筋線維は、力は弱いが連続して使用可能で普段歩いたり日常生活に使うものです。加齢により、特に速筋線維が顕著に委縮しますが、効果的なトレーニングをすることで萎縮を軽減できることや、今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した本学の大隅良典栄誉教授の研究であるオートファジーにも触れ、加齢筋ではオートファジーが機能不全になっているために筋萎縮が生じると説明しました。

寝たきりになる原因としては脳卒中、痴呆、転倒・骨折が多いことを指摘し、脳卒中予防には歩いたり走ったりする有酸素運動が効果がありますが、転倒・骨折には有酸素運動は効果が無く、その予防法として筋力トレーニングで下半身の筋力の維持、向上を図ることが大事だと語りました。具体的には腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングを、自分のできる範囲で1日10分から15分ほど、道具が要らない運動方法を工夫するよう推奨しました。

その一例として椅子を使った運動を行い、参加者は家でもできるトレーニングを習得し、大変有意義だったようです。

  • 講演中の佐久間教授

    講演中の佐久間教授

  • 椅子を使った運動の様子

    椅子を使った運動の様子

「Never too late(遅すぎることはない)!」と、これまで運動経験が一切なくてもやり始めれば必ず効果があるので、手軽な運動で健康長寿を目指しましょうと力説し、講演を締めくくりました。

第2部 「加齢に伴う膝の痛み~その原因と対策、治療法について~」

東急病院 整形外科 大森俊行医長

大森医長は、医師の視点から健康について話しました。

まず、「歩き始めの時」「階段の昇り降りの時」「立ち上がる時」「正座する時」「膝の内側を押す時」に痛みがあるか、膝に水がたまって腫れるか、O脚(蟹股)だと言われるか、参加者に対して自覚症状の有無を訊きました。

続いて、中高年の膝関節症の中でも特に多い変形性膝関節症について説明しました。変形性膝関節症は膝関節に痛みや腫れ、運動障害を起こす、加齢に伴い進行する軟骨が摩耗する慢性の関節疾患で、中高年に好発(患者数700~1,000万人以上)しています。「50歳以上」「女性」「肥満」「骨粗しょう症」「若い頃に膝のけがの既住」の方は要注意で、男女比が1:4と治療を要するのは圧倒的に女性が多いのが特徴です。

  • 講演中の大森医師

    講演中の大森医師

  • 大森医師の講演の様子

    大森医師の講演の様子

「使える」関節の条件は、「動くこと」「グラグラせず支持性があること」「痛みが無いこと」の3つです。使える膝関節にするためには「太らないようにして、膝周りの筋肉を鍛えてけがを予防すること」「痛みが出たら、早期に治療を開始すること」「手術治療を行う際は年齢や変形の程度によって手術方法を検討すること」を、現在の自身の膝の状態に合わせて対応することが大切だと述べました。

また、日常生活の注意点として「体重を減らし膝への負担を軽くする」「杖を使い関節の負担を軽くする」「正座は避け椅子を使う」「入浴で関節を保温し血行を良くする」「膝を支える太ももの筋力を鍛える」ことを挙げ、東急病院に専門外来があることを紹介して、講演を終えました。

9月に行われた第1回大岡山健康講座に続き、参加者にとって健康について改めて見直すことができ、大変有意義な講座になりました。

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リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
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第26回英国科学実験講座 クリスマス・レクチャー2016日本公演 開催報告

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クリスマス・レクチャー2016日本公演を、7月16日、17日の計4回にわたって、大岡山キャンパス西5号館のレクチャーシアターで開催しました。

「クリスマス・レクチャー」は、英国王立科学研究所(The Royal Institution of Great Britain。以下、Ri)が青少年向けに開催するイベントで、190年以上続く人気の科学実験講座です。このクリスマス・レクチャーを日本で再現するイベントがは1990年から毎年夏に開催されており、東工大では昨年に続いて2回目の開催となりました。

東工大は、2016年度からスタートした教育改革の取り組みの一つとして、新入生を対象として「科学・技術の最前線」や「科学・技術の創造プロセス」などの実演・実験付き授業を開講しています。その授業のお手本にしたのがRiが実施するクリスマス・レクチャーで、それを日本風にアレンジし、2015年にRiが開催したクリスマス・レクチャーと同じく、天体物理学、医学、宇宙航法学、宇宙工学の学位を持つ医師であるケビン・フォン氏が講師を務めました。

今回は「宇宙でいかに生き抜くか(How to survive in space)」と題し、2015年12月に英国人として初の宇宙飛行士となったティム・ピーク氏の国際宇宙ステーション(以下、ISS)での生活を紹介したり、彼との対話を行ったりしながら、Riで行われた3つの公演内容を約1時間半に圧縮し1つのストーリーとしてまとめた内容となりました。

7月12日にRiのスタッフ2名が来日して最終的な打ち合わせを行い、14日にはRiから物品が運び込まれ、Riスタッフを中心として、公演に使われる機器、装置の準備・調整が始まりました。当初は、Riから搬入する機器・装置が多く、いくつかの不具合や準備不足による問題が見つかりましたが、輸送中に壊れた物品の代替部品の修理・製作や消耗部品の買出し、ロケットに見立てたCO2消火器の調整や椅子への固定等々、東工大のアルバイト学生が中心となってクリアしていきました。その素早い対応にはRiや主催した読売新聞社側からも感謝され、東工大生の底力を発揮することができました。

公演初日を翌日に控えた7月15日には講師であるケビン氏を迎え、打ち合わせおよび最終リハーサルを行いました。リハーサル終了後には、ケビン氏、Ri、本学、読売新聞社、英国大使館等からの関係者出席のもと歓迎レセプションが開かれ、参加者全員で親交を深めながら、翌日からの公演に備えました。

公演第1回目は、一般の参加者に加え、東工大関係者にも100席の優先席が設けられました。各回の公演開始前には、司会役の齊藤卓司実行委員長(工学院 准教授)による注意事項やボランティア(講師の呼びかけによりステージで講師の実験に協力する参加者)への要望などの説明が行われました。公演に先立ち、第1回目は三島学長から、第2・3回目は学士課程1年目の学生の教育プログラムを検討するグループの代表者である工学院の大竹尚登教授から、また第4回目は英国大使館 貿易・対英投資部ダイレクターのクリス・へファー氏から挨拶と講師の紹介がありました。

ケビン氏は、会場後方から階段を駆け下りて登場し、エネルギッシュな公演に期待を抱かせます。まずは、この公演のミッションが(1)地球から宇宙へ飛び立つまで、(2)宇宙でいかに生き抜くか、の2つであることを述べ、ISSを目指す、ソユーズロケットの打ち上げ発射台へ移動するロケットの映像を見せるところから公演が始まりました。

まず、参加者ボランティアの協力を得ながらロケットがISSへ到達するためには十分なエネルギーが必要であること、その理論的核心を教えてくれたニュートンが書いた有名な本「プリンキピア」の実物を見せながら、第3法則、すなわち作用・反作用の法則を説明し、その法則を示す事象として、ケビン氏が台車に乗り、消火器からCO2ガスを噴射させて勢いよく進むことを実演しました。

  • ボランティア募集に手をあげる大勢の子供たち

    ボランティア募集に手をあげる大勢の子供たち

  • CO2噴射による移動

    CO2噴射による移動

次に、実際のロケットにおいてCO2ガスに替わるものとしてロケット燃料の話しに移り、燃焼の3要素(可燃物、熱、酸素供給源)について述べ、液体酸素をビスケットにかけて火をつけ、勢いよく燃焼させた実験をビデオ映像で示しました。

さらに、各国のロケット打ち上げ場が赤道近くに存在する理由、および東向きに打ち上げる理由、実際の飛行ではロケットの段階的分離が有効であることなどを、実験を披露しながら説明しました。

そして公演は後半に移り、宇宙で生き抜く際の様々な問題点を述べました。まず、低圧力、無重量状態の環境が人体に及ぼす影響について、いくつかの実験を行いながら示し、宇宙飛行士は特別な宇宙服を着る必要があることなどを説明しました。 次に、ISSのように狭く、不自由な空間で、長期間生き抜いて行くために必要な水、食べ物、酸素などをいかに確保するかに話を移しました。例えば水について、特殊なフィルターにより尿をリサイクルしていることを紹介し、実際に自分の尿を飲んでみせて観客を驚かせました。

以上により、宇宙へ行くこと、宇宙で生き抜くのがどれだけ大きな挑戦であるかを述べ、そのために準備しないといけないことが沢山あることを理解して欲しいとまとめ、公演を終えました。

山崎直子さんのビデオレター
山崎直子さんのビデオレター

各回の公演終了後、日本人宇宙飛行士の山崎直子さんのビデオレターが紹介されました。レターでは、宇宙船では上下の区別がないため、“あなたの上”とか“あなたの下”といった、相手の立場に立ったコミュニケーションが必要であること、宇宙での活動は宇宙船クルーばかりでなく地上での技術者を含め、多くの人々の協力により成り立っていることを述べ、チームワークが大切であることを強調しました。最後にこの公演を通して宇宙の面白さ、厳しさを理解し、将来宇宙で活躍する方が現れることを期待するとのエールを送りました。

すべてが終了すると、大勢の観客がステージのケビン氏を取り囲み、実演装置や展示物を間近で見たり記念撮影をしたり、さらには専門的な質問をするといった思い思いの交流がみられ、毎回順番を待つ長蛇の列ができるほどでした。こうした交流から、講師と観客席が近いというレクチャーシアターならではの効果が感じとれました。

公演終了後、全員で記念撮影

公演終了後、全員で記念撮影

講師のケビン氏は、公演を重ねるたびに、観客の反応を見ながら細かな点について修正・変更を加え、きっちり時間内に終了させるなど、その見事な対応にスタッフ一同がいたく感心させられました。

1時間15分ほどの公演の中で、次から次へと観客を引きつける実験、実演、ビデオ映像が連続し、子供達をはじめとする参加者の積極的な協力と相まって、クリスマス・レクチャーのねらいである、参加型授業の魅力を示すことができました。

お問い合わせ先

ものつくり教育研究支援センター
国際フロンティア理工学教育プログラム担当
特命教授 津田健

E-mail : tsuda.k.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3170

リベラルアーツ教養講座 「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」第4回開催

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本学リベラルアーツ研究教育院の山崎太郎教授による全5回連続講演会「ワーグナー『ニールンベルグの指環』のコスモロジー」の第4回「『ジークフリート』-森と世界のトポロジー」が、11月16日、大岡山キャンパス西5号館で開催されました。4回連続での来聴者も含め、今回も数多くの方を迎えての講座となりました。

「私が演出家ならば」とアイデアを語る山崎教授

「私が演出家ならば」とアイデアを語る山崎教授

今回の講座では、テーマとなる『ジークフリート』を、『ニーベルングの指環』のシリーズの中で難しいと思われがちな作品でありながらも独自の魅力を持つこと、また、英雄が悪者を倒し美女と結ばれるが決して単純な“メルヘン”ではなく、むしろ主人公の内面的成長を追う教養小説の枠組を兼ね備えていることの2つの視点から、山崎教授が作品をひも解いていきました。

まず、教授は、この作品が「森と世界」「闇と光」「眠りと目覚め」の3つの対立軸から構成されていると述べ、森(Wald)は世界(Welt)の一部ではなく、世界と対立する概念として描かれていると解説しました。また、『ニーベルングの指環』は、4つの独立した作品からなり、それぞれ別の演出家の手によって上演された舞台もあることなども紹介しました。教授による幾重にも層をなして展開される作品の説明に、来聴者はワーグナーの世界の奥へ奥へと引き込まれていき、これまでの3講演と同様、ワーグナーに詳しいファンも、初めてその魅力に触れる聴講生も充分に満足できる内容となりました。

この作品の中で、主人公の少年ジークフリートは太陽のイメージとして位置づけられ、一方、彼の育ての親であるミーメは光を嫌う闇の世界に住む一族として設定されています。

太陽と闇の対立に、いらだち、不満を募らせていくジークフリートは、暗く幽閉されたように感じられる森の世界から外に出たいと思い始めます。「自分はどこから来て、どこへ行くのか、自分は一体何者なのか?」と自ら問いかけるジークフリート。やがて、彼は眠りから目覚め、森から世界へ、闇から光へ、地底から天上の高みへと向かいます。

ミーメは、決して善意の存在でなければ、教養小説にしばしば登場する主人公を教え導く年長の賢者でもありません。 森の中で言葉を教えることなくジークフリートを育てたミーメにむけてジークフリートが放った「言葉を使うことだって、悪党のお前に無理強いして、掠め取るようにして、覚えたんだ!」という言葉は、来聴者に強烈な印象を残しました。山崎教授は、言葉を教えないことは一種の虐待であり、それによって、ジークフリートは暴力的にふるまうことでしか自己表現できなくなっていったと説明しました。

そのミーメは、ジークフリートに殺害されることになります。ジークフリートが指環を守る大蛇を殺すことではなく、育ての親であるミーメを殺してしまうこと、さらに、そこから生まれる彼の複雑な感情こそが本作品の大きな山場なのだと山崎教授は強調しました。さらに、嘘を重ね、矛盾に満ちたミーメを表現するには、アクの強い個性的なテノールの声が必要であり、演じる者には究極の演技力が求められると述べ、舞台上のミーメの圧巻な演技を称賛しました。

森を出て世界に出たジークフリートは、炎の岩山の頂の眠れる美女、ブリュンヒルデを接吻によって目覚めさせます。目覚めからハッピーエンドとなる作品の最後に向かって、彼女の錯綜する感情が表現されていき、愛の喜びを歌い上げるふたりの長い二重唱で、今回の講座は締めくくられました。

講座終了後、聴講者のひとりは、「最後の目覚めのシーンは圧巻でした。歓喜の表現は“極上”という言葉がぴったりでした」と話し、また別の聴講者は「この作品が20世紀音楽を思わせる先進性を持っているという点も興味深かったです」とコメントしました。

講座終了後に笑顔で語り合う来聴者と山崎教授

講座終了後に笑顔で語り合う来聴者と山崎教授

次回、第5回テーマは「『神々の黄昏』-末世の諸相〜救済のパラドクス」、いよいよグランドフィナーレを迎えます。全5回を締めくくる最終章の山崎教授の演出にぜひご期待ください。

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リベラルアーツ教養講座事務局

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大隅良典栄誉教授によるノーベル・レクチャーが盛況のうちに終了

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大隅栄誉教授が、12月7日14時30分(スウェーデン時間)から、ストックホルムのカロリンスカ研究所にてノーベル・レクチャー(ノーベル賞受賞者記念講演)を行いました。

大隅良典栄誉教授によるノーベル・レクチャーが盛況のうちに終了

ノーベル・レクチャーは一般にも開放されており、厳しい寒さにもかかわらず、ホールの前には長時間並んで待つ人も多く、開館するとすぐに満席となりました。講演開始前の会場には、大隅栄誉教授のこれまでの共同研究者との記念写真や研究風景などの映像がスクリーンに映されました。また、壇上には、スウェーデンらしくモミの木が多数置かれ、フォトセッションではスウェーデンの民族衣装を着た女性も登場しました。ノーベル財団からの挨拶の後、カロリンスカ研究所のマリア・マスッチ教授による紹介を受けて大隅栄誉教授が壇上に上り、夫人も見守る中、約1時間にわたって講演を行いました。

ノーベル・レクチャーの会場(右手奥)
ノーベル・レクチャーの会場(右手奥)

大隅栄誉教授のノーベル・レクチャーを楽しみに待つ人々
大隅栄誉教授のノーベル・レクチャーを楽しみに待つ人々

登壇する大隅栄誉教授
登壇する大隅栄誉教授

ノーベル・レクチャー開始前の会場の様子
ノーベル・レクチャー開始前の会場の様子

生い立ちについて

ノーベル・レクチャースタート
ノーベル・レクチャースタート

大隅栄誉教授は冒頭、自身の生い立ちを話し、「自然とのふれあいを通してインスピレーションを育てて欲しい」と聴衆に語りかけました。戦後の貧しい時代に福岡で生まれ、母親の重い病気や食べ物に不自由していた子供時代について述懐しました。大自然に恵まれた九州の田舎で育てられ、自然から刺激を与えられてサイエンスに興味が沸いたこと、東京大学に入学後、進路に迷った大隅栄誉教授は当時新しい分野であった分子生物学の分野で研究を始めることを決意したと話しました。

リボソームと液胞の研究でタンパク質の平衡を意識

続いて、自身が最初に取り組んだ研究について紹介しました。東京大学の今堀和友教授の研究室で行ったタンパク質合成に不可欠なリボソームの分析が初めての研究の経験となり、合成の継続性が強く印象に残ったと話しました。博士号取得後、米国ロックフェラー大学で3年間の研究員生活を送っていた大隅栄誉教授が、そこで初めて酵母と出会い、すぐに遺伝学における有用性に気付いたと述べました。1977年に日本に戻り、東京大学の安楽泰宏教授の研究室で、酵母の液胞が持つ機能の解明を課題として研究を始めました。その当時は、液胞は細胞のゴミ捨て場に過ぎないという考え方が一般的であり、研究分野としては注目されていませんでしたが、大隅栄誉教授は競争的な研究を避け、人のやらないことをやりたかったと説明しました。自身の研究により、液胞膜におけるアミノ酸・プロトン・イオンなどの輸送が初めて明らかとなり、液胞が分解のみならず生理的な役割も果たしていることが明らかになったと語りました。

すべての細胞に普遍的に存在する微粒子のこと

ユニークな発想でオートファジーの仕組みを発見

オートファジー研究の背景として、オートファジー(細胞が自らの細胞質成分(合成したタンパク質など)を食べて分解することでアミノ酸を得る機能)という現象は1960年代から知られていましたが、分子メカニズムと生理的な意義については技術的な問題から20年間以上未解決のままでした。大隅栄誉教授は1988年からオートファジーの仕組みの解明に向けて研究に取り組み、液胞の分解活性を止めることによって光学顕微鏡でもオートファジーを観察することができました。そうした独創性を発揮しながら、早速、遺伝学的解析を進めた大隅栄誉教授のグループは、短時間でオートファジーに必須なATGの遺伝子のほとんどを同定することができました。大隅栄誉教授は電子顕微鏡の写真を示しながら、オートファジーの形態学的特徴を説明し、発見した時の興奮について述懐しました。

プロジェクターを指しながら
プロジェクターを指しながら

優秀な研究者を集めてオートファジーの分子機構の解明に取り組む

同定したAtgタンパク質の機能はほとんど未知であったため、大隅栄誉教授はしばらくの間は分子機構の解明に戸惑いましたが、優秀な研究者を集めて酵母における実験を行い、それぞれのタンパク質の働きを明らかにすることができたことや、酵母での実験が上手く進むと同時に、哺乳類や植物細胞においてもオートファジーの機構が保存されていることを示すこともできたと語りました。大隅栄誉教授は酵母によって得られた基礎的な解明が、現在、病気の研究に繋がっていることについて伝え、全世界のオートファジー研究者に感謝の言葉を述べました。

現在取り組んでいるオートファジーの研究紹介と、基礎研究の重要性を強調

最後に、大隅栄誉教授が現在東京工業大学にて行っている酵母におけるオートファジーの生理的な研究について説明し、「何がいつ、どうやって分解されるのか」という自身のオートファジー研究の原点となった問いに戻っていることについて説明しました。酵母で未だに解かれていない謎が多いことに言及しながら、基礎研究の重要性について強調しました。そしてこれまで手厚い研究費のサポートを受けてきたことや、共同研究者と家族にお礼の言葉を述べて、聴衆の拍手喝采を浴びながら講演を締めくくりました。

夫婦揃ってステージ上でノーベル財団関係者と記念撮影
夫婦揃ってステージ上でノーベル財団関係者と記念撮影

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

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Email : nobel@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

東工大関係者が平成28年秋の叙勲を受章

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平成28年秋の叙勲において、長瀧重義名誉教授が、教育研究の功労に対し瑞宝中綬章を受章しました。また、ウィワット・タンタパニチャクン名誉教授(元・チュラロンコーン大学 工学部化学工学科 教授、元・泰日経済技術振興協会 会長)が、日本・タイ間の学術交流及び相互理解の促進に寄与したとして、旭日中綬章を受章しました。

長瀧重義名誉教授

経歴

長瀧重義名誉教授は、1965年7月に本学 理工学部 助教授(後に理工分離により工学部)に着任し、1980年に同教授となりました。土木工学科において、一貫してコンクリートおよび鉄筋コンクリートの教育・研究に従事しました。コンクリートの高性能化、高機能化を目指し、高強度化、早期強度化、高耐久性化、高流動化について顕著な業績を挙げ、学会等から高く評価されています。また、自身の研究に関連して、セメントを始めとするコンクリートの各種構成材料から、レディーミクストコンクリート、プレキャストコンクリートといった製品までの広い範囲でのJIS制定・改定の委員会を統括するとともに、永きにわたって土木技術専門委員会の委員長を務めました。この業績に対して2002年に藍綬褒章を受章しています。

長瀧重義名誉教授のコメント

長瀧重義名誉教授
長瀧重義名誉教授

1965年は本学土木工学科に初めて2年生として学生を受け入れた年です。そのため、建物を始め研究設備など何も無い状態から学科が発足しました。しかし、それは逆の見方をすれば、伝統や先達に拘束されず、自由に研究テーマを選べることに繋がります。おかげで、若さに任せて研究室の人たちとがむしゃらに研究することができました。家庭で食事をするのは日曜のみ、子供たちの教育も家内に任せっきりでした。しかし、このことで研究室の若い人達との連携が強まり、教育・研究の成果が上がると共に、後継者も育ち、現在、北海道から九州まで20名を超える研究室卒業生が大学の研究者として研究を続けており、他大学の教授から羨ましがられています。また、企業においても研究畑を志望した卒業生が多くみられ、学会の開催地ではいつも楽しく研究室の卒業生と酒を酌み交わしながらの議論が今でも続いています。このような研究環境を許していただいた東工大関係者並びに家族にお礼を申し上げたいと思います。

ウィワット・タンタパニチャクン名誉教授

経歴

ウィワット・タンタパニチャクン名誉教授は、2011年4月から2015年3月の定年退職まで、本学 大学院理工学研究科 化学工学専攻にて常勤教授として奉職しました。日本との関わりは、1968年に文部科学省奨学生(千葉大学 日本語研修生)として来日し、京都大学 工学部 化学工学科での学生時代に始まります。その後、1978年に米国にて博士号を取得後、母国タイに帰国し、チュラロンコン大学講師を経て1993年より同大教授職に就きました。1979年以降、本学のみならず京都大学、金沢大学、大阪大学、東京大学、姫路工業大学、産業技術総合研究所等との学術共同研究に尽力し、日泰の相互理解と友好関係を築いてきました。同時に、タイ側においては泰日経済技術振興協会(元・会長)、タイABK-AOTS同窓会(元・会長)、泰日工業大学等、日本側においては、日泰経済協力協会、アジア文化会館、海外技術者研修協会、日本粉体工業技術協会、粉体工学会、旭硝子財団、省エネルギーセンター、ABK学館日本語学校等々、両国の数々の組織において日泰間の学術交流・相互理解の促進に多大な貢献を果たしました。

ウィワット・タンタパニチャクン名誉教授のコメント

ウィワット・タンタパニチャクン名誉教授
ウィワット・タンタパニチャクン名誉教授

この度の極めて名誉ある叙勲につきましては、驚きとともに喜ばしく、大変光栄に存じます。これも偏に、東京工業大学関係各位、日本の御友人の皆様ならびに日本で交流のあった学生諸君、なかでもタイからの留学生諸君のお力添えのお蔭と存じます。心より御礼申し上げます。

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E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

教育革新センターシンポジウム「CITL Institute 2016」開催報告

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本学 教育革新センター(以下、CITL)主催によるシンポジウム「CITL Institute 2016」が、11月1日に大岡山キャンパス東工大レクチャーシアターで開催されました。このシンポジウムは、2015年4月に開設したCITLの1年半の活動を振り返り、海外の大学の動向と共に、今後の教授学習支援の姿を考えることを目的として行われており、今回は2回目となります。学内外合わせて100名近い大学関係者、教職員が参加し、関心の高さを改めて認識する機会となりました。

当日の会場の様子

当日の会場の様子

はじめに、三島良直学長より開会挨拶があり、東工大の教育改革の進捗状況と、その成功に向けたCITLの役割への期待が語られました。

当日の来賓として臨席した文部科学省 高等教育局 国立大学法人支援課の山田泰造国立大学戦略室長から、世界トップレベルの研究活動と、高等教育における教育・学習支援の充実の重要性を見据えたCITLの活動は大変意義深いものである、との激励がありました。

それを受け、松澤昭教育革新センター長から、教育力強化を目的として設置されて1年半が経つが、活動に対する責任の大きさを実感しながら、世界レベルの教育の実現に向けて、センター教職員一同努力をしている旨の挨拶がありました。

  • 三島学長の開会挨拶

    三島学長の開会挨拶

  • 松澤教育革新センター長のCITL活動報告

    松澤教育革新センター長のCITL活動報告

引き続き、CITLの活動について、CITLの教員から以下の順に報告がありました。当日のプログラムは、教育革新センターシンポジウム「CITL Institute 2016」プログラムPDF をご覧ください。

(1)
FD※1 研修の実施状況、授業評価アンケートなど、センターの1年間の活動について
(2)
FD活動の詳細について、FD活動をする上での活動目標、教員に求める能力などの検討結果を踏まえた研修設計に関する実際のFD研修の内容や、これまでの研修への参加状況、事後調査の結果について
(3)
本学の特徴でもある、ティーチングアシスタント(TA)との協働によるコンテンツ制作プロセス、これまで開講したMOOC※2の受講者プロフィールなどについてCITLオンライン教育開発室(OEDO)でTA向けに行った撮影や編集のためのワークショップについての紹介
(4)
学生アシスタント(GSA)による学びのコミュニティの構築に向けた取り組み(リベラルアーツ研究教育院の協力を得て、大学院生に積極的に学びに関わってもらい、学び合い、教え合い、語り合いを通して、お互いを尊重しながら相互に成長していくコミュニティを形成する取り組み)の状況について
(5)
今後の活動(TAディベロップメントへの協力、教育質保証のためのPDCAサイクルの確立、反転授業等の実現に向けたDIY※3の環境整備、教育の質向上に向けたシステマティックな体制の構築)について

活動報告の後、基調講演がありました。

基調講演1では、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)ディレクターのリチャード・フライシュタット氏による講演「Innovations in teaching and learning across career,campus and scale」が行われました。神経科学・脳科学に基づいたユニークな事例から、学習の中でイノベーションが起きる仕組み、UCBにおけるリサーチユニバーシティとしての教授学習支援の実践内容などについて分かりやすく説明がありました。

基調講演2では、熊本大学 大学院教授システム学専攻 専攻長・教授の鈴木克明氏から、「世界的潮流と今後の大学教育をデザインする」と題した講演が行われました。最近の人材育成の分野では、知識の教育から学び方を教えることへとシフトしていること、学習者の特性を理解して学び方を教えていくことの必要性などについてのお話がありました。

その後は、鈴木氏を司会としてラウンドテーブル形式でCITL教員との意見交換が行われました。鈴木氏からの問いかけに従って、登壇者が順に発言していきました。CITLでの活動の悩みや手応えなど本音の意見が飛び出し、終了後には、参加者から「意見交換の時間が足りなかった」という意見をいただきました。来場者からのアンケートも5段階評価で4を上回っており、大変好評でした。

CITLは、世界レベルの教育の実現に向けて、引き続き鋭意努力していきます。

  • リチャード・フライシュタット氏によるレクチャー

    リチャード・フライシュタット氏によるレクチャー

  • 鈴木克明先生によるレクチャー

    鈴木克明先生によるレクチャー

※1 FD
ファカルティ・ディベロップメントの略称で、教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称です。

※2 MOOC (ムーク:Massive Open Online Course(s))
インターネット上において無料提供され、誰もが受講することができる大規模な授業です。通常の授業のように学習期間が設定されており、学習者は科目提供者や同じ科目を登録している学習者とコミュニケーションを取ることができるなど、双方向の学びが提供されています。

※3 DIY
Do It Yourselfの略で自分自身でやること。転じて、専門家に任せず自分自身で身の回りのものを作ったり修繕したりアレンジしたりすること、またはそのような生活概念を指します。

お問い合わせ先

教育革新センター

E-mail : citl@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2993

リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」第5回開催

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リベラルアーツ研究教育院の山崎太郎教授による連続講演会「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」の最終回となる第5回「『神々の黄昏』―末世の諸相~救済のパラドクス」が、11月16日、大岡山キャンパス西5号館で開催されました。

ハーゲンを表現するために使われた『音楽の悪魔 減5度』を弾く山崎教授
ハーゲンを表現するために使われた『音楽の悪魔 減5度』を弾く
山崎教授

当日午前中に降った雪にもかかわらず、4回、5回連続参加という聴講者も多く、その熱意が改めて感じられました。聴講者は、会場に映し出される映像や資料、音楽とともに、回を重ねるごとに盛り上がっていくワーグナーの世界に入っていきました。

今回の題材である「神々の黄昏」は、近未来劇であり現代性のある作品だという山崎教授の紹介から講座は始まりました。

「神々の黄昏」の中で、ジークフリートは、ギービヒの治める王国とブリュンヒルデの岩山の間を行き来しますが、その次元の異なる世界の往来の中で、何が正しいのかわからなくなるような感覚の乱れを感じます。山崎教授はこれについて、科学や資本主義などの文明の発展によって人間性が疎外され、自然が破壊され、絶対的な規範が喪失していく中で、自分たちの「内なる自然」が悲鳴を上げ、精神が変調していく現代の状況を表現していると説明しました。この作品の中の「ねじれ」や「ゆがみ」は、音楽とともに、登場人物だけでなく聴衆の意識をも無意識のうちに攪乱していきます。

また、山崎教授は本作品のメインストーリーは、憎悪の化身ともいえるハーゲンが、愛し合うジークフリートとブリュンヒルデのふたりの運命を変えていく陰謀劇である解説しました。 ハーゲンによって仕組まれたジークフリートの裏切りを知ったブリュンヒルデ。彼女の強い愛は凄まじい怒りに変容します。その様を表現する衝撃的な音楽は、観ている私たちに悪寒と不安をもたらします。

「音大でも聞けない内容のすばらしい講座でした」と、近々ミーメ役を演じる予定のテノール歌手高橋淳さん
「音大でも聞けない内容のすばらしい講座でした」と、
近々ミーメ役を演じる予定のテノール歌手高橋淳さん

さらに、山崎教授は、父親からの憎悪の念を植え付けられて育ったハーゲンの自己愛の欠如が、世の中への憎悪となっていく様子とその精神の闇を、ドストエフスキーの「カラマゾフの兄弟」と比較しながらひもといていきました。ライトモチーフの重なりで作り上げられた黒々とした陰惨な音楽で、ハーゲンの憎悪が世界を汚染していく様子が見事に表現されている場面です。

オペラ・標題音楽などで、特定の人物・理念・状況などを表現するために繰り返し現れる楽節・動機。ワーグナーの楽劇によって確立された。「主導動機」「示導動機」とも呼ばれる。

そして、ジークフリートがハーゲンの陰謀の果てに殺され、未来へ託した希望がついえたかのように思えるこの場面で、ワーグナーは「希望」に大きな意味を与えます。ここで演奏される「葬送行進曲」の輝かしい音楽は、よき未来への絶えざる問いかけの中にこそ救いがあることの表現であり、悲惨な現実の中にワーグナーが投げかけた異議申し立てであると、山崎教授は語ります。

その後、物語はブリュンヒルデの自己犠牲、神々の城の炎上、ライン河の氾濫と展開していき、世界が無に帰してしまうかに見えます。しかし、最後に山崎教授が紹介した舞台映像では、舞台には生まれたばかりの子供を抱いたブリュンヒルデが登場します。新たに芽生える命への希望を残して、本講座は拍手とともに締めくくられました。

山崎教授の精緻に構築された講座は、教授の選び抜かれた言葉となめらかな声で奏でる「音楽」そのもののようでした。この5回の連続講座を通して、来聴者は、多層性や多義性を持つワーグナーの壮大な世界に奥深く入り込み、ワーグナーの作品やオペラが、全く異なる演出や解釈で幾重にも楽しめることを実感しました。

感謝の拍手を送る聴講者

感謝の拍手を送る聴講者

聴講者は、「東工大は理工系の大学と思っていたので、このような講座が開催されているというのは意外でしたが、とにかく面白かったです」「1月に出版予定の“『ニーベルングの指環』教養講座”を必ず読みます」「これからもこのような企画を、ぜひ続けてください」と語り、本講座の満足度の高さがうかがえました。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に新たに発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院

E-mail : ila2016@ila.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3776

舞踏研究部 天野杯争奪学生競技ダンス選手権大会にて団体優勝

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11月13日に埼玉県草加市の獨協大学35周年記念館アリーナで開催された第48回天野杯争奪学生競技ダンス選手権大会(獨協大学舞踏研究部主催)において、本学舞踏研究部が、32校出場した団体の部で総合優勝を果たしました。同部からは出場した22組のうち、スタンダード・クイックステップ 1年生の部に出場した佐藤大樹(第5類 1年)・木村ノイ(杉野服飾大学) 組とラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部に出場した佐藤大樹(第5類 1年)・榮みな美(白百合女子大学)組が見事優勝、その他にも3組が入賞を果たしました。

集合写真(写真提供 杉村渓太)

集合写真(写真提供 杉村渓太)

競技ダンスとは

男女がペアになって踊る 社交ダンスとほぼ同じものですが、社交ダンスが社交を目的としているダンスであるのに対し、競技ダンスは競技会にて技術を競うことを目的としています。

学生の競技ダンスには、大きくスタンダードとラテンアメリカンにわかれており、それぞれ4種目ずつ、全部で8種目のダンスがあります。

スタンダード

男女が組んで踊ります。

  • ワルツ
  • タンゴ
  • スローフォックストロット
  • クイックステップ

ラテンアメリカン

基本的に男女が離れて踊ります。

  • チャチャチャ
  • サンバ
  • ルンバ
  • パソドブレ

今大会の入賞者

今回の天野杯争奪選手権の東工大チームの入賞者をご紹介します。

  • スタンダード 2~3年生の部 5位入賞 渡辺雅紀(理学部 地球惑星科学科 3年)・佐藤洸佳(白百合女子大学)組 (写真提供 百川美彩)

    スタンダード 2~3年生の部(4種目総合戦) 5位入賞
    渡辺雅紀(理学部 地球惑星科学科 3年)
    佐藤洸佳(白百合女子大学)組
    (写真提供 百川美彩)

  • スタンダード・ワルツ 1年生の部 9位入賞 石井智(第1類 1年)・木村ノイ(杉野服飾大学)組(写真提供 百川美彩)

    スタンダード・ワルツ 1年生の部 9位入賞
    石井智(第1類 1年)・木村ノイ(杉野服飾大学)組
    (写真提供 百川美彩)

  • スタンダード・クイックステップ 1年生の部 優勝 佐藤大樹(第5類 1年)・木村ノイ(杉野服飾大学)組 (写真提供 百川美彩)

    スタンダード・クイックステップ 1年生の部 優勝
    佐藤大樹(第5類 1年)・木村ノイ(杉野服飾大学)組
    (写真提供 百川美彩)

  • スタンダード・クイックステップ 1年生の部 8位入賞 石井智(第1類 1年)・榮みな美(白百合女子大学)組(写真提供 百川美彩)

    スタンダード・クイックステップ 1年生の部 8位入賞
    石井智(第1類 1年)・榮みな美(白百合女子大学)組
    (写真提供 百川美彩)

ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部 優勝 佐藤大樹(第5類 1年)・榮みな美(白百合女子大学)組(写真提供 百川美彩)

ラテンアメリカン・ルンバ 1年生の部 優勝
佐藤大樹(第5類 1年)・榮みな美(白百合女子大学)組
(写真提供 百川美彩)

主将 重原悠太郎さん(理学部 地球惑星科学科 3年)からのコメント

関東甲信越規模の大会で数多の強豪校を抑えて団体優勝することが出来たので、発表の瞬間は驚きを隠せませんでした。

入賞した選手の頑張りはもちろんですが、周りで応援してくれる仲間がいた事で選手が普段以上の力を出すことが出来たと感じています。

今年度もまだ大会が続いていくので、今回の結果に浮かれずに練習に励んでいきたいと思います。

東工大 舞踏研究部について

東京工業大学舞踏研究部は、学生競技ダンス連盟に所属している大学公認の部活です。共同加盟校として、白百合女子大学と杉野服飾大学と共に活動しています。部員数は、東工大生:25人 白百合女子大生:12人 杉野服飾大生:9人(2016年11月現在)です。

競技会にむけて日々練習しています。

お問い合わせ先

東京工業大学 舞踏研究部

E-mail : tsubame.buken@gmail.com


大隅良典栄誉教授がノーベル賞授賞式・晩餐会に出席

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12月10日(スウェーデン時間)、大隅栄誉教授らがストックホルムにて、ノーベル賞の受賞式、晩餐会に出席しました。大隅栄誉教授が招待したゲストの1人である本学、生命理工学院の中戸川仁准教授から届いた授賞式と晩餐会の様子をご紹介します。

授賞式の様子

ノーベル賞授賞式・晩餐会に出席して(生命理工学院 中戸川仁准教授)

授賞式・晩餐会に向けて

12月10日(ノーベルの命日)、スウェーデン・ストックホルムにて、ノーベル賞の授賞式および晩餐会が開催されました。これらのイベントへは、本学の三島良直学長、益一哉科学技術創成研究院長と私を含む、大隅先生から招待された14名の公式ゲストが出席を許されました。

授賞式と晩餐会への招待状
授賞式と晩餐会への招待状

授賞式前日レセプションでの写真(大隅栄誉教授の研究仲間と一緒に)
授賞式前日レセプションでの写真(大隅栄誉教授の研究仲間と一緒に)

ドレスコードは燕尾服でした。7日の午前中に前もって、お決まりとなっているストックホルム市内の衣装店ハンス・アルデでレンタルしておいたこの非日常的な衣装を生まれて初めて身につけ(皆でこれが最初で最後だと笑いあいました)、出発前から自然と気分が高揚しました。雪が降り、日が暮れ始めた15時頃、大隅先生と奥様はノーベル財団の専用車で、私たちゲストは大型のバスで、例年、受賞者とゲストが滞在することになっているグランドホテルを出発しました。

仕立て屋の前で(左から水島東京大学教授、吉森大阪大学教授、中戸川本学准教授)
仕立て屋の前で(左から水島東京大学教授、
吉森大阪大学教授、中戸川本学准教授)

仕立て屋での大隅栄誉教授のサイン
仕立て屋での大隅栄誉教授のサイン

店内
店内

ノーベル財団専用車
ノーベル財団専用車

授賞式

授賞式前の壇上の様子
授賞式前の壇上の様子

授賞式の会場はストックホルム コンサートホールです。エントランスで招待状とID(パスポート)を提示して入ります。私たちは3階席に通されました。深い青色の絨毯が敷かれた壇上が眼下に飛び込んできました。

壇上には、過去の受賞者や審査員、王立アカデミーやカロリンス研究所の方々などが座る青い椅子、受賞者が座る赤い椅子、スウェーデン国王、王妃、王子、王女が座るひときわ立派な椅子が並べられていました。壇上の上段にはオーケストラが配置され、さらにその上には巨大なパイプオルガンがあり、その中央にはスウェーデンとノルウェーの国旗(平和賞はノルウェーで授与されるからでしょうか)をイメージさせるデザインの大きな装飾が取り付けられていました。会場は非常に荘厳な雰囲気に包まれ、しばしゆったりとその雰囲気を味わいました。1階席3列目右方に上品な着物姿の奥様とご子息2人の姿も見えました。

壇上のノーベル賞受賞者(最前列右から3番目が大隅栄誉教授)
壇上のノーベル賞受賞者
(最前列右から3番目が大隅栄誉教授)

予定時刻である16時15分を過ぎ、壇上の列席者が揃った頃、アナウンスに合わせて参列者全員が起立し、王室の方々が入場されました。そして、素晴らしいオーケストラの演奏と共に大隅先生を含む今年のノーベル賞受賞者がゆっくりと入場してきました。大隅先生は、燕尾服姿に先日授与された文化勲章を掛けていました。普段とても気さくで身近な存在の大隅先生をこのような煌びやかな場で目にして、大隅先生がノーベル賞を受賞されたという事実が心に染みわたり、大きな感動に包まれました。

スウェーデン国王から大隅栄誉教授へノーベル賞メダルと賞状が手渡される
スウェーデン国王から大隅栄誉教授へ
ノーベル賞メダルと賞状が手渡される

授賞式は、オーケストラが奏でる威厳溢れる音楽の流れの中で進行していきました。ノーベル財団のチェアマンのスピーチの後、物理学賞、化学賞、そして大隅先生が受賞された生理学・医学賞という順に授与が進みました。各賞の授与の前に、ノーベル財団の各賞の担当者が受賞理由を含むスピーチをスウェーデン語で行いました。参列者の手元にはスピーチの内容が英訳された冊子が配られていました。それによれば、会場であるコンサートホールが1926年に落成されてから、日々の修復やメンテナンスによりこれまで美しいまま維持されてきたことが挙げられ、そのことと大隅先生の受賞理由となった細胞内の恒常性維持に関わるオートファジーとを結びつけ、大隅先生の業績が具体的に紹介されていきました。

そしていよいよ、大隅先生の名前が読み上げられ、参列者全員が起立する中、メダルと賞状がカール16世グスタフ国王から大隅先生へと手渡されました。大隅先生はこれまでも数々の大きな賞を受賞され、私もいくつかの賞の授賞式に参列させていただいてきましたが、今回の授賞式は、これが科学者としての栄誉の頂点であり、他とは別格であることが強く感じられました。

ミュージシャン初の文学賞受賞者である米シンガー・ソングライターのボブ・ディラン氏の本人不在の授賞式と、ディラン氏から影響を受け、授賞式に代理参加したパティ・スミス氏による心打つ歌唱(歌が途切れて歌い直したトラブルも会場では温かい拍手で受け入れられていました)、そして経済学賞の授与を最後に、やはりオーケストラが奏でる演奏と共に授賞式は幕を閉じました。

パティ・スミス氏が文学賞を受賞したボブ・ディラン氏の名曲を熱唱(オーケストラ中央)
パティ・スミス氏が文学賞を受賞した
ボブ・ディラン氏の名曲を熱唱(オーケストラ中央)

授賞式後に、壇上の委員が受賞者と握手
授賞式後に、壇上の委員が受賞者と握手

晩餐会

授賞式終了後、息をつく間もなくバスに乗り、晩餐会の会場であるストックホルム シティホールに向かいました。ここでもID(パスポート)を確認されてから中に入ると、赤レンガ造りの巨大な長方形のホールに約1,300名分の席が用意されていました。自分の席をどうやって探せば良いのかと思っていたところ、66ページからなる小さな冊子が配られ、それが名前索引付きの席次表でした。ホールから長い階段が2階に向かって伸び、その先の壁沿いの通路が別室につながっていました。

晩餐会場の様子
晩餐会場の様子

晩餐会席次表
晩餐会席次表

そこから王室の方々や受賞者などの重要人物が入場し、中央の最も長いテーブルに着席されました。私たちゲストはそこから離れた10名座りのテーブルにつきました。晩餐会もオーケストラやコーラスなど常に音楽に彩られて進行しました。メニューは、前菜、メイン、デザートの3皿でした。どの料理も味にも盛り付けにも趣向が存分に凝らされ、美味しく、楽しみながら味わいました。飲み物はシャンパンに始まり、赤ワイン、そして最後にデザートワインが提供されました。また食後には、コニャックやスウェディッシュ・プンシュという爽やかな香りの甘いリキュールを楽しむことができました。これだけの人数の参列者に対して効率よく料理や飲み物を提供したり食器を片付けたりできるように、大勢の給仕係の動きがきっちりと統率されていたのも印象的でした。

晩餐会の様子とメニュー
晩餐会の様子とメニュー

食事が済むと、各賞の受賞者(複数の受賞者がいる場合は代表者1名)からのスピーチがありました。どの受賞者もユーモアを交えながら、それぞれの受賞に至るまでの経緯や関係した人々への感謝の言葉を述べていました。大隅先生は、まずカロリンスカ研究所とノーベル財団への感謝を、そして今年の他の受賞者へのお祝いの言葉を述べられました。また、自身が約40年にわたり酵母という生き物と向き合いながら研究を続けてきたこと、そして、研究成果だけでなく、大隅先生の大好きなお酒を作り出すのも酵母であるということで、酵母からの数々の恩恵に感謝していると話し、会場は和やかな笑いに包まれました。そして大隅先生が始められた非常に基礎的な研究が、多くの研究者により、病気の克服と関連するような研究にまで発展したことに大きな幸福を感じていることを述べ、これまでの多くの共同研究者、そして大隅先生を見守ってきたご家族への感謝を表し、スピーチを締めくくられました。その素晴らしいスピーチに胸が熱くなりました。

晩餐会終了後に場所を移動して行われた舞踏会
晩餐会終了後に場所を移動して行われた舞踏会

王室の方々、受賞者などが階段を上がり、2階の別室へと退場された後、晩餐会はお開きとなり、そのまま2階のゴールデンホールという大きな部屋で舞踏会が始まりました。少しだけ中を覗いてみると、思ったよりもテンポの速い賑やかな曲に合わせて参加者が思い思いにダンスを楽しんでいましたが、私たちはそれよりも、ホールの端のショーケースに収められていたメダルと賞状に見入りました。改めてまた、大隅先生がノーベル賞を受賞されたという実感が湧いた瞬間でした。

授賞式、晩餐会を終えて

以上のように、通常一生かかっても経験できない多くのことを、大隅先生のおかげで経験することができました。私たちはゲストという気楽な立場で思う存分この貴重なイベントを堪能しましたが、やはり大隅先生は大いにお疲れの様子でした。この翌日にはまだ王宮での晩餐会などを控え、その後ようやく帰途につかれる予定とのことでした。帰国後、なかなか以前のとおりとはいかないと思いますが、できるだけ早く、大好きな研究に没頭できる環境に戻って欲しいと願っています。

レクチャー後のレセプションにて(右から大隅栄誉教授、中戸川准教授、中戸川研究員)
レクチャー後のレセプションにて
(右から大隅栄誉教授、中戸川准教授、中戸川研究員)

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

お問い合わせ先

広報センター

Email : nobel@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

本学学生チームがiGEM世界大会で10年連続金賞受賞し、世界記録更新

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本学学生チームが、iGEM世界大会(The International Genetically Engineered Machine Competition)において今年も金賞を受賞し、金賞制度の創設以来の10年連続受賞という世界記録を更新しました。この連続記録を持つチームは全305チーム中、東工大とフライブルグ大学(ドイツ)の2大学のみです。

東工大チーム

東工大チーム

本大会は、合成生物学分野における「生物学版ロボコン」にも例えられる国際大会です。学部生主体のチームがBioBrick(バイオブリック)と呼ばれる規格化された遺伝子パーツを組み合わせることにより、新しい人工生命システムの設計・構築を行い、その成果についてプレゼンテーションを行います。各チームは、ウェブサイトやポスターセッション、本番のプレゼンテーションを通して発表内容を伝えるほか、遺伝子のパーツの提出や安全性に対する取り組み等も準備する必要があり、それら全てが審査の評価対象になります。

今年度は大会は、10月27日~10月31日に米国ボストンで開催され、マサチューセッツ工科大学(米国)、ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク(ドイツ)、清華大学(中国)をはじめとする305チームが世界各国から参加し、10の部門と4つの新部門に分かれて競い合いました。

東工大からは、生命理工学部の学生17名、理学部の学生1名、工学部の学生4名の計22名が参加してチームを構成し、合成生物学の重要性を社会に発信するための題材として、世界的に有名な童話の「白雪姫」のストーリーになぞらえ、白雪姫の瀕死、そして瀕死状態からの復活の様子を大腸菌を用いて表現しました。また、一般の人々にも合成生物について広く知ってもらうことを目的に、iGEMの活動の一環として動画を制作し、メンバーの母校の中学校、高校で出前授業も行いました。

参加メンバー

  • 藤澤和来さん(生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 秋山健太郎さん(生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 近藤宏さん(生命理工学部 生命工学科 生物工学コース 3年)
  • 田端みずきさん(生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)
  • 根津悠哉さん(生命理工学部 生命工学科 生物工学コース 3年)
  • 秋山竣哉さん(理学部 物理学科 3年)
  • 佐々木隆汰さん(工学部 情報工学科 3年)
  • 小川成美さん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 河野真子さん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 孫嘉婉さん(生命理工学部 生命科学科 2年)
  • 竹植希さん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 竹之下眞央子さん(生命理工学部 生命科学科 2年)
  • 玉木彩子さん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 中原健悟さん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 西森みきさん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 長谷川葉月さん(生命理工学部 生命科学科 2年)
  • 傅奈恵さん(生命理工学部 生命工学科 2年)
  • 郭欣さん(工学部 国際開発工学科 2年)
  • ジャクサワンガ・アルカ・アレックス・ミゲル(工学部 機械科学科 2年)
  • 西川晃司さん(工学部 有機材料工学科 2年)
  • 高田善雄さん(第7類 1年)
  • 藤田創さん(第7類 1年)

指導陣

  • 田川陽一 准教授(生命理工学院)
  • 林宣宏 准教授(生命理工学院)
  • 中島信孝 准教授(生命理工学院)
  • 山村雅幸 教授(情報理工学院)
  • 太田啓之 教授(生命理工学院)

学外サポート(順不同)

  • 株式会社医学生物学研究所(MBL)- Integrated DNA Technologies(IDT)
  • プロメガ株式会社-株式会社リバネス
  • MathWorks
  • 埼玉県グローバル人材育成基金

プレゼンテーション指導

学内

  • 生命理工学院:丹治保典 教授、山口雄輝 教授、蒲池利章 准教授、平沢敬 准教授、秦猛志 准教授、
  • 科学技術創成研究院:岩﨑博史 教授
  • バイオ研究基盤支援総合センター:廣田順二 准教授、増田真二 准教授、相澤康則 講師

学外

  • ロバート・F・ウィッティア氏(順天堂大学 医学部 医学教育研究室 特任教授)
  • ジョン・ミッチェル氏(ジャーナリスト、明治学院大学 国際平和研究所 研究員)

代表者のコメント

藤澤和来さん(生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年)

今回のiGEMの活動は諸事情により5月から始まりました。例年では、東工大のiGEMの活動は春休みから行われており、今年は例年よりも遅いスタートになりました。また本格的に実験を開始したのは7月からで、実験期間は約3ヶ月でした。時間が無い中で金賞を取れたのはチームが同じ目標に向かって努力した結果だと思います。しかし目標としていた部門賞を取れなかったことは、悔いが残ります。ぜひ後輩たちには部門賞を獲得してほしいです。

代表者の藤澤和来さん(生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年(左端))

代表者の藤澤和来さん(生命理工学部 生命工学科 生体分子コース 3年・左端)

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

生命理工学院准教授 田川陽一

E-mail : ytagawa@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5791

AERAムックの国公立大学特集に東京工業大学が登場

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10月27日発刊のAERAムック「大人になる君たちへ 国公立大学 by AERA」(株式会社朝日新聞出版発行)に東工大が掲載されました。

国公立大学が持つ魅力や今後求められる使命、各大学が進もうとしている方向性について、16の大学を個性豊かに伝える内容となっています。

本学は、時代の流れとともに変化する社会に対応すべく、未来を見据えた新たな人材育成のためチャレンジを続けている大学として紹介されています。

三島良直学長と、学年や専門分野の異なる3名の学生が、4月から始まった教育改革と学生生活の魅力を座談会形式で語っています。また、大学発ベンチャーの、空気圧駆動型内視鏡ホルダーロボット「EMARO(エマロ)」を開発したリバーフィールド株式会社(只野耕太郎 科学技術創成研究院 准教授 設立)と、人工筋肉の開発の開発を行う株式会社s-muscle(エスマスル、鈴森康一 工学院 教授 設立)も紹介されています。

「日本の東工大から、世界のTokyo Techへ」世界トップテンに入る理工系総合大学を目指す

朝日新聞出版からの承諾を得て掲載しております。承諾書番号(A16-2094)

お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

第12回東工大バイオコン 開催報告

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11月12日、第12回東工大バイオコンがすずかけ台キャンパスのすずかけホールで開催されました。

東工大バイオコンは、第7類の学士課程1年目の学生を対象に開講している授業「バイオものつくり1・2」での成果を発表し、競い合うコンテストです。

授業:バイオものつくり1・2

議論しながら準備を進める
議論しながら準備を進める

「バイオものつくり1・2」は、バイオテクノロジーに関連したトピックスを専門外の人にわかりやすく教えるための実験教材の創作など、社会に役立つものつくりを通して、学生のバイオテクノロジーに関する基礎力と創造性を育成することを目的としている授業です。今年度も約150名の学生が20グループに分かれ、調査・実験・アンケートなどさまざまな方法から得られたデータを元にものつくりを行いました。学生自身がテーマを考え、ものつくりのための実験をし、発表するまでを半年間という短い期間で行ったため、学生は授業時間以外も、時には終電間際までかかって気合十分に取り組んでいました。

東工大バイオコン:プレゼンテーション

東工大バイオコンでは、上記授業で7~8名のグループで制作した作品を発表します。各チームに与えられた11分の持ち時間で、今まで行ってきたものつくりの目的や実験の手法、集まったデータの結果などの発表を行います。事前の中間報告会などで得たアドバイザーの教員やティーチング・アシスタント(TA)からの様々なアドバイスを反映して、各チームの発表はレベルの高いものとなりました。

20チームが発表するため、コンテストは長時間に及びましたが、テーマもさまざまで発表も動画を活用するなど工夫されており、最後まで飽きないプレゼンテーションとなりました。

ティーチング アシスタント(TA):大学などにおいて、担当教員の指示のもと、学生が授業の補助や運用支援を行うこと、あるいはそれを行っている学生のこと
プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子

プレゼンテーションの様子

東工大バイオコン:発表テーマ

今年度の発表テーマは以下のとおりです。

チーム
テーマ
チーム
テーマ
A
植物のありがたみ
K
浸☆透☆圧
B
パンの発酵k
L
酵母を探せ!
C
ダンゴムシ
M
発酵食品を発光させたかった。 制汗剤は作れた。
D
君の血は。
N
3分電池クッキング
E
キャベシ ~食べられる紙~
O
生態系カードゲーム ハヤカワ
F
キチン プイプイ セミセンイ!
P
ゲーム☆センドグ ―DNAからたんぱく質へ―
G
錯覚を体感!
Q
免疫スマートボール
H
Bac-ter the Agar ~たのしいばいちげーむ~
R
も。 ~藻が灯すみらい~
I
免疫 vs. ウイルス
S
コドン de ポン
J
激混みアリ劇場
T
バイオ石鹸

東工大バイオコン:おためしタイム

「東工大生とバイオで遊ぼう!」と題して、小中学生や近隣の方を招いて、発表後に作品の「おためしタイム」を行いました。

チームごとに展示ブースを設け、作品の説明や発表では伝えきれなかったことを説明したり、実演などを行いました。今年度も来場者が多く、学生たちのものつくりの成果に高い評価をいただきました。小中学生にはゲームを通してバイオテクノロジーを身近に感じてもらえました。

おためしタイムを楽しむ参加者
おためしタイムを楽しむ参加者

おためしタイムを楽しむ参加者

展示ブースで作品を紹介
展示ブースで作品を紹介

展示ブースで作品を紹介

東工大バイオコン:審査と結果

20チームによる発表、おためしタイムが終わると審査が始まります。審査員に加え、コンテスト参加者や一般の来場者も審査員として作品を評価しました。学内・学外から選ばれた7名の審査員にはそれぞれ10票、コンテスト参加者には各1票、来場者には各2票の投票権が与えられました。壇上にはAチームからTチームの枠が書かれたホワイトボードが置かれ、会場の全員がマグネットを使って、最も良かったと考えるチームの枠に投票していきます。

  • 優勝し、賞状を受け取るEチーム代表の学生

    優勝し、賞状を受け取るEチーム代表の学生

  • 優勝を受けてコメントを発表する代表の学生とメンバー

    優勝を受けてコメントを発表する代表の学生とメンバー

審査結果は以下のとおりです。

優勝
Eチーム 「キャベシ ~食べられる紙~」
準優勝
Nチーム 「3分電池クッキング」
3位
Tチーム 「バイオ石鹸」
産学連携賞
Sチーム 「コドン de ポン」
審査員奨励賞
Hチーム 「Bac-ter the Agar ~たのしいばいちげーむ~」
Jチーム 「激混みアリ劇場」
ものつくりセンター賞
Lチーム 「酵母を探せ!」
横浜市教育委員会賞
Pチーム 「ゲーム☆センドグ ―DNAからたんぱく質へ―」

受賞を惜しくも逃したチームも工夫を凝らした素晴らしい作品ばかりでした。無作為に選ばれ同じチームになったメンバーと半年間協力し合えたことは、「バイオものつくり1・2」の受講者にとって大変貴重な体験となりました。

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

生命理工学院 バイオ創造設計室

E-mail : biocreat@bio.titech.ac.jp@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3007 FAX : 03-5734-3674

光ファイバーセンサーの超高速化に成功―社会インフラの劣化や損傷の迅速な検出、ロボットの「神経」利用に期待―

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要点

  • 光ファイバー中の変形(伸び)や温度をリアルタイムに検出するシステムを開発した。
  • 片端からの光入射で動作するため、たとえ光ファイバーの内部が破断しても動作が継続する。
  • 従来法の5,000倍以上の動作速度を達成し、たわみ変形の伝搬の追跡も実証した。
  • 防災・危機管理技術としての応用を広げるとともに、ロボットの「神経」としての活用も期待される。

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の水野洋輔助教と中村健太郎教授は、日本学術振興会特別研究員PDの林寧生博士、ファナック株式会社 サーボ研究所の福田英幸氏(元東京工業大学中村研究室所属)、韓国中央大学 物理学科の宋光容教授とともに、光ファイバー中の変形(伸び)と温度を検出できる分布型光ファイバーセンサーの性能向上に取り組み、片端からの光入射とリアルタイム動作の両立に世界で初めて成功しました。

近年、社会インフラの経年劣化や、地震等の自然災害対策が大きな社会問題として浮上していますが、ビル、トンネル、橋梁などの構造物に光ファイバーを「神経」として埋め込むことによって、構造物の変形を正確に監視できます。

これまでの手法は、光ファイバーの両端から光を入射していましたが、センサーの敷設に手間がかかるばかりか、光ファイバーが途中で1か所でも破断すると動作が停止してしまう難点がありました。今回、位相検波[用語1]技術に基づいて、片端からの光入射による分布型光ファイバーセンサーの超高速化に成功し、これらの問題点を克服しました。その結果、従来法の5,000倍以上となる測定速度である100 kHzのサンプリングレート[用語2]を達成し、たわみ変形の伝搬を追跡することでリアルタイム動作を実証しました。

本システムは、防災・危機管理技術としての応用範囲を広げ、生活の安全性向上に寄与するとともに、ロボットの新たな「神経」としての応用も期待できます。

研究成果は、2016年12月16日発行の英国科学誌ネイチャー(Nature)系の光学専門誌「ライト:サイエンス・アンド・アプリケーションズ(Light: Science & Applications)」に掲載されました。

背景

1960年代から70年代にかけての高度経済成長期に、集中的に建設された社会インフラの経年劣化が進んでいます。また、地震等の自然災害による損傷も蓄積して大きな社会問題に浮上してきています。この有力な対策として構造物に光ファイバーを埋め込むことで、構造物内の変形や温度を分布的に測定するシステムが使われつつあります。長距離にわたって測定が可能なうえ、電磁ノイズに強い等の利点があり、注目を集めています(図1)。

特に、光ファイバー中のブリルアン散乱[用語3]の周波数シフト(BFS)を用いた分布型の伸び・温度センサーは、他の手法に比べて高精度・高安定であることが知られています。中でも、ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)[用語4]と呼ばれる手法は、光ファイバーの片端から光を入射するだけでの動作、および、高空間分解能[用語5]、低コストなどの利点を併せ持っています。すでに、1 cm以下の分解能の実現など、多くの成果が得られています。しかし、サンプリングレートは19 Hzが最高であり、結果として分布測定に比較的長時間(数十秒~数分)がかかるという問題がありました。

分布型光ファイバーセンサーの概念

図1. 分布型光ファイバーセンサーの概念

研究の経緯

従来のシステムでは、ブリルアン散乱スペクトル全体を電気スペクトルアナライザーの周波数掃引機能を用いて取得した後、そのピーク値を与える周波数(BFS)を算出していました。その結果、サンプリングレートは19 Hzに制限されていました。そこで、電圧制御発振器を用いて周波数掃引を行うことで、高速なスペクトルの取得を実現しました(図2左)。しかし、そのままではBFSの算出が速度を制限してしまいます。そのため、さらに取得したスペクトルを狭帯域通過フィルター(BPF)により正弦波に近似して、排他的論理和(XOR)の論理ゲートと低域通過フィルター(LPF)を用いて位相検波を行いました(図2右)。これにより、BFSと1対1対応となる量を直接取得することが可能となりました。結果として、100 kHzを超えるサンプリングレートを達成することができました。

超高速化の原理

図2. 超高速化の原理

研究成果

反射光の解析に位相検波を導入することで、片端からの光入射による分布型光ファイバーセンサーの超高速化に成功しました。これにより、光ファイバー中の任意の位置での伸びや温度変化を、1秒間に10万回測定できるようにしました。これは従来法の5,000倍以上の速度です。

まず、1 kHzの局所的な振動の検出に成功しました。次に、光ファイバーをたわませて発生させた変形の伝搬を検出しました(図3)。以上により、リアルタイム動作が確認できました。関連動画も参照ください。

伝搬するたわみ変形のリアルタイム検出

図3. 伝搬するたわみ変形のリアルタイム検出

今後の展開

本手法は、伸び縮み(振動)や温度変化の分布情報を片端からの光入射で、リアルタイムかつ高空間分解能で取得できるため、様々な構造物(ビル・橋梁・トンネル・ダム・堤防・パイプライン・風車の羽根・航空機の翼など)に関わる防災・危機管理技術として幅広く活用することができます。また、アームに巻き付けることで、任意の位置で接触や変形、温度変化を検出するロボットの新しい「神経」としての応用も期待できます。

用語説明

[用語1] 位相検波 : 2つの正弦波が時間的にどれくらいずれているかを検出すること。

[用語2] サンプリングレート : 光ファイバー中のある1点の伸びや温度を、1秒間あたりに測定できる回数。例えば、サンプリングレートが100 kHzであるとは、ある位置での伸びや温度を1秒間に10万回測定できることを意味する。

[用語3] ブリルアン散乱 : 光ファイバー中に存在する微弱な超音波により入射光が散乱され、周波数のダウンシフトを伴って反射される現象。周波数シフト量(BFS)が伸びや温度に依存するため、センシングの原理として利用されている。

[用語4] ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR) : 入射光に巧みな周波数変調を施すことで、光ファイバーのある特定の箇所で生じたブリルアン散乱信号のみを選択的に抽出し、分布測定を実現する手法。光ファイバーの片端からの光入射で動作するのが最大の特長である。

[用語5] 空間分解能 : 検出可能な伸びや温度変化区間の最短の長さ。

研究サポート

本研究は、科学研究費補助金(25709032、26630180、25007652)の支援を受けました。

論文情報

掲載誌 :
Light: Science & Applications
論文タイトル :
Ultrahigh-speed distributed Brillouin reflectometry
(超高速分布型ブリルアン反射計)
著者 :
Yosuke Mizuno, Neisei Hayashi, Hideyuki Fukuda, Kwang Yong Song, and Kentaro Nakamura
DOI :
10.1038/lsa.2016.184

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所
助教 水野洋輔

E-mail : ymizuno@sonic.pi.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5052 / Fax : 045-924-5091

日本学術振興会特別研究員 林寧生
(東京大学 先端科学技術研究センター 情報デバイス分野)

E-mail : hayashi@cntp.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5452-5155 / Fax : 03-5452-5151

取材申し込み先

東京工業大学 広報センター

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

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