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植物のエピジェネティクス変化をリアルタイムに捉えることに成功 ―マウスの抗体の一部が生きた植物細胞内でも抗原を認識した―

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概要

東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 松永幸大教授、坂本卓也助教、栗田和貴大学院生、理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム 関原明チームリーダー、ケミカルゲノミクス研究グループ 吉田稔グループディレクター、東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター 木村宏教授らの研究グループは、マウスの抗体の一部を植物細胞において発現させることで、植物のエピジェネティクス変化[用語1]を生きたまま解析する方法の開発に成功しました。

植物のエピジェネティクス変化を解析するためには、生化学的手法や免疫染色法がありました。いずれの方法も、エピジェネティクス変化の代表的な指標であるヒストン修飾[用語2]を認識する抗体を使用しますが、生きた植物で解析することはできませんでした。

今回、本研究グループは、マウスで作成された抗体の一部に蛍光タンパク質を結合させた細胞内抗体(ミントボディ)[用語3]を、タバコ培養細胞で発現させました。このミントボディに用いた抗体はヒストン修飾の1つであるアセチル化リジン残基を認識します。このミントボディの動態をライブセルイメージング[用語4]、阻害剤実験、生化学実験を用いて解析しました。その結果、このミントボディは生きた植物細胞内でヒストンのアセチル化リジン残基を正常に認識していることが明らかになりました。これは、マウス由来のミントボディが植物細胞内で正常に働いたことを初めて示した報告になります。抗体を持たない植物細胞内において正常に抗体[用語5]の一部が作られ、ヒストン修飾を認識したことは、新たな植物細胞研究のツールを開発したといえます。

本成果により、時間軸を考えながら植物のエピジェネティクス変化を解析することが可能になり、エピジェネティクスにより制御される植物の環境応答や環境記憶メカニズム解明が進展することが期待されます。また動物の抗体の一部を植物細胞で発現させて、生化学や細胞生物学的な研究を行うことが可能になり、植物科学や農学研究に大きく貢献することが期待されます。

本研究成果は2017年4月18日号のネイチャー出版の科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました。

背景

ヒストン修飾は遺伝子の発現制御に関与する重要なエピジェネティクス指標です。ヒストン修飾の中でも、ヒストンのアセチル化は遺伝子の転写活性化と相関することが知られています。そのヒストン修飾は、環境ストレス応答・記憶や発生・分化過程に重要な役割を果たすことが知られています。そのようなヒストン修飾変化の解析は、生化学的手法や免疫染色法によって行われてきました。しかし、生化学的手法では細胞集団や組織全体を実験材料とするため、単一細胞レベルでのヒストン修飾変化を解析することはできません。また、免疫染色法では、細胞固定を必要とするため、同一細胞での時系列を追ったヒストン修飾解析を行うことができませんでした。近年、ヒストン修飾を認識する抗体の一部であるミントボディを動物細胞で発現させて、生きた動物細胞において、ヒストン修飾をモニタリングすることが可能になりました。しかし、植物には抗体の遺伝子がないことから、植物細胞内でミントボディを発現させてもヒストン修飾を正常に認識できるかどうか不明でした。

内容

本研究グループは、植物細胞内で恒常的に遺伝子発現を誘導するカリフラワーモザイクウイルスのプロモーターに、ヒストンのアセチル化リジン残基を認識するミントボディ遺伝子を組み込み、タバコBY-2培養細胞に発現させました(図1)。このミントボディが植物細胞核内のヒストンのアセチル化リジン残基を認識していることを以下の実験で確認しました。まず、新規に開発したヒストン脱アセチル化酵素阻害剤・Ky-14を用いて、ヒストンのアセチル化リジン残基量を上昇させ、その条件下ではミントボディとアセチル化リジン残基の顕著な相互作用が検出されることを証明しました。次に、細胞分裂をライブセルイメージングにより経時的に解析を行い、ミントボディの核と細胞質における蛍光強度比の変化が、固定細胞を用いた免疫染色のパターンと一致することを見出しました。また、ミントボディを発現した植物細胞では細胞周期に変化がないことから、植物細胞内でも毒性がなく、細胞増殖や細胞分裂に影響を与えないことがわかりました。以上の解析結果から、生きた植物細胞においてミントボディが正常に構造を保持して、抗原であるヒストンのアセチル化リジン残基を認識することを証明しました。

ミントボディの構造と検出原理

図1. ミントボディの構造と検出原理

a:ミントボディの遺伝子構造 マウスのモノクローナル抗体由来のVHとVL遺伝子に蛍光タンパク質GFP遺伝子を連結して、植物ウィルスのプロモーターの下に挿入した。
b:ミントボディによるヒストンアセチル化のモニタリング 今回用いたミントボディはヒストンのアセチル化アミノ酸残基に結合する。低アセチル化状態では核の中に検出されるミントボディの蛍光は少ないが、高アセチル化状態ではミントボディがヒストンのアセチル化リジンを認識して結合するので、核内のミントボディの蛍光が増える。

タバコ細胞は、低温ストレスや塩ストレス[用語6]時に、ヒストンのアセチル化が上昇することが知られています。そこで、ミントボディ発現・タバコ細胞を用いて、低温や塩ストレス後のアセチル化状態をモニタリングしました。その結果、ストレスを与えてからの時間経過に伴って、ミントボディの蛍光輝度は核内で高くなり、対照的に細胞質では減少しました。ミントボディを用いて単一の植物細胞レベルで低温や塩ストレスによるエピジェネティクス変化を世界で初めて捉えることに成功しました(図2)。

ミントボディのイメージング像

図2. ミントボディのイメージング像

ミントボディを発現させたタバコ細胞の蛍光イメージング像 2個の細胞が連なっている様子を示している。中央が抜けている丸い領域(細胞核)にヒストンが存在する。低温ストレスを与えてから0(左)、1(中央)、2(右)時間後の像を示す。暖色系の色ほど、蛍光の強度が強いことを示している。ストレス経過に伴って、核内の黄色の部分が赤色に変化していることがわかる。核内のミントボディの蛍光が増えてきていることから、低温ストレスに応答してヒストンのアセチル化が増えていることがわかる。

本研究の社会的貢献

今回の研究を通じて、植物細胞におけるヒストン修飾イメージング技術を確立しました。植物の環境応答や環境記憶メカニズムを担うエピジェネティクス制御を、ヒストン修飾動態からリアルタイムで解析できるようになります。この技術を用いることで、植物細胞は外部環境の温度変化・湿度変化や物理的障害を、どのくらいの時間で応答し、どのくらいの期間、記憶しているか明らかになると期待されます。

さらに、動物の抗体の一部であるミントボディは、植物細胞内で産生された後正常な立体構造をとって、抗原を認識する事実が明らかになりました。抗体を持たない植物細胞にとって、明らかに異物であるミントボディを発現させても、速やかなオートファジーによるタンパク質分解が起こりませんでした。このことは、植物細胞が少なくとも抗体の一部には、寛容的なメカニズムを保持していることを示しています。今後はこの植物の抗体寛容の性質を利用して、特異的な抗原を精製する生化学技術や特異的な抗原の細胞内局在を明らかにする細胞生物学技術の開発が進み、植物科学や農学研究が加速することが期待されます。

本研究は、東京理科大学において、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出」(研究総括:磯貝彰 奈良先端科学技術大学院大学 名誉教授)(研究課題名「エピゲノム制御ネットワークの理解に基づく環境ストレス適応力強化および有用バイオマス産生」、研究代表者:関原明(理化学研究所 環境資源科学研究センター チームリーダー)および文部科学省・新学術領域・科学研究費「植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム」の助成を受けて実施した研究成果です。

用語説明

[用語1] エピジェネティクス変化 : DNA配列の変化が起こらないにも関わらず、遺伝子発現や表現型が変化する現象。例えば、1卵性双生児(全く同じDNAを持ったヒト)でも育った環境によって性格や体質が異なるのは、エピジェネティクス変化が起こっているためと説明される。

[用語2] ヒストン修飾 : DNAに結合する塩基性タンパク質であるヒストンのアミノ酸残基に起こる化学修飾。ヒストン修飾はエピジェネティクスの指標の一つである。

[用語3] 細胞内抗体(ミントボディ) : ミントボディは、マウスハイブリドーマ細胞由来の抗ヒストン修飾抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)をコードするcDNAを一本鎖可変断片(single-chain variable fragment、scFV)としてクローニングし、蛍光タンパク質遺伝子配列と結合させた抗体様・人工タンパク質(図1a)。特異的に認識するヒストン修飾のレベルが高いときに、ミントボディは細胞質(発現部位)よりも核(ヒストンの認識部位)に集積するため、ミントボディの核と細胞質における蛍光強度比を解析することで、単一細胞レベルでヒストン修飾をモニタリングすることが可能(図1b)。

[用語4] ライブセルイメージング : 細胞を生きたまま顕微鏡下で観察する技術。

[用語5] 抗体 : 特定の物質(抗原)を認識して結合する働きをもつタンパク質。植物には抗体の遺伝子がない。

[用語6] 塩ストレス : 植物は吸水する水分中に塩が一定以上含まれていると、ストレスが生じて成長に影響が出る。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Live imaging of H3K9 acetylation in plant cells
著者 :
Kazuki Kurita, Takuya Sakamoto, Noriyoshi Yagi, Yuki Sakamoto, Akihiro Ito, Norikazu Nishino, Kaori Sako, Minoru Yoshida, Hiroshi Kimura, Motoaki Seki, and Sachihiro Matsunaga*
*松永幸大が責任著者)
DOI :

お問い合わせ先

(本研究内容に関するお問い合わせ先)

東京理科大学 理工学部 応用生物科学科
教授 松永幸大

E-mail : sachi@rs.tus.ac.jp
Tel : 04-7124-1501(内線3442)
携帯電話 : 090-9156-4419

(JST事業に関するお問い合わせ先)

科学技術振興機構 戦略研究推進部 川口哲

E-mail : crest@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3524

取材申し込み先

東京理科大学 研究戦略・産学連携センター(URAセンター)

E-mail : ura@admin.tus.ac.jp
Tel : 03-5228-7440

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432


サイエンスカフェ 「腸内細菌ってなんだ?」開催報告

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3月30日、東京工業大学博物館は、生命理工学院 山田拓司研究室との共催で、サイエンスカフェ「腸内細菌ってなんだ?」を開催しました。

学生による腸内細菌の仕組みの説明

学生による腸内細菌の仕組みの説明

サイエンスカフェとは、科学技術の分野で従来から行われている講演会やシンポジウムとは異なり、科学の専門家と一般の人々が、比較的小規模な場所で科学について気軽に語り合う場をつくろうという試みです。一般市民と研究者を繁ぎ、科学の社会的な理解を深める新しいコミュニケーションの手法として、世界で注目されている活動です。

ヒトの腸内には、1,000種100兆個体の細菌が共生していると言われています。近年、腸内細菌の解析技術が飛躍的に向上し、これらの細菌を網羅的に調査する事が可能になり、様々な発見が相次いでいます。 そうした目に見えない細菌達の活動や仕組みを子どもたちに分かりやすく学んでもらおうと、サイエンスカフェは生命理工学院の学生たちが開発した腸内細菌ボードゲームを使っておこなわれました。

バクテロイゴを楽しむ参加者と学生

バクテロイゴを楽しむ参加者と学生

大岡山キャンパス百年記念館の1階ラーニングスペースにて、小学生から一般の方々まで約40名が参加しました。最初に学生が腸内細菌の仕組みについて説明をした後、実際にゲームが行われました。JCHM学生会員によるサイエンスカフェも今年で3年目となりました。子どもたちは学生のアドバイスをもとに遊び方をマスターし、すぐに参加者同士打ち解け、楽しいひと時を過ごしていました。今回はリピーターや前回参加した児童に話を聞いて来たという方もいて、少しずつですがサイエンスカフェ「腸内細菌ってなんだ?」の活動の広がりを感じることができました。

「楽しかった」「おなかの中にたくさん菌がいる事が分かった」「低学年向けにも開催して欲しい」等、参加者やその保護者から貴重なご意見をいただきました。

「腸内細菌ってなんだ?」は今後も定期的に開催し、地域の方々に身近にサイエンスを楽しんでいただく機会を提供し続けたいと思います。

学生と山田拓司准教授

学生と山田拓司准教授

JCHM
Japanese Consortium for Human Microbiome(腸内環境の全容解明と産業応用のコンソーシアム)

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

生命理工学院 山田研究室

Email : info@jchm.jp
Tel : 03-5734-3629

東工大関係者9名が平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰で「若手科学者賞」を受賞

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このたび、東工大関係者9名が、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「若手科学者賞」を受賞しました。

「若手科学者賞」は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象としています。

科学技術分野の文部科学大臣表彰には、「若手科学者賞」の他に、特に優れた成果をあげた者を対象とする「科学技術特別賞」、顕著な功績をあげた者を対象とした「科学技術賞」等があり、「科学技術賞」でも本学から3名の教員が受賞しました。

「若手科学者賞」を受賞した東工大関係者は以下のとおりです。

相川清隆 理学院 物理学系 准教授

受賞業績:内部構造の複雑な粒子のレーザー冷却に関する研究

相川清隆 理学院 物理学系 准教授
相川清隆 理学院 物理学系 准教授

レーザーによって原子の運動を極限的に抑える技術をレーザー冷却と呼びます。これまで、レーザー冷却はアルカリ原子のような単純な内部構造を持つ原子に対してしばしば適用され、原子気体の量子的な振る舞いを明らかにする研究が行われてきました。

本研究では、この流れの延長として、より複雑な内部構造を持つ原子・分子のレーザー冷却の技術を確立し、単純な原子には見られない特有の振る舞いを明らかにしました。本研究により、複雑な粒子ならではの新しい方向性の研究が可能となりました。今後は、このような流れをさらに発展させ、原子・分子よりもはるかに複雑な内部構造を持つナノ粒子の冷却に取り組んでいきたいと考えています。

今回、このような名誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。受賞は、ひとえに共同研究者の方々、および学内外の関係者の方々のご指導・ご支援・ご協力に基づくものであり、これらの方々にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

今岡享稔 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 准教授

受賞業績:デンドリマー内包金属粒子の原子精度合成とその機能の研究

今岡享稔 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 准教授
今岡享稔 科学技術創成研究院
化学生命科学研究所 准教授

金属を極限まで微小化した、ナノ粒子よりもさらに小さいクラスターと呼ばれる物質は、長らく触媒等の機能材料として注目されてきましたが、所望のサイズのものを自在かつ選択的に得る方法は超真空チャンバー中で行われるピコモルスケールの手法であり、応用展開の目処は全く立っていませんでした。我々は、これを化学的に合成することに初めて成功し、クラスター科学の新しい領域を切り拓きつつあります。今後、本研究をさらに発展させ、新しい物質、新概念を通して世の中の役に立つような研究に励んでいきたいと思います。

今回、このような栄誉ある賞をいただくにあたり、長年にわたりご指導賜った本学の山元公寿教授をはじめ、研究室の皆様、共同研究やプロジェクト等でお世話になった学内外の関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

北野政明 元素戦略研究センター 准教授

受賞業績:無機電子化物を利用した固体触媒に関する研究

北野政明 元素戦略研究センター 准教授
北野政明
元素戦略研究センター 准教授

今回受賞対象となった研究は、無機電子化物(エレクトライド)を触媒として利用すると、温和な条件下で様々な化学反応を速やかに進行させることを見いだしたというものです。その中でも特に、アンモニア合成において、無機電子化物触媒が既存の触媒よりも低温条件下で優れた性能を示すことを見いだしました。工業的アンモニア合成では、強固な三重結合を有する窒素分子の活性化は困難であるため、高温・高圧の反応条件が必須でしたが、本触媒を用いれば、飛躍的な省エネ化に繋がる可能性を秘めています。

本触媒では、無機電子化物内に含まれる電子やヒドリドイオン(H-イオン)の役割によって優れた触媒活性が発現しており、従来の触媒とは全く異なる反応メカニズムであることを明らかにし、温和な条件下でのアンモニア合成を実現する道を開拓することに成功しました。今後は、実用化も視野に入れたアンモニア合成触媒の開発を進めていきたいと考えています。

今回の受賞にあたり、細野秀雄教授、原亨和教授、ともに研究に携わっていただいた多くの学生、博士研究員、技術員の皆様、そしてこれまで支えてくれた家族に感謝いたします。本研究が、社会に貢献できるものにつながるよう今後も努力していきたいと思います。

電子化物触媒を用いたアンモニア合成反応
電子化物触媒を用いたアンモニア合成反応

瀧ノ上正浩 情報理工学院 情報工学系 准教授

受賞業績:人工細胞構築の生物物理に関するナノマイクロシステムの研究

瀧ノ上正浩 情報理工学院 情報工学系 准教授
瀧ノ上正浩 情報理工学院
情報工学系 准教授

生命システムは、各スケールの階層が強く相関した動的な自己組織化現象です。つまり、ナノスケールの分子の化学反応や自己組織化が、物質やエネルギーの流れのある非平衡開放系のマイクロスケールの空間(細胞や組織)によって制御され、またその空間自体も分子の化学反応や自己組織化によって構築・制御される、という複雑に入り組んだ構造を持っています。このような複雑な現象の原理を解明するとともに、それにインスパイアされた有用な人工システムを構築することは、科学技術の大きな目標となっています。このような観点から、私は「人工細胞」の実現と制御を目指して研究を行ってきました。特に、マイクロ液滴を用いた人工細胞リアクタでの非平衡化学反応の制御や、情報分子DNAによる分子コンピュータの構築などを行い、動的な人工細胞の構築のための生物物理学的な基礎を進めてきました。将来的には、「生命とは何か?」といった問いに迫る基礎科学や、細胞を模倣した分子ロボットの開発などの応用科学につながると期待しています。

このたびの栄誉ある賞の受賞は、ご指導下さった先生方、および研究室メンバーをはじめとする共同研究者のご支援のおかげです。関係者の皆様に深く感謝いたします。今回の受賞を励みに、さらに尖った研究分野を切り拓きたいと考えています。

人工細胞リアクタのコンピュータ制御
人工細胞リアクタのコンピュータ制御

西迫貴志 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授

受賞業績:マイクロ流路を用いた液滴および粒子生成に関する研究

西迫貴志 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授
西迫貴志 科学技術創成研究院
未来産業技術研究所 准教授

私は、T字型や十字型のマイクロ流路を用いた、サイズの極めて均一な液滴(エマルション)の生成法を開発し、本手法を応用したヤヌス型、多重型等の複雑な内部構造を有する液滴の精密調製法や、そうした液滴を鋳型としたさまざまな固体微粒子の製造法を開発してまいりました。

こうした研究成果は新しい研究分野開拓の基礎となった一方、産業界においては次世代DNA分析、単一細胞解析、微粒子生産等、国内外の企業を介した成果の実用化が進んでいます。

今回、このような栄誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に存じます。一連の研究成果は学生時代からこれまで指導、協力して下さった方々あってのことです。この場を借りて厚く御礼申し上げます。これからもより一層、研究活動を通じた新しい価値の創造と成果の社会実装に向けた取組を精力的に推進していきたいと考えております。今後ともご指導と鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

松田和浩 名城大学 理工学部 建築学科 准教授
元・東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 助教

受賞業績:木質制振建物の動的挙動解明と合理的設計法整備に関する研究

キャプション
松田和浩 名城大学 理工学部
建築学科 准教授

新旧戸建住宅の耐震性を比較的容易に向上させる手段として、建物内にダンパーを設置する制振構造が注目されています。ただし、制振構造の挙動は複雑で、設計・開発には多くの注意を要するのに対し、市場では安易にダンパーを設置した効かない制振も多く売られています。

そこで、木質架構にダンパーを入れた場合の力学的挙動や動的特性を、極めて多くの実験や詳細な数値解析により把握しました。また、等価線形化理論を用いた手法と時刻歴応答解析による手法それぞれで、地震応答の制御に必要なダンパー量を求められる合理的な設計法を提案しました。

この研究成果は、その多くが小規模住宅制振設計指針として公開される予定です。また、将来的な実現・普及が強く望まれている木質高層建物にも応用可能であり、小~大規模の木質建物の耐震性向上に大きく寄与すると考えています。

本研究は東京工業大学の笠井和彦先生、坂田弘安先生のご指導の下で行ってきたものです。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。今回の受賞を励みとし、新たな地で今後も研究・教育活動に邁進していきたいと思います。

矢野隆章 物質理工学院 応用化学系 助教

受賞業績:プラズモニクスの原理限界を超越したナノ分光法の開拓研究

矢野隆章 物質理工学院 応用化学系 助教
矢野隆章 物質理工学院
応用化学系 助教

金や銀などの貴金属からなるナノスケールの構造体に光を照射すると、その近傍に光が強く局在することが知られています。貴金属ナノ構造体と光の相互作用を扱う科学はナノプラズモニクスと呼ばれ、近年注目を集めています。私はこれまでにナノプラズモニクスの技術を駆使し、超解像分光顕微鏡の開発を行ってきました。最近では、貴金属ナノ構造に代わる新奇な光素子として誘電体ナノ構造を活用し、ナノプラズモニクスの原理限界に挑戦しています。

このたび、これまでの研究活動に対してこのような名誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に思います。学内外の先生や共同研究者の方々はもちろん、学内の研究戦略室の研究企画委員の先生や事務の方々のご支援ご指導の賜物と厚くお礼申し上げます。特に、これまでご指導いただいた東京工業大学の原正彦先生、大阪大学の河田聡先生、井上康志先生に深く感謝いたします。

横山毅人 理学院 物理学系 助教

受賞業績:異種量子接合の研究

横山毅人 理学院 物理学系 助教
横山毅人 理学院
物理学系 助教

物性物理学の分野では「物」の示す性質(物性)に興味があります。これまでに非常に多くの研究の蓄積があり、様々な物の示す性質が明らかになってきました。

私は2つの異なる物をくっつける(接合する)ことでそれぞれの物自体は示さないような新奇な物理現象を予言してきました。特に、スピンが規則的に並ぶ磁性体や電気抵抗がゼロになる超伝導体、昨年のノーベル物理学賞でも話題になったトポロジカル物質等からなる接合において先駆的な理論を展開してきました。

受賞にあたり、指導教員や共同研究者の方々に感謝申し上げます。

渡部弘達 工学院 機械系 助教

受賞業績:炭素系エネルギー高度変換のための化学反応と輸送現象の研究

渡部弘達 工学院 機械系 助教
渡部弘達 工学院 機械系 助教

石炭やバイオマスなどの炭素系エネルギー変換におけるCO2削減が求められています。受賞対象となった私の研究は、『低炭素社会に向けた炭素系エネルギー変換のフロンティア開拓』をコンセプトにした熱化学反応系(CO2回収型燃焼)と、効率の高い電気化学反応系(燃料電池)の研究になります。これまでに、CO2回収型燃焼の特異性を活用したクリーン燃焼の実現や、固体であるチャー(炭化物)から、直接、電気エネルギーを取り出すことのできるダイレクトカーボン燃料電池の開発を進めてまいりました。

このたびは、このような名誉ある賞を受賞することができ大変光栄に思います。これまでお世話になりました先生方や、共同研究者の皆様、そして共に研究を進めてくれた学生諸氏に心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みとして、より一層、研究活動に邁進し、成果を社会に還元できるよう励んでいきたいと思います。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

東工大教員3名が平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰で「科学技術賞」を受賞

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このたび、東工大教員3名が、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞」を受賞しました。

「科学技術賞」は科学技術分野で顕著な功績をあげた者を対象としたもので、「開発部門」、「研究部門」、「科学技術振興部門」、「技術部門」、「理解増進部門」に分かれて表彰されています。

日ごろの研究活動、研究成果を認められ、本学からは「開発部門」で2名、「研究部門」で1名が受賞しました。

科学技術分野の文部科学大臣表彰には、「科学技術賞」の他、特に優れた成果をあげた者を対象とする「科学技術特別賞」、高度な研究開発能力を有する若手研究者を対象とした「若手科学者賞」等があり、「若手科学者賞」においても本学関係者から9名の教員が受賞しました。

「科学技術賞」を受賞した東工大関係者は以下のとおりです。

科学技術賞(開発部門)

科学技術賞(研究部門)

科学技術賞(開発部門)

  • 受賞業績:超高速無線伝送ミリ波CMOS集積回路設計技術の開発
  • 受賞者:松澤昭 工学院 電気電子系 教授、岡田健一 工学院 電気電子系 准教授

研究概要

次世代無線LANや第5世代携帯電話等の情報通信インフラ構築に必要な超高速無線通信を実現するために、ミリ波帯(30 GHz-300 GHz)を用いた無線技術が必要とされています。デジタル回路等で用いられる安価で大量生産が可能なCMOS集積回路では、ミリ波帯での位相雑音特性が悪いため多値変調による高速な無線通信ができないことが長年の課題でした。

我々は、注入同期現象をミリ波帯の信号発生に利用することにより、極めて良好な位相雑音特性を実現することに成功しました。位相雑音が改善できたことでミリ波帯においても多値変調が可能となり、CMOS集積回路により世界で初めてダイレクトコンバージョン型のミリ波帯無線機を実現できました。

本開発により、60 GHz帯ミリ波無線機においても、一度に6ビットの送受信が可能となり、世界最高速となる42 Gb/sの無線通信速度を達成できました。

60 GHz帯ミリ波無線機の国際性能競争
60 GHz帯ミリ波無線機の国際性能競争

松澤昭 工学院 電気電子系 教授

松澤昭 工学院 電気電子系 教授
松澤昭 工学院
電気電子系 教授

この研究を開始した10年前、60 GHzを中心とするミリ波はその高い周波数により、超高速無線通信を期待されていましたが、位相(時間)の揺らぎが大きく、十分な通信速度を実現できていませんでした。また、安価で量産が可能なCMOS集積回路での実現も困難と思われておりました。その課題を一つ一つ克服し、CMOS集積回路を用いてミリ波本来の超高速無線通信を実現いたしました。この技術の開発の成功は9年間にわたる総務省の研究開発支援、研究開発に参加された企業や他の研究室との連携のたまものですが、企業でも困難な、先端集積回路の設計・評価を担った多くの学生の献身的な努力の結晶でもあります。関係された多くの方々に深く感謝申し上げるとともに、この技術が無線通信の発展に大きく貢献することを願っております。

岡田健一 工学院 電気電子系 准教授

岡田健一 工学院 電気電子系 准教授
岡田健一 工学院
電気電子系 准教授

高周波デバイス測定評価技術のような基盤的技術の研究から、ミリ波無線システムの設計・開発・評価までを10年間かけて行いました。当初CMOS集積回路での実現は困難であると言われていましたが、共にプロジェクトを推進した多数の企業や大学研究室の研究者からの多大な支援や助言により、世界最高速の60 GHz帯ミリ波無線機を実現することができました。本成果は多数の学生たちの協力なしでは成しえなかったものです。学生たちに感謝するとともに、本受賞を共に喜びたいと思います。

科学技術賞(研究部門)

石谷治 理学院 化学系 教授

受賞業績:二酸化炭素を還元資源化する可視光駆動光触媒の研究

石谷治 理学院 化学系 教授
石谷治 理学院 化学系 教授

人類は、地球温暖化およびエネルギー資源や炭素資源の枯渇という深刻な3つの問題に直面しつつあります。太陽光をエネルギー源とした二酸化炭素の資源化(人工光合成)は、これらの問題を一挙に解決する技術として注目を集めています。この技術の中核を担うのが、可視光により二酸化炭素の還元を駆動する光触媒です。

我々は、二酸化炭素を還元する金属錯体光触媒の性能を、詳細な反応機構の解明を通して発案した新たな分子設計により飛躍的に向上させることに成功しました。開発した光触媒は、これまで報告された中で最も効率が良く、耐久性も最も高いものです(図)。

また、元素戦略を勘案した二酸化炭素還元光触媒としては最も効率と耐久性の高い系を、鉄錯体と銅錯体を組み合わせることで創製しました。このようにして開発した金属錯体光触媒を、光酸化力の強い半導体と創発的に融合したハイブリッド光触媒を初めて開発し、可視光を用いた、水を還元剤とする二酸化炭素の光触媒還元に成功しました。更に、高効率な光捕集機能を持つ二酸化炭素還元光触媒を世界に先駆けて開発しました。

CO2光還元効率(量子収率)の世界記録
CO2光還元効率(量子収率)の世界記録

これらの研究は、資源環境技術研究所、埼玉大そして東工大において、同僚、スタッフ、学生の皆さんと一緒に継続的に行ってきました。これらの皆さんとの共同研究が受賞という形で評価していただけたことをうれしく思っています。共同研究者の皆さまに感謝いたします。人工光合成の研究は、人類の将来にとって重要な研究ですし、また学術的にもチャレンジングで面白いものです。今後も多くの方々と協力しながら、この分野に少しでも貢献できればと思っています。

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広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

平成29年度東京工業大学附属科学技術高等学校入学式挙行

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4月6日、大岡山キャンパスで東京工業大学附属科学技術高等学校(以下、附属高校)の入学式が執り行われ、199名が晴れの入学の日を迎えました。

平成29年度東京工業大学附属科学技術高等学校入学式

附属高校の佐伯元司校長は式辞で、「ここで学ぶ機会を与えられた生徒の皆さんが、自分自身を磨き、科学技術をしっかり修得し、さらに、大学や大学院で学び、そして、社会に巣立ち活躍するための基礎を築いて下さることを望んでいます。現代は、将来の予測が難しい変動の時代を迎えています。これは、世界各国に共通しています。わが国は、国土が狭く、資源が乏しく、自然災害が多いことから、豊かで安全な生活を送るためには、科学技術立国を目指すことが必要不可欠です。皆さんが、本校で科学技術をしっかり修得して、将来、グローバルに活躍するリーダーとなり、日本及び世界の発展に貢献することを期待しています。」と述べました。

その後、東京工業大学の三島良直学長、相川友香PTA会長、門馬進教育後援会副会長らの来賓祝辞、仲道嘉夫副校長の挨拶・担任紹介に続き、新入生代表による誓いが行われ閉式となりました。

附属高校は、海外の高等学校との国際交流が盛んであると共に、大学並みの実験・実習施設も整備しており、東京工業大学と密に連携した教育を行っています。

毎年10名程度の生徒が東京工業大学に選抜され入学するシステムがあり、今年は、一般入試でも6名が合格して、合計16名が東京工業大学に入学しました。

また、文部科学省から研究開発の指定を受けた「スーパーサイエンスハイスクール」は、2002年度より継続しており、通算すると4期目の指定となります。2015年度より「スーパーグローバルハイスクール」の研究開発校の指定も受けており、同時に2つの研究開発を実施しています。

ご入学された皆様、おめでとうございます。

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ニュースレター「AES News」No.9 2017春号発行

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科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センターouterは、「AES News」No.9 2017春号を発行しました。

AESセンターは、従来の大学研究の枠組みを越えて、企業、行政、市民などが対等な立場で参加する研究拠点である「オープンイノベーション」を推進しています。ここでは、低炭素社会実現のための研究プロジェクトを創生することを大きな目的の一つとしています。

本学教員と本センター企業・自治体が連携し、既存の社会インフラを活かしながら革新的な省エネ・新エネ技術を取り入れ、安定したエネルギー利用環境を実現する先進エネルギーシステムの確立を目指しています。

本センターの活動を、より多くの方々にご理解いただき、また、会員および本学教職員の連携を深めるため、季刊誌「AES News」を発行しています。今回は第9号となる2017年春号をご案内します。

ニュースレター「AES News」第9号 2017春号

第9号・2017春号

  • 科学技術創成研究院 AESセンター 浅野浩志特任教授 巻頭記事「分散型エネルギー資源を活用した地域エネルギーシステム」
  • 三菱商事共同研究講座「スマート水素ネットワークの実現への取り組み」
  • 東京ガス共同研究講座「田町スマートエネルギーネットワークが平成28年度省エネ大賞『経済産業大臣賞』を受賞」
  • AES開催報告(2017年1月~3月)
  • 2017年度の活動、今後のスケジュール等

ニュースレターの入手方法

PDF版

資料ダウンロード | 先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)outer

バックナンバーもリンク先よりご覧いただけます。
冊子版
  • 大岡山キャンパス:東工大百年記念館1階 広報棚
  • すずかけ台キャンパス:すずかけ台大学会館1階 広報コーナー

お問い合わせ先

科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センター

Email : aescenter@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3429

大隅栄誉教授率いる細胞制御工学研究センターを設置

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東京工業大学科学技術創成研究院は、4月1日を以て、新たに「細胞制御工学研究センター」を設置しました。その前身である「細胞制御工学研究ユニット」から継承した数々の強みを最大限活かしながら、基礎生命科学から医療・創薬への応用までを視野に入れた幅広い生命科学研究を牽引・推進することで、細胞制御工学の研究拠点と呼ぶにふさわしい研究センターを目指します。

細胞制御工学研究センターの概要

細胞制御工学研究センターの概要

1.細胞制御工学研究センター設置の経緯

2016年4月1日の科学技術創成研究院の発足に伴い、細胞生物学の新たな研究拠点として「細胞制御工学研究ユニット」を設置しました。同年、研究ユニットリーダーの大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を始めとする多数の賞を受賞し、国際的に極めて高い評価を得ました。これを機に研究拠点形成を加速するため、「細胞制御工学研究ユニット」を発展的に解消し、「細胞制御工学研究センター」を設置することとしました。また、本センターは、科学技術創成研究院において、研究ユニットから研究センターに発展する第1号となります。

2.細胞制御工学研究センターの概要

「細胞制御工学研究センター」では、生命の基本単位である細胞レベルの生命現象に焦点を当てて先端的な基礎研究を進めるとともに、それら基礎研究の成果を利用した細胞医療と創薬の基盤技術の確立という社会還元も見据えた研究拠点となることをミッションとしています。

基盤研究では、細胞の構造や機能を「観る」、分子機構解析により「知る」、 細胞編集や再構成により「操作する」ための基盤的技術を確立することと、それに基づく遺伝子の発現・再編成からタンパク質の合成・修飾・分解に至るまでの分子機構、並びに、それらが織りなす細胞機能のダイナミクスとを理解すること、の2点を中心的な課題としています。

これらを達成するため、「細胞制御工学研究ユニット」から引き継いだ学内外の研究グループにより、国際的にも先導的な細胞研究を行います。これにより、基礎生命科学から医療・創薬への応用までを視野に入れた生命科学領域を牽引・推進し、細胞制御工学の研究拠点と呼ぶにふさわしい研究センターとして活動していきます。

細胞制御工学研究センター首脳陣集合写真

細胞制御工学研究センター首脳陣集合写真
撮影日:2017年4月5日 撮影場所:すずかけ台S2棟エントランス
手前から、大隅栄誉教授
(左)木村教授、(右)田口教授
(左)駒田教授、(中)岩崎教授、(右)加納准教授

  • 様々な分野の細胞研究におけるプロフェッショナルを結集し、それぞれの強みを発揮して国際的な評価に堪える研究成果を持続的に生み出します。
  • センター内および異分野の研究者との日常的な交流を下に、新たな領域を開拓していきます。
  • 各種の最先端機器を導入して細胞研究の加速に努めます。
  • 次世代研究リーダーを輩出するため、若手研究者の自由な発想を伸ばすことが可能な新しい人材育成と研究支援のシステムの構築を進めます。
  • 国内外の研究者との連携、コンソーシアムの形成、企業連携の新しいシステム作り等、持続可能な研究体制構築を目指します。

3.細胞制御工学研究センターの体制(発足時)

  • センター長
    : 大隅良典栄誉教授
  • 大隅研究室
    : 大隅良典栄誉教授、堀江朋子助教
  • 田口研究室
    : 田口英樹教授、丹羽達也助教
  • 岩崎研究室
    : 岩崎博史教授、村山泰斗助教
  • 木村研究室
    : 木村宏教授、佐藤優子助教
  • 駒田研究室
    : 駒田雅之教授、福嶋俊明助教
  • 加納研究室
    : 加納ふみ准教授、中津大貴助教、村田昌之特任教授

お問い合わせ先

研究院事務第2グループ

Email : iir-koho@iir.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5991

攻殻機動隊リアライズプロジェクト「ザ アワード 2016」グランプリを鈴森・遠藤研究室が受賞

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攻殻機動隊 リアライズプロジェクト(REALIZE PROJECT)「ザ アワード(the AWARD) 2016」の義体(ロボット)部門グランプリを工学院 機械系の鈴森・遠藤研究室が受賞しました。3月25日に東京ビックサイトで行われた「アニメ ジャパン(Anime Japan)2017」の中で表彰式が開催され、鈴森康一 工学院 教授、鈴森・遠藤研究室の車谷駿一さん(工学院 機械系 博士後期課程1年)、森田隆介さん(工学院 機械系 修士課程1年)が出席しました。

受賞の記念撮影(左から2人目より、森田さん、鈴森教授、車谷さん) ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
受賞の記念撮影(左から2人目より、森田さん、鈴森教授、車谷さん)
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

攻殻機動隊リアライズプロジェクトとは

アニメ「攻殻機動隊」が発表されて25年の節目となる2014年の秋に、企業、大学の研究開発者、公共機関、そして攻殻機動隊製作委員会が、産学一体となって、攻殻機動隊に描かれている数々の近未来テクノロジーの実現を追究するプロジェクトとして攻殻機動隊リアライズプロジェクトが立ち上がりました。

今回の「ザ アワード 2016」では、2016年4月から2017年2月までに「攻殻機動隊リアライズプロジェクト」の公式ウェブサイトならびにSNSで紹介された国内先端テクノロジーニュースの中から、最も攻殻機動隊らしいテクノロジーが選出されました。読者のリーチ数、インプレッション数、アクション数を事務局が集計、順位付けした1~10位のニュースの中から、プロジェクト顧問である専門家、攻殻機動隊製作委員会ならびに制作陣によって、「電脳(人工知能)」「義体(ロボット)」の2部門のグランプリと、審査員特別賞を選出しました。

鈴森・遠藤研究室が行う人工筋肉に関する研究

人工筋肉を使った筋骨格ロボット ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
人工筋肉を使った筋骨格ロボット
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

鈴森康一 教授が研究する、これまでより細くしなやかな人工筋肉の研究が評価され、今回の受賞となりました。本研究成果をもとに2016年に東京工業大学・岡山大学発のベンチャーである株式会社 s-muscle(エスマスル)が設立され、人工筋肉を筋繊維として編み込むことで、軽く、柔らかく、着心地のよい介護福祉用サポートスーツやコルセット、 新しいロボットや福祉機器への活用が期待されています。

受賞スピーチ(左から鈴森教授、車谷さん、森田さん) ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
受賞スピーチ(左から鈴森教授、車谷さん、森田さん)
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

鈴森康一教授のコメント

SFアニメはロボット研究の強い原動力の一つです。その中でも熱心なファンの多い「攻殻機動隊」に評価して頂いたことは大変うれしく思います。これを励みに、人工筋肉のロボット応用研究をさらに加速しようと思います。

車谷駿一さんのコメント

SFアニメの金字塔である「攻殻機動隊」に自分の研究を高く評価していただき、アニメやゲームに親しみを持って育った世代として、今回の受賞を大変嬉しく思っています。今後も新規性、実用性だけでなく、皆さんに身近でワクワクするようなロボット研究に励んでいきたいと思います。

森田隆介さんのコメント

SFロボットに憧れ、それを実現したくてロボット研究の道を選んだ身として、このような賞を頂けたことは非常に光栄です。まだまだ課題は山積みですが、一つ一つ解決していけるよう、引き続き頑張ります。

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

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三次元DRAM、WOW技術で熱抵抗が1/3に削減

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要点

  • 3次元積層デバイスの熱抵抗[注1]計算法を確立
  • バンプとTSVを組み合わせた垂直配線に比べ、バンプレスTSVの熱抵抗は1/3に
  • IoT時代に欠かせない大容量メモリーの多層積層を3倍に

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の大場隆之教授はWOWアライアンス[用語1]と共同で、バンプレスTSV配線[用語2]を用いると、3次元積層デバイスの熱抵抗を従来のバンプ[用語3]の接合構造と比較して、30数%(1/3)まで低減できることを明らかにした。有限要素法(FEM)[用語4]と熱回路網の計算手法を用いて解析した。

解析により、バンプ接合TSV配線の3次元積層デバイスは積層部、絶縁層、有機膜が熱抵抗の主要因であることがわかった。これに対し、バンプレスTSV配線は、バンプの密度を同じにした場合、接合部の熱伝導が150倍良好であり、全体の熱抵抗では、従来手法が1.54 Kcm2/Wであるのに対して、0.46 Kcm2/Wにまで低減可能であることがわかった。

この成果は山形県天童市で4月19~21日に開かれるエレクトロニクス実装国際会議「ICEP2017」で発表された。

背景

3次元積層デバイスは、上下の接続層において、アンダーフィル材料[用語5]のような、絶縁膜、有機膜を使用する必要があるために、熱抵抗が大きくなり、放熱技術が非常に大きな課題となっている。そのため、大場教授らはウエハーを薄化してから積層し、TSVで直接上下チップを接続配線するバンプレスTSV配線を開発した。この技術を用いると、積層方向の熱抵抗の低減が期待できる。実際に従来の積層手法と比較して、バンプレスTSV配線の熱抵抗がどの程度低減するのかを推定した。

研究成果

大場教授らの研究グループは、ウエハーを薄化してから積層し、TSVで直接上下チップを接続配線するバンプレスTSV配線を開発している。この方法を用いれば、バンプが不要になり、薄化プロセスの限界までウエハーを薄くすることができる。また、この方式においては、各層間の接続に、TSV配線を利用できるために、接続部の熱抵抗が低減できると期待される。

今回、全体の熱抵抗を見積もるために、(1)3次元積層デバイスの構造を仮定する、(2)「各層の熱抵抗はFEMを用いて推定する、(3)全体の熱抵抗を熱回路網解析で推定する、という手順で実施した。

3次元積層デバイスはマイクロバンプタイプとバンプレスタイプの断面構造の比較図(図1)に示したように、シリコン基板、TSV設置シリコン基板、BEOL[用語6]、垂直方向の接合構造(マイクロバンプ構造、バンプレス構造)で構成されている。今回の研究では、BEOLと垂直方向の接合構造の熱抵抗に関しては、FEMで熱伝導率を推定、また、全体の熱抵抗の計算に関しては、熱回路網を用いて推定した。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの断面構造の比較図

図1. マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの断面構造の比較図

総合的な熱抵抗の推定において、マイクロバンプ構造の熱抵抗の計算に関しては、参考文献[1]の計算手法を参考に計算した。このとき、直径25マイクロメートル(μm)のマイクロバンプを使用し、50 μmピッチで配置した際の、全体の熱抵抗は1.54 Kcm2/Wと算出することができ、熱抵抗が高い要因の多くが、BEOLと垂直配線の接合構造にあることがわかった。

次に、各要素のFEM解析を図2に示すようなモデルを用いて等価熱伝導率を推定していくことにより、バンプレスタイプの熱抵抗を推定した。その結果を図3に示す。同じバンプレスタイプの垂直方向の接合の熱抵抗は、マイクロバンプタイプのそれと比較して、同じ占有率を想定した場合、150倍小さくなることが推定できた。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプのFEMモデルの比較

図2. マイクロバンプタイプとバンプレスタイプのFEMモデルの比較

垂直接合部の熱抵抗の占有面積依存性のグラフ

図3. 垂直接合部の熱抵抗の占有面積依存性のグラフ

この結果から、バンプレスのTSVの密度を全体の1%程度にまで減らしたとしても、熱抵抗が改善できることが分かる。そのため、TSVの本数としては、信号線として使用される本数を想定することで、放熱性としては、十分であることが分かった。

この各要素の熱抵抗から、全体の熱抵抗を計算したところ、従来のマイクロバンプの方式では、1.54 Kcm2/Wであるのに対して、0.46 Kcm2/Wにまで低減可能であることがわかった。また、各要素の熱抵抗と各層の発熱量から、それぞれの温度上昇を推定したところ、マイクロバンプタイプでは約20 ℃の温度上昇が推定されるのに対して、バンプレスタイプは、約4 ℃の温度上昇ですむことが推定された。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの温度上昇の比較グラフ

図4. マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの温度上昇の比較グラフ

以上の結果から、現行の温度上昇を許容するとした場合、3~4倍のDRAM積層が可能になる。仮に、現在量産されている積層DRAMが2 GBであれば、6~8 GBに容量を増やすことができる。このようなメモリーの大容量化はIoT(モノのインターネット)に向けた応用が期待される。

今後の展開

薄化ウエハーの積層と高密度TSV配線で実証実験を行い、携帯端末およびサーバー向け大容量メモリー技術として実用化を行う。

[注1] 熱抵抗 : 熱の伝わりにくさを表す値のこと。半導体は高発熱体であるため、熱が伝わりにくくなると、半導体の温度が上昇し、動作不良の原因になる。最新の半導体では、単位面積当たり100 Wから300 Wの発熱が起きる。

用語説明

[用語1] WOWアライアンス : 東京工業大学を中心に設計・プロセス・装置・材料半導体関連の複数企業および研究機関からなる研究グループ。薄化したウエハーを簡単に積層することができ、バンプレスTSV配線を用いた三次元化技術に世界で初めて開発に成功した。

[用語2] TSV配線 : Through-Silicon-Viaの略で、シリコンウエハーを貫通させ埋め込み配線で上下チップチップを接続させる接続孔。最近では、シリコン材料以外にも配線するため、前工程における垂直配線(vertical interconnects)とした方がわかりやすい。

[用語3] バンプ : 電極部にメッキで形成した配線接続のための突起。

[用語4] FEM : Finite Element Method の略。有限要素法という数値解析手法の一種。

[用語5] アンダーフィル材料 : バンプが形成されたICチップを実装される際に用いられる絶縁材料。

[用語6] BEOL : Back End of Line の略。半導体前工程の中の金属配線層作成プロセス、および、このプロセスで作成された層のことを指す。

参考文献

[1] Matsumoto, et al., "Thermal Design Guidelines for a Three-dimensional (3D) Chip Stack, Including Cooling Solutions", 29th IEEE SEMI-THERM Symposium, 2013

論文情報

掲載誌 :
IEEE 2017 International Conference on Electronics Packaging (ICEP), pp. 822-825 (2017)
論文タイトル :
A Design Guide of Thermal Resistance down to 30% for 3D Multi-stack Devices
著者 :
H. Ryoson, K. Fujimoto, and T. Ohba

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
未来産業技術研究所 異種機能集積研究コア
秘書 沼沢文恵

E-mail : numazawa.f.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5866

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

5月の学内イベント情報

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5月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

ベンチャー未来塾2017

ベンチャー未来塾2017

東京工業大学社会人アカデミーでは、本講座をはじめとして、産業のグローバル化に対応できる企業人材を育成する「グローバル産業リーダー育成プログラム」(GINDLE-Global INDustrial LEader)を設置しています。

新たなビジネスチャンス獲得の場として、高い評価をいただいてまいりました。国の政策・立案に関わる府省庁関係者や新興上場企業執行役員が集い、毎回、講義とディスカッションを行います。

日時
4月25日(火)、5月12日(金)、5月16日(火)、5月23日(火)、6月6日(火)、6月13日(火)、6月20日(火)、6月27日(火)
場所
東京21cクラブ(〒100-6510 東京都千代田区丸の内 1-5-1 新丸の内ビルディング 10F)
受講料
198,000円(税込)
※情報交換に参加の方は、軽食代として別途、各回当日2,000円を申し受けます。
対象
新興上場企業(新経済連盟企業など)の執行役員・事業所長クラス
申込
必要

すずかけ祭2017

すずかけ祭2017

すずかけ台キャンパスでは、来る5月13日(土)、14日(日)の2日間にわたり「すずかけ祭」を開催します。

今年は、例年行っている研究室公開、オープンキャンパス、コンサート、スタンプラリー等の行事の他に、新たに児童向け体験型理科教室、女子美術大学とのコラボレーション企画等を行う予定です。

また、オープンキャンパス(5月12日(金)~5月14日(日))も同時開催しております。

日時
5月13日(土)、14日(日)10:00~16:00
会場
参加費
無料
対象
一般
申込
不要

東工大×ロンドン芸術大学セントラル・セントマーティンズ校合同シンポジウム 「科学・アート・デザインの実験」

東工大×ロンドン芸術大学セントラル・セントマーティンズ校合同シンポジウム 「科学・アート・デザインの実験」

科学・技術と創造・芸術。この、一見離れた分野において、世界に知られる東京工業大学とロンドン芸術大学セントラルセントマーティンズ校。二校が手を組み、シンポジウムを実施することになりました。選んだテーマは「実験」。専門分野と文化の隔たりを超え、両者が繰り広げてきた「実験」とは何かを見つめ合い、学び合う機会です。幅広い分野から、英国・日本の研究者・実践者が集まり、それぞれの視点から語ります。

日時
2017年5月27日(土) 13:00 -
会場
渋谷ヒカリエ ヒカリエホール ホールB
参加費
無料
対象
一般
申込
必要

一部締め切りを過ぎているものがございますが、取材をご希望の場合はご連絡ください。

お問い合わせ先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

新アンモニア合成プロセス実用化へ ―細野秀雄教授 味の素、UMIと新会社―

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味の素(株)、UMI、東工大教授ら 世界初となるオンサイトアンモニア生産の実用化を目指す新会社を設立
―アミノ酸等の発酵副原料の安価・安定供給、農業肥料等への活用を図る―

味の素株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 西井孝明)およびユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(以下「UMI」)(本社:東京都中央区、代表取締役 月丘誠一)が管理運営を行うUMI1号投資事業有限責任組合は、東京工業大学(以下「東工大」)の元素戦略研究センター長の細野秀雄教授らと共に、科学技術振興機構(以下「JST」)の支援の下、細野グループが発明した優れた触媒を用いた、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化を目指す新会社である、つばめBHB株式会社(以下「つばめBHB」)を設立し2017年4月25日に事業を開始しました。

生体を構成するアミノ酸やタンパク質には窒素[用語1]という元素が必ず含まれており、窒素は生命活動を維持するのに不可欠です。アンモニアは窒素源となる重要な化合物で、世界総生産量は年間1億6千万トンを超えています。そのうち約8割が肥料の原料として、残り約2割は様々な食品・医薬品の原料や化成品の原料として利用されています。

現在、アンモニアは100年以上前に発明されたハーバー・ボッシュ法(以下「HB法」)を用いて主に生産されています。HB法は空気中の窒素と、天然ガス等から得られる水素[用語2]のみでアンモニアを合成することができる非常に優れた生産技術であり、世界中で広く活用されています。一方、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要であり、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題があります。加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことが課題となっています。

この課題を解決するため、細野教授らはJSTの戦略的創造研究推進事業 ACCEL[用語3]「エレクトライドの物質科学と応用展開」(研究代表者:細野秀雄、プログラムマネージャー:横山壽治)の研究開発において、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能な、HB法で用いられる触媒とは全く異なる触媒を発見・発明しました。低温・低圧の反応条件であることから、従来難しいとされた小型のプラントでの生産が可能となります。将来、この技術の実用化により、世界で初めてとなる、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する、「オンサイトアンモニア生産」モデルの実現が期待されます。

味の素(株)は、グルタミン酸をはじめとする多種のアミノ酸等の発酵素材の生産において多くのアンモニアを原料として利用しており、従前より細野教授らの発明・発見をアンモニアの安価・安定供給を実現する画期的な基本技術として高く評価し、本技術の実用化に関する共同開発を実施してきました。味の素(株)は、つばめBHBと協力して自社工場でのオンサイトアンモニア生産の実現を図り、発酵素材のコスト競争力を高めるドライバーとする他、発酵副原料の生産および輸送におけるエネルギー消費や環境負荷を抑えることで地球との共生を目指します。

東工大の細野教授は、つばめBHBの技術アドバイザーを務め、新触媒の実用化を支援します。また東工大とつばめBHBとの共同研究により、高効率の触媒の研究開発をさらに推進します。またJST、および東工大はつばめBHBに対して、オンサイトアンモニア生産技術の基礎となる細野グループの開発による新触媒の特許のライセンスを行い、つばめBHBの事業をサポートします。

UMIはつばめBHBに対して、今後の事業推進に必要な資金を供給するとともに、取締役等の経営メンバーの派遣、事業開発体制の強化等の経営サポートを行います。UMIは上記の取り組みを通じて、素材・化学分野における有望なアカデミアシーズの社会実装の成功事例の創出を目指し、当該分野におけるエコシステムの形成に貢献します。

つばめBHBは、味の素(株)の国内外発酵素材工場に本技術を導入し、2021年頃を目処に世界初のオンサイトアンモニア生産の実用化を図ります。将来的には味の素(株)に加え、いろいろなパートナー企業と連携し、農業肥料、食品・医薬品、化成品等への適用拡大を図り、より環境に配慮したサステナブルな生産システムの実現を通じて社会への貢献を目指します。

つばめBHB株式会社について

  • 本店所在地:
    東京都中央区明石町8番1号
  • R&D拠点:
    神奈川県横浜市緑区長津田町4259番地 東工大すずかけ台キャンパス内
  • 代表取締役:
    中谷秀雄
  • 設立:
    2017年4月5日
  • 事業開始:
    2017年4月25日
  • 出資総額:
    4.5億円
  • 資本構成:
    UMI1号投資事業有限責任組合53%、味の素(株)44%、細野教授ほか3%
  • 事業内容:
    オンサイトアンモニア生産システム・触媒の研究開発・製造

参考(1) 本新技術に関連するアカデミアの概要等

国立大学法人 東京工業大学

東京工業大学は、創立から130年を越える歴史をもつ国立大学であり、日本最高峰の理工系総合大学です。「ものつくり」の精神を大切に創造性豊かな教育を実践し、日本の産業界・科学界を支える多くの人材を輩出してきました。確かな基礎力と理工系専門力、そして、人文社会系教養をあわせもち、さらに世界を舞台に活躍できるコミュニケーション能力を身につけた人材の育成を目指しています。

国立研究開発法人 科学技術振興機構

科学技術に関する基礎研究、基盤的研究開発、新技術の企業化開発、情報流通、基盤整備等に関する業務を総合的に行うことにより、日本の科学技術の振興を図る文部科学省所管の国立研究開発法人です。国民の幸福で豊かな生活の実現に向けて、新しい価値の創造に貢献し、国の未来を拓く科学技術振興を進めます。

参考(2) 新会社に出資する2社の概要等

味の素株式会社

  • 本社所在地:
    東京都中央区京橋一丁目15番1号
  • 代表取締役社長:
    西井孝明
  • 創業:
    1909年5月20日(1925年12月17日設立)
  • 資本金:
    79,863百万円(2016年3月31日現在)
  • 売上高:
    1,185,980百万円(2016年3月期 連結ベース)
  • 従業員数:
    33,295名(2016年3月31日時点 連結ベース)
  • 事業内容:
    調味料・加工食品、冷凍食品、コーヒー類、加工用うま味調味料・甘味料、動物栄養、化成品、アミノ酸、医薬の製造および販売、他

UMI1号投資事業有限責任組合

  • 所在地:
    東京都中央区明石町8番1号
  • 業務執行組合員:
    ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社
  • 組成日:
    2016年1月1日
  • 出資総額:
    10,010百万円
  • 組成目的:
    素材・化学産業のベンチャーへの投資及び育成
  • 出資者:
    株式会社産業革新機構、東証一部上場の素材・化学企業(9社)

ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社

  • 本社所在地:
    東京都中央区明石町8番1号
  • 代表取締役:
    月丘誠一
  • 設立:
    2015年10月6日

UMIは「優れた素材・化学企業の育成を通して、日本の技術力を強化し、世界に通用する産業構造を醸成する」というビジョンの下、日本企業やアカデミアが保有する、将来の産業の礎となるような優れた素材・化学分野における新技術・事業への投資活動を行っています。

細野教授のコメント

細野秀雄教授
細野秀雄教授

電子化物の研究は、JST ERATO「透明電子活性」プロジェクト(1999 - 2004)の中で始めたものです。2004年に12CaO・7Al2O3(C12A7)というセメント鉱物を取り上げ、その結晶構造を構成するゲージ中に対アニオンとして存在する酸素イオンを電子で交換することで、室温で安定な電子化物(C12A7:e)を初めて実現しました。C12A7:eは金属のように電気をよく通し、低温にすると超伝導を示します。また、アルカリ金属と同じくらい仕事関数が小さいのに、化学的に安定というユニークな物性をもっています。この性質を活用すべく、C12A7:eにルテニウムを担持し、マイルドな条件下でのアンモニア合成の触媒として検討したところ、優れた特性をもつことが分かりました。これらの一連の成果は、来年度から使われる高校の化学の教科書の一つに掲載されます。

2013年から開始されたJSTのACCELプログラムの第一号課題に選定されて以来、上記のエレクトライドのコンセプトを発展させ、いろいろなアンモニア合成触媒を開発してきました。これらの成果が、味の素(株)と政府系ファンドUMIの目に留まり、その実用化のための新社“つばめBHB”が発足しました。IGZO(イグゾー)-TFTは美しいディスプレイというbetter lifeに貢献していますが、今回は生きるために不可欠なアミノ酸の合成用ですのでessential for lifeに寄与できそうで嬉しい限りです。何とか共同研究者と力を合わせて発展させたいと思っています。

用語説明

[用語1] 窒素 : 窒素ガスは空気の約78%を占め、窒素は地球上のほぼ全ての生物にとって必須の元素。

[用語2] 水素 : 宇宙で最も多く存在する元素。近年では燃料電池車の燃料等クリーンエネルギーとしても着目されている。

[用語3] 戦略的創造研究推進事業 ACCEL : JSTの事業の一つで、世界をリードする顕著な研究成果のうち有望なものの、企業などではリスクの判断が困難な成果を抽出し、プログラムマネージャーによるイノベーション指向の研究開発マネジメントにより、企業やベンチャー、他事業等に研究開発の流れをつなげている。

お問い合わせ先

味の素株式会社 広報部 PRグループ

Tel : 03-5250-8180

ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社
広報担当・佐藤

Tel : 03-5218-7237

国立大学法人東京工業大学 広報・社会連携本部
広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

国立研究開発法人 科学技術振興機構 総務部 広報課

Tel : 03-5241-8404

マイクロ波でマグネシウム製錬の省エネ化に成功―アンテナ構造で生成効率アップ―

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要点

  • 工業的に利用されている金属の中で最も軽いマグネシウムの新たな製錬方法を開発
  • マイクロ波照射時に熱伝導性をあげるため材料の成形方法を工夫
  • 他の有用金属の製錬における省エネルギー化への応用に期待

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の和田雄二教授、藤井知特任教授らの研究グループは、オリコン・エナジー株式会社が出資するマイクロ波共同研究講座を中心に、マイクロ波を用いたマグネシウム(金属マグネシウム)製錬で、従来と比べ、70%近い省エネルギー効果が得られることを見出した。

金属マグネシウムの原料である酸化物(ドロマイト:MgO・CaO)は、マイクロ波のエネルギーを吸収しにくく、発熱しない。

今回、還元剤として導電性のあるフェロシリコン(FeSi)を、原料のドロマイトと混合して成形する際に、アンテナ構造にすることで、マイクロ波のエネルギーを集めやすくして、より低温で還元させることができた。マイクロ波の特徴である内部加熱や接触点加熱が見られ、この製錬における平均反応温度は、従来の1,200~1,400 ℃から1,000 ℃まで下がった。

本研究成果は4月12日付けの英国科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・レポート(Scientific Reports)」オンライン版に掲載された。

背景

現在、金属マグネシウムの製錬は、主に材料を高温にするピジョン法(熱還元法)が用いられ、その熱源として石炭が大量に使われている。金属マグネシウムは約80%が中国で生産されている。製錬の際に、大量の石炭を燃焼することで、大気汚染物質であるPM2.5(微小粒子状物質)の発生や二酸化炭素の大気への放出が大きな問題となっている。

ピジョン法とは、ドロマイト鉱石とケイ素鉄を高温で加熱し、蒸気になったマグネシウムを冷却して金属マグネシウムを得る方法だ。

2MgO (s) + 2CaO (s) + (Fe)Si (s) → 2Mg (g) + Ca2SiO4 (s)+ Fe (s)

s:個体、g:ガス
ドロマイト鉱物:MgO・CaO、フェロシリコン:FeSi
熱源:石炭

研究の経緯

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の和田研究室は、オリコン・エナジー(株)と2013年11月からマイクロ波を再生可能エネルギー分野に応用する共同研究をスタートさせた。翌年の7月からは、同大学内に設置した共同研究講座で、金属マグネシウムの製錬について研究を行っている。本成果は、この共同研究講座での共同研究の一環。

研究成果

通常、ドロマイトは、マイクロ波エネルギーの吸収が少なく発熱しない。そこで、還元剤にフェロシリコンを使い、ドロマイトとフェロシリコンを混合したペレット原料の形を工夫して、アンテナ[用語1]として成形することで、2.45 GHz(電子レンジの周波数と同じ)に対して共振構造になるようにして、ペレット内にマイクロ波エネルギーを閉じ込めることに成功した。

小規模実験炉では、1 gの金属マグネシウムの製錬に成功した。また、エネルギーを正確に見積もるために、実験炉の約5倍サイズの実証炉を作製、実験したところ、7 g程度の金属マグネシウムの製錬に成功した。これは、従来法に比べ、68.6%のエネルギー削減ができる。

今後の展開

金属マグネシウム製錬の省エネ化が成功したことで、この技術が酸化物の高温還元プロセスに展開・適用できる可能性が出てきた。

今後は、本研究をさらに発展すべく、他の金属材料の製錬に適用し、なかなか進まない鉄鋼・金属・材料・化学における省エネルギー化を解決し、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素の削減に貢献していく。

ドロマイトとフェロシリコンを使ってアンテナ構造を作製

図1. ドロマイトとフェロシリコンを使ってアンテナ構造を作製

シミュレーションによるアンテナ構造有無の違いによるアプリケータ内の電場分布

図2. シミュレーションによるアンテナ構造有無の違いによるアプリケータ内の電場分布

小型炉でのマグネシウムの製錬結果

図3. 小型炉でのマグネシウムの製錬結果

用語説明

[用語1] アンテナ : 最も単純なものは、電波の波長/4の大きさにした導体(モノポールアンテナ)、この整数倍の大きさで共振する。アンテナの役割は、空間中のエネルギーを内部に取り込むことである。一般には、アンテナは、携帯電話などの通信機器に搭載されており、電波に含まれるデジタル情報を取り出すことに使われる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Smelting Magnesium Metal using a Microwave Pidgeon Method
著者 :
Yuji Wada, Satoshi Fujii, Eiichi Suzuki, Masato M. Maitani, Shuntaro Tsubaki, Satoshi Chonan, Miho Fukui & Naomi Inazu
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
教授 和田雄二

E-mail : yuji-w@apc.titech.ac.jp
Tel / Fax : 03-5734-2879

特任教授 藤井知

E-mail : fujii.s.ap@m.titech.ac.jp
Tel / Fax : 03-5734-2879

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

オリコン・エナジー株式会社

E-mail : ir@oricon.jp
Tel : 03-3405-5252 / Fax : 03-3405-8189

「より優れた教育の推進に」平成27年度東工大教育賞授与式を実施

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2月28日に、大岡山キャンパス本館理学院第2会議室において、平成27年度東工大教育賞の授与式が行われました。

この賞は教員の教育方法および教育技術等の向上を図り、より優れた教育を推進することを目的として制定されたもので、今回で14回目となります。

授与式では、最優秀賞に選ばれた史蹟教授、トム・ホープ准教授のほか受賞者に対して三島良直学長から賞と報奨金(目録)が授与されました。

  • 史蹟教授 挨拶

    史蹟教授 挨拶

  • トム・ホープ准教授 挨拶

    トム・ホープ准教授 挨拶

平成27年度東工大教育賞 受賞者一覧

教育に関して優れた業績を挙げたとして、次の17名(8件)が選ばれました。

(所属順・敬称略)
(所属は受賞当時)

最優秀賞

受賞者(所属)
対象業績
史蹟教授
(物質理工学院)
中国の大学との組織的連携と教育プログラムの推進
トム・ホープ准教授
(環境・社会理工学院)
“Think Aloud”をはじめとする東工大の英語による教育への貢献

優秀賞

受賞者(所属)
対象業績
河内宣之教授(代表者)、北島昌史准教授、穂坂綱一助教
(理学院)
学外の放射光施設を用いる新しいタイプの大学院実習プログラムの構築
工藤史貴准教授
(理学院)
学部一年生向けのサステイナブルな環境安全教育
天谷賢治教授(代表者)、宮崎祐介准教授
(工学院)
国際的プロジェクト型講義の開発と実践
山岡克式准教授
(工学院)
フーリエ変換とラプラス変換、情報ネットワーク設計論
花岡伸也准教授
(環境・社会理工学院)
多様な留学生教育の実践
伊藤亜紗准教授(代表者)、室田真男教授、山崎太郎教授、林直亨教授、谷岡健彦教授、上田紀行教授、三ツ堀広一郎准教授
(リベラルアーツ研究教育院)
リベラルアーツ新カリキュラムにおけるコア学修プログラムの開発
集合写真

集合写真

舞踏研究部が東都大学選手権で団体3位入賞

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4月16日、埼玉県草加市の獨協大学35周年記念館アリーナで開催された第114回東都大学学生競技ダンス選手権大会(東部日本学生競技ダンス連盟主催)において、本学の舞踏研究部が団体の部において25校中3位入賞を果たしました。東都大学選手権での団体入賞は1987年以来で、30年ぶりの快挙となりました。個人の部においては、同部から出場した13組のうち9組が入賞し、そのうち7組が決勝進出を果たしました。

また、東都大学選手権と同時開催される東部予選会のフォーメーションの部で25校中8位となったことを受け、東部選手権への出場権を獲得しました。こちらも1999年以来、18年ぶりとなります。

準決勝進出者による閉会式(写真提供:百川美彩)
準決勝進出者による閉会式(写真提供:百川美彩)

競技ダンスとは

男女がペアになって踊る社交ダンスとほぼ同じものですが、社交ダンスが社交を目的としているダンスであるのに対し、競技ダンスは競技会にて技術や表現を競うことを目的としています。

学生の競技ダンスには、大きく3つの部門があり、全部で9種目のダンスがあります。

スタンダード:男女が組んで踊ります。

  • ワルツ
  • タンゴ
  • スローフォックストロット
  • クイックステップ

ラテンアメリカン:基本的に男女が離れて踊ります。

  • チャチャチャ
  • サンバ
  • ルンバ
  • パソドブレ

フォーメーション:4~8組が2~4種目のメドレーで隊列を構成しながら踊ります。

東工大 舞踏研究部について

舞踏研究部は、学生競技ダンス連盟に所属している大学公認のサークルです。共同加盟校である白百合女子大学と杉野服飾大学と一緒に、競技会にむけて日々練習しています。部員数は東工大生23名、白百合女子大生9名、杉野服飾大生7名です(2017年4月現在)。

今大会の入賞者

今回の東都大学選手権の東工大チームの入賞者をご紹介します。

スタンダード

  • スローフォックストロットの部 3位入賞 ワルツの部 6位入賞 渡辺雅紀(理学部 地球惑星科学科 4年)・佐藤洸佳(白百合女子大学)組(写真提供:百川美彩)

    スローフォックストロットの部 3位入賞、ワルツの部 6位入賞
    渡辺雅紀(理学部 地球惑星科学科 4年)・
    佐藤洸佳(白百合女子大学)組
    (写真提供:百川美彩)

  • タンゴの部 準優勝 斎藤悠太郎(生命理工学部 生命科学科 4年)・大木あかり(杉野服飾大学)組(写真提供:百川美彩)

    タンゴの部 準優勝
    斎藤悠太郎(生命理工学部 生命科学科 4年)・
    大木あかり(杉野服飾大学)組
    (写真提供:百川美彩)

  • クイックステップの部 5位入賞 武田龍河(工学部 化学工学科 3年)・小泉渚(白百合女子大学)組(写真提供:百川美彩)

    クイックステップの部 5位入賞
    武田龍河(工学部 化学工学科 3年)・
    小泉渚(白百合女子大学)組
    (写真提供:百川美彩)

  • クイックステップの部 7位入賞 生方道明(工学部 電気電子工学科 4年)・斎藤那維(跡見学園女子大学)組(写真提供:百川美彩)

    クイックステップの部 7位入賞
    生方道明(工学部 電気電子工学科 4年)・
    斎藤那維(跡見学園女子大学)組
    (写真提供:百川美彩)

タンゴの部 12位入賞 クイックステップの部8位入賞 西村力也(工学部 経営システム工学科 4年)・山口結(白百合女子大学)組(写真提供:百川美彩)

タンゴの部 12位入賞、クイックステップの部8位入賞
西村力也(工学部 経営システム工学科 4年)・
山口結(白百合女子大学)組
(写真提供:百川美彩)

ラテンアメリカン

ルンバの部 準優勝 チャチャチャの部 3位入賞 栗崎義紀(理学部 地球惑星科学科 4年)・輿水早記(津田塾大学)組
ルンバの部 準優勝、チャチャチャの部 3位入賞
栗崎義紀(理学部 地球惑星科学科 4年)・輿水早記(津田塾大学)組
(写真提供:百川美彩)

  • チャチャチャの部 準優勝 田添康平(理学部 情報科学科 4年)・水野都(白百合女子大学)組(写真提供:百川美彩)

    チャチャチャの部 準優勝
    田添康平(理学部 情報科学科 4年)・
    水野都(白百合女子大学)組
    (写真提供:百川美彩)

  • ルンバの部 4位入賞 重原悠太郎(理学部 地球惑星科学科 4年)・蔵重結奈(上智大学)組

    ルンバの部 4位入賞
    重原悠太郎(理学部 地球惑星科学科 4年)・
    蔵重結奈(上智大学)組
    (写真提供:百川美彩)

サンバの部 10位入賞、ルンバの部 11位入賞 上原克也(生命理工学部 生命科学科 3年)・松田貴子(白百合女子大学)組

サンバの部 10位入賞、ルンバの部 11位入賞
上原克也(生命理工学部 生命科学科 3年)・
松田貴子(白百合女子大学)組
(写真提供:百川美彩)

代表 重原悠太郎さん(理学部 地球惑星科学科 4年)からのコメント

今回の大会では良い成績を残して非常にいい雰囲気で終えることが出来ました。日頃からの練習がこのような成績につながり、とても満足しています。

また今回の試合ではOB、OGの方々や試合に出場していない下級生からの応援も心強いサポートになりました。この良い雰囲気を保ちながら、今後の試合へ向けて更なる練習に励んでいきます。

東工大基金

舞踏研究部の活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

東京工業大学 舞踏研究部

Email : tsubame.buken@gmail.com

NHK Eテレ「すイエんサー」に大佛俊泰教授が出演

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本学 環境・社会理工学院 建築学系の大佛俊泰教授が、NHK Eテレ「すイエんサー」に出演します。「すイエんサー」は、視聴者から寄せられる素朴な疑問、やってみたいことに「ちょっとだけ科学」の姿勢で大まじめに取り組む番組です。

左からすイエんサーガールズの(西川茉佑、佐久間乃愛、平塚麗奈さん)、大佛教授

左からすイエんサーガールズの(西川茉佑、佐久間乃愛、平塚麗奈さん)、大佛教授

大佛俊泰教授のコメント

都市解析とは、数理モデルや各種のデータを用いて、都市空間に潜む様々な“なぜ?” “どうして?”を解き明かす学問分野です。この番組では、すイエんサーガールズの皆さんが、1枚の不思議な写真を手掛かりに、東京の都市景観に潜む謎解きに挑戦します。わたしたちの日常生活において、もはや必需品となっている数値地図から意外な事実が解明されます。是非ご覧ください。

  • 番組名
    すイエんサー
  • タイトル
    「キセキの1枚が撮れた! ココドコ見つけ隊」
  • 放送予定日
    【NHK Eテレ】2017年5月16日(火) 19:25 - 19:50
  • 再放送
    【NHK Eテレ】2017年5月20日(土) 10:00 - 10:25

環境・社会理工学院

環境・社会理工学院 ―地域から国土に至る環境を構築―
2016年4月に発足した環境・社会理工学院について紹介します。

環境・社会理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975


本学学生が第7回日本学術振興会 育志賞を受賞

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大学院総合理工学研究科 物質電子化学専攻の堀智日本学術振興会特別研究員と、大学院生命理工学研究科 生体システム専攻の持田啓佑さん(博士後期課程3年)が、第7回日本学術振興会 育志賞を受賞しました。

同賞は、天皇陛下の御即位20年に当たり、社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる若手研究者を支援・奨励するための事業の資として、2009年に日本学術振興会が陛下から賜った御下賜金により、将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される優秀な大学院博士課程学生を顕彰することを目的として、2010年度に創設されました。

授賞式は3月8日に日本学士院にて開催されました。

堀智さん

受賞対象となった研究テーマ:超イオン導電体の新物質創出と次世代エネルギーデバイス開発

堀智さん
堀智さん

このような大変有難い賞をいただき光栄に思っております。研究を支えていただいた多くの方に感謝しています。自由に研究することを推奨していただいた指導教員の先生、活発に議論していただいた共同研究者の方々、困った時に助けてくれた研究室のメンバー、これまで電池の研究を切り拓いて来られた方々、皆様に心より感謝申し上げます。

 

実験が成功するまで、失敗を重ねて苦労をし、辛い時期もありました。研究のゴールまでの道のりは長いですが、成功した時の喜びを忘れずに、今後も努力を怠らずに、研究を次に繋いでいきます。

持田啓佑さん

受賞対象となった研究テーマ:オートファジーによる核と小胞体の分解の分子基盤と生理機能

持田啓佑さん
持田啓佑さん

この度は、日本学術振興会育志賞という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。本研究を進めるにあたってお世話になりました中戸川仁准教授と大隅良典栄誉教授、そして共同研究者をはじめ、研究活動を支えて下さった方々に深く感謝いたします。これまで私は、細胞内の分解システムであるオートファジーに関する研究に取り組んできました。本賞の受賞対象となった研究では、核と小胞体という2つの細胞小器官がオートファジーで選択的に分解される対象であることを初めて明らかにすることが出来ました。

修士課程から精力的に取り組んできた研究を、このように評価していただいたことを大変嬉しく思います。この受賞を励みに、今後も研究に精進してまいります。

科学教室「細胞分裂の観察」開催報告

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生命理工学院 基礎生物学教室は、3月25日に大岡山キャンパスにおいて、小学生から高校生までを対象とする科学教室「細胞分裂の観察~1個の細胞からどうやって個体が作られるの~」を開催しました。

  • 濱口名誉教授の説明を聞く

    濱口名誉教授の説明を聞く

  • 付き添いの父兄に観察内容を説明する参加者

    付き添いの父兄に観察内容を説明する参加者

私たち多細胞生物の体は、多くの細胞が1つにまとまって形作られています。その形成は、卵と精子が受精した1個の細胞である受精卵が分裂するところから始まります。今回の科学教室は、この細胞分裂という生命現象の始まりを顕微鏡を使って実際に目で見ることを目的として、東工大基金 理科教育振興支援の後援を受けて開催されました。

開催当日は、小学校3年生から高校1年生までの様々な年代が集まりました。まずは参加者全員で今回の題材であるウニの体の構造や生態を学んだ後、実験を開始します。本実験では、従来より、細胞分裂や発生の過程を研究するために多く使われてきた動物であるウニを使いました。

ウニの卵に受精をするところ
ウニの卵に受精をするところ

最初に顕微鏡の基本的な使い方を習得してもらうため、様々な発生段階の固定標本の観察を行いました。この段階でプレパラートの扱い方や顕微鏡の構造などを学んだ上で、標本の形を詳しく把握するため、各自スケッチや写真撮影を行いました。

続いて、ウニの生きた卵と精子を各自で受精させ、卵から受精膜があがり、その後1時間かけて初期の卵割(第1分裂)が行われる様子を観察することができました。

また、その後の発生を観察するため、開催の数日前から受精させた標本も用意しておきました。この標本を観察することで、卵割がさらに進んだ状態やプルテウス幼生など様々な段階の標本を確認しました。これは生きている標本なので、幼生が目の前で動き回る様子も観察できました。

さらにウニ以外にも、メダカやオタマジャクシを観察し、ウニとの違いも把握しました。希望者にはカエルのオタマジャクシを持ち帰ってもらい、その後の発生を自宅で観察できる機会を提供しました。

参加者の中には、過去に開催した別の科学教室に参加した方もいました。基礎生物学教室では、今後も小学生から高校生の期待に沿えるイベントの開催を予定しています。決まり次第、基礎生物学実験室のウェブサイトにてお知らせしますので、ふるってご参加ください。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

生命理工学院 基礎生物学教室

Email : 27uni@kisoseibutsu.bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2656

東工大インドネシア留学生協会がキャリアセミナーを開催

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2月11日、東工大インドネシア留学生協会は東工大大岡山キャンパスにてキャリアセミナーを開催しました。専門的なキャリアを目指す学生を対象に、日本で活躍するインドネシア人の専門家コミュニティの一つであるエンジニア・ヌサンタラ(Enijinia Nusantara, 以下EN)とのコラボレーションで実現しました。ENのメンバーと東工大の教員の講演に加え、ENのメンバーが執筆したインドネシア語の書籍『Monozukuri』(ものづくり)の完成を記念するイベントにもなりました。『Monozukuri』では、世界一流の製品を提供する日本企業の企業文化や建設的な組織行動の構築と活用を紹介しています。

記念集合写真
記念集合写真

本セミナーは、環境・社会理工学院 融合理工学系の佐藤由利子准教授による留学生および在日専門家の研究発表で始まり、日本と他国を結びつける架け橋としての役割における留学生や専門家の重要性を強調しました。また、佐藤准教授は母国に貢献することに対して強い情熱をもつ在日インドネシア人の専門家コミュニティメンバーに感謝の意を述べました。

佐藤由利子準教授による研究発表の様子
佐藤由利子準教授による研究発表の様子

熱心に発表を聞く参加者たち
熱心に発表を聞く参加者たち

『Monozukuri』
『Monozukuri』

次に、『Monozukuri』の編集長でENのメンバーでもある、環境・社会理工学院 融合理工学系のファリド・トリアワン特任講師から、ものづくりコンセプトが日本の製造業に与える影響を中心に書籍の概要を説明しました。ファリド・トリアワン特任講師は、このコンセプトによって日本製品の優れた品質とグローバル競争力を維持することができたと強調しました。さらに、日本とインドネシアで就労経験があるENのメンバーが、学生のキャリア開発に関するアドバイスを提供しました。セミナーを通して、東工大のインドネシア留学生がキャリア開発に対して熱心な様子がうかがえました。

ENは、学生のソフトスキルの向上と、学業および専門分野への興味を発展させるため、定期的にイベントを企画しています。若手インドネシア人留学生に研究論文を書くことを奨励する目的のコンテスト、東京工業大学インドネシアコミットメントアワード(TICA)は、その一例です。

『Monozukuri』を手にとる参加者達
『Monozukuri』を手にとる参加者達

博物館すずかけ台分館 ノーベル賞メダルレプリカの常設展示を開始

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博物館すずかけ台分館で、ノーベル賞メダルレプリカの常設展示が始まりました。

大隅良典栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞メダルに加え、本学卒業生の白川英樹博士が2000年にノーベル化学賞を受賞した際のメダルレプリカも展示しております。通常の博物館展示に加え、ノーベル賞受賞者2名の研究成果やその軌跡をたどることができます。

開館日・時間
平日(月~金) 12:00~16:45(16:30まで受付)
※2017年5月13日(土)、14日(日)の2日間にわたり開催される「すずかけ祭outer」にも開館いたします。
すずかけ祭での開館時間は10:00~16:00になります。
場所
休館日
土日祝日、年末年始、夏季休業期間

ノーベルメダルの公式レプリカ(®© The Nobel Foundation)
ノーベルメダルの公式レプリカ
(®© The Nobel Foundation)

メダル展示コーナーの様子
メダル展示コーナーの様子

詳しい日程については、以下の関連情報から博物館すずかけ台分館のウェブサイトをご確認ください。

また、大岡山キャンパスでも、2017年5月20日(土)に開催予定のホームカミングデイにおいて、百年記念館1階にて10:00~17:00の間に大隅栄誉教授のメダルレプリカを公開します。

ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授

大隅良典記念基金

「大隅良典記念基金」は、大隅栄誉教授がノーベル賞を受賞したことを機に、将来の日本を支える優秀な人材の育成などを目的として設立されました。学生の修学支援や若手研究者の研究支援などに活用します。

大隅良典記念基金|東工大への寄附

大学内に「島津製作所 精密機器分析室」を開設 ―設備共用化や若手研究支援を加速―

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概要

東京工業大学(以下、「東工大」という)は生命理工学院内に「島津製作所 精密機器分析室」(通称:アンテナショップ[用語1])を開設した。平成28年度の大学改革による同学院の創設を機に、島津製作所から寄贈されたライフサイエンス関連先端精密機器を中心に先端的な機器を備えた施設。先端研究の推進をはじめ、若手研究者や学生などの研究支援、国際共同研究や種々の企業との産学連携の推進に活用する。また、同社においては、新たに開発した機器等を利用した産学連携スペースとして本分析室を活用することを計画している。東工大としては学内に設置された最初の企業との連携による共用機器室になる。東工大は産学連携の一つのモデルとするとともに、全学的な設備共用化をさらに加速する。

なお、東工大の生命理工学院とバイオ研究基盤支援総合センターによる本分析室を核とした設備共用化の取組は、平成29年度の文部科学省先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)[用語2]に採択されている。

島津製作所 精密機器分析室

島津製作所 精密機器分析室

設備共用化による産学連携のモデルに

東工大は平成28年度に文部科学省先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)に3件採択され、全学的な設備共用化に取り組んでいる。さらには平成29年度に、生命理工学院とバイオ研究基盤支援総合センターによる「島津製作所 精密機器分析室」を核とした設備共用化の取組が、同事業に採択された。本分析室の設置と同事業の採択により、学内のライフサイエンス系機器の集約・共用化を推進するとともに、島津製作所製機器以外にも種々の大型機器類の共用化を進める。

対象機器・設備は事業終了後の資金運用も考慮し、稼働率だけでなく耐用状況、集約による費用効果も踏まえて選定した。それらの機器を9つの共用機器室に再配置し、必要なものは更新再生する。また研究室内に機器類を充実させることが困難な若手研究者などが実験台と汎用機器類を利用でき、実験スペースとして活用できる「共用実験室」も新たに設置する。

「共用実験室」は各研究室から共用設備として提供される汎用機器類を集約し、簡易に使用できる共用実験スペースとして提供する。複数の研究グループが使用するオープンスペースとすることで、交流とディスカッションが生まれ、新たな融合研究を育むことが期待される。実験台と汎用機器を移設し、平成29年度中頃から使用を開始する。

設備共用化の核となる「島津製作所 精密機器分析室」には平成29年度初めに島津製作所からメタボロミクス解析システム(液体クロマトグラフ質量分析計)、マイクロチップ電気泳動装置、ライフサイエンス分光光度計が寄贈された。さらに学院内の研究室に個別に整備されていた同社製機器や新たに学院で導入した同社製精密機器(フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、分光蛍光光度計、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高感度ガスクロマトグラフ、示差走査熱量計など)を平成29年度から本分析室で集約的に維持・管理することで管理運営を効率化する。

東工大では今後、本分析室を先端研究の推進をはじめ、若手研究者や学生などの研究支援、国際共同研究や種々の企業との産学連携の推進に活用することとしており、学術論文の増加や産学連携推進のための起爆剤としての効果が期待される。また、島津製作所では、本分析室を新たに開発した機器等を利用した産学連携スペースの拠点として活用することを計画している。

東工大としては学内に設置された最初の企業との連携による共用機器室になり、産学連携の一つのモデルとするとともに、全学的な設備共用化のさらなる加速を図る。

島津製作所より寄贈された「液体クロマトグラフ質量分析計」

島津製作所より寄贈された「液体クロマトグラフ質量分析計」

「島津製作所 精密機器分析室」設置の背景と経緯

東工大は平成19年に技術職員を集約して技術部を発足した際、技術部の扱う研究設備は全学共用とした。その結果、技術部は現在、約230台の全学共用の研究設備を管理・運営している。平成28年度の大学改革に伴い、「総合的な研究力を高めるための学内資源の効率的配分・運用と環境整備」を中期目標に掲げ、技術部を中心に全学における研究設備の共用化を進めると同時に、研究設備の充実と運用体制強化に取り組んでいる。

一方、生命理工学院は組織改編に伴い、生命理工学に関連した約70の研究分野を構築し、学士課程から大学院(修士課程・博士後期課程)までを一貫して教育する国内最大の生命系理工学教育研究組織として新たにスタートした。医薬品などの有機合成から、細胞、動物実験に至るまでの多彩な生命系学際研究の推進が可能となっている。こうした組織は、国内外で類を見ないものであり、産学連携も含めた様々な融合研究が展開されている。

また多彩な先端研究を行うための基盤環境として、現存する測定機器の効率的利用や先端研究人材の育成強化を加速するための基盤整備が急務となっていた。そこで、平成28年度に同学院内に研究企画推進会議を設け、学内の共同利用施設であるバイオ研究基盤支援総合センターと協力して「既存装置からの共用設備の選定と共用機器室の設置準備」を進めてきた。

用語説明

[用語1] アンテナショップ : 企業の有する高度な設備やノウハウ等を活用し、東京工業大学における研究の高度化を図ることを目的として設ける共同利用の実験室

[用語2] 先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム) : 平成28年度に文部科学省が開始した事業で、大学等の研究機関が所有する設備・機器を共用化することにより、産官学による研究開発成果を最大化することを目的として、各研究室等で分散管理されている研究設備・機器群を一つのマネジメントの下で運営する共用システムの導入を支援している。

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生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

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