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第10回サステナブル エンジニアリング テクノロジー「エネルギー、イノベーション、インフラ整備」開催報告

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工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院が開講する国際大学院プログラム「サステナブル エンジニアリング プログラム(Sustainable Engineering Program(SEP))」の最重要科目の1つとして2016年12月から2017年1月にかけて開講された「サステナブル エンジニアリング テクノロジー(Sustainable Engineering Technology (SET))」と、それに付随したサテライトセミナーが2月22日~23日にかけて1泊2日で行われました。今回のセミナーは2008年の第1回から数えて記念すべき10回目であり、世界17ヵ国からの履修学生45名、TA8名、先生方7名が参加しました。

巨大ダンプトラック前の集合写真

写真1. 巨大ダンプトラック前の集合写真

サステナブル エンジニアリング テクノロジーは、持続可能な開発に関して幅広く見識を有する世界で活躍できるエンジニアを養成することを目的としており、全6回の講義とサテライトセミナーで構成されています。6回の講義のうち、最初の4回は電力中央研究所(以下、CRIEPI)の専門家から、エネルギーと環境、需要面に関する省エネ技術や、クリーンな石炭火力発電技術、熱水力学の観点からみた原子炉システムの安全性に関して学びました。

また、今年度の授業テーマは、「Energy and Innovation for Infrastructure Development(エネルギーとインフラ開発に関する技術革新)」であることから、5、6回目では株式会社小松製作所(以下、コマツ)の研究者が、コマツのイノベーション・成長戦略に関する講義を行いました。これらの講義を踏まえた上でサテライトセミナーが行われ、本セミナーでは、1日目にコマツ茨城工場の見学を、2日目に授業テーマに関するグループワークの成果発表会を行いました。

コマツ茨城工場を訪問した際には、ダンプトラック、ホイルローダーといった日頃見ることのない大型重機の生産ラインを実際に見学することができ、非常に貴重な機会となりました。少人数で効率的に生産できるように上手く分業・自動化がなされているとともに、発注者ごとの需要に対応できるよう、人の手で行う作業と機械で行われる作業のバランスを上手くとっている印象を強く受けました。

  • コマツ茨城工場見学前の説明

    写真2. コマツ茨城工場見学前の説明

  • セミナー初日、各グループ夜遅くまで発表の準備を行った

    写真3. 発表後のQ&Aセッション

コマツ茨城工場の見学後にセミナー用の宿泊施設に移動し、夕食時には17ヵ国からの参加者が自国を紹介する時間が設けられました。各国の学生がそれぞれの国の魅力や文化を紹介し、改めて参加メンバーの国際性、多様性を感じました。夕食後には、翌日のグループワークの成果発表に向けて、各班夜遅くまで準備・最終調整を行っていました。

グループワークでは、国籍や専門分野の異なる学生5~6名とTA1名で構成されるグループが、今年度の授業テーマであるエネルギーとインフラ開発に関する技術革新に関する課題に取り組みました。

セミナー2日目には、朝からグループワークの成果発表会が行われました。全8グループがそれぞれのテーマ(下表)について発表したのですが、顧客とコンサルタント間での対話形式の寸劇として発表を行ったグループもあれば、既存のアイデアにとらわれず斬新なアイデアを提案・検証するグループもあり、いずれも特有の面白さのある発表でした。各グループ15分間の発表後には、10分間の質疑応答が行われましたが、どのグループの発表でも、様々な視点から鋭い質問があがり、活発な議論が行われました。

発表後のQ&Aセッション

写真4. セミナー初日、各グループ夜遅くまで発表の準備を行った

グループ発表のタイトル

グループ
タイトル
1
スマート都市のための廃棄物マネジメント(Novel Municipal Solid Waste Treatment Management - Case of Megacities)
2
ハウスリボーン - ビル再生のための新提案(HOUSE REBORN - New Solutions to Building Reconstruction)
3
スマートインフラストラクチャーとIoT(IoT for Smart Infrastructure)
4
持続可能社会に貢献するスマートステーション(Smart Train Station as Part of Sustainable Society)
5
スマート交通システム(Smart Transportation System)
6
未来家屋 ― 新たなライフスタイルと家(House of the Future - A new style of house and life-style -)
7
日本の環境に適したスマートホーム(Smart Home Construction for Japanese Environment)
8
グリーンコンストラクションとその評価基準(Setting the criteria for evaluating green construction sites)

発表会の最後には、教員とTAの投票により、優秀発表賞として3グループと、活発に質問を行った3名が選定・表彰され教員から講評を頂き、サテライトセミナーは幕を閉じました。

セミナー会場でのグループ写真

写真5. セミナー会場でのグループ写真

参加学生のコメント

澤村 新之介さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 修士課程1年)

日本にいながら、様々な国籍を持つメンバー、また専門の異なるメンバーと一緒に何かを行うということはそうないため、本講義での多様な国籍・専門の学生とのグループワークは、非常に刺激的でした。困難に直面する場面も多くありましたが、その中でも各メンバーのユニークさ・得意なことを上手く活かし掛け合わせて、何とか1つの発表として完成できたことは、とても良い経験だったと思います。このような貴重な機会を提供してくださった、電力中央研究所およびコマツの非常勤講師の先生方、見学会でお世話になりましたコマツ茨城工場の方々、本学の先生方に、感謝します。

お問い合わせ先

竹村次朗 准教授

Email:jtakemura@cv.titech.ac.jp


東京工業大学とNEC、AIで悪条件下の視認性を格段に向上する「マルチモーダル画像融合技術」を共同開発

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東京工業大学とNEC、AIで悪条件下の視認性を格段に向上する「マルチモーダル画像融合技術」を共同開発
―可視光と非可視光の画像を自動で合成―

国立大学法人東京工業大学 工学院 奥富正敏教授、田中正行特定准教授らの研究グループ(以下、東京工業大学)とNECは、一般カメラで撮影した可視光画像と、熱をとらえるサーモカメラなどで撮影した非可視光画像を、AIを用いて自動的かつ効果的に合成し、それぞれの画像単独では捉えにくかった対象物・状況の視認性を格段に高める「マルチモーダル※1画像融合技術」を共同開発しました。

本技術により、瞬時の視認が必要となる様々な分野で、悪条件下でも正しい状況判断が可能になります。例えば、夜間や濃霧などの悪天候下でも活用可能な施設監視、対向車の眩しいヘッドライトや暗闇による死角があっても運用できる自動運転支援、建物のひび割れなど表面だけでなく内部の異常まで検査可能にするインフラ点検などです。

従来、異なる種類のカメラの画像を合成するには、専門家による手動での複雑な変換作業が必要でした。本技術は、それぞれのカメラから得られた画像をAIによって、効果的かつ自動的に合成することでこの手作業を不要にします。さらに、可視光画像と非可視光画像のそれぞれの長所を積極的に活用することで、従来は視覚化が困難だったシーンでも高い視認性が得られます。

東京工業大学とNECは、今後も産学連携の仕組みを通じて、さまざまな社会インフラを安全・安心に運用するセーフティ事業の鍵となる画像処理ならびにAI関連技術の研究開発を進めていきます。

背景

近年、画像センサの技術的な進化や低コスト化を背景に、熱を捉えるサーモカメラや物体の内部を捉えるX線・テラヘルツ波・ミリ波のカメラなどの非可視光カメラを活用し、夜間や濃霧などの悪天候、または逆光や遮蔽などの悪条件下でも、監視や診断を行う用途が広まりつつあります。しかし、これら非可視光カメラは、可視光に比べ解像度や画質が低く、視認性が悪いため、可視光カメラを併設し、両方の画像を見比べながら監視や診断を行う必要があり、素早く正確に対象物や状況を判断することが困難でした。この解決には、二種類の画像を一つに合成することが有効な手段のひとつですが、従来は、カメラの種類や撮影環境に精通した専門家が手動により、それぞれの画像から合成に適した場所を抽出し、白とびや黒潰れ、ノイズ強調などの画像破たんが生じないように注意を払いながら、複雑な画像合成作業を行う必要がありました。さらに、非可視光画像に含まれる、異常や危険物の有無を判断する手がかりとなるわずかな特徴が、合成により失われる点も課題でした。

東京工業大学とNECは、専門家の変換ノウハウを学習したAIを用いて、可視光カメラと非可視光カメラの画像を自動的かつ効果的に統合し、対象物・状況の視認性を格段に高め、劣悪な環境でも素早く異常や危険物の有無の判断を可能とする「マルチモーダル画像融合技術」を共同開発しました。

(a)可視画像
(a)可視画像

(b)遠赤外画像
(b)遠赤外画像

(c)単純な合成
(c)単純な合成

(d)今回の独自手法
(d)今回の独自手法

図1. 本技術における適用例※2

新技術の特長

  • 複数の画像から視認性が高い部分をAIが自動的に選択し、かつ非可視光画像に含まれるわずかな特徴を強調しながら合成することで、従来の限界を打ち破る高い視認性を実現
  • サーモカメラやテラヘルツカメラといったカメラの種類や、環境の特性(明るさ、光線の方向、障害物の有無など)に応じて、AIが画像内の各部分の視認性の度合いを評価、各画像から最適な領域のみを自動的に抽出
  • さらに、非可視カメラの画像中の、異常や危険物などに関するわずかな特徴をAIが解析し、白とびや黒潰れなどの画像破たんが生じない、適切な強調の度合いを判断しながら、従来にない高い視認性を持つマルチモーダル(可視―非可視)な融合画像を自動的に生成

東京工業大学とNECは、本技術を6月7日(水)から9日(金)まで、パシフィコ横浜(横浜市西区)にて開催される「第23回画像センシングシンポジウム 2017(主催:画像センシング技術研究会)」において、6月7日に発表する予定です。

※1
マルチモーダル: 複数の様式、モード。本発表では、可視カメラの画像と赤外線カメラのような非可視カメラの画像など、異なる画像様式のこと。
※2
革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジにおける悪環境模擬装置について許諾を得て使用。

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

NEC 研究企画本部 研究プロモーショングループ

東京工業大学 工学院 システム制御系
教授 奥富正敏

E-mail : mxo@ctrl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3472

取材申し込み先

NEC コーポレートコミュニケーション部
中村・増田

E-mail : a-nakamura@dg.jp.nec.com
Tel : 03-3798-6511

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

本学発の「温度無依存水晶振動子」がIEEEマイルストーンに認定

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古賀逸策(1899~1982)
古賀逸策(1899~1982)

本学で生まれた水晶振動子は、小型化されつつ今やあらゆる電子機器に組み込まれ、ディジタル社会を支えています。古賀逸策名誉教授(当時、助教授)らの努力が実り、温度に左右されない水晶振動子が実現したのは今から85年程前の1932~33年にかけてでした。この度、この「温度無依存水晶振動子」が、社会や産業に多大な貢献をした歴史的な業績として、IEEEマイルストーン(Milestone)に認定され、記念銘板(プラーク)が贈呈されました。IEEE(アイ・トリプル・イー: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)は、米国に本部を持つ電気電子分野の世界最大の専門家組織で、IEEEマイルストーンは、IEEEが電気・電子技術やその関連分野における歴史的偉業に対して認定する賞です。認定されるためには、25年以上に渡って世の中で高く評価を受けてきたという実績が必要です。本学にとっては、フェライトに続き2つ目のマイルストーンとなります。これを記念して、3月6日に記念式典と記念講演会、4月21日に除幕式が行われました。

古賀グループの業績概要

認定された業績

水晶振動子の開発につながる圧電効果の発見は、キュリー兄弟(弟は放射線の研究でキュリー夫妻としても有名)らによってなされましたが、当時使用されていた水晶板では、電圧をかけた時の振動数は、温度に大きく依存したために、長い間、応用の障壁となっていました。この壁を取り除き、今日広く使用されている水晶デバイスの開発を可能にしたのが古賀グループで、ある特定の角度で水晶の結晶から水晶板を切り出すと温度に依存しない振動子が得られることを、理論的アプローチによって予測し、実験で確認しました(1932~1933)。キュリー兄弟の研究から半世紀近くを経て、ようやく恒温槽を必要としない水晶振動子が誕生し、広範な製品への応用が可能となりました。

社会や産業への貢献

水晶と水晶デバイス搭載製品(出典:QIAJ,「水晶デバイスの解説と応用」)
水晶と水晶デバイス搭載製品(出典:QIAJ,「水晶デバイスの解説と応用」)

水晶振動子は、今日では時計をはじめ、スマートフォンやパソコンなどの情報通信機器、薄型テレビやブルーレイディスクなどのオーディオ機器、カーエレクトロニクスなどの電子機器、移動体通信・光通信網などのインフラシステムなどに組み込まれ、私たちの生活になくてはならない電子部品としてディジタル情報社会を支えています。

IEEE マイルストーン記念式典

3月6日、大岡山キャンパス百年記念館3階のフェライト記念会議室において、IEEEマイルストーン記念式典が行われ、本学、IEEE、古賀名誉教授の流れをくむ方々、及び水晶デバイス工業界の方々があわせて74名出席されました。

贈呈式では、IEEEのカレン・バートルソン会長より、IEEEマイルストーン記念銘板が三島良直学長に贈呈されました。

  • Bartleson会長からPlaqueを受け取る三島学長

    Bartleson会長からPlaqueを受け取る三島学長

  • 記念銘板

    記念銘板

引き続き、同館4階ラウンジにて開催された記念祝賀会では、IEEE Japan Council(日本支部) Chairの津田俊隆氏、文部科学省研究振興局長の関靖直氏をはじめ、日本水晶デバイス工業会会長・日本電波工業株式会社代表取締役会長兼社長の竹内敏晃氏、KDDI株式会社代表取締役社長の田中孝司氏(代読:理事・技術開発本部長の宇佐見正士氏)よりそれぞれ祝辞が述べられた後、蔵前工業会副理事長・NHK元会長の橋本元一氏の乾杯のご発声により、祝賀会が開催され、参加者は和やかに歓談しました。

記念講演会「水晶振動子のIEEEマイルストーンと情報通信の発展」

講演会の様子
講演会の様子

記念講演会は、大岡山西講義棟1(レクチャーシアター)で行われました。最初に、IEEE Japan Council History Committee Chairの白川功氏によって「IEEE Milestoneの概要」が説明された後、本学名誉教授の伊賀健一前学長が「古賀逸策の水晶振動子とマイルストーン」と題し、水晶振動子開発の歴史と、古賀グループが如何にしてゼロ温度係数の水晶振動子に辿り着いたかを解説しました。休憩の後、本学栄誉教授の末松安晴元学長が「水晶から光通信まで―東工大における通信の研究」と題し、古賀名誉教授の思い出やその流れをくむ本学の研究業績、さらには末松グループの大容量長距離光ファイバ通信用の半導体レーザの研究や大岡山‐長津田キャンパス間情報伝達(光通信)システム設置のいきさつなどを紹介しました。次に、日本電気株式会社代表取締役会長の遠藤信博氏が「AI・IoT・ビッグデータ、豊かな人間社会に向けて」と題して、情報通信の最先端技術について、豊富な事例を交えて、今後、AIによって“仕事”や“社会”のあり様は大きく変化するという趣旨の講演を行いました。最後に、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員の久間和生氏が「我が国の科学技術イノベーション戦略」と題して、古賀グループの仕事をイノベーションの観点から、ディジタル革命の原点・立役者であると分析したうえで、現在久間氏が国家プロジェクトとして取り組んでいる「超スマート社会」(Society 5.0)の実現に向けた我が国の技術開発の取り組みについて紹介しました。講演終了後には質疑応答も活発に行われ、出席者202名のもと盛況の内に終了となりました。

記念銘板の設置場所と除幕式

贈呈された記念銘板は、大岡山キャンパス百年記念館2階の206号室(電気・光通信展示室)及びすずかけ台キャンパスに各1つずつ展示されています。すずかけ台では通学路の脇に台座付きで設置されています。水晶振動子の研究をしていた頃の古賀逸策研究室(電気工学科)は大岡山の本館の時計台(5~6階)にありました。後に古賀名誉教授は電気科学研究所(旧精密工学研究所の前身の一つ)を兼任し、そこのスタッフだった福与人八・大浦宣徳博士らと共に水晶振動子の研究を発展させました。昨年度の改組で、精密工学研究所は未来産業技術研究所に生まれ変わりましたが、「産業の塩」といわれるほど重要な水晶振動子の開発舞台だったことを記念して、研究所の現在の所在地にも銘板が設置されることになり、4月21日に除幕式が行われました。

  • 除幕式を終えた後の記念写真

    除幕式を終えた後の記念写真

  • 古賀逸策研究室があった本館の時計塔

    古賀逸策研究室があった本館の時計塔

取材申し込み先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

科学教室「棘皮動物の不思議な世界2017」開催報告

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生命理工学院 基礎生物学教室は、春休み期間中の3月28日に、大岡山キャンパスにおいて中学生以上を対象に、科学教室「棘皮(きょくひ)動物の不思議な世界2017」を開催しました。本イベントは、東工大基金 理科教育振興支援の後援を受けて行いました。

水槽内でヒトデの起き直りを観察する参加者(手前)、ウニを手にする参加者(奥)
水槽内でヒトデの起き直りを観察する参加者(手前)、ウニを手にする参加者(奥)

棘皮動物とはウニ、ヒトデ、ナマコの仲間で、脊椎動物に比較的近縁でありながら5角形をした不思議な動物です。科学教室では参加者に、ウニ、ヒトデ、ナマコに実際に触れてもらいながら、棘皮動物の変わった体制やデザインを学んでもらいました。

主な観察と実験の内容は以下の通りです。

  • ヒトデとウニの起き直り行動の観察
    ...イトマキヒトデとムラサキウニを逆さまにひっくり返し、起き直り行動が決まったパターンで起こるかどうか観察しました。
  • 生きたニセクロナマコの管足、触手の観察
    ...棘皮動物独特の水管系という器官系の器官である管足や触手を観察しました。
  • ウニの裸殻とアリストテレスのランタン(咀嚼器)の観察
    ...ウニの殻やアリストテレスのランタンが5放射相称をなすことを確かめました。
  • ウニの叉棘を使った観察と実験
    ...叉棘とは、一部の棘皮動物に見られる棘皮動物独特の器官です。生きたムラサキウニの殻を実体顕微鏡で観察し、叉棘に機械的刺激を与えたときの反応も観察しました。

参加者には生きた棘皮動物の観察や実験を行うことで、楽しみながら棘皮動物の変わった体制やその独特の器官などについて理解を深めていただきました。中にはウニのアリストテレスのランタンを持ち帰る参加者もいました。

今後も、基礎生物学教室では地域の方々、特に小・中・高校生向けの科学教室の開催を予定しています。次回のイベントをどうぞ楽しみにお待ちください。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

生命理工学院基礎生物学教室

Email : 28uni@kisoseibutsu.bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2656

トポロジカル絶縁体を強磁性にする新たな方法を発見 ―量子異常ホール効果を利用したデバイス開発へ進展―

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要点

  • トポロジカル絶縁体に強磁性層を埋め込むことに成功
  • 室温でも強磁性状態の維持を実証
  • 高温での量子異常ホール効果の実現、デバイス開発に新たな道

概要

東京工業大学 理学院 物理学系の平原徹准教授、東京大学 物性研究所の白澤徹郎助教(現 産業技術総合研究所主任研究員)、同大大学院理学系研究科の長谷川修司教授、分子科学研究所の田中清尚准教授、木村真一准教授(現 大阪大学教授)、横山利彦教授、広島大学 放射光科学研究センターの奥田太一教授、ロシア・スペインの理論グループらは共同で、トポロジカル絶縁体の表面近傍に規則的な強磁性層を埋め込むことに成功し、さらに室温であっても強磁性状態であることを実証した。

トポロジカル絶縁体とは、物質内部は絶縁体で電流を通さないが、表面には金属状態が存在し、電流を流すことのできる新しい絶縁体である。このトポロジカル絶縁体にさらに磁石の性質である強磁性[用語1]を導入することで、輸送特性として量子異常ホール効果[用語2]が実現する。しかしこれまでのやり方では、量子異常ホール効果が実際に観測される温度が、最高でも-271 ℃と低い温度にとどまっていた。

今回、トポロジカル絶縁体であるBi2Se3薄膜上にさらにSeと磁性元素Mnを蒸着したところ、表面近傍にMnとSeが潜り込み、MnBi2Se4/Bi2Se3という構造が形成された。そして電気的および磁化特性測定によりこの物質が室温でも強磁性状態であることが明らかになった。この成果によって量子異常ホール効果がこれまでより高温で実現され、デバイス応用につながることが期待できる。

本成果は、2017年5月26日に、米国化学会誌「Nano Letters(ナノレターズ)」にJust Acceptedでオンライン掲載された。

研究の背景

物質をトポロジー[用語3]によって分類する考え方は2016年のノーベル物理学賞の受賞対象であり、現在盛んに研究されている。その代表例がトポロジカル絶縁体であり、物質内部では絶縁体で電流を通さないが、表面には金属状態が存在し、電流を流すことのできる新しい絶縁体である。その表面状態はトポロジーによって保護された、質量のないスピン偏極ディラック電子[用語4]になっている(図1(a))。このトポロジカル絶縁体に強磁性の性質を導入すると、金属的であった表面状態にギャップが開き、質量のあるスピン偏極ディラック電子へと変化する(図1(b))。これは新たなトポロジカル相であり、電子の輸送特性を測定すると量子異常ホール効果が観測される。

スピン偏極した質量のないディラック電子(a)およびギャップの開いたスピン偏極ディラック電子(b)。赤と青は異なるスピンの向きを持っていることを表している。

図1. スピン偏極した質量のないディラック電子(a)およびギャップの開いたスピン偏極ディラック電子(b)。
赤と青は異なるスピンの向きを持っていることを表している。

これまで強磁性トポロジカル絶縁体は、トポロジカル絶縁体を成長させる際に磁性不純物を無秩序に添加する方法で作製されてきた(図2(a))。しかしこの方法では試料の不均一性によりディラックコーンのギャップが不均一で小さくなり、また強磁性の性質を示す温度は室温以下に限られる。これらの理由により、実際に量子異常ホール効果が観測される温度は最高でも-271 ℃と非常に低い温度にとどまっていた。

これまで作製・研究されてきた磁性トポロジカル絶縁体(a)および本研究で発見された磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造。

図2. これまで作製・研究されてきた磁性トポロジカル絶縁体(a)および本研究で発見された磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造。

研究成果

今回、東京工業大学、東京大学、分子科学研究所、広島大学の研究グループは高品質のビスマスセレン(Bi2Se3)薄膜を作成し、その上にさらにSeと磁性元素マンガン(Mn)を蒸着した。電子回折を用いた構造解析の結果、上に付けたはずのMnとSeがBi2Se3の表面近傍に潜り込みMnBi2Se4/Bi2Se3という秩序だったヘテロ構造[用語5]が形成されることが分かった(図2(b)、図3(a))。分子科学研究所の極端紫外光研究施設UVSORと広島大学放射光科学研究センターHiSORでスピンおよび角度分解光電子分光[用語6]により、この物質の電気的特性を測定した。その結果、このヘテロ構造の表面状態は85 meVの均一なギャップが開いた、スピン偏極したディラック電子になっていた(図3(b))。またUVSORにおけるX線磁気円二色性(XMCD)[用語7]および超伝導量子磁束干渉計(SQUID)[用語8]を用いた磁気特性測定により、このヘテロ構造が室温まで強磁性状態を維持することも明らかになった。これらの結果はロシア・スペインのグループが行った第一原理計算によっても支持された。

構造解析によって決定されたヘテロ構造の原子構造(a)およびその表面ディラック電子のバンド構造。

図3. 構造解析によって決定されたヘテロ構造の原子構造(a)およびその表面ディラック電子のバンド構造。

今後の展望

今回の研究は、トポロジカル絶縁体に強磁性の性質を付与する新たな方法を発見したものである。この方法は、磁性元素が無秩序に不純物として添加されているのではなく、秩序だった強磁性層として表面近傍に埋め込まれている点で従来のやり方と大きく異なる。その上、磁性元素の分布の均一性と強磁性を示す温度という点で大きな利点がある。このヘテロ構造を用いればこれまで-271 ℃までしか実現されていない量子異常ホール効果をより高温で実現できる可能性がある。さらに、そのトポロジカルな性質を生かした極薄ナノデバイス開発の応用研究が加速することが期待できる。

用語説明

[用語1] 強磁性 : 隣り合うスピンが同一の方向を向いて整列し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質の磁性を指す。物質は外部磁場が無くても自発磁化を持つことができ、いわゆる磁石の性質のことである。

[用語2] 量子異常ホール効果 : 磁場中を電子が動くと、その動きが曲げられる。固体物質ではこの現象をホール効果と呼び、電流にも磁場にも垂直な方向に発生する電圧をホール電圧と言う。物質が強磁性体の場合、磁性体自身が持っている磁化が外部磁場の代わりになることで無磁場でもホール効果が発生する。この現象を異常ホール効果と呼ぶ。また、異常ホール効果によって生じる抵抗が量子化抵抗値に等しくなる現象を、量子異常ホール効果と呼ぶ。この状態では無散逸に電流が流れるので省エネデバイスに応用が期待されている。

[用語3] トポロジー : トポロジーとは、数学の一分野であり、何らかの形を連続変形(伸ばしたり曲げたりすることはするが切ったり貼ったりはしないこと)しても保たれる性質に焦点を当てたものである。例えば、ドーナツとマグカップは穴が一つあるので連続変形によって移り変わることができ同じトポロジーを持つといえる。一方、湯呑み茶碗には穴が開いておらず、異なるトポロジー状態である。

[用語4] ディラック電子 : 通常の電子と異なり、英国の物理学者ディラックが1928年に発表した相対論的量子力学に従う電子のこと。トポロジカル絶縁体の表面ではさらにこのディラック電子がスピン偏極している。

[用語5] ヘテロ構造 : 組成元素が異なる2つの固体を接合して形成される構造のこと。

[用語6] スピンおよび角度分解光電子分光 : 固体に光を照射すると物質の表面から電子が放出される。放出された電子は光電子と呼ばれ、その光電子のエネルギーや運動量、スピン状態を測定すると、物質がどのような電子・スピン状態をとっているかが分かる。

[用語7] X線磁気円二色性(XMCD) : 物質に左円偏光と右円偏光の2つの異なる偏光のX線を照射したときの、吸収スペクトルの差スペクトルのこと。XMCDスペクトルを解析することで、原子のスピンや軌道磁気モーメントなどの磁気的特性がわかる。

[用語8] 超伝導量子磁束干渉計(SQUID) : 弱く結合した2つの超伝導体に流れる電流を利用した、極めて弱い磁場の検出に用いられる非常に感度の高い磁気センサーの一種。

論文情報

掲載誌 :
Nano Letters
論文タイトル :
Large-Gap Magnetic Topological Heterostructure Formed by Subsurface Incorporation of a Ferromagnetic Layer
著者 :
Toru Hirahara, Sergey V. Eremeev, Tetsuroh Shirasawa, Yuma Okuyama, Takayuki Kubo, Ryosuke Nakanishi, Ryota Akiyama, Akari Takayama, Tetsuya Hajiri, Shin-ichiro Ideta, Masaharu Matsunami, Kazuki Sumida, Koji Miyamoto, Yasumasa Takagi, Kiyohisa Tanaka, Taichi Okuda, Toshihiko Yokoyama, Shin-ichi Kimura, Shuji Hasegawa, and Evgueni V. Chulkov
DOI :

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 物理学系

平原徹 准教授

E-mail : hirahara@phys.titech.ac.jp
Tel / Fax : 03-5734-2365

東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻

長谷川修司 教授

E-mail : shuji@surface.phys.s.u-tokyo.ac.jp
Tel / Fax : 03-5841-4167

分子科学研究所 極端紫外光研究施設

田中清尚 准教授

E-mail : k-tanaka@ims.ac.jp
Tel : 0564-55-7202 / Fax : 0564-54-7079

分子科学研究所 物質分子科学研究領域

横山利彦 教授

E-mail : yokoyama@ims.ac.jp
Tel : 0564-54-7345 / Fax : 0564-55-7448

広島大学 放射光科学研究センター

奥田太一 教授

E-mail : okudat@hiroshima-u.ac.jp
Tel : 082-424-6996 / Fax : 982-424-6294

取材申込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京大学 物性研究所 広報室

E-mail : press@issp.u-tokyo.ac.jp
Tel : 04-7136-3207

東京大学大学院 理学系研究科・理学部

武田加奈子 特任専門職員、谷合純子 学術支援職員、大越慎一 教授・広報室長

E-mail : kouhou@adm.s.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-0654

分子科学研究所 広報

E-mail : kouhou@ims.ac.jp
Tel / Fax : 0564-55-7262

広島大学 財務・総務室広報部 広報グループ

E-mail : koho@office.hiroshima-u.ac.jp
Tel : 082-424-6762 / Fax : 082-424-6040

本学学生監督のSF映画予告編が「未完成映画予告編大賞」で審査員特別賞を受賞

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3月30日、株式会社オフィスクレッシェンドが主催する「未完成映画予告編大賞」の最終結果の発表が行われ、生命理工学院 生命理工学系の池田大輝さん(修士課程1年)が監督を務めたSF映画「カヅノ」が審査員特別賞を受賞しました。

「カヅノ」のワンシーン

「カヅノ」のワンシーン

「未完成映画予告編大賞」は、応募者が自ら考案した脚本をもとに映画の予告編映像(3分以内)を制作するという趣旨で、今年から始まった映画コンテストです。審査員には堤幸彦監督、大根仁監督などの日本映画界を代表する方々が名を連ねました。本コンテストには285もの作品が集まり、プロも多く参加する中で「カヅノ」は最終審査まで上り詰め、審査員特別賞を受賞しました。

「カヅノ」のワンシーン

「カヅノ」のワンシーン

本作の脚本は、池田さんの古くからの友人で、現在、東京農工大学大学院でロボットの研究をしている三浦祐太さんが執筆しました。主演は慶應義塾大学大学院で都市設計の研究をしている高崎真希さんです。物語では理工系大学に通うロボット好きの女子大生が人工知能に恋をする様子が描かれ、人と機械の深淵に迫るストーリーが展開されます。撮影の一部は東工大でも行われ、予告編の中でもそのシーンが何度か登場しています。

「カヅノ」というタイトルは秋田県鹿角(かづの)市に由来しており、池田さん、三浦さんの地元でもある秋田県をテーマにしたいという思いが込められているそうです。実際の撮影も大部分が秋田県で行われました。

作品は「未完成映画予告編大賞」公式サイトからご覧いただけます。
左から池田大輝さん(監督)、高崎真希さん(主演)、三浦祐太さん(脚本)

左から池田大輝さん(監督)、高崎真希さん(主演)、三浦祐太さん(脚本)

審査員特別賞 受賞作品「カヅノ」

池田大輝さんのコメント

優勝できなかったのは非常に悔しいですが、多くの方々に協力いただいたおかげで素敵な作品に仕上げることができ、また光栄にも審査員特別賞をいただきました。改めて関わってくださった皆様に心から感謝します。本コンテストは第2回が開催されるということなので、今回の反省を活かしつつ、次こそは優勝を目指してさらに良いものをつくっていきたいと思います。

お問い合わせ先

池田大輝

E-mail : mail@daiki.pink

新開発の光触媒でCO2を高効率に再資源化―緑色植物の光合成を人工系で実現―

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要点

  • 資源的制約の無い炭素と窒素を主要元素とした新しい光触媒を開発
  • 太陽光の主成分をエネルギー源として、CO2を有用化学物質へと変換
  • 世界最高の触媒耐久性とCO2還元選択率を達成

概要

東京工業大学 理学院 化学系の前田和彦准教授、石谷治教授、栗木亮大学院生・日本学術振興会特別研究員らの研究グループは、ルテニウム(Ru)複核錯体と窒化炭素からなる融合光触媒が、可視光照射下での二酸化炭素(CO2)のギ酸[用語1]への還元的変換反応に対して特異的に高い活性を示すことを発見した。実験条件を最適化した結果、これまでに報告されていたものよりも触媒耐久性を示すターンオーバー数[用語2]は3倍の2000にまで向上し、CO2還元の選択率[用語3]も75%から最大で99%まで大幅に改善された。

これにより、資源的制約とは無縁な炭素と窒素からなる材料を使い、かつ太陽光をエネルギー源として、地球温暖化の主因となっているCO2を常温常圧下で有用な化学物質に変換できる可能性が見えてきた。

研究成果は4月7日にドイツ化学会誌『Angewandte Chemie, International Edition (アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション)』オンライン版に掲載された。

研究の背景

金属錯体や半導体を光触媒としたCO2還元は、ギ酸や一酸化炭素といった有用物質を常温常圧下で製造できる反応として注目され、30年以上も前から国内外で精力的に研究されている。

前田准教授らはこれまでに、有機高分子半導体である窒化炭素(C3N4)とRu錯体を融合したハイブリッド材料を光触媒とすることで、太陽光の主成分である可視光照射下、常温常圧下でCO2を還元することに成功していた。だが、耐久性と選択率の向上が課題となっていた。特に、この複合光触媒の高効率化には、C3N4からRu錯体への電子(e)移動の促進が必要となっていた。

研究成果

前田准教授らは、尿素を熱分解して得られるシート状C3N4が、ホスフォン酸基を吸着部位としてもつRu錯体を強固に吸着できることを発見した。これにより、C3N4からRu錯体への効率的な電子移動が実現し、その結果としてCO2光還元反応の高効率化に成功した(図1)。

シート状C3N4とRu複核錯体を組み合わせた複合光触媒によるCO2還元

図1. シート状C3N4とRu複核錯体を組み合わせた複合光触媒によるCO2還元

光触媒の合成条件、およびCO2光還元の反応条件を詳しく検討した結果、CO2溶解度の低い水中でも高い光触媒活性が得られることがわかった。CO2を還元してギ酸を生成する本反応のターンオーバー数は従来の660から2090に向上し、75%にとどまっていたCO2還元の選択率は最大で99%に達した。これらの値は、これまでに報告されてきた類似光触媒系を大きく超え、世界最高値となった。

今後の展開

今回の研究成果は、化学結合形成に利用可能な表面官能基をほとんどもたないC3N4の表面が、特別な化学処理を経ることなく有用な化学反応系構築に利用できることを示している。本反応で得られるギ酸は、水素を貯蔵・輸送するエネルギーキャリアとして有用だが、組み合わせる錯体を変えることで、化学燃料として価値の高い一酸化炭素を高い選択率で得ることも可能になる。また、C3N4は炭素や窒素を含む安価で単純な有機物から容易に合成できる。主構成元素である炭素や窒素以外の元素を取り込むことで、よりエネルギーの小さい可視光の有効利用も可能になり、ひいては太陽光エネルギーの有効利用につながると期待される。

付記

本研究は本学技術部すずかけ台分析部門の魯大凌技術職員、大阪市立大学複合先端研究機構の吉田朋子教授、名古屋大学未来材料・システム研究所の八木伸也教授のグループとの共同で行った。

本研究の一部は、日本学術振興会・科学研究費補助金・若手研究A「窒化炭素系半導体と金属錯体を融合した二酸化炭素固定化光触媒の創出」、新学術領域研究「複合アニオン化合物の新規化学物理機能の創出」(代表:前田和彦東京工業大学准教授)、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(CREST)「太陽光の化学エネルギーへの変換を可能にする分子技術の確立」(代表:石谷治東京工業大学教授)の助成を受けて行った。

用語説明

[用語1] ギ酸 : 分子式HCOOHで表されるもっとも単純なカルボン酸。適当な触媒を用いれば、水素(H2)とCO2に分解できるため、貯蔵や輸送に困難を伴う水素のキャリア(エネルギーキャリア)として注目されている。

[用語2] ターンオーバー数 : 触媒反応の活性点の数に対する生成物分子の数の割合。活性点が10個あり、生成物分子が100個生じた場合、ターンオーバー数は10となる。

[用語3] 選択率 : 化学反応におけるすべての生成物量に対する目的生成物量の割合。

論文情報

掲載誌 :
Angewandte Chemie, International Edition
論文タイトル :
Robust Binding between Carbon Nitride Nanosheets and a Binuclear Ruthenium(II) Complex Enabling Durable, Selective CO2 Reduction under Visible Light in Aqueous Solution
著者 :
Ryo Kuriki, Muneaki Yamamoto, Kimitaka Higuchi, Yuta Yamamoto,
Masato Akatsuka, Dr. Daling Lu, Prof. Dr. Shinya Yagi, Prof. Dr. Tomoko Yoshida, Prof. Dr. Osamu Ishitani, Prof. Dr. Kazuhiko Maeda
DOI :

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系 前田和彦 准教授

E-mail : maedak@chem.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2239 / Fax : 03-5734-2284

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

中村昌允特任教授が第33回北川学術賞を受賞

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5月26日、環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程の中村昌允特任教授が、特定非営利活動法人安全工学会より、第33回(2017年度)北川学術賞を授与されました。

賞状を持った中村特任教授

賞状を持った中村特任教授

記念品のトロフィー
記念品のトロフィー

北川学術賞は、安全分野の学術貢献者を表彰するために1984年から設けられた賞で、毎年1~2名が受賞しています。

中村特任教授は、化学プラントの事故をはじめ、多くの事故における「技術者の判断と行動」「事故の根本原因とその是正策」について研究をまとめ、産業界の安全に寄与したことが評価されました。昨今続いた化学プラント重大事故の事故調査委員など安全に関する種々の委員会に参画すると共に、幅広い産業分野の安全人材の育成活動に従事しています。

また、中村特任教授は、企業在職時に新規開発技術のプラントの設計者として爆発事故を経験しており、事故当事者が「なぜ、そのような判断・行動したか」を、事故当事者の立場に立って考える「仮想体験手法」によって、事故の深層原因に迫る考え方を提言しています。2008年より本学イノベーションマネジメント研究科客員教授として「技術者倫理とリスク管理」、「技術者倫理」の講義を担当し、現在は、環境・社会理工学院の特任教授を務めています。

環境・社会理工学院

環境・社会理工学院 ―地域から国土に至る環境を構築―
2016年4月に発足した環境・社会理工学院について紹介します。

環境・社会理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程

E-mail : tam.inv@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8912


新しいMOOC「電気電子工学入門」を世界に向けて公開

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東工大の新しいMOOC(ムーク)※1 「Introduction to Electrical and Electronic Engineering : 電気電子工学入門」が、プラットフォームであるedX(エデックス)※2 にて、5月31日に世界に向けて公開されました。

アニメキャラクター「大岡山さくら」

アニメキャラクター「大岡山さくら」

本講座では、電気電子工学とは何かを学ぶことを目的として、太陽電池や携帯電話などの身近な電気電子工学の活用事例から、高速鉄道など日本企業で実用化が進められている応用事例、さらに研究室で進められている先端技術まで、電気電子工学に関わるさまざまな話題を紹介しています。

講師を務める東工大の教員や日本企業で働く本学卒業生から、電気電子工学全般についての知識を得るとともに、多岐にわたる電気電子工学のトピックに関して情報を得ることができます。

コースバナー

コースバナー

また今回は、受講者と一緒に学び、時には講師らの説明に質問を投げかける役として「大岡山さくら」というアニメキャラクターを導入し、講師と大岡山さくらの間に立ってアドバイスをする先輩役として、今回のMOOC開発に関わった大学院生がティーチング・アシスタント(TA)として登場しています。

講義は日本語で行われますが、字幕や課題、スライド資料は日本語と英語の両方で提供されますので、英語で電気電子工学を学びたい方にも最適な講座となっています。

MOOC「電気電子工学入門」のスライドページ 日本語と英語による講義

MOOC「電気電子工学入門」のスライドページ
日本語と英語による講義

※1 MOOC(ムーク)

Massive Open Online Courseの略で、インターネットにつながる環境さえあれば、どこでも誰でも受講できる大規模公開オンライン講座です。

※2 edX(エデックス)

マサチューセッツ工科大学とハーバード大学によって創立されたMOOC(=Massive open online course)のプラットフォームであり、世界中の学生に対し、多岐にわたる分野の大学レベルの授業を無償で提供しています。東京工業大学も2014年に加盟し、TokyoTechXouterとしてオンライン講座を提供しています。

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

教育革新センター オンライン教育開発室

E-mail : oedo@citl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3445

古田勝久名誉教授が平成29年春の叙勲を受章

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平成29年春の叙勲において、古田勝久名誉教授が瑞宝中綬章を受章しました。長年にわたる、教育と研究への多大な貢献が評価されたものです。

古田勝久名誉教授
古田勝久名誉教授

経歴

  • 1967年3月
    東京工業大学大学院理工学研究科博士課程(化学工学専攻)修了
  • 1967年4月
    東京工業大学理工学部助手
  • 1970年6月
    東京工業大学工学部助教授
  • 1982年10月
    東京工業大学工学部教授
  • 2000年4月
    東京工業大学名誉教授
  • 2000年4月
    東京電機大学理工学部教授
  • 2008年6月
    東京電機大学学長(2016年3月まで)

コメント

1967年3月に故伊澤計介教授の指導を受け東京工業大学大学院博士課程修了後、同年4月から東京工業大学に採用されました。東京工業大学では、新日本製鐵寄附講座「インテリジェントコントロール講座」の世話人、文部省科学研究費中核的研究拠点プログラムCOE(Center of Excellence)研究プロジェクト「スーパーメカノシステム」の研究代表を務め、2000年3月退官ののち東京工業大学名誉教授となりました。その後同年4月より、東京電機大学教授となり、21世紀COEプロジェクト「操作熟達に適応するメカトロニクス」の研究代表、そして2008年より2016年3月まで、東京電機大学学長を務めました。その他日本学術会議第17期、18期会員、5部幹事を歴任しています。

東京工業大学在任中にいただいた、多くの先生方のご指導、ご支援、ご鞭撻に感謝しております。ありがとうございました。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

島津製作所精密機器分析室開設記念式典を開催

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東工大生命理工学院は、島津製作所精密機器分析室開設記念式典を5月9日にすずかけ台キャンパスにて開催し、来賓、学内外関係者ら約60名が出席しました。

島津製作所精密機器分析室は、株式会社島津製作所から同学院に対して寄贈された、ライフサイエンス関連精密分析装置を中心とする島津製作所製分析装置を設置した共用分析室です。最先端研究の推進を始め、若手研究者や学生などの研究支援、国際共同研究や種々の企業との産学連携の推進に活用しています。また、島津製作所においては、新たに開発した機器等を利用した産学連携スペースとして、本分析室を活用する予定です。

  • 協定に署名した丸山秀三島津製作所常務執行役員(左)と安藤真理事・副学長(右)

    協定に署名した丸山秀三島津製作所常務執行役員(左)と
    安藤真理事・副学長(右)

  • 挨拶をする三島良直学長

    挨拶をする三島良直学長

記念式典に先立ち、記者説明会が行われました。

記念式典では、丸山秀三島津製作所常務執行役員、安藤真理事・副学長(研究担当)が同室の設置に関する協定に署名しました。その後、三島良直学長、三原久和生命理工学院長、丸山常務執行役員の挨拶に続き、丸山常務執行役員から寄贈分析装置の目録が三原学院長に贈呈されました。続いて、同室銘板の除幕式が執り行われました。

  • 挨拶をする三原久和生命理工学院長

    挨拶をする三原久和生命理工学院長

  • 挨拶をする丸山秀三島津製作所常務執行役員

    挨拶をする丸山秀三島津製作所常務執行役員

式典後には、分析室の見学会が開かれ、続いて行われた交流会では、安藤理事・副学長、森安里志島津製作所分析計測事業部副事業部長、大竹尚登副学長(研究企画担当)から挨拶がありました。和やかな雰囲気のなか歓談し、同室の開設を祝うとともに産学間の交流を深めました。

なお、生命理工学院とバイオ研究基盤支援総合センターによる本分析室を核とした設備共用化の取り組みは、2017年度文部科学省先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)に採択されています。

  • 除幕式後の島津製作所および東京工業大学の関係者による記念撮影

    除幕式後の島津製作所および東京工業大学の関係者による記念撮影

  • 見学会の様子

    見学会の様子

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系

Email: suz.sei@jim.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5942

生命理工学院すずかけ台オープンキャンパスを開催

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生命理工学院は、5月13日~14日に開催されたすずかけ祭に合わせて、学士課程/大学院課程受験希望者を主な対象とした「生命理工学院すずかけ台オープンキャンパス」を行いました。

学士課程説明会の様子
学士課程説明会の様子

13日は、13時~16時をコアタイムとして全研究室が、14日は34研究室が研究室公開を行いました。すずかけ台キャンパスのB1・B2棟のエントランスホールでは、大岡山キャンパスにある生命理工学院の研究室についてもポスターを掲示し、研究室紹介を行いました。

13日はあいにくの雨にもかかわらず、大学会館にて午前中に行われた生命理工学コース/ライフエンジニアリングコース説明会(大学院受験希望者対象)には105名の参加がありました。説明会終了後にB1・B2棟へ参加者を引率し、エントランスホールにてポスター掲示された研究室の説明、および研究室見学を実施しました。

14日は、J2棟で行われた午前中の生命理工学コース/ライフエンジニアリングコース説明会に81名、午後の学士課程(7類)説明会(高校生等対象)に117名が参加し、各回とも質疑応答が活発に行われました。学士課程説明会では、学部3年生によるキャンパスライフの紹介も行われ、大変好評でした。学士課程説明会終了後には、少人数グループに分かれて、大学院および学部生との懇談会と研究室見学を実施し、57名の参加がありました。今年初めて、女子高生グループも作り、34名の女子高生に対し、女子学生が丁寧に応対しました。

また、全ての説明会、懇談会、研究室見学でアンケートを実施しました。アンケートの回収率は73%~96%と高く、集計の結果は、いずれのイベントにも高い満足度を示していましたが、今後改善すべき点も明確になりました。次回以降のオープンキャンパスに向けてアンケート結果を反映させ、より高い満足度を得られるイベントにしていきます。

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

生命理工学院 事務グループ

Email : suz.sei@jim.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5946

科学教室「進化論と利他行動 ~あなたは困っている人を助けるか?~」開催報告

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生命理工学院 基礎生物学教室は、3月26日に大岡山キャンパスにおいて、高校生以上を対象とする科学教室「進化論と利他行動 ~あなたは困っている人を助けるか?~」を開催しました。

総当り鷹鳩ゲームに向け、行動戦略を練る参加者

総当り鷹鳩ゲームに向け、行動戦略を練る参加者

自己を犠牲にして、他個体の利益となるような行動を「利他行動」と呼びます。生物学では「利益」とは端的には残すことのできる子孫の数を指しており、この利他行動の進化を古典的なダーウィン流の進化論で説明することは困難でした。そこで今回、その利他行動の進化をどのように説明すればよいのか、現代の進化生物学がその発展と共にどのように考えてきたのかを考察することを目的として、東工大基金「理科教育振興支援」の後援を受けて高校生以上を対象にした科学教室を開催しました。

現代進化生物学では、血縁選択※1マルチレベル選択※2など、いくつかの理論で利他行動の存在を説明しようと試みています。今回はその中でも、進化ゲーム理論に基づいた鷹鳩ゲーム※3を用い、参加者全員でゲームを楽しみながら進化論や囚人のジレンマ※4について学びました。

まず、利他行動の実例をいくつか紹介し、古典的な進化論の概要とその限界を共有した上で、現代進化生物学にはいくつかの理論的な考察があること、そしてその1つとして進化ゲーム理論を利用した鷹鳩ゲームがあることを説明しました。

  • 進化論と利他行動について解説する様子

    進化論と利他行動について解説する様子

  • シミュレーション結果の一例

    シミュレーション結果の一例

続いて、参加者にはパソコン上のシミュレータの使い方を習得してもらった上で、古典的な進化論による利他行動の説明が難しいことをシミュレーションで確認してもらいました。また、さまざまな条件のもとでシミュレータを動かしながら、場合によっては利他行動が出現する可能性があることの理解を深めました。シミュレータは、例えば「このような場合には利他行動を行う」「別の場合には利己的に振る舞う」といったさまざまな行動戦略を簡単に入力して試行できるよう、あらかじめ作成しておきました。

最後に、参加者全員が自身の行動戦略を考えた上でそれぞれの戦略を全て持ち寄って「総当り鷹鳩ゲーム」を開催し、誰のどのような戦略がより適応度が高いかを考察しました。

今回の科学教室では「鷹鳩ゲーム」という遊びながら学ぶことのできる題材を取り上げ、みんなで楽しみながら進化論や利他行動の基礎を学んでもらうことができました。基礎生物学教室では、今後も小学生から高校生の期待に沿えるイベントの開催を予定しています。決まり次第、基礎生物学教室のウェブサイトにてお知らせしますので、ふるってご参加ください。

※1
血縁選択は、生物としての「利益」を一個体としての自身に限定する事なく、遺伝子を共有する血縁者にまで包括・拡張して考えることで、利他行動の進化を確率論的に解釈する。ミツバチ等の真社会性昆虫が代表例。
※2
マルチレベル選択とは、言わば「古典的群選択」の現代改良版。種(しゅ)の保存に着目する古典的群選択は当初、利他行動の進化を説明し得ると考えられたが、まもなく理論的なナイーブさを指摘され、その可能性はほぼ否定された。
※3
鷹鳩ゲームとは、ゲーム理論における最も有名なゲームの一つ。このゲームでは、各プレイヤーはそれぞれ鷹戦略(利己行動)と鳩戦略(利他行動)を選択して対戦させる。その対戦結果を各プレイヤーの「利益」とみなし、そこからそれぞれの適応度を求める。つまり各プレイヤーの適応度は、どのような戦略を取るか(利己行動か利他行動か)で決まる。
※4
囚人のジレンマとは,個々にとっての最適戦略が全体にとっての最適戦略にはならない「ジレンマ」状態を表すモデルの一つ。自身の「利益」を最大化するために、あえて自己を犠牲にする利他行動を選択した方が良いケースがあることが示される。

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に新たに発足した生命理工学院について紹介します。

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生命理工学院 基礎生物学教室

E-mail : 27uni@kisoseibutsu.bio.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2656

新しいMOOC「科学技術倫理」を世界に向けて公開

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東工大の新しいMOOC(ムーク)※1「Science and Engineering Ethics 科学技術倫理」が、プラットフォームであるedX(エデックス)※2にて、6月28日に世界に向けて公開されます。

リベラルアーツ研究教育院の札野順教授が、大学院生のティーチング・アシスタントとともに本講義を行います。このコースでは大学で工学、科学、技術を学ぶ学生を対象に、倫理の本来の意味である「よく生きる」ことを考察し、科学技術倫理において伝統的な「予防倫理」だけでなく、科学者、技術者として何を為すべきかを考える「志向倫理」についても学びます。この講義はedXにおいて初めて全てを日本語で行う科学技術倫理MOOCとなり、内容は次のとおりです。

  • エンジニアリングが社会的・環境的に与える影響

  • 「志向倫理」と「予防倫理」

  • 科学者と技術者が共有すべき価値

  • 倫理的な意思決定の方法

  • 責任ある研究活動(研究倫理)

  • 具体的な事例分析のスキル

MOOC「科学技術倫理」バナー
MOOC「科学技術倫理」バナー

6週間で、ビデオ講義・ディスカッション・ピアレビューを含む評価から行う構成となっており、字幕は日本語と英語で見ることができます。

このコースは、大学生や下記のような重要な問題に関心のある全ての方のために制作されました。

  • 科学技術者は倫理的な決断をどのように下すべきか

  • 科学技術者は生活の質を向上させ、公衆の福利のために何ができるか

そして、この講義は日本語を理解する方々と、社会科学、人文科学、及びエンジニアリングで使われる学術的な日本語を学ぶことに興味がある方々を対象に作られています。人々が「よく生きる」ことができる社会の実現をめざして、科学者・技術者がどのように貢献できるのかを共に考察するために、世界中からの受講をお待ちしています。

edXでTokyoTechXとして提供するMOOCはこの講義を含め、合計で4コースとなります。

※1 MOOC(ムーク)

Massive Open Online Courseの略で、インターネットにつながる環境さえあれば、どこでも誰でも受講できる大規模公開オンライン講座です。

※1 edX(エデックス)

マサチューセッツ工科大学とハーバード大学によって創立されたMOOC (=Massive open online course) のプラットフォームであり、世界中の学生に、多岐な分野にわたる大学レベルの授業を無償で提供しています。東京工業大学も2014年に加盟し、TokyoTechXとしてオンライン講座を提供しています。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
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東京工業大学 教育革新センター オンライン教育開発室

Email : oedo@citl.titech.ac.jp

「第39回すずかけ祭」開催報告

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第39回すずかけ祭が、5月13日~14日の2日間、すずかけ台オープンキャンパスに併せて開催されました。初日は天候に恵まれず来場者の出足は順調とはいえない様子でしたが、2日目は天候も持ち直し、2日間で約3,000名の方々に来場いただきました。

デッキ広場周辺の模擬店など
デッキ広場周辺の模擬店など

大隅良典栄誉教授講演会での質疑応答の様子
大隅良典栄誉教授講演会での質疑応答の様子

今年はすずかけ祭として特別な年になりました。まず、前日の5月12日に、2016年ノーベル生理学・医学賞受賞大隅良典栄誉教授講演会を、すずかけ祭プレイベントとして開催しました。

本学の学生・教職員に加えて多数の一般参加者に来場いただき、260名の聴衆で会場はほぼ満員となりました。オートファジー研究の進展についての講演の後、会場の大学生や中高生を含む若い世代が中心となり熱心に質疑応答が行われました。参加者アンケートには、「自分のやりたいことが見つかった」、「研究が楽しそうでやってみたい」、「とてもわくわくする話でした」等のコメントが数多く寄せられ、一般の方にも高い評価をいただきました。

すずかけペリパトス駅伝表彰式
すずかけペリパトス駅伝表彰式

昨年6月からすずかけ台キャンパスの外周道路が供用されたことから、今年のすずかけ祭スポーツ大会には新たな種目として「すずかけペリパトス駅伝」が加わりました。年齢性別のハンディ付きで4人1組が外周道路を一周(約1.2 ㎞)するルールで、すずかけ祭の1週間前に実施され、すずかけ祭当日に表彰式が行われました。駅伝当日は29チームが参加し、怪我などもなく楽しいイベントになりました。また、参加者全員がボランティアとして運営に協力するなど、研究室や学生が広く連携して運営されました。

また、文系・理系の枠を超えて学術を発展させることを目的にキャンパス全体をギャラリーに見立てて学生たちの感性あふれる作品を屋内外に展示した「ペリパトス・オープンギャラリー」が本年より女子美術大学と本学との大学間連携協定となった機会を捉えて、女子美術大学と本学の学生が連携した企画「女子美ピクニック」が本学博物館の協力により実施されました。「ペリパトス・オープンギャラリー」の受賞者が登場する「ギャラリートーク」と、子供たちの手などに東工大オリジナルキャラクター「工太郎」等を描く「ボディシールアート」という2つの企画からなり、両日で延べ24名の学生が参加し、488名の来場者の方々に楽しんでいただきました。

ペリパトス・オープンギャラリー
ペリパトス・オープンギャラリー

「女子美ピクニック」企画ボディシールアート
「女子美ピクニック」企画ボディシールアート

さらに、今年から新たに東工大の同窓会組織である蔵前工業会の有志による「くらりか」(理科教室)が13日に開催され、140名の子供たちに科学の面白さを実感してもらいました。また、学生サークル(サイテク、BCS)が主催する工作教室が開催され、45名の子供たちがものつくり教育研究支援センターで楽しい時間を過ごしました。例年同様に行われた研究室公開、博物館すずかけ台分館公開、模擬店、ジャグリングサークル「ジャグてっく」のパフォーマンス、スタンプラリー、文化展(書道・写真展)、モトテカコーヒーでのこどもカフェ店員体験、附属図書館すずかけ台分館公開、音楽サークルや管弦楽団によるコンサート等、様々な企画についても、来場者の方々に好評でした。

くらりか(理科教室)
くらりか(理科教室)

「ジャグてっく」のジャグリングパフォーマンス
「ジャグてっく」のジャグリングパフォーマンス

研究室公開
研究室公開

生命理工学院でのオープンキャンパス
生命理工学院でのオープンキャンパス

なお、今回のすずかけ祭では、オープンキャンパスとの連携を強化し、オープンキャンパス来訪者がすずかけ祭の研究室公開に立ち寄ったり、あるいはすずかけ祭参加者がオープンキャンパスの情報にも接触できるよう、両イベントの連携を強化する運営を行いました。

本年も、すずかけ祭に来場いただいた方々に感謝いたします。すずかけ台キャンパスでは「ペリパトスの研杜21」将来計画のもと、キャンパス環境の整備が進められてきました。来年のすずかけ祭でも、東工大の創造性優れた研究や自然豊かなキャンパスを満喫していただけるよう、一層魅力ある企画を行いますので、引き続き、皆さまのご支援をよろしくお願いします。

お問い合わせ先

すずかけ台地区事務部総務課

Email : suzu.som@jim.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5904


テラヘルツ電磁波の照射による超高速誘電体材料の新しい制御法を発見 -データを超高速処理する光電子デバイスの開発に期待-

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要点

  • 強誘電体に代表される極性材料は、高強度レーザー光の波長を変換する素子として利用され、波長変換の効率が高い材料の合成が求められる
  • ビスマスとコバルトを含むセラミックスに1テラヘルツ帯に周波数域を持つ電磁波パルス(波長がサブミリメートルの電磁波)を照射すると、波長変換効率が5割以上増大する現象を世界で初めて発見
  • 室温かつ非接触、100フェムト秒(fs:1フェムト秒は10-15秒)以内の超高速で非線形光学材料の性能指数を向上させる新しい方法として期待

概要

東京工業大学 理学院 化学系の沖本洋一准教授、腰原伸也教授、同科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の東正樹教授、京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点の廣理英基特定拠点准教授、同理学研究科の田中耕一郎教授らの研究グループは、ビスマスとコバルトを含むセラミックスにテラヘルツ光(波長がサブミリメートルの遠赤外光)を照射すれば、非線形光学特性が5割以上増強する現象を初めて発見した。一般に極性材料は、高強度レーザー光の波長を変換する素子として利用され、その性能指数をどのように増大させるかが重要な課題となっている。およそ1テラヘルツに周波数域を持つレーザパルスの照射により、室温で第二次高調波強度が5割以上増大する現象が明らかになった。これは、瞬間的な高電場印加によって極性材料の波長変換特性が大きく向上したことを示す。室温かつ非接触、超高速での新しい非線形光学材料の性能指数向上や巨大データ高速処理に必要な超高速光電子デバイス開発への応用が強く期待される。

研究成果は5月11日発行の米国科学誌『フィジカルレヴューアプライド誌(Physical Review Applied)』オンライン版に掲載された。

研究の背景

強誘電体を代表とする極性材料が果たす役割は多くの分野で重要になってきた。中でも非線形光学材料への応用は、高強度レーザーの波長を変えるために不可欠の技術であり、光機能性開発の分野で注目されている。一般に極性材料は、その反転対称性の破れた独自の結晶構造に由来する「二次の非線形感受率[用語1]」が存在し、入射した光の周波数の2倍(波長が半分)の光を発生させることができる。第二次高調波発生(SHG)[用語2]と呼ばれ、非線形光学材料の最も重要な応用例の一つである。レーザーにおける波長変換技術にも利用される。発生するSHG強度が大きい、すなわち性能指数が高い非線形光学材料の開発は重要な課題となっている。

これに加えて、高強度レーザーの照射によって物質の光学的・磁気的・電気的性質などを非熱的かつ超高速に変化できる光機能性材料を開発する研究が世界中で盛んである。この現象は「光誘起相転移[用語3]」と呼ばれ、電気的には実現不可能な応答速度で物質の屈折率や吸光度を制御する方法と考えられ注目されている。しかし、SHGに代表されるような非線形光学応答を光によって大きく変化させようという試みはこれまでは行われていない。光誘起相転移研究の知見を非線形光学材料開発に生かすためには、最先端光源を駆使した様々な極性材料における粘り強い研究が必要であった。

研究成果

東京工業大学 理学院 化学系の沖本洋一准教授らの研究グループは、同科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の東正樹教授、京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点の廣理英基特定拠点准教授らの研究グループと協力し、ビスマスとコバルトからなる酸化物セラミックス結晶(BiCoO3)において、発生するSHG強度をテラヘルツレーザー光照射で5割以上増強することに成功した。

対象の物質は、ビスマスとコバルトを中に含む酸素4面体で構成されたユニットが3次元的に連なった構造を有している[図1(a)]。(これは強誘電体材料として有名なPbTiO3結晶と同型である。)ピラミッド構造を持つ4面体の頂点方向が結晶内で同一の方向を向いており、全体としてマクロな極性構造を持つ。実際、巨大な自発分極が観測されている。この結晶試料は、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の東正樹教授らによって合成された。

この物質では極性構造に起因する二次の非線形感受率が存在するため、SHG効果を容易に観測することができる。我々は、この試料に対し尖頭値が約1 MV/cmの電界強度を持つテラヘルツ光パルスを照射した。ポンプ―プローブ分光法[用語4]と呼ばれる測定手法を用いて、試料から発生するSHG光強度がテラヘルツ光照射にともないどのように変化するかを測定した。照射に用いた高強度テラヘルツ光パルスは、京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点の廣理英基特定拠点准教授らによって開発されたものである。

実験の結果、試料から発生するSHG強度は、テラヘルツ光パルスの照射によって瞬時に増強することが観測された。最大電界強度0.8 MV/cmのときSHG強度は5割以上増えた[図1(b)]。これは、テラヘルツ光が結晶の歪みを引き起こし、二次の非線形感受率を増大させたために発生したものであり、試料の非線形光学応答の性能指数が劇的に増大したことを意味する。さらに、そのSHG強度変化のスピードは、照射したテラヘルツ波の波形に追随しており、1ピコ秒(1兆分の1秒)以内に変化し元の状態に戻ることがわかった[図1(b)]。このような巨大、かつ高速の非線形光学応答の変化はこれまで全く見られなかったものであり、新しい非線型光学材料の性能指数を制御する手法を示すものである。

(a)極性構造を持つ酸化物セラミックスBiCoO<sub>3</sub>の結晶構造の模式図。(b)テラヘルツ電磁波を照射したときの試料から発生する第二次高調波(SHG)発生強度の増強の様子。

図1.(a)極性構造を持つ酸化物セラミックスBiCoO3の結晶構造の模式図。
(b)テラヘルツ電磁波を照射したときの試料から発生する第二次高調波(SHG)発生強度の増強の様子。

今後の展開

以上の研究結果から、テラヘルツレーザー光が極性材料の波長変換特性を大きく向上させる可能性が明らかになった。室温かつ非接触での新しい非線形光学材料の性能指数アップの技術やテラヘルツ電磁波によって制御される超高速データ処理のための新たな超高速光電子デバイス開発につながることが期待される。また、強誘電材料が持つ他の有用な性質(アクチュエーターやキャパシタなど)もテラヘルツ光の照射によってその機能を大幅アップできる可能性を強く示唆する。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金(15H02103,16K05397, 16H04000)、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)の一環として行ったものである。

用語説明

[用語1] 非線形感受率 : 光が物質に入射すると、通常は反射や透過のように光の電場に比例した応答が観測されるが、レーザー光などの強度が強い光を入射すると、その電場の2乗や3乗に比例した応答が出現することがある。その時の応答の係数を非線型感受率と呼ぶ。

[用語2] 第二次高調波発生(SHG) : 二次の非線形感受率の存在により、入射光の周波数の2倍の光が発生する現象。強誘電体などの、結晶の反転対称性がない試料で観測される。

[用語3] 光誘起相転移 : 光を物質に入射することで、物質の相が変化する現象。近年の高強度・高速レーザー光研究の発展により、様々な物質群で非熱的な(単純な温度上昇では得られない)電子相を光で引き出すことに成功した実験結果が報告されている。

[用語4] ポンプ―プローブ分光法 : ポンプ光(励起光)を物質に照射することで起こる電子状態や構造の変化を計測するため、続けてプローブ光(計測光)を物質に照射してその反射率や透過率の変化を調べる計測手法。ポンプ光とプローブ光の間の時間間隔を変えることによって、物質の特性が変化していく様子をスナップショットのように刻々と追跡する実験手法。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Applied
論文タイトル :
Ultrafast Control of the Polarity of BiCoO3 by Orbital Excitation as Investigated by Femtosecond Spectroscopy
著者 :
Y. Okimoto, S. Naruse, R. Fukaya, T. Ishikawa, S. Koshihara, K. Oka, M. Azuma, K. Tanaka, and H. Hirori
DOI :

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新機構を備えた複腕建設ロボット―ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジによる新しい災害対応重作業ロボットの開発―

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研究成果のポイント

  • 従来の油圧ショベルは災害現場で求められる多様な作業に対応することが困難という課題があった。
  • 2重旋回・複腕機構[用語1]の採用により、多様な作業へ適応性が高く、かつ、災害対応で必要な重作業が可能なロボットを開発。
  • 掘削モードや把持モードに形状変更が可能で、対象物を柔らく掴むこともできる建設ロボット用多指ハンドを開発。

概要

内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジ研究開発課題「災害対応建設ロボットの開発」(研究開発課題責任者:大阪大学 大学院工学研究科 大須賀公一(おおすか こういち)教授、プログラム・マネージャー:東北大学 大学院情報科学研究科 田所諭(たどころ さとし)教授)において、大阪大学 大学院工学研究科 吉灘裕(よしなだ ひろし)特任教授(常勤)、東京工業大学 工学院 鈴森康一(すずもり こういち)教授らは、2重旋回機構を用いた複腕の災害対応重作業ロボット(建設ロボット)を開発しました(図1)。

2重旋回・複腕ロボット

図1. 2重旋回・複腕ロボット

本ロボットは2本の腕を持っています。複数の腕を持つ重機械は、これまでにもいくつかの開発事例がありますが、本ロボットで採用した2重旋回・複腕機構は、従来の複腕重機の課題を解決し、また複腕の活用範囲を大幅に拡張することができます。

現在、プロトタイプを用いてフィールドでの実験を開始しており、また本研究開発で開発を進めている主な要素技術をロボットに搭載して、開発コンセプトに描いた建設ロボットの実現を目指しています。

研究の背景と経緯

土砂崩れや建物の倒壊などの災害対応作業には、多くの場合、建設機械が投入されています。中でも油圧ショベルは、クローラ[用語2]を用いた走行機構がもたらす走破性[用語3]と、多関節の作業機が可能とする多機能な作業性により、災害現場での中心的な役割を担っています。しかし、従来の油圧ショベルは、急勾配の斜面や大きな段差のある災害現場へのアクセスの能力が十分ではありませんでした。また瓦礫除去などの際に、再崩落を発生させないように、精密で微細なコントロールの対象物操作を行うことは油圧ショベルでは難しく、さらに災害現場で求められる多様な作業に対応することは困難でした。

また災害対応では、オペレータにも危険が及ぶ状況が予想されるため、遠隔で機械を操作できることが必要です。油圧ショベルには、ラジコンの遠隔操縦装置がオプションとして準備されていますが、多くは100 m以内の距離からの直視による遠隔操作であり、災害現場への対応としては十分ではありません。画像伝送を用いた長距離の遠隔操作には、雲仙普賢岳の砂防工事などに用いられた無人化施工システムがありますが、比較的定型的な作業に限定されること、作業性を高めるためには油圧ショベルの周囲に複数のカメラ車を配置する必要があることなど、使用できる状況は限定されています。また遠隔操作時は作業効率が搭乗操作時の60%程度に低下することが大きな課題となっています。

本研究開発チームは、ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジの共同研究開発の一つのテーマとして、これらの課題を解決した災害対応の重作業ロボットの開発を進めてきました。このたび本研究開発の最終コンセプトである2重旋回・複腕機構を採用したロボットのプロトタイプが完成し、災害現場を模擬した評価試験フィールドにて実証試験を開始しました。

研究内容(本研究成果の意義)

上述の課題を解決するため、以下の機構・機能を備えた新たな災害対応の建設ロボットを開発しました。

(1)重作業を器用に行え、急傾斜地・段差の移動に性能を発揮できる、2重旋回・複腕機構(大阪大・吉灘)

開発したロボットに適用した2重旋回・複腕機構は、左右の腕と、肩の旋回部を同軸上に重ねたもので、人間や動物のように、肩の関節が別々の軸上に配される機構に比べて、はるかに大きな直径のベアリング[用語4]を肩の旋回部に使うことができます。またロボットの重心付近で両腕を支持しているので、ロボットの安定性が高いという特長があります。この機構の採用により、本ロボットは大きな負荷への適応性が高く、重作業に適した構造となっています。さらに同軸上に配置されたそれぞれの腕が360°回転するため、右手、左手の区別はなく、両手のレイアウトを自由に変更することができます。

今回開発したロボットでは、油圧システムの応答性を従来の建設機械より一桁高めることにより、優れた運動特性を実現しています。また力覚や触覚をフィードバックすることにより、従来の建設機械では困難であった繊細かつ器用な作業性を実現しています。両腕はどちらも重負荷対応ですが、一方の腕は油圧ショベルのような重作業向け、もう一方の腕は、マニピュレータ[用語5]のような繊細かつ器用な作業用と異なる特性を与えています。このため多様で複雑な災害現場での作業に、柔軟に対応することができます。もちろん両腕を協調した作業も可能です。

また、本ロボットでは、自由にレイアウトできる腕で地面を支えながら、クローラで移動することが可能で、災害現場の厳しい環境への適応性も高くなっています。例えば、急傾斜地や凹凸の激しい現場でも、片腕で立木や地面の固定物を掴んでロボットを安定化させ、もう片方の腕でハンドリング作業を行うことができます。また腕とクローラを協調して動作させることで、段差を乗り越えたりすることも可能です(図2)。

2重旋回・複腕機構による両手のレイアウトと作業例

図2. 2重旋回・複腕機構による両手のレイアウトと作業例

2重旋回・複腕機構は、各旋回部への油圧配管や信号線の接続が難しい構造です。過去に開発したロボットでは、エンジンや油圧ポンプ、無線通信機器などがロボットの最上段に搭載されており、これらの油圧や信号を、中段、下段の旋回部に、360°エンドレスに旋回可能な状態で接続することは容易ではありません。本ロボットでは、油圧配管機構と信号伝達機能を一体化したコンポーネントを新たに開発し、これらを実現しています。

(2)建設ロボット用多指ハンド (東工大・鈴森)

本研究開発チームは、建設ロボット用の4本指ハンドを開発して、片方の腕に装着しています。このハンドは形状を変更することにより、バケット(ショベル)のような「掘削」と、ハンドの「把持」のモードを切り替えることができます。さらに、対象物の形状に応じたハンド形状の変更や、握力の幅広い制御も可能です。

従来の油圧ショベルでは、バケット(ショベル)あるいはグラップル(開閉ハンド)といった比較的簡単な構造のアタッチメントが使われてきました。しかし災害現場ではさまざまな形状の対象物を扱う必要があります。相手の形状に応じてアタッチメントの形状や機能を切り替えたり、状況に応じて大きな力でしっかり握ったり、逆に相手を壊さないように小さな力でやさしく握ったりする必要もあります。このような状況を踏まえて、4指のロボットハンドを開発しました。6個の油圧シリンダと2つの油圧モータで駆動され、主に砂利などを扱う「バケットモード」と、対象物の形に応じて4本の指で対象物を扱う「ハンドモード」に切り替えることができます。ハンドモードでは相手の形状に応じて握ることができ(図3、4)、また握力は最大約300キロから最小1.4キロまで、油圧の制御により自由に調整することができます。このハンドの開発における技術ポイントは、小型高性能の油圧シリンダと油圧モータの開発です。油圧シリンダや油圧モータは工場や建設機械において既に数多く使われていますが、既存のものは、サイズ、重さ、動きの繊細さの点で、ロボットの駆動には適していませんでした。

そこで本研究開発チームでは、小型油圧シリンダの専門メーカであるJPN株式会社(東京都大田区、日沖清弘代表取締役)の協力を得て、ロボット駆動に適した、小型、低摩擦、軽量、センサ内蔵の油圧シリンダと油圧モータを新規に開発しました。従来の油圧シリンダに比べ、約2~5倍の「力/自重比」、約1/3~1/5倍の低摩擦動作といった特徴を持ちます。これらの油圧シリンダや油圧モータにより、大きな力、なめらかな動作、器用な動作のハンドの実現に成功しました。

多指ハンドの作業例(左:多指モードによる物体把持 右:バケットモードによる砂利すくい)

図3. 多指ハンドの作業例(左:多指モードによる物体把持 右:バケットモードによる砂利すくい)

相手の形に応じて指が曲がるので複雑な形状の重量物も安定して把持できる

図4. 相手の形に応じて指が曲がるので複雑な形状の重量物も安定して把持できる

(3)遠隔操作高度化のための要素技術(神戸大・横小路、東北大・昆陽、東北大・永谷、東大・山下)

本ロボットでは、遠隔で操縦するオペレータが、まるで対象物を触っているかのような力覚と触覚を感じながら、精密で確実な作業ができる機能を搭載しています。

また、ロボットの外にカメラを置かなくとも、対象物や地形を、視点を変えながら見ることができる、有線給電ドローンと任意視点の俯瞰映像合成システムを搭載しており、精密な作業や複雑な地形での移動を容易にしています。

遠隔操作高度化のための要素技術は、平成28年11月の建設ロボット実験機(単腕モデル)公開評価会の際にプレスリリース(平成28年11月「遠隔操作性と繊細な作業性を備えた建設ロボットを開発」)で発表したものですが、今回さらに機能・性能を向上させて搭載しています(図5)。

建設ロボット搭載要素技術

図5. 建設ロボット搭載要素技術

今後の展開

今回性能を確認した要素技術以外にも、複数の有用な要素技術の開発を行っています。今後、順次それらの要素技術を搭載していきます。また、操作する関節数の多い複腕ロボットを、容易に操縦できる遠隔操作システムの開発を進めており、これらの技術の導入により、より実現場に近い環境での作業実験に進む計画です。

田所諭 ImPACTプログラム・マネージャーのコメント

田所諭 ImPACTプログラム・マネージャー

ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジは、災害の予防・緊急対応・復旧、人命救助、人道貢献のためのロボットに必要不可欠な、「タフで、へこたれない」さまざまな技術を創りだし、防災における社会的イノベーションとともに、新事業創出による産業的イノベーションを興すことを目的とし、プロジェクト研究開発を推進しています。

災害危険地域では、遠隔・自律で重作業を行うことが必要ですが、これまでの遠隔建設機械は、器用さが不足、重作業が不可能、斜面や段差での移動に限界がある、遠隔操作が困難で作業効率が低い、という問題があり、根本的な解決が望まれています。本研究開発は、2重旋回・複腕機構と高出力油圧ハンドにより、これらの問題の解決を図ろうとするものです。重量物のハンドリングが可能な複腕により、作業や移動の能力を飛躍的に向上させ、高出力ハンドにより様々な掘削や把持を可能にする、非連続イノベーションを目指しています。これは大規模災害や事故への対応能力を飛躍的に高めるだけでなく、従来型建機との代替によってこれまでの土木・建築工事の方法論を根本的に変革する可能性を秘めていると考えています。今後の改良、要素技術との統合、限界性能試験によって、数年後の現場適用、実用化を目指しています。

特記事項

本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)outer

プログラム・マネージャー:
田所諭
研究開発プログラム:
タフ・ロボティクス・チャレンジ
研究開発課題:
災害対応建設ロボットの開発
研究開発課題責任者:
大須賀公一
研究期間:
平成26年度~平成30年度

本研究開発課題では、パワフルさと繊細かつ器用な作業性とを併せ持つ災害対応重作業建設ロボットの開発に取り組んでいます。

用語説明

[用語1] 2重旋回・複腕機構 : 左右の腕と、肩の旋回部を同軸上に重ねたもの。

[用語2] クローラ : 悪路や軟弱地での走行性能を向上させるために、前後輪を一帯に接続された履板で囲んだ走行機構。無限軌道、キャタピラとも呼ばれる。戦車やブルドーザなどの建設機械に用いられている。

[用語3] 走破性 : 悪路や軟弱地を走行できる性能のこと。

[用語4] ベアリング : 回転体や直動体を支え摩擦を減らす部材のこと。本プレスリリースでは回転式のころがり軸受けを指している。

[用語5] マニピュレータ : ロボットの腕や手に当たる部分のこと。人間の腕のような自在な動きができるものを指す場合が多い。

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お問い合わせ先

研究に関すること

大阪大学 大学院工学研究科
特任教授(常勤) 吉灘裕

E-mail : yoshinada@jrl.eng.osaka-u.ac.jp
Tel : 06-6875-1509

東京工業大学 工学院 機械系
教授 鈴森康一

E-mail : suzumori@mes.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3177

神戸大学 大学院工学研究科
教授 横小路泰義

E-mail : yokokohji@mech.kobe-u.ac.jp
Tel : 078-803-6341

東北大学 未来科学技術共同研究センター
准教授 永谷圭司

E-mail : keiji@ieee.org
Tel : 022-795-4317

東北大学 大学院情報科学研究科
准教授 昆陽雅司

E-mail : konyo@rm.is.tohoku.ac.jp
Tel : 022-795-7025

東京大学 大学院工学系研究科
准教授 山下淳

E-mail : yamashita@robot.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-6457

ImPACTの事業に関すること

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室

Tel : 03-6257-1339

ImPACTプログラム内容およびプログラム・マネージャー(PM)に関すること

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室

E-mail : impact@jst.go.jp
Tel : 03-6380-9012 / Fax : 03-6380-8263

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大阪大学 工学研究科 総務課 評価・広報係

E-mail : kou-soumu-hyoukakouhou@office.osaka-u.ac.jp
Tel : 06-6879-7231 / Fax : 06-6879-7210

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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東北大学 大学院情報科学研究科 総務係

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神戸大学 総務部 広報課

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東京大学 工学部・大学院工学系研究科 広報室

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Tel : 03-5841-1790 / Fax : 03-5841-0529

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E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

東工大ボート部 第60回五大学レガッタ優勝

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東京工業大学 端艇部(ボート部)が、4月29日に埼玉県戸田市の戸田ボートコースで開催された、第60回五大学レガッタに出場し、男子エイト、男子舵手付フォアでそれぞれ優勝、男子ダブルスカル、男子シングルスカルでそれぞれ準優勝しました。

五大学レガッタは、1919年の東京高等工業学校(現東京工業大学)と東京外国語学校(現東京外国語大学)との対校戦を起源とした大会で、その後、東京海洋大学、筑波大学と防衛大学校が加わり、今大会には早稲田大学理工学部漕艇部も参加して競われました。

今大会では、特にボート競技の花形である男子エイトで、東京外国語大学による3連覇を食い止め、見事3年ぶりの優勝を果たしました。さらに、大会記録も更新し今シーズン幸先の良いスタートをきることができました。このエイトはOB、OGの寄付で新調した艇「燕」で、OB、OGとともに優勝を分かち合いました。

端艇部の集合写真
端艇部の集合写真

男子エイト

男子エイトの優勝メンバー

男子エイトの優勝メンバーとコーチ島田
(上段左から長谷川さん、稲子さん、高橋さん、馬場さん、小川さん、
下段左から舩岡さん、藤井さん、服部さん、三浦さん、島田さん)

エイトは、両手で1本のオールを持って漕ぐスウィープタイプのボートで、8人の漕手が二手のサイドに分かれ、それとは別に舵手(コックス)が1人乗り、1チーム9人により構成される競技です。優勝したメンバーを紹介します。

  • 藤井健人さん(工学部 電気電子工学科 学士課程4年)
  • 三浦弘靖さん(工学部 土木環境工学科 学士課程4年)
  • 馬場俊介さん(工学部 経営システム工学科 学士課程4年)
  • 稲子晴也さん(生命理工学部 生命科学科 学士課程4年)
  • 服部淳さん(生命理工学部 生命工学科 学士課程4年)
  • 高橋翔太さん(理学部 情報科学科 学士課程4年)
  • 小川翔太郎さん(工学部 化学工学科 学士課程3年)
  • 長谷川青春さん(工学部 土木環境工学科 学士課程3年)
  • 舩岡知広さん(理学部 地球惑星科学科 学士課程3年)

男子エイトチーフ 藤井さんからのコメント

万全のサポートのもと、対抗エイトとして大会新記録で優勝できとても嬉しいです。インカレで国立大学1位になれるよう部員全員で引き続き協力していこうと思います。

男子舵手付きフォア

男子舵手付きフォア表彰式

男子舵手付きフォア表彰式
(左から、中島さん、井上さん、池田さん、坂本さん、服部さん)

舵手付きフォアは漕手が4人となったエイトともいえる競技で、舵手(コックス)1人が加わるため1チーム5人で構成されます。優勝したメンバーを紹介します。

  • 坂本健さん(理学部 情報科学科 学士課程4年)
  • 池田郁也さん(生命理工学部 生命工学科 学士課程4年)
  • 中島雪暢さん(工学部 電気電子工学科 学士課程3年)
  • 村田翔太郎さん(工学院 電気電子系 学士課程2年)
  • 服部広暉さん(工学院 機械系 学士課程2年)

男子舵手付きフォアチーフ 坂本さんからのコメント

五大学レガッタで優勝しました。クルーの皆と支えてくれた方々に感謝しています。僕たちは、もっと速くなりますので、これからも、応援よろしくお願いします。

男子ダブルスカル

男子ダブルスカル決勝戦

男子ダブルスカル決勝戦

ダブルスカルは、1人2本ずつ、両手にオールを持って漕ぐスカルタイプのボートを、2人で漕ぐ競技です。メンバーを紹介します。

  • 鴨下正彦さん(理学院 化学系 学士課程2年)
  • 久保宰さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)

男子ダブルスカルチーフ 鴨下さんからのコメント

この度ダブルスカルを漕ぎました。初めての2,000 mレースでとてもいい経験になりました。もっとテクニックをつけ、フィジカルを鍛えて次こそは勝てるよう練習していきます。

男子シングルスカル

男子シングルスカル決勝戦

男子シングルスカル決勝戦

シングルスカルは、スカルタイプのボートを1人で漕ぐ、ボート競技の中で唯一の個人種目です。メンバーを紹介します。

  • 増田大樹さん(工学院 システム制御系 学士課程2年)

増田さんからのコメント

今回は2位だったので来年は優勝できるように頑張ります。

三島学長への優勝報告
三島学長への優勝報告
(右から、三島学長、端艇部主将の服部さん、主務の古谷さん、部長の小酒教授)

お問い合わせ先

東京工業大学端艇部

E-mail : titboat@green.ocn.ne.jp
Tel : 048-442-5581

NHK Eテレ「サイエンスZERO」に細野秀雄教授が出演

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本学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の細野秀雄教授・元素戦略研究センター長がNHK Eテレ「サイエンスZERO」に出演します。

細野教授(左)とC12A7の模型を手にした南沢さん(右)

細野教授(左)とC12A7の模型を手にした南沢さん(右)

「サイエンスZERO」は、私たちの未来を変えるかもしれない最先端の科学と技術を紹介するとともに、世の中の気になる出来事に科学と技術の視点で切り込む番組です。

すずかけ台キャンパスの元素戦略研究センターを「サイエンスZERO」キャスターの南沢奈央さんが訪れ、細野教授らが発見したアンモニア合成の新技術について取材しました。

2003年に細野教授らの研究グループはセメント鉱物のひとつである12CaO・7Al2O3(以下C12A7)のケージ構造中の酸素イオンを電子で置き換えた電子化物(電子が陰イオンとして働く物質)C12A7エレクトライドの合成に成功しました。C12A7そのものはセメントの成分でもあり絶縁体ですが、C12A7エレクトライドは金属のように電気をよく流し、アルカリ金属のように電子を極めて放出しやすく、しかも化学的・熱的に安定というユニークな性質を持ちます。この性質をアンモニア合成の触媒に応用するためにルテニウムと組み合わせることで、より低いエネルギーで効率のよいアンモニア合成を実現しました。

アンモニアは肥料や食品・医薬品の原料となる重要な化合物で、世界総生産量は年間1億6千万トンを超えています。その合成法(ハーバー・ボッシュ法)は、1913年にフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによって確立されました。それ以来、100年以上、さらに効率のよい触媒を求めて研究が行われましたが、ハーバー・ボッシュ法を凌駕する触媒プロセスは見いだされておらず、近年では挑戦者がほとんどいない研究とされていました。ハーバー・ボッシュ法は高温高圧の反応条件と大規模な施設が必要でしたが、細野教授らが発見・開発した技術は低温低圧でオンサイト(アンモニアを必要とするメーカーの生産拠点や、小型プラントの現場などで)の小規模アンモニア生産の実現に一歩近づきました。

4月25日には、味の素株式会社、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(UMI)らと新会社「つばめBHB株式会社」を設立し、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化を目指しています。

  • アンモニア合成をしている様子

    アンモニア合成をしている様子

  • C12A7の粉末(左)、C12A7エレクトライドの粉末(右)

    C12A7の粉末(左)、C12A7エレクトライドの粉末(右)

細野秀雄教授のコメント

サイセンスZEROに研究のトピックスを取り上げて頂くのは、今回で4回目になります。C12A7の研究は、学生実験の監督をやっていた時に気付いた色の変化がきっかけですので、もう30年くらい、この物質を舞台にした機能発現の研究をやっていることになりますが、昨今では「電子化物」という物質科学の新領域が国際的に広がりつつあります。こんなありふれた元素のみで超伝導など多彩な電子機能が実現できることから、「元素戦略の象徴」と呼ばている所以だと思います。アンモニア合成触媒への応用に関しては、本学で研究された尾崎先生、秋鹿先生が提唱したルテニウムを窒素を捕まえる触媒として使用し、現役の触媒研究者の原先生、北野先生との共同研究のおかげです。個人的には、この番組のキャスターの南沢奈央さんのファンですので、大変に嬉しい経験ができました。関係者に感謝、感謝です。

  • 番組名
    NHK Eテレ サイエンスZERO
  • タイトル
    CO2削減の切り札!アンモニア研究最前線
  • 放送予定日
    2017年6月25日(日) 23:30 - 24:00
  • 再放送予定日
    2017年7月1日(土) 12:30 - 13:00

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

日本人学生と留学生の交流イベント「アキハバラツアー + カラオケ」開催

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5月14日、東京工業大学留学生会(Tokyo Tech International Student Association、以下TISA)が、東工大の日本人学生と留学生の交流を促進することを目的としたイベント「アキハバラツアー + カラオケ(Akihabara tour + Karaoke)」を開催しました。本イベントは、本学の非公認サークルであるアニメ・コスプレサークルのSOS団@東工大支部の協力を得て行われ、日本のポップカルチャーに関心のある多くの学生が、国籍や言語の壁を越えて交流することができました。

参加者の集合写真
参加者の集合写真

各グループに分かれて秋葉原の名所を散策

各グループに分かれて秋葉原の名所を散策

各グループに分かれて秋葉原の名所を散策

主催者等のコメント

TISA アフザル・ナヴィードさん(大学院情報理工学研究科 計算工学専攻 修士課程2年)

日本に来る留学生の多くは、日本人学生と同様に日本のポップカルチャーに対して情熱的な興味を持っています。しかし、言葉の障壁や機会の欠如で対話や交流があまりなされていません。ほとんどの大学サークルにも留学生メンバーは少ない状況です。我々TISAは、国際交流を深めるために様々なサークルと協力してイベントを開催しています。今回は、東工大のアニメ・コスプレサークルSOS団と共に秋葉原ツアーを行いました。大変反響も良かったため、今後もこのような活動を続けたいと思っています。

SOS団@東工大支部 糸川海斗さん(工学院 機械系 学士課程2年)

今回、TISAからのお誘いで留学生と一緒に秋葉原を巡りました。

留学生の方はアニメや漫画好きが多いと聞いていましたが、話してみると想像以上にアニメに詳しく熱意のある方ばかりで驚かされました。アニメが海外にも広まっていることをより一層実感できました。また自分は英語が得意ではなかったのですが、ジェスチャーを交えながら留学生と会話でき、楽しく活動できました。私たちのサークルでは今までこのような交流活動はしてこなかったのですが、サークルメンバーも留学生も共に楽しめることが分かったので、これからも共に活動していければと思います。

参加者からのコメント

ブラジルからの留学生 ギレールメ・ルビオさん(工学院 電気電子系 日本語研修生)

この秋葉原イベントは新しく出会った友人と趣味を共有したり、楽しい時間を過ごすのにとても良い機会でした。また、日本人学生と留学生との交流を促進するためにも良い方法でした。またこのようなイベントや交流会に参加したいです。

コスプレを借りてカラオケを楽しむ様子
コスプレを借りてカラオケを楽しむ様子

お問い合わせ先

東京工業大学留学生会(TISA)

Email : contact@mytisa.net

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