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欲しいものだけを合成する新触媒 ―医農薬からバイオマスの高付加価値化まで―

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要点

  • 様々な芳香族アルデヒドから芳香族アミンだけを合成する触媒を開発
  • 開発触媒は性能劣化無く、繰り返し使用できる分離回収が容易な固体材料
  • 開発触媒によって、糖由来の化合物から高付加価値ポリマー原料の製造に成功

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院の原亨和教授、鎌田慶吾准教授、喜多祐介助教らは「ルテニウム-酸化ニオブ複合体触媒」(Ru-Nb2O5[用語1]が他の触媒とは異なり、複素環式芳香族化合物[用語2]を含む様々な芳香族アルデヒド [用語3]から有用な芳香族アミン[用語4]だけを合成できることを発見した。この触媒は多様な芳香族アミンを選択的に合成できる。また、糖由来の化合物から強靭かつ耐熱性の高付加価値ポリマー「アラミド」の原料を効率的に製造できることがわかった。

原教授らはRu-Nb2O5が電子を与える力を弱めることができることに着目し、副反応をほぼ完全に防ぐことに成功した。このアプローチは芳香族アミンの製造だけでなく、再生可能なバイオマスの利用に一石を投じると期待される。

医農薬、ゴム、ポリマー、接着剤、染料などの様々な化成品に使われる芳香族アミンは重要な化学品である。しかし、これらアミンを芳香族アルデヒド原料から製造する還元的アミノ化[用語5]において、従来の触媒は電子を与える力が強く、芳香環の分解、副生物の生成を完全に防ぐことはできなかった。このため、製品の精製に多大なエネルギーが必要となり、コストを押し上げていた。

研究成果はJST ALCAにおいて得られたもので、「米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)」オンライン速報版に7月31日に公開され、正式版は近日中に掲載されます。

研究成果

同研究グループは、構築したルテニウム-酸化ニオブ複合体触媒(Ru-Nb2O5)(図1)が、従来の触媒とは異なり、芳香族アルデヒドの還元的アミノ化によって有用な芳香族アミンのみを合成できることを発見した。

ルテニウム-酸化ニオブ複合体触媒(Ru-Nb2O5)

図1. ルテニウム-酸化ニオブ複合体触媒(Ru-Nb2O5

触媒の性能

図2. 触媒の性能

例えば、複素環式芳香族化合物であるフルフラール([用語3]参照)からフルフリルアミン([用語4]参照)を合成する場合、従来の触媒では原料の10%以上が使い道の無い副生物になっていた(図2)。こういった不純物を取り除き、フルフリルアミンだけを得るには多大なエネルギーが必要になる。

一方、開発したRu-Nb2O5ではフルフリルアミンの収量が99%に達した。また、様々な芳香族アルデヒドを原料とした有用芳香族アミンの合成でも同様の結果が得られた。このことは開発触媒を使うことによって、医農薬品から大量生産される化成品で幅広く使われる芳香族アミンの生産を限界まで高効率化できることを意味している。

また、開発触媒はプロダクトとの分離が容易な固体材料であり、繰り返し・連続的に使用しても触媒の性能は低下しないことを確認した。

さらに、同研究グループは開発触媒と既存技術を組み合わせることによって、これまで効率的に合成することができなかった高機能・高付加価値なアラミド樹脂の原料をバイオマスから高効率合成することに成功した(図3)。

バイオマスからのアラミド樹脂原料の生産

図3. バイオマスからのアラミド樹脂原料の生産

植物の大部分はブドウ糖の高分子「セルロース」で占められている。セルロースからブドウ糖を生産し、ブドウ糖を発酵させるとエタノールが得られる。このエタノールはバイオエタノールと呼ばれている。一方、ブドウ糖から芳香族アルデヒドの1つ「ヒドロキシメチルフルフラール」([用語3]参照)を生産し、これを芳香族アミン「アミノメチルフラン」([用語4]参照)に変換することができれば、化石資源を使うことなく強靭で燃えにくい高付加価値な高機能ポリマー「アラミド樹脂」を生産することができる。

しかし、これまでの技術の場合、アミノメチルフランの収量は50%程度であり、実用化の目処は立っていなかった。同グループは開発触媒と既存触媒技術を組み合わせることによってヒドロキシメチルフルフラールからアミノメチルフランを収率96%で合成することに成功した。これはバイオマス利用の一つのブレークスルーとなる。なお、同グループはブドウ糖からのヒドロキシメチルフルフラール製造でも世界最高性能の触媒を既に発表している。

このような開発触媒の高い性能は以下に記す新しい考え方とそれを実現する新しい設計に基づいている。

新しい考え方:これまでの還元的アミノ化促進触媒の開発指針は還元能力を強くすること、言い換えれば、水素を供与する能力を高めることにあった。確かにこの指針は有効だが、芳香族アルデヒドでは芳香環が還元されやすいため、触媒の水素供与能力を高めた場合、芳香環に結合したアルデヒドを還元するだけでなく、芳香環までも還元して壊してしまう。そこで、これまでの考え方とは逆に、触媒の水素供与能力を制御することを同グループは開発の指針とした。

新しい設計:ルテニウムのような遷移金属のナノ粒子は還元力が高い触媒であることが知られている。これらの金属ナノ粒子を触媒として使うには、金属ナノ粒子を固体表面に固定化する必要がある。自動車の排ガス浄化触媒を含めた多くの実用・商用触媒は金属ナノ粒子を固体表面に固定化した材料だ。

まず、同グループは、酸化マグネシウムやジルコニアのような塩基性の固体表面に固定化されたルテニウムは反応中に活性な状態(金属状のナノ粒子)にならず、金属ナノ粒子は中性~酸性の固体表面で安定化できることを明らかにした。そして、シリカやチタニアなどの固体表面に固定化された金属ナノ粒子は電子供与能力が高くなることを分光法によって明らかにした(図4左)。一方、金属ナノ粒子を酸化ニオブのような金属酸化物に固定化した場合、金属ナノ粒子の電子供与能力を弱めることが可能となり、水素供与能力を制御することで芳香族アミンの合成に最適な触媒作用を発現することがわかった(図4右)。

開発触媒のメカニズム

図4. 開発触媒のメカニズム

今後の展開

今回開発した触媒のもつ意義は、これまでの芳香族アミン生産を限界まで高効率化し、これまでできなかったバイオマス利用を可能にするだけに留まらない。神経作用薬、抗がん剤などの医薬品、殺虫殺菌剤を含めた農薬、肥料、油脂、ゴム・ポリマー、バイオ航空燃料といった多くの化成品が遷移金属の還元触媒能力を利用して生産されている。開発触媒のベースとなっている新しい考え方、新しい設計はこれらの化成品の生産を革新するポテンシャルをもっている。

本成果は、以下の事業・研究開発課題によって得られました。

科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 ALCA(先端的低炭素化技術開発)outer

研究開発課題名:
「多機能不均一系触媒の開発」
研究代表者:
東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 原亨和
研究開発実施場所:
東京工業大学
研究開発期間:
平成28年4月~平成33年3月

用語説明

[用語1] ルテニウム-酸化ニオブ複合体触媒(Ru-Nb2O5 : 酸化ニオブの微粒子(数百ナノメートル)表面に金属ルテニウムナノ粒子(2~5ナノメートル)を固定化した材料。きわめて単純な手法で大量生産できる。

[用語2] 複素環式芳香族化合物 : 芳香族化合物とは、一般的にベンゼン環などの炭化水素のみで構成された環状不飽和化合物を指す。しかし、窒素、酸素、硫黄原子などの炭素以外の原子が入っている共役不飽和環も芳香族化合物である。これらは複素環式芳香族化合物と呼ばれる。下にその一例を示す。

  • ピリジン
    ピリジン
  • フラン
    フラン
  • チオフェン
    チオフェン

[用語3] 芳香族アルデヒド : ベンゼンを代表とする環状不飽和化合物にホルミル基が結合した化合物。それ自体、香料などに使われているが、多くの化成品の原料でもある。

  • ベンズアルデヒド
    ベンズアルデヒド
    香料(杏子)
    染料、医薬品の原料
  • フルフラール
    フルフラール
    熱硬化樹脂、ナイロンの原料
  • ヒドロキシメチルフルフラール
    ヒドロキシメチルフルフラール
    ブドウ糖から合成される
    高付加価値な化成品の原料

[用語4] 芳香族アミン : ベンゼンを代表とする環状不飽和化合物にアミノ基が結合した化合物。医農薬品から大量製造される化成品の原料として使われている。下にその一例を示す。

  • アニリン
    アニリン
    年間500万トン以上生産される合成ゴム原料
    • ドーパミン
      ドーパミン
    • アドレナリン
      アドレナリン

    神経伝達物質

    • ベンジルアミン
      ベンジルアミン
    • アドレナリン
      フルフリルアミン

    抗がん剤等の医薬品、様々な農薬と化成品の原料

  • アミノメチルフラン

    アミノメチルフラン

    強靭で燃えにくい高機能アラミド樹脂の原料。原理的にはブトウ糖から得られるヒドロキシメチルフルフラール(上記[用語2]参照)から合成できる。このため、再生可能なバイオマスを高付加価値なポリマーにする変換するひとつのルートとして期待されている。

[用語5] 還元的アミノ化 : アルデヒド、ケトンを1ステップでアミンに変換する反応の総称。アルデヒド、あるいはケトンを窒素源(アンモニアなど)と還元剤(水素ホウ素試薬など)に接触させることによって反応が進む。触媒の存在下、水素を還元剤として用いる反応はアミン類の工業的合成法として最も有効は手法の一つ。

論文情報

掲載誌 :
Journal of the American Chemical Society
論文タイトル :
Electronic Effect of Ruthenium Nanoparticles on Efficient Reductive Amination of Carbonyl Compounds
著者 :
Tasuku Komanoya, Takashi Kinemura, Yusuke Kita, Keigo Kamata, and Michikazu Hara
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所

原亨和 教授

E-mail : hara.m.ae@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5311 / Fax : 045-924-5381

鎌田慶吾 准教授

E-mail : kamata.k.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5338 / Fax : 045-924-5338

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


古賀逸策「水晶振動子」IEEE マイルストーン記念式典・講演会の動画を公開

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東京工業大学名誉教授・古賀逸策(1889 - 1982)による「温度無依存水晶振動子」の研究業績が、電気・電子分野の世界最大の学会であるIEEE(アイ・トリプル・イー: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)よりマイルストーンに認定されました。IEEEマイルストーンは、開発から25年以上経過し、社会や産業の発展に多大な貢献を果たした歴史的業績を認定する制度です。

これを記念して、3月6日に記念式典並びに記念講演会を開催しました。IEEEマイルストーン記念銘板の贈呈式を含む記念式典は大岡山キャンパス百年記念館3階のフェライト記念会議室にて、記念祝賀会は同館4階ラウンジにて、記念講演会は大岡山西講義棟1(レクチャーシアター)にて行われました。

このたび、この記念式典・講演会のダイジェスト動画が完成しました。記念式典における贈呈式や祝賀会での喜びの様子、多数の講演者・参加者で盛況な記念講演会の様子を、是非ご覧ください。

お問い合わせ先

東京工業大学博物館

E-mail : centshiryou@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3340

東工大マイスターが出場する「鳥人間コンテスト2017」が読売テレビ・日本テレビ系で放送

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東工大のものつくりサークル「マイスター(Meister)」が、7月30日に滋賀県彦根市の琵琶湖にて行われた「第40回鳥人間コンテスト2017」の人力プロペラ機ディスタンス部門に出場しました。

同コンテストの模様は、2017年8月23日(水)午後7時から読売テレビ・日本テレビ系「鳥人間コンテスト2017」にて放送予定です。

練習中のMeister

マイスター代表 張葉平さん(工学部 無機材料工学科 3年)のコメント

7月30日にマイスターが鳥人間コンテストに出場してきました。

前回は出場できなかったので、東工大復活・リベンジをかけての出場でした。

本年のマイスターの特徴の三本柱は、「歴代最強最重量級パイロット」「超高性能機体」「男子のみによるチーム」です。

歴代最強最重量級パイロット

パイロットの五十嵐俊介(工学部 機械宇宙学科 3年)は、体重・出力ともに歴代最高でした。1年生のパイロット選考時設計出力を超える出力を出した彼は、本コンテストへの出場に向けて、そのしぼられた筋肉にさらなる磨きをかけました。操舵に関しても歴代ナンバーワンの技術と名高く、安定した飛行ができました。

超高性能機体

左右非対称フェアリング
左右非対称フェアリング

マイスターの機体は毎年改良を続けていますが、今回は例年の精度の高さと比較しても格段に高性能化しました。特に今回は、東工大のスーパーコンピュータ「TSUBAME」を利用して、空気力学的に良い特性を持つフェアリング(コックピット)を設計することに力を入れました。前回から解析に解析を加え、ついに「左右非対称フェアリング」という解を得ました。

フェアリング…空気抵抗を軽減するため、飛行機、自動車、オートバイなどの前面に取り付けられる覆いのこと。

男子のみによるチーム

チームとしては、男子だけというストイックなチームであり、独特な色を持ったチームでした。お互いを叱咤激励しながら頑張った1年でした。

1年間、寝る間を惜しんで作ったマイスターの機体、パイロットの最後の粘りをご覧いただけたら幸いです。

  • 番組名
    読売テレビ・日本テレビ系「鳥人間コンテスト2017」
  • 放送予定日
    2017年8月23日(水)19:00 -
練習中のMeister
練習中のMeister

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

2016年度 東工大リベラルアーツミニシンポジウム「東京防災を超えて」年間開催報告

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博士文系教養科目は2016年4月から新規開講され、2016年度4月入学の博士後期課程学生については卒業までに2科目を履修することになりました。

本科目は、リベラルアーツ研究教育院の金子宏直准教授と原田大介准教授が担当する学生プロデュース科目と、同教育院の猪原健弘教授が担当する教養先端科目から構成されています。

前者は学術学会運営を学び、後者は学術学会の発表を学ぶ科目で、この2つの科目では、年間にわたる統一テーマについて共同で研究調査活動が実施できるように計画されており、第2クォーター、第3クォーターと第4クォーターの最終回には、ポスター発表会と講演会からなるミニシンポジウムを開催しました。

また、このミニシンポジウムの講演録およびポスター発表は、学生による編集委員会が編纂するジャーナル(Journal of Tokyo Tech Liberal Arts Mini-symposium)1号から3号として公刊しました(学内のみ配布)。

第1回

日時
2016年7月30日(土)
場所
大岡山キャンパス 西9号館(コラボレーションルーム、ディジタル多目的ホール)
テーマ
「東京防災を超えて ―科学と技術―」
(Beyond Prevention of Tokyo Disaster, Science and Technology)

第2回

日時
2016年11月12日(土)
場所
大岡山キャンパス 西9号館(コラボレーションルーム、ディジタル多目的ホール)
テーマ
「東京防災を超えて ―情報と災害への対応―」
(Beyond Prevention of Tokyo Disaster, Information and Impact Management)

第3回

日時
2016年1月21日(土)
場所
大岡山キャンパス 西9号館(コラボレーションルーム、ディジタル多目的ホール)
テーマ
「東京防災を超えて ―持続可能な社会と経済―」
(Beyond Prevention of Tokyo Disaster, Sustainable Society and Economy)

この講演会は東工大の博士後期課程学生、教職員を対象としていますが、東工大発国際学術活動を創設する実践的先進的プロジェクトの一端としての取組みについて、各回の様子を通じてご紹介します。

第1回では23グループ(1グループ4名)によるポスターセッションが行われました。また、科目担当教員の金子准教授が博士文系教養科目の紹介をした後、学生の司会進行により、特別講演2件が行われました。

  • ポスターセッションの様子

    ポスターセッションの様子

  • 中島教授による講演

    中島教授による講演

第一講演では、安藤真理事・副学長(研究担当)が「防災における無線通信の活用」(Wireless Communication Systems and Disaster Prevention)として、通信技術の特徴、防災減災分野での様々な活用例を取り上げたのち、最新の大容量高速通信技術について講演をしました。

第二講演では、理学院地球惑星科学系の中島淳一教授が「首都圏の地震テクトニクス」(Seismotectonics beneath Kanto)として、首都圏の地震発生のメカニズムと特徴について専門的知見を取り上げたのち、首都圏地震に関連した防災減災について話しました。

講演終了後、教養先端科目履修者のグループによるポスター発表のうち、参加者の投票で選ばれたポスターと招待講演者の協議により選ばれたポスター発表に対する表彰式が行われました。

安藤理事・副学長によるポスター表彰

安藤理事・副学長によるポスター表彰

第2回では、前回よりも多い29グループ(1グループ4名)によるポスターセッションが行われました。ポスターセッションでは、学生同士の名刺交換やコメント対応、教員からの質問に熱心に説明する姿も見られました。前回同様に担当教員からの科目紹介の後、学生の円滑な司会進行により、特別講演2件が行われました。

  • ポスターセッションの様子

    ポスターセッションの様子

  • 和田物質理工学院長と学生のディスカッション

    和田物質理工学院長と学生のディスカッション

学生による司会とミニシンポジウムのスタッフ学生

学生による司会とミニシンポジウムのスタッフ学生

  • 寺田講師の講演

    寺田講師の講演

  • 髙木准教授の講演

    髙木准教授の講演

第一講演では、理学院化学系の寺田暁彦講師が、「火山の災害と恵み」(The Hazards and Benefits of Volcanoes)として草津白根山観測での経験を交えながら、火山災害の特質について話しました。

第二講演では、環境・社会理工学院融合理工学系の髙木泰士准教授が、「予期せぬ災害と合理的な避難 ―アジアの沿岸域災害研究を通じて考える」(Unprecedented Disasters and Rational Evacuation -Lessons Learnt from Coastal Disaster Research for Asian Countries)として、アジア地域での豊富な調査に基づき護岸堤防などの防災施設の現状と課題について講演を行いました。講演後には、フロアから積極的に質問が出るなど活発な質疑応答が行われました。

フロアからの質問

フロアからの質問

講演終了後、教養先端科目履修者のグループによるポスター発表のうち、参加者の投票で選ばれたポスターと招待講演者の協議により選ばれたポスター発表について表彰式を行いました。三島良直学長が、講評ともにポスターの特別表彰を行いました。

三島学長によるポスター特別表彰

三島学長によるポスター特別表彰

第3回では27グループ(1グループ4名)によるポスターセッションが行われました。科目担当教員が博士文系教養科目について紹介し、また、近い将来に海外の大学の研究者を講演者に呼ぶことを想定して、今回のミニシンポジウムではインターネットを通じた講演を行うなどの新しい試みを取り入れていることを説明した後、学生の司会進行により、特別講演3件が行われました。

第一講演は、熊本大学政策創造研究教育センターの安部美和特任助教(同大学地域創生推進室兼務)が、スカイプを利用して「熊本大学避難所で私たちができたこと~熊本地震からの教訓~」(What we could do at Evacuation Center in Our University: Lessons Learned from Kumamoto Earthquake 2016)として、2016年におきた熊本地震直後の熊本大学での避難所運営について詳しく講演しました。

第二講演では、静岡大学大学院総合科学技術研究科の遊橋裕泰准教授が、「原発事故からの避難と地域社会」(Effect of Evacuation from Nuclear Disaster to Local Society)として、東日本大震災と密接に関連する原発事故による避難の実態と地域社会の取り組みのありかたについて話しました。

第三講演では、関東労災病院の岡崎裕司副医院長(同病院地域連携室兼務)が、「災害時の医療機関の役割」(The role of medical institutions in the event of a disaster)と題して、災害時の救急医療における救命の重要点について講演を行いました。

講演後のQ&Aセッションでは、スカイプを利用し安倍特任助教と本学学生との間で英語による熱心な質疑応答が行われました。

  • 遊橋静岡大学准教授による講演

    遊橋静岡大学准教授による講演

  • 岡崎関東労災病院副医院長による講演

    岡崎関東労災病院副医院長による講演

水本副学長によるポスター表彰

水本副学長によるポスター表彰

最後に、総評を水本哲弥副学長(教育運営担当)が、ポスター表彰式を和田雄二物質理工学院長が行いました。

最終回のミニシンポジウム終了後、学生が準備して開催した懇親会には、講演者の先生や蔵前工業会の方など多くの方々が参加しました。

各回のミニシンポジウム会場退出時には、「全員あくしゅ」をして、履修学生と教員とのコミュニケーションの推進が図られました。

毎回恒例の「全員あくしゅ」の様子

毎回恒例の「全員あくしゅ」の様子

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院 事務文系教養事務

Email : ilasym@ila.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-7689

NHK Eテレ「サイエンスZERO」にロボット技術研究会、清水優史名誉教授が出演

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東京工業大学ロボット技術研究会のチームMaquinista(以下、マキニスタ)が、NHK Eテレ「サイエンスZERO」で紹介されます。

ロボット技術研究会は機械工作・電子工作・プログラミングなどのものつくり活動を行う東工大の公認サークルです。

マキニスタは、今年6月に行われた「NHK学生ロボコン2017~ABUアジア・太平洋ロボコン代表選考会~」で見事初優勝し、ロボコンの世界大会「ABUロボコン」の日本代表出場権を獲得しました。

「サイエンスZERO」は、私たちの未来を変えるかもしれない最先端の科学と技術を紹介するとともに、世の中の気になる出来事に科学と技術の視点で切り込む番組です。

2017年8月27日(日)に迫ったロボコンの世界大会「ABUロボコン」の見どころを案内するほか、6月の日本代表選考会で出場権を勝ち取った、東京工業大学と東京大学の最新事情を紹介します。また、中国、ベトナム、タイ、ネパールなど、お国柄表れる各国のロボットと大会の魅力を、本学の清水優史名誉教授を始めとする専門家が徹底解説します。

  • 番組名
    NHK Eテレ「サイエンスZERO」
  • タイトル
    ライブ配信、ますますパワーアップ!ABUロボコン直前SP
  • 放送予定日
    2017年8月20日(日) 23:30 - 24:00

問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

平成29年度「東工大挑戦的研究賞」受賞者決定

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平成29年度「東工大挑戦的研究賞」受賞者決定

挑戦的研究賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するとともに、研究費の支援を行うものです。本賞を受賞した研究者からは、数多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。

第16回目の今回は13名が選考されました。

受賞者一覧

受賞者
所属
職名
研究課題名( * は学長特別賞)
助教
* ワイドギャップパワーデバイスの量子センシング技術の開発
准教授
* 大量核酸供給を可能にする革新的マイクロフロー合成法開発への挑戦
准教授
* 高難度反応実現のための複合酸化物触媒の創製
准教授
磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造における室温量子異常ホール効果の実現
准教授
アロステリズム応答性糖センシング
准教授
2値化による超低消費電力ディープラーニング専用プロセッサの創出
准教授
耐熱超合金の破壊プロセスに対する結晶破壊力学アプローチ
講師
カソードルミネセンスによるナノスケール複素電場マッピング
助教
リファクタリング技術による多様なソフトウェア開発成果物の完全化保守支援
助教
細胞内タンパク質結晶を用いた革新的構造解析手法の開発
助教
熱画像風速測定法による都市歩行者レベルの風の空間分布計測
准教授
情報過剰の時代における政治の情報発信と受容に関する研究
助教
過酷流動環境下における機能分担型多重界面構造の機能発現実証研究

(所属順・敬称略)

西原秀典助教が日本遺伝学会奨励賞を受賞

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東京工業大学 生命理工学院の西原秀典助教が日本遺伝学会奨励賞を受賞しました。

研究題目
「脊椎動物の系統と転移因子に関するゲノム進化学的研究」

日本遺伝学会は、遺伝学の進歩を促しすぐれた研究業績を一般に知らせるために、学会賞および奨励賞を設けています。奨励賞は、遺伝学の特定の分野ですぐれた研究を活発に行い将来の成果が期待される会員に授与されるものです。受賞式は2017年9月14日(木)に日本遺伝学会第89回大会(岡山大学)にておこなわれます。

西原助教は、脊椎動物、特に哺乳類の分子系統学においてゲノムスケールの情報解析を早くから取り入れ、解決困難であった数々の系統学的諸問題を明らかにしてきました。また様々な脊椎動物のゲノムプロジェクトに参画し、特にゲノム中に散在する転移因子の多様性解明に寄与してきました。さらに最近では、哺乳類の進化の過程で転移因子が重要な機能獲得の原動力になることを明らかにしています。これらの業績が高く評価され、今回の受賞に繋がりました。

西原助教のコメント

西原秀典助教
西原秀典助教

この度、日本遺伝学会の奨励賞という栄誉ある賞を受賞することになり、大変光栄であると同時に、非常に身の引き締まる思いです。

これまでにご指導いただいた先生方や先輩方、また共同研究者の皆様に深く感謝を申し上げます。

この賞に恥じぬよう、今後もより一層研究に精進し、遺伝学・進化学の発展に貢献していきたいと思います。

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

生命理工学院 西原秀典

Email : hnishiha@bio.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5742

東工大生がハーバード大生等と交流~大倉山学生フォーラム・たたら製鉄ワークショップ

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6月24日、横浜市大倉山記念館で「大倉山国際学生フォーラム横浜2017」がハーバード大学等の主催で開催され、東工大からも学生が参加しました。今年で6回目となる本フォーラムは、ハーバード大学の学生がサマースクールやインターンシップなどで日本に滞在中に、日本文化をテーマに日本の大学生と国際交流するイベントです。日本からは、東京工業大学、慶應義塾大学、横浜市立大学の学生(各10名、計30名)が集まりました。

大倉山国際学生フォーラム横浜での集合写真

大倉山国際学生フォーラム横浜での集合写真

今回は、アナウンサー・古典芸能解説者の葛西聖司氏による「歌舞伎の魅力」をテーマにした講演と、日本舞踏家の市川ぼたん氏による「日本舞踊の魅力」をテーマにした実演が行われました。また、葛西氏と市川氏、歌舞伎研究家・翻訳者のマーク大島氏による「日本の伝統芸能のすばらしさ」をテーマにした鼎談も行われ、その熱のこもった話に、参加した学生たちは興味深く聞き入りました。わかりやすい説明で歌舞伎の基礎的な知識を身につけ、日本文化を知ることができました。

手作りの鍛冶炉でペーパーナイフづくり
手作りの鍛冶炉でペーパーナイフづくり

また、7月22日には東工大大岡山キャンパスで、「たたら製鉄ワークショップ」が開催されました。東工大の学生10名、「大倉山国際学生フォーラム」に参加したハーバード大学の学生7名とジャパンプログラム※1で来日中のマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生6名、合わせて23名が参加しました。

本ワークショップは、今年度から実施され、海外の大学生に東工大の活動と日本文化、ものつくりを理解してもらうために企画されました。日本の伝統技術である和鉄づくりと、日本の歴史や神事に欠かせない刀に関する講義と実践を行いました。

「たたら製鉄」は、砂鉄を木炭によって還元し鉄を得る、日本独自の製法です。このような製法でつくられた鉄は「和鉄」と呼ばれ、非常に純度が高く、良質で日本刀などに使われています。参加者は、 本学教員や新日鐵住金株式会社が協力する任意団体「ものづくり教育たたら連絡会」の支援のもと、たたら製鉄の手法を用いて和鉄を作り、手作りの鍛冶炉で鉄の棒からペーパーナイフを作る体験をしました。

  • たたら炉の横でふいごを踏み炉に空気を送り込む様子

    たたら炉の横でふいごを踏み炉に空気を送り込む様子

  • 松田刀匠(写真右)制作の日本刀を鑑賞

    松田刀匠(写真右)制作の日本刀を鑑賞

また、千葉県無形文化財の保持者でもある刀匠の松田次泰氏から日本刀についての講義があり、その中で、日本刀の芸術品としての価値とともに、日本人の美の捉え方について語られました。さらに松田氏は、日々の努力の積み重ねと精神力、理論と実践を備えた確かな技術に支えられる日本伝統のものつくりの考え方を伝えました。

両イベントは、日本の伝統芸能鑑賞やものつくりの体験を通じ、日米学生間の国際交流が進み、友好関係を築く素晴らしい機会となりました。

たたら製鉄ワークショップ後に、全員で集合写真

たたら製鉄ワークショップ後に、全員で集合写真

参加者のコメント

岡朋宏さん(東京工業大学 工学部 機械学科4年)

私は、東工大グローバル理工人育成コース※2を通じてこのプログラムを知り、国際交流で自分の視野を広げたいと思い、参加をしました。

「大倉山国際学生ファーラム横浜」では、実際に市川ぼたんさんの舞踏を目の当たりにし、日本文化や歌舞伎への興味が深まりました。日本人であってもなかなか歌舞伎に触れる機会は少なく、今回はハーバード大学の学生と一緒に、改めて日本の伝統文化を学ぶことができ、とても新鮮に感じました。

「たたら製鉄ワークショップ」は、炎天下で火を扱うため体力的には大変な状況でしたが、学生たちの熱気はそれ以上で、楽しく和鉄とペーパーナイフを作ることができました。

両イベントを通じて印象的だったのは、アメリカの学生たちの学ぶ意欲の高さです。少しでも気になることがあったら積極的に質問をしたり、近くの学生とディスカッションしている姿を何度も目にしました。また、多くの学生が日本語を積極的に話していたことも印象的でした。多少間違っていてもどんどん日本語で日本人の学生とコミュニケーションを図っていき、私たちからにフィードバックをもらっていました。このような“前のめり”に学ぶ姿勢はこれからグローバルに活躍していく上で必要不可欠であり、見習っていきたいと思いました。また、日本人として、日本の文化の深い理解が必要であることも強く感じました。

※1
日本の企業、研究所等でインターンシップを行うプログラムです。詳しくはMIT-Japan Program(English)outerのサイトをご覧下さい。
※2
世界の企業、大学、研究所、国際機関など、様々な分野で活躍できる科学者・エンジニア・技術者=「グローバル理工人」を育成するために2013年度に開設したコース。系・コースの標準課程で身につける専門性に加え、高い国際性を養います。東工大に入学してきた学士課程の学生を対象にした初級・中級コースと、修士課程を対象にした上級コースがあります(上級コースは2017年4月より新設)。

お問い合わせ先

グローバル人材育成推進支援室(担当:村上(菜)、太田)

Email : ghrd.info@jim.titech.ac.jp


平成29年度 東京工業大学社会人アカデミー主催/蔵前工業会共催 講演会「進化する生命」開催

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科学技術は、人類の想像力は、生命をいかに進化させるのか。研究、開発、制作の最前線に立つ講師を迎え、「生命」の未来に迫ります。

日程
2017年9月30日(土)、10月14日(土)、11月18日(土)
場所
申込詳細

講演日時・講演者(以下講演順:敬称略)

  • 9月30日(土)
    17:00 - 19:00

    「人間社会からデジタルネイチャーへ:計算機の生命的自然化」
    講演者:落合陽一(筑波大学/Pixie Dust Technologies.inc)

  • 10月14日(土)
    10:00 - 12:00

    「進化する人類:幹細胞とイノベーション」
    講演者:仙石慎太郎(東京工業大学)

  • 10月14日(土)
    14:00 - 16:00

    「細胞の顔にも多様性や表情がある~糖鎖科学の世界~」
    講演者:森俊明(東京工業大学)

  • 11月18日(土)
    15:00 - 17:00

    「時間の生き方:生物学から考える」
    講演者:本川達雄(東京工業大学)

  • 11月18日(土)
    18:00 - 20:00

    「Speculative Design ― 社会×テクノロジーの未来を提案し、議論するためのデザイン」
    講演者:スプツニ子!(マサチューセッツ工科大学)

「ヴァーチャルリアリティ(VR)」(2015年度)、「深海と宇宙」(2016年度)など、毎回話題のトピックを掲げ好評を集めてきた注目の講演会。現在着手されつつある研究・制作の成果は?そこに至るまでにどんな試行錯誤や背景があったのか?

企画・運営は東京工業大学で社会人向け講座・講演会を企画・運営する東京工業大学社会人アカデミー。宮本明子東京工業大学助教が司会進行を務め、会場との質疑応答も開催します。

昨年は大隅良典栄誉教授の「ノーベル生理学・医学賞」受賞に沸いた東京工業大学は、「生命」分野でも大きな成果を生み出してきました。多数の研究施設が連なる本学・大岡山キャンパスにて、本学学生・教職員のみならず、一般・メディアの皆様のご来場をお待ちしています。

講演会「進化する生命」 チラシ表

講演会「進化する生命」 チラシ裏

お問い合わせ先

東京工業大学 社会人アカデミー事務室

E-mail : jim@academy.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8722、03-3454-8867
FAX : 03-3454-8762

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

「インドネシア―日本 共同セミナー ―近未来の鉄道と都市開発―」開催報告

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屋井副学長(産学官連携担当)のオープニングスピーチを聞く参加者

屋井副学長(産学官連携担当)のオープニングスピーチを聞く参加者

環境・社会理工学院は、7月26日、「インドネシア―日本共同セミナー ―近未来の鉄道と都市開発―」を、東京工業大学大岡山キャンパスで開催しました。

急速な経済成長により、近年のインドネシアは交通を起因とする環境問題に直面しており、ジャカルタ・バンドン・スラバヤのような大都市での交通渋滞解消が、喫緊の課題となっています。

この課題に対し、インドネシア政府は、LRT(次世代型路面電車システム)や地下鉄などの公共交通の導入による慢性的な交通渋滞の緩和を検討しています。また、本学でもバンドン工科大学のナショナル・センター・フォー・サステイナブル・トランスポーテーション・テクノロジー(以下、NCSTT)と共に、インドネシアを対象とした、先進的な鉄道技術・計画と都市開発についての共同研究を計画しています。

本セミナーは、インドネシアと日本両国の強固な産学連携のネットワークによる、インドネシアの鉄道開発と都市開発の推進を目的に開催されました。

屋井鉄雄副学長(産学官連携担当)のオープニングスピーチで始まり、本セミナーがインドネシアの鉄道開発の重要なマイルストーンになること、さらに東工大とバンドン工科大学との連携がさらに深まることが強調されました。

続いて、インドネシア大使館のアリンダ・ザイン教育担当アタッシェから開会の挨拶があり、インドネシア政府が、交通の技術開発に関してバンドン工科大学に設置されたNCSTTへ、多くの研究資金を分配していることに言及しました。

開会の挨拶に続き、バンドン工科大学のサントーサ・シギット教授、NCSTT所長による基調講演「インドネシアにおける鉄道の技術革新と公共交通産業」が行われました。

サントーサ教授は、「インドネシアは、同じ間違いを繰り返さないためにも、成功事例から多くを学ぶだけでなく、失敗事例からも学ぶべきである」と、日本の鉄道・都市システムから多くの事例を吸収したい、と述べました。

環境・社会理工学院融合理工学系の花岡伸也准教授は「アジアの都市交通と開発の推移」について、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)パリ事務所の中島康成代表からは、「過去から現在までのJR東日本の取り組み」についての講演がありました。

本セミナーには多くの日本企業の参加があり、参加者のアンケートからは、インドネシアでの市場拡大に関心があり、東工大とバンドン工科大学の共同研究に参画し、インドネシア市場に関する重要な情報を得たい、との回答もありました。

環境・社会理工学院の岸本喜久雄学院長による参加者とのオープン・ディスカッションが行われ、東工大とバンドン工科大学の共同研究に関する説明がありました。共同研究をどのように開始するのかなど、熱心な意見交換がなされ、地政学的見地による鉄道安全技術の開発、公共交通指向型開発、およびその事業化戦略、鉄道産業政策に関する研究など、いくつかのトピックが共同研究の最初のステップとして提案されました。

最後に、バンドン工科大学を代表し、サントーサ教授から東工大とセミナー参加者に対して謝意が述べられ、本セミナーは終了しました。

バンドン工科大学 サントーサ教授による基調講演

バンドン工科大学 サントーサ教授による基調講演

  • 花岡准教授の講演

    花岡准教授の講演

  • 環境・社会理工学院の岸本学院長によるオープン・ディスカッションとクロージング

    環境・社会理工学院の岸本学院長による
    オープン・ディスカッションとクロージング

環境・社会理工学院

環境・社会理工学院 ―地域から国土に至る環境を構築―
2016年4月に発足した環境・社会理工学院について紹介します。

環境・社会理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

環境・社会理工学院 ファリド・トリアワン特任講師

E-mail : triawan.f.aa@m.titech.ac.jp

金原子接点を用い両極性の電池創生に成功 ―排熱を電気に変える単一材料の高性能熱電素子実現へ―

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要点

  • 金原子接点に温度勾配をかけることで、正および負の電圧を発生させることに成功
  • 金原子接点を圧縮、伸長させ、可逆的に発生する電圧の極性、大きさを自在に制御
  • 可逆的な両極性の電圧発生はAu原子接点内の電子波の干渉効果に由来

概要

東京工業大学 理学院 化学系の相場諒大学院生(修士2年)、金子哲助教、木口学教授らのグループは、金原子接点に温度勾配をかけることにより、正および負両方の極性の電圧を自在に発生させることに成功した。単一物質で熱による発電を実現したもので、理論的な解析により、金原子接点内に形成される電子波が干渉し、両極性の様々な電圧が発生することを明らかにした。

金原子接点は超高真空・極低温(-260 ℃)の環境下において、金細線を伸長させて作製した。金細線の両端にヒーターと温度計を取り付け、温度勾配を金原子接点に与えながら、電気伝導度と熱によって発生する起電力を同時に計測した。その結果、熱起電力[用語1]の極性およびその大きさを、金原子接点の構造をわずかに変えることにより自在に制御できた。

両極性の熱起電力を単一物質で発生できたため、今後は正負の熱起電力を発生する原子接点を複数連結し、システムとして発生する電圧を増大させて、排熱から電気を発生させる熱電変換素子への応用に取り組む。

研究成果は2017年8月11日発行の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

金原子接点を用いた両極性の熱起電力発生の概念図

図1. 金原子接点を用いた両極性の熱起電力発生の概念図

研究の背景

物質に温度勾配を与えると、物質内の電子の運動性が位置によって変化し、物質の両端に電圧が発生する。この熱により発生する電圧は熱起電力と呼ばれ、排熱を電気に変換する熱電変換素子に応用されている。一つの材料で発生する熱起電力の大きさはマイクロボルト(μV =10-6 V)オーダーと小さい。このため、実際の熱電変換素子[用語2]は正負の熱起電力を発生する材料を交互に積層させて、実用に耐える電圧を発生させている。

したがって熱電変換素子の開発は正負両方の熱起電力を発生させる材料開発が不可欠である。これまで熱電材料として用いられてきた物質は発生する熱起電力の符号は材料物質によって一意に決まっており、単一の材料から正負両方の熱起電力を発生させることは困難だった。

研究成果

東工大の相場大学院生らは、単原子・単分子レベルの材料では熱起電力がその電子状態に敏感に応答することに着目し、構造を変えることにより熱起電力の符号、大きさを変調させることに挑戦した。対象の物質として、熱起電力を決定づける電子状態が構造によって敏感に変わることが期待される金を採用した。

図2に金(Au)原子接点の作製および熱起電力の作製装置の概念図を示す。超高真空、-260 ℃の極低温において、Au線を固定した弾性基板を後ろから押し曲げることで破断させた。割りばしを折り曲げて割るイメージである。押す力をコントロールすることで、Au線の伸長距離を精密に制御し、Au原子接点を作製した。

Au原子接点の太さや長さは、弾性基板の湾曲具合を変えることで、制御できる。基板を曲げながら、Au線の両端に電圧を与え、流れる電流を計測することで、最も細くなっている部分、つまり原子接点の伝導度を決定し、原子接点の形成を確認した。

熱起電力の測定は、Au線の片側をヒーターで加熱してAu原子接点に温度勾配を与え、発生する電圧を計測した。実験では、伝導度と熱起電力を交互に計測することにより、Au原子接点の状態を確認しながら、熱起電力を計測した。

Au単原子接点を作製する装置の概念図。弾性基板上に固定したAu線を、基板を湾曲させることで破断し、Au原子接点を作製。下は破断後に計測した接合近傍の電子顕微鏡像

図2. Au単原子接点を作製する装置の概念図。弾性基板上に固定したAu線を、基板を湾曲させることで破断し、Au原子接点を作製。下は破断後に計測した接合近傍の電子顕微鏡像

図3はAu原子接点の圧縮、伸長を繰り返した際の原子接点の熱起電力と電気伝導度の同時計測結果である。電極間距離を1 nm(ナノメートル)程度変化させるだけで、熱起電力が可逆的に、正負の符号反転を伴いながら400%も変化する様子が観測された。Auという単体の物質で、正負両方の電圧を発生させることに初めて成功した。

ちなみに、伸長、圧縮に伴ってAu原子接点の電気伝導度も変化しているが、その変化量は44 %にとどまっている。ここで電極間距離の変位を0.1 nmまで減少させても、400%を超える熱起電力変化は観測された。なお伝導度変化は5%まで減少した。Au原子接点の熱起電力が電気伝導度と比較して、構造変化に敏感に応答していることが分かる。

Au原子接点に発生した熱起電力は、電極間距離を一定に保つと、40分以上変化しなかった。そして圧縮、伸長を繰り返すと30回以上、図3に示すように二値の間を可逆的にスイッチし、優れた特性を示した。さらに詳細な計測を行うことで、Au原子接点が細くなるほど、構造変化に対する熱起電力の応答性が向上することが明らかになった。

Au原子接点の直径を0.5 nmから0.25 nmにすると、熱起電力の変化量は2倍に増加した。また構造変化量に対する変化量の関係も、電気伝導度と熱起電力では異なった。電気伝導度は変位量に従って単調に増加するが、熱起電力は0.1 nmのわずかな変位でも400%近い変化を示した。そして0.5 nm以上の変位では変化量が一定になった。電気伝導度が接合の太さに依存するのに対し、熱起電力が接合の太さに依存しないことに由来している。

左はAu原子接点を機械的に伸長、圧縮させた際の熱起電力(VT)と伝導度(G)の同時計測結果の例。一番下は電極の変位の大きさを示す。伸長、圧縮を繰り返すことで、熱起電力が正負反転して、可逆的に変化している様子が分かる。右は対応する原子接点の概念図

図3. 左はAu原子接点を機械的に伸長、圧縮させた際の熱起電力(VT)と伝導度(G)の同時計測結果の例。一番下は電極の変位の大きさを示す。伸長、圧縮を繰り返すことで、熱起電力が正負反転して、可逆的に変化している様子が分かる。右は対応する原子接点の概念図。

Au原子接点から両極性の熱起電力が発生するのは、Au原子接点内の量子的な干渉効果によって説明できる。図4aに示すように、金の原子接点内を電子が左から右に流れる状況を考える。右に進む電子の一部は、接点近傍に存在する欠陥により後方散乱され、左に進む。一度散乱された左向きの電子がまた別の欠陥に散乱されると、電子は右に進む。散乱されなかった電子と2回散乱された電子が互いに干渉することになる。

原子接点の構造を変えることにより、欠陥の間の距離が変わり、電子の干渉の様子が変化する。この電子の干渉により、電子が原子接点を透過する確率が変化する。図4efに、2つの異なる構造をもつAu原子接点における電子の透過率の計算結果を示す。透過率はすべてのエネルギー領域でおおよそ1であるが、干渉の効果により一部、1より小さな値となっている。どのエネルギーで大きく変化しているかは構造に依存している。

a)Au原子接点における電子波の干渉の様子。接合をそのまま透過する電子波と、接点近傍の欠陥により2回散乱された電子波が干渉する。(b)接点近傍の欠陥の間隔を変えた場合の干渉の様子(c,d)異なる構造をもつAu原子接点のモデル構造(e,f) Au原子接点における電子の透過率のエネルギー依存性(g,h) Au原子接点における熱起電力のエネルギー依存性。フェルミ準位における透過率曲線のエネルギー微分に対応する

図4. (a)Au原子接点における電子波の干渉の様子。接合をそのまま透過する電子波と、接点近傍の欠陥により2回散乱された電子波が干渉する。(b)接点近傍の欠陥の間隔を変えた場合の干渉の様子、(c,d)異なる構造をもつAu原子接点のモデル構造、(e,f)Au原子接点における電子の透過率のエネルギー依存性、(g,h)Au原子接点における熱起電力のエネルギー依存性。フェルミ準位における透過率曲線のエネルギー微分に対応する。

Au原子接点の熱起電力は、フェルミ準位[用語3]における透過率曲線のエネルギー微分に対応する。図4ghに熱起電力の計算結果を示したが、構造をわずかに変えるだけで熱起電力の符号が反転していることが分かる。つまり、Au原子接点の構造を変えることで、電子状態を変調させ、熱起電力の符号、大きさを制御したことになる。

今後の展望

今回の研究により、単一の物質を用いて、正負の熱起電力を発生させることができた。今後、正負の熱起電力を発生させるAu原子接点を交互に積層することで、大きな熱起電力を発生させることに取り組む。これにより、同一の物質を使って、排熱から電気を生みだす熱電変換素子への応用が期待できる。

また今回、単原子を用いて熱起電力の符号反転を含む制御に成功した。今後、原子から分子への展開を考えている。分子の軌道はエネルギー的に局在しており、大きな熱起電力の発生や熱起電力の変調に有利な電子構造となっている。単分子を金属電極間に架橋させた単分子接合を用いて、巨大な熱起電力の発生、熱起電力の制御が期待できる。

単分子接合に圧力を加えることで、金属と分子の接合界面の構造を変調し、単分子接合の電子状態を変化させる。これにより、単分子接合の熱起電力も変調するはずである。分子、電極金属、加える圧力を最適化することで、既存の物質を超えた巨大な熱起電力、熱起電力の制御に挑戦する計画である。

用語説明

[用語1] 熱起電力 : 物質の両端に温度差を与えたときに発生する電圧を表す。単原子、単分子接点では、熱起電力は接点を流れる電子の透過率τの関数として以下の式で表現できる。

熱起電力

ここで、kbはボルツマン定数、Tが温度、eが電荷素量、EFがフェルミエネルギーである。熱起電力はフェルミエネルギーにおける透過率のエネルギー微分に比例する。透過率の対数のエネルギー微分であるので、透過率の大きさには依存しない。このため、接点の太さに熱起電力はあまり依存しない。

[用語2] 熱電変換素子 : 熱を電気に変換する素子。大きな電圧を取り出すため、下図に示すようにp型半導体とn型半導体を組み合わせて使用されることが多い。p型半導体では高温側が負、n型半導体側が正の電圧が発生する。したがって、高温側でp型半導体とn型半導体を電気的につなぐと、低温側でp型半導体に接続した電極1、n型半導体に接続した電極2の間にp型、n型半導体で発生した熱起電力の和の電圧が発生する。このようにp型、n型半導体を配列していくと大きな電圧を発生させることができる。

熱電変換素子

[用語3] フェルミ準位 : 物質の軌道に電子をつめていって、電子によって占められた軌道のうちで最高の軌道のエネルギーを示す。0 K(絶対零度)においては化学ポテンシャルと一致する。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports, 7, 7949.
論文タイトル :
Controlling the thermoelectric effect by mechanical manipulation of the electron's quantum phase in atomic junctions
著者 :
Akira Aiba1, Firuz Demir2,3, Satoshi Kaneko1, Shintaro Fujii1, Tomoaki Nishino1, Kazuhito Tsukagoshi4, Alireza Saffarzadeh2,5, George Kirczenow2, Manabu Kiguchi1
所属 :
1Department of Chemistry, Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8551, Japan
2Department of Physics, Simon Fraser University, Burnaby, British Columbia, Canada V5A 1S6
3Physics Department, Khalifa University of Science and Technology, P.O. Box 127788, Abu Dhabi, UAE
4National Institute for Materials Science, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan
5Department of Physics, Payame Noor University, P.O. Box 19395-3697 Tehran, Iran
DOI :

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

研究に関するお問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系
助教 金子哲

E-mail : kaneko.s.aa@m.titech.ac.jp

東京工業大学 理学院 化学系
教授 木口学

E-mail : kiguti@chem.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2071 / Fax : 03-5734-2071

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

第4回大岡山健康講座開催報告

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6月27日、東工大リベラルアーツ研究教育院は、大岡山駅上にある東急病院との共催で、本学メインキャンパスのある大岡山駅の周辺地域や東急線沿線にお住まいの方々を対象にした「第4回大岡山健康講座」を開催しました。 当日は97名の参加があり、健康に対する関心の高さが伺えました。

東急病院の母体である東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)は、2015年3月に従業員の健康管理を行う優良企業として経済産業省と東京証券取引所より「健康経営銘柄」に選定されました。それに伴い、東急病院のある大岡山駅周辺を「健康ステーション大岡山」と称し、健康の発信拠点として、さまざまな取り組みを実施しています。東工大も、リベラルアーツ研究教育院の林直亨教授の監修のもと、健康啓発ポスターの作成や、工大祭でのウォーキングイベントの開催に取り組んできました。 本講座も、この取り組みの一環として、2部にわたって開かれました。

第1部「しなやかな「こころ」のつくり方」

  • リベラルアーツ研究教育院 永岑光恵准教授

リベラルアーツ研究教育院 永岑光恵准教授

永岑准教授は、ストレスメカニズムを専門に研究を行っています。今回の講演では、しなやかな「こころ」を持つことの重要性について話しました。壊れることなく、もとの形に戻れば、物理学的にその物体は「レジリエント」であると表現されます。

人が逆境を跳ね返して生き抜く力は何なのか、1970年代からレジリエンス(しなやかさ)を対象とする研究が行われてきました。2012年には、『ネイチャー(Nature)』と『サイエンス(Science)』という有名科学誌でレジリエンスがトピックスとして取り上げられるなど、近年注目されています。

永岑准教授は、しなやかな「こころ」の主な構成要素は、「社会的なつながりがある」「認知的な柔軟性がある・対処への自己効力感がある」「人生の意味、目的を知る」の3つであると説明しました。

特に、「社会的なつながりがある」という点については、従来から健康を害するものとしてよく知られている喫煙や多量飲酒に匹敵するくらい、社会関係の喪失が死亡リスクを高めることを明らかにしたホルト・ランスタッドら(2010)の研究を紹介しました。

続いて、しなやかな「こころ」の向上につながるアプローチ方法として、ストレス対処方法を多く持つことが重要だとし、意識して増やすように勧めました。

永岑准教授は「しなやかな『こころ』は私たちにもともと備わっています。それに気づき、日々鍛えながら、より良い『しなやかさ』を作っていきましょう」と語って講演を締めくくりました。

第2部「糖尿病ってどんな病気?病気の理解と予防」

  • 東急病院 友安雅子医師、宗村文江看護師長

今回の講演では、友安医師から糖尿病について、宗村看護師長から糖尿病の治療と予防について話がありました。

友安医師

東急病院 友安雅子医師

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の量が、通常よりも多い状態が続く病気です。血糖値が高くなっても自覚症状がほとんどないまま、全身の血管が障害を起こすため、早期発見と適切な治療(食事・運動・薬物)が大切だと話しました。

現代では、日本人の40歳以上の3人に1人が、糖尿病または予備軍です。その歴史は古く、網膜症、神経障害を引き起こし、敗血症で亡くなった藤原道長も糖尿病だったのではないかと言われています。

糖尿病の初期症状はほとんどありませんが、症状が進むと、多尿や、水分を多くとる、空腹感が強くたくさん食べる、体重が減る、疲れやすい、手足が痺れるといった症状が現れます。さらに進むと合併症の危険が高まり、神経障害や網膜症、腎臓障害といった糖尿病の3大合併症を起こす可能性があります。

最後に友安医師から、「糖尿病を放置していると、気付かないうちに合併症が進行します。糖尿病の合併症を防ぐためには、糖尿病や耐糖能異常を早期に発見し、適切に治療することが重要です」との助言がありました。

耐糖能…血糖値を正常に保つ働きのこと。

宗村看護師長

東急病院 宗村看護師長

糖尿病の主な治療方法としては食事療法、運動療法、薬物療法があります。標準体重に合わせた適正カロリーやバランスの良い食事を心掛け、炭水化物のみを極端に制限して減量をはかることは現時点では薦められていないと説明しました。

運動の効果としては、血糖値を下げる、体重を減らす、インスリン感受性の改善などの効果があり、医師のチェックを受けて、病気の進行に合わせた内容で運動することが必要です。

まずは食後の高血糖に注意するよう指摘がありました。一般的な健康診断は空腹時に行いますが、空腹時の血糖値が低くても、食後に測ってみると血糖値が高くなるという糖尿病予備軍の方が多くいます。食後の血糖値の上昇を予防するために、野菜を最初に食べる、ゆっくり食べる、食後に歩行などの軽い運動をすると効果があります。また、肥満になると血糖値が上昇して糖尿病になるリスクが高まるため、食事の仕方・内容に気を付けながら適度な運動をするなど、肥満にならないよう気を付ける必要があります。

宗村看護師長は最後に、「自覚症状が出ていなくても、早期に異常を発見することが大切なため、健康診断を定期的に受けましょう」と呼びかけました。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

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お問い合わせ先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

西森秀稔教授が量子コンピューティング用語の国際標準策定グループのメンバーに就任

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西森秀稔教授が量子コンピューティング用語の国際標準策定グループのメンバーに就任
―電気・電子・情報・通信分野の世界最大の学会IEEE内に設置―

要点

  • 量子コンピューティング関連用語の標準化を電気・電子・情報・通信分野の世界最大の学会IEEEの標準化部門が開始
  • 量子コンピューターD-Waveマシン[用語1]の理論的基礎である量子アニーリング[用語2]を提唱した西森秀稔教授がメンバーに就任
  • IBMおよび1Qbit社[用語3](量子コンピューターのソフト開発企業)の代表らも参加

IEEE Standards Association(アイ・トリプル・イー スタンダード・アソシエーション、標準化部門)[用語4]は量子コンピューターの実装が急速な進展をみせている状況に対応し、ワーキンググループ(WG)を設置して、量子コンピューティング用語の標準化を策定するプロジェクトを開始しました。

当WGでは、量子トンネル現象、量子もつれ現象など量子コンピューティングに関する様々な用語の定義を行います。正確な用語による理解促進を通じて、エンジニアのみならず、材料科学、数学、物理、気象学、生物学など様々な分野での量子コンピューティングの利用拡大を支援していきます。

当WGは、多彩な事業を展開している起業家であるWilliam Whurley氏を委員長として、IBMの量子コンピューター研究開発部門の責任者Jerry Chow氏、1QBit社のCEO Anrew Fursman氏、および東京工業大学 理学院 物理学系の西森秀稔教授などから構成されています。

東京工業大学は量子コンピューティングの一種である量子アニーリングの発祥の地であるだけでなく、現在に至るまで当分野の研究の中心地のひとつとして世界的な注目を集め続けています。その実績を踏まえて、IEEEより西森教授へメンバー就任の要請がありました。

西森教授のコメント

西森秀稔教授
西森秀稔教授

量子コンピューティングの分野は近年急速な成長を遂げており、北米を中心に、大学や公的研究所だけでなくベンチャーも含めた企業の参入が相次いでいます。

新しい分野だけに用語の上でも混乱が見られるため、共通の基盤を策定することが喫緊の課題です。東工大の研究成果も踏まえながら、人類社会の発展に資するべく微力を尽くして参ります。

用語説明

[用語1] D-Waveマシン : カナダのベンチャー企業D-Waveシステムズの量子アニーリング方式の量子コンピューター

[用語2] 量子アニーリング : アニーリング(材料開発のプロセスとして用いられる「焼きなまし」の意)と量子力学を組み合わせた理論

[用語3] 1QBit社 : D-Wave社の量子アニーリングマシン向けの応用ソフトを開発するなど、量子コンピューティングにおける最先端の技術を生かした事業を展開しているカナダのベンチャー企業

[用語4] IEEE Standards Association(アイ・トリプル・イー スタンダード・アソシエーション、標準化部門) : IEEEの一部門で古くから数多くの工業規格の標準を策定してきた。最近の事例では、無線LAN、スマートグリッド、EV(電気自動車)の充電や通信などの現代生活に密着した規格を定めている

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

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教授 西森秀稔

E-mail : nishimori@phys.titech.ac.jp

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大マイスターが「鳥人間コンテスト2017」で5位に

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東工大のものつくりサークル「マイスター(Meister)」が、「第40回鳥人間コンテスト2017」の飛行距離を競う「人力プロペラ機ディスタンス部門」に出場し、飛行距離16,801.28 mで15チーム(大学:12チーム、社会人:3チーム)中、5位の成績を収めました。その模様は8月23日に読売テレビ・日本テレビ系で放映されました。

「グローリア(Gloria)」

「グローリア(Gloria)」

機体名は「グローリア(Gloria)」。Gloriaはラテン語で栄光や蝶を意味します。6回のテストフライトを経て、本番に向けて改良を重ね、“蝶のように飛び、栄光を勝ち取る”という思いを込めた機体が琵琶湖上空に飛び立ちました。昨年、書類選考落ちした悔しさをバネに、マイスターの部員が一丸となって、この1年取り組んできた成果が試されました。マイスターが製作した機体は、鳥人間コンテストの人力飛行機部門の本選でこれまで17回飛翔していますが、今回の飛行距離16,801.28 mは歴代4位の記録となります。

張葉平さん(出場メンバー、前マイスター代表)のコメント

今年は2年ぶりの出場で、「リベンジ」の年でした。大会当日の朝は天候不順で、一度は機体解体を強いられましたが、天気が回復しフライトを行うことができました。

目標の40 kmを達成することができませんでしたが、今後につながるフライトができたと思っております。プラットフォーム上から応援席でたくさんの声援を送っていただいていたのをみて、胸がいっぱいになりました。テレビの前で応援してくださった方、わざわざ現地まで応援に来てくださった方、部員一同を代表して感謝申し上げます。

永島功大さん(マイスター代表 物質理工学院 材料系 学士課程2年)のコメント

1年間先輩方とともに優勝を目指して機体製作に励んでいましたが、満足のいく結果とはなりませんでした。今回味わった悔しさを胸に、先輩方が積み上げてきたものを大事にしつつ、最高の機体を製作し、最高の結果を残せるよう日々頑張っていきます。

出場メンバー

※ 役割は、出場時のものです。

  • 代表

    張 葉平さん(工学部 無機材料工学科 学士課程3年)

  • 設計

    中西将也さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

  • パイロット

    五十嵐俊介さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

  • 翼班

    久保田雅祐さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

    東城宗煕さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

    浅野智聡さん(工学部 機械知能学科 学士課程3年)

    島村健斗さん(環境・社会理工学院 土木・環境工学系 学士課程2年)

    目崎耀也さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)

    後野陸斗さん(工学院 機械系 学士課程2年)

    勝呂光さん(工学院 機械系 学士課程2年)

    清田雅哉さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年)

  • プロペラ班

    音成龍一郎さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

    孫岳さん(工学部 国際開発工学科 学士課程3年)

    増尾威武己さん(工学部 機械科学科 学士課程3年)

    井上時生さん(工学院 システム制御系 学士課程2年)

    永島功大さん(物質理工学院 材料系 学士課程2年)

    玉井亮多さん(工学院 機械系 学士課程2年)

  • Team FRP(人力飛行機の翼桁やメインパイプを製作)

    成井政人さん(工学部 情報工学科 学士課程3年)

    若崎翔吾さん(工学部 無機材料学科 学士課程3年)

    久保諒太さん(物質理工学院 材料系 学士課程2年)

    佐々木瑛太さん(物質理工学院 応用化学系 学士課程2年)

  • コックピット班

    小林研人さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

    松山泰久さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)

    堀智貴さん(工学院 機械系 学士課程2年)

  • フェアリング班

    久保田雄介さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

    鈴木啓介さん(工学院 機械系 学士課程2年)

  • 電装・操縦班

    上野雄祐さん(工学部 機械宇宙学科 学士課程3年)

    正田孝平さん(工学部 制御システム系 学士課程3年)

    高橋洋貴さん(工学院 電気電子系 学士課程2年)

    長谷川夏来さん(物質理工学院 材料系 学士課程2年)

集合写真

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複数の金属からなる新たな電子化物を発見

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要点

  • 金属間化合物[用語1]で電子がアニオンとしてふるまう新しい電子化物[用語2]を発見
  • 結晶構造中の空隙が電子の局在サイトになることを解明
  • アンモニア合成触媒や超伝導を発現するなど様々な特性を持つ

概要

イオン結晶は、カチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)が結びつき、構成されている。マイナスの電荷をもつ電子は、究極のアニオンと言える。電子がアニオンの役割を担う物質は電子化物(エレクトライド)と呼ばれている。1983年に有機化合物で最初の電子化物が合成され、新概念の物質として注目を集め、教科書類にも記載されることになった。しかし、この物質は、化学的・熱的に不安定なために物性については不明な点が多かった。

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の細野秀雄教授・元素戦略研究センター長を中心にしたグループは2003年、12CaO・7Al2O3(C12A7セメントの構成成分)を使って、室温・空気中で安定なエレクトライドの合成に初めて成功。アニオンを電子に置き換えたことに起因する低仕事関数だが化学的に安定というユニークな物性を報告してきた。2011年には電子化物ガラスを、2013年にはアニオン電子が層間に存在する2次元電子化物Ca2Nを報告するなど、電子化物の物質科学の新領域を開拓してきた。本研究では、電子化物のコンセプトをさらに拡張すべく、金属元素から構成される金属間化合物を対象に、結晶構造と電子分布の関係を検討して、電子化物とみなせる物質群の発見と、それらがアンモニア合成触媒や超伝導という物性の発現につながることを見出した。今回の成果は、7月31日発行の「Advanced Material」、8月14日発行の「Angew. Chem. Int. Ed」、8月15日発行の「npj Quantum Materials」に掲載された。

研究成果

これまで見出されてきた電子化物は母体が絶縁体である。ここ数年来、電子化物の理論的研究が世界的に盛んになっている。アルカリ金属などの典型金属の高圧相では、電子が格子間サイトを占有する電子化物であることが明らかになりつつある。

本研究では、母体が複数の金属から構成される金属化合物で電子化物の探索を行った。通常の金属は、電子が格子全体に平均的に分布しており、格子間に電子が高濃度に存在することは考えにくい。そこで今回、個性の大きく異なる複数の金属から構成される金属間化合物に着目して探索を行った。その結果、LaScSi(ランタンスカンジウムシリコン)、Mg2Si(珪化マグネシウム)、Nb5Ir3(ニオブイリジウム)などが、それに相当することを見出した。

例えば、LaScSiは、その式量あたり2つの電子(1.6x1022 cm-3)が、ランタン(La)が作り出す4面体の中心位置と、スカンジウム(Sc)とケイ素(Si)が作り出す8面体サイトを占有する。いずれのサイトも水素化物イオン(H-)で置き換えられるので、H-の代わりに電子がアニオンとして働く電子化物とみなすことができる。これらの電子が存在するバンドは、フェルミ準位[用語3]に大きく寄与する。なお、この物質にルテニウムのナノ粒子を担持すると、アンモニア合成触媒として優れた特性を示した。

LaScSiの結晶構造。VとV'サイトに電子が存在する。水素と反応させると電子の代わりにH-イオンが占有される
図1.

LaScSiの結晶構造。VとV'サイトに電子が存在する。

水素と反応させると電子の代わりにH-イオンが占有される。

Mg2Siのバンド構造。太線は格子間サイトの電子による寄与を示す。右は伝導体の下端付近の電子密度分布。8つのMgに囲まれた空間に電子が存在する。
図2.

Mg2Siのバンド構造。太線は格子間サイトの電子による寄与を示す。

右は伝導体の下端付近の電子密度分布。8つのMgに囲まれた空間に電子が存在する。

Mg2Siは、逆蛍石[用語4]型の結晶構造で、N型伝導性を示す半導体であり、高い熱電特性を持つ物質として知られている。電子密度分布をみると、伝導帯の最下端は4つのMg2+イオンに囲まれた4面体の中心のサイトで大きなピークが存在する。すなわち、ケイ素(Si)の欠損などで生じた電子キャリアは、この格子間サイトを占有することが分かった。このような半導体物質はこれまで知られておらず、熱電特性の起源と関係していると考えられる。

今回、Mn5Si3型をもつ新金属間化合物Nb5Ir3を合成。これは、結晶構造中にNb原子から構成される1次元化チャネルがあり、その中にアニオン電子も存在する電子化物であることが分かった。この物質は、超伝導を示すTc(臨界温度)は9.4 K(ケルビン)だった。電子化物の超伝導体は、2007年にC12A7:eで見出されており、今回が2例目となる。

今後の展望

今回、金属間化合物の結晶構造内の空隙に電子が高濃度に存在し、そのエネルギーレベルが電子物性を支配するフェルミ準位付近に存在しうることを明らかにした。金属格子内の空隙は、原子の移動には主要な役割を果たすことはよく知られているが、電気伝導を担う電子が高密度に分布することは、これまで知られていなかった。キャリア電子が平均的に分布する場合とは、電子の輸送特性や化学反応性がかなり異なることが予想される。

電子化物は、有機系で見出され、無機物、単純金属、そして今回、金属間化合物へと広がった。今後、さらに新しいコンセプトの電子化物が発見され、学術のフロンティアの拡大とともに応用に繋がる新物性が見出されることが期待される。

※本成果は、以下の事業・研究開発課題によって得られた。

  • 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 ACCEL
  • 日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(S)

用語説明

[用語1] 金属間化合物 : 2種類以上の金属または半金属元素から構成されている化合物。性質が異なる異種元素同士が強い結合によって結び付けられているため、金属間化合物はその成分金属又は半金属とは著しく異なったユニークな物性を示すことが多い。

[用語2] 電子化物 : 電子がアニオンとして働くとみなすことができる化合物。

[用語3] フェルミ準位 : 固体の電子構造で電子が占有される最も高いエネルギーレベル。電子の輸送特性や化学反応性を支配する。

[用語4] 蛍石 : CaF2の結晶。Caは6つのFに8面体配位され、Fは4つのCaに4面体配位されている。

論文情報

今回のリリースは下記の論文による成果。

掲載誌 :
Advanced Materials, 29, 1700924-1-7, (2017)
論文タイトル :
Tiered Electron Anions in Multiple Voids of LaScSi and Their Applications to Ammonia Synthesis
著者 :
Jiazhen Wu, Yutong Gong, Takeshi Inoshita, Daniel C. Fredrickson, Junjie Wang, Yangfan Lu, Masaaki Kitano, and Hideo Hosono
DOI :
掲載誌 :
Angew. Chem. Int. Ed., 56, 10135-10139, (2017)
論文タイトル :
The Unique Electronic Structure of Mg2Si: Shaping the Conduction Bands of Semiconductors with Multicenter Bonding
著者 :
Hiroshi Mizoguchi, Yoshinori Muraba, Daniel C. Fredrickson, Satoru Matsuishi, Toshio Kamiya, and Hideo Hosono
DOI :
掲載誌 :
npj Quantum Materials
論文タイトル :
Electride and superconductivity behaviors in Mn5Si3-type intermetallics
著者 :
Yaoqing Zhang, Bosen Wang, Zewen Xiao, Yangfan Lu, Toshio Kamiya,Yoshiya Uwatoko, Hiroshi Kageyama and Hideo Hosono
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
フロンティア材料研究所 教授
元素戦略研究センター センター長 細野秀雄

E-mail : hosono@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5009 / Fax : 045-924-51961

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東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


シンポジウム「現代の社会と宗教 1995~2017」4会場を結んで中継開催

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8月16日、大岡山キャンパスレクチャーシアターにおいて、平凡社共催でリベラルアーツ研究教育院主催のシンポジウム「現代の社会と宗教 1995~2017」が開催されました。開始時間の1時間前から会場前にはあいにくの雨の中、聴講希望者の行列が出来始めました。事前の予測をはるかに超え、その後も列は伸びる一方であったため、急遽、3つの教室にも映像中継を行うこととし、最終的には700名を超える聴衆を迎えて4会場を結ぶ形でシンポジウムの幕が開きました。

日本人が無宗教かについて問いかける登壇者たち

日本人が無宗教かについて問いかける登壇者たち

シンポジウムの内容は、上田紀行教授、池上彰特命教授、弓山達也教授、中島岳志教授の4名のリベラルアーツ研究教育院の教員が、編集者である渡邊直樹氏(大正大学客員教授)の司会のもと、1995年以降の地下鉄サリン事件、東日本大震災、過激派組織「イスラム国(IS)」などの事件や社会現象に重ね合わせて、宗教そのものと宗教に代わるものの変遷を語りあうものでした。それぞれの専門分野に基づく視点から縦横無尽に語られる内容は、東京工業大学と平凡社の共催ならではのものとなりました。

  • 『個』の力を貫くことが出来る学生の育成について話す上田教授

    『個』の力を貫くことが出来る学生の育成について話す上田教授

  • ジャーナリストとしての視点からも語る池上特命教授

    ジャーナリストとしての視点からも語る池上特命教授

まず、2部構成の前半で話し合われたのは、1990年代から人々が感じている「生の実感の希薄さ」と、「自らを死に直面させることで生を実感する」心理です。ISの自爆テロとも関連づけて話が展開されました。また、宗教組織の外に求められるようになっていた宗教的要素が、東日本大震災を経てまた組織に求められようとしていることや、日本人が宗教以外に心の救いを求めた2000年前後の「日本的スピリチュアリティ」についても語られました。

スピリチュアリティについて問いかける弓山教授(右)と中島教授(左)

スピリチュアリティについて問いかける弓山教授(右)と中島教授(左)

そして、後半のキーワードは「生きづらさ」と、それを乗り越えていくための「超越性」です。宗教の内側だけではなく外側にも存在する「超越性」を、教育や社会、家庭の中で、個々人がいかに獲得していくかが話し合われました。また、ボランティアが、生きづらさからのある種の逃げ場となっていることも指摘されました。

一方、その「超越性」を体現し、宗教以外の世界でも積極的に活動しながら、常に人々の心に「平静」を与えるダライ・ラマについて交わされた会話も、強い印象を残しました。

今回のシンポジウムを通じて、参加者は、通常の生活の中では、俯瞰して考えることの少ない宗教とその周辺を広く捉え直し、新たな視点で社会を展望する機会を得たようです。今回、主催側としては想定外の聴講希望で参加者への対応が行き届かなかった点は次回以降の対応に反映することとし、引き続き参加者にとって実り多い企画を開催していきたいと考えています。

なお、このシンポジウムの内容は、いずれ平凡社から刊行される予定です。

  • 主会場のレクチャーシアターの様子

    主会場のレクチャーシアターの様子

  • 満席となった中継会場の教室(大岡山西講義棟2 631号室)の様子

    満席となった中継会場の教室(大岡山西講義棟2 631号室)の様子

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

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E-mail : ilasym@ila.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7689

ロボット技術研究会がABU学生ロボコン2017で敢闘賞(ベスト4)を受賞

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8月27日、東京工業大学ロボット技術研究会のチームMaquinista(以下、マキニスタ)が、大田区総合体育館で行われた「アジア・太平洋ロボットコンテスト2017東京大会」(以下、ABUロボコン)に日本代表として出場し、初出場ながら敢闘賞(ベスト4)を受賞しました。

応援には、三島良直学長を始め、丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)、水本哲弥副学長、大竹尚登副学長、本房文雄蔵前工業会事務局長、その他教職員や学生、機械工学分野の同窓会である白星会のメンバーが駆けつけました。

本コンテストの模様は2017年9月18日(月・祝)午前10時05分よりNHK総合テレビにて放送予定です。

試合中の様子(左がマキニスタ)

試合中の様子(左がマキニスタ)

ロボット技術研究会は機械工作・電子工作・プログラミングなどのものつくり活動を行う東工大の公認サークルです。

試合中の様子
試合中の様子

「ABUロボコン」は2002年から開催されているアジア・太平洋地域の大学が参加するロボットコンテストです。

競技内容は毎年異なり、2017年はABUロボコンの主催国が日本であることから、日本の伝統遊戯である投扇興をモチーフにした「The Landing Disc(ザ ランディング ディスク)」というテーマで競技が行われます。この競技は2チームによる3分間の対戦形式で、各チームのロボットが50枚を上限とする柔らかいディスクを飛ばして、フィールドに置かれた高さや距離が異なる7つのスポットに乗せていくというものです。また試合時間内にスポット上にあるボールを落とし、7つのスポットすべてにディスクを乗せることに成功すると、「APPARE(あっぱれ)!」といって、その瞬間勝利となります。

投扇興(とうせんきょう)…扇子を投げて、台の上に立てられた的を落として点数を競う日本の伝統的遊戯。江戸中期に京都で始まり、倒れた形に応じて源氏物語や百人一首に由来する呼び名や点数が付けられています。

開会式で選手宣誓を行った谷晃輔さん
開会式で選手宣誓を行った谷晃輔さん

ABUロボコン開会式の選手代表の宣誓は、6月に日本代表選考会を兼ねて行われたNHK学生ロボコンで優勝を飾った東工大の谷晃輔さん(工学部 機械宇宙学科 3年)が務めました。

18ヵ国・地域から19チームが参加した予選リーグでは、東工大は全2試合においてAPPAREを達成して勝利し、予選2位で通過しました。

続いて臨んだ決勝トーナメントの第1試合(準々決勝)では、予選7位のネパール代表トリブバン大学と対戦しました。マキニスタは、1分41秒の時点で、あと1つのスポットを残した状態ですべてのディスクを投げ切り、試合終了となる3分までネパール代表の投球を見守る展開となりました。最終的には10対4で勝利し、第2試合(準決勝)に駒を進めました。

第2試合では、本コンテスト最速タイの44秒でAPPAREを決めている強豪、ベトナム代表のラクホン大学と対戦しました。東工大は、安定した軌道を描いて着実にポイントを重ねましたが、4点を取得した時点でベトナム代表が本コンテスト最速となる34秒でAPPAREという新記録をたたき出し、試合終了となりました。その結果、東工大は本コンテスト初出場ながらベスト4となり、敢闘賞として賞状とトロフィーが贈られました。

表彰式で敢闘賞を受賞するメンバー

表彰式で敢闘賞を受賞するメンバー

決勝には、2回連続して44秒でAPPAREを達成しているマレーシア代表のマレーシア工科大学と、大会最速の34秒でAPPAREを決めたベトナム代表のラクホン大学が勝ち上がり、母国からの大きな応援を背に受けながらのハイレベルな戦いとなりました。激戦を制したのはベトナム代表。1分20秒で見事APPAREを達成し、6度目の優勝を飾りました。

フィールド出場メンバー

  • チームメンバー(試合時に操縦などを行う)

    谷晃輔さん(工学部 機械宇宙学科 3年)

    矢野遼人さん(工学部 制御システム工学科 3年)

    森永雅也さん(工学院 機械系 2年)

  • ピットクルー(大会中に機体の整備や運搬を行う)

    山田泰基さん(工学部 制御システム工学科 4年)

    石原隆宏さん(工学部 制御システム工学科 3年)

    徳田俊平さん(工学部 制御システム工学科 3年)

コメント

ロボット技術研究会部長 石原隆宏さん

ABUロボコンでは目標としていた優勝はかなわず、ベスト4という結果となりました。準決勝のベトナムのラクホン大学との試合では、圧倒的早さの前に敗北し、まさに敵ながらあっぱれでした。

各国の予選を勝ち抜いた強豪校との戦いとなり、厳しい試合も多かったですが刺激にもなりました。ベスト4に留まってしまった心残りはありますが、私達の発揮できる性能の限界まで出した結果なので後悔はありません。

さて、既に来年のNHK学生ロボコンのルールは発表されました。他にも秋からはマイクロマウスの大会も始まります。これからも活発な活動をしていきたいと思いますので、ロボット技術研究会の活動を温かく見守っていただければ幸いです。

マキニスタ代表 山田泰基さん

ABUロボコンはベスト4で終わりました。大会前日のテストランの走りから見ると、よくぞチームメンバーが対応できたと思います。

世界大会の壁の高さを痛感できましたし、後輩にはこれを糧に来年もまずNHK学生ロボコンで優勝して欲しいです。私にとっては、なんだかんだ楽しかったロボコン最終年でした。

  • 番組名
    NHK総合「ABUロボコン2017~ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト2017東京大会」
  • 放送予定日
    2017年9月18日(月・祝) 10:05 - 10:59
  • 東工大の応援席

    東工大の応援席

  • 東工大が最多票を集めた優勝チームの予想ボード(会場外)

    東工大が最多票を集めた優勝チームの予想ボード(会場外)

東工大基金

ロボット技術研究会は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

8月29日15:56 本文中に誤りがあったため、修正しました。

圧電体の複雑な結晶構造変化の高速応答を直接測定 ―IoTセンサーの高性能化に期待―

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要点

  • IoTセンサー等で利用される圧電体の結晶構造が高速で変化する様子を観察
  • 圧電性の発現機構解明に貢献
  • 新規の圧電性物質の探索や非鉛圧電体材料の開発を加速

概要

東京工業大学 物質理工学院(同大学 元素戦略研究センター兼任)の舟窪浩教授と同大学 大学院総合理工学研究科の江原祥隆博士後期課程学生(当時)、同大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の安井伸太郎助教、名古屋大学 大学院工学研究科(科学技術振興機構さきがけ研究者兼任)の山田智明准教授、高輝度光科学研究センター (JASRI)の今井康彦主幹研究員、物質・材料研究機構 技術開発・共用部門(先端材料解析研究拠点シンクロトロンX線グループ グループリーダー併任)の坂田修身ステーション長、ニューサウスウエールズ大学(オーストラリア)のナガラジャン・バラノール教授らの研究グループは、電圧によって形状が変化する圧電体結晶について、原子の変位、単結晶領域の再配列などの複雑な現象が、1億分の4秒(40ナノ秒[用語1])の短時間に高速で起きていることを、大型放射光施設SPring-8[用語2]の高輝度放射光を用いた時間分解X線回折実験によって、世界で初めて解明しました。

圧電体は、インクジェットプリンタや3次元プリンタ、カメラの手振れ防止機構等に幅広く用いられ、最近では、身の回りにある振動から発電する“振動発電”や建物等の異常振動のセンサー等への応用が期待されるなど、永続的に使用できる自立電源としてIoTセンサーネットワークへの応用も期待されています。

今回の成果は、英国のオンライン科学雑誌「サイエンティフィックレポート(Scientific Reports)」に8月29日付で掲載されます。

研究の背景

結晶が外力に応じて誘電分極を生じる効果を圧電効果、結晶に電圧を加えることで結晶が歪む効果を逆圧電効果と言います。このような現象を示す物質が圧電体です。これは、電気的エネルギーを機械的エネルギーに、逆に機械的エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換物質とも言えます。ライターの着火石(機械的エネルギーの電気エネルギーへの変換)からプリンタのインクジェットヘッドや自動車のエンジンへの燃料の噴射ノズル(電気エネルギーを機械的変位に変換)、さらにはデジタルカメラの手ぶれ防止機構(機械的エネルギーの電気エネルギーへの変換)まで、我々の暮らしの中で広く使用されています。

最近では、自動車のエンジンや高速道路の車の走行による振動で発電し、振動を検出する機能と組み合わせて、安全安心を支えるバッテリー不要のIoTセンサーネットワークとして注目を集めています。

この圧電性は、電圧を加えることや機械的な力を加えることによって起きる結晶自身の伸びの他に、ドメインと呼ばれる微小領域の結晶の向きの変化等の複数の現象が同時に起きることが知られていましたが、個々の現象がどのくらいの速度で起きるかはわかっていませんでした。

研究手法・成果

我々は、大型放射光施設SPring-8表面界面構造解析ビームラインBL13XU、および同施設の物質・材料研究機構のビームラインBL15XUの数マイクロメートルに集光した高輝度単色パルスX線を、最も広く使用されている圧電体であるチタン酸ジルコン酸鉛膜上に形成した電極に照射し、200ナノ秒幅のパルス電圧を印加して観察。回折データを、電荷量の変化とともに高速で記録しました(図1)。ここでは電圧を加えると、結晶の伸びや電圧印加方向へのドメインの再配列等が起こっていることが判明しました。またこの際、結晶の単結晶領域(図2で赤と青で示した領域)の傾斜角度が同時に変化していることも明らかになりました(解析した現象のモデル図を図2に示す)。

電圧を加えた時の結晶の伸びや、電圧印加方向へのドメインの再配列と電気特性を直接測定できる測定システム(数マイクロメートルに集光した高輝度X線を電極上に照射し、電圧印加しながら回折X線強度と電荷量の変化を20ナノ秒の時間分解能で同時に測定できるシステム。今回の測定では、200ナノ秒幅のパルス電圧を印加している際の回折プロファイルと電荷量の変化について、加える電圧を固定して、高速で記録することに成功しました)。
図1.
電圧を加えた時の結晶の伸びや、電圧印加方向へのドメインの再配列と電気特性を直接測定できる測定システム(数マイクロメートルに集光した高輝度X線を電極上に照射し、電圧印加しながら回折X線強度と電荷量の変化を20ナノ秒の時間分解能で同時に測定できるシステム。今回の測定では、200ナノ秒幅のパルス電圧を印加している際の回折プロファイルと電荷量の変化について、加える電圧を固定して、高速で記録することに成功しました)。
試料に電圧を印加した時に起きる結晶の構造変化の模式図

図2.試料に電圧を印加した時に起きる結晶の構造変化の模式図

赤で示した結晶の伸び、青で示した結晶の一部が赤で示した結晶へ変化、青および赤で示した結晶の角度の変化といった複雑な現象が同時に起こっている。

注目すべき点は、こうした複雑な現象は同時に起こっており、そのスピードは今回試料で測定可能な1億分の4秒(40ナノ秒)よりも速いことを世界で初めて明らかにしたことです(図3)

図2の赤と青の結晶の伸びや縮み、青の結晶の赤の結晶への変化、青および赤の結晶の角度の変化といった複雑な現象が測定システムの分解能40ナノ秒よりも速いスピードで同時に起きていることがわかりました。
図3.
図2の赤と青の結晶の伸びや縮み、青の結晶の赤の結晶への変化、青および赤の結晶の角度の変化といった複雑な現象が測定システムの分解能40ナノ秒よりも速いスピードで同時に起きていることがわかりました。

期待される波及効果

今回の成果は、以下に述べる波及効果が期待できます。

a)圧電性の発現機構の解明

圧電性はこれまで、結晶内の複雑な現象で発現していることがわかっていましたが、それぞれの現象がどのように起こっているか、どのくらいの速度まで追随するかといったことは、十分にわかっていませんでした。本研究では、個々の効果を直接的に高速で測定できるようになったことで、チタン酸ジルコン酸鉛以外の物質における圧電性の発現機構の解明が飛躍的に進むと見込まれます。

b)圧電体の性能向上への貢献

本研究で、複雑な現象が同時に測定可能になったことで、新規物質を探索した場合にどのような現象が圧電体内で起きているか、また、その応答速度が変化したかを直接測ることができ、これまでトライ&エラーで行ってきた圧電体の物質探索が飛躍的に進むと考えられます。

c)非鉛圧電体開発の加速による環境問題への貢献

i)現在使われている圧電体は、毒性がある鉛を重さで50%以上含有しており、環境への配慮から非鉛圧電体の開発が強く求められています。

ii)今回の成果により、現在使われている鉛を含有した圧電体のチタン酸ジルコン酸鉛がどのような機構で大きな圧電性を発現しているかを明らかにできたことで、現在盛んに開発されている鉛を含まない新規な非鉛圧電体材料の開発が加速されると期待できます。

d)IoTセンサーの開発加速への貢献

圧電体は、圧力や振動、加速度、さらには温度等のセンサーとして使用可能です。またセンシングの際に発電を行うことも可能ですので、電源を必要としないセンサー端末を作れる可能性があります。こうしたセンサーをビルや橋に取り付けることで、電池交換不要なセンサー端末を作製でき、この端末をネットワークにつなぐことで“安全で安心な社会”の構築に貢献することが期待できます。

特記事項

今回の研究は、日本学術振興会の科学研究費、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業さきがけ研究の一環として行われました。また構造解析は、SPring-8の共用ビームライン(BL13XU)および物質・材料研究機構の専用ビームライン(BL15XU)で実施。研究成果の一部は、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として、物質・材料研究機構微細構造解析プラットフォームの支援を受けて行われたものです。

用語説明

[用語1] ナノ秒 : 10億分の1秒のこと。

[用語2] 大型放射光施設 SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設。その運転と利用者の支援はJASRIが行っています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来します。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。SPring-8では、この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究を行っています。SPring-8は、日本の先端科学・技術を支える高度先端科学施設として、日本国内外の大学・研究所・企業から年間延べ1万6千人以上の研究者に利用されています。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :

In-situ observation of ultrafast 90° domain switching under application of an electric field in (100)/(001)-oriented tetragonal epitaxial Pb(Zr0.4Ti0.6)O3 thin films

※日本語訳:(100)/(001)配向した正方晶Pb(Zr0.4Ti0.6)O3エピタキシャル薄膜の電界印加時の90°ドメインの高速応答のその場観察

著者 :
Yoshitaka Ehara, Shintaro Yasui, Takahiro Oikawa, Takahisa Shiraishi, Takao Shimizu, Hiroki Tanaka, Noriyuki Kanenko, Ronald Maran, Tomoaki Yamada, Yasuhiko Imai, Osami Sakata, Nagarajan Valanoor, and Hiroshi Funakubo
掲載日 :
2017年8月29日18:00(日本時間)
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

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火星衛星に火星マントル物質の存在を予言 ―JAXA火星衛星サンプルリターン計画での実証に高まる期待―

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要点

  • 巨大衝突起源説で火星衛星の反射スペクトルの特徴が説明可能
  • 火星衛星は衝突当時の火星本体の地殻物質とマントル物質を多く含有
  • JAXAの火星衛星サンプルリターン計画で火星本体の物質採取に期待

概要

東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)の兵頭龍樹特別研究員、玄田英典特任准教授らの国際共同研究チームは、火星の衛星「フォボス」と「ディモス」が月の起源と同様に、巨大天体衝突(ジャイアントインパクト)で形成されうることを明らかにした。世界最高解像度の巨大衝突シミュレーションによって、火星衛星がどのような物質でできているのかを理論予想した。

その結果、火星衛星を構成する粒子の典型的な大きさが0.1 μmの微粒子と、100 μmから数mであることが分かった。微粒子の存在により、衛星の滑らかな反射スペクトルの特徴が巨大衝突説の枠組みと矛盾しないことを確認した。

また、火星衛星を構成する材料物質の約半分が火星由来であり、残りは衝突天体由来であること、さらに衛星が含む火星由来の物質の約半分は衝突当時の火星表層から50 − 150 kmの深さから掘削された火星マントル物質であることを明らかにした。これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2024年打ち上げを予定している火星衛星サンプルリターン計画(MMX)によって、衛星から火星本体の物質を地球に持ち帰る可能性が高いことを意味している。

研究成果は8月18日発行の米国科学誌「Astrophysical Journal (アストロフィジカルジャーナル)電子版」に掲載された。

火星衛星、フォボス(左)とディモス(右)の画像

図1. 火星衛星、フォボス(左)とディモス(右)の画像
(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

研究の背景

火星衛星フォボスとディモス(図1)は、火星の赤道面を円軌道で回っている。半径10 km程度のフォボスとディモスは火星質量の約1,000万分の1と非常に小さく、半径1,000 kmを超える地球の巨大衛星(月)とは大きく異なる。火星衛星のいびつな形状と表面スペクトルは、火星と木星の間に存在する小惑星と類似していることから、その起源は長らく小惑星が火星の重力に捕獲されたものと考えられていた(捕獲説)。

近接遭遇した天体を重力によって捉える捕獲説(左)と巨大衝突によって形成された破片から衛星が集積する巨大天体衝突説(右)

図2. 近接遭遇した天体を重力によって捉える捕獲説(左)と
巨大衝突によって形成された破片から衛星が集積する巨大天体衝突説(右)

しかし、捕獲説の場合、現在の衛星の軌道(赤道面を円軌道で公転)を説明することは極めて困難であることが指摘されている。一方で、火星の北半球には太陽系最大のクレータ(ボレアレス平原)が存在し、巨大天体の衝突で形成された可能性が高いことが分かっている。そして、近年、このクレータを形成しうる巨大衝突過程(火星の直径の3分の1程度の巨大天体が、火星に秒速6 km程度で衝突)をコンピューターシミュレーションによって調べることで、飛び散った破片が集まって最終的に2つの衛星を形成しうることが明らかになった(図2)。

研究成果

火星への巨大天体衝突のイメージ

図3. 火星への巨大天体衝突のイメージ

東工大の兵頭龍樹特別研究員らは、フォボスとディモスを形成する巨大衝突の超高解像度3次元流体数値シミュレーションを行った(図3、4)。その結果、典型的な破片粒子サイズは、0.1 μmと100 μmから数m程度になることが分かった。そして、0.1 μm程度の微粒子が、観測されている火星衛星の滑らかな表面反射スペクトルの特徴と矛盾しないことを明らかにした。

さらに、火星衛星の構成物質の約半分は火星に、残りの半分は衝突天体に由来していることが分かった。さらに、この火星物質は火星地表面から50 - 150 kmの深さから掘削された火星マントル由来の物質であることが明らかになった。

巨大衝突シミュレーションの時間スナップショット

図4. 巨大衝突シミュレーションの時間スナップショット

上図において、赤色と黄色は最終的に火星となる粒子、水色は最終的に火星衛星となる粒子、白色は火星の重力圏から飛び出してしまう粒子、を表している。下図において、色は温度(ケルビン)を表している

地球の月形成との比較

地球が衛星の月を作ったとされる衝突は、衝突天体の質量が地球質量の10分の1程度で、衝突速度が毎秒12 kmと非常に大きく、地球周囲に飛び散り、最終的に月へと集積する物質は、衝突直後に4,000 K(絶対温度)程度となり蒸発することで、衝突天体物質と地球起源物質は混ざりあってしまい、当時の情報が失われていると考えられている。

一方、火星衛星を作ったとされる衝突天体は火星質量の数%(地球質量の1,000分の1)で、衝突速度は同6 km程度と小さめであったため、火星衛星を形成する破片は2,000 K程度の温度で、ほとんど蒸発せずに、火星起源物質と衝突天体起源物質の混ざり合いは少なく、破片は当時の火星の物質情報を保存していると期待される。

今後の展望

今回の研究によって、火星衛星が巨大天体衝突によって形成可能であり、観測される表面反射スペクトルの特徴も説明できることが明らかになった。また、火星衛星には火星由来の物質が多く含まれ、さらに、衝突当時の火星マントル物質も含まれていることが期待される。

一方、JAXAが進める宇宙探査・戦略的中型計画において、火星衛星に探査機を送り、火星衛星の物質を地球に持ち帰る計画(MMX: Martian Moons eXploration)が検討されている。2024年に打ち上げ、2029年の地球への帰還を目指している。

米航空宇宙局(NASA)は火星本体に探査機を着陸させて火星物質を地球に持ち帰ることを計画しているが、探査機の掘削技術が成功しても火星表面物質の回収しか期待できない。一方で、今回の研究で示した巨大天体衝突説が正しければ、人類は初めて、火星の表層物質だけでなく、火星マントル物質までをJAXAのMMX計画で火星衛星から手に入れることが可能となる。このことは、将来の火星移住計画の推進に大いに役立ち、さらに、未だ謎につつまれる太陽系形成史を紐解く物質科学的な鍵となることが期待される。

東京工業大学 地球生命研究所について

地球生命研究所(ELSI)は、文部科学省が2012(平成24)年に公募した世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、同年12月7日に産声をあげた新しい研究所。「地球がどのようにしてできたのか、生命はいつどこで生まれ、どのように進化してきたのか」という、人類の根源的な謎の解明に挑んでいる。

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は、2007(平成19)年度から文部科学省の事業として開始された。システム改革の導入などの自主的な取組を促す支援により、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指している。

論文情報

掲載誌 :
Astrophysical Journal
論文タイトル :
On the Impact Origin of Phobos and Deimos. I. Thermodynamic and Physical Aspects
著者 :
Ryuki Hyodo, Hidenori Genda, Sébastien Charnoz, Pascal Rosenblatt
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 地球生命研究所

兵頭龍樹 特別研究員

E-mail : hyodo@elsi.jp

東京工業大学 地球生命研究所

玄田英典 准教授

E-mail : genda@elsi.jp
Tel : 03-5734-2887

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京工業大学 地球生命研究所 広報室

E-mail : pr@elsi.jp
Tel : 03-5734-3163 / Fax : 03-5734-3416

平成30年度 東京工業大学基金奨学金「大隅良典記念奨学金」の募集を開始

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東京工業大学は、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授からの多額の寄附を原資として、2017年1月に「大隅良典記念基金」を設置しました。本基金は、将来の日本を支える優秀な人材の育成、および長期的な視点が必要な基礎研究分野における若手研究者等の育成の推進など、研究分野の裾野の拡大を目的としています。

設立以降、本基金の趣旨に賛同いただいた方々からお寄せいただいたご支援と合わせ、本基金による事業が始動することとなりましたので、お知らせします。

本基金は「学生に対する修学支援」「若手研究者に対する研究支援」「その他基礎研究を実施するための研究環境の整備」に活用します。このたび、「学生に対する修学支援」事業として、優れた人材が全国から東工大に集結し、将来のリーダーとして国際的に活躍できる人材を育成することを目的とする「大隅良典記念奨学金」を設立しました。

大隅栄誉教授メッセージ

大隅栄誉教授

人生が豊かであるためには、沢山の人との出会い、素晴らしい先達・友人に恵まれ、刺激しあい、自分を磨くことが大切です。

君たちにとって新しく始まる大学入学はまたとない機会です。

高校生活とは違った新しい友人を作り、沢山の出会いを積極的に作るように努力して下さい。

いろんな学生諸君が東工大に集まってくれることを心から願っています。

本奨学金の募集を開始しましたので、概要については以下をご覧ください。

奨学金の目的

学業優秀な者に対し経済的援助を行うことにより、将来リーダーとして国際的に活躍できる人材の養成に資することを目的とする。

奨学生の応募資格

1.
募集時点で高等学校等に在学し、2018年4月に学士課程への入学を希望する者
2.
学業成績が特に優秀で、経済的支援が必要であり、かつ学業の発展向上が期待できる者
3.
高等学校等の対象所在地域が埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を除く地域にあり、東工大入学後、自宅からの通学が困難な者
4.
本人が属する世帯の税込年収の合計が、給与所得の場合は支払金額が800万円未満の者、給与所得外の場合は所得金額が337万円未満の者
5.
日本国籍である者、および永住者などの在留資格を持つ者
大隅栄誉教授が本基金設立に関する記者会見にて、「私の経験からも、大学に入学した時に全国からいろいろな人が集まってきて、全く新しい環境の中で大学生活を始められるというのは人生の中で数少ない大事な機会だと思います。この支援を通じて全国からいろいろな人が東工大に集まってくれることになることを私は願っております。」と述べています。大隅栄誉教授の意思を受け、高等学校等の所在地域の制限を設けました。

奨学生採用予定人数

毎年 5名程度

奨学金の額

月額 5万円

給付期間

奨学金を授与する期間は、原則として学士課程の標準修業年限(4年)以内とする。ただし、学士課程卒業後に引き続き本学修士課程に入学し、資格を満たす場合は、申請に基づき、修士課程の標準修業年限(2年)以内で支給を継続する。

スケジュール(予定)

2017年9月
奨学金募集開始
2017年10月末
高等学校等より推薦〆切
2017年11月
選考
2017年12月
内定通知
2017年12月~2018年3月
入学願書出願・受験・合格発表・入学手続き
2018年4月
正式に奨学生として採用

募集に関する詳細情報

平成30年度募集要項outerをご覧ください。

2030年に世界トップ10に入るリサーチユニバーシティを目指している東工大のさらなる飛躍に向けて、「大隅良典記念基金」の趣旨をご理解いただき、引き続き、ご支援ご協力を賜りますようお願いします。

ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授

大隅良典記念基金

「大隅良典記念基金」は、大隅栄誉教授がノーベル賞を受賞したことを機に、将来の日本を支える優秀な人材の育成などを目的として設立されました。学生の修学支援や若手研究者の研究支援などに活用します。

大隅良典記念基金|東工大への寄附

お問い合わせ先

学務部 学生支援課 経済支援グループ

E-mail : gak.kei@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3014

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

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