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新しい不斉源「トポロジカルキラリティ」の機能を解明

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新しい不斉源「トポロジカルキラリティ」の機能を解明
―医薬品開発などにも応用可能な優れた不斉源の開発に成功―

要点

  • トポロジカルキラリティを有する化合物の不斉源としての機能を初めて評価
  • ロタキサンを不斉源として高分子に一方巻きらせんを誘起できることを見出した
  • ロタキサンは従来の点不斉を有する分子よりも優れた不斉源となり得る

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の石割文崇助教(兼・同大学 科学技術創成研究院 助教)、高田十志和教授らの研究グループは、新しい不斉[用語1]源である「トポロジカルキラリティ[用語2]」を持つ分子の優れた機能を初めて解明した。トポロジカルキラリティを持つ分子の不斉源としての利用を推進・加速し、不斉分子の選択的合成・認識・分割を達成する優れた機能分子の開発につながると期待される。

同研究グループは、トポロジカルキラリティを持つロタキサンを側鎖に有するポリアセチレン[用語3]を合成し、その主鎖にトポロジカルキラリティに対応した「一方巻きらせん構造」が誘起されることを見出した。また、より一般的な不斉である「点不斉」と「トポロジカルキラリティ」を組み合わせた系においては、トポロジカルキラリティが主たる不斉源となることも明らかにした。

医薬品などの有機化合物の多くは不斉を持ち、通常鏡像異性体混合物ではなく片方の鏡像異性体のみが使用される。このため、片方の鏡像異性体を選択的に合成・分離・識別するのに有効な不斉源となる分子の開発が求められている。

複数の分子が絡み合ってできた分子マシンとしても知られるロタキサンやカテナンなどのインターロック[用語4]分子は、構成分子がそれぞれ不斉を持たなくとも、その組み合わせ次第で「トポロジカルキラリティ」と呼ばれる不斉を発現することが知られていたが、これまでトポロジカルキラリティを持つ化合物を不斉源として応用した研究はなかった。

研究成果は2017年10月3日にドイツ科学雑誌「Angewandte Chemie(アンゲヴァンテ・ケミー)International Edition」に掲載された。

研究の背景

医薬品などの有機化合物の多くは不斉(キラリティ)を有していることから、鏡像異性体の片方を選択的に合成・分離・識別するために有効な不斉源となる分子の開発が強く求められており、有効な不斉源の創出は極めて重要な研究課題となっている。不斉源としてはこれまでに、点不斉や軸不斉、面不斉などに分類される不斉を有する化合物の応用が検討されてきた(図1左)。

一方で、分子マシンとしても知られるロタキサンやカテナンなどのインターロック化合物には、トポロジカルキラリティと呼ばれる特徴的な不斉が発現することが報告されている(図1右)。これらのインターロック分子は、構成成分が不斉を持たなくても、ほどくことのできない絡み合いにより不斉を発現する。このような分子は構成成分が高い運動性を持っているため、不斉源としてどのような機能を有するかに興味がもたれていた。

しかし、各構成成分には不斉は無いこれらの分子が果たして不斉源として機能するのか、機能するとしたらそれらが従来の不斉源と比較するとどのような性質をもっているか。これらは、2016年度ノーベル化学賞受賞者のジャン=ピエール・ソヴァージュ教授も提示していた長年の疑問だったが、今日まで検討されることはなかった。

従来用いられてきた一般的な不斉源と、本研究で検証したトポロジカルキラリティの模式図

図1. 従来用いられてきた一般的な不斉源と、本研究で検証したトポロジカルキラリティの模式図

研究内容と成果

東工大 物質理工学院 応用化学系の石割助教、高田教授、中薗和子特任助教、富山県立大学 小山靖人准教授(研究当時・東工大助教)らは、代表的ならせん高分子として知られるポリアセチレンに対する一方巻きらせん誘起を題材に、新しい不斉源である「トポロジカルキラリティ」を持つ分子の優れた性質を初めて確認した(図2)。

ポリアセチレンに一方巻きらせんを誘起するためには、有効に働く不斉分子を側鎖に導入する必要がある(図2右上)。同グループはトポロジカルキラリティを持つロタキサンの鏡像異性体の片方を単離し、ポリアセチレンの側鎖に輪成分もしくは軸成分を介して結合させると、主鎖に一方巻きらせんが誘起できることを発見した(図2左下)。

また、トポロジカルキラリティに加えて点不斉を不斉源として導入しても、点不斉に基づく一方巻きらせんは全く誘起されず、ロタキサンのトポロジカルキラリティに基づく一方巻きらせんのみが誘起されるという驚くべき結果も見出した(図2右下)。これは、トポロジカルキラリティを有する化合物が従来の点不斉などを有する化合物と比べて不斉源として優れた機能を持つことを示唆する結果といえる。

本研究における実験手法と結果の概要

図2. 本研究における実験手法と結果の概要

今後の展開

不斉を持たない分子の絡み合いにより発現する「トポロジカルキラリティ」を持つ分子の不斉源としての優れた機能の一端を明らかにした。これはソヴァージュ教授の提示していた長年の問題に対するひとつの答えである。今後、トポロジカルキラリティを持つ分子を不斉源とする研究が加速され、不斉分子の選択的合成・認識・分割を達成する優れた機能分子の開発につながると期待される。

用語説明

[用語1] 不斉(ふせい、キラリティ) : 鏡に映した像が元の像と重なり合わない(右手と左手の関係)性質。有機分子をはじめとする化合物にもこの関係が多く見られる。医薬品の場合、この右手か左手かの差で薬となったり毒となったりしてしまうため、右手分子と左手分子を選択的に合成したり、識別したり、分離したりすることは常に大きな研究テーマとなっている。これらの不斉機能を発現するためには、不斉を有する分子を使用しなければならない。この際、利用される不斉分子を不斉源という。これまでに、不斉源としては、図1左に示すような点不斉、軸不斉、面不斉を持つ分子などが用いられてきた。例えば、野依良治教授らは軸不斉分子の一種が極めて優れた不斉触媒(右手と左手を作り分ける触媒のこと)としての機能を示すことを見出しており、関連研究も含めて2001年にノーベル化学賞を受賞した。

[用語2] トポロジカルキラリティ : ロタキサン(軸状分子が輪状分子に貫通し軸状分子の両末端を輪成分がすり抜けないようにした化合物)やカテナン(輪状分子が二つ絡まった化合物)などインターロック分子では、構成成分に方向性がある場合、構成成分は不斉ではなくても、それらが絡み合って得られるロタキサンやカテナンには不斉が生じる。この不斉のことをトポロジカルキラリティという。インターロック化合物以外にもトポロジカルキラリティを生じる分子はあるが、特にインターロック化合物は構成成分共有結合で連結されていないため、高い運動性を持つという特徴がある。なお、ロタキサンに生じる不斉は厳密にはトポロジカルキラリティではないが、無限に長い方向性のある軸成分を考えると擬似的にはトポロジカルキラリティを持つとみなせるため、今回はトポロジカルキラリティの一種として示した。論文中ではメカニカルキラリティ(Mechanical Chirality)として紹介している。輪成分同士が絡み合ったすり抜けるカテナンに生じるトポロジカルキラリティと、輪成分が軸成分の両末端の大きな置換基によってすり抜けることができないロタキサンに生じるメカニカルキラリティと大差はない。

[用語3] ポリアセチレン : 代表的ならせん高分子であり、側鎖に不斉源を持つことにより、一方巻きのらせん構造を取る。不斉触媒、不斉識別材料、不斉分離材料などへの応用が検討されている高分子である。

[用語4] インターロック分子 : 複数の分子が解消できない絡み合いにより、機械的に結合した分子の総称。構成成分が並進、回転など高い運動性を示すため分子マシンの構成成分としての応用も期待されており、ジャン=ピエール・ソヴァージュ、フレイザー・ストッダート教授、ベン・フェリンガ教授らが2016年にノーベル化学賞を受賞している。

論文情報

掲載誌 :
Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル :
"Induction of Single-Handed Helicity of Polyacetylenes Using Mechanically Chiral Rotaxanes as Chiral Sources"
著者 :
Fumitaka Ishiwari, Kazuko Nakazono, Yasuhito Koyama, Toshikazu Takata
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

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世界初、燃料電池の反応生成液水の可視化を実現

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世界初、燃料電池の反応生成液水の可視化を実現
―リアルタイム・高解像の解析により自動車用燃料電池の高性能化に貢献―

NEDO事業において、東京工業大学は、作動中の燃料電池内の反応生成液水の挙動をリアルタイム・高解像度で可視化できる技術の開発に世界で初めて成功しました。これにより、反応が激しく変化する自動車用燃料電池の生成液水挙動の把握が可能となり、高性能化・高耐久化を目指す燃料電池の特性改善や設計指針に資する技術開発の加速が期待されます。

関連内容は10月1日~5日に開催された第232回米国電気化学会の10月5日のセッションにて、本学より発表されました。

図1. 可視化された反応生成液水の時間変化(発電中の燃料電池内)

図1.可視化された反応生成液水の時間変化(発電中の燃料電池内)

概要

水素社会の実現に向け、2014年に経済産業省が策定した「水素・燃料電池戦略ロードマップ(改訂版:経済産業省2016年3月)outer」では、燃料電池自動車の普及拡大のために燃料電池システムのコストを大幅に低減し、「2030年までに80万台程度の普及を目指す」という目標が掲げられており、NEDOは、2025年以降の本格普及期に求められるFCV用燃料電池の要求値(スタック出力密度:4 kW/L以上、耐久性:50,000時間以上、等)を設定し、燃料電池の高度な解析・評価技術や、新規材料の設計指針に資する技術の開発を目的とした事業[用語4]を2015年度より実施しています。

燃料電池は、水素と空気中の酸素(供給ガス)を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換するシステムです。この生成された液体水は燃料電池内に溜まることによって、供給ガスの輸送を妨げる場合があることが知られています。燃料電池の性能向上のためには生成された水の挙動を正確に把握することが重要な課題の一つとされていますが、従来は発電性能から間接的に判断されてきました。

今回、NEDO事業において技術研究組合FC-Cubic[用語5]と本学の平井秀一郎教授のグループが、燃料電池内の生成液水の挙動をµmオーダーの高解像度でリアルタイムに可視化できる技術を世界で初めて開発しました。

この成果により、反応挙動が激しく変化する作動中の燃料電池内部(各層や各界面)の反応生成液水の挙動の把握が可能となり、今後、燃料電池の設計に大きく貢献することができます。

この成果を基に、東工大は企業などとの共同研究に着手し、自動車業界が求める、燃料電池のさらなる高性能化、高耐久化、低コスト化を目指し、技術開発の加速が期待されます。

なお、関連内容は10月1日~5日に開催される第232回米国電気化学会の10月5日のセッションで発表する予定です。

技術成果の内容

自動車用の固体高分子形燃料電池(PEFC)には、乗用車から商用車まで、さまざまな種別に応じた耐久性と性能の特性改善が求められています。また、燃料電池メーカー各社において、特性改善に加え、燃料電池車のコストをガソリンエンジン車と同等にするためのコスト低減の開発も進められています。

これらの技術課題の解決を促進するためにNEDO事業において、技術研究組合FC-Cubic等が研究テーマ「触媒・電解質・MEA内部現象の高度に連成した解析、セル評価」を実施し、現象解明など、自動車用燃料電池の基盤的な研究開発を進めています。このテーマのサブテーマとして、本学の平井教授のグループは、X線による燃料電池作動時の反応生成液水の可視化の研究開発に取り組み、特に「高解像度化」に注力してきました。

これまで、作動中の燃料電池内の反応生成液水を高解像度で長時間にわたり可視化できる装置はありませんでした。今回、軟X線ビームの平行化技術[用語6]CMOS検出器[用語7]を組み合わせ、観測用の燃料電池セル[用語8]にも工夫を加えることによって、実験室に設置可能な大きさの装置に仕上がり、高解像の可視化像を得ることに成功しました。燃料電池の発電特性に影響が大きい燃料電池内部の各界面層での反応生成液水の挙動をµmレベルで計測する技術を開発することが出来ました。

図2. 装置のシステム概要図 軟X線ビームの平行化技術とCMOS検出器を組み合わせ、観測用の燃料電池セルにも工夫を加えることによって、高解像の可視化像を得ることに成功

図2.装置のシステム概要図


軟X線ビームの平行化技術とCMOS検出器を組み合わせ、観測用の燃料電池セルにも工夫を加えることによって、高解像の可視化像を得ることに成功

用語説明

[用語1] リブ : 燃料電池にガス供給する流路は、ゲタのように凸部と凹部から構成される。凸部はリブと呼ばれて、膜電極接合体(MEA)と拡散層を介して接触され電気の通電部の役割を果たす。凹部はチャネルと呼ばれて、外部から燃料電池の中にガス供給する通路と水などの排出通路になっている。

[用語2] GDL : Gas Diffusion Layerの略。化学反応に必要な空気と水素を効率よく導く機能を持つ。

[用語3] MPL : Micro Porous Layerの略。GDLの一部として物質移動の調整に利用されている層。

[用語4] 燃料電池の高度な解析・評価技術や、新規材料の設計指針に資する技術の開発を目的とした事業 : 「固体高分子形燃料電池利用高度化技術開発事業/普及拡大化基盤技術開発」(2015~2017年度)

[用語5] 技術研究組合FC-Cubic : 燃料電池関連企業と大学、および産業技術総合研究所が参画し2010年4月2日に設立。産業界の燃料電池およびそのシステムの開発を支える共通基盤的な研究活動を行っている。

[用語6] 軟X線ビームの平行化技術 : 従来のX線は、光源から放射光状に放出されていたが、これを平行に放出するようにした技術。

[用語7] CMOS検出器 : 光を電気信号にかえる素子の一種。原理的に画素間の影響を受けにくい特長があり、近年の技術開発で、高解像化されている。

[用語8] 観測用の燃料電池セル : 燃料電池中の液水をX線可視化するのに、セル構成部品の厚みを薄くして、X線の吸収の影響を抑えるように設計されている。

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NEDO 新エネルギー部 担当:戸塚、門脇、大島

Tel : 044-520-5261

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E-mail : hirai.s.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3336、Fax : 03-5734-3336

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第7回国際シンポジウム・セミナー「核セキュリティと核物質防護/核不拡散」開催報告

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8月28日~9月1日にかけて、本学のグローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院が「第7回国際シンポジウム・セミナー」を大岡山キャンパスで開催しました。本シンポジウムは、文部科学省の支援を受けて、国内外の関連機関と協力して開催するものです。2011年度から毎年開催しており、本学の学生のみならず、国内外の学生や若手研究者等を招へいして教育の一環として行ってきました。テーマは毎回、「原子力安全」と「核セキュリティ・保障措置」を交互に取り上げており、今回は「核セキュリティ・保障措置」をテーマとして一般参加者にも公開して開催しました。

集合写真

集合写真

会期前半2日間のシンポジウムでは、国内外の著名な専門家などを講師として招きました。平和のための原子力、将来の原子力エネルギー、原子力人材育成などに関する講演会があり、学生たちを中心に活発な質疑がありました。

講演後の質疑の様子

講演後の質疑の様子

講演後の質疑の様子

会期後半3日間のセミナーでは、第一線の国内外講師陣による核セキュリティと保障措置に関する講義が行われました。学生たちは4グループに分かれて自主的にグループ討論を行った後、講師に対してさまざまな質疑応答がなされました。

最終日の午後には、学生セッションとして、参加学生を中心に「若い人たちの将来のグローバルネットワーク」のあり方に関するグループ討論を行い、その結果を発表して議論を交わしました。

学生たちによるグループ討論の様子

学生たちによるグループ討論の様子

学生たちによるグループ討論の様子

学生セッションの様子
学生セッションの様子

学生セッション金賞受賞
学生セッション金賞受賞

招へい講師は、国際原子力機関(IAEA)、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)、フランス大使館、アメリカ大使館、ロシアのロスアトム教育トレーニング継続中央研究所、米国のテキサスA&M大学、外務省、経済産業省、日本原子力研究開発機構(JAEA)、日本核物質管理学会(INMMJ)などから16名、セミナー参加学生19名、一般参加約30名が参加しました。また、マスコミ2社の取材を受けるなど、本シンポジウムは成功裏に終了しました。

お問い合わせ先

グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院

E-mail : u-atom.suishin@dojo.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3279

笹川崇男准教授がフロンティアサロン第7回永瀬賞特別賞を受賞

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東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授が、フロンティアサロン第7回永瀬賞特別賞を受賞しました。

宮田フロンティアサロン財団代表理事(左)から賞状を受け取る笹川准教授(右)

宮田フロンティアサロン財団代表理事(左)から賞状を受け取る笹川准教授(右)

受賞理由は、「高温超伝導体」「トポロジカル絶縁体」「トポロジカル超伝導体」などの様々な物質を宝石に類する単結晶として合成することで、電子の隠れた超機能の開拓に取り組み、省エネルギーな電子機器や超高速なコンピュータなどの実現に役立つと期待される画期的な電子の性質をいくつも見つけることに成功したことです。

受賞記念に約1,000人の高校生を対象に行った特別講義・サイエンスセミナーの様子
受賞記念に約1,000人の高校生を対象に行った
特別講義・サイエンスセミナーの様子

同賞は、日本の未来を拓く若手研究者の支援を目的として、東進ハイスクール等を運営する株式会社ナガセ(永瀬昭幸社長)の寄付により設立されたフロンティアサロン財団(代表理事 宮田清蔵)において、我が国の科学技術の振興そして人類の未来への貢献に繋がる新しい挑戦の観点から最も優れた研究を行った研究者を対象に贈られる賞です。

授賞式は帝国ホテル東京において9月22日に開催され、列席した約1,000人の高校生を対象に、贈呈記念として「電子の隠れた超能力の開拓:新奇な絶縁体から超伝導体まで」という題目で特別講義・サイエンスセミナーも行われました。

笹川教授の受賞コメント

笹川准教授
笹川准教授

今回の受賞は、私にとって1番の経験を3つも同時に味わうことができたこともあり、感無量です。

1つ目は、副賞の規模が、私がこれまでに貰った中で断トツの1番だったことです。

2つ目と3つ目は、サイエンスセミナーという特別講義を受賞記念に行いましたが、私がこれまでに行った講演・講義の中で聴講者数が1番多く、その平均年齢も1番低かったことです。

この素晴らしいイベントを通じて、研究活動にはワクワクする楽しさが溢れており、時には報われることもあるということが伝わって、大学院、更にはアカデミックな分野に進むことになる高校生が少しでも増えてくれたら大変嬉しく思います。

高校生・大学院受験生向け広報誌「TechTech」32号発行

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東京工業大学広報誌「Tech Tech(テクテク)」32号を発行しました。

Tech Techは、学士課程・大学院課程受験生向けに、東工大の最新の研究や、学生生活、研究室の様子、卒業生の活躍など本学のさまざまな面を豊富な画像とわかりやすい文章でご紹介する広報誌です。

最新号では、スーパーコンピュータTSUBAME3.0の設計・構築を主導する学術国際情報センターの松岡教授と、松岡研究室出身で『ポケモン GO』ゲームディレクターの野村達雄さんとの対談などをご紹介しています。

裏表紙にある「頭の体操QUIZ」も人気コンテンツですので、ぜひご挑戦ください。

TechTech No.32

TechTech No.32

CONTENTS

スパコンからポケモン GOへ!

松岡聡教授(学術国際情報センター)×野村達雄さん(Niantic,inc『ポケモン GO』ゲームディレクター)

原子に触るアトムエンジニアリング

一杉太郎教授(物質理工学院)

世界の研究者が東工大に集結!

博士たちのキャリアデザイン論

藤川英華さん(千葉大学 大学院理学研究院 准教授)

学生企画

学士課程学生、大学院生の1日 ~それぞれの過ごし方~

学内の配布場所や、郵送での請求方法については、以下のページをご確認ください。

バックナンバーはこちら

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放射性同位元素を含む排水の漏れについて(放射線総合センター大岡山放射線実験施設)

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放射線総合センター大岡山放射線実験施設の自主点検中に、地下埋設放射性排水配管と桝の接合部に隙間が確認され、隙間周囲の土壌の放射能測定を行った結果、本日、放射性同位元素トリチウム(3H)を含む排水の管理区域※1外への漏れ(土壌中の最大放射能濃度3H 2ベクレル毎グラム)を確認いたしました。

本件については、直ちに原子力規制委員会への報告を行っております。

土壌中のトリチウム(3H)の濃度は、法定で定められた下限※2(1,000,000ベクレル毎グラム)以下であり、人体、環境への影響はございません。

なお、漏れの原因は地下埋設配管の老朽化と推測しており、排水の発生する放射線源を用いた実験は既に停止しています。

学長コメント

近隣の皆様をはじめ関係者の皆様にはご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。

今後このようなことが生じないよう、再発防止に努めてまいります。

国立大学法人 東京工業大学
学長 三島良直

※1
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律で規定された放射線による障害を防止するために設けられる区域。
※2
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律で規定された放射性同位元素として取り扱う必要のある濃度。

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新入留学生歓迎イベント「Welcome Coffee Hours」開催報告

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9月22日、新入留学生歓迎イベント「ウェルカムコーヒーアワーズ(Welcome Coffee Hours)」が大岡山キャンパス 大岡山西1号館の留学生ラウンジで行われました。同日に行われた大学院入学式・オリエンテーション後に、新入留学生や保護者54名が来場しました。

会場の様子

会場の様子

会場の様子

本イベントは、東工大 学生支援センター 国際交流支援部門の事業の一環として、新入留学生に交流の場を提供することを目的として、本学同窓生である滝久雄氏からの寄付を原資とする「滝久雄留学生日本語支援プロジェクト」の後援を受けて実施しています。当日は、リベラルアーツ研究教育院の日本語・日本文化科目担当教職員、留学生交流課職員らによって、日本語学習相談や学修・生活相談、やさしい日本語コーナーなどが設けられました。また、東京工業大学 国際学生会(TISA)の学生も来場し、先輩として新入生の質問や相談に応えました。

日本語科目履修について担当教員に相談
日本語科目履修について担当教員に相談

先輩学生のアドバイスに耳を傾ける新入生
先輩学生のアドバイスに耳を傾ける新入生

会場では、コーヒーやお茶などの飲み物とお菓子も用意され、和やかな雰囲気のなかイベントが進行しました。入学式やオリエンテーションでは緊張した面持ちをしていた新入生も次第にリラックスし、新入生同士、先輩学生、教職員との交流を楽しみました。入学初日に友人づくりや相談の機会を得たことで、これからの留学生活の充実につながることを期待しています。

今後も、折り紙教室、茶道体験、年賀状作りなど留学生と日本人学生・地域住民との交流イベントを開催し、事業を通じた国際交流支援の機会を提供していきます。

茶菓子を片手に和やかな交流

茶菓子を片手に和やかな交流

茶菓子を片手に和やかな交流

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流支援部門

E-mail : ryu.kor@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7645

平成29年度9月東京工業大学大学院入学式を挙行

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平成29年度9月東京工業大学大学院入学式を挙行

9月22日、大岡山キャンパス蔵前会館にて、平成29年度9月東京工業大学大学院入学式が執り行われました。39の国と地域から、修士課程257名、専門職学位課程12名、博士後期課程151名の計420名が東工大生としての新たな一歩を踏み出しました。

39の国と地域から迎えた新入生
39の国と地域から迎えた新入生

学長式辞(三島良直学長)
学長式辞(三島良直学長)

式典は三島良直学長の式辞から始まりました。三島学長は、多様性が進み多文化社会の縮図である本学独自の環境について触れ、さまざまな国と地域の新入生に歓迎の意を表しました。また、型にはまらないユニークな発想や取組を果敢に追及し、学生同士の交流だけでなく、社会と積極的に関わり合い、本学で得た知識や学びを社会に役立てるように、新入生を激励しました。

部局長式辞(岩附信行工学院長)
部局長式辞(岩附信行工学院長)

役員や学院長など、列席する大学関係者や来賓の紹介の後、岩附信行工学院長が各学院を代表してお祝いの言葉を述べ、科学技術の力で文明のより一層の進歩に寄与するように、新入生を奨励しました。

蔵前工業会理事による祝辞(井戸清人理事)
蔵前工業会理事による祝辞(井戸清人理事)

続いて、本学同窓会「一般社団法人蔵前工業会」の井戸清人理事(昭和48年理学部数学科卒)より来賓祝辞をいただきました。井戸氏は、新しく東工大のメンバーとなった新入生を温かい言葉で歓迎し、自らが作り出したネットワークと知を活用して経済の発展に貢献するよう求めました。

式典の最後には、新入生総代として物質理工学院 材料系の博士後期課程に入学したレッノ・ミランティさんが答辞を述べました。式典の開催と歓迎の言葉へ感謝の気持ちを述べた後、緊張した状況にあるグローバル社会において、コミュニティの重要性とより強固な国際関係の構築を強調し、世界の喫緊の課題を解決する手段として科学技術に携わることへの誇りを表明しました。

新入生総代 レッノ・ミランティさんによる答辞

新入生総代 レッノ・ミランティさんによる答辞


高大連携サマーチャレンジ 2017 開催報告

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14年目の夏

高大連携サマーチャレンジ(以下、サマーチャレンジ)は、大学レベルの学問や最先端の研究の授業を高校生に体験してもらい、出された課題にグループで、あるいは個人で立ち向かうことによって「未知の分野への挑戦から何かをつかみ、何かを生みだす」ユニークな夏の合宿です。基礎学力の上に培った発想力・独創性・グループワーク力こそが、未来の科学技術を担う人々に必須であると考え、高校生のときからそうした力を身につけてもらうことを意図したものです。

今年のサマーチャレンジは、2004年以来14回目の開催となりました。

迷走する台風に撹乱されて、初日のチャレンジが予定通り行えるか危ぶまれましたが、無事にスタートすることができました。参加した生徒は、初対面の班メンバーとも最初のアイスブレイクで打ち解け合い、その後のチャレンジに好奇心と探究心全開で取り組んでいました。答えが一つとは限らない課題が出された自由研究チャレンジでは、高校生の豊かな発想と着眼点の多様性を感じました。知的探検が多くの出会いをもたらした楽しい3日間でした。

昨年度から東工大が幹事校として加わる新しい大学入試の形を模索する大学入学者選抜改革推進委託事業※が始まりました。今年のサマーチャレンジには多数の委託事業関係者が見学し、忌憚のない意見や感想が多数寄せられました。14年間育んだサマーチャレンジが新しい入試の形として、関係者の心に刻まれたようです。

大学入学者選抜改革推進委託事業とは、文部科学省が委託する事業の一つで、各大学の入学者選抜において、「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する評価がより重視されることとなるよう、代表大学と参加大学等がコンソーシアムを組み、人文社会(地理歴史科・公民科、国語科)、理数、情報、面接・調査書等に関する評価手法の開発に取り組み、その成果を普及するものです。東工大は広島大学等と共同で理数分野で委託を受けています。

授業風景

授業風景

2017実施記録

サマーチャレンジ2017 タイムテーブル
サマーチャレンジ2017 タイムテーブルPDF

日時:2017年8月8日~10日

場所:埼玉県比企郡嵐山町 国立女性教育会館

参加生徒:64名(東工大附属35名、お茶大附属8名、学芸大附属10名、協力参加校11名)

参加教員:46名(東工大教員31名、引率高校教員9校15名)

事務職員:9名

合計:119名

チャレンジ1 コラムランド

工学院 経営工学系 山室恭子 教授

事前に各自が執筆してきた短い文章を、匿名の状態でディスカッションして評価し合う、東工大の名物授業をそのまま持ち込み、初対面のメンバー同士のアイスブレイクとしました。

今年のお題は「風」。扇風機や風力発電が個性を競うなか、「ただ前だけを見て進んでいたはずなのに、まわりに振り回されているだけだったんだ」という風見鶏のひとりごとを掬い上げた一文が圧勝しました。高校生とは思えないほどの深い人生観です。

文は人なり。お互いの文章を批評し合うことで、メンバー同士の親しみも湧き、個性を認め合ってのテイク・オフをどの班も達成できたようです。

チャレンジ2 お役立ちポリマー ― ペットボトルの「おへそ」のわけ ―

物質理工学院 応用化学系 石曽根隆 教授

チャレンジ2
チャレンジ2

「高分子」、英語でポリマー。たくさんの分子がネックレスのようにつながったもので、熱するとドロドロの液体になったりもします。いろいろなつながりかた、多様な性質を持っているこのポリマーは、私たちの生活にはとても役立っているんです。

ということで、テーブルの上のペットボトルをまじまじと眺めてみましょう。これって、どんなふうに作るか、分かりますか?「風船みたいに作るのかな?」「つなぎ目が見えるな」「タイ焼きみたいに型で作ってる?」「底のところにおへそがあるよ」「きっと、おへそから型に注入して切り取った痕でしょ」

では、つぎは発泡スチロールを観察してみましょう。「すごく軽いね」「ばらばらにすると均一な大きさにはならないね」「ツブツブをふくらませて作ってるんじゃない?」

見えない高分子の手ざわりを確かめたチャレンジでした。

チャレンジ3 & 4 ボールペンの書き味とは? ― 夏休みの自由研究 ―

物質理工学院 材料系 上田光敏 准教授、篠崎和夫 教授

恒例の長丁場チャレンジ、昨年から始まった新企画「自由研究」の今年の課題は「ボールペンの書き味」です。

用意されたのは13種類のボールペンと5種類の紙。これらを用いて、ボールペンの書き味には、どんな因子が関係しているのかを定義して実験し、考察してください。

ボールペンの太さや重さ、重心はどう関係しますか? 他の要素はありますか? ある班は各人の筆圧を「永」の字をキッチンスケールの上で書いて計測し、別の班は紙を傾けて、それぞれの用紙の摩擦力を測定するなど、独自の発想が遺憾なく発揮されます。

一方で伝統の分解チャレンジも健在で、こちらはアナログ・キッチンタイマーを分解して仕組みを解明し、精度を検証します。

2つのミッションを同時にこなし、高度なタイムマネジメントも求められるチャレンジは、翌日の発表フェイズへと結実したのでした。


チャレンジ3-1


チャレンジ3-2

チャレンジ5 電気をどうやって送りますか? ― 直流か交流か、それが問題だ ―

工学院 電気電子系 安岡康一 教授

チャレンジ5
チャレンジ5

知っている単位を全部書いてみましょう! 3分間で書き出したあと、ところで電気の単位はいくつあった、と質問。「電気を送る」授業が始まりました。

約130年前に始まった送電ですが、当時の直流電気は何m届くか計算しましょう。続いて交流が発明されて遠距離送電が可能になった三相交流の利点を数式で説明しましょう。最近、直流送電が増えているのはなぜでしょう。電気製品内部でも直流が使われています。では、みなさんが家を建てるときに配線を直流と交流のどちらにするか、班でまとめて発表してください。

参加した高校生は、日頃意識せずに使っている電気が進化し続けていることを知りました。今度空を見上げたら電線本数を数えてみることでしょう。

チャレンジ6 分子建築学 ― 自己集合により超分子を設計してみよう ―

理学院 化学系 河野正規 教授

チャレンジ6
チャレンジ6

いきなりパズルです。4本の手を持った分子をすきまなく一面に並べるには、どんな構造がありうでしょうか?では、それを立体にしてみたらどうでしょう?

あ、おもしろい! 自己集合できれいに整列してくれる超分子たちと、もっと遊びたくなります。

こんな大きな球体の超分子をつくってみました。どんなふうに使いますか? 「薬?」「検出器?」各班から柔軟な発想がぽんぽん飛び出します。

「うつくしいでしょう?」先生のつぶやきが深く耳に残りました。

分子の世界のうつくしさ。細長い紙をねじって止めて、ハサミでジョキジョキ切るとあらフシギ。ちょっとした手品で体感できる〈結合〉の妙味を帰宅して再現してみた生徒さんは、きっと未来の分子プランナーです。

チャレンジ7 情報をコントロールせよ! ― シナプスの精妙なるメカニズム ―

生命理工学院 生命理工学系 一瀬宏 教授

チャレンジ7
チャレンジ7

身近な疑問から入ります。味って何のために存在するんでしょうか?「毒でないか識別します」そうですね。では、からだのなかでは、「これは毒だぞ」っていう情報はどんなふうに伝達されていると思いますか? 電気か化学物質か。2つの伝達手段の特徴は?「電気は0と1しか伝えられないけど、化学物質にはいろいろな種類があります」

その化学物質による伝達のメカニズムを理解したあと、先生から指令が出ます。「脳の研究によって、どんなことを実現したいか、各班で研究プロジェクトを立ててみて」

レア体験の共有、賢人の智恵のコピーを保存など、ひとしきり議論が沸いたあと、追加の指令として「倫理面での留意点も考慮してみて」。まずは自由に、制約はあとからです。サイエンスの手順も体得できたチャレンジでした。

高校教員の眼

  • コラムランド

    「12の作品について生徒が評価しあう中で、短時間に互いの感性(個性)を理解している様子を見て感心しました。中高でのクラス開きに活用させていただきます」

  • お役立ちポリマー

    「ペットボトルや発泡スチロールという身近な物品に注目するのは、実感があってよかったです」「アイディアが次から次へと浮かぶ生徒を見つけやすい課題でした」

  • ボールペンの書き味とは?

    「ボールペンの書き味という感性の要素が入ったチャレンジをどう生徒達がまとめていくのか大変興味がありました。課題そのものがチャレンジングで素晴らしく思います」「班ごとに視点が異なっているケースが多く見られました。膨大になりがちな因子を切りとって班内で定義をしながら進めていく様子が理にかなっていて、感心しました」

  • 電気をどうやって送りますか?

    「直流と交流、どちらの立場をとるかという討論がおもしろかったです。親近感のわくもので正解はなく、どう説得力を持たせるかを考えるのが良かったです」

  • 分子建築学

    「研究者としての哲学、倫理観が生徒に伝わっていく様子がよくわかりました」「最後の『研究者を目指すために』を含めて、本校理系生徒全員にお話ししていただきたい内容でした。化学クラブの生徒に分子構造を作らせようと考えております」

  • 情報をコントロールせよ!

    「『あんなことができたら…』というのが研究の出発であり、それを徐々に現実問題に即して考えをつめていくという流れを体験できたことが良かったです」「トランスポーターや分解酵素についてあえて説明されずに生徒の気づきをうながされていた点も素晴らしく感じました」

オープンキャンパス2017 開催報告

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夏休み期間中の8月10日に、「高校生・受験生のための東京工業大学オープンキャンパス2017」を大岡山キャンパスにて開催しました。当日は、前日までの猛暑が和らぎ、約12,000名が来場しました。

本学では「ちがう未来を、見つめていく。」という、2030年に向けたステートメント(SPIRIT&ACTION)を策定しました。それを受けて、今年のオープンキャンパスでは、自らの興味・関心に基づく幅広い選択やチャレンジが可能になるカリキュラムや留学しやすい授業制度(クォーター制)など、高校生・受験生の夢や希望を実現するために学べる本学の教育システムを伝えることを最大の目標として、さまざまな企画を行いました。ここでその一部をご紹介します。

オープンキャンパス2017

入試相談会・キャンパスライフ相談会

入試相談会・キャンパスライフ相談会

入試の具体的な仕組みや入学後の具体的なキャンパスライフについて、教員や学生が来場者の相談に答えました。

本学では、2019年4月入学の方から入学時の所属を「類」から「学院」に変更するため、現在の高校2年生以下の方には、新しい入試の仕組みを説明しました。来場者の熱心な質問に、各類の教員や学生が親身になって応対する姿が多く見られました。

留学報告会

留学報告会

2016年4月から始まった新たな教育システムの目標の一つとして、「世界トップクラスの教育システムで学ぶ」ことができる教育環境の構築を掲げており、年間400名以上の学生がさまざまな留学プログラムを利用して留学しています。本学が採択されたスーパーグローバル大学創成支援(SGU)プログラムと連動し、さらに留学プログラムを充実させることで、学生が国際的な視野を養えるよう、在学期間中に短期間でも1度は留学経験を積むことを強く推奨しています。

オープンキャンパスでは、このような取り組みについて全学企画での留学経験者による発表会や、各類での留学体験報告会が行われました。参加された受験生にとっては視野が広がる体験だったのではないでしょうか。

体験企画

体験企画

各類で、模擬実験や模擬講義など様々な体験型の企画を用意しました。高校の授業では味わうことのできない、本学ならではの最先端の研究内容や研究成果を盛り込んだプログラムを、身を持って体験することができ、各企画とも大勢の参加者がありました。受験生にも理解できるようにやさしく分かりやすい内容で、科学への興味をかきたてるように各企画とも工夫を重ねました。写真は第4類で行われたプログラム「視覚の科学~ロボットビジョンからVRまで~(体験)」での1コマです。

研究室公開

研究室公開

今年度も、100以上もの研究室が公開されました。教員や学生が時に実演を交えながら、最前線の研究内容を分かりやすく説明するとともに、来場者からの熱心な質問に答えていました。教員だけでなく研究室に所属する学生とも会話することができる点が大変好評でした。

オープンキャンパス2017を終えて

今回は平日開催となりましたが、多くの方にご来場いただくことができました。来場者の皆さまに東工大の優れた研究・教育内容を知っていただくとともに、より多くの高校生・受験生にキャンパスや研究室の雰囲気を肌で感じていただける大変良い機会となりました。

今年度のアンケート結果をもとに、今後もより一層充実したオープンキャンパスを目指しますので、どうぞご期待ください。

お問い合わせ先

アドミッション部門・学務部入試課

E-mail : opencampus@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3990

超巨大遺伝子群を制御するゲノム領域を発見

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超巨大遺伝子群を制御するゲノム領域を発見
―匂い受容体の遺伝子進化の謎の解明へ―

要点

  • 嗅覚受容体遺伝子の新たな転写調節領域を発見
  • この領域は他に例をみない超長距離作用性の遺伝子調節領域だった
  • 嗅覚受容体の遺伝子発現メカニズムに新たな知見

概要

東京工業大学 バイオ研究基盤支援総合センターの廣田順二准教授と岩田哲郎研究員、東京大学 大学院農学生命科学研究科の東原和成教授、理化学研究所 脳科学総合研究センター 吉原良浩シニアチームリーダーらの研究グループは、匂いを感知する嗅覚受容体の遺伝子発現を制御する新たな転写調節領域(エンハンサー[用語1])を発見しました。

嗅覚受容体は、ゲノム上で最大の遺伝子ファミリー[用語2]を形成し、膨大な匂い情報の識別を可能にしています。嗅覚受容体ファミリーは、魚類から哺乳類に至る脊椎動物に共通して存在するタイプ(クラスI)と、陸棲動物特異的なタイプ(クラスII)に分類されます。そのうちクラスI遺伝子は、動物の進化の過程で染色体上の1カ所に留まり、長大な遺伝子クラスター[用語3]を形成しています。この長大なクラスI遺伝子クラスターの発現制御のメカニズムは長年、未解明でした。

今回本研究グループは、マウス遺伝学的手法と情報学的解析を駆使し、哺乳動物間で高度に保存されたクラスI遺伝子クラスターを制御するエンハンサーを同定しました。ゲノム編集技術[用語4]を用いた解析から、このエンハンサーは、この遺伝子クラスター全体を制御しており、制御する遺伝子の数とゲノム上の距離の両方において、これまでに例をみない規模で遺伝子発現を制御していることが明らかになりました。この“超”長距離エンハンサー[用語5]の発見は、嗅覚受容体の遺伝子進化の謎を解く重要な成果と言えます。

この成果は、2017年10月12日(日本時間18:00)、英科学誌『Nature Communications』に公開されました。

研究の背景

嗅覚は、外部環境中の匂い情報を感知・識別し、動物の生命維持のために必要な行動を起こす重要な感覚です。匂いを感知する嗅覚受容体は、ゲノム上で最大の遺伝子ファミリーを形成し、膨大な数の匂い情報の識別を可能にしています。その数はマウスで約1,100個(マウス全遺伝子の約5%で、ヒトでは約400個ヒト全遺伝子の約2%)にも及びます。

嗅覚受容体には、「クラスI(水棲型)」と「クラスII(陸棲型)」の2つのタイプが存在します。クラスIは魚類から哺乳類まで脊椎動物に共通に存在するタイプで、クラスIIは陸棲動物特異的なタイプです。これまでの研究から、クラスIは水溶性の匂い分子を、クラスIIは揮発性分子を受容すると考えられています。クラスIとクラスII受容体遺伝子の染色体上の局在は大きく異なります。動物の進化の過程で、クラスI遺伝子が染色体上の1カ所に留まり続けて1つの巨大な遺伝子クラスターを形成しているのに対し、クラスII遺伝子は、遺伝子重複と転座を繰り返して、ほぼすべての染色体上に広がって分布しています。

遺伝子の発現には、個々の遺伝子の配列だけではなく、転写調節配列が必要です。これまでに、いくつかのクラスII遺伝子の転写調節配列が同定されてきましたが、ゲノム上最大級の遺伝子クラスターを形成するクラスI遺伝子の調節配列は、見つかっていませんでした。

研究の経緯

廣田准教授と岩田哲郎研究員らは、2013年にクラスI嗅覚受容体遺伝子の転写調節領域が特定のゲノム領域内に存在することを実験的に証明することに成功しました。今回この成果をさらに発展させ、マウス遺伝学的手法と情報学的解析を駆使することで、世界で初めてクラスI嗅覚受容体の転写調節領域の位置を突き止めました。

研究成果

1. クラスI嗅覚受容体遺伝子クラスターを制御する超長距離作用性のエンハンサーの発見

重要な転写調節領域のDNA配列は、進化の過程で保存される傾向があります。そこで多様な動物種においてクラスI遺伝子クラスター領域の配列を比較し、保存されている配列を探索することで、新たな転写調節配列『Jエレメント』を推定しました。

生体内でのJエレメントの機能は、ゲノム編集技術を用いて作出した遺伝子改変(Jエレメントを欠失)マウスから明らかになりました。Jエレメント欠失マウスでは、75個(解析した遺伝子の58%)ものクラスI遺伝子の発現が減少し、その影響は遺伝子クラスター全体(約300万塩基対)に及んでいました。クラスIIのエンハンサーが約20万塩基対の範囲にある7~10個の遺伝子を制御していることと比較すると、Jエレメントがこれまでにない規模で嗅覚受容体の遺伝子発現を制御していることがわかりました(図1)。また、これまでに同定されたどの遺伝子のエンハンサーと比べても、Jエレメントは制御する遺伝子数ならびに作用範囲が最大でした。Jエレメントの制御の範囲内に留まることでしかクラスI遺伝子は機能できず、このことが進化の過程でクラスI遺伝子が単一の遺伝子クラスターに留まり続けた要因になっていると考えられます。

長距離作用性エンハンサーの作用距離の比較

図1. 長距離作用性エンハンサーの作用距離の比較

βグロビン遺伝子のエンハンサーは、約6万塩基対の範囲内にある5つの遺伝子の発現を制御している。クラスII嗅覚受容体遺伝子エンハンサーは、約20万塩基対の範囲内にある7~10個の遺伝子の発現を制御している。Jエレメントは、約300万塩基対内にある75個の遺伝子のエンハンサーと機能しており、長大な作用範囲を有している。

2. 嗅覚受容体の遺伝子発現メカニズムに新たな知見

1つの嗅神経細胞は、膨大な数の嗅覚受容体レパートリーから1つの遺伝子のみを選択し、発現します。これまで嗅覚受容体遺伝子の発現メカニズムとして、確率的に1つの遺伝子が直接選択されるモデルが提唱されています。しかし今回、Jエレメント欠失マウスの解析から、もう1つ新たな知見が得られました。従来のモデルが正しいとすると、対立遺伝子の片方のJエレメントを欠失したヘテロ欠失マウスでは、転写を活性化するエンハンサーが2つから1つになったため、クラスI遺伝子の発現数は半減すると予想されます。しかしながら、結果は予想に反して、クラスI遺伝子の発現数は半減せず、むしろ正常なマウスに近い発現を示しました。これは、片側のエンハンサーを欠失しても、もう一方の正常なエンハンサーが遺伝子発現を補填したことによります。このことは、遺伝子本体の選択より先に機能的なエンハンサーの選択が先行することに他なりません。以上のことから研究グループは、嗅覚受容体遺伝子発現のメカニズムとして、単一の遺伝子選択の前にエンハンサーが選択され、続いて選択されたエンハンサーの制御下にある嗅覚受容体遺伝子が1つ選択されるという新たなモデル(図2)を提唱しました。

今後の展望

クラスI嗅覚受容体のエンハンサー、Jエレメントの発見によって、長年未解明だったクラスI遺伝子の発現制御メカニズムの研究がさらに進むものと考えられます。また、陸棲動物特異的なクラスII嗅覚受容体と比較して、進化の過程で魚類から哺乳動物に共通に存在するクラスI嗅覚受容体の生理機能はほとんど明らかになっていません。今後、クラスI嗅覚受容体遺伝子の発現が大きく減少するJエレメント欠失マウスの匂い行動や生理学的解析によって、その機能が明らかになっていくと期待されます。

嗅神経細胞における嗅覚受容体遺伝子選択モデル

図2. 嗅神経細胞における嗅覚受容体遺伝子選択モデル

(1)神経前駆細胞からクラスIもしくはクラスIIの嗅覚受容体遺伝子を発現する2つの細胞タイプが産生される。
(2)クラスIタイプでは主にJエレメント(緑と赤)が、クラスIIタイプでは多数のクラスIIエンハンサー配列から1つ(例:Hエレメント(青と黄)が選択される。
(3)選択されたエンハンサーの制御下にある1つの嗅覚受容体遺伝子が選択され、発現する。対立遺伝子座の片方のエンハンサーが欠失すると、決められた細胞集団を埋めるため他のエンハンサーが選択される(点線下段、J欠失(ΔJ)もしくはH欠失(ΔH))。クラスIタイプでは対立遺伝子座のJが優先して選択されるが、クラスIIタイプでは残りからランダムに選択されるためHを選択するものは見かけ上約半数となる。

用語説明

[用語1] エンハンサー : ゲノム上には、タンパク質をコードする遺伝子領域のほかにも様々な機能を持つ配列が存在する。その一つである「エンハンサー」は、遺伝子発現を促進する配列として、遺伝子が発現するタイミングや組織を規定する。

[用語2] 遺伝子ファミリー : 進化上同一の祖先遺伝子に由来すると考えられる、配列や機能が類似した遺伝子群。嗅覚受容体遺伝子ファミリーは、7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体という特徴を共有する巨大ファミリーである。

[用語3] 遺伝子クラスター : 同様の機能を有する多数の遺伝子が、染色体上の同じ位置に直列して位置している状態(遺伝子集団)。クラスI嗅覚受容体遺伝子クラスターは、129個の遺伝子が約300万塩基対の範囲内に密集して存在する、極めて巨大な遺伝子クラスターの1つ。

[用語4] ゲノム編集技術 : DNA分解酵素にゲノム上の狙った場所の配列を認識させることでDNAを切断し、目的遺伝子の配列を破壊したり、書き換えたりする技術。

[用語5] 長距離エンハンサー : 遺伝子から遥かに遠方に存在するエンハンサー配列。これまでに数十万~百万塩基対離れた遺伝子に作用するものが報告されている。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
A Long-Range cis-Regulatory Element for Class I Odorant Receptor Genes
著者 :
Tetsuo Iwata, Yoshihito Niimura, Chizuru Kobayashi, Daichi Shirakawa, Hikoyu Suzuki, Takayuki Enomoto, Kazushige Touhara, Yoshihiro Yoshihara, and Junji Hirota*
DOI :

研究グループメンバー

  • 東京工業大学 バイオ研究基盤支援総合センター/生命理工学院 生命理工学系:廣田順二 准教授

  • 東京工業大学 バイオ研究基盤支援総合センター:岩田哲郎 研究員

  • 東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系:小林千鶴 大学院生、白川大地 大学院生

  • 東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻/科学技術振興機構(JST)戦略創造事業ERATO東原化学感覚シグナルプロジェクト:新村芳人 特任准教授、東原和成 教授

  • 株式会社日本バイオデータ:鈴木彦有 博士

  • 理化学研究所 脳科学総合研究センター シナプス分子機構研究チーム:吉原良浩 シニアチームリーダー

研究サポート

本成果は主に、文部科学省(MEXT)/日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金、千里ライフサイエンス財団、稲森財団、住友財団、倉田記念日立科学技術財団のサポートを受けて行われました。

お問い合わせ先

東京工業大学
バイオ研究基盤支援総合センター 生物実験分野

廣田順二 准教授

E-mail : jhirota@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5830 / Fax : 045-924-5832

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

従来の性能を越える新しい有機半導体用電極の開発 ―電極材料によらず電子・正孔両方の注入が可能に

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発表のポイント

  • 有機半導体において、通常の金属電極を凌駕する世界最高性能の電荷注入効率の電極を設計して実証した。
  • 新しい電極は、電子と正孔を同等に有機半導体に注入することができる。
  • 新しい電極は、空気中で安定であり、種々の電子デバイスへの応用が期待できる。
  • 新しい電極は、高性能な電界発光素子への応用が可能である。
  • 新しい電極は、中間層のナノ構造を操作することにより簡単なプロセスで高性能電極となる。

概要

東北大学 材料科学高等研究所(AIMR)・同 大学院理学研究科のタンガベル・カナガセカラン助手、下谷秀和准教授および谷垣勝己教授は、東京工業大学 物質理工学院の清水亮太特任講師(現 JSTさきがけ専任研究員)および一杉太郎教授と共同で、有機半導体デバイスに使用される電極において、これまで報告されている中で最も優れた性能を示す電極を開発する事に成功しました。新しい電極は有機半導体において代表的な金属電極である金(正孔注入に用いられる電極)およびカルシウム(電子注入に用いられる電極)よりも優れた電荷の注入効率を示しています。この新しい電極は、正孔(正の電荷)[用語1]と電子(負の電荷)を同等の効率で導入することができるばかりでなく、カルシウム等とは異なり空気中で安定です。新しい電極は基礎科学の観点から重要であるばかりでなく、高性能な電界発光素子[用語2]などの電極として期待されます。

本研究成果は2017年10月17日(火)18時(日本時間)に、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

研究成果

現在、多くの半導体素子はシリコンなどの無機半導体を用いて作製されています。それに対して有機半導体は、柔軟性、軽量、プロセスの容易性など多くの優れた特性を示すことから、次世代の半導体材料として多くの期待が寄せられています。しかし、有機半導体の大きな問題点の一つは、電荷を運ぶ粒子(正孔および電子)の電極からの注入効率が悪いことでした。特に、正孔と比較して電子の注入効率は著しく劣っていました。本研究グループでは、図1のような金属/有機多結晶半導体/テトラテトラコンタン(鎖状炭化水素分子の一種)という三層構造の電極を新しく設計して、その性能が従来のいかなる電極よりも格段に優れていることを実証しました。

従来の電極(左)と新しい有機半導体電極(右)の構造。

図1. 従来の電極(左)と新しい有機半導体電極(右)の構造。

新しい電極では、テトラテトラコンタン薄膜の効果により結晶性の低い多結晶半導体薄膜が形成され、そのバンドギャップ[用語3]内に生じる電子準位が重要な役割を果たします。まず、図2に示すように金属と多結晶半導体の接合界面に形成されるバンドギャップ内準位のために金属―半導体接合が従来のショットキー極限[用語4]から離れてバーディーン極限[用語5]へ近づくと同時に、多結晶半導体の構造の乱れに起因するバンドギャップ内準位を介して小さい活性化エネルギーで正孔と電子が半導体に注入されます。そのため、電極に用いる金属の種類によらず正孔、電子ともに低抵抗で注入されます。

新しい電極の正孔と電子の注入機構。(a)有機半導体では注入障壁の大きさが電極の仕事関数に依存する(ショットキー極限)傾向にあるが、新しい電極ではギャップ内準位の増加によりフェルミ準位のピン止めが強くなるため、注入障壁が電極材料に依存しないバーディーン極限に近づく。(b)多結晶有機半導体層中に生じるバンドギャップ内準位を介した注入により、ショットキー障壁を乗り越える熱電子放出機構より注入障壁が小さくなる。
図2.
新しい電極の正孔と電子の注入機構。(a)有機半導体では注入障壁の大きさが電極の仕事関数に依存する(ショットキー極限)傾向にあるが、新しい電極ではギャップ内準位の増加によりフェルミ準位のピン止めが強くなるため、注入障壁が電極材料に依存しないバーディーン極限に近づく。(b)多結晶有機半導体層中に生じるバンドギャップ内準位を介した注入により、ショットキー障壁を乗り越える熱電子放出機構より注入障壁が小さくなる。

有機半導体単結晶を用いた電界効果トランジスタにこの電極を応用したところ、図3に示した通り新電極は従来の金電極からの正孔注入およびカルシウム電極からの電子注入より大きな電流を流しました。さらに、従来の電極では電子と正孔の注入の向きを入れ替えるとトランジスタとして動作しないのに対し、新電極は入れ替える前と同等に動作しました。また、この結果を踏まえて空気中で不安定なカルシウム等を用いずに有機単結晶発光トランジスタの作製に成功しました(図4)。以上のことは空気中での安定性等、素子に求められる条件を満たす任意の金属を用いて高性能な電極を作製できることを示しており、有機半導体の基礎研究だけでなく応用においても様々な活用が期待されます。

電界効果トランジスタへの応用(青:従来電極、赤:新しい電極、TTC:テトラテトラコンタン)

図3. 電界効果トランジスタへの応用(青:従来電極、赤:新しい電極、TTC:テトラテトラコンタン)

新しい電極の電界発光素子への応用。上:素子構造、下:上から見た発光の様子。

図4. 新しい電極の電界発光素子への応用。上:素子構造、下:上から見た発光の様子。

本研究成果は科学研究費補助金(JP17H05326、JP24684023、JP25610084、JP16K13826)、日揮・実吉奨学会研究助成金、カシオ科学振興財団研究助成金、AIMRフュージョン・リサーチプログラムの支援を受けて行われました。

用語説明

[用語1] 正孔 : 固体中の本来電子があるべきところから電子が抜けた穴。正の電荷をもった粒子とみなすことができる。

[用語2] 電界発光素子 : 有機ELのように電圧を加えることにより発光する素子。

[用語3] バンドギャップ : 結晶中において電子が存在できないエネルギー領域。

[用語4] ショットキー極限 : 電極から半導体への注入障壁の大きさが電極の仕事関数に依存し、それらの変化量が等しい極限。

[用語5] バーディーン極限 : 電極から半導体への注入障壁の大きさが電極の仕事関数に依存せず、一定となる極限。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
A new electrode design for ambipolar injection in organic semiconductors
著者 :
Thangavel Kanagasekaran, Hidekazu Shimotani, Ryota Shimizu, Taro Hitosugi, Katsumi Tanigaki
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東北大学 材料科学高等研究所/同大学院 理学研究科

教授 谷垣勝己

東北大学 大学院理学研究科

准教授 下谷秀和

E-mail : tanigaki@m.tohoku.ac.jp
Tel : 022-217-6166

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系

教授 一杉太郎

E-mail : hitosugi.t.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2636

取材申し込み先

東北大学 材料科学高等研究所
広報・アウトリーチオフィス

清水修

E-mail : aimr-outreach@grp.tohoku.ac.jp
Tel : 022-217-6146

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

スピンが偏った超伝導状態の検証に成功 ―トポロジカル超伝導の実現へ向けて―

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要旨

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 創発物性計測研究チームの岩谷克也上級研究員、花栗哲郎チームリーダー、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授らの共同研究グループは、「トポロジカル超伝導体[用語1]」の候補物質β-PdBi2の表面において、スピン[用語2]が偏った(スピン偏極した)特異な状態が超伝導になっていることを明らかにしました。

トポロジカル超伝導体は、試料内部では通常の超伝導[用語1]を示しますが、表面や端(エッジ)にマヨラナ粒子[用語3]と呼ばれる特異な粒子を持つことが理論的に提案されています。マヨラナ粒子は新しい原理に基づく量子コンピュータ[用語4]への応用などの観点から大きな注目を集めている一方、現状ではトポロジカル超伝導の報告例が少なく、その存在を巡って論争が続いています。トポロジカル超伝導の実現には、試料表面でスピン偏極した電子状態を作り出し、そこに超伝導を誘起させることが重要です。しかしこれまで、スピン偏極と超伝導を同時に観測した例はありませんでした。

今回、共同研究グループは、トポロジカル超伝導体の候補物質として知られるβ-PdBi2(Pd:パラジウム、Bi:ビスマス)の高品質単結晶の作製に成功し、走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS)[用語5]を用いて、表面のスピン状態および超伝導状態を同時に観察しました。その結果、β-PdBi2の表面では全ての電子状態がスピン偏極しており、トポロジカル超伝導にとって非常に有利な状況にあることが分かりました。また、同時に超伝導ギャップ[用語6]の観測にも成功し、スピン偏極状態が超伝導になっていることを実験的に示しました。

本研究成果は、これまで調べることが難しかったスピン構造と超伝導の関係解明に向けて突破口を開くものであり、今後、トポロジカル超伝導の完全検証やマヨラナ粒子の検出へつながることが期待できます。

本研究成果は、国際科学雑誌「Nature Communications」(10月17日付:日本時間10月17日)に掲載されました。

なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)「トポロジカル量子計算の基盤技術構築(研究代表:笹川崇男)」の一環として行われました。

共同研究グループ
理化学研究所
創発物性科学研究センター
創発物性計測研究チーム
  • 上級研究員:岩谷克也(いわや かつや)
  • 上級研究員:幸坂祐生(こうさか ゆうき)
  • 特別研究員:町田理(まちだ ただし)
  • チームリーダー:花栗哲郎(はなぐり てつお)
創発計算物理研究ユニット
  • ユニットリーダー:モハマド・サイード・バハラミー(Mohammad Saeed Bahramy)
東京工業大学
科学技術創成研究院
フロンティア材料研究所
  • 大学院生(研究当時):大川顕次郎(おおかわ けんじろう)
  • 准教授:笹川崇男(ささがわ たかお)

背景

「トポロジカル絶縁体」は、物質中の電子状態のトポロジー(位相幾何学)を反映して、内部はエネルギーギャップ[用語7]を持つ絶縁体でありながら、表面では電気を通す金属となる特殊な物質で、精力的に研究されています。

このトポロジカル絶縁体との類似から、物質内部に超伝導ギャップを持ちながら、表面や端(エッジ)ではトポロジカルに保護された金属状態を示す物質が理論的に提案され、「トポロジカル超伝導体」と命名されています。トポロジカル絶縁体の表面状態は電子から構成されるのに対し、トポロジカル超伝導体のエッジにはマヨラナ粒子が現れることが予言されています。マヨラナ粒子は、量子コンピュータにおける量子ビット[用語8]としての利用が提案されています。従来の量子ビットでは、電磁波の刺激などによって0と1の状態変化を起こさせて量子論理計算を行います。この場合、環境からの温度や電磁ノイズの影響によって意図していない状態変化も容易に起こるため、沢山の量子ビットを連動させて必要な計算時間だけ動かすことが難しく、実用的な量子コンピュータの実現には100年以上かかると予想されています。一方でマヨラナ粒子を用いる量子ビットは、粒子を交換する順序を決めるだけで0と1の状態変化を計画通りに行うことができるため、原理的にはエラーを生じない量子コンピュータが作れると言われています。このため、マヨラナ粒子の実験的観測を数多くの研究者が目指していますが、現状ではトポロジカル超伝導の報告例が少なく、マヨラナ粒子の存在を巡った論争が続いています。

トポロジカル超伝導の実現には、スピンが偏った(スピン偏極した)電子状態を作り出し、そこに超伝導を誘起させることが重要だと知られています。なぜならこの超伝導状態においてマヨラナ粒子出現の条件が満たされるからです。通常の物質には、アップとダウンの2通りのスピンを持つ電子が同じように存在しています。超伝導は逆向きのスピンを持つ電子同士が対を組むことによって生じるため、アップ・ダウンおよびダウン・アップの2通りの組み合わせが許されます。ところが、なんらかの理由でスピン偏極した状態が超伝導になると、2つの組み合わせのうちのどちらか片方しか許されず、その状況がトポロジカル超伝導にとって有利であることが分かっています。

トポロジカル絶縁体の表面金属状態はスピン偏極しているため、トポロジカル絶縁体に不純物を入れて超伝導体にした物質や、トポロジカル絶縁体と超伝導体を人工的に接合したヘテロ構造などが、トポロジカル超伝導体の候補物質として主に研究されてきました。もし、トポロジカル絶縁体と同じようなスピン偏極した表面状態を持ち、固有の性質として超伝導を示す物質があれば、トポロジカル超伝導体の有力な候補になります。このような物質はいくつか知られていますが、良質な試料作製が難しく、またスピン偏極と超伝導の性質を同時に調べる手法がなかったため、トポロジカル超伝導の報告例はほとんどありませんでした。

研究手法と成果果

共同研究グループは、トポロジカル超伝導体の候補物質の一つであるβ-PdBi2(Pd:パラジウム、Bi:ビスマス)に着目しました。東京工業大学のチームが作製に成功した高品質単結晶を用いて調べたところ、バルク単結晶が5.4ケルビン(K、約-267.8 ℃)で超伝導転移を起こしました。β-PdBi2は、常伝導状態ではスピン偏極したトポロジカルに保護された表面状態[用語9]が存在することが報告されていますが、表面の超伝導状態については分かっていませんでした。

そこで、表面に敏感で、かつ高エネルギー分解能、高空間分解能を併せ持つ走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS)を用いて、β-PdBi2の表面状態およびその超伝導状態を観察しました。その結果、電子の波が干渉して作る特徴的な模様[用語10]を観測しました(図1)。この実験結果と第一原理理論計算[用語11]を基にした詳細なシミュレーション結果を比較したところ、この模様は、トポロジカルな表面状態だけでなく、表面に現れている全ての電子状態がスピン偏極していなければ説明できないことが明らかになりました。また、電子の波の干渉模様から、β-PdBi2表面の電子状態がどのようにスピン偏極しているのか分かりました。

β-PdBi2表面付近に存在する電子は、原子欠陥などによって散乱され干渉模様を形成する。散乱は、表面状態および散乱前後のスピンの相対的な向きに依存するため、干渉模様の解析からスピンを含めた表面状態の情報を得ることができる。

図1.スピン偏極したβ-PdBi2表面状態に起因する電子干渉模様


β-PdBi2表面付近に存在する電子は、原子欠陥などによって散乱され干渉模様を形成する。散乱は、表面状態および散乱前後のスピンの相対的な向きに依存するため、干渉模様の解析からスピンを含めた表面状態の情報を得ることができる。

次にβ-PdBi2の超伝導の性質を調べました。超伝導転移温度より低い温度の0.4 K(約-272.8 ℃)で、β-PdBi2表面でのエネルギーごとの電子の数(スペクトル)を測定しました(図2)。縦軸のトンネルコンダクタンスとは、横軸に示されたエネルギーを持つ電子の数に相当します。約±0.8 meVに鋭いピークが観測され、その内側のエネルギーを持つ電子は全くないことが分かりました。これは、超伝導状態に特有なスペクトル(超伝導ギャップ)であり、低温でも常伝導のまま残っている状態がないことを意味しています。すなわち、スピン偏極した電子状態の全てが超伝導になっていることを示す確実な証拠です。このような表面のスピン偏極した超伝導状態は、トポロジカル超伝導にとって最適な状況です。

β-PdBi2の表面状態を、超伝導転移温度より低い温度の0.4 K(約-272.8 ℃)で測定した。その結果、全てのスピン偏極表面状態において、超伝導ギャップが完全に開いていることが明らかになった。

図2.β-PdBi2表面で観察された超伝導ギャップ


β-PdBi2の表面状態を、超伝導転移温度より低い温度の0.4 K(約-272.8 ℃)で測定した。その結果、全てのスピン偏極表面状態において、超伝導ギャップが完全に開いていることが明らかになった。

今後の期待

電子の波の干渉模様と超伝導ギャップの同時に観測できるSTM/STSという手法は、今後のトポロジカル超伝導の完全検証、さらにはマヨラナ粒子の直接観測に向けた強力な武器となるものと期待できます。

トポロジカル超伝導そのものの証拠を得るには、今後0.4 Kよりも低温でより高エネルギー分解能の測定を行う必要があります。またマヨラナ粒子は、磁場中で形成される渦糸[用語12]芯に存在することが期待でき、その際、特徴あるスピン模様を作ります。電子の波の干渉模様からは、スピン偏極に関する情報が得られますが、スピンの模様そのものの情報は得られません。現在、スピンの空間分布を直接とらえることのできるSTMを開発しており、近い将来、マヨラナ粒子の直接観測を行う予定です。

用語説明

[用語1] トポロジカル超伝導体、超伝導 :通常の超伝導は、物質が臨界温度を超えて冷却されたときに起こる、電気抵抗がゼロになる現象。超伝導状態では、電気がエネルギーを失わずに物質中を流れる。トポロジカル超伝導体では、物質内部で超伝導状態に特有の超伝導ギャップが開いているのに対し、表面や端(エッジ)にはトポロジカルに保護された金属状態が現れる。

[用語2] スピン : 粒子の持つ量子力学的な内部自由度(粒子を区別する性質)の一つ。磁性の根源でもある。電子のスピンは、アップスピン状態とダウンスピン状態と呼ばれる二つの状態の重ね合わせとして表現される。

[用語3] マヨラナ粒子 : 1937年にE. Majoranaが理論的に提案した粒子で、粒子がそれ自身の反粒子になる特徴を持っている。トポロジカル超伝導に現れるマヨラナ粒子は普通の電子とは異なり、この性質を利用した量子コンピュータへの応用が提案されている。

[用語4] 量子コンピュータ : 量子力学における重ね合わせを利用して、超並列計算を実現するコンピュータ。従来のコンピュータでは天文学的な時間のかかる因数分解の問題などを、数時間で解くことが出来る量子アルゴリズムが開発されており、超高速計算が可能になると考えられている。

[用語5] 走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS) : 先端を尖がらせた金属の針(探針)で物質の表面をなぞるように走査し、探針の高さをマッピングすることで、物質表面の凹凸を原子スケールで観察することができる顕微鏡。探針位置を固定し、電流-電圧特性を測定すると、その位置において、どのようなエネルギーを持った電子がどのくらい存在するかを知ることができる。

[用語6] 超伝導ギャップ : 超伝導状態で電子は二つずつ対(クーパー対)になっている。電子対を安定化させているのは、電子間に働く実効的な引力であるが、そのため、電子対を破壊するには有限のエネルギーが必要である。この安定化エネルギー以下のエネルギーでは、対を組まない個々の電子を励起することはできないため、電子の励起スペクトルには低エネルギーにギャップが生じることになる。このギャップを超伝導ギャップと呼ぶ。

[用語7] エネルギーギャップ : 電子が存在できないエネルギー領域。このギャップ以上のエネルギーを与えると、電子と正孔が生まれ電気が流れる。

[用語8] 量子ビット : 量子情報における最小単位。従来のコンピュータでは0か1のいずれかの状態しか持ちえないビットで情報を扱うのに対し、量子コンピュータでは量子ビットが0と1だけでなく、0と1の量子力学的重ね合わせ状態をとることができるため超高速計算が可能になる。

[用語9] トポロジカルに保護された表面状態 : トポロジカルに異なる種類の絶縁体同士が接するとき、その境界ではエネルギーギャップは必ず閉じなければならない。この要請により、境界(表面)には必ず伝導状態が現れることになり、攪乱による影響を受けないという特徴がある。

[用語10] 電子の波が干渉して作る模様 : 量子力学によると、電子は粒子であると同時に波としての性質を持ち、固体中の電子は、多くの場合、波となって結晶全体に広がっている。このような電子の波が散乱を受けると、波の干渉によって、散乱源の近くに定在波が形成される。本研究で観測した、低エネルギーにおける電子の模様は、渦糸に散乱された電子が形成する定在波であると考えられる。

[用語11] 第一原理理論計算 : 実験結果に頼らないで、量子力学の基本原理から分子や結晶の性質を計算する方法。実験が困難な極限状況での物質の性質を予測することができるのが特徴。最近のコンピュータの処理能力の向上と計算科学の進展により材料研究の強力な手法になってきている。

[用語12] 渦糸 : 電気抵抗ゼロとならぶ超伝導体の重要な性質が完全反磁性であり、このため、超伝導体の内部には磁場が侵入しない。しかし、銅酸化物超伝導体を含むほとんど全ての化合物超伝導体は、第二種超伝導体と呼ばれるカテゴリーに属し、一定以上の磁場をかけると、その内部に磁場の侵入を許す。しかし、侵入した磁場は一様に分布するのではなく、磁束量子と呼ばれる一定の磁束を作り出すような、細長い超伝導電流の渦が多数存在する、空間的に不均一な状態が実現される。この1本1本の超伝導電流の渦を渦糸(うずいと)と呼ぶ。渦糸の中心では、超伝導は完全に抑制されている。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Full-gap superconductivity in spin-polarised surface states of topological semimetal β-PdBi2
著者 :
K. Iwaya, Y. Kohsaka, K. Okawa, T. Machida, M. S. Bahramy, T. Hanaguri and T. Sasagawa
DOI :

お問い合わせ先

研究内容について

理化学研究所 創発物性科学研究センター
創発物性計測研究チーム

上級研究員 岩谷克也

チームリーダー 花栗哲郎

E-mail : iwaya@riken.jp(岩谷)、
hanaguri@riken.jp(花栗)
Tel : 048-467-1327 / Fax : 048-462-4656

東京工業大学
科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所

准教授 笹川崇男

E-mail : sasagawa@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5366 / Fax : 045-924-5366

取材申し込み先

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

東京工業大学
広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

サイクリング部サイクルサッカー班 チャンピオンズカップで優勝し、世界大会に出場決定

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7月9日、大阪府和泉市の桃山学院大学総合体育館にて行われた公益財団法人 日本自転車競技連盟主催「2017年度チャンピオンズカップ」のサイクルサッカー二人制室内競技種目に東工大から2チームが出場し、東工大サイクリング部サイクルサッカー班の赤津陸さん(工学部 無機材料工学科 学士課程4年)と東工大OBの松田鋼さんのチーム「たちかわCSC1」が見事優勝しました。

これを受けて、2017年11月24日(金)~26日(日)にオーストリア・ドルンビルンで開催される「世界室内自転車競技選手権大会(UCI Indoor Cycling World Championships 2017)」に日本代表として出場することが決まりました。

試合中のたちかわSCS1(黄色いシャツのチーム。左が赤津さん、右が松田さん)

試合中のたちかわSCS1(黄色いシャツのチーム。左が赤津さん、右が松田さん)

赤津さんのコメント(チーム名:たちかわCSC1)

試合の様子(黒いシャツが赤津さん)
試合の様子(黒いシャツが赤津さん)

いつかは日本代表になりたいと思っていましたが、正直大学生の時になれるとは思ってもいませんでした。準決勝では昨年度までの日本代表チームとあたり、かなり厳しい試合になると予想していました。しかし先制点を取ることができ、優勝までの流れを掴み勝つことができました。 世界選手権での目標はBリーグ優勝です。あと数ヶ月でなるべく成長し、当日に本調子で挑めるようにしたいと思います。どうか応援よろしくお願いいたします。

世界室内自転車競技選手権大会は、Aリーグ(上位)6ヵ国とBリーグ(下位)6ヵ国に分かれており、現在、日本はBリーグです。Aリーグの最下位とBリーグの優勝チームが最後に入れ替え戦を行います。これに勝てれば翌年はAリーグでスタートできます。日本はBリーグでの優勝を何度も経験しています。ちなみに次回大会の開催地であるドルンビルンは、日本がAリーグ5位となってAリーグに残留したことのある記念すべき場所です。

チャンピオンズカップとは

試合の様子
試合の様子

公益財団法人 日本自転車競技連盟が主催する「UCI世界室内自転車競技選手権大会派遣代表選考会」、兼「UCIサイクルサッカーワールドカップファイナル派遣代表選考会」です。競技種目は、サイクルサッカーとサイクルフィギュア男女別シングルの2種目です。

サイクルサッカー競技は予選リーグと決勝トーナメントによって順位を決定します。

2017年度サイクルサッカーには16チームが出場しました。優勝したチーム「たちかわCSC1」は、過去幾度も世界選手権への出場経験を持つ東工大サイクリング部サイクルサッカー班OBの松田さんと、東工大現役学生の赤津さんによるペアです。準決勝で昨年度の優勝チーム「RSV OSAKA」を下し、2017年度チャンピオンズカップ優勝と上記2つの世界選手権への出場権とを手に入れました(ただし、UCIサイクルサッカーワールドカップファイナル(UCI Cycle―ball World Cup 2017 Final/ドイツ ヴィリッヒ/2017年12月2日)への出場は、メンバーの都合により出場を辞退しています)。

サイクルサッカーとは

サイクルサッカーは、2人1チームとなって自転車に乗って行うサッカーのようなスポーツで、体育館などで行われる室内自転車競技の一種です。競技には専用の自転車を使い、主に前輪を使ってドリブルやパス、シュートをします。ほとんど立ちこぎでプレーするため、自転車はハンドルが上を向き、ギアは固定ギアになっています。

使用するボールは表面が布製で直径は17~18 cm、重さは500~600 g。コートの広さは11m×14mで、試合は2対2で行います。試合時間は前半7分、後半7分の合計14分。試合中、選手は地面に足を着いてはいけません。サイクルサッカーは自転車を巧みに操りながら、ゴールを狙うスポーツです。日本ではほとんどの選手が大学から始めます。

東工大サイクリング部とは

東工大の公認サークルとして、東京工業大学、お茶の水女子大学、東京外国語大学の学生を中心に活動しています。主にツーリング班、サイクルサッカー班、レーサー班の3班に分かれて100名ほどが活動しています。今回メンバーが優勝したサイクルサッカー班には東工大生22名と東工大卒業生、他大生が所属し、東工大大岡山キャンパスの体育館で週2回練習しています。

東工大サイクリング部サイクルサッカー班は、2017年11月11日(土)、12日(日)には全日本学生選手権に、2017年11月24日(金)~26日(日)には今回出場が決定した世界室内自転車競技選手権大会(オーストリア)に出場と、これから試合が続きます。ぜひ、みなさんの温かい応援をよろしくお願いします。

表彰式式の様子(黄色いシャツがチームたちかわCSC1)

表彰式式の様子(黄色いシャツがチームたちかわCSC1)

お問い合わせ先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-45734-2976

新型の酸化物イオン伝導体である新物質SrYbInO4を発見 ―燃料電池や酸素分離膜等の開発を加速―

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要点

  • 新物質SrYbInO4を発見、結晶構造の決定に成功
  • SrYbInO4新構造型の純酸化物イオン伝導体[用語1]であることを発見
  • イオン伝導機構も解明
  • 関連材料の開発およびエネルギー・環境分野への応用研究を加速

概要

東京工業大学 理学院 化学系の八島正知教授らの研究グループは、新物質「ストロンチウム・イッテルビウム・インジウム酸化物(SrYbInO4)」を発見しました。そして、SrYbInO4が純酸化物イオン伝導体としては新しい結晶構造のグループ(新構造ファミリー)に属することを見出しました。そのため今後関連物質の開発や競争につながると期待されます。

今回、イオンの大きさと元素の組み合わせ、および構造の安定性に着目して発見に至ったものであり、同様な手法で新物質探索が盛んになると考えられます。この材料は、固形酸化物形燃料電池(SOFCまたはSOFCs)[用語2]、センサー、酸素分離膜等の発展につながると期待され、今後エネルギー・環境問題を解決する糸口になる可能性があります。また、YbとInが作る八面体が連結することによってイオン拡散経路が形成されて酸化物イオン伝導が発現することがわかりました。

本成果は、物理化学の国際誌J. Phys. Chem. Cに9月11日付で掲載されました。また12月6日の固体イオニクス討論会において発表予定です。

研究成果

電子伝導性が比較的発現しにくい構成元素を選択し、高温で比較的安定であるCaFe2O4型構造[用語3])に着目、CaFe2O4型構造をとると期待されるサイズの陽イオンを選択することで新物質の探索に成功しました(図1)。新物質SrYbInO4を実際に固相反応法[用語4]により初めて合成することに成功しました。中性子回折、放射光X線回折、実験室系X線回折、第一原理計算などでSrYbInO4の結晶構造を解析しました。その結果、SrYbInO4の結晶構造が、CaFe2O4型であることを見出しました。SrYbInO4の電気伝導度は、酸素分圧によらずほぼ一定であり、UV-Vis反射率測定から得たバンドギャップは4.34 eVと広いので、SrYbInO4がCaFe2O4型酸化物で初となる純酸化物イオン伝導体であることが強く示唆されました。CaFe2O4型構造を持つ物質群には、純酸化物イオン伝導を示す材料が過去に全く報告されておらず、今回、純酸化物イオン伝導を示す新構造ファミリーを発見したことになります。今回、イオンの大きさ(図1の構造マップ)と元素の組み合わせ、および構造の安定性に着目して新物質で新構造型の酸化物イオン伝導体であるSrYbInO4の発見に至ったものであり、同様な手法で新物質探索が盛んになると考えられます。過去に報告のあるCaFe2O4は電子伝導体ですが、わずかな酸化物イオン伝導を示すことが知られていました。CaFe2O4の電子伝導度が高いことに加えて酸化物イオン伝導度の活性化エネルギーが高いこと(3.3 eV)が問題でした。Caよりもサイズが大きなSrを選択、Feよりもサイズが大きなYbとInを選択することにより、酸化物イオン伝導の活性化エネルギーが小さい(1.76 eV)純酸化物イオン伝導体SrYbInO4を今回発見しました。

室温から1,000 ℃の高温環境下で測定したSrYbInO4の実験室系X線回折、放射光X線回折および中性子回折データを解析することにより、この新材料は、空間群がPnmaであるCaFe2O4型構造の単相であることがわかりました(図2)。CaFe2O4型構造には、3種類の陽イオン席(サイト:いわば原子の座席)があり、本研究ではa席、b席、c席と名付けます。各席におけるイオンの占有率を慎重に検討した結果、a席はSrで充填されており、b席とc席にはYbとInの両方が存在していることがわかりました。この占有状態の不規則性の原因は、b席とc席の配位環境が類似していることや、イッテルビウムイオン(Yb3+)とインジウムイオン(In3+)のサイズが似ていることに起因しています。また、Ybがc席よりはb席に若干存在しやすい理由は、b席の陽イオンと酸素の距離が、c席の陽イオンと酸素原子の間の距離より長いこと、Yb3+のイオン半径がIn3+より少し大きいことに起因すると考えられます。占有状態の不規則性の度合いによって、イオン伝導度を制御できる可能性もあり、今回分かった占有状態の不規則性は重要な発見であると考えられます。

M2M´O4化合物の構造マップ。MとM´は異なる陽イオンである。赤いハッチはCaFe2O4型構造の領域を示す。M=Yb0.5In0.5とM´=SrであるSrYbInO4はCaFe2O4型構造をとると期待されることがわかる。

図1. M2M´O4化合物の構造マップ。MM´は異なる陽イオンである。

赤いハッチはCaFe2O4型構造の領域を示す。M=Yb0.5In0.5M´=SrであるSrYbInO4はCaFe2O4型構造をとると期待されることがわかる。 ©American Chemical Society

今回発見した新物質SrYbInO4における1つのテスト的な酸化物イオンのエネルギー図:b軸に沿った1次元の酸化物イオン伝導を示す。b軸に沿った酸化物イオン伝導の臨界イオン半径(陽イオンが作る隙間)の方が、a軸およびc軸に沿ったそれより大きいため、酸化物イオン伝導のエネルギー障壁が低くなり、b軸に沿って酸化物イオン伝導が起こると考えられる。この酸化物イオン伝導の構造的要因は、b軸に沿った無限の二重八面体の面または陵に沿って、酸化物イオンが移動することにあると考えられる。

図2. 今回発見した新物質SrYbInO4における1つのテスト的な酸化物イオンのエネルギー図:b軸に沿った1次元の酸化物イオン伝導を示す。b軸に沿った酸化物イオン伝導の臨界イオン半径(陽イオンが作る隙間)の方が、a軸およびc軸に沿ったそれより大きいため、酸化物イオン伝導のエネルギー障壁が低くなり、b軸に沿って酸化物イオン伝導が起こると考えられる。この酸化物イオン伝導の構造的要因は、b軸に沿った無限の二重八面体の面または陵に沿って、酸化物イオンが移動することにあると考えられる。 ©American Chemical Society

背景

エネルギー・環境問題を解決するためには、高効率、低コストで安全性の高い次世代のエネルギー源の開発が求められています。特に固体酸化物形燃料電池は、その中核を担うと期待されています。より良い固体酸化物形燃料電池、センサー、酸素透過膜の開発には、より高い酸化物イオン伝導度をもつ酸化物イオン伝導体や酸化物イオン―電子混合伝導体が必要です。

イオン伝導度は、その材料を構成する結晶構造と密接な関係があります。従来のイオン伝導体は、既存のイオン伝導体の組成を改良することで開発が進められてきました。しかし、より革新的なイオン伝導体を開発するためには、新構造の材料の開発が必要不可欠です。従来の手法では、新構造ファミリーの酸化物イオン伝導体は経験や勘、偶然により発見されることが多かったのですが、研究グループは、過去に報告されている無機物質の結晶構造から計算したイオン伝導経路と、これまでに報告されている酸化物イオン伝導体の結晶構造の詳細な検討により、BaNdInO4 (2014年発表)、Nd0.9Sr0.1BaInO3.95(2015年発表)、LaSr2Ga11O20、 La1.02Sr1.98Ga11O20.01(2015年発表)などの新構造ファミリーの酸化物イオン伝導体を開発することに成功してきました。今回は、BaNdInO4など従来の元素の組み合わせとは異なる材料を探索する中で、イオンサイズと元素の組み合わせ、および結晶構造の安定性を考慮することで、新物質SrYbInO4の発見に至りました。

今後の展望

酸化物イオン伝導性を示す材料は、燃料電池、酸素分離膜、ガスセンサー、触媒などへの応用が可能です。したがって、エネルギー・環境・エレクトロニクス分野への波及効果が期待されます。本研究で開発した材料は、これまでに報告のない全く新しい構造型を持つ純酸化物イオン伝導体であり、今後、この材料を基盤とし、材料開発を進めることで、固体酸化物形燃料電池の効率向上や使用範囲の拡大が見込まれます。

用語説明

[用語1] 新構造型の純酸化物イオン伝導体 : 外部電場を印加したとき酸化物イオンが伝導する材料を酸化物イオン伝導体(酸化物イオン伝導性材料)という。酸化物イオン伝導度に比べて他のイオン種や電子の伝導度が小さく、酸化物イオンが支配的なキャリア(電荷担体)である酸化物イオン伝導体を、純酸化物イオン伝導体という。酸化物イオン伝導性は、特定の結晶構造型(結晶構造のグループ)でのみ発現することが知られている。今回発見した新物質SrYbInO4は、CaFe2O4型構造(用語3)を持つ物質としては初めての純酸化物イオン伝導体である。したがって、新物質SrYbInO4は、新構造型の純酸化物イオン伝導体であるといえる。

[用語2] 固形酸化物形燃料電池(SOFCまたはSOFCs) : 電解質に固体酸化物を用いた燃料電池。電池の作動温度が400~1,000 ℃と高いため、固体高分子形燃料電池(PEFC)と比べて高い発電効率を実現できる。

[用語3] CaFe2O4型構造 : CaFe2O4など、空間群がPnmaであり、一般式ABCO4をとる化合物がとる結晶構造である。3種類の陽イオン席a, b, c席の陽イオンをそれぞれA, B, Cとする。図2に示すように今回発見した新物質SrYbInO4では、A=Sr, B=Yb0.574(2)In0.426(2), C=In0.574(2)Yb0.426(2)である(括弧内の数字は標準偏差を示す。)。 A, B, Cの配位数はそれぞれ8, 6, 6であり、二つのBO6八面体が稜共有してできた二重八面体B2O10と、二つのCO6八面体が稜共有してできた二重八面体C2O10が形成する三角形状のカラムの中にAイオンが存在する。二重八面体B2O10b軸に沿って稜共有により連結して無限のカラムを形成する。同様に、二重八面体C2O10b軸に沿って稜共有により連結して無限のカラムを形成する。3次元の結晶は、その対称性により230種類の群(空間群)に分類される。Pnmaは230種類の空間群のうち62番目の空間群であり、その結晶系は直方晶系、ブラベー格子は単純直方(斜方)格子である。

[用語4] 固相反応法 : 固相間の化学反応を利用して試料を合成する手法。

論文情報

掲載誌 :
J. Phys. Chem. C, 2017年,121巻,39号,ページ21272-21280.
論文タイトル :
New Oxide-Ion Conductor SrYbInO4 with Partially Cation-Disordered CaFe2O4-type Structure
著者 :
Ayaka Fujimoto, Masatomo Yashima, Kotaro Fujii, James R. Hester
DOI :

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系

八島正知 教授

E-mail : yashima@cms.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2225

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


外国人研究者向けの地震対策セミナー開催報告

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9月21日、東京工業大学研究・産学連携本部は、本学に滞在する外国人研究者を対象に、日本で生活する上では欠かせない「地震」に関する知識や日頃の備え等を周知することを目的とした「外国人研究者向けの地震対策セミナー(Earthquake Safety Seminar)」を開催しました。

防災士 増田貴之氏
防災士 増田貴之氏

講師には防災士である増田貴之氏(実践女子大学 非常勤講師)を迎え、大岡山キャンパス大岡山西9号館のコラボレーションルームにて、すずかけ台キャンパスにも中継をつないで行われました。外国人研究者、秋入学の新入生を含む外国人留学生、教員等、両会場で総勢53名が参加し、地震に対する関心の高さが伺えました。

講演では、100円ショップの商品で作る非常袋セットの説明や、非常時の身の守り方、災害に遭ってしまった場合の対処法などが説明されました。また、増田氏の講演後には、国際事業課職員による学内避難場所等の説明や東工大「大地震対応マニュアル」の紹介があり、2017年11月8日(水)に予定している学内防災訓練への参加を呼びかけました。

100円ショップで集められる防災グッズの説明をする増田氏

100円ショップで集められる防災グッズの説明をする増田氏

100円ショップで集められる防災グッズの説明をする増田氏

避難所に関する説明では「ひなんじょはどこですか?」と日本語での発音を伝え、参加者は一斉にノートに書き込みながら声に出して練習しました。「避難所の場所を日本語で訊くことさえできれば周りの人は親切なので、あとはジェスチャーでどうにかなります」との増田氏の話に会場は笑いで包まれました。また、地震が起きた際には考えずに動くことが大切であり、日本人は幼いころから学校での避難訓練を重ね、地震を感じたらすぐに机の下に潜り込む習慣が身についていることを挙げ、「地震だ!」の合図で机の下に潜り込む訓練を実際に体験しました。

大岡山会場の様子

大岡山会場の様子

大岡山会場の様子

セミナー後は、参加者それぞれが非常袋セットの中身をじっくり見たり、増田氏に個別に質問する参加者が続くなど、セミナーは盛況のうちに幕を閉じました。

災害時のノウハウや防災知識を学ぶ機会は、外国人が本学に滞在する間、安全に生活していく上で欠かせない取り組みです。研究・産学連携本部では、今後も外国人研究者生活支援の一環として、外国人研究者向けのセミナーを開催していきます。

お問い合わせ先

研究・産学連携本部(国際事業課)

E-mail : iresearch@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3362

生命理工学院 生命理工オープンイノベーションハブ(LiHub)企画 第3回 LiHubフォーラム 「ゲノムがつなげる近未来社会」のご案内

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国立大学法人東京工業大学生命理工学院は、生命科学と生命工学を広くカバーしている国内最大の学術組織である利点を活かして、同分野の最先端と社会・産業とを橋渡しする協創の場「生命理工オープンイノベーションハブ(LiHub)」を設立しました。

LiHubには、社会貢献度の高い分野テーマごとに複数の研究室が集結した11つのLiHubグループが立ち上がり、現在は特色を活かした産学連携を企画・展開中です。

今回の第3回LiHubフォーラムでは、LiHubグループの一つであるゲノムアーキテクトグループが幹事として、本グループの活動紹介、ゲノム編集技術CRISPRを使った最先端の現場やゲノム合成国際コンソーシアムGP―Writeの近況といったゲノムサイエンスの世界動向を紹介することだけでなく、マーケティングやバイオアートという思考フィルターを通してゲノムのポテンシャルを予見する実験的企画を開催します。

ノンバイオ業界の方々にとっても、思いがけないヒントを得る半日となるかもしれません。LiHubの多彩なアカデミア活動を活用したい皆様、ご参加をお待ちしております。

開催概要

日時
2017年11月17日(金) 13:00 - 17:30、17:40 - 19:00
会場
参加費

講演会:参加費 無料

ポスターセッション・異業種交流会(参加費2,000円)

登録
参加申し込みフォームouterから事前登録をお願いします。

関連情報

お問い合わせ先

生命理工 オープンイノベーションハブ LiHubフォーラム事務局

E-mail : lihubforum@bio.titech.ac.jp

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

台風21号接近に伴う10月23日(月)の授業等について(午前休講)

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10月23日(月)の授業等の取り扱いについて下記のとおり連絡します。

学生及び教員の皆様

10月23日(月)の授業について

台風21号接近に伴い、10月23日(月)午前の授業を休講とします。

午後の授業については、10月23日(月)午前10時までに下記のメディアで連絡しますので、通学前に情報を確認してください。

イベント等で東工大へお越しの皆様

学内で開催予定のイベントの実施につきましては、各イベント主催者へお問い合わせください。

10月23日(月)午後の授業等について(午後平常通り開講)

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10月23日(月)午後の授業等の取り扱いについて下記のとおり連絡します。

学生及び教員の皆様

10月23日(月)午後の授業について

10月23日(月)午後の授業は平常通り開講します。

イベント等で東工大へお越しの皆様

学内で開催予定のイベントの実施につきましては、各イベント主催者へお問い合わせください。

グローバルシステム開発研修2017 実施報告

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8月20日~9月2日までの2週間、フィリピンのセブ市で、東京工業大学 情報理工学院 IT特別教育プログラムが主催する「グローバルシステム開発研修」が行われました。この研修は2015年から毎年実施しているもので、グローバルな環境でのシステム開発が当たり前のようになっている現代において、異文化理解を深めながらシステム開発のコラボレーションスキルを習得することを目的としています。セブシティにある日系企業の現地エンジニアとチームを組み、情報サービス企画(市場調査・要求分析から試作開発とプレゼンまで)を体験するものです。全学から参加者を募集し、今年は3名の大学院生(修士課程)が参加しました。

チームメンバーと打ち解けた様子の参加学生

チームメンバーと打ち解けた様子の参加学生

具体的な研修内容は、1週目に英語コミュニケーション研修、2週目にリーンスタートアップ研修となっています。

まず1週目は、現地の英会話学校の協力を得て、1日10時間のコミュニケーション研修が行われました。マンツーマンレッスンや小グループでのディベートなど、コミュニケーションがあまり得意でない学生には刺激的な5日間となりました。週末には翌週の研修の準備として、セブ市内の視察を行いました。地元の人との交流を通して、フィリピンの歴史やセブ市民の生活について理解を深めました。

2週目はいよいよ、この研修のメインメニューであるリーンスタートアップ研修です。NECテレコムソフトウェア フィリピンの協力により、数々の有名 IT 企業がオフィスを構えるセブ市内のビジネス地区「ITパーク」で研修を行います。リーンスタートアップ研修は、デザイン思考とリーンスタートアップ手法を組み合わせた内容で、リサーチ・問題の特定・仮説の組み立てと仮説検証サイクルを行います。参加学生は、NECテレコムソフトウエア フィリピンやローカル企業の現地エンジニアとチームを組みます。日本人は各チーム1名ですが、さっそく1週目のコミュニケーション研修の成果が出ているようでした。

今年の開発テーマは「セブの子どもの貧困をサポートするITサービス」です。日頃あまり意識したことのないテーマに最初は戸惑っていた学生も、現地エンジニアの積極性に巻き込まれるように熱心に取り組んでいました。初日は、チームビルディングのあと、現地調査を行いました。都市貧困問題の解決に向けて企業活動をしているワクワーク・ファウンデーション(WAKUWORK FOUNDATION,INC.) の協力を得て、貧困エリアであるロレガ地区のリサーチを行いました。インタビューや施設の見学などからさまざまな問題意識を持ち帰ったチームは、自分たちが取り組みたい課題について熱い議論を交わしました。

貧困エリアであるロレガ地区でインタビュー
貧困エリアであるロレガ地区でインタビュー

チームで仮説を議論
チームで仮説を議論

2日目~4日目は、仮説の組み立てとその検証をデザイン思考の手法を用いながら行いました。また、ITサービスのデモンストレーションも開発し、最終日には、NECテレコムソフトウエア フィリピンのマネージャーのみなさんと、ワクワーク・ファウンデーションの社員のみなさんの前で、提案プレゼンテーションとITサービスのデモンストレーションを行いました。

チームの提案内容は、

  • 子どもの学習意欲を引き出すための学習アプリ
  • ボランティア活動とボランティア地域を結ぶサービス
  • 支援して欲しい人と支援したい人を結びつけるサービス

と、さまざまな角度からテーマに取り組んだことが分かるものでした。どのチームの提案も真剣に取り組んでいて素晴らしいと、見学者より高い評価をいただきました。

サンプルアプリ開発の様子
サンプルアプリ開発の様子

提案プレゼンテーションの様子
提案プレゼンテーションの様子

帰国後の報告会では、「チームでの信頼関係の作り方や積極的なコミュニケーションの必要性が分かった」「文章を頭で考えるより、まず話してみる」「英語でのコミュニケーションは思っていたほど怖くない」と、一回りたくましくなった参加学生の姿がうかがえました。

チームビルディング:チーム成果を引き出すためのエクササイズを含む、関係性づくりのプロセス

無事にプレゼンテーションを終えリラックスするメンバー
無事にプレゼンテーションを終えリラックスするメンバー

優勝チーム
優勝チーム

参加者による記念撮影

参加者による記念撮影

お問い合わせ先

IT特別教育プログラム事務局

E-mail : jimu@itpro.titech.ac.jp

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