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新産業創出・育成の推進に向けたギャップファンドの設置および運営に係る組織的連携協定を締結

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東京工業大学と芙蓉総合リース株式会社(代表取締役:辻田泰徳、以下「芙蓉総合リース」)および株式会社みらい創造機構(代表取締役:岡田祐之、以下「みらい創造機構」)は、ギャップファンドの設置および運営に係る組織的な連携協力に関する協定を10月27日に締結しました。

調印式の様子

東工大では本年4月から研究戦略企画・実施機能と産学連携機能を強力に束ねて実施するため、研究・産学連携本部を新たに設置し、今まで行ってきた知財の権利化、ライセンシングに加え、新産業の創出、国際共同研究の推進、イノベーションの促進に貢献するとともに、更なる知財の創出を図っています。芙蓉総合リースは、みずほフィナンシャルグループ系の国内大手総合リース会社であり、みらい創造機構が組成した東工大関連ベンチャーキャピタルファンドに出資しています。みらい創造機構は、新規事業創出と育成支援に多くの実績を持ち、東工大ともこれまで共同研究・学術指導の推進、人材教育支援、ベンチャー育成支援等を行ってきており、相互協力しながら総合的な社会連携活動の推進事業を実施するにあたり、東工大と連携協定を5月に締結しています。

調印式の様子

今回の協定により、東工大の創造的活動として生み出された研究成果や技術・デザインなどの知的財産(研究シーズ)を実用化・事業化するために必要な追加試験や試作品製作、顧客ヒアリング等、起業直前に大学内で必要となる活動の資金不足を補うため、芙蓉総合リースが拠出する資金による日本初の産学連携型ギャップファンドを設置し、3者が協力して新産業の創出・育成を推進していきます。

ギャップファンド:大学が、自律的かつ機動的に大学研究室へ比較的少額の開発資金(試作開発・試作テスト資金など)を供与して大学の基礎研究と事業化の間に存在するギャップ(空白・切れ目)を埋めることにより、大学先端技術の技術移転や大学発ベンチャー創出を促していく基金。

(右)芙蓉 辻田社長、(中央)東工大 三島学長(左)みらい創造機構 岡田社長

(左)みらい創造機構 岡田社長、(中央)東工大 三島学長、(右)芙蓉総合リース 辻田社長

お問い合わせ先

東京工業大学 研究・産学連携本部

E-mail : venture@sangaku.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2445


2017年度前期の附属図書館企画展示

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東工大附属図書館では、所蔵資料の利用促進のため、1年を通じて企画展示を行っています。テーマは2~3ヵ月毎に変更します。図書館サポーターの学生などが本を選び、ポスターや配布用のリストとコメントを書いたポップの作成を行っています。2017年度前期に実施した展示を紹介します。

図書館サポーターとは…
カウンター対応、書架の整理、資料の整備、広報活動、展示等の企画など、さまざまな活動を図書館職員と協働して行っている学生たちです。

図書館サポーター推薦:2017春 新入生にすすめる本

展示期間:4月3日~5月31日

「2017春 新入生にすすめる本」ポスター
「2017春 新入生にすすめる本」ポスター

附属図書館では2011年より毎年「新入生にすすめる本」をテーマにした企画展示を開催しており、今回で7回目となりました。

4月に入学された方々に向けて、図書館サポーターが選んだ本を大岡山本館地下1階とすずかけ台分館1階にて展示しました。サポーターが作成したポップは本に添え、推薦文は配布用の図書リストに載せました。

大学での学修だけではなく日々の暮らしの中で役立ちそうな本や、新入生だけでなく在学生や教職員にとっても気になる本がたくさん展示されました。 そのためか、展示本だけでなくポップに書かれたコメントにも目を通したり、図書リストを持ち帰る人の姿が多く見られ、大変好評でした。

展示風景(大岡山本館)
展示風景(大岡山本館)

展示風景(すずかけ台分館)
展示風景(すずかけ台分館)

図書館サポーター推薦:ヒト、モノ、コトの歴史の本

展示期間:7月14日~9月21日

「ヒト、モノ、コトの歴史の本」ポスター
「ヒト、モノ、コトの歴史の本」ポスター

大岡山本館地下1階とすずかけ台分館1階において、歴史をテーマにおすすめの本やDVDを展示しました。

図書館サポーターたちが自身の専門や個性を活かして資料を選びました。食べ物の成り立ち、言葉の起源、科学者の生涯など、様々なヒト、モノ、コトの歴史に焦点をあてた40点が集まり、附属図書館の所蔵資料の幅広さを感じられる展示となりました。期間中、ポップやポスターとともに展示資料を眺めている来館者の姿が多く見られました。

展示風景(大岡山本館)
展示風景(大岡山本館)

展示風景(すずかけ台分館)
展示風景(すずかけ台分館)

関連リンク

お問い合わせ先

研究推進部情報図書館課利用支援グループ

Tel : 03-5734-2097

すずかけ台図書館グループ

Tel : 045-924-5152

分子のオルト-パラ核スピン異性体間の光学遷移の検出に成功

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分子のオルト-パラ核スピン異性体間の光学遷移の検出に成功
―オルト-パラ対称性の破れを直接定量―

要点

  • 孤立状態にある分子のオルト-パラ異性体間の光学遷移の検出に初めて成功
  • 観測からオルトとパラの混合状態の度合いを直接定量する手段を確立
  • オルト-パラ異性体間では自然発光による自発的緩和過程が存在しうる可能性がある

概要

180度の回転対称性を有するすべての分子の量子状態は、等価な配置にある核スピンの向きによって、オルト状態とパラ状態の2つに分類され、これをオルト-パラ対称性[用語1]と呼びます。一般に、光を使ってこの2つの状態間を遷移させることはとても難しいので、両者は核スピン異性体として、あたかも独立した別の分子であるかのように見なされてきましたが、東京工業大学 理学院 物理学系の金森英人准教授の研究グループは、孤立した環境にある分子のオルト-パラ異性体間の光学遷移[用語2]の検出に初めて成功し、その発現メカニズムを理論及び実験的に明らかにしました。

オルト-パラ遷移の検出実験には、塩素核が分子骨格の両端の等価な位置にある塩化硫黄分子(S2Cl2)を選びました。この分子については、研究グループが以前に観測したマイクロ波スペクトルの解析から、オルト-パラ状態を混合させる相互作用を含んだ分子ハミルトニアン[用語3]モデルを提案していました。

今回の実験では、真空容器中のマイクロ波共振器内にS2Cl2分子を導入し、この理論モデルで予想した周波数領域を調べたところ、通常の遷移の1,000分の1の強度を持つ超微細構造分裂[用語4](エネルギー準位の小さな分裂)した回転スペクトルを7本検出し、オルト-パラ遷移として同定しました。観測された周波数と強度は理論予想と良く一致したため、ハミルトニアンモデルの正しさ、すなわち、オルト-パラ遷移の発現起源を立証することができました。

本研究によって、オルト-パラ異性体分子一般について、自然発光過程による変換速度を定量化する道が確立できました。オルト-パラ対称性は物理学の基本原理のひとつである、等価粒子の交換対称性[用語5]に基づいているので、自然科学の広い分野で重要な役割をしています。たとえば、電波天文学で発見されている星間分子の異常オルト/パラ存在比[用語6]のような宇宙物質進化の未解決問題を解明する手がかりになると期待されます。

本研究の内容は、2017年10月25日に米国の学術誌「Physical Review Letters」10月号でEditors' Suggestionとして掲載されました。

また、米国物理学会(American Institute of Physics)が選ぶRecent Articles from Physicsの“Synopsis”としても取り上げられました。

背景

分子におけるオルト-パラ対称性は、量子力学の等価粒子の交換対称性が分子の核スピン関数と回転波動関数に課す保存則です。核スピンと180度回転(C2)対称性を持つすべての分子はオルト-パラ対称性があることから、分子の状態は核スピン関数の偶奇性と回転準位の偶奇性との組み合わせにより、オルトかパラのいずれかの状態に二分されます。オルト-パラ状態を変換するためには、核スピンと回転状態の偶奇性を同時に相互交換することが求められることから、図1に示すような光(電磁波)を介した遷移はとても難しく、両者はオルト-パラ異性体としてあたかも別の分子として認識されています。

S2Cl2分子のマイクロ波によるオルト-パラ遷移

図1.S2Cl2分子のマイクロ波によるオルト-パラ遷移


核スピンが平行で回転状態J(奇数)であるオルト状態の分子がマイクロ波を吸収することによって、核スピンが反平行で回転定数J+1(偶数)のパラ状態に遷移する様子

オルト-パラ異性体として最もよく知られている例は水素分子(H2)があげられます。H2を構成するHの核、すなわち陽子は核スピン1/2を持ちますが、2つの核スピンが平行となっている状態をオルト水素、反平行となっているものをパラ水素と呼んでいます。室温では水素分子の75%がオルト状態、25%がパラ状態となっていますが、極低温にして液化すると、分子間の相互作用によってゆっくりとオルト状態が最低エネルギー状態であるパラ状態に変換されていきます。

しかしながら、衝突等の分子間相互作用のない孤立した環境では、光を介した相互作用、すなわち1個の光子を吸収、あるいは放出することによって、変換が起きる確率は極めて小さく、理論によれば変換時間は宇宙の寿命よりも長いとされています。

研究の経緯

このような状況の中で、研究グループはオルト-パラ対称性を持つ分子として、塩化硫黄分子(S2Cl2)に注目しました。この分子は螺旋状にねじれた分子骨格を持ち、核スピン3/2を持つ塩素核が両端の等価な位置にあります。これまでのS2Cl2分子のマイクロ波領域の許容遷移であるオルト-オルト、およびパラ-パラ準位間の分光スペクトルの解析から、オルト-パラ状態が少なからず混合している状態があることを実験的証拠から見つけました。それを説明するために、Cl核の電気四重極相互作用の非対角成分を導入した分子ハミルトニアンモデルを提案しました。

今回はこのモデルを使った計算により、超微細構造分裂した回転準位の中からオルト-パラ混合の大きなものを探し出し、その遷移周波数と遷移強度を計算しました。その結果、オルト-パラ光学遷移がマイクロ波領域に存在することが予測されました。その例を予想スペクトルとして図2に示しました。

図2Aは、淡青と赤色で示される許容遷移である回転線が数十本の超微細構造線に分裂している様子がわかります。拡大した図2Bでは、分裂した許容遷移の間に、濃青色で示されたオルト-パラの禁制遷移(ルールに従わない遷移)が、3桁ほど弱い強度で予言されています。その中で、強度が大きくかつ許容遷移から最も離れている遷移を測定候補の1つとして選択しました。

S2Cl2分子のオルト-パラ遷移の予想と実測スペクトル

図2.S2Cl2分子のオルト-パラ遷移の予想と実測スペクトル

A)回転遷移の予想スペクトル。2つの縦線の集団は超微細構造を持つパラ-パラ遷移(青)とオルト-オルト遷移(赤)を表す。いずれも許容遷移である。

B)予想スペクトルの拡大図:オルト-パラ遷移(濃青)がオルト-オルト遷移(赤)と比べて3桁弱い強度で予想されている。

C)実測されたオルト-パラ遷移。分子のドップラー効果のために2重項線として観測されているが、中心は予想された周波数と誤差範囲で一致した。

研究成果

実験には台湾交通大の4 - 40 GHz帯のフーリエ変換型マイクロ波分光器[用語7]を用いました。Arガスに希釈したS2Cl2分子の蒸気をパルス分子ジェットとして、マイクロ波共振器中に噴出、衝突フリーの条件の下でオルト-パラ遷移の検出測定を試みました。その結果、数万ショットの信号を数時間に渡って積算することで、図2Cに示すように、予測された遷移周波数の誤差範囲に、超微細分裂したオルト-パラ遷移を観測することができました。今回観測された7本の禁制遷移は許容遷移と比較して3桁小さく、予想と一致しました。

今回の観測結果を図3にまとめました。S2Cl2分子の回転準位はオルトとパラに二分されており、オルトとパラの核スピン異性体を構成しています。ルール通りの光学遷移はそれぞれの異性体内で閉じていますが、今回、観測したオルト-パラ遷移は核スピン異性体間をクロスする遷移に対応します。

従来のオルト-パラ間の光学遷移は、極端に高い励起状態とした分子、または磁場や電場等の強い外場をかけた分子についての報告しかありませんでした。今回の結果は衝突も外場もない、まったく孤立した環境にある分子であっても、オルト-パラ間の光学遷移が可能であること実証した最初の例となります。また、この結果は、オルト-パラ状態の変換が自然発光過程を通して自発的に起きるという重要な結論を引き出します。

今回観測したS2Cl2の遷移の場合、その寿命は約1,000年となります。これは長いと思うかもしれませんが、天文学の時間スケールではとても短い時間と言えます。

S2Cl2分子の回転準位と観測されたオルト-パラ遷移

図3.S2Cl2分子の回転準位と観測されたオルト-パラ遷移

横線は超微細構造分裂を省略した回転準位を表し、付記した3つの数字は回転量子数を表している。S2Cl2分子の回転準位はオルトとパラに二分されており、オルトとパラの核スピン異性体を構成している。

許容な光学遷移は垂直な矢印で表されるように、各異性体内で閉じている。今回、異性体間を結ぶオルト-パラ遷移(クロスする矢印)が初めて観測された。

今後の展開

オルト-パラ対称性は物理学の基本原理のひとつである等価粒子の交換対称性に基づいているので、自然科学の広い分野で重要な役割を果たしています。

例えば、新しいエネルギー源として注目を集めている水素(H2)を液化して貯蔵した際に大部分が蒸発損失(ボイルオフ)してしまう問題は、オルト-パラ変換の速度が遅いことに原因があります。また、電波天文学で観測される星間分子の中には、オルト-パラ存在比が分子間衝突による熱平衡モデルでは説明できない例が多くあり、宇宙物質進化過程の未解決問題となっています。本研究により、オルト-パラ準位間の自然発光過程を定量化する手段が確立し、この異常オルト/パラ存在比の解明の突破口となることが期待されます。

用語説明

[用語1] オルト-パラ対称性 : 分子のオルト-パラ対称性は、量子力学の前提条件の1つである「等価粒子の交換対称性」に起因する特性で、物理的に存在が許される状態は核スピン状態と回転状態の偶奇性によって制限されることで生じるものです。特に電子では「パウリの排他律」として良く知られています。

[用語2] 光学遷移 : ここでは分子の電気双極子モーメントと電磁波との相互作用による遷移を表現しています。

[用語3] 分子ハミルトニアン : 分子の内部エネルギーに対応する演算子。具体的には回転運動エネルギーと核スピンが関与する超微細相互作用エネルギーに対応する項からなります。その演算子をオルト-パラ相互作用に関して対角な項H(0)と非対角な項Hopに分けました。

H = H(0) + Hop

具体的なHop項としてはCl核の四重極相互作用の非対角成分を含む項が相当します。このハミルトニアンのエネルギー行列を対角化することによって得られる混合状態の波動関数を使って、禁制遷移とされるオルト-パラ状態間のマイクロ波遷移の周波数と強度を直接計算することができます。

[用語4] 超微細構造分裂 : 核スピンが関与する相互作用に起因するエネルギー分裂。

[用語5] 等価粒子の交換対称性 : 量子力学では同じ粒子同士は互いに区別がつかないことを前提として量子状態を記述する必要があります。さらに、これらの区別のつかない粒子の配置を交換するという操作によって量子状態関数の符号がフェルミ粒子(スピンが1/2、3/2などの半整数値)の場合はマイナスに変わり、ボーズ粒子(スピンが1、0などの整数値)では変わらないという性質が備わる。

[用語6] 星間分子の異常オルト/パラ存在比 : 宇宙空間での物質進化の研究では、星間分子のオルト/パラ存在比はその分子の生成時の化学反応、およびその後の衝突頻度の情報を含む貴重な情報源となっています。

[用語7] フーリエ変換型マイクロ波分光器 : 共振器に閉じこめたマイクロ波で分子を励起し、自由誘導緩和過程で放出されるマイクロ波輻射を時間軸で記録し、それをフーリエ変換することによって周波数スペクトルとする分光システムです。1回の測定範囲は狭い周波数に限定されますが、一般的な吸収法とは異なるゼロバックグラウンドの測定法なので、長時間の積算によって高い検出感度を実現できる分光システムです。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Letters
論文タイトル :
Detection of Microwave Transitions between Ortho and Para States in a Free Isolated Molecule
著者 :
Hideto Kanamori, Zeinab. T. Dehghani, Asao Mizoguchi, Yasuki Endo
DOI :

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 物理学系

准教授 金森英人

E-mail : kanamori@phys.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2615 / Fax : 03-5734-2615

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

学生による国際交流プログラム「8th ASCENT」開催報告

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8月19日から28日までの10日間にわたり、東工大を拠点に国際交流活動を行っている東京工業大学 国際交流学生会SAGE(以下、SAGE)が、第8回アジア理工系学生連携促進プログラム「8th ASCENT」を開催しました。本プログラムには、日本を含むアジア圏7つの国と地域から学生25名が参加しました。

ASCENT参加者の集合写真

ASCENT参加者の集合写真

ASCENTの概要

アジア理工系学生連携促進プログラムASCENTは、Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technologyの略称であり、SAGEが企画・運営を行う10日間の国際交流プログラムです。アジア圏の理工系大学に所属する学生間のネットワーク構築を目的としています。

本プログラムでは、科学技術に関連するテーマを開催年ごとに設定します。参加者はテーマに関連した研究や事業を行っている民間企業や研究所、官公庁、学内研究室を訪問することで、テーマに関して理解を深め、ビジネスにおける応用例を学びます。さらに、これらの訪問を基にして、近年アジア各国が抱える問題に対する解決策を少人数のグループで話し合い、最終日に報告会を行います。各グループはさまざまな国籍のメンバーで構成されるので、文化や習慣の違いに困惑することがあります。しかし、自分たちが見つけた問題に対して議論を交わし、解決策を共に創りあげる経験をすることによって、学生間の強固なネットワークを構築することができます。また、学術的な活動を軸に据える一方、文化交流会や日本文化研修なども行います。それらの企画を通して異文化交流や学生間の交流を促進させ、本プログラムが学術的な側面だけではなく総合的な体験の場となることを目指しています。

最優秀賞獲得チーム

最優秀賞獲得チーム

8th ASCENTの開催

8th ASCENTは8月に10日間にわたって開催しました。今回のテーマは「The Dawn of IoT~IoT時代の幕開け~」です。近年、市場規模が拡大し続けているIoT(Internet of Things)技術に関して理解を深め、どのようにIoT技術を用いればアジア諸国が抱える複雑な問題を解決できるのか議論しました。本プログラムには、中国、台湾、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、日本の7つの国と地域から合計25名が参加しました。参加者は基調講演や企業見学、ディスカッションなどを経て、最終報告会ではIoT技術を用いた新しい製品やサービスを提案しました。

スケジュール

8月19日
海外学生到着、歓迎会
8月20日
開会式、事前学習報告会
8月21日
特別講義、企業見学(横河電機株式会社)
8月22日
文化交流会、研究室見学(すずかけ台キャンパス 益・伊藤研究室)
8月23日
基調講演(経済産業省)、中間報告会
8月24日
研究説明(大岡山キャンパス 井村研究室)、企業見学(株式会社小松製作所)
8月25日
企業見学(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 スポーツ脳科学プロジェクト)
8月26日
ディスカッション
8月27日
日本文化研修
8月28日
最終報告会、閉会式、送別会

参加国・参加大学

  • 日本:東京工業大学、一橋大学
  • 中国:清華大学
  • 台湾:国立台湾科技大学
  • インドネシア:バンドン工科大学
  • タイ:チュラーロンコーン大学、タンマサート大学
  • フィリピン:デラサール大学
  • ベトナム:ハノイ工科大学

プログラム内容

基調講演・企業見学・研究室見学

基調講演では、経済産業省を訪問し、IoTの概要や現在行っている政策、国際的な協力体制などについて学びました。企業見学では、横河電機株式会社、株式会社小松製作所、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の3社を見学しました。IoTに関して各企業で行われている事業の説明だけでなく、プラントで用いられる計測機器の見学やセミオートマチック運転制御システムが搭載された建機の運転体験、運動計測に用いられるシミュレーター体験などを行いました。研究室見学では、本学 工学院電気電子系の益・伊藤研究室への訪問と、工学院 システム制御系の井村順一教授による講演を行いました。農業分野におけるIoTの活用方法や、スマートグリッドでの分散型電力制御について学ぶことができました。

ドローンによる計測デモ(小松製作所にて)

ドローンによる計測デモ(小松製作所にて)

特別講義

本学 環境・社会理工学院 融合理工学系のホープ・トム准教授による、魅力的なプレゼンテーションに関する特別講義も行いました。参加者は聞き手を引きつける話し方やプレゼンテーションの構成、注意点などに関する講義を受けました。その後、プレゼンテーションの練習として「IoT分野における各国の違い」というテーマについてミニ発表を行いました。この特別講義で学んだことが中間報告や最終報告に活かされたようです。

ホープ准教授によるプレゼンテーション特別講義

ホープ准教授によるプレゼンテーション特別講義

ディスカッション・中間報告会・最終報告会

参加者25名は4つのグループに分かれ、アジア諸国が抱える問題を1つ取り上げ、それに対する解決策を話し合います。企業見学や研究室見学などで学んだことを参考にしつつ、今までにない新しい製品やサービスを考えます。各グループは国籍や専門分野が異なる学生で構成されることでさまざまな意見が飛び交い、非常に白熱したディスカッションとなりました。

5日目に行われた中間報告会では、日本企業のIoT活用事例に関する記事に対する考察とディスカッションの進捗状況について報告してもらいました。他の参加者やSAGEメンバーからフィードバックをもらい、後半のディスカッションに活かしてもらうことが狙いです。

最終日の最終報告会では、10日間にわたる活動のまとめとして、各グループで考えた新しいIoT活用方法の提案をしました。各グループで取り上げた問題はさまざまであり、その問題に対する解決策はオリジナリティ溢れるものとなっていました。ただ単に新しい製品やサービスを提案するだけでなく、提携企業や運用リスクなどの実現可能性についても言及されており、どのグループも中身が非常に濃い発表となりました。

特に、最優秀賞を獲得したチームの発表では、ウェアラブル端末を用いて子供の健康状態を確認するサービスが提案されました。

最終報告会

最終報告会

最終報告会

事前学習報告会・文化交流会・日本文化研修

本プログラムは、学術的な活動だけでなく、アジア各国について学ぶ企画も行います。事前学習報告会では、各国の参加者が自国に関する文化的・社会的情報と自国のIoT関連企業について紹介します。文化交流会では、各国の文化を紹介し、それらを参加者全員で体験しました。各国の有名なお菓子を食べたり、伝統的なダンスや習字などに挑戦したりするなど、普段の生活では体験しない他国の文化に触れることができました。予定していた時間では物足りないくらい非常に盛り上がった交流会となりました。プログラムの終盤には、日本文化研修として国内の文化的に有名な観光地へ出かけます。今年は埼玉県の川越を訪れ、蔵造りの町並みや、伝統的な川越まつりで用いられる山車の展示などを楽しみました。海外学生はもちろん、日本人学生にとっても日本文化を知る良い機会になりました。

文化交流会

文化交流会

文化交流会

日本文化研修(川越にて)

日本文化研修(川越にて)

SAGE代表総括

表彰式にて(右側が釜坂さん)
表彰式にて(右側が釜坂さん)

釜坂みおさん(工学部 高分子工学科3年)

私はこれまで2年半の間SAGEに在籍し、今年は代表として団体全体をまとめつつ、7thの経験を活かし8th ASCENTの内容決定にも深く関わりました。10日間の本番に対し1年以上にわたってメンバーと共に調査や話し合いを重ね、より充実したプログラムの開催に向け尽力しました。プログラム内容を洗練させ、参加者選考や資金獲得など多岐にわたる準備を進めることは、想像以上に大変なことでした。最終的に、国際交流に対して熱意があり非常に信頼できるメンバーと、1つのプログラムを完成させることが出来た時は、安堵感と達成感を感じました。

今年は初めて台湾からの参加学生を迎えたり官公庁を訪問したりと、年々プログラムの内容は多様性を高めています。海外参加者のほとんどにとって、ASCENTが初めて日本に来る機会でしたが、過去の参加者の中には、現在東工大に在籍している留学生や日本での就労者もいます。ASCENTが参加者にとって、ただの留学経験でなく人生における転機となる大変貴重な10日間であると確信し、開催意義を感じています。

国際交流の魅力は、さまざまな背景を持った人々が交流することで、新たな価値観や発見が生まれることだと思います。SAGEは今後も東工大生が気軽に国際交流を出来る機会を設け、メンバー・参加者共に成長していけるような団体でありたいです。

9th ASCENTについて

次回のASCENTは2019年春に開催予定です。アジア諸国が抱える問題や社会現象などの時事に基づいてテーマを選定し、講演や見学先企業を順次決定します。9th ASCENTの応募は、海外大学生向けは来年8月頃、東工大生向けには9月頃に開始する予定です。

ASCENTは東工大生はもちろん、アジアの大学に属する学士・修士・博士後期課程の学生であれば、誰でも応募することが出来ます。プログラムの詳細や応募方法などはSAGEのウェブサイトや各種SNSを通じて発信します。

東工大生の国際的な活動を促進するASCENTを今後も開催していきます。

お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流学生会SAGE

E-mail : sage.tokyo.tech@gmail.com

東工大ボート部が第44回全日本大学選手権大会で男子エイト7位入賞

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東京工業大学端艇部(ボート部)が、8月31日~9月4日に埼玉県戸田市の戸田ボートコースで開催された第44回全日本大学選手権に出場し、男子エイトが7位入賞しました。

準決勝レース(中央が東工大)

準決勝レース(中央が東工大)

男子エイトは、大きいオールを一人一本持って漕ぐスウィープ艇で、8人の漕手と1人の舵手が乗る種目です。ボート競技の中では最大の人数で行われ、最速の種目です。2,000 mのコースを6分足らずで漕ぎ切ります。

東工大端艇部が全日本大学大学選手権(インカレ)にて入賞するのは4年ぶりです。入賞は8位までですが、高校までの有力な選手を推薦入部で揃えている他の私立大学7大学の中に唯一の国立大学として入賞したことは大変な快挙といえます。

スタート地点に移動する男子エイトクルー

スタート地点に移動する男子エイトクルー

また、部の年度目標としていたインカレ国立1位も達成することができました。インカレは部内で1つの節目であり、これで4年生から3年生に代替わりします。シーズン途中で一部4年生が引退してしまいますが、残りシーズン3試合は3年生を中心に引き続き挑戦していきます。

出場クルーのコメント

前主将 服部淳(生命理工学部 生命工学科4年)

私はこの1年間主将として、部員一人一人が最大限に力を発揮できるような 部活にしようと考えて活動していました。また、東工大ボート部は様々な人の協力のもとに成り立っている部活動で、この協力に応えるべく、形に残る結果を出さなければいけないと考えていました。インカレで戦うチームはどこも東工大ボート部よりも規模が大きく強豪揃いです。そこで、部員が同じ方向性をもって一致団結することを他大学に勝る強み、つまり突破口と考え、「団結」をチームの方針として定めていました。代替わりは終わりましたがこのような個々人が能力を最大限に発揮するという考えをこれからも受け継いでいってほしいと思います。

新主将 舩岡知広(理学部 地球惑星科学科3年)

この1年間「国公立1位」という目標を掲げて、この大会に向けて練習を積み重ねてきました。そして、7位に入賞し、目標も達成することが出来ました。本当に嬉しい限りです。この結果は部員の努力ももちろんのことですが、OBOG、大学の支援があってこそのものです。支えてくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。 4年生が引退し、チームは新体制になりました。課題はまだまだありますが、一つ一つ努力を重ね、個人としてもチームとしても成長して、来年度の目標である「インカレ入賞」を達成します。 これからも応援よろしくお願いします。

クルーコーチ 島田哲朗

応援してくださった皆様、誠にありがとうございました。熱い声援により、全日本大学選手権においてエイト、7位入賞という結果を残すことができました。そして、今年のスローガンとして”団結”を掲げていましたが、達成できたレースをすることができました。

当日のレースは、最初の500 mから先頭に出ることができ、優位にレースを運べました。その後、他大学が追走してきましたが、全力で2,000 m漕ぎきり、入賞を決めました。レース後に倒れてしまう選手が出るくらいに過酷なレースでした。

最後まで諦めずに漕ぎきれたのは、選手だけの力だけでは成し遂げられなかったものです。OBOGさんだけでなく学校の方々の支えもあり、東工大全体が”団結”できたからだと思います。

東工大ボート部はこれからも努力をしていきます。そして応援されるチームになります。これからも応援よろしくお願い致します。

出場選手

  • 工学部 電気電子工学科4年 藤井健人
  • 工学部 土木環境工学科4年 三浦弘靖
  • 工学院 機械系 学士課程2年 服部広暉
  • 生命理工学部 生命科学科4年 稲子晴也
  • 生命理工学部 生命工学科4年 服部淳
  • 生命理工学部 生命工学科4年 池田郁也
  • 工学部 化学工学科3年 小川翔太郎
  • 工学部 土木環境工学科3年 長谷川青春
  • 理学部 地球惑星科学科3年 舩岡知広

インカレ入賞の賞状とともに全体写真

インカレ入賞の賞状とともに全体写真

東工大基金

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11月6日14:00 本文中に誤りがあったため、修正しました。

日野自動車スカラーシップ(Hino Motors Scholarship)授与式を開催

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10月4日、東京工業大学 学長室にて日野自動車スカラーシップ(Hino Motors Scholarship)授与式が行われました。日野自動車スカラーシップは、日野自動車株式会社からの寄附を原資として、次世代を担う優秀な本学私費留学生(タイ王国もしくは別のASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国)を対象に設立された奨学金制度です。グローバルな事業展開を行う日野自動車株式会社の企業方針の一翼を担うとともに、本学が目標のひとつとして掲げる「世界の理工系トップ大学・研究機関との連携強化、優秀な研究者・学生との交流を通じた教育研究の高度化・国際化の推進」の一助となっています。

三島学長より奨学生証を授与されるハンダヤニさん

三島学長より奨学生証を授与されるハンダヤニさん

今年度は、インドネシア出身で環境・社会理工学院 融合理工学系のハンダヤニ・ナビラさんが選ばれました。

授与式には日野自動車株式会社 技術管理部総括グループ主管の木谷太郎氏も出席し、三島良直学長の挨拶および木谷氏の挨拶の後、奨学生証が授与されました。その後ハンダヤニさんから、「素晴らしい奨学金と学ぶ機会を与えてくださった日野自動車に感謝します。また、これまで学んできたこと、そしてこれから学び続ける専門的知識が持続可能な未来へのひとつの解決策となることを強く願っております」と、感謝の意と意気込みが述べられました。

(前列左から)三島学長、ハンダヤニさん、日野自動車 木谷技術管理部総括グループ主管、(後列左から)日置滋副学長(基金担当)、丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)

(前列左から)三島学長、ハンダヤニさん、日野自動車 木谷技術管理部総括グループ主管、
(後列左から)日置滋副学長(基金担当)、丸山俊夫理事・副学長(教育・国際担当)

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お問い合わせ先

広報・社会連携課基金室

E-mail : koh.bok@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2415

植物の窒素欠乏耐性に必須な酵素を発見 ―新たなストレス耐性植物の開発に貢献―

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要点

  • 窒素は植物の生育における必須栄養素
  • 植物の窒素欠乏ストレス耐性に寄与するリン脂質分解酵素を発見
  • リン脂質分解酵素がリン欠乏および窒素欠乏時にも重要であることが判明

概要

東京工業大学 生命理工学院の吉竹悠宇志大学院生(博士後期課程2年)、下嶋美恵准教授、円由香技術支援員、同 技術部 バイオ部門の池田桂子技術職員らは、東京薬科大学の野口航教授、名古屋大学の杉浦大輔助教らと共同で、植物の窒素欠乏下の生育において必須なリン脂質分解酵素を発見した。

研究グループは、シロイヌナズナ[用語1]の野生株、リン脂質分解酵素の欠損体、その欠損体にリン脂質分解酵素を戻し入れた相補体[用語2]について、通常生育条件下および窒素欠乏条件下で生育を比較、解析。欠損体では、著しく窒素欠乏耐性が低下していることを見出した。

リン欠乏下で生育した植物は、リン脂質分解酵素が活性化して生体膜の構成成分であるリン脂質を分解し、その際に生じたリン酸を細胞内に放出することで一時的にリン欠乏を回避することが知られている。しかし、今回の研究成果は、リン脂質分解酵素がリン欠乏だけでなく、窒素欠乏時の植物生育でも重要な役割を担っていることを明らかにした。

今後、植物におけるリン脂質分解酵素を介した窒素欠乏ストレス耐性メカニズムの詳細が明らかになることで、新たな窒素欠乏耐性植物の作出方法の開発が期待される。

研究成果は、スイス国際科学誌「Frontiers in Plant Science(フロンティアズ イン プラント サイエンス)」オンライン版に10月31日付で公開された。

研究成果

研究グループは、シロイヌナズナのリン脂質分解酵素(ホスファチジン酸ホスホヒドロラーゼ:PAH1、PAH2)の欠損変異体について検討。窒素欠乏条件下では生育が著しく阻害されることを発見した(図1A、B)。また、欠損変異体では、窒素欠乏時のみクロロフィル[用語3]含量および光合成活性が顕著に低下することがわかった(図1C、D)。

図1. シロイヌナズナ各植物体の窒素欠乏下での生育の様子

図1. シロイヌナズナ各植物体の窒素欠乏下での生育の様子

A. 通常生育および窒素欠乏下での植物の生育比較
B. 植物体地上部の重量(新鮮重量)
C. 植物体地上部のクロロフィル含量
D. 光化学系IIの最大量子収率 (Fv/Fm)[用語4]
※+N:通常生育条件、‒N:窒素欠乏条件
WT:野生株、pah1pah2:PAH1/PAH2欠損変異体、PAH1OEはPAH1相補体、PAH2OEはPAH2相補体

そこで、通常生育時および窒素欠乏時の各植物葉の葉緑体の様子を、透過型電子顕微鏡で観察した(図2)。その結果、欠損変異体は通常生育時には、野生株や相補体と葉緑体の様子に違いは見られないが、窒素欠乏時には顕著に葉緑体内部の膜構造、特に光合成の場であるチラコイド膜の崩壊が著しく進んでいることがわかった(図2B)。

これらの結果から、リン脂質分解酵素PAH1、PAH2は、窒素欠乏時の植物生育に必須であり、窒素欠乏時の葉緑体のチラコイド膜崩壊の抑制および光合成活性の維持に寄与していることが明らかになった。

図2. 通常生育条件および窒素欠乏生育条件下におけるシロイヌナズナ各植物体の葉の細胞の電子顕微鏡写真

図2.通常生育条件および窒素欠乏生育条件下におけるシロイヌナズナ各植物体の葉の細胞の電子顕微鏡写真

Aは通常生育条件における野生株、BはPAH1/PAH2欠損変異体、CはPAH1相補体、DとGは窒素欠乏生育条件における野生株、EとHはPAH1/PAH2欠損変異体、FとIはPAH1相補体
※赤矢印は葉緑体チラコイド膜のグラナ―ラメラ構造、黄矢印は葉緑体でSはデンプン粒

背景

窒素は植物の生育において欠かすことのできない栄養素であり、その欠乏は植物に大きなダメージを与える。そのため、これまでに国内外で、特に土壌からの窒素の取り込み活性の向上や植物体内での窒素利用効率の向上による窒素欠乏耐性作物の開発に向けた研究が広く進められている。

しかし近年、植物の窒素欠乏応答においては、生育環境中のリン濃度も影響を与えるなど、窒素欠乏とリン欠乏は、それぞれに特異的な応答機構が存在するだけでなく、両方の欠乏ストレスは密接に関連していることが示唆されている。

研究の経緯

植物はリン欠乏にさらされると、生体膜の主要構成成分であるリン脂質を分解することでリンを細胞内に供給し、一時的にリン欠乏下での生育を維持することがこれまでに知られている。研究グループはこれまでに、このリン脂質の分解において重要な役割を担っている酵素PAH1、PAH2をシロイヌナズナで発見し、シロイヌナズナのPAH1、PAH2欠損体では著しくリン欠乏耐性が低下することを見出した。その際に、リン欠乏時にはPAH1、PAH2は小胞体のリン脂質を分解すると共に、生成したジアシルグリセロールを小胞体から葉緑体へと供給することで、葉緑体内の膜脂質合成に寄与していることが示唆された。

そこで本研究では、上記のようなPAH1、PAH2を介したリン酸の細胞内供給や、葉緑体へのジアシルグリセロール供給は、窒素欠乏時の生育にどのような影響を与えるのかを調べた。

今後の展望

今後、実用作物にPAH1を過剰発現させることで、窒素欠乏だけでなくリン欠乏にも耐性を持つ作物の開発に結び付くことが期待できる。

用語説明

[用語1] シロイヌナズナ : 学名Arabidopsis thaliana、植物分子生物学の研究分野では、全ゲノム配列が2000年に決定されており、遺伝子情報および遺伝子操作技術が整備されていることから、モデル植物として基礎研究に利用されている。

[用語2] 相補体 : PAH1/PAH2欠損変異体に、PAH1もしくはPAH2を導入した植物体。

[用語3] クロロフィル : 光合成において光エネルギーの吸収する役割を持つ色素。

[用語4] 光化学系IIの最大量子収率 (Fv/Fm) : 光合成活性の指標となるパラメーターの1つ。クロロフィルが受けた光エネルギーのうち、光合成に最大限使えるエネルギーの割合。

論文情報

掲載誌 :
Frontiers in Plant Science
論文タイトル :
Arabidopsis Phosphatidic Acid Phosphohydrolases Are Essential for Growth under Nitrogen-Depleted Conditions
著者 :
Yushi Yoshitake, Ryoichi Sato, Yuka Madoka, Keiko Ikeda, Masato Murakawa, Ko Suruga, Daisuke Sugiura, Ko Noguchi, Hiroyuki Ohta, Mie Shimojima
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系

下嶋美恵 准教授

E-mail : shimojima.m.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5527 / Fax : 045-924-5527

東京薬科大学 生命科学部

野口航 教授

E-mail : knoguchi@toyaku.ac.jp
Tel : 042-676-6800 / Fax : 042-676-6800

名古屋大学 大学院生命農学研究科

杉浦大輔 教授

E-mail : dsugiura@agr.nagoya-u.ac.jp
Tel : 052-789-4023

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京薬科大学 総務法人広報課

E-mail : kouho@toyaku.ac.jp
Tel : 042-676-1649 / Fax : 042-677-1639

名古屋大学 総務部総務課広報室

E-mail : kouho@adm.nagoya-u.ac.jp
Tel : 052-789-2699 / Fax : 052-789-2019

第27回英国科学実験講座 クリスマス・レクチャー日本公演2017 開催報告

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クリスマス・レクチャー日本公演2017を、9月23日、24日に大岡山キャンパス西講義棟1のレクチャーシアターで開催しました。東工大共催で、読売新聞社主催、駐日英国大使館と文部科学省後援のもと、トヨタ自動車株式会社、日本ガイシ株式会社、味の素株式会社の協賛で開催されました。各日午前と午後に1回ずつ計4回の開催で各回約200名、延べ約800名が参加しました。東工大の優先席が確保されていた1日目午前の部には、東工大生・教職員ら約60名の参加がありました。

「クリスマス・レクチャー」は、英国王立科学研究所(The Royal Institution of Great Britain。以下、Ri)が青少年向けに開催するイベントで、190年以上続く人気の科学実験講座です。このクリスマス・レクチャーを日本で再現するイベントは1990年から毎年開催されており、東工大では一昨年、昨年に続いて3回目の開催となりました。

東工大は、2016年度からスタートした教育改革の取り組みの一つとして、新入生を対象とした「科学・技術の最前線」や「科学・技術の創造プロセス」などの実演・実験付き授業を開講しています。これらの授業はこのクリスマス・レクチャーを手本としており、レクチャーシアターを最大限活用した臨場感あふれる個性的な授業を展開しています。

今回のクリスマス・レクチャーは2016年にロンドンで開催されたレクチャーを日本向けにアレンジしたもので、物質化学専門の英国バース大学サイフル・イスラム教授が講師を務めました。

「充電のいらない携帯電話(The phone that never dies)」と題し、リチウムイオン電池や水素電池のしくみ、その特性などを明らかにしつつ、次世代のエネルギー開発に向けた様々な取り組みが紹介されました。東工大からも物質理工学院 応用化学系の菅野了次教授が登壇し、今まさに最前線で研究が進められている「全固体リチウムイオン電池」についての講演を行うなど、約1時間半にわたる充実した内容のレクチャーとなりました。

単三電池800個を体感する実験
単三電池800個を体感する実験

9月20日にRiのスタッフ2名が来日して物品等を運び込み、公演に使われる機器、装置の準備・調整が始まりました。東工大の学生スタッフ13名が素早く準備を整え、昨年以上にスムーズなその動きはRiスタッフをはじめ主催である読売新聞社の担当の方々からもおおいに称賛されました。 公演を翌日に控えた9月22日には講師であるサイフル教授を迎え、打ち合わせおよび最終リハーサルを行いました。リハーサル終了後には、サイフル教授、Ri、本学、読売新聞社、英国大使館等からの関係者出席のもと歓迎レセプションが開かれ、参加者全員で親交を深めながら、翌日からの公演に備えました。

公演第1回目は、一般の参加者に加え、東工大関係者にも優先席が設けられました。各回の公演開始前には、司会の斎尾直子准教授(環境・社会理工学院)による注意事項やボランティア(講師の呼びかけによりステージで講師の実験に協力する参加者)への要望などの説明が行われました。公演に先立ち、第1回目は三島良直学長から、第2回目以降は大竹尚登副学長(研究企画担当)から、挨拶と講師の紹介がありました。

サイフル教授はスマートな立ち居振る舞いとチャーミングな笑顔で観客を魅了し、「携帯電話を1年間使用するのに必要なエネルギーはどれくらいだと思う?」、「ずっと充電しなくてもいい携帯電話があったらいいよね」などといった教授の観客への巧みな語りかけに魅かれ、大人から子どもまで誰もが熱心に公演に見入っていました。本公演はすべて英語で行われましたが、一人ひとりに同時通訳の機械が配られ、英語が分からない人でも安心して楽しめるよう配慮がなされました。この同時通訳の設備が整っていることはレクチャーシアターの特徴の一つです。また、登壇するボランティアには学生スタッフがすぐそばで通訳を行い、緊張気味の子どもたちを上手にリラックスさせていました。なかにはサイフル教授に直接英語で受け答えをする子どももいて、日本の若い世代の国際化を垣間見ることができ、頼もしい限りでした。

レモン電池の実演
レモン電池の実演

今回の公演では、化学電池には一度だけ使える「一次電池」と、充電・放電が可能な「二次電池」、エネルギー密度の高い水素や酸素などを使っている「燃料電池」があることが明らかにされていきました。一次電池の例としては単三電池と、世界で最初の化学電池である「ボルタ電池」、レモンに銅とマグネシウムの電極をつないで使用する「レモン電池」などが紹介されました。携帯電話を1年間使用するためには単三電池約800本分の電力が必要だとされ、実際に電池800本を透明の筒に入れ、どのくらいの高さになるのかを確かめる実験や、レモンを7つつないでライトを光らせる実験などが行われました。多くの子どもたちが積極的にボランティアとして実験に参加してくれました。

リチウムイオン電池について説明するサイフル教授
リチウムイオン電池について説明するサイフル教授

二次電池の例としては現在ほとんどの携帯電話に使われている「リチウムイオン電池」と日本ガイシ製の「NAS電池」等が紹介されました。NAS電池の説明では日本ガイシの方が登壇され、大容量かつ充放電を繰り返してもほとんど劣化せず、15年も働き続けることができるという紹介があり、観客はみな興味深く聞いていました。

3つ目の電池である「燃料電池」については、トヨタ自動車のエコカーである「MIRAI」に使われている水素と酸素を利用したものや、リチウムと酸素を反応させる「リチウム酸素電池」などが分かりやすい映像とともに紹介されました。

講演後サインに応ずるサイフル教授
講演後サインに応ずるサイフル教授

さらに、今最も注目を集めている電池として、東工大の菅野教授の「全固体電池」が取りあげられました。液体の状態では爆発などの危険があるリチウムイオン電池を固体にすることで、安全かつ高エネルギー・高出力、省スペースを実現するという、まさに夢のような電池です。研究をはじめた当初は「リチウムイオン電池を固体にすることなんてできるはずがない」などと言われていたのを、あきらめず30年にわたって研究を続けてきた成果が、今ようやく出ようとしていると菅野教授は話しました。子どもたちへは「夢をもって、あきらめずに自分の道を信じて研究に取り組む科学者になってほしい。」というメッセージが伝えられました。

公演の最後には、東工大学生スタッフらが全員登壇し、観客の大きな拍手に包まれました。公演終了後もサイフル教授は質問やサインの要望に喜んで応えてくれたので、子どもたちにとっては素晴らしい思い出となったことでしょう。このレクチャーから、将来科学者になることを目指して東工大で学ぶ子どもたちが生まれることを祈ります。

サイフル教授とともに全スタッフで記念撮影

サイフル教授とともに全スタッフで記念撮影

お問い合わせ先

国際フロンティア理工学教育研究プログラム

E-mail : kokusais@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3190


骨の再生メカニズムを解明 ―骨を作る細胞の源と前駆細胞の住処を発見―

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要点

  • モデル動物であるゼブラフィッシュで骨を作る骨芽細胞の前駆細胞を発見
  • この前駆細胞は、骨が再生する時だけでなく、骨の維持にも関与
  • ヒトなどの脊椎動物でも共通した骨再生・新生の仕組みがある可能性

概要

東京工業大学 生命理工学院の安藤和則大学院生(博士後期課程)と川上厚志准教授らの研究グループは、ゼブラフィッシュを用いて、骨の再生や維持(新生)のキーとなる骨芽細胞の前駆細胞(骨芽前駆細胞(OPC)[用語1])を発見、その働きを解明した。

魚類やイモリなどの両生類は、驚異的な組織再生能力を持ち、骨を含む四肢やヒレを失っても、元通りの組織を再生することができる。研究グループは今回、ゼブラフィッシュのヒレを再生する組織の細胞について研究を進める過程で、骨を作る骨芽細胞が、骨組織付近のニッチ[用語2]にいる前駆細胞から分化することを発見した。さらに研究を進めると、この前駆細胞は、発生期は体節に存在し、個体の成長とともに、骨組織付近のニッチに休眠状態で保存されることがわかった。この前駆細胞は、再生時だけでなく、普段の骨組織の恒常性維持にも働いている。

本研究から、骨芽前駆細胞が、骨の再生や維持で重要であることが明らかになった。この仕組みは、ヒトを含む他の脊椎動物にも共通する可能性がある。

研究成果は、アメリカの生物医学・生命科学誌「ディベロプメンタルセル(Developmental Cell)」のオンライン版に現地時間2017年11月2日に公開された。

研究の背景

魚類やイモリなどの両生類は、高い組織再生能力を持ち、手足などの器官を失っても、元通りに完全に再生できる。組織再生の仕組みを解明することは、長年の生物学の課題となっている。このメカニズムを解明することで、基礎科学的な関心はもとより、医学などへ応用し、実社会に直接役立つと期待される。

組織が再生する際に細胞がどのような源から供給されているのかは、これまでほとんどわかっていなかった。しかし近年、遺伝学的な細胞標識法[用語3]が開発されたことで、様々な組織の修復や再生で働く細胞の進化(分化)過程を追うことができるようになってきた。

研究成果

研究グループは、ゼブラフィッシュのヒレの再生をモデルにして、研究を行った。今回、遺伝学的な細胞標識法で再生組織の細胞(OPC)を標識して、細胞を長期にわたって追跡した。その結果、OPCが成体の骨を再生するとともに、骨を恒常的に維持する重要な役割を果たしていることを見出した(図1)。

ゼブラフィッシュにおける骨芽前駆細胞(OPC)の源と骨再生

図1. ゼブラフィッシュにおける骨芽前駆細胞(OPC)の源と骨再生

このOPCは、個体発生の初期には体節にあり、個体の成長とともにヒレや鱗、その他の骨組織付近のニッチに休眠状態で保存される(図2、3)。

組織に傷害を与えるとOPCはニッチから移動して、骨芽細胞を形成して骨を作り、さらにOPC自身も自己複製して、新たにニッチを形成する。この細胞を長期に渡って追跡すると、OPCは再生時だけでなく、正常な組織が骨組織を新生する恒常性維持の際にも、骨芽細胞を供給していることがわかった。

トランスジェニック・ゼブラフィッシュを用いた骨芽前駆細胞(OPC)とそのニッチの可視化

図2. トランスジェニック・ゼブラフィッシュを用いた骨芽前駆細胞(OPC)とそのニッチの可視化

ゼブラフィッシュのヒレの節のニッチにおける骨芽前駆細胞(一部を緑で標識)。骨系列細胞のマーカー(赤)、細胞核(青)。骨芽前駆細胞は、樹状突起を持つ独特な形状と骨系列細胞のマーカーを発現している

図3.ゼブラフィッシュのヒレの節のニッチにおける骨芽前駆細胞(一部を緑で標識)。

骨系列細胞のマーカー(赤)、細胞核(青)。骨芽前駆細胞は、樹状突起を持つ独特な形状と骨系列細胞のマーカーを発現している

今後の展望

本研究により、骨再生・新生のキーとなっていたOPCを見出し、魚類における、骨の維持や再生の重要な仕組みの一端を明らかにした。この仕組みは、ヒトを含む他の脊椎動物でも同様の仕組みがあると考えられることから、今後、様々な骨疾患の原因解明や再生医療の進展に寄与する可能性がある。

用語説明

[用語1] 骨芽前駆細胞(OPC) : 個体発生期には体節の硬節と呼ばれる部分に存在し、再生や新生が必要となると骨芽細胞に分化して脊椎や手足の骨を作る。一方で、哺乳類における研究では、成体の骨芽細胞が骨髄の前駆細胞に由来し、骨芽前駆細胞を経て、骨芽細胞へ分化するとされている。しかしながら、発生期と成体の骨芽細胞の関係、骨芽前駆細胞についてはよくわかっていない。

[用語2] ニッチ : この場合のニッチとは、幹細胞や前駆細胞がその未分化な性質を維持するために必要な住処(微小環境)。

[用語3] 遺伝学的な細胞標識法 : Cre組み換え酵素による標的配列LoxPの組み換えなど、遺伝子導入などによって特定の細胞だけを蛍光タンパク質などで永続的に標識する方法。一度標識された細胞は、細胞分裂後もずっと蛍光タンパク質を発現し続け、1個の細胞が生涯にたどる運命を追跡できる。

論文情報

掲載誌 :
Developmental Cell
論文タイトル :
Osteoblast production by reserved progenitor cells in zebrafish bone regeneration and maintenance
著者 :
Kazunori Ando, Eri Shibata, Stefan Hans, Michael Brand, Atsushi Kawakami
DOI :

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系

川上厚志 准教授

E-mail : atkawaka@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5717 / Fax : 045-924-5717

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

新しいMOOC「オートファジー」を世界に向けて公開

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東工大の新しいMOOC(ムーク)※1Autophagy: Research Behind the 2016 Nobel Prize in Physiology or Medicineouter(オートファジー:2016年のノーベル生理学・医学賞の裏側の研究)」が、プラットフォームであるedX(エデックス)※2にて、2017年11月29日に世界へ向けて公開されます。

大隅良典栄誉教授、中戸川仁准教授(生命理工学院 生命理工学系)、アレクサンダーメイ特任助教(科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター)が本講義を行います。

また、制作については、オンライン教育開発室(OEDO)の教職員、15名のTA(ティーチング・アシスタント)が行っています。

この講座は、一般の方々を対象にしており、3週間で以下のテーマを扱います。

  • 1週目 : オートファジーの基本的なメカニズムと役割
  • 2週目 : 大隅栄誉教授のノーベル賞を受賞した研究
  • 3週目 : 私たちの体におけるオートファジーの役割、ヒトの疾患とのつながり、オートファジー研究の未来

このコースの学習目標は以下の通りです。

  • オートファジーの基礎を定義できる
  • オートファジーが人間、植物、動物において果たす重要な役割について説明できる
  • 科学における大きな進歩につながる純粋な好奇心に端を発する基礎研究の重要性について説明できる

ここで、制作の裏側を少しだけご紹介します。

OEDOはこれまでedXで4講座を公開してきましたが、全て大岡山キャンパス南3号館、西9号館にあるスタジオで収録されてきました。

しかし今回の講座制作に関しては、講座講師の利便性を考慮し、すずかけ台キャンパスB1棟に臨時スタジオを開設し、このオートファジーのコースは8月に撮影を開始しました。

OEDOは講師の多様なニーズに対応し、より多くのMOOCを制作していくことを目指しています。

皆様の受講登録をお待ちしております!

すずかけ台スタジオの準備
すずかけ台スタジオの準備

撮影のための打ち合わせ(左が中戸川准教授)
撮影のための打ち合わせ(左が中戸川准教授)

撮影の様子

撮影の様子

※1 MOOC(ムーク)

Massive Open Online Courseの略で、インターネットにつながる環境さえあれば、どこでも誰でも受講できる大規模公開オンライン講座です。

※2 edX(エデックス)

マサチューセッツ工科大学とハーバード大学によって創立されたMOOC (=Massive open online course) のプラットフォームであり、世界中の学生に、多岐な分野にわたる大学レベルの授業を無償で提供しています。東京工業大学も2014年に加盟し、TokyoTechXとしてオンライン講座を提供しています。

Autophagy: Research Behind the 2016 Nobel Prize in Physiology or Medicine | TokyoTechX on edX

お問い合わせ先

東京工業大学 教育革新センター
オンライン教育開発室

E-mail : oedo@citl.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3828

東工大合氣道部が全国大会で金賞受賞

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9月24日、東京工業大学合氣道部が「第36回全日本心身統一合氣道競技大会」に出場し、団体の部(大学部)で金賞を受賞しました。銀賞は慶應義塾大学、銅賞は早稲田大学でした。

本大会は栃木県芳賀郡の心身統一合氣道会総本部天心館道場にて、「個人の部」と「団体の部」(それぞれ「中等部」「高等部」「大学部」)に分かれて行われ、日本全国から134名の学生が参加しました。

東工大合氣道部は1968年に活動を開始し、今年で創立49周年を迎えました。週4日の稽古のうち、心身統一合氣道会本部師範の大塚豊師範(心身統一合氣道九段)による稽古を週1回行っています。「心が身体を動かす」ということを重視し、心と身体を一つにして用い、「相手の心を尊重して導く」ことを学んでいます。

津葉井優気さん(合氣道部主将、工学部 機械知能システム学科 3年)のコメント

このような名誉ある賞をいただくことができたのは、多くの方々の支えがあったからだと思います。

今後も精進してまいりますので、東工大合氣道部を宜しくお願いいたします。

大塚豊師範(前列右から3番目)を囲んでの集合写真

大塚豊師範(前列右から3番目)を囲んでの集合写真

お問い合わせ先

東京工業大学 心身統一合氣道部

E-mail : titech.aikidou@gmail.com

科学技術創成研究院 研究公開「先端研究成果の社会実装に向けて」開催報告

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ホール前ロビーで行われたポスター展示
ホール前ロビーで行われたポスター展示

10月13日、本学すずかけ台キャンパスにて、「先端研究成果の社会実装に向けて」と題した講演会と研究室公開を開催しました。本学 科学技術創成研究院(IIR)は、4つの附置研究所、3つの研究センター、9個の研究ユニットから構成されており、本イベントは科学技術創成研究院で行われている研究や最新の研究成果について、企業をはじめとした学外の方々に広く紹介することを目的としています。

午前は、R2棟オープンコミュニケーションスペースにて、未来産業技術研究所の研究者6名による「未来研セミナー」を開催しました。

午後は、S8棟レクチャーホールにて、フロンティア材料研究所の細野秀雄教授・元素戦略研究センター長と、物質理工学院 応用化学系の菅野了次教授の講演会が行われました。細野教授は「電子化物の物質科学と応用展開:基礎と応用が分化する前が面白い」をテーマに、菅野教授は「全固体電池の実用化に向けた研究最前線について」と題して、最新の研究成果を発表しました。会場となったレクチャーホールには定員をはるかに超える聴衆で溢れ返りました。

講演後にレクチャーホール前のロビーで開催されたポスター展示では、多くの参加者が約70枚の研究ポスターを熱心に見ている姿が見受けられました。また、産学連携コーディネーターやURA(ユニバーシティー リサーチ アドミニストレーター)による共同研究等に関する相談会も開催しました。

普段は立ち入ることのできない研究室見学では、研究者による研究内容や研究施設の説明に耳を傾けていました。

当日はあいにくの雨天にもかかわらず、企業関係者、研究者、産学連携関係者の方など総勢152名の参加があり、本学の最新研究の動向に対する関心の高さが際だった催しとなりました。

細野教授による講演
細野教授による講演

菅野教授による講演
菅野教授による講演

お問い合わせ先

科学技術創成研究院

E-mail : openlab@iir.titech.ac.jp

11月8日16:15 本文中に誤字があったため、修正しました。

マクロライド排出ポンプの結晶構造解析に成功

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マクロライド排出ポンプの結晶構造解析に成功
―マクロライド系抗生物質の排出、病原性因子の分泌機構解明に光―

要点

  • 病原性細菌が持つ薬剤を排出するポンプの新しい構造が明らかになった
  • マクロライド系薬剤排出の仕組みが分かることで、マクロライド耐性克服の可能性
  • 病原性細菌が病原性の原因物質を分泌するためのポンプでもあり、その働きを抑制すれば病原菌の病原性を軽減できる可能性

概要

東京工業大学(以下、東工大)の村上聡教授と岡田有意助教は、大阪大学(以下、阪大)の山下栄樹准教授、英・ケンブリッジ大学(以下、ケンブリッジ大)のヘンドリック・ファン・ヴィーン上級講師らとともに、マクロライド排出ポンプ、MacBの原子レベルでの結晶構造解析に世界で初めて成功した。X線結晶解析により明らかになった構造により、緑膿菌、サルモネラ菌やアシネトバクターなどのグラム陰性細菌がどのようにしてマクロライド系抗生物質[用語1]を細胞外へ排出し、薬剤耐性化をもたらすのか?という仕組みが明らかになり、それを逆手にとることで耐性化問題克服への道が拓ける。さらにMacBは抗生物質排出のみならず、サルモネラ菌などが分泌する病原性の原因である病原性因子や毒素の分泌装置でもあり、MacBの働きを阻害することで、抗生物質の耐性化に歯止めが掛かるだけで無く、病原菌による病原性を軽減させることができるようになる。今回、この輸送体の分子実体が原子レベルで明らかになったことにより、阻害剤開発などの応用展開が期待される。この成果は、英国の科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に11月6日にオンライン掲載された。

研究成果

全てのグラム陰性細菌が細胞膜に備えている薬剤排出ポンプのうち、マクロライド排出ポンプ、MacBという新しいタイプの薬剤排出ポンプの結晶構造解析に成功した。日和見感染菌であるアシネトバクター由来MacBを結晶化し、大型放射光施設SPring-8でX線回折を測定し、構造解析を行った(図1)。

研究の背景

感染症はヒトの主な死因のひとつである。抗生物質が効かない薬剤耐性菌による感染症は、近年大きな社会問題である。薬剤が効かなくなる仕組みには数種あるが、そのうち薬剤排出ポンプは、薬剤を菌体外へと排出するポンプの様な蛋白質である。その分子実体を明らかにして、働きを阻害することは、薬剤耐性化問題の解決策として期待されている。また、近年の研究でこのポンプは薬剤の排出だけでなく、病原性細菌の病原性の原因物質を分泌する装置であることも分かってきた。そのためポンプの阻害は、薬剤耐性化克服だけでなく、病原菌の病原性低減にも有効であるとされ、その働く仕組みを本質的に理解し、働きを封じることが期待に集まっていた。

研究の経緯

研究チームを主宰する村上教授は薬剤排出ポンプの構造を2002年世界で初めて明らかにした。東工大着任後は、岡田助教を迎え今回構造を明らかにした新型ポンプに着目しX線結晶構造解析に着手、阪大、ケンブリッジ大との共同により、この度の構造解明にこぎ着けた。また、本年ノーベル化学賞を受けたクライオ電顕解析も行い、二枚の膜にまたがる巨大なポンプ複合体の構造も明らかにした(図2:本年5月にNature microbiologyに発表:こちらはケンブリッジ大グループが主著者)。今回の発表は、最も重要なポンプのエンジン部分にあたるMacBの構造を原子レベルで明らかにしたものである。

図1:MacBの結晶構造、図2:MacA-MacB-TolC複合体の構造モデル

緑膿菌、サルモネラ菌やアシネトバクターなどのグラム陰性細菌は細胞核と外膜の二枚の膜を持つ。その両方にまたがるダクト付きのポンプのような機構が存在し、効率よく細胞内から細胞外に抗生物質を排出したり、細胞毒素を分泌させる。ATPのエネルギーで駆動するこの機構のエンジン部分にあたるMacBの立体構造を明らかにした。

今後の展開

インフルエンザやエイズの治療薬開発では、原因蛋白質の立体構造を利用する合理的な薬剤設計(Structure based drug design)[用語2]の手法が用いられ、従来法に比べ、迅速且つ開発費を抑えた新薬開発が行われた。そのため、薬剤開発に際して、病態の責任蛋白質の立体構造情報は今では不可欠なものとなっている。今回MacBの構造が明らかになったことで、病原性細菌の薬剤耐性化克服へ向けた応用のほか、病原性毒素の分泌阻害への展開も期待される。細菌が抗生物質や抗菌剤による殺菌に対して抵抗性を示すことが耐性化を生む要因の一つであるとされており、今後は原因菌を死滅させず、害となる病原性を取り除く、いわば「虎を猫」にする治療法開発が薬剤耐性化を生まない新たな感染症治療法として期待されている。

用語説明

[用語1] マクロライド系抗生物質 : 現在最も使用されている抗生物質のひとつ

[用語2] Structure based drug design : 鍵と鍵穴に例えられる蛋白質による基質認識機の詳細な立体構造に基づき、それを填める化合物を合理的に設計する新薬開発方法

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Crystal structure of tripartite-type ABC transporter MacB from Acinetobacter baumannii
著者 :
Ui Okada, Eiki Yamashita, Arthur Neuberger, Mayu Morimoto, Hendrik W. van Veen, Satoshi Murakami
DOI :

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系

村上聡 教授

E-mail : murakami@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5748 / Fax : 045-924-5709

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

大面積の分子配向を一段階で光パターン形成 ―「動的光重合」技術を開発し多彩な配向パターンを実現―

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要点

  • 多彩な分子の配向パターンを一段階で形成できる新手法「動的光重合」を新たに開発
  • 従来法に比べて、1万分の1ほどの微細化および光エネルギーの劇的な低減を実現
  • 非平衡状態を材料設計・創製へ取り込んだ新たなコンセプトを提案
  • 高精細フレキシブルディスプレーなどへの応用に期待

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の宍戸厚教授、久野恭平大学院生、カナダ・マギル大学 化学科のChristopher J. Barrett(クリストファー・バレット)准教授らの研究グループは、液晶など大面積の二次元的な分子配向パターンを自在に制御できる新たな光重合法[用語1]の開発に成功した。

露光される部分を移動しながら光照射することにより、分子の拡散や流動を引き起こし、この流れによって均一な配向パターンを形成した。また、光重合性液晶であれば化合物の分子骨格や重合反応の種類に依存せず、多彩な分子の配向にも成功した。特に分子が放射状に並んだパターンの作製では、従来の偏光を用いる光配向法[用語2]に比べて、1万分の1ほどの微細化および光エネルギーの劇的な低減を実現した。

ナノからマイクロスケールの微細な分子配向構造を大面積にわたり一段階でパターン形成できることから、これまでできなかった光の微細加工が可能になる。

今後、高精細フレキシブルディスプレーなどへの応用が期待される。

この成果は、2017年11月10日付(米国東海岸時間)の米国オンライン科学雑誌「Science Advances」に掲載された。

研究の背景

材料の機能は分子や分子集合体の構造および配向・配列構造などナノからマクロまでの空間スケールにわたる階層構造によって決定される。液体の流動性と結晶の異方性を有する液晶分子は外部刺激を加えることで簡便に階層構造を制御できるため、液晶ディスプレーを筆頭にフォトニクスからエレクトロニクスやソフトロボティクスまでの多種多様な高機能材料に展開されている。

近年では大面積にわたる二次元的な微細配向パターニングを液晶材料に施すことでユニークかつ高度な機能創出を実現しており、最も有力な手法として光配向法がある。色素を含む液晶系へ偏光[用語3]を照射すると、偏光方向に依存した分子配向をパターン形成できる(図1A)。

しかし、原理的に高価な偏光光源と光応答分子の組み合わせが欠かせなかった。さらに、二次元配向パターンの解像度は原理的にミリスケールのパターンが限界で、かつアレイ状パターンの形成には膨大な時間と光エネルギーが必要だった。

(A)既存の光配向法では、色素分子を添加した液晶系へ強度分布が均一な偏光を照射することで、分子配向を誘起する。(B)新たに開発した動的光重合では、動く光の照射により材料中に定常的な分子の拡散と流動を誘起し、その流れに従って分子配向を誘起する。
図1.
(A)既存の光配向法では、色素分子を添加した液晶系へ強度分布が均一な偏光を照射することで、分子配向を誘起する。(B)新たに開発した動的光重合では、動く光の照射により材料中に定常的な分子の拡散と流動を誘起し、その流れに従って分子配向を誘起する。

研究成果

宍戸教授らは重合性液晶分子の光重合過程において光を時空間的に動かすことで、二次元的な配向パターンが一段階で形成できる新手法「動的光重合」を新たに開発した(図1B)。光照射条件(形状、動き、強度)を変調するだけで、重合により様々な分子を自在に配向できる。

スリット状の光を一方向に動かしながら重合すると一軸分子配向パターンを大面積に形成できた。また、ドット状の光を並べて動かすことにより、螺旋状の周期的な分子配向を簡便に作成できた。さらに、同心円状の光を拡大して動かすことにより、放射状の分子配向をもったフィルムの作成にも成功した。この手法を用いることにより、様々な分子配向が規則的かつ微細に集積したフィルムを作成できる(図2)。

動的光重合により形成した多種多様な配向パターン例。(A)設計した分子配向パターン、(B)動く光の照射パターン、(C)作製した高分子フィルムの偏光顕微鏡観察結果。(D)アレイ放射状配向を作製するための光照射パターン(上)と偏光顕微鏡観察結果(下)。
図2.
動的光重合により形成した多種多様な配向パターン例。(A)設計した分子配向パターン、(B)動く光の照射パターン、(C)作製した高分子フィルムの偏光顕微鏡観察結果。(D)アレイ放射状配向を作製するための光照射パターン(上)と偏光顕微鏡観察結果(下)。

パターン露光により、放射状分子配向が規則的に集積することや幅2 µmの露光部の中でも放射状分子配向が誘起できることを確かめた。既存技術で作成できるパターンと比較して1万分の1の微細化に成功した。また、既存技術では集積するために、放射状分子配向を一つずつ作製する必要があったが、動的光重合法では任意のパターンを露光するだけで良い。色素や偏光が不要なうえ、必要な露光量も従来と比べて1/100に低下した。

光を照射した領域でのみ重合反応が起こるため、反応領域と非反応領域の間で化学ポテンシャルが異なる非平衡状態が生起する。その結果、領域境界に対して垂直方向に物質の拡散と流動が起こり、この流動方向に従い分子が均一に並ぶと考えられる。自然界で日常的に観察される物質の動きを駆動力にしているため、幅広い分子種を省エネルギープロセスで配向できる利点がある。

今回、開発した動的光重合法は光の動きで分子配向パターンを自在に設計できることから、新たな機能材料を簡便に創成できる利点がある。大面積一軸分子配向フィルムは次世代フレキシブルディスプレーのキーになる技術として、また大面積螺旋状分子配向フィルムは偏光を選択的に回折する偏光ホログラム素子として、さらに放射状分子配向フィルムは偏光が特異的に変化したベクトルビーム[用語4]作成素子として期待されている。

これらの機能材料は実現が望まれているものの、微細化と大面積化の両立や作成プロセスの煩雑さがボトルネックとなっていた。今回開発した技術は従来の課題を解決し、幅広い機能材料創成を可能にする基盤技術として有用である。

今後の展開

今回、開発した動的光重合技術は、既存の光配向法では困難なマイクロスケールな二次元分子配向パターンを大面積に形成できるため、新たな機能有機デバイス創成への貢献が期待される。さらに、色素も偏光光源も不要なため、工場の既存製造ラインに適用しやすい利点もある。今後は高精細フレキシブルディスプレーへの応用が見込まれる。

尚、本研究は、科学技術振興機構(JST)さきがけ「分子技術と新機能創出」研究領域(研究総括:加藤隆史教授(東京大学))の助成を受けています。

用語説明

[用語1] 光重合法 : 低分子量体から高分子量体(プラスチック)を形成するプロセスの一つであり、光照射により反応が開始する。

[用語2] 光配向法 : 液晶分子を特定の方向へ並べる手法の一つであり、ディスプレーやスマートフォンで実用されている。色素分子を含む液晶材料へ偏光を照射することで、色素分子が偏光方向に依存して並び、その方向へ液晶分子も並ぶ。

[用語3] 偏光 : 光は電磁波と呼ばれる波であり、互いに垂直な電場と磁場の振動の伝搬として記述できる。例えば、太陽光などの自然光はこの振動方向がランダムとなっている。一方、偏光とは特定の振動方向のみを有する光の総称である。

[用語4] ベクトルビーム : 通常のレーザー光とは異なり、光の中心強度がゼロでありドーナツ状の光強度分布を有する。さらにドーナツ形状に沿って偏光方向が周期的に変化する。特異な光形状および特性から、回折限界以下の非常に微細なレーザー加工や光マニピュレーション、超高解像度イメージング、スピントロニクスなど多岐にわたる応用に展開できる。

論文情報

掲載誌 :
Science Advances
論文タイトル :
Scanning wave photopolymerization enables dye-free alignment patterning of liquid crystals
著者 :
K. Hisano, M. Aizawa, M. Ishizu, Y. Kurata, W. Nakano, N. Akamatsu, C. J. Barrett, A. Shishido
DOI :

お問い合わせ先

研究に関すること

東京工業大学 科学技術創成研究院
化学生命科学研究所

宍戸厚 教授

E-mail : ashishid@res.titech.ac.jp
Tel : 045-925-5242

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部

グリーンイノベーショングループ

中村幹

E-mail : presto@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3525 / Fax : 03-3222-2066

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

東工大ボート部 第40回東日本新人選手権競漕大会優勝

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東京工業大学 端艇部(ボート部)が、10月14日、15日に埼玉県戸田市の戸田ボートコースで開催された、一般社団法人東京都ボート協会主催 第40回東日本新人選手権競漕大会に出場し、男子舵手付きフォアで優勝、男子エイトで準優勝しました。

東日本新人選手権競漕大会は主にボートを漕ぎ始めて1年目、2年目の選手による東日本地区の大会です。

男子舵手付きフォア

男子舵手付きフォアのメンバー(左から村田さん、奥村さん、中森さん、植田さん、井上さん)
男子舵手付きフォアのメンバー
(左から村田さん、奥村さん、中森さん、植田さん、井上さん)

舵手付きフォアは、両手で1本のオールを持って漕ぐスウィープタイプのボートで、漕手が4人、舵手(コックス)1人の1チーム5人により構成される競技です。優勝したメンバーを紹介します。

  • 井上幸大さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)
  • 村田翔太朗さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)
  • 奥村直仁さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)
  • 中森康友さん(工学院 機械系 学士課程2年)
  • 植田紳之介さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)

中森康友さんからのコメント

ボート部で2年間漕いできて、初めて金メダルを獲ることができました。今大会での優勝を通して、日頃から支えてくれたマネージャーやコーチ、OBのみなさんをはじめ、たくさんの人からの応援を受けていることを改めて実感しました。そういった方々に勝利の報告ができたことは非常に嬉しく思います。この結果に満足せずに、これからも日々精進していきますので、今後とも応援よろしくお願いいたします。

男子エイト

男子エイトのメンバー(上段左から奥井さん、原さん、小木曽さん、大沢さん、槇さん下段左から小山田さん、阿部さん、鴨下さん、小柳さん)
男子エイトのメンバー
(上段左から奥井さん、原さん、小木曽さん、大沢さん、
槇さん下段左から小山田さん、阿部さん、鴨下さん、小柳さん)

エイトは、両手で1本のオールを持って漕ぐスウィープタイプのボートで、漕手が8人、舵手(コックス)が1人の1チーム9人により構成される競技です。準優勝したメンバーを紹介します。

  • 原哲郎さん(第6類 学士課程1年)
  • 小木曽喬皓さん(第6類 学士課程1年)
  • 小山田薫さん(第3類 学士課程1年)
  • 鴨下正彦さん(理学院 化学系 学士課程2年)
  • 奥井優さん(理学院 地球惑星科学系 学士課程2年)
  • 小柳一也さん(第7類 学士課程1年)
  • 大沢陸輝さん(第7類 学士課程1年)
  • 槇望さん(第1類 学士課程1年)
  • 阿部拓海さん(第3類 学士課程1年)

阿部拓海さんからのコメント

今年の東日本新人で男子エイトは準優勝することができました。本番は緊張してしまって力を出し切れなかったところがありましたが、その中でも準優勝できたのは良かったと思います。この大会で、まだまだ自分たちの実力不足を感じたので、これからさらに努力してより良い結果を目指したいと思います。応援宜しくお願いします。

東工大基金

端艇部の活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

東京工業大学端艇部

Email : titboat@green.ocn.ne.jp


東工大基金「平成29年度感謝の集い」開催報告

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東京工業大学では、東京工業大学基金(以下、東工大基金)等へのご寄附など、本学をご支援いただいた個人、企業(団体)の方々をお招きし、感謝の意を表する「感謝の集い」を例年開催しています。今年は、11月1日に東工大蔵前会館で開催されました。

大隅良典栄誉教授(中央手前)

大隅良典栄誉教授(中央手前)

東工大基金とは

東工大基金は2011年に迎えた創立130周年を契機に、戦略的な大学運営を支える財政的基盤を強化すべく創設され、これまで個人や企業(団体)の多くの方々から多大なご支援をいただきました。

皆様からいただきましたご寄附は、学生への奨学金給付、海外派遣支援、留学生受入支援、若手研究者への研究支援、小中高生に対する理科教育振興支援等に活用しています。

国立大学法人化による自主自立型の経営が求められる中で、本学は「世界トップ10に入るリサーチユニバーシティ」を目指して、教育改革・研究改革・ガバナンス改革を強力に進めていきます。

平成29年度感謝の集い

プログラム前半では、「地球と生命の起源」と題した地球生命研究所(ELSI)の廣瀬敬所長による特別講演が行われました。

プログラム後半では、三島良直学長の挨拶の後、日置滋副学長(基金担当)による東工大基金の報告がありました。続いて、東工大基金から支援を受けた学生から、海外留学、課外活動、社会貢献活動等の報告が行われ、出席された支援者の方々から、多くのご意見をいただきました。

また、夕刻からは、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授も参加し、くらまえホールにて交流会が行われました。東工大基金から支援を受けた学生や教職員の活動内容について、パネル発表や展示等があり、支援者の方々と学生、教職員が活発に議論し、交流する場面が見られました。

廣瀬地球生命研究所長 特別講演
廣瀬地球生命研究所長 特別講演

三島学長挨拶
三島学長挨拶

日置副学長(基金担当)による東工大基金の報告
日置副学長(基金担当)による東工大基金の報告

学生からの活動報告
学生からの活動報告

交流会での様子

交流会での様子

交流会での様子

東工大基金

このイベントは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

東京工業大学基金室

E-mail : bokin@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2415

合成途上のタンパク質が故意に合成を中断する現象を発見 ―細胞内の環境変化を感知する新たなしくみ―

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要点

  • 合成中のタンパク質がリボソームを不安定化して合成を終了することがある
  • 負電荷を帯びたアミノ酸配列が連続するとリボソームが大小二つのユニットに解離してタンパク質合成を中断する
  • 合成中断のしくみは、細胞内のマグネシウムイオン濃度の感知に使われている

概要

東京工業大学の茶谷悠平研究員、丹羽達也助教、和泉貴士大学院生(研究当時修士課程2年)、菅田信幸大学院生(修士課程1年)、田口英樹教授、東京大学の長尾翌手可助教、鈴木勉教授、京都産業大学の千葉志信准教授、伊藤維昭シニアリサーチフェローの研究グループは、タンパク質が合成される途中で、リボソーム[用語1]の構造を不安定化することで、合成を終らせてしまうことがあることを発見、これが細胞の環境適応のために利用されていることを見出しました。

生命現象を担うタンパク質は、すべてリボソームというタンパク質合成装置で作られます。リボソームはDNAに書き込まれた遺伝暗号に従って、始点から終点までアミノ酸を一つずつ鎖状に繋げてタンパク質を合成します。最近、このアミノ酸を繋げていくスピードはいつも同じではなく、多くは途中で減速や一時停止することがわかってきました。

研究グループは、タンパク質合成過程で、アミノ酸の並び方によっては終点に至らなくてもリボソームを不安定化して合成を終了することを発見しました。さらに、この途中終了のしくみを細胞内のマグネシウムイオン濃度をモニターするのに使っていることも発見しました。これまでの分子生物学の常識では、タンパク質が合成される際の始点と終点は遺伝暗号により厳密に指定されていると考えられてきましたが、今回の発見で、DNAに刻み込まれた遺伝情報はタンパク質合成の途中終了も指令できることが判明しました。リボソームはタンパク質を合成する際大きな構造変化を余儀なくされるため、産みの苦しみとでも喩えられるような不安定化が起こることも示されました。この成果は、生命現象の理解を深めると同時に、有用タンパク質の生産などの応用へも波及効果が期待できます。

本研究成果は11月2日付けの米国の学術誌「Molecular Cell」電子版に掲載されました。

研究の背景と経緯

生命を支える機能分子であるタンパク質は、アミノ酸が連結した鎖(ポリペプチド鎖)が立体構造をつくったものです。この鎖のアミノ酸の並び方(配列)はDNA配列に書き込まれています。ポリペプチド鎖は、リボソームというタンパク質合成装置がDNA配列の写し(メッセンジャーRNA)に存在する始点(開始コドン)から20種類のアミノ酸を遺伝暗号に従って一つ一つ選んで連結し、終点(終止コドン)で鎖がリボソームから離れることによってできてきます。

リボソームでタンパク質が作られる過程は「翻訳」と呼ばれ、私たちヒトを含む全生物のタンパク質は全て例外なく翻訳を経て生まれてきます。従来は、リボソームでアミノ酸を連結していく過程で新たに生まれてくるポリペプチド鎖(新生鎖)は停滞することなく合成されると考えられていました。

最近の本研究グループの研究などから、新生鎖はアミノ酸配列によっては作り手であるリボソームに直接働きかけて翻訳のスピードにブレーキをかけるなど、翻訳には「緩急のリズム」が広範に存在することがわかってきました。

つまり、翻訳の産物である新生鎖が翻訳の進行自体に積極的に関わることが明らかにされたのです。研究グループは、翻訳速度を制御するアミノ酸配列を詳細に調べる過程で、合成途上のタンパク質が、リボソームに対して新たな作用を及ぼすことを見つけました。それは、リボソームの不安定化による翻訳中途終了です。

研究内容と成果

研究グループは、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)が10回程度連続した配列、もしくは酸性アミノ酸とプロリンというアミノ酸が交互に連なった配列を含むタンパク質を大腸菌の再構成型無細胞翻訳系[用語2]で翻訳させた際に、翻訳が中途で終わることを見つけました。この中途終了が起こるとき、これらのアミノ酸配列を合成するリボソームが新生鎖の作用によって不安定化(IRD = intrinsic ribosome destabilizationと命名)し、最終的にリボソームが大小サブユニットに解離してしまいます(図1)。細胞内で数千から数万種類のタンパク質の合成を担うリボソームには、多様なアミノ酸配列の組み合わせを自在に連結する能力があると考えられてきましたが、自らが合成しつつある新生鎖によってリボソームが翻訳中に不安定化する現象(IRD)の発見は、翻訳が潜在的に中断のリスクを伴いながら進行するものであることを示しています。IRDを引き起こすアミノ酸配列を含むタンパク質は、合成が「最後」まで完了できない事態に陥ります。

新たに合成されてきたタンパク質によるリボソームの不安定化と合成の途中終了

図1. 新たに合成されてきたタンパク質によるリボソームの不安定化と合成の途中終了

リボソームは多様なアミノ酸配列の組み合わせを自在に連結する能力があると考えられていたが、酸性アミノ酸の連続配列などの合成時には、合成されてきたタンパク質(新生鎖)によってリボソーム自身が不安定化(IRD)し、リボソームが大小のサブユニットに解離する。結果的にタンパク質合成は終点まで到達しないまま途中で終了する。

この一見リボソームの欠陥にも見えるIRD現象は生物にとって、どのような意味があるのでしょうか?

研究グループは、生物がIRDに対抗する機構も持っていることを発見しています。そこで、この機構が損なわれてリボソームが若干不安定になりIRDが起こりやすい大腸菌の変異株を用いて細胞内のタンパク質全体(プロテオーム)を解析しました。その結果、変異株では野生株に比べ、多くのタンパク質の発現量が変動すること、特にマグネシウムを細胞内に運ぶ膜輸送タンパク質の一つMgtAが10倍以上多く発現していることを見出しました。興味深いことにMgtAの発現を制御する遺伝子(mgtL)はIRD配列を持っていました。解析の結果、大腸菌は野生株においても細胞内のマグネシウム濃度に応じてmgtLのIRD配列を使った特殊な機構でMgtAの発現量を調節していることがわかりました。

マグネシウムイオンは細胞内の多くの生命現象に必須の金属イオンで、中でもリボソームを安定化することで翻訳に必須です。そこで、大腸菌はマグネシウムイオンが生育環境中で少なくなった際、mgtLのIRD配列を介してMgtAを大量に発現させてマグネシウムイオン濃度を高めるしくみを準備したと考えられます。つまり、生物はIRD現象を逆手にとって細胞内の環境変化をモニターするしくみを持っていることがわかりました(図2)。

新生鎖に依存したリボソーム不安定化による細胞内マグネシウムイオン感知機構

図2. 新生鎖に依存したリボソーム不安定化による細胞内マグネシウムイオン感知機構

マグネシウムを細胞内に運ぶ膜輸送タンパク質MgtAの発現を制御する遺伝子(mgtL)にはリボソーム不安定化配列があり、細胞内マグネシウムイオン濃度が低いときに翻訳が中断する。mgtLが翻訳中断するとMgtAの合成がオンになるメカニズムがあり、結果としてMgtAの大量発現によって細胞内のマグネシウムイオン濃度が高くなると考えられる。

今後の展開

生命現象を説明するセントラルドグマ[用語3]では、タンパク質はメッセンジャーRNAに存在する開始コドンから終止コドンまでリボソームがアミノ酸を途切れなく合成するものだと考えられていました。本研究では、アミノ酸配列にはタンパク質の立体構造の情報が書き込まれているだけでなく、自らを合成する装置の安定性を左右して翻訳を中途で終了させる働きまで潜んでいることを明らかにしました。これは、遺伝情報の発現を基礎とする生命現象の理解を深めるものです。

生命のセントラルドグマにおけるリボソーム不安定化現象の位置付け

図3. 生命のセントラルドグマにおけるリボソーム不安定化現象の位置付け

DNA→RNA→タンパク質という遺伝情報の流れ(セントラルドグマ)において、遺伝子はタンパク質のアミノ酸配列の情報をDNA配列に書き込んでいる。このアミノ酸配列情報にはタンパク質の立体構造の情報に加えて、翻訳速度の調節や翻訳を途中終了させる情報も書き込まれていることがわかってきた。

さらに、本研究で発見されたアミノ酸配列をきっかけとして、今後さらに翻訳を途中終了させるアミノ酸配列が広く見つかる可能性があります。つまり、これまでの生命科学では翻訳の途中終了は考慮されていなかったため、今回の発見は、生命科学が関与する様々な応用研究に展開できると考えられます。

例えば、有用タンパク質を異種の生物で発現させる際にうまくいかない理由の一つに今回見つけたような翻訳の途上終結配列があることが予想できます。これまで作ることができなかったバイオ医薬など有用タンパク質の生産が本研究を契機に可能になることが期待できます。また、今回見つけたような環境応答機構がマグネシウム輸送系以外にも働いていることが予測され、遺伝子発現調節研究に新たな視点を導入する結果となりました。

用語説明

[用語1] リボソーム : RNAとタンパク質からなる巨大な複合体で、メッセンジャーRNAの塩基配列を読み取って、そこに書き込まれている遺伝暗号に従い20種類あるアミノ酸を選んで特定の順番に繋げていくことにより、タンパク質の鎖(ポリペプチド鎖)を合成する。

[用語2] 再構成型無細胞翻訳系 : タンパク質を合成するに必須の因子だけから 構成された試験管内でのタンパク質合成(翻訳)系。

[用語3] セントラルドグマ : DNA→RNA→タンパク質という情報の流れと変換を記述した分子生物学の根幹をなす概念のこと。大きくは、DNAの塩基配列の情報がメッセンジャーRNAに写される「転写」と、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、およびリボソームの共同作用でタンパク質を合成する「翻訳」に分かれる。

論文情報

掲載誌 :
Molecular Cell 68, 528–539 (2017)
論文タイトル :
Intrinsic ribosome destabilization underlies translation and provides an organism with a strategy of environmental sensing(和訳:内発的なリボソームの不安定化が遺伝情報の翻訳過程に付随し、環境応答戦略に利用される)
著者 :
Y. Chadani, T. Niwa, T. Izumi, N. Sugata, A. Nagao, T. Suzuki, S. Chiba, K. Ito* and H. Taguchi*:
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
細胞制御工学研究センター

田口英樹 教授

E-mail : taguchi@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5785 / Fax : 045-924-5785

京都産業大学 総合生命科学部 シニアリサーチフェロー

伊藤維昭

E-mail : kito@cc.kyoto-su.ac.jp
Tel : 075-705-2972 / Fax : 075-705-2972

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部
広報・地域連携部門

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長寿命核分裂生成物を飛躍的に短寿命化する高速炉技術を利用した核変換システムを提案

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長寿命核分裂生成物を飛躍的に短寿命化する高速炉技術を利用した核変換システムを提案
―発電とともに将来世代の負担軽減と核不拡散に貢献―

要点

  • 早期展開可能な長寿命放射性廃棄物処理用の小型高速炉技術を利用した核変換システム提案
  • 寿命が長く遠い将来世代に負担となる核分裂生成物の大幅な短半減期化を実現可能
  • 従来研究よりも広範な長寿命核分裂生成物を対象に高効率の核変換を実現可能
  • 原子力発電が生成する放射性物質を閉じ込めつつ減容し、発電にも貢献

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の千葉敏教授と奥村森研究員、東北大学の若林利男名誉教授、東京都市大学の高木直行教授、日本原子力研究開発機構の舘義昭氏らのグループは、原子力発電所から発生する放射性廃棄物に含まれる長寿命の核分裂生成物(LLFP)[用語1]を短寿命の核種に変換して無害化するシステムを提案した。

小型高速炉[用語2]の炉心周辺部分に、新規に提案する減速材[用語3]とともにLLFPを配置して中性子を吸収させ、これを炉心部で生成されるよりも早いペースで短寿命核種に変換する技術である。開発の進んだ小型高速炉技術を使用するため早期に展開でき、かつ軽水炉からの蓄積プルトニウム[用語4]を燃料として消費し、将来的には核軍縮に伴って発生する解体核兵器中のプルトニウム[用語5]の有効利用も可能になる。

本研究では、国内に蓄積した使用済核燃料[用語6]中のLLFP全量を元素組成のまま10基程度(今後の最適化により削減も可能)の小型高速炉で処理し、発電しつつLLFPを高速炉システム内に閉じ込めることで、放射性廃棄物を将来世代の負担とならないよう減量・短寿命化できるシステムの構築可能性を示した。これにより、次世代原子力システムとして実用化が期待される高速炉のポテンシャルに新たな可能性を示すことになり、社会的受容性の向上にも貢献するものである。

本研究は文部科学省原子力システム研究開発事業により東京工業大学が委託を受けた平成28年度「「もんじゅ」を活用したLLFP核変換システムの研究開発」および平成29年度「高速炉を活用したLLFP核変換システムの研究開発」の成果である。研究成果はSpringer Nature社の専門誌「Scientific Reports誌」に10月24日にオンライン掲載された。

研究成果

使用済核燃料に含まれる核分裂生成物(FP)の中には長寿命の核分裂生成物(LLFP)が存在する。代表的なものとしては、セレン(Se-79、半減期30万年)、ジルコニウム(Zr-93、同153万年)、テクネシウム(Tc-99、同21万年)、パラジウム(Pd-107、同650万年)、スズ(Sn-126、同23万年)、ヨウ素(I-129、同1570万年)、セシウム(Cs-135、同230万年)がある。

今回の研究では従来に比べて高い効率のLLFP核変換を実現するため、開発実績のある小型高速炉技術を活用する革新的な核変換システム概念を構築した。高速炉の使用済核燃料に含まれるLLFPを含む新規の減速材入りターゲット要素を提案し、それを炉心周辺部に配置することで、高速炉で利用可能な核分裂で発生した余剰の中性子を効率的に吸収させる。それにより、従来の核燃料サイクルシステムを大幅に変更することなく早期に展開でき、高効率の放射性廃棄物減容・有害度低減に寄与するシステムである。

提案したシステムは、生成量が少なく中性子との反応性が極端に低いSn-126を除く6種類のLLFPに対して、高速炉から排出される同位体組成のまま(つまり同位体分離[用語7]などの付加的な処理を行わず)、実効半減期(装荷した重量が半分になる時間)を物理的な半減期に比べて飛躍的に低減し、また高速炉の炉心で生成される量よりも多くのLLFPを無害な核種に変換することができる。

長寿命核種の潜在的毒性変化

図1. 長寿命核種の潜在的毒性変化

また、本提案の高速炉では、これまでの軽水炉で生成し蓄積したプルトニウム(Pu)を燃料として活用し、将来は解体核兵器から排出されたPuを利用することで核不拡散と核軍縮にも貢献できる。これらを高速炉本来の目的の発電と同時に行い、さらに地層処分[用語8]の環境負荷リスクを低減することが可能になる。

本核変換システムでは、国内の軽水炉により生成されるLLFPについても10基程度の小型高速炉で処理可能な見通しである。また、最適化によりこの基数をさらに削減することも可能である。

研究の背景

使用済核燃料中にはマイナーアクチニド(MA)[用語9]とLLFPという長寿命の放射性核種が含まれている。使用済み核燃料の処理・処分に関するバックエンド分野の研究では、MAは放射性廃棄物の潜在的毒性[用語10]の主要元素群である(図1参照)。すでに国内にはこれまで使用してきた1.7万トンもの使用済核燃料が保管されている。後世の負担としないため、また核不拡散の観点からもこれらは日本国内で、我々の世代が検討すべき課題である。このため、日本国内に放射性廃棄物の最終処分場を建設するには、最小限の面積とし、環境への負荷も最小化する必要がある。

処分場面積の節約には、発熱性核種である一部の核分裂生成物(FP:例えば90Srなど)やMAなどの長寿命核種を除去することが有効である。このため、これまでの研究では主にMAをターゲットとした研究が行われてきた。さらに、LLFPについても図2及び後述のように放射性廃棄物の処分に伴う放射線リスクを低減し、処分技術のより一層の信頼性向上に貢献できる可能性がある。

以上のことから、MAやLLFPといった超長期にわたる放射能を有する核種を短寿命または安定した核種に変換することで地層処分場に送る廃棄物を減容、またはサイクル内に閉じ込める技術が重要である。

原子力エネルギーシステムは、安全性に優れ、放射性廃棄物による環境負荷を効果的に低減し、環境と調和する高い可能性を秘めている。このような観点からMAの核変換とともにLLFPの核変換も重要な課題である。

100万年までは、Cs-135、Se-79、Zr-93などのLLFPが支配的。その後はMA。

HLWガラス固化体4万本からの公衆被ばく

HLWガラス固化体4万本からの公衆被ばく

JNC TN1400 99-023(第二次取りまとめ)と同条件の評価

I-129が支配的。

TRU廃棄物(HLWガラス固化体4万本相当)からの公衆被ばく

TRU廃棄物(HLWガラス固化体4万本相当)からの公衆被ばく

JNC TY1400 2001-001 図4、5、6-1(a)

図2. 地層処分された長寿命核種の公衆被ばくへの影響(科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第2回)日本原子力研究開発機構の資料)

LLFP核変換は、不確実性を伴う超長期の放射性廃棄物処分リスクを低減し、地層処分の安全性を一般社会にわかりやすい形で提示すること、そして原子力の信頼性を取り戻し、さらに一層高めるために有効である。長期間に亘って線量因子となる主要核種としては、I-129(半減期1570万年)、Tc-99(同21万年)、Se-79(同30万年)、Zr-93(同153万年)、Pd-107(同650万年)、Cs-135(同230万年)があり、これらに着目し、安定核種に変換する「核変換」が有効と考えられる。高速炉では1回の核分裂で発生する中性子数が多いため、多くの中性子を消費する核変換システムに、適していると考えられている。日本では、高速増殖原型炉「もんじゅ」が運転再開に要する期間や費用、今後の不確実性等を考慮し、廃止措置に移行することとなったが、世界的な潮流としては、ウラン資源の枯渇リスクに対応するエネルギー供給源として高速炉には大きな期待が寄せられている。実際にフランス、ロシア、中国、インドなどの国々では炉の運転実績もあり今後も高速炉の建設が計画されている。我々は、これまで日本で蓄積されてきた高速炉技術を生かしつつ放射性廃棄物処分リスクを低減する方法として、高速炉を利用した核変換システムの検討を行ってきた。高速炉を用いたLLFP核変換に関する先行研究では、中性子との反応性の高いTc-99及びI-129にターゲットを絞って行われてきた。原子炉内での生成量がこれらの核種よりも多くかつ核変換効率の低いZr-93やCs-135、または全6核種同時に核変換を実現するには、同位体分離といった技術的にも実現が難しいと考えられている付加的な処理プロセスが必要とされてきた。

そこで本研究では、高速炉の使用済核燃料中の6核種のLLFPについて、同位体分離を行わずに高速炉内で核変換により減容することにより、高速炉サイクル内から廃棄物をできるだけ出さない実現性の高い核変換システムを提案した。

研究の経緯

今回の研究開発は核変換研究に実績のある東工大、東京都市大、東北大、日本原子力研究開発機構が連携して行った。LLFP核変換のための炉心設計評価、システム設計は東工大、東京都市大、東北大が中心となって進め、核変換解析に用いるLLFPの化学形態の選定は原子力機構が担当した。画期的な減速材を用いた核変換ターゲットとして、二つのアイディアを基本として検討した。一つは、中性子を減速しLLFPに吸収されやすくするための減速材として水素化イットリウム(YH2)、重水素化イットリウム(YD2)、同ジルコニウム(ZrH2, ZrD2)などをLLFPに均質に混合圧縮成型したものである。もう一つは複合型ペレットである。これは減速材ペレットに複数個の穴を開け、その中にLLFPの混合粉を封入したものである。これらのペレットを被覆管に封入し、核変換ターゲット集合体として束ね(「もんじゅ」相当の場合、61本)、炉心周辺のブランケット領域に装荷することを基本とした。その結果、重水素化イットリウム(YD2)の減速材としての有効性とともに、同位体分離を必要としないLLFP核変換システムが出来る可能性を見出した。

ブランケット領域に核変換ターゲット集合体を装荷した理由は、高速炉の余剰中性子を有効に利用できることと、高速炉の炉心特性への影響をなるべく小さくすることができるためである。これらを用いるより効率的な集合体装荷パターンなどの最適化は今後の課題である。

今後の展開

今回の研究で明示したのは高速炉サイクルにおけるLLFPの削減可能性である。軽水炉からのLLFPについては、同位体組成が異なるため一部の核種では一時的に量が増加する可能性もあるが、地層処分せずに高速炉サイクル中に封入して地層処分の負担を軽減できることは同じである。

ただし、Puの増殖を行わないシステムであるため、燃料となるPuの一部を外部から供給する必要がある。このため軽水炉サイクルで蓄積したPuの利用や解体核兵器から発生するPuの利用を想定し、軽水炉からのLLFPを核変換した後は、今回提示した高速炉サイクルからのLLFP核変換に移行するシナリオを考えている。ターゲットの再処理等での回収漏れ分は地層処分に回ることになる。今後、各プロセスでの物量評価を行い、原子炉での照射条件についても最適化を行い、最小基数で最大の効果を上げるシステムの提案を定量的に行う予定である。

従来に比べて飛躍的に高い核変換率を達成することは、高速炉での核変換の実現性を明らかにするとともに、高速炉の多様な利用の可能性を示すことになり、高速炉技術の維持発展にも寄与することになる。また、日本国内のみならず今後原子力発電を保有する国々においても使用済核燃料から発生する放射性廃棄物の減容がいずれは重要な課題となることは明らかで、広義にも原子力技術の発展に寄与する研究である。

高速炉は核燃料サイクルの中核装置であり、それを開発するための技術基盤を維持することは我が国のような資源小国にとっては不可欠である。核燃料の増殖とMAの核変換を目指す大型高速増殖炉開発がフランスなどとの共同開発を軸に検討されているが、今回の研究で既に建設経験のある「もんじゅ」クラスの小型高速炉を放射性廃棄物減容及び核不拡散にも寄与できる装置として有効活用する新たな方法が明確化された。我が国はそれを開発する技術力を有しており、国情によって異なる原子力情勢に適切に対応できるこのような独自技術を維持・保有し発展させることはエネルギーセキュリティーの観点から重要である。

用語説明

[用語1] 核分裂生成物(LLFP) : Long Lived Fission Productsの略。使用済み核燃料に含まれる核分裂生成物のうち、特に半減期の長い7核種を示すセレン(Se-79、半減期30万年)、ジルコニウム(Zr-93、同153万年)、テクネシウム(Tc-99、同21万年)、パラジウム(Pd-107、同650万年)、スズ(Sn-126、同23万年)、ヨウ素(I-129、同1570万年)、セシウム(Cs-135、同230万年)。本研究ではこのうちSn-126を除く6核種を同時に短半減期(または安定核種)に変換するシステムを提案した。

[用語2] 高速炉 : 核分裂で発生する中性子を減速させることなく次の核分裂に利用する原子炉。特にプルトニウムにおいて、核分裂の起きる中性子のエネルギーが高いほど吸収された中性子あたりに発生する中性子が多く、また燃料以外への中性子吸収が減少する。その分、原子炉の運転維持以外に利用できる余剰中性子が増し、核燃料の増殖や不要核種の変換に回すことが可能である。

[用語3] 減速材 : 核分裂で発生する中性子と衝突して中性子のエネルギーを減らすために用いられる物質。一般に中性子捕獲断面積や核分裂断面積は核分裂で発生する中性子の持つエネルギーより低いエネルギーで大きいため、中性子エネルギーの調整のために用いられる。

[用語4] 軽水炉からの蓄積プルトニウム : 軽水炉でもウラン燃料のうちU-238が中性子を捕獲して核燃料となるプルトニウムが生成する。我が国ではこれまでの原子力発電に伴って47トンのプルトニウムが生成した。

[用語5] 解体核兵器中のプルトニウム : 解体された核兵器から排出されるプルトニウム。核軍縮が進むにつれその保管や処理が問題となるが、高速炉で燃料として利用すれば電力の供給源として有効利用される。余剰プルトニウムとも呼ばれる。

[用語6] 使用済核燃料 : 原子炉で使用された核燃料。核分裂や中性子捕獲反応に伴って生じた強い放射能を有している。

[用語7] 同位体分離 : 放射性廃棄物の特定の元素はいくつかの同位体(原子番号が同じで中性子の数が異なる原子核)からなる。同位体分離は、そのうち特定の中性子数を持つ原子核を分離する技術であるが、核分裂生成物の領域では有効な方法が見つかっていない。

[用語8] 地層処分 : 原子炉から発生する放射性物質を地下に作った施設で保管すること。放射能の弱い物質は地上付近に保管し、強い物質は地下数百メートル程度に保管する。長期保管に適した地盤が選定される。

[用語9] マイナーアクチニド(MA) : 核燃料のウランやプルトニウムが中性子捕獲とβ崩壊を繰り返して原子炉中で生成されるネプチニウム、アメリシウム、キュリウムなどのウランより原子番号が大きくプルトニウムを除いた元素。高速炉では燃料として利用可能である。

[用語10] 放射性廃棄物の潜在的毒性 : 放射性物質が人体内に入ったときにどれだけ害をもたらすかは放射能の強さのみならず、蓄積する部位や放射線のエネルギーや種類によって異なる。放射性物質の人体への影響を与える度合いを核種ごとに数値化した量を潜在的毒性と呼ぶ。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Method to Reduce Long-lived Fission Products by Nuclear Transmutations with Fast Spectrum Reactors
著者 :
Satoshi Chiba, Toshio Wakabayashi, Yoshiaki Tachi, Naoyuki Takaki, Atsunori Terashima, Shin Okumura, Tadashi Yoshida
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所

千葉敏 教授

E-mail : chiba.satoshi@lane.iir.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3066 / Fax : 03-5734-2959

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット 第3回公開シンポジウム 開催報告

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東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット(以下、GHEU)は、将来の水素利用体系に関する総合的かつ技術的な検討を推進するため、産官学のさまざまな活動を展開しています。

10月16日には、東工大蔵前会館くらまえホールにて今年で3回目となる公開シンポジウムを開催しました。企業の関係者を中心に多くの方が来訪され、大きな会場が一杯になりました。

昨年よりも多い278人が来場し、午後1時30分のスタートから夜の意見交換会まで、将来の「水素社会」の実現に向けて、国内外の水素利用技術の現状と将来展望を共有しました。

シンポジウムは、東京工業大学の三島良直学長のあいさつから始まりました。

三島学長は、水素エネルギーの活用が社会から嘱望されている今、その実現に向けた多角的な研究をGHEUが取り組んでいる先導性を強調しました。

また、コンソーシアムを立ち上げ、国内の多くの企業や研究機関が集まっていることなども評価し、このユニットが順調に成長しているという認識を示しました。

次に、ユニットリーダーである科学技術創成研究院の岡崎健特命教授が登壇し、GHEUの活動と今後の戦略について説明しました。

エンジニアリングの部門で急成長している南洋理工大学(シンガポール)と密な交流をしていることを報告し、このユニットの次のステップとして国際連携に力を入れていく方針を示しました。

また、1月に開かれた第193回国会での施政方針演説の中で安倍晋三首相が具体的な水素利用について言及したことに触れながら、水素社会の実現には水素の量的な寄与が必要であり、水素発電と水素サプライチェーンが重要であると説き、「CO2フリー水素」についての議論も大切であると訴えました。 今後の展開としては、GHEUの活性化やプロジェクトの推進、次プロジェクトの策定、国内外の研究機関や産業界との連携、社会発信や社会貢献、さらなる国際展開など、今後も活動を活発にしていきたいと抱負を語りました。

会場の様子

会場の様子

開会のあいさつをする三島学長
開会のあいさつをする三島学長

GHEUの活動と今後の戦略について説明する岡崎特命教授
GHEUの活動と今後の戦略について説明する岡崎特命教授

今回のシンポジウムでは、広い視点で水素の活用や技術、水素社会を考えていくために3つの招待講演を実施しました。

招待講演1「今後の日本のエネルギー安全保障戦略と水素の役割」

元国際エネルギー機関(IEA)事務局長/笹川平和財団会長 田中伸男氏

今後の石油の価格や天然ガスの位置づけなどを解説しながら、これからの世界のエネルギー地政学における水素の役割について講演しました。

講演する田中氏

講演する田中氏

講演する田中氏

招待講演2「Activities of Hydrogen and Fuel Cell Technology in Singapore and Asia」

Prof. Siew Hwa CHAN, Nanyang Technological University (NTU), Singapore
Co―Director, Energy Research Institute @ NTU
Vice Director, Sino―Singapore International Joint Research Institute

シンガポールの南洋理工大学で水素・燃料電池関連技術のリーダー役を務める一人、チャン・シュウ・ホワ教授が、アジアでの技術動向について、豊富な事例とともに解説しました。

講演する田中氏

講演する田中氏

講演するチャン教授

招待講演3「水素社会の実現に向けた戦略と課題」

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部
新エネルギーシステム課 課長 山影雅良氏

国の立場から、水素エネルギー利用の検討が必要になる理由や、本格的な水素大量利用に向けての課題、水素利用の飛躍的拡大を図るための方策などについて話しました。

講演する山影氏

講演する山影氏

講演する山影氏

次に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 水素利用等先導研究開発事業 「トータルシステム導入シナリオ調査研究」中間成果報告があり、産業技術総合研究所の高木英行氏と工藤祐揮氏、エネルギー総合工学研究所の加藤悦史氏、東工大 物質理工学院 応用化学系の伊原学教授と東工大 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程/イノベーション科学系の梶川裕矢教授が「水素の本格導入に向けたシステム分析」(担当:産総研・エネ総工研)をはじめ、「学理に根ざした技術評価・予測および新技術普及に向けた分析」(担当:東工大)、「技術開発シナリオの作成」(担当:産総研・エネ総工研・東工大)について、現状の成果をそれぞれ発表しました。

「トータルシステム導入シナリオ調査研究」の中間成果報告を行う伊原教授(左)と高木氏(右)

「トータルシステム導入シナリオ調査研究」の中間成果報告を行う伊原教授(左)と高木氏(右)

「トータルシステム導入シナリオ調査研究」の中間成果報告を行う伊原教授(左)と高木氏(右)

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

閉会のあいさつをする益教授
閉会のあいさつをする益教授

最後に、「CO2フリー水素の普及に向けて」と題してパネルディスカッションを開きました。GHEUのユニットリーダーである岡崎特命教授が進行役を務め、この研究ユニットに関わっている企業の方に多く登壇してもらい、水素の大量活用で大きなポイントとなる「CO2フリー水素」について議論しました。

パネリスト

  • 日産自動車株式会社 長谷川卓也氏
    今後、燃料電池をコピー用紙のようにロールトゥロールで製造できるようになれば、原価を大きく下げられるという考えを示しました。

  • 日本大学/水素エネルギー協会会長 西宮伸幸氏
    CO2フリー水素の普及には、燃料電池自動車の優位性を高める必要があるという見解を示しました。

  • 株式会社東芝 山根史之氏
    まず、水素が人々の暮らしの中でどう役立つかを提示し、それが実現した後にCO2フリー水素の普及が可能になるという考えを話しました。

  • 岩谷産業株式会社 宮崎淳氏
    水素エネルギーの需要を増やす努力がCO2フリー水素の普及につながるとし、そのためにはインフラを作っていくことが重要だと訴えました。

  • トヨタ自動車株式会社 濱崎志紀氏
    2050年までに生産工場などの排出CO2ゼロを目指す「トヨタ環境チャレンジ2050」について、現在の状況や努力を説明しました。

  • 産業技術総合研究所 古谷博秀氏
    再生可能エネルギーが完全なCO2フリーでないことを指摘し、全体でCO2排出量を下げて最後にフリー化するという考え方が重要であると説きました。

  • 東京工業大学 梶川裕矢教授
    2012年以降、水素に関して大きな構造変化が起きていて、ブレークスルーの技術開発ができれば、世界的なエネルギー偏在性や産業構造が大きく変わると指摘しました。

閉会のあいさつに立った東工大の益 一哉科学技術創成研究院長は、これからの大学は基礎研究だけでなく、社会実装にも取り組むことが重要で、そこから今までになかった新たな可能性が開かれると語り、このユニットのコンソーシアムに参加している多くの企業と一緒に研究をして、新しい技術開発の循環を生み出してほしいとの期待を寄せました。

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
グローバル水素エネルギー研究ユニット

Email : ghec@ssr.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3335/3019

BSジャパン「日経モーニングプラス」に三島良直学長が生出演

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本学の三島良直学長が、BSジャパン「日経モーニングプラス」に生出演します。

日経モーニングプラスは、社会人のほか、シニア、女性など幅広い視聴者層をターゲットとして、「ニュース」「ビジネス」「マーケット」にこだわった最新情報を提供する番組です。三島学長は番組の中盤にあるゲストコーナーで、東工大の教育改革、研究改革、産学連携の在り方などについて語る予定です。

三島良直学長

三島良直学長

三島良直学長のコメント

今回の東工大改革が社会から注目されている証だと思います。

ますます東工大の教育、研究を構成員一同で強くしていきます。

番組情報

  • 番組名
    BSジャパン「日経モーニングプラス」
  • 放送予定日
    2017年11月24日(金) 7:05 - 7:50

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

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