Quantcast
Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
Viewing all 4086 articles
Browse latest View live

「ゴットフリート・ワグネル」没後125年記念講演会 開催報告

$
0
0

11月8日、公益社団法人オーアーゲー・ドイツ東洋文化研究協会(OAG)と東京工業大学の主催により、OAG・ドイツ文化会館ホールにて、本学の道家逹將特命教授(名誉教授)による「ゴットフリート・ワグネル没後125年記念講演会」が開催されました。

講演会場の様子

講演会場の様子

ゴットフリート・ワグネルは本学の前身である東京職工学校の創立に関わり、本学草創期の教育・研究に貢献しました。今回はワグネル(1831~1892年)の没後125年という記念すべきイベントで、ドイツ大使館の後援を得て行われました。幸い多くの方々(180名)の参加を得て有意義な会となり、印象的な話の後の懇親会では特別なビールを楽しみながら余韻に浸ることができました。

11月8日がワグネルの命日にあたることを意識して、講演は青山墓地にあるワグネルの墓の話から始まりました。この奇策が見事に奏功し、いきなり聴衆の心を鷲づかみにする展開となりました。配布資料として配られた分かりやすい年表とワグネル直筆の『織物工業学校 意見書』も、主題である「ゴットフリート・ワグネルの生涯と日本における貢献」に関する理解を深めました。サブタイトル「日本の陶芸を愛し、近代化・工業化に尽くしたDr. ワグネル」関連では、ワグネルが明治初期に開発し、日本の陶磁器を美しく進化させた釉下彩陶器「旭焼」(はじめは吾妻焼といわれていた器、絵皿、装飾タイルなど)がスライドで多数紹介され、撮影自由だったこともあり、写真に収めている参加者が何人もいました。

シーボルト父子が日本の近代化に大きな貢献をしたことは日本史の教科書に載っていますが、シーボルトの長男であるアレクサンダー・フォン・シーボルトがワグネルと共に働いたことは余り知られていませんので、それは新鮮な情報でした。結びのスライドは「育つ学生たち」と題する記念写真でした。写真にはワグネルを囲んで、後に日本の窯業や工芸のリーダーとなる一期生たちが写っていて、教育機関の在り方をも示唆するものでした。

共催者のOAGは明治6年(1873年)の設立以来、日本を研究し、ドイツ語圏の国々に日本を紹介することにより、それらの国々と日本の友好関係の構築に貢献してきています。中でも毎月1回開催している「シーボルト・ゼミナール」は100回を超える講座に成長し、世界で唯一のシーボルトのゼミとなっています。江戸から明治にかけてのシーボルト父子の足跡と日本の近代化への貢献を実証してきたゼミですが、今回はその一コマとして、本学の創設者の一人ともいえるワグネルを取り上げてもらいました。

今回の講演会では、主催者のOAGのカーリン・山口 理事長(代読、大胡真人)及び本学の岡田 清 理事・副学長の挨拶に続いて、ドイツ連邦共和国大使館ダニエル・オッケンフェルト一等書記官の挨拶がありました。本学の学生・教職員・同窓会関係者に加え、OAG及びシーボルト ゼミナールの関係者、さらには日本科学史学会員の方々及びドイツ研究者やその下で勉学中の拓殖大学と東洋大学の学生など多数の参加を得ることができ、ワグネルの顕彰とともに新しい交流の輪が広がる機会になったことは主催者の望外の喜びとなりました。

OAGの大胡氏による挨拶(カーリン・山口理事長の代読)
OAGの大胡氏による挨拶(カーリン・山口理事長の代読)

岡田理事・副学長による挨拶
岡田理事・副学長による挨拶

ドイツ連邦共和国大使館のダニエル一等書記官による挨拶
ドイツ連邦共和国大使館のダニエル一等書記官による挨拶

道家特命教授
道家特命教授

お問い合わせ先

東京工業大学博物館

E-mail : centjim@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3340


シリコン量子ドット構造で超高精度量子ビットを実現

$
0
0

シリコン量子ドット構造で超高精度量子ビットを実現
―産業集積化に適したシリコン量子コンピューター開発を加速―

要点

  • 固体中で、電子スピンの量子演算速度と情報保持時間を高水準で両立する手法を実証。
  • 集積化可能な量子ビットとして最高水準の量子演算精度をシリコン素子で実現。
  • 今後シリコン中の電子スピンを用いた量子コンピューター開発の加速が見込まれる。

概要

JST戦略的創造研究推進事業において、樽茶清悟 理化学研究所 グループディレクター/東京大学 大学院工学系研究科 教授、米田淳 理化学研究所 基礎科学特別研究員らの研究グループは、シリコン量子ドット[用語1]において世界最高水準の演算精度をもつ電子スピン[用語2]量子ビット[用語3]素子を開発しました。

量子コンピューターは次世代コンピューターの候補として注目され、その情報を担う量子ビットの開発競争が、超伝導素子を筆頭にさまざまなシステムにおいて世界的に激化しています。半導体素子を用いた量子ビットの実装は、産業応用の観点から重要である一方で、量子演算速度と情報保持時間[用語4]の両立が難しく、高性能化が大きな課題となっていました。

本研究グループは、慶應義塾大学の伊藤公平教授と名古屋大学の宇佐美徳隆教授らが新たに開発した、磁気的雑音の極めて少ない同位体制御シリコン[用語5]基板を用いて量子ドット素子を作製しました。これと特殊な形状の微小磁石を用いた高速スピン操作を組み合わせ、従来の量子ビットに比べて約100倍の演算速度と約10倍の情報保持時間を同時に達成し、量子演算の誤り率の最高値を従来値より約1桁減少させることに成功しました。半導体同位体技術を適用したことで、この素子における電子スピンの量子情報喪失は、通常の磁気的雑音ではなく、電荷雑音が支配していることを初めて明らかにしました。

本研究成果は、産業集積化に適したシリコン・ナノ構造における超高性能の電子スピン量子ビットの実装方法を確立するもので、今後これを用いたシリコン量子コンピューター開発の加速が見込まれます。

本研究は、東京工業大学の小寺哲夫准教授、慶應義塾大学の伊藤公平教授、名古屋大学の宇佐美徳隆教授らと共同で行ったものです。

本研究成果は、2017年12月18日(英国時間)に国際科学誌「Nature Nanotechnology」のオンライン速報版で公開されました。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域:
「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出」
(研究総括:荒川泰彦 東京大学 教授)
研究課題名:
「スピン量子計算の基盤技術開発」
研究代表者:
樽茶清悟 理化学研究所 グループディレクター/東京大学 教授
研究期間:
平成28年10月~平成34年3月

研究の背景と経緯

新しい動作原理に基づき超並列計算を行う次世代コンピューターとして、近年量子コンピューターが注目され、世界的に開発競争が激化してきています。量子コンピューターの最小単位を量子ビットと呼び、これに量子力学的な状態を用いて情報を符号化することで情報処理を行います。高性能な量子ビットの実装に適したシステムとして、超伝導回路や光子、原子、イオンなどを用いた研究が進められていますが、なかでも量子ドット中の電子スピンは集積化の観点で産業応用上とくに着目されています。量子コンピューターの実用化には量子ビットを大量に並べる必要がありますが、シリコンを用いることで現行の集積エレクトロニクス技術の応用が見込めるためです。

量子コンピューターの計算能力は量子ビットの演算精度に影響を受けるため、実用的な量子ビット演算では誤り率が1%よりもはるかに低いことが必要と考えられています。このため、トレードオフの関係にある量子ビット演算速度と情報保持時間の両方が、高い水準で要求されます。従来これらの水準を独立に達成する手法は知られていましたが、同一試料で両立した例はなく、量子ドット中の電子スピン量子ビットの実用化に向けた重要な課題となっていました。

研究の内容

本研究グループは、歪みシリコン基板中に量子ドット(図1)を形成し、閉じ込められた単一の電子スピンを量子ビットとして用いました。量子ドット直上に微小磁石を配置することで、電子スピンに対して不均一磁場を印加しました。素子にマイクロ波電気信号を印加して、不均一磁場中で電子の位置をナノメートル(ミクロンの千分の一)程度変調することで、量子ビット演算に特徴的なラビ振動(図2)を観測しました。これにより、通常の磁気的操作に比べて約100倍高速な単一電子スピン演算が実現されていることを確認しました。

量子ドット素子(概念図)

図1.量子ドット素子(概念図)


歪シリコン中の2次元電子ガスに、金属電極に電圧を印加することで、単一の電子を数十ナノメートルの領域に閉じ込めている。制御電圧信号を電極に加えることで、電子スピンを操作する。

単一電子スピンのラビ振動

図2.単一電子スピンのラビ振動


上向きスピン確率を操作時間に対してプロットしたもの。電子スピンを下向きに初期化した後に、スピン反転操作を行うと、操作時間に応じてスピンが下向きと上向きの間を行き来する。この振動をラビ振動と呼び、その周期から量子演算に必要な時間が分かる。

さらに量子ドットの周りの材料から、(通常のシリコンで主な雑音源となる)核スピンを有する同位体を取り除きました。これにより、高速演算が可能な素子であるにもかかわらず、通常に比べて1桁程度長い20マイクロ秒の量子情報保持時間を観測しました。通常に比べて約100倍の演算速度と約10倍の情報保持時間を同時に達成したことで、従来の量子演算の誤り率の最高値を約1桁低減したことを、量子演算の正確性の検証(図3)により明らかにしました。

このとき量子ビットの量子情報を喪失させる雑音源について調べたところ、核スピンに代表される磁気的雑音ではなく、1/fのスペクトルをもつ電荷雑音であることを明らかにしました。高速スピン操作により電荷雑音の影響を部分的に相殺することで、3ミリ秒までの量子メモリー時間を実現しました。

量子演算の正確性の検証

図3.量子演算の正確性の検証


ある集合からランダムに選んだ量子演算を繰り返した後に、演算に誤りがないと仮定した理想的な場合とスピン状態を比較することで、演算の誤り確率を検証した結果。点線で示した従来の量子ビットに比べて減衰が遅く、誤り確率が低くなっていることが分かる。

今後の展開

本研究成果は、産業集積化に適していると考えられるシリコン・量子ドット構造において、超高精度の電子スピン量子ビットの実装方法を確立するものです。これにより量子ドットにおいて初めて、超伝導量子ビットと同程度の単一量子演算が可能となりました。演算精度の向上に伴い、電子スピン量子ビットに対して電荷雑音による擾乱(じょうらん)が無視できないことが明らかとなり、今後これを踏まえたシリコン量子コンピューター開発の加速が見込まれます。

用語説明

[用語1] 量子ドット : 電子が3次元すべての方向に対して閉じ込められた構造のことで、ナノ加工された半導体などにおいて実現されます。人工原子、量子箱、あるいは量子点とも呼ばれます。

[用語2] 電子スピン : 電子は通常のエレクトロニクスに用いられる電荷に加えて、その自転に相当するスピンという内部自由度を持ちます。その自転方向(右回りか左回りか)に応じて、電子スピンは上向きあるいは下向きと呼ばれます。

[用語3] 量子ビット : 従来のコンピューターに用いられるビットは「0か1か」のどちらかの状態をとるのに対して、量子ビットはそれらの量子力学的重ね合わせ状態をとり、「0であり1でもある」状態となります。この性質をうまく利用することで、量子コンピューターは高い処理能力が生み出されます。しかし一方で、外界の雑音による擾乱(じょうらん)を受けやすく、情報保持時間が限られるといった問題があります。

[用語4] 情報保持時間 : 量子力学的な重ね合わせ状態を用いて符号される量子ビットの情報は、外界の雑音の影響を受けることで、時間の経過とともに失われていきます。情報保持時間は量子ビットが情報を保持していると考えられる典型的な時間を指していて、コヒーレンス時間と呼ばれます。

[用語5] 同位体制御シリコン : 自然界に存在するシリコンは、3種類の同位体(28SI、29SI、30SI)からなっており、質量数のほかに原子核の有するスピンが異なります。このうち原子核にスピンがない同位体のひとつ(28SI)を分離して用いることによって、電子スピン量子ビットに理想的な磁気的雑音の少ない環境が実現します。

論文情報

掲載誌 :
Nature Nanotechnology
論文タイトル :
A quantum-dot spin qubit with coherence limited by charge noise and fidelity higher than 99.9%
DOI :

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

樽茶清悟(タルチャ セイゴ)

理化学研究所 創発物性科学研究センター グループディレクター

E-mail : tarucha@riken.jp
Tel : 048-467-9622 / Fax : 048-462-4672

東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授

E-mail : arucha@ap.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-6835 / Fax : 03-5841-6835

報道担当

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

東京大学 大学院工学系研究科 広報室

E-mail : kouhou@pr.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-1790 / Fax : 03-5481-0529

慶應義塾 広報室

E-mail : m-koho@adst.keio.ac.jp
Tel : 03-5427-1541 / Fax : 03-5441-7640

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

プラスチックに数層の分子配向膜を形成する手法の開発とその応用に成功

$
0
0

プラスチックに数層の分子配向膜を形成する手法の開発とその応用に成功
―基板を選ばず分子配向膜を形成できるため、フレキシブルエレクトロニクスへの応用に期待―

発表のポイント

  • 従来の技術では困難であったプラスチックなどのさまざまな基板の上に数層の分子配向膜を実現し、分子配向膜を形成することで、基板の表面エネルギー制御に成功しました。
  • 分子配向膜を有機トランジスタの絶縁膜上に形成することで、有機トランジスタ、集積回路の駆動電圧の低減をはじめとした高性能化を実現しました。
  • 分子の末端基を設計することで、プラスチック表面にさまざまな機能を付加できるようになり、高性能・高機能なフレキシブルエレクトロニクスの実現が期待されます。

発表概要

JST戦略的創造研究推進事業の一環として、東京大学の横田知之講師、染谷隆夫教授、東京工業大学の福島孝典教授、梶谷孝特任准教授、大阪大学の関谷毅教授らのグループは、プラスチック基板上に自己組織化単分子膜のような数層からなる分子配向膜の形成手法を開発し、有機集積回路への応用に成功しました。

フレキシブルエレクトロニクスは、次世代のエレクトロニクスとして非常に注目を集めています。しかしながら、プラスチック基板上には金属や酸化物のように、薄い均一な分子配向膜(微細な溝のある板)を形成する技術がないために、エレクトロニクスの高性能化・高機能化が難しいという問題点がありました。本研究グループは、二次元に配向する3枚羽プロペラ状の分子であるトリプチセンを用いることで、プラスチック基板上に数層の分子配向膜を形成することに成功しました。さらに、この技術を有機集積回路に用いると、デバイスの電気特性が向上しました。今後、トリプチセンの分子設計を行うことで、新規分子デバイス創出など多様な応用展開が期待されます。

本研究成果は、2017年12月18日(イギリス時間)に「Nature Nanotechnology」誌のオンライン速報版で公開されました。

本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。

JST 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)

研究プロジェクト :
「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」
研究総括 :
染谷隆夫(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究期間 :
2011年8月~2017年3月

上記研究プロジェクトでは、シリコンに代表される従来の無機材料に代わり、柔らかく、かつ生体との適合が期待できる有機材料に着目し、生体とエレクトロニクスを調和させ融合する全く新しいデバイスの開発の実現を目指しています。

発表内容

フレキシブルエレクトロニクスは、従来のエレクトロニクスにはない柔軟性や軽さを活かして、曲がるディスプレイ、大面積センサなどへの応用が盛んに研究されています。研究グループはこれまで、アルミ酸化膜と自己組織化単分子膜(SAM)[用語1]を用いることで、低電圧駆動可能な有機トランジスタや集積回路などを開発してきました。しかし、アルミ酸化膜はプラスチックなどのポリマー材料と比べて硬いという問題点があり、フレキシブルエレクトロニクスの長所を活かしきれていませんでした。

有機トランジスタは、電極、ゲート絶縁層、有機半導体層などからなる多層構造から構成されます(図1)。デバイスの性能は、有機半導体層の性能に大きく依存するため、ゲート絶縁膜上に有機半導体分子をどのように成膜させるかが重要になります。ゲート絶縁膜として金属酸化物を用いた既存のデバイスでは、金属酸化物表面をSAMで修飾すると、修飾しない場合と比べてデバイス性能が向上することが知られていました。これは、SAMによって金属表面の性質が改質されるため、表面上で結晶性の高い有機半導体層が形成されやすくなるためです。しかし、ポリマー薄膜をゲート絶縁層に用いた場合では、SAMを利用することができません。なぜならポリマー薄膜は、金属酸化物がもつような、SAMと結合する足場がないからです。このため、ポリマー絶縁膜を用いたフレキシブルデバイスの性能を向上させることは困難でした。

トリプチセン分子を用いた有機トランジスタの絶縁膜表面の修飾

図1.トリプチセン分子を用いた有機トランジスタの絶縁膜表面の修飾


絶縁膜表面をトリプチセン分子で修飾することにより、有機トランジスタの移動度が大幅に向上した。

研究グループは、この課題を解決するために、独自に開発した「三脚型トリプチセン[用語2、文献1]」をポリマー表面の修飾に利用しました。この三脚型トリプチセンは、3枚のベンゼン環が120度の角度で配列したトリプチセンと呼ばれるプロペラ型分子の骨格上に、位置を制御してSAM分子と類似のアルキル鎖が複数導入されています(図2)。三脚型トリプチセンは、自己集合によって、プロペラ部位が入れ子状に密に詰まった二次元シート構造を形成する能力があります。そのため、SAMの場合とは大きく異なり、三脚型トリプチセンと基板表面との間に結合がなくても、ポリマーを含む多種多様な基板上で、構造規則性と配向性の高い薄膜を形成することができます。

基板上への分子配向膜の形成手法

図2.基板上への分子配向膜の形成手法


(左)従来の自己組織化単分子膜を用いた手法。金属や酸化膜上に自己組織化的に単分子膜を形成する。
(右)本研究で開発したトリプチセン分子を用いた手法。金属や酸化物以外のポリマー上などにも数層からなる分子配向膜を形成できる。

この分子配向膜を形成したさまざまな基板の表面物性を理研ビームライン「BL45XU」を用いて評価したところ、ポリマー基板、酸化物基板などの種類に依らずに同等の表面エネルギー[用語3]を示すことが分かりました。一方で、分子配向膜を形成しない基板では表面エネルギーが異なっており、今回の分子配向膜が基板に依らずに表面エネルギーを一定にできることが分かりました。さらに、この分子配向膜上に有機半導体であるジナフトチエノチオフェン(DNTT)[用語4]を成膜したところ、分子配向膜がない状態と比較して結晶性が向上していることが分かりました。

この技術を有機トランジスタと集積回路に応用したところ、電気特性が劇的に向上することが分かりました。特に、絶縁膜に30 nmのパリレンと呼ばれるポリマーと5 nmのトリプチセン分子配向膜を用いた場合には、1 V以下の低電圧で駆動する有機回路を実現することに成功しました。作製した有機発振回路[用語5]の発振速度は、従来のアルミ酸化膜と自己組織化単分子膜を用いた発振回路と比較して、4倍以上速い発振速度を示しました。

本研究成果により、さまざまな基板の上にわずか数層の分子配向膜を形成する技術と、フレキシブルエレクトロニクスへの応用を実現しました。今回用いたトリプチセン分子の末端基はさまざまな官能基に変更することができます。そのため、トリプチセンの分子設計を適切に行うことで、ポリマー基板に機能性を付加することができ、さまざまな高機能、高特性のフレキシブルエレクトロニクスが実現できると期待されます。

本研究成果は、東京大学 大学院工学系研究科、科学技術振興機構、東京工業大学、大阪大学 産業科学研究所、理化学研究所、ヨハネスケプラー大学の共同研究によるものです。

用語説明

[用語1] 自己組織化単分子膜(SAM) :金属や金属酸化物に結合できる官能基(トリアルコキシシラン、チオール、ホスホン酸など)をもつ有機分子で、金属や金属酸化物の表面を修飾することにより得られる高い規則構造を有する単分子薄膜。Self-Assembled Monolayerの頭文字をとり、SAMと呼ばれ、SAM形成に用いられる有機分子はSAM分子と呼ばれる。

[用語2] トリプチセン : 3枚のベンゼン環が120度の角度で連結された剛直なプロペラ状分子

文献1 : Rational synthesis of organic thin films with exceptional long-range structural integrity
N. Seiki, Y. Shoji, T. Kajitani, F. Ishiwari, A. Kosaka, T. Hikima, M. Takata, T. Someya, T. Fukushima, Science 2015, 348, 1122–1126

[用語3] 表面エネルギー : 固体表面への液体の濡れ性(親和性)などを評価する指標

[用語4] ジナフトチエノチオフェン(DNTT) : 大気下安定で高い移動度を示す高性能有機半導体材料

[用語5] 有機発振回路 : 電圧を加えることで発振する有機トランジスタを用いた回路

論文情報

掲載誌 :
Nature Nanotechnology(12月18日、オンライン版)
論文タイトル :
A Few-Layer Molecular Film on Polymer Substrates to Enhance the Performance of Organic Devices
著者 :
Tomoyuki Yokota, Takashi Kajitani, Ren Shidachi, Takeyoshi Tokuhara, Martin Kaltenbrunner, Yoshiaki Shoji, Fumitaka Ishiwari, Tsuyoshi Sekitani, Takanori Fukushima, Takao Someya
DOI :

お問い合わせ先

研究に関すること

東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻

教授 染谷隆夫

E-mail : someya@ee.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-0411 / Fax : 03-5841-6709

東京工業大学 科学技術創成研究院
化学生命科学研究所

教授 福島孝典

E-mail : fukushima@res.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5221 / Fax : 045-924-5976

JSTの事業に関すること

科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部

古川雅士

E-mail : eratowww@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3528 / Fax : 03-3222-2068

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東京大学 大学院工学系研究科 広報室

E-mail : kouhou@pr.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-1790 / Fax : 03-5841-0529

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

大阪大学 産業科学研究所 広報室

E-mail : kouhou@sanken.osaka-u.ac.jp
Tel : 06-6879-8524 / Fax : 06-6879-8524

学生、教職員、執行部、卒業生200名を集め 「東工大の未来を語り合う大ワークショップ」を開催

$
0
0

11月22日、東工大を支える各構成員のうち総勢207名(学生60名、教員53名、職員66名、執行部・卒業生28名)が大岡山キャンパス生協第一食堂2階コミュニケーション・ラウンジに集まり、「学生・教員・職員・卒業生全員集合! 東工大の未来を語り合う大ワークショップ~2030年に向けた東京工業大学のステートメント『ちがう未来を、見つめていく。』をもとに~」が開催されました。本学でも最大規模となった本ワークショップでは、多様な学内関係者が1つの卓を囲み、東工大の一員として「対等」な立場で参加することを合言葉に、東工大の現在とこれからについて熱く語り合い、大いに盛り上がりました。

総勢207名による大ワークショップで対話する様子

総勢207名による大ワークショップで対話する様子

多様な立場の構成員がフラットに語り合う

2017年春に策定した「2030年に向けた東京工業大学のステートメント(Tokyo Tech 2030)」
2017年春に策定した
「2030年に向けた東京工業大学のステートメント(Tokyo Tech 2030)」

東工大は、大ワークショップの副題ともなっているステートメントを30名規模による計4回のワークショップをもとに、2017年春にまとめました。「ちがう未来を、見つめていく。」というフレーズから始まる“Spirit(スピリット)”、「尖らせる」「共鳴する」「実装する」からなる“Action(アクション)”の2つで構成され、本学の目指す姿を示しています。これをもとに今度はより多くの東工大構成員が、本学の将来について「自分ごと」として関わりを持つこと、また学生・教員・職員・卒業生が一堂に会して現状と未来についてフラットな立場で語り合うことで、新たな出会い・アイデア・エネルギーを生み出すことを目的にしてこの大規模ワークショップを実施しました。

東工大の強みと課題、理想の東工大像とは

開会の挨拶をする岡田清理事・副学長
開会の挨拶をする岡田清理事・副学長

冒頭に、大ワークショップの発起人である岡田清理事・副学長(企画・人事・広報担当)から開会の挨拶があり、国立大学が置かれている現状の中で本学が持っている価値について語り合うことの重要性、その対話の場に2030年の社会を担う若者が加わることの価値など、今回のワークショップにかける想いが語られました。

ワークショップ参加の心得を歌う中野民夫教授
ワークショップ参加の心得を歌う中野民夫教授

リベラルアーツ研究教育院の中野民夫教授によるファシリテートのもと、最初に参加者はホームグループで自己紹介を行い、自身が普段どのような立場で、何に興味を持っているかなどをメンバーと共有しました。そして「2030年に向けた東京工業大学のステートメント」を輪読した後、自身が気になるフレーズについて語り合いました。ワークショップ参加の心得を歌詞にした「輪になって座ろう(えんたくんの歌)」を全員で歌って場が和むと、東工大のより良い未来のために以下の3つのテーマについて考えや想いを語り合いました。

  • ラウンド1: それぞれの東工大との関わりの中で、“東工大ってやっぱりいいね(凄いね)!”と思えるのは、いつどんな時?あるいは“ちょっとなあ・・・”と思うのは?
  • ラウンド2: 理想の東工大ってどんなところ?ユニークな世界やトップクラスって何だろう?どんな「ちがう未来」を見つめているの?
  • ラウンド3: そんな最高に「イケてる東工大」になるための課題は?対策は?そして自分にできること、自分が見つめたい「ちがう未来」は?

対話のテーマ(ラウンド1)
対話のテーマ(ラウンド1)

対話促進ツール「えんたくん」を囲み少人数のグループで輪となり、テーマ毎に席替えをしました。学生の大学生活・自身の将来にかける想い、教員の教育・研究活動に対する想い、職員の大学運営に携わることへの想い、執行部の描く将来像、卒業生として今後の東工大に期待することなど、大学に対する多様な見方がそれぞれの立場の垣根を越え、混じり合いながら対話が重ねられました。

円型の段ボールでできた「えんたくん」を4名で囲み対話する様子

円型の段ボールでできた「えんたくん」を4名で囲み対話する様子

円型の段ボールでできた「えんたくん」を4名で囲み対話する様子

円型の段ボールでできた「えんたくん」を4名で囲み対話する様子

円型の段ボールでできた「えんたくん」を4名で囲み対話する様子

えんたくんとは、円型の段ボールでできた1枚の板であり、それを参加者の膝に乗せながら自由にアイデアを書き込む対話促進ツールです。

3つのテーマを終えると最初のグループ(ホームグループ)に戻り、対話を積み重ねて感じたこと、発見したことを書き出し、グループ内で自由に考えを深め合いました。そして本日のまとめとして、理想の東工大像を実現するにはどのような「ちがう未来」が必要になるのか話し合い、より良い東工大に向けて、次の一歩として自身のやりたいこと・できることを「私のちがう未来の種」というアイデアシートに個々でまとめました。

さらにこの「未来の種」を成長させるため、“自身のアイデアを紹介したい”、または“発表し共感できる仲間を募りたい”という参加者のための発表タイムを設けました。ここでは20名から申し出があり、産業界のどんな難問にもスパッと応える「東工大科学技術Hospital(ホスピタル)」の設立や、教職員・学生を交えたサークルの設立などさまざまな提案が行われ、気になった提案については自身の連絡先を書いた付箋を貼って“共鳴”の意志を示しました。最後に三島良直学長から本日の終了の挨拶があった後、参加者の中で最も若い第7類の近藤恭平さん(学士課程1年)の掛け声で締めくくりました。ワークショップ終了後、仲間を募りたい参加者を中心に分科会が行われ、各々の思いを話し合い仲間同士の連絡先等を交換して次のアクションにつなげました。

有志により発表されたアイデアシート「私のちがう未来の種」の中で,気になったアイデアに付箋を貼る参加者

有志により発表されたアイデアシート「私のちがう未来の種」の中で,気になったアイデアに付箋を貼る参加者

有志により発表されたアイデアシート「私のちがう未来の種」の中で,気になったアイデアに付箋を貼る参加者

大ワークショップのシンボルとなった広報ステッカー
大ワークショップのシンボルとなった広報ステッカー

大ワークショップ成功の裏には、学生・教職員から選ばれた実行委員会の活躍がありました。参加者200名を目標に準備段階から各構成員が関わり、身近なところからワークショップの輪を広げていってほしいという中野教授の思いのもと、学士課程から博士後期課程までの学生有志、リベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗准教授、学務部や国際部などの職員計19名による委員会が組織されました。実行委員会は9月に発足後、定期的に行われ、200名全員がワークショップの進行に取り残されず参加できるためにはどのようにしたら良いかを考え、立場の異なる参加者が意見を出し合い、対話を深めるためのテーマ選び、各委員の役割など綿密に打ち合わせを行いました。また、大ワークショップの開催を学内全体に広げるため、特製のステッカーの作成や図書館掲示などで周知しました。

中野民夫教授を中心に話し合いをする実行委員会の様子

中野民夫教授を中心に話し合いをする実行委員会の様子

ワークショップに来るのが初めてで最初は様子を伺っていた参加者もいましたが、同じ職場にいながらも普段話す機会の少ない構成員との出会いを楽しみ、利害なく和やかに話しているうちに打ち解けてきて、終わってみれば大盛況という大ワークショップになりました。

参加者からは「大勢の人とフラットな立場でにぎやかに語り合え楽しかった」、「同じ東工大の一員でありながら、このような機会でないと会うことのない方々と話ができたことが貴重だった」などの感想が寄せられました。また、「私のちがう未来の種」には「来年のワークショップ実行委員を募る」という提案もあり、今後さらに東工大のなかに対話の文化が根付いていくことが期待される1日となりました。

学長からのメッセージ

三島良直 学長
三島良直 学長

2030年に創立150周年を迎えようとする本学は、「世界トップ10に入るリサーチユニバーシティ」を目標に掲げています。その目標を実現するために、昨年春から進めている大学改革と同時に学生・教職員・執行部が大学の目指すビジョンを語り合い、共有することが大事だと考えています。そこで2016年秋から2017年新春にかけて、計4回、延べ123名の学生・教職員・執行部が、シニア・中堅・若手に分かれて「東工大の未来」について話し合ってもらいました。そして、この動きは今年9月の全学ワークショップ「2030年に向けての研究企画について」の実施、今回の「東工大の未来を語り合う大ワークショップ」の開催につながりました。学生・教職員・役員に加えて卒業生の総勢207名が一堂に会し、「これからの東工大を良くしていくにはどうしたらよいか」を熱っぽく語り合ってくれたことを本当に嬉しく思います。こんなに年齢・立場が違っていても共鳴し合える場がつくれる東工大を本当に頼もしく感じています。このようなワークショップが日常風景となるまで広めていき、本学の文化になっていくことを願っています。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

リベラルアーツ研究教育院(ILA)outer

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

Tokyo Tech 2030

ちがう未来を、見つめていく。
役員・教職員・学生の参加によるワークショップを通じて、2030年に向けた東京工業大学のステートメント(Tokyo Tech 2030)を策定しました。

Tokyo Tech 2030

お問い合わせ先

総務部企画・評価課総合企画グループ

E-mail : kik.sog@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2011

日本人学生と留学生の交流イベント「Let’s play volleyball」開催

$
0
0

11月12日、東京工業大学留学生会(Tokyo Tech International Student Association、以下TISA)が、東工大の日本人学生と留学生の交流を促進することを目的としたイベント「レッツプレイバレーボール(Let's play volleyball)」を開催しました。本イベントは、本学の非公認サークルであるバレーボールサークルのMARCHの協力を得て行われ、バレーボールに関心のある多くの学生が、国籍や言語の壁を越えて交流することができました。

参加者の集合写真

参加者の集合写真

4チームに分かれての総当たり戦の様子

4チームに分かれての総当たり戦の様子

主催者等のコメント

出口英梨子さん 生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年(TISA)

東工大には毎年多くの留学生が入学し、普段キャンパスでも多くの留学生を見かけます。しかし、留学生との交流がない日本人学生は少なくないと思います。今回のイベントは、留学生と日本人学生が、「スポーツ」という誰でも楽しめるジャンルを通じて交流することを目的として行いました。結果として、参加者皆さんが楽しむ姿が見られ、予想以上に良いイベントになったことに大変満足しています。今後もこのような文化やスポーツを通じた交流の場を続けていきたいと思います。

川島真之介さん 工学部 土木・環境工学科 学士課程3年(バレーボールサークル・MARCH)

この度、TISAからお誘いをいただきまして、バレーボールイベント開催の運びとなりました。バレーボールという球技の良さは、経験者と初心者、そして、男女が混ざっても試合を楽しめるというところにあると考えていました。加えて今回、非常に盛り上がるイベントとなったことで、様々な国の人々が混ざっても楽しめるということがわかり、バレーボールの力、そして、スポーツの力というものを再実感できました。MARCHは毎春、大勢の新入生の参加希望に恵まれており、人数制限をせざるを得ない状況であります。今回のイベント後に入団したいと言ってくださった留学生の方々の気持ちに応えられず、大変申し訳ない気持ちです。しかしながら、MARCHのメンバーには、国際交流に興味がある人が多く、また、今回のイベントが良かったと感じている参加者も多かったので、このイベントをまた開催できたらと願っております!またこのイベントでお会いできることを心待ちにしております!!

参加者からのコメント

サヒル・バンザルさん 第5類 学士課程1年(TISA/インドからの留学生)

留学生たちにとって、日本人学生との交流の機会は決して多いとは言えません。逆に日本人学生にも同様のことが言えるでしょうから、今回のイベントは日本人学生にとっても新しい留学生の友達を作るのによい機会となったのではないかと思います。また、バレーボールを通じてお互いが交流できたことをうれしく思います。MARCHの皆さんはバレーボールが大好きで、本イベントに大変貢献してくれました。また、予想以上に多くの学生が参加してくれて、本当に楽しかったです。これからもTISAのイベントに参加してくれることを期待しています。

菅原大資さん 第4類 学士課程1年(バレーボールサークル・MARCH)

MARCHは日本人オンリーなので、留学生と英語でコミュニケーションをとりながらレシーブやスパイクを教える難しさを思い知った一方、相手にうまく伝わったとき国際交流の楽しさを実感しました。ありがとうございました。

点を取った喜びを分かち合う参加者たち
点を取った喜びを分かち合う参加者たち

ネット際でのプレー
ネット際でのプレー

TISAは、東工大留学生の学生生活の援助及び学内の国際交流を促進することを目的として、2007年に設立された学生団体です。学内の留学生との接点を増やしたい・異文化交流に興味がある・将来留学を考えている・語学力を伸ばしたい、そんな東工大生をいつでも歓迎しています。

お問い合わせ先

東京工業大学留学生会(TISA)

E-mail : contact@mytisa.net

TBSテレビ「未来の起源」に田原麻梨江研究室の学生が出演

$
0
0

本学 科学技術創成研究院 田原麻梨江研究室の藤井健人さん(工学部 電気電子工学科 学士課程4年)が、TBS「未来の起源」に出演します。「音を利用した柔らかい触覚センサー」の研究について紹介されます。

藤井健人さん

藤井健人さん

藤井健人さんのコメント

身近な「音」を利用した、生活に直結する研究をしたい。その強い思いで選んだ田原研究室での研究を、今回TBSが取り上げて下さいました。先輩方が積み上げてきた成果や実験物を元にして、最大限魅力を伝えたつもりです。番組を見て、少しでも多くの方が「音を用いた柔らかいセンサー」に興味を持っていただけたら幸いです。

  • 番組名
    「未来の起源」
  • 放送日
    TBS: 2017年12月24日(日) 23:19 - 23:25
    (再放送)BS-TBS: 2017年12月31日(日) 20:54 - 21:00

問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

遷移金属ダイカルコゲナイドで一般原理を発見 ―トポロジカル電子状態の設計・制御に新たな道―

$
0
0

要旨

理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発計算物理研究ユニットのバハラミー・モハマド・サイード ユニットリーダー(東京大学 大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター 特任講師)、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授、英国セント・アンドルーズ大学のフィリップ・キング准教授らの国際共同研究グループは、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)[用語1]において、物質表面にスピンの向きがそろったトポロジカルな電子状態[用語2]や、物質内部全体にグラフェンと同様な質量ゼロのディラック電子状態[用語3]が発現する際の一般的な原理を発見しました。

電子状態を決める波動関数[用語4]にトポロジー(位相幾何学)を当てはめることで、「トポロジカル絶縁体」などが理論的に提唱され、実験による検証が進んできました。一方、これまでは個々の物質について、構成するさまざまな元素間や電子軌道間における運動量とエネルギーの関係を解析することで、トポロジカルな電子状態が出現する原因が理解されていました。しかし、戦略的にトポロジカル物質を創製するための一般化された方法論や明確な指針はありませんでした。

今回、国際共同研究グループは、経験や実験データを必要としない第一原理計算[用語5]で求めたTMDの電子状態をもとに一般原理を理論的に構築し、スピン状態までの詳しい電子構造を直接観察できる角度分解光電子分光法[用語6]によって実験的な検証を行いました。その結果、六つの異なる組成をもつTMDについて、トポロジカル表面電子状態や3次元ディラック電子状態が存在していることを実証しました。これは提唱した一般原理による理論予測が正しいことを示しています。

本成果は、2016年のノーベル物理学賞で活気づいているトポロジカル電子物質の研究分野に普遍的な基礎学理を与えるとともに、トポロジカル電子状態の制御や物質設計への重要で新たな指針になると期待できます。

本研究は、国際科学雑誌『Nature Materials』(11月27日付:日本時間11月28日)に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)「トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成(研究代表:川﨑雅司)」および「トポロジカル量子計算の基盤技術構築(研究代表:笹川崇男)」の一環として行われました。

共同研究グループ

  • 理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発計算物理研究ユニット

    ユニットリーダー バハラミー・モハマド・サイード(Bahramy Mohammad Saeed)

    (東京大学 大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター 特任講師)

  • 東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所

    准教授 笹川崇男

    大学院生(研究当時) 大川顕次郎

    大学院生(研究当時) 浅川瑞生

  • セント・アンドルーズ大学

    准教授 フィリップ・キング(Philip King)

背景

固体物質中におけるトポロジカルな電子状態とそれらの状態間の相転移は、2016年のノーベル物理学賞の対象となったことで大きな注目を集めています。トポロジー(位相幾何学)の本質は、穴の数やねじれの数といった連続変形させても消えない特徴で分類すると、その分類に従った共通の性質が素材の寸法や形などによらずに現れるというものです。

電子状態を決める波動関数についてこれを当てはめることで、トポロジカルな電子状態、「トポロジカル絶縁体」、「トポロジカル半金属」、「トポロジカル超伝導体」などが理論的に提唱され、実験による検証が進んできました。これらの固体物質中に現れる特殊な相対論的・量子力学的な粒子状態は、次世代の高性能な電子デバイスを実現するものとして注目されています。

一方、これまでは個々の物質について、構成するさまざまな元素間や電子軌道間における運動量とエネルギーの関係を解析することで、トポロジカルな電子状態が出現する原因が理解されていました。しかし、戦略的にトポロジカル物質を創製するための一般化された方法論や明確な指針はありませんでした。

研究手法と成果

国際共同研究グループは、バルクあるいは表面、または両者に共存した形で、質量ゼロのディラック電子状態を単一種類の電子軌道のみを使って創製できる一般的な原理を提唱しました。

これは、ひっくり返しても同じ結晶構造となる「空間反転対称性」と、ある角度で回転させても同じ結晶構造となる「回転対称性」との両方を持つ物質に適用できます。結晶中の電子は、運動量(運動する速度と方向)によってエネルギー状態が変化します。適切な元素を選んで適切な原子配置を行うと、相対論効果[用語7]を無視した場合には、回転対称軸に沿った運動量のどこかにおいて、同じ種類の電子軌道から作られる複数の電子状態を交差させる(二つの電子状態に同じ運動量とエネルギー状態をとらせる)ことが原理的に可能であることに注目しました。

異なる対称性に分類される波動関数同士の場合には、これに相対論効果が加わっても交差状態を維持できるため、結晶全体でグラフェン[3]と同様に質量を持たないディラック電子を生成できます。一方、同じ種類の対称性をもつ波動関数同士の場合には、相対論効果によって交差するはずだった運動量の点において、二つの電子状態にエネルギー差が生じます。このバルクに生じているエネルギー差を境に、偶関数か奇関数[用語8]かという波動関数の性質が入れ替わるため、トポロジカル絶縁体と同様にスピン偏極した(スピンの向きがそろった)電子状態が表面のみに出現することになります。

国際共同研究グループは、この一般原理を満たす現実の物質として、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)が理想的な条件を持っていることを発見しました。TMDは、遷移金属層を二つのカルコゲン(硫黄:S、セレン:Se、テルル:Te)層が上下に挟む層状構造で、面内に120度の回転対称性を持ちます。そして、カルコゲンに由来するp軌道[用語9]が、上下の層間で結合性や反結合性の電子状態を作っています。これらの電子状態が、回転対称軸である積層方向の運動量において、上記のルールに従って相対論効果の存在下で交差を維持したりエネルギー差を生成したりすることによって、バルクや表面にディラック電子状態を発生させます。

図1に示したのは遷移金属のパラジウム(Pd)とカルコゲンの一つTeからなるTMD(PdTe2)についての第一原理計算の結果です。積層の垂直方向(kz)と平行方向(ky)に運動量を変化させたときの波動関数が持つエネルギー状態を3次元的に描写しています。Teのp軌道から発生している電子状態は三つあります。低いエネルギーの電子状態は、kz軸上で中間エネルギーの電子状態と交差してバルクでディラック電子状態を発生します。

一方、高いエネルギーの電子状態は、相対論効果によって中間エネルギーの電子状態との間にエネルギー差を形成し、表面にはトポロジカルなスピン偏極したディラック電子状態を発生していることが確認できます。バルクのディラック電子と表面のトポロジカルなディラック電子が同時に発生するという点において、PdTe2は大変興味深い物質であるといえます。

遷移金属ダイカルコゲナイド(PdTe2)におけるバルクおよび表面の電子状態

図1. 遷移金属ダイカルコゲナイド(PdTe2)におけるバルクおよび表面の電子状態

積層の垂直方向(kz)と平行方向(ky)に運動量を変化させたときの波動関数が持つエネルギー状態を3次元的に描写した。テルルのp軌道から発生している電子状態は三つあり、低いエネルギーの電子状態は、kz軸上で中間エネルギーの電子状態と交差してバルクでディラック電子状態を発生する。一方、高いエネルギーの電子状態は、相対論効果によって中間エネルギーの電子状態との間にエネルギー差を形成し、表面にはトポロジカルなスピン偏極したディラック電子状態を発生している。

また、角度分解光電子分光法によってバルクおよび表面の電子構造を観察したところ、この理論予言が正しいことを確認できました。さらに、この一般原理がトポロジカル電子状態の制御や物質設計への指針になることの実証として、六つの異なる組成を持つTMDについて第一原理計算で電子状態を理論予測し、角度分解光電子分光で結果が正しいことも確認しました。

今後の期待

TMDは、遷移金属(周期表の第3~11族に属する元素)とカルコゲン(硫黄、セレン、テルル)の組合せによって30種類以上の化合物が安定に存在することが知られ、組成によって絶縁体から金属、超伝導体までのさまざまな物性を示すことが分かっています。このような多様性と応用性の高い物質群について、トポロジカルな電子状態を系統的に開拓する道筋を与えるものとして、今回提唱した一般原理は大きな波及効果を持つことが予想されます。

これにより、ナノエレクトロニクスをはじめとするTMDを電子デバイスに応用する研究に弾みがつくことが期待できます。また、物質を限定せずに原子軌道の種類と対称性をもとに一般原理を構築したという点においても、トポロジカル電子物質について普遍的な基礎学理を与えるものとして、今回の成果は重要な意味を持ちます。

用語説明

[用語1] 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD) : タングステン(W)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの遷移金属元素Mと、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)のいずれかのカルコゲン元素Xとが結合し、「MX2」の化学組成で表される層状構造を持つ化合物。組成によって絶縁体から半導体、金属、超伝導体まで幅広く電子状態が変化する。また、層状結晶をバラバラにした原子レベルの厚さのシートにしても安定で、積層時とは異なる電子状態が発現することもあり、有望な次世代の電子素子として注目されている。TMDはTransition Metal Dichalcodenidesの略。

[用語2] トポロジカルな電子状態 : 物質の組成や構造の詳細によらず電子波動関数が持つ特徴によって分類した際に、同じ分類の物質では類似した性質を持つ電子状態が必ず出現する場合があり、このことをトポロジカルな電子状態という。「トポロジカル絶縁体」は、その典型例で重元素由来の強い相対論効果によって波動関数がもつエネルギー状態の順番が逆転しているという特徴から、物質内部は電子が動けない絶縁体状態でありながら、その表面には必ず特殊な金属状態が出現する。「トポロジカル半金属」の場合は、ディラック電子状態が物質内部(バルク)全体で生じることから、3次元版のグラフェンと見なすことができる。さらに「トポロジカル超伝導体」では、粒子と反粒子とが同一になった電子状態が出現し、これを利用することで新しい原理に基づくエラーに強い量子計算が可能になるといわれている。

[用語3] ディラック電子状態 : ディラック電子状態はグラフェン(炭素が六角形の網の目状につながった原子1層のシート)やトポロジカル絶縁体の表面、トポロジカル半金属のバルク(物質内部全体)などで存在が確認されている電子状態。通常の固体中電子状態を記述するシュレーディンガー方程式ではなく、相対論的量子力学のディラック方程式に従い、質量を持たない粒子として振る舞う。電子の移動度が大きいため、電子デバイスへの応用が期待されている。

[用語4] 波動関数 : 粒子と波の両方の性質を持つ電子の振る舞いは量子力学に従う。電子状態はシュレーディンガーの波動方程式を解くことで求まり、位置と時間にどのように依存するかを示すのが波動関数である。

[用語5] 第一原理計算 : 量子力学の基本原理に基づいて、経験的なパラメータや実験データに頼らないで、物質の電子構造や電子物性などを計算する方法。モデルを構築することで、固体内部だけでなく表面の電子状態も計算可能であり、電子状態を作っている各元素の軌道成分や、スピン状態なども解析できる。

[用語6] 角度分解光電子分光法 : 真空中に置かれた単結晶試料の表面に、エネルギーの揃った強力な光を照射すると、電子が結晶から飛び出してくる(アインシュタインの光電効果)。飛び出した電子の運動方向とエネルギーを精密に分析することで、固体中と表面の電子構造を直接観察することができる。最近は、検出器の工夫によってスピン方向まで分析できるようになっている。

[用語7] 相対論効果 : 電子が光速に近い速度で運動する場合には、量子力学にも特殊相対性理論を考慮する必要がある。相対論的な電子の波動方程式としては、ディラック方程式が知られている。

[用語8] 偶関数、奇関数 : 変数にマイナスの値を代入してもプラスの場合と同じ関数の形になる場合、その関数を偶関数と呼ぶ。すなわち、 f(-x) = f(x) を満たす関数である。波動関数の場合では空間反転しても不変な関数が偶関数である。一方で、奇関数は f(-x) = -f(x) を満たし、波動関数では空間反転によって負符号がつく。

[用語9] p軌道 : 原子の電子軌道は、シュレーディンガー方程式の解としてs軌道、p軌道、d軌道と呼ばれる波動関数で表される。カルコゲンの最外殻の電子軌道はp軌道が構成している。

論文情報

掲載誌 :
Nature Materials
論文タイトル :
Ubiquitous Formation of Bulk Dirac Cones and Topological Surface States from a Single Orbital Manifold in Transition-metal Dichalcogenides
著者 :
M. S. Bahramy, O. J. Clark, B.-J. Yang, J. Feng, L. Bawden, J. M. Riley, I. Markovic, F. Mazzola, V. Sunko, D. Biswas, S. P. Cooil, M. Jorge, J. W. Wells, M. Leandersson, T. Balasubramanian, J. Fujii, I. Vobornik, J. Rault, T. K. Kim, M. Hoesch, K. Okawa, M. Asakawa, T. Sasagawa, T. Eknapakul, W. Meevasana, and P. D. C. King
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所

笹川崇男 准教授

E-mail : sasagawa@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5366 / Fax : 045-924-5366

機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

東京大学 大学院工学研究科 広報室

E-mail : kouhou@pr.t.u-tokyo.ac.jp
Tel : 03-5841-1790 / Fax : 03-5841-0529

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

半導体中の添加原子と周辺の3次元配列を観察

$
0
0

半導体中の添加原子と周辺の3次元配列を観察
―光電子ホログラフィーを用いた半導体素子評価技術を開発―

要点

  • これまでにない高倍率、高分解能を実現する光電子ホログラフィー法を開発
  • シリコン中に添加したヒ素原子が3種類の原子配列構造を取ることを確認
  • 添加原子の配列構造と電気的状態の関係性を明確化できることから半導体プロセス開発等に貢献

概要

東京工業大学の筒井一生教授ら、および公益財団法人 高輝度光科学研究センター(JASRI)の松下智裕主席研究員、木下豊彦主席研究員、室隆桂之主幹研究員、大阪大学の森川良忠教授、名古屋工業大学の林好一教授、奈良先端科学技術大学院大学の松井文彦准教授の研究グループは、シリコン(Si)結晶に添加した、ヒ素(As)原子周辺の3次元原子配列構造の観察に成功した。これは、結晶中の添加元素を選択的に10億倍まで拡大・観察できる、光電子ホログラフィー法および解析理論の開発による世界初の成果である。

Si中のAsは、単独で結晶格子位置を置換し電気的に活性な構造、Si空孔周りにAs原子が複数集まり電気的に不活性な構造、As周りのSiがランダムに配置する電気的に不活性な構造の3種類の構造を持つ。今回、これらの濃度比も明らかにした。この観察手法は、多くの半導体製造技術で課題となる添加元素の活性化率を高めるプロセスの技術開発などに役立つと考えられる。

なお、この光電子ホログラフィー実験は、大型放射光施設SPring-8[用語1]の軟X線固体分光ビームライン(BL25SU)で実施された。

本研究成果は、2017年11月17日付けの米国の科学誌「Nano Letters」に掲載された。

研究成果

近年大きく進展してきた光電子ホログラフィー技術(図1およびその説明キャプション参照)を用いて、これまで直接観察が困難だった半導体結晶中に添加した元素の3次元的な原子配列構造を明らかにした(図2)。実験は、半導体シリコン(Si)中のヒ素(As)を対象とし、大型放射光施設SPring-8のビームライン(BL25SU)で行った。試料は、Si集積回路チップ用のSiウエハ表面にイオン注入法でAsを打ち込み、熱処理によって電気的に活性化[用語2]させて作製した。

試料のSi結晶中に、Asが異なる3種類の化学結合状態で混在することは、既に放射光を用いた光電子分光法で定量的に見出されていた。今回、これら3種類の異なる状態の原子配列構造を光電子ホログラフィー法で初めて明らかにした。解析から得られた構造は、(1)As原子が単独でSi結晶の格子位置を占める格子置換構造、(2)Siの空孔の周りに格子置換As原子が2~4個一定距離で配列したクラスター構造、(3)As原子周りのSiの結晶格子がランダム化する混合体の構造があることがわかった。

また、電気的特性について(1)ではAsが半導体中に電子を放出する電気的に活性な状態、(2)と(3)ではAsは電気的に不活性な状態になっていることを確認した。

この構造解析の成功には、SPring-8のビームライン(BL25SU)を用いた高感度かつ高エネルギー分解能の角度分解光電子分光システムと、より高度なデータ解析法の開発が重要な役割を果たした。半導体に添加された元素は、濃度が高くとも数パーセント(%)オーダーであり、原子配列構造に依存する化学結合エネルギーの差(化学シフト)が0.1エレクトロンボルト(eV)オーダーと微小なためである。3種類の原子配列構造は、光電子ホログラフィーの構造解析に第一原理計算によるシミュレーションを組合せて決定した。この過程で、As原子を取り囲むSi原子との結合方向の歪みや、As原子周辺の局所的に大きな格子振動の存在も明らかになり、他の評価計測法では検出困難な新しい情報も得られた。

光電子ホログラフィー

図1. 光電子ホログラフィー


光のホログラフィーの場合、レーザーを物体に当てて物体波を作り出し、物体に当たっていない光と干渉させることで、ホログラムを作り出す。ホログラムに再生光をあてると、物体を3次元的に見ることができる。光電子ホログラフィーの場合も同様で、X線を試料に当てると、添加した原子から光電子が飛び出してくる。これは周囲の原子によって散乱されて散乱波を形成し、散乱されていない波と干渉してホログラムになる。このホログラムから計算によって添加剤の原子周囲の構造が3次元的に得られる。

再生されたシリコン(Si)の3次元的な原子像の模式図

図2. 再生されたシリコン(Si)の3次元的な原子像の模式図


Siの位置に置換した構造(置換)、As原子2つと空孔、ランダムな構造の3種類が観測された。Asが置換構造をとった場合は伝導電子を放出する電気的に活性な状態となる。

背景

半導体は様々な元素を添加することで、p型 n型という電気的に異なる性質が生じ、その抵抗率を大幅に変えることができる。添加した元素は、半導体中の電気伝導を担う電子(n型)や正孔(p型)を作り出すのに必要である。半導体デバイスの高性能化のためには、電子や正孔の濃度をできるだけ高めることが求められている。しかし、全ての添加元素が活性化して電子や正孔を作ることはなく、半導体に添加する元素の濃度を高くしても限界がある。この限界を引き上げるのが多くの半導体にとって重要なプロセス技術の開発だ。これまで添加元素の構造を原子レベルで精密に捉える評価手法が無かったことから、半導体に添加された原子の配列構造や挙動を直接把握しながら制御する技術の開発が求められていた。

過剰な高濃度の添加元素が半導体の結晶内でどのように存在しているかについては、これまで理論計算で様々なクラスター構造を形成して不活性化していることがわかっている。また、イオン散乱法や電子顕微鏡法でこれらの存在を部分的に、あるいは間接的に検出した報告はあるが、まだ直接的な観測手法はなかった。

研究の経緯

研究グループが用いた光電子ホログラフィーは、2005年にJASRIの松下主席研究員によってその解析理論が考案され、3次元的な原子配列を観察できる10億倍の倍率を持った顕微鏡を実現したものである。さらに今回はSPring-8のビームライン(BL25SU)に導入された高感度かつ高エネルギー分解能の角度分解光電子分光システムによって、添加元素の化学結合状態の違いを微小なエネルギーの差で識別できるようになった。この基礎的な技術を背景に、東工大の筒井教授らのグループがAsを添加したSi結晶の試料を作製、阪大の森川教授による第一原理計算も組み合わせて系統的な解析を行った結果、今回の成果が得られた。

今後の展開

Si中のAsの原子配列構造と電気的活性化状態が“見える”ようになったことから、様々なプロセス条件で、この構造がどのように変化するかその挙動を観察しながら、不活性構造を抑制して活性な構造の濃度を上げるプロセスの研究が可能になる。この手法は、他の添加元素、さらには最近非常に重要度が高くなっている炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドなどの広バンドギャップ半導体にも拡張でき、新材料のデバイス化技術の開発にも貢献できると考えられる。また、Si技術の周辺でもデバイスの極微細化にともなってその構造の一部にシリコンゲルマニウム(SiGe)が導入されているが、SiGe中では添加元素の活性化率が低減する等の新たな課題が出て来ており、これらの分野でも今回の技術が用いられることが期待される。

今回の研究は、進化した光電子ホログラフィー法が、半導体のプロセス技術開発の新たな手法になる可能性を示している。

本研究は、平成26年度に採択された、科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型)「3D活性サイト科学」(領域代表:奈良先端科学技術大学院大学 大門寛教授)での分野融合的な連携研究の成果である。

本研究は、以下の助成、支援を受けて実施された。

科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型)「3D活性サイト科学」(領域代表:奈良先端科学技術大学院大学 大門寛教授)の計画研究課題として、

  • 「半導体中不純物の3D構造制御と低損失・高効率デバイスの開発」(研究代表 筒井一生)
  • 「データ取得と3D原子イメージ再生アルゴリズムの研究」(研究代表 松下智裕)
  • 「顕微光電子ホログラフィーによる活性サイトの時間分解3D原子イメージング」(研究代表 木下豊彦)
  • 「第一原理シミュレーションによる活性サイト構造・機能の解明とデザイン」(研究代表 森川良忠)
  • 「蛍光X線・中性子線ホログラフィーによるドープ原子3Dイメージング」(研究代表 林好一)

文部科学省、光・量子融合連携研究開発プログラム「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」(研究代表者:東京大学 物性研究所 辛埴教授)の再委託業務課題として、

「時間分解・マイクロビームラインの建設」(業務主任者:高輝度光科学研究センター 木下豊彦)

用語説明

[用語1] 大型放射光施設SPring-8 : 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その運転と利用者支援などは高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

[用語2] 活性化 : 半導体中に特定の元素を添加することで、その原子から電子あるいは正孔(電子が抜けた後の孔のこと)が放出されて、半導体中の電気伝導を担うようになる。添加した元素が電子や正孔を放出できる状態にあるものを電気的に活性化した状態という。一方、電子や正孔を放出できない状態は電気的に不活性な状態になる。デバイスへの応用という面では、活性な元素の濃度を上げ、不活性な元素の濃度は下げるのが基本となる。

論文情報

掲載誌 :
Nano Letters, vol.17, pp.7533-7538, (2017).
論文タイトル :
Individual Atomic Imaging of Multiple Dopant Sites in As-doped Si Using Spectro-photoelectron Holography
著者 :
Kazuo Tsutsui, Tomohiro Matsushita, Kotaro Natori, Takayuki Muro, Yoshitada Morikawa, Takuya Hoshii, Kuniyuki Kakushima, Hitoshi Wakabayashi, Kouichi Hayashi, Fumihiko Matsui, and Toyohiko Kinoshita
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所

教授 筒井一生

E-mail : ktsutsui@ep.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5462 / Fax : 045-924-5462

高輝度光科学研究センター情報処理推進室

室長 松下智裕

E-mail : matusita@spring8.or.jp
Tel : 0791-58-1042

大阪大学 大学院工学研究科

教授 森川良忠

E-mail : morikawa@prec.eng.osaka-u.ac.jp
Tel : 06-6879-7288

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科

准教授 松井文彦

E-mail : matui@ms.naist.jp
Tel : 0743-72-6017

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

(SPring-8/SACLAに関すること)

公益財団法人高輝度光科学研究センター

利用推進部 普及情報課

E-mail : kouhou@spring8.or.jp
Tel : 0791-58-2785 / Fax : 0791-58-2786

大阪大学 工学研究科 総務課評価・広報係

E-mail : kou-soumu-hyoukakouhou@office.osaka-u.ac.jp
Tel : 06-6879-7231 / Fax : 06-6879-7210

名古屋工業大学 企画広報課 広報室

E-mail : pr@adm.nitech.ac.jp
Tel : 052-735-5647 / Fax : 052-735-5009

奈良先端科学技術大学院大学 企画総務課 広報渉外係

E-mail : s-kikaku@ad.naist.jp
Tel : 0743-72-5026 / Fax : 0743-72-5011


日本学術振興会が本学の科研費審査委員4名を表彰

$
0
0

本学教員4名が独立行政法人日本学術振興会(JSPS)より平成29年度科研費(科学研究費助成事業)審査委員の表彰を受け、12月12日に三島良直学長から表彰状が手渡されました。

今回表彰された教員は次のとおりです。

  • 理学院 上妻幹旺教授
  • 理学院 平山博之教授
  • 工学院 梶川浩太郎教授
  • 工学院 山田明教授

審査委員の表彰とは

日本学術振興会は、学術研究の振興を目的とした科研費の業務を行っています。

科研費の配分審査は、専門的見地から第1段審査(書面審査)と第2段審査(合議審査)の2段階で行われますが、公正・公平な審査が行わるよう、審査の質を高めていくことは大変重要です。そのため、同会設置の学術システム研究センターにおいて、審査終了後、審査の検証を行い、その結果を翌年度の審査委員の選考に適切に反映しています。

さらに平成20年度からは、検証結果に基づき、第2段審査(合議審査)に有意義な審査意見を付した第1段審査(書面審査)委員を選考し、表彰することとされています。平成29年度は約5,300名の第1段審査(書面審査)委員の中から255名が表彰されました。

学長らとの記念撮影

学長らとの記念撮影

お問い合わせ先

研究企画課研究推進グループ

E-mail : efund@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3806

平成29年度学内ソフトボール大会を実施、優勝は学務部連合

$
0
0

11月26日、教職員を中心とした学内対抗のソフトボール大会を実施しました。チームは主に部署ごとの有志で結成され、10チームによる激闘の末、本年は学務部連合が優勝しました。

教職員による学内ソフトボール大会は、2011年の「事務局パワーアップアクションプラン」の1つとして、教職員の親睦を深め、異なる職種・世代等の交流を促進するとともに心身のリフレッシュを図ることを目的として始まりました。今年度も本学教職員にとって晩秋の風物詩となりつつあるソフトボール大会開催を望む声が多く、有志参加という形での本大会を企画したところ、例年以上の盛況ぶりで研究室からの参加を含む10チームの申込みがありました。

施設運営部有志のFront Field Facility(フロントフィールドファシリティ)対 財務部の試合

施設運営部有志のFront Field Facility(フロントフィールドファシリティ)対 財務部の試合

参加者はこの大会のために、数週間ほど前から昼休憩を使ってキャッチボールを行ったり、練習試合で実践感覚をつかんだりして練習を重ねました。親睦を深め心身をリフレッシュすることを目的としつつも、試合は真剣勝負で行われ、年々レベルも上がってきています。

三島良直学長による試打式に続いて、各チームは優勝を目指して日ごろの成果をぶつけ合いました。

開会式に集まる各チーム(左)挨拶をする三島良直学長(右)

開会式に集まる各チーム(左)挨拶をする三島良直学長(右)

開会式に集まる各チーム(左)挨拶をする三島良直学長(右)

試合中の様子

試合中の様子

試合中の様子

試合中の様子

試合中の様子

決勝戦は全勝で勝ち上がってきた学務部連合と、敗者復活枠から返り咲きを果たした財務部の対決になりました。グラウンドで多くのギャラリーが見守る中、気の抜けない展開が続きました。最後は学務部連合が連続得点のチャンスを決め、7対3で優勝を飾りました。

決勝戦のスコアと優勝杯授与

決勝戦のスコアと優勝杯授与

決勝戦のスコアと優勝杯授与

また大会後には懇親会が開催され、大会での健闘を讃え合いました。試合中はもちろん、当日に至るまでの練習も含め、ソフトボール大会を通じてチーム内の結束が強くなり、お互いをより深く理解することで日常の円滑な業務にもつながっています。

役員会トピックス:東京工業大学と蔵前工業会が東工大ベンチャー育成のための協働事業に係る覚書を締結

$
0
0

役員会は、東工大における最高意思決定機関です。東工大では毎月2回役員会を開催し、大学の組織、教育、研究などについて、審議し決定しています。

12月15日の会議で承認された、意欲的で新しい取り組みについて、紹介します。

12月15日 役員会

主な審議事項等

  • 東京工業大学と蔵前工業会との東工大ベンチャー育成のための協働事業に係る覚書の締結について

  • 科学技術創成研究院先進エネルギー国際研究センター及び社会情報流通基盤研究センターの設置期間延長について

  • 第2回Tokyo Techアドバイザリーボードミーティング開催報告

トピック:東京工業大学と蔵前工業会が東工大ベンチャー育成のための協働事業に係る覚書を締結

本学は、一般社団法人蔵前工業会と東工大アントレプレナーによるベンチャー育成のための協働事業に係る覚書を締結することとなりました。

蔵前工業会は、本学卒業生の同窓会です。本学および本学の前身校の卒業生や教職員などの関係者により組織され、会員相互の親睦をはかるとともに、科学技術および工業の発展に資することを目的としています。

今回の締結を受け、本学と蔵前工業会は、東工大アントレプレナーとして起業を志す者に対する創業支援・育成を始めとする、ベンチャー育成のための協働事業を実施します。これにより、東工大関連ベンチャーの創出と成功の実現、本学の研究力強化と国際協働、社会への実践的叡智の還元に寄与することが期待されます。

高温で安定化する新しいダイヤモンド量子発光体の作製に成功 ―量子ネットワークへの応用に期待―

$
0
0

研究成果のポイント

  • ダイヤモンド結晶内でスズ(Sn)と空孔(V)[用語1]からなるSnVカラーセンターを発見
  • 2,000℃を超える高温高圧条件で加熱処理することにより、選択的にSnVセンターのみを形成
  • 長い記憶時間を有する量子メモリーなど量子ネットワークへの応用に期待

概要

東京工業大学 工学院 電気電子系の岩崎孝之助教と波多野睦子教授、産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターの宮本良之研究チーム長、物質・材料研究機構の谷口尚グループリーダー、ドイツ・ウルム大学のフェドー・イェレツコ(Fedor Jelezko)教授らの共同研究グループは、スズ(Sn)を導入したダイヤモンドを高温高圧下で加熱処理し、スズと空孔(V)からなる新しい発光源(カラーセンター[用語2])の形成に成功した。

イオン注入法[用語3]により、スズを導入したダイヤモンドを高温高圧下に置き、スズと空孔が結びついたスズ―空孔(SnV)センターを作製。理論計算や低温計測により、SnVセンターは従来のカラーセンターの課題をすべて解決する可能性があることを明らかにした。今後、長いスピンコヒーレンス時間[用語4]を実証することで、長距離量子ネットワーク通信に必要な量子メモリーへの応用が期待される。

安定な単一光子源として機能するダイヤモンド中のカラーセンターは、量子情報ネットワークへの応用が期待されている。だが、これまでに使用されていたカラーセンターは小さな発光強度、外部電界ノイズによる不安定な発光、さらに短いスピンコヒーレンス時間など問題を抱えていた。

本研究成果は2017年12月22日(米国時間)、米国物理学会の「Physical Review Letters(フィジカル・レビュー・レターズ)」に掲載された。

研究の背景

固体物質中に形成される量子発光体は量子メモリーなど量子情報ネットワーク応用にとって有望な系として研究が進められている。しかし、これまで報告されてきた半導体量子ドットやダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センターは、それぞれマイクロ秒程度に制限されたスピンコヒーレンス時間や全発光強度のうち量子光源として利用可能なゼロフォノン線[用語5]からの発光が数パーセントのみでありその発光強度が小さいなどの問題があった。ごく最近、ダイヤモンド中のカラーセンターのひとつであるシリコン-空孔(SiV)センターを100 mKまで冷やすことでスピンコヒーレンス時間10 ms(ミリ秒)が達成されたが、複雑かつ大規模な希釈冷凍機が必要であり、冷却が容易となるK程度の高い温度においては量子ネットワークに応用できるようなミリ秒以上の長いスピンコヒーレンス時間の達成が困難であるという問題があった。

研究成果

今回の研究では、長いスピンコヒーレンス時間を達成するためのアプローチとして、スピンコヒーレンス時間を決定する重要な物理量である基底状態分裂[用語6]の大きい新しいカラーセンターをダイヤモンド内に作製することを試みた。これまでのシリコンやゲルマニウム(Ge)に代えて重元素のスズをダイヤモンドに導入し、高温高圧状態(7.7 GPa=ギガパスカル、 2,100℃)で加熱処理することにより、スズと空孔が結びついたスズ-空孔(SnV)センターを形成した。

量子力学の基本原理に基づいた第一原理計算[用語7]から、ダイヤモンド中に取り込まれた大きなスズ原子は格子間位置に存在し、2つの空孔に挟まれた構造をしていることがわかった。この原子配置は電界などの外部ノイズの影響を受けにくく、安定した発光波長を得ることができる。実験から、SnVセンターは室温において波長619ナノメートル(nm)に鋭いゼロフォノン線をもって発光することがわかった。単一発光源として機能させることにも成功し、その発光強度が従来のカラーセンター(NV、SiV)よりも大きいことを確かめた。

冷却下での計測から、このゼロフォノン線は4つに分裂し、基底状態分裂がSiV、 GeVセンターよりも大きな約850 GHzを有することがわかった。この基底状態分裂はSiVの48 GHzよりも桁違いに大きいため、メモリー時間を短くする原因となる結晶格子振動の影響を大幅に減少させることができる。それにより、2 K程度で長いスピンコヒーレンス時間(ミリ秒)の達成が予測される。SiVで不可欠な希釈冷凍機を必要とせずに、量子ネットワーク中の量子メモリーとしての利用が期待でき、この発見は長いスピンコヒーレンス時間を有する光-物質量子インターフェースの確立へのブレイクスルーとなる可能性を有している。

ダイヤモンド中のSnVセンター。(左)IV族元素の周期表。(中央)高温高圧加熱処理後のSnVセンターからの発光スペクトル。(右)SnVセンターの原子レベル構造。赤丸と黒丸はそれぞれスズ原子と炭素原子。
図1.
ダイヤモンド中のSnVセンター。(左)IV族元素の周期表。(中央)高温高圧加熱処理後のSnVセンターからの発光スペクトル。(右)SnVセンターの原子レベル構造。赤丸と黒丸はそれぞれスズ原子と炭素原子。
SnVセンターの微細構造およびエネルギー分裂幅。基底状態はスピン-軌道相互作用により分裂する。大きな元素ほどスピン‐軌道相互作用が大きくなるために分裂幅も大きくなる。
図2.
SnVセンターの微細構造およびエネルギー分裂幅。基底状態はスピン‐軌道相互作用により分裂する。大きな元素ほどスピン-軌道相互作用が大きくなるために分裂幅も大きくなる。

今後の展開

SnVセンターはこれまで研究されてきたダイヤモンド中のカラーセンターの欠点である低発光強度、不安定な発光波長位置、短スピンコヒーレンス時間をすべて解決する可能性を有している。長いスピンコヒーレンス時間の計測を通して、長距離量子ネットワーク構築のための量子メモリーとしての応用が期待できる。また、量子センサーとして機能する可能性も持っており、センサー・単一光子発光源・メモリーなど様々な量子光学素子としての応用展開が期待できる。

本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構のさきがけ・研究領域「光の極限制御・積極利用と新分野開拓」(IV族元素を用いた固体量子光源エンジニアリング)およびCREST・研究領域「素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロ ニクスの創成」(炭素系ナノエレクトロニクスに基づく革新的な生体磁気計測システムの創出)の支援を受けて行われました。

用語説明

[用語1] 空孔 : 固体結晶において、本来あるべき原子が抜けて孔となっている格子位置のこと。ダイヤモンドの場合は、炭素原子が格子位置からはずれることで空孔が発生する。空孔のVはベーカンシー(Vacancy)の頭文字。

[用語2] カラーセンター : ダイヤモンドなどの固体物質中に形成される欠陥構造で、光の吸収や外部励起による発光を示す。欠陥構造が孤立して存在し、単一光子源として機能するものを単一カラーセンターと呼ぶ。

[用語3] イオン注入法 : イオン化した目的元素を加速することによって固体内に導入する手法。

[用語4] スピンコヒーレンス時間 : スピンに保存された量子情報が消失してしまう時間。異なるスピン状態間の位相関係が外部からの撹乱により乱されることにより起こる。

[用語5] ゼロフォノン線 : 発光においてフォノンの遷移を伴わないもの。

[用語6] 基底状態分裂 : スピンと軌道の相互作用により生じるエネルギーの分裂。小さな分裂であるため、励起状態分裂も総称して微細構造とも呼ばれる。

[用語7] 第一原理計算 : 原子間の相互作用を量子力学の基本原理にのっとって電子の量子状態から計算し、物質の性質や挙動を調べる手法。実験に基づかないため、非経験的電子状態計算ともよばれる。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Letters
論文タイトル :
Tin-Vacancy Quantum Emitters in Diamond
著者 :
Takayuki Iwasaki, Yoshiyuki Miyamoto, Takashi Taniguchi, Petr Siyushev, Mathias H. Metsch, Fedor Jelezko, Mutsuko Hatano
DOI :

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

東京工業大学 工学院 電気電子系

助教 岩崎孝之

E-mail : iwasaki.t.aj@m.titech.ac.jp

教授 波多野睦子

E-mail : hatano.m.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2169 / Fax : 03-5734-2169

JST事業に関すること

科学技術振興機構 戦略研究推進部

中村幹

E-mail : presto@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3531 / Fax : 03-3222-2066

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

イスラエルのヘブライ大学アシェル・コーヘン学長が東工大を訪問

$
0
0

(左から)大竹副学長、シャグリール副学長、コーヘン学長、三島学長、ロゼン文化・科学担当官

(左から)大竹副学長、シャグリール副学長、コーヘン学長、三島学長、ロゼン文化・科学担当官

11月28日、イスラエルのヘブライ大学のアシェル・コーヘン学長、オロン・シャグリール国際担当副学長、駐日イスラエル大使館のアリエ・ロゼン文化・科学技術担当官ほか2名が本学を訪問し、三島良直学長、大竹尚登副学長(研究企画担当)と懇談を行いました。

今回のコーヘン学長らの本学訪問は、両大学の将来的な連携について、意見交換を行うことを目的としています。

両学長による大学概要紹介の後、大学の国際化や研究体制、研究所の運営資金、技術移転や産学連携への両大学の取り組み等について、出席者は熱心に意見交換を行いました。

コーヘン学長は、海外の大学への留学や研究をより多くの学生に経験させたいと述べ、本学の国際大学院(IGP:International Graduate Program)や、2016年4月に開講した、英語による学士課程プログラム(GSEP:Global Scientists and Engineers Program)に高い関心を示しました。三島学長は、東工大の国際化への取り組みについて、修士課程の英語による授業の拡充などを例に挙げて説明を行い、その後、コーヘン学長らと今後の両学の学生や研究者の交流の可能性について、意見を交わしました。

懇談の様子

懇談の様子

懇談の最後には、ヘブライ大学に縁のあるアルバート・アインシュタイン博士の本がコーヘン学長から贈られました。三島学長は、アインシュタイン博士が、1922年に本学を訪問したエピソードを話すなど、懇談は終始和やかな雰囲気で行われました。

ヘブライ大学は、1925年にイスラエルのエルサレムに設立された国立総合大学です。6つのキャンパスで23,000人の学生が学んでいます。8人のノーベル賞受賞者を含め、優秀な研究者を多数輩出しています。

東工大の研究力を紹介するパンフレット「Tokyo Tech Research」発行

$
0
0

東工大の研究を紹介するパンフレット「Tokyo Tech Research(東工大の研究力) 2017-2018」(日英版)を発行しました。

最新の研究ハイライト、リサーチマップ、科学技術創成研究院や各学院等の研究分野や研究への取り組みを紹介しています。

Tokyo Tech Research 2017 - 2018

Tokyo Tech Research 2017 - 2018
Tokyo Tech Research 2017 - 2018

CONTENTS

東工大の研究概要

リサーチマップ2017-2018

研究ハイライト

研究院、学院等

ライブラリ

P2.3 東工大の研究
P2.3 東工大の研究

P4  TOKYO TECH RESEARCH MAP
P4  TOKYO TECH RESEARCH MAP

学内の配布場所や、郵送での請求方法については、以下のページをご確認ください。

お問い合わせ先

研究・産学連携本部 国際研究広報担当

E-mail : ru.staff@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3794

東工大―目黒区連携講座「東工大キャンパスの歴史とツアー」開催報告

$
0
0

11月18日、大岡山キャンパスにて、東京工業大学博物館と目黒区教育委員会による連携講座が開催されました。2010年度に始まり通算8回目となる今回は、東京工業大学博物館の遠藤康一特任講師(建築学)のナビゲートによる「東工大キャンパスの歴史とツアー」です。多数の応募の中から抽選で、26名の目黒区在住、在勤の方々が参加しました。

本館(中庭)見学

本館(中庭)見学

参加者は東工大蔵前会館(TTF)1階に集合し、博物館副館長の亀井宏行教授、目黒区教育委員会の松田ひとみ氏の挨拶に続き、遠藤特任講師によるレクチャーが始まりました。TTF、附属図書館(通称、チーズケーキ)、70周年記念講堂、本館前プロムナード(ウッドデッキ)、本館(時計台および中庭講義棟)、西1号館(旧分析化学教室)、百年記念館※の順にめぐりながら、それぞれの建物の特徴やキャンパスの形成についての解説がありました。坂本一成名誉教授が設計したTTFには、駅前とキャンパスをつなぐもう一つのゲートの役割も込められているという説明に、近隣在住の男性参加者からは「普段毎日のように散歩で通っているけれど、知らなかったのでまた見方が変わった」との声があがりました。

東工大の歴史の講義をする遠藤特任講師
東工大の歴史の講義をする遠藤特任講師

校内マップを手にする参加者のみなさん
校内マップを手にする参加者のみなさん

70周年記念講堂ではスライドを用いたミニレクチャーが行われました。「近代日本の工業を担う指導者・技術者の育成」を掲げ、現在の台東区蔵前に設立された東京職工学校(後の東京工業学校、東京高等工業学校)のキャンパスと、関東大震災を機に大岡山に移り、地域と共に発展してきた現在までの本学の姿について、解説がありました。蔵前時代のキャンパス図が紹介された時には、参加者のみなさんは身を乗り出して聞き入っていました。また屋外のツアーでは、写真を撮りながらそれぞれの建物の由来や特徴に関する解説に耳を傾け、それぞれが目と耳からキャンパスを体感していました。 今回のツアーでは、70周年記念講堂や西1号館(旧分析化学教室)の人気が高く、「タイル貼りが素敵」「他の建物とは違った趣がある」との声から、歴史的な建物への関心の高さが伺えました。

講座後アンケートには「今日の説明内容は、目黒に70年近く住んでいる者として、とても良かった。いつも桜を見るだけでしたから。小・中学生にも役立つと思う」「東工大の歴史がよくわかった。建築デザインのことも勉強になった」「今まで、東京工業大学の歴史にあまり興味がなかったけれど、この講座に参加して、今まで歩いていた所が昔の人の努力と情熱によってできたものだと知り、改めて感心しました。」と、近隣在住のみなさんから東工大への親近感を感じたとの声が多く寄せられました。

現在、空調改修工事の為休館中(2018年6月末開館予定)

参加者の方々が選ぶキャンパスのおすすめスポットをまとめた「みんなでつくるキャンパスマップ」

参加者の方々が選ぶキャンパスのおすすめスポットをまとめた「みんなでつくるキャンパスマップ」

お問い合わせ先

東京工業大学博物館

E-mail : centjim@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3340

12月27日14:30 本文中に誤りがあったため、修正しました。

1月の学内イベント情報

$
0
0

1月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

第6回 ELSI インターナショナル シンポジウム “Building bridges from Earth to Life”

第6回 ELSI インターナショナル シンポジウム "Building bridges from Earth to Life";

国際シンポジウムでは惑星化学から生命起源の研究まで、幅広い分野の研究者が集まり、最先端の研究成果を発表、議論します。一般講演会ではエリザベス タスカー (国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と圦元尚義 (北海道大学)が登壇し、それぞれ “危険な宇宙:奇妙な太陽系外惑星の発見ツアー”、 “ここまで分かった「はやぶさ」での科学、ただいま進行中「はやぶさ2」” というタイトルで、太陽系外惑星やJAXA宇宙航空研究開発機構の小惑星探査ミッションの最新の研究成果についてわかりやすく講演します。

日時

2018年1月9日(火) - 1月11日(木)

1月9日:講演および質疑応答、一般講演会(開場18:30、 開会19:00)

1月10日:講演および質疑応答、ポスター発表

1月11日:講演および質疑応答

※詳細は公式サイトouterをご覧ください。

会場
参加費
無料
対象
シンポジウムは研究者および大学院生対象、1月9日の講演会は広く一般向け
申込
シンポジウムの事前参加登録は終了、一般講演会は事前参加登録が必要(先着100名)
通訳の有無
1月9日の一般講演会のみ日英同時通訳あり

2017年度 東京工業大学 廃止措置技術・人材育成フォーラム

2017年度 東京工業大学 廃止措置技術・人材育成フォーラム

東京工業大学先導原子力研究所では、2014年度より文部科学省英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業廃止措置研究・人材育成推進事業「廃止措置工学高度人材育成と基盤研究の深化」を開始いたしました。本事業では、廃止措置に不可欠な人材の育成と基盤的な研究の推進により大学として福島第一原子力発電所の事故収束に貢献することを目標としております。2014年10月にプログラムを開始してから種々の人材育成活動、研究活動に取り組んでまいりました。ついては、東工大での取り組みとその成果についてご報告を行い多方面からご意見を頂くことを目的としたフォーラムを企画いたしました。

日時
2018年1月10日(水) 09:00 - 17:30、情報交換会17:45 - 19:00
会場

大岡山キャンパス 大岡山西8号館 10階大会議室

情報交換会:東工大生協第1食堂

参加費
無料、会費:3,000円(社会人)、1,000円(学生)
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

CERI寄附公開講座「ゴム・プラスチックの安全、安心―身の回りから先端科学まで―」(2017年後期)

CERI寄附公開講座「ゴム・プラスチックの安全、安心―身の回りから先端科学まで―」(2017年後期)

本講座では前半の講義として、私たちの身の回りにある化学品を含むゴムやプラスチックとその製品の安全・安心に関する情報とやさしい科学を、一般の方にもわかりやすく紹介します。更に後半の講義では、少し高度な内容として、最先端の安全性評価技術、劣化と寿命予測技術、耐性向上技術、高性能・高強度化技術・材料に関する科学を紹介し、将来の安心・安全な材料・製品設計の基礎を学べるようにします。

日時
1.
2017年9月27日、10月4日、10月11日、10月18日、10月25日、11月1日、11月8日、11月15日
2.
2017年11月29日、12月6日、12月13日、12月20日、
2018年1月10日、1月17日、1月24日、1月31日

※各日 10:45 - 12:15(全て水曜)

会場
参加費
無料
対象
一般
申込
受付終了

東京工業大学 社会人アカデミー主催 講座「コーヒーの科学」(2017)

東京工業大学 社会人アカデミー主催 講座「コーヒーの科学」(2017)

おいしい「コーヒー」はどのようにできあがるのか。

各種メディアでも話題のイグ・ノーベル賞受賞、廣瀬講師ほか7名の講師が、生産から焙煎・抽出の方法、さらには文化や健康などさまざまな観点から、初めての方にもわかりやすく解説します。

日時
2018年1月20日、1月27日、2月3日、2月10日、2月17日(各回土曜日 10:30 - 16:10、2月17日のみ10:30 - 14:30)
会場

1月20日、2月10日、2月17日:東京工業大学 田町キャンパス キャンパスイノベーションセンターCIC410教室

1月27日、2月3日:STOCK 2階

参加費
48,228円(税込み)
対象
一般
申込
必要

エレクトライドに関するJST-ACCELシンポジウム ―触媒とOLED―

エレクトライドに関するJST-ACCELシンポジウム ―触媒とOLED―

“エレクトライドの物質科学と応用展開”プロジェクト(代表研究者:細野秀雄)はJST-ACCELプログラムの第一号課題として2013年に始まりました。プロジェクトでは、エレクトライドという物質コンセプトの拡 張を図りながら、これまで明らかにしてきたユニークな物性を活用した、応用の可能性を集中的に研究してまいりました。

来年3月のプロジェクト終了を前に「エレクトライドに関するJST-ACCELシンポジウム ―触媒とOLED―」を開催いたします。ご関心ある皆様のご来場をお待ち申し上げております。

日時
2018年1月20日(土) 10:30 - 17:00 10:00受付開始
会場
参加費

無料

技術情報交換会は参加費2,000円(事前登録必要、参加費は当日シンポジウム会場受付にて申し受け)

対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

公開講座「Gateway to Science~宇宙を愛する君たちへ~」

公開講座「Gateway to Science~宇宙を愛する君たちへ~」

東京工業大学国際フロンティア理工学教育プログラムが提案する新しい科学講座「Gateway to Science」。この講座は、日本の科学・技術の未来を担う中高生に科学研究の世界を分かりやすく説明し、その世界への第一歩を踏み出すきっかけになるよう企画しました。第一回は「宇宙を愛する君たちへ」と題し、国際宇宙ステーションの仕組みや展望、実際に宇宙ステーションで行われたメダカへの実験結果を通して、私たちの骨と無重力の不思議な関係について、分析装置を使用し、体感しながら学んでいただきたいと思います。

日時
2018年1月20日(土)10:00 - 12:00 、14:00 - 16:00(午前と午後の内容は同じです)
会場
参加費
無料
対象
高校生・中学生・小学生高学年及び保護者の方
申込
必要

2018 EON-ELSI ウィンタースクール in Earth-Life Science

2018 EON-ELSI ウィンタースクール in Earth-Life Science

地球と生命の起源に関連する学際的な研究の基礎を学ぶための2週間のプログラムで、若手・異分野研究者間の交流を促進するものです。関連分野の講義・チュートリアルのほか、伊豆・箱根方面での4日間の野外見学があります。

日時

2018年1月22日(月) - 2月2日(金)

1月22日:オリエンテーション、講義、ポスター発表

1月22 - 26日:野外見学

1月29 - 2月2日:講義およびチュートリアル

※詳細は公式サイトouterをご覧ください。

会場
東京工業大学 地球生命研究所outer(講義など)箱根、伊豆半島(野外見学)
参加費
無料
対象
大学院生および若手ポスドク
申込
受付終了 通訳の有無:無

第2回 超スマート社会エンジニアリング検討フォーラム

第2回 超スマート社会エンジニアリング検討フォーラム

本フォーラムでは、産業界の代表の方に超スマート社会に対する各社のビジョンと東工大への期待をご講演頂き、今後東工大が進むべき教育や研究および社会連携の方向性を模索します。

日時
2018年1月23日(火)16:20 - 19:00
会場
参加費

無料

技術情報交換会は参加費2,000円(事前登録必要、参加費は当日シンポジウム会場受付にて申し受け)

対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要

一部締め切りを過ぎているものがございますが、取材をご希望の場合はご連絡ください。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大ボート部 第58回全日本新人選手権大会で8位入賞

$
0
0

東京工業大学 端艇部(ボート部)が、11月10日から12日に埼玉県戸田市の戸田ボートコースで開催された、公益社団法人日本ボート協会主催 第58回全日本新人選手権大会に出場し、男子舵手付きフォアで8位に入賞しました。

試合中のメンバー

試合中のメンバー

全日本新人選手権大会は、出漕資格が、1995年4月2日以降に出生した者で、3つの資格((1)中学生及び高校生、(2)一般団体に属し、2015年度以降に高校を卒業した者、または2012年度以降に中学を卒業した者、(3)大学団体に属し、2016年度以降に大学に入学した者)のいずれかに該当する者等となっている全国大会です。今大会の男子舵手付きフォアには19チーム(大学)の1、2年生の選手が出場しました。

舵手付きフォアは、両手で1本のオールを持って漕ぐスウィープタイプのボートで、漕手が4人、舵手(コックス)1人の1チーム5人により構成される競技です。

入賞したメンバーを紹介します。

  • 井上幸大さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)
  • 村田翔太朗さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)
  • 奥村直仁さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)
  • 服部広暉さん(工学院 機械系 学士課程2年)
  • 植田紳之介さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)

井上幸大さんからのコメント

今回は当初の目標である全日本新人選手権での8位入賞を達成することができて嬉しいです。まだまだ課題は残っているので、日々成長して来年はさらにいい結果が出せるように頑張ります。

賞状を手にする入賞メンバー(左から奥村さん、村田さん、井上さん、植田さん、服部さん)

賞状を手にする入賞メンバー(左から奥村さん、村田さん、井上さん、植田さん、服部さん)

東工大基金

端艇部の活動は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

東京工業大学端艇部

E-mail : titboat@green.ocn.ne.jp
Tel : 048-442-5581

核分裂時の原子核形状を把握するモデルを開発 ―核変換システム高度化や核分裂メカニズムの全容解明に道―

$
0
0

要点

  • 低励起エネルギーウランの核分裂の特徴を良く記述する動力学モデルを構築
  • ウラン核分裂で放出される熱エネルギーの詳細な再現に世界で初めて成功
  • マイナーアクチノイドの存在割合が多い原子炉の動特性予測精度向上に貢献

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の石塚知香子助教、マーク・ デニス・ウサング博士課程学生、フェディエール・イヴァニューク特任教授、千葉敏教授はフランクフルト大学のヨアヒム・マルーン教授らと共同で、核分裂で生じる2つの原子核の形状を独立の変数を用いて正確に記述できる動力学モデル[用語1]「4次元ランジュバン模型」を開発した。このモデルは他の理論模型とは異なり、特別な仮定を必要とせずに核分裂片の運動エネルギーを高精度に再現できる。

開発した動力学モデルは崩壊熱[用語2]遅発中性子[用語3]数のような原子力システムの安全性に直結する核分裂片の質量収率分布だけでなく、既存モデルでは不可能だった核分裂片の持つ運動エネルギーについても高精度に再現できる。同モデルで得られた核分裂片の変形度には即発中性子[用語4]との間に強い相関が見つかり、長年謎とされてきた核分裂片からの即発中性子放出メカニズムが原子核の変形の仕方によるものであることが明らかになった。

このモデルを用いれば、ウランと同じような核分裂メカニズムを持つマイナーアクチノイド[用語5]全般に対して核分裂生成物の性質を高精度に予言できる。そのため高燃焼度軽水炉や革新炉、核変換システムなどマイナーアクチノイドの存在割合が多い原子炉の安全性に関わる動特性予測精度向上への貢献が期待される。

本研究成果は12月22日付の米国物理学会誌「Physical ReviewC(フィジカルレビューC)」オンライン版に掲載された。

研究の背景

ウラン領域の低エネルギー核分裂は原子力エネルギーシステムの根幹をなす現象でありながら、その発見から80年が経過した現在でも励起した原子核が核分裂に至るまでの詳細なメカニズムは完全には理解できていない。特に核分裂片の運動エネルギー(熱エネルギー)は原子力発電の動力の約90%を担う基本的な物理量だが、既存の理論模型では実験値を再現することができない。また核分裂片(原子核が核分裂してできる2つの原子核)間のエネルギー分配や核分裂片の運動エネルギーなどのメカニズムも完全にはわかっていなかった。

原子核を構成する核子からスタートして核分裂を完全に記述することは現時点でも不可能である。そこで多くの場合に原子核形状の時間変化を表す動力学モデルが用いられてきた。動力学モデルでは、励起した原子核が伸びたり縮んだりしながら変形し、最終的に2つの核分裂片に分かれるまでの核分裂過程を、2つの核分裂片の質量数の差、原子核の伸び、および核分裂片の変形度を変数として、ブラウン運動[用語6]を記述する理論である揺動散逸定理に基づくランジュバン方程式を解くことで模擬している。

ただし、このような手法ではこれまでは計算時間の長さのため変数を3個までに限定し、2つの核分裂片の変形度を共通に扱ってきた。このような仮定をおいた場合であっても、崩壊熱や遅発中性子数を決定付ける核分裂収率分布は良く再現できていたからだ。しかしウラン領域の核分裂で生成される2つの核分裂片は変形の仕方が大きく異なることが実験的に知られており、より正確な核分裂現象の記述には2つの核分裂片で独立な変形度の導入が必要不可欠だった。

研究成果

石塚助教・千葉教授らの研究グループは各々の核分裂片の変形度を独立に扱えるような4次元ランジュバン方程式に基づく動力学モデルを開発し、熱核分裂性235U(ウラン、数字は質量数=陽子と中性子の数の合計)の中性子入射反応で形成される複合核に相当する236Uの低エネルギー核分裂に適用した。ランジュバン方程式には通常のポテンシャル下での運動のほかに、摩擦やランダム力による揺動散逸性が組み込まれている。今回の研究では揺動散逸係数が励起エネルギーに依存しない巨視的なモデルを採用している。

原子核の形状は二中心殻模型[用語7]で記述し、量子効果である殻効果および対効果[用語8]を考慮している。核分裂片間で独立な変形度を導入した場合には、共通の変形度を用いた場合と異なり、これまで用いられてきた無限の深さを持つポテンシャルでは核分裂片の質量収率分布をうまく説明できず、質量収率分布を再現するためには有限の深さを持つポテンシャルが必要であることが明らかになった。

図1. ポテンシャル平面上の核分裂軌道の様子。縦軸は2つの核分裂片の質量非対称度α、横軸は原子核の伸びを示している。カラーマップで示したポテンシャル平面上の赤色の実線は核分裂の軌道に対応している。

図1. ポテンシャル平面上の核分裂軌道の様子。

縦軸は2つの核分裂片の質量非対称度α、横軸は原子核の伸びを示している。カラーマップで示したポテンシャル平面上の赤色の実線は核分裂の軌道に対応している。

図1に示すように原子核が一体である領域から計算を始めることで、揺動散逸定理の本質的な様相をよく取入れることができている。一方、より伸びた状態から計算を始めた場合にはポテンシャルの高低差に運動が強く支配されてしまい、核分裂の確率的な側面を取込むことができないため、運動エネルギーを定量的に再現することはできない。

図2. 核分裂片の全運動エネルギーの比較。図中の黒丸は実験結果を示している。紫の破線は従来行われてきた2つの分裂片の変形度を共通にした計算(3次元ランジュバン模型)の結果。赤色の実線が本研究で確立した4次元ランジュバン模型による結果で、実験値を非常に良く再現できている。

図2. 核分裂片の全運動エネルギーの比較。

図中の黒丸は実験結果を示している。紫の破線は従来行われてきた2つの分裂片の変形度を共通にした計算(3次元ランジュバン模型)の結果。赤色の実線が本研究で確立した4次元ランジュバン模型による結果で、実験値を非常に良く再現できている。

開発した動力学モデルは、これまでの3次元モデルでも再現可能であった核分裂片の質量数収率分布[用語9]だけでなく全運動エネルギー分布の実験値も非常に良く説明することができる(図2参照)。この動的モデルが特に優れているのは、核分裂片の質量数ごとの全運動エネルギーだけでなく、様々な励起エネルギーでの全運動エネルギーの分布の幅まで精度良く再現できる点である。

このように今回開発された4次元ランジュバン模型は核分裂片の持つエネルギーを高精度で説明できるため、長年議論されてきた核分裂間のエネルギー分配や核分裂片からの中性子放出メカニズム解明にも大きく近づいた。

図3. (a)質量収率のピーク近傍での核分裂片の形状、(b)3つの励起エネルギーでの核分裂片の質量数(横軸)と核分裂片の変形度(縦軸)の関係。

図3. (a)質量収率のピーク近傍での核分裂片の形状、
(b)3つの励起エネルギーでの核分裂片の質量数(横軸)と核分裂片の変形度(縦軸)の関係。

さらに最も核分裂片の質量収率の多い質量数132と104のペアの形状を今回開発した動力学モデルで調べてみると、実験で示唆されるように球形に近い質量数132の原子核と横に伸びた質量数104の原子核とに分かれている様子が再現された(図3(a)参照)。

二中心殻模型ではδ = -0.1のときに全体として球形に近くなり、これより値が上がると横に伸びた形状となり、値が下がると縦に伸びた形状になっていく。今回、新たに取り扱えるようになった核分裂片に独立な変形度の性質をより詳細に検証したところ、図3(b)に示すように、質量数に対して鋸歯状に値が変化することが明らかになった。特に注目すべき点は、質量数に対して鋸歯状に変化する変形度の励起エネルギーに対する挙動である。

図3(b)の質量数110以下の軽い核では236Uの励起エネルギーが上がっても変形度は変わらないのに対し、質量数132近傍の重い核では励起エネルギーの上昇に伴い、変形度も大きくなっている。このような鋸歯状の質量数依存性と励起エネルギーに対する挙動は核分裂直後に放出される即発中性子数でも良く知られており、長年の謎とされてきた。しかし、今回の研究により原子核が大きく変形することで即発中性子数が増えるというメカニズムが明らかとなった。

今後の展開、及び波及効果

核分裂時に発生する即発中性子の起源は、現在でも解明されていない問題であり、様々な物理量を精度良く与える現象論的なモデルでも特別な仮定なしでは再現が難しいとされてきた。しかし今回、即発中性子数が純粋に物理法則から導かれる原子核の変形の仕方によって決まる様子が明らかになった。また長寿命マイナーアクチノイドの核分裂現象に対しても、放出される核分裂片の熱エネルギーや即発中性子数、原子力システムの安全性を決める崩壊熱や遅発中性子数のすべての物理量を精度良く予言する能力を持つため、これら核分裂生成物の評価のために有用となることが期待される。

本研究は文部科学省の原子力システム研究開発事業による委託業務(「高燃焼度原子炉動特性評価のための遅発中性子収率高精度化に関する研究開発」(平成24-27年度)及び「代理反応によるマイナーアクチノイド核分裂の即発中性子測定技術開発と中性子エネルギースペクトル評価」(平成27-29年度)の成果の一部である。

用語説明

[用語1] 動力学モデル : 本研究で開発したモデルは、揺動散逸定理に基づく運動方程式(ランジェバン方程式)を用いた。揺動散逸定理とは、熱平衡状態において微視的な粒子の運動と巨視的に観測できる運動の間の関係を示すものであり、ブラウン運動の記述として良く知られている。これらは揺らぎと摩擦という現象として現れ、揺らぎの大きさgと摩擦の大きさをγは、系の温度をTとすると、アインシュタインの関係式 g2 = γT が成り立つ。この関係は微視的運動と巨視的運動の橋渡しの役割を担っている。核分裂モデルにおいては、微視的な運動とは原子核を構成する陽子・中性子の運動を指し、巨視的運動は原子核の形の時間的な変化を表している。

[用語2] 崩壊熱 : 核分裂の結果生じた核分裂片が、ベータ崩壊する際に放出するエネルギーが熱にかわったもの。原子炉の運転を停止しても、核分裂生成物はある寿命を持って崩壊を続けるために熱を発生し続ける。福島第1原子力発電所においては、この崩壊熱を取り除く機能が失われたために炉心が損傷した。熱量と経過時間に対する変化は、生成される核分裂生成物の種類とそれぞれの収率によって変化する。

[用語3] 遅発中性子 : 核分裂で生じる核分裂生成物のいくつかの核種において、ベータ崩壊に伴って中性子が放出されることがあり、これを遅発中性子と言う。半減期が長いものとして55秒の核種がある。実際の原子炉では、この中性子を含めて臨界を維持しているが、即発中性子と異なり、ベータ崩壊の寿命に応じて中性子の放出に遅れを伴う。このため、反応度の投入に対する急激な出力の変化を防ぐことができ、原子炉の制御を行うための十分な時間余裕が生まれる。遅発中性子の数は、生じる核分裂生成物の核種とそれぞれの収率によって変化する。

[用語4] 即発中性子 : 核分裂の直後に核分裂生成物から放出される中性子であり、次項の遅発中性子と区別し即発中性子とよばれる。235Uの熱中性子核分裂では99%以上を占め、核分裂連鎖反応で重要な役割を担っている。

[用語5] マイナーアクチノイド・長寿命マイナーアクチノイド : アクチノイドに含まれる超ウラン元素のうち、プルトニウム以外の元素の総称をマイナーアクチノイドといい、ネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)などがある。このうち、237Np、241Am、243Amは、原子炉内の核燃料の燃焼によって生成される長寿命の原子核(長寿命マイナーアクチノイド)と言われており、この処分または管理を行うことが原子力エネルギー利用における大きな課題となっている。核変換は、これら長寿命マイナーアクチノイドを核分裂によって変換する技術である。原子力機構においても加速器駆動型未臨界炉(ADS:Accelerator-driven subcritical reactor)を用いた核変換技術の開発が行われている。

[用語6] ブラウン運動 : 媒質中を熱運動する微粒子は媒質を構成する分子との衝突によって不規則に動くブラウン運動を示す。ブラウン運動はランジュバン方程式で記述される。核分裂過程は原子核の形状のブラウン運動と捉えることができる。

[用語7] 二中心殻模型 : 核分裂過程における原子核の形状を精度良く記述するには一般に多くのパラメータが必要となるが、二中心殻模型では比較的少ない数のパラメータで原子核の融合および分裂の両方を記述できる。二中心殻模型では原子核の形状は2つの核分裂片の中心の周りに用意した調和振動子型ポテンシャルを用いて表現する。ただし2つの核分裂片の間では調和振動子が滑らかに接続するように調整してある。

[用語8] 殻効果および対効果 : 原子核の結合エネルギーは原子核を量子液体とみなす液滴模型を用いて記述できる。しかし特定の中性子数や陽子数で原子核が非常に安定になるという性質を説明するには殻模型的な補正(殻効果補正)が必要となる。また中性子および陽子はそれぞれスピンがゼロになるように対を組むと安定化するという効果も補正(対効果補正)として取入れる必要がある。殻効果および対効果に対する補正は核分裂生成物の質量分布や運動量分布に大きく影響する。

[用語9] 核分裂片の質量数収率分布 : 核分裂が起こると、様々な種類の原子核が核分裂生成物として生成される。これらの原子核を質量数ごとにわけ、質量数を関数として収率をプロットしたものである。通常、収率の合計が200%となるように規格化する。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review C
論文タイトル :
Four-dimensional Langevin approach to low-energy nuclear fission of 236U
著者 :
C. Ishizuka1, M. D. Usang1,2, F. Ivanyuk1,3, J. Maruhn4, K. Nishio5, S. Chiba1,6
所属 :
1 東京工業大学、2 マレーシア原子力庁、3 キエフ原子核研究所、4 フランクフルト大学、5 日本原子力研究開発機構、6 国立天文台
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院

千葉敏 教授

E-mail : chiba.satoshi@lane.iir.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3066 / Fax : 03-5734-2959

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

キャンパス・アジアサマープログラム 2017を開催

$
0
0

2011年度より文部科学省の大学の世界展開力強化事業として運営されている留学生交換プログラム「キャンパス・アジア」では、2017年夏にキャンパス・アジアサマープログラム(CAMPUS Asia Summer Program)2017を開催しました。

「キャンパス・アジアプログラム」は、中国の清華大学並びに韓国科学技術院(KAIST)と 協力し、質の高い最先端の科学技術を学び、また、国際社会で活躍できる総合力を身につけることを目的とした研究重視型教育プログラムです。2017年度は、東工大のサマープログラム(Tokyo Tech Summer Program)※1と合同で、授業中心のプログラム(Course-Oriented)が実施されました。

キャンパス・アジアプログラムとサマープログラム合同での開講式

キャンパス・アジアプログラムとサマープログラム合同での開講式

授業中心プログラム

7月3日~7月28日の4週間にわたり、清華大学から2名、KAISTから4名の計6名に加え、本学のサマープログラム(Tokyo Tech Summer Program)に参加している学生のうち12名が参加し、合計18名がサマープログラム集中講義を受講しました。

本プログラムのための英語による集中講義である「環境・エネルギー学特論 (Environment & Energy)」、「国際エンジニアリングデザインプロジェクト基礎(lnternational Engineering Design Experiences)」、「近代日本の建築(Modern Japanese Architecture)」、「英語で語る科学・技術・社会(Communicating Science and Engineering in Society)」を受ける一方、日本語初心者は「サバイバル・ジャパニーズ(Survival Japanese)」にて日本語の基礎を学びました。

「環境・エネルギー学特論 (Environment & Energy)」では、講義室でのレクチャーに加え、JXTGエネルギー株式会社と理化学研究所を見学しました。石油・エネルギー業界大手のJXTGエネルギー株式会社 根岸製油所・中央技術研究所では、日本の最先端の石油精製技術やリスクマネジメントについて理解を深め、また、日本で唯一の自然科学の総合研究所である理化学研究所では、幅広い分野の研究を進める現場を肌で感じることができました。

「英語で語る科学・技術・社会(Communicating Science and Engineering in Society)」では、専門知識がない人たちに科学技術の知識をわかりやすく伝えることの重要性とその実践について学びました。この科目は、本プログラムで3本柱のひとつとしている「21世紀型スキル」の修得につながるものであり、「研究中心プログラム(Research-oriented)」に参加する16名にとって唯一必修の科目でもありました。

講義最終日には、東工大附属科学技術高等学校の生徒19名、グローバル・リンク・シンガポール(Global Link Singapore)※2に参加予定の高校生17名が参加し、環境問題や持続可能な社会などのテーマのもと、留学生とのグループディスカッションとプレゼンテーションに挑戦しました。留学生は、知識、文化、母語が異なる中で、これまで学んできた専門知識の伝え方、リーダーシップの取り方を実践していました。また、清華大学のメン ボ(MENG Bo)先生による特別講義 “Strategic Communication – 21st Century Skills”(戦略的コミュニケーション-21世紀型スキル)では、コミュニケーションスキルに関するレクチャーの他、国連が掲げる17の持続可能な開発目標 (17 Sustainable Development Goals)についてカードゲームを交えて学びました。

プログラム最終日には、サマープログラム(Tokyo Tech Summer Program)と合同で成果発表会を行いました。18名の参加学生が与えられたテーマや日本での経験についてプレゼンテーションを行いました。

東工大附属科学技術高等学校の生徒とのディスカッション

東工大附属科学技術高等学校の生徒とのディスカッション

東工大附属科学技術高等学校の生徒とのディスカッション

理化学研究所へのサイトビジット

理化学研究所へのサイトビジット

理化学研究所へのサイトビジット

研究中心プログラム

10週間の「研究中心プログラム」には、清華大学から4名、KAISTから1名の計5名が参加し、各々が受入指導教員のもと、本学での研究活動に従事しました。研究室での研究活動の傍ら、日本語初心者は「サバイバル・ジャパニーズ(Survival Japanese)」にて日本語を学習しました。また、本プログラムで3本柱のひとつとしている「21世紀型スキル」の修得につながる科目として、「英語で語る科学・技術・社会(Communicating Science and Engineering in Society)」を受講し、科学技術の知識とコミュニケーションスキルを併せ持ったグローバル人材となるための基礎を学びました。

最終日には、サマープログラム(Tokyo Tech Summer Program)と合同で研究成果発表会を行いました。16名の参加学生が10分間の研究成果発表をし、その後の自由討論では、プログラムに対する意見交換や東工大での経験について、参加学生から感想が述べられました。

サマープログラムと合同の研究成果発表会と閉講式

サマープログラムと合同の研究成果発表会と閉講式

サマープログラムと合同の研究成果発表会と閉講式

体験企画

参加学生は、サマープログラム(Tokyo Tech Summer Program)および本プログラムで企画された以下の体験企画に参加し、日本文化や日本人学生との交流を楽しみました。

  • 日本文化体験(茶道・浴衣着付け体験/書道体験)
  • 東工大国際学生交流会SAGEによる東京オリエンテーリング
  • 東工大アカペラサークル「あじわい」によるアカペラ体験

東工大アカペラサークル「あじわい」によるアカペラ体験

東工大アカペラサークル「あじわい」によるアカペラ体験

東工大アカペラサークル「あじわい」によるアカペラ体験

書道体験/茶道・浴衣着付け体験

書道体験/茶道・浴衣着付け体験

書道体験/茶道・浴衣着付け体験

※1 サマープログラム(Tokyo Tech Summer Program)

6月上旬から8月中旬に、世界トップレベルの理工系大学より学生を受入れ、研究室でのリサーチ・プロジェクトに従事する「研究中心プログラム」です。先端企業見学や日本文化体験、東工大生との交流会など、留学生が日本の技術や文化への理解を深めるためのイベントも開催して、理解を深めます。

※2 グローバル・リンク・シンガポール

シンガポール国立大学を舞台に、アジア地域を中心とする世界各国の中高生が、科学や国際課題に関する考えや研究成果を、英語を使って国際舞台で発表と議論を行うアイデアコンテストです。

お問い合わせ先

留学生交流課 キャンパス・アジア事務局

E-mail : campusasia@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2984

平成30年度大学入試センター試験を「東京工業大学」で受験される方へ

$
0
0

平成30年度大学入試センター試験

試験日
平成30年1月13日(土)~ 1月14日(日)
会場

東京工業大学試験場は以下の2つの会場があります。お間違えのないように今一度ご確認ください。

1.
大岡山試験場 / 大岡山キャンパス
2.
田町試験場 / 田町キャンパス(附属科学技術高校)
期間中は、上記キャンパス内への受験生および試験関係者以外の立ち入りを制限しております。

注意事項

所定の試験日程による試験実施が困難になるような不測の事態が発生した場合、「高校生・受験生向けサイト」の新着入試情報で情報発信しますので、定期的に確認をお願いします。

試験場へのアクセス

大岡山試験場 / 大岡山キャンパス

東急大井町線・目黒線「大岡山駅」下車1分

  • 改札を左手に出て、マクドナルド前の信号を渡るとすぐに正門があります。

田町試験場 / 田町キャンパス(附属科学技術高校)

JR山手線・京浜東北線「田町駅」下車2分

  • 芝浦口(東口)方面に進み、エスカレーターを降りてすぐ右手に正門があります。

地下鉄都営三田線「三田駅」下車5分

  • A4口を出て、JR田町駅方面へ。以下同上。

なお、試験室等の詳細を記載した試験場案内については、平成30年1月12日(金)に「高校生・受験生向けサイト」の新着入試情報に掲載いたしますので、確認をお願いします。

平成30年度大学入試センター試験を「東京工業大学」で受験される方へ

Viewing all 4086 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>