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細胞質と葉緑体のリボソーム合成をリンクさせる新規シグナル伝達系を発見

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植物の生長制御に新たな知見

要点

  • 核、葉緑体、ミトコンドリアのリボソームRNA合成が連動して調節されていた
  • 細胞質と葉緑体を結ぶ新たなシグナル伝達系を特定
  • 細胞共生による葉緑体進化の理解に重要な知見

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の今村壮輔准教授と田中寛教授らは、原始的な植物である紅藻「シゾン[用語1]」では、核、葉緑体、ミトコンドリアがそれぞれ持つリボソームRNA[用語2]の合成が、お互いに連動して調節されていることを発見した。

さらに、葉緑体のリボソームRNA合成は、細胞内シグナル分子ppGpp[用語3]を合成するタンパク質(CmRSH4b)が細胞質から葉緑体へ運搬され、その機能が発揮され調節されていることが明らかになった。

葉緑体は、植物細胞のエネルギー生産の場であり、葉緑体機能・増殖の維持において、リボソームRNA合成は要の反応である。しかし、葉緑体におけるリボソームRNAの合成が、核やミトコンドリアでのリボソームRNA合成とどのようにして連携して調節されているかは謎であった。

被子植物における増殖の調節は非常に複雑で、その全体像の解明は困難だった。原始藻類シゾンの葉緑体におけるリボソームRNA合成の調節や、その調節が核やミトコンドリアでのリボソームRNA合成とどのようにリンクして行われているかを明らかにすることで、植物の基本的な増殖制御を理解できると考えられる。この成果が、葉緑体の増殖を調節する仕組みの確立過程の解明や、穀物増産に向けた基礎的な知見となることが期待される。

本成果は2月14日、英国の科学雑誌「ザ・プラント・ジャーナル(The Plant Journal)」オンライン版に掲載された。

研究の背景

細胞の増殖は、タンパク質の合成量に依存し、タンパク質合成はリボソームと呼ばれる翻訳装置により行われる。リボソームは、リボソームタンパク質とリボソームRNAから構成される巨大な酵素複合体であり、その生合成量はリボソームRNA合成量によって決定づけられている。そのため、リボソームRNA合成は増殖と相関して厳密に調節されている。

植物細胞は、核・葉緑体・ミトコンドリアの3種の細胞内小器官それぞれにリボソームRNA遺伝子を持ち、それぞれが独立に合成されて機能を果たしている。核で合成されたリボソームRNAは、細胞質に輸送されリボソーム合成に用いられ、葉緑体とミトコンドリアではリボソームRNA合成とリボソーム合成がそれぞれの場所で行われる。しかし、それら3種のリボソームRNA合成が互いにどのような関係を持って細胞内で調節されているかは不明であった。

研究の経緯と成果

今村准教授らは、核のリボソームRNA合成が真核生物では一般にTORキナーゼ[用語4]で調節されていることに着眼した。そして、TORキナーゼが、核のみならず、葉緑体とミトコンドリアにおけるリボソームRNA合成にも関与するという仮説を立てた。

まず、シゾン細胞内の3種の細胞内小器官におけるリボソームRNA合成を検出可能な実験系を確立し、TORキナーゼ活性に応じた各リボソームRNA合成量の変動を観察した。その結果、TORキナーゼを特異的な阻害剤により不活化すると、核に加えて葉緑体とミトコンドリアにおけるリボソームRNA合成量が、同様のタイミングで低下した。すなわち、TORキナーゼが3種のリボソームRNA合成をリンクさせて調節していることが明らかになった(図1)。

さらに、細胞質に存在するTORキナーゼが、葉緑体内で起こるリボソームRNA合成を調節する仕組みについて解析を行った。その結果、核にコードされているppGpp合成酵素遺伝子(CmRSH4b)の発現が、TOR活性阻害により誘導されていることがわかった。

ppGppは、環境変化に対応するためにバクテリアが合成する細胞内シグナル分子として発見され、リボソームRNA合成を阻害することが知られている。その後の詳細な解析により、CmRSH4bタンパク質が葉緑体に移行・蓄積し、それにより合成されたppGppが、葉緑体内のリボソームRNA合成反応を阻害していることを明らかにした(図1)。

図1. 3つの細胞内小器官におけるリボソーム
RNA合成が連携して調節される仕組みの概略図

TORキナーゼによる増殖の調節は、真核生物のみが有する仕組みである。一方、ppGppにより引き起こされる応答は、バクテリアを起源とする増殖を調節する仕組みであり、真核生物では植物のみに存在する。葉緑体は、光合成を行うシアノバクテリアが真核細胞に内部共生し、それが進化して誕生した細胞内小器官であると考えられている。よって、葉緑体では、進化の過程において真核生物とバクテリアを起源とする2つの異なる仕組みが連結され、リボソームRNA合成が調節されていると言える(図2)。この連結された2つの仕組みは、葉緑体における増殖の調節の確立において必須であり、それゆえ、現存する微細藻類から被子植物までその仕組みが保存されていると考えられる。

図2. 真核生物の核内、バクテリア、葉緑体におけるリボソームRNA合成調節の概略図。葉緑体では、TORキナーゼとppGppによる調節の仕組みが連結され、1つの調節系としてリボソームRNA合成がコントロールされている。

図2.真核生物の核内、バクテリア、葉緑体におけるリボソームRNA合成調節の概略図

葉緑体では、TORキナーゼとppGppによる調節の仕組みが連結され、1つの調節系としてリボソームRNA合成がコントロールされている。

今後の展開

TORキナーゼが、どのように環境変化の情報を感知して3種の細胞内小器官におけるリボソームRNA合成を調節しているのかは不明であり、植物における増殖を調節する仕組みの全体像を解明することが今後の課題となる。また、シゾン以外の生物におけるリボソームRNA合成を調節する仕組みの共通性や相違点を見出すことで、葉緑体の増殖を調節する仕組みの進化過程をより明らかできると考えられる。

用語説明

[用語1] シゾン

学名はCyanidioschyzon merolae(通称シゾン)。イタリアの温泉で見つかった単細胞性の紅藻(スサビノリ、テングサの仲間)。真核生物として初めて100%の核ゲノムが決定されるなど、モデル藻類、モデル光合成真核生物として用いられている。

[用語2] リボソームRNA

タンパク質を合成するリボソームを構成するRNA。RNAとしては生体内で最も大量に存在し、その量は全RNAの7〜8割を占める。

[用語3] ppGpp

グアノシン4リン酸の略で、栄養欠乏など増殖に適さない環境になると合成される特殊なヌクレオチド。ppGppがシグナルとなり、環境に適応する応答が引き起こされる。バクテリアと植物でppGppによるシグナル伝達システムが確認されている。

[用語4] TORキナーゼ

真核生物に広く保存されたタンパク質リン酸化酵素。アミノ酸やグルコースなどの栄養源により活性が制御されている。標的分子のリン酸化を通してタンパク質合成を調節し、細胞の成長(大きさ)を制御している。

論文情報

掲載誌 :
The Plant Journal
論文タイトル :
The checkpoint kinase TOR (target of rapamycin) regulates expression of a nuclear-encoded chloroplast RelA-SpoT homolog (RSH) and modulates chloroplast ribosomal RNA synthesis in a unicellular red alga
著者 :
Sousuke Imamura, Yuhta Nomura, Tokiaki Takemura, Imran Pancha, Keiko Taki, Kazuki Toguchi, Yuzuru Tozawa, and Kan Tanaka
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

今村壮輔 准教授

E-mail : simamura@res.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5859

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


溶液塗布だけでできる透明p型アモルファス半導体を開発

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要点

  • 室温かつ溶液コーティングで製膜できる透明p型アモルファス半導体を実現
  • 正孔の移動度はn型透明アモルファス半導体IGZOに匹敵
  • 大きな移動度を持つアモルファスp型半導体の設計指針を提示

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院の細野秀雄教授(元素戦略研究センター長)と元素戦略研究センターの金正煥助教らの研究グループは、これまで実現できなかった液相から合成でき、高い移動度を持つ透明p型のアモルファス半導体[用語1]の設計指針を考案、Cu-Sn-I系半導体で初めて実現しました。

3 eV以上のバンドギャップ[用語2]を持つ透明物質で正孔が伝導キャリアとなるp型半導体は稀です。研究グループは、化学結合と構成イオンの軌道の広がりを基に、新たな物質設計指針を考案しました。Cu(銅)-Sn(スズ)-I(ヨウ素)という3成分系に着目、原料を溶媒に溶かし、室温で塗布することで、6~9 cm2/Vsという大きな移動度を持つ透明p型アモルファス半導体の薄膜が得られました。この移動度は、同グループが開発し、既にディスプレイの駆動に使われているn型アモルファス酸化物半導体のIGZO[用語3]に迫るものです。これを用いれば、プラスチック基板上に透明pn接合が容易に形成できるので、曲がる透明な電子回路開発に道が拓けます。今回、物質設計指針が確立したことから、多くの元素の組み合わせでの活用が広がり、透明n型アモルファス酸化物半導体(TAOS)に匹敵する、新しい物質群の創製が期待されます。

本研究成果はドイツ科学誌「Advanced Materials」に速報としてオンライン版に2018年1月30日付(日本時間)で公開されました。

本成果は、以下の事業・研究課題によって得られました。

文部科学省 元素戦略プロジェクト<拠点形成型>

研究課題名:
「東工大元素戦略拠点」
代表研究者:
東京工業大学 元素戦略研究センター センター長 細野 秀雄
PM:
元素戦略研究センター 雲見日出也 特任教授
研究実施場所:
東京工業大学
研究開発期間:
平成25年7月~平成34年3月

研究の背景と経緯

半導体には、電子が伝導を担うn型と正孔が担うp型があります。ディスプレイへの応用には均質で大面積の薄膜が容易に作製できるアモルファス半導体が適しています。しかしながら、アモルファスの半導体は電子や正孔が動きにくいため、高精細な液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの駆動には適用できませんでした。

研究グループが創出したIGZOに代表される透明n型アモルファス半導体(TAOS)は、アモルファスでも電子の動きやすさが結晶と比べても低下しないように設計したもので、現在では様々なディスプレイの画面の駆動に使われています。しかしながら、p型半導体では同様の機能を持った半導体は実現していませんでした。

研究の内容

1996年に大きな電子移動度を持つTAOSの設計指針と、それを基に作製した物質群を報告しました。それまで結晶の半導体をアモルファス化すると、欠陥や構造の乱れが生じ、伝導を担う電子の移動が阻害されてしまうために、電子の輸送特性は著しく劣化すると考えられていました。

研究グループは、(n-1)d10ns0(nは主量子数で≥5)という電子配置を持つ金属イオンから構成される酸化物ならばアモルファス化しても、結晶に近い移動度が保持されるということを提案しました。一般に、電子が伝導する伝導帯の底部は、透明な酸化物では主に陽イオンが空の電子軌道[用語4]で構成されます。この金属イオンの系では、空間的に電子の広がりが大きく、形状が球形のs軌道同士が重なっています。よって、アモルファスになって結合の角度が様々に変化しても、s軌道同士の重なりの大きさは、それほど減少しません。現在、世界規模で売り出されているIGZOは、この考え方で実現したTAOSの1つです。これに対しシリコンでは、空間的広がりが小さく、形状の異方性の大きなsp3軌道から構成されているため、アモルファスになると移動度が数桁も低下してしまいます。

従来の考え方では、p型アモルファスの設計は困難でした。正孔が動く価電子帯の上部は、主に陰イオンの占有軌道から構成されるからです。そのため、価電子帯の上部に占有された軌道を持つ陽イオンである銅イオンやスズイオンなどを使ってp型の酸化物半導体を実現してきましたが、これらの系ではアモルファス化すると高い移動度の半導体は得られませんでした。

そこで今回、空間的広がりが大きな占有されたp軌道を持つ陰イオンである“ヨウ素イオン”に注目しました。このイオン半径(5p軌道の広がりで決まっている)は~200 pmであり、これはn型のTAOSの主構成イオンであるインジウムイオンの空の5s軌道の半径(180 pm)よりも大きいものです。5pの3つの軌道に電子が6つ詰まったヨウ素イオンは、電子が占有された半径の大きな擬s軌道と見做すことができます。よって、ヨウ素化物の結晶半導体をアモルファス化すれば大きな正孔の移動度をもつp型半導体が実現できると考えました(図a)。

結晶のCuIは透明なp型半導体で、この多結晶薄膜の移動度は~8 cm2/Vsであることが数年前に報告されました。そこでCuIとSnI4を有機溶媒に溶かし、室温でスピンコートして薄膜を作製したところ、透明で均質なアモルファスの薄膜が得られました。その正孔の移動度は6~9 cm2/Vsという値で結晶薄膜と全く遜色ないものでした(図b)。結晶薄膜には粒界が存在するために表面は平滑でなく微小な穴が無数にみられましたが、アモルファス薄膜ではこれらは見られませんでした(図c)。この結果は、低温で溶液を原料に用いて簡単に成膜でき、しかも結晶薄膜と遜色ない電気特性の透明p型アモルファスが初めて実現したことになります。

空間的広がりが大きな占有されたp軌道を持つ陰イオンである“ヨウ素イオン”

(a) 結晶とアモルファスCuIの価電子帯上部の電子軌道の重なり(模式図)。アモルファスではI-Cu-Iの角度が一様でなくなるが、ヨウ素イオン同士の5p軌道の重なりの程度は結晶と大きく変わらない。

(b) 正孔(ホール)の移動度と濃度の関係。下図はプラスチック基板上に成膜したアモルファスCu-Sn-I薄膜の写真。

(c) Snを10%含む薄膜の断面の透過電子顕微鏡写真と電子線回折像。

今後の展望

今回の成果により、透明アモルファス半導体を使ってpn接合をプラスチック上に形成できることから、曲がる電子回路の作製が可能となります。さらに物質設計指針が提示されたので、これに沿って移動度の大きい透明p型アモルファス半導体が様々な元素で構成できることから、TAOSに匹敵する新しい物質群が得られるものと期待されます。

用語説明

[用語1] アモルファス半導体 : 原子が規則正しく配列されている結晶に対し、決まった原子配列をもたない状態がアモルファス。不純物の添加や電圧をかけることで伝導度を大きく変化できる物質が半導体。アモルファスは容易に均質な薄膜は低温で作製できるというメリットがあるが、優れた半導体機能をもつ物質は稀である。

[用語2] バンドギャップ : 電子が空っぽの伝導帯と詰まった価電子帯とのエネルギーの差で最小の値。

[用語3] IGZO : インジウム、ガリウム、亜鉛と酸素から構成される物質。優れた特性を有するアモルファス半導体としても機能する。2003~4年に東工大細野グループによって初めてその薄膜トランジスタ(TFT)が作られた。最近、急速に普及しつつある大型有機ELテレビの画面は、これまでの半導体では駆動できず、IGZOのTFTが採用されている。

[用語4] 電子軌道 : 原子の属する電子は、そのエネルギーによって空間的に存在する領域が決まっている。エネルギーの低い順にs、p、d、f軌道となる。s軌道は形状が球形で、p軌道は2葉のクロバー型。大きく広がった、お互いに直交する3つのp軌道は、大きく広がったs軌道に形状が似てくるので、“擬s軌道”と見做すことができる。シリコンやゲルマニウムなどの典型的半導体物質では、4面体の中心から4つの頂点方向に伸びたsp3軌道から価電子帯が構成されている。

論文情報

掲載誌 :
ADVANCED MATERIALS
論文タイトル :
"Material Design of p-Type Transparent Amorphous Semiconductor, Cu–Sn–I" (p型透明アモルファス半導体の材料設計:Cu-Sn-I)
著者 :
Taehwan Jun, Junghwan Kim, Masato Sasase and Hideo Hosono
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院

フロンティア材料研究所教授/元素戦略研究センター長

細野秀雄 教授

E-mail : hosono@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5009 / Fax : 045-924-5196

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

留学生と写真研究部の交流イベント「レッツ・シュート・フォトズ!」 等々力渓谷で

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2017年12月3日、東京工業大学留学生会(Tokyo Tech International Student Association、以下TISA)と本学公認サークルである写真研究部が、東工大の日本人学生と留学生の交流を促進することを目的としたイベント「レッツ・シュート・フォトズ!(Let’s Shoot Photos!)」を開催しました。紅葉のまだ残る等々力渓谷公園をカメラを構えながら歩き、国際交流に関心のある学生が国籍や言語の壁を越えてコミュニケーションを楽しむことができました。

「グッド・ショット!」お互いの写真を見せ合う参加者たち

「グッド・ショット!」お互いの写真を見せ合う参加者たち

紅葉の等々力渓谷で撮影会

紅葉の等々力渓谷で撮影会

紅葉の等々力渓谷で撮影会

撮影会で撮った写真をみんなで見ながらフォトコンテスト

撮影会で撮った写真をみんなで見ながらフォトコンテスト

参加者のコメント

カビール・シャリアルさん(TISA/バングラデシュからの留学生、工学院 電気電子系 研究生)

このイベントは写真に興味のある人にとって、とても素晴らしいものだったと思います。等々力渓谷という場所や、小さなグループで写真を撮りに行くというアイデアがとてもよかったです。チームメイトと、より良い写真を撮るためのアイデアや技術について共有し学び合うことができました。留学生と日本人学生が参加していたので、新しい人に会い友達を作る良い機会にもなりました。撮影会からコンテストまで非常に楽しめました。同じようなイベントを、またTISAと写真研究部で開催してもらえたら嬉しいです。

ノ・テヒョンさん(写真研究部/韓国からの留学生、工学院 電気電子系 交換留学生(学士課程4年))

TISAと写真研究部は、東工大の留学生にとってとても良いイベントを開催してくれました。等々力渓谷で6人の小グループで活動するのはちょうど良かったし、紅葉を楽しむのにも良い季節でした。公園内を周り、甘味処でお茶を楽しみました。文化の違いや共通点について語り合えたのも有意義でした。一番楽しかったのはコンテストのための写真撮影です。たくさん撮影し、どうしたら印象を与える写真を撮れるか考え、忘れられない思い出になりました。次の機会にも、たくさんの学生がこのイベントを楽しめると良いと思います。

主催者のコメント

福田萌斐さん(TISA・写真研究部、情報理工学院 数理・計算科学系 学士課程2年)

写真を趣味にしている留学生が多いなと感じていたことや、写真研究部の部員に留学生が多いため国際交流を目的としたイベントがあっても良いのではないかと考えていたことをきっかけに、初めてこのようなイベントを企画することになりました。結果的に、国際交流に興味のある日本人学生や、写真初心者として参加してくれた学生も含めて楽しんでもらえてとても良かったです。いつもは主にスポーツ系サークルとイベントを開催してきたTISAですが、写真のイベントという新たな試みとなった今回、芸術にも国境がないと改めて感じることができたのも大変有意義でした。参加してくれた全員に感謝したいです。今後もTISA・写真研究部ともに活性化できるようなイベントを企画していけたらと思います。

撮影会の後のフォトコンテストでは、同じ場所をいろいろな視点から捉えた様々な写真が集まり、とても興味深いものでした。得票数の多かった作品を以下に紹介します。

「Smog」
「Smog」
レッドブサラカム・タナド(環境・社会理工学院 融合理工学系 学士課程2年)

「new shoes」
「new shoes」
徳永唯希(理学院化学系 修士課程2年)

「波紋 - Hamon -」

「波紋 - Hamon -」
佐藤八起(環境・社会理工学院 融合理工学系 学士課程2年)

東京工業大学留学生会(TISA)

TISAは、東工大留学生の学生生活の補助、および学内の国際交流を促進することを目的として、2007年に設立された学生団体です。学内の留学生との接点を増やしたい・異文化交流に興味がある・将来留学を考えている・語学力を伸ばしたい、そんな東工大生をいつでも歓迎しています。

お問い合わせ先

東京工業大学留学生会(TISA)

E-mail : contact@mytisa.net

フジテレビ「ホンマでっか!?TV」に工学院の鈴森康一教授、塚越秀行准教授と学生が出演

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工学院 機械系の鈴森康一教授、システム制御系の塚越秀行准教授が、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」に出演します。ロボットを扱う研究者が、その分野の最新技術を紹介する「〇〇学部のマル秘常識 ホンマでっか!?“最新ロボット”」コーナーにそれぞれ登場します。

鈴森教授と人工筋肉を使った筋骨格ロボット
鈴森教授と人工筋肉を使った筋骨格ロボット

塚越秀行准教授
塚越秀行准教授

コメント

鈴森康一教授

最新のパワースーツを学生と一緒に紹介させてもらいました。華やかなスタジオ現場での楽しい収録でした。

塚越秀行准教授

学生達の協力のお蔭で、開発したロボットをスタジオで動かしながら、楽しく紹介することができました。芸能タレントの皆さんのリアクションも、なかなか新鮮でした。

番組情報

  • 番組名
    フジテレビ「ホンマでっか!?TV」
  • 放送予定日
    2018年2月21日(水)21:00 - 21:54
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お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

溶媒蒸気の識別が可能な新しい分子集合体材料を作成

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取り込む分子に応じて蛍光が大きく変化する多孔性デンドリマー結晶

研究成果のポイント

  • 溶媒蒸気や気体分子などの識別に応用できる新しい分子識別材料の作成に成功しました。
  • アモルファスな凝集を起こしやすい巨大分子(デンドリマー)の自己組織化によって作成された結晶性のファイバーの構造と物性を明らかにしました。
  • この結晶は高い多孔性を有し、気体分子や溶媒蒸気、昇華性分子など様々な分子を内部に取り込むことが可能です。

国立大学法人 筑波大学 数理物質系 山本洋平教授、西堀英治教授、数理物質科学研究科 大学院生 中嶋紗英(物性・分子工学専攻 博士前期課程)は、東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 アルブレヒト建助教、山元公寿教授、京都大学工学研究科 植村卓史准教授、北尾岳史博士とハイデルベルク大学との共同研究で、π共役デンドリマー[用語1]から形成する多孔性マイクロ結晶[用語2]の作成に成功しました。

デンドリマーは分子量が単一の巨大分子で、樹状高分子とも呼ばれています。その立体的な嵩高さから、デンドリマーはアモルファス[用語3]な凝集構造を形成することが多く、特に世代[用語4]の大きなデンドリマーにおいてその傾向は顕著です。今回、本研究グループは、第3世代のデンドロンを有するπ共役デンドリマーの自己組織化[用語5]について詳細に検討ました。その結果、このデンドリマーが極めて多孔質な結晶を形成することを見出しました。このデンドリマー結晶は、大きな細孔表面積と特異な電子状態を備えているために、溶媒蒸気の曝露により蛍光強度が顕著に増大すると同時に大きな蛍光色変化を示すことを明らかにしました。蛍光特性と多孔性を併せもつデンドリマー集合体は、溶媒蒸気や気体分子などを識別する新しい蛍光プローブ[用語6]としての応用が期待できます。

本研究成果は、2018年2月16日付で「Chemical Communications」にて先行公開されました。

本研究は、文部科学省科研費補助金 新学術領域研究 π造形科学「様々な励起プロセスを介したπ電子球体への発光閉じ込めと共鳴発光の変調」「非対称モノマーの配列を鍵とした巨大双極子π造形」、国際共同研究強化基金「発光性および強誘電性ポリマーナノ粒子による新しいフォトニック結晶の構築」、基盤研究A「光機能性ポリマー球体の高次連結による光学メタマテリアルの開発」、旭硝子財団研究助成 若手継続グラント「導電性高分子マイクロ共振器への電荷注入と共鳴電界発光」、筑波大学プレ戦略イニシアティブ「光と物質・生命科学のアンサンブルによる新現象の発掘と解明」などにより実施されました。また、放射光X線回折実験は大型放射光施設SPring-8のBL26B2およびBL02B1、BL02B2ビームラインを使って行われました。

研究の背景

蛍光プローブは、神経ガスや重金属イオン、蛋白質、遺伝物質など、さまざまな分子の識別に用いられます。蛍光センシングの方法は、蛍光消光(quench)、蛍光発現(turn-on)、蛍光強度変化(ratiometric)、励起エネルギー移動(FRET[用語7])型など、いくつかのタイプに分けられます。とりわけ、turn-on型で、なおかつ固体状態で使用可能な蛍光センサーは実用的に重要です。さらに、発光色変化を伴う蛍光センシングは、複数の検体を識別可能であることから、そのような特性をもつ材料の探索が活発に進められています。特に、表面積が大きくてナノメートルサイズのチャネルを有する多孔性材料は、ガスや蒸気のセンシングに適していると考えられます。

研究内容と成果

今回、研究グループは、π共役デンドリマーとよばれる巨大分子から、多孔質の結晶性ファイバーを作成しました(図1)。デンドリマー1のコア部位には電子受容性のトリアジンが、シェル部位には電子供与性のカルバゾールデンドロンが用いられています。この分子1は、熱活性化遅延蛍光(TADF)[用語8]特性を示すことから、塗布型有機EL素子のホール輸送層/発光層としての応用が検討されている分子です[参考文献1]。分子1の溶液中における自己組織化挙動を詳細に検討した結果、蒸気拡散法[用語9] [参考文献2]により1はファイバー状の構造体を形成することを明らかにしました(図1c)。一方、蒸気拡散の際の初濃度を1/10にまで下げて同様の方法で自己組織化を行うと、アモルファスな球体が形成しました(図1b)。ファイバーの単結晶および粉末X線回折[用語10]測定から、このファイバーは長軸方向に1次元のナノサイズのチャネルを有することが明らかになりました(図2)。窒素ガス吸着測定より、このファイバーは650 m2/g以上ものBET表面積[用語11]を示しました(図3)。そこで、この多孔性ファイバーを様々な溶媒蒸気に晒して蛍光観察を行った結果、ほとんどの溶媒蒸気に対して蛍光強度の顕著な増大(turn-on)が観測され、さらに溶媒の種類により蛍光色が大きく変化することが明らかになりました(図4a-c)。この分子はTADF特性をもつことから、大気中では3重項酸素により蛍光の大部分が消光してしまいますが、溶媒分子が細孔内部に吸着し、酸素を追い出すことで蛍光がturn-onします。また、この発光は電荷移動(CT)発光[用語12]であり、励起状態のエネルギーは極性分子の吸着により大きく安定化するため、溶媒の極性に伴う大きな蛍光色変化が起こります。さらに、このナノ細孔には、気体や溶媒蒸気だけでなく、昇華した有機分子も導入可能であり、例えば電子受容性分子であるTCNQ[用語13]を昇華して導入することで、蛍光が完全に消光することも確認されます(図4d、e)。

(a)コアにトリアジン、シェルに第3世代カルバゾールデンドロンをもつπ共役デンドリマー1の分子構造、および1の初期濃度が異なるクロロホルム溶液に対しアセトニトリル蒸気を拡散することで得られる粉末の写真。(b、c) 初期濃度 0.1 mg/mLおよび1.0 mg/mLの溶媒条件からそれぞれ生成したマイクロ球体(b)およびマイクロファイバー(c)の電子顕微境写真と蛍光顕微鏡写真(内挿図)。
図1.
(a)コアにトリアジン、シェルに第3世代カルバゾールデンドロンをもつπ共役デンドリマー1の分子構造、および1の初期濃度が異なるクロロホルム溶液に対しアセトニトリル蒸気を拡散することで得られる粉末の写真。(b、c) 初期濃度 0.1 mg/mLおよび1.0 mg/mLの溶媒条件からそれぞれ生成したマイクロ球体(b)およびマイクロファイバー(c)の電子顕微境写真と蛍光顕微鏡写真(内挿図)。
1からなるファイバーの単結晶および粉末X線回折測定により推定される結晶構造。内挿図:ファイバー1本からのX線回折パターン。
図2.
1からなるファイバーの単結晶および粉末X線回折測定により推定される結晶構造。
内挿図:ファイバー1本からのX線回折パターン。
多孔性ファイバー(青)とマイクロ球体(緑)の窒素ガス吸着特性(a)、およびその等温吸着線から見積もられるファイバーの細孔径 (b)。
図3.
多孔性ファイバー(青)とマイクロ球体(緑)の窒素ガス吸着特性(a)、およびその等温吸着線から見積もられるファイバーの細孔径 (b)。
(a) 多孔性ファイバーへの各溶媒蒸気の曝露と除去に伴う発光色変化。(b) 多孔性ファイバーへの各溶媒蒸気の曝露に伴う蛍光強度変化のグラフ。赤:大気下、青:アルゴン下。(c) 多孔性ファイバーへのメタノール蒸気の曝露/除去に伴う蛍光強度変化のプロット。(d、e) 多孔性ファイバーへの電子受容性分子(TCNQ)蒸気の曝露前後における発色変化(d)と蛍光変化(e)。
図4.
(a) 多孔性ファイバーへの各溶媒蒸気の曝露と除去に伴う発光色変化。(b) 多孔性ファイバーへの各溶媒蒸気の曝露に伴う蛍光強度変化のグラフ。赤:大気下、青:アルゴン下。(c) 多孔性ファイバーへのメタノール蒸気の曝露/除去に伴う蛍光強度変化のプロット。(d、e) 多孔性ファイバーへの電子受容性分子(TCNQ)蒸気の曝露前後における発色変化(d)と蛍光変化(e)。

今後の展開

電子供与性ー受容性デンドリマーを用いることで、揮発性ガスや有機分子を高感度に識別可能な多孔性結晶は、新しい分子識別材料としての応用が期待できます。また、爆発性のニトロ化合物や有毒な揮発性分子などの識別においても、この多孔性デンドリマー結晶は大きな威力を発揮することが期待できます。

用語説明

[用語1] π共役デンドリマー : デンドリマーとは、中心部位(コア)と周辺部位(シェル)からなる巨大分子で、樹木のような規則正しい分岐構造をもつ分子。π共役系をもつデンドリマーをπ共役デンドリマーと呼ぶ。

[用語2] 多孔性マイクロ結晶 : 多くの細孔を有する結晶。金属有機骨格(MOF)や共有結合性有機骨格(COF)が代表的。

[用語3] アモルファス : 非晶質とも呼ばれ、結晶のような周期構造を持たない凝集構造。

[用語4] 世代 : デンドリマーにおけるシェル部位のデンドロンの大きさを示す指標。樹状分子の分岐の回数(n回)を使って第n世代と呼ぶ。世代が大きい程、分子量は大きくなる。

[用語5] 自己組織化 : 分子などが自発的に集合化して構造形成するプロセス。

[用語6] 蛍光プローブ : 蛍光によりさまざまなセンシングを可能にする分子。

[用語7] FRET : エネルギー供与体から受容体へのエネルギー移動の一種。共鳴エネルギー移動とも呼ばれる。

[用語8] 熱活性化遅延蛍光(TADF) : 1重項励起状態と3重項励起状態のエネルギー差が小さい場合に、一旦3重項励起状態に落ちた状態から、熱エネルギーにより再び1重項状態に戻ることで観測される、寿命の長い発光。TADF材料は有機EL素子における有力な発光分子の候補とされている。

[用語9] 蒸気拡散法 : 良溶媒に溶解した分子の溶液に貧溶媒の蒸気をゆっくりと拡散することで、分子の析出や結晶化を促進する方法。

[用語10] X線回折 : 物質中の原子や分子の周期構造を反映してX線が回折する現象。この現象を利用して、物質中の原子配置や分子配列構造が推定できる。

[用語11] BET表面積 : Brunauer、Emmett、Teller により提案された、比表面積の計算方法。単分子層吸着説であるLangmuir理論を多分子層に拡張した理論で、分子は積み重なって無限に吸着し得るものとし、吸着層間に相互作用がなく各層に対してLangmuir 式が成立すると仮定して算出する。

[用語12] 電荷移動(CT)発光 : 電子供与体から受容体へ電子が移動した状態(電荷移動状態)からの発光。

[用語13] TCNQ : 7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンの略称。代表的な電子受容性分子であり、分子性金属などの構成分子として用いられる。

参考文献

[1] K. Albrecht et al., "Carbazole Dendrimers as Solution-Processable Thermally Activated Delayed-Fluorescence Materials" Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 5677-5682.

[2] S. Kushida et al., "From Linear to Foldamer and Assembly: Hierarchical Transformation of a Coplanar Conjugated Polymer into a Microsphere" J. Phys. Chem. Lett. 2017, 8, 4580.

論文情報

掲載誌 :
Chemical Communications
論文タイトル :
A fluorescent microporous crystalline dendrimer discriminates vapour molecules(蒸気分子を識別可能な発光性多孔質デンドリマー結晶)
著者 :
Sae Nakajima、Ken Albrecht、Soh Kushida、Eiji Nishibori、Takashi Kitao、Takashi Uemura、Kimihisa Yamamoto、Uwe H. F. Bunz、Yohei Yamamoto
DOI :

お問い合わせ先

筑波大学 数理物質系

山本洋平

E-mail : yamamoto@ims.tsukuba.ac.jp
Tel : 029-853-5030

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

演劇ワークショップ2017「大岡山の物語」を開催

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2017年11月30日から12月21日、リベラルアーツ研究教育院主催の演劇ワークショップ「大岡山の物語」(全5回)が大岡山キャンパス 大岡山西9号館で開催されました。このワークショップは、同年夏に行われた「声に出してシェイクスピア-悲劇編その1『マクベス』-」の後、熱心な参加者から「劇団大岡山」を作りたいという声があがり、それを受けて企画されたものです。今回は、「大岡山」をテーマに、東工大学生、卒業生、近隣在住の一般の方など、10代から80代までの22名の参加者が演劇を作る中で交流を深めました。

和やかに全体をナビゲートする講師の関根氏
和やかに全体をナビゲートする講師の関根氏

このワークショップは、まず、参加者それぞれが「大岡山」にまつわるエピソードを1分程度で読める文章として持ち寄ることから始まるものでした。参加者の書いた全18エピソードのうち、9エピソードはモノローグの演技、残り9エピソードは配役を決めてのグループ演技とし、リハーサルを重ねていきました。そこに歌を1曲加え、講師の関根信一氏(俳優、劇作家、演出家)とコーディネーターのリベラルアーツ研究教育院谷岡健彦教授が、全体を1時間ほどの作品に再構成し、最終回には観客を招いての発表会を催しました。

エピソードからワンシーンを取り出し演じる参加者
エピソードからワンシーンを取り出し演じる参加者

思わぬ展開に大きな笑いも
思わぬ展開に大きな笑いも

披露されたエピソードは、子供時代に東工大の庭に入って遊んだ記憶を語る「わが庭、東工大」、小学校時代に工大祭で見た科学実験への驚きを表現した「くだけた金魚」、年老いた夫婦の営む定食屋の思い出を描いた「『もみの木』のオムカレー」、家族の歴史と東工大の桜並木を重ね合わせた「孫とくぐる桜」などで、いずれもその底に流れる温かいものを感じさせる内容でした。

本館前の桜並木になりきってリハーサル
本館前の桜並木になりきってリハーサル

熱のこもった演技に拍手を送る参加者
熱のこもった演技に拍手を送る参加者

この全5回を通じて、参加者は自らの内側にあるイメージや思い出を「言葉」に変えることで全員と共有し、それをさらに身体表現に変えて「演劇」を作り上げました。参加者は、演劇が生まれるプロセスの面白さとそのエッセンスを短時間の中で体感することができました。開催後、参加者や関係者からの、続編開催の要望が数多く主催者に寄せられています。

演劇ワークショップ「大岡山の物語」 チラシ

演劇ワークショップ「大岡山の物語」 チラシ

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お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院文系教養

E-mail : ilasym@ila.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7689

「平成29年度創造性育成フォーラム」開催報告

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2017年12月14日に大岡山キャンパス 大岡山西9号館ディジタル多目的ホールで創造性育成フォーラムが開催されました。

本学では、学生の発想力や創造力を育て、学生が主体的に学修に取り組むよう、毎年、本学の創造性育成科目の登録・選定を行い、創造性育成教育を積極的に推進しています。

教育・国際連携本部 (旧教育推進室)では、本学の創造性育成教育を発展させることを目的に、毎年、創造性育成科目の事例発表会を開催しています。

今年度は、従前からの本学における取り組み事例の発表に加え、岡山大学の大橋一仁教授を招き、岡山大学での取り組み事例を紹介いただきました。

創造性育成科目事例発表

フォーラム前半は、系・コース・学科での良い講義事例を共有することを目的とし、「学生プロデュース科目outer」、「システム創造設計outer」、「化学工学実験第一outer第二outer」、「建築空間設計特別演習outer」の4科目の担当教員及び実際に受講している学生による講義内容や学修の成果についての事例発表の後、創造性教育について活発な質疑応答が行われました。

学生プロデュース科目(博士後期課程 文系教養科目)

発表者:猪原健弘教授(リベラルアーツ研究教育院)

「知の交流」を促進する場を創造

猪原教授の発表の様子
猪原教授の発表の様子

世界最高水準の研究を行うには、専門分野に限定されない幅広い知識、異分野研究の意義を理解し吸収・活用する応用力や創造性、多様な人材と交流し「知」のネットワークを広げる柔軟性や学際性が必要です。本科目は「教養先端科目」と対になっており、履修者は、「教養先端科目」の内容を自ら設計していくことで、これから必要とされる「教養」を身に付けます。具体的には、「教養先端科目」の包括的なテーマを決定後、異分野の学生と協力しながら、専門家への講演の依頼、授業の運営法および発表会の運営・広報の方法についての検討と体験を通して、博士後期課程全体の「知の交流」を促進する場を主体的に創造できる人材になることを目的としています。2016年度はポスター発表会・ミニシンポジウムを計3回実施しました。専門分野の異なる学生間でのグループワークの成果が求められますので、自領域の専門用語が通じない中でコミュニケーションをとる難しさを知る良いきっかけになっていると感じます。

システム創造設計(学士課程 システム制御系)

発表者:塚越秀行准教授(工学院 システム制御系)

ロボット製作・競技会を通じた創造性の育成

塚越准教授の発表の様子
塚越准教授の発表の様子

本講義は、条件制約された環境下で、受講者の自由な発想により対戦型ロボット(マシン)の設計・製作を行う問題解決型の授業です。競技テーマやルールは毎年変わり、受講者には「作業時間」「使用可能なキット」「競技時間」の3つの制約が課せられます。これにより、アイデアを創出する楽しさやモノを動かす感動を自発的に体感させ、与えられた条件の中で最適なシステムを設計するための創造性を育むことを目的としています。マシンを作る上での基礎的な内容(知識)を把握する旨の授業は別途行われ、教員が進捗状況をチェックしながらサポートします。競技会での勝敗は授業での評価にはそれほど重要ではなく、競技会を振り返っての反省点を記述したレポート内容が重視されます。競技会で選出された学生は国際ロボコンに出場する権利が与えられ(2017年度は6名)、各国の代表者と一緒にチームを組んで競技に臨むという形式のため、モノづくりを通して世界各国の大学生と国際交流することができました。

化学工学実験第一・第二(学士課程 応用化学系)

発表者:森伸介准教授(物質理工学院 応用化学系)、三塩竜平さん(学士課程3年)、高井陽平さん(学士課程3年)

問題解決の方法を設計していく能力

学生と共に発表する森准教授(左端)
学生と共に発表する森准教授(左端)

本講義では、一定の制約が与えられた化学プロセスに関する重要な 4つのテーマ(流動操作、蒸留操作、計測と制御、プロセス概念設計)に係わる問題を、少人数のチームに分かれてコンテスト形式で取り組みます。これまでの実験では、講義で学んだことを再確認し、データをもとに講義で学んだ知識を用いて考察する力を養いました。本実験では、テキストに決められた実験手順や理論的な説明はなく、自分たちで必要な理論を見つけ、設計方法を考え、結果の検証に必要なデータを決定し、結果の検証と設計修正をします。グループ内で設計方法やデータの検証方法について意見を出し合い、意見を比較しながら話し合いを行うことで、理論を踏まえて自分の意見を説明する力や理論をもとに他人の意見を理解する力を養うことができました。与えられた制約を満たしているかを検証しながら課題を解くことで、問題解決のための設計能力の重要さを知ることができ、社会に出てからもこの経験を活かしていける実践的な学びを修得しました。

建築空間設計特別演習(修士課程 建築学コース)

発表者:塚本由晴教授(環境・社会理工学院 建築学系)、キム・ヒヨンスさん(博士後期課程3年)、フロレンディア・エコノモーさん(修士課程2年)

都市空間におけるコモンズの構築

学生と共に発表する塚本教授(右端)
学生と共に発表する塚本教授(右端)

現代社会や都市空間における建築のデザインを検討することを通して、建築の批評言語を構築し実践する力を養うことを目的として、2016年10月、デルフト工科大学のトム・アヴァーマテ教授を迎え『Constructing the Commons(コモンズの構築)』と題した二週間の集中講義を行いました。そこでは、都市空間の生態系(エコロジー)の理解に基づき、その生態を育てながら如何に都市にコモンズを構築していくかといった新たなデザイン方法を模索しました。コモンズは人々が共同性を実践するための資源(Common-Pool Resources)で、次の3つの次元― Lex Communis(建造環境)、Praxis Communis(人々の実践)、Res Communis(自然環境)― で捉えることができます。都市空間の中でのコモンズの調査・検討を通して、新橋の高架下を活用する案、吉祥寺の住宅街の空き地を共同庭園に活用する案、渋谷の水資源のアクセシビリティ(利便性)を高める案などが出ました。

皇居と隣接する北の丸公園を結ぶランナーと歩行者のための橋の再構築プロジェクトでは、実際に現地を訪れ、周辺の自然環境、建造環境や人々の行動を観察し、周辺エリアの調査・分析を行いました。公共の場所をデザインするにあたっては、想像力だけでデザインするのではなく、人々の行動を理解する必要があります。街のことをよく知るために、実際に現地を訪れ調査したことは興味深く良い経験となりました。

ポスター展示

事例発表後の休憩時間には、メディアホールにて創造性育成科目として登録されている43科目のポスターセッションを実施し、リラックスした雰囲気の中、各科目の講義の実施状況や特色について情報共有を行うとともに、さまざまな分野の教員および学生が本学の教育について意見交換を行いました。今回展示された創造性育成科目のポスターは、今後1年間、ものつくり教育研究支援センター(大岡山キャンパス 大岡山南2号館1階)に展示されます。

ポスターセッションの様子
ポスターセッションの様子

創造性教育科目ポスター展示
創造性教育科目ポスター展示

講演

フォーラム後半は、岡山大学の大橋教授から、「工学部機械系学生への創造力育成の取組み」と題して、岡山大学で行われている先端的な事例が紹介されました。

講演「工学部機械系学生への創造力育成の取組み」

講演者:大橋一仁教授(岡山大学大学院 自然科学研究科)

工学部機械系学生への創造力育成の取組み

講演する大橋教授(岡山大学)
講演する大橋教授(岡山大学)

大学では講義を行い、筆記試験で評価するという形式がほとんどですので、学生はすぐに正解を求めるようになります。しかし、社会に出ると正解(唯一解)が存在する問題ばかりではなく、むしろ正解の無い問題が多く、自分で考え創造することができなければ成果はあげられません。本講義では、まず自分の発想力の初期値を認識してもらうために、ある問題に対していくつアイデアを出すことができるかということを試します。例えば、「ある惑星では月が1日の内に新月→満月→新月へと満ち欠けしていく。このメカニズムを思いつく限り発想してください。」というような問題です。最初は正解のない不慣れな状況に戸惑いを見せる学生もいましたが、段階的に創造力を養っていくことで、既成概念に捉われない発想ができるようになっていきます。さらに、からくりの茶運び人形をデフォルメしたメカニズムの製作コンテストを通して、発想とその実現について訓練を実施しています。大学院生向けには企業レベルに近づけるべく、授業の一環としてビジネスプランやアイデアのコンテストに参加しています。学内からの評価だけでなく学外からの評価を得られることで刺激を受け、学生のモチベーションを高く保つことができています。

パネルディスカッション

講演に引き続き、教育革新センターの田中岳教授の進行により、「創造性を育成する授業」について、ものつくり教育研究支援センター長 山田明教授及び今回事例発表を行った塚本教授、森准教授、講演者の大橋教授を交え、パネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、事例発表と講演の内容を交錯させることで「創造性を育成する授業」のあり方が検討されました。討論では、「創造性とは?」といった出口の見えない迷路へ入り込まないことに留意しつつ、授業の効果を高める工夫、発想力の評価、創造性と制約などを論点とし、活発に意見交換が行われました。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

議論していく中で出されたユニークな発言には、次のようなものがありました。

  • 歴史を振り返るような講義(例えば技術史)が、創造性教育の準備になる。
  • 過去と現在の状況を相対的に捉え直すことで、歴史に自身を位置づけられる。
  • 学生個々の感性を引き出すのが、教員の役割である。
  • 例えばブレーンストーミングなどでは、出されたアイデアの数(量)を評価する時もあり、発想の数が質を担保するような場面もある。
  • そこで課題となる質については、面白さや親しみやすさ、美しさなど、質の意味するところを具体化する。
  • プロトタイプ開発など試作後には、省察の時間をもつ。
  • 発想の幅を広げるために、あえて制約を加える。

議論を終えてのラップアップでは、「創造力を伸ばすというよりも批評性を身につけることで創造力が培われるのでは?」「創造性育成と言いながらも講義内容の応用を教えているのでは?」といった現行の大学教育に対する課題も示されました。

短い時間という“制約”のおかげで、パネルディスカッション自体が密度ある意見交換の場となりました。

フォーラム後のアンケートでは、

  • 他の系・コースの事例を知ることができ、参考になった。
  • 座学と創造性育成科目の間をいかに上手に繋げていくのか、他の事例を聞いて考えさせられた。
  • 各科目の担当の先生が手をかけ、時間をかけて、工夫している取組みが伝わってきた。伝統を感じた。

といった意見があり、今後の創造性教育の発展へと繋がるフォーラムとなりました。

創造性育成科目は毎年、系、コース、学科、専攻から申請を受け、登録・選定を行っております。創造性育成科目については、下記のページをご覧下さい。

関連リンク

お問い合わせ先

教務課教育企画グループ

E-mail : kyo.kyo@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-7603

地球生命研究所 EONプロジェクト年次総会開催報告

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東京工業大学 地球生命研究所 EON(イオン;ELSI Origins Network)プロジェクトの年次総会が、1月5日~6日に神奈川県小田原市において開催されました。

EONプロジェクトは、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるアメリカの慈善団体、ジョン・テンプルトン財団より多額の競争的研究資金の提供を受け2015年7月1日に発足し、33ヵ月間にわたって活動してきました。

集合写真

集合写真

EONの発足は、地球生命研究所 主任研究員(参与)であり、アインシュタインや湯川秀樹が在籍し研究していた米国プリンストン高等研究所にも籍を置くピート・ハット教授が約2年の月日を費やした努力の結果です。

東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)は、2012年12月に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラムとして採択され、設立されました。2015年には新棟も建設され、現在では2つの研究棟において総勢約70名の研究者とポスドクが、生命の起源に関連する、惑星科学、地球物理学、化学、生物学、物理、複雑系科学、コンピューターシュミレーションなど多岐にわたる研究を行っています。

EONプロジェクトは、今までなかった一貫性のある永続的なグローバルネットワークを確立し、生命の起源という謎を解明するために生まれました。多岐の分野に渡る研究により次の3つの問いに挑戦しています。

  • 地球上で生命はどのようにして始まったのか?(How did life arise on Earth?)
  • 宇宙に生命体はどのくらい存在するのか?(How common is life in the Universe?)
  • 生命の出現はどのような基本原則によって理解できるのか?(What fundamental principles explain the emergence of life? )

生命の起源に関する研究のため、本プロジェクトはELSIを中心として、現在500名を超える研究者を擁する世界的な学際的ネットワークを作り出しました。そのゴールとは、分野の異なる科学的アイディアを皆で持ち寄り、更なる展開を見つけ、謎を解明していくという世界的規模の共同研究コミュニティを形成し、次世代へ多くの分野における認識や疑問を手渡していくことです。また、ELSIのゴールである、日本におけるグローバル化、世界トップレベルの生命の起源についての最先端の研究ができる研究所の実現にも貢献してきました。

今年のEONプロジェクトの年次総会には、国際的に活躍する55名の研究者が集合しました。

そのうち12名のEONポスドク研究員による、研究成果発表、意見交換会などが行われました。大変有意義な時間を過ごしたことで、更なる新しいアイディアや共同研究の進行が期待できます。

EONポスドク研究員の任期は2年間で、その間、ELSIと海外の研究所を行き来しました。それらの研究所は、米国のワシントン・カーネギー協会、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターとエイムズ研究センター、カリフォルニア工科大学、エモリ―大学、南カリフォルニア大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ラトガーズ大学、英国のケンブリッジ大学、オーストリアのウィーン大学、デンマークの南デンマーク大学、フランスのピエール・マリー・キュリー大学 インテリジェントシステム・アンド ロボティクス研究所(ISIR)です。

今年の年次総会には、EONプロジェクトのアンバサダーである「グローバル・サイエンス・コーディネーター(GSC)」も参加しました。GSCの主なメンバーは、NASAワシントン本部、NASAジェット推進研究所、コロンビア大学、ハーバード大学など第一線で活躍する研究者です。研究員の採用やEONの広報活動において、重要な役割を担っています。また、EONプロジェクトの役員の一人である、マルチェロ・グレイサー教授 (米ダートマス大学)による基調講演も行われ、有意義な総会となりました。

EONプロジェクトの第一期は3月31日をもって終了となりますが、第二期にむけて更なる企画を進めていくことになりました。今後の活動にご期待ください。

お問い合わせ先

EONプロジェクト

E-mail : eon-info@elsi.jp

Tel : 03-5734-2740


留学生の「日本語研修コース修了ポスター発表会」に洗足池小学校の生徒が参加

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1月24日、大岡山キャンパス西1号館のラウンジにて、本学留学生(日本語研修生)による「日本語研修コース 修了ポスター発表会」を開催しました。発表会には、大岡山キャンパス近郊にある大田区立洗足池小学校から、6年生28名、酒巻浩二校長ほか4名の先生を含めた33名の訪問を受けました。

留学生は、昨年11月に日本の初等教育の現場を見ること、そして学習した初級日本語がどのように役に立つかを日本人の小学生との交流から体験することを目的として洗足池小学校を訪問しており、今回は2度目の顔合わせです。ポスター発表では各自が自由にテーマを選択し、母国の名物料理や趣味のヒップポップダンスなど多岐にわたる大変興味深い魅力的な内容で参加者を楽しませていました。1セッション45分の設定のため、時間に制約があるものの、参加した小学生が積極的に質問をする姿が見られました。一方、留学生も4ヶ月間にわたって集中的に学んだ日本語を駆使し、身振り手振りを交えながら、時に小学生へも質問を返すなどインタラクティブ形式で進められました。発表会全体を通して積極的な交流が図られ、終了が惜しまれつつ幕を閉じました。

今後も、近隣の小学校をはじめ、地元の方々との交流を深めるグローカル(グローバル+ローカルの合成語)な活動を継続していきます。

アルプスの少女ハイジのルーツとなったスイスについて説明する留学生
アルプスの少女ハイジのルーツとなったスイスについて説明する留学生

インドネシアのターメリックライスについて説明する留学生
インドネシアのターメリックライスについて説明する留学生

タイの色々な種類の麺について説明する留学生
タイの色々な種類の麺について説明する留学生

台湾の朝食について説明する留学生
台湾の朝食について説明する留学生

バーレーンのグルガオンの祭典について説明する留学生
バーレーンのグルガオンの祭典について説明する留学生

プレゼンテーションでは和やかな交流も
プレゼンテーションでは和やかな交流も

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お問い合わせ先

ILA 日本語セクション

E-mail : hirakawa.y.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3374

太陽よりも低温な恒星をまわる太陽系外惑星を多数発見

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約200光年先の系外惑星がハビタブルゾーン付近に存在

要点

  • トランジット法で低温な恒星を周回する太陽系外惑星を新たに15個発見
  • その中でも太陽系外惑星K2-155dは表面に液体の水が存在する可能性がある
  • 低温な恒星まわりの惑星は太陽型恒星まわりの惑星とよく似た性質を保有

概要

東京工業大学 理学院 地球惑星科学系の平野照幸助教、宮川浩平大学院生(修士課程2年)、佐藤文衛准教授、同大学の地球生命研究所(ELSI)の藤井友香特任准教授らの研究チームは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による観測(K2ミッション)で取得したデータを解析し、さらに地上の望遠鏡での追加観測で、低温な恒星(M型矮星[用語1])を周回する地球の3倍以下のサイズの太陽系外惑星[用語2]を新たに15個発見した。

特に明るいM型矮星であるK2-155のまわりには3つのスーパーアース[用語3]が見つかり、このうち一番外側の惑星K2-155dは惑星と恒星が適度に離れているため、表面に液体の水が存在する可能性があることが分かった。

また、これまでよく分かっていなかった低温な恒星を周回する惑星についてその特徴を調査したところ、惑星半径など太陽に似た恒星を周回する惑星の特徴とよく似ていることが分かった。

研究成果は、2月23日発行の米国科学誌「Astronomical Journal (アストロノミカルジャーナル)電子版」に掲載された。

研究成果

研究チームは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡が行っている探査ミッション「K2」で取得したデータを解析し、惑星が恒星の前を通過して食を起こす(トランジット)手法で、惑星候補を持つ低温な恒星(M型矮星)を数十個同定した。さらに、それら惑星候補を持つ星々に対して、ハワイのすばる望遠鏡、スペインの北欧光学望遠鏡、岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡などを用いた地上からの追加観測を実施し、新たに10個の低温な恒星を周回する計15個の惑星を確認した。これほど多くの系外惑星を一度に発見したのは国内では初めてだ。このうち、明るいM型矮星である恒星K2-155は、3つのスーパーアースを持ち、特に一番外側、地球半径の約1.6倍の半径を持つ惑星K2-155dはハビタブルゾーン[用語4]付近に存在することが判明した。このためK2-155dは、中心星から受け取る輻射エネルギーの大きさと大気組成によっては、表面に液体の水が存在しうる温暖な気候を持つ可能性がある(図1)。K2-155はトランジットする惑星を持つM型矮星の中でも、可視光線で最も明るい恒星の1つであるため、今後も惑星質量の精密測定や大気の探査等を行う上で、格好のターゲットとなる。また研究チームは新たに見つかった惑星を含む、M型矮星を周回する惑星の特徴について詳細に調べた。その結果、(1) 半径が1.5~2.0地球半径の惑星が統計的に少ないこと(図2)、(2) 周期2日以内には大きめの惑星(2地球半径以上)がほとんどないこと、(3) 3地球半径を超える巨大惑星は金属を多く含む恒星のまわりにのみ存在するなど、太陽型の恒星まわりで見つかっている惑星と似た特徴を持つことを突き止めた。

このことは、太陽よりもずっと低温な恒星を周回する惑星が、太陽型の恒星を周回する惑星と同様の物理過程を経て、形成・進化してきたことを示唆しており、惑星形成メカニズムを解明する上で極めて有益な情報となる。

K2-155dの気候モデル計算の結果

図1.K2-155dの気候モデル計算の結果(※地球と同様の大気を持つ場合)。

K2-155dが中心星から受け取るフラックス(単位時間単位面積あたりのエネルギー)は1.67±0.38太陽定数(地球が太陽から受け取るフラックス)と見積もられており、実際の値が1.5太陽定数程度以下であるとすると表面は温暖な気候となる。

これまで見つかっているM型矮星まわりの惑星の半径の度数分布。

図2.これまで見つかっているM型矮星まわりの惑星の半径の度数分布。

惑星半径が1.5~2.0地球半径のところに谷(ギャップ)が見られる。緑は早期M型星(温度が3,500~4,000 Kの恒星)、赤が晩期M型星(温度が3,500 K以下の恒星)に対応している。

研究の背景

これまで見つかっている系外惑星の90%以上は太陽に似た星(太陽型の恒星)のまわりで発見されている。一方、我々の銀河系に最も多く存在する恒星は質量が太陽の約6割に満たない低質量・低温の恒星(M型矮星)であるが、一般に暗いためにあまり探査が進んでいなかった。東京工業大学 理学院 系外惑星観測研究センターでは、系外惑星の特徴と起源の解明のため、低温な恒星の観測による系外惑星探査を実施していた。

今後の展開

低温な恒星を周回するトランジット惑星は、今回新たに加わった惑星を含めても100個あまりしか見つかっておらず、すでに数千個が見つかっている太陽型恒星を周回するトランジット惑星に比べると、まだその素性は謎に包まれている。K2ミッションは進行中で、今後も多くの低温な恒星でトランジット惑星が見つかると期待される。また、今年4月にはNASAの次世代トランジット系外惑星探索衛星”TESS”の打ち上げが予定されており、明るい恒星を中心に全天でトランジット現象を利用した探査が実施される。東京工業大学 理学院 系外惑星観測研究センターでは引き続きK2、TESS等の衛星ミッションと連携し、ハビタブルゾーン内の地球型惑星を含め、多くのユニークな系外惑星の発見を目指していく。

用語説明

[用語1] M型矮星 : 有効温度が約4,000 K以下の低温の恒星をM型矮星と呼ぶ。太陽は約5,800 K。

[用語2] 太陽系外惑星 : 太陽以外の恒星を周回する惑星を太陽系外惑星(系外惑星)と呼ぶ。これまでの観測で、3,500個以上の系外惑星が確認されている。

[用語3] スーパーアース : 厳密な定義は存在しないがケプラーミッションでは地球の1.25倍から2.0倍の半径を持つ惑星をスーパーアースと呼んでいる。質量はおよそ10地球質量以下であることが多い。

[用語4] ハビタブルゾーン : 恒星と惑星の距離が適度に離れているため、地球のように水が液体の状態で存在しうる惑星の軌道範囲をハビタブルゾーンと呼ぶ。M型矮星の場合ハビタブルゾーンは太陽型の場合よりずっと中心星に近く、比較的短周期の惑星(周期60日以下)がハビタブルゾーンに入る。

論文情報

掲載誌 :
The Astronomical Journal
論文タイトル :
Exoplanets around Low-mass Stars Unveiled by K2
著者 :
Teruyuki Hirano, Fei Dai, Davide Gandolfi, Akihiko Fukui, 他37名
DOI :
掲載誌 :
The Astronomical Journal
論文タイトル :
K2-155: A Bright Metal-Poor M Dwarf with Three Transiting Super-Earths
著者 :
Teruyuki Hirano, Fei Dai, John H. Livingston, Yuka Fujii, 他31名
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 地球惑星科学系/系外惑星観測研究センター

平野 照幸 助教

E-mail : hirano@geo.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2616 / Fax : 03-5734-3538

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

ウィンタープログラム2017-2018開催報告

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2017年11月28日~2018年2月6日の10週間、メルボルン大学(オーストラリア)を中心とした本学協定校との連携による国際化の推進を目的として、ウィンタープログラム(Tokyo Tech Winter Program 2017-2018)を開催しました。

ウェルカムランチ 集合写真

ウェルカムランチ 集合写真

前年度のウィンタープログラムへの参加学生は10名でしたが、第2回目となる今年度は、学士課程4年生から修士課程の学生まで、メルボルン大学、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)、ミュンヘン工科大学(ドイツ)の3大学から14名が参加しました。

開講式後に行われたウェルカムランチには、参加学生の受け入れ教員、所属研究室から選出された学生チューター、ホームビジット受け入れ学生らが多数参加し、プログラムは初日からとても和気あいあいとした雰囲気で始まりました。

附属図書館大岡山本館内で勉強するメルボルン大学のメリガン・ハンナ・クレアさん(左)とバンドパドヘイ・ラドラシシュさん(右)

附属図書館大岡山本館内で勉強するメルボルン大学のメリガン・ハンナ・クレアさん(左)とバンドパドヘイ・ラドラシシュさん(右)

研究中心プログラム

約10週間にわたるプログラム期間、参加学生14名は受け入れ教員の指導の下、本学での研究活動に取り組みました。研究室での研究活動のかたわら、参加学生は必修科目「ジャパン スタディーズ(Japan Studies)」での講義や企業・研究所見学に参加しました。

受入研究室からのメッセージ

青柳研究室

受入担当教員: 工学院 電気電子系 青柳貴洋准教授

参加学生:メルボルン大学 メリガン・ハンナ・クレアさん

私の研究室では環境電磁工学や無線通信工学の研究を行っており、特に最近は、情報通信技術により医療やヘルスケアを支援するためのネットワークやアプリケーション技術の研究を行っています。

今回、ウインタープログラムで本研究室に来られたハンナさんは、様々な生体情報を無線センサにより取得、収集するための無線ボディエリアネットワーク分野の研究を希望されていました。ハンナさんは東工大で研究を進めることにとても意欲的で、研究テーマに関しても複数の提案をいただきましたが、3ヵ月という短い研究期間から、モバイルで呼吸音を測定するIoTセンサ端末の開発とその信号処理をテーマとしていただきました。回路と基板の設計から半田付けによる製作まで行い、試作端末を完成させました。

短い滞在期間の中で研究を進めることはもちろん、研究室でのゼミ、研究報告会にも全て参加していただいたほか、研究室旅行にも参加して日本人の学生さん達と交流していただいたことは研究室にとってもよい刺激になったと思います。

メリガンさん(左)と青柳准教授

メリガンさん(左)と青柳准教授

寺野研究室

受入担当教員: 情報理工学院 情報工学系 寺野 隆雄教授

参加学生:ミュンヘン工科大学 ニケル・マヌエル・アレクサンダーさん

GEARouterにようこそ。我々の研究は、最近、急速に注目を集めている進化計算と人工知能のトピックを含んでいます。実際、マニュ君(ニケルさんのニックネーム)の興味も人工知能、特に、深層学習(ディープラーニング)に関するものでした。

このテーマは研究室のメンバーを興奮させるものです。それゆえ、マニュ君と研究室のメンバーとの間でかわされる研究と日本での生活に関する会話と討論は、スムーズですばらしく、また充実したものでした。彼がこのようなコースに参加するのは大阪大学についで2度目であり、また、今回、渋谷でたまたま当時の日本の友人に会ったのは驚きであったと話していました。研究でも日常生活でも、こんな経験をするには世界は狭すぎるのです。次の機会には、また、例の納豆レストランにみんなで行けることを望んでいます。

ニケルさんと寺野研究室の仲間たち

ニケルさんと寺野研究室の仲間たち

日本企業・研究所訪問

2017年12月6日には必修科目ジャパン スタディーズの一環で、JXTGエネルギー株式会社の根岸製油所(横浜)を見学しました。担当者から企業概要や製油プロセス、石油製品について説明がなされている間、参加学生はメモを取りながら真剣に聞いていました。また、持続可能社会の実現に向けた石油企業による環境保全への取組みについて説明を受け、参加学生は企業が負うべき社会的責任について理解を深めました。活発な質疑がなされた後には、広大な敷地内をバスで移動し、ETBE製造装置、残油流動接触分解装置、水素製造装置、非常時の延焼予防用の水幕装置を間近で見学しながら説明を受けました。

12月12日には、物質理工学院の吉川史郎准教授、メルボルン大学から来学中のキャサリン・サットン特任講師の引率の下、昨年に引き続き産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を訪問しました。水素キャリアによるエネルギー貯蔵・利用技術や、風力・地熱発電の効率化、超薄型軽量ソーラーパネルをめぐる研究開発現場の見学を通して、JXTG見学時とは異なる観点から日本の先端的なエネルギー研究や、そうした研究の背景にある日本が置かれたエネルギー事業について理解を深めました。この日、福島は今冬初の積雪に見舞われるというハプニングがありましたが、昼食のためサービスエリアに立ち寄った際には、これまで雪景色を目にしたことのない多くの参加学生が外ではしゃぐ姿が見られました。

福島再生可能エネルギー研究所(FREA)訪問

福島再生可能エネルギー研究所(FREA)訪問

課外活動・体験企画

研究活動や必修科目の他にも、以下の体験企画を通して、参加学生は日本文化を味わい、日本人学生との交流を楽しみました。

サバイバルジャパニーズ

リベラルアーツ研究教育院の協力を得て、日本語レベル初級者の学生を対象とする日本語クラス「サバイバル ジャパニーズ」を提供しました。

サバイバルジャパニーズでの風景

サバイバルジャパニーズでの風景

茶道・浴衣着付け体験

茶道・浴衣着付け体験

ネットワーキングイベント

2018年春にオーストラリア超短期派遣および語学研修モナシュプログラムにてメルボルンを訪問予定の本学学生11名とウィンタープログラム参加学生10名が、ネットワーキングイベントに参加し、互いに交流を深めました。「日本とオーストラリア間の交流を活性化するためにできること」をテーマに、えんたくん※1によるグループワークを実施しました。始めのうちは、日本人学生にはぎこちない様子がみられましたが、イベントも中盤になるとキャサリン・サットン特任講師のファシリテーション※2にも助けられ、双方の学生から面白いアイディアが飛び交うようになりました。最後はグループ毎にまとめた議論内容を発表しました。イベント終了後には連絡先を交換し合い、3月の訪問時の再会を約束する学生達の様子が見られました。

※1
円型の段ボールでできた1枚の板であり、それを参加者の膝に乗せながら自由にアイデアを書き込む対話促進ツール。
※2
学習者主体の参加型の学び合いの場を創り、プロセスを大事にしながら円滑かつ効率的にワークショップを進行させていくこと。

えんたくんを囲んでのグループワーク
えんたくんを囲んでのグループワーク

イベントの様子
イベントの様子

ホームビジット

参加学生の日本文化体験、および本学学生との学生交流を目的としたホームビジットを企画しました。第3回目となるホームビジットは、本学学生9名とそのご家族、本学職員3名の協力により、11名の参加学生が日本の家庭での生活を体験しました。昨年度のウィンタープログラムから試行的に開始したホームビジットでは、これまでに合計50名の参加学生が家庭訪問を行いました。

参加した留学生からは、「日本家庭を体験する機会を得ることができ、とても楽しかった。是非継続してほしい」とのコメントが毎回寄せられています。

今回は、第1回ホームビジット受け入れ家庭として協力した本学学生からのメッセージを紹介します。

ホームビジットに協力した本学学生からのメッセージ

中村俊吾さん(生命理工学部 生命科学 学士課程4年(受け入れ当時3年)、2018~2019 ミュンヘン工科大学派遣留学予定)

ニューサウスウェールズ大学からの留学生 シュ・ワンさんとロビー・フェリクシアナス・ガナワンさんの2名を受け入れました。普段から国際交流に興味があったので、留学生と会話する機会が出来て良かったです。やはり海外から東工大にくる留学生は彼らの国でトップクラスの成績であったり、非常に高い研究へのモチベーションと国際感覚があります。ホームビジットは、少人数な会なので彼らと深くお話することが出来る点もいいところだと思いました。僕の父は英語を喋ることが出来るので、一緒に会話に入って楽しんでいました。またあまり英語が得意でない母も留学生と日本ドラマの話をしてアニー(ワンさんのニックネーム)と盛り上がっていました。家に人を招くことはほとんどないのですが、特別なイベントとして協力して楽しんでくれました。また両親が、息子が英語で話している姿を見て嬉しそうにしていたのを感じることができ、僕自身としても頑張って留学生を受け入れて良かったと思いました。

左から、ワンさん、ガナワンさん、中村さん

左から、ワンさん、ガナワンさん、中村さん

研究成果発表会

プログラム最終日には、参加学生14名がそれぞれ10分間の研究成果発表を行い、活発な質疑応答が交わされました。参加学生の所属研究室からは、チューター学生をはじめとする多くの研究室メンバーが応援に駆けつけてくれました。

参加学生の研究室の仲間が駆け付けてくれた研究成果発表会

参加学生の研究室の仲間が駆け付けてくれた研究成果発表会

修了証書を手にする参加学生14名

修了証書を手にする参加学生14名

ベストプレゼンテーション賞を受賞したメルボルン大学バンドパドヘイさんと関口秀俊副学長

ベストプレゼンテーション賞を受賞したメルボルン大学バンドパドヘイさんと関口秀俊副学長

本プログラムは、「スーパーグローバル大学創成支援事業(Top University Global Project)」による取組みとして開始しました。

「スーパーグローバル創成支援事業」は、2015年に文部科学省が開始したプログラムで、日本の高等教育の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と組み合わせて重点支援を行うことを目的としています。

1月22日 雪景色に恵まれた東工大大岡山キャンパス

1月22日 雪景色に恵まれた東工大大岡山キャンパス

お問い合わせ先

東京工業大学 学務部 留学生交流課
Tokyo Tech Winter Program

E-mail : winter.program@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3785 / 3786

GSA(大学院生アシスタント)プログラム初の認定証授与式を開催

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2017年12月21日、教育革新センターによる、GSA(Graduate Student Assistant)プログラム初となる認定証授与式が開催されました。

認定証を手にした学生たち

認定証を手にした学生たち

GSAとは教員と協働で学士課程の教育活動などに携わる大学院生アシスタントのことで、文部科学省の支援事業である「学びのコミュニティ」をサポートします。「学びのコミュニティ」は、構成員の学士課程学生、大学院生、教職員が相互に学びあうことを目指しており、その中で、GSAは授業科目や学びのサポートの場を通じて学士課程学生の学びを支援し、自らの学びを深めていきます。

世界のトップユニバーシティでは、同様の仕組みによって学習意欲の増進やリーダーシップ育成へとつながる教育システムがすでに実現されています。東工大においても、学士課程学生の学びのサポートや教材開発を通してリーダーシップ力やファシリテート力を身につけることができるGSAプログラムを、教育革新センターとリベラルアーツ研究教育院が連携して推進しています。

GSAプログラムには現在、GSA-F(GSAファシリテーター)、GSA-R(GSAレビューアー)、GSA-D(GSAデベロッパー)の3つのコースが設けられています。GSA-Fは授業における学生の学びの活動を教員と協力しながら支援し、ファシリテーション能力を身につけていくコース、GSA-Rは学生の執筆活動を支援するピアレビューの能力を身につけていくコース、GSA-Dはオンライン教材の制作を教職員や他の学生と協働して行うことで、そのスキルを身につけるコースとなっています。いずれのコースでも規定条件を満たす実践を修了すると、教育革新センターから認定証が授与される制度となっています。これは、学びのコミュニティのなかでGSAとしての責務を果たした証です。

今回はGSAファシリテーターの認定を受けた12名の大学院生のうち、欠席者を除く9名が大岡山西9号館2階セミナールームでの授与式に臨みました。はじめに、松澤昭センター長から祝辞とともに今後の活躍への期待が語られました。

学生たちは、リベラルアーツ研究教育院が開講している大学院文系教養科目のうち、「リーダーシップ道場」で良いチームビルディングのためのリーダーシップ力を身につけ、さらに「リーダーシップアドバンス」で学士課程1年生の必修科目「東工大立志プロジェクト」に参画するなどの実践を通してファシリテート力や学習支援力を身につけました。仲間や後輩の学びのサポートを通じて自らの成長も実感した学生たちの、晴れやかな表情が印象的でした。

続いて、松澤センター長から、一人ひとりに認定証が授与された後、学生代表がスピーチを行いました。「受け身の授業ではなく、自分から学びにいく授業に新鮮さを感じました。『自分の考えを上手に表現するにはどうしたらよいか』について考えることを通して、自らの内側に意識を向けるきっかけになりました」との言葉に、教授陣は嬉しそうに頷いていました。

最後はリベラルアーツ研究教育院 室田真男教授からの挨拶で締めくくられました。「大変意欲的、前向きな学生が多く、教員としても楽しい授業でした。これから博士後期課程に進学する人も就職する人も、GSAとして身につけた能力をさらに伸ばしていってください」との話とともに、和やかに授与式が終了しました。

祝辞を述べる松澤センター長
祝辞を述べる松澤センター長

挨拶をする室田教授
挨拶をする室田教授

GSAは、東工大が全学規模での構築を目指している「学びのコミュニティ」の中核となることが期待されています。

今後プログラムの進展に伴い、さらに多くのGSAファシリテーター、GSAレビューアー、GSAデベロッパーが誕生します。

これからのGSAプログラムにぜひご期待ください。

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お問い合わせ先

教育革新センター、リベラルアーツ研究教育院

E-mail : gsa@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3776

本学学生がACM国際大学対抗プログラミングコンテスト世界大会2018へ出場決定!

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本学学生チームが2018年ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト世界大会(ACM International Collegiate Programming Contest(ACM-ICPC) World Finals 2018)に出場することが決定しました。

※ACM…Association for Computing Machineryの略称。情報理工学に関する国際的な学会。

ACM-ICPCとは

ACM-ICPCは、ACMが主催する大学対抗で行われる世界規模のプログラミングコンテストです。同じ大学の3人の学生がチームを結成し、チームでプログラミングと問題解決の能力を競う大会です。各大学から複数のチームが国内予選に出場し、その成績により選抜されたチームが地区予選(日本の場合はアジア地区予選)に出場、各地区から選抜された最優秀チームが世界大会に出場するというしくみとなっています。全世界で毎年3万人以上が参加する大会で、世界大会は1つの大学から1つのチームしか参加できないことから、大学対抗プログラミングコンテストと位置づけられています。

問題の難易度は様々で、単純な計算問題から、複数のアルゴリズムを組み合わせて解く問題まで多岐にわたります。また、ACM-ICPCの特徴として、チーム戦であることが挙げられます。チームには1台のコンピュータしか与えられないため、個人のプログラミング能力だけではなく、1台のコンピュータをいかに効率よく活用するかというチームワークの良さも重要なポイントです。

チーム ニンジャリバトン(ninjaribaton)が世界大会出場へ

本学からはアジア地区予選つくば大会(2017年12月16日~17日)に3チームが参加し、そのうちの1つであるチーム ニンジャリバトンの世界大会への出場が決定しました。

チーム ニンジャリバトンは、つくば大会において大学別3位という優れた成績をおさめました。

チーム ニンジャリバトン構成メンバー

チームメンバー

  • 福成理紀

    工学部 情報工学科 学士課程3年

  • 太田幹人

    情報理工学院 情報工学系 学士課程2年

  • 吉田拓人

    第5類 学士課程1年

コーチ

  • 中村誠希

    情報理工学院 数理・計算科学系 博士後期課程2年

日本からは本学と筑波大学の2大学が世界大会への出場権を獲得しています。世界大会は、中国・北京にて4月15日~20日に開催される予定です。

左から中村さん、福成さん、太田さん、吉田さん

左から中村さん、福成さん、太田さん、吉田さん

お問い合わせ先

学術国際情報センター 西崎真也

E-mail : icpc@lambda.cs.titech.ac.jp

2018年4月入学に係る学士課程入試の合格発表

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2018年4月入学に係る前期日程試験および後期日程試験の合格者受験番号は、大岡山キャンパス70周年記念講堂脇に掲示します。

また、合格者受験番号は、以下のウェブページ上でも公開します(私費外国人留学生特別入試についてはウェブページのみ)。

各試験のウェブページ上での発表日時は以下のとおりです。

試験名
発表日
入学者選抜試験 【前期日程】
2018年3月8日(木)13:00頃
私費外国人留学生特別入試
2018年3月8日(木)13:00頃
入学者選抜試験【後期日程】(第7類)
2018年3月20日(火)13:00頃

金属と分子の結合形成過程を分子レベルで解明

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太陽電池などの高性能化に期待

要点

  • 金属電極間に単分子を架橋させた単分子接合[用語1]の構造と電子状態の変化を捉えた
  • 分子の軌道エネルギーのシフトとシフト量が金属と分子間の結合様式に依存していた
  • 有機ELや太陽電池など有機デバイスの動作機構の解明や機能向上につながる成果

概要

東京工業大学 理学院 化学系の一色裕次大学院生(修士課程1年)、藤井慎太郎特任准教授、木口学教授らの研究グループは、単分子接合の電気特性を精密計測して、金属電極と分子間の結合形成過程を分子レベルで解明する事に成功した。

まず、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、ジアミノベンゼン(DAB)、ピラジン(PY)、ビピリジン(BPY)、フラーレン(C60)の各分子と金属電極からなる単分子接合を作製した。単分子接合の電流―電圧特性(I-V特性[用語2])を計測することで、分子軌道のエネルギー位置を実験的に決定した。金属と分子間の距離に応じ、分子軌道のエネルギー位置は変化するが、これは金属と分子の結合様式に依存することがわかった。理論計算でも、金属と分子間の距離に依存した軌道エネルギーシフトを再現し、さらに実験結果と比較することで金属と分子界面の構造を決定した。

有機EL、太陽電池などの有機デバイスの開発では金属と分子界面の精密制御が鍵となる。本研究は、金属と分子の結合形成の様子を分子レベルで解明することに成功し、デバイス特性を最適化する界面の設計指針を与える結果となった。ここで得られた界面設計指針は、有機デバイスの動作機構の解明、機能向上へとつながると期待される。

研究成果は2018年2月22日発行の米国化学会誌「J. Am. Chem. Soc.」にオンライン掲載された。

単分子接合の電流―電圧特性(I-V特性)計測の概念図(両脇の黄色が金属で、間の青い構造体が分子)

単分子接合の電流―電圧特性(I-V特性)計測の概念図(両脇の黄色が金属で、間の青い構造体が分子)

背景

分子を金属表面に近づけると、分子の軌道と金属の軌道が混じりあい化学結合が形成され、分子は金属表面に吸着する。分子の吸着過程に伴う結合形成過程の解明は、触媒反応や化学結合を理解するために重要だ。また金属と分子の界面構造および電子状態の解明は、有機ELや有機太陽電池などの有機デバイスの動作機構の解明、機能向上のために不可欠である。これら有機デバイスでは、電極金属から分子への電荷の移動をいかに効率よく起こすかが鍵となり、電荷輸送特性は、界面の構造および電子状態に依存する。

これまで金属表面上の分子吸着系について様々な研究が行われてきたが、金属と分子の距離を変えながら、界面構造や電子状態の変化を明らかにすることは困難であった。なぜならば、金属と分子の距離を精密に制御し、準安定状態で、その構造や電子状態を決定することが、実験的に難しかったからだ。

研究成果

研究グループでは、金属電極間に単分子を架橋させた単分子接合を用いて、電極間距離を変化させながら、単分子接合のI-V特性の計測から、電子状態を導き出した。単分子接合では、電極間距離を変えることで金属と分子間の距離を自在に制御することができる。ジアミノベンゼン、ピラジン、ビピリジン、フラーレンを吸着させた金(Au)の単結晶基板に、同じく金(Au)のSTM探針を近づけることで計測を行った。単分子接合に与える電圧を、一定速度で変化させて、単分子接合を流れる電流を計測することで、単分子接合のI-V特性を計測した(図1a)。図1bは1,000個のフラーレン単分子接合を計測し、I-V特性を重ねたものである。非線形なI-V特性は分子軌道を介して電荷が輸送されたことを示しており、一軌道モデル[用語3]に基づき個々のI-V特性を解析することで、分子の軌道エネルギー(ε)および金属と分子軌道の重なり具合(Γ)を決定することができる(図1c)。

(a)単分子接合の電流―電圧計測、(b)1,000個のC60単分子接合について計測したI-V特性を重ねた図、(c)単分子接合の構造モデルおよび電子状態の概念図。Γとεはそれぞれ金属と分子軌道の重なりの大きさ、エネルギー差を表す。
図1.
(a)単分子接合の電流―電圧計測、(b)1,000個のC60単分子接合について計測したI-V特性を重ねた図、(c)単分子接合の構造モデルおよび電子状態の概念図。Γεはそれぞれ金属と分子軌道の重なりの大きさ、エネルギー差を表す。

図2にI-V特性から得られた、単分子接合を伸長させた際の分子軌道のエネルギー変化を示す。図では数千個の単分子接合から求めた実験結果と計算結果を示している。ジアミノベンゼンでは、伸長距離が変わっても分子軌道のエネルギーはほとんど変化しなかった。ピラジンとビピリジンは、似た挙動を示し、伸長距離が短い領域では、距離に従って分子軌道は低エネルギー側にシフト後、その後はあまり変化しなかった。フラーレンでは、逆に伸長距離が短い領域では、距離に従って高エネルギー側にシフトし、その後一定値となった。この傾向は、計算結果でも再現できた。

DAB、PY、BPY、C60単分子接合を伸長させた際の分子軌道のエネルギーシフトの様子。(a-d)計算結果、(e-h)単分子接合のI-Vから決定した実験結果。PYおよびBPYでは接合を伸ばしていくと軌道は低エネルギーシフトし、その後一定となる(f、g)。C60では接合を伸ばしていくと軌道は高エネルギーシフトし、その後一定となる。DABではあまり軌道エネルギーはシフトしない。
図2.
DAB、PY、BPY、C60単分子接合を伸長させた際の分子軌道のエネルギーシフトの様子。(a-d)計算結果、(e-h)単分子接合のI-Vから決定した実験結果。PYおよびBPYでは接合を伸ばしていくと軌道は低エネルギーシフトし、その後一定となる(f、g)。C60では接合を伸ばしていくと軌道は高エネルギーシフトし、その後一定となる。DABではあまり軌道エネルギーはシフトしない。

接合する分子によって、分子軌道のエネルギーシフトの様子は異なったが、この結果は金属と分子間の結合様式によって説明することができる。ジアミノベンゼンの場合は、分子の窒素原子が電極の金原子とσ結合[用語4]で結合している。σ結合は窒素と金の原子間距離にのみに依存し、金属電極における分子の配向などに依存しない。そのため、電極間距離が変わっても軌道の重なりはあまり変化せず、分子軌道のエネルギーはあまり変化しなかった。ビピリジンの場合、分子の窒素原子と電極の金原子の間では、これら原子間のσ結合に加えて、結合軸に直交する窒素のp軌道(図中の緑の軌道)が金の軌道とπ結合[用語5]を形成しうる。電極間距離が短い場合には、窒素のp軌道が金の軌道とよく重なりあい、強いπ結合を形成する(図3A)。ここで、電極間距離を離していくと、窒素のp軌道が金の軌道と相互作用しにくくなりπ結合が弱くなる(図3B)。2つの軌道が相互作用すると、図3に示すように軌道混成し、結合性軌道と反結合性軌道が形成される。相互作用が強いほど反結合性の軌道は元の軌道から離れる。分子接合で観測した分子軌道は、金属と分子の混成軌道に対応する。したがって伸長距離が増加し、π結合が弱まると、反結合性軌道が金の軌道エネルギーに近づくことになる。さらに分子接合を伸長させると、分子と金電極はσ結合のみを形成するようになり(図3C)、エネルギー位置はほとんど変化しない。

DABおよびBPY単分子接合における界面の結合様式の概念図。(A)、(B)、(C)は図2(g)中に対応。電極間距離が短い時には分子が斜めに吸着し、窒素のp軌道が電極金属のAuの軌道とπ結合する。π結合の大きさは電極間距離が大きくなり、分子が立ってくるに従い減少する。分子が完全に立つとp軌道はAu軌道とπ結合できなくなり、σ結合のみが形成される。分子軌道とAuの軌道の相互作用が強くなると、反結合性の混成軌道のエネルギーはAuの軌道から大きく離れる。
図3.
DABおよびBPY単分子接合における界面の結合様式の概念図。(A)、(B)、(C)は図2(g)中に対応。電極間距離が短い時には分子が斜めに吸着し、窒素のp軌道が電極金属のAuの軌道とπ結合する。π結合の大きさは電極間距離が大きくなり、分子が立ってくるに従い減少する。分子が完全に立つとp軌道はAu軌道とπ結合できなくなり、σ結合のみが形成される。分子軌道とAuの軌道の相互作用が強くなると、反結合性の混成軌道のエネルギーはAuの軌道から大きく離れる。

今後の展開

本研究により、金属と分子の距離に応じた分子軌道のエネルギーシフトを実験的に見出すことができた。これは、金属と分子間の化学結合の形成過程を明らかにできたことを意味する。本研究では、金属と分子の結合様式に応じて、軌道のエネルギーシフトの方向、シフト量が変化する様子が明らかとなった。

有機デバイスでは、分子軌道のエネルギー位置が界面における電子移動の速度を決めるなど、決定的な役目をする。ここでは、分子軌道のエネルギー位置をπ結合で距離によりチューニングすることが可能であることを示した。分子軌道のエネルギーは分子ごとに異なるが、適切な距離に分子をおくことで、デバイス特性を最適な電子状態できる指針を本研究が与えた。この知見を有機デバイスに適用することで、デバイス特性を向上させることができる。

また、本手法を適用することで、σ結合、π結合だけでなく、その他様々な化学結合について、その結合形成過程を明らかにできるかもしれない。これは量子化学をはじめとする物理化学分野にとって重要な知見といえる。

用語説明

[用語1] 単分子接合 : 金属電極間に単分子を架橋させた構造(系)。分子が金属と2ヵ所で接しているため、分子は孤立分子と異なる性質、機能を示すことがある。このため、新物性、新機能探索の場として注目されている。また単分子接合は、単分子に素子機能を賦与させた単分子素子として、次世代の電子素子材料としても注目を集めている。単分子素子では素子サイズが分子サイズになるため、究極の微細化が可能となり、電子素子密度の飛躍的向上が期待されている。

[用語2] I-V特性 : 導体を流れる電流(I)と導体両端の電位差(V)の関係を意味する。後述のように単分子接合のI-V特性は、伝導度に加え、軌道エネルギーなどの情報を与える事が理論提案されている。

[用語3] 一軌道モデル : 単分子接合において、1つの分子軌道を介して、電子がトンネル過程によって伝導すると考えるモデル。このモデルでは、単分子接合を電子が透過する確率は、式1のように表現される。εは図1cに示すように分子軌道と電極の金(Au)の軌道のエネルギー差であり、ΓL, ΓRはそれぞれ左側と右の電極と分子の軌道の重なりの大きさを表す。

式1

単分子接合の電流―電圧特性は、式1を用いることで式2のような形で表現することができる。αΓL/(ΓLΓR)である。

式2

式2を用いて、個々の単分子接合のI-V特性をfittingすることで、軌道のエネルギーを求めることができる。

[用語4] σ結合 : s軌道あるいは結合軸に沿ったpx軌道など、結合軸方向を向いた軌道同士の重なりによって形成される化学結合。π結合より強い結合。水素分子における水素原子間の結合が代表的な例。

[用語5] π結合 : 結合軸に直交したpz軌道同士の重なりによって形成される化学結合。σ結合より弱い結合。アセチレン分子の場合、炭素原子は3つのp軌道をもつ。炭素―炭素間の結合軸に沿ったpx軌道同士がσ結合を形成し、結合軸に直交したpy、pz軌道同士がそれぞれ軌道混成することで2つのπ結合を形成する。

論文情報

掲載誌 :
Journal of the American Chemical Society
論文タイトル :
Fluctuation in Interface and Electronic Structure of Single-Molecule Junctions Investigated by Current versus Bias Voltage Characteristics
著者 :
Y. Isshiki, S. Fujii,* T. Nishino, M. Kiguchi*
所属 :
Department of Chemistry, Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8551, Japan
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 理学院 化学系

特任准教授 藤井慎太郎

E-mail : fujii.s.af@m.titech.ac.jp

教授 木口学

E-mail : kiguti@chem.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2071 / Fax : 03-5734-2071

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


TBSテレビ「未来の起源」に宍戸研究室の学生が出演

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本学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 宍戸厚研究室の久野恭平さん(大学院総合理工学研究科 化学環境学専攻 博士後期課程3年)が、TBS「未来の起源」に出演します。「液晶を光で自在に並べる技術」の研究について紹介されます。

久野恭平さんのコメント

久野恭平さん
久野恭平さん

身近な生活に浸透している液晶は、フレキシブルディスプレイやソフトロボットなど新たな産業への応用が期待されています。今回の取材では、ユニークな性質を付与するために必要不可欠な「液晶を光で自在に並べる技術」の開発について紹介しております。番組を通して、液晶のような柔らかな材料の魅力をお伝えできれば幸いです。

番組情報

  • 番組名
    TBS「未来の起源」
  • 放送予定日
    2018年3月11日(日)23:14 - 23:20
  • (再放送)
    BS-TBS 2018年3月18日(日)20:54 - 21:00

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

斎藤秀司教授がフンボルト賞受賞

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理学院 数学系の斎藤秀司教授が、フンボルト賞を受賞しました。

フンボルト財団会長ヘルムート・シュワルツ教授から賞状を授与された斎藤秀司教授

フンボルト財団会長ヘルムート・シュワルツ教授から賞状を授与された斎藤秀司教授

フンボルト賞は、ドイツ政府の国際的学術活動機関であるアレキサンダー・フォン・フンボルト財団が創設した賞で、人文、社会、理工の分野において、後世に残る重要な業績を挙げ、今後も学問の最先端で活躍すると期待される国際的に著名な研究者に対して授与されるものです。ドイツで最も栄誉のある賞とされています。

今回の受賞の対象となった主な研究は、高次元類体論、高次元Hasse(ハッセ)原理(加藤予想)、高次元Chow(チャウ)群の有限性です。これらは代数幾何学、数論幾何学の広い分野にまたがっています。特に高次元類体論について簡単に説明します。類体論とは20世紀前半に高木貞治とエミール・アルティンより1900年代初頭に完成された偉業で、整数論の礎です。その起源を辿ると200年前のカール・フリードリッヒ・ガウスの業績に至ります。高次元類体論とは、アレクサンダー・グロタンディークのスキーム論を用いてこの類体論を幾何学化し、それを高次元の場合に拡張する理論です。類体論は1次元の特別な場合とみなせます。

斎藤教授の詳しい業績については、日本数学会の会員誌「数学通信」第22巻第1号に掲載された佐藤周友氏による記事「斎藤秀司氏のHumboldt賞受賞によせて」をご覧ください。

数学通信第22巻第1号目次|数学通信|日本数学会outer

受賞を受けて、斎藤教授は以下のようにコメントしています。

フンボルト賞記念式典という特別な機会に私の心に浮かんだのは、両親、妻と家族、師、同僚、友人たちからいただいた計り知れない援助にたいする深い感謝の念です。数学の真理には美しさがあります。私たち数学者は、その美しい心理を探究して日々努力を重ねています。私は、この大切な人類の活動の一翼を担いわずかでも貢献をすることができたことを幸運に感じています。

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“バイオプラスチック”を捕まえるナノカプセル

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疎水性ナノ空間による親水性乳酸オリゴマーの捕捉に成功

要点

  • ナノカプセルの疎水性空間が、水中で親水性の乳酸オリゴマーを内包
  • 加水分解性の環状乳酸2量体は、ナノカプセル空間内で顕著に安定化
  • 多点の分子間相互作用(エンタルピー駆動)により、内包体を安定化

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の草葉竣介大学院生(修士課程2年)、山科雅裕博士研究員、吉沢道人准教授らは、疎水性の空間を有するナノカプセルが、水中で親水性の乳酸オリゴマー[用語1]を強く内包することを発見した。また、ナノカプセル内では、環状の乳酸2量体の分解が著しく抑制された。さらに、この特異な内包挙動のメカニズムを解明した。本研究成果は、疎水性カプセル空間による初の親水性オリゴマーの捕捉であり、新たな人工レセプター(受容体)の合成研究への展開が期待される。

親水性の生体分子(アミノ酸や核酸塩基など)は水分子と水素結合を形成するため、水中では高度に安定化している。生体のタンパク質ポケットは多点の分子間相互作用でそれらを水中で捕捉できる。しかしながら、人工の分子レセプターでは水中での親水性分子の内包は困難な課題であり、とりわけ、バイオプラスチック[用語2]に関連する乳酸オリゴマーの内包は未達成であった。本研究では、水中で芳香環に囲まれた「疎水性ナノ空間」が瞬時にかつ100%の収率で、「親水性の乳酸オリゴマー」を内包できる(結合定数:105 M–1以上)ことを見出した。また、内包された環状の乳酸2量体(ラクチド)は、水中での加水分解反応が顕著に抑制された。分子レベルでの詳細なメカニズムの検証から、内包体は多点の分子間相互作用(CH-π相互作用[用語3]と水素結合)に基づく負のエンタルピー変化により、水中で安定化することが明らかになった。

これらの研究成果は、株式会社リガクとの共同研究によるもので、欧州の主幹化学雑誌 Angewandte Chemie(アンゲヴァンテ・ケミー)に速報論文として、平成30年2月28日付け(ドイツ時間)で掲載された。

研究の背景とねらい

“水と油”に例えられるように、分子の親水性と疎水性は本質的に相反する性質である。従って、親水性の生体分子は水中で、水素結合により水分子と相互作用して安定化するため、疎水性の分子や表面、空間と相互作用することは稀である(図1a)[文献1]。生体のタンパク質ポケット内では、多点の分子間相互作用(主に水素結合)を利用することで、親水性分子を水中でも内包できる。しかしながら、「水中かつ人工の分子レセプターによる親水性生体分子の内包」は未だに困難な課題として認知されている。最近、我々は独自に開発したナノカプセル1[文献2](図1b)が、多点の分子間相互作用でスクロース(砂糖の主成分)を水中で選択的に内包できることを見出した[文献3]

この発見をヒントに本研究では、バイオプラスチックの成分である乳酸オリゴマーに着目した(図1c)。乳酸オリゴマーは、生体分子の乳酸の縮重合で簡単に得られる化合物である。しかしながら、その高い親水性のため、水中で乳酸オリゴマーと強く相互作用する人工レセプターは未報告であった。今回、人工のナノカプセル1の芳香環に囲まれた疎水性空間が、多点のCH-π相互作用と水素結合により、水中で乳酸オリゴマーを内包できることを初めて見出した。また、ナノカプセルは乳酸の環状2量体の加水分解反応を顕著に抑制した。さらに、熱力学的パラメーターを計測し、親水性オリゴマーの詳細な内包メカニズムを明らかにした。

(a)親水性オリゴマーの疎水性ナノ空間への内包(b)疎水空間を有する人工ナノカプセルと(c)親水性の乳酸オリゴマーの構造。

図1.(a)親水性オリゴマーの疎水性ナノ空間への内包(b)疎水空間を有する人工ナノカプセルと(c)親水性の乳酸オリゴマーの構造。

研究内容

水中での乳酸オリゴマーの内包

まず、乳酸モノマー(単量体)の内包を検討した。乳酸の両端をメチル化した2分子の2bは、ナノカプセル1の水溶液に室温で加えることで瞬時にかつ定量的に内包された(図2a)。その溶液の核磁気共鳴装置(1H NMR)のスペクトルでは、–2.5から0.5 ppmの領域に、内包された2分子の2bに由来する特徴的なシグナルが観測された(図2b)。また、質量分析計(ESI-TOF MS)によるスペクトルから、2分子の2bの内包が明瞭に確認された。さらに、詳細な内包状態はX線結晶構造解析より明らかにした(図2c)。その結果、カプセルの疎水性空間に内包された2分子の2bは、カプセル–乳酸間で2ヶ所のCH-π相互作用、カプセル–乳酸間で7ヶ所の水素結合、乳酸–乳酸間で3ヶ所の水素結合を形成していた。一方で、同条件において乳酸(2a)の内包は観測されなかったが、2aのオリゴマーである4a(乳酸3量体)、4b(4量体)、4c(5量体)は1分子ずつ定量的に内包された。乳酸4量体4bの内包体のX線結晶構造解析より、2bと同様にカプセル-4量体間で複数のCH-π相互作用と水素結合の存在が確認された(図2d)。

(a)ナノカプセル1による水中での乳酸誘導体2bの内包と、その(b)1H NMRスペクトルおよび(c)X線結晶構造.(d)乳酸4量体4bの内包体のX線結晶構造(赤線:CH-π相互作用、青線:水素結合、外面親水基とカウンターアニオンは省略)

図2.(a)ナノカプセル1による水中での乳酸誘導体2bの内包と、その(b)1H NMRスペクトルおよび(c)X線結晶構造.(d)乳酸4量体4bの内包体のX線結晶構造(赤線:CH-π相互作用、青線:水素結合、外面親水基とカウンターアニオンは省略)。

環状乳酸2量体の内包による安定化

環状の乳酸2量体(ラクチド;3b)は水中で加水分解反応により、直鎖状の乳酸2量体3aに変換される。この水に不安定な3bをカプセル1の水溶液に添加すると、2分子が瞬時に内包されることがNMRとMSより分かった。そこで、水中での3bの分解速度をNMRの経時変化測定で評価した。その結果、フリー(カプセル無し)の3bは室温で30時間後には全て3aに加水分解されたが、カプセル内では同条件において、加水分解は約20%に留まった(図3)。この顕著な安定化は、カプセルの内部空間が芳香環骨格により外部から隔離され、2分子の3bがその空間を完全に満たし、水分子が入る余地がないことに由来すると考えた。

水中における、ナノカプセル1有無によるラクチド(3b)の加水分解挙動の比較

図3. 水中における、ナノカプセル1有無によるラクチド(3b)の加水分解挙動の比較。

内包メカニズムの解明

最後に、乳酸オリゴマーが内包されるメカニズムを調査した。等温滴定型熱量(ITC)測定から、水中でのナノカプセル1による乳酸4量体4bの内包の熱力学的パラメーターを算出したところ(図4a,b)、エンタルピーの変化量(ΔH)は大きな負の値(約 –40 kJ/mol)で、エントロピーの変化量に温度を掛けた値(TΔS)は小さな負の値(約 –8 kJ/mol)であった。自発的な反応には、ΔH – TΔSの値が負を示す必要があり、分子間相互作用で生じた大きな負のΔHは、内包反応の自発的な進行を促す。また、その内包の強度を表す結合定数は105 M–1以上で、比較的大きな値を示した。環状および直鎖状の乳酸2量体3a3bの内包においても同様に大きな負のΔHと、同程度の結合定数が観測された。以上のことから、親水性の乳酸オリゴマーは、疎水性のナノカプセル内での多点の分子間相互作用に基づくエンタルピー項の大きな安定化が駆動力となり、水中にも関わらず強く内包されることが判明した。

(a)水中でのナノカプセル1による乳酸4量体4bの内包と(b)その等温滴定型熱量(ITC)測定。

図4.(a)水中でのナノカプセル1による乳酸4量体4bの内包と(b)その等温滴定型熱量(ITC)測定。

今後の研究展開

本研究では、従来の親水性-疎水性の相互作用の常識に反し、人工のナノカプセルの疎水空間による親水性の乳酸オリゴマーの捕捉に初めて成功した。また、結晶構造解析や等温滴定型熱量測定などから、詳細な分子間相互作用と内包メカニズムを明らかにした。これらの成果を基に、今後、生体オリゴマー(ペプチドなど)の高感度センシングのための分子レセプターの開発が期待できる。

用語説明および参考文献

[用語1] オリゴマー : 少数の分子(本研究では乳酸)が結合した重合体のこと。分子の重合数に応じて、2量体、3量体、4量体などと呼ぶ。

[用語2] バイオプラスチック : 生体分子から作られたプラスチック。乳酸オリゴマーやポリマーは自然界で微生物に分解され、最終的に水と二酸化炭素になる。

[用語3] CH-π相互作用 : 炭素に結合した水素と芳香環の間に働く静電的な相互作用。

[文献1] J. W. Steed, J. L. Atwood, Supramolecular Chemistry, 2nd ed. Wiley, Hoboken, 2009.

[文献2] N. Kishi, Z. Li, K. Yoza, M. Akita, M. Yoshizawa, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 11438–11441.

[文献3] M. Yamashina, M. Akita, T. Hasegawa, S. Hayashi, M. Yoshizawa, Sci. Adv. 2017, 3, e1701126.

論文情報

掲載誌 :
Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル :
Hydrophilic Oligo(Lactic Acid)s Captured by a Hydrophobic Polyaromatic Cavity in Water
(水中での疎水性の芳香族ナノ空間を用いた親水性の乳酸オリゴマーの内包)
著者 :
Shunsuke Kusaba, Masahiro Yamashina, Munetaka Akita, Takashi Kikuchi, Michito Yoshizawa*
(草葉竣介、山科雅裕、穐田宗隆、菊池 貴、吉沢道人*
DOI :

研究内容に関するお問い合わせ

東京工業大学 科学技術創成研究院
化学生命科学研究所
准教授 吉沢道人

E-mail : yoshizawa.m.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5284

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

ウエハー級品質の太陽電池用シリコン薄膜の作製に成功

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10倍以上の成長速度で、製造コストの大幅低減に期待

要点

  • 従来の10倍以上の成長速度で太陽電池用高品質Si単結晶薄膜の形成に成功
  • ナノ表面粗さ制御技術により、結晶欠陥密度をシリコンウエハーレベルに低減
  • 単結晶Si太陽電池の発電効率を維持し、コストを大幅低減可能な技術を開発

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の伊原学教授、長谷川馨助教らは早稲田大学 理工学術院の野田優教授と共同で、結晶欠陥密度をシリコン(Si)ウエハーレベルまで低減した高品質単結晶Si薄膜を、これまでの10倍以上の成長速度で作製することに成功した。原理的に原料収率を100%近くに向上できるため、単結晶Si太陽電池の発電効率を維持したまま、製造コストを大幅に低減することが期待できる。

伊原教授らは単結晶ウエハーの表面に電気化学的手法で2層のナノオーダーのポーラスシリコン[用語1]を作製。独自のゾーンヒーティング再結晶化法(ZHR法)[用語2]で表面荒さ0.2-0.3 nm(ナノメートル)まで平滑化した基板を使って高速成長させ、高品質の薄膜単結晶を得た。成長膜は2層のポーラスSi層を使って容易に剥離できる。ZHR法の条件を変えて下地基板の表面粗さを低減すると、結晶薄膜の欠陥密度が徐々に減少し、最終的に約10分の1のSiウエハーレベルまで低減できた。わずか0.1-0.2 nm(原子数~数十層レベル)の表面荒さが結晶欠陥の形成に重要な影響を与えることを示したもので、結晶成長メカニズムとしても興味深い。

研究成果は英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)ジャーナル「CrystEngComm」に2月15日に掲載されるとともに、同誌の表紙になることが決定した。

研究成果

伊原教授らの開発した単結晶Si薄膜作製技術は原料収率を100%近くまで向上できる。このため、現在、太陽電池の多数を占める単結晶シリコン太陽電池並みの発電効率を維持したまま、高速成長による製造装置コストおよび薄膜化・高原料収率による原料コストを大幅に低減できる技術として期待できる。

具体的には「1. 単結晶Siウエハー表面に2層のポーラスシリコンを作製」「2. 表面をZHR法で平滑化」「3. その基板を使って高速成長させてSi単結晶薄膜を形成」「4. ポーラスSi層を使って剥離」という手順だ。下地のSi基板は再利用もしくは薄膜成長用の蒸発源として利用でき、原料損失を大幅に低減できる。

背景

単結晶Si太陽電池は薄型化することにより、現状モジュールの約40%を占めている原料コストを大幅に低減できる。またフレキシブル化、軽量化による用途の拡大、設置コストの低減も期待できる。また、近年、化学的気相法(CVD)を用いたエピタキシー[用語3]電気化学的エッチング[用語4]による2層の多孔度の異なるナノ構造を有するポーラスシリコン(Double Porous Silicon layer: DPSL)を用いたリフトオフ(剥離)による単結晶Si薄膜太陽電池は将来、競争力を持つとして注目されている。

リフトオフによる単結晶Si太陽電池の技術的課題は、「1. Siウエハーレベルの高品質なSi薄膜を形成すること」「2. 容易にリフトオフ可能なポーラス構造を持っていること」「3. 成長速度とSi原料収率を大幅に向上させること(成長速度によって必要な装置コストが決定)」「4. リフトオフ後の基板を無駄なく利用できること」などであった。特に1のウエハーレベルの品質の実現のためには、ポーラスシリコン上に成長する結晶薄膜の品質を支配する主要因を明らかにして、制御する技術を開発する必要があった。

研究の経緯

東工大伊原研究室ではランプヒーターの高速走査により膜のみを高温熱処理及び再結晶化する手法を有し、表面熱履歴の制御による高結晶化の技術蓄積を持つ。帯域加熱は短時間での処理であり、大面積化にも対応可能な手法である。平滑なSiO2で挟み込む構造を作り、高速の帯域加熱(<10 mm/sec)を行うことで、アモルファスSiを短時間で溶融再結晶化し単結晶Siの生成にこれまでに成功した(zone melting crystallization, ZMC)[参考文献1]

この結晶成長では、SiO2/Siの固液界面にて安定結晶面が存在しメルト/固化の過程の局所的な安定性によって(100)配向し、“高速、シード無しの処理”でも単結晶Si膜の形成が可能となったと報告していた[参考文献2]

さらに、これらの技術をポーラスシリコン基板の処理に適用し、処理条件をよりマイルドにすることで表面のみの構造変化を可能とする、ゾーンヒーティング再結晶化法(ZHR法)を開発した。これによって、容易にリフトオフ可能な構造と成長に必要な構造変化の両立が可能となった[参考文献3]。しかし、これらの構造変化と成長するSi薄膜の品質との関係は明かではなかった。

また、単結晶Si薄膜製造においてボトルネックとなるのが、成膜速度とSi薄膜へのSiの原料収率である。エピタキシーで主に用いられる化学蒸着(CVD)では製膜速度は最大で毎時数µm(マイクロメートル)であり収率は10%程度である。早大野田研究室では、原料Siを通電加熱で蒸発させる物理蒸着(PVD)において、原料温度をSiの融点(1,414 ℃)よりはるか高温(2,000 ℃)にすることで高いSi蒸気圧を得、毎分10 µmでSiを堆積できる急速蒸着法(rapid vapor deposition、 RVD)を開発した[参考文献4]

今回の成果は、ZHRの技術によって、リフトオフ法の技術課題である「1. Siウエハーレベルの高品質なSi薄膜を形成すること」「2. 容易にリフトオフ可能なポーラス構造を持っていること」が実現できた。さらに、RVD法によって成長速度とSi原料収率を大幅に向上させることが可能であり、リストオフ後の基板をRVDの蒸発源として利用すれば、リフトオフ後の基板を無駄なく利用できるようになった。

今後の展開

今回の成果によって、リフトオフ法に用いるポーラスシリコン上に高速成長させる際の結晶としての品質向上の主要因を明らかにするとともに、その制御に成功した。今後は、より太陽電池性能に直結する薄膜のキャリアライフタイムの測定および、実際に太陽電池を作製して、技術の実用化を目指す。また、30%超の効率を持つタンデム型太陽電池用の低コストボトムセルとしての利用も検討する。

“単結晶”シリコン薄膜太陽電池の“低コスト化”

“単結晶”シリコン薄膜太陽電池の“低コスト化”

用語説明

[用語1] ポーラスシリコン : ナノメートルサイズの多数の細孔を持つシリコンで、電気化学的なエッチングによって作製する。

[用語2] ゾーンヒーティング再結晶化法(ZHR法) : 楕円状のミラーを使って線状に加熱しながら走査することで、線状の表面のみを順次、再結晶化させる技術。

[用語3] エピタキシー : 下地基板の結晶構造を引き継ぐ結晶成長。

[用語4] 電気化学的エッチング :電圧をかけて電気化学的に酸化することで、エッチングをおこなう技術。

参考文献

[1] M. Ihara, S. Yokoyama, C. Yokoyama, K. Izumi and H. Komiyama, Applied Physics Letters, 79, 3809, (2001)

[2] S. Yokoyama, M. Ihara, K. Izumi, H. Komiyama and C. Yokoyama, Journal of The Electrochemical Society. 150, A594 (2003)

[3] A. Lukianov, K. Murakami, C. Takazawa and M. Ihara, Applied Physics Letters. 108, 213904 (2016)

[4] Y. Yamasaki, K. Hasegawa, T. Osawa and S. Noda, CrystEngComm 18, 3404 (2016)

論文情報

掲載誌 :
CrystEngComm (RSC), 2018
論文タイトル :
Critical effect of nanometer-size surface roughness of a porous Si seed layer on the defect density of epitaxial Si films for solar cells by rapid vapor deposition
著者 :
Kei Hasegawa, Chiaki Takazawa, Makoto Fujita, Suguru Noda, Manabu Ihara
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系

教授 伊原学

E-mail : mihara@chemeng.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3337 / Fax : 03-5734-3337

早稲田大学 理工学術院

教授 野田優

E-mail : noda@waseda.jp
Tel : 03-5286-2769 / Fax : 03-5286-2769

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

工系学生国際交流基金派遣 実績報告会および留学報告会 開催報告

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2月14日、大岡山キャンパス本館の講義室において、工系学生国際交流基金派遣の実績報告会および工系留学報告会が開催されました。

工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院の3学院は、国際的感覚を持った工学を専門とする高度技術者を養成するため、合同で所属学生を海外の大学等に派遣しています。この学生国際交流プログラムは海外で様々な国の研究者や学生と共に研究を行うことで自身の専門性を深め、さらには、より広範な先端科学技術・知識を学びながら、異文化に触れることで、学生自身の修学意欲の一層の向上と国際意識の涵養を図ることをねらいとして独自に実施しています。このプログラムは、(1)海外大学との交流協定締結などを通じた学生相互派遣のための環境整備、(2)各種基金等を利用した所属学生の海外派遣支援制度の運営等を目的としています。

工系国際交流委員会主査の竹村准教授による実績報告会
工系国際交流委員会主査の竹村准教授による実績報告会

前半に行われた実績報告会では、工系国際交流委員会主査の竹村次朗准教授(環境・社会理工学院 土木・環境工学系)がプログラムの概要ならびにここ数年の派遣大学や人数などの傾向について報告を行いました。

また、後半には工系留学報告会が行われました。これは、当プログラムにて2017年夏季に短期留学した学生が履修対象となっている講義「国際研究研修」の一環として実施されたものです。

派遣先大学と発表者(計4名)は以下の通りです。(発表順、敬称略)

派遣先大学
発表者(所属・学年は発表当時)
留学期間
アーヘン工科大学(ドイツ)
渡邉 翔太郎(工学院 機械系 修士課程2年)
2017年6月~12月
サウサンプトン大学(イギリス)
管原星弥(物質理工学院 材料系 修士課程1年)
2017年8月~11月
ソウル国立大学(大韓民国)
濱上大基(物質理工学院 応用化学系 博士後期課程2年)
2017年7月~9月
アメリカ・カトリック大学(アメリカ)
緑川美桜(物質理工学院 材料系 修士課程1年)
2017年6月~11月

報告会では、留学経験者が留学生活について英語で発表を行いました。

留学経験者のコメント

アーヘン工科大学に留学した工学院 機械系の渡邉翔太郎さん(修士課程2年)

研究室の仲間と(写真左が渡邉さん)
研究室の仲間と(写真左が渡邉さん)

研究室の様子
研究室の様子

自分は妙な衝動から修士2年の中途半端な時期に在学期間を伸ばしてまで留学しようと決心しましたが、自身の中では得られたものの方が多くあったので全く後悔はしていません。実際行ってみて、自分と同じ年齢の学士課程学生も多数いたことから意識が変わりました。またドイツ語が全くわからないため、友人と呼べる人を作ることは非常に大変でした。そのため、留学してすぐの時期は英語圏に留学すればよかったと後悔しましたが、全く馴染みのない環境と言語的にも少数派(ドイツ人も、ある程度の人は英語圏のネイティブスピーカーと遜色無いくらいの綺麗な英語を使いますが)である環境に飛び込むことで、日本の言語的な特殊な環境と、当人になって初めて分かる言語的少数派の感覚を味わえたことは非常に良い経験になりました。加えて、自身の帰国後、またそれ以降の在日外国人への接し方を考え直すきっかけとなりました。

また、英語に嫌悪感を抱いていた中学・高校時代や、全く留学のことを考えていなかった修士1年のころは、自分が留学するなんて考えられませんでしたが、今は当時からは信じられないほど海外経験を積みたいと考えています。

ドイツという国は、その国柄から工業的にも国としても面白い国だと思います。行きたいと考えている人は本などで多少勉強してから行ってみることをおすすめします。得た知識に加え、間違っていた認識も含めカルチャーショックを受けると思います。休暇が取りやすいことは非常に魅力的に感じました。

サウサンプトン大学に留学した物質理工学院 材料系の管原星弥さん(修士課程1年)

誕生日にフラットメイトとピザ店で(写真最左が管原さん)
誕生日にフラットメイトとピザ店で(写真最左が管原さん)

旅行で訪れたドイツのハンブルク港で
旅行で訪れたドイツのハンブルク港で

もともとは、海外になんて行きたくないとすら思っていましたが「学生のうちに一度は」と東工大の超短期留学プログラムに応募したことをきっかけに海外に対する印象が変わり、今回のプログラムにも応募しました。留学前は留学予定先からの返信がなかなか得られず、不安と焦りでいっぱいでしたが「自分にとって全部未知、できないことが当たり前、困りに行くんだ」という気持ちで向かったため、トラブルにも前向きに対処していくことができました。3ヵ月で身に付いたことは少ないかもしれませんが、できないことに対して今までより抵抗なく「やってみよう」と思えるようになったと感じています。今後の僕の考え方に大きく影響する非常に貴重な経験ができました。帰国して終わりではなく、感じたこと、経験したことを自分に活かして、自分のものにしていきたいと思います。

本留学に対する僕のモチベーションは「英語が不得意だからこそ、英語ばかりの空間に身を置いてみたい」「海外の大学の研究や教育を体験したい」「専門とは異なる分野を学ぶことで視野を広げたい」そして「学生のうちに海外で生活する経験をしたい」というものでした。皆さんの中でももし何か興味を惹かれることがありましたら、ぜひ応募してみてください。

ソウル国立大学に留学した物質理工学院 応用化学系の濱上大基さん(博士後期課程2年)

研究室の仲間と(写真前列左から2番目が濱上さん)

研究室の仲間と(写真前列左から2番目が濱上さん)

研究室で
研究室で

私は、今回の留学を通して、化学生物学の研究の理解を深め、ソウルの文化に触れることが出来、また素晴らしい韓国の友人に恵まれました。

所属研究室では、合成化学だけでなく、生化学や分析化学に精通している学生がおり、彼らから実験方法を学ぶことができました。研究室の外では、活気ある市場や漢江のほとりにある公園などを訪れ、平和なソウルを楽しむことができました。これらの充実した経験はすべて、3ヵ月間共に過ごした研究室の友人が私に与えてくれたものであり、彼らと出会ったことが私の大きな財産です。

後輩へのメッセージとして、アジア圏への留学を選択の一つとしてお勧めします。アジア圏へ留学することは、将来、科学者または技術者として働くことを志望している学生には良い選択だと思います。今後、科学技術を生かせる最大のフィールドは、世界最多の人口を有し、いまだ発展の途上にあるアジアにあると思うからです。留学を通して、その国の人と文化を知っておけば、その国で仕事もしやすいでしょう。また、地理的に近いため、留学で築いた交流関係は、仕事でもプライベートでも続けることができると思います。

アメリカ・カトリック大学に留学した物質理工学院 材料系の緑川美桜さん(修士課程1年)

報告会の様子

報告会の様子

研究室の仲間と(写真右から2番目が緑川さん)
研究室の仲間と(写真右から2番目が緑川さん)

留学先は1887年にアメリカのカトリック司教によって創立された大学で、学部は1904年に開設されましたが、それまでは大学院と研究機関で運営されていました。私は硝子体の専門研究機関に留学したので所属研究室というような概念はなく、様々な分野の人と交流できました。留学先は、放射性廃棄物固化ガラスに関連した研究機関として世界でもトップクラスです。こちらでインターンシップ生として研究させていただきました。

研究テーマはボロシリケートガラス中のRe溶解度測定とその構造解析でした。自分で測定するのではなく、試料作製後に依頼して、測定結果をまとめて分析しました。ただし細かい条件を伝える必要があったため、自分で自由にできない点では最後まで苦労しました。自分ですべてする必要がないため同時に分析することが可能で、研究のスピードとしては一人でするよりも速かったです。また指導教員は私以外に受け持つ学生がおらず、また成果を5ヵ月間で必ず出すために惜しみなく指導してくださいました。

文法が間違っていようが、発音がおかしかろうが、どうにかして伝えるという根気があれば正直英語は通じます。

本イベントは、留学プログラムについての理解を深めるとともに、帰国して間もない留学経験者からの新鮮な現地情報や感想に触れることができる機会でもありました。2018年夏季派遣が決定している学生も参加し、発表者に直接英語で質問し、情報を収集していました。また、本プログラムは、受入・派遣の双方向プログラムであることから、その特徴を生かし、受入留学生との交流イベントも企画・運営されています。

お問い合わせ先

工系国際連携室

E-mail : ko.intl@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3969

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