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40億年前の月の自転軸は数十度ずれていた

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概要

月探査機「かぐや」月磁場研究グループの九州大学大学院理学研究院・高橋太准教授と東京工業大学大学院理工学研究科・綱川秀夫教授(グループリーダー)らは衛星観測データを解析し、太古の月には地球と同じように大規模な磁場が存在していたこと、現在とは数十度異なる自転軸だったことを明らかにしました。

現在の月には大規模な磁場はありません。本研究から、約40億年前の月中心部では溶けた鉄が活発に運動し磁場を発生していたことがわかりました。その磁極は離れた2箇所にあり、一つは現在の月北極付近にありますが、もう一つは数十度離れていました。磁極の位置は自転軸の極とほぼ一致する性質があり、月の自転軸はかつて今の位置から大きく離れていたことになります。このことは、月の形成と進化を明らかにする上で非常に重要な成果です。

本研究成果は、2014年5月4日(日)18時(英国時間)に、英国国際学術誌"Nature Geoscience" オンライン版で公開されました。

過去と現在の月の北極と南極の位置

図: 過去と現在の月の北極と南極の位置

論文情報

Reorientation of the early lunar pole
Futoshi Takahashi, Hideo Tsunakawa, Hisayoshi Shimizu, Hidetoshi Shibuya, Masaki Matsushima, Nature Geoscience (2014)

DOI: 10.1038/ngeo2150outer

お問い合わせ先
理工学研究科 地球惑星科学専攻 教授 綱川 秀夫
TEL: 03-5734-2339 (専攻秘書室)
Email: htsuna@geo.titech.ac.jp


ゆっくり食べると食後のエネルギー消費量が増えることを発見

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要点

  • ゆっくり食べると食後のエネルギー消費量が増加
  • 食後の消化管の血流増加はエネルギー消費量の増加に関連
  • ゆっくりよく噛んで食べることが良いとされる裏づけ
  • 咀嚼(そしゃく)を基盤にした減量手段の開発につながる

概要

東京工業大学大学院社会理工学研究科の林直亨(はやし・なおゆき)教授らの研究グループは、急いで食べる時に比べて、ゆっくり食べる方が食後のエネルギー消費量が増加することを明らかにした。300kcalのブロック状の食品をできるだけ急いで食べると、その後、90分間のエネルギー消費量は体重1kg当り平均7calだった一方、食塊がなくなるまでよく噛んで食べた時には180calと有意に高い値だった。また、消化管の血流もゆっくり食べた時の方が有意に高くなったことから、ゆっくり食べると消化・吸収活動が増加することに関連してエネルギー消費量が高くなったものと推察される。

この成果は、ゆっくりよく噛んで食べることが良い習慣であることの裏づけとして、また咀嚼を基本にした減量手段の開発に役立つものとして期待される。

本研究は、5月1日に欧州の肥満学会誌「オベシティ(Obesity) 誌」に掲載された。

研究成果

被験者10名に20分の安静測定後、300kcalのブロック状の食品を与えた。その食品をできるだけ急いで食べる試行と、できるだけゆっくり食べる試行とを行った。前者では平均103秒、咀嚼回数が137回、後者では497秒、702回だった。安静時から摂食、摂食後90分までの酸素摂取量を計測し、食事誘発性体熱産生量(用語1)を算出した。また、腹腔動脈(用語2)と上腸間膜動脈(用語3)の血流量を計測した。

その結果、食後90分間のエネルギー消費量は急いで食べた試行の場合、体重1kg当り平均7calだった一方、ゆっくり食べた時には180calと有意に高い値を示した。急いで食べるよりも、よく噛んでゆっくり食べた方がエネルギー消費量が大幅に増えた。体重60kgの人がこの食事を1日3回摂取すると仮定すると、咀嚼の違いによって1年間で食事誘発性体熱産生には約11,000kcalの差が生じる。これは脂肪に換算するとおよそ1.5kgに相当する。

消化管の血流もゆっくり食べた方が有意に高くなった。ゆっくり食べると消化・吸収活動が増加することに関連して、エネルギー消費量が高くなったものと推察される。

なお、発表論文には100kcalの試験食を用いた同様の結果も掲載されている。

背景

多くの横断研究で、食べる速さが速いと感じている人が太り気味であることが示されている。また、実験研究では早食いが過食につながることが示されていた。このように早食いが過食に関連し、それが原因で体重が増加する可能性が示唆されている。ところが、一定量の食事を摂取した場合にも、食べる速さが体型に何らかの影響を与える可能性があるのかについては明らかにはなっていなかった。

林教授らの研究グループは咀嚼をしただけで、消化管の血流量が増加することを2008年に観察している。また、消化管の血流量がエネルギー消費量と関係することが知られている。そこで、一定量の食事を摂取させた時にも、ゆっくり咀嚼した方が食後のエネルギー消費量(食事誘発性体熱産生)が増加するとの仮説を立て、咀嚼が食事誘発性体熱産生に与える影響を検討した。

今後の展開

ゆっくりよく噛んで食べることが良い習慣であることの裏づけとして、また咀嚼を基本にした減量手段の開発に役立つものとして期待される。

用語説明

1. 食事誘発性体熱産生
摂食後に起こる栄養素の消化・吸収によって生じる代謝に伴うエネルギー消費量の増加である。基礎代謝量の1割程度を占める。
2. 腹腔動脈
食道、胃、十二指腸の上部などに血液を送る動脈。
3. 上腸間膜動脈
十二指腸の下部から腸の大部分までの範囲に血液を送る動脈。

論文情報

論文タイトル:
The number of chews and meal duration affect diet-induced thermogenesis and splanchnic circulation
雑誌名:
Obesity, Volume 22, Issue 5, pages E62-E69, May 2014
DOI:
執筆者:
Hamada Y, Kashima H, and Hayashi N.

体重当たりの食事誘発性体熱産生量の変化(安静値との差で示した)を時間毎に示した。。

図 体重当たりの食事誘発性体熱産生量の変化(安静値との差で示した)を時間毎に示した。●が急いで食べた試行を、○がゆっくり食べた試行を示す。食後5分後には、両試行の間に差が見られ、食後90分まで続いた。
♯:試行間の有意差 *:摂食前の安静時エネルギー消費量との間の有意差

お問い合わせ先
東京工業大学 大学院社会理工学研究科
人間行動システム専攻
教授 林 直亨(はやし なおゆき)
TEL: 03-5734-3434
FAX: 03-5734-3434
Email: naohayashi@hum.titech.ac.jp

白金同等の活性有する低コスト、高耐久性の燃料電池用新触媒を開発「タンタル酸化物ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ触媒」

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東京工業大学大学院総合理工学研究科の大坂武男教授、Zaenal Awaludin博士研究員を中心とした研究チームは、燃料電池の触媒に使われている白金触媒と同等の性能がありながら、優れた耐久性を持つ「多孔性タンタル酸化物(TaOx)ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒」の開発に成功した。

白金は資源的に希少で高価だが、水素‐酸素固体高分子形燃料電池では高い触媒活性を示す白金を用いることを余儀なくされている。同研究グループが開発した触媒の電気化学的に活性な白金の面積は従来の白金触媒と比べて小さいが同等の触媒活性を示しており、実用化のための新触媒開発の指針となる。

水素エネルギー利活用社会の実現の入口として、2009年の家庭用定置型燃料電池の市場投入に続き、2015年には燃料電池車の市場投入が予定されている。

燃料に水素、酸化剤に空気中の酸素を用いる固体高分子形燃料電池の電極触媒としては、希少で高価な白金を用いているが、燃料電池の本格普及には一層の高性能化、高耐久性化および低コスト化が不可欠である。特に酸素極での酸素還元反応触媒の新材料の開発が求められている。

大坂教授らが開発した「多孔性タンタル酸化物(TaOx)ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒」は、従来の白金触媒に比べ、白金の電気化学的に活性な面積が約4分の1と小さいにもかかわらず、白金触媒と同等の触媒活性を有する。さらに白金触媒に比べて、耐久性は約8倍に高まった。

新触媒が白金触媒に優る高い耐久性を有する理由として、多孔性TaOxマトリックスの中に白金ナノ微粒子が包含されて凝集と溶解が抑えられると考えられ、また酸素還元活性が促進される理由としては、白金表面上の被毒種(OH吸着種など)のTaOxへのスピルオーバー効果の結果として酸素分子の4電子還元配向吸着が促進されること、白金ナノ微粒子近傍の局所pHの低下、白金ナノ微粒子とTaOxとの電子的相互作用などが考えられている。

  • TaO<sub>x</sub>ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒の走査型電子顕微鏡による断面プロフィル

    TaOxナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒の走査型電子顕微鏡による断面プロフィル

  • TaO<sub>x</sub>ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒への酸素の吸着および4電子還元反応

    TaOxナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒への酸素の吸着および4電子還元反応

論文情報

  • 著者:
    Zaenal Awaludin, James Guo Sheng Moo, 岡島武義, 大坂武男
  • 論文タイトル:
    TaOx-capped Pt nanoparticles as active and durable electrocatalysts for oxygen reduction
  • 記載雑誌:
    Journal of Materials Chemistry A, 1, 14754-14765 (2013)
  • DOI:

お問い合わせ先

大坂 武男

大学院総合理工学研究科 物質電子化学専攻 教授

Tel: 045-924-5404

Email: ohsaka@echem.titech.ac.jp

大学院総合理工学研究科長、精密工学研究所長 就任挨拶

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2014年4月1日付で、東工大の部局長(研究科長・学部長・研究所長)のうち、大学院総合理工学研究科長、精密工学研究所長が交代しました。新部局長からの就任の挨拶をご紹介いたします。

大学院総合理工学研究科 小田原修研究科長 就任挨拶

大学院総合理工学研究科 小田原修研究科長

私の学部入学は1970年で、工学部金属工学科の卒業が1974年ですので、今年は学部卒業40年になります。そして、総合理工学研究科は2015年に創立40年を迎えます。 

私は原子炉工学研究所の河村和孝先生に師事して卒業研究を行い、原子核工学専攻へ進学し、「溶融塩の輸送現象」で学位を取得しました。博士課程在学中の1977年8月からの1年間は、オランダ政府給費留学生としてアムステルダム大学ヴァントホフ研究所の銀のイオン半径を決定したケテラール教授の下で、学位取得に資する研究生活を過ごしました。ファンデルワールスやゼーマンの名を冠した研究所などが歩いて数分の範囲にある環境では、「日本は科学技術の発展を勘違いしている。科学技術には風土がある。」と、欧州の研究者に言われることにも納得できる重みを実感しました。1979年3月に学位を取得し、4月より通商産業省(当時)に奉職し、工業技術院東北工業技術試験所(当時)を舞台に「サンシャイン計画」と「ムーンライト計画」に従事するとともに、「燃焼合成」という新しい研究開発分野を開拓しました。また、1983年8月からの1年間は科学技術庁(当時)に出向し、スウェーデン・イェーテボリ市にあるシャルメース工科大学物理学科に出張して二次イオン質量分析技術を習得しました。7年間の国策研究への従事を終え、1986年4月に総合理工学研究科電子化学専攻に助教授として出向しました。私の大学院時代を支え育んでくれた岡田勲先生とともに教育研究を進めるとともに、燃焼合成を「宇宙環境利用」研究に活かすことをベースに我が国の宇宙探査計画に参画しました。創造大学院構想の具現化に伴い、1997年4月に材料物理科学専攻、2003年5月からは物質科学創造専攻に所属し、総合理工学研究科の物質材料系三専攻の全てに所属して現在に至っています。

学部を持たない総合理工学研究科は、様々な科学技術に柔軟に対応できる学際領域における教育研究を推進してきました。「社会の要請に柔軟に応える」を使命としてきましたが、これからは「社会と共生して、社会を導く」教育研究を充実させなくてはなりません。現在の総合理工学研究科の構成は、物質材料系、環境エネルギー系、システム情報系の三系に大別された十一専攻です。歴史が40年にならんとする今、各専攻の基幹講座の教員が中心的に大学院生の教育研究を担い、附置研究所等を原籍とする教員と学外機関に所属する研究者で構成する協力講座と連携講座を有機的に繋いで共に築いてきた「独自の風土」には、刻まれた年輪以上の重みがあります。私たちは、その重みに頼ることなく、「あるべき姿を具現化し、合意形成の心で展開し、効果的な手法で訴求し、次の一手に繋ぐ」を成し得る総合理工学研究科の強みを一層強化して、今日の全力を全力以上の明日に繋げる人間力を育む教育研究の技を鍛えなくてはなりません。この気持ちを大切にして、また、現在の総合理工学研究科が置かれている状況判断を見誤ることなく、次の発展に繋げるように最善を尽くす所存です。今後とも、皆様の御支援・御協力をよろしくお願いします。

精密工学研究所 新野秀憲所長 就任挨拶

精密工学研究所 新野秀憲所長

2014年4月1日付で東京工業大学精密工学研究所(略称:精研)の第23代所長に就任致しました新野秀憲です。この機会に精研を紹介するとともに所長としての抱負を述べさせて頂きます。

1. 精密工学研究所とは

東京工業大学の4附置研究所のひとつである精研は、すずかけ台キャンパスに位置し、機械工学、制御工学、電子工学、情報工学、材料工学といった広範な研究分野の教員から構成されています。精研は精密機械研究所(1939年創設)と電気科学研究所(1944年創設)が1954年に合併した研究組織で、設立以来、「精密工学における学理の究明と応用」をミッションとして掲げ、古賀一策教授(水晶振動子の研究)と中田孝教授(歯車工学と自動制御の研究)の2名の日本学士院会員を輩出するとともに、さまざまな産業基盤となる研究成果を創出し、産業界や学界の発展に多大な貢献をしてきました。

例えば、機械を作るための機械である工作機械の数値制御技術における我が国のルーツであり、世界第1位の生産額を誇る日本の工作機械製造産業を牽引してきました。最近では、東京工業大学の前学長である伊賀健一教授(面発光レーザの発明と実用化の研究)が世界的に高く評価されています。

2. 精研の発展経緯

1991年に「精密と知能を融合した新しい精密工学」の創成をめざして、英文名称を「Precision and Intelligence Laboratory(略称:P &I Lab.)」に変更し、それまでの研究対象と研究範囲を格段に拡大しました。そして1993年に従来の研究体制から知能化工学、極微デバイス、精機デバイス、高機能化システム、先端材料の5部門15研究分野の体制に一新し、ロゴである「テトラへドロン(正四面体)」は、それら5部門が緊密に連携した異分野融合組織であることを象徴しています。

加えて2000年に文部科学省COEプログラムから発展したマイクロシステム研究センター、2008年にセキュアデバイス研究センター、次いで客員部門の知的財産利用支援システム研究部門と先端フォトニクス研究部門が設置されました。なお、マイクロシステム研究センターは、2010年に次世代光ネットワークの実現をめざしたフォトニクス集積システム研究センターに転換して、研究活動を推進しています。

3. 代表的な精研の研究トピックス

最近の代表的な精研の研究トピックスを以下に紹介しましょう。

(1)

超並列光エレクトロニクス

精研で発明された面発光レーザをベースに、新たな学術領域「超並列光エレクトロニクス」を構築。その研究成果により、1000億円以上の巨大市場を創出し、高度人材育成と高度情報化社会の実現に貢献しています。

(2)

革新的機械システム

精研のコア技術として蓄積してきたナノ加工、ナノ計測、ナノ制御、ナノデバイスの研究成果を融合した革新的機械システムおよびその構成要素を実現。高度人材育成とものづくり産業基盤の展開に貢献しています。

(3)

医工学連携による研究
精密工学と知能工学の融合、東京医科歯科大学との医工学連携により、高度ヒューマンインタフェース、世界最小の体外循環用磁気浮上式人工心臓、力覚提示機能を備えた手術ロボット、医療用新材料を創出。Quality of Life(QOL)の向上に貢献しています。

4. 所長としての抱負

近年、大学を取り巻く環境は、劇的に変化しています。そのような環境変化に迅速、かつフレキシブルに対応するため、学内外におけるプレゼンスを高めるとともに産業界、学界、政府機関との緊密な連携を進めながら新たな精密工学の創成、学理の究明と発展に寄与していこうと考えています。私たち精研の教職員・学生は、学内、学外を問わず、みなさまと積極的に関わり合いながら、先進的な研究課題に挑戦し、明るい未来社会の実現に挑戦したいと考えています。

多層カーボンナノチューブの高い触媒活性を発見

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要点

  • 炭素のみでは触媒活性がほとんどないと考えられているが、欠陥構造の形成が高い触媒活性をもたらすことを発見
  • 電気化学測定前後の不純物評価により、不純物による活性ではないことを確認
  • 燃料電池などの貴金属に代わる触媒として有望

概要

東京工業大学大学院総合理工学研究科の脇慶子准教授らは、欠陥構造を導入した多層カーボンナノチューブが燃料電池や金属空気電池などの空気極(正極)に応用可能な高い触媒活性を持つことを見出した。金属酸化物微粒子の触媒活性を利用してカーボンナノチューブ表面にナノオーダの細孔を形成•制御することを実現した。この構造はカーボンナノチューブの新たな触媒活性や貯蔵特性を付与し、多方面への応用が期待される。

欠陥構造導入後の多層カーボンナノチューブに金属不純物はほとんど残っていなかったことから、多層カーボンナノチューブの高い触媒活性は不純物によるものではなく、人工的に形成した欠陥構造によるものであることを確認した。

燃料電池などの触媒は資源的に希少で高価な白金が使われている。このため、カーボンに金属や窒素を添加した触媒などの研究成果が報告されているが、触媒活性のメカニズムはまだ解明されていなかった。

図 活性測定後のDMWNT-Ar900の透過型電子顕微鏡像 拡大像 HAADFイメージ 電子エネルギー損失分光スペクトル(EELS)

図: (a)活性測定後のDMWNT-Ar900の透過型電子顕微鏡像 (b)拡大像
(c)HAADF イメージ (d)電子エネルギー損失分光スペクトル(EELS)

論文情報

Non-nitrogen doped and non-metal oxygen reduction electrocatalysts based on carbon nanotubes: mechanism and origin of ORR activity
Keiko Waki, Raymond A. Wong, Haryo S. Oktaviano, Takuya Fujio, Takuro Nagai, Koji Kimoto and Koichi Yamada, Energy Environ. Sci., 2014, Advance Article
DOI: 10.1039/C3EE43743Douter

お問い合わせ先
総合理工学研究科 創造エネルギー専攻
准教授 脇 慶子
TEL: 045-924-5614
Email: waki.k.aa@m.titech.ac.jp

東工大エジプトE-JUSTオフィス開設

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東工大は2014年4月、「東工大エジプトE-JUSTオフィス」を開設しました。タイ・バンコク、フィリピン・マニラ、中国・北京につづく、4番目の海外オフィスです。

かねてより東工大は、日本・エジプト両国の国家的事業である「エジプト日本科学技術大学(E- JUST)」設立プロジェクトに対し、同大学に設置された8つの大学院専攻のうちの3専攻の専攻幹事校として積極的に協力してまいりました。また、2014年2月からは、総括幹事大学として支援を行っております。

同事業に対する支援体制を確固としたものとするため、このたび国際室海外拠点運営室の下に「東工大エジプトE-JUSTオフィス」及び「エジプトE-JUST拠点チーム」を置きました。

「東工大エジプトE-JUSTオフィス」は、東工大から派遣される教員・学生の支援を主な任務とする他に、エジプトと東工大の学術交流の活性化や、アラブ・アフリカ地区における東工大の広報拠点としての役割を担います。「エジプトE-JUST拠点チーム」は、E-JUST事業に関係の深い本学教員が構成員となり、東工大エジプトE-JUSTオフィスの活動を支援します。

東工大エジプトE-JUSTオフィス開設

東工大エジプトE-JUSTオフィス開設

海外拠点運営室(国際部国際事業課)
Tel: 03-5734-3827 Fax: 03-5734-3685
Email: ejust@jim.titech.ac.jp

東工大E-JUST支援室
Tel/Fax: 03-5734-2558
Email: ejust@jim.titech.ac.jp

東工大生、オバマ大統領と出会う

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4月24日、日本科学未来館で、バラク・オバマ米大統領と日本の若者が科学技術について語り合いました。このイベントに東工大から学部4年生2名、附属科学技術高校生5名が参加しました。オバマ大統領と直接話ができるという経験を通して、学生たちは何を感じたのでしょうか。

理学部物理学科・グローバル理工人育成コース所属 4年 小泉 瑠奈

ジオ・コスモスの前で。後列中央が小泉瑠奈さん

ジオ・コスモスの前で。後列中央が小泉瑠奈さん

当日、オバマ大統領は毛利衛宇宙飛行士とともに入場されました。最初に私たち学生は、大統領へ自己紹介をし、その後、国際宇宙ステーションに滞在中の若田光一宇宙飛行士のビデオメッセージを一緒に視聴しました。ビデオメッセージでは若田さんと他二人の宇宙飛行士が大統領に挨拶をし、国際宇宙ステーションでの活動を報告されていました。

ビデオメッセージの後、“ジオ・コスモス”という3Dの球状のパネルに宇宙からみた地球が映し出された球体の前に移動し、野口聡一宇宙飛行士が装置について説明をした後、大統領ともう一人の日本人学生と私でパネルに映し出されている地球を回転させました。地球を回転させながら、大統領は「次はどちら方向に回転しようか」や「宇宙に興味はあるのか」などと問いかけて下さり、私も緊張がほぐれ、会話を楽しむことができました。地球儀を回転した後、大統領から専攻や研究している内容、将来の夢などを聞かれて、お話ししました。

その後行われたオバマ大統領のスピーチでは、もっと多くの日本人学生にアメリカに来て研究をしてほしいという話がありました。大統領は、私たち学生のことも独立した一社会人としてとらえ、接していただいているという印象を受けました。

今回、大統領との出会いにより、今学習していることを社会にすぐにも生かすことができるような形で、私たちが科学を深めることを世界が待っていると、強く感じました。

生命理工学部生命工学科・グローバル理工人育成コース所属 4年 山元 奈緒

来日に際し、オバマ大統領ご本人が、ぜひ日本の学生と交流したいとおっしゃったのがきっかけで、今回の大統領と日本の学生との交流イベントが、日本科学未来館で行われました。イベントには20名の高校生と10名の大学生、計30名が参加しました。

オバマ大統領とアシモを囲んで、左が山元奈緒さん

オバマ大統領とアシモを囲んで、左が山元奈緒さん

イベントは大きく4つのセクションに分かれており、私はASIMOの紹介をする2つ目のセクションに参加しました。このセクションに参加したのは私を含め大学生2人で、幸運にもオバマ大統領の隣でお話する機会を得ました。

大統領は大変気さくな方で、私が咄嗟に「ASIMOが蹴るボールをキャッチしてみませんか」と勧めたところ、「Sure!」と快諾され、ASIMOとのサッカーを楽しんでくださいました。大統領はASIMOのセクションが終わり、次のセクションに移動する際、「まだあの学生ときちんと話をしていない」と、わざわざ戻って来られ、もう一人の学生と大統領との3人での会話の時間を持ってくださいました。「今何を専攻しているのか?」、「学んでいることを将来どのように生かしたいか?」、「将来何をしたいか?」、「留学はしたいか?」など次々と質問をされ、生命情報を専攻している私に対して、「人々の健康や生活に関わる非常に大切な分野だからぜひ頑張って勉強を続けてほしい」と励ましの言葉をかけてくださいました。アメリカ大統領が、一大学生のために時間を割いて話をし、励ましの言葉をくださるその温かさに非常に感動しました。また、トップに立つ人の立ち振る舞いを実際に見て、感じることができたことは本当に素晴らしい経験でした。幸運にもこのような機会をいただいたことに心から感謝し、この経験をこれからの人生の糧にしていきたいと思います。

附属科学技術高校の生徒たち

今回は、オバマ大統領の演説を聴けるという貴重な機会をいただきました。個人的に英語はプログラムを作成する上でもかなり使用するので勉強していた方なのですが、結局当日は、大統領の演説でよく聞き取れない部分がありました。やはり、もっと英語は勉強するべきです。(神保和行)

首脳会談の時などテレビでお見かけする顔とは違い、オバマ大統領はフランクで親しみやすい方でした。握手の際に大統領から少し質問をされましたが、私が痛感したのは英語の必要性です。いつ使う機会が訪れるか分からないので、キチンと準備しておく必要があると感じました。(安倍峻平)

私は今回のイベントで、英語の重要性を改めて感じました。突然の英語の質問に答えることはかなり難しく、普段なら答えられることも上手く言えないなど、実力不足も体感しました。この貴重な体験を機に、様々なイベントに参加して、実力を深めていきたいです。(笠井信宏)

今回、オバマ大統領のスピーチを直接拝聴できるというとても貴重な体験をさせていただき、素晴らしい時間を過ごす事ができました。スピーチでは、日本とアメリカの科学技術分野での協力の必要性や、将来の展望についてお話をいただき、日頃の勉強の大切さを思うとともに、将来の夢への決意が、より一層強くなるきっかけとなりました。(畝本涼)

私は英語が得意ではありませんが、このイベントを通じ「英語を操れない私」を非常にもどかしく思うようになりました。二度と得られないようなこの経験を、今後の人生を歩む上でのモチベーションとしていきたいです。人生、本当に何があるのかわかりません。(川端唯人)

講演するオバマ大統領と学生たち

講演するオバマ大統領と学生たち

※ 5月16日、文中に誤植がありましたので修正いたしました。

「社会人基礎力を育成する授業30選」受賞

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東京工業大学工学部機械宇宙学科の講義「機械宇宙プロジェクトA」がこのほど、経済産業省の「社会人基礎力を育成する授業30選」に選ばれました。

授賞式

授賞式

この「社会人基礎力を育成する授業30選」 は大学教育における「社会人基礎力」育成を推進する観点から、効果的な育成を実践する大学の取組みを表彰し、広く情報発信を行うことを目的としています。

3月9日に行われた表彰式では応募総数189件の中より選出された30団体に表彰状が贈られました。

今回選ばれました東京工業大学の「機械宇宙プロジェクトA」 は、缶サイズの人工衛星モデルを用いたミッションの創出・機体設計・製作・実験を行い、衛星開発に関するシステムズエンジニアリングやマネジメントを学ぶ講義です。

講義の一環として参加した「ARLISS」世界大会(米国ネバダ州)

講義の一環として参加した「ARLISS」世界大会(米国ネバダ州)


東工大教員が日本建築学会賞など三賞を受賞

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東工大の教員5名が、2014年日本建築学会賞(論文)*1同賞(作品)*2、および2014年日本建築学会作品選奨*3を受賞しました。各賞を受賞した教員のコメントをご紹介します。

2014年日本建築学会賞(論文)

大野 隆造 大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 教授
受賞業績:「生活環境の知覚および認知に関する一連の研究」

概要

受賞対象の「生活環境の知覚および認知に関する一連の研究」は、人が日常の生活を営む中で環境からどのような情報をどのように受け取り行動しているのか、またどのようにその環境を記憶して意味付けているのかといった、人と環境との関わりの根底にある関係を実証的に解明し、それに基づいて建築・都市空間の計画への応用を提案したものです。

3部構成の第1部では、モノの知覚とは異なる環境の知覚についての理論的な検討を通して「環境視」の概念を提起し、それに関わる環境情報を記述する方法を開発しています。第2部では、空間移動時の環境と知覚との相互のダイナミックな関係に着目し、視覚シミュレーション装置を用いて、移動中の誘導サインの認知や距離知覚について解明しています。第3部では、公共空間における居場所選択行動、複雑な屋内外の経路構造と迷い、緊急時の避難と環境情報、など環境認知の現実的課題について究明しています。

大野教授のコメント

大野隆造教授

大野隆造教授

映画のアカデミー賞を受賞した人の挨拶をテレビで見ていて、あまりにも多くの名前を延々と挙げて感謝の辞が続くのを奇異に思ったことがあります。しかし、今回の受賞を機にあらためて自分の一連の研究を振り返ってみると、さまざまな場面で重要な役割を果たしてくれた多くの人々の顔が次々と浮かんできて、その一人一人の名前を挙げて感謝したくなる気持ちが分かりました。学生として東工大とウィスコンシン大で教えを受けた先生方、新参教師として赴任した神戸大で助けて頂いた先輩教員や同輩、東工大に戻ってからの同僚、そしてその間に出会った学生達。研究の発想と思考は孤立した個人の脳では成り立たず、周りの人のとの知の交信によってはじめて可能であったことに気付きました。そして、この互いに刺激しあう知のネットワークの基盤として、情緒的な安定を保つための家族をはじめとする心の環境が欠かせないことも再認識しました。

2014年日本建築学会賞(作品)
2014年日本建築学会作品選奨

川島 範久 大学院理工学研究科 建築学専攻 助教
受賞作品:「NBF大崎ビル」

概要

NBF大崎ビル 撮影:鈴木豊

NBF大崎ビル(撮影:鈴木豊)

世界的ICT企業のための研究開発型オフィス。知的生産性が高いワークプレイスを最小の環境負荷で支えながら、都市に対して利他的な効果をももたらす、次世代環境オフィスです。研究所とオフィスを一棟に集約し、エンジニア同士の知的交流を促進する計画とし、さらにワークプレイスは整形無柱の空間として、製品開発に求められる迅速な人の集散に対応でき、一望性が高くコミュニケーションが生まれやすいよう配慮しました。

ワークプレイスには全周バルコニーを設けて高層階でも安心して働ける環境にするとともに、貯留雨水を循環させて外壁を気化冷却し冷房負荷を削減する外装システム「バイオスキン」を開発し、採用しました。これは周辺街区も冷やし、ヒートアイランド現象を抑制する今までにない利他的な環境装置です。ランドスケープでも、隣接建物の緑地と連続させることにより広大な緑地を大崎駅前につくりだし、クールスポットを形成します。

川島助教のコメント

川島範久助教

川島範久助教

日建設計の設計担当として、コンペから竣工まで関わらせていただいた建築ですが、施主の皆様、施工者の皆様、社内外の沢山の設計チームメンバーとの協働の中で実現した建築です。まずは、この関係者の皆様に、感謝の意を伝えたいと思います。この建築の竣工引渡し一週間前に、東日本大震災が発生しました。それまで考えてきた建築と環境の関係性について、再考せざるを得なくなりました。それが、その後にUCバークレーで客員研究員としてカリフォルニアにおけるサステイナブル・デザインを学ぶキッカケとなり、これから考えていくテーマを見つけることに繋がりました。このように、多くの人達と出会い、多くことを学ぶキッカケとなった建築が、このような素晴らしい賞を受賞したことは、大変嬉しく思います。これを励みにこれからさらに頑張っていこうと思います。

2014年日本建築学会作品選奨

塚本 由晴 大学院理工学研究科 建築学専攻 准教授
竹内 徹 大学院理工学研究科 建築学専攻 教授
伊原 学 大学院理工学研究科 化学専攻 准教授
受賞作品:「東京工業大学 環境エネルギーイノベーション棟」

概要

環境エネルギーに関する研究者が専攻を超えて集まるこの研究棟は、建築と融合した棟内の高効率なエネルギーシステム設計により、CO2排出量を従来よりも約60%削減し、棟内で消費する電力を650kWの大容量太陽電池パネルと100kWのリン酸燃料電池コジェネレーションシステムによってほぼ自給できる設計となっています。独自に開発されたスマートグリッド管理システム“エネスワロー”によってエネルギーの見える化をおこない、気象条件、エネルギーの需給バランスなどにより、消費電力を無理なく抑制できる仕組みをも持ちます。建物本体の外殻架構には地震エネルギーを吸収し、柱梁を損傷より守る座屈拘束ブレースを螺旋状に巡らせ、震度6強の地震時にも機能を維持できる構造としました。この本体に寄りかかるように傾いた南面、屋根面および西面の三面が一体となり、建物を包み込むソーラーエンヴェロップを形成。フィーレンデールの鉄骨フレームに既製品の太陽電池パネルとキャットウォークを設置し、メンテナンスと将来のパネルの更新を容易にしました。研究室の階では冬至の南中時にパネル全体に日射が届くルーバー状として採光を確保しています。太陽の恵みを受けるという点で、太陽光電池パネルには農業との共通性が多く、太陽に干すようにパネルが並ぶ姿は“稲掛け”を連想させます。

環境エネルギーイノベーション棟

環境エネルギーイノベーション棟

エネスワローによるエネルギーの見える化

エネスワローによるエネルギーの見える化

受賞教員のコメント

審査では太陽光パネルを鎧のようにまとった姿に「異形の建築」という声もあったと聞いていますが、それを新しい時代を開く建築として高く評価していただいた背景には、環境エネルギー分野と建築分野の協働への期待があります。今後も同様の努力を続ける責任が本学にはあると、気を引きしめているところです。(塚本准教授)

本プロジェクトでは学内のみならず多くの企業の方々のご協力を頂きましたこと、この場を借りて御礼申し上げます。環境エネルギーイノベーション棟の設計に加えて、そこで運用されている棟内スマートグリッド “エネスワロー” も高い評価をいただいたものと思います。今後も本棟を中心とするスマートエネルギーキャンパス構想“東工大グリーンヒルズ構想”を推進していきたいと考えています。(伊原准教授)

  • 塚本由晴准教授

    塚本由晴准教授

  • 竹内徹教授

    竹内徹教授

  • 伊原学准教授

    伊原学准教授

近年中に発表された研究論文の中でも、学術の進歩に貢献する優れたものに授与されます。
近年中に竣工した建築の設計の中でも、技術や芸術の進歩に貢献する優れた作品に授与されます。
日本建築学会作品選集に掲載された中でも、特に優れた作品が選出されます。

磁場中の高温超伝導現象、全貌を解明

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ポイント

  • 絶対零度でのみ抵抗ゼロになる超伝導状態を磁場中の幅広い領域に発見
  • 予想に反して量子臨界点(絶対零度で状態変化を起こす点)が2つ存在
  • メカニズムの理解や応用の進展に重要な指針を提示

概要

東京工業大学応用セラミックス研究所の笹川崇男准教授と米フロリダ州立大学との日米研究チームは、これまで謎とされてきた、高温超伝導体(用語1)において磁場が起こす状態変化について、絶対零度まで包括する全体像を明らかにした。

磁場を強めていくと電気抵抗ゼロの超伝導状態になる温度は低下してゆく。これまでは、超伝導になる温度が絶対零度まで低下する磁場が唯一の量子臨界点(絶対零度で状態変化を起こす点、用語2)で、それ以上の磁場中には超伝導状態は存在しないと考えられていた。ところが、約4倍の高磁場まで、絶対零度でのみ超伝導状態になる領域が広く存在していることを実験で突き止めた。この予想を覆す今回の発見により、高温超伝導メカニズムの理解に弾みがつくとともに、応用に関しても重要な指針が得られるものと期待される。

この成果は英国の科学誌「Nature Physics (ネイチャー・フィジックス)」オンライン先行版(現地時間5月4日発行)に掲載された。

研究の背景

電気抵抗がゼロになる超伝導体は、消費電力なしに電流を流せる究極のエコ材料として、様々な分野での利用が期待されている。特に、高い温度から超伝導状態になる層状の結晶構造をもつ銅酸化物について、発現機構の解明や応用への展開に向けた研究が世界中で活発に行われている。

強力な磁場中では、超伝導状態は壊れてしまう。一方で、消費電力ゼロを利用して大電流を流せば、強い磁場が発生してしまう。そのため、磁場中における超伝導体の振る舞いを詳細に理解することは、応用に向けた大切な課題になっている。また、積極的に磁場を使って超伝導状態を壊し、その時に現れる状態を詳しく調べることにより、高温超伝導のメカニズムを探る研究も盛んに行われている。

このように、「高温超伝導体の磁場中における振る舞い」は基礎と応用の両方から重要となるが、最も根本的なデータである熱で状態が乱されなくなる絶対零度(0ケルビン、摂氏マイナス273.15度)も含めて、その全貌は謎であった。

研究成果

笹川准教授らはランタン-ストロンチウム-銅の酸化物からなる高温超伝導体を、4~6ケルビンという非常に低い超伝導転移温度になるように組成調整した試料を用いて実験した。18テスラ(地球がもつ磁場の約36万倍)の高磁場までと、0.09ケルビンの極低温まで環境を変化させて電気抵抗を測定することにより、高温超伝導体が示す状態変化の絶対零度までを含む全体像を観測することに成功した。

様々な温度と磁場における電気抵抗率の測定結果(図1左)を、抵抗率と温度について特性値を求めて規格化すると、全てのデータが2つの曲線のいずれかに重なることが分かった(図1右)。このような臨界スケーリングと呼ばれる解析を行うことにより、ある磁場中で絶対零度になった時に超伝導と絶縁体のどちらかの状態になるかが判別でき、その境界の磁場として量子臨界点(絶対零度で状態変化を起こす点、用語2)を突き止めることもできた。

今回得た実験データを臨界スケーリングと呼ばれる手法で解析した結果

図1. 今回得た実験データを臨界スケーリングと呼ばれる手法で解析した結果。様々な温度と磁場における抵抗率の測定結果(左図)は、2つの曲線のいずれかにスケールし(右図)、その境界磁場として量子臨界点が求まった。

その結果、これまでの予想とは異なって、高温超伝導体は、磁場誘起の量子臨界点を2つ持つことを発見した。有限の温度から電気抵抗ゼロの超伝導状態になる低磁場領域と、絶対零度で抵抗が無限大の絶縁体状態になる高磁場領域との間に、絶対零度でのみ超伝導になる領域が広く存在していることがわかった(図2)。従来は、1つ目の量子臨界点の磁場(図中H1 *)によって完全に超伝導状態が破壊されると考えられていたが、それよりも約4倍の高磁場(図中H2 *)まで絶対零度のもとでは超伝導状態になる領域が続いているという発見は、驚くべき結果であった。

今回明らかにすることに成功した高温超伝導体の磁場中における絶対零度を含む振る舞いの全体像

図2. 今回明らかにすることに成功した高温超伝導体の磁場中における絶対零度を含む振る舞いの全体像。予想に反して量子臨界点が2つ存在し、絶対零度でのみ超伝導になる領域が広く存在していることを発見した。

成果の意義と今後の展開

今回明らかにした高温超伝導体についての磁場中における振る舞いの全体像は、メカニズム理解に向けた欠かすことのできない手がかりになるものと期待される。温度の影響のない絶対零度において2段階の状態変化が存在することは、2次元性の強い高温超伝導状態において、量子的なゆらぎ(用語2)の効果が大きな役割をもっていることを示している。

臨界スケーリングに従う抵抗率の振る舞いが予想以上に広範な温度と磁場領域において成り立ったことは、高温超伝導体の磁場下の重要な領域の大半を量子的なゆらぎの効果が占めていることの証拠である。量子的なゆらぎを抑制することができれば、超伝導状態を利用できる磁場領域を約4倍まで拡張できる可能性を示すものとして、応用に向けても重要な指針を与える結果である。

用語説明

(1) 高温超伝導体 :  単体元素や合金などの従来超伝導体に比べて高い超伝導転移温度をもつ物質で、層状銅酸化物系や層状鉄化合物系などが知られている。本研究で扱った物質は層状銅酸化物系であり、ベドノルツとミュラーが1986年に発見(1987年にノーベル賞を受賞)した物質の組成を少しだけ変化させた化合物である。

(2) 量子相転移・量子臨界点・量子ゆらぎ :  物質がある状態(相)から異なる状態へ変化することを相転移という。温度がある領域では通常、熱のゆらぎ(平均からのズレ)によって相転移が起るが、熱がまったくない絶対零度でも磁場の変化などによって物質の状態変化が起る。これは量子的なゆらぎによって起るもので、こうした相転移を起こす点を量子臨界点という。

論文情報

“Two-stage Magnetic-field-tuned Superconductor-insulator Transition in Underdoped La2-xSrxCuO4 (不足ドープLa2-xSrxCuO4における磁場による2段階の超伝導-絶縁体転移)”

Xiaoyan Shi, Ping V. Lin, T. Sasagawa, V. Dobrosavljevič, Dragana Popovič,

Nature Physics, Published Online (4 May 2014); doi:10.1038/nphys2961outer

お問い合わせ先
東京工業大学
応用セラミックス研究所/大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻 准教授
笹川崇男
〒226-8503 神奈川県横浜市緑区長津田町4259, R3-37
TEL & FAX: 045-924-5366
Email: sasagawa@msl.titech.ac.jp

超ルイス酸性分子の開発に成功

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要点

  • 芳香環のみが置換した、結合の手が2本しかないホウ素化合物(ボリニウムイオン)の単離に世界で初めて成功
  • ボリニウムイオンが極めて強いルイス酸性を持つ事を実験と理論化学計算で証明
  • ボリニウムイオンが、化学的に安定な二酸化炭素から酸素を奪うという特異な反応性を示すことを実証

概要

東京工業大学資源化学研究所の庄子良晃助教と福島孝典教授、東京大学大学院薬学系研究科の内山真伸教授らの研究グループは、芳香環のみが置換した「結合の手を2本しか持たないホウ素のカチオン化合物(ボリニウムイオン)」の合成に世界で初めて成功しました。この化合物は、ホウ素がオクテット則(用語1)から著しく逸脱した電子不足化学種であり、これまで合成が極めて困難であるとされていました。さらに、ボリニウムイオンを用いて、安化学的に安定な二酸化炭素から酸素を奪うという特異な反応性を示すことを実証しました。これはボリニウムイオンの極めて高いルイス酸性(用語2)により、二酸化炭素がユニークな活性化を受けたことを示すものです。今後、「超ルイス酸分子化学」という新しい研究が加速するものと期待さます。

この成果は、11日に英国の科学誌「ネイチャー・ケミストリー(Nature Chemistry)」の電子版に先行掲載されました。

研究の背景

ホウ素化合物の性質や反応性は、その電子不足性とホウ素の低い電気陰性度に特徴づけられる。最も典型的なホウ素化合物は、中性三配位構造のボランである(図1)。この状態では、ホウ素は結合の手を三本持っている。この時、ホウ素上には空の2p軌道が存在し、ここに電子対を受け取ることで安定化する。すなわち、中性三配位のホウ素化合物はルイス酸として振る舞う。このようなボランの反応性は、「オクテット則」により説明できる。オクテット則とは、化学種が「構成する典型元素の価電子の数が8個になるように反応する」という経験則であり、化学の基本原理である。

それでは、中性のボランからさらに結合の手を一本取り去った化合物はどのようなものであろうか?そして、その化合物はどのような反応性を示すだろうか?結合の手を2本しか持たないホウ素のカチオン化合物は「ボリニウムイオン」と呼ばれている(図1)。

研究グループは、これまで安定に存在し得ないとされてきた、芳香環のみが置換したボリニウムイオンの単離に世界で初めて成功し、その強いルイス酸性に基づく特異な反応性を明らかにした。

中性ボランとボリニウムイオンの構造

図1. 中性ボランとボリニウムイオンの構造。ホウ素原子の上下のローブは、空の2p軌道を表す。

研究内容と成果

同グループは、ボリニウムイオンのデザイン戦略として、①ホウ素上の置換基として適度な立体障害(用語3)をもつ芳香環であるメシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)を用いること、および②対アニオンとして化学的に安定なアニオン種を用いることによって、芳香環のみが置換したボリニウムイオンの単離に初めて成功した。

ボリニウムイオンの詳細な分子構造は、各種分光分析に加え、単結晶X線構造解析により明らかにした(図2)。このボリニウムイオンは熱的に極めて安定であり、カルボラン塩の場合、結晶試料を300 ℃程度まで加熱しても分解しない。また、実験結果と理論化学計算の比較により、溶液、固体状態のいずれにおいても、ボリニウムイオンのホウ素中心は対アニオンや溶媒の配位を受けていないことが明らかとなった。さらに、理論化学計算の結果、ボリニウムイオンの最低非占有軌道(用語4)のエネルギー準位は、既存のホウ素化合物のものと比較して著しく低い -5.41 eV(電子ボルト)と算出された。以上の検討結果は、今回、合成したボリニウムイオンが熱力学的に安定でありつつも、同時に極めて高いルイス酸性を有していることを示している。

ボリニウムイオンの結晶構造

図2. ボリニウムイオンの結晶構造。

このボリニウムイオンの高い反応性を示す結果として、特異な二酸化炭素の活性化反応も見出した。ボリニウムイオンの溶液に二酸化炭素ガスを混合すると、二酸化炭素の炭素原子にボリニウムイオンのメシチル基が移り、かつ酸素を一つ失ったカチオン化合物が速やかに生成した(図3)。すなわちこの反応では、二酸化炭素の酸素原子がホウ素により奪われている。この特異な反応は、強いルイス酸中心であるボリニウムイオンのホウ素原子が、二酸化炭素の酸素原子に配位することから進行すると考えられる。実際、理論化学計算による考察では、この反応機構がエネルギー的に妥当であることが示された。本反応は、一般的に求核剤(用語5)を用いて行われる二酸化炭素の活性化反応とは全く異なる。ボリニウムイオンを利用することで、今後、様々な基質をターゲットとしたユニークな分子活性化が可能になると期待できる。

ボリニウムイオンによる二酸化炭素の脱酸素化-アリール化反応

図3. ボリニウムイオンによる二酸化炭素の脱酸素化-アリール化反応。

今後の展開

同研究グループにより、芳香環のみが置換したボリニウムイオンの単離が可能であることが初めて実証された。また、ボリニウムイオンの特異な反応性も明らかになった。今後、ホウ素上の置換基として様々なアリール基やアルキル基を導入することで、「単離可能な究極のルイス酸分子」の創製を目指す。また、これらの研究を推進することで、新たな「超ルイス酸分子化学」の開拓に取り組む。

用語説明

(1) オクテット則 :  化学種を構成する元素の価電子数が8個になるように反応するという経験則であり、化学の基本原理。主に、第二周期の典型元素に適用される。

(2) ルイス酸 :  ルイスによる酸の定義であり、電子対を受け取る物質を指す。それに対して、塩基は電子対を供与する物質と定義される。すなわち、ルイス酸は電子対受容体、ルイス塩基は電子対供与体である。

(3) 立体障害 :  立体的な嵩高さを指す。立体障害の大きい置換基が導入された部位は、他の分子と反応しにくくなる。

(4) 最低非占有軌道 :  電子によって占有されていない分子軌道のうち、最もエネルギーの低い軌道を指す。他の分子から電子対を受け取る反応などは、この最低非占有軌道が関わる。

(5) 求核剤 :  化学反応において電子密度が低い原子と反応する化学種を指す。二酸化炭素との反応であれば、求核剤は電子密度が最も低い炭素原子に対して反応し(求核攻撃)、結合を生成する。

論文情報

A two-coordinate boron cation featuring C-B+-C bonding

Yoshiaki Shoji, Naoki Tanaka, Koichiro Mikami, Masanobu Uchiyama & Takanori Fukushima,
Nature Chemistry (2014); doi:10.1038/nchem.1948outer

本論文は同誌のNews & Viewsにてハイライトされました。

Main-group chemistry: Boron served straight up

Christian Reus & Matthias Wagner,
Nature Chemistry (2014); doi: 10.1038/nchem.1953outer

お問い合わせ先
東京工業大学資源化学研究所・教授 福島 孝典
TEL: 045-924-5220
FAX: 045-924-5976
Email: fukushima@res.titech.ac.jp

「東工大留学フェア2014」開催報告

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4月19日(金)にすずかけ台キャンパス、4月23日(水)に大岡山キャンパスで東工大留学フェアが開催されました。例年4月のこの時期に、東工大留学フェアを開催していますが、参加団体や留学プログラムも毎年増えており、留学を考えている方にとっての一大イベントとなっています。

個別相談ブースでの留学相談の様子(すずかけ台キャンパス)

個別相談ブースでの留学相談の様子(すずかけ台キャンパス)

4月19日のすずかけ台キャンパスでは、あいにくの天気でしたが、80名以上の学生が参加し、先輩方の体験談や各種留学プログラムの説明に熱心に耳を傾けていました。
すずかけホールでの全体説明では、大学院総合理工学研究科長の小田原修教授の挨拶に始まり、留学生交流課による各種留学プログラムの説明、ノルウェー工科・自然科学大学に留学した金田 祐輔さん(生体分子機能工学専攻 修士2年)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)に留学した藪 知衣理さん(材料物理科学専攻 修士2年)、そして、カリフォルニア大学ロサンゼルス校に学位留学をした高橋航圭 助教(機械物理工学専攻)が留学体験談を発表しました。
留学体験談の発表の後、ラウンジに場所を変え、留学プログラム・留学先大学ごとに設けたブースで個別相談が行われました。一人ひとり詳しく話を聞くことができ、具体的な留学のイメージを持つことができたようです。

4月23日の大岡山キャンパスでは、すずかけ台に参加した学内団体に加え、外国政府等の外部団体の協力も得て開催され、当日は天候にも恵まれたこともあり、400名近くの学生が参加しました。受け付け開始から多くの学生がつめかけ、大勢の立ち見の参加者が出る中、くらまえホールでの発表が行われました。
大学院理工学研究科工学系長の岸本喜久雄教授の挨拶に始まり、留学生交流課による各種留学プログラムの説明、ノルウェー工科・自然科学大学に留学した二ノ宮 拓洋さん(経営工学専攻 修士2年)、ワシントン大学に留学した松村杏子さん(社会工学専攻 修士2年)、そして、すずかけ台キャンパスと同じく高橋航圭助教に留学体験談を発表してもらいました。

本学教員による学位留学体験談の発表(大岡山キャンパス)

本学教員による学位留学体験談の発表(大岡山キャンパス)

ノルウェー工科・自然科学大学へ留学した学生による留学体験談の発表(大岡山キャンパス)

ノルウェー工科・自然科学大学へ留学した学生による
留学体験談の発表(大岡山キャンパス)

個別相談ブースでの留学相談の様子(大岡山キャンパス)

個別相談ブースでの留学相談の様子(大岡山キャンパス)

個別相談ブースでは、今回から東工大蔵前会館の1階から3階までブースを広げ、1階ロイアルブルーホールには外部からの参加団体、外国語学習相談室、および協定校への留学経験者のブース、1階ギャラリーには短期留学プログラムのブース、2階には学内プログラム担当者のブースを設置し、3階ではグローバル理工人育成コースの留学報告会・説明会を行いました。
4つのゾーンに個別相談ブースを設置したことで、様々なプログラムや体験談の話を聞くことができ、充実した個別相談ブースとなったのではないでしょうか。終了時間を過ぎてもブースの人だかりは収まらず、学生達の留学への関心の高さがうかがえました。

すずかけ台・大岡山両キャンパスでの留学フェアはこれで終了しましたが、今後も質問やご相談は随時留学生交流課(緑ヶ丘3号館5階)で受け付けています。

各国留学ブースでの留学相談の様子(大岡山キャンパス)

各国留学ブースでの留学相談の様子(大岡山キャンパス)

今年は2階にもブースを開設しました(大岡山キャンパス)

今年は2階にもブースを開設しました(大岡山キャンパス)

すずかけ台図書館にペリパトス・オープンギャラリー作品を展示開始

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2013年3月、すずかけ台キャンパスを訪れる学生や教職員が、キャンパスに安らぎ、和み、憩いを感じ、愛着を持てるような雰囲気を生むために、「ペリパトス・オープンギャラリー」が誕生しました。女子美術大学の学生・卒業生による作品が、すずかけ台キャンパスの動線にそって展示されています。

絵画作品「道」と作者の山本眞紀子さん

絵画作品「道」と作者の山本眞紀子さん

2014年4月から、その展示作品のうち1点、山本眞紀子さん作の絵画「道」(ペリパトス・オープンギャラリー図書館長賞受賞)を、附属図書館すずかけ台分館2階に新たに展示することになりました。

作者の山本眞紀子さんに、お話を伺いました。

この絵について

「人の気配を感じる風景に興味を持っていて、地元千葉の風景を元に、人はいないけれども、少し人の気配を感じさせる風景を描いています。この絵の元となった風景は朝もやの風景ですが、燃えるような表現を取り入れました。」

これからについて

「これからも絵を描き続けていきたいです。地元、千葉の風景を元にして、様々な風景を描き続けていきたいと思っています。」

「新入生・新研究室メンバー向け図書館ガイダンス」実施報告

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東工大の附属図書館では、教育・研究に図書館の資料やサービスがフル活用されるよう、積極的に講習会などを企画・実施しています。

春のライブラリーツアー

4月3日から25日まで、大岡山図書館およびすずかけ台図書館にて、新入生・新採用教職員対象のライブラリーツアーを実施しました。
ツアーでは、実際に図書館の中を周りながら本の探し方・借り方、コピーの手順などを説明しました。

大岡山図書館のツアー風景

大岡山図書館のツアー風景

初日から最終日まで多くの新入生・教職員が図書館に足を運び、期間中の参加人数は大岡山とすずかけ台合計で126人となりました。
参加者は活発に質問したり、ツアー後に各自で本棚を詳しく見て回ったりするなど、図書館を積極的に利用しようとする様子がうかがえました。
実施にあたっては、図書館職員だけでなく図書館サポーターの学生も説明役を務めました。学生目線での案内が新入生に好評でした。

研究科・専攻別オリエンテーション

4月に研究科や専攻毎に開催される、学部新4年生や大学院新入生を対象にしたオリエンテーションにて、図書館の利用方法を説明しました。
大岡山では1研究科と4専攻、すずかけ台では1研究科と8専攻で実施しました。
このオリエンテーションには、論文検索や電子ジャーナル利用など、研究室所属者向けに役立つ内容を盛り込んでいます。

フランス視察団一行が三島学長を表敬訪問

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4月10日、フランス大学長会議ジャン・リュック=ナエル国際交流特別参事官等、フランスからの視察団が東工大を訪問し、三島良直学長、丸山理事・副学長、水本副学長等と懇談しました。

初めにナエル国際交流特別参事官よりフランス大学長会議について、ド・ラ・ブルドネ国立ポンゼショセ大学国際経営大学院学長よりフランス技師学校長会議についての概要説明が行われ、その後三島学長及び水本副学長より東工大の概要及び教育システムについて紹介しました。この度の視察団は、国立大学協会との高等教育機関における履修、学位の相互認証及び単位互換に関する協定の作成を大きな目的としており、そのため東工大の教育システムに関する説明や産学連携に関する質疑応答が数多くありました。

引き続き、フランス視察団と東工大からフランスに留学した学生、及び東工大に留学中のフランス人学生との交流の時間が設けられ、留学先として双方の国を選んだ理由や、留学の目的、留学後の計画等、活発な意見交換が行われました。

その後一行はものつくり教育研究支援センターを訪れ、齋藤卓志准教授からセンターの概要等の説明を受けました。また、ポンゼショセ大学とダブルディグリープログラム等で活発な交流実績のある大学院社会理工学研究科の飯島淳一教授、中井検裕教授がド・ラ・ブルドネ学長と懇談し、今後の交流について意見交換しました。

懇談の様子

懇談の様子

懇談の様子

懇談の様子

トロワ工学大学 ジル・ルロンデル教授 フランス高等教育・研究省 ヴァネッサ・ファトレ氏 フランス大学長会議国際交流特別参事官 ジャン・リュック=ナエル教授 ポンゼショセ大学国際経営大学院学長 アルメル・ド・ラ・ブルドネ教授 三島良直学長 在日フランス大使館大学交流担当官 カトリーヌ・ドロゼフスキー氏 丸山俊夫理事・副学長 水本哲弥副学長 武藤滋夫大学院社会理工学研究科長

左から
トロワ工学大学 ジル・ルロンデル教授  フランス高等教育・研究省 ヴァネッサ・ファトレ氏
フランス大学長会議国際交流特別参事官 ジャン・リュック=ナエル教授
ポンゼショセ大学国際経営大学院学長 アルメル・ド・ラ・ブルドネ教授
三島良直学長  在日フランス大使館大学交流担当官 カトリーヌ・ドロゼフスキー氏
丸山俊夫理事・副学長  水本哲弥副学長  武藤滋夫大学院社会理工学研究科長


「移動通信研究グループ オープンハウス2014」開催報告

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4月24日、大岡山キャンパス西9号館にて、移動通信研究グループオープンハウス2014を開催いたしました。このイベントは、移動通信に関連する5研究室からなる移動通信研究グループの主催により、グループの研究活動を広く社会にご紹介するとともに、学外の企業・研究所といった機関との連携を深めるという主旨の下、2005年から毎年4月に開催しています。今年は関係者含め200名以上が参加し、「5G Towards new generation of wireless network systems」と題して、2020年にも導入が予想される5G(第5世代移動通信)について、その技術動向をメインに議論いたしました。

移動通信研究グループ

デモの様子

デモの様子

オープンハウスは、各研究室の研究室紹介、ポスターでの研究発表、招待講演とパネルディスカッションからなります。25件のポスター発表・デモンストレーションでは多くの参加者が興味を持ち、実験機器の構成やプログラム、製作コスト等について熱心に質問していました。

招待講演では、株式会社NTTドコモから永田聡様、クアルコムジャパン株式会社から北添正人様に講演いただきました。東工大からは、大学院理工学研究科通信情報工学専攻 鈴木博教授が講演しました。オペレータ、メーカー、大学と、それぞれの視点で5G実現へ向けた取り組みや最新の技術動向などが紹介されました。パネルディスカッションでは、結局、LTE-advancedの実施はいつになるのか、また標準化団体の現状とあり方について、ここでしか聞けないざっくばらんなディスカッションが展開され、来場した参加者にも大変好評でした。

今年は、無線通信技術とは直接関係のない企業からの参加者も多く、無線通信技術のアプリケーションの可能性を感じた年となりました。来年もオープンハウス2015を開催予定です。参加登録すれば誰でも参加可能ですので、通信技術に興味がある方は移動通信研究グループのwebサイトで情報をチェックしてください。

  • ポスター発表の様子

    ポスター発表の様子

  • ポスター発表の質問に熱心に答える学生

    ポスター発表の質問に熱心に答える学生

  • 研究室紹介

    研究室紹介

  • パネルディスカッション-5Gはいつ?-

    パネルディスカッション-5Gはいつ?-

  • 講演をされる永田氏

    講演をされる永田氏

  • 参加者からも質問が

    参加者からも質問が

お問い合わせ先
東京工業大学 移動通信研究グループ
Email: committee_oh@mcrg.ee.titech.ac.jp

大隅良典特任教授に栄誉教授の称号を授与

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5月9日(金)、すずかけ台キャンパスにおいて、フロンティア研究機構の大隅良典特任教授に、学長から栄誉教授の称号が授与されました。

大隅良典特任教授

大隅良典特任教授

この称号は、本学教授、退職者、卒業・修了生のうち、ノーベル賞や文化勲章、文化功労者、日本学士院賞など教育研究活動の功績をたたえる賞もしくは顕彰を受けた者に対して付与されるものです。

大隅特任教授は、飢餓状態に置かれた細胞が飢餓を乗り切るために自らの細胞の一部を分解し、栄養源とする「オートファジー(自食作用)」機能を世界で初めて肉眼で確認し、さらにそのメカニズムや関連する遺伝子を次々と明らかにしました。これらの業績により、2012年11月には科学や技術・文化の発展に大きな貢献をした人々に贈られる「京都賞」を受賞し、2013年9月にはトムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞しています。

今回、これまでの研究業績や受賞に対して、栄誉教授の称号が授与されました。

授与式終了後、部局長を交えて懇談会が開催され、終始和やかな雰囲気のうちに閉会いたしました。

三島学長から称号記を授与

三島学長から称号記を授与

一列目 中央左 三島良直学長 中央右 大隅良典教授

一列目 中央左 三島良直学長 中央右 大隅良典教授

「6類 新入生セミナー」開催報告

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東工大では毎年、新入生を対象に、類ごとのセミナーを実施しています。

6類は、建築学科、土木・環境工学科、社会工学科の3つの学科からなるため、例年バスで都内の建物や都市を見学するバスゼミを企画しています。見学先は、それぞれの学科の特徴を活かして、学科ごとに毎年選定しています。各学科とも、人々の生活や社会と密接な関わりがあることが共通項であり、このバスゼミが2年次における学科選択の際に役立つように、まずは実際の建物や都市をみることで、学習意欲をもってもらうことが目的です。バスゼミが行われた4月4日は、当日こそ穏やかな晴天に恵まれました。

パレスサイドビル (アルミ押出整形のルーバーと雨樋)

パレスサイドビル
(アルミ押出整形のルーバーと雨樋)

建築学科の見学先には、皇居のお濠端に立つ竹橋のパレスサイドビル(1966年竣工、設計:日建設計)が選ばれました。天気も良く、班によってはその前の見学先である丸の内から皇居東御苑(旧本丸)を通り抜け、満開の桜や旧江戸城天守台などを見物しながら出口の北桔橋門に向かい、そこからパレスサイドビルの全景を眺めました。パレスサイドビルは1960年台に建設された日本近代を代表するオフィスビルの傑作で、設計チーフは本学のOBである林昌二氏です。円筒形のダブルコアを外部に出すことで内部の多様な使い方を可能にした平面計画とともに、円筒型コアを覆うリブ付きプレキャストコンクリートパネル、アルミ押出整形のルーバーと雨樋、サッシュレスの全面ガラス窓や地下の“夢の階段”、東玄関の階段手摺りや天井に使用された木材の仕上げなど、
パレスサイドビル (夢の階段)

パレスサイドビル (“夢の階段”)

最新の工業技術と高い職人技術が奇跡的に融合した戦後を代表する建築作品です。良い建築をつくるための最良の教科書は良い建築を実際に見ることですが、新入生にとって今回のバスゼミがそうしたきっかけになることでしょう。
東京みなと館

東京みなと館

土木・環境工学科の見学先には、東京湾内に建設された港湾施設や橋梁といった社会インフラを船上から見学する企画を、国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所の協力を得て、準備していました。しかし、バスゼミ当日は、前日の雨こそ上がったものの、強風が吹くことが予測されたため、参加者の安全を第一に考えて、船上からの見学は中止となってしまいました。このことをバスの中で新入生に伝えた時には、大きなため息が漏れてきました。

そこで当日は、お台場にある東京みなと館を訪れて、館内にて東京港の歴史と役割に関するDVDを視聴するとともに、東日本大震災の際に発生した地盤の液状化による被災と事前対策の効果について学習しました。あわせて、国土交通省関東地方整備局の職員から、現在東京港で進められている港湾整備の概要についてご説明いただきました。普段はあまり重要性を認識できない港湾ですが、食料やエネルギーの大半を海外からの輸入に頼っている日本にとっては、生活に欠かすことのできない重要な社会インフラであることを改めて認識することができました。また、地震時の地盤の液状化のメカニズムについても理解することができ、特に事前対策を施しておくことで地震時の被害を著しく軽減できることが、強く新入生の印象に残りました。

東京港のコンテナヤード

東京港のコンテナヤード

今回のバスゼミを通じて、土木というものが我々の生活の中でいかに重要であるか、また、土木が扱うもののスケールがいかに大きいか、新入生は理解したはずです。新入生は、今回学んだ身の周りにある土木の存在感を常に意識しながら、これからの大学生活を送ることでしょう。

丸の内地区の散策

丸の内地区の散策

社会工学科の見学先には、東京駅を中心とする丸の内地区再開発の中心的役割を担っている三菱地所設計のご協力のもと、都市全体のマネージメントを行う現場を紹介いただきました。同地区は、「公民協調による大丸有のまちづくり ~エリアマネジメント・環境共生への取組み~」として、2012年に日本都市計画学会石川賞を受賞した、現在進行形の優れた都市再開発の事例です。まず、丸の内永楽ビルディング内のオフィスにおいて、明治以降の丸の内地区開発の歴史、現在の丸の内地区が持つ日本経済全体へのポテンシャルなどを説明していただきました。

三菱一号館と中庭

三菱一号館と中庭

また、同オフィス内にある丸の内地区を含む千代田区の大規模模型を使って、丸の内地区が有する都市機能上の意味や、今後の丸の内地区が経済、環境、利便性、快適性などを考慮しながら進むべき方向を示していただきました。新入生は、都市デザイン、都市計画、都市システムの統合的展開とそれを支える社会的ネットワークの重要性を学び、またこの分野で活躍する6類の先輩たちの姿に仕事のおもしろさと勉学の必要性を強く感じたようです。最後に丸の内地区の仲通りを散策し、復元された三菱一号館や中庭を見学しました。

以上のように、3箇所の見学とも成功裏に終えることができました。帰りのバスで学生に書いてもらった感想文のいくつかを紹介します。
「私は建築志望ですが、ビルも港も街づくりもすべて繋がっているので、どれも楽しめたし役に立ちました」「臨海副都心地区の地盤の工夫には驚いた。しっかり対策を行っている街“東京”が首都であることに誇りを持ちたいと思う」「もともとインフラに興味があったので、埋立地という特殊な環境でのインフラ整備についての話が聞け、いい勉強になった」
「経済にいこうと思っていたけど都市開発もいいなと思いました」「3カ所の見学先はとてもよい刺激になり、これからの勉強のモチベーションが高まりました。お友達もできました」

日常生活の中で、普段からよく目にする物だからこそ、それを支えている技術や人々の努力が理解できると、驚きも大きく、目標へ向かってのモチベーションもあがったのでしょう。良い勉強になった、友達ができたという感想が多く、本バスゼミの目的は達成されたといえます。

国際原子力人材育成大学連合ネットが「日本原子力学会賞(貢献賞)」受賞

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2014年3月に開催された日本原子力学会において、「国際原子力人材育成大学連合ネットによる原子力人材育成」事業が日本原子力学会賞の貢献賞を受賞しました。これは、原子核工学専攻の齊藤正樹教授(現:博士課程教育リーディングプログラム グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院 特命教授)が中心となって設立した、「国際原子力人材育成大学連合ネット」が、平成22年度から24年度にかけて実施した国内外の原子力人材育成事業が評価されたものです。

受賞した原子力学会賞貢献賞の盾

原子力学会賞貢献賞

この大学連合ネットは、原子力教育・研究に携わっている有志の15大学(北海道大、八戸工大、茨城大、東工大、湘南工科大、東海大、山梨大、名古屋大、金沢大、福井大、京都大、大阪大、近畿大、岡山大、九州大、)が連携して、それぞれの人材育成資源を持ち寄り、横断的、集約的、効果的、効率的かつ戦略的に国内外の質の高い国際原子力人材育成するために設立したものです。本事業で行った主な活動を以下に説明します。

盾を授与される齊藤正樹教授

盾を授与される齊藤正樹教授

1. 国内向けの原子力基礎教育シリーズ・TVセミナー

原子力分野以外の国内の優秀な学生を対象として、原子力の基礎を教育するシリーズ・TVセミナー(原子力道場)を、以下のように計10回実施しました。このセミナーでは、北海道大、八戸工大、茨城大、東工大、金沢大、福井大、大阪大、岡山大の8拠点を結ぶTV遠隔講義ネットワ-クを構築し、全国を横断的に連携して、2日間づつの講義が( )内の幹事校より配信されました。

1. 新型炉開発
(福井大)
2. 原子力の安全性及び原子力平和利用と核不拡散
(東工大)
3. 原子力発電と燃料サイクル
(八戸工大)
4. 低線量放射性廃棄物の処理
(岡山大)
5. 高レベル放射性廃棄物について
(北大)
6. 放射線と医療工学
(阪大)
7. 核変換について
(茨城大)
8. 宇宙(創生、開発)と原子力
(東工大)
9. 原子力の安全性、防災・危機管理
(福井大)
10.暮らしとエネルギーと原子力
(東工大)

TVセミナーの様子

TVセミナーの様子

また、全国のTVセミナー参加者の中から優秀な学生を選抜して拠点の幹事校に集め、現地の協力機関と連携し、グループ討議や関連する原子力関係施設を訪問し、原子力に関する知識を深める原子力道場全国大会を2回(幹事校は第1回目:福井大、第2回目:茨城大、東工大)開催しました。このシリーズ・セミナー全10回のTVセミナーの延べ受講者数は1,128名、また2回の全国大会の受講者は69名でした。

これらのセミナーを受講した学生からの数多くの反響が寄せられ、その例を以下に示します。

  • 「5年10年先だけでなく、数百・数千年先のことを考える視点を学びました。技術伝承・国際共同体の意味など新しい見識を得られました。」
  • 「他大学の様々な学年の方と話し合いが出来、非常に有益だったし、楽しむことができました。是非またこのようなプログラムに参加したい。」

2. 海外向け戦略的国際原子力教育

インドネシアでの講義後の記念写真

インドネシアでの講義後の記念写真

日本の原子力産業の世界展開を支援するため、原子力新規導入国のマレーシア、ベトナム、サウジアラビア、タイ、モンゴル、インドネシア、フィリピンの7カ国を対象として、原子力の講義を1週間ずつ実施しました。それぞれの国の原子力人材育成状況や人材育成に関する要望に基づいて、大学連合の中から構成した約10名の原子力教育グループを現地に派遣し、現地で学生や行政府等の若手に対して実施し、7ヶ国での受講者総数は386名に達しました。

受講した各国の学生からは、以下のような反響が寄せられました。

  • 「マレーシアは今、原子力を導入する時期に来た。日本では福島第一原子力発電所事故があったが、約束通りセミナーを開いてくれた。日本からは学ぶべきことは多い。」
    (マレーシア原子力庁ユナス副総裁挨拶)
  • 「ベトナムは経験豊富な教授陣や指導者ならびに実習機材が不足している。従って、人材育成の面でも日本の支援に期待する。」
  • 「タイの発電は現在、天然ガスの比率が高いが、これは長く続かないことを承知している。このため原子力の必要性を十分認識しており、そのためにも今から人材育成をしておかなければならない。」
  • 「サウジアラビアの国内石油消費量が大きく、このままでは、あと15年くらいで国内生産量の全てを国内で消費してしまう。従って、石油を残すためにも16基程度の100万kW級原子炉が欲しい。」
  • 「講義は毎年、またインドネシアの他の土地でも開催して欲しい。初級、中級、上級の階層別の講義を開催して欲しい。」

これらの活動が評価されて、日本原子力学会からの貢献賞受賞となりました。

※ 5月22日 14:40、リンク先に誤りがあったので修正いたしました。

「4類 新入生セミナー」開催報告

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東工大では毎年、新入生を対象に、類ごとのセミナーを実施しています。

今年の4類新入生セミナーは、4月4日(金)に実施しました。午前中は西5号館 W531講義室において、新入生全員が集まって講演会と各種の説明を行いました。最初に基調講演として、東京工業大学特許発海外ベンチャー第1号となるResonic GmbHの日本法人の株式会社Resonic Japanの代表取締役社長である川口卓志氏より、「私の大学生活~紆余曲折という個性」と題した講演を行っていただきました。学生時代に自ら様々なことに打ち込み、成果を出してきた経験を語っていただき、「極端に何かをやれば必ずそれが好きになる」と新入生のチャレンジ精神を鼓舞していただきました。

次に、クラス担任・助言教員の制度の説明を行った後、5つのクラスを担当するクラス担任・助言教員を紹介し、教員本人からも簡単な自己紹介および挨拶をしました。

4類主任によるアドバイス

4類主任によるアドバイス

その後、「1年生の過ごし方」と題して、4類主任より、授業を中心とした学生生活に関するアドバイスをしました。まずは、1人で悩む状態に陥ることが危険であり、友人、家族、助言教員、学生相談室など多くの相談できる人や窓口を積極的に利用すべきであることを伝えました。続いて、1年次の授業科目の受講にあたっての心構えの説明を行いました。特に、共通科目のうち技術者に必要な基礎素養となる国際コミュニケーション科目(語学)と理工系基礎科目(数学、物理、化学等)の重要性を強調するとともに、機械系エンジニアに必須となる工業力学、図形科学、機械工学系リテラシーをしっかり勉強するよう助言しました。

午前中の最後は、1年後の学科所属に向けて、機械科学・機械知能システム・機械宇宙・制御システム・経営システム・国際開発の各学科より、それぞれを代表する教員が各学科の紹介をしました。また、社会工学科についても、学科長の松井知己教授から、新入生にとって興味深い例を題材にした学科紹介がありました。

昼からは5つの講義室にクラスごとに分かれ、昼食をとり、その後、新入生間の親睦と、年齢の近い先輩から大学生活の情報を得ることを目的とした、クラス別のセミナーを行いました。クラス別セミナーでは、各クラスの担当教員と学生が企画した、新入生の自己紹介やスピーチ、先輩学生によるアドバイス(単位の取り方、友達の作り方、サークル等)、学内探検、クイズなどそれぞれのクラスごとにユニークな楽しみの時間を過ごした後に散会となりました。

クラス別セミナー(先輩学生との対話)

クラス別セミナー 先輩学生との対話

クラス別セミナー(学内探検)

クラス別セミナー 学内探検

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