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原昇平さんがデュアスロン世界大会で13位と健闘

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トライアスロン部の原昇平さん(工学部 高分子工学科4年)が、7月6日にデンマーク オーデンセにて行われた世界大会「マルチスポーツ ワールド チャンピオンシップ フェスティバル」のデュアスロン U23男子部門に出場し、13位と健闘しました。

デュアスロンは、水泳・自転車・ランニングを行うトライアスロンとは違い、1人の選手がランニング(第1ラン)・自転車(バイク)・ランニング(第2ラン)の3つの競技を順に行う複合競技です。水泳がないため季節を問わず大会を開催することができ、マラソンや自転車愛好者にも広く楽しまれているスポーツです。

マルチスポーツ ワールド チャンピオンシップ フェスティバルのU23男子部門では、18歳以上23歳以下の競技者が第1ラン10 km、自転車36km、第2ラン4.9 kmのコースで戦いました。

レース中の原さん

レース中の原さん

原さんのコメント

当日は今まで練習してきた分を100%出し切れたのですが、結果はU23で13位ということで入賞からは遠く、世界のレベルの高さを実感しました。学業では、4月から研究室に所属し、剛直棒状高分子であるポリイミドの垂直配向制御についての研究を始めたところです。今回のレースで感じたことをこれからの練習に生かし、より一層強くなれるよう努力していきたいです。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

東京工業大学トライアスロン部とは

体育会系のサークルとして1993年頃に設立され、現在は修士、他大学を含め23名の部員が所属しています。海、プール、湖、川などでの水泳、バイク(自転車)、ランニングを立て続けにこなすハードなスポーツですが、大学対抗の選手権大会等を目指して、日々練習に励んでいます。

原さんは、公営社団法人 日本トライアスロン連合によるデュアスロン強化指定選手に選ばれるなど、今後も活躍が期待されます。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975


超新星爆発ニュートリノで宇宙核時計テクネチウム98が生成されることを予言 ニュートリノ天体観測及び始原的隕石の分析による検証が期待される

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発表のポイント

  • 超新星爆発で発生するニュートリノによって新しい核種が生成されるが、6種類のニュートリノの中で反電子ニュートリノによる生成の寄与が大きい核種は知られていなかった。
  • 理論計算によって、天然に存在しないテクネチウム98がニュートリノで生成されること及び、反電子ニュートリノの寄与が大きいことを発見した。
  • 本成果は原始中性子星から放出された反電子ニュートリノの平均エネルギーの評価に寄与する。

量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫)の早川岳人上席研究員、国立天文台の梶野敏貴准教授、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の野本憲一上級科学研究員、東京工業大学の千葉敏教授、九州大学の橋本正章教授、理化学研究所の小野勝臣研究員他の共同研究グループは、超新星爆発[用語1]で放出されるニュートリノ[用語2]によって、自然には存在しないテクネチウム98(98Tc)が生成されることを理論計算によって予測した。

超新星爆発の初期に、中心部の原始中性子星[用語3]から膨大な数のニュートリノが放出され、そのニュートリノがエネルギーの一部を外層に落とし超新星爆発を引き起こす。この時、一部のニュートリノが既存の原子核と反応し、タンタル180等の新しい核種を生成する。ニュートリノには、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノとその反ニュートリノの6種類ある。これまでの研究で、主に反電子ニュートリノ以外の5種類のニュートリノによって上記核種が生成されていることが判っていた。もし、残りの反電子ニュートリノの寄与の大きい核種が存在すれば、6種類のニュートリノ全ての平均エネルギーが評価でき、超新星爆発の理解に大きく寄与する。

本研究グループは、98Tcがニュートリノで生成された可能性に気づき、関連するニュートリノ原子核反応[用語4]率を計算し、超新星爆発モデルを用いて98Tcの生成量を計算した。その結果、反電子ニュートリノの寄与が最大20%あることが判明した。すなわち、反電子ニュートリノの寄与が大きい重元素の初めての発見である。また、隕石研究が進展すれば、太陽系形成時の98Tcの量と超新星爆発が発生した年代が評価可能であることを示した。本研究は超新星爆発の6種類のニュートリノ全ての平均エネルギーの解明、近い将来に期待される超新星爆発の反電子ニュートリノのエネルギーの予測に寄与する成果である。

本研究成果は、Physical Review Lettersのオンライン版に9月4日に掲載された。

研究の背景と目的

太陽より質量が8倍以上の恒星は、寿命の最後に重力崩壊型超新星爆発を引き起こす。まず、中心部に存在する鉄コアが重力に耐えきれずに収縮して原始中性子星を形成する。やがて、中性子星から膨大な量のニュートリノが放出される。そのニュートリノの一部が外層にエネルギーの一部を落とし、超新星爆発を引き起こす。この時、一部のニュートリノが既に存在している原子核と核反応を起こし、新しい核種を生成する。しかし、ニュートリノによる核種の生成量は非常に小さく通常は無視できる。そのため、宇宙における他の核反応ではほとんど生成できない核種においてのみ、超新星ニュートリノによる生成量の評価が可能になる。そのような核種として、わずかに7Li(リチウム)、11B(ホウ素)、92Nb(ニオブ)、138La(ランタン)、180Ta(タンタル)のみが知られていた。

図1. 超新星爆発ニュートリノによる元素生成の模式図

図1. 超新星爆発ニュートリノによる元素生成の模式図

ニュートリノによって生成された核種の量から、原始中性子星より放出されたニュートリノの平均エネルギーを評価できる。平均エネルギーは、超新星爆発のメカニズムの理解や、ニュートリノ振動などの基礎的な物理現象の理解に必要不可欠な物理量である。ニュートリノには、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ、反電子ニュートリノ、反ミューニュートリノ、反タウニュートリノの6種類のニュートリノが存在している。これまでの研究で、主に反電子ニュートリノを除く5種類のニュートリノによって上記のタンタル180等の核種が生成されていることが判明していた。しかし、超新星ニュートリノの理解には、6種類全ての平均エネルギーを知ることが必要不可欠である。そのため、反電子ニュートリノの生成率の割合が高い新しいニュートリノ生成核種の発見が求められていた。

本研究グループは、98Tc(テクネチウム98)が超新星ニュートリノで生成される可能性に気がついた。さらに、反電子ニュートリノの寄与が大きい可能性にも気がついた。本研究の目的は、超新星爆発のニュートリノによる98Tcの生成量を計算し、反電子ニュートリノによる生成量の割合を求め、太陽系形成時に存在していた場合に隕石研究で計測可能かどうか調べることであった。

研究方法

一般に、恒星は図1に示すように玉ねぎ構造をしており、中心部に重い元素、外側になるにつれ軽い元素が占めるようになる。主要な成分は内側から、鉄、ケイ素、ネオン、酸素、炭素、ヘリウム等であるが、同時に少量のスズ、金、ウラン等の重元素も含んでいる。これらの重元素は、恒星が誕生した時点で、星間ガス中に既に含まれていたものである。超新星爆発の発生時に、ニュートリノが酸素/ネオン層を通過する際に、既に存在していた98Mo(モリブデン)や99Ru(ルテニウム)等の重元素の一部とニュートリノ原子核反応を起こし、一定の確率で98Tcを生成する。しかし、これまで98Tcの生成について、実験データはもちろん理論計算値もなかった。そのため、98Moなどの原子核の詳細な構造を計算して、ニュートリノと原子核の反応率を計算した。

次に、超新星爆発モデルを用いて計算を進めた。用いたモデルは、1987年にカミオカンデで検知されたニュートリノを放出した超新星爆発1987Aを再現するために構築されたモデルある。また、超新星爆発の段階で存在していた98Mo等の重元素の量も必要である。そのため、超新星爆発より前の段階の恒星の中の核反応を計算することで、超新星爆発の時に存在していた重元素の量を計算した。次に、ニュートリノ原子核反応率を組み込み、超新星爆発時にニュートリノで生成される98Tcの量を計算した。

98Tcは約420万年の半減期で娘核の98Ruにβ崩壊する放射性同位体である。太陽系の年齢の約46億年より短いため、太陽系形成時に存在していても現在の太陽系には存在しない。しかし、太陽系形成時に存在していた場合には、始原的隕石中の娘核の98Ruの量を計測することで、太陽系形成時の98Tcの量を知ることができる。なお、超新星爆発から太陽系形成までの年代を知ることも可能であり、このような放射性同位体は宇宙核時計[用語5]と呼ばれる。そこで、太陽系形成直前に太陽系近傍で超新星爆発が発生した場合に、太陽系に存在していた98Tcの量を計算した。図2に示すように、現在の太陽系の元になった星間ガスが重力凝縮し始め、原始太陽系を形成する。前後して、太陽系近傍で超新星爆発が発生し、生成された物質の一部(質量にして太陽系の質量の1/1,000程度)が太陽系を構成する物質に混ざったと考える。過去の92Nb(ニオブ)宇宙核時計の研究等から推定されている年代(100万年から3千万年)を用いて計算した結果、太陽系形成時に存在していれば隕石の研究で十分測定可能な量があることを判明した。

図2. 超新星爆発で生成された物質の一部が原始太陽系に混ざる模式図

図2. 超新星爆発で生成された物質の一部が原始太陽系に混ざる模式図

本研究成果の意義

反電子ニュートリノの寄与を評価したところ、98Tcの生成に対してその寄与が最大20%あることが判明した。既存のニュートリノで生成される重元素は、ほとんど反電子ニュートリノを除く5種類のニュートリノで生成されることが判明している。そのため、98Tcは唯一つの反電子ニュートリノの寄与が大きい核種である。また、隕石研究が進展すれば太陽系形成時に存在していた98Tcの量を評価できることが示された。その量を知ることができれば超新星爆発における原始中性子星から放出された反電子ニュートリノの平均エネルギーを決めることが可能である。

原始中性子星から放出された6種類のニュートリノがどのようなエネルギーを有するかは、原始中性子星の形成や超新星爆発のメカニズムなど宇宙物理の進展に重要である。また、素粒子物理学におけるニュートリノ振動の解明にも重要である。ニュートリノ集団運動の解明には、6種類全ての超新星爆発のニュートリノのエネルギーを知ることが必要不可欠である。

スーパーカミオンデや計画中のハイパーカミオカンデで、将来、超新星爆発からの反電子ニュートリノがより精密に計測されると期待される。そのエネルギーから、ニュートリノ元素合成の研究から推定されたニュートリノの平均エネルギーの検証が可能である。

用語説明

[用語1] 超新星爆発 : 一時的に非常に強い光を発生する天体現象。重力崩壊型超新星爆発では、太陽より質量が8倍以上の恒星が寿命の最期に、重力崩壊した後に爆発する。

[用語2] ニュートリノ : ニュートリノは弱い相互作用をする素粒子。ニュートリノには電子型、タウ型、ミュー型の3種類および、それぞれの反粒子の合計6種類が存在する。

[用語3] 原始中性子星 : 太陽より質量が8倍以上の恒星の寿命の最期に、中心部が重力崩壊して生成される高密度の天体。超新星爆発によって外層が吹き飛ばされる前の状態のものを原始中性子星と呼ぶ。

[用語4] ニュートリノ原子核反応 : ニュートリノが原子核に吸収され後に、ニュートリノや中性子などが放出されて、異なる原子核に変換される反応。

[用語5] 宇宙核時計 : 宇宙においてある原子核が生成された年代を評価するための手法。数十万年から数千万年の半減期を有する放射性同位体の崩壊を用いる。

論文情報

掲載誌 :
Physical Review Letters
論文タイトル :
Short-Lived Radioisotope 98Tc Synthesized by the Supernova Neutrino Process
著者 :
Takehito Hayakawa*, Heamin Ko, Myung-Ki Cheoun, Motohiko Kusakabe, Toshitaka Kajino, Mark D. Usang, Satoshi Chiba, Ko Nakamura, Alexey Tolstov, Ken’ichi Nomoto, Masa-aki Hashimoto, Masaomi Ono, Toshihiko Kawano and Grant J. Mathews
DOI :

お問い合わせ先

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
高崎量子応用研究所東海量子ビーム応用研究センター 上席研究員

早川岳人

Tel : 070-3943-3386

取材申し込み先

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
経営企画部 広報課長

鈴木國弘

Tel : 043-206-3062 / Fax : 043-206-4062

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

現物資産活用基金の創設

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東京工業大学は、株式や土地などの現物資産寄附を受け入れ、当該資産を有効に活用するため、東京工業大学基金の中に「現物資産活用基金」を創設しました。同基金は、2018年度の税制改正(※)に対応した文部科学大臣の証明を受けた特別な基金です。

2018年度の税制改正により、株式や土地などの現物資産寄附の、みなし譲渡所得税の非課税要件が緩和されました。具体的には、寄附された現物資産を文部科学大臣の証明を受けた基金で管理する場合、所轄の税務署への申請により非課税措置を受けることができる制度の創設です。また、当該基金内であれば他種資産に買換えも可能です。

東京工業大学基金は、主に現金による寄附により運営していますが、それに加え、このたびの株式等の有価証券、土地等の不動産などの現物による寄附を有効に活用することで、教育研究環境の一層の充実を図っていきます。

世界トップ10に入るリサーチユニバーシティの実現に向けて、現金によるご支援はもとより、株式や土地等の現物資産によるご支援、ご協力を賜りますようお願いいたします。

詳細は現物によるご寄附(株式、土地等)のページをご覧ください。

東工大基金

この事業は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

東京工業大学基金室

E-mail : bokin@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2415

留学生向けイベント「マジック」「ジャグリング」「七夕」開催報告

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東京工業大学 学生支援センター国際交流支援部門では、学生の国際交流支援の一環として、留学生を対象としたイベントを毎月開催しています。

2018年度前期は、4月の新入留学生歓迎イベント「ウェルカム コーヒー アワーズ」に続き、5月に「マジック」、6月に「ジャグリング」、7月に「七夕」を開催しました。6月の「ジャグリング」は晴天にも恵まれ大岡山キャンパス 西1号館前で実施し、そのほかのイベントは西1号館留学生ラウンジで実施しました。

「ウェルカムコーヒーアワーズ」は昨年度後期に続き2度目の試みでしたが、前回に続き多くの新入留学生が参加しました。新入生同士だけでなく先輩学生やリベラルアーツ研究教育院日本語教育セクション教職員と交流する場として好評を得ており、今後も入学時期に合わせ開催する予定です。

ウェルカムコーヒーアワーズ

ウェルカムコーヒーアワーズ

「マジック」や「ジャグリング」では、それぞれの東工大サークル部員の協力により、パフォーマンス鑑賞と体験、交流を楽しみました。「七夕」では、留学生、日本人学生、日本語セクション教職員が集い、短冊や折り紙で笹を飾りました。短冊には、「卒業できますように」「研究がうまくいきますように」「国に戻って大学の先生になれますように」「家族がずっと健康でありますように」など一人一人の願い事が綴られ、自分の気持ちを日本語で発信する機会にもなりました。

マジック鑑賞
マジック鑑賞

ジャグてっく部員との交流
ジャグてっく部員との交流

折り紙で七夕飾り作り
折り紙で七夕飾り作り

願い事を書いた短冊を飾り付け
願い事を書いた短冊を飾り付け

みんなの願い事が叶いますように

みんなの願い事が叶いますように

一連のイベントは、本学同窓生である滝久雄氏からの寄付を原資とする「滝久雄留学生日本語支援プロジェクト」の後援を受けて実施しています。イベント参加者からは、「楽しかった」「一か月に一、二回のイベントを続けてほしい」という声が寄せられています。今年度後期も、留学生と日本人学生、教職員との交流が深まるイベントを継続して開催していきます。

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お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流支援部門

E-mail : ryu.kor@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7645

将棋部の大野弘喜さんが関東オール学生最強者戦で3位入賞

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東工大将棋部の大野弘喜さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年)が、関東大学将棋連盟主催 平成30年度関東オール学生最強者戦において3位に入賞しました。

賞状を手にする大野さん
賞状を手にする大野さん

本大会は関東大学将棋連盟が主催し、幼稚園生から大学院生までの学生が参加資格を持つ大会です。今回は8月17日、18日の2日間にわたって東京都内の会場にて開催され、1日目には小学生以上の88名が参加し、2勝通過2敗失格の予選ののちトーナメント方式でベスト16までが決定されました。2日目には、1日目を勝ち上がった大野さんを含む16名がトーナメント方式で駒を進めました。大野さんは準々決勝で高校名人の川島滉生さんに勝利するも、準決勝で早稲田大学の銭本裕生さんに敗退しましたが、3位決定戦で高崎経済大学の渡辺優作さんに勝利し、3位に入賞しました。

大野さんのコメント

3位という結果を出せて嬉しい反面、去年の同じ大会では準優勝だったため悔しさも残る結果ではあります。来年は優勝するべく精進していきたいと思います。学業の方では、私は生命理工学系所属で、前期は週2日の実験に加え熱力学、有機化学、分子生物学など幅広く学びました。系での勉強は興味深いものが多く時間の管理が大変ですが、学業と将棋を頑張って両立していきたいです。また私が部長を務める東工大将棋部全体としては、春と秋に行われる大学対抗の団体戦で結果をだすべく力をいれています。関東では上位2校に入ると全国大会に行けるのですが春は4位でした。秋こそは全国大会に出場するべく部員一丸となって頑張っていきたいです。

東工大将棋部とは

毎年春から秋にかけて行われる個人戦や団体戦などの対局に出場します。初心者から全国制覇経験者まで、学士課程~博士後期課程の学生約40名が所属し、週2回部室に集まって部員同士で対局しています。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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Tel : 03-5734-2975

ものつくりサークル「ロボット技術研究会」がマイコン体験会を開催

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ものつくりサークル「東京工業大学ロボット技術研究会」は、STマイクロエレクトロニクス社(スイス、以下、ST社)と学術国際情報センター(以下、GSIC)の協力のもと、 4月25日と5月2日に大岡山南4号館のGSIC第2演習室でマイコン体験会を開催しました。両日合わせて32名の学生が参加し、5月2日にはST社の方も加わりました。

マイコン体験会の風景

マイコン体験会の風景

マイコンに電子回路を接続して実験
マイコンに電子回路を接続して実験

組み込みシステムやIoT(もののインターネット)の基礎であるマイコン技術に興味を持つ学士課程新入生を対象とし、基礎的な回路とプログラムを学びながら自ら手を動かしてLEDを点滅させることなどを体験する講習を実施しました。

マイコンは小規模・省電力な小型のコンピュータで、プログラムを書き込むことによってセンサーを利用したりLEDやモーターを制御できる部品です。今回はST社のユニバーシティ・プログラムの最初の事例としてマイコン(STM32 F446RE)を50台、無償で提供していただきました。このマイコンは、スマートフォンで幅広く普及しているCPUであるARM※1と同種で、小規模・超低消費電力の製品です。プログラム作成環境は、ウェブベースで提供されており、今回のような講習会も簡単に実施することができます。

終了後に実施したアンケートでは8割以上の参加者に「参加して楽しかった」「講師やTA(ティーチングアシスタント※2)の説明は分かりやすかった」という回答をいただきました。

※1
ARMは、米国およびその他の国におけるARM Ltd.の登録商標で、組み込み機器や低電力アプリケーション向けに広く用いられている、プロセッサコアのアーキテクチャです。
※2
TA(ティーチングアシスタント)とは教育や授業の補助準備など、教育に関わる業務補助を行う学生のことです。

マ体験会参加者に説明するサークルメンバー
体験会参加者に説明するサークルメンバー

体験会参加者の相談にのるサークルメンバー
体験会参加者の相談にのるサークルメンバー

参加者の全体写真

参加者の全体写真

ロボット技術研究会(ロ技研)とは

日本がその最前線を担うロボット技術(ロボティクス)を中心に、回路技術、ソフトウェア技術などについての研究開発を行う、東工大生184名が所属する公認サークルです。

小さいながらも学内に部室を持ち、フライス盤、旋盤、ボール盤などの工作機械と、オシロスコープやパソコンなどの電子回路・ソフトウェア開発のサポート機材を揃えています。また、ロボットづくりという枠組みにとらわれず、「何をやってもいい」というのがこのサークルの特徴です。

知識がなくても、ゼロから設計に必要な数学的観点と、回路・工作の実学的観点を学べる環境があります。ロボット技術研究会には、研究室と呼ばれるグループがあり、それぞれのテーマを設けるなどして、様々なことを研究しています。

東工大代表団がASPIREフォーラム 2018 に出席

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本学が加盟しているASPIREリーグ※1が主催する「ASPIRE フォーラム」が7月9日から13日に南洋理工大学(NTU、シンガポール)で開催されました。本学からは、水本哲弥理事・副学長(教育担当)を団長に、学生5名を含む教職員14名(加盟大学からは総勢60名)が参加しました。

フォーラムに参加した東工大教職員と学生

フォーラムに参加した東工大教職員と学生

フォーラムは、開催テーマについて理解を深め、議論する「学生ワークショップ」、各大学研究者が関連する研究成果について講演を行う「シンポジウム」、加盟大学の副学長及びシニアスタッフがリーグ活動報告や今後のリーグ活動について意見交換を行う「副学長会議」で構成されています。今年のテーマである「Smart Cities ― 先端技術を活用して、継続的な経済発展を目指す住みよい都市づくり」を通して、参加者による様々な交流が行われました。

学生ワークショップ

7月9日から13日まで開催された学生ワークショップは、テーマに関連した講義、研究施設訪問、グループワークの3つの要素で構成されています。本学からは以下の5名の学生が参加しました。

  • ダン・ジンシャンさん(工学院 機械系 修士課程1年)
  • ジ・ユシンさん(環境・社会理工学院 建築学系 修士課程1年)
  • 山田優志さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 修士課程2年)
  • 大野馨子さん(環境・社会理工学院 建築学系 修士課程 2年)
  • ムハマッド・アル・アティキさん(情報理工学院 情報工学系 修士課程2年)

本学学生5名に加えて、ASPIREリーグ加盟大学、およびIDEAリーグ※2加盟大学から修士、博士課程の学生23名が参加し、初日に、学生の専門研究分野をもとに大学混成の5グループが編成されました。

各グループは、「Mobility:可動性」、「Clean Energy:クリーン・エネルギー」、「Home and Environment:住まいと環境」、「Workplace Productivity:職場における生産性」、「Health and Enabled Aging:健康と高齢社会対策」、「Public Sectors:公共サービス」の6つのトピックスから1つのトピックスを選び、選択したトピックスをテーマとした最終日に行われる発表に向けて、参加者、講師、および研究者と活発に議論を交わし、準備を進めました。

講義は、「Smart Nation(スマート国家)」を目指すシンガポール政府の政策やスマートシティの実現を可能にするIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、AIの先端、応用技術について、NTUの研究者やシンガポール政府関係者によって行われました。また、NTUのロボット研究所や自律走行車のテストコース、シンガポール・チャンギ国際空港の研究施設見学等も行われました。

講義、施設見学、グループワーク、最終日の発表の様子

講義、施設見学、グループワーク、最終日の発表の様子

学生たちは、ワークショップの講義や施設見学等で得た知見や自身の専門知識をもとに、選択したトピックスの効率化を図るために、どのような技術や政策を活用すべきか、グループディスカッションを重ねました。最終日には、そのグループワークの成果をリーグ加盟大学の副学長、シニアスタッフの前で発表しました。

優秀グループ発表賞受賞チーム(右から3番目が山田さん)
優秀グループ発表賞受賞チーム(右から3番目が山田さん)

優秀発表者賞を受賞したジさん
優秀発表者賞を受賞したジさん

優れた発表を行ったグループに贈られる「優秀グループ発表賞(Best Group Presentation)」は、本学の山田さんが参加したチームが受賞しました。同グループは、「Public Sectors」をトピックスとして、深刻な水事情を抱えるシンガポールの家庭、コミュニティ、町単位での水の消費を効率化するために、IoTを活用したモニタリング・管理システムを提案しました。

ワークショップを振り返って、山田さんは、「人口増加が顕著な現代において、ビッグデータを用いていかに効率的に物事を進めていくことが重要であるかを学びました。水道のプロフェッショナルになりたいと考えているので、将来的には、いかに効率よく配水できるか、ビッグデータやAIを用いて挑戦したいと思います。」と話しました。

個人に贈られる「優秀発表者賞(Best Presenter)」は、本学のジさんが受賞しました。ジさんは、「この5日間で私たちは友情を育み、お互いから多くのことを学びました。優秀発表者賞の受賞は、グループワークの成果です。」と、約1週間を共に過ごした仲間への感謝の言葉を述べていました。

シンポジウム

7月12日午前に開催されたシンポジウムでは、加盟大学の研究者が「Smart Cities」に関連した技術や研究成果に関する講演を行いました。同シンポジウムには、リーグ加盟校の副学長、シニアスタッフ、学生ワークショップに参加していた学生も出席しました。

本学からは、情報理工学院 情報工学系の下坂正倫准教授が、「Human Mobility Sensing Towards Urban Computing(都市情報学に向けた人間移動情報センシング)」というテーマで講演を行いました。携帯電話のGPS機能などをセンサーとして活用し、収集した群衆の活動データを基に、東京マラソンなどの都市部での大規模なイベント開催やゲリラ豪雨や地震といった予測不可能な自然現象発生時の「異常な混雑(人の流れ)」を「予知」するシステムについて紹介しました。

また、東工大が創設した研究グラント(助成金)をもとに2017年から、リーグ加盟大学の研究者と「タンパク質ケージによる持続可能なバイオ材料開発へ向けた精密機能設計」の共同研究を行っている、生命理工学院 生命理工学系の上野隆史教授は、今までの研究交流の実績と研究成果について報告を行いました。

講演を行う下坂准教授(左)と上野教授(右)

講演を行う下坂准教授(左)と上野教授(右)

講演を行う下坂准教授(左)と上野教授(右)

副学長会議

本学でのASPIREリーグの活動について報告をする水本理事・副学長
本学でのASPIREリーグの活動について報告をする水本理事・副学長

7月12日午後に行われた、各大学の副学長およびシニアスタッフが出席する「副学長会議」には、本学からは、水本理事・副学長、関口秀俊副学長(国際連携担当)、ASPIREリーグ事務局の三原久和教授(生命理工学院 生命理工学系)、ASPIREリーグ運営チームの西條美紀教授(環境・社会理工学院 融合理工学系)が出席しました。

2019年、2020年のASPIREリーグの議長校を東工大が務めることが同会議で承認され、水本理事・副学長は、「リーグ設立10周年の節目の年となる2019年と東京でオリンピックが開催される2020年に、ASPIREフォーラムを本学で開催できることは大変光栄なことです」と話しました。

(左から)水本理事・副学長、ナンシー・イップ副学長(香港科技大学)、アラン・チャン副学長(NTU)、ジェイヒョン・リー副学長(KAIST)、ジェン・リー副学長(清華大学)

(左から)水本理事・副学長、ナンシー・イップ副学長(香港科技大学)、アラン・チャン副学長(NTU)、
ジェイヒョン・リー副学長(KAIST)、ジェン・リー副学長(清華大学)

※1 ASPIREリーグ

本学が発案し、2009年に設立された科学技術の発展と人材の開発を通してアジアにおけるイノベーションのハブを形成することを目的とした、アジア地域における理工系トップ大学のコンソーシアムです。加盟大学は、清華大学(中国)、香港科技大学(中国)、NTU(シンガポール)、KAIST(韓国)と東京工業大学の5大学。東工大は、設立当初より事務局を務めています。

※2 IDEAリーグ

デルフト工科大学(オランダ)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、アーヘン工科大学(ドイツ)、シャルマーズ工科大学(スウェーデン)、ミラノ工科大学(イタリア)のヨーロッパ理工系大学5大学で構成されたコンソーシアム。両リーグでは、2011年より各サマープログラムに学生の相互派遣を行っています。

平成30年度「東工大挑戦的研究賞」授賞式を実施-独創性豊かな若手研究者に-

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平成30年度「東工大挑戦的研究賞」授賞式が9月12日に行われました。

受賞者との記念撮影

受賞者との記念撮影

授賞式の様子
授賞式の様子

金澤輝代士助教によるプレゼンテーション
金澤輝代士助教によるプレゼンテーション

石﨑孝幸助教によるプレゼンテーション
石﨑孝幸助教によるプレゼンテーション

門之園哲哉助教によるプレゼンテーション
門之園哲哉助教によるプレゼンテーション

授賞式では、益学長から受賞者に賞状の授与、および今後さらなる活躍を期待する旨の激励の言葉があり、次いで受賞者代表3名から、採択された研究課題についてのプレゼンテーションが行われました。

この賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開または解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するもので、第17回目となる今回は11名が選考されました。なお、受賞者には支援研究費が贈呈されます。

平成30年度「東工大挑戦的研究賞」受賞者一覧

受賞者
所属
主担当系または担当研究所
職名
研究課題名( * は学長特別賞)
特任助教
同位体分子測定による天然ガス生成モデル
助教
* 次世代スマートグリッド開発に向けたシステム・オブ・システムズ最適設計理論構築
工学院
電気電子系別窓
助教
超スマート社会に適応する革新的高効率ベアリングレスモータの研究
物質理工学院
応用化学系別窓
助教
繊維状ウイルスの階層的な集合化を利用した熱伝導性材料の創製
物質理工学院
応用化学系別窓
助教
薄膜界面制御された水素化物薄膜電池を用いた常圧高温超伝導体の創製
情報理工学院
情報工学系別窓
助教
細胞内PPI阻害を可能にするin silico中分子設計技術の開発
生命理工学院
生命理工学系別窓
助教
* 二重特異性小型標的結合タンパク質の創製とがん治療への応用
助教
鉄系最高温超伝導を実現する協奏的スピン揺らぎモデルの検証
助教
* 実データ解析・理論解析に基づく外国為替市場のミクロ動力学の解明
准教授
構造・非構造部材の地震時損傷状況に基づく継続使用可否の判断方法
助教
薬物抗体複合体の生産技術を指向した電気化学的抗体修飾法の確立

(敬称略)

お問い合わせ先

研究企画課 研究企画第1グループ

E-mail : kenkik.kik1@jim.titech.ac.jp


2019年度以降入学者(学士課程・大学院課程)の授業料を改定

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東京工業大学は、2019年4月以降の学士課程入学者、および2019年9月以降の大学院課程(修士課程・専門職学位課程・博士後期課程)入学者の授業料について、学士課程、大学院課程とも、現行の授業料 535,800円(年額)を、635,400円(年額)に改定することといたしました

授業料改定に伴い、本学では、国際化の推進、教育環境等の整備、学生の国際交流活動の充実といった教育内容・環境の向上を図ると同時に、自主財源を増強する努力を続け、志のある学生が経済的状況により本学で学ぶ機会を逸することがないよう、新たな給付型奨学金を創設するなど学生の経済的支援の充実に努めてまいりますので、ご理解を賜りますようお願いいたします。

2018年度以前に入学した学士課程学生、2019年4月までに入学した大学院課程学生については、当該課程に在籍している間は、2019年度以降も現行の授業料535,800円(年額)のままです。
ただし、現在在籍している課程を卒業又は修了等し、新たに課程に入学又は進学した場合には、入学・進学時の授業料年額が適用されます。

学長メッセージ

2019年度以降に入学を希望される皆様及び保護者の皆様

(授業料改定及び学生支援・教育環境の充実に関するご理解のお願い)

東京工業大学は、創立150周年を迎える2030年に、世界トップ10のリサーチユニバーシティとなることを目指し、教育改革、研究改革を推進しています。

本学の高度な研究水準と卒業生の卓越した素養はこれまでも高く評価されてきましたが、それをさらに高めるため、本学は2016年度から教育体系を抜本的に改編いたしました。この教育改革においては、学生の高い志を育み、日本と世界を牽引する真のリーダーとなる修了生を輩出することを目指しています。最先端の研究を通した高度な専門的知識・能力の養成に加えて、常に学び続ける姿勢の涵養に努めます。また、一人ひとりの潜在的な可能性を掘り起こし、自らを活かし他者を活かすことのできる卓越した人材を育成することを目指します。このため、学士課程から博士後期課程までのカリキュラムを一新し、極めて先進的な教育の場を実現させました。

2016年度以降の新しいカリキュラムでは、学士課程卒業者の90%以上が大学院へ進学する本学の特色に合わせて、日本で初めて学部と大学院を統一した6つの学院が、それぞれの専門分野について、継ぎ目のない教育を推進しています。その一方で、新入生のための統一授業「科学・技術の最前線」では、一年目の学生全員が専門の枠を超え、国内外から招聘された一流の研究者・技術者のレクチャーを受けることで、自然科学の多様多彩な分野への知識と関心を広げ、社会における科学の位置付けや自分の専門との関わりについて考えを深める機会を提供します。

それらに加えて、学士課程から大学院課程にいたるまで全学の教養教育を担当する組織として「リベラルアーツ研究教育院」を新設しました。社会で活躍し、未来を創造していくためには、専門性を高めるだけではなく、幅広い視野、柔軟な発想や自身で課題を見つけ考え抜く力が必要であるという信念から、本学は伝統的に教養教育を重視してきました。その伝統を踏まえ、今回の教育改革では、著名な人文社会系学者や文化人を含む教員たちが各自の専門を教えることに加え、総力で全学のアクティブラーニング教育を推進しています。学士課程から博士後期課程まで、学生同士が活発に意見を交換し、ワクワクする環境の中で「志」を掘り起こす斬新な新時代型教養教育は、東工大生の積極性と発信力を飛躍的に高め、既に内外から大きな注目を集めるものとなっています。

このほか、グローバル化した社会での活躍を目指し、講義の英語化の推進等、外国語による教育の充実を図るため、外国人教員・研究者の拡充にも努めています。また、学生が入学の早い段階から研究の楽しさ、奥深さに目覚めることを目的に学士から博士まで一貫した東工大独自の教育を推進します。こうした教育体系は、大学における工学系教育のあり方のひとつのひな形として注目されています。

このような改革の成果が評価され、2018年度に本学は、文部科学省から「世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人」である指定国立大学法人5大学の一つとして指定され、世界の大学と伍していく中核的教育研究拠点として大きな期待を集めています。

こうした社会の期待と注目を背景に、卒業生が世界の産業界・学術界等でより一層活躍できるよう、2019年度から教育の環境と内容をさらに充実させることにいたしました。具体的には、高度な研究を通した教育を実施するための最先端設備・施設の整備と、学生が何をどのように学び、将来のキャリアにどうつなげていくのかを考える能力を育む初年次教育とリベラルアーツ教育のさらなる充実、本学卒業生の寄附による学生交流施設の完成を機に学生間のアクティビティを促進する支援サービスの強化に加えて、

  • 早期に最先端の研究環境に触れ、研究のおもしろさを体得しながら社会をリードする能力を養う「早期研究志向学士・修士・博士一貫型教育」の提供
  • 社会にイノベーションをもたらす「気づき」やアイディアの創発を促すため、世界各界の第一人者を招聘して行う最先端科学技術・文化に関する講義の充実
  • グローバル化する社会をリードできる能力を涵養するため、本学の高い留学生比率を踏まえて推進する大学院講義の英語化をはじめとした教育の国際化

を進めて参ります。

このような他の国立大学と一線を画した「東工大モデル」の教育を着実に実現するため、本学では授業料の改定をお願いすることといたしました。2019年4月以降に本学の学士課程に入学される方、2019年9月以降に修士課程並びに博士後期課程に入学される方から、現行の年額535,800円の授業料を年額635,400円に改定させて頂きます。

これと同時に、志のある学生が経済的状況により本学で学ぶ機会を逸することがないよう、産学連携等による資金獲得や本学の有する資産の活用などにより自主財源を増強する努力を続けて、学生への経済的支援の充実も図ります。具体的には、新たな給付型奨学金の創設等により、本学への進学機会に対する経済格差の解消に努めます。

本学の教育効果は、現在の教育環境・内容においても、就職に関する国際的な大学ランキング(Employability)で世界19位に評価されています。上記の教育環境と教育内容の充実により、本学卒業生が新たなステージに進まれる際に、本学での学びの成果が今回の改定に見合うもの以上であったと得心頂けるよう、さらには、その結果として本学の教育効果が世界トップ10に入る評価を得られるよう、教職員一丸となって不退転の決意で取り組んで参りますので、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

Times Higher Education Global University Employability Ranking 2017 による

国立大学法人 東京工業大学
学長 益 一哉

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

ものつくりを通じて学ぶ新しいオンライン講座(MOOC)公開のお知らせ

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本学ではインターネット上で誰でも受講可能なオンライン講座(MOOC)を2015年10月から提供しています。現在まで提供している6つのMOOCには190を超える国と地域から受講者が集まっています。

バナー

2018年7月には新しいMOOCとして「"Monotsukuri" Making Things in Japan: Mechanical Engineering」(モノツクリ メイキング シングス イン ジャパン:メカニカル エンジニアリング)を公開しました。このMOOCは、日本固有の言葉(大和言葉)と言われている「ものつくり」を題材にしています。ものつくりは、単に生産やその過程だけでなく、ものをつくり出すにあたっての精神をも含めた言葉でもあります。長い年月を経て、現在も生き続ける日本のものつくりについて学びます。

このMOOCの特徴は、映像による講義が中心となる従来の講座と異なり、ものつくりを通じて、機械工学の基礎を学ぶ内容となっていることです。ものつくりを通じた学習は本学教育の特徴でもあります。今回は、本学学士課程1年目の学生を対象に開講されている授業を基にMOOCを開発しました。受講者は工学院 機械系の田中博人准教授による映像授業を受講しながら、実際に手を動かしてポンポン蒸気船をつくります。

田中准教授による授業映像
田中准教授による授業映像

実際につくったポンポン蒸気船によるレース
実際につくったポンポン蒸気船によるレース

また、日本におけるロボットコンテストの草分け的存在である森政弘名誉教授による特別講義「ものつくりは人づくり」や、東京都大田区でプラモデルの金型づくりに40年以上携わってきた職人の方へのインタビュー、本学でものつくりに積極的に取り組んでいる学生サークル「Meister(マイスター)」と「ロボット技術研究会」の紹介など、ものつくりを多角的に学ぶことができるMOOCとなっています。

森名誉教授による特別講義
森名誉教授による特別講義

インタビュー「プラモデルの金型づくり職人」
インタビュー「プラモデルの金型づくり職人」

インタビュー「Meister(マイスター)」
インタビュー「Meister(マイスター)」

インタビュー「ロボット技術研究会」
インタビュー「ロボット技術研究会」

以下のページから、無料で受講することができます。この機会に是非、東工大のものつくりを学んでみてください。

"Monotsukuri" Making Things in Japan: Mechanical Engineeringouter

MOOC(マッシブ・オープン・オンライン・コース、大規模公開オンライン講座)

インターネット上で誰もが受講できる授業です。2012年に主要なMOOC配信プラットフォームが立ち上がって以降、急速に拡大を続けており、2017年には世界の800を超える大学等の高等教育機関から10,000のMOOCが提供されています。本学のMOOC開発は教育革新センター・オンライン教育開発室が担当しており、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が設立したMOOC配信プラットフォームedX(エディックス)にて「TokyoTechX」(トーキョー テック エックス)として世界に向けて配信しています。

オープンキャンパス2018 開催報告

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夏休み期間中の8月10日に、「高校生・受験生のための東京工業大学オープンキャンパス2018」が開催されました。当日は台風一過の暑い一日でしたが、約12,000名が来場しました。

東京工業大学オープンキャンパス2018

世界の最先端の研究を行っている「東工大」を存分に体感していただこうと、本学の教員や学生と直接話せるプログラムを数多く用意しました。普段は覗けない大学の研究室公開や特別講義など、本学の活気ある教育・研究環境をお伝えした特別な一日の概要をご紹介します。

全学入試説明会、各学院説明会

初めに、益一哉学長から東工大では教員と学生が世界レベルの研究に携わり、日々切磋琢磨していることが紹介されました。引き続き、2019年4月以降の学士課程入学者を対象として従来の類別入試に代わってスタートする、新しい学院入試についての説明がありました。学士課程入学後は、所属する各学院で1年間学んだ後、2年目になると系(従来の学科に相当)に所属することなど、特徴ある東工大の入試と各学院の魅力をお伝えしました。

益学長からのメッセージ
益学長からのメッセージ

満員となった学院説明会
満員となった学院説明会

入試・各学院個別相談会、キャンパスライフ相談会

入試・各学院個別相談会やキャンパスライフ相談会では、入試の方法や各学院で学べる内容、入学後の具体的なキャンパスライフについて、教員や学生が来場者からの相談にお答えしました。来場者からは、新しい入試の詳細や、どのようなことを学べるのか、理系の学生の生活はどういったものかといったさまざまな質問があり、教員や学生が丁寧に答える姿が多く見られました。

現役大学生による受験相談
現役大学生による受験相談

学院の教員による相談ブース
学院の教員による相談ブース

模擬講義

世界レベルの研究を高校生・受験生に知っていただこうと、バラエティに富んだ魅力的な講義を用意しました。高校での授業とは一味も二味も違う内容で、参加者からはいっそう興味をもつことができたと好評でした。

リベラルアーツ研究教育院の模擬講義
リベラルアーツ研究教育院の模擬講義

物質理工学院の模擬講義
物質理工学院の模擬講義

見学・体験企画、研究室公開

毎年大きな反響をいただいている体験型の企画や研究室公開は今回も大人気となり、多くの方の参加がありました。東工大ならではの最先端の研究内容や研究成果を盛り込んだプログラムはなんと100以上。実際に白衣を着ての実験や、教員や大学生との実演は、参加者にとって大きな刺激となったようです。

生命理工学院の見学・体験企画
生命理工学院の見学・体験企画

情報理工学院の研究室紹介
情報理工学院の研究室紹介

理学院の体験授業
理学院の体験授業

工学院の研究室紹介
工学院の研究室紹介

オープンキャンパス2018を終えて

今年も多くの方にご来場いただき、ありがとうございました。オープンキャンパスを通じて、東工大の最先端の研究・教育内容や、キャンパス・研究室の雰囲気をより深く、より身近に感じていただけるよう、来年度もさらに充実したオープンキャンパスを目指しますので、ご期待ください。

物質理工学院の展示
物質理工学院の展示

環境・社会理工学院の展示
環境・社会理工学院の展示

工学院の模擬講義
工学院の模擬講義

理学院の展示
理学院の展示

お問い合わせ先

アドミッション部門・学務部入試課

E-mail : opencampus@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3990

長沼大樹さんのチームがダイソンアワード2018で国内最優秀賞を受賞 スマートおしゃぶり「ユア パシファイファー」を開発

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一般財団法人ジェームスダイソン財団が主催する国際エンジニアリングアワードであるジェームス ダイソン アワード2018(以下、ダイソンアワード)において、情報理工学院 情報工学系の長沼大樹さん(修士2年)を含む6名によるチームRota++(ロタ プラス プラス)が開発した作品「your pacifier(ユア パシファイアー)」が国内最優秀賞に決定しました。

ユア パシファイアー

ユア パシファイアー

ユア パシファイアーとは

赤ちゃんが脱水状態のときに、赤ちゃんへの水分補給を促し、保護者の取るべき行動をサポートすることを目的としたスマートおしゃぶり「ユア パシファイアー」です。

メンバーの1人がアジア・太平洋諸島で公衆衛生調査をした際に、下痢により危険な脱水症状にさらされている子どもが多数入院していることに気付き、その解決策を考える中で生まれたデバイスです。

おしゃぶりに付いているセンサーによって赤ちゃんの脱水状態を判定し、危険な脱水症状だと判断した場合には、モバイルアプリを通じて赤ちゃんの体全体の水分量を保護者に通知します。その際アプリ上で保護者に対して簡単な質問が出され、その返答内容によって警告を出し、例えば「病院に連れて行く」などの保護者が行うべき行動を指示します。さらに、ユア パシファイアーはユーザーのデータを収集し、その地域の同様の症状の流行を検出することができるため、その情報を病院が共有することで感染状況の分析にも役立てられます。

このユア パシファイアーは2017年10月にアメリカのスタンフォード大学で開催された「Stanford's Health Hackathon Health++ 2017(スタンフォード ヘルスハッカソン ヘルス プラスプラス2017」でも、総合3位と、Persistent-Neodesign(パーシステント ネオデザイン)賞の2つの賞を受賞しています。前回受賞時以降の変更点としては、センサーの原理検証および、筐体のデザインの改善策をいくつか試したことです。また、これまでの検証等をまとめ9月に行われる国内のシンポジウムにおいて長沼さんを始めとするメンバーによる発表が予定されています。

ユア パシファイアー使用イメージ

ユア パシファイアー使用イメージ

ダイソンアワードについて

ダイソンアワードは、ジェームス ダイソン財団により、次世代のデザインエンジニアの支援・育成を目的として毎年開催されています。エンジニアリング(工学)、プロダクトデザイン、工業デザインを専攻する18歳以上の学生、卒業・修了して4年以内の方を対象として、今年は世界27の国・地域で開催され、1,300を超える作品が集まりました。

ユア パシフィアーを含む日本国内の上位3作品は、他国の作品とともに、ジェームス ダイソン アワードの国際ステージとなる第2次審査(9月下旬発表予定)に進み、そこでトップ20に入った作品がダイソン創業者であるジェームスダイソン氏による国際最終審査(11月中旬発表予定)へと進みます。

長沼さんのコメント

Hiroki Naganuma

今回のプロダクトは、関西関東を中心とした学生メンバーだけからなるチームで昨年開発が始まったものですが、現在は社会人として働くメンバーもいるため、一度チームを解体しチームの再構成を行っています。

今後、課題である赤ちゃんの命を本当に救うためには単なるキャンペーンではなく、持続的なビジネスとして、製品を世に出していく必要があると考えています。実際にデバイスを製造し研究開発を進めていくには人も資金も必要になります。チームとしてはこのジェームズ ダイソン アワード受賞をきっかけに、アイデアに共感していただける世界のパートナーを募り、課題の解決に向かって突き進みたいです。

現在私は、深層学習の理論的側面の研究をしています。その研究がこのプロダクトのセンサーの精度向上などに寄与できるといいなと考えています。

お問い合わせ先

Rota++

E-mail : rotaplusplus@gmail.com

2018年度講演会「科学・技術で進化する、スポーツの世界」

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科学・技術の進展は、スポーツの世界に何をもたらすのか。いま研究・開発・実践の最前線に立つ講師とともに未来を構想します。

第1回は、パラアイスホッケープレイヤー上原大祐と、VRなどを用いたスポーツエンターテインメントも手がける映像ディレクター引地耕太が、「IT × パラスポーツ が拓く未来」について対談します。

第2回は、AIを活用したディジタルカーリングについて伊藤毅志が語ります。

第3回は、本学未来型スポーツ・健康科学研究推進体の代表でもある林宣宏が、最先端プロテオミクス研究によるアスリートの先進コンディショニングから始まる未来の健康社会について語ります。

第4回は、陸上男子400メートルハードルの日本記録保持者(2018年7月現在)為末大とバイオロボティクスを専門とする本学の中島求が、スポーツ工学の観点から科学・技術の進化がスポーツをどう変えるのか、対談します。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。

概要

日時

第1回:2018年10月20日(土) 13:00 - 15:00
第2回:10月27日(土) 15:00 - 17:00
第3回:11月3日(土) 13:00 - 15:00
第4回:11月17日(土) 17:00 - 19:00

場所
大岡山キャンパス西9号館 ディジタル多目的ホール
(東急大井町線・目黒線「大岡山」駅より徒歩2分)
参加費
ページ下部のチラシ裏面、もしくは社会人アカデミーサイトの案内ページouterにてご確認ください。
※蔵前工業会会員・蔵前カード家族会員、本学学生(附属高校・学部・大学院生)、本学教職員、小学生は無料
お申し込み

社会人アカデミーサイトの案内ページouterよりお申し込みください。
※席数に限りあり、申込先着順

開催

主催:東京⼯業⼤学 社会⼈アカデミー
共催:蔵前⼯業会

2018年度講演会「科学・技術で進化する、スポーツの世界」 ポスター 表

2018年度講演会「科学・技術で進化する、スポーツの世界」 ポスター 裏

関連ページ

お問い合わせ先

東京工業大学 社会人アカデミー

TEL : 03-3454-8722

E-mail : jim@academy.titech.ac.jp

大佛俊泰教授 地域防災計画について語る ―BBC ニュース アラビックに登場

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環境・社会理工学院 建築学系の大佛俊泰教授が英国放送協会(BBC)ニュース アラビック(本部:英国)の世界のテクノロジーとイノベーションを紹介する「フォー テック(4Tech)」に出演しました。番組は、8月25日からBBC ニュース アラビックのウェブサイトで公開されています。

収録の様子
収録の様子

大岡山キャンパス近辺で防災対策について説明する大佛教授
大岡山キャンパス近辺で防災対策について説明する大佛教授

BBC ニュース アラビックはBBCが提供する国際サービスのひとつで、インターネット、ラジオ、テレビなどのメディアを通じて、アラビア語による世界各国の主要ニュースや情報を発信しています。4Techは、独占取材による世界各地の最先端テクノロジーとイノベーションを紹介する番組(ウェブニュース)です。

大佛教授は、都市空間の分析や人間行動科学に関する膨大な情報を収集、分析、共有し、地域防災計画に活用する研究を行っています。

東京に巨大地震が発生すると、おおよそ800件の火災が同時に発生すると想定されています(首都直下地震等による東京の被害想定―概要版―outer、2012)。台数に限りのある消防車と消防隊員を火災現場へすみやかに配置し、被害を最小限におさえるためには、リアルタイムの現場、及び周辺状況の把握に加え、潜在的な被害の拡大を考慮した戦略的な消火活動を行うことが重要です。

取材では、戦略的な消火活動を支援する災害情報共有システムについて語りました。消防車が火災現場に到着するのが、通常では2.1分かかる場合、巨大地震等の被害発生時には、建物の倒壊などによる道路閉塞に遭い迂回を繰り返すために、約4倍の8.6分かかると見込まれます。このシステムを活用すれば、通常時に限りなく近い、2.4分で到着できることをシミュレーションで示しました。また、災害時に、スマートフォンを通して提供される被害のライブデータをクラウドサーバに蓄積し、グーグルマップ上で情報共有するアプリケーションも備えています。これにより、災害によって交通機能が停止し帰宅困難となった人々が、帰宅経路上の建物、道路、橋等の倒壊状況を前もって把握することによって、安全な場所の確保や行動を判断することができます。

取材の最後に、東工大大岡山キャンパス近辺で、緊急車両が通行可能となるようにセットバック(新築建物の後退)が行われた街並みを紹介しました。

大佛教授のコメント

大佛俊泰教授

昨今、自然災害に関する報道が絶えません。人々を襲う自然災害の種類や規模は様々であり、また、複数の災害が同時に発生するマルチハザードの危険性もささやかれています。大地震の発生が切迫している日本においては、地震防災・減災対策に資する技術開発は喫緊の研究課題です。ここで試みている研究が、日本に留まらず、世界各地の災害対応能力の向上に貢献できれば幸いです。

番組情報

  • 番組名
    BBC ニュース アラビック
  • タイトル
    4Tech ―日本の技術で、火災現場への到着時間を削減(アラビア語)
  • 掲載日
    2018年8月25日(土)

用語説明

セットバック : 建築基準法により、幅員4m未満の道路に面する敷地では、道路の中心線から水平距離2 mの範囲に建物・門扉・塀などを建築することが許可されていません。新たに建築する際には、防災上有効な幅員を確保するために、実際の敷地境界からの後退(セットバック)が求められます。

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お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

高大連携サマーチャレンジ 2018 開催報告

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15年目の夏

高大連携サマーチャレンジ(以下、サマーチャレンジ)は、今夏で15回という節目を迎えました。2004年夏の初開催以来、東日本大震災の年も含めて1度も休まずに歴史を重ねてきたことになります。

サマーチャレンジは、大学レベルの学問や最先端の研究の授業を高校生に体験してもらい、出された課題にグループで、あるいは個人で立ち向かうことによって「未知の分野への挑戦から何かをつかみ、何かを生みだす」ユニークな夏の合宿です。基礎学力の上に培った発想力・独創性・グループワーク力こそが、未来の科学技術を担う人々に必須であると考え、高校生のときからそうした力を身につけてもらうことを意図したものです。

記録的な猛暑が続く中、8月1日~3日にかけて埼玉県の武蔵嵐山でサマーチャレンジが開催され、東京工業大学附属科学技術高等学校、お茶の水女子大学附属高等学校、東京学芸大学附属高等学校から生徒51名と引率教員9名、本学からは教員25名が参加しました

参加した生徒は、初対面の班メンバーとも最初のアイスブレイクで打ち解け合い、その後の4つの授業形式チャレンジと伝統の分解チャレンジに好奇心と探究心を全開にして取り組んでいました。本学教員やサポーター学生にとっても、暑さをものともしない高校生の集中力と着眼点の多様性に感心しつつ、知的探検が多くの出会いをもたらした楽しい3日間となりました。

佐藤勲理事・副学長(企画担当)と水本哲弥理事・副学長(教育担当)も2日間参加しました。両理事ともに第1回サマーチャレンジから参加し、委員長経験もあるため、書画カメラの調整や分解チャレンジの準備など、スタッフ顔負けの手さばきで高校生たちと発見の驚きを共有しました。

2018実施記録

2018実施記録
サマーチャレンジ2018 タイムテーブルPDF

日時: 2018年8月1日 - 3日

場所: 埼玉県比企郡嵐山町 国立女性教育会館

参加生徒: 51名(東京工業大学附属科学技術高等学校34名、お茶の水女子大学附属高等学校7名、東京学芸大学附属高等学校10名)

参加教員: 34名(東工大教員25名、引率高校教員3校9名)

事務職員: 6名(東工大)

合計: 91名

チャレンジ1 コラムランド

工学院 経営工学系 山室恭子教授

事前に各自が執筆してきた短い文章を、匿名の状態でディスカッションして評価しあう、東工大の名物授業をそのまま持ち込んで、初対面のメンバー同士のアイスブレイクとしました。

今年のお題は「水」。ストーリーと連動したヨコ読みを仕掛けたり、前からと後ろからと双方向の読みが可能な構造にしたり、技巧派の台頭が目立ちました。

そんな中、「水」から「人間」へ宛てた手紙が、ユーモラスなキャラクターで首位に輝きました。最後は、班のメンバーがお互いの作品を読み合うミニ自己紹介タイムです。

文は人なり。仲間の文章を批評しあうことで、メンバー同士の親しみも湧き、個性を認めあってのなごやかなテイク・オフをどの班も達成できたようです。

チャレンジ2 漸化式から力学系へ ―数列たちの棲む世界―

理学院 数学系 川平友規准教授

チャレンジ2
チャレンジ2

国語の次は数学の時間です。

線路のようにずっと続いていく数の連なり=数列が、どのような法則で並んでいるかを表す漸化式(ゼンカシキ)が登場しました。「そうそう、an+1をanの式で書けば連なりが表せるんだよね」と思い出したところで、教科書にもよくある漸化式の問題(右図)が出題され、お決まりの解法で解いたところに、川平准教授からの哲学的な問いが降ります。

「いつも最初に方程式x=2x+1を解くけど、その意味はなんだろう?」

“え?方程式の意味??”生徒たちはびっくりした様子です。求めたxを使うと、なぜか漸化式がきれいに式変形できることがうれしくて、今まで方程式をカリカリ解いてきましたが、その意味を考えたことはあまりないと思われる参加者たち。

「そこから出発して、数列を直線の上に棲まわせてみよう。ここでは神様が、数たちに『1秒後にはこんなふうに動けー』って命令するんだ。だから数列は、この世界(「力学系」)の運動法則に従っていると解釈できるよね。あの方程式は、この世界で唯一動かない、『世界の中心』を求めてるんだって思えるよね」と問いかけます。

“あ、ほんとだ。”数列を追いかけているうちに、いつしかその「意味」という深みに誘われるチャレンジでした。

チャレンジ3 & 4 ロードメジャーとエアポンプ ―身近なモノを分解して仕組みを解明してみよう―

物質理工学院 材料系 上田光敏准教授

サマーチャレンジ名物の分解チャレンジが今年は帰ってきました。しかも、分解チャレンジ史上、最大の大きさ、1メートルの身長を誇る「ロードメジャー」の参入です。陸上競技などで距離を測るのに用いるこの器具で、まずは、床にテープでつくられた「チャレンジロード」の長さを測ってみます。「カーブのところは、きちんと測定できているでしょうか」

何度も測って測定誤差を確認したら、次は分解です。細かな部品がたくさん出てきました。“測定値を表示する桁上がりの仕組みはこうなってて、なるほどリセットする時はこの部品がこう動くのか。”班ごとに分析が進みます。

もうひとつの分解対象は水槽にぶくぶくと空気を供給するエアポンプです。電池式の携帯型と、電源につなぐ据置型の2タイプが用意され、仕組みの解明だけでなく、性能の比較実験もできるようになっていました。

班内で分業して作業した翌日は、あみだくじで、どちらか一方の物品が発表対象となります。前日の情報をメンバー全員で共有したあと、5分間の発表へ向けてスライドづくり。団結力とタイムマネジメントが問われる長丁場のチャレンジでした。

チャレンジ3(写真上 ロードメジャー、写真下 エアポンプ2種類)
チャレンジ3(写真上 ロードメジャー、写真下 エアポンプ2種類)

チャレンジ3(分解チャレンジの様子)
チャレンジ3(分解チャレンジの様子)

チャレンジ5 高分子と医療 ―からだの中で活躍する材料たち―

物質理工学院 応用化学系 芹澤武教授

チャレンジ5
チャレンジ5

分解チャレンジでモノの性質をためつすがめつ吟味したあとは、「物質」のお話です。

成形しやすくて軽いという特徴をもつ高分子は、不具合を起こしてしまった人体を内側から支える頼もしい助っ人として大活躍しています。「では、人工股関節を例に、グループで議論してみてください。3大材料のうち、とにかく硬い金属、摩耗に強い無機材料、成形しやすい高分子のどれをどのパーツに用いたら最適な材料配置といえるでしょうか。さらに、この人工股関節の摩耗しやすい部分をどうにかしたいのですが、どう工夫したら良いでしょう。1日に何千回も動かす足です。あなたのアイデアでもっと良くしてみてください」

人の役に立つ目標設定なので、どの班も真剣です。あちこちの班から「ゲル」という言葉が聞こえました。大正解です。生体模倣という、実際の人体と同じように関節部分にゲルを用いる方法、つまり、水によく馴染む合成高分子でできたサブミクロン単位の短い「芝生」を共有結合で生やすことで摩擦を少なくするのです。

日々進化する医療技術の最先端を体感できたチャレンジでした。

チャレンジ6 音の性質 ― 音の物理と音の聞こえ方

科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 中村健太郎教授

「音は空気が押されて伝わっていきます。音の大小は音圧で表記しますが、人が聴ける一番小さな音は0.00002 Pa(パスカル)で、ジェットエンジンから50メートル離れたときの音は20 Pa、あまりに開きが大きいので対数表記にしてdB(デシベル)という単位を用いるんですよ。」

身近なのに、ちょっと不思議な音の入門編が始まりました。大小の次は音の高低のお話です。「音の高低は周波数Hz(ヘルツ)で表しますが、人が感知できる周波数はこれまた開きが大きくて低いほうは20 Hz、高いほうは20,000 Hz、低周波は小さく聞こえるなど、人の耳の感度は周波数で変わります。」

音の特性の基本を学んだあと、3択でグループ課題が出ましたが、ほとんどの班が「人の耳は左右にしか付いていないのに、どうやって音が前から来たのか後ろから来たのかを聞き分けているのか」という課題を選びました。チャレンジ5で人工臓器への関心が高まったあとだったからかもしれません。目をつぶってランダムに回りから音を出してもらったり、片耳をふさいで実験したり、みんなで「聞こえ方の不思議」を考えます。「実は、この問題はまだ十分には解明されていません。探究心が湧きますね。」

チャレンジ7 身の回りの空気を考える -室内空気質の観点から-

環境・社会理工学院 建築学系 鍵直樹准教授

チャレンジ7
チャレンジ7

最終チャレンジは、少し変わった建築のお話です。「建築というと、ついデザインや、地震で壊れない構造といった目に見える「カタチ」に関心が集中しますが、目に見えない「空気」も実は大切です。なぜなら、食べ物や飲み物よりもはるかに多い量の空気を自分の体に摂取しているからです。つまり、その空気がきれいか汚いかは健康に直結する大問題なのです。さらに、人間は1日のほぼ80%以上を建物の中で過ごしていることからも、建物内の空気は重要です。」

おおよその基礎知識を得たあと、実践編です。「実際に空気中の微小粒子(PM2.5)を測ってみましょう。」ハンディタイプのPM2.5測定器が各班に渡されます。室内のあちこち、建物の外、庭園の中と道路の近く、測定値はどう変化するでしょうか。トイレに潜入した班もあったようです。

一番空気がきれいだったのは会場の空調吹き出し口で、空気清浄機の前よりも低い値です。建物の外に出たとたんに数値がぴんとはね上がるのを見て、参加者は驚いていました。さわやかな風が吹いて、屋外の自然の空気のほうが心地よく感じられるけれど、実は正反対。私たちは建物のおかげで、いろいろな汚染物質からしっかり守ってもらっていることを実感できました。

高校教員の眼

  • コラムランド

    「アイスブレイクとしては最適です。頭をやわらかくする効能があります。本校の生徒にとっては未知の学校の生徒を知るよいきっかけになります」

  • 漸化式から力学系へ

    「高校で『やり方だけ』習う内容を掘り下げてくださったのは(そして先端分野とのつながりを示してくださったのは)大変有益でした」

  • ロードメジャーとエアポンプ

    「実際にモノに触れたがる生徒とそうでない生徒に分かれていたのを見て、理系『大好き』と理系『興味ある』の違いを感じました。これは、分解チャレンジでないとなかなか気づかない点で、考えさせられました」

  • 高分子と医療

    「授業のいたるところに課題に対するヒントがあり、情報を的確に捉える力を問う非常に面白い授業でした。また、授業後に質問に行く生徒も多く、医療への関心の高さがうかがえました」

  • 音の物理

    「イメージしづらい波動をさまざまな映像等で講義していただき、生徒の理解が深まったように感じました。また、課題に関しても特定の1つを正解として提示することがなく、研究の面白さが伝わる興味深い内容でした」

  • 身の回りの空気を考える

    「何より研修室を出た学びというのは、学びと実生活をつなげる意味で効果的だったと思います。全体のチャレンジ数を1つ減らしても、こうした形式のチャレンジには時間を割いてもよかったのではないかと思います」

お問い合わせ先

学務部入試課大学入試グループ

E-mail : nyu.gak@jim.titech.ac.jp


小山二三夫教授が第27回大川賞を受賞

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科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の小山二三夫教授が、第27回(2018年度)大川賞を受賞することが決定しました。

大川賞は情報・通信分野における研究、技術開発および事業において顕著な社会的貢献をした研究者の労に報い、その功績を表彰すると共に、情報・通信分野のさらなる発展と啓蒙に寄与することを目的とした国際賞です。日本における情報通信産業の草創期の立ち上げに貢献し、株式会社CSK(現SCSK株式会社の前身の一つ)を創業した故大川功氏が中心となって設立された公益財団法人 大川情報通信基金(略称:大川財団)が、原則として日本人の研究者1名、海外の研究者1名の計2名を毎年、表彰しています。

海外研究者からは、米国カリフォルニア大学バークレー校 工学部のコンスタンス・チャン-ハスナイン教授の受賞が決定しています。

今回の受賞は、小山教授の「光通信、光センシングの高度化に向けた超高速変調、ビーム偏向機能集積化による面発光レーザーフォトニクスへの顕著な貢献」に対して授与されるものです。

小山教授のコメント

小山二三夫教授
小山二三夫教授

私の研究対象である面発光レーザーは、本学の伊賀健一名誉教授・元学長が1977年に発明した半導体レーザーです。近年、インターネットや携帯端末の普及により、データセンター内の大規模光インターコネクト、高精細レーザープリンタ、携帯端末での3D光センサなど、その応用分野は多岐にわたり、IoTの進展により、さらに研究開発が加速しています。今回の受賞は、恩師の末松安晴先生と伊賀健一先生のご指導と、これまで一緒に研究を進めてきた同僚の研究者、大学院学生など、多くの方々のご努力と貢献によるもので、深く感謝したいと思います。永年にわたる友人でもある、カリフォルニア大学バークレー校のコンスタンス・チャン-ハスナイン教授と同時に受賞できることは、この上ない光栄と喜びです。これからも、この受賞を励みに、東工大の強みと伝統を活かして、今後も研究に邁進していきたいと思っています。

贈呈式は、2018年11月7日(水)に東京で行われる予定です。

なお、本学関係者としては、第11回に飯島泰藏名誉教授、第15回に末松安晴栄誉教授、第22回に古井貞熙栄誉教授が同賞を受賞しています。

お問い合わせ先

小山二三夫

Email : koyama@pi.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5068

有害元素フリーの高効率青色発光体を実現 LEDをマイルドな製造環境で作製可能に

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ポイント

  • 蛍光量子効率90%の青色蛍光体を開発
  • 有害元素を含まず室温で溶液から合成可能
  • 電子注入層、正孔注入層の組み合わせでLEDの作製可能

低消費電力で高輝度に光る発光ダイオード(LED)は、ディスプレイや照明などの光源として大きなニーズがあります。また、大面積で発光するデバイスとしては、発光層に有機分子を用い、適当な電子注入層と正孔注入層[用語1]で挟んで電圧を印可し電子と正孔を有機層で結合させる有機EL(OLED有機発光ダイオード)が知られており、近年では、大型テレビや高精細液晶ディスプレイに用いられています。しかしながら、有機発光層の寿命や化学的安定性などの問題を抱えていました。

東京工業大学 科学技術創成研究院の細野秀雄教授と元素戦略研究センターの金正煥助教ら研究グループは、ペロブスカイト[用語2]に類似した構造を持つ物質Cs3Cu2I5が青色発光し、その量子効率が90%以上あることを見出しました。この物質は、大気中でも安定で、溶液から容易に成膜することが可能です。ペロブスカイト型発光材料の研究は世界的に盛んに行われていますが、材料に鉛やカドミウムを含んだものが多く、このような有害成分を含まずに安定で高い発光効率を示す物質が求められていました。今回の発光物質はこのニーズに応えるものです。また、新たに見出した黄色発光物質を組み合わせることで、白色発光するLEDの作製にも成功しました。

本研究成果はドイツ科学誌「Advanced Materials」に速報としてオンライン版に2018年9月14日付で公開されました。

本成果は、以下の事業・研究課題によって得られました。

文部科学省 元素戦略プロジェクト<拠点形成型>

  • 研究課題名
    「東工大元素戦略拠点」
  • 代表研究者
    東京工業大学 元素戦略研究センター センター長 細野秀雄
  • PM
    元素戦略研究センター 雲見日出也 特任教授
  • 研究実施場所
    東京工業大学
  • 研究開発期間
    2013年7月~2022年3月

研究の背景と経緯

電子と正孔を電極から注入して発光層で再結合させて光らせるLEDは、照明だけでなくディスプレイ用途でも急速に実用化が始まっています。これらは発光層に有機分子を用いたものですが、その材料自体の寿命や、水や酸素との反応による発光特性の劣化が問題でした。この問題を解決するために、半導体量子ドットやペロブスカイト系の発光材料の研究が世界的に活性化しつつあります。しかしながら、発光効率の高い材料は有害なカドミニウムや鉛を含んでいることから、有毒元素フリーで発光効率が高くかつ安定な発光材料が求められていました。

研究の内容

今回、有害な元素あるいは化学的に弱い有機物を含まない高効率な無機発光物質としてCs3Cu2I5(以後CCI325)に注目しました。この物質は、CuI4の4面体が2つ連結したユニットがCsイオンで囲まれている構造をとっています(図1)。

(ア)Cs3Cu2I5の結晶構造(緑:セシウムCs、青:銅Cu、紫:ヨウ素I)、密度汎関数計算から得られた(イ)伝導帯下端および(ウ)価電子帯上端の電荷密度
図1.
(ア)Cs3Cu2I5の結晶構造(緑:セシウムCs、青:銅Cu、紫:ヨウ素I)、密度汎関数計算から得られた(イ)伝導帯下端および(ウ)価電子帯上端の電荷密度

このCuの2量体が発光中心のため、電子的には0次元と見做すことができます[用語3]。効率の高い発光には光で励起した際に生じる励起子が、室温でも十分に安定である必要があります。この物質中での励起子の結合エネルギーは、およそ500 meVもあり、室温の熱エネルギーの20倍に相当します。これまでの3次元的電子構造をもつ無機ペロブスカイト発光体よりも1桁大きな値になります。この強い結合エネルギーは、電子系が0次元のために励起子が強く閉じ込められた結果と考えることができます。

Cs3Cu2I5単結晶の(ア)発光している試料の写真および(イ)高分解能電子顕微鏡による原子配列像(ウ)溶液法で作製された薄膜の発光(PL)および励起(PL)Eスペクトル
図2.
Cs3Cu2I5単結晶の(ア)発光している試料の写真および(イ)高分解能電子顕微鏡による原子配列像(ウ)溶液法で作製された薄膜の発光(PL)および励起(PL)Eスペクトル

この物質は単結晶だけでなく、薄膜も溶液から合成することができます。発光のピーク波長は430 nm付近に存在し、強い青色発光を示します(図2)。そして、発光の量子効率は単結晶で90%以上、溶液からスピンコート[用語4]で作製した薄膜でも60%以上で、これまで報告された無機ぺロブスカイト発光体の中では最も高効率です(表1)。

表1. 従来のハライド系青色発光体との量子効率の比較

 
電子構造の次元
State
発光中心(nm)
量子効率(%)
CH3NH3PbBr3
3D
QD in solution
432
> 40
CsPbCl1.5Br1.5
3D
QD in solution
455
37
Cs3Sb2Br9
2D
QD in solution
410
46
C4N2H14PbBr4
1D
Single crystal
475
20
Cs3Bi2Cl9
0D
QD in solution
~400
0.09
MA3Bi2Br9
0D
QD in solution
430
12
Cs3Cu2I5
0D
Thin film (Spin coating)
~445
62.1
Single crystal
91.2

作製した薄膜を大気中に2ヵ月間放置しても発光効率は低下しませんでした。さらに、新たに開発した黄色発光体と組み合わせると白色発光します。またLEDを試作し、動作できることも確認しました。

今後、電子注入層と正孔注入層を最適化することで高い電流効率が得られると考えられます。

(ア)青色発光のCs3Cu2I5と新規黄色発光体の粉末を混合し、白色フィルムを作製(イ)混合比に伴う色度の変化(ウ)白色フィルムのPLスペクトル(エ)Cs3Cu2I5を発光層に用いた青色発光ダイオード
図3.
(ア)青色発光のCs3Cu2I5と新規黄色発光体の粉末を混合し、白色フィルムを作製(イ)混合比に伴う色度の変化(ウ)白色フィルムのPLスペクトル(エ)Cs3Cu2I5を発光層に用いた青色発光ダイオード

今後の展開

今回、有害元素を含まず、高い効率で青色に発光する安定な発光体の開発に成功することができました。また、大気中でスピンコートするだけで形成できる実用的なLEDを製造できる可能性が高まりました。製造にあたり日本はヨウ素の埋蔵量が世界2位のため、元素戦略的にも課題は少ないと考えられます。注入する電子と正孔の濃度を同程度になるように電子注入層と正孔注入層を最適化することで、どこまで高効率化が図れるかが今後の課題となります。

用語説明

[用語1] 電子注入層と正孔注入層 : LEDでは両側の電極から電子と正孔を注入し、発光層でそれらを再結合させ発光させる。一般は電極と発光層の間にはかなりのエネルギー障壁が存在するが、そこにその障壁を低減させるために挟む半導体層。

[用語2] ペロブスカイト : 組成式RMO3(R、Mは金属カチオン)をもつ結晶で、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として、酸素Oは立方晶の各面心に配置している。極めて多くの金属イオンの組み合わせが、この構造をとることが知られている。

[用語3] 0次元の量子閉じ込め : 電子の存在する場所が原子の大きさと同じくらい狭い領域になっており、「点」と見做すことができる。

[用語4] スピンコート : 基板に塗布したい物質を含む溶液を滴下して、そのあと回転させることにより膜を形成する方法。

論文情報

掲載誌 :
ADVANCED MATERIALS
論文タイトル :
Lead‐Free Highly Efficient Blue‐Emitting Cs3Cu2I5 with 0D Electronic Structure
著者 :
Taehwan Jun, Kihyung Sim, Soshi Iimura, Masato Sasase, Hayato Kamioka, Junghwan Kim, Hideo Hosono(上岡隼人氏の所属は日本大学文理学部、他は東京工業大学)
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 教授
/元素戦略研究センター長
細野秀雄

E-mail : hosono@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5009 / Fax : 045-924-5009

東京工業大学 元素戦略研究センター 助教

金正煥

E-mail : JH.KIM@mces.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5196 / Fax : 045-924-5196

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

TBSテレビ「未来の起源」に科学技術創成研究院の吉田啓亮助教が出演

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科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の吉田啓亮助教が、TBS「未来の起源」に出演します。

植物が夜に光合成をオフにするメカニズムの研究について紹介されます。

吉田助教のコメント

吉田啓亮助教

植物が生きていくためには太陽の光エネルギーを使って光合成を行うことが必要です。ところが、地球では毎日昼と夜のサイクルが繰り返されるように、植物に届く光は常に変化しています。このような変動する光環境で、植物はどのように光合成の機能を調節しているのかを明らかにしようとしています。今回は、最近発見した「光合成を夜にオフにするためのメカニズム」について取材を受けました。番組を通して、植物基礎研究の面白さや重要性が伝えられれば幸いです。

番組情報

  • 番組名
    TBS「未来の起源」
  • 放送予定日
    2018年9月23日(日)22:54 - 23:00(放送地域:関東、愛知、岐阜、三重)
  • (再放送)
    BS-TBS 2018年9月30日(日)20:54 - 21:00

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

原子の対称性を超えるナノ物質を発見 次世代電子材料・磁性材料を生み出す新たな指針

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要点

  • 球対称の原子より高い対称性[用語1]を持つナノ物質の存在を理論的に証明
  • 既存物質ではありえないほど、多くのエネルギー状態が重なる
  • 多く重なったエネルギー状態を利用した次世代の電子・磁性材料の開発に期待

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院の春田直毅特任助教、塚本孝政特任助教、山元公寿教授、葛目陽義特任准教授、神戸徹也助教らの研究グループは、コンピューターシミュレーションを用いた理論化学的手法[用語2]により、特定の金属元素からなる微小な四面体型クラスター[用語3]は、既存物質ではありえないほど、多くのエネルギー状態[用語4]が重なることを明らかにした。

これらのクラスターは、最も高い対称性を持ち、最もエネルギー状態が重なるとされてきた原子でも実現できないほどの重なりを示す。この成果は、球対称の原子よりも高い対称性のナノ物質が存在しうることを世界で初めて理論的に証明したものである。こうした重なりを利用すると特異な電気伝導性や磁気特性を引き出すことが可能であり、これまでにない電子材料や磁性材料の開発につながることが期待される。

この研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「山元アトムハイブリッドプロジェクト(山元公寿 研究総括)」で実施された。研究成果は、2018年9月14日10時(英国時間)に英科学雑誌Nature Publishing Groupの「Nature Communications」オンライン版に掲載される。

研究成果

東工大の春田特任助教、塚本特任助教、山元教授らは、コンピューターシミュレーションにより、マグネシウム、亜鉛、カドミウムなどからなる微小な四面体型クラスターは、既存物質ではありえないほど、多くのエネルギー状態が重なることを明らかにした(図1)。縮退[用語5]と呼ばれるこうした重なりは、対称性の高い形をした物質ほど起こりやすいとされるが、実現できる縮退度には限界があった(原子より大きな物質では最大でも5重縮退まで)。

今回発見されたクラスターは、そうした幾何学的対称性だけでなく、力学的対称性[用語6]と呼ばれる特殊な対称性により、6重縮退や10重縮退といった超縮退を実現することが分かった。これらの物質は、球対称以上の力学的対称性によって縮退を起こす世界初のナノ物質である。また、本研究では、超縮退を起こすための条件がテオドロスのらせん[用語7]に由来する美しい数学的法則で表されることも同時に解明した(図2)。

球対称の原子は最も高い幾何学的対称性を持ち、同じエネルギーを持つ状態が最も重なって現れることが知られている。通常、クラスターの対称性は原子の対称性より低いため、原子ほどはエネルギーが重ならない。今回発見された四面体型クラスターは、特異的な対称性を持つことにより、球対称以上の重なりを示すことが明らかとなった。
図1.
球対称の原子は最も高い幾何学的対称性を持ち、同じエネルギーを持つ状態が最も重なって現れることが知られている。通常、クラスターの対称性は原子の対称性より低いため、原子ほどはエネルギーが重ならない。今回発見された四面体型クラスターは、特異的な対称性を持つことにより、球対称以上の重なりを示すことが明らかとなった。
四面体型クラスターにおいて、各原子間の結合の強さ(トランスファー積分)が、図に示した比になるとき、多くのエネルギー状態が重なることが分かった。ここで現れる平方根の数列 √1,√2,√3,√4,… は、古代ギリシアのテオドロスによって発見されたものである。
図2.
四面体型クラスターにおいて、各原子間の結合の強さ(トランスファー積分)が、図に示した比になるとき、多くのエネルギー状態が重なることが分かった。ここで現れる平方根の数列 √1,√2,√3,√4,… は、古代ギリシアのテオドロスによって発見されたものである。

背景と経緯

原子は原子核を1個しか持たないため、世界で最も幾何学的対称性の高い球対称の物質と見なされている。そしてその高い対称性により、原子のエネルギー状態は多く重なることが知られている。化学的に安定な希ガス、高い電気伝導性を持つ金属元素、磁石にくっつく磁性元素などの背景には、こうしたエネルギー状態の重なりがある。

原子のように、あるいは原子以上にエネルギー状態が重なるナノ物質があれば、従来にない次世代材料の候補となるが、そういった物質は今まで知られてこなかった。ナノ物質は複数の原子核を持つため、幾何学的対称性が必ず低くなるからである。今回、コンピューターシミュレーションを利用することで、常識に反し、幾何学的対称性とは異なる対称性に基づいてエネルギー状態が重なる超縮退物質を見つけることに成功した。

今後の展開

超縮退物質の発見はこれまでにない電子材料や磁性材料の開発につながると期待される(図3)。多く重なったエネルギー状態に少しだけキャリア[用語8]が混ざれば、高い電気伝導性が引き起こされる。また、多く重なったエネルギー状態に電子が1個ずつ並べば、スピン[用語9]が整列し、高い磁性が生み出される。こういったキャリア注入やスピン整列は、四面体型クラスターの構成元素を変えたり、合金化したりすることで実現できる。今後は、こうしたシミュレーション上のナノ物質の実現に向けたクラスター合成に挑むことになる。

多く重なったエネルギー状態にキャリア注入すると電気伝導体になり、スピン整列させると磁性体になる。
図3.
多く重なったエネルギー状態にキャリア注入すると電気伝導体になり、スピン整列させると磁性体になる。

用語説明

[用語1] 対称性 : 物質が持つ形の対称性は、左右対称といった幾何学的な美しさで測られることから、幾何学的対称性と呼ばれる。例えば正多面体は、立体の中でも高い幾何学的対称性を持つ。3次元の世界で、最も高い幾何学的対称性は球の持つ球対称である。

[用語2] 理論化学的手法 : 数学や物理学、コンピューターシミュレーションなどを駆使することで、実験室で実験を行うことなく、物質の性質を明らかにする方法論のこと。実験で得られるデータを精緻に解釈したり、新たな化学現象を予測したりするのに用いられる。

[用語3] 四面体型クラスター : 数個から数十個の原子が集まってできた極小粒子をクラスターと呼ぶ。さまざまな形のものが知られており、四面体型クラスターは4つの三角形の面で囲まれた立体の形をしている。

[用語4] エネルギー状態 : 原子やクラスターは、正電荷を持つ原子核と負電荷を持つ電子の集まりで構成される。各電子は、原子核のまわりに広がる軌道に収まる。軌道にはさまざまな形があり、それぞれが異なるエネルギーを持つ。このように軌道は、電子がとりうる各エネルギー状態という意味を持つ。2個の電子までが同じ軌道に入ることができる。

[用語5] 縮退 : 原子核が対称に配置されていると、複数の軌道が同じエネルギーを持つことがある。このエネルギー状態の重なりを縮退と呼ぶ。例えば、正二十面体型クラスターでは、5重に縮退した軌道が現れる。通常、クラスターの対称性は原子の球対称より低いため、原子ほどは縮退しない。

[用語6] 力学的対称性 : 一般にクラスターの幾何学的対称性は、軌道の形や縮退度に影響を与える。一方で、力学的対称性と呼ばれる非幾何学的対称性も存在する。力学的対称性は、ハミルトニアンと呼ばれる数式を調べることで特定される。今まで原子より大きな物質での例はなかったが、力学的対称性は異常な縮退を引き起こす原因となることが知られている。

[用語7] テオドロスのらせん : ある一定の規則のもと、大きさの異なる直角三角形をらせん状につなぐと、各三角形の辺の長さとして、平方根の数列 √1,√2,√3,√4,… が現れる。古代ギリシアの発見者にちなみ、これをテオドロスのらせん(図4)と呼ぶ。超縮退を起こすための条件を書き下すと、この平方根の数列が登場する。

テオドロスのらせん。二辺の長さを1とする直角二等辺三角形の斜辺に、それを底辺とする高さ1の直角三角形をくっつける。さらにその直角三角形の斜辺に、それを底辺とする高さ1の直角三角形をくっつける。これを繰り返すと、大きさの異なる直角三角形がらせん状につながり、各三角形の底辺の長さとして、平方根の数列 √1,√2,√3,√4,… が現れる。
図4.
テオドロスのらせん。二辺の長さを1とする直角二等辺三角形の斜辺に、それを底辺とする高さ1の直角三角形をくっつける。さらにその直角三角形の斜辺に、それを底辺とする高さ1の直角三角形をくっつける。これを繰り返すと、大きさの異なる直角三角形がらせん状につながり、各三角形の底辺の長さとして、平方根の数列 √1,√2,√3,√4,… が現れる。

[用語8] キャリア : 縮退軌道に電子が少しだけ存在すると、近くにあるクラスターの縮退軌道へと電子が移動して電気が流れる。逆に、縮退軌道はほぼ埋まっているが、電子が少し欠けていると、電子の抜け穴(正孔)が動いて電気が流れる。このように電流の担い手となる電子や正孔のことをキャリアと呼ぶ。

[用語9] スピン : 電子には、スピンと呼ばれる微小な磁石としての性質がある。縮退軌道に電子がちょうど1個ずつ入ると、スピンの向きがそろい、磁性を発現することが知られている。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)
論文タイトル :
Nanomaterials design for super-degenerate electronic state beyond the limit of geometrical symmetry
(幾何学的対称性の限界を超えた超縮退電子状態を生み出すナノ材料設計)
著者 :
Naoki Haruta, Takamasa Tsukamoto, Akiyoshi Kuzume, Tetsuya Kambe, Kimihisa Yamamoto
DOI :

研究に関する問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 教授

山元公寿(やまもと きみひさ)

E-mail : yamamoto@res.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5260 / Fax : 045-924-5260

JST事業に関する問い合わせ先

科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部

古川雅士(ふるかわ まさし)

E-mail : eratowww@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3528 / Fax : 03-3222-2068

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

キチン加水分解酵素は熱ゆらぎを利用して一方向に動きながら結晶性バイオマスを分解する分子モノレールカーである

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発表者

  • 中村彰彦(自然科学研究機構分子科学研究所 助教)
  • 岡崎圭一(自然科学研究機構分子科学研究所 特任准教授)
  • 古田忠臣(東京工業大学 生命理工学院 助教)
  • 櫻井実(東京工業大学 バイオ研究基盤支援総合センター 教授)
  • 飯野亮太(自然科学研究機構分子科学研究所 教授)

要点

概要

バクテリアの一種であるセラチア菌が生産するSmChiAは、カニ、エビ、昆虫などの外骨格を形成する結晶性多糖であるキチンを水溶性のオリゴ糖に分解する酵素です。近年、SmChiAはキチン表面を一方向に運動しながら連続的に分解する分子モーターであることが発見されていましたが、その具体的な仕組みは明らかになっていませんでした。

分子科学研究所(分子研)および東京工業大学(東工大)の研究グループは、SmChiAを金ナノ粒子で標識し、全反射暗視野顕微鏡を用いて高い位置決定精度[用語7]と時間分解能で1分子観測することで、キチン分解反応に伴う1 nm間隔のステップ運動を直接可視化することに初めて成功しました。速度論的同位体効果[用語8]を利用してキチンの分解に対応する時定数を決定し、運動中の反応素過程としては速く、律速段階[用語9]ではないことを明らかにしました。また、X線結晶構造解析により運動中間体のキチン結合状態を明らかにし、さらに分子動力学シミュレーションを用いてSmChiAが直進運動する様子を解析した結果、キチンの脱結晶化が運動の律速段階であることを解明しました。さらに、前進・後退の1 nmステップの割合と、反応時定数から計算される分解が起こる確率が同じであることから、SmChiAはレールであるキチンを切断し後退ステップのエネルギー障壁を上げることでブラウン運動(熱ゆらぎ)を前進に偏らせると結論づけました。言い換えると、SmChiAはBurnt-bridge機構により一方向に運動するブラウニアンラチェットモーターであることを導き出しました。

研究の背景

カニやエビなどの甲殻類や昆虫の外骨格、および酵母などの細胞壁を構成するキチンは、N-アセチルグルコサミンが直鎖状につながった多糖類であり、植物が生産するセルロースに次いで地球上に大量に存在する生物由来資源です。キチンは分子鎖が束になり結晶構造を形成するため化学的に安定で、オリゴ糖に分解して資源として利用するには高温高圧での処理が必要となります。他方、バクテリアなどの微生物はキチン分解酵素を体外に分泌し、常温常圧の穏やかな条件下で結晶性キチンを分解して生育の栄養源としています。このため、キチンを資源として有効利用するためのツールとしてキチン分解酵素が注目され、基礎と応用の両面で研究が行われています。

バクテリアの一種であるSerratia marcescensが生産するキチン加水分解酵素SmChiAは、結晶性キチンの分解活性が高い酵素として古くから知られていました。SmChiAはまるでモノレールカーのような、キチン分子鎖を結合するための窪みを持っています(図1)。高速原子間力顕微鏡[用語10]を用いた観察でこれまでに、SmChiAがキチン結晶上を一方向に運動する様子が報告されていました。しかし、どのような仕組みで運動を行っているのかは明らかになっていませんでした。

SmChiAは、結晶表面からのキチン分子鎖の引き剥がし(脱結晶化)、キチンの分解、生成した二糖(キトビオース)の放出、前進運動のサイクルを繰り返していると予想されていました。SmChiAによるキチン分解と運動のメカニズムを解明するためには、これらの素過程を分離して1分子観測する必要がありました。しかし、生成物であるキトビオースのサイズが1 nmと小さいことから、SmChiAの運動素過程(ステップ)の大きさは1 nmと予想され、これまでの手法では解析が困難でした。

モノレールカーとキチナーゼ(キチナーゼは約10億倍拡大)

図1. モノレールカーとキチナーゼ(キチナーゼは約10億倍拡大)

研究の成果

分子研および東工大の研究グループは、独自に開発した全反射暗視野顕微鏡を用い、粒径40 nmの金ナノ粒子で可視化したSmChiAがキチン結晶上を運動する様子を、0.3 nmの位置決定精度と500マイクロ秒の時間分解能で1分子観測することに成功しました。高精度・高時間分解能での1分子観測を達成することで、SmChiAが1 nm間隔のステップと停止を繰り返しながら直進運動する様子を直接捉えることができました。SmChiAの運動を詳細に観測し、1 nmずつ連続的に前方へ進むステップだけでなく、後退するステップや後退した状態から復帰するステップも見いだしました(図2)。前進ステップの割合は84%であり、運動方向は前方に大きく偏っていることがわかりました。

また、ステップする前の停止時間の分布の解析および速度論的同位体効果の検証により、各反応素過程の時定数を求めました(図2)。前進ステップが起こる際は、キチンの分解(2.9ミリ秒)と後退ステップ(18ミリ秒)が競合し、前進ステップの割合は時定数の比からも86%と算出され、前述の運動方向の解析から得られた値と一致しました。他方、後退ステップと復帰ステップの前の停止の時定数がほぼ同じであることから、これらの状態(図2AおよびE)の自由エネルギーに差がないこと、および前進・後退のステップは熱ゆらぎで駆動されていることが明らかとなりました。これらの結果は、キチンの分解反応が後退ステップに比べて十分速く起こるために、熱ゆらぎによる方向性のないブラウン運動が一方向に偏ることを示しています。言い換えると、分解反応によってレールであるキチンが1キトビオース分短くなることでSmChiAは後退できなくなり、前に進まざるを得なくなると結論しました。この運動の仕組みは、「退路を絶って強制的に前に進ませる」という意味で、Burnt-bridge(橋を燃やす)ブラウニアンラチェットと呼ばれています。

SmChiAがBurnt-bridgeブラウニアンラチェットであることをさらに確認するため、様々な長さのキチンオリゴ糖との複合体のX線結晶構造解析を行い、運動中間状態でのSmChiAとキチン分子鎖の相互作用を調べました。キチンの結合位置が異なる様々な構造が得られましたが、SmChiAの構造はキチンが結合していない構造とほぼ同じでした。この結果は、SmChiAの構造変化(パワーストローク)により運動が駆動されるのではないことを支持します。また、中間状態のキチンオリゴ糖が結合したSmChiAを初期構造として分子動力学シミュレーションを行い、ブラウン運動でSmChiAが前進・後退運動する様子を再現できました。これらの結果から、SmChiAはタンパク質の構造変化で動くパワーストロークモーターではなく、熱ゆらぎで動くブラウニアンラチェットモーターであることが確認されました。ところで、図2の状態Aから状態Eへの変化は、エネルギーを要する脱結晶化を含んでいるにもかかわらず、何故これらの二状態には自由エネルギー差がなく、熱ゆらぎで移り変わることができるのでしょうか。その理由を理解するため、分子動力学シミュレーションで前進状態と後退状態での可溶性キチンオリゴ糖との結合自由エネルギー差を見積もったところ、前進状態の方がより安定であることが明らかとなりました。この結果から、前進状態で得られるキチン結合の自由エネルギーがキチンの脱結晶化に使われるため、熱ゆらぎで移り変われるのだと結論しました。

前進、後退、復帰ステップの例と反応時定数のまとめ

図2. 前進、後退、復帰ステップの例と反応時定数のまとめ

今後の展開

今回、SmChiAによるキチンの効率的な分解の仕組みを明らかにしたことで、結晶性多糖をより効率的に分解する非天然型キチン分解酵素や類縁のセルロース分解酵素を設計するヒントが得られました。将来は、キチンやセルロースといった生物由来資源の有効利用に貢献できると期待されます。また近年、化学合成された人工分子モーターも創り出されています。ナノメートルサイズの生体・人工分子モーターは慣性を利用できず、常に激しい熱ゆらぎにさらされています。分子モーターを主とする分子機械には、マクロなスケールの機械とは根本的に異なる設計原理が用いられています。今回明らかとなった、ブラウン運動を巧みに利用するSmChiAのメカニズムは、より効率的に働く分子機械の創出に繋がると期待されます。

用語説明

[用語1] 全反射暗視野顕微鏡 : 光をガラスと水の界面で全反射させることで発生するエバネッセント光を照明に利用し、観察試料からの散乱光を観察する顕微鏡。

[用語2] Burnt-bridge機構 : 後方のレールを取り除くことで後退運動を阻止して前方への運動を達成する仕組み。橋を燃やして退路を断つ、の意味。

[用語3] X線結晶構造解析 : タンパク質の3次元結晶を調製し、その結晶に対しX線を照射することで立体構造を決定する手法。

[用語4] 分子動力学シミュレーション : 原子間の相互作用を計算することで、分子の構造変化や振る舞いを、コンピュータを用いてシミュレーションする手法。

[用語5] ブラウニアンラチェット : 熱ゆらぎによるブラウン運動とその制御を組み合わせて一方向性の運動を達成する仕組み。

[用語6] 人工分子機械 : 化学的に合成されたナノサイズの機械。2016年ノーベル化学賞の対象となった。

[用語7] 位置決定精度 : 顕微鏡観察した像の中心位置をどの程度正確に決定できるかの指標。空間分解能(どれだけ近くにある2つの物体を区別できるか)とは異なる。

[用語8] 速度論的同位体効果 : 重原子同位体では結合の組み換え反応が遅くなる効果。

[用語9] 律速段階 : 一連の化学変化のうち最も遅い段階。この段階の速度で全体の化学変化の速度が決定される。また、他と比べて最も時間のかかる過程(ボトルネック)を表す。

[用語10] 高速原子間力顕微鏡 : 非常に微細な先端を持つ探針で試料表面を高速に走査し、高さの変化として個々のタンパク質の構造変化を実時間で観察する顕微鏡。

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Processive chitinase is Brownian monorail operated by fast catalysis after peeling rail from crystalline chitin
(キチナーゼは速い触媒反応による制御で結晶性キチンのレール上を動くブラウニアンモノレールである)
著者 :
Akihiko Nakamura*, Kei-ichi Okazaki, Tadaomi Furuta, Minoru Sakurai, Ryota Iino* (*責任著者)
掲載予定日 :
2018年9月19日18時(日本時間)
DOI :
研究グループ :
分子科学研究所と東京工業大学の共同研究
研究サポート :
新学術領域研究 発動分子科学 JP18H05424(飯野亮太)
科学研究費補助金JP15H04366, JP16H00789, JP16H00858, JP17K19213 (飯野亮太)
JP17K18429, JP17H05899(中村彰彦)
自然科学研究機構 融合発展促進研究プロジェクト J281002(岡崎圭一)
自然科学研究機構 分野間連携研究プロジェクト 01311805(中村彰彦)
新世代研究所 研究助成 RG2709(中村彰彦)

研究に関するお問い合わせ先

自然科学研究機構分子科学研究所

教授 飯野亮太(いいの りょうた)

E-mail : iino@ims.ac.jp
Tel : 0564-59-5232 / Fax : 0564-59-5231

取材申し込み先

自然科学研究機構 分子科学研究所 研究力強化戦略室 広報担当

E-mail : press@ims.ac.jp
Tel : 0564-55-7297 / Fax : 0564-55-7374

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

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