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デジタル創作同好会traPが中高生のためのプログラミング教室を開催(2018年 夏)

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8月25日、中高生のためのプログラミング教室を開催しました。

和やかな雰囲気で進められたプログラミング教室
和やかな雰囲気で進められたプログラミング教室

東工大のデジタル創作系サークルであるtraPが定期的に主催し、プログラミング未経験の中高生に対し、グループワーク形式でプログラミングを教える教室です。JavaScript(ジャバスクリプト)というプログラミング言語を用いて、参加者全員が簡単なインベーダーゲームを制作しました。今回は東工大大岡山キャンパス南4号館の講義室を借りて開催しました。また、株式会社サポーターズにもご協力いただきました。

当日は中学生、高校生合わせて50名弱の参加者を迎え、参加者4名と講師となる東工大生2名程度のグループ形式で教室が始まりました。アイスブレイクで緊張をほぐした後、開発環境を導入したところで、東工大生の説明を聞きながら実際にプログラミングをしていきます。どのグループも賑やかに、着実に進んでいました。

ゲームの基本的な形が出来たところは、参加者から「こんな風にしたい」「こういう機能を追加したい」などといった要望を聞き、それを実現するために講師と一緒にプログラムの書き方を考えるといった一幕もありました。東工大生のアドバイスのもと、いくつかの追加要素を実装出来たところもあり、教室は盛況のうちに幕を閉じました。

東工大生の説明を熱心に聞く参加者
東工大生の説明を熱心に聞く参加者

作成中のゲーム画面
作成中のゲーム画面

講師リーダーの加茂雄也さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程2年)のコメント

私はソフトウェア開発に興味があり、現在は情報工学系の授業などでプログラミングを勉強しています。

プログラミングには複雑な専門知識が必要なイメージがあるかもしれませんが、そういった知識がなくとも始めることが出来ます。

今回の教室で、参加者の皆さんに実際にゲームを作ってもらうことでプログラミングの難しいイメージを払拭し、身近に感じてもらえたら幸いです。

デジタル創作同好会traPとは

ゲーム制作を中心に、プログラミング、DTM(音楽制作)、2Dイラスト、3Dモデル、ドット絵、競技プログラミング、CTF(コンピュータセキュリティ技術を競う競技)など幅広く取り組んでいます。

デジタルコンテンツのチーム制作や技術共有を目的として、2015年4月に設立したサークルです。

また、ゲーム制作者交流イベントや中高生向けのプログラミング教室を主催するなど外部との交流も積極的に行っています。

教室終了後の記念撮影

教室終了後の記念撮影

お問い合わせ先

東京工業大学 デジタル創作同好会traP

E-mail : info@trap.jp


量子アニーリングマシンの技術開発を推進するNEDOプロジェクトに採択 Society 5.0の中核を担う次世代コンピューティング技術を目指して

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国立研究開発法人新エネルギー・産業開発総合開発機構(NEDO)の新規事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」に、東京工業大学が共同提案者として加わる研究開発プロジェクト2件が採択されました。科学技術創成研究院 量子コンピューティング研究ユニットの西森秀稔教授らのグループは、量子アニーリングマシン[用語1]をはじめとするイジングマシン[用語2]を汎用的に使用できる「共通ソフトウェア基盤の研究開発」、ならびに「超電導パラメトロン素子を用いた量子アニーリング技術の研究開発」のプロジェクトにそれぞれ参加します。

西森秀稔教授
西森秀稔教授

背景

今日の私たちが暮らす情報社会の次に訪れる未来社会として、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会「超スマート社会(Society 5.0)」が提唱されています。この社会の実現に向けて、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やAI技術などを基軸とした製品・サービスが社会実装されていくことが求められますが、それを実現するにあたり生じる「データ量の増大」「消費エネルギーの増大」が課題として挙げられています。

これらの課題を解決するために、既存技術の延長線上には無い、高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術が注目されます。本プロジェクトを通じ、ソフト・ハード双方の面から量子アニーリングマシンの技術開発を一層促進し、きたるSociety5.0を支える新技術としての確立を目指します。

イジングマシン共通ソフトウェア基盤の研究開発 (事業代表者:早稲田大学)

参加機関

早稲田大学、東京工業大学、情報・システム研究機構 国立情報学研究所、産業総合技術研究所、豊田通商株式会社、株式会社フィックスターズ、日本電気株式会社(以下、NEC。NECは早稲田大学の共同実施先)

研究開発概要

Society5.0実現のため、先進的なモビリティサービスやスマートファクトリ、金融、創薬など多様な産業分野におけるディジタライゼーションの進展と、これに伴う高性能コンピューティングに対する社会的要請が高まっています。「最適化問題」、特に「組合せ最適化問題[用語3]」は、Society5.0を実現する産業分野の至るところに内在し、難しいクラスの組合せ最適化問題であっても高速に最適解を求めることが、Society5.0の実現の成否を決めることになると言われています。

ここで組合せ最適化問題の高速解法のブレークスルーとして期待されているのが、量子アニーリングマシンをはじめとするイジングマシンです。いくつかのサンプルデータによれば、イジングマシンを活用することにより高速に組合せ最適化問題を解決できると言われています。しかも量子アニーリングマシンを支える基盤技術、例えば、超電導量子ビットや量子アニーリングによる組合せ最適化問題の高速解法はいずれも、90年代にわが国で提案され実証されたものです。

こうした背景のもと、現在、わが国でも量子アニーリングマシンや半導体によるイジングマシンをはじめ、活発にイジングマシンの研究開発が行われ、さまざまなイジングマシンハードウェアが提案・開発されています。ところが、現実課題とこれを解決するイジングハードウェアとの間に大きな乖離があり、いかにこの「乖離」を埋めるか、すなわち現実課題とイジングマシンとの中間層に、さまざまなイジングマシンアーキテクチャにとって共通的に動作する「ソフトウェア基盤」を構築するかが大きな問題となっています。

そこで本研究開発では、これらの問題を解決するため、現実課題とイジングマシンハードウェアの中間層として、ミドルウェア群および共通API[用語4]等から構成される共通ソフトウェア基盤を研究開発します。その結果、現在までに開発された国内外のイジングマシンだけでなく、将来開発されることが見込まれるさまざまなイジングマシンにとって、共通的なソフトウェア基盤を提供することを可能とし、現実課題とイジングマシンハードウェアとの乖離を解消し、多様なイジングマシン上で複雑かつ多様な現実課題の解決を可能とします。

研究開発の全体像

研究開発の全体像

研究内容と各機関の役割

1.
早稲田大学:イジングマシン共通ソフトウェア基盤のための基本アルゴリズムと要素技術開発
2.
東京工業大学:イジングマシン共通ソフトウェア基盤評価のための量子アニーリング基礎理論開発
3.
情報システム研究機構 国立情報学研究所:イジングマシン共通ソフトウェア基盤評価のための古典アルゴリズム開発
4.
産業総合技術研究所:セキュリティ・マテリアルデザインアプリケーションの開発
5.
豊田通商株式会社:イジングマシン共通ソフトウェア基盤評価のための問題抽出と定式化検討、次世代モビリティ・ロジスティックス・サプライチェーンアプリケーションの開発
6.
株式会社フィックスターズ:イジングマシン共通ソフトウェア基盤評価のためのライブラリ開発とAPI開発
7.
NEC:ソフトウェアと連携した量子アニーリングマシンハードウェアのアーキテクチャ最適設計

超電導パラメトロン素子を用いた量子アニーリング技術の研究開発(事業代表者:NEC)

参加機関

NEC、東京工業大学、早稲田大学、横浜国立大学、産業総合技術研究所(NECの共同実施先)、京都大学(NECの再委託先)

研究開発概要

現状の量子アニーリングマシンは完成形でなく、現在の超電導量子アニーリングデバイスが持つ課題、すなわち高速計算の源泉とされる量子コヒーレンス[用語5]と集積性を両立することが求められています。本プロジェクトではこの2つを両立し、国産の量子アニーリングマシンを実現するための要素技術開発を実施します。

参画機関合同で、超電導パラメトロン素子開発、3次元実装技術、信号読出・制御、およびそれらを支える理論検討・シミュレーションを通じて、量子アニーリングマシンの実現を目指すとともに、アプリケーション・ソフトウェアレイヤのソフトウェア基盤を開発する「イジングマシン共通ソフトウェア基盤の研究開発」と密接に連携して相互最適化を実現し、両者の強力な統合の実現を目指します。

Society5.0では、IoTによって、クラウドコンピューティングと有機的な結びつきを持った社会システムが成り立ちます。クラウドコンピューティングに全く新しい計算原理に基づくイジング計算が加えられることで、これまでは時間的制約で精度の低い近似解法に頼っていたような最適化問題に対し、短時間で精度の高い解を求めることができるようになります。このハードウェアの性能向上と共通ソフトウェア基盤開発の連携により、イジング計算を活用したアプリケーション開発が促進され、産業社会への波及効果を加速することができます。

研究内容と各機関の役割

1.
NEC、産業総合技術研究所:高コヒーレンス超電導パラメトロンアニーリング素子の研究開発、多ビット化を支える3次元実装技術の研究開発
2.
東京工業大学:多体相互作用の高効率な表現方法の研究開発、量子アニーリング機構の設計最適化技術に関する研究開発
3.
横浜国立大学:量子磁束回路を用いた量子ビット用制御・読出し回路の研究開発
4.
NEC、京都大学:量子ダイナミクスの高速並列シミュレーションによる量子アニーリングの性能評価の研究開発

研究開発概要

研究開発概要

用語説明

[用語1] 量子アニーリングマシン : 組合せ最適化問題を高速に解決すると期待されるマシン。量子効果により量子重ね合わせ状態を実現させ、それを初期状態として用意し、徐々に量子効果を弱める。同時に組合せ最適化問題を表現するイジングモデルの効果を強めることにより、イジングモデルの安定状態を実現させるという機構で動作する。

[用語2] イジングマシン : 組合せ最適化問題をイジングモデルで表現し、組合せ最適化問題を解決するマシンの総称。上記、量子アニーリングマシンはイジングマシンの一種である。

[用語3] 組合せ最適化問題 : 膨大な選択肢の中から、与えられた制約を満たしつつ、関数の最小値(または最大値)をとる選択肢を求める問題の総称。

[用語4] API : Application Program Interfaceの略で、ライブラリやミドルウェアなどソフトウェアを使うためのインタフェースの仕様。

[用語5] 量子コヒーレンス : 量子力学では、系の状態は波動関数で記述され、水面の波や弦の振動のように異なる状態を重畳した重ね合わせ状態を取ることが出来る。量子計算ではこの重ね合わせ状態を用いた計算の並列性を利用する。量子コヒーレンスとは、このような重ね合わせ状態を可能にする量子力学的な波の性質のことである。

お問い合わせ先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

西森秀稔教授 C&C賞の受賞決定

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科学技術創成研究院 量子コンピューティング研究ユニットの西森秀稔教授が、公益財団法人NEC C&C(エヌイーシー シー&シー)財団のC&C賞を受賞することが決定しました。

西森教授による「量子アニーリングの提唱と、同概念に基づく計算機創出の基礎となったランダムスピン系の研究に関する功績」に対して贈られます。

西森教授のコメント

西森秀稔教授
西森秀稔教授

このような大きな賞をいただけることになり身に余る光栄です。学生時代から40代前半にかけて、その面白さに我を忘れて基礎研究にのめりこんでいたころに作り上げた一連の理論が、20余年の時を経て社会に大きな影響を与えるような広がりを持つに至ったのはほとんど信じられない思いです。私一人で成し遂げた業績ではなく、多くの方々の力がなければここまで達することはとても出来ませんでした。皆様に心より感謝し、喜びを分かち合いたいと思います。

NEC C&C財団によると、C&C賞は1985年に創設され、情報処理技術、通信技術、電子デバイス技術、およびこれらの融合する技術分野の開拓または研究、あるいはこの分野の進歩がもたらす社会科学的研究活動について顕著な貢献があった研究者に対して授与される賞です。国内外から推薦された候補者の中から、原則として毎年2件以内(1件3名以内)に授与されています。2017年度までに67グループ、110名が受賞しました。その後、ノーベル賞や文化勲章を受章した研究者もいます。C&Cは「コミュニケーション技術とコンピュータ技術の融合(Computers and Communications)」という意味です。

表彰式典は2018年11月28日(水)にANAインターコンチネンタルホテル東京にて行われ、各受賞者には、賞状、賞牌、賞金(1件当たり1千万円)が贈呈されます。

本賞のこれまでの本学からの受賞者には、末松安晴栄誉教授、伊澤達夫博士、伊賀健一名誉教授、辻井重男名誉教授が名を連ねています。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

吉田尚弘教授が米国地球物理学連合フェローに選出

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物質理工学院 応用化学系の教授で地球生命研究所主任研究員の吉田尚弘博士が、米国地球物理学連合(American Geophysical Union 。以下、AGU)のフェローに選出されることが決定しました。

吉田尚弘教授

吉田尚弘教授

AGUは、米国の首都に本部を持つ地球・宇宙科学分野の国際的な組織で、世界の137の国と地域に約6万人の会員を有し、創立100年の歴史を有する世界最大の学術連合です。

AGUは1962年以来、全会員の中で0.1%以内の、地球・宇宙科学分野に偉大なる貢献をした会員を相互に選出し、AGUフェローとして顕彰しています。授賞式および招待講演は約3万人が参加する秋季大会(今年はワシントンDCで12月に開催)において行われます。吉田尚弘教授のこのたびの授賞は、同位体置換分子種の新たな計測法の開発とそ生物地球化学と大気化学研究への応用による貢献が評価されたものです。

吉田教授は今回の授賞により、現在の本学教員では地球生命研究所所長の広瀬敬教授に次ぐ2人目のAGUフェローとなります。

吉田尚弘教授のコメント

本授賞の対象となった研究は分子の基盤的解析法の開発とその地球宇宙科学への応用です。一つの分子種に「同位体置換分子種」が多数存在すると予想されていながら、計測困難であったものを計測可能にしてきました。分子種計測をいわば、白黒からカラーに、さらにその色彩解像度をあげてきたものと言えます。これにより分子の「色」を調べることで、その分子の起源やサイクルをより正確に解析できるようになります。

本研究のアイデアは本学学生当時から持ち続けたもので、恩師、研究室の皆さん、国内外の共同研究者、学生の皆さんと政府系研究支援機関に心よりお礼申し上げます。また、教員として戻り20年間、自由闊達に研究させていただいた本学の皆様に厚くお礼申し上げます。

上の写真は、1996年から科学技術振興機構(JST)/戦略的創造研究推進事業(CREST)研究代表者として提案した、高分解能同位体質量分析計の基本設計をもとに最近ドイツのメーカーが市販化した装置です。昨年採択の2回目となる日本学術振興会の科研費基盤研究Sにより、今春、地球生命研究所に導入し研究に供していますことも不思議な同期です。

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お問い合わせ先

物質理工学院 教授 吉田尚弘

E-mail : yoshida.n.aa@m.titech.ac.jp

東工大剣道部が全国国立工業大学柔剣道大会 剣道の部団体戦で優勝

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8月18日、第54回全国国立工業大学柔剣道大会(以下、六工大戦)が東京工業大学大岡山キャンパスにおいて開催され、東京工業大学剣道部が剣道の部 団体戦で全戦勝利し、優勝を果たしました。

また、剣道の部 個人戦男子において第2類の齋藤海晟さん(学士課程1年)が準優勝、同個人戦女子では工学部 機械科学科の北原麗さん(学士課程4年)が第3位を獲得しました。

六工大戦表彰後の集合写真(主将の伊藤さん(最前列の左から3番目)、個人戦男子準優勝の齋藤さん(同左端)、個人戦女子第3位の北原さん(同右端)

六工大戦表彰後の集合写真(主将の伊藤さん(最前列の左から3番目)、個人戦男子準優勝の齋藤さん(同左端)、個人戦女子第3位の北原さん(同右端)

六工大戦は、東工大、北見工業大学、室蘭工業大学、名古屋工業大学、京都工芸繊維大学、九州工業大学の柔道部および剣道部が一堂に会して行われる大会です。柔道・剣道それぞれにおいて団体戦と個人戦があり、団体戦は6大学でリーグ戦を、個人戦は各大学6名ずつ出場してトーナメント戦を行います。

コメント

主将 伊藤謙吾さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程3年)

今回、六工大戦の団体戦で4年ぶりに優勝することができ、大変嬉しく思っております。ご指導して下さった先生、先輩方をはじめ、部活動を支えて下さった全ての方々に感謝致します。

今大会では、1年前よりも個々の力をつけることができ、チームとして最後まで繋ぐ戦い方もできました。共に厳しい稽古を乗り越えたことで皆が成長し、一致団結できたことは、主将としてこの上なく誇らしいことです。

また、私個人としては、研究室所属が近付いています。ソフトウェア、脳情報科学、人工知能など、興味は多岐にわたりますが、自分に何が出来るのか、これから可能性を見極めていきたいと思っています。

代替わり後も、剣道部は引き続き団体連覇に向けて稽古に励んでいきます。

齋藤海晟さん

今回は東工大開催ということでなんとか個人戦においても優勝を掴みたかったのですが、準優勝と悔しい思いをしました。自分はまだ1年生なので来年、再来年も団体、個人共に優勝を果たしたいと思います。また学業においては、文系教養を含む様々な分野の講義を受けています。これらで学んだ幅広い知識を専門分野に進むうえで活かしていきたいと思います。

剣道部とは

全国国立工業大学柔剣道大会優勝と、関東学生剣道大会の全日本大会出場を二大目標に、部員一丸となって稽古に取り組んでいます。本学武道場にて、学士課程学生を中心に男子学生22名、女子学生2名の計24名が活動しています。

益一哉学長への優勝報告(剣道部長(剣道部顧問教員)の加藤明准教授、益学長、剣道部主将の伊藤さん)

益一哉学長への優勝報告(剣道部長(剣道部顧問教員)の加藤明准教授、益学長、剣道部主将の伊藤さん)

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E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

文部科学省 平成30年度卓越大学院プログラムに採択

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東工大から申請したプログラム「『物質×情報=複素人材』育成を通じた持続可能社会の創造」が10月3日、文部科学省の平成30年度卓越大学院プログラムに採択されました。

卓越大学院プログラムとは

博士課程を設置する日本の国公私立大学を対象として今年度から始まった新規事業です。

新たな知の創造と活用を主導し、次代をけん引する価値を創造するとともに、社会的課題の解決に挑戦して、社会にイノベーションをもたらすことができる博士人材(高度な「知のプロフェッショナル」)を育成することを目的とする事業です。

修士博士一貫のプログラムですが、採用された学生は、特別カリキュラムを履修できるだけでなく、経済的支援も受けられる予定です。

今年度は38大学54件の申請があり、うち13大学15件が採択され、本学からは申請した1件が採択されました。

プログラム概要

  • 名称

    「物質×情報=複素人材」育成を通じた持続可能社会の創造

  • プログラム責任者

    和田雄二教授(物質理工学院長)

  • プログラムコーディネーター

    山口猛央教授(科学技術創成研究院)

  • 内容

    本プログラムでは、情報科学を駆使して複眼的・俯瞰的視点から発想し新社会サービスを見据えて独創的な物質研究を進める、以下の能力を発揮する「複素人材」を育成します。

    1.
    物質と情報の両分野にまたがる複素的な新しい考え方を生み出す独創力
    2.
    大量の情報から正しく社会の課題を設定する俯瞰力
    3.
    原子・分子レベルから社会サービスまでスパイラル的に繋げ持続可能な社会に向けた課題を解決する実行力
    4.
    新サービスを世界に展開する国際リーダーシップ力

    複素人材に期待するのは、持続可能な社会を構築するための物質と情報をリンクさせた新産業の創出です。

    元素戦略センターやスーパーコンピュータ「TSUBAME」を始めとする、本学が持つ高い学術基盤を活かすとともに、全6学院と科学技術創成研究院、リベラルアーツ研究教育院の総合力と、企業、国立研究開発法人、海外トップ大学との連携を活かした教育を展開します。

    修士課程から博士後期課程までの5年間の教育プログラムとして、全学横断型の学位プログラムである「物質・情報教育課程」を新設予定です。

複素人材とは

複素人材とは

  • 連携先機関

    国立研究開発法人物質・材料研究機構、国立研究開発法人産業技術総合研究所、ライデン大学(オランダ王国)、マギル大学(カナダ)、マックスプランク研究所(ドイツ連邦共和国)、インペリアル カレッジ ロンドン(英国)、コーネル大学(アメリカ合衆国)、ソルボンヌ大学(フランス共和国)、清華大学(中華人民共和国)、トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、マツダ株式会社、株式会社ぐるなび、旭化成株式会社、富士フイルム株式会社、住友化学株式会社、三菱ケミカル株式会社、JX金属株式会社、東ソー株式会社、住友電気工業株式会社、三菱ガス化学株式会社、TDK株式会社、昭和電工株式会社、JFEスチール株式会社、株式会社東芝

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E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

クリスマスレクチャー日本公演2018開催報告「生き物のコミュニケーション」

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クリスマス・レクチャー日本公演2018を、9月15日、16日に大岡山キャンパス西5号館のレクチャーシアターで開催しました。午前と午後に1回ずつ計4回行われ、子どもや一般の参加者ら各回約200名、延べ約800名が出席しました。

レクチャー風景

レクチャー風景

「クリスマス・レクチャー」は、英国王立科学研究所(The Royal Institution of Great Britain。以下、RI)が青少年向けに開催するイベントで、190年以上続く人気の科学実験講座です。このクリスマス・レクチャーを日本で再現するイベントは1990年から始まり、東工大では2015年から毎年開かれ、今回は4回目です。英国側主催はRI、日本側主催は読売新聞社、共催東工大、後援駐日英国大使館・文部科学省で開催されました。

東工大は、2016年度からスタートした教育改革の取り組みの一つとして、新入生を対象とした「科学・技術の最前線」や「科学・技術の創造プロセス」などの実演・実験付き授業を開講しています。これらの授業はクリスマス・レクチャーを手本としており、レクチャーシアターを最大限活用した臨場感あふれる個性的な授業を展開しています。

益学長による挨拶
益学長による挨拶

講師を務めたロンドン大学ソフィー・スコット教授
講師を務めたロンドン大学ソフィー・スコット教授

司会を務めた斎藤准教授
司会を務めた斎藤准教授

今回のクリスマス・レクチャーは2017年にロンドンで開催されたレクチャーを日本向けにアレンジしたものです。講師は認知神経科学が専門のロンドン大学教授ソフィー・スコット博士で、本学工学院 機械系の齊藤卓志准教授が司会を務めました。「生き物のコミュニケーション(The Language of Life)」と題し、スコット博士が様々な生き物のコミュニケーションとその仕組みについて紹介しました。東工大からも工学院 システム制御系の倉林大輔教授がフェロモンの研究とそれを応用した探索ロボットについて講演し、約1時間半の充実したレクチャーとなりました。

大竹教授による挨拶
大竹教授による挨拶

9月12日にRIのスタッフ2名が来日して物品等を運び込み、公演に使われる機器の準備・調整が始まりました。東工大の学生スタッフ8名が素早く準備を整えました。

公演を翌日に控えた9月14日には講師のスコット博士を迎え、打ち合わせおよびリハーサルを行いました。午後の最終リハーサル終了後には、スコット博士、RIの職員、本学、読売新聞社、英国大使館等の関係者が出席した歓迎レセプションが開かれ、参加者全員で親交を深めながら、翌日からの公演に備えました。

公演1回目は、一般の参加者に加え、東工大関係者にも100席の優先席が設けられました。各回の公演開始前には、司会による注意事項やボランティア(講師の呼びかけによりステージで講師の実験に協力する参加者)への要望などがあり、軽妙な司会進行により、場が盛り上がりました。公演に先立ち、1回目は益一哉学長から、2回目は英国大使館から、そして3回目と4回目は科学技術創成研究院の大竹尚登教授からそれぞれ挨拶がありました。

大きな拍手で迎えられたスコット博士は笑顔と話術で観客を魅了し、「生物はどうやってコミュニケーションしているんだろう」と語りかけ、大人から子どもまで誰もが熱心に公演に見入っていました。本公演はすべて英語で行われましたが、一人ひとりに同時通訳の機械が配られ、英語が分からない人でも安心して楽しめるよう配慮がなされました。同時通訳の設備が整っていることはレクチャーシアターの特徴の一つです。また、登壇する子どもボランティアにはスコット博士がやさしく話しかけ、緊張気味の子どもたちを上手にリラックスさせていました。なかにはスコット先生に直接英語で受け答えをする子どももいました。

空気砲による匂いの実験

空気砲による匂いの実験

実験ボランティアに立候補する観客
実験ボランティアに立候補する観客

今回の公演では、最初にコオロギとマダスカルゴキブリが登場し、コミュニケーションの手段としての音がどのように伝わるか、その仕組みが紹介されました。中でも共鳴については、振り子の実験も行い、詳しいメカニズムにも触れました。次に、においがコミュニケーションの手段として紹介されました。空気砲を使って、ひどいにおいと、良いにおいの煙が発射され、観客の鼻孔までとどけられましたが、特にひどいにおいがもたらす顔の表情に、会場は笑いに包まれました。倉林教授からは、においの一つであるフェロモンを分泌する虫としてカイコガが紹介され、工学院 システム制御系 システム制御コースの足達哲也さん(修士課程2年)が実際にメスの出すフェロモンにオスが集まる様子を子供達と一緒に実験しました。倉林先生らがこのしくみをロボットに応用し、災害に役立てる研究をしていることが紹介されました。さらに光、身振り、顔の表情など種々のコミュニケーションの手段が紹介され、その実験には、多くの子どもたちが積極的にボランティアとして参加してくれました。

表情のみによるコミュニケーション実験
表情のみによるコミュニケーション実験

EEG(脳波計)によるゲーム対決
EEG(脳波計)によるゲーム対決

匂いの拡散を体験する実験
匂いの拡散を体験する実験

公演の終了後には、東工大学生スタッフらが全員登壇し、観客の大きな拍手に包まれました。最後にスコット先生から子どもたちへ、「夢をもって、あきらめずに自分の道を信じて研究に取り組む科学者になってほしい」という熱いメッセージが伝えられました。公演終了後もスコット博士は質問やサインの要望に喜んで応えてくれたので、子どもたちにとっては素晴らしい思い出となったのではないでしょうか。このレクチャーをきっかけに、子どもたちが将来科学者を目指し、東工大で学ぶことを祈ります。

スタッフ全員でスコット教授と記念撮影

スタッフ全員でスコット教授と記念撮影

お問い合わせ先

国際フロンティア理工学教育研究プログラム

E-mail : kokusais@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3190

ナノカプセルを貫く分子のひもを発見 混ぜるだけで組み上がる 新たな貫通型ナノ構造体

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要点

  • ひも状のオリゴマー分子が、水中でナノカプセルと強く結合
  • 短い分子は包み込み、長い分子は貫き通し構造を瞬時に形成
  • 2つの様式の構造形成の鍵は、カプセル内での多点相互作用

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の山科雅裕博士研究員、草葉竣介大学院生(修士課程2年)、吉沢道人准教授らは、ひも状分子のオリゴエチレンオキシドが、ナノカプセルに2つの様式で結合することを発見した。短いひも状分子はカプセル空間に内包されたが、長いひもはカプセル骨格を貫通した構造を形成した。分子カプセルとひも状分子を使った「貫通型ナノ構造体」の初の作製例であり、新たな分子機械や機能性ポリマー材料の開発が期待される。

酵素のタンパク質ポケット[用語1]や合成カプセルの空孔はサイズや形状に依存して基質分子を結合するが、空間サイズより大きな基質は立体的に結合できない。特に、両親媒性[用語2] ひも状分子のオリゴエチレンオキシドは幅広い分野で利用されているが、弱い相互作用のため、基質分子としての活用はほとんど未開拓だった。これまで非結合性と考えられていたこのオリゴマー分子[用語3]が水中・室温で、瞬時かつ定量的に、ナノカプセルと結合することを見出した。結合様式は基質の長さに依存し、約3 nmまでのひも状分子はカプセル内部に包み込まれ、それより長いひも状分子はカプセル骨格を貫いて結合した。詳細な熱量分析から、この前例のない貫通型ナノ構造体の形成は、カプセル内面とひも状分子の多点相互作用が駆動力と判明した。

研究成果は株式会社リガクとの共同研究によるもので、10月12日付(英国時間)でNature Communications誌オンライン版に掲載された。

研究の背景とねらい

酵素はタンパク質からなるナノメートルサイズのポケットを利用して、特定の基質分子を結合する。化学的に合成した分子カプセルでも、その内部空間で基質を結合することができる。例えば、米国スクリプス研究所のレベックらは、ひも状の飽和炭化水素が分子カプセル内に取り込まれ、ラセン型構造を形成することを報告している[文献1]。しかし、どちらの例も内部空間よりサイズ(体積)が大きな基質分子は、立体的な反発により結合できない。今回、この生物と化学の常識に反して、汎用的なひも状分子と合成カプセルを利用することで、カプセル空間より短いひも状分子は内包型で、長いひもは貫通型で結合されることを発見した(図1a)。熱量分析からこの前例のない貫通構造形成の駆動力は、カプセル内面とひも状分子の多点相互作用と判明した。

(a)ひも状分子とナノカプセルによる内包および貫通型ナノ構造体の形成(b)ナノカプセル1(R = -OCH2CH2OCH3)と(c)ひも状分子の構造
図1.
(a)ひも状分子とナノカプセルによる内包および貫通型ナノ構造体の形成(b)ナノカプセル1(R = -OCH2CH2OCH3)と(c)ひも状分子の構造

合成カプセルとして、吉沢准教授らのグループが独自に開発したナノカプセル1を活用した(図1b)。芳香環に囲まれた約1 nmの密閉空間を持つナノカプセルは、水中で疎水性の硫黄クラスターや親水性の二糖のスクロース(ショ糖)を包み込むことができる[文献2,3]。分子のひもには、親水と疎水の性質を合わせ持つオリゴエチレンオキシド(以下OEO; 図1c)に着目した[文献4]。OEOは単純な繰り返し構造からなり、低い生体毒性と化学反応性のため、医薬や材料の分野で幅広く利用されている。その一方で、分子や固体表面との相互作用が弱いため、OEOの基質分子としての活用はほとんど未開拓だった。

研究内容

短いひも状分子による内包型ナノ構造体の形成

水中で、ナノカプセル1のOEOに対する結合能を調査した。まず、約2 nm長のOEOの5量体5EOをナノカプセルの水溶液に室温で添加したところ、瞬時かつ定量的にナノカプセルに包み込まれた(図2a左)。その溶液の1H NMRスペクトルでは、ナノカプセルに由来するシグナルに加えて新たに、内包された1分子の5EOに由来するシグナルが、-0.2から0.3ppmの領域に観測された(図2b)。そのESI-TOF MSスペクトルから、内包体1・5EOの分子イオンピークが確認された。X線結晶構造解析より、カプセル空間の内径より長い5EOは丸まった構造で、完全に内包されることが判明した(図2d)。カプセル内面と5EOの間で、多点のCH-π相互作用[用語4] と水素結合の形成が示された。また同条件の実験で、最長3 nm程度の8量体8EOまで、ナノカプセルに1分子内包されることが明らかになった。

(a)水中でのナノカプセル1とひも状分子5EOおよび10EOの結合形成(b)内包体1・5EOと(c)貫通体1・10EOの1H NMRスペクトル(c)1・5EOのX線結晶構造および(d)1・10EOの最適化構造(外面親水基とカウンターアニオンは省略)
図2.
(a)水中でのナノカプセル1とひも状分子5EOおよび10EOの結合形成(b)内包体1・5EOと(c)貫通体1・10EO1H NMRスペクトル(c)1・5EOのX線結晶構造および(d)1・10EOの最適化構造(外面親水基とカウンターアニオンは省略)

長いひも状分子による貫通型ナノ構造体の形成

より長いOEOに対する結合実験を行った。OEOの10量体10EOは、約4 nmの長さで、ナノカプセル1の空間より1.1倍の体積を有するため、常識的にはこのカプセルに結合されない。ところが、10EOとナノカプセルを水中、室温で混合すると、1:1の比率の結合体1・10EOを形成することが質量分析で明らかになった。その1H NMRスペクトルでは、内包された5EOと異なり、10EOに由来するシグナルが-0.5から1.8ppmの領域に、顕著にブロード化して観測された(図2c)。また、ナノカプセルのNMRシグナルの複雑化と温度可変のNMR測定、分子モデルによる考察から、長いひも状分子の10EOは、カプセル骨格の芳香環パネルの間を貫き通していることが明らかとなった(図2a右, 2e)。このような複雑な貫通型ナノ構造体が、ナノカプセルとひも状分子を水中で混ぜ合わせるだけで、瞬時にかつ100%の収率で形成した。

構造形成のメカニズムを解明するため、等温熱滴定型熱量計(ITC)による熱量分析を行った。その結果、大きな負のエンタルピーとエントロピー[用語5]の変化値(ΔH = -60 kJ mol-1, TΔS = -25 kJ mol-1 at 25 ℃)が得られた。すなわち、結合の駆動力はエンタルピー支配であり、これはカプセル内面とひも状分子間の多点のCH-π相互作用と水素結合が効いていると判断した。また、ITCによる結合定数の算出から、貫通体1・10EOの高い構造安定性(Ka = 106 M-1)が示された。

さらに長いOEOとして、約9 nmの22EO(平均分子量1,000)を用いて、貫通型ナノ構造体の作製を行った。ナノカプセル1に対して小過剰の22EOを加えると、瞬時に10EOと同様のNMRスペクトルが得られた。滴定実験とITC測定から、1本の長いひも状分子が2つのカプセルを連続して貫いた構造体(1)222EOを形成していることが判明した(図3)。また、ナノカプセルと約18 nmの44EO(平均分子量2,000)の反応でも、選択的に2:1の比率のダブル貫通体(1)244EOが得られた。長いOEOと結合したカプセルは、ひもに沿ってシャトリング運動[用語6]していることが示唆された。

ナノカプセル1とひも状分子22EOによる貫通型ナノ構造体 (1)2・22EOの形成

図3. ナノカプセル1とひも状分子22EOによる貫通型ナノ構造体(1)222EOの形成

今後の研究展開

吉沢准教授らは汎用的なひも状分子のオリゴエチレンオキシドと分子カプセルを組み合わせることで、水中・室温で瞬時かつ定量的に、内包型および貫通型ナノ構造体を作製することに成功した。今後は、ひも上で一次元的に移動できるカプセル骨格に、連結部位や刺激応答部位を導入することや、他の合成・生体関連のひも状分子を活用することで、新たな分子機械や動的な機能性ポリマー材料の開発に挑戦する。

用語説明

[用語1] タンパク質ポケット : 酵素反応などを効率的に行うためのタンパク質で囲まれた小さな空間。

[用語2] 両親媒性 : 水に馴染む親水性と水を避ける疎水性の両方を持つ分子のなどの性質。

[用語3] オリゴマー分子 : 複数の分子が連結することで生成した重合体の総称。分子の連結数に応じて5量体や10量体などと呼ぶ。

[用語4] CH-π相互作用 : 炭素上の水素と芳香環の間に働く静電的な相互作用。

[用語5] エンタルピーとエントロピー : 熱エネルギーの指標。自発的な反応では、エンタルピー変化量ΔHからエントロピー変化量に温度を掛けた値TΔSを引いた値が負を示す。強い分子間相互作用の形成は、大きな負のΔHを与える。

[用語6] シャトリング運動 : ここでは、ナノカプセルがひも状分子の軸に沿って、左右に移動する挙動。

参考文献

[文献1] A. Scarso, L. Trembleau, J. Rebek Jr., Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 5499-5502.

[文献2] S. Matsuno, M. Yamashina, Y. Sei, M. Akita, A. Kuzume, K. Yamamoto, M. Yoshizawa, Nature Commun. 2017, 8, 749

[文献3] M. Yamashina, M. Akita, T. Hasegawa, S. Hayashi, M. Yoshizawa, Science Adv. 2017, 3, e1701126.

[文献4] F. E. Bailey, J. V. Koleske, Poly (Ehtylene Oxide), Academic Press, New York, 1976.

論文情報

掲載誌 :
Nature Communications
論文タイトル :
Cramming versus Threading of Long Amphiphilic Oligomers into a Polyaromatic Capsule(芳香環カプセルによる両親媒性オリゴマーの内包と貫通挙動)
著者 :
Masahiro Yamashina, Shunsuke Kusaba, Munetaka Akita, Takashi Kikuchi, Michito Yoshizawa*
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

准教授 吉沢道人

E-mail : yoshizawa.m.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5284

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


オートファゴソーム前駆体を小胞体につなぎとめる 「Atg2タンパク質」の役割を解明

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要点

  • オートファジーに必須のAtg2の機能に重要な領域を決定
  • Atg2が脂質膜に結合することを解明
  • Atg2がオートファゴソーム前駆体膜を小胞体に繋留するモデルを提唱

概要

東京工業大学 生命理工学院の小谷哲也博士研究員、中戸川 仁准教授、科学技術創成研究院の大隅良典栄誉教授らは、機能が全く分かっていなかったAtgタンパク質[用語1]であるAtg2について解析を行い、Atg2が伸張中のオートファゴソーム前駆体膜を小胞体につなぎとめることを明らかにした。これまでオートファゴソームの膜の供給源の候補と考えられてきた小胞体とオートファゴソーム前駆体膜との関係を示した本研究成果はオートファゴソーム形成機構の解明への糸口となると期待される。

オートファジーは真核生物に備わった細胞内の分解機構。オートファジーではオートファゴソームと呼ばれる膜小胞[用語2]が形成され、その中に分解すべきものを取り込む。大隅栄誉教授のグループが発見したAtgタンパク質と呼ばれるタンパク質群が協調的に働いてオートファゴソームは形成されるが、そのメカニズムはよくわかっていなかった。

研究成果は9月25日発行の米国科学アカデミー紀要 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA)電子版に掲載された。

背景

オートファジーはタンパク質やリボ核酸(RNA)などの細胞質成分や細胞小器官を分解する機構であり、酵母からヒトにいたるまで真核生物に広く保存されている。栄養飢餓などによりオートファジーが誘導されると、隔離膜と呼ばれる扁平な小胞が現れ、分解対象を取り込みながら球状に伸張し、閉じることで二重の膜構造を持ったオートファゴソームが形成される(図1)。

完成したオートファゴソームはリソソームや液胞[用語3]と融合し、リソソームや液胞の内部にある分解酵素によってオートファゴソームの内容物が分解される。これまでにオートファゴソーム形成に関わるATG遺伝子/Atgタンパク質が数多く同定されているが、個々のAtgタンパク質の膜形成における具体的な役割の理解は不十分であり、オートファゴソーム形成の詳細なメカニズムは未だに明らかになっていない。

図1. オートファジーの進行過程

図1. オートファジーの進行過程

研究の経緯

研究グループは、出芽酵母を用いてオートファゴソーム形成に関わるAtgタンパク質の一つであるAtg2の機能解析を行った。Atg2は1,592個のアミノ酸からなる大きなタンパク質だが、アミノ酸配列からは既知のドメイン構造は予測されない。Atg2はホスファチジルイノシトール3-リン酸(PI3P)[用語4]と結合するタンパク質であるAtg18と複合体を形成して、Atgタンパク質の中で最後にオートファゴソーム形成の場に局在化することが分かっていたが、具体的な機能は分かっていなかった。

異なる生物種間でのAtg2の一次配列の保存性を調べると、N末端領域とC末端領域[用語5]は非常に保存性が高いことが分かった。そこでこれら二つの領域に注目して様々なAtg2の変異体を作製し、オートファジーの活性を評価した。その結果、N末端領域とC末端領域内にAtg2の機能に重要な領域があることを突き止めた。

さらに酵母から精製したタンパク質と人工膜小胞[用語6]を用いた試験管内での実験により、どちらの領域も膜へ結合する機能を有しており、この二つの膜結合領域を介してAtg2が二つの膜構造体をつなぎ合わせることを示した。また、C末端領域がAtg2の結合相手であるAtg18のPI3Pを含む膜への結合に必要であり、Atg2-Atg18複合体のオートファゴソーム形成の場への局在化に必要であることを明らかにした。

一方、N末端領域はAtg2-Atg18複合体がオートファゴソーム形成の場へ局在化した後に重要な役割を果たすこと、さらにAtg2と小胞体との結合に関与する可能性があることを示した。以上の結果から、Atg2はオートファゴソーム前駆体を小胞体につなぎとめて、オートファゴソームの形成を開始し、膜の伸張を媒介するモデルを提唱した(図2)。

図2. Atg2-Atg18複合体はオートファゴソーム前駆体を小胞体につなぎとめる

図2. Atg2-Atg18複合体はオートファゴソーム前駆体を小胞体につなぎとめる

今後の展開

オートファジーの研究は世界中で活発に行われているが、オートファジーの最大の特徴である二重の膜構造を持ったオートファゴソームの形成機構については、膜がどこからどのようにして供給されるのかなど、未だに多くの疑問が残されている。これまでに小胞体がオートファゴソーム形成のための膜の供給源であることを示唆する結果が報告されている。また、今回の研究によりAtg2が隔離膜と小胞体を繋ぎ合わせる可能性が示された。

しかし、小胞体から隔離膜へどのように脂質が輸送されるのかといった膜伸張反応に関する機構に関しては未だに不明のままである。Atg2が小胞体のどこと結合しているのか、結合した後に何が起きるのかを詳細に解析することで、膜伸張反応のメカニズム解明へと近づけると期待される。

オートファジーは神経変性疾患や癌といった様々な疾患と関連することが報告されている。オートファゴソーム形成機構の理解は、これらオートファジーが関わる疾患の治療のための創薬における基盤情報になると期待される。

用語説明

[用語1] Atgタンパク質 : オートファジー関連(autophagy-related)タンパク質。出芽酵母においては現在までに40種類以上のAtgタンパク質が報告されている。19種類のAtgタンパク質がオートファゴソーム形成に関わると言われており、そのほとんどは2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士のグループにより発見された。

[用語2] 膜小胞 : 脂質二重層(脂質膜)でできた袋状の小胞。物質の貯蔵や輸送に関与する。

[用語3] リソソーム、液胞 : 細胞質中にあって、一群の加水分解酵素を含み、消化分解作用をもつ小器官。動物細胞の場合はリソソーム、植物や酵母細胞の場合は液胞がこれに相当する。

[用語4] ホスファチジルイノシトール3-リン酸 : リン脂質の一種であるホスファチジルイノシトール(PI)のイノシトール環の3位のヒドロキシ基にリン酸基がエステル結合したもの。オートファジーにおいては、オートファゴソーム形成の場で、Atg14を含むPI3-キナーゼ複合体によってPIがリン酸化されPI3Pが産生される。

[用語5] N末端領域とC末端領域 : タンパク質はアミノ酸の重合体である。アミノ酸のカルボキシル基と次のアミノ酸のアミノ基とがペプチド結合を形成し、これを繰り返すことで、ひも状の重合体となる。タンパク質の末端のうち、アミノ基を持つ方をN末端、カルボキシル基を持つ方をC末端と呼ぶ。

[用語6] 人工膜小胞 : 脂質分子は水溶液中で自発的に脂質二重層(脂質膜)を形成し、球状となる。この性質を利用して人工的に作った膜小胞を人工膜小胞と言う。

論文情報

掲載誌 :
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
論文タイトル :
The Atg2-Atg18 complex tethers pre-autophagosomal membranes to the endoplasmic reticulum for autophagosome formation
著者 :
Tetsuya Kotani, Hiromi Kirisako, Michiko Koizumi, Yoshinori Ohsumi, and Hitoshi Nakatogawa
DOI :
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お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系 博士研究員

小谷哲也

E-mail : kotani.t.ab@m.titech.ac.jp

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系 准教授

中戸川仁

E-mail : hnakatogawa@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5735 / Fax : 045-924-5743

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

超スマート社会推進コンソーシアム設立記念式典のご案内

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コンソーシアム設立記念式典

東京工業大学は、指定国立大学法人の使命を実現するため、超スマート社会(Society 5.0)の実現を推進する組織として、超スマート社会推進コンソーシアムを設立します。この度コンソーシアム設立記念式典を下記の内容で開催いたします。

基調講演、超スマート社会へ向けた講演・パネルセッション、ポスター展示、懇親祝賀会を予定しております。

たくさんの方々のご参加をお待ちしております。

日時
2018年10月22日(月)13:00 - 20:30(説明会12:20 -)
場所
申込方法

設立式典に参加ご希望の方は、設立式典参加お申込みフォームouterからお申込みください。

プログラム

第0部
12:20 - 12:40

コンソーシアム説明会(希望者向け)

第1部 基調講演
13:00 - 13:20

益一哉 氏(東京工業大学 学長)

益一哉 氏(東京工業大学 学長)

13:20 - 14:00

久間和生 氏(農研機構 理事長)

久間和生 氏(農研機構 理事長)

「未来の経済社会 Society 5.0 を目指して ―東京工業大学への期待―」

14:00 - 14:40

Prof. Pramod Khargonekar(Vice Chancellor for Research, UC Irvine)

Prof. Pramod Khargonekar(Vice Chancellor for Research, UC Irvine)

「Envisioning Smart Technologies and Innovations for Societal Good」

14:40 - 15:00

Networking break with posters

第2部 超スマート社会へ向けて 講演
15:00 - 15:30

安藤真 氏(電子情報通信学会 会長)

安藤真 氏(電子情報通信学会 会長)

「超スマート社会へ向けた電子情報通信学会の役割と本コンソーシアムへの期待」

15:30 - 15:50

藤井輝也 氏(ソフトバンク フェロー)

藤井輝也 氏(ソフトバンク フェロー)

「成層圏プラットホーム(HAPS)を活用した携帯通信システム」

15:50 - 16:10

阪口秀 氏(海洋研究開発機構 理事)

阪口秀 氏(海洋研究開発機構 理事)

「これからの海洋研究開発」

16:10 - 16:20

Bio break

16:20 - 16:40

杉山将 氏(理化学研究所 AIP センター長/東京大学 教授)

杉山将 氏(理化学研究所 AIP センター長/東京大学 教授)

「超スマート社会を支える人工知能技術」

16:40 - 17:00

山田哲 氏(東京工業大学 教授、OPERA SOFTech 代表)

山田哲 氏(東京工業大学 教授、OPERA SOFTech 代表)

「社会活動継続技術共創コンソーシアム(SOFTech)における活動と超スマート社会への期待」

17:00 - 17:20

西森秀稔 氏(東京工業大学 科学技術創成研究院 教授)

西森秀稔 氏(東京工業大学 科学技術創成研究院 教授)

「量子アニーリングによる量子計算技術の現状と展望」

17:20 - 17:40

Bio break

第2部 超スマート社会へ向けて パネルセッション
17:40 - 18:20

司会

磯崎憲一郎 氏(小説家、東京工業大学 教授)

パネリスト

  • 久間和生 氏(農研機構 理事長)
  • 安藤真 氏(電子情報通信学会 会長)
  • 藤井輝也 氏(ソフトバンク フェロー)
  • 阪口秀 氏(海洋研究開発機構 理事)
  • 杉山将 氏(理化学研究所 AIP センター長)
  • 山田哲 氏(東京工業大学 教授、OPERA SOFTech 代表)
  • 西森秀稔 氏(東京工業大学 科学技術創成研究院 教授)
第3部
18:30 - 20:30
懇親祝賀会

お問い合わせ先

超スマート社会推進コンソーシアム事務局

E-mail : application@sss.e.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5624

ニュースレター「AES News」No.15 2018秋号発行

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科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センターouterは、「AES News」No.15 2018秋号を発行しました。

ニュースレターを読む

PDF版

資料ダウンロード|先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)outer

バックナンバーもリンク先よりご覧いただけます。
冊子版
  • 大岡山キャンパス:東工大百年記念館1階 広報棚
  • すずかけ台キャンパス:すずかけ台大学会館1階 広報コーナー

ニュースレター「AES News」

No.15 2018秋号

  • 東京工業大学 桑田薫副学長
    「イノベーションを加速する産学官連携活動」
  • 研究推進委員会、福島地区先端エネルギー施設研修会、イブニングセミナーなどの開催報告
  • 2018年度の活動予定

AESセンターは、従来の大学研究の枠組みを越えて、企業・行政・市民などが対等な立場で参加する「オープンイノベーション」プラットフォームを推進しています。ここでは、低炭素社会実現のための研究プロジェクトを創生し、社会実装することをその大きな目的の一つとしています。

季刊誌「AES News」は、本センターの活動をより多くの方々にご理解いただき、また、会員および本学教職員の連携を深めるため、年4回発行しています。

お問い合わせ先

科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究センター

E-mail : aescenter@ssr.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3429

相同組換えのDNA鎖交換反応開始の分子機構を解明 Swi5-Sfr1によるRad51のDNA結合制御

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要点

  • Rad51タンパク質は1本鎖DNAにらせん状に結合してDNA鎖交換反応を触媒
  • このRad51タンパク質がSwi5-Sfr1タンパク質で安定化されるしくみを解明
  • ガン抑制に関わる相同組換え因子の機能解明に道

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院の岩﨑博史教授、伊藤健太郎研究員、黒川裕美子研究員、国立台湾大学の李弘文教授(Pro. Hung-Wen Li)、台湾国立中央研究院の冀宏源准教授(Assoc. Prof. Peter Chi)等からなる国際研究チームは、DNA相同組換えの中心的な反応である“DNA鎖交換反応”をつかさどるDNA―Rad51タンパク質[用語1]複合体形成制御のしくみを世界で初めて明らかにした。

相同組換えは、全ての生物で起きる生命現象で、傷ついたDNAの修復や遺伝的多様性を生み出すのに必須の働きをしている。相同組換えは、似た配列を持つ(このことを“相同”という)DNA鎖の交換反応が中心的な反応で、Rad51リコンビナーゼ[用語2]によって触媒される。

Rad51は、1本鎖DNAにらせん状に結合したフィラメント構造を作る。この構造体は、相同二重鎖DNAを検索してDNA鎖の交換を触媒する。しかしこの構造体は、かなり不安定であり、補助因子Swi5-Sfr1タンパク質複合体によって安定化される必要があるが、どのような分子機構でフィラメント構造が安定化するのか不明だった。

本研究では、フィラメント一分子をリアルタイムで観察することで、Rad51が1本鎖DNAへ結合・解離する過程を解析してSwi5-Sfr1複合体がRad51の解離を抑制しフィラメントの安定化を促進することを世界で初めて示した。

この成果は、10月8日(米国東部時間)付けの『Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA(米国科学アカデミー紀要)電子版』に掲載された。

研究成果

本研究では、Rad51が1本鎖のDNAと結合するとDNAを伸長させるという性質を利用して、(1) DNAの末端に微小なスチレンビーズを付加してビーズのブラウン運動を観察してDNAの伸長を検出する実験系、(2) DNA鎖を蛍光でラベルし、蛍光共鳴エネルギー移動 (Fluorescence resonance energy transfer: FRET)の原理を利用してDNAの伸長を検出する実験系を構築。1本鎖DNA上にRad51フィラメントが結合・解離する様子を一分子単位でリアルタイムに観察することに成功した。

これら2つの実験系を駆使し、様々な条件で解析した結果、まず、2~3分子のRad51が1本鎖DNA上に小さなフィラメント核を形成後、その核の末端にさらにRad51が結合してフィラメントが伸長していくことが分かった。さらに真核生物が共通して持つ複合体形成の促進因子であるSwi5-Sfr1タンパク質は、Rad51の1本鎖DNAからの解離を抑制することで、フィラメントを安定化することを明らかにした(図1)。

Rad51-単鎖DNAフィラメント形成モデルとSwi5-Sfr1タンパク質による安定化

図1. Rad51-単鎖DNAフィラメント形成モデルとSwi5-Sfr1タンパク質による安定化

研究の背景と経緯

相同組換えによるDNA二重鎖切断の修復モデル
図2. 相同組換えによるDNA二重鎖切断の修復モデル

相同組換えは、減数分裂時に父方由来遺伝子と母方由来遺伝子をシャッフルして遺伝的多様性を創出する。一方で、DNAの損傷(特に、DNAの2本鎖が両方とも切断されるDNA二重鎖切断)の修復にも大きな役割を果たす。

DNAは紫外線や放射線など外的要因や、DNA複製の阻害や代謝で発生した活性酸素などの内的要因によって、日々常に損傷を受けており、相同組換えによるDNA修復が正常に働かない場合、ガンなどの重篤な疾患や不妊の原因になることが知られている。

相同組換えの中心的な反応は、DNA鎖交換反応であり、Rad51タンパク質によって触媒される。この反応は、Rad51が1本鎖DNAと結合しフィラメント状の複合体を形成し、複合体が二重鎖DNAを捕捉して似た配列を検索する。そして、似た配列を見つけるとDNA鎖を交換し、組換えを進行させる。DNA鎖交換反応において、Rad51と1本鎖DNAとの複合体形成は反応開始のスイッチとなる重要な過程で、様々な因子によって形成や解離が制御されている(図2)。

今回の研究では、Swi5-Sfr1によるRad51の1本鎖DNAへの結合・解離の様子を一分子かつリアルタイムで観察することで、DNA鎖交換反応開始に必須な複合体形成の分子機構の解明に成功した。

今後の展開

Rad51―単鎖DNAのフィラメント形成を制御する因子はSwi5-Sfr1タンパク質の他にも様々なものが存在することが知られている。有名なものでは、家族性乳ガンの原因遺伝子であるBRCA1、BRCA2などがある。これら因子がどのようにRad51―単鎖DNAフィラメントを制御するのか、より具体的な議論が可能となるばかりでなく、実際にこれらタンパク質を用いて解析ができれば、このガン抑制因子が、どのようにDNA鎖交換反応開始のスイッチとして働くのかという医学的に重要な分子機構に迫っていくことができる。

用語説明

[用語1] DNA―Rad51タンパク質 : 分子量約38,000のRad51タンパク質が数10~数100のヌクレオチドからなる1本鎖DNAに連なってらせん状に結合して、フィラメント状の高次DNA―タンパク質複合体を形成する。この複合体は中のDNA配列と相同な二重鎖DNAを検索し、相同な二重鎖DNAが見つかると鎖を交換する反応がおこる。

[用語2] リコンビナーゼ : 相同組換え(homologous recombination)において中心的な反応はRad51などのDNA鎖交換反応である。そのため、DNA鎖交換反応を促進するタンパク質がリコンビナーゼ(recombinase)と呼ばれるようになった。相同組換え以外のDNA組換え現象(例えば、部位特異的組換え)も知られており、その場合は、Rad51とは質的に全く異なる反応を触媒するリコンビナーゼが働く。そもそも、部位特異的組換えに働く酵素が最初に“リコンビナーゼ”と命名され、Rad51などはDNA鎖交換タンパク質と呼ばれていたが、21世紀以降、Rad51などもリコンビナーゼと呼ばれるようになった。

論文情報

掲載誌 :
Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA
論文タイトル :
Swi5–Sfr1 stimulates Rad51 recombinase filament assembly by modulating Rad51 dissociation
著者 :
Chih-Hao Lu, Hsin-Yi Yeh, Guan-Chin Su, Kentaro Ito, Yumiko Kurokawa, Hiroshi Iwasaki, Peter Chi, and Hung-Wen Li
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター 教授

岩﨑 博史(いわさき ひろし)

E-mail : hiwasaki@bio.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2588 / Fax : 03-5734-3781

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

石田大輝さんが「ポケモンワールドチャンピオンシップス2018」ポッ拳部門で世界4位に

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工学院 経営工学系の石田大輝さん(学士課程3年)がポケモンワールドチャンピオンシップス(以下、ポケモンWCS)2018のポッ拳部門(マスターディビジョン)に日本代表として出場し、世界4位に入賞しました。

表彰式でトロフィーを手にする石田さん

表彰式でトロフィーを手にする石田さん

ポケモンWCSは、ポケモンのゲーム部門、カードゲーム部門、ポッ拳部門に分かれて行われる世界大会で、今年は8月24日から26日にかけてアメリカのナッシュビルで開催されました。石田さんが出場したポッ拳部門はNintendo Switch(任天堂スイッチ)の「ポッ拳DX」を用いた、1試合最大5ゲームのうち3ゲーム先取の1対1のダブル・エリミネーション方式(2敗した時点で敗退となるトーナメント方式)で行われ、世界各国の予選で招待出場権を獲得した14名と、現地の最終予選を勝ち抜いた2名の計16名が決勝大会に進出しました。石田さんは3月に開催された日本大会で優勝し、日本の招待出場権を獲得しました。

石田さんは、1試合目に3対1、2試合目に3対0、3試合目に0対3、4試合目に3対2、5試合目に0対3で敗退し、4位となりました。

石田さんのコメント

高校生の頃にゲームセンターでポッ拳を始め、大学生になってからは競技として真剣に取り組んできました。そんなポッ拳で世界4位という結果を残すことが出来て非常に嬉しいです。

僕は経営工学系所属の3年で、経済学や経営学を勉強しています。今年の世界大会はアメリカのナッシュビルで開催されたのですが、そこで海外でのeスポーツの盛り上がりを実感し、eスポーツ産業にとても興味が沸きました。

来年も世界大会に行けるように、練習を続けていきます。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

東工大合氣道部が全国大会で個人の部「金賞」、団体の部「銅賞」を受賞

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東工大合氣道部が「第37回全日本心身統一合氣道競技大会」に出場し、個人の部で、主将の井上翔太郎さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程3年)と山崎雄大さん(工学院 電気電子系 学士課程2年)のペアが金賞、また団体の部では、東工大が銅賞を受賞しました。

本大会は9月23日、栃木県芳賀郡の心身統一合氣道会天心館道場で、「個人の部」と「団体の部」(それぞれ「中等部」「高等部」「大学部」)に分かれて行われ、日本全国から113名の学生が参加しました。

主将の井上さんのコメント

去年の「団体の部」金賞に続き、今年は「個人の部」金賞という結果を残すことができたこと、大変嬉しく思います。このような結果を残すことができたのも、現役部員や先輩方をはじめ、師範である小原英雄先生の支えのおかげだと思います。また、長年にわたり東工大をご指導下さった、前師範である大塚豊先生にもこの場を借りてお礼申し上げます。

学業に関しましては、稽古を通して会得した「真の落ち着き」を活かし、専門である生物学の分野で活躍していきたいと思います。

東工大合氣道部は今年で創立50周年を迎えました。さらなる発展に向け、現役一同全力で稽古に励んでいきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

合氣道部とは

東工大合氣道部は1968年に活動を開始し、今年で創立50周年を迎えます。週4日の稽古のうち、心身統一合氣道会師範の小原英雄先生(心身統一合氣道七段)による稽古を週1回行っています。日々の稽古の中では「心が身体を動かす」ということを重視し、心と身体を一つにして用い、「相手の心を尊重して導く」ことを学んでいます。

全国大会終了後、小原英雄師範(前列中央)を囲んで

全国大会終了後、小原英雄師範(前列中央)を囲んで

お問い合わせ先

東京工業大学 心身統一合氣道部

E-mail : titech.aikidou@gmail.com

本学同窓生 滝久雄氏が2回目の紺綬褒章を受章

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褒章の記を手にする滝氏(左)と益学長

褒章の記を手にする滝氏(左)と益学長

このたび本学同窓生の滝久雄氏が紺綬褒章※1を受章され、益一哉学長から褒章(飾版)、褒章の記および木杯が手交されました。

「末松基金」※2の趣旨に賛同された滝氏から多額の寄附をいただいたことを受けたもので、今年1月の紺綬褒章受章に続き本学からの申請では2回目の受章となりました。

※1
紺綬褒章は、公益のために私財(個人の場合500万円以上、団体の場合は1,000万円以上)を寄附した者を対象に、表彰されるべき事績の生じた都度、各府省等の推薦に基づき審査され授与されるものです。国、地方公共団体または公益団体(公益を目的とし、法人格を有し、公益の増進に著しく寄与する事業を行う団体であって、当該団体に関係の深い府省等の申請に基づき賞勲局が認定した団体)に対する寄附が対象となります。
※2
本学は2014年、末松安晴栄誉教授・元学長からの寄附を原資として東京工業大学基金の中に「末松基金」を設立しました。末松基金は、末松栄誉教授の、研究者だけが覗き見られる隠れた未来の姿を現実の社会へ引き寄せて定着させる活動が、澎湃として湧き出すことを望む思いを継承し、研究活動を奨励するため設立されたものです。

滝氏は1963年3月に本学理工学部 機械工学科を卒業後、1996年に飲食店情報サイト「ぐるなび」を創業し、現在は株式会社ぐるなびの代表取締役会長をされています。また、滝氏は第46回運輸省交通文化賞(1999年)、東京都功労賞(2003年)をはじめ、数々の賞を受賞しています。

お問い合わせ先

総務部広報・社会連携課基金室

E-mail : bokin@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2415


細野秀雄教授が米国材料学会(MRS)のフォン ヒッペル賞を受賞

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科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の細野秀雄教授(元素戦略研究センター長)が、米国材料学会(Materials Research Society、以下MRS)の最高位の学会賞であるフォン ヒッペル賞(Von Hippel Award)を受賞することが決定しました。表彰式と受賞記念講演「材料研究における元素戦略(Element Strategy in Materials Research)」は、2018年11月28日(水)、米国ボストンで開催されるMRSの秋学会で行われます。

MRSは、材料に関する学際的研究を促進することを目的に1973年に創設された世界最大の材料学会です。90以上の国・地域から集まる会員のうちの半数以上が米国以外の研究者で構成されており、その分野は化学、生物学、物理学、工学等多岐にわたります。

フォン ヒッペル賞は、アーサー・R・フォン ヒッペル教授(Arthur R. von Hippel, 1898-2003)を記念し、分野を横断した材料について際立った研究業績を挙げた研究者(会員・非会員を問わない)1名に毎年授与されています。本賞は今回で第42回を数えますが、日本人が受賞するのは初めてです。

受賞業績は「鉄系高温超伝導体の発見と透明酸化物半導体と無機エレクトライドの創出」です。

銅酸化物と並ぶ高温超伝導物質の新大陸となった鉄ニクタイド系超伝導物質、有機ELテレビなどに応用されているIGZO(イグゾー)等の酸化物半導体、そして温和な条件下でのアンモニア合成触媒への道を開いた無機エレクトライドの創出といった開拓的研究の業績が評価されたものです。

細野教授のコメント

細野秀雄教授
細野秀雄教授

フォン ヒッペル先生は、多くの学際的テーマで歴史に残る先駆的業績を挙げた方で、私の学生時代から著名でした。かなり前から分野横断を意図した研究を行ってきたので、今回の受賞は大変に嬉しいものです。材料科学は日本が世界で強い分野の一つなのに、これまで受賞者がいなかったことに驚きました。多くの共同研究者と支援を頂いた大学、科学技術振興機構(JST)、日本学術振興会(JSPS)などのスポンサー、そして推薦を頂いた方々に感謝いたします。

ここ10年くらいの間に日本の材料研究の存在感が世界の中で急速に失われつつあり、変革が必要なことは多くの方が指摘しています。卓越大学院に採択された本学の提案のように、伝統的な枠組みを超越した独創性の明確な研究を強力に推進する必要があります。個人的には、広い領域を俯瞰して、未開でポテンシャルの高いテーマについて、独自のコンセプトに基づく、新物質・材料の創出とその応用を拓く研究に精進したいと思います。

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アモルファス高分子の高次構造形成や粘度上昇をもたらす分子ユニット わずか数%で高分子物性が劇的に変化

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要点

  • 水分に弱い水素結合とは原理的に異なる新しい会合性分子ユニットを発見
  • 高分子量かつ分子量分布の広いアモルファス高分子へ適用可能
  • アモルファス高分子材料への熱可塑性の付与やナノパターニング材料、物質輸送材料などへの応用に期待

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の石割文崇助教、福島孝典教授らの研究グループは、同物質理工学院 応用化学系の戸木田雅利准教授、東北大学 多元物質科学研究所 高田昌樹教授(理化学研究所 放射光科学研究センターグループディレクター)と共同で、高分子鎖の末端に導入するだけでアモルファス高分子[用語1]に3次元的な高次構造を誘起し、劇的な粘度の上昇をもたらす分子ユニットを開発した。

高分子に3次元の規則構造を誘起する技術[用語2]は、ナノパターニング材料や物質輸送材料、フォトニック材料の開発など、様々な分野で重要となっている。研究グループは、特異な置換パターンを持つトリプチセン誘導体[用語3]を、広く産業で用いられているポリジメチルシロキサン[用語4]の末端のみに導入した新たな分子を作製。このテレケリックポリマー[用語5]の構造を調べたところ、トリプチセンが入れ子状に自己集合した2次元シートが、規則的に積層して3次元構造を形成することを発見した。この構造変化によって、室温で液体だったポリジメチルシロキサンの粘度が1万倍以上に上昇したことで固体化し、熱可塑性[用語6]を付与できることも明らかとなった。

このトリプチセン分子ユニットは、一見大きな会合力を持たないように見えるが、分析してみると非常に高い自己集合能力を持つ新しい会合性分子であることがわかった。このような高分子の末端修飾法は、様々な高分子系にも適用できると期待される。また、置換基の位置のみが異なるトリプチセン誘導体を導入しても上記のような構造化は全く示さないという興味深い結果も得た。

本研究成果は、2018年10月3日(米国時間)に米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

研究の背景

高分子で3次元の規則的な構造を誘起することは、ナノパターニング材料をはじめ、物質輸送材料やフォトニック材料の開発など様々な分野で重要視されている。その実現のためには、自己集合(ミクロ相分離)を起こすブロックコポリマー[用語7]を用いるのが一般的である。

一方で、高分子の末端部位のみを修飾したテレケリックポリマーでは、高分子鎖全体に対して末端ユニットは重量比が非常に小さいため、一般に高次構造の誘起は困難であると考えられてきた。実際、テレケリックポリマーで高次構造を誘起した報告例は、非常に強力な会合能を持つ多重の水素結合部位[用語8]を導入した、分子量数千がDa(ダルトン)程度の低分子量体かつ、分子量分布[用語9]の非常に狭いものに限られていた(図1右)。

図1. 今回発見した分子ユニット「1,8位置換トリプチセン」を導入したテレケリックポリジメチルシロキサン(左)と、既存の4重水素結合性官能基を導入したテレケリックポリ(オリゴ)ジメチルシロキサン(右)の物性差。
図1.
今回発見した分子ユニット「1,8位置換トリプチセン」を導入したテレケリックポリジメチルシロキサン(左)と、既存の4重水素結合性官能基を導入したテレケリックポリ(オリゴ)ジメチルシロキサン(右)の物性差。

研究内容と成果

研究グループでは以前から、1,8,13位に置換基を持つ「三脚型トリプチセン」誘導体が、トリプチセンの2次元入れ子状パッキング(図1左下)によりシート構造を形成し、そのシートが1次元的に積層した規則な構造(2次元(D)+1次元(D)構造)へと自己集合することを見出していた。今回、この三脚型トリプチセンと類似の構造を持つ1,8位に置換基を有するトリプチセン誘導体を、代表的なアモルファス高分子であるポリジメチルシロキサン(数平均分子量約2万Da、分子量分布 Mw/Mn = 約2)[用語9]の鎖末端に導入し、合成を行った。その構造を大型放射光施設SPring-8(BL45XU)の放射光X線[用語10]で解析したところ、トリプチセンはまず2次元シート構造を形成し、そのシートが約20 nmという1次元的に長周期に積層した「2D+1D構造」という規則的な構造に集合することが明らかとなった(図2)。

また、この高次構造化に伴い、末端修飾前は液体であったポリジメチルシロキサンの粘度が1万倍以上に劇的に上昇することがわかった。この粘度上昇により固体化し、加熱、冷却することにより可逆的に融解/固化を繰り返すような、熱可塑性を示すことも明らかとなった(図1左および図2)。

トリプチセン分子ユニットは、一見すると水素結合のような明確な相互作用を持たないにもかかわらず、非常に高い会合能力を有し、幅広い分子量分布を持つポリマーに対してわずか数%程度の導入率で高次構造を誘起することがわかった。(図1左および図2)。

図2. 無置換のポリジメチルシロキサン(上段)および「1,8位置換トリプチセン」を導入したテレケリックポリジメチルシロキサン(下段)の構造と物性
図2.
無置換のポリジメチルシロキサン(上段)および「1,8位置換トリプチセン」を導入したテレケリックポリジメチルシロキサン(下段)の構造と物性

今後の展開

1,8位置換トリプチセン分子ユニットによる高次構造形成能を活かしたナノパターニング材料、物質輸送材料などの開発や、粘度の大幅上昇を利用した熱可塑性材料などの開発が期待される。さらに、本系では水素結合を利用していないことから、これらの高分子は水素結合を阻害する水分の存在下での使用も可能であると考えられる。現在、さらに高い会合能を持つ分子ユニットの開発を検討しており、今後、この末端修飾法の様々な高分子系への適用が期待される。

本成果は、科学研究費助成事業の以下研究支援により得られた。

研究課題:
「新学術領域研究(研究領域提案型)」π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出(領域略称名「π造形科学」)
「大規模分子集積化による巨視的π造形システム」
研究代表者:
福島孝典(東京工業大学 科学技術創成研究院 教授)
研究開発期間:
平成26~30年度
研究課題:
挑戦的萌芽研究「三脚型トリプチセンを分岐部位として有するスターポリマーの合成と物性解明」
研究代表者:
石割文崇(東京工業大学 科学技術創成研究院 助教)
研究開発期間:
平成28~29年度

用語説明

[用語1] アモルファス高分子 : 特定の構造を取らない、ランダムな鎖状態の高分子。非晶性高分子とも呼ばれ、液体状態~ガラス状態を取る。

[用語2] 高分子への3次元的規則構造の誘起 : 高分子材料に、ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の球状構造や層状構造、シリンダー構造など高次構造を形成させること。通常は、互いに混ざりにくいポリマー鎖を連結したブロックコポリマー(用語7参照)の自己集合(ミクロ相分離)によりこれら高次構造が形成される。この3次元構造を利用した、フォトニック結晶などの光学材料や、イオン・分子・ガス透過材料などの開発が盛んに行われており、特に自発的にナノパターンを形成するレジスト材料としての応用が期待されている。

[用語3] トリプチセン誘導体 : 3枚のベンゼン環が120°の角度で連結された下記の構造を持つ剛直なプロペラ状分子。置換基の位置を示すために番号付けがされている。分子の周辺には、ベンゼン環に挟まれた大きな空間(自由体積)がある。研究グループはこれまでに、1,8,13位に置換基を導入したトリプチセン分子が、3枚羽プロペラ構造を蜂の巣状の最密充填構造を形成することを見出した。

参考文献:Rational synthesis of organic thin films with exceptional long-range structural integrity N. Seiki, Y. Shoji, T. Kajitani, F. Ishiwari, A. Kosaka, T. Hikima, M. Takata, T. Someya, T. Fukushima, Science 2015, 348, 1122‒1126.

トリプチセン誘導体

[用語4] ポリジメチルシロキサン : シリコンオイルのオイルとして利用される液体状の高分子。PDMSとも呼ばれる。化学的な架橋により3次元的なネットワークを取らせることにより固体化し、シリコンゴムとして用いられるが、液体状と固体状態の相転移を熱で誘起すること、すなわち、熱可塑性(用語6参照)を持たせるは困難であるとされている。

[用語5] テレケリックポリマー : 高分子の両末端に置換基を導入したポリマーのこと。

[用語6] 熱可塑性 : 低温状態では固体であるが、高温になると融解し液状になる性質のこと。

[用語7] ブロックコポリマー : 異なる種類のポリマーが末端で連結され、ブロック状に繋がっているコポリマーのこと。

[用語8] 水素結合 : 水酸基(-OH)やアミド基(-CONH2、-CONHR)などに存在する酸性度の高い水素(H)が、近傍の塩基性の窒素(N)、酸素(O)などとの間に形成する非共有結合性相互作用。多重に水素結合を形成することにより非常に強い会合性を示す。

[用語9] 分子量分布(Mw/Mn : 合成された高分子試料には、実際は様々な分子量の高分子が含まれる。分子量分布(Mw/Mn)とは高分子試料を構成する高分子の分子量のばらつきを表す指標のこと。分子量分布が1に近い場合、その高分子試料にはほとんど単一の分子量の高分子しか含まれておらず、高分子の長さが揃っていることを意味する。しかし、通常の合成高分子で分子量分布を1に近づけることは困難であり、大抵は2程度の分子量分布を持つ。分子量分布が2程度の高分子試料には2倍以上の長さの差のある高分子が多数含まれているという、非常にばらつきの大きい状態を意味する。

[用語10] 放射光X線 : 放射光X線とは、電子を光速に近い速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波のことを指す。兵庫県にある大型放射光施設 SPring-8 では、世界最高輝度の放射光を用いて、基礎研究から産業利用まで幅広い実験が行われている。

論文情報

掲載誌 :
Journal of the American Chemical Society
論文タイトル :
Terminal Functionalization with a Triptycene Motif That Dramatically Changes the Structural and Physical Properties of an Amorphous Polymer
著者 :
Fumitaka Ishiwari, Gen Okabe, Hibiki Ogiwara, Takashi Kajitani, Masatoshi Tokita, Masaki Takata, and Takanori Fukushima
DOI :

お問い合わせ先

研究に関すること

東京工業大学 科学技術創成研究院
化学生命科学研究所 教授 福島孝典

Email : fukushima@res.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5220 / Fax : 045-924-5976

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

理化学研究所 広報室 報道担当

Email : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室

Email : press.tagen@grp.tohoku.ac.jp
Tel : 022-217-5198 / Fax : 022-217-5211

「夏の電脳甲子園」第24回スーパーコンピューティングコンテスト開催報告

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「夏の電脳甲子園」として、高校生・高専生が4日間をかけて難題を解くプログラムを作成し、その性能を競う「スーパーコンピューティングコンテストSuperCon(スーパーコン)2018」(以下、スーパーコン)の本選が、8月20日から8月24日にかけて東京工業大学学術国際情報センターで開催されました。

本選問題を考える高校生チーム

本選問題を考える高校生チーム

東京工業大学学術国際情報センター、大阪大学サイバーメディアセンターが主催するスーパーコンは、高等学校もしくは高等専門学校の高校相当学年の学生からなる2~3人のチームが、スーパーコンピュータを駆使して難問を解くプログラミングコンテストで、今年は本学のTSUBAME3.0が使用されました。35チームの応募があり、その中から予選により22チーム(東日本12チーム、西日本10チーム)が選抜されました。本学の会場には東日本12チームが、大阪大学サイバーメディアセンターの会場には西日本10チームが集まり、本選を戦いました。

今年の本選課題

今回のプログラムの作成では、いかに効率よく計算を行うプログラムを作るかということ がポイントとなります。

課題 : 問題の入力として量子回路を与える。入力は、

N K G1 O1 G2 O2 ⋮ ⋮ GK OK

で与えられる。

量子ビットの数Nは25≤N≤30、量子ゲートの数Kは500≤K≤2000、各G_iは量子ゲートの種類を表していて、パウリX変換 X、パウリZ変換 Z、アダマール変換 H、コントロールX変換 CX、コントロールZ変換 CZ、トフォリ変換 CCXのいずれかである。ただし、Hの総数は125以下とする。

量子ビットの数Nは25≤N≤30、量子ゲートの数Kは500≤K≤2000、各Giは量子ゲートの種類を表していて、パウリX変換 X、パウリZ変換 Z、アダマール変換 H、コントロールX変換 CX、コントロールZ変換 CZ、トフォリ変換 CCXのいずれかである。

量子ビット|00・・・0〉を量子回路の入力としたときに、その量子回路から出力される量子状態を測定した際に得られる確率が一番高い測定結果とその確率を問題の解とする。この問題を解くプログラムを作成せよ。確率は相対誤差10^-5未満を正解とし、順位付けは、「計算結果が正しいものが多い方が上位」「計算結果が正しいものが同数の場合は実行時間の総和が小さい方が上位」というルールに従って決める。

本選課題の詳細はSupercomputingContest2018outerからご覧いただけます。

発表会・表彰式

森立平助教による本選問題解説
森立平助教による本選問題解説

発表会・表彰式は8月24日に、東工大蔵前会館ロイアルブルーホール(東京会場)において開催されました。大阪会場でも予定されていた発表会・表彰式は台風のため中止といたしましたが、大阪大学サイバーメディアセンター豊中教育研究棟7階会議室にテレビ会議システムで中継を行い、安全に来場できる参加高校生には集まっていただきました。東工大 学術国際情報センター長の山田功教授(工学院)の開会の挨拶に始まり、東工大の佐藤 勲理事・副学長からの主催校挨拶(東京会場)、大阪大学サイバーメディアセンター長の下條真司教授の挨拶(大阪会場)、情報処理学会情報処理教育委員会の萩谷昌己委員長の来賓挨拶に続いて、参加チームの紹介を実施委員会委員長である東工大 学術国際情報センターの西崎真也教授が行いました。本選課題・審査方法の説明等については、東工大 情報理工学院数理・計算科学系の森立平助教が行いました。

本選結果

上記発表会・表彰式において、1位から3位までのチームにメダルと賞状が、佐藤 勲理事・副学長から贈呈されました。

また優れたアルゴリズムやプログラムを作成したチームに贈られる学会奨励賞(電気情報通信学会通信・システムソサイエティスーパーコンピューティング奨励賞、情報処理学会若手奨励賞)は3位のチーム「SHIROXTL」が受賞しました。

競技結果

順位
チーム名
学校名
1
Anantash
灘高等学校
2
dispro
大阪府立大手前高等学校
3
SHIROXTL
宮崎県立宮崎西高等学校
4
justiCE
埼玉県立大宮高等学校
5
Vimaster
静岡県立浜松工業高等学校
6
Kerberos
静岡県立浜松工業高等学校

来年も「夏の電脳甲子園」の熱戦を期待しています。

東京会場での集合写真

東京会場での集合写真

お問い合わせ先

学術国際情報センター

スーパーコン18実施委員会

E-mail : sc18query@gsic.titech.ac.jp

益学長が中国・清華大の国際工学教育フォーラムに参加

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全体写真

全体写真

9月24日から25日に中国・北京の清華大学で開催された「第1回国際工学教育フォーラム」(以下、フォーラム)に益一哉学長が基調講演者として招待され、関口秀俊副学長(国際連携担当)と共に出席しました。

講演を行う益学長
講演を行う益学長

フォーラムは、「Innovation and Development of Engineering Education(工学教育のイノベーションと発展)」と題して、中国工程院及び国連教育科学文化機関(ユネスコ)との共催で開催されました。世界各国の大学の代表者、関係機関及び企業関係者など約150名が参加しました。

フォーラムは、各セッションの基調講演と分科会に分かれて行われ、益学長は2日目のEngineering Education for Sustainable Development(持続可能な発展のための工学教育)」のセッションの中で、本学の教育システムについて講演を行いました。各セッションや分科会では熱心な質疑応答があり、工学系分野における教育の在り方について議論が深まりました。

邱(チウ)学長(右)と益学長
邱(チウ)学長(右)と益学長

フォーラム開催期間中、益学長は清華大学の邱勇(チウ・ヨン)学長を表敬訪問し、今後の両大学の連携について意見交換を行いました。

東工大と清華大学は、2004年から大学院課程においてダブル・ディグリープログラムである東京工業大学・清華大学大学院合同プログラム(以下、合同プログラム)をスタートさせ、現在ではバイオコース、ナノテクノロジーコース、社会理工学コースの3コースで150名以上の修了生を輩出しています。修了生は日系企業、中国企業などで様々な分野に進み、この合同プログラムで得た高度な専門知識、語学力、異文化適応能力を武器に日中にまたがる研究やビジネスの最前線で活躍しています。

会談の中で、両学長はこの合同プログラムを発展させること及び両大学の交流を今後益々深めていくことを改めて確認しました。

東工大・清華大学合同プログラムの参加学生たちと
東工大・清華大学合同プログラムの参加学生たちと

フォーラム前日には、清華大学に留学中の東工大生やこれから本学に留学予定の清華大学の学生17名と懇談し、清華大学での学生生活や研究活動等について、学生から話を聞きました。懇談の中で学生からは、東工大生がなかなか海外に行かないことや大学のダイバーシティについての質問があり、益学長が答える一幕もありました。最後に、この9月で修士課程を修了する合同プログラムの学生に益学長から学位記が授与され、懇談会はなごやかに終了しました。

また、北京在住の本学卒業生との懇談も行われました。北京蔵前会会員20名と合同プログラムで清華大学へ留学中の学生が益学長との懇談に出席しました。清華大学などの大学関係者や官僚、ベンチャー企業の経営者など幅広い年代の様々な業種の卒業生が参加し、最年長の方は92歳でした。参加者は、益学長が語る東工大の今について感慨深く聞いており、各自が留学していた頃に思いを馳せていたようです。懇談会は和気藹々と進み、東工大と北京蔵前会との交流が今後益々発展することを祈念して閉会しました。

北京蔵前会の会員とともに

北京蔵前会の会員とともに

お問い合わせ先

国際連携課企画・調整グループ

E-mail : kokuren.kik.cho@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3016

GSA(大学院生アシスタント)プログラム 第4回認定証授与式を開催

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7月3日、教育革新センターとリベラルアーツ研究教育院が推進しているGSA(Graduate Student Assistant、大学院生アシスタント)プログラムの4回目となる認定証授与式が、大岡山キャンパス西9号館にて開催されました。

認定証を手にした学生たち

認定証を手にした学生たち

GSAとは ―学士課程学生の学びを支援し自ら学ぶ―

GSAは教員と協働で学士課程の教育活動などに携わる大学院生アシスタントのことで、文部科学省の支援事業である「学びのコミュニティ」をサポートします。「学びのコミュニティ」は、構成員の学士課程学生、大学院生、教職員が相互に学びあうことを目指しており、その中で、GSAは授業等を通じて学士課程学生の学びを支援し、自らの学びを深めていきます。

社会の中でチームの力を最大限発揮するためには、従来の「指導」型リーダーシップではなく、「支援(ファシリテーション)」型リーダーシップや人としての総合力が不可欠です。GSAプログラムでは現在3つのコースを設けて、生涯に渡って非常に重要なこれらの力を、大学のカリキュラムのなかで身に着けることができる仕組みを提供しています。学生の学びを支援するGSA-F(GSAファシリテーター)、学生の執筆活動を支援するGSA-R(GSAレビューアー)、オンライン教材を制作するGSA-D(GSAデベロッパー)のコースですが、いずれも試験の点数の良し悪しだけではなく、教職員や他の学生との関わりの中で自らやチームメンバーをどのように活かすことができるかが評価されます。規定の条件を満たすと、学びのコミュニティの中でGSAとしての責務を果たした証として、教育革新センターから認定証が授与されます。

13名にGSAファシリテーター認定証を授与

今回対象となったのは、今年度第1クォーターに開講した「リーダーシップアドバンス」の履修者です。「リーダーシップアドバンス」は、学士課程1年目の学生の必修科目「東工大立志プロジェクト」に教員と共に積極的に関わり、ファシリテーター型リーダーシップについて実践的に学ぶ修士課程科目です。この科目は、前年度に「リーダーシップ道場」でリーダーシップの基礎を学び、好成績を修得していないと履修することができないというハードルの高い条件がついている点でも特徴的です。今回は、この「リーダーシップアドバンス」で好成績を修得した24名のうち、出席者13名にGSA-F認定証が授与されました。

今年度新しく教育革新センター長に就任した井村順一教授は、一人ひとりへの授与を終えた後、後輩の学びに深く関わりながら自らも成長した学生達を称えました。

祝辞を述べる井村センター長

祝辞を述べる井村センター長

挨拶をする林教授
挨拶をする林教授

続けてリベラルアーツ研究教育院の室田真男教授から、学生達が「東工大立志プロジェクト」において学士課程1年目の学生と教員の間の橋渡し役として重要な役割を果たしたことついて、東工大立志プロジェクトの担当教員からも非常に高い評価を得ているとの報告が伝えられました。

同じくリベラルアーツ研究教育院の林直亨教授からは「GSA-F認定は、皆さんにとっては今すぐ役に立つものではないかもしれません。その価値は、皆さんのこれからの活躍にかかっていると思います。5年後、10年後に『東工大のGSA-F認定者は素晴らしい』という認知が広まり、後輩にとって価値あるGSA-Fとなるよう、ぜひ頑張ってください」という激励の言葉が贈られました。

「後輩のロールモデル」として

いずれの教授からも「認定証を受け取ったことがゴールではない、むしろこれをスタートとして活躍し、後輩のロールモデルとして道を示してほしい」との熱い期待が述べられました。この認定証は単にプログラムを修了したという証ではなく、GSAプログラムが認めるファシリテーターとなった証であり、受け取った人はその能力を活かすことが求められているのです。

最後は学生代表からの大変頼もしい挨拶で締めくくられました。「授業を通して、他の人を信頼し、他の人に委ね、そして他の人と共に成長するというファシリテーター型のリーダーシップを学びました。関わった人すべてにとってプラスに働くこのスキルを活かして、今の日本、いや世界をより良くすることの手伝いができればと思います」

本プログラムは順調に成果を上げており、これまでに、GSA-F(GSAファシリテーター)36名、GSA-R(GSAレビューアー)40名、GSA-D(GSAデベロッパー)8名、合計84名の大学院生アシスタントが誕生しています。

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お問い合わせ先

教育革新センター、リベラルアーツ研究教育院

E-mail : gsa@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3776

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