東京工業大学博物館所蔵の本多式熱天秤が、第4回分析機器・科学機器遺産認定事業において、分析機器・科学機器遺産に認定されました。
この認定制度は、日本で創出された分析技術・分析機器や科学機器および日本国民の生活・経済・教育・文化に貢献した分析技術・分析機器や科学機器を文化的遺産として後世に伝えることを目的に、社団法人日本分析機器工業会と一般社団法人科学機器教会により、2012年に創設されたものです。
候補となる分析技術・分析機器および科学機器の歴史を示す事物・資料は、広く一般から募集され、(1)発展史上の重要な成果を示すもの、また、(2)日本国民の生活・経済・教育・文化に貢献したもの、であることを認定基準に審査が行われます。そこに、さらなる基準として、「国際的にみて独自性を示すもの」「新たな分析機器または科学機器の創造に寄与したもの」「日本の産業・経済の発展と国際的地位向上に貢献のあったもの」という厳しい要項が加わり審査されます。
今回、遺産認定を受けた本多式熱天秤は、1915年(大正4年)に本多光太郎によって世界に先駆けて創案・命名され、仙台の成瀬器械店(後に成瀬科学器械)により製造・販売されました。太平洋戦争後、本学の資源化学研究所がこの熱天秤を購入し、舟木好右衛門・佐伯雄造研究室で使用されていました。その後、工業材料研究所の齋藤安俊教授(当時)に移管され、齋藤教授定年退職(原子炉工学研究所)に伴い、本学博物館に寄贈され、現在も本学博物館にて保管展示されています。本熱天秤は、前述の厳しい基準のいずれをも十分に満たしており、第4回目(2015年度)の認定を受けた11件の機器のなかでも、群を抜いてその歴史的価値の存在感を示していました。
本熱天秤は、2015年9月2日から4日まで幕張メッセで開催されたアジア最大級の分析機器・科学機器専門展示会であるJASIS2015の分析機器・科学機器遺産コーナーで「未来を創る認定遺産」として展示されました。 これは2012年の国際熱測定学会を母体とした国際会議ICTAC15に引き続いての展示になります。会場の都合から、実測を行うことはできませんでしたが、多くの来訪者が足を止めて、その重厚な歴史の重みを彷彿とさせる展示に見入っていました。