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「6類 新入生セミナー」開催報告

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東工大では毎年、新入生を対象に、類ごとのセミナーを実施しています。

6類は、建築学科、土木・環境工学科、社会工学科の3つの学科からなるため、例年バスで都内の建物や都市を見学するバスゼミを企画しています。見学先は、それぞれの学科の特徴を活かして、学科ごとに毎年選定しています。各学科とも、人々の生活や社会と密接な関わりがあることが共通項であり、このバスゼミが2年次における学科選択の際に役立つように、まずは実際の建物や都市をみることで、学習意欲をもってもらうことが目的です。バスゼミが行われた4月4日は、当日こそ穏やかな晴天に恵まれました。

パレスサイドビル (アルミ押出整形のルーバーと雨樋)

パレスサイドビル
(アルミ押出整形のルーバーと雨樋)

建築学科の見学先には、皇居のお濠端に立つ竹橋のパレスサイドビル(1966年竣工、設計:日建設計)が選ばれました。天気も良く、班によってはその前の見学先である丸の内から皇居東御苑(旧本丸)を通り抜け、満開の桜や旧江戸城天守台などを見物しながら出口の北桔橋門に向かい、そこからパレスサイドビルの全景を眺めました。パレスサイドビルは1960年台に建設された日本近代を代表するオフィスビルの傑作で、設計チーフは本学のOBである林昌二氏です。円筒形のダブルコアを外部に出すことで内部の多様な使い方を可能にした平面計画とともに、円筒型コアを覆うリブ付きプレキャストコンクリートパネル、アルミ押出整形のルーバーと雨樋、サッシュレスの全面ガラス窓や地下の“夢の階段”、東玄関の階段手摺りや天井に使用された木材の仕上げなど、
パレスサイドビル (夢の階段)

パレスサイドビル (“夢の階段”)

最新の工業技術と高い職人技術が奇跡的に融合した戦後を代表する建築作品です。良い建築をつくるための最良の教科書は良い建築を実際に見ることですが、新入生にとって今回のバスゼミがそうしたきっかけになることでしょう。
東京みなと館

東京みなと館

土木・環境工学科の見学先には、東京湾内に建設された港湾施設や橋梁といった社会インフラを船上から見学する企画を、国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所の協力を得て、準備していました。しかし、バスゼミ当日は、前日の雨こそ上がったものの、強風が吹くことが予測されたため、参加者の安全を第一に考えて、船上からの見学は中止となってしまいました。このことをバスの中で新入生に伝えた時には、大きなため息が漏れてきました。

そこで当日は、お台場にある東京みなと館を訪れて、館内にて東京港の歴史と役割に関するDVDを視聴するとともに、東日本大震災の際に発生した地盤の液状化による被災と事前対策の効果について学習しました。あわせて、国土交通省関東地方整備局の職員から、現在東京港で進められている港湾整備の概要についてご説明いただきました。普段はあまり重要性を認識できない港湾ですが、食料やエネルギーの大半を海外からの輸入に頼っている日本にとっては、生活に欠かすことのできない重要な社会インフラであることを改めて認識することができました。また、地震時の地盤の液状化のメカニズムについても理解することができ、特に事前対策を施しておくことで地震時の被害を著しく軽減できることが、強く新入生の印象に残りました。

東京港のコンテナヤード

東京港のコンテナヤード

今回のバスゼミを通じて、土木というものが我々の生活の中でいかに重要であるか、また、土木が扱うもののスケールがいかに大きいか、新入生は理解したはずです。新入生は、今回学んだ身の周りにある土木の存在感を常に意識しながら、これからの大学生活を送ることでしょう。

丸の内地区の散策

丸の内地区の散策

社会工学科の見学先には、東京駅を中心とする丸の内地区再開発の中心的役割を担っている三菱地所設計のご協力のもと、都市全体のマネージメントを行う現場を紹介いただきました。同地区は、「公民協調による大丸有のまちづくり ~エリアマネジメント・環境共生への取組み~」として、2012年に日本都市計画学会石川賞を受賞した、現在進行形の優れた都市再開発の事例です。まず、丸の内永楽ビルディング内のオフィスにおいて、明治以降の丸の内地区開発の歴史、現在の丸の内地区が持つ日本経済全体へのポテンシャルなどを説明していただきました。

三菱一号館と中庭

三菱一号館と中庭

また、同オフィス内にある丸の内地区を含む千代田区の大規模模型を使って、丸の内地区が有する都市機能上の意味や、今後の丸の内地区が経済、環境、利便性、快適性などを考慮しながら進むべき方向を示していただきました。新入生は、都市デザイン、都市計画、都市システムの統合的展開とそれを支える社会的ネットワークの重要性を学び、またこの分野で活躍する6類の先輩たちの姿に仕事のおもしろさと勉学の必要性を強く感じたようです。最後に丸の内地区の仲通りを散策し、復元された三菱一号館や中庭を見学しました。

以上のように、3箇所の見学とも成功裏に終えることができました。帰りのバスで学生に書いてもらった感想文のいくつかを紹介します。
「私は建築志望ですが、ビルも港も街づくりもすべて繋がっているので、どれも楽しめたし役に立ちました」「臨海副都心地区の地盤の工夫には驚いた。しっかり対策を行っている街“東京”が首都であることに誇りを持ちたいと思う」「もともとインフラに興味があったので、埋立地という特殊な環境でのインフラ整備についての話が聞け、いい勉強になった」
「経済にいこうと思っていたけど都市開発もいいなと思いました」「3カ所の見学先はとてもよい刺激になり、これからの勉強のモチベーションが高まりました。お友達もできました」

日常生活の中で、普段からよく目にする物だからこそ、それを支えている技術や人々の努力が理解できると、驚きも大きく、目標へ向かってのモチベーションもあがったのでしょう。良い勉強になった、友達ができたという感想が多く、本バスゼミの目的は達成されたといえます。


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