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「教養卒論シンポジウム&優秀論文表彰会」 開催報告

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2月7日、大岡山キャンパスのディジタル多目的ホールで、教養卒論シンポジウム&優秀論文表彰会が行われました。本学リベラルアーツ研究教育院の河村彩助教(ロシア・ソヴィエト文化)が総合司会を務めました。シンポジウムでは、リベラルアーツ研究教育院の林直亨教授(応用生理学)、鈴木悠太准教授(教育学)、小泉勇人准教授(学術的文章教育)、室田真男教授(教育工学)により、今年度より新設された学士課程必修の文系教養科目、「教養卒論」の授業内容が紹介されました。教養卒論の教育内容や学生の書いた文章、その他のコア学修科目を紹介し、東工大の「学びの場」がどのように形成されているのかが説明されました。その後、優秀論文に選ばれた学生によるショートプレゼンテーション、最後に執筆した学生の表彰が行われました。

当日は修士論文発表会などと重なる系・コースが多く、来場者の少ないことが危惧されましたが、113名の方にお越しいただき、学外者や蔵前工業会の方々の参加も多くみられました。

教養卒論シンポジウム

上田紀行研究教育院長の開会の挨拶の後、シンポジウムの司会を務めた林教授から、教養卒論の目的、具体的なカリキュラムが紹介されました。本学の教養教育が、学士課程入学直後の必修科目「東工大立志プロジェクト」に始まり、今年度開講された、学士課程3年目の学生を対象とする「教養卒論」が1つの集大成となることを中心に、コア学修カリキュラムについて説明しました。学生たちは「東工大立志プロジェクト」のメンバーと2年ぶりに同じクラスで再会し、「自分の専門分野と自らの教養・経験とのかかわりに加え、世界をよくすることにどう貢献したいか・できるか、そのためには今後何を学ぶことが自分にとって必要か」をテーマに、教養卒論を書き上げました。多岐に渡る優秀論文のタイトルが紹介され、なかには、教員の世界観・研究観を変えるほど刺激的な内容もあったとのことです。

教養卒論カリキュラムの検討経過を説明する林教授

教養卒論カリキュラムの検討経過を説明する林教授

次に、鈴木准教授は東工大生の文体の詳細について論じました。この教養卒論が1200人もの学生の中に“知的文章を吟味する共通言語の獲得が起きたこと ”の重要性・驚きに言及します。また、友人の教養卒論をレビューする活動、すなわち「教え合い」ではなく「学び合い」という知的に高度な営みに学生たちが挑戦したことを紹介し、3名の教養卒論を例に、「凛として歩む文体」「真理を掴む文体」「問いかけ、答える、文体」について検討しました。聴講していた学生たちの表情の良さが印象的でした。

教養卒論の意義を述べる鈴木准教授

教養卒論の意義を述べる鈴木准教授

小泉准教授はピアレビュー※1とチュータリング※2技術について、専門的な見地から説明しました。教養卒論のクラスでは、大学院課程の科目「ピアレビュー実践」を受講している上級生が、ピアレビューに参加、あるいはピアレビューを観察・講評しています。ピアレビュー実践を担当し、自身もチュータリングの経験が豊富な小泉准教授は、ピアレビュー実践の受講生の成長と戸惑いを紹介しつつ、ピアレビュー実践と教養卒論との有機的な関連を紹介しました。

※1
ピアレビュー : ピアレビューは仲間で(=ピア)論評・見直しする(=レビュー)こと。
※2
チュータリング : 文章について的確な質問を投げかけることで、書き手本人に文章の問題点を気づかせ、自発的な修正を促す技術。いわば学術的文章/書き手の思考を専門対象とするカウンセリング技術とでもいうべきもの。

ピアレビュー実践について説明する小泉准教授

ピアレビュー実践について説明する小泉准教授

最後に、室田教授からは学びの場づくりについて考察がありました。修士課程学生がティーチング・アシスタント(TA)などとして授業の手伝いをするだけでなく、学士課程学生の授業に参加することで、学びあい・教えあうシステムが、この教養卒論の講義によって完成したことを紹介しました。

学びの場について説明する室田教授

学びの場について説明する室田教授

講演後には、早稲田大学国際学術院の佐渡島紗織教授(教育学)から、講評を頂きました。論文のテーマが抽象的で難しそうという批判や、初年次ではなく、専門教育に近づいた段階でライティングの練習をしていることの重要性に触れました。多くの大学では初年次教育にライティング演習を導入していることが多い一方で、東工大では書く作業が増えていく専門教育直前で、ライティングの練習があることの有用性には納得できるものがあると述べました。

佐渡島教授は、2015年3月にリベラルアーツ研究教育院の準備会を対象にして、「理科系学生の文章作成を支援する」と題した講演会を担当し、有益なお話を頂くとともに、教員対象の実習も担当しました。大学としては日本初のライティングセンターを早稲田大学に開設した同教授に評価頂けたことは、今後の授業改善に取って有意義でした。

教養卒論の授業について講評する早稲田大学の佐渡島教授

教養卒論の授業について講評する早稲田大学の佐渡島教授

その後、司会の林教授から、ライティングのスキルは一生ものであり、身につけることが需要であることと、教養卒論には改善点も多く、改革を今後も続けていくので支援をお願いするとの発言があり、シンポジウムは終了となりました。

優秀論文表彰会

教養卒論の内容を熱弁する執筆者たち

教養卒論の内容を熱弁する執筆者たち

優秀論文表彰会は、優秀論文を執筆した学生のうち5名による、各2分間のプレゼンテーションから開始されました。学生は自身の教養卒論の内容を的確に要約して紹介し、聴衆の心を掴んでいました。「これまでの学修を振り返り、将来の目標を道筋とともに明示する」、「大学の授業態度を変えることで講義が楽しくなる」などのプレゼンに、皆引き込まれていました。特に卒業生からはもっと聞きたかったとの声が多く、刺激的な内容が多かったことがうかがえました。

佐渡島教授からは、プレゼンの内容について詳細なコメントを頂きました。内容の素晴らしさに驚いた様子でした。

第4クォーターの優秀論文受賞者と益学長

第4クォーターの優秀論文受賞者と益学長

最後に、各クォーターの優秀論文執筆者が、益一哉学長から表彰されました。学長からは、教養卒論の出来栄えへのコメントがありました。

本学独特の科目である教養卒論では、1年次に立てた志を3年次にまとめ、ライティングの基礎を学びつつ、近い将来の専門学修への見通しをつけることを目標にしています。本学の学生が教養卒論を通して、新たな志を抱いて開拓する手段を明確に描き、専門学修の成果とともに大きく羽ばたくことを期待するとともに、教養卒論の内容を話す機会を通して教員・学生・卒業生の対話が益々深まることを期待します。

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お問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院 教授 林直亨

E-mail : naohayashi@ila.titech.ac.jp


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