11月15日、東京工業大学は学生のための国際交流拠点「Hisao & Hiroko Taki Plaza(ヒサオ・アンド・ヒロコ・タキ・プラザ 以下、Taki Plaza)」において、学生支援センター未来人材育成部門、学務部学生支援課支援企画グループ、一般社団法人蔵前工業会共催のもと、第2回TECHクッキングスタジオ~お菓子作りを科学する~を開催しました。
このイベントは、本学の卒業生で株式会社ぐるなび取締役会長・創業者の滝久雄氏の支援により立ち上げられた、「未来人材応援プロジェクト」の一環として行われました。「未来人材応援プロジェクト」はTaki Plazaを拠点として活動する東工大生を応援するプロジェクトです。
「お菓子作りを科学する(サイエンスなクッキングスタジオ)」をテーマに、パティシエがお菓子を作る工程を目の前で見せながら、化学式などを用いてその工程を科学的に解説しました。
参加人数を先着40名としていましたが、募集を開始したと同時に申し込みが殺到しすぐに定員に達しました。当日は参加者を2つのグループに分け、プロによるお菓子作りを目の前で見る「デモンストレーションゾーン」と、画面でパティシエの手元を見ながらお菓子作りの工程を化学式に解説する「レクチャーゾーン」に交代で参加し、コロナ禍の感染症対策の規制も緩和され試食も行われました。
ゲスト講師は、東工大 生命理工学研究科 生物プロセス専攻・後期博士課程の卒業生で大岡山にてスイーツ店を経営されている株式会社ティーフルの小泉直也氏と、同じスイーツ店で働くパティシエの小林哲也氏です。
メニューはゼリー作り、クッキー作り、お菓子のラッピングで、小林パティシエがスイーツのデモンストレーションを行い、小泉氏がホワイトボードを使いサイエンスな解説を担当しました。
司会は、プロジェクトのメンバーである環境・社会理工学院 融合理工学系の柳瀬梨紗子さん(学士課程3年)が務めました。
1品目:クッキー作り
「デモンストレーションゾーン」では、薄力粉と強力粉の使い分けと食感の違いについての「製菓的説明」を行い、「薄力粉で焼くと『サクッ』とした食感となり、強力粉で焼くと『歯ごたえがあり、しっかり』とした食感となる」との説明がありました。
「レクチャーゾーン」では、薄力粉と強力粉のタンパク質含有量の差により、どのような物性の違いがあるかの説明を受けました。「科学的説明」では、「薄力粉と強力粉のもっとも大きな違いは、タンパク質含有量の違いである。今回使用している薄力粉はタンパク質含有量6.2%、強力粉は13.8%。この数パーセントのタンパク質含有量の差が、薄力粉と強力粉の性質の差となり、できあがるお菓子の差につながる」との説明がありました。
「一般消費者が購入できるお店でも、多種類の小麦粉が販売されており、いずれも、タンパク質含有量が記されている。小麦の種類によってもタンパク質含有量が異なる」という説明や、「小麦粉のタンパク質全体の7~8割を占めるのはグルテン。グルテンはアレルギー反応を起こす原因でもある。グルテンは、グリアジンとグルテニンに分かれる。グリアジンはしっかりした構造で、水に溶かすと粘性がある。グルテニンはコイル状で伸び縮みする性質があり、水に溶かすと弾性がある。洋菓子店の現場では、薄力粉と強力粉を適切なバランスでブレンドし食感を作り出している。薄力粉と強力粉は、ここで説明した物性をよく理解し、用途に応じて使い分けるとよい」などの丁寧な解説がありました。
2品目:ゼリー作り(寒天とゼラチンの2種類)
「デモンストレーションゾーン」では、それぞれの使用方法や使う際の注意点、食感の特徴による使い分けなどの「製菓的説明」を行い、「寒天は温度を下げるとすぐに固まるが、ゼラチンは固まるのに時間がかかる。ゼラチンは加水分解酵素を含む食品(キウイなど)に使うと固まりにくくなる。この場合は、食品を加熱することで固まるようになる」という説明を受けながらゼリー作りのデモンストレーションを見学しました。
「レクチャーゾーン」では、構造の違い(寒天は多糖類、ゼラチンはタンパク質)と食感の違いについての「科学的説明」を受けました。「寒天はガラクトースという多糖類であり、ゼラチンはコラーゲンというタンパク質であるという点が、寒天とゼラチンの大きな違いである」、「ゼラチンは豚の皮から作られることが多いということで、豚が宗教上禁忌の人もいるため、ゼラチンが含まれる食品には気を付ける必要がある」などの解説と、お菓子作りの際、材料の物性をよく知り、目的に合った材料を選ぶようにすれば失敗が少なくなるというアドバイスがありました。
ラッピング
「洋菓子店では、ラッピングしなければお菓子は売れない。個人でお菓子を作る場合も、ラッピングすることでラッピングしないものとは全然違うものになる。特に、お菓子をプレゼントする場合は、ラッピングは必須」と説明があり、大岡山の百円均一ショップで揃えられた材料で丁寧に学生たちが実践しやすいようにレクチャーがありました。
試食タイム
新型コロナウイルス感染状況を鑑み、今回デモンストレーションで使用したものではなく、レッスン内容と同様に用意されたものを全員で試食しました。強力粉と薄力粉で作ったクッキーの食感の違いや、寒天とゼラチンの食感の違いを食べ比べることで、参加者は今回のレッスン内容を体験として理解しました。また、事前に受け付けたお菓子作りに関する質問や、当日参加学生からの質問についても、小泉氏と小林シェフが丁寧に答えました。
最後に司会の柳瀬さんが閉会のあいさつをし、イベントは終了しました。
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